(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/10 20060101AFI20240919BHJP
H01G 9/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01G9/10
H01G9/10 C
H01G9/12 A
(21)【出願番号】P 2021089798
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】近藤 稜大
(72)【発明者】
【氏名】米田 満
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝也
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓実
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/045072(WO,A1)
【文献】実開昭53-001638(JP,U)
【文献】国際公開第2011/114632(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/10
H01G 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
電解液を含浸した前記コンデンサ素子を内部に収容したケースと、
前記ケースの開口を封止するとともに、前記ケースの内部と外部とを連通する貫通孔が形成された封口体と、
前記封口体の外部側の表面に沿って形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は、前記ケースの開口端部に接着した第1部分と、前記第1部分よりも前記ケースの径方向の中心軸側に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分における前記樹脂層の厚みは、前記第1部分における前記樹脂層の厚みよりも小さ
く、
前記第1部分および前記第2部分は、前記封口体と反対側の表面が前記封口体の外部側の表面に対して平行に形成されており、前記第2部分の前記封口体と反対側には空間が形成されている、
ことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記封口体は、前記コンデンサ素子から前記貫通孔を挿通して引き出された一対のリード端子を有し、
前記第1部分は前記一対のリード端子にケース径方向外方で接する領域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記封口体は、前記コンデンサ素子から前記貫通孔を挿通して引き出された一対のリード端子を有し、
前記第2部分は前記一対のリード端子にケース径方向内方で接する領域に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記ケースは、前記開口端部が前記ケースの軸方向の内部側かつ前記径方向の中心軸側に向かうカーリング部分を有し、
前記第1部分は、前記カーリング部分の表面の少なくとも一部に接着していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第1部分は、前記開口端部の先端側全部に接着していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記第1部分と前記第2部分とが一体構造となっていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記樹脂層はエポキシ樹脂からなることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
コンデンサ素子と、
電解液を含浸した前記コンデンサ素子を内部に収容したケースと、
前記ケースの開口を封止するとともに、前記ケースの内部と外部とを連通する貫通孔が形成された封口体と、
前記封口体の外部側の表面に沿って形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は、前記ケースの開口端部に接着した第1部分と、前記第1部分よりも前記ケースの径方向の中心軸側に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分における前記樹脂層の厚みは、前記第1部分における前記樹脂層の厚みよりも小さく、
前記封口体は、前記コンデンサ素子から前記貫通孔を挿通して引き出された一対のリード端子を有し、
前記第1部分は前記一対のリード端子にケース径方向外方で接する領域に形成され、
前記第2部分は前記一対のリード端子にケース径方向内方で接する領域に形成された電解コンデンサの製造方法であって、
前記封口体の前記外部側の表面全体に樹脂を均一に塗布して硬化させ、前記第1部分の下地部分と前記第2部分を形成する第1工程と、
前記第1工程の後、前記リード端子より外周部に樹脂を再度塗布し硬化させ、前記第1部分を形成する第2工程と、
を有し、
前記第2部分の前記封口体と反対側に空間を形成することを特徴とする
電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
コンデンサ素子と、
電解液を含浸した前記コンデンサ素子を内部に収容したケースと、
前記ケースの開口を封止するとともに、前記ケースの内部と外部とを連通する貫通孔が形成された封口体と、
前記封口体の外部側の表面に沿って形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は、前記ケースの開口端部に接着した第1部分と、前記第1部分よりも前記ケースの径方向の中心軸側に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分における前記樹脂層の厚みは、前記第1部分における前記樹脂層の厚みよりも小さく、
前記封口体は、前記コンデンサ素子から前記貫通孔を挿通して引き出された一対のリード端子を有し、
前記第1部分は前記一対のリード端子にケース径方向外方で接する領域に形成され、
前記第2部分は前記一対のリード端子にケース径方向内方で接する領域に形成された電解コンデンサの製造方法であって、
前記封口体の前記外部側の表面のうち、中心から前記リード端子より内周までの範囲に樹脂を塗布して硬化させ、前記第2部分を形成する第1工程と、
前記リード端子よりも外周部に前記第2部分よりも厚くなるように樹脂を塗布して硬化させ、前記第1部分を形成する第2工程と、
を有し、
前記第2部分の前記封口体と反対側に空間を形成することを特徴とする
電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子が収容されたケースの開口を封止する封口体を備えた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンデンサ素子(特許文献1ではキャパシタ素子)と、コンデンサ素子と電解液とを収容したケースと、ケースの開口部を封止した封口体とを有するコンデンサが開示されている。そして、当該コンデンサは、封口体の外表面と接する部分に設けられた樹脂層(特許文献1ではコーティング層)をさらに有している。
【0003】
一般に、電解コンデンサは高温環境下に置かれた場合、封口体が酸化劣化することによりコンデンサの密閉性が損なわれ、電解液の液漏れを生じさせるおそれがある。また、高温環境下においては電解液の溶媒が気化してガスとなり、ガスが封口体を透過して外部に放出されることでコンデンサの機能が低下する。このように、封口体がコンデンサの寿命特性に大きな影響を及ぼしている。
【0004】
特許文献1のコンデンサでは、封口体の外表面と接する部分に一様な厚みの樹脂層を設けることにより、封口体の酸化劣化を抑制するとともに、ガスが封口体を透過して外部に放出されることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一様な厚みの樹脂層によってガスの封口体の透過が過度に抑制されることにより、ケースの内部には発生したガスの多くが留まる。一般的に封口体はゴムや樹脂などを構成成分としており、ケースの内部にガスが充満すると封口体が膨張し易くなる。封口体は膨張すると割れてしまうことがあり、コンデンサの密閉性を維持できない。また、封口体の膨張によって封口体を貫通するリード端子や電極箔に物理的負荷がかかることがあり、コンデンサの性能に悪影響を及ぼす。
【0007】
そこで、本発明は、コンデンサの封口体の酸化劣化を抑制しつつ、封口体の膨張を抑制することで長寿命化を実現する電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の電解コンデンサは、コンデンサ素子と、電解液を含浸した前記コンデンサ素子を内部に収容したケースと、前記ケースの開口を封止するとともに、前記ケースの内部と外部とを連通する貫通孔が形成された封口体と、前記封口体の外部側の表面に沿って形成された樹脂層と、を備え、前記樹脂層は、前記ケースの開口端部に接着した第1部分と、前記第1部分よりも前記ケースの径方向の中心軸側に位置する第2部分とを有し、前記第2部分における前記樹脂層の厚みは、前記第1部分における前記樹脂層の厚みよりも小さい。
【0009】
ケースの内部において電解液が気化して発生した気体が充満することにより封口体はケースの外部側に向かって膨張しようとする。そして、封口体の膨張が進むと、封口体が破損するおそれがある。第1の発明によれば、ケースの開口端部に接着している樹脂層の第1部分によって封口体の外部側への移動は規制され、封口体の膨張が物理的に抑制される。また、第1部分と第2部分とによってケースの内部の気体の外部への漏れを抑制しつつ、第2部分の厚みを第1部分よりも小さくすることによって、ケースの内部の気体を、第2部分を通して適度に外部に逃がすことができる。これにより、封口体の膨張の原因となるケースの内部における気体の充満を抑制することができる。これらにより、コンデンサの封口体の酸化劣化を抑制しつつ、封口体の膨張を抑制することができ、コンデンサの長寿命化を実現できる。
【0010】
第2の発明の電解コンデンサは、第1の発明において、前記封口体は、前記コンデンサ素子から前記貫通孔を挿通して引き出された一対のリード端子を有し、前記第1部分は前記一対のリード端子にケース径方向外方で接する領域に形成されている。
【0011】
第2の発明によれば、第1部分は、ケースの開口端部に接着するとともに一対のリード端子にケース径方向外方で接する領域に形成されているため、一対のリード端子のケース径方向外方の封口体表面は、相対的に厚みが大きい第1部分の樹脂層で覆われる。その結果、封口体の外部側への移動はより強固に規制される。このため、封口体の膨張をさらに抑制することができる。
【0012】
第3の発明の電解コンデンサは、第1または第2の発明において、前記第2部分は前記一対のリード端子にケース径方向内方で接する領域に形成されている。
【0013】
第3の発明によれば、第2部分は、一対のリード端子にケース径方向内方で接する領域に形成されているため、一対のリード端子よりもケース径方向内方の封口体表面は相対的に厚みが小さい第2部分の樹脂層で覆われ、当該領域を通してケース内部の気体を適度かつ確実に逃がすことができる。
【0014】
第4の発明の電解コンデンサは、第1~第3の発明において、前記ケースは、前記開口端部が前記ケースの軸方向の内部側かつ前記径方向の中心軸側に向かうカーリング部分を有し、前記第1部分は、前記カーリング部分の表面の少なくとも一部に接着している。
【0015】
第4の発明によれば、第1部分は、カーリング部分の表面に接着しているため、封口体の外部側への移動はより強固に規制される。このため、封口体の膨張をさらに抑制することができる。
【0016】
第5の発明の電解コンデンサは、第1~第4の発明において、前記第1部分は、前記開口端部の先端側全部に接着している。
【0017】
第5の発明によれば、開口端部の先端側全部に接着している樹脂層の第1部分によって、封口体の外部側への移動はより強固に規制される。このため、封口体の膨張をさらに抑制することができる。
【0018】
第6の発明の電解コンデンサは、第1~第5の発明において、前記第1部分と前記第2部分とが一体構造となっている。
【0019】
第6の発明によれば、第1部分と第2部分とが分離した構造となっている場合と比べて、封口体の外部側の表面のより広い範囲において、外部側への移動を規制することができる。また、封口体の酸化劣化をより広い範囲で抑制することができる。このため、コンデンサの封口体の酸化劣化をより抑制しつつ、封口体の膨張をさらに抑制することができる。
【0020】
第7の発明の電解コンデンサは、第1~第6の発明において、前記樹脂層はエポキシ樹脂からなる。
【0021】
第7の発明によれば、耐熱性及び耐薬品性の優れた樹脂層を提供することができる。このため、フローはんだ工程やリフローはんだ工程などの高温の熱負荷による樹脂層の変性を抑制することができるとともに、コンデンサ内部の電解液との接触による樹脂層の劣化を抑制することができる。また、エポキシ樹脂は電気絶縁性にも優れており、封口体を一対のリード端子が挿通する構成の場合に、樹脂層を介したリード端子間の導通を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンデンサの封口体の酸化劣化を抑制しつつ、封口体の膨張を抑制することで、コンデンサの長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る電解コンデンサの構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る電解コンデンサの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2の実線矢印方向Aから見た電解コンデンサの平面図である。
【
図4】(a)第2実施形態に係る電解コンデンサの構成を示す断面図であり、(b)第2実施形態に係る電解コンデンサの構成を示す平面図である。
【
図5】第3実施形態に係る電解コンデンサの構成を示す断面図である
【
図6】信頼性試験の電気特性の経時変化を示すグラフであって、(a)静電容量の経時変化を示すグラフ、(b)損失角の正接の経時変化を示すグラフ、(c)漏れ電流の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサ1の構成について、
図1~3を参照しつつ説明する。
【0025】
電解コンデンサ1は、
図1および
図2に示すように、コンデンサ素子2、ケース3、封口体4および樹脂層7を含む。
【0026】
コンデンサ素子2は、電解液20を含浸している。コンデンサ素子2は、図示しない陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して円筒形に巻回して形成されている。陽極箔および陰極箔はアルミニウム箔の表面を粗面化したものであり、陽極箔は当該表面に陽極酸化皮膜を形成したものである。陽極箔および陰極箔は、不図示のリードタブを介して、リード端子11およびリード端子12に接続されている。
【0027】
電解液20は、溶媒および溶質を含む。電解液20は、酸化防止剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0028】
ケース3は、電解液20を含浸したコンデンサ素子2を内部に収容するものである。ケース3は、底面を有する略円筒形状であって、金属(例えば、アルミニウム等)からなる。ケース3は、底面と反対側において開口しており、そのケース3の開口する側の端部を開口端部13とする。開口端部13は、円筒形状の開口の全周にわたって延びている。そして、ケース3は、開口端部13がケース3の軸方向の内部側かつ径方向の中心軸30側に向かうようにカーリング加工されたカーリング部分14を有する。なお、ケース3の軸方向の内部側とは、中心軸30に沿って開口端部13よりもコンデンサ素子2側のことである。
【0029】
封口体4は、ケース3の開口部を封止する部材である。封口体4は、絶縁材料(例えば、イソブチレン-イソプレンラバー(IIR)やエチレンプロピレンターポリマー(EPT)のような弾性ゴム)からなる。封口体4には、ケース3の内部と外部とを連通する貫通孔5および6が形成されている。リード端子11は、封口体4に形成された貫通孔5を通ってケース3の外部に引き出されている。リード端子12は、封口体4に形成された貫通孔6を通ってケース3の外部に引き出されている。すなわち、封口体4は、コンデンサ素子2から貫通孔5、6を挿通して引き出された一対のリード端子11、12を有する。
【0030】
樹脂層7は、封口体4の外部側の表面41に沿って形成されている。封口体4の外部側の表面41とは、封口体4の両側の表面のうちのケース3の外部側に向けられた面のことである。封口体4の外部側の表面41に沿って樹脂層7が形成されていることにより、封口体4の酸化劣化を抑制することができる。樹脂層7は、
図1に示すように、開口端部13の先端側(環状端部)全部とカーリング部分14の表面の一部とに接着した第1部分7aと、第1部分7aよりもケース3の径方向の中心軸30側に位置する第2部分7bとを有する。また、第1部分7aと第2部分7bとは一体構造となっている。なお、本実施形態においては、封口体4の外部側の表面41のうちの開口端部13よりも中心軸30側と反対の側(ケース3の径方向の外側)の表面には、樹脂層7は形成されていない。しかしながら、封口体4の外部側の表面41のうちの開口端部13よりも中心軸30側と反対の側(ケース3の径方向の外側)の表面には、任意の厚さの樹脂層7が形成されていてもよい。
【0031】
樹脂層7について、
図3を参照しつつ、より詳細に説明すると、第2部分7bは、封口体4の外部側の表面41と直交する方向(すなわち、
図2の矢印Aの方向)から見たときに、ケース3の中心軸30を中心に貫通孔5および貫通孔6を含む円ならびにその円の内側の範囲である。すなわち、第2部分7bは、一対のリード端子11、12にケース径方向外方で接する領域に形成されている。言い換えれば、第2部分7bは、一対のリード端子11、12が径方向の両端で内接する円形領域から、一対のリード端子11、12を除いた領域に形成されている。なお、本実施形態において、第2部分7bは、少なくとも一対のリード端子11、12にケース径方向内方で接する領域(一対のリード端子11、12の両方と外接する領域)に形成されていればよい。また、第1部分7aは、封口体4の外部側の表面41と直交する方向(
図2の矢印Aの方向)から見たときに、ケース3の中心軸30を中心にカーリング部分14の一部を含む円およびその内側であって第2部分7bの外側を規定する円よりも外側の範囲である。すなわち、第1部分7aは、一対のリード端子11、12にケース径方向外方で接する領域に形成されている。そして、封口体4の外部側の表面41と直交する方向(
図2の矢印Aの方向)から見たときに、第1部分7aの内周部分の全部は、第2部分7bの外周部分の全部と接している。
【0032】
また、樹脂層7は、エポキシ樹脂からなる。また、樹脂層7中には、電解液20の溶媒を吸着するための吸着剤を分散させていてもよい。そして、樹脂層7の、第2部分7bにおける厚みは、第1部分7aにおける厚みよりも小さい。そのため、樹脂層7は、第2部分7bが凹んだ段差形状となっている。なお、
図2および
図3において、第1部分7aと第2部分7bとの区別をし易くするため、第1部分7aと第2部分7bとは互いに異なる方向の斜線で表されているが、両者の材質は同じである。
【0033】
本実施形態では、電解コンデンサ1が、封口体4の外部側の表面41に沿って形成された樹脂層7を有する。樹脂層7は、ケース3の開口端部13に接着した第1部分7aと、第1部分7aよりもケース3の径方向の中心軸30側に位置する第2部分7bとを有する。そして、第2部分7bにおける樹脂層7の厚みは、第1部分7aにおける樹脂層7の厚みよりも小さい。ケース3の内部において電解液20が気化して発生した気体が充満することにより封口体4はケース3の外部側に向かって膨張しようとする。そして、封口体4の膨張が進むと、封口体4が破損するおそれがある。本実施形態によれば、開口端部13に接着している第1部分7aによって封口体4の外部側への移動は規制され、封口体4の膨張が物理的に抑制される。また、第1部分7aと第2部分7bとによってケース3の内部の気体の外部への漏れを抑制しつつ、第2部分7bの厚みを第1部分7aよりも小さくすることによって、ケース3の内部の気体を、第2部分7bを通して適度に外部に逃がすことができる。これにより、封口体4の膨張の原因となるケース3の内部における気体の充満を抑制することができる。これらにより、電解コンデンサ1の封口体4の酸化劣化を抑制しつつ、封口体4の膨張を抑制することができる。封口体4の酸化劣化や膨張による破損を抑制できるため、電解液20の液漏れおよび気体の外部への流出の抑制、電解コンデンサ1の外部へのウィスカーの成長と基板面への落下の抑制、リード端子11、12および電極箔への負荷の低減等が可能となり、電解コンデンサ1の長寿命化を実現できる。さらに、厚みが小さい第2部分7bを設けることで、使用する樹脂の総量を少なくすることができるので、コスト削減にもつながる。
【0034】
また、本実施形態では、封口体4は、コンデンサ素子2から貫通孔5、6を挿通して引き出された一対のリード端子11、12を有し、第1部分7aは、一対のリード端子11、12にケース3の径方向外方で接する領域に形成されている。これによれば、一対のリード端子11、12のケース3の径方向外方の封口体4の表面は、相対的に厚みが大きい第1部分7aの樹脂層7で覆われる。その結果、封口体4の外部側への移動はより強固に規制される。このため、封口体4の膨張をさらに抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、第2部分7bは、一対のリード端子11、12にケース3の径方向内方で接する領域に形成されている。これによれば、一対のリード端子11、12よりもケース3の径方向内方の封口体4の表面は相対的に厚みが小さい第2部分7bの樹脂層7で覆われ、当該領域を通してケース3内部の気体を適度かつ確実に逃がすことができる。
【0036】
また、本実施形態では、ケース3は、開口端部13がケース3の軸方向の内部側かつ径方向の中心軸30側に向かうカーリング部分14を有し、第1部分7aは、カーリング部分14の表面の一部に接着している。これによれば、第1部分7aは、カーリング部分14の表面に接着しているため、封口体4の外部側の外部側への移動はより強固に規制される。このため、封口体4の膨張をさらに抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、第1部分7aは、円筒形状のケース3の全周にわたって延びた開口端部13の先端側全部に接着している。これによれば、開口端部13の先端側全部に接着している樹脂層7の第1部分7aによって、封口体4の外部側への移動はより強固に規制される。このため、封口体4の膨張をさらに抑制することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、第1部分7aと第2部分7bとが一体構造となっている。これによれば、第1部分7aと第2部分7bとが分離した構造となっている場合と比べて、封口体4の外部側の表面41のより広い範囲において、外部側への移動を規制することができる。また、封口体4の酸化劣化をより広い範囲で抑制することができる。このため、封口体4の酸化劣化をより抑制しつつ、封口体4の膨張をさらに抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、樹脂層7はエポキシ樹脂からなる。これによれば、耐熱性および耐薬品性の優れた樹脂層7を提供することができる。このため、フローはんだ工程やリフローはんだ工程などの高温の熱負荷による樹脂層7の変性を抑制することができるとともに、電解コンデンサ1内部の電解液20との接触による樹脂層7の劣化を抑制することができる。また、エポキシ樹脂は電気絶縁性にも優れており、封口体4を一対のリード端子11、12が挿通する本実施形態の構成において、樹脂層7を介したリード端子11、12間の導通を防ぐことができる。樹脂層7のケース3との接着性、樹脂層7の強度、樹脂層7の気体の適切な透過性を確保することができるため、封口体4の膨張をさらに抑制することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図4を参照しつつ説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0041】
第2実施形態の電解コンデンサ101において、樹脂層47は、第1実施形態と同様、封口体4の外部側の表面41に沿って形成されている。樹脂層47は、
図4(a)に示すように、開口端部13の全部とカーリング部分14の表面の一部とに接着した第1部分47aと、第1部分47aよりもケース3の径方向の中心軸30側に位置する第2部分47bとを有する。第1部分47aと第2部分47bとは、
図4(a)に示すように、分離した構造となっている。また、樹脂層47の、第2部分47bにおける厚みは、第1部分47aにおける厚みよりも小さい。
【0042】
樹脂層47について、
図4(b)を参照しつつ、より詳細に説明すると、第2部分47bは、封口体4の外部側の表面41と直交する方向(すなわち、
図4(a)の矢印Bの方向)から見たときに、ケース3の中心軸30を中心に貫通孔5および貫通孔6の内側の範囲である。すなわち、第2部分47bは、一対のリード端子11、12にケース径方向内方で接する領域に形成されている。言い換えれば、第2部分47bは、一対のリード端子11、12が径方向の両端で外接する円形領域に形成されている。第1部分47aは、封口体4の外部側の表面41と直交する方向(
図4(a)の矢印Bの方向)から見たときに、ケース3の中心軸30を中心に開口端部13とカーリング部分14の一部を含む円およびその内側であって、一対の貫通孔5、6にケース径方向外方で接する円より外側の範囲である。言い換えれば、第1部分47aは、一対の貫通孔5、6が径方向の両端で内接する円より外側の範囲である。すなわち、封口体4の外部側の表面41と直交する方向(
図4(a)の矢印Bの方向)から見たときに、第1部分47aの内周部分は、第2部分47bの外周部分と接していない。すなわち、封口体4の外部側の表面41のうち外部に面した領域の一部には、樹脂層47が形成されていない。なお、
図4(b)において、第1部分47aと第2部分47bとの区別をし易くするため、第1部分47aと第2部分47bとは互いに異なる方向の斜線で表されているが、両者の材質は同じである。
【0043】
上記形状から、第2実施形態も第1実施形態と同様に、開口端部13に接着している樹脂層47の第1部分47aによって封口体4の外部側への移動は規制され、封口体4の膨張が物理的に抑制される。また、第1部分47aよりも厚みが小さい第2部分47bを設けることにより、ケース3の内部の気体を、第2部分47bを通して適度に外部に逃がすことができ、封口体4の膨張の原因となるケース3の内部における気体の充満を抑制することができる。これらにより、電解コンデンサ101の封口体4の酸化劣化を抑制しつつ、封口体4の膨張を抑制することができ、電解コンデンサ1の長寿命化を実現できる。また、第2実施形態の構成によれば、第2部分47bは、一対のリード端子11、12にケース径方向内方で接する領域(一対のリード端子11、12が径方向の両端で外接とする円形領域)に形成されているため、封口体4の外部側の表面41の移動はより強固に規制される。このため、封口体4の膨張を更に抑制することができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、
図5を参照しつつ説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0045】
第3実施形態の電解コンデンサ201において、ケース53は、
図5に示すように、封口体4の外部側の表面41と直交する方向に向かって開口している。すなわち、ケース53はカーリング部分を有していない。このようなケース53の開口する側の端部を開口端部63とする。
【0046】
樹脂層57は、封口体4の外部側の表面41の全体に沿って形成されている。樹脂層57は、
図5に示すように、開口端部63の全部およびケース53の内側表面の一部に接着した第1部分57aと、第1部分57aよりもケース53の径方向の中心軸30側に位置する第2部分57bとを有する。第1部分57aと第2部分57bとは、第1実施形態と同様、一体構造となっている。また、樹脂層57の、第2部分57bにおける厚みは、第1部分57aにおける厚みよりも小さい。
【0047】
上記形状から、第3実施形態も第1実施形態と同様に、開口端部63に接着している樹脂層57の第1部分57aによって封口体4の外部側への移動は規制され、封口体4の膨張が物理的に抑制される。また、第1部分57aよりも厚みが小さい第2部分57bを設けることにより、ケース53の内部の気体を、第2部分57bを通して適度に外部に逃がすことができ、封口体4の膨張の原因となるケース53の内部における気体の充満を抑制することができる。これらにより、電解コンデンサ201の封口体4の酸化劣化を抑制しつつ、封口体4の膨張を抑制することができ、電解コンデンサ1の長寿命化を実現できる。
【0048】
(実施例)
次に、比較例および実施例の電解コンデンサを作製し、それぞれの電解コンデンサの評価を行った。
【0049】
以下、比較例および実施例に用いた電解コンデンサは、定格電圧35V、定格容量680μF、製品サイズφ16×21.5L(mm)である。また、電解コンデンサは、ケースの開口端部がケースの内部側かつ中心軸側に向かうようにカーリング加工されたカーリング部分を有するものである。
【0050】
比較例1は、電解コンデンサの封口体に樹脂を塗布していない。比較例2は、封口体の外部側の表面に厚さ0.3±0.1mmの樹脂を均一に塗布し硬化させた。すなわち、比較例2では、封口体の外部側の表面に均一な厚さの樹脂層が形成されている。比較例2の樹脂層の外周部分は、電解コンデンサのケースの開口端部およびカーリング部分に接着している。
【0051】
実施例1は、封口体の外部側の表面に厚さ0.1±0.05mmの樹脂を均一に塗布し硬化させた後、リード端子より外周部に厚さが0.3±0.1mmとなるように樹脂を再度塗布し硬化させた。実施例1の樹脂層の外周部分は、電解コンデンサのケースの開口端部およびカーリング部分に接着している。すなわち、実施例1は、上述の第1実施形態と同様の構成(
図1~
図3参照)である。つまり、実施例1の電解コンデンサは、封口体の外部側の表面に、ケースの開口端部とカーリング部分とに接着した第1部分と、第1部分よりもケースの中心軸側に位置しており第1部分よりも厚みの小さい第2部分とを有し、第1部分と第2部分とが一体構造となった樹脂層が形成されたものである。
【0052】
実施例2は、封口体の外部側の表面のうち、中心からリード端子より内周までの範囲の厚さが0.1±0.05mmとなるように樹脂を塗布し、リード端子よりも外周部に厚さが0.3±0.1mmとなるように樹脂を塗布し、それぞれ硬化させた。実施例2の樹脂層の外周部分は、電解コンデンサのケースの開口端部およびカーリング部分に接着している。また、樹脂層の厚さが0.1±0.05mmの部分と、樹脂層の厚さが0.3±0.1mmとの部分とは互いに接していない。すなわち、実施例2は、上述の第2実施形態と同様の構成(
図4参照)である。つまり、実施例2の電解コンデンサは、封口体の外部側の表面に、ケースの開口端部とカーリング部分とに接着した第1部分と、第1部分よりもケースの中心軸側に位置しており第1部分よりも厚みの小さい第2部分とを有し、第1部分と第2部分とが分離構造となった樹脂層が形成されたものである。
【0053】
なお、比較例2、実施例1および2に用いられた樹脂層はそれぞれエポキシ樹脂である。
【0054】
(リフロー試験)
まず、上記の比較例2、実施例1の電解コンデンサに対して、210℃以上(最大250℃)の熱を100秒以上負荷するリフロー処理後の、封口体の樹脂割れの有無について調べた。
【0055】
比較例2の電解コンデンサでは、樹脂層の樹脂割れが確認された。これは、リフロー処理による過度な熱ストレスが原因と考えられる。実施例1では樹脂層の樹脂割れは確認されなかった。よって、実施例1では、封口体の膨張を抑制できたと言える。
【0056】
続いて、比較例1、2、実施例1、2の電解コンデンサに対して、上記のリフロー処理前後の漏れ電流(表1のLC)の変化を測定した。表1は、比較例1、2、実施例1、2のリフロー処理前とリフロー処理後の漏れ電流の変化量の評価結果を示したものである。×はリフロー処理前後で漏れ電流が大きく増加していたことを示す。△はリフロー処理前後で漏れ電流の増加量は×と比べると低減していたものの、依然として大きく増加していたことを示す。〇はリフロー処理前後で漏れ電流の増加量が×及び△と比べて低減しており、許容範囲内の値であったことを示す。◎はリフロー処理前後で漏れ電流の増加量が〇と比べてさらに低減していたことを示す。
【0057】
【0058】
表1によると、リフロー後の漏れ電流は、比較例1、2、実施例1、2のいずれについても増加していた。しかしながら、比較例2および実施例1、2では、漏れ電流の変化量は、封口体に樹脂層が形成されていない比較例1と比べて低減していた。特に、実施例1では、比較例1と比べて、漏れ電流の変化量が大幅に低減していた。すなわち、実施例1の漏れ電流の変化量は、比較例2および実施例2と比べても低減していた。
【0059】
(信頼性試験)
次に、比較例1、2、実施例1の電解コンデンサに対して、150℃の高温下で、3000時間、直流電圧の印加を行ったときの電気特性の経時変化を測定する信頼性試験を実施した。信頼性試験においては、静電容量変化率(%)、損失角の正接(tanδ)、漏れ電流(μA)の経時変化を測定した。
図6(a)は、比較例1、2、実施例1の静電容量変化率(Capacitance Change(%))の経時変化を示している。
図6(a)では、試験開始時を0(%)としている。
図6(b)は、比較例1、2、実施例1の損失角の正接(Tan delta)の経時変化を示している。
図6(c)は、比較例1、2、実施例1の漏れ電流(Leakage Current(μA))の経時変化を示している。
【0060】
図6(a)によると、実施例1および比較例2の3000時間経過後における静電容量の低下率は、封口体に樹脂層が形成されていない比較例1と比べて小さかった。さらに、実施例1の静電容量の低下率は、比較例1および比較例2と比べて小さかった。また、
図6(b)によると、3000時間経過後における比較例2の損失角の正接の増加は比較例1の増加よりも小さく、実施例1の増加は比較例2の増加よりもさらに小さかった。
図6(c)によると、漏れ電流の経時変化については、比較例1、2、実施例1で大きな差は見られなかった。
【0061】
以上から、実施例1および実施例2の電解コンデンサは、リフロー処理後において封口体の樹脂割れを抑制することができ、さらに実施例1の電解コンデンサは、リフロー後の静電容量の低下や漏れ電流の増加を抑制することができた。また、実施例1の電解コンデンサは、高温下(150℃)で長時間(3000時間)電圧を印加した場合においても、静電容量の低下および損失角の正接の増加を抑制することができた。
【0062】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0063】
上記第1~第3実施形態では、樹脂層の第1部分と第2部分の材質は同じであって、いずれもエポキシ樹脂である。しかしながら、第1部分と第2部分は、異なる材質であってもよい。また、樹脂層はエポキシ樹脂以外の樹脂でもよく、例えば、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0064】
上記第1~第3実施形態では、樹脂層の第1部分はケースの開口端部の全部に接着している。しかしながら、樹脂層の第1部分はケースの開口端部の一部にのみ接着していてもよい。
【0065】
上記第1~第2実施形態では、第1部分はカーリング部分の一部に接着している。しかしながら、第1部分はカーリング部分の全部に接着していてもよい。この場合、ケースを封口体の外部側の表面と直交する方向(例えば、
図2の矢印Aの方向)から見たとき、ケースの外周端まで樹脂層が形成されている。
【0066】
本発明において、第2部分は、第1実施形態の第2部分7b(
図3参照)から、第2実施形態の第2部分47b(
図4(b)参照)を除いた領域に形成されていてもよい。具体的には、第2部分は、封口体の外部側の表面と直交する方向から見たときに、ケースの中心軸を中心に一対のリード端子にケース径方向外方で接する円(内接円)およびその内側の範囲であって、かつ、一対のリード端子にケース径方向内方で接する円(外接円)よりも大きい円の外側の範囲に形成されていてもよい。この場合において、一対のリード端子に外接する円よりも小さい円の内側の範囲に、さらに第2部分が形成されていてもよい。すなわち、本発明の電解コンデンサは、2つの第2部分を有する構成でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 ケース
4 封口体
5 貫通孔
6 貫通孔
7 樹脂層
7a 第1部分
7b 第2部分
13 開口端部
14 カーリング部分
20 電解液
30 中心軸
41 表面