IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7557415油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機
<>
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図1
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図2
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図3
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図4
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図5
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図6
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図7
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図8
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図9
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図10
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図11
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図12
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図13
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図14
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図15
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図16
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図17
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図18
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図19
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図20
  • 特許-油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/04 20060101AFI20240919BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20240919BHJP
   F16N 7/28 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F16C17/04 Z
F16C33/10 B
F16N7/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021063123
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158329
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】トーレス シサ ヘスス アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】牧野 駿介
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-191416(JP,U)
【文献】実開昭60-196023(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/04-17/06
F16C 33/10
F16N 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立形回転電機の回転軸と共に回転するスラストカラーと、軸方向において前記スラストカラーの下端部と対向する位置に設けられた軸受台と、前記軸受台に支持され、周方向に配列された複数のスラストパッドと、を備えたスラスト軸受装置の前記周方向において互いに隣り合う前記スラストパッドの間に設けられた油かき装置であって、
前記軸受台に取り付けられる支持部と、
前記支持部に支持され、径方向に沿うように設けられる油かき板と、を備え、
前記油かき板は、本体部と、前記本体部から前記スラストカラーの側に隆起した隆起部と、前記本体部の前記スラストカラーと対向する部分のうち前記隆起部よりも上流側の位置に設けられた溝部であって、前記径方向に延びる溝部と、を有し、
前記隆起部と前記スラストカラーとの間に、間隙が設けられ、
前記隆起部は、前記スラストカラーの側に突出した複数の凸部であって、前記径方向に配列された複数の凸部と、前記径方向において互いに隣り合う前記凸部の間に設けられた複数の凹部と、を有する、油かき装置。
【請求項2】
前記隆起部は、複数の前記凸部および複数の前記凹部をそれぞれ有する第1の隆起部および第2の隆起部を含み、前記第2の隆起部は、前記第1の隆起部よりも下流側に配置されている、請求項1に記載の油かき装置。
【請求項3】
前記周方向で見たとき、前記第1の隆起部の前記凸部と前記第2の隆起部の前記凹部とが少なくとも部分的に重なるとともに、前記第1の隆起部の前記凹部と前記第2の隆起部の前記凸部とが少なくとも部分的に重なる、請求項2に記載の油かき装置。
【請求項4】
前記周方向で見たとき、前記第1の隆起部の前記凸部と前記第2の隆起部の前記凸部とが少なくとも部分的に重なるとともに、前記第1の隆起部の前記凹部と前記第2の隆起部の前記凹部とが重ならない、請求項3に記載の油かき装置。
【請求項5】
前記隆起部は、前記本体部に着脱可能に構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の油かき装置。
【請求項6】
前記スラストカラーと、
前記軸受台と、
複数の前記スラストパッドと、
請求項1から5のいずれか一項に記載の油かき装置と、を備える、スラスト軸受装置。
【請求項7】
前記回転軸と、
請求項6に記載のスラスト軸受装置と、を備える、立形回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
立形回転電機(例えば立形水車発電機や揚水発電設備の発電電動機等)の軸方向荷重を支持するスラスト軸受装置が知られている。スラスト軸受装置は、立形回転電機の回転軸と共に回転するスラストカラーと、軸方向においてスラストカラーの下端部と対向する位置に設けられた軸受台と、軸受台に支持され、周方向に配列された複数のスラストパッドと、を有している。スラストカラーやスラストパッドは、潤滑油を収容する油槽内に配置されている。
【0003】
立形回転電機の回転軸の回転に伴いスラストカラーが回転すると、スラストカラーとスラストパッドとの間に潤滑油の油膜が形成され、この油膜によって立形回転電機の軸方向荷重が支持される。油膜は、回転するスラストカラーとの摩擦によって温度が上昇し得る。油膜は、スラストカラーの回転に伴い、スラストパッドから排出される。排出された油膜は、周方向において当該スラストパッドと隣り合う次のスラストパッドに供給される。温度が上昇した油膜は、周方向において互いに隣り合うスラストパッドの間に存在する冷たい潤滑油と熱交換が行われて冷却された後、次のスラストパッドに供給される。
【0004】
しかしながら、スラストパッドから排出された油膜は、冷たい潤滑油と十分に熱交換が行われないまま、次のスラストパッドに供給される場合がある。この場合、油膜は、複数のスラストパッドを経て徐々に温度が上昇し、高温化し得る。油膜が高温化すると、粘度が低下し、油膜が薄くなり、スラスト軸受装置の負荷性能が低下するおそれがある。また、潤滑油やスラスト軸受装置の摺動面を構成する材料の劣化を招くおそれがある。
【0005】
このことの対策として、周方向において互いに隣り合うスラストパッドの間に、油かき装置を配置する方法が知られている。油かき装置は、支持柱と、支持柱に押圧ばねを介して支持された油かき板と、を有している。油かき板は、押圧ばねによりスラストカラーの摺動面に押圧され、当該摺動面と接触している。このような油かき装置により、スラストパッドから排出された油膜は、次のスラストパッドに供給される前に、油槽内の下方にかき落とされる。これにより、温度が上昇した油膜は、油槽内の下方に存在する冷たい潤滑油と熱交換が行われて冷却され得る。
【0006】
しかしながら、上述した油かき装置では、油膜をかき落とす効果を得るために、油かき板をスラストカラーの摺動面に押圧して接触させている。この接触により、スラスト軸受装置の摩擦トルクが増大し、立形回転電機の運転効率が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭59-115122号公報
【文献】実開昭59-191415号公報
【文献】実開昭59-191416号公報
【文献】実開昭59-191417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、立形回転電機の運転効率の低下を抑制しつつ、油膜の温度上昇を低減することができる油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施の形態による油かき装置は、立形回転電機の回転軸と共に回転するスラストカラーと、軸方向においてスラストカラーの下端部と対向する位置に設けられた軸受台と、軸受台に支持され、周方向に配列された複数のスラストパッドと、を備えたスラスト軸受装置の周方向において互いに隣り合うスラストパッドの間に設けられた油かき装置である。油かき装置は、軸受台に取り付けられる支持部と、支持部に支持され、径方向に沿うように設けられる油かき板と、を備える。油かき板は、本体部と、本体部からスラストカラーの側に隆起した隆起部と、本体部のスラストカラーと対向する部分のうち隆起部よりも上流側の位置に設けられた溝部であって、径方向に延びる溝部と、を有する。隆起部とスラストカラーとの間に、間隙が設けられる。隆起部は、スラストカラーの側に突出した複数の凸部であって、径方向に配列された複数の凸部と、径方向において互いに隣り合う凸部の間に設けられた複数の凹部と、を有する。
【0010】
また、実施の形態によるスラスト軸受装置は、スラストカラーと、軸受台と、複数のスラストパッドと、上述した油かき装置と、を備える。
【0011】
また、実施の形態による立形回転電機は、回転軸と、上述したスラスト軸受装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、立形回転電機の運転効率の低下を抑制しつつ、油膜の温度上昇を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施の形態によるスラスト軸受装置を示す正面断面図である。
図2図2は、図1のスラスト軸受装置のスラストパッドおよび油かき装置を軸方向で見た上面断面図である。
図3図3は、図2のスラストパッドおよび油かき装置を径方向で見た側面図である。
図4図4は、図3の油かき装置の斜視図である。
図5図5は、図4の油かき装置を径方向で見た側面図である。
図6図6は、図5の油かき装置の隆起部を周方向で見た拡大正面図である。
図7図7は、図6の一変形例である。
図8図8は、図6の別の一変形例である。
図9図9は、一般的なスラスト軸受装置のスラストパッドを示す側面図である。
図10図10は、別の一般的なスラスト軸受装置のスラストパッドおよび油かき装置を示す側面図である。
図11図11は、第1の実施の形態による作用効果を説明するための図であって、隆起部の上流側に渦が発生する様子を示す側面図である。
図12図12は、第1の実施の形態による作用効果を説明するための図であって、隆起部の下流側に渦が発生する様子を示す斜視図である。
図13図13は、第2の実施の形態による油かき装置の側面図である。
図14図14は、図13の油かき装置の隆起部の斜視図である。
図15図15は、第3の実施の形態による油かき装置の側面図である。
図16図16は、図15の油かき装置の隆起部の拡大斜視図である。
図17図17は、図16の隆起部を周方向で見た拡大正面図である。
図18図18は、図16の一変形例である。
図19図19は、図16の別の一変形例である。
図20図20は、図19の隆起部を周方向で見た拡大正面図である。
図21図21は、第4の実施の形態による油かき装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施の形態による油かき装置、スラスト軸受装置および立形回転電機について説明する。なお、図面においては、理解のし易さの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0015】
(第1の実施の形態)
まず、図1図3を用いて、第1の実施の形態によるスラスト軸受装置について説明する。
【0016】
スラスト軸受装置10は、立形回転電機1の軸方向荷重を支持するように構成されている。ここで、立形回転電機1の具体例としては、例えば、立形水車発電機や揚水発電設備の発電電動機等が挙げられる。図1に示すように、立形回転電機1は、回転軸3を有している。回転軸3は、例えば、不図示のランナ羽根を介して流水から動力を得ることで、回転軸線Xを中心に回転方向Cに回転するように構成されている。
【0017】
図1および図2に示すように、スラスト軸受装置10は、スラストカラー11と、軸受台14と、複数のスラストパッド15と、油槽18と、油かき装置20と、を有している。
【0018】
図1に示すように、スラストカラー11は、回転軸3に取り付けられている。スラストカラー11は、回転軸3の回転に伴って、回転軸3と共に回転するように構成されている。スラストカラー11は、回転軸3に取り付けられた円環状の円環部11aと、円環部11aから下方に延びた円筒状の円筒部11bと、円筒部11bの下方に設けられたスラストランナ12と、を有している。円環部11aと円筒部11bは、一体に形成されている。スラストランナ12は、スラストカラー11の下端部を構成している。スラストランナ12は、後述するスラストパッド15のパッド摺動面15aと対向するランナ摺動面12aを有している。なお、スラストカラー11は、スラストランナ12を有していなくてもよい。この場合、円筒部11bの下端部が、スラストカラー11の下端部を構成し、円筒部11bが、パッド摺動面15aと対向する摺動面を有し得る。
【0019】
図1に示すように、軸受台14は、回転軸3の回転軸線Xに沿う軸方向(図1における上下方向)において、スラストカラー11の下端部と対向する位置、すなわちスラストランナ12と対向する位置に設けられている。軸受台14は、円環状の平面形状を有している。軸受台14は、後述するスラストパッド15および後述する油かき装置20を支持するように構成されている。軸受台14は、水平面14aを有している。この水平面14aに、後述するスプリング16が複数取り付けられ、複数のスプリング16を介してスラストパッド15が支持されている。また、この水平面14aに、後述する油かき装置20の支持部22が取り付けられ、油かき装置20が支持されている。
【0020】
図1および図3に示すように、複数のスラストパッド15は、軸受台14に支持されている。図示された例においては、各スラストパッド15は、軸受台14に取り付けられた複数のスプリング16を介して軸受台14に支持されている。図2に示すように、各スラストパッド15は、略扇形の平面形状を有しており、回転方向Cに沿う周方向に所定の間隔をあけて配列されている。また、図3に示すように、各スラストパッド15は、スラストランナ12のランナ摺動面12aと対向するパッド摺動面15aを有している。パッド摺動面15aは、回転方向Cに対して傾斜していてもよい。より具体的には、図3に示すように、パッド摺動面15aは、回転方向Cの前側(上流側)から後側(下流側)に向かうに連れて、パッド摺動面15aとランナ摺動面12aとの間の間隙が狭くなるように、傾斜していてもよい。この場合、パッド摺動面15aとランナ摺動面12aとの間に、楔状の間隙が形成される。図示された例においては、この楔状の間隙に、後述する油膜Fが形成される。
【0021】
図1に示すように、油槽18は、スラストカラー11と、軸受台14と、複数のスラストパッド15と、後述する油かき装置20とを覆うように設けられている。油槽18は、潤滑油Lを収容する。スラストランナ12、軸受台14、スラストパッド15および油かき装置20は、この油槽18内の潤滑油Lに浸かっている。これにより、スラストランナ12とスラストパッド15との間、より具体的には、パッド摺動面15aとランナ摺動面12aとの間の間隙に潤滑油Lが供給され、油膜Fが形成される。油槽18には、油槽18内に潤滑油Lを供給する油供給口(不図示)と、油槽18内から潤滑油Lを排出する油排出口(不図示)とが設けられていてもよい。
【0022】
次に、図2図8を用いて、第1の実施の形態による油かき装置20について説明する。
【0023】
図2および図3に示すように、油かき装置20は、周方向において互いに隣り合うスラストパッド15の間に設けられている。図2に示すように、油かき装置20は、周方向において互いに隣り合うスラストパッド15の間にそれぞれ一つずつ配置されていてもよい。油かき装置20は、一のスラストパッド15から排出された油膜Fを、当該油膜Fが次のスラストパッド15に供給される前に、下方(軸受台14の側)にかき落とすように構成されている。
【0024】
図4および図5に示すように、油かき装置20は、軸受台14に取り付けられる支持部22と、支持部22に支持される油かき板30と、を有している。
【0025】
図4および図5に示すように、支持部22は、取付部24と、支持柱26とを有している。取付部24は、軸受台14に取り付け可能に構成されている。取付部24は、例えば、ろう付けや溶接、ボルト締結により軸受台14の水平面14aに取り付けることができる。支持柱26は、取付部24上に設けられており、取付部24から上方(スラストランナ12の側)に延び出ている。支持柱26は、例えば、ろう付けや溶接、ボルト締結により取付部24に取り付けられていてもよい。図示された例においては、支持部22は、二つの取付部24と、各取付部24に対応した二つの支持柱26と、を有している。支持部22の上側(スラストランナ12の側)の端部には、支持溝26aが設けられている。この支持溝26aに、油かき板30が支持されている。油かき板30は、例えば、ろう付けや溶接、ボルト締結により支持柱26に取り付けられていてもよい。また、油かき板30は、例えば、ばね部材を介して支持柱26に取り付けられていてもよい。
【0026】
図4および図5に示すように、油かき板30は、薄板状に形成されている。図2に示すように、油かき板30は、径方向(軸方向で見たときに回転軸線Xに向かう方向)に沿うように設けられている。より具体的には、油かき板30は、長手方向と短手方向と厚さ方向とを有しており、長手方向が径方向に沿い、短手方向が軸方向に沿い、厚さ方向が周方向に沿うように配置されている。図4および図5に示すように、油かき板30は、本体部32と、通油溝34(溝部)と、隆起部40とを有している。
【0027】
図4および図5に示すように、本体部32は、薄板状に形成されている。本体部32は、正面から見たときに(周方向で見たときに)、略矩形形状を有していてもよい。本体部32は、下側(軸受台14の側)に設けられた下端部32aと、上側(スラストランナ12の側)に設けられた上端部32bと、径方向外側に設けられた外側部32cと、径方向内側に設けられた内側部32dと、を有している。下端部32aは、軸受台14の水平面14aと対向している。上端部32bは、スラストランナ12のランナ摺動面12aと対向している。この上端部32bに、通油溝34が設けられている。
【0028】
図4および図5に示すように、通油溝34は、上端部32bのうち隆起部40よりも上流側(図5における右側)の位置に設けられている。通油溝34は、径方向に延びている。通油溝34は、本体部32の外側部32cから内側部32dまで貫通するように延びていてもよい。このような通油溝34が上端部32bに設けられることにより、本体部32の通油溝34の上流側に、上方(スラストランナ12の側)に突出した突起部35が設けられる。換言すると、通油溝34は、突起部35と隆起部40との間に設けられている。図5に示す通油溝34の幅寸法w(周方向における寸法)は、例えば1mm以上4mm以下であってもよい。図5に示す通油溝34の深さ寸法d(軸方向における寸法)は、例えば1mm以上4mm以下であってもよい。
【0029】
図4および図5に示すように、隆起部40は、本体部32から上方(スラストランナ12の側)に隆起している。換言すると、隆起部40の頂部42は、本体部32の上端部32bよりも上方(スラストランナ12の側)に位置している。隆起部40は、上端部32bのうち通油溝34よりも下流側(図5における左側)の位置に設けられている。隆起部40とスラストランナ12との間、より具体的には、隆起部40の頂部42とスラストランナ12のランナ摺動面12aとの間には、間隙Gが設けられている。図5に示す軸方向における間隙Gの寸法gは、例えば0.1mm以上0.5mm以下であってもよい。
【0030】
また、図4および図6に示すように、隆起部40は、複数の凸部44と、複数の凹部46と、を有している。各凸部44および各凹部46は、隆起部40の上側(スラストランナ12の側)の端部に設けられている。各凸部44は、上側(スラストランナ12の側)に突出している。各凸部44は、径方向(図6における左右方向)に配列されている。各凹部46は、径方向において互いに隣り合う凸部44の間に設けられている。各凹部46は、下側(軸受台14の側)に向かって窪んでいる。図示された例においては、隆起部40は、五つの凸部44と、その間に配置された四つの凹部46と、を有している。しかしながら、このことに限られることはなく、凸部44の個数および凹部46の個数は任意である。
【0031】
図4および図6に示すように、周方向で見たとき、各凸部44および各凹部46は、それぞれ湾曲した波形状を有していてもよい。すなわち、周方向で見たとき、各凸部44は、上側(スラストランナ12の側)に向かって湾曲した円弧状の外形を有し、各凹部46は、下側(軸受台14の側)に向かって湾曲した円弧状の外形を有していてもよい。
【0032】
しかしながら、このことに限られることはなく、各凸部44および各凹部46の形状は任意である。例えば、図7に示すように、周方向で見たとき、各凸部44および各凹部46は、それぞれ三角形状を有していてもよい。すなわち、周方向で見たとき、各凸部44は、上側(スラストランナ12の側)に向かって突出した三角形状の外形を有し、各凹部46は、下側(軸受台14の側)に向かって窪んだ三角形状の外形を有していてもよい。また例えば、図8に示すように、周方向で見たとき、各凸部44および各凹部46は、それぞれ矩形形状を有していてもよい。すなわち、周方向で見たとき、各凸部44は、上側(スラストランナ12の側)に向かって突出した矩形状の外形を有し、各凹部46は、下側(軸受台14の側)に向かって窪んだ矩形状の外形を有していてもよい。
【0033】
各凸部44は、互いに同一の形状を有していてもよい。また、各凹部46は、互いに同一の形状を有していてもよい。図6に示す凸部44の頂部45(隆起部40の頂部42)と凹部46の底部47との間の寸法h1(軸方向における寸法)は、例えば1mm以上5mm以下であってもよい。図6に示す互いに隣り合う凸部44の頂部45間の寸法p1(径方向における寸法)は、例えば2.5mm以上10mm以下であってもよい。図6に示す互いに隣り合う凹部46の底部47間の寸法q1(径方向における寸法)は、互いに隣り合う凸部44の頂部45間の寸法p1と等しくてもよく、例えば2.5mm以上10mm以下であってもよい。
【0034】
本実施の形態においては、本体部32と隆起部40は、一体に形成されている。すなわち、本体部32と隆起部40は、油かき板30として、製造時に同一材料により一体的に継ぎ目なしに形成されている。油かき板30は、例えば、樹脂材料や金属材料により構成されていてもよい。
【0035】
次に、図9図12を用いて、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0036】
立形回転電機1の運転時、回転軸3は、ランナ羽根を介して流水から動力を得ることで、回転軸線Xを中心に回転方向Cに回転する。回転軸3の回転に伴い、スラスト軸受装置10のスラストカラー11が回転軸3と共に回転する。このとき、スラストランナ12とスラストパッド15との間に油槽18内の潤滑油Lが供給され、油膜Fが形成される。この油膜Fによって、立形回転電機1の軸方向荷重が支持される。油膜Fは、スラストカラー11の回転に伴い、スラストパッド15から排出される。排出された油膜Fは、周方向において当該スラストパッド15と隣り合う次のスラストパッド15に供給される。
【0037】
ここで、本実施の形態の作用効果について、図9および図10に示す一般的なスラスト軸受装置100、200と比較して説明する。図9は、周方向において互いに隣り合うスラストパッド15の間に油かき装置20が配置されていない一般的なスラスト軸受装置100を示す。スラストランナ12とスラストパッド15との間に形成された油膜Fは、回転するスラストカラー11のスラストパッド15との摩擦によって温度が上昇する。温度が上昇した油膜Fは、スラストパッド15から排出された後、周方向において互いに隣り合うスラストパッド15の間に存在する冷たい潤滑油Lと熱交換が行われて冷却され、次のスラストパッド15に供給される。
【0038】
しかしながら、スラストパッド15から排出された油膜Fは、冷たい潤滑油Lと十分に熱交換が行われないまま、次のスラストパッド15に供給される場合がある。この場合、油膜Fは、複数のスラストパッド15を経て徐々に温度が上昇し、高温化し得る。油膜Fが高温化すると、粘度が低下し、油膜Fが薄くなり、スラスト軸受装置100の負荷性能が低下するおそれがある。また、潤滑油Fや摺動面12a、15aを構成する材料の劣化を招くおそれがある。
【0039】
また、図10は、周方向において互いに隣り合うスラストパッド15の間に一般的な油かき装置220が配置された別の一般的なスラスト軸受装置200を示す。この油かき装置220は、支持柱226と、支持柱226に押圧ばね228を介して支持された油かき板230と、を有している。油かき板230は、押圧ばね228によりランナ摺動面12aに押圧され、ランナ摺動面12aと接触している。このため、スラストパッド15から排出された油膜Fは、油かき板230により油槽18内の下方にかき落とされる。これにより、温度が上昇した油膜Fは、油槽18内の下方に存在する冷たい潤滑油Lと熱交換が行われて冷却され得る。
【0040】
しかしながら、図10に示すスラスト軸受装置200では、油かき板230がランナ摺動面12aと接触しているため、油かき板230とランナ摺動面12aとの間で接触摩擦が生じ得る。このため、スラスト軸受装置200の摩擦トルクが増大し、立形回転電機1の運転効率が低下するおそれがある。また、油かき板230とランナ摺動面12aとの間でびびり振動が発生し、立形回転電機1の連続運転に支障をきたすおそれもある。
【0041】
これに対して本実施の形態によれば、図11に示すように、油かき板30の隆起部40とスラストランナ12との間に、間隙Gが設けられている。このことにより、油かき装置20とランナ摺動面12aとの接触が回避されている。このため、スラスト軸受装置200の摩擦トルクの増大を防止することができ、立形回転電機1の運転効率の低下を抑制することができる。また、油かき板230とランナ摺動面12aとの間でびびり振動が発生することを防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、油かき板30は、本体部32の上端部32bのうち隆起部40よりも上流側の位置に設けられた通油溝34を有している。本発明者らは、油かき装置20において、隆起部40よりも上流側に通油溝34を設けることにより、図11に示すように、通油溝34あるいは突起部35の上方に、径方向周りに回転する渦V1を発生させることができることを見出した。この発生した渦V1により、スラストパッド15から排出された油膜Fをかき乱すことができる。このため、油膜Fを冷たい潤滑油Lと効率的に熱交換させることができ、油膜Fを効果的に冷却することができる。この結果、油膜Fの温度上昇を低減することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、通油溝34により、隆起部40でかき落とされた油膜Fを回収することができる。すなわち、隆起部40よりも上流側に通油溝34を設けることにより、隆起部40でかき落とされた油膜Fを、通油溝34内に流入させることができる。通油溝34は径方向に延びているため、通油溝34内に流入した油膜Fを、油膜Fの径方向内側に向かう速度成分により、径方向内側に導くことができる。径方向内側に導かれた油膜Fは、径方向内側に存在する冷たい潤滑油Lと熱交換が行われて冷却される。このことにより、温度が上昇した油膜Fが、スラストパッド15から排出された後、次のスラストパッド15に供給されることを抑制することができる。このため、油膜Fの温度上昇を低減することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、隆起部40は、径方向に配列された複数の凸部44と、径方向において互いに隣り合う凸部44の間に設けられた複数の凹部46と、を有している。本発明者らは、油かき装置20において、隆起部40にこのような複数の凸部44および複数の凹部46を設けることにより、図12に示すように、隆起部40の凸部44の下流側に、軸方向回りに回転する渦V2を発生させることができることを見出した。上述した渦V1とこの渦V2とを組み合わせることにより、油膜Fを更にかき乱すことができる。このため、油膜Fを冷たい潤滑油Lと効率的に熱交換させることができ、油膜Fを効果的に冷却することができる。この結果、油膜Fの温度上昇を低減することができる。
【0045】
このように本実施の形態によれば、立形回転電機1の運転効率の低下を抑制しつつ、油膜Fの温度上昇を低減することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、図13および図14を用いて、第2の実施の形態による油かき装置について説明する。
【0047】
図13および図14に示す第2の実施の形態においては、隆起部が、本体部に着脱可能に構成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図12に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図13および図14において、図1図12に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施の形態による油かき装置20の隆起部40は、本体部32に着脱可能に構成されている。図13に示す例においては、本体部32の上端部32bのうち通油溝34の下流側(図13における左側)の位置に、取付溝50が設けられている。取付溝50は、通油溝34と同様、径方向に延びている。取付溝50は、通油溝34と同様、本体部32の外側部32cから内側部32dまで貫通するように延びていてもよい。このような取付溝50が通油溝34の下流側に設けられることにより、取付溝50と通油溝34との間に、上方(スラストランナ12の側)に突出した突起部51が設けられる。また、取付溝50の下流側に、上方(スラストランナ12の側)に突出した突起部52が設けられる。換言すると、通油溝34は、突起部35と突起部51との間に設けられており、取付溝50は、突起部51と突起部52との間に設けられている。
【0049】
図14に示すように、本実施の形態による油かき装置20の隆起部40は、本体部32とは別体に構成されている。すなわち、隆起部40は、本体部32とは異なる別個の部品として構成されている。図14に示すように、隆起部40は、上述した第1の実施の形態と同様、複数の凸部44および複数の凹部46を有している。図14に示す例においては、隆起部40は、三つの凸部44と、二つの凹部46と、を有している。しかしながら、このことに限られることはなく、凸部44の個数および凹部46の個数は任意である。また、図14に示す例においては、周方向で見たとき、各凸部44および各凹部46は、それぞれ湾曲した波形状を有している。しかしながら、このことに限られることはなく、各凸部44および各凹部46の形状は任意である。例えば、上述した第1の実施の形態で図7および図8を用いて説明したように、周方向で見たとき、各凸部44および各凹部46は、それぞれ三角形状や矩形形状を有していてもよい。
【0050】
図13に示すように、このような隆起部40が、本体部32の取付溝50に取り付けられる。隆起部40は、取付溝50に嵌合されて取り付けられてもよい。また、隆起部40は、ボルト締結により取付溝50に取り付けられてもよい。また、隆起部40は、ばね部材を介して取付溝50に取り付けられてもよい。
【0051】
隆起部40は、本体部32と同一の材料により構成されていてもよい。隆起部40は、例えば、樹脂材料や金属材料により構成されていてもよい。
【0052】
本実施の形態によれば、隆起部40は、本体部32に着脱可能に構成されている。このことにより、本体部32および隆起部40を別個の部品として製造し、それらを組み立てることで、油かき装置20を製造することができる。このため、油かき装置20の製造を容易化することができる。また、隆起部40は、高温の油膜Fに晒される部分であるため、使用と共に劣化することが考えられる。このため、隆起部40を本体部32に対して着脱可能にすることで、メンテナンス時に隆起部40のみを交換することができる。このため、メンテナンス時に油かき装置20全体の交換を不要にすることができ、メンテナンスコストを低減することができる。
【0053】
(第3の実施の形態)
次に、図15図20を用いて、第3の実施の形態による油かき装置について説明する。
【0054】
図15図20に示す第3の実施の形態においては、隆起部が、複数の凸部および複数の凹部をそれぞれ有する第1の隆起部および第2の隆起部を含み、第2の隆起部が、第1の隆起部よりも下流側に配置されている点が主に異なり、他の構成は、図1図12に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図15図20において、図1図12に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
図15図17に示すように、本実施の形態による油かき装置20の隆起部40は、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bを含んでいる。第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞれ本体部32から上方(スラストランナ12の側)に隆起している。すなわち、第1の隆起部40aの頂部42aおよび第2の隆起部40bの頂部42bは、それぞれ本体部32の上端部32bよりも上方(スラストランナ12の側)に位置している。第1の隆起部40aの頂部42aおよび第2の隆起部40bの頂部42bは、軸方向(図15における上下方向)において同じ位置に位置していてもよい。第2の隆起部40bは、第1の隆起部40aよりも下流側(図15における左側)に配置されている。すなわち、第2の隆起部40bは、上端部32bのうち第1の隆起部40aよりも下流側の位置に設けられている。第1の隆起部40aと第2の隆起部40bとの間には、隆起部間溝41が設けられている。また、第1の隆起部40aの頂部42aとランナ摺動面12aとの間には、間隙Gaが設けられ、第2の隆起部40bの頂部42bとランナ摺動面12aとの間には、間隙Gbが設けられている。軸方向における間隙Gaの寸法と軸方向における間隙Gbの寸法は、等しくてもよい。
【0056】
図16および図17に示すように、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞれ複数の凸部44a、44bおよび複数の凹部46a、46bを有している。図示された例においては、周方向で見たとき、各凸部44a、44bおよび各凹部46a、46bは、それぞれ湾曲した波形状を有している。しかしながら、このことに限られることはなく、各凸部44a、44bおよび各凹部46a、46bの形状は任意である。例えば、上述した第1の実施の形態で図7および図8を用いて説明したように、周方向で見たとき、各凸部44a、44bおよび各凹部46a、46bは、それぞれ三角形状や矩形形状を有していてもよい。
【0057】
各凸部44a、44bは、互いに同一の形状を有していてもよい。また、各凹部46a、46bは、互いに同一の形状を有していてもよい。図17に示す第1の隆起部40aの凸部44aの頂部45a(第1の隆起部40aの頂部42a)と凹部46aの底部47aとの間の寸法h2(軸方向における寸法)は、例えば1mm以上5mm以下であってもよい。図17に示す第1の隆起部40aの互いに隣り合う凸部44aの頂部45a間の寸法p2(径方向における寸法)は、例えば5mm以上20mm以下であってもよい。図17に示す第1の隆起部40aの互いに隣り合う凹部46aの底部47a間の寸法q2(径方向における寸法)は、図17に示す互いに隣り合う凸部44aの頂部45a間の寸法p2と等しくてもよく、例えば5mm以上20mm以下であってもよい。また、第2の隆起部40bは、第1の隆起部40aと同一の寸法を有していてもよい。
【0058】
図16および図17に示すように、周方向で見たとき、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凹部46aとが少なくとも部分的に重なるとともに、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凸部44bとが少なくとも部分的に重なっていてもよい。図示された例においては、第1の隆起部40aの凸部44aの頂部45aと第2の隆起部40bの凹部46bの底部47bとが、径方向において同じ位置に位置し、第1の隆起部40aの凹部46aの底部47aと第2の隆起部40bの凸部44bの頂部45bとが、径方向において同じ位置に位置している。しかしながら、このことに限られることはなく、第1の隆起部40aの凸部44aの頂部45aと第2の隆起部40bの凹部46bの底部47bとが、径方向において異なる位置に位置し、第1の隆起部40aの凹部46aの底部47aと第2の隆起部40bの凸部44bの頂部45bとが、径方向において異なる位置に位置していてもよい。
【0059】
本実施の形態によれば、隆起部40は、複数の凸部44a、44bおよび複数の凹部46a、46bをそれぞれ有する第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bを含み、第2の隆起部40bは、第1の隆起部40aよりも下流側に配置されている。このように複数の隆起部40a、40bを設けることにより、隆起部40a、40bの凸部44a、44bの下流側に、より多くの渦V2を発生させることができるとともに、油膜Fの流れを複雑化させることができる。このため、油膜Fを冷たい潤滑油Lと更に効率的に熱交換させることができ、油膜Fを更に効果的に冷却することができる。この結果、油膜Fの温度上昇をより一層低減することができる。
【0060】
とりわけ、本実施の形態によれば、周方向で見たとき、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凹部46aとが少なくとも部分的に重なるとともに、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凸部44bとが少なくとも部分的に重なっている。本発明者らは、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bをこのように配置した場合に、より多くの渦V2を発生させることができるとともに、油膜Fの流れをより一層複雑化させることができることを見出した。このため、このような場合に、油膜Fを冷たい潤滑油Lと更に効率的に熱交換させることができ、油膜Fを更に効果的に冷却することができる。この結果、油膜Fの温度上昇を更により一層低減することができる。
【0061】
また、図18に示すように、周方向で見たとき、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凹部46aとが重ならず、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凸部44bとが重ならなくてもよい。図18に示す例においては、第1の隆起部40aの凸部44aの頂部45aと第2の隆起部40bの凸部44bの頂部45bとが、径方向において同じ位置に位置し、第1の隆起部40aの凹部46aの底部47aと第2の隆起部40bの凹部46bの底部47bとが、径方向において同じ位置に位置している。
【0062】
このような場合であっても、複数の隆起部40a、40bを設けることにより、隆起部40a、40bの凸部44a、44bの下流側に、より多くの渦V2を発生させることができ、スラストパッド15から排出された油膜Fをかき乱すことができる。このため、油膜Fを冷たい潤滑油Lと効率的に熱交換させることができ、油膜Fを効果的に冷却することができる。この結果、油膜Fの温度上昇を低減することができる。
【0063】
更に、図19および図20に示すように、周方向で見たとき、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凸部44bとが少なくとも部分的に重なるとともに、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凹部46aとが重ならなくてもよい。図19および図20に示す例においては、周方向で見たとき、各凸部44a、44bおよび各凹部46a、46bは、それぞれ矩形形状を有している。また、周方向で見たとき、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凹部46aとが部分的に重なるとともに、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凸部44bとが部分的に重なっている。図19および図20に示す例においては、第1の隆起部40aの凸部44aの径方向における中央点と第2の隆起部40bの凹部46bの径方向における中央点とが、径方向において同じ位置に位置し、第1の隆起部40aの凹部46aの径方向における中央点と第2の隆起部40bの凸部44bの径方向における中央点とが、径方向において同じ位置に位置している。そして、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凸部44bとが部分的に重なるとともに、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凹部46aとが重なっていない。
【0064】
図20に示す第1の隆起部40aの凸部44aの頂部45aと凹部46aの底部47aとの間の寸法h3(軸方向における寸法)は、図20に示す第2の隆起部40bの凸部44bの頂部45bと凹部46bの底部47bとの間の寸法h4(軸方向における寸法)と等しくてもよく、例えば1mm以上5mm以下であってもよい。図20に示す第1の隆起部40aの凸部44aの幅寸法p3(径方向における寸法)は、図20に示す第2の隆起部40bの凹部46bの幅寸法q4(径方向における寸法)よりも大きくてもよく、例えば3.5mm以上14mm以下であってもよい。図20に示す第1の隆起部40aの凹部46aの幅寸法q3(径方向における寸法)は、図20に示す第2の隆起部40bの凸部44bの幅寸法p4(径方向における寸法)よりも小さくてもよく、例えば1.5mm以上6mm以下であってもよい。図20に示す第2の隆起部40bの凸部44bの幅寸法p4(径方向における寸法)は、図20に示す第1の隆起部40aの凹部46aの幅寸法q3(径方向における寸法)よりも大きくてもよく、例えば2.5mm以上10mm以下であってもよい。図20に示す第2の隆起部40bの凹部46bの幅寸法q4(径方向における寸法)は、図20に示す第1の隆起部40aの凸部44aの幅寸法p3(径方向における寸法)よりも小さくてもよく、例えば2.5mm以上10mm以下であってもよい。
【0065】
図19および図20に示す例においては、周方向で見たとき、第1の隆起部40aの凸部44aと第2の隆起部40bの凸部44bとが少なくとも部分的に重なるとともに、第1の隆起部40aの凹部46aと第2の隆起部40bの凹部46aとが重ならない。本発明者らは、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bをこのように配置した場合に、更により多くの渦V2を発生させることができるとともに、油膜Fの流れを更により一層複雑化させることができることを見出した。このため、このような場合に、油膜Fを冷たい潤滑油Lと更に効率的に熱交換させることができ、油膜Fを更に効果的に冷却することができる。この結果、油膜Fの温度上昇を更により一層低減することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態においては、隆起部40が、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bの二つの隆起部40a、40bを含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、隆起部40が、三つ以上の隆起部を含んでいてもよい。すなわち、第2の隆起部40bの下流側に、更なる隆起部が配置されていてもよい。
【0067】
(第4の実施の形態)
次に、図21を用いて、第4の実施の形態による油かき装置について説明する。
【0068】
図21に示す第4の実施の形態においては、隆起部が、本体部に着脱可能に構成されている点が主に異なり、他の構成は、図15図20に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図21において、図15図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施の形態による油かき装置20の隆起部40は、本体部32に着脱可能に構成されている。とりわけ、本実施の形態においては、第1の隆起部40aが、本体部32に着脱可能に構成されているとともに、第2の隆起部40bが、本体部32に着脱可能に構成されている。
【0070】
図21に示す例においては、本体部32の上端部32bのうち通油溝34の下流側(図21における左側)の位置に、第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bが設けられている。第2の取付溝50bは、第1の取付溝50aよりも下流側に設けられている。第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bは、通油溝34と同様、それぞれ径方向に延びている。第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bは、通油溝34と同様、本体部32の外側部32cから内側部32dまで貫通するように延びていてもよい。このような第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bが通油溝34の下流側に設けられることにより、第1の取付溝50aと通油溝34との間に、上方(スラストランナ12の側)に突出した突起部53が設けられる。また、第1の取付溝50aと第2の取付溝50bとの間に、上方(スラストランナ12の側)に突出した突起部54が設けられる。また、第2の取付溝50bの下流側に、上方(スラストランナ12の側)に突出した突起部55が設けられる。換言すると、通油溝34は、突起部35と突起部53との間に設けられており、第1の取付溝50aは、突起部53と突起部54との間に設けられており、第2の取付溝50bは、突起部54と突起部54との間に設けられている。
【0071】
本実施の形態においては、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞれ本体部32とは別体に構成されている。すなわち、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞれ本体部32とは異なる別個の部品として構成されている。その点を除けば、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、上述した第3の実施の形態と同様の構成を有していてもよい。
【0072】
図21に示すように、第1の隆起部40aが、第1の取付溝50aに取り付けられ、第2の隆起部40bが、第2の取付溝50bに取り付けられる。第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞれ第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bに嵌合されて取り付けられてもよい。また、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞれボルト締結により第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bに取り付けられてもよい。また、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bは、それぞればね部材を介して第1の取付溝50aおよび第2の取付溝50bに取り付けられてもよい。
【0073】
第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40は、互いに同一の材料により構成されていてもよい。また、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40は、本体部32と同一の材料により構成されていてもよい。第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40は、例えば、樹脂材料や金属材料により構成されていてもよい。
【0074】
本実施の形態によれば、隆起部40は、本体部32に着脱可能に構成されている。このことにより、本体部32および隆起部40(第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40b)を別個の部品として製造し、それらを組み立てることで、油かき装置20を製造することができる。このため、油かき装置20の製造を容易化することができる。また、隆起部40は、高温の油膜Fに晒される部分であるため、使用と共に劣化することが考えられる。このため、隆起部40を本体部32に対して着脱可能にすることで、メンテナンス時に隆起部40のみを交換することができる。このため、メンテナンス時に油かき装置20全体の交換を不要にすることができ、メンテナンスコストを低減することができる。
【0075】
なお、上述した実施の形態においては、隆起部40が、第1の隆起部40aおよび第2の隆起部40bの二つの隆起部40a、40bを含み、二つの隆起部40a、40bが、それぞれ本体部32に着脱可能に構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、二つの隆起部40a、40bのうちのいずれかが、本体部32に着脱可能に構成されていてもよい。また、隆起部40が、三つ以上の隆起部を含み、そのうちの任意の個数の隆起部が、本体部32に着脱可能に構成されていてもよい。
【0076】
以上述べた実施の形態によれば、立形回転電機の運転効率の低下を抑制しつつ、油膜の温度上昇を低減することができる。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1:立形回転電機、3:回転軸、10:スラスト軸受装置、11:スラストカラー、12:スラストランナ、14:軸受台、15:スラストパッド、20:油かき装置、22:支持部、30:油かき板、32:本体部、34:通油溝、40:隆起部、40a:第1の隆起部、40b:第2の隆起部、44、44a、44b:凸部、46、46a、46b:凹部、G、Ga、Gb:間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21