(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2021061117
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内 大樹
(72)【発明者】
【氏名】多田 茂也
(72)【発明者】
【氏名】浮谷 一仁
(72)【発明者】
【氏名】高根澤 雄志
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017028(JP,A)
【文献】特開2014-227742(JP,A)
【文献】特開2015-074952(JP,A)
【文献】特開2020-007700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0112678(US,A1)
【文献】実用新案登録第2592085(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/18
E02F 9/24-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の前側に設けられた作業装置と、
前記車体の周囲を撮影するために前記車体に設けられたカメラと、
を備え、
前記車体は、
前後方向に延びて設けられた車体フレームと、
前記車体フレームの前側に設けられたキャブと、
前記キャブの後側に位置して前記車体フレーム上に設けられた構造物と、
を備えてなる建設機械において、
前記キャブに接触することなく前記キャブの下側の前記車体フレームと前記キャブの後側に位置する前記構造物
とに取付けられるかまたは
前記キャブの下側の前記車体フレームと前記キャブの後側に位置する前記車体フレームとに取付けられた
カメラ支持部材であって、前記構造物または前記キャブの上面部に沿って前後方向に延びた横バーと、前記横バーの前部から前記キャブの前面部に沿って下側に延び、下端部が前記車体フレームに取付けられた前縦バーと、を含むカメラ支持部材を有し、
前記カメラは、前記カメラ支持部材
の前記横バーと前記前縦バーの少なくとも一方に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記
前縦バーは、前記キャブ内の運転席に座ったオペレータが左前側を目視したときに、その一部または全部が前記キャブの左前ピラーに重なるように配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記カメラ支持部材は、前記車体フレームと前記構造物に対し、前記車体の左右方向で異なる位置に選択して取付可能となっていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記カメラ支持部材は、前記車体フレームと前記構造物に対し、前記車体の上下方向で異なる位置に選択して取付可能となっていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項2に記載の建設機械において、
前記カメラ支持部材は、前記横バーと前記前縦バーの少なくとも一方から延びた支持アームを有し、
前記カメラは、前記支持アームの先端部に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記支持アームは、前記先端部の位置が移動可能に構成されていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の周囲を撮影するためのカメラを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置と、を備えている。
【0003】
上部旋回体は、前後方向に延びて設けられた旋回フレームと、旋回フレームの左前側に設けられたキャブと、キャブの後側に位置して車体フレーム上に設けられた建屋カバー等の構造物と、を備えている。
【0004】
また、油圧ショベルは、立坑の掘削作業、ダンプトラックの荷台への積込み作業等に用いられる。これらの作業では、キャブ内のオペレータから作業装置の先端に設けた作業具を目視するのが難しい場合がある。このような作業環境では、作業効率の低下を招く虞がある。
【0005】
そこで、油圧ショベルには、キャブ内から目視し難い場所を撮影するためのカメラを備えたものがある。カメラは、作業装置の作業具の動作を撮影できるように、キャブから延びるアームの先端部に設けられている(特許文献1)。これにより、オペレータは、カメラが撮影した作業具の動作の映像をキャブ内のモニタで目視しながら作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、旋回フレームとキャブとの間には、走行時や作業時に発生する衝撃がキャブ内のオペレータに伝わらないように、衝撃を緩和する防振部材が設けられている。従って、キャブは、旋回フレームに対する振幅が大きくなっている。このため、特許文献1の発明のように、キャブから延びるアームの先端部にカメラを設けた構成では、キャブと一緒にカメラが大きく揺れてしまう。この結果、カメラが撮影した映像が揺れて見難くなってしまい、作業性が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、カメラの揺れを抑えて映像を安定させることにより、作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体と、前記車体の前側に設けられた作業装置と、前記車体の周囲を撮影するために前記車体に設けられたカメラと、を備え、前記車体は、前後方向に延びて設けられた車体フレームと、前記車体フレームの前側に設けられたキャブと、前記キャブの後側に位置して前記車体フレーム上に設けられた構造物と、を備えてなる建設機械において、前記キャブに接触することなく前記キャブの下側の前記車体フレームと前記キャブの後側に位置する前記構造物とに取付けられるかまたは前記キャブの下側の前記車体フレームと前記キャブの後側に位置する前記車体フレームとに取付けられたカメラ支持部材であって、前記構造物または前記キャブの上面部に沿って前後方向に延びた横バーと、前記横バーの前部から前記キャブの前面部に沿って下側に延び、下端部が前記車体フレームに取付けられた前縦バーと、を含むカメラ支持部材を有し、前記カメラは、前記カメラ支持部材の前記横バーと前記前縦バーの少なくとも一方に取付けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カメラの揺れを抑えて映像を安定させることができ、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に適用される油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図2】
図1中の上部旋回体、カメラ支持部材、カメラ等を示す左側面図である。
【
図3】上部旋回体、カメラ支持部材、カメラ等を示す斜視図である。
【
図4】上部旋回体の前部、カメラ支持部材、カメラ等を示す平面図である。
【
図5】カメラ支持部材の前縦バーを旋回フレームの作業位置に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】カメラ支持部材の前縦バーを旋回フレームの輸送位置に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】カメラ支持部材の後縦バーをユーティリティカバーの作業位置に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】カメラ支持部材の後縦バーをユーティリティカバーの輸送位置に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図9】折り畳んだ状態のカメラ支持部材の支持アームを、上部旋回体の前部等と一緒に示す左側面図である。
【
図10】支持アームの一部を、キャブおよびカメラ支持部材の一部と一緒に示す斜視図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態によるカメラ支持部材を、上部旋回体、カメラと一緒に示す左側面図である。
【
図12】
図11中のカメラ支持部材を、キャブの一部およびカメラと一緒に示す斜視図である。
【
図13】カメラ支持部材の支持アームを曲げた状態で
図12と同様位置から見た斜視図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態によるカメラ支持部材の支持アームを示す斜視図である。
【
図15】
図14の支持アームを伸ばした状態で示す斜視図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態によるカメラ支持部材を、上部旋回体の前部等と一緒に示す左側面図である。
【
図17】本発明の第5の実施形態によるカメラ支持部材を、上部旋回体の前部等と一緒に示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0013】
図1ないし
図10は本発明の第1の実施形態を示している。
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に回動可能に設けられた作業装置4と、を含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3は、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を回動させることによって土砂の掘削作業等を行う。
【0014】
作業装置4は、基端側のフート部が後述する旋回フレーム5に回動可能に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端側に回動可能に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端側に回動可能に取付けられたバケット4Cと、これらを動作させるためのブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fと、により構成されている。なお、作業装置4は、バケット4Cに代えて、リフティングマグネット、グラップル、カッタ等の作業具を取付けることもできる。
【0015】
旋回フレーム5は、車体フレームを構成するもので、前後方向に延びて設けられている。
図3、
図4に示すように、旋回フレーム5は、前後方向に延びる厚肉な底板5Aと、底板5A上に立設され、左右方向に所定の間隔をもって前後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、底板5A、左縦板5Bから左側に延びた複数本の左張出しビーム(図示せず)と、底板5A、右縦板5Cから右側に延びた複数本の右張出しビーム5Dと、複数本の左張出しビームの先端に前後方向に延びて設けられた左サイドフレーム5Eと、複数本の右張出しビーム5Dの先端に前後方向に延びて設けられた右サイドフレーム5Fと、を含んだ支持構造体として構成されている。
図5、
図6に示すように、旋回フレーム5の左前側には、左サイドフレーム5Eの前部から右側に延びるように前横フレーム5Gが設けられている。そして、左縦板5Bと右縦板5Cの前部には、作業装置4のブーム4Aが回動可能に取付けられている。
【0016】
ここで、前バーブラケット6は、前横フレーム5Gの左寄り位置に設けられている。前バーブラケット6は、後述するカメラ支持部材12の前縦バー14が取付けられる前面板6Aを有している。この前面板6Aには、左上に位置して1個または複数個、例えば、左右方向に間隔をもって2個の上外ねじ孔6B(
図6に図示)が設けられている。また、前面板6Aには、2個の上外ねじ孔6Bよりも下側かつ右側(内側)に位置して1個または複数個、例えば、2個の上外ねじ孔6Bに合わせて2個の下内ねじ孔6C(
図5に図示)が設けられている。
【0017】
2個の上外ねじ孔6Bには、カメラ支持部材12を作業位置(
図5に示す位置)に配置するときに、前縦バー14のボルト挿通孔14Bに挿通されたボルト15が螺着される。一方、2個の下内ねじ孔6Cには、カメラ支持部材12を輸送位置(
図6に示す位置)に配置するときに、前縦バー14のボルト挿通孔14Bに挿通されたボルト15が螺着される。
【0018】
キャブ7は、旋回フレーム5の左前側に設けられている。キャブ7は、オペレータが搭乗する運転室を形成している。キャブ7は、前面部7A、後面部7B、左面部7C、右面部7Dおよび上面部7Eによってボックス状に形成されている。左面部7Cには、前側寄りに位置して乗降口を開閉するドア7Fが設けられている。また、キャブ7には、前面部7Aと左面部7Cとの境界部を上下方向に延びて左前ピラー7Gが設けられている。なお、キャブ7には、左前ピラー7G以外にも角部にもピラーが設けられているが、説明は省略する。
【0019】
キャブ7の下側は、下面部としての床板で覆われており、この床板上には、オペレータが着座する運転席(いずれも図示せず)が設けられている。運転席の前方となる床板の前部には、走行用の操作レバー・ペダルが設けられている。また、運転席の左右両側には、作業用の操作レバーが設けられている。さらに、運転席の前方には、後述のカメラ21で撮影したバケット4Cの動作等の映像を映すモニタが設けられている(いずれも図示せず)。
【0020】
旋回フレーム5とキャブ7との間には、複数個の防振部材(図示せず)が設けられている。これにより、キャブ7は、走行時、作業時に旋回フレーム5から伝わる衝撃が防振部材で緩和されることにより、乗り心地が良好になる。
【0021】
カウンタウエイト8は、旋回フレーム5の後部に設けられている。カウンタウエイト8は、作業装置4との重量バランスをとる重錘として構成されている。カウンタウエイト8の前側には、エンジン、熱交換装置、油圧ポンプ等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0022】
構造物としてのエンジンカバー9は、カウンタウエイト8の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。エンジンカバー9は、エンジン、熱交換装置、油圧ポンプ等を覆っている。エンジンカバー9は、旋回フレーム5の左サイドフレーム5Eから上側に延びた左板9Aと、旋回フレーム5の右サイドフレーム5Fから上側に延びた右板9Bと、左板9Aの上部と右板9Bの上部とに亘って左右方向に延びた上板9Cと、を含んで構成されている。
【0023】
また、構造物としてのユーティリティカバー10は、キャブ7とエンジンカバー9との間に位置して旋回フレーム5上に設けられている。ユーティリティカバー10は、旋回フレーム5の左サイドフレーム5Eから上側に延びた左板10Aと、左板10Aの上部から右側に延びた上板10Bと、を有している。例えば、ユーティリティカバー10は、旋回フレーム5上に立設された鋼材等を骨組とし、この骨組に左板10A、上板10B等が取付けられている。これにより、ユーティリティカバー10の上板10Bは、後述するカメラ支持部材12の後側部分を強固に支持するのに十分な強度を有している。ユーティリティカバー10は、エンジンカバー9と共に、キャブ7の後側に位置する構造物を構成している。
【0024】
ここで、後バーブラケット11は、ユーティリティカバー10の上板10Bの左寄り位置に設けられている。例えば、後バーブラケット11は、左板10Aの近傍に位置して前後方向に延びて立設された支持板11Aを有している。この支持板11Aには、左側に延びた垂直面からなる縦面板11Bが設けられている。縦面板11Bは、旋回フレーム5の左サイドフレーム5Eの左縁から突出しない位置に配置されている。
【0025】
縦面板11Bには、左上に位置して1個または複数個、例えば、上下方向に間隔をもって2個の上外ねじ孔11C(
図8に図示)が設けられている。また、縦面板11Bには、2個の上外ねじ孔11Cよりも下側かつ右側(内側)に位置して1個または複数個、例えば、2個の上外ねじ孔11Cに合わせて2個の下内ねじ孔11D(
図7に図示)が設けられている。
【0026】
2個の上外ねじ孔11Cには、後述するカメラ支持部材12を作業位置(
図7に示す位置)に配置するときに、後縦バー16のボルト挿通孔16Bに挿通されたボルト15が螺着される。一方、2個の下内ねじ孔11Dには、カメラ支持部材12を輸送位置(
図8に示す位置)に配置するときに、後縦バー16のボルト挿通孔16Bに挿通されたボルト15が螺着される。
【0027】
次に、本実施形態の特徴部分となるカメラ支持部材12の構成および機能について詳しく説明する。
【0028】
カメラ支持部材12は、上部旋回体3の左前側、即ち、キャブ7の左面部7Cに沿うように設けられている。カメラ支持部材12は、後述のカメラ21を上部旋回体3の前方の所定位置に支持するための構造体を形成している。一方で、カメラ支持部材12は、キャブ7を避けて旋回フレーム5およびユーティリティカバー10に取付けられている。カメラ支持部材12は、後述の横バー13、前縦バー14、後縦バー16および支持アーム17を備えている。
【0029】
横バー13は、キャブ7の上面部7Eよりも上側に位置し、上面部7Eに沿って前後方向に延びて設けられている。横バー13は、例えばパイプ材からなり、その前端部13Aは、キャブ7の前面部7Aよりも前側に位置している。
【0030】
前縦バー14は、横バー13の前端部13A寄りの前部からキャブ7の前面部7Aに沿って下側に延びて設けられている。前縦バー14は、例えば横バー13と同様にパイプ材を用いて形成されている。
図5、
図6に示すように、前縦バー14の下端部14Aは、右側に屈曲し、前バーブラケット6の前側に配置されている。下端部14Aには、2個の上外ねじ孔6B(または2個の下内ねじ孔6C)に対応するように2個のボルト挿通孔14Bが前後方向に貫通して設けられている。
【0031】
前縦バー14は、下端部14Aを前バーブラケット6の前面板6Aに当接させ、ボルト挿通孔14Bに挿通したボルト15(二点鎖線で図示)を上外ねじ孔6Bまたは下内ねじ孔6Cに螺着することにより、前バーブラケット6を介して旋回フレーム5に取付けられている。
【0032】
図2等に示すように、後縦バー16は、横バー13の後側からキャブ7の後面部7Bに沿って下側に延びて設けられている。後縦バー16は、例えば横バー13と同様にパイプ材を用いて形成されている。
図7、
図8に示すように、後縦バー16の下端部16Aには、後バーブラケット11に設けられた2個の上外ねじ孔11C(または2個の下内ねじ孔11D)に対応するように2個のボルト挿通孔16Bが前後方向に貫通して設けられている。
【0033】
後縦バー16は、下端部16Aを後バーブラケット11の縦面板11Bに当接させ、ボルト挿通孔16Bに挿通したボルト15を上外ねじ孔11Cまたは下内ねじ孔11Dに螺着することにより、後バーブラケット11を介してユーティリティカバー10に取付けられている。
【0034】
このように構成された横バー13、前縦バー14および後縦バー16は、前縦バー14の下端部14Aを前バーブラケット6の上外ねじ孔6Bに取付け、後縦バー16の下端部16Aを後バーブラケット11の上外ねじ孔11Cに取付けることにより、
図2、
図4に実線で示す作業位置に配置される。この作業位置では、前縦バー14が旋回フレーム5に取付けられ、後縦バー16がユーティリティカバー10に取付けられており、横バー13、前縦バー14および後縦バー16は、キャブ7と別個に配設されている。これにより、横バー13、前縦バー14および後縦バー16は、キャブ7と一緒に揺れることがないから、走行時、作業時の揺れを小さく抑えることができる。
【0035】
また、横バー13、前縦バー14および後縦バー16の作業位置では、横バー13、前縦バー14および後縦バー16が、キャブ7の左面部7Cよりも左側、上面部7Eよりも上側に配置されている。特に、横バー13は、キャブ7の上面部7Eから上側に大きく離れている。この作業位置における横バー13、前縦バー14および後縦バー16とキャブ7との距離は、荒れ地で下部走行体2を走行させたり、作業装置4を回動させたりしてキャブ7が大きく揺れた場合でも、横バー13、前縦バー14および後縦バー16とキャブ7とが接触しない寸法に設定されている。
【0036】
さらに、作業位置では、前縦バー14がキャブ7の左前ピラー7Gの左前側に配置されている。これにより、前縦バー14は、キャブ7内の運転席に座ったオペレータが左前側を目視したときに、その一部または全部が左前ピラー7Gに重なっている。換言すると、作業位置の前縦バー14は、オペレータが左前側を目視したときの視野を妨げない位置に配置されている。また、前縦バー14は、オペレータがキャブ7に乗降するときに掴む手すりとして用いることもできる。
【0037】
一方、横バー13、前縦バー14および後縦バー16は、前縦バー14の下端部14Aを前バーブラケット6の下内ねじ孔6Cに取付け、後縦バー16の下端部16Aを後バーブラケット11の下内ねじ孔11Dに取付けることにより、
図2、
図4に二点鎖線で示す輸送位置に配置される。
【0038】
また、横バー13、前縦バー14および後縦バー16の輸送位置では、前述した作業位置よりも横バー13、前縦バー14および後縦バー16が上部旋回体3に対して右側(内側)と下側に移動されている。
図4に示すように、横バー13、前縦バー14および後縦バー16は、キャブ7の左面部7Cよりも右側に配置され、
図2に示すように、横バー13は、キャブ7の上面部7Eに接近した低い位置に配置されている。これにより、横バー13は、油圧ショベル1を輸送するときの高さ制限の範囲内に配置することができる。また、輸送位置における横バー13とキャブ7(上面部7E)との距離は、輸送時にはキャブ7が大きく揺れることがないため、キャブ7が接触しない最小限の寸法に設定されている。
【0039】
このように、カメラ支持部材12を構成する横バー13、前縦バー14および後縦バー16は、旋回フレーム5とユーティリティカバー10に対し、上部旋回体3の左右方向と上下方向で異なる位置に選択して取付可能となっている。
【0040】
支持アーム17は、横バー13と前縦バー14から前側に向けて斜め上側に延びて設けられている。支持アーム17は、横バー13に取付けられたアーム本体18と、前縦バー14とアーム本体18との間に設けられた保持バー19と、を備えている。
【0041】
アーム本体18は、例えば長尺なパイプ材からなり、長さ方向の基端部が横バー13の前端部13Aに上下方向に回動可能に取付けられている。これにより、アーム本体18は、先端部の位置が移動可能に構成されている。また、アーム本体18の先端部には、後述のカメラ21が取付けられている。
【0042】
保持バー19は、アーム本体18の回動位置(上下方向の角度位置)を斜め上側と前側の2位置に保持することができる。保持バー19は、例えば長尺なパイプ材を用いて形成されている。保持バー19は、長さ方向の基端部が前縦バー14の上下方向の中間部に回動可能に取付けられ、先端部がアーム本体18の先端寄り位置に回動可能に取付けられている。また、保持バー19は、長さ方向の中間部の基端寄りの位置に回動部19Aを有している。
【0043】
これにより、保持バー19は、基端側の短尺部19Bと先端側の長尺部19Cとに分割されている。回動部19Aは、保持バー19(短尺部19Bと長尺部19C)を一直線に保持する、即ち、一直線の状態からアーム本体18と反対側に折れない構造を有している。また、
図9に示すように、回動部19Aは、アーム本体18に接近する方向に折れる構造を有している。
【0044】
さらに、保持バー19の長尺部19Cには、回動部19A寄りの位置にアームホルダ20が設けられている。このアームホルダ20は、保持バー19を折り畳んでアーム本体18を前側に倒したときに、アーム本体18に当接してアーム本体18を下側から保持することにより、アーム本体18を
図9に示す前倒し姿勢に固定することができる。
【0045】
これにより、保持バー19は、
図2等に示すように、一直線に伸ばした状態では、アーム本体18の先端側をキャブ7の前方の高い位置に配置することができる。この状態では、アーム本体18の先端部に取付けたカメラ21は、例えば、ダンプトラックの荷台の内部を撮影することができる。
【0046】
また、保持バー19は、
図9等に示すように、保持バー19の回動部19Aをアーム本体18側に折り曲げることにより、アーム本体18の先端側をキャブ7の前方の低い位置に配置することができる。この状態では、アーム本体18の先端部に取付けたカメラ21は、例えば、立坑の内部を撮影することができる。一方、アーム本体18の先端側をキャブ7の前方の低い位置に配置した状態では、アーム本体18の先端側をキャブ7の上面部7Eよりも低い位置に配置でき、支持アーム17、カメラ21を輸送時の高さ制限の範囲内に配置することができる。
【0047】
カメラ21は、カメラ支持部材12を構成する支持アーム17の先端部に取付けられている。カメラ21は、キャブ7の内部からは目視し難い立坑の内部やダンプトラックの荷台の内部を撮影するものである。カメラ21は、支持アーム17のアーム本体18の先端部に回動可能に取付けられている。これにより、カメラ21は、取付角度を調整することにより、色々な作業現場の状況、作業の内容等に対応することができる。カメラ21で撮影した映像はキャブ7内のモニタに映し出される。
【0048】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0049】
オペレータは、キャブ7に搭乗し、運転席に座ってエンジンを始動する。この状態で、走行用の操作レバー・ペダルを操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。一方、オペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、上部旋回体3の旋回動作、作業装置4による土砂の掘削作業等を行うことができる。この油圧ショベル1の作業時には、キャブ7内のモニタに映し出される映像を目視することにより、キャブ7内からは見え難い位置にあるバケット4C等を見ながら作業装置4等を操作することができる。
【0050】
かくして、本実施形態によれば、キャブ7を避けた状態でキャブ7の下側の旋回フレーム5の前側とキャブ7の後側に位置するユーティリティカバー10とに取付けられたカメラ支持部材12を有している。この上で、キャブ7の内部からは目視し難い場所を撮影するカメラ21は、カメラ支持部材12に取付けられている。従って、剛性を有する旋回フレーム5およびユーティリティカバー10に取付けられたカメラ支持部材12にカメラ21を取付けることで、旋回フレーム5上に防振部材を介して支持されたキャブ7よりも、カメラ21の揺れを小さく抑えることができる。この結果、カメラ21によって撮影した映像の揺れを抑えてモニタに映る映像を安定させることができ、モニタを見ながらの作業の効率を高めることができる。
【0051】
カメラ支持部材12は、キャブ7の上面部7Eに沿って前後方向に延びた横バー13と、横バー13の前部からキャブ7の前面部7Aに沿って下側に延び、下端部14Aが旋回フレーム5の前バーブラケット6に取付けられた前縦バー14と、横バー13の後部からキャブ7の後面部7Bに沿って下側に延び、下端部16Aがユーティリティカバー10に取付けられた後縦バー16と、を備えている。これにより、カメラ支持部材12は、キャブ7を避けて旋回フレーム5の前側とキャブ7の後側のユーティリティカバー10とに取付けることができる。
【0052】
カメラ支持部材12は、旋回フレーム5とユーティリティカバー10に対し、上部旋回体3の左右方向および上下方向で異なる位置に選択して取付可能となっている。具体的には、カメラ支持部材12は、キャブ7から大きく離れてキャブ7との干渉を防止する左上側の作業位置と、キャブ7に接近させて輸送時の高さ制限および幅制限の範囲内に収まる右下側の輸送位置とを選択することができる。
【0053】
カメラ支持部材12は、横バー13と前縦バー14から前側に向けて斜め上側に延びた支持アーム17を有している。この上で、カメラ21は、支持アーム17の先端部に取付けられている。これにより、カメラ21をキャブ7から離れた位置に配置することができる。
【0054】
支持アーム17は、先端部の位置が移動可能に構成されている。これにより、支持アーム17の先端部の位置を移動することにより、作業内容に応じてカメラ21の位置を調整することができる。
【0055】
次に、
図11ないし
図13は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、カメラ支持部材の支持アームを自在構造としたことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0056】
図11、
図12において、第2の実施形態によるカメラ支持部材31の支持アーム32は、屈曲自在な棒状体からなり、長さ方向の基端部が横バー13の前端部13Aに上下方向に回動可能に取付けられている。また、支持アーム32の先端部には、カメラ21が取付けられている。これにより、支持アーム32は、
図13に示すように、自在に屈曲させることができ、カメラ21の位置、向きを自由に調整することができる。
【0057】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施形態によれば、カメラ21を上下方向に移動させるだけでは映すことが難しかった位置も映すことができる。
【0058】
次に、
図14および
図15は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、カメラ支持部材の支持アームを伸縮構造としたことにある。なお、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0059】
図14において、第3の実施形態による支持アーム41は、伸縮自在なパイプ材として形成されている。支持アーム41は、第1パイプ41Aと、第1パイプ41Aの先端部に伸縮可能に挿入された第2パイプ41Bとにより構成されている。支持アーム41は、第1パイプ41Aの基端部が横バー13の前端部13Aに上下方向に回動可能に取付けられている。また、第2パイプ41Bの先端部には、カメラ21が取付けられている。これにより、支持アーム41は、
図15に示すように、第1パイプ41Aから第2パイプ41Bを伸ばすことができ、カメラ21の位置を自由に調整することができる。
【0060】
かくして、このように構成された第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施形態によれば、カメラ21の位置を広範囲で調整することができる。
【0061】
次に、
図16は本発明の第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、カメラ支持部材を、キャブの下側の車体フレームとキャブの後側に位置する車体フレームとに取付けたことにある。なお、第4の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
図16において、第4の実施形態によるユーティリティカバー51は、第1の実施形態によるユーティリティカバー10と同様に、左板51Aと上板51Bとを有している。しかし、第4の実施形態によるユーティリティカバー51は、前後方向の寸法が小さく形成されている。これにより、キャブ7とユーティリティカバー51との間には、下側が旋回フレームに達する空間51Cが形成されている。
【0063】
第4の実施形態によるカメラ支持部材52は、第1の実施形態によるカメラ支持部材12と同様に、横バー53、前縦バー54および後縦バー55によって構成されている。しかし、第4の実施形態によるカメラ支持部材52は、後縦バー55が第1の実施形態による後縦バー16よりも長尺に形成されている点で、第1の実施形態によるカメラ支持部材12と相違している。
【0064】
後縦バー55は、キャブ7とユーティリティカバー51との間の空間51Cを下側に延び、その下端部がキャブ7の後側に位置する車体フレームとしての旋回フレーム5に取付けられている。この場合、後縦バー55の下端部は、第1の実施形態による後縦バー16と同様に、上部旋回体3の左右方向および上下方向で異なる位置に選択して取付可能となっている。
【0065】
かくして、このように構成された第4の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
次に、
図17は本発明の第5の実施形態を示している。第5の実施形態の特徴は、カメラ支持部材を構成する横バーの後部をキャブの後側に位置する構造体に取付けたことにある。なお、第5の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
図17において、第5の実施形態による支持ブラケット61は、ユーティリティカバー10の上板10B上に設けられている。支持ブラケット61は、キャブ7の後側に位置して旋回フレーム5上に設けられた構造物の一部を構成している。支持ブラケット61は、キャブ7の上面部7Eを越える高さ寸法を持った強度部材として形成されている。
【0068】
第5の実施形態によるカメラ支持部材62は、横バー63と前縦バー64とにより構成されている。横バー63の後部は、支持ブラケット61の上部に取付けられている。この場合、横バー63の後部は、支持ブラケット61に対し、上部旋回体3の左右方向および上下方向で異なる位置に選択して取付可能となっている。
【0069】
かくして、このように構成された第5の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
なお、第1の実施形態では、支持アーム17を上下方向に回動可能に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、支持アームを左右方向に回動可能に設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0071】
第1の実施形態では、カメラ支持部材12とカメラ21をキャブ7の左側に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、カメラ支持部材とカメラをキャブの右側に配置する構成としてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0072】
第1の実施形態では、後縦バー16を構造物としてのユーティリティカバー10に取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ユーティリティカバーが設けられていない油圧ショベルの場合には、後縦バーを構造物としてのエンジンカバーに取付ける構成としてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0073】
第1の実施形態では、カメラ支持部材12を作業位置と輸送位置とに選択可能に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、カメラ支持部材の位置を固定する構成としてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0074】
さらに、各実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル、クレーン、ホイルローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
5 旋回フレーム(車体フレーム)
7 キャブ
7A 前面部
7B 後面部
7E 上面部
9 エンジンカバー(構造物)
10,51 ユーティリティカバー(構造物)
12,31,52,62 カメラ支持部材
13,53,63 横バー
13A 前端部
14,54,64 前縦バー
14A,16A 下端部
16,55 後縦バー
17,32,41 支持アーム
21 カメラ
61 支持ブラケット(構造物)