(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】支持構造物の耐震補強装置
(51)【国際特許分類】
B65D 90/12 20060101AFI20240919BHJP
B65D 90/22 20060101ALI20240919BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B65D90/12 C
B65D90/22 D
E04G23/02 D
(21)【出願番号】P 2021143332
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 立
(72)【発明者】
【氏名】竹本 貴紀
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0163960(US,A1)
【文献】特開2020-084673(JP,A)
【文献】特開昭61-186644(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3335546(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/12
B65D 90/22
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持物を支持する複数の脚と、複数の前記脚が固定された既設ベースプレートと、該既設ベースプレートと既設基礎台を固定する既設基礎ボルトとから成る支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強装置は、複数の基礎台上に設置された前記既設ベースプレートと、複数の前記基礎台の少なくとも1つの前記基礎台上の前記既設ベースプレート上に設置された耐震補強ベースプレートとを備えていると共に、ボルトは既設基礎ボルトと追設基礎ボルトから成り、前記耐震補強ベースプレートと前記既設ベースプレートが前記既設基礎ボルトと前記追設基礎ボルトで前記基礎台に固定され、かつ、前記耐震補強ベースプレートと前記脚が溶接で固定され
、
前記基礎台が既設基礎台と、該既設基礎台に並設された追設基礎台とから成り、前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎台の上に配置された前記既設ベースプレート上及び前記追設基礎台の上に配置され、前記既設ベースプレートに並設されたスペーサー上に設置されていると共に、前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎ボルトで前記既設基礎台に前記既設ベースプレートを介して固定され、かつ、前記追設基礎ボルトで前記追設基礎台に前記スペーサーを介して固定されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強ベースプレートは前記脚の形状に対応した半割れ形状から成り、半割れした前記耐震補強ベースプレートのそれぞれが、前記脚の前後又は左右から挟み込まれて前記脚と溶接されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項3】
支持物を支持する複数の脚と、複数の前記脚が固定された既設ベースプレートと、該既設ベースプレートと既設基礎台を固定する既設基礎ボルトとから成る支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強装置は、複数の基礎台上に設置された前記既設ベースプレートと、複数の前記基礎台の少なくとも1つの前記基礎台上の前記既設ベースプレート上に設置された耐震補強ベースプレートとを備えていると共に、ボルトは既設基礎ボルトと追設基礎ボルトから成り、前記耐震補強ベースプレートと前記既設ベースプレートが前記既設基礎ボルトと前記追設基礎ボルトで前記基礎台に固定され、かつ、前記耐震補強ベースプレートと前記脚が溶接で固定され、
前記基礎台が既設基礎台から成り、前記耐震補強ベースプレートは、前記既設ベースプレート上及び前記既設基礎台の一部に設置され、前記既設ベースプレートに並設されたスペーサー上に設置されていると共に、前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎ボルトで前記既設基礎台に前記既設ベースプレートを介して固定され、かつ、前記追設基礎ボルトで前記既設基礎台に前記スペーサーを介して固定されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強ベースプレートと前記脚は、リブで結合されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項5】
請求項1
乃至4のいずれか1項に記載の支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強ベースプレートと前記脚は、両者が接する部分の前記脚の形状の全周に渡って溶接され固定されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項6】
支持物を支持する複数の脚と、複数の前記脚が固定された既設ベースプレートと、該既設ベースプレートと既設基礎台を固定する既設基礎ボルトとから成る支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強装置は、複数の基礎台上に設置された前記既設ベースプレートと、複数の前記基礎台の少なくとも1つの前記基礎台上の前記既設ベースプレート上に設置された耐震補強ベースプレートとを備えていると共に、ボルトは既設基礎ボルトと追設基礎ボルトから成り、前記耐震補強ベースプレートと前記既設ベースプレートが前記既設基礎ボルトと前記追設基礎ボルトで前記基礎台に固定され、かつ、前記耐震補強ベースプレートと前記脚が溶接で固定され、
前記基礎台が既設基礎台から成り、前記耐震補強ベースプレートは断面L字状に形成され、断面L字状の前記耐震補強ベースプレートの一部が前記既設基礎台の側面に位置し、断面L字状の前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎ボルトで前記既設基礎台に前記既設ベースプレートを介して固定されていると共に、前記既設基礎台の側面に位置している断面L字状の前記耐震補強ベースプレートは、前記追設基礎ボルトで前記既設基礎台の側面に固定されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の支持構造物の耐震補強装置であって、
断面L字状の前記耐震補強ベースプレートは、そのL字状に曲がった角部が複数のリブで覆われていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項8】
支持物を支持する複数の脚と、複数の前記脚が固定された既設ベースプレートと、該既設ベースプレートと既設基礎台を固定する既設基礎ボルトとから成る支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強装置は、複数の基礎台上に設置された前記既設ベースプレートと、複数の前記基礎台の少なくとも1つの前記基礎台上の前記既設ベースプレート上に設置された耐震補強ベースプレートとを備えていると共に、ボルトは既設基礎ボルトと追設基礎ボルトから成り、前記耐震補強ベースプレートと前記既設ベースプレートが前記既設基礎ボルトと前記追設基礎ボルトで前記基礎台に固定され、かつ、前記耐震補強ベースプレートと前記脚が溶接で固定され、
前記基礎台が既設基礎台から成り、前記耐震補強ベースプレートは断面L字状に形成され、断面L字状の前記耐震補強ベースプレートの一部が前記既設基礎台の側面に位置すると共に、前記耐震補強ベースプレートの前記既設基礎台の側面に位置する部分の外側に、鉛直方向下方に延びる鉛直方向板が前記既設基礎台の側面との間に空間を持って設置され、前記空間には鉛直方向スペーサーが配置され、かつ、断面L字状の前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎ボルトで前記既設基礎台に前記既設ベースプレートを介して固定されていると共に、前記既設基礎台の側面に位置している断面L字状の前記耐震補強ベースプレートは、前記追設基礎ボルトで前記既設基礎台の側面に、前記鉛直方向板及び鉛直方向スペーサーを介して固定されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【請求項9】
請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載の支持構造物の耐震補強装置であって、
断面L字状の前記耐震補強ベースプレートと前記脚は、両者が接する部分の前記脚の形状の全周に渡って溶接され固定されていることを特徴とする支持構造物の耐震補強装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は支持構造物の耐震補強装置に係り、例えば、タンク或いは熱交換器等を支持する複数の脚と、この複数の脚が固定された既設ベースプレートと、この既設ベースプレートと既設基礎台を固定する既設基礎ボルトとから成るものに好適な支持構造物の耐震補強装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
支持構造物の耐震補強装置の先行技術文献としては、特許文献1に記載の平底円筒形タンクの耐震補強装置を挙げることができる。
【0003】
この特許文献1の平底円筒形タンクの耐震補強装置には、タンク内の貯蔵水を水抜きせずに耐震補強を行うために、コンクリートにて形成された基礎台上にボルトで固定された底板と、この底板上に設置された円筒状の胴体とから成る平底円筒形タンクの耐震補強装置であって、前記底板の外周に位置する前記基礎台に取り付けられた耐震補強基礎ボルトに耐震補強底板を固定し、この耐震補強底板と前記底板を溶接にて取り付けると共に、前記耐震補強底板の耐震補強ボルトと前記底板の前記ボルトとが二列になるように円周上に配置されたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既に基礎ボルトにより据え付けられている設備への耐震要求が引き上げられ、基礎ボルトの耐震性を向上させるため、耐震補強が必要となる場合がある。
【0006】
この場合、一つの方法として、基礎ボルトを新たに追設することにより、1つの基礎ボルトに掛かる応力を低減することが可能になるが、そのためには、新たに追設する基礎ボルトを取り付けるベースプレートを拡張する必要がある。
【0007】
上述した特許文献1の平底円筒形タンクの耐震補強装置では、既存底板(ベースプレート)と耐震補強底板(耐震補強ベースプレート)の境界を溶接する構造となっており、また、耐震補強底板(耐震補強ベースプレート)と既存底板(ベースプレート)とが溶接される溶接部の直下に位置する基礎台には空間や断熱材を設置することで、溶接部直下のコンクリート製の基礎台に溶接の熱影響を与えないことを可能としている。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1の平底円筒形タンクの耐震補強装置では、溶接は既存の耐震補強底板(耐震補強ベースプレート)端と取り合う長さのみであり、溶接線が短く溶接部が強度的に劣り耐震性が低くなる恐れがある。また、基礎台への溶接時の入熱回避のために、既設の基礎台へ空間等の加工が必要となる。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、コンクリート製の基礎台に空間等の加工を施すことなく溶接時の熱影響を回避して耐震性の向上が図れる支持構造物の耐震補強装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の支持構造物の耐震補強装置は、上記目的を達成するために、支持物を支持する複数の脚と、複数の前記脚が固定された既設ベースプレートと、該既設ベースプレートと既設基礎台を固定する既設基礎ボルトとから成る支持構造物の耐震補強装置であって、
前記耐震補強装置は、複数の基礎台上に設置された前記既設ベースプレートと、複数の前記基礎台の少なくとも1つの前記基礎台上の前記既設ベースプレート上に設置された耐震補強ベースプレートとを備えていると共に、ボルトは既設基礎ボルトと追設基礎ボルトから成り、前記耐震補強ベースプレートと前記既設ベースプレートが前記既設基礎ボルトと前記追設基礎ボルトで前記基礎台に固定され、かつ、前記耐震補強ベースプレートと前記脚が溶接で固定され、
前記基礎台が既設基礎台と、該既設基礎台に並設された追設基礎台とから成り、前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎台の上に配置された前記既設ベースプレート上及び前記追設基礎台の上に配置され、前記既設ベースプレートに並設されたスペーサー上に設置されていると共に、前記耐震補強ベースプレートは、前記既設基礎ボルトで前記既設基礎台に前記既設ベースプレートを介して固定され、かつ、前記追設基礎ボルトで前記追設基礎台に前記スペーサーを介して固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンクリート製の基礎台に空間等の加工を施すことなく溶接時の熱影響を回避して耐震性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】支持構造物の耐震補強装置が耐震補強される前の支持構造物の一例である横置一胴円筒形容器の正面図である。
【
図4】本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例1の概略構成を示し、横置一胴円筒形容器の正面図である。
【
図6】
図4に示した支持構造物の耐震補強装置を構成する半割れした耐震補強ベースプレート同士の溶接を、溶接作業台で実施する場合を示す図である。
【
図7】本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例2の概略構成を示し、横置一胴円筒形容器の正面図である。
【
図8】本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例3の概略構成を示し、横置一胴円筒形容器の正面図である。
【
図9】本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例4の概略構成を示し、横置一胴円筒形容器の正面図である。
【
図11】本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例5の概略構成を示し、横置一胴円筒形容器の正面図である。
【
図12】本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例6の概略構成を示し、横置一胴円筒形容器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の支持構造物の耐震補強装置について説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【0014】
先ず、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例を説明する前に、耐震補強前の既設設備の一例である横置一胴円筒形容器の支持構造について、
図1、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0015】
図1は、耐震補強前の既設設備(支持物)の一例である横置一胴円筒形容器(例えば、タンク、熱交換器等)の正面図であり、
図2は
図1の側面図、
図3は
図1のA-A線に沿った断面図である。
【0016】
該図に示すように、耐震補強前の既設設備(支持物)の一例である横置一胴円筒形容器(例えば、タンク、熱交換器等)の胴100は、横置一胴円筒形容器の胴100を支持する複数の脚3と、複数の脚3が溶接により固定された炭素鋼等の既設ベースプレート4と、既設ベースプレート4とコンクリート製の既設基礎台5を固定する既設基礎ボルト1およびナット2から成る支持構造物により支持されている。
【0017】
ところが、既に既設基礎ボルト1により据え付けられている既設設備への耐震要求が引き上げられ、既設基礎ボルト1の耐震性を向上させるため、耐震補強が必要となる場合がある。
【0018】
この既設基礎ボルト1の耐震性を向上させるためになされたのが本発明の支持構造物の耐震補強装置であり、以下、その詳細について説明する。
【実施例1】
【0019】
図4に、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例1の概略構成を示し、
図5は、
図4のA-A線に沿った断面図である(但し、
図5では既設ベースプレート4は見えない)。
【0020】
該図に示す本実施例の支持構造物は、支持物である横置一胴円筒形容器(例えば、タンク、熱交換器等)の胴100を支持する複数の脚3と、複数の脚3が固定された既設ベースプレート4と、既設ベースプレート4とコンクリート製の既設基礎台5を固定する既設基礎ボルト1で構成されている。
【0021】
そして、本実施例の支持構造物の耐震補強装置は、複数の既設基礎台5上に設置された既設ベースプレート4と、複数の既設基礎台5の少なくとも1つの既設基礎台5上の既設ベースプレート4上に設置された炭素鋼等から成る耐震補強ベースプレート9とを備えていると共に、ボルトは既設基礎ボルト1と追設基礎ボルト8から成り、耐震補強ベースプレート9と既設ベースプレート4が既設基礎ボルト1と追設基礎ボルト8で基礎台に固定され、かつ、耐震補強ベースプレート9と脚3が溶接部10aで溶接により固定され、耐震補強ベースプレート9と脚3は、両者が接する部分の脚3の形状の全周に渡って溶接部10bで溶接により固定されている。即ち、脚3は断面H型に形成され、その断面H型の脚3の全周に渡って溶接部10bで溶接により固定されている。
【0022】
具体的には、本実施例の支持構造物の耐震補強装置は、基礎台が既設基礎台5と、この既設基礎台5に並設された追設基礎台6とから成り、耐震補強ベースプレート9は、既設基礎台5の上に配置された既設ベースプレート4上及び追設基礎台6の上に配置され、既設ベースプレート4に並設されたスペーサー7上に設置されていると共に、耐震補強ベースプレート9は、既設基礎ボルト1で既設基礎台5に既設ベースプレート4を介して固定され、かつ、追設基礎ボルト8で追設基礎台6にスペーサー7を介して固定されており、脚3は断面H型に形成され、その断面H型の脚3の全周に渡って溶接部10bで溶接により固定されている。
【0023】
また、スペーサー7は、脚3と溶接されている耐震補強ベースプレート9と既設基礎台5及び追設基礎台6の間に位置し、追設基礎ボルト8で結合されている。
【0024】
このように、耐震補強ベースプレート9と追設基礎台6を追設基礎ボルト8で固定することで、地震時に生じる荷重を追設基礎ボルト8と既設基礎ボルト1で分担することができる。
【0025】
また、耐震補強ベースプレート9は、脚3の形状(断面H型)に対応した半割れ形状からなり、半割れした耐震補強ベースプレート9のそれぞれが、脚3の前後(
図5の左右)又は左右(
図5の上下)から挟み込まれて脚3と溶接部10a及び10bで溶接されている。
【0026】
溶接部10a及び10bを耐震補強ベースプレート9の半割れ部分に設けることで、溶接における熱が直接的に既設基礎台5に伝わることを緩和することが可能である。即ち、直接的に溶接熱が既設基礎台5に伝わるのではなく、既設ベースプレート4を介して既設基礎台5に溶接熱が伝わることから、直接的に溶接熱を既設基礎台5に伝わることを緩和することが可能となる。
【0027】
図6は、半割れした耐震補強ベースプレート9同士の溶接を、溶接作業台11で実施する例を示すものである。
【0028】
図6に示す例は、溶接作業台11の上で耐震補強ベースプレート9の半割れ部分を溶接し、溶接作業台11を取り除いた後に、耐震補強ベースプレート9と断面H型の脚3とを全周溶接するものである。
【0029】
図6の例では、耐震補強ベースプレート9の半割れ部分を溶接した後に、耐震補強ベースプレート9を脚3に溶接することができ、耐震補強ベースプレート9同士の溶接における熱が既設基礎台5に伝わることを更に緩和することも可能である。
【0030】
このような本実施例によれば、コンクリート製の既設基礎台5に従来のような空間等の加工を施すことなく溶接時の熱影響を回避して耐震性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例2を、
図7を用いて説明する。
【0032】
図7に示す本実施例の支持構造物の耐震補強構造は、基礎台が耐震補強ベースプレート9を設置するために十分なスペースがある既設基礎台5Aから成り、耐震補強ベースプレート9は、既設ベースプレート4上及び既設基礎台5Aの一部に設置され、既設ベースプレート4に並設されたスペーサー7上に設置されていると共に、耐震補強ベースプレート9は、既設基礎ボルト1で既設基礎台5Aに既設ベースプレート4を介して固定され、かつ、追設基礎ボルト12で既設基礎台5Aにスペーサー7を介して固定されているものである。
【0033】
即ち、既設基礎台5Aが耐震補強ベースプレート9を設置するために十分なスペースがある場合、つまり、既設基礎台5Aと耐震補強ベースプレート9が略同じ大きさ(軸方向幅が略同じ。実施例1の既設基礎台5の軸方向幅+追設基礎台6の軸方向幅でもある)である場合、追設基礎ボルト12で耐震補強ベースプレート9を、スペーサー7を介して既設基礎台5Aに固定するものである。
【0034】
このような本実施例の構成であっても、その効果は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0035】
次に、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例3を、
図8を用いて説明する。
【0036】
図8に示す本実施例の支持構造物の耐震補強構造は、耐震補強ベースプレート9aが断面L字状に形成され、断面L字状の耐震補強ベースプレート9aの一部(L字の短辺部分)が既設基礎台5の側面に位置し、そして、断面L字状の耐震補強ベースプレート9aの長辺部分は、既設基礎ボルト1で既設基礎台5に既設ベースプレート4を介して固定されていると共に、既設基礎台5の側面に位置している断面L字状の耐震補強ベースプレート9aの短辺部分は、追設基礎ボルト12で既設基礎台5の側面に固定されている。
【0037】
このような本実施例の構成とすることにより、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、周囲に移動できないような物体があった場合に、その物体に干渉して実施例1のような追設基礎台6が設置できない場合、或いは実施例2のように既設基礎台5A上にスペーサー7や耐震補強ベースプレート9が設置できない場合でも耐震補強が可能である。
【実施例4】
【0038】
次に、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例4を、
図9及び
図10を用いて説明する。
【0039】
図9及び
図10に示す本実施例の支持構造物の耐震補強構造は、
図8に示した実施例3の構成に加え、断面L字状の耐震補強ベースプレート9aが、そのL字状に曲がった角部を複数の耐震補強ベースプレート用リブ13で覆うように溶接で固定されていることを特徴とする。
【0040】
このような本実施例の構成とすることにより、実施例3と同様な効果が得られることは勿論、耐震補強ベースプレート用リブ13により、耐震補強ベースプレート9aの剛性を高めることが可能である。
【実施例5】
【0041】
次に、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例5を、
図11を用いて説明する。
【0042】
図11に示す本実施例の支持構造物の耐震補強構造は、耐震補強ベースプレート9aが面L字状に形成され、この断面L字状の耐震補強ベースプレート9aの一部(L字の短辺部分)が既設基礎台5の側面に位置すると共に、耐震補強ベースプレート9aの既設基礎台5の側面に位置する部分の外側に、鉛直方向下方に延びる鉛直方向板14が既設基礎台5の側面との間に空間を持って設置され、この空間には鉛直方向スペーサー15が配置され、かつ、断面L字状の耐震補強ベースプレート9aの長辺部分は、既設基礎ボルト1で既設基礎台5に既設ベースプレート4を介して固定されていると共に、既設基礎台5の側面に位置している断面L字状の耐震補強ベースプレート9aは、追設基礎ボルト12で既設基礎台5の側面に、鉛直方向板14及び鉛直方向スペーサー15を介して固定されているものである。
【0043】
このような本実施例の構成であっても、その効果は実施例3と同様である。
【実施例6】
【0044】
次に、本発明の支持構造物の耐震補強装置の実施例6を、
図12を用いて説明する。
【0045】
図12に示す本実施例の支持構造物の耐震補強構造は、
図7に示した実施例2の構成に加え、脚3と耐震補強ベースプレート9とを、耐震補強リブ16で結合した構造、具体的には、耐震補強リブ16が脚3と耐震補強ベースプレート9に溶接で固定されている構造である。
【0046】
このような本実施例の構成であっても、その効果は、実施例2と同様であり、特に、本実施例のように、耐震補強リブ16が脚3と耐震補強ベースプレート9に溶接で固定されていることにより、脚3の剛性を高めることができ、耐震補強が可能である。
【0047】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…既設基礎ボルト、2…ナット、3…脚、4…既設ベースプレート、5、5A…既設基礎台、6…追設基礎台、7…スペーサー、8、12…追設基礎ボルト、9、9a…耐震補強ベースプレート、10a、10b…溶接部、11…溶接作業台、13…耐震補強ベースプレート用リブ、14…鉛直方向板、15…鉛直方向スペーサー、16…耐震補強リブ、100…横置一胴円筒形容の胴。