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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】退避走行支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240919BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240919BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240919BHJP
   B60W 40/00 20060101ALI20240919BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240919BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240919BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20240919BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/09 H
G08G1/09 V
G01C21/34
B60W40/00
B60W30/10
G16Y10/40
G16Y40/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021110295
(22)【出願日】2021-07-01
(65)【公開番号】P2023007198
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】谷川 右京
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】高藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 諒子
(72)【発明者】
【氏名】井上 直哉
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197884(JP,A)
【文献】特開2018-018129(JP,A)
【文献】特開2017-037464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 40/00
B60W 30/10
G16Y 10/40
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される退避走行支援装置(100)と、前記退避走行支援装置との情報の送受信が可能なサーバ(200)とを含む退避走行支援システムであって、
前記退避走行支援装置は、
自車の周辺に存在する対象の情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得部(131)と、
前記自車の位置である自己位置を推定する自己位置推定部(132)と、
車両が退避できる退避可能地点の情報である退避可能地点情報を含む地図情報を前記サーバから受信する地図情報受信部(152)と、
推定された前記自己位置に基づいて前記地図情報を照合することにより、前記地図情報に基づく前記自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報を取得する退避可能地点取得部(133)と、
前記周辺環境情報から認識される前記自車の周辺の退避可能地点情報である認識退避可能地点情報と、前記地図退避可能地点情報とに基づいて、前記自車の退避目的地を決定する退避目的地決定部(134)と、
前記退避目的地に向けて車両を制御する退避制御部(135)と、を備え、
前記退避可能地点情報は、前記退避可能地点を前記退避目的地として退避する際の退避経路の情報である退避経路情報を含み、
前記サーバは、
前記退避可能地点情報を含む地図情報を記録する地図情報記録部(221)と、
複数の車両から、各車両が過去に道路外又は路肩に停車した際の停車位置の情報である停車位置情報を取得する受信部(231)と、
前記複数の車両から取得した前記停車位置情報に基づいて、前記停車位置を前記退避可能地点として追加することで、前記地図情報に含まれる前記退避可能地点情報を更新する地図情報更新部(211)と、を備え
前記地図情報更新部は、前記停車位置を前記退避可能地点として追加するに際に、前記退避経路情報を前記退避可能地点に紐付けして追加することにより、前記退避可能地点情報を更新する、退避走行支援システム。
【請求項2】
前記退避目的地決定部は、前記地図退避可能地点情報に含まれる前記退避可能地点と、前記認識退避可能地点情報に含まれる前記退避可能地点のうち、前記自車が到達する際の移動距離が最も短い退避可能地点を前記自車の退避目的地に決定する請求項1に記載の退避走行支援システム
【請求項3】
前記地図退避可能地点情報として、前記退避可能地点における救急搬送に要する時間である救急搬送時間が含まれている場合には、前記退避目的地決定部は、前記地図退避可能地点情報に含まれる前記退避可能地点と、前記認識退避可能地点情報に含まれる前記退避可能地点のうち、前記救急搬送時間が最小となる前記退避可能地点を前記自車の退避目的地に決定する請求項1または2に記載の退避走行支援システム
【請求項4】
前記地図情報更新部は、前記複数の車両から取得した前記停車位置情報を前記停車位置に基づいて分類し、前記停車位置に前記車両が停止した実績である停車実績が所定以上である前記停車位置を前記退避可能地点として追加することにより、前記退避可能地点情報を更新する請求項1~3のいずれかに記載の退避走行支援システム
【請求項5】
前記地図退避可能地点情報として、前記退避可能地点における救急搬送に要する時間である救急搬送時間が含まれている場合に、
前記地図情報更新部は、救急車両から、前記停車位置情報とともに、前記停車位置における救急搬送時間を取得し、前記停車位置情報と前記救急搬送時間とに基づいて前記退避可能地点情報を更新する請求項1~4のいずれかに記載の退避走行支援システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退避走行支援装置とサーバとを含む退避走行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が意識レベルの低下などにより運転不能となった場合等に、車両を退避先に退避させる退避走行支援装置が提案されている。特許文献1に記載の退避走行支援装置は、地図情報、自車情報、および周辺環境情報に基づいて、自車の進行先となり得る各地点について、停車するリスクおよび通過するリスクを判定する。そして、停車した場合のリスクが所定の基準よりも低い地点を退避目的地に設定し、通過した場合のリスクが所定の基準よりも低い地点を組み合わせて退避経路を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-228090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
店舗の駐車場に例示されるように、道路外の施設等にも車両を退避させることが可能な退避可能地点は存在する。道路外の場所は、撮像装置やレーダ装置等の周辺監視装置によって検出することは困難である。また、地図情報を参照しても、道路外の場所が退避可能地点であるか否かを判別することは困難である。道路外の場所が退避可能地点であるか否かを判別することは、特許文献1に記載の技術では容易ではない。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げ、自車が安全に退避できる退避目的地をより適切に設定して、より安全な退避走行を実現できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る退避走行支援装置は、自車の周辺に存在する対象の情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得部と、前記自車の位置である自己位置を推定する自己位置推定部と、車両が退避できる退避可能地点の情報である退避可能地点情報を含む地図情報を記録するサーバから、前記地図情報を受信する地図情報受信部と、推定された前記自己位置に基づいて前記地図情報を照合することにより、前記地図情報に基づく前記自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報を取得する退避可能地点取得部と、前記周辺環境情報から認識される前記自車の周辺の退避可能地点情報である認識退避可能地点情報と、前記地図退避可能地点情報とに基づいて、前記自車の退避目的地を決定する退避目的地決定部と、前記退避目的地に向けて車両を制御する退避制御部と、を備える。前記地図情報に含まれる前記退避可能地点情報は、前記サーバにより複数の車両から取得された前記複数の車両が過去に停車した停車位置の情報である停車位置情報に基づいて更新される。
【0007】
本発明に係る退避走行支援装置によれば、退避目的地決定部は、周辺環境情報から認識される自車の周辺の退避可能地点情報である認識退避可能地点情報と、地図情報に基づく自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報とに基づいて、自車の退避目的地を決定する。退避可能地点情報を含む地図情報はサーバに記録されており、サーバにより複数の車両から取得された複数の車両が過去に停車した停車位置の情報である停車位置情報に基づいて更新される。周辺環境情報から認識される認識退避可能地点情報のみならず、複数の車両の過去の停車位置情報により更新される地図退避可能地点情報をも用いて退避可能地点を設定し、退避目的地を決定するため、退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げることができる。その結果、自車が安全に退避できる退避目的地をより適切に決定でき、より安全な退避走行を実現できる。
【0008】
本発明は、車両に搭載される退避走行支援装置と、前記退避走行支援装置との情報の送受信が可能なサーバとを含む退避走行支援システムを提供することもできる。この退避走行支援システムでは、前記退避走行支援装置は、自車の周辺に存在する対象の情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得部と、前記自車の位置である自己位置を推定する自己位置推定部と、車両が退避できる退避可能地点の情報である退避可能地点情報を含む地図情報を前記サーバから受信する地図情報受信部と、推定された前記自己位置に基づいて前記地図情報を照合することにより、前記地図情報に基づく前記自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報を取得する退避可能地点取得部と、前記周辺環境情報から認識される前記自車の周辺の退避可能地点情報である認識退避可能地点情報と、前記地図退避可能地点情報とに基づいて、前記自車の退避目的地を決定する退避目的地決定部と、前記退避目的地に向けて車両を制御する退避制御部と、を備える。前記サーバは、前記退避可能地点情報を含む地図情報を記録する地図情報記録部と、複数の車両から、各車両が過去に停車した停車位置の情報である停車位置情報を取得する受信部と、前記複数の車両から取得した前記停車位置情報に基づいて、前記地図情報に含まれる前記退避可能地点情報を更新する地図情報更新部と、を備える。
【0009】
本発明に係る退避走行支援システムによれば、車載の退避走行支援装置は、周辺環境情報から認識される認識退避可能地点情報のみならず、サーバから取得する複数の車両の過去の停車位置情報により更新される地図退避可能地点情報をも用いて、退避可能地点を設定し、退避目的地を設定することができる。このため、退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げることができ、自車が安全に退避できる退避目的地をより適切に決定して、より安全な退避走行を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る退避走行支援システムを示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る退避走行支援処理のフローチャート。
図3】第1実施形態に係るサーバに停車位置情報を送信する車両で実行される停車位置情報送信処理のフローチャート。
図4】第1実施形態に係るサーバが実行する地図情報更新処理のフローチャート。
図5】第2実施形態に係る退避走行支援処理のフローチャート。
図6】第2実施形態に係るサーバが実行する地図情報更新処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1に示す退避走行支援システムは、運転者が意識レベルの低下などにより運転不能となった場合等に、車両を安全な退避先に走行させ、停車させることを支援する機能を有するシステムである。退避走行支援システムは、車両に搭載される退避走行支援装置100と、サーバ200とを備える。退避走行支援装置100とサーバ200とは、情報の送受信が可能である。
【0012】
退避走行支援装置100は、周辺環境認識装置110と、運転者監視装置120と、退避制御装置130と、地図記録装置140と、車両側通信装置150とを備えている。退避走行支援装置100は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えるECUとして車両に搭載され、CPUが、ROMにインストールされているプログラムを実行することでこれら各機能を実現するように構成されていてもよい。
【0013】
周辺環境認識装置110は、周辺環境センサ161から取得する検出情報から、自車の周辺に存在する対象の情報である周辺環境情報を作成する。周辺環境センサ161としては、車載のミリ波レーダ等のレーダ装置、画像センサ等の撮像装置を例示できる。周辺環境認識装置110は、周辺環境センサ161から取得した物体検出情報から、自車の周辺に存在する物体の種別や大きさ、自車との距離や相対速度を認識可能に構成されている。
【0014】
周辺環境認識装置110は、自車が走行する道路の路肩のスペースや道路内のフリースペース、自車の周辺の車両の存在を認識可能に構成されている。フリースペースとは、車線形態または車線周辺の物体によって道路内に生じる非通行部分(車両が通行しない部分)である。なお、路肩のスペースは、道路の横方向の端部である道路端の外側(道路外)のスペースであるのに対し、フリースペースは、道路の両側の端部の間(道路内)のスペースである。周辺環境認識装置110は、自車が走行する道路の路肩のスペースや道路内のフリースペースに基づいて、退避可能地点情報を作成可能に構成されていてもよい。周辺環境認識装置110によって作成された退避可能地点情報は、周辺環境情報に含まれていてもよい。
【0015】
運転者監視装置120は、運転不能判定部121を備えている。運転不能判定部121は、運転者が運転不能状態であるか否かを判定し、判定結果を退避制御装置130に送信する。
【0016】
退避制御装置130は、周辺環境情報取得部131と、自己位置推定部132と、退避可能地点取得部133と、退避目的地決定部134と、退避制御部135とを備えている。
【0017】
周辺環境情報取得部131は、周辺環境認識装置110から、自車の周辺に存在する対象の情報である周辺環境情報を取得する。周辺環境情報は、周辺環境認識装置110によって作成された退避可能地点情報を含むものであってもよい。取得された周辺環境情報は、運転不能判定部121および退避目的地決定部134に送信される。
【0018】
自己位置推定部132は、自車の位置である自己位置を推定する。自己位置推定部132は、例えば、車載のGPS受信装置162により地図情報等を取得可能に構成されている。より具体的には、GPS受信装置162により取得する地図情報(以下、GPS地図情報を略称することがある)として、自車の走行する道路や、その周辺の道路についての道路情報等を取得することができる。道路情報としては、道路形状情報、車線情報、接続点情報、道路境界情報などが含まれる。例えば、周辺環境情報として所得した自車の走行する道路の路面標示や看板標識等の情報と、GPS地図情報に含まれる道路情報とを照合し、自車の走行速度(自車速)等に基づいて路面標示や看板標識等の位置と自己位置との距離を算出することにより、自己位置を推定できる。自己位置推定部132は、GPS受信装置162により取得した地図情報と、推定した自己位置とを、退避可能地点取得部133および退避目的地決定部134に送信する。
【0019】
退避可能地点取得部133は、地図記録装置140から取得した地図情報(以下、車両側地図情報と称することがある)を取得する。車両側地図情報は、車両が退避できる退避可能地点の情報である退避可能地点情報を含む。退避可能地点情報は、退避可能地点の位置情報、退避可能地点の周辺情報、退避可能地点を退避目的地として退避する際の退避経路の情報である退避経路情報を含む。さらには、退避可能地点に救急車両の到着実績がある場合には、退避可能地点情報として、退避可能地点における救急搬送に要する時間である救急搬送時間が含まれている。救急搬送時間とは、救助要請を行ってから救急車が退避可能地点に到達するまでの時間(要請後到着時間)、退避可能地点に救急車両が到着するまでの時間(救急到着時間)、退避可能地点から救急施設に到着するまでの時間(施設到着時間)等を含む概念である。
【0020】
そして、退避可能地点取得部133は、自己位置推定部132により推定された自己位置に基づいて、車両側地図情報を照合することにより、車両側地図情報に基づく自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報を取得する。地図退避可能地点情報は、退避目的地決定部134に送信される。
【0021】
退避目的地決定部134は、周辺環境情報から認識される自車の周辺の退避可能地点情報である認識退避可能地点情報と、退避可能地点取得部133が取得する自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報とに基づいて、自車の退避目的地を決定する。決定された退避目的地に関する情報である退避目的地情報は、退避制御部135に送信される。退避目的地情報は、決定した退避目的地の退避可能地点情報に相当し、退避目的地の位置情報、退避目的地の周辺情報、退避目的地に退避する際の退避経路の情報である退避経路情報を含み、退避目的地における救急搬送時間を含み得る。
【0022】
退避目的地決定部134は、所定の条件に基づいて、退避目的地を設定する。例えば、退避目的地決定部134は、退避可能地点の大きさおよび自車に対する相対位置、自車の走行速度および大きさ等に基づいて、自車が退避可能地点に停車できないと判定できる場合に、その退避可能地点を退避目的地の候補から除外するように構成されていてもよい。また、例えば、退避目的地決定部134は、退避可能地点の位置が、自車の走行状態および自車の周辺の車両の走行状態に基づいて、自車が安全に移動し停車できない位置であると判定される場合に、その退避可能地点を退避目的地の候補から除外するように構成されていてもよい。
【0023】
例えば、退避可能地点は、自車の進行方向に位置、自車が停止するのに十分な大きさを有することが好ましい。なお、自車が停止するのに十分な大きさのスペースとは、車線方向の長さ(縦幅)が自車の前後方向の長さよりも長く、車線方向に直行する幅方向の長さ(横幅)が自車の幅方向の長さよりも長いスペースであり、縦方向および横方向に、それぞれマージンが設定されていることが好ましい。また、自車の走行状態を考慮して退避目的地を決定してもよい。自車の走行速度(自車速)と、退避可能地点と自車との距離に基づいて、例えば、退避可能地点と自車との現在の距離が、現在の自車速から所定の減速度で減速を開始して停車するまでに自車走行する距離よりも短い場合には、その退避可能地点は安全に停止できないものとして退避目的地の候補から除外してもよい。また、高速道路を走行中など、自車速が高速である場合には、現在の自車の自己位置との距離がある程度離れた退避可能地点を退避目的地に決定するようにしてもよい。また、例えば、駐停車禁止の場所は退避目的地に決定しないようにしてもよい。一方で、運転者が意識不明である等により緊急性が高い場合には、駐停車禁止の場所を退避目的地に決定してもよい。
【0024】
退避目的地決定部134は、地図退避可能地点情報に含まれる退避可能地点と、認識退避可能地点情報に含まれる退避可能地点のうち、自車が到達する際の移動距離が最も短い退避可能地点を自車の退避目的地に決定するように構成されていてもよい。退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げた上で、最も早く到達できる退避可能地点を退避目的地に決定することができる。
【0025】
地図退避可能地点情報として、退避可能地点における救急搬送に要する時間である救急搬送時間が含まれている場合には、退避目的地決定部134は、地図退避可能地点情報に含まれる退避可能地点と、認識退避可能地点情報に含まれる退避可能地点のうち、救急搬送時間が最小となる退避可能地点を自車の退避目的地に決定するように構成されていてもよい。例えば、救急到着時間と施設到着時間との合計が最小となる退避可能地点を退避目的地に決定してもよい。または、自車が退避可能地点に到達するまでの時間と、救急到着時間と、施設到着時間との合計が最小となる退避可能地点を退避目的地に決定してもよい。運転者が意識不明等になって、より迅速な救急搬送が求められる場合に、救急搬送時間を考慮して適切に退避目的地を決定できる。
【0026】
退避制御部135は、退避目的地情報として取得した退避目的地の位置情報、退避目的地の周辺情報、退避目的地への退避経路情報に基づいて、退避目的地に向けて車両を制御する。これによって、自車は、退避目的地への退避走行を実行するように制御される。
【0027】
退避制御部135は、自車が退避走行を継続する制限時間に基づいて、制限時間内に退避目的地に到着出来ない場合には、自車線内に停止するように構成されていてもよい。制限時間は、運転者が運転不能であると判定された時点から、自車が退避走行を完了して停車するまでの時間である。制限時間は、救助要請が遅くなり過ぎないことを考慮して、所定の時間に設定される。制限時間は、周辺環境情報や、GPS地図情報等に基づいて設定されていてもよい。
【0028】
退避制御部135により退避目的地に向けて自車が退避走行している途中で、退避目的地決定部134が新たな退避目的地を決定してもよい。自車が退避走行している途中で退避目的地が更新された場合には、退避制御部135は、新たな退避目的地に向けて車両を制御するように構成されていてよい。
【0029】
地図記録装置140は、車両側地図情報記録部141を備えている。車両側地図情報記録部141は、車両側通信装置150からサーバ側地図情報を取得し、車両側地図情報として記録する。
【0030】
車両側通信装置150は、データ送信部151と、地図情報受信部152とを備えている。データ送信部151は、車両の停車位置の情報である停車位置情報をサーバ200に送信する。地図情報受信部152は、サーバ200からサーバ側地図情報を取得し、地図記録装置140に送信する。
【0031】
サーバ200は、地図生成装置210と、データ記録装置220と、サーバ側通信装置230とを備えている。
【0032】
サーバ側通信装置230は、データ受信部231と、地図情報送信部232とを備えている。データ受信部231は、複数の車両から、各車両が過去に停車した停車位置の情報である停車位置情報を取得する受信部である。地図情報送信部232は、データ記録装置220からサーバ側地図情報を取得し、車両側通信装置150に送信する。
【0033】
データ記録装置220は、サーバ側地図情報記録部221と、データ記録部222とを備えている。サーバ側地図情報記録部221は、退避可能地点情報を含むサーバ側地図情報を記録する。データ記録部222は、データ受信部231によって受信された、複数の車両から取得した停車位置情報を記録する。
【0034】
地図生成装置210は、地図情報更新部211を備えている。地図情報更新部211は、データ受信部231によって受信され、データ記録部222に記録された、複数の車両から取得した停車位置情報を取得する。そして、取得した停車位置情報に基づいて、前記地図情報に含まれる前記退避可能地点情報を更新する。
【0035】
地図情報更新部211は、複数の車両から取得した停車位置情報を、停車位置に基づいて分類し、停車位置に車両が停止した実績である停車実績が所定以上である停車位置を退避可能地点として追加することにより、退避可能地点情報を更新するように構成されていてもよい。停車実績が所定以上であることを条件として停車位置を退避可能地点に追加することにより、退避可能地点としてあまり適切ではない停車位置の情報が退避可能地点情報に組み込まれることを回避でき、退避可能地点情報の精度が向上する。
【0036】
地図情報更新部211は、停車位置を退避可能地点として追加するに際に、退避経路情報を退避可能地点に紐付けして追加することにより、退避可能地点情報を更新するように構成されていることが好ましい。また、地図退避可能地点情報として、退避可能地点における救急搬送時間が含まれている場合には、地図情報更新部211は、救急車両から、停車位置情報とともに、停車位置における救急搬送時間を取得し、停車位置情報と救急搬送時間とに基づいて、退避可能地点情報を更新するように構成されていることが好ましい。
【0037】
図2に、退避走行支援システムにより実行される退避走行支援処理のフローチャートを示す。図2に示す処理は、退避走行支援装置100において所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0038】
まず、ステップS101において、運転者が運転不能状態であることを検出する。例えば、運転者の姿勢や、脈拍等を検出することにより、運転者が運転不能状態であることを検出できる。その後、ステップS102に進む。
【0039】
ステップS102では、現在の自車の自己位置を推定する。例えば、周辺環境センサ161が検出した物体検出情報と、GPS受信装置162が受信したGPS地図情報から、自車の走行する道路の特徴(例えば、路面標示や看板標識等)と、GPS地図情報に含まれる道路情報における特徴とを照合する。そして自車速に基づいて、特徴となる路面標示や看板標識等の位置と自己位置との距離を算出することにより、自己位置を推定できる。その後、ステップS103に進む。
【0040】
ステップS103では、現在の自車の自己位置の周辺の退避可能地点を取得する。地図記録装置140から、現在の自車の自己位置の周辺について、退避可能地点情報を含む車両側地図情報を取得する。すなわち、地図情報に基づく自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報を取得する。また、周辺環境認識装置110から、現在の自車の自己位置の周辺に認識される退避可能地点について、退避可能地点情報を取得する。退避可能地点情報は、周辺環境情報に含まれて提供される。その後、ステップS104に進む。
【0041】
なお、車両側地図情報は、退避走行支援処理のサイクル毎にサーバ200から取得したサーバ地図情報に更新されることが好ましいが、サーバ200と退避走行支援装置100との通信ができない場合などには、現在のサイクル以前に地図記録装置140に記録された車両側地図情報を用いてもよい。また、車両側地図情報とサーバ側地図情報の双方に自車の周辺の地図情報が含まれていない場合等には、地図退避可能地点情報は取得できなかったものとして、ステップS104に進む。
【0042】
ステップS104では、周辺環境情報に基づいて、自車の走行する道路の路肩を検出する。周辺環境センサ161が検出した物体検出情報から、路肩の有無を認識してもよいし、GPS受信装置162が受信したGPS地図情報から、路肩の有無に関する情報を取得してもよい。その後、ステップS105に進む。
【0043】
ステップS105では、路肩退避スペースがあるか否かを判定する。すなわち、路肩に自車が安全に停車できる十分に大きいスペースがあるか否かを判定する。この判定は、周辺環境センサ161が検出した物体検出情報に基づいて判定することが好ましいが、GPS受信装置162が受信したGPS地図情報を代替的に用いて、もしくは併用して、判定することもできる。路肩退避スペースがあると判定された場合には、ステップS106に進み、その路肩を退避目的地に決定し、さらにステップS108に進む。路肩退避スペースが無いと判定された場合には、ステップS107に進む。
【0044】
ステップS107では、ステップS103において取得した退避可能地点から、現在の自車の自己位置に最も近い、最寄りの退避可能地点を選択する。そして、選択した最寄りの退避可能地点を退避目的地に決定する。これによって、地図退避可能地点情報に含まれる退避可能地点と、認識退避可能地点情報に含まれる退避可能地点のうち、自車が到達する際の移動距離が最も短い退避可能地点を自車の退避目的地に決定することができる。その後、ステップS108に進む。
【0045】
ステップS108では、ステップS106またはステップS107において決定された退避目的地に向けて車両を制御し、自車を退避目的地に退避走行させる。退避走行に際しては、周辺環境センサ161が検出する物体検出情報に基づいて、他車両や障害物、歩行者との衝突を回避しながら、自車線の走行、車線変更、減速等を行って、事故を回避して自車を安全に退避目的地に移動させ、停車させる。その後、ステップS109に進む。
【0046】
なお、ステップS108の処理の後に、退避目的地を必要に応じて更新するステップを挿入してもよい。退避目的地が更新される場合には、ステップS103の処理に戻る。
【0047】
ステップS109では、退避地点の情報をサーバ200に送信する。退避地点とは、自車が実際に退避し、停車した退避目的地である。その後、処理を終了する。
【0048】
図3に、停車位置情報送信処理のフローチャートを示す。図3に示す処理は、サーバ200に停車位置情報を送信する車両が走行を開始した場合に、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0049】
ステップS201に示すように、車両が道路を走行したことを検出する。その後、ステップS202に示すように、道路外や路肩に移動して停車したことを検出する。例えば、パーキングシフト、イグニッションオフ、退避走行支援システムの作動などが検出された場合に、自車が道路外や路肩に移動して停車したと検出できる。また、その車両に搭載された周辺環境センサにより、車両が走行中の車線を逸脱したことが検出された場合に、自車が道路外や路肩に移動して停車したと検出できる。その後、ステップS203に進む。ステップS203では、車両が停車した位置について、停車位置情報をサーバ200に送信する。送信する停車位置情報は、停車位置と、車両が走行していた道路から停車位置までの移動経路に関する情報を含む。
【0050】
図4に、サーバ200が実行する地図情報更新処理のフローチャートを示す。図4に示す処理は、サーバ200において所定の間隔で繰り返し実行される。
【0051】
ステップS301では、複数の停車位置情報を取得する。図2のステップS109の処理や、図3のステップS203の処理によってサーバ200に送信された停車位置情報を取得する。ステップS301では、停車位置のスペース等に基づいて、停車位置として適切と判断される停車位置情報を抽出する処理をさらに実行してもよい。例えば、停車位置情報として、車両のドアの開閉情報や、停車スペースの大きさや形状の検出情報を併せて取得し、停車位置のスペースが、自車が安全に停車するために十分である場合のみ、停車位置情報を取得するように構成してもよい。その後、ステップS302に進む。
【0052】
ステップS302では、ステップS301において複数の車両から取得した停車位置情報を、停車位置に基づいて分類する。複数の車両からの停車位置情報を停車位置に分類することにより、停車位置毎に、その停車位置に車両が停止した実績である停車実績を算出できる。例えば、ある停車位置に、複数の車両が累計で10回停車した場合、停車実績は、10回と算出できる。その後、ステップS303に進む。
【0053】
ステップS303では、データ記録装置220に記録されたサーバ側地図情報を取得する。なお、ステップS302に示す処理とステップS303に示す処理とは、順序を入れ替えてもよいし、平行して実行されてもよい。その後、ステップS304に進む。
【0054】
ステップS304では、ステップS302で分類し、算出した停車位置毎の停車実績について、停車実績が所定の停車実績閾値以上である場合に、その停車位置を退避可能地点として設定する。停車実績が所定以上であることを条件として停車位置を退避可能地点に設定することにより、あまり適切ではない停車位置の情報が退避可能地点情報に組み込まれることを回避でき、退避可能地点情報の精度が向上する。停車位置情報のデータ数が多いほど、停車実績は大きな値となるため、停車実績閾値は、停車位置情報のデータ数に対する百分率で設定してもよい。これに対し、停車位置情報のデータ数に関わらず一定値に設定してもよい。その後、ステップS305に進む。
【0055】
ステップS305では、退避可能地点に設定した停車位置について、車両が走行していた道路から停車位置までの移動経路についての情報に基づいて、停車位置までの到着時間を算出する。停車位置までの移動経路は、道路から退避可能地点までの退避経路であり、算出した到着時間は、道路から退避可能地点に到着するまでの退避時間である。退避経路および退避時間は、退避可能地点の位置とともに、退避可能地点情報の一部として更新される。停車位置を退避可能地点として追加するに際に、退避経路および退避時間を併せて追加することにより、より適切に退避目的地を決定することができ、実際に自車が退避する際に、障害物等に衝突する等の危険性を回避して、安全に退避走行を実行できる。その後、処理を終了する。
【0056】
上記のとおり、第1実施形態によれば、ステップS102~S104に示すように、周辺環境情報取得部131、自己位置推定部132、地図情報受信部152、および退避可能地点取得部133によって、周辺環境情報から認識される認識退避可能地点情報のみならず、サーバ200において複数の車両の過去の停車位置情報により更新される地図退避可能地点情報をも用いて退避可能地点を設定できる。このため、退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げることができる。そして、ステップS105~S107に示すように、退避目的地決定部134によって、設定された退避可能地点から退避目的地を決定するため、自車が安全に退避できる退避目的地をより適切に決定できる。その結果、ステップS108に示すように、退避制御部135により安全な退避走行を実現できる。
【0057】
また、ステップS109、ステップS203、ステップS301に示すように、サーバ200は、サーバ200において複数の車両の過去の停車位置情報を取得し、ステップS302~S305に示すように、これらの停車位置情報に基づいて、サーバ側地図情報を更新するため、信頼性の高い地図退避可能地点情報を利用することができる。このため、周辺環境情報から認識される認識退避可能地点情報のみに依存して退避目的地を決定する場合と比較して、信頼性の高い退避目的地の決定結果を得ることができる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態では、図1に示す退避走行支援システムにより、退避走行とともに救急要請を実行する。図5に、第2実施形態に係る退避走行支援システムにより実行される退避走行支援処理のフローチャートを示す。図5のステップS401~S403,S408,S409に示す処理は、図2のステップS101~S103,S108,S109に示す処理と同様であるため、説明を省略する。図5に示す処理は、退避走行支援装置100において所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0059】
ステップS403において、ステップS103と同様に、現在の自車の自己位置の周辺の退避可能地点を取得した後、ステップS404に進む。ステップS404では、退避可能地点において救急車の到着実績があり、退避可能地点情報に救急車の到着実績情報が含まれているか否かを判定する。救急車の到着実績がある場合には、ステップS405に進み、無い場合には、ステップS406に進む。
【0060】
ステップS405では、ステップS403において取得した退避可能地点情報を参照し、救急搬送時間が最小となる退避可能地点を自車の退避目的地に決定する。例えば、救急到着時間と施設到着時間との合計が最小となる退避可能地点を退避目的地に決定する。その後、ステップS407に進む。
【0061】
ステップS406では、ステップS107と同様に、最寄りの退避可能地点を退避目的地に決定した後、ステップS407に進む。
【0062】
ステップS407では、救急車を要請する。その後、ステップS408,S409の処理を実行した後で、一連の処理を終了する。
【0063】
図6に、サーバ200が実行する地図情報更新処理のフローチャートを示す。図6のステップS501~S504に示す処理は、図4のステップS101~S104に示す処理と同様であるため、説明を省略する。図6に示す処理は、サーバ200において所定の間隔で繰り返し実行される。
【0064】
ステップS504の後、ステップS505では、退避可能地点に設定した停車位置について、救急車の到着実績情報を取得する。救急車の到着実績情報は、停車位置情報に含まれており、ステップS501において取得される。例えば、停車位置に救急車が到着し、救急施設まで搬送された場合毎に、救助要請を行ってから救急車が停車位置に到達するまでの時間(要請後到着時間)、停車位置に救急車両が到着するまでの時間(救急到着時間)、その停車位置から救急施設に到着するまでの時間(施設到着時間)等の救急搬送時間を取得する。その後、ステップS506に進む。
【0065】
ステップS506では、ステップS505で取得した救急車の到着実績情報を統合して、停車位置毎に、救急搬送時間を算出する。例えば、停車位置毎に、要請後到着時間、救急到着時間、施設到着時間のそれぞれの合計値を実績数によって除算して平均値を求める。算出した救急搬送時間は、退避可能地点の位置とともに、退避可能地点情報の一部として更新される。停車位置を退避可能地点として追加するに際に、救急搬送時間を併せて追加することにより、実際に自車が退避目的地を決定する際に、より早く救助を受けられる退避目的地を適切に決定できる。その後、処理を終了する。
【0066】
上記のとおり、第2実施形態によれば、退避走行支援装置100において、地図退避可能地点情報に含まれる退避可能地点と、認識退避可能地点情報に含まれる退避可能地点のうち、救急搬送時間が最小となる退避可能地点を自車の退避目的地に決定する。このため、運転者が意識不明等になって、より迅速な救急搬送が求められる場合に、救急搬送時間を考慮して適切に退避目的地を決定できる。また、サーバ200において、停車位置を退避可能地点として追加するに際に、救急搬送時間を併せて更新するため、実際に自車が退避目的地を決定する際に、より早く救助を受けられる退避目的地を適切に決定できる。
【0067】
上記の各実施形態によれば、下記の作用効果を得ることができる。
【0068】
退避走行支援装置100は、周辺環境情報取得部131と、自己位置推定部132と、地図情報受信部152と、退避可能地点取得部133と、退避目的地決定部134と、退避制御部135と、を備える。
【0069】
周辺環境情報取得部131は、自車の周辺に存在する対象の情報である周辺環境情報を取得する。自己位置推定部132は、前記自車の位置である自己位置を推定する。地図情報受信部152は、サーバ200から、地図情報を受信する。この地図情報は、車両が退避できる退避可能地点の情報である退避可能地点情報を含み、サーバ側地図情報としてサーバ200に記録されている。サーバ地図情報に含まれる退避可能地点情報は、サーバ200により複数の車両から取得された複数の車両が過去に停車した停車位置の情報である停車位置情報に基づいて更新される。退避可能地点取得部133は、自己位置推定部132により推定された自己位置に基づいて地図情報を照合することにより、地図情報(サーバ側地図情報もしくは車両側地図情報)に基づく自車の周辺の退避可能地点情報である地図退避可能地点情報を取得する。退避目的地決定部134は、周辺環境情報から認識される自車の周辺の退避可能地点情報である認識退避可能地点情報と、地図退避可能地点情報とに基づいて、自車の退避目的地を決定する。退避制御部135は、退避目的地決定部134により決定された退避目的地に向けて車両を制御する。
【0070】
退避走行支援装置100によれば、周辺環境情報取得部131、自己位置推定部132、地図情報受信部152、および退避可能地点取得部133によって、周辺環境情報から認識される認識退避可能地点情報のみならず、サーバ200において複数の車両の過去の停車位置情報により更新される地図退避可能地点情報をも用いて退避可能地点を設定できるため、退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げることができる。そして、退避目的地決定部134によって、設定された退避可能地点から退避目的地を決定するため、自車が安全に退避できる退避目的地をより適切に決定でき、退避制御部135により安全な退避走行を実現できる。
【0071】
上記の退避走行支援装置100は、退避走行支援装置100との情報の送受信が可能なサーバ200と併せて、退避走行支援システムとして提供されるものであってもよい。サーバ200は、サーバ側地図情報記録部221と、データ受信部231と、地図情報更新部211とを備える。サーバ側地図情報記録部221は、退避可能地点情報を含む地図情報を記録する。データ受信部231は、複数の車両から、各車両が過去に停車した停車位置の情報である停車位置情報を取得する。地図情報更新部211は、複数の車両から取得した停車位置情報に基づいて、地図情報に含まれる退避可能地点情報を更新する。
【0072】
退避走行支援装置100またはこれを備える退避走行支援システムでは、退避目的地決定部134は、地図退避可能地点情報に含まれる退避可能地点と、認識退避可能地点情報に含まれる退避可能地点のうち、自車が到達する際の移動距離が最も短い退避可能地点を自車の退避目的地に決定するように構成されていてもよい。退避可能地点となり得る停車場所の範囲を広げた上で、最も早く到達できる退避可能地点を退避目的地に決定することができる。
【0073】
退避走行支援装置100またはこれを備える退避走行支援システムにおいて、地図退避可能地点情報は、退避可能地点における救急搬送に要する時間である救急搬送時間を含んでいてもよい。この場合、退避目的地決定部134は、地図退避可能地点情報に含まれる退避可能地点と、認識退避可能地点情報に含まれる退避可能地点のうち、救急搬送時間が最小となる退避可能地点を自車の退避目的地に決定するように構成されていてもよい。運転者が意識不明等になって、より迅速な救急搬送が求められる場合に、救急搬送時間を考慮して適切に退避目的地を決定できる。
【0074】
退避走行支援装置100またはこれを備える退避走行支援システムにおいて、サーバ200は、複数の車両から取得した停車位置情報を停車位置に基づいて分類し、停車位置に車両が停止した実績である停車実績が所定以上である停車位置を退避可能地点として追加することにより、退避可能地点情報を更新するように構成されていてもよい。退避可能地点としてあまり適切ではない停車位置の情報が退避可能地点情報に組み込まれることを回避でき、退避可能地点情報の精度が向上する。
【0075】
退避走行支援装置100またはこれを備える退避走行支援システムにおいて、退避可能地点情報は、退避可能地点を退避目的地として退避する際の退避経路の情報である退避経路情報を含んでいてもよい。この場合、サーバ200は、停車位置を退避可能地点として追加するに際に、退避経路情報を退避可能地点に紐付けして追加することにより、退避可能地点情報を更新するように構成されていることが好ましい。退避経路情報を併せて更新することにより、実際に自車が退避する際に、障害物等に衝突する等の危険性を回避して、安全に退避走行を実行できる。
【0076】
退避走行支援装置100またはこれを備える退避走行支援システムにおいて、地図退避可能地点情報は、退避可能地点における救急搬送時間を含んでいてもよい。この場合、サーバ200は、救急車両から、停車位置情報とともに、停車位置における救急搬送時間を取得し、停車位置情報と救急搬送時間とに基づいて退避可能地点情報を更新するように構成されていることが好ましい。救急搬送時間を併せて更新することにより、実際に自車が退避目的地を決定する際に、より早く救助を受けられる退避目的地を適切に決定できる。
【0077】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
100…退避走行支援装置、131…周辺環境認識部、132…自己位置推定部、133…退避可能地点取得部、134…退避目的地決定部、135…退避制御部、200…サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6