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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】保管棚の免震化構造
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/14 20060101AFI20240919BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B65G1/14 F
E04H9/02 331E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021135523
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023030412
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 政美
(72)【発明者】
【氏名】安川 真知子
(72)【発明者】
【氏名】塚田 乙
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512069(JP,A)
【文献】特開2020-125789(JP,A)
【文献】特開平02-033014(JP,A)
【文献】特開2021-196048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/14
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床面に載置される保管棚の免震化構造であって、
前記保管棚の下端に設けられたフレームまたはレールに固定された取付金具と、
前記取付金具を介して前記フレームまたは前記レールに固定された支承と、
前記保管棚の支柱に係止する、または、前記フレームもしくは前記レールの上方に被せる平面視コ字状または側面視逆U字状の第二取付金具と、を備えており、
前記取付金具は、前記フレームまたは前記レールの下面に当接する底板と、前記底板の両端から立設された一対の側板とからなり、一対の前記側板を貫通する留具を介して前記フレームまたは前記レールに固定されており、
前記支承は、少なくとも前記コンクリート床面と接する面が鋳鉄製であり、前記保管棚に所定値以上の水平力が作用した際に、前記コンクリート床面を滑動し、
前記留具は、前記側板とともに前記第二取付金具を貫通していることを特徴とする、保管棚の免震化構造。
【請求項2】
コンクリート床面に載置される保管棚の免震化構造であって、
前記保管棚の下端に設けられたフレームまたはレールに固定された取付金具と、
前記取付金具を介して前記フレームまたは前記レールに固定された支承と、を備えており、
前記取付金具は、前記フレームまたは前記レールの下面に当接する底板と、前記底板の両端から立設された一対の側板とからなり、一対の前記側板を貫通する留具を介して前記フレームまたは前記レールに固定されており、
前記支承は、少なくとも前記コンクリート床面と接する面が鋳鉄製であり、前記保管棚に所定値以上の水平力が作用した際に、前記コンクリート床面を滑動し、
前記留具は、前記フレームまたは前記レールの上方において一対の前記側板を貫通していることを特徴とする、保管棚の免震化構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管棚の免震化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
物流施設において用いられる可動型保管棚(例えば、ネスティングラック、保管棚の下部に潜り込み荷捌き場所まで自動搬送する自動搬送システム[床搬送ロボット・低床式無人搬送車]に用いられる保管棚等)では、必要に応じて荷落下対策(例えば、ストレッチ包装巻き、落下防止ストッパー、パレットすべり止めゴム等)が施されている。ところが、震度5強以上の強い地震に遭遇すると、積荷が落下する地震被害が発生するおそれがある。
近年、建物の免震や制振等の減災対策を検討・導入する動きが増加しつつあるものの、地震対策技術の多くは、高性能・高価格帯の設備機器等をターゲットにしたものが多く、一般的にコストが高い。また、建物の免震化は、建物の基礎に対して改修工事を施す必要があり、供用中の施設に対して採用するのは難しい。
そのため、物流施設においても、地震被害を低減し地震後の早期復旧を図ることができる、既存施設に適用可能な免震システムが求められている。例えば、特許文献1には、既存のラックに対して、支柱の下部に新設梁を横架し、この新設梁と床面との間に免震装置を設置した後、新設梁と床面との間で支柱を切断するラックの免震化方法が開示されている。
一方、物流施設には、可動型保管棚を用いることにより、レイアウトや棚の段数を自由に設定することを可能とした施設がある。このような物流施設では、可動型保管棚の標準的な形態を維持する必要があり、特許文献1の免震化方法のように支柱の脚部を切断するなどの加工を施すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-20273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡易な機構により地震被害を低減することを可能とした、保管棚の免震化構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、コンクリート床面に載置される保管棚の免震化構造であって、前記保管棚の下端に設けられたフレームまたはレールに支承が固定されており、前記支承は、少なくとも前記コンクリート床面と接する面が鋳鉄製であり、前記保管棚に所定値以上の水平力が作用した際に、前記コンクリート床面を滑動する。
かかる保管棚の免震構造は、保管棚の下端に設けられた支承のうち、コンクリート床面と接する面が鋳鉄製であるため、コンクリート床面との摩擦係数の低減化を図ることができる。支承は、鋳鉄に含まれる黒鉛の潤滑作用により鋼に比べてコンクリート床面との間の摩擦係数が小さい(動摩擦係数0.3以下、好ましくは0.15~0.25)。そのため、地震時に水平方向の力が作用した場合であっても、支承がコンクリート床面を滑ることで、保管棚の応答を抑制し、ひいては積荷の落下を軽減できる。また、地震動に対して、保管棚が滑ることで、地震時の力を吸収し、保管棚の転倒や損傷を抑制できる。ゆえに、支承を保管棚の下端に取り付けるのみの簡易な機構により地震被害を低減できる。なお、保管棚の下端に設けられたフレームとは、支柱の脚部において支柱同士を連結するように設けられた平面視コ字状あるいは枠状の部材や、保管棚の下端に設けられたベース盤を構成する格子状あるいは枠状の部材等をいい、保管棚の下側に別途設けられたフレームも、保管棚の下端に一体に形成されたフレームも含むものとする。
【0006】
なお、前記支承は、取付金具を介して前記保管棚に固定されており、前記取付金具は、前記フレームまたは前記レールの下面に当接する底板と、前記底板の両端から立設された一対の側板とからなり、一対の前記側板を貫通する留具を介して前記フレームまたは前記レールに固定されている。こうすることで、保管棚に加工を施すことなくあるいは保管棚の加工を最小限に抑えた状態で、支承を保管棚に固定することができる。
前記保管棚の免震化構造は、前記保管棚の支柱に係止する、または、前記フレームもしくは前記レールの上方に被せる平面視コ字状または側面視逆U字状の第二取付金具をさらに備えていてもよい。この場合には、前記留具は、前記側板とともに前記第二取付金具を貫通させる。こうすることで、二つの取付金具(取付金具と第二取付金具)によって、2か所で支持することが可能となり、支承をより確実に固定できる。
なお、前記留具は、前記フレームまたは前記レールの上方において一対の前記側板を貫通していてもよいし、前記フレームまたは前記レールおよび一対の側板を貫通していてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の保管棚の免震化構造によれば、簡易な機構により保管棚の地震被害を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る保管棚の概要を示す斜視図である。
図2】第一実施形態の支承の取付構造を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
図3】第一取付金具と支承との接合部を示す断面図である。
図4】他の形態にかかる保管棚の下部を示す側面図である。
図5】第二実施形態に係る保管棚の概要を示す斜視図である。
図6】第二実施形態の支承の取付構造を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
図7】第三実施形態のベース盤を示す斜視図である。
図8】第三実施形態の支承の取付構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は横断図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
本実施形態では、物流倉庫で用いられる可動型の保管棚(その内、逆ネスティングラック:荷置部が上部にあるタイプ)2について、震度5強以上の強い地震に遭遇した場合であっても、保管棚2からの積荷の落下や保管棚2の転倒、損傷の地震被害を抑制することを目的とした保管棚の免震構造(免震構造1)について説明する。図1に、本実施形態の保管棚2を示す。第一実施形態の免震構造1は、図1に示すように、保管棚2の底部とコンクリート床面4との間に支承3を介在させるものである。
【0010】
保管棚2は、図1に示すように、格子状の荷置部21と、荷置部21を支持する支柱22と、支柱22同士を連結する底フレーム23とを備えている。
荷置部21は、金属部材を組み合わせることにより格子状に形成されている。荷置部21は、平面視矩形状の板材により構成することも可能である。
支柱22は、荷置部21の四隅にそれぞれ配設されている。支柱22は、金属製の角筒材からなり、上端部が荷置部21に固定されていて、下端部に底フレーム23が固定されている。
底フレーム23は、金属製の角筒材を組み合わせることにより、平面視コ字状に形成されている。底フレーム23は、支柱22の下端部に固定されている。底フレーム23とコンクリート床面4との間に支承3が介設されている。
【0011】
図2および図3に支承3を示す。支承3は、コンクリート床面4に対する動摩擦係数が0.3以下、好ましくは0.15~0.25の鋳鉄製の板状部材からなる。支承3の上面は、図2(a)および(b)に示すように、第一取付金具5の底面に固定されている。第一取付金具5は、第二取付金具6と組み合わされた状態で底フレーム23と支柱22に固定されている。すなわち、支承3は、第一取付金具5および第二取付金具6を介して底フレーム23と支柱22に固定されている。支承3と第一取付金具5とは、例えば、図3に示すように、皿ボルト71により固定すればよい。具体的には、底板51に皿もみを設け,支承3に皿ボルト71を締着可能なボルト孔を形成しておき、第一取付金具5を貫通させた皿ボルト71を締着することにより、支承3を第一取付金具5に固定する。
【0012】
第一取付金具5は、金属製の部材であって、底フレーム23の下面に当接する底板51と、底板51の両端から立設された一対の側板52,52とからなり、側面視U字状を呈している。本実施形態の第一取付金具5は、一枚の金属板をU字状に折曲げ加工することにより形成されている。
底板51は、支承3の平面形状と同等の平面形状を有している。底板51の幅は、図2(b)および(c)に示すように、底フレーム23の幅に一対の側板52,52の厚さを加えた大きさを有している。そのため、第一取付金具5を底フレーム23に設置した状態で、側板52が底フレーム23の側面に当接する。
【0013】
側板52は、底フレーム23よりも大きな高さを有しており、上部が底フレーム23の上面よりも上側に突出している。また、両側板52,52のうち、底フレーム23の上方に突出している部分には、留具7としてのボルトを挿通するための貫通孔がそれぞれ形成されている。すなわち、留具7は、対向する両側板52,52の貫通孔に挿通されることで、一対の側板52,52を貫通する。本実施形態では、一つの側板52につき貫通孔を2か所形成する。一方の貫通孔は、底フレーム23の上面に下端が一致する位置に形成し、他方の貫通孔は支柱22の側面に側端が一致する位置に形成する。本実施形態では、図2(a)に示すように、2つの貫通孔の高さ位置が異なっている場合について説明するが、2つの貫通孔は、図4に示す変形例のように、同じ高さ位置に形成されていてもよい。図4では、支柱22と底フレーム23との接合部に、支柱22の側面から補強材24が延設されていて、底フレーム23の上面に載置されている。貫通孔は、補強材24の上面に下端が一致するように形成するのが望ましい。また、一方の貫通孔は、支柱22と補強材24との角部に形成する。なお、補強材24がない場合は、貫通孔は、底フレーム23の上面に沿って形成する。
【0014】
第二取付金具6は、支柱22の側面に添設される底板61と、底板61の両端から立設された一対の側板62,62とからなり、平面視コ字状を呈している。本実施形態の第二取付金具6は、一枚の金属板をコ字状に加工することにより形成されている。
底板61の幅は、図2(b)および(c)に示すように、支柱22の幅に第一取付金具5の一対の側板52,52の厚さと一対の側板62,62の厚さとを加えた大きさを有している。そのため、第二取付金具6を支柱22に設置した状態で、側板62が第一取付金具5の側板52を介して支柱22の側面に当接する。
【0015】
側板62は、支柱22の幅よりも大きな長さを有しており、先端部が支柱22よりも側方に突出している。また、両側板62,62のうち、支柱22よりも側方に突出している部分には、留具としてのボルトを挿通するための貫通孔が対向する位置にそれぞれ形成されている。第二取付金具6の側板62は、少なくとも先端部が第一取付金具5の側板52の上部(側板52のうち、底フレーム23の上方に突出している部分)に重なっている。第二取付金具6の側板62に形成された貫通孔は、第一取付金具5の側板52に形成された貫通孔に対応する位置に形成されている。
【0016】
第一取付金具5を底フレーム23に固定する際には、底フレーム23の下側から第一取付金具5を嵌め込むとともに、支柱22の側方から第二取付金具6を嵌め込み、互いの側板52,62同士を重ねた状態で、貫通孔に留具7(ボルトの軸部)を貫通させて固定する。貫通孔を挿通した留具7は、底フレーム23の上面または支柱22の側面に添設された状態となる。留具7を締め付けることで、第一取付金具5の側板52が底フレーム23の側面に密着するとともに、第二取付金具6の側板62が支柱22の側面に密着し、第一取付金具5および第二取付金具6を介して支承3が保管棚2に固定される。また、留具7が底フレーム23または支柱22に当接していることで、支承3のずれが抑制されている。
【0017】
本実施形態の保管棚の免震構造1によれば、保管棚2の下端に設けられた支承3(コンクリート床面4と接する面)が鋳鉄製であるため、コンクリート床面4に対する摩擦係数が小さくなる。支承3は、鋳鉄に含まれる黒鉛の潤滑作用により鋼に比べてコンクリート床面4との間の摩擦係数が小さい(動摩擦係数0.3以下、好ましくは0.15~0.25)。そのため、地震時に水平方向の力が作用した場合であっても、支承3がコンクリート床面4を滑ることで、保管棚2の応答を抑制し、ひいては積荷の落下を軽減できる。また、地震動に対して、保管棚2が滑ることで、地震時の力を吸収し、保管棚2の転倒や損傷を抑制できる。ゆえに、支承3を保管棚2の下端に取り付けるのみの簡易な機構により地震被害を低減できる。
支承3は、第一取付金具5および第二取付金具6により、保管棚2に着脱可能である。そのため、保管棚2は、必要に応じて支承3を取り外して、他の保管棚2上に重ねることができる。
また、支承3を保管棚2に固定する際に、保管棚2を加工する必要がないため、保管棚2の加工に要する手間や費用を削減できる。
【0018】
<第二実施形態>
本実施形態では、物流倉庫で用いられる可動型の保管棚(その内、正ネスティングラック:荷置部が下部にあるタイプ)2について、震度5強以上の強い地震に遭遇した場合であっても、保管棚2からの積荷の落下や保管棚2の転倒、損傷の地震被害を抑制することを目的とした保管棚の免震構造(免震構造12)について説明する。図5に、本実施形態の保管棚2を示す。免震構造12は、図5に示すように、保管棚2の底部とコンクリート床面4との間に支承3を介在させるものである。
【0019】
保管棚2は、図5に示すように、格子状の荷置部21と、荷置部21の四隅に設けられた支柱22と、荷置部21の下側に固定されたレール25と、支柱22の上端部同士を連結する上フレーム26および上レール25aとを備えている。
荷置部21は、金属部材を組み合わせることにより格子状に形成されている。荷置部21は、平面視矩形状の板材により構成することも可能である。荷置部21には、一対のレール25,25が固定されている。
一対のレール25,25は荷置部21の台座28および支持板29を介して荷置部21の下面に固定されていて、荷置部21の下面から隙間をあけて設けられている。レール25は、断面視三角形状の金属部材で、等辺山形鋼、いわゆるアングル材により構成されていて、下側が開口するように設けられている。レール25とコンクリート床面4との間には支承3が介設されている。
支柱22は、荷置部21の四隅にそれぞれ配設されている。支柱22は、金属製の角筒材からなり、支柱22の脚部は荷置部21に固定されている。
上フレーム26は、金属製の角筒材からなり、一対の上レール25a,25aと組み合わせることにより、平面視コ字状に形成されている。上フレーム26と上レール25aは、支柱22の上端部に固定されている。上レール25aは、レール25と噛み合う断面視三角形状の金属部材で、等辺山形鋼、いわゆるアングル材により構成されていて、上レール25aは、レール25と平面視で重なるように設けられており、保管棚2の上に他の保管棚2を積み重ねた際に、他の保管棚2の上レール25aに挿入される。
【0020】
図6に支承3を示す。支承3は、コンクリート床面4に対する動摩擦係数が0.3以下,好ましくは0.15~0.25の鋳鉄製の板状部材からなる。支承3の上面は、図6(a)および(b)に示すように、第一取付金具5の底面に固定されている。支承3と第一取付金具5とは、例えば、皿ボルト71により固定すればよい(図3参照)。具体的には、底板51に皿もみを設け、支承3に皿ボルト71を締着可能なボルト孔を形成しておき、第一取付金具5を貫通させた皿ボルト71を締着することにより、支承3を第一取付金具5に固定する。第一取付金具5は、第二取付金具6と組み合わされた状態でレール25と荷置部21を構成する部材(構成部材27)に固定されている。すなわち、支承3は、第一取付金具5および第二取付金具6を介してレール25と構成部材27に固定されている。
【0021】
第一取付金具5は、金属製の部材であって、レール25の下面に当接する底板51と、底板51の長辺両端から側面視U字状に立設された一対の側板52,52と支持板29に当接するように短辺一端から立設された側板53とからなる。本実施形態の第一取付金具5は、一枚の金属板をU字状に折曲げ加工することにより形成されている。
底板51は、支承3の平面形状と同等の平面形状を有している。底板51の幅は、図6(b)に示すように、レール25の幅に一対の側板52,52の厚さを加えた大きさを有している。そのため、第一取付金具5をレール25に設置した状態で、側板52がレール25の側面に当接する。かつ短辺一端は側板53が支持板29に当接する。
【0022】
側板52は、レール25よりも大きな高さを有しており、上部がレール25の上面よりも上側に突出している。また、両側板52,52のうち、構成部材27の下面よりも下側の部分には、留具7としてのボルトを挿通するための貫通孔がそれぞれ形成されている。すなわち、留具7は、対向する両側板52,52の貫通孔に挿通されることで、一対の側板52,52を貫通する。
【0023】
第二取付金具6は、レール25の上方において荷置部21に上載される上板61と、上板61の両端から下向きに延設された一対の側板62,62とからなり、側面視逆U字状を呈している。本実施形態の第二取付金具6は、一枚の金属板を逆U字状に折曲げ加工することにより形成されている。第二取付金具6は、構成部材27に被せるように設けられてる。
上板61の幅は、図6(b)に示すように、構成部材27の幅に一対の側板62,62の厚さを加えた大きさを有している。そのため、第二取付金具6を荷置部21に設置した状態で、側板62が構成部材27の側面に当接する。
【0024】
側板62は、構成部材27よりも大きな高さを有しており、先端部が構成部材27よりも下側に突出している。また、両側板62,62のうち、構成部材27よりも下側に突出している部分には、留具としてのボルトを挿通するための貫通孔が対向する位置にそれぞれ形成されている。第二取付金具6の側板62の少なくとも先端部は、第一取付金具5の側板52の上部(側板52のうち、レール25の上方に突出している部分)に重なっている。第二取付金具6の側板62に形成された貫通孔は、第一取付金具5の側板52に形成された貫通孔に対応する位置に形成されている。
【0025】
第一取付金具5をレール25に固定する際には、レール25の下側から第一取付金具5を嵌め込むとともに、荷置部21に第二取付金具6を被せ、互いの側板52,62同士を重ねた状態で、貫通孔を貫通させて留具7により固定する。留具7をレール25と構成部材27の間で締め付けることで、第一取付金具5と第二取付金具6とが連結されて、支承3が保管棚2に固定される。第一取付金具5と第二取付金具6とがレール25と構成部材27を挟み込み、第二取付金具6が荷置部に、第一取付金具5の側板53が支持板29に当接することで支承3のずれが抑制される。
【0026】
本実施形態の保管棚の免震構造12によれば、レール25を有する保管棚2であっても、保管棚下端に支承3を設けることができ、第一実施形態の保管棚の免震構造1と同様の作用効果を得ることができる。
支承3を保管棚2に固定する際に、保管棚2を加工する必要がないため、保管棚2の加工に要する手間や費用を削減できる。
【0027】
<第三実施形態>
本実施形態では、物流倉庫で用いられる可動型の保管棚2について、震度5強以上の強い地震に遭遇した場合であっても、保管棚2からの積荷の落下や保管棚2の転倒、損傷の地震被害を抑制することを目的とした保管棚の免震構造(免震構造13)について説明する。本実施形態では、コンクリート床面上に載置したベース盤20上に逆ネスティングラック保管棚2を設置する場合について説明する。図7に、ベース盤20を示す。免震構造13は、図7に示すように、保管棚2の最下段に設けられたベース盤20とコンクリート床面4との間に支承3を介在させるものである。ベース盤20は、金属部材を組み合わせることにより格子状に形成されている。ベース盤20は、保管棚2の荷置部(支柱22を除いた部分)と同形状が望ましい。同形状とすることによって、ベース盤20上に保管棚2を簡易に載せることが可能となる。また、第二実施形態で示した方法により支承3を取り付けた正ネスティングラックの荷置部21を上面高さで支柱22を切断し、荷置部21上面の所定の位置に一対の上レール25a,25aを設ければ、レール25を有する逆ネスティングラック保管棚2のベース盤20とすることができる。または、市販の正ネスティングラック専用の最上段に設ける荷置台を用いても良い。
【0028】
図8に支承3を示す。支承3は、コンクリート床面4に対する動摩擦係数が0.3以下、好ましくは0.15~0.25の鋳鉄製の板状部材からなる。支承3は、図8(b)および(c)に示すように、上面が取付金具5の底面に固定されていて、取付金具5を介してベース盤20に固定されている。支承3と取付金具5とは、例えば、皿ボルト71により固定すればよい(図3参照)。具体的には、底板51に皿もみを設け、支承3に皿ボルト71を締着可能なボルト孔を形成しておき、取付金具5を貫通させた皿ボルト71を締着することにより、支承3を取付金具5に固定する。
【0029】
取付金具5は、金属製の部材であって、ベース盤20の構成部材27の下面に当接する底板51と、底板51の両端から立設された一対の側板52,52とからなり、側面視U字状を呈している。本実施形態の取付金具5は、一枚の金属板をU字状に折曲げ加工することにより形成されている。
底板51は、支承3の平面形状と同等の平面形状を有している。底板51の幅は、図8(b)に示すように、構成部材27の幅に一対の側板52,52の厚さを加えた大きさを有している。そのため、取付金具5を構成部材27に設置した状態で、側板52が構成部材27の側面に当接する。
【0030】
側板52は、図8(a)に示すように、構成部材27の側面に添設されている。また、両側板52,52には、留具7としてのボルトを挿通するための貫通孔がそれぞれ形成されている。すなわち、留具7は、対向する両側板52,52の貫通孔に挿通されることで、一対の側板52,52を貫通する。また、構成部材27には、取付金具5の貫通孔の位置に対応して貫通孔が形成されている。
取付金具5をベース盤20に固定する際には、構成部材27の下側から取付金具5を嵌め込むとともに、貫通孔に留具7を挿通させて固定する。もしくは、取付金具5をベース盤20に溶接してもよい。
【0031】
本実施形態の保管棚の免震構造13によれば、第二取付金具6を使用しない場合であっても、保管棚2に支承3を設けることができる。また、免震構造13によれば、支承3(コンクリート床面4と接する面)が鋳鉄製であるため、コンクリート床面4との摩擦係数の低減化を図ることができる。支承3は、鋳鉄に含まれる黒鉛の潤滑作用により鋼に比べてコンクリート床面4との間の摩擦係数が小さい(動摩擦係数0.3以下、好ましくは、0.15~0.25)。そのため、地震時に水平方向の力が作用した場合であっても、支承3がコンクリート床面4を滑ることで、保管棚2の応答を抑制し、ひいては積荷の落下を軽減できる。また、地震動に対して、保管棚2が滑ることで、地震時の力を吸収し、保管棚2の転倒や損傷を抑制できる。ゆえに、支承3を保管棚2の下端に取り付けるのみの簡易な機構により地震被害を低減できる。
ベース盤20と上載する逆ネスティングラック保管棚2を市販の緊結金物や緊結ベルトで緊結すれば、最下段の保管棚2に積荷重量が加わることにより、重心が低くなり、保管棚2のロッキング振動が抑制され、保管棚2は転倒しにくくなるため、保管棚の多段積みが容易となる。更に、逆ネスティングラックのみで用いた場合に生じる、床に直置きされた積荷と保管棚との衝突に伴う荷崩れの発生が防げる。
また、ベース盤20は、荷を直接床に直置き保管する、平置き形態をとる倉庫で、物流荷役・保管用のパレット用の免震架台としても利用することができる。
【0032】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、支承3が鋳鉄製の板材の場合について説明したが、少なくともコンクリート床面と接する面が鋳鉄製であれば、支承3の構成は限定されるものではない。
本発明の免震構造1は、例えば、可動型の保管棚でレール式の逆ネスティングラック(荷置部が上部にあるタイプで、保管棚の上下積み重ね部にレールがあるもの)や据置型の保管棚(パレットラック[重量棚]や単品棚[中量棚]等)の柱脚やバケット自動倉庫のラック柱脚に使用してもよい。
また、保管棚2を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、スチール、ステンレス,アルミニウム合金等や木質材等であってもよい。
前記実施形態では、保管棚2に支承3を固定する際に第一取付金具5と第二取付金具6を利用するものとしたが、第一取付金具5により固定してもよい。同様に、ベース盤20に支承3を固定する際に第一取付金具5と第二取付金具6を利用して固定してもよい。
また、ベース盤20の構成は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
1,12,13 免震構造(保管棚の免震構造)
2 保管棚
21 荷置部
22 支柱
23 底フレーム
3 支承
4 コンクリート床面
5 第一取付金具
6 第二取付金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8