(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】工作機械及び工作機械の腐食低減方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240919BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B23Q11/10 Z
B23Q11/12 Z
(21)【出願番号】P 2021063941
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 慎也
(72)【発明者】
【氏名】田中 克敏
(72)【発明者】
【氏名】三塚 晴也
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122288(WO,A1)
【文献】特開2004-241765(JP,A)
【文献】特開2015-089606(JP,A)
【文献】特開平05-138492(JP,A)
【文献】特開2002-130590(JP,A)
【文献】特開2016-017685(JP,A)
【文献】実開昭55-100898(JP,U)
【文献】特開2006-292058(JP,A)
【文献】特開平07-320862(JP,A)
【文献】特開2015-178185(JP,A)
【文献】特開昭62-127578(JP,A)
【文献】特開2019-116003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0081776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10、12
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具又は被削材を支持して動く可動部を有しており、
前記可動部は、
当該可動部の温度を調整する液体が流れる流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されており、前記第1材料が、前記第1金属としてのアルミニウムからなる母材と、前記母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料である、構成部材と、
前記第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、前記流路内に露出する位置に着脱可能な着脱部材と、
を有して
おり、
前記着脱部材は、前記構成流路内に位置する
工作機械。
【請求項2】
工具又は被削材を支持して動く可動部を有しており、
前記可動部は、
当該可動部の温度を調整する液体が流れる流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されており、前記第1材料が、前記第1金属としてのアルミニウムからなる母材と、前記母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料である、構成部材と、
前記第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、前記流路内に露出する位置に着脱可能な着脱部材と、
を有しており、
前記着脱部材に挿通された雄ねじが、前記構成流路の内面に開口している雌ねじに螺合されている
工作機械。
【請求項3】
工具又は被削材を支持して動く可動部を有しており、
前記可動部は、
当該可動部の温度を調整する液体が流れる流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されており、前記第1材料が、前記第1金属としてのアルミニウムからなる母材と、前記母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料である、構成部材と、
前記第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、前記流路内に露出する位置に着脱可能な着脱部材と、
を有しており、
前記構成流路は、拡径部を有しており、当該拡径部の断面積は、当該拡径部の上流側の断面積及び当該拡径部の下流側の断面積それぞれよりも大きく、
前記着脱部材は、前記拡径部内に位置している
工作機械。
【請求項4】
前記拡径部の、流れ方向における長さが、前記着脱部材の前記流れ方向における長さの5倍以下である
請求項
3に記載の工作機械。
【請求項5】
工具又は被削材を支持して動く可動部を有しており、
前記可動部は、
当該可動部の温度を調整する液体が流れる流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されており、前記第1材料が、前記第1金属としてのアルミニウムからなる母材と、前記母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料である、構成部材と、
前記第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、前記流路内に露出する位置に着脱可能な着脱部材と、
を有しており、
前記構成流路は、流れ方向が屈曲する屈曲部を有しており、
前記着脱部材は、前記屈曲部にて露出している
工作機械。
【請求項6】
前記構成流路は、前記屈曲部につながっている行き止まりの滞留部を有している
請求項
5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第2金属がマグネシウム又はマグネシウム合金である
請求項1
~6のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項8】
工作機械の、工具又は被削材を支持して動く可動部が有している構成部材の腐食低減方法であって、
前記構成部材は、前記可動部の温度を調整する液体が流れる流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されており、
前記第1材料は、前記第1金属としてのアルミニウムからなる母材と、前記母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料であり、
前記第1金属の前記液体中におけるイオン化傾向よりも大きい前記液体中におけるイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されている着脱部材を、前記流路内に露出する位置に着脱可能に設け
、設けられた前記着脱部材は、前記構成流路内に位置する
工作機械の腐食低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業機械、産業機械用部品及び産業機械の腐食低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の産業機械において、液体が流れる流路を有しているものが知られている。流路を流れる液体としては、例えば、冷却液、切削液又は離型剤等が挙げられる。流路を流れる液体は、流路を構成している部材の腐食を促進することがある。この場合、流路を構成している部材の腐食に起因して、産業機械又は産業機械用部品の寿命が短くなる。特許文献1では、工作機械の温度を調整するための熱媒体液による腐食を低減するために、熱媒体液として所定の成分を有するものを利用することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、熱媒体液が特定の成分に限定される。通常、工場において冷却液としては水が用いられており、また、産業機械の種類によっては利用される冷却液の量は膨大である。従って、例えば、熱媒体液を特定の成分のものとすることは、コスト増大を招く。また、特許文献1の技術は、温度を調整する目的とは異なる目的に特化した成分を有する液体が流れる産業機械に適用することが困難である。
【0005】
従って、腐食の低減に関して有利な産業機械、産業機械用部品及び産業機械の腐食低減方法が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る産業機械は、流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されている構成部材と、前記第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、前記流路内に露出する位置に着脱可能な着脱部材と、を有している。
【0007】
本開示の一態様に係る産業機械用部品は、流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されている構成部材と、前記第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、前記流路内に露出する位置に着脱可能な着脱部材と、を有している。
【0008】
本開示の一態様に係る、産業機械が有している構成部材の腐食低減方法において、前記構成部材は、液体が流れる流路の少なくとも一部である構成流路を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されている。前記第1金属の前記液体中におけるイオン化傾向よりも大きい前記液体中におけるイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されている着脱部材を、前記流路内に露出する位置に着脱可能に設ける。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成又は手順によれば、交換可能な着脱部材を犠牲にして、構成部材の腐食を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)は、第1実施形態に係る産業機械の一部の構成を示す平面図、
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib線における断面図。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は変形例に係る着脱部材を示す断面図。
【
図4】産業機械の一例としての工作機械を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(産業機械及び流路の概要)
図1(a)は、実施形態に係る産業機械1の一部の構成を示す模式的な平面図である。
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib線における断面図である。
【0012】
これらの図には、便宜上、直交座標系D1-D2-D3を付している。この直交座標系と、鉛直方向との相対関係は任意である。ただし、便宜上、+D3側を鉛直上方として、上面又は下面のような用語を用いることがある。
【0013】
産業機械1は、産業の現場(例えば工場)において利用される種々の機械とされてよい。産業機械1としては、例えば、以下のものを例示できる。工作機械、成形機、産業用ロボット、プレス機、建設機械、農業機械、木工機械、鉱山機械、化学機械、環境装置、動力伝導装置、タンク、業務用洗濯機、ボイラ、原動機、プラスチック機械、風水力機械、運搬機械、製鉄機械及び産業車両。
【0014】
工作機械の典型的なものとしては、工具及び/又はワークの回転によってワークの切削、研削及び/又は研磨を行うものが挙げられる。このような工作機械としては、例えば、旋盤、フライス盤、形削り盤、平削り盤、ボール盤、中ぐり盤及び放電加工機が挙げられる。また、成形機としては、例えば、ダイカストマシン及びプラスチック射出成形機が挙げられる。産業用ロボットとしては、多関節ロボット(垂直多関節ロボット)、スカラロボット(水平多関節ロボット)、直交座標ロボット及びパラレルリンクロボットが挙げられる。
【0015】
産業機械1は、流体(液体を例に取る。)が流れる流路3を有している。流路3の用途は種々のものであってよい。換言すれば、流路3を流れる液体の種類(成分)は適宜なものとされてよい。
【0016】
例えば、液体は、温度の調整を目的とした温度調整液(例えば冷却液)であってよい。温度調整液は、加熱、保温及び冷却のいずれの役割を担うものであってもよく、状況に応じて役割が変化してもよい。また、温度調整液の温度の調整対象は、産業機械1自体であってもよいし、産業機械1が保持している部材(例えば、ワーク、工具又は金型)であってもよいし、これらの双方であってもよい。
【0017】
また、例えば、液体は、工作機械においてワーク及び/又は工具へ向けて供給される切削液であってもよい。ただし、切削液は、一般に、ワーク及び/又は工具の温度を調整する機能を担うことが多い。また、例えば、液体は、成形機において金型から製品を離しやすくするために金型に塗布される離型剤であってもよい。ただし、離型剤も金型の冷却を担うことがある。
【0018】
また、例えば、液体は、水であってもよいし、水溶液であってもよいし、水溶液以外のものであってもよい。なお、液体が水であるという場合、意図せずに混入する不純物の存在は無視されてよい。水溶液において、水が液体に占める割合は任意である。例えば、当該割合は、50質量%以上、80質量%以上又は90質量%以上とされてよい。
【0019】
産業機械1が種々のものであってよいこと、及び流路3の用途が種々のものであってよいことから理解されるように、流路3の形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、流路3は、液体を産業機械1内で循環させる流路であってもよいし、液体を産業機械1の外部へ供給するように一端が開放された流路であってもよい。流路3は、上下方向及び水平方向等の任意の方向に延びてよい。流路3は、直線状部分、湾曲部分(曲線状に曲がる部分)、屈曲部分(角部を構成しつつ曲がる部分)、支流に分岐する部分、及び/又は支流が合流する部分を有してよい。流路3の横断面(流れ方向に直交する断面)の形状及び/又は面積は、流路3の概ね全長に亘って一定であってもよいし、流れ方向の位置に応じて変化してもよい。流路3の横断面の形状は、円形、楕円形、矩形又は矩形以外の多角形等の適宜な形状とされてよい。流路3の断面積は、1mm2以上1m2以下の広い範囲内の任意の大きさとされてよいし、上記の範囲外の大きさとされても構わない。なお、上記の説明は、矛盾等が生じない限り、後述する流路3の一部(構成流路9又は拡径部15等)に援用されてよい。
【0020】
また、液体は、適宜な方法により流れが形成されてよい。例えば、産業機械1が有している不図示のポンプによって液体の流れが形成されてよい。この場合、ポンプは、流路3のうちの図示されている部分に対して、上流側に位置していてもよいし、下流側に位置していてもよい。また、液体は、産業機械1とは別の機械又は設備から産業機械1へ送出されることによって流れが形成されてもよい。また、液体は、重力によって流れが形成されてもよい。
【0021】
(構成部材及び構成流路)
産業機械1は、流路3の少なくとも一部を構成している産業機械用部品5(以下、単に「部品5」ということがある。)を有している。部品5は、流路3の少なくとも一部を構成している第1構成部材7A及び第2構成部材7B(以下、両者を区別せずに「構成部材7」ということがある。)を有している。流路3のうち、第1構成部材7A及び/又は第2構成部材7Bによって構成される部分を構成流路9というものとする。なお、本実施形態の説明とは異なり、2つの構成部材7の全体を構成部材として捉えたり、1つの構成部材7を産業機械用部品として捉えたりしてもよい。
【0022】
部品5(又は構成部材7)は、構成流路9を構成する限り、種々の産業機械1の任意の部位であってよい。例えば、構成部材7は、産業機械1のうち、動かない部位(固定部)を構成する部材であってもよいし、動く部位(可動部)を構成する部材であってもよい。また、構成部材7は、産業機械1のうち、相対的に体積が大きい部材であってもよいし、相対的に体積が小さい部材であってもよい。
【0023】
2つの構成部材7は、部品5の全体であってもよいし、一部であってもよい。
図1(a)及び
図1(b)は、各構成部材7の全体を示していると捉えられてもよいし、各構成部材7のうち一部が抽出されて示されていると捉えられてもよい。換言すれば、2つの構成部材7の全体は、図示のような直方体状を呈していてもよいし、直方体状とは全く異なる形状を呈していてもよい。
【0024】
別の観点では、構成部材7の形状及び寸法は任意である。例えば、構成部材7(又は部品5)は、産業機械1のいずれの部位であるかを想起できる形状を呈していてもよいし、そのような形状を呈していなくてもよい。前者について例を挙げると、構成部材7は、ワークを保持するテーブルの形状、工具を保持する主軸の形状、金型を保持するプラテンの形状、成形材料を金型内に押し出すプランジャの形状、又はロボットのアームの形状を呈していてよい。後者について例を挙げると、図示されているような直方体状を挙げることができる。また、例えば、構成部材7の最大長さ又は最小長さは、1cm以上10m以下の広い範囲内の任意の長さとされてよいし、上記の範囲外の長さとされても構わない。
【0025】
構成部材7は、適宜に構成流路9を構成してよい。図示の例では、2つの構成部材7が互いに固定されることによって、2つの構成部材7の間に構成流路9が構成されている。より詳細には、特に符号を付さないが、第1構成部材7Aは、溝(凹部)を有しており、第2構成部材7Bは、上記の溝の上方を塞いでおり、これにより、構成流路9が構成されている。特に図示しないが、2つの構成部材7同士の間には、パッキンが設けられていてもよい。
【0026】
図示の例とは異なり、2つの構成部材7のそれぞれに溝が形成されてもよい。1つの構成部材7が貫通孔を有することによって構成流路9が構成されてもよい。2つの構成部材7の間にスリットを有する3つ目の構成部材7が配置されて構成流路9が構成されてもよい。換言すれば、1つの構成流路を構成するための構成部材7の数は2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、実施形態の説明では、便宜上、2つの構成部材7によって1つの構成流路9が構成される態様を前提とした表現をすることがある。
【0027】
2つの構成部材7を互いに固定する態様は適宜なものとされてよい。図示の例では、2つの構成部材7は、互いに着脱可能に固定されている。具体的には、第1構成部材7Aに雌ねじ7aが形成されている。そして、第2構成部材7Bに挿通された不図示の雄ねじが雌ねじ7aに螺合されることによって2つの構成部材7が固定される。
【0028】
2つの構成部材7を着脱可能に固定する態様は、図示の例以外にも種々可能である。例えば、ボルト及びナットが用いられてもよいし、係合が利用されてもよいし、2つの構成部材7を締め付ける他の部材が用いられてもよい。また、2つの構成部材7は、溶接等によって着脱不可能に固定されても構わない。ただし、後述する着脱部材11が2つの構成部材7の間に配置される態様においては、2つの構成部材7が互いに着脱可能であると、着脱部材11の交換が容易化される。
【0029】
(構成部材の材料)
構成部材7は、金属(第1金属ということがある。)を含む材料(第1材料ということがある。)によって構成されている。ひいては、構成流路9の内面の一部又は全部は、第1材料によって構成されている。なお、構成部材7は、第1材料のみから構成されていてもよいし、一部が第1材料以外の材料によって構成されていてもよい。例えば、構成部材7は、産業機械1の外部に露出する面を有し、当該面に塗料が塗布されていてもよい。
【0030】
第1材料は、第1金属のみからなるものであってもよいし、第1金属以外の材料を含むものであってもよい。後者としては、例えば、第1金属からなる母材(マトリックス)と、母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料(MMC:Metal Matrix Composites)を挙げることができる。
【0031】
第1金属の種類は適宜なものとされてよい。例えば、第1金属は、アルミニウム、チタン、タングステン、銅、マグネシウム、鉄若しくはカルシウム、又はこれらの1つ以上を主成分とする合金とされてよい。なお、アルミニウム合金又はマグネシウム合金のように金属の名称を付して合金を呼称するときは、その名称が付された金属(アルミニウム又はマグネシウム)が主成分である。主成分は、例えば、その材料(ここでは合金)の50質量%以上又は80質量%以上を占める成分とされてよい。なお、他の材料についても、主成分の意味は同様とする。
【0032】
第1材料がMMCである場合において、MMCとしては、例えば、粒子を分散材とする粒子分散複合材料、及び繊維を分散材とする繊維強化複合材料を挙げることができる。分散材は、上記の他、ウィスカー(例えば毛状又は針状の結晶)とされてもよい。ただし、ウィスカーは、粒子の一種又は繊維の一種と捉えられてもよい。
【0033】
分散材としての粒子の形状は、適宜な形状とされてよく、例えば、繊維状、樹枝状、塊状又は球状とされてよい。粒子及びウィスカーの材料は、例えば、セラミック、セラミック以外の無機材料又は有機材料とされてよい。セラミックの主成分は、例えば、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム又は窒化アルミニウムとされてよい。また、繊維は、例えば、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維又はアクリル繊維とされてよい。
【0034】
母材としての第1金属の種類と、分散材の種類とは、適宜に組み合わされてよい。例えば、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金からなる母材と、セラミック(例えば炭化ケイ素)の分散材とが組み合わされてよい。このときの分散材の形態は、粒子、ウィスカー及び繊維のいずれであってもよい。
【0035】
(腐食の低減方法)
上記のように構成流路9の内面の少なくとも一部は、第1金属を含む第1材料によって構成されているから、腐食し得る。そこで、本実施形態では、流路3内に露出する位置に着脱可能な着脱部材11を設ける。着脱部材11は、金属(第2金属ということがある。)を含む材料(第2材料ということがある。)によって構成されている。第2金属としては、第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有しているものが選択される。
【0036】
着脱部材11を構成している第2金属は、相対的にイオン化傾向が大きいから、流路3内の液体に触れたときに電子を放ちやすい(広義の酸化を生じやすい。)。一方、構成部材7を構成している第1金属は、相対的にイオン化傾向が小さいから、第2金属が放った電子を受け取りやすい(広義の還元を生じやすい。)。従って、着脱部材11を犠牲にして、構成部材7の腐食を低減することができる。着脱部材11が腐食した場合においては、構成部材7を交換するのではなく、着脱部材11を交換すればよい。その結果、例えば、コストが削減される。
【0037】
ここでいうイオン化傾向は、厳密には、流路3を流れる液体中におけるものである。ただし、通常は、腐食が問題となる液体は、水又は水溶液である。従って、第1金属のイオン化傾向と第2金属のイオン化傾向との比較は、水中におけるイオン化傾向によって判定されて構わない。また、産業機械1自体の構成からは流路3を流れる液体の具体的な成分を特定できない場合においても、水中におけるイオン化傾向によって比較が行われてよい。以下の説明においても、特に断りが無い限り、イオン化傾向は、水中のものと捉えられてよい。
【0038】
第1金属及び第2金属の組み合わせは適宜なものとされてよい。金属のイオン化列の例を示すと、以下のとおりである。
Li>K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>(H2)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
従って、例えば、第1金属がAl又はAlを主成分とする合金である場合において、第2金属として、Mg又はMg合金が選択されてよい。その他にも、第1金属及び第2金属として種々の組み合わせが可能であることは明らかである。
【0039】
上記のようなイオン化傾向に関する相違を除いて、第1材料についての既述の説明は、第2材料に援用されてよい。例えば、第2材料は、第2金属のみからなるものであってもよいし、第2金属を含む複合材料(例えばMMC)であってもよい。
【0040】
(着脱部材の形状、寸法及び着脱態様等)
着脱部材11の形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、着脱部材11の形状は、概ね直方体状とされている。特に図示しないが、着脱部材11の形状は、四角柱(直方体)以外の柱体状であってもよいし、錐台状であってもよいし、錐体状であってもよい。これらの立体形状の底面の形状は、円形状又は多角形状とされてよい。また、着脱部材11は、構成流路9の形状に沿った形状であってもよい。例えば、図示の例では、着脱部材11は、L字に形成されていてもよい。また、着脱部材11は、体積に対して表面積が大きくなるような形状を有していてもよい。例えば、着脱部材11は、1以上のフィンを有していてもよい。
【0041】
着脱部材11の寸法は適宜に設定されてよい。例えば、流れ方向に直交する断面において、着脱部材11の断面積が構成流路9の断面積(着脱部材11の断面積を含む)に占める割合は、1/2未満であってもよいし(図示の例)、1/2以上であってもよい。例えば、当該割合は、1/5以上2/3以下とされてよい。着脱部材11の流れ方向に沿う方向の長さは、構成流路9の横断面(流れ方向に直交する断面)の円相当径よりも短くてもよいし(図示の例)、長くてもよい。なお、着脱部材11の流れ方向に沿う方向の長さは、例えば、着脱部材11の最も上流側の位置及び最も下流側の位置を構成流路9の中心線に直交する方向に上記中心線に投影した2点を仮定したときにおける上記2点間の上記中心線上の距離とされてよい。
【0042】
着脱部材11の構成部材7に対する着脱の態様は適宜なものとされてよい。図示の例では、着脱部材11は、貫通孔(符号省略)を有している。また、構成部材7(例えば第1構成部材7A)には、構成流路9の内面に開口する雌ねじ7bが形成されている。そして、上記貫通孔に挿通された雄ねじ19が雌ねじ7bに螺合されることによって、着脱部材11は構成部材7に対して着脱可能に取り付けられている。
【0043】
このような着脱態様において、雄ねじ19の数、寸法及び材料等は任意である。雄ねじ19の材料は、着脱部材11と同様に、構成部材7における第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有するものとされてもよいし、されなくてもよい。図示の例では、雌ねじ7bは、構成流路9の内面のうち下面に開口している。ただし、雌ねじ7bは、構成流路9の上面又は側面に開口していてもよい。構成流路9が湾曲又は屈曲し、かつ雌ねじ7bが側面に開口する場合、当該側面は、曲がりの内側の側面及び外側の側面のいずれであってもよい。
【0044】
図示の例以外の態様としては、例えば、着脱部材11が2つの構成部材7によって挟まれる態様を挙げることができる。また、例えば、着脱部材11が雄ねじ又は雌ねじを有する態様が挙げられる。また、例えば、着脱部材11が雄ねじそのものである態様が挙げられる。着脱部材11が嵌合する凹部が構成流路9の内面に形成され、着脱のときの位置決めに寄与してもよい。
【0045】
流路3において、着脱部材11の数は適宜に設定されてよく、例えば、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、構成流路9において、着脱部材11の数は適宜に設定されてよく、例えば、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、2以上の着脱部材11が設けられる場合において、流れ方向における着脱部材11同士の距離は任意である。また、図示の例とは異なり、流れ方向における位置が互いに重複する2以上の着脱部材11が、互いに異なる面(例えば上面及び下面)に設けられてもよい。着脱部材11は、流路3又は構成流路9において、上流端から下流端までの適宜な位置に配置されてよい。流路3の下流端に位置する着脱部材11については、通常、流路3を構成する部材の腐食を低減する機能は相対的に低くなる。ただし、下流端の着脱部材11は、流路3外の部材の腐食低減に寄与し得る。
【0046】
(構成流路の形状)
構成流路9において、着脱部材11が配置される部位の具体的な形状及び寸法等は任意である。図示の例では、以下のとおりである。
【0047】
構成流路9は、流れ方向が屈曲する屈曲部13を有している。そして、着脱部材11は、屈曲部13に位置している。換言すれば、着脱部材11は、屈曲部13に露出している。具体的には、屈曲部13は、特に符号を付さないが、直線状に延びている2つの部位を有しており、当該2つの部位は互いに交差(例えば直交)している。そして、着脱部材11は、2つの部位のうち、一方の部位の一部とも他方の部位の一部とも捉えることができる部分の内部に位置しているか(図示の例)、当該部位の内面を構成している。
【0048】
また、構成流路9は、拡径部15を有している。拡径部15の断面積は、拡径部15の上流側の断面積及び拡径部15の下流側の断面積(
図1(a)において点線で示されている部分の断面積)それぞれよりも大きい。なお、ここでいう断面積は、流れ方向に直交する横断面の面積である。そして、着脱部材11は、拡径部15に位置している。
【0049】
図示の例では、拡径部15は、特に符号を付さないが、断面積が一定の本体部分と、本体部分から離れるほど断面積が小さくなっているテーパ部分とを有している。テーパ部分は、より詳細には、平面視において端部側ほど幅が狭くなっている。さらに詳細には、テーパ部分は、平面視において端部が半円状とされている。図示の例とは異なり、拡径部15は、その全長に亘って断面積が一定であってもよいし、逆に、その全体に亘って断面積が変化してもよい。
【0050】
拡径部15の具体的な寸法は適宜に設定されてよい。例えば、拡径部15の断面積(本体部分又は最大値)は、拡径部15の上流側の断面積及び下流側の断面積のそれぞれに対して、1.1倍以上5倍以下、又は1.5倍以上5倍以下とされてよい。また、拡径部15の流れ方向における長さ(本体部分のみ、又はテーパ部分も含む全体)は、着脱部材11の流れ方向における長さの5倍以下とされてよい。なお、拡径部15の流れ方向における長さは、例えば、流路の中心線の長さとされてよい。以下、流路3の他の部分の流れ方向における長さも同様とする。
【0051】
屈曲部13には、行き止まりの流路となっている滞留部17が構成されている。滞留部17の形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、滞留部17は、屈曲部13の曲がりの外側の内面から外方へ延びている。具体的には、例えば、液体が矢印a1で示されている方向に流れるものとした場合において、滞留部17は、上流側から屈曲部13へ延びる部分(+D2側へ延びる部分)を延長したかのように延びていてよい。滞留部17の流れ方向における長さは、例えば、着脱部材11の流れ方向における長さの1/2以上2倍以下とされてよい。滞留部17の断面積は、例えば、屈曲部13の断面積と同等とされてよい。図示の例では、上述した拡径部15の断面積の説明が滞留部17の断面積に援用されてよい。滞留部17の形状は任意である。図示の例では、滞留部17の形状は、拡径部15のテーパ部分の形状と同様とされている。
【0052】
以上のとおり、実施形態に係る産業機械1は、構成部材7と、着脱部材11とを有している。構成部材7は、流路3の少なくとも一部である構成流路9を構成しており、第1金属を含む第1材料によって構成されている。着脱部材11は、第1金属のイオン化傾向よりも大きいイオン化傾向を有している第2金属を含む第2材料によって構成されており、流路3内に露出する位置に着脱可能である。
【0053】
従って、既述のように、着脱部材11を犠牲にして構成部材7の腐食を低減できる。この腐食低減方法は、例えば、冷却液、切削液及び離型剤等の種々の液体に対して適用することができる。また、別の観点では、例えば、腐食を低減することを目的として特定の成分を有する液体を選択する必要性が低減される。
【0054】
着脱部材11は、構成流路9内に位置してよい。
【0055】
この場合、例えば、着脱部材11が構成部材7と共に構成流路9の内面を構成する部材である態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、着脱部材11の形状及び寸法の自由度が高く、また、構成部材7に対する着脱も容易である。また、例えば、着脱部材11が構成部材7の上流側又は下流側に位置する部材である態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、着脱部材11と構成部材7との距離が近い。その結果、着脱部材11による腐食低減効果が効率的に奏されることが期待される。また、例えば、着脱部材11によって液体の流れを乱して流れを複雑化させることができる。その結果、着脱部材11から放出された電子が、構成流路9のうちの着脱部材11の付近の部分に受け取られ易くなる。すなわち、着脱部材11の周囲の腐食低減効果が向上する。
【0056】
構成部材7を構成する第1材料は、第1金属からなる母材と、母材に分散された分散材とを有する金属基複合材料であってよい。
【0057】
この場合、例えば、構成部材7の強度を維持しつつ軽量化を図ることができる。構成部材7が産業機械1の可動部を構成している場合においては、例えば、軽量化によって、可動部の慣性力が低減され、制御性が向上する。その結果、例えば、産業機械1が工作機械である場合においては、加工精度が向上する。
【0058】
第1金属は、アルミニウム又はアルミニウム合金であってよい。
【0059】
この場合、例えば、MMCを用いたことによる軽量化の効果が向上する。例えば、アルミニウム系のMMCの密度は、アルミニウムの密度(約2.7g/cm3)と同等の密度(例えば約2.8g/cm3)とすることができる。一方、産業機械1に用いられる金属としては、例えば、鋳鉄(密度:例えば約7.2g/cm3)及び鋼(密度:例えば約7.8g/cm3)が挙げられる。従って、従来の約1/2以下まで軽量化できる。また、アルミニウム系のMMCの熱膨張係数は、例えば、約10ppm/℃であり、アルミニウムの熱膨張係数(約24ppm/℃)よりも低く、ステンレス鋼の熱膨張係数(例えば約10ppm/℃)と同程度である。従って、軽量化の観点だけでなく、熱変形の観点からもアルミニウム系のMMCは好適である
【0060】
第2金属は、マグネシウム又はマグネシウム合金とされてよい。
【0061】
この場合、例えば、マグネシウムは、アルミニウムよりも軽量であることから、着脱部材11を設けたことによる産業機械1の重量の増加が低減される。構成部材7の具体的な構成によっては、液体が実際に流れる断面積が従来技術におけるものと同等になるように構成部材7の一部の体積が着脱部材11によって置換される結果、従来技術よりも軽量化されることも期待される。また、マグネシウムは、工業的に広く利用されており、入手が容易である。
【0062】
着脱部材11は、着脱部材11に挿通された雄ねじ19が、構成流路9の内面に開口している雌ねじ7bに螺合されることによって、構成部材7に取り付けられてよい。
【0063】
この場合、着脱部材11の着脱のための構成が簡素である。また、着脱部材11は、単に貫通孔を有していればよいから、着脱部材11の形状及び寸法の自由度が高い。別の観点では、着脱部材11のコストが削減される。
【0064】
構成流路9は、拡径部15を有してよい。拡径部15の断面積は、拡径部15の上流側の断面積及び拡径部15の下流側の断面積それぞれよりも大きい。着脱部材11は、拡径部15内に位置してよい。
【0065】
この場合、例えば、実質的に液体が流れる断面積(構成流路9の断面積から着脱部材11の断面積を除いた断面積)の確保が容易である。また、拡径部15を形成したことによって、拡径部15内における着脱部材11の上流側部分及び下流側部分に、実質的に液体が流れる断面積が、拡径部15の上流側及び下流側の断面積よりも大きい部分が構成され得る。また、着脱部材11の位置においても、実質的に液体が流れる断面積を、拡径部15の上流側又は下流側の断面積よりも大きくすることが可能である。このように断面積が大きくなった部分においては、流速が減じられる。その結果、着脱部材11から放出された電子が、構成流路9のうちの着脱部材11の付近の部分に受け取られやすい。すなわち、着脱部材11の周囲の腐食低減効果が向上する。
【0066】
拡径部15の、流れ方向における長さは、着脱部材11の流れ方向における長さの5倍以下とされてよい。
【0067】
この場合、例えば、拡径部15は比較的短いといえる。従って、例えば、拡径によって流速が減じられる範囲が短くなる。その結果、着脱部材11の周囲における腐食低減効果が更に向上する。また、例えば、拡径部15を設けたことによる流路3の設計変更も低減され、部品5の強度を確保することが容易である。
【0068】
構成流路9は、流れ方向が屈曲する屈曲部13を有してよい。着脱部材11は、屈曲部13にて露出していてよい。
【0069】
屈曲部13においては、例えば、液体が滞留したり、渦の発生によって流れが複雑化したりする。これにより、着脱部材11から放出された電子が、構成部材7の着脱部材11の周囲の部分に受け取られやすくなる。ひいては、着脱部材11の周囲における腐食低減効果が向上する。
【0070】
構成流路9は、屈曲部13につながっている行き止まりの滞留部17を有していてよい。
【0071】
この場合、例えば、屈曲部13における滞留及び/又は流れの複雑化が増長される。その結果、着脱部材11の周囲における腐食低減効果が更に向上する。
【0072】
(変形例)
以下に種々の変形例を示す。以下の説明では、基本的に実施形態との相違部分についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、実施形態と同様とされたり、実施形態から類推されたりしてよい。また、実施形態の構成と対応する構成については、実施形態と相違点があっても、便宜上、実施形態と同一の符号を付すことがある。
【0073】
図2は、変形例に係る構成流路9Aの形状を示す平面図であり、
図1(a)に対応している。すなわち、
図2は、第1構成部材7Aの平面図である。ただし、
図1(a)とは異なり、着脱部材11が点線で示され、雄ねじ19は図示が省略され、雌ねじ7bが図示されている。
【0074】
構成流路9Aは、直線状部分(符号省略)を有している。そして、この直線状部分に着脱部材11が着脱される。直線状部分は、実施形態と同様に、拡径部15を有してよい。このような流路の形状であっても、当然に、実施形態と同様に、腐食低減の効果が得られる。この変形例では、例えば、実施形態に比較して、着脱部材11の周囲で液体が滞留しにくいから、腐食低減効果が奏される範囲を着脱部材11の下流側へ広げることができる。
【0075】
なお、
図2は、実施形態の産業機械1とは別の種類の産業機械の一部を示していると捉えられてもよいし、実施形態の産業機械1のうちの
図1(a)が示した範囲とは異なる範囲を示した図と捉えられてもよい。後者の場合において、
図2は、実施形態の部品5とは別の種類の部品の一部又は全部を示していると捉えられてもよいし、実施形態の部品5のうちの
図1(a)が示した範囲とは異なる範囲を示した図と捉えられてもよい。上記において、部品5の語は、構成部材7の語に置換されてもよい。また、別の観点では、
図1(a)に示した流路3と、
図2の流路3とは、同一の流路の別個の部位であってもよいし、全く異なる流路であってもよい。上記の説明は、矛盾等が生じない範囲で、
図3(a)及び
図3(b)にも援用されてよい。
【0076】
図3(a)は、変形例に係る構成部材7C及び7D並びに着脱部材11Aを示す断面図である。
【0077】
この変形例では、構成部材7Cは、図の左右方向に延びる貫通孔からなる構成流路9Cを有している。同様に、構成部材7Dは、図の左右方向に延びる貫通孔からなる構成流路9Dを有している。また、着脱部材11Aは、図の左右方向に延びる貫通孔11aを有している。そして、着脱部材11Aは、構成部材7Cと7Dとの間に配置されている。構成流路9C、貫通孔11a及び構成流路9Dは、互いにつながって流路3の一部又は全部を構成している。このように、着脱部材11Aは、構成流路9C又は9D内に位置するのではなく、構成流路9C又は9Dの上流側の流路を構成してよい。
【0078】
このような態様において、着脱部材11Aは、例えば、構成部材7C及び7Dが着脱可能に互いに固定されることによって構成部材7C及び7Dに挟まれて保持されてもよいし、構成部材7C及び/又は7Dにねじなどによって固定されてもよい。また、着脱部材11Aの形状及び寸法は任意である。例えば、貫通孔11aの貫通方向の長さは、貫通孔11aの径(円形でない場合は円相当径)よりも大きくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、小さくてもよい。貫通孔11aの断面積は、構成流路9C及び9Dの断面積それぞれに対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。
【0079】
図3(b)は、変形例に係る構成部材7E及び7F並びに着脱部材11Bを示す断面図である。
【0080】
この変形例では、実施形態と同様に、構成部材7Eと7Fとの間に構成流路9Eが構成される。ただし、着脱部材11Bは、構成流路9E内に位置するのではなく、構成部材7E及び7Fと共に構成流路9Eを構成している。
【0081】
(産業機械の具体例)
既述のように、産業機械1は種々のものとされてよい。以下では、産業機械1の一例としての工作機械について説明する。
【0082】
図4は、工作機械1Aの構成を模式的に示す側面図である。
【0083】
工作機械1Aは、工具101によって被削材103を削るように構成されている。より詳細には、図示の例では、被削材103は、z方向に平行な不図示の軸を回転軸として回転される。この回転している被削材103に工具101としての旋削工具(バイト)が当接することによって、被削材103が切削される。すなわち、図示の工作機械1Aは、旋盤の一種といえる。
【0084】
工作機械1Aは、いわゆるセルフカットを行うように構成されていてよい。すなわち、工作機械1Aは、工具101によって工作機械1A自体を削ってよい。より詳細には、例えば、被削材103を保持する面板51が切削されてよい。このようなセルフカットは、例えば、面板51の形状の精度を向上させ、ひいては、被削材103の加工精度を向上させる。なお、被削材103に供される工具101と、セルフカットに供される工具101とは、異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0085】
工作機械1Aは、例えば、工具101及び被削材103を保持する機械本体53と、機械本体53を制御する制御部55とを有している。
【0086】
機械本体53は、例えば、被削材103を上述のように回転させるとともに、工具101と被削材103とを近接及び離反させるように相対移動させる。被削材103の回転軸の向き、工具101及び被削材103の相対移動の方向、並びに工具101及び被削材103の絶対座標系における移動の有無及びその方向等は、適宜に設定されてよい。
【0087】
図示の例では、被削材103は、既述のように、z方向に平行な軸回りに回転される。また、工具101及び被削材103は、z方向及びx方向に相対移動する。より詳細には、工具101が絶対座標系においてx方向に移動し、被削材103が絶対座標系においてz方向に移動する。これにより、被削材103は、例えば、+z側の面及び/又はz軸に平行な軸回りの外周面が切削される。
【0088】
上記のような回転及び相対移動を実現する構成は、公知の種々の構成と同様とされたり、公知の構成を応用したものとされたりしてよい。図示の例では、以下のとおりである。
【0089】
機械本体53は、基台57と、エアスライド等によって基台57上をz方向に高精度に直線移動(水平移動)可能なZ軸移動台59と、Z軸移動台59上に搭載された主軸台61とを有している。主軸台61には、z軸に平行に配置された主軸63と、当該主軸63をその軸回りに回転させる駆動力を生じる主軸モータ65が設けられている。主軸63の主軸端(加工が行われる側の端部)には概略板状の面板51が取り付けられている。面板51は、主軸63とは反対側に、被削材103を吸着して保持する吸着面69を有している。Z軸移動台59は送りねじ21によってz方向に駆動され、送りねじ21は回転検出器23を有するZ軸モータ25によって回転駆動される。このような構成により、被削材103は、面板51と共に主軸63によってz方向に平行な軸の回りに回転され、また、面板51と共にz方向に移動する。
【0090】
吸着面69が面する方向には、x軸方向に移動可能なX軸移動台27と、X軸移動台27上に搭載された刃物台29とが設けられている。刃物台29には工具101が取り付けられている。図示は省略するが、X軸移動台27は、Z軸移動台59と同様に、送りねじ及び回転検出器を有するX軸モータによってx方向に駆動される。このような構成により、工具101は、刃物台29と共にx方向(別の観点では主軸63の径方向)に移動する。
【0091】
制御部55は、例えば、特に図示しないが、NC装置及びドライバ(例えばサーボドライバ)を含んで構成されている。制御部55は、例えば、主軸63(別の観点では主軸モータ65)の回転数、Z軸移動台59(別の観点ではZ軸モータ25)の速度及び位置、X軸移動台27(別の観点では不図示のX軸モータ)の速度及び位置を制御する。
【0092】
主軸63の制御は、例えば、主軸モータ65の回転を検出する不図示の回転検出器の検出値に基づくフィードバック制御であってもよいし、フィードバック制御を行わないオープンループ制御であってもよい。Z軸移動台59及びX軸移動台27の制御は、例えば、これらの移動台の位置検出に基づくフィードバック制御を行うクローズドループ制御である。ただし、工作機械1Aの送り機構に要求される精度によっては、モータのエンコーダからの検出値に基づくフィードバック制御を行うセミクローズドループ制御であってもよいし、フィードバック制御を行わないオープンループ制御であってもよい。
【0093】
工作機械1Aの加工精度は適宜に設定されてよい。例えば、工作機械1Aは、ナノレベルの加工を実現可能なものであってよい。そのような工作機械は、本願出願人によって既に実用化されている(例えばULGシリーズ及びULCシリーズ。)。より詳細には、例えば、Z軸移動台59及びX軸移動台27の位置決め精度は0.1nm以上1nm以下とされてよい。また、主軸63の回転数の精度は0.01rpmとされてよい。このような超精密加工装置によって切削される被削材103としては、例えば、ガラス製若しくは樹脂製のレンズ、又はレンズを成形するための金型を挙げることができる。
【0094】
実施形態の説明では、構成流路9及び着脱部材11が設けられる部品5(又は構成部材7)は、産業機械1のうち、動かない部位(固定部)の一部又は全部であってもよいし、動く部位(可動部)の一部又は全部であってもよいことについて述べた。工作機械1Aにおいて、基台57は、固定部の一例である。また、Z軸モータ25は、その全体は移動しないから、固定部の一例として捉えられてよい。ただし、Z軸モータ25のロータは、可動部として捉えられても構わない。また、面板51、Z軸移動台59、主軸台61、主軸63、送りねじ21、X軸移動台27及び刃物台29は、それぞれ可動部の一例である。
【0095】
流路3は、上述した種々の固定部及び可動部のうち、少なくとも1つに設けられていてよい。1つの流路3は、1つの部位(固定部又は可動部)内にのみ位置していてもよいし、2以上の部位に跨って位置していてもよい。1つの産業機械1(工作機械1A)は、1つの流路3のみを有していてもよいし、互いにつながっていない複数の流路3を有していてもよい。複数の流路3の一部又は全部は、互いに同一種類の液体が流れるものであってもよいし、互いに異なる種類の液体が流れるものであってもよい。複数の流路3は、その全てが着脱部材11を有していてもよいし、一部の流路3のみが着脱部材11を有していてもよい。
【0096】
(実施例)
実験により着脱部材11の作用を調べた。その結果を以下に示す。
【0097】
実験方法は、以下のとおりである。
図1(a)及び
図1(b)に示された構成部材7及び着脱部材11の形状と同様の形状を有する実施例に係る構成部材7及び着脱部材11を試作した。拡径部15の平面視における幅は16mmとした。拡径部15の深さは15mmとした。屈曲部13の長さ(中心線上の長さ)については、両端のテーパ状部分も含めた長さを42mmとし、両端のテーパ状部分を除いた長さを26mmとした。すなわち、テーパ状部分は、平面視において半径8mmの半円状とされた。このような寸法の拡径部15に対する着脱部材11の相対的な大きさは、概ね、
図1(a)及び
図1(b)におけるものと同様とされた。構成流路9に温度が40℃の水を流れさせた。構成部材7の材料は、アルミニウムを母材とするMMCとした。着脱部材11の材料はマグネシウムとした。そして、アルミニウム及びマグネシウムの溶出量を測定した。
【0098】
測定の結果、1411時間の時点において、アルミニウムの溶出は1ppm以下であった。一方で、マグネシウムの溶出は26ppm(0.075g)であった。
【0099】
ここで、例えば、流路3を流れる液体が23℃の冷却液であると仮定する。腐食は温度が高いほど促進される。従って、上記の26ppmと同程度の腐食が生じる時間を1411時間から換算すると、4000時間程度となる。従って、着脱部材11の交換時期は、年に1回程度で済むことが予想できた。
【0100】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0101】
例えば、実施形態では、着脱部材は、腐食の犠牲となる部材であることから、安価になるように簡素な構成とされ、また、基本的に腐食低減の作用を除いて何らの機能も有さない部材とされた。ただし、着脱部材は、何らかの機能を担う部材であってもよい。例えば、着脱部材は、構成部材に比較して硬さ及び/又は弾性率が低い材料によって構成され、2つの構成部材間に位置してガスケットのように機能してもよい。また、例えば、着脱部材は、流路の断面積が絞られるオリフィスの少なくとも一部を構成する部材として利用されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…産業機械、3…流路、7…構成部材、9…構成流路、11…着脱部材。