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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ダンボール箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/32 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B65D77/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021176120
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023065776
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
(72)【発明者】
【氏名】永塚 尚
(72)【発明者】
【氏名】賀川 弘海
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治紀
(72)【発明者】
【氏名】林 良祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 威仁
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-327239(JP,A)
【文献】特開2000-095234(JP,A)
【文献】実開昭48-004081(JP,U)
【文献】実開平02-148924(JP,U)
【文献】特開2021-133650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0118407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/32
B65D 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面部において帯状に延設されており前記壁面部が引き裂かれることが予定されている破断予定部と、
紙製の基材と、前記基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、前記基材の他方の面に設けられた目止め層と、前記目止め層上に形成された剥離剤層とを有しており、前記破断予定部の上に貼着されるカットテープと、
前記壁面部において、箱に組み立てられた状態で内側を向く面に配置されたライナシートにおいて前記破断予定部の延設された方向に沿って前記カットテープの近傍かつ前記カットテープの幅方向外側に延設されており、前記幅方向の両側で一対設けられた切れ目からなるライナカット線と、
前記壁面部の前記ライナカット線の幅よりも幅広の領域でスリット状に切り込まれた破断開始部と、を備えており、
前記カットテープは、
JIS Z 0237:2009に準拠して測定された幅が10mm以上であって15mm以下であり、
JIS Z 0237:2009に準拠して測定された伸び率が7.6%以上であって9.0%以下であり、
JIS Z 0237:2009に準拠して測定された厚さが0.10mm以上であって0.14mm以下である
ことを特徴とするダンボール箱
【請求項2】
前記カットテープは、前記壁面部の延在する面で前記壁面部をなすダンボールシートのフルートの延在する方向に沿って貼着されている
ことを特徴とする請求項1に記載のダンボール箱。
【請求項3】
前記カットテープは、前記壁面部の延在する面で前記壁面部をなすダンボールシートのフルートの延在する方向と交差する方向に沿って貼着されている
ことを特徴とする請求項1に記載のダンボール箱。
【請求項4】
複数の容器詰飲料を収納するためのダンボール箱である
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のダンボール箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンボール箱に関するものであり、詳しくは、開封用のカットテープが付設されたダンボール箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙、板紙、ダンボールなどの紙素材を用いた包装材はよく知られている。特にダンボールを用いた包装箱(ダンボール箱)は使用された後、回収され、ダンボール製造用の古紙パルプの原料として使用できるため、その回収率は高く、資源リサイクルの点で有効活用されている。このため近年、ダンボール原材料の資源として海外からの需要も増加している。一方、飲料缶や飲料ボトルなどの飲料物を包装するためのダンボール箱(以下、「飲料包装用ダンボール箱」ともいう)は、内容物の重量に耐えるため、また、外部からの衝撃に耐えるため、その強度や緩衝性の最適化が進んでいる。
【0003】
さらに配送時の作業性向上のために、ダンボール箱の形状、構造の検討も進んでいる。その中で、包装される飲料缶、飲料ボトルにおいても資源やエネルギー低減のために薄肉化が進んできており、飲料包装用ダンボール箱においては丈夫なものが好まれている。しかし、丈夫なダンボール箱の場合、開封する際には困難性を有する。
カッターナイフなどの道具を用いることなく開封するため、予めミシン目などの切り込みを設け、その部分にポリプロピレンテープからなるカットテープで補強した構造が提案され、実用化されている(例えば、下記の特許文献1,2)。
【0004】
一般に、このようなダンボール箱は、ダンボール箱の胴部の内周に沿ってダンボール切断用のカットテープが接着されている。そのカットテープの切断端を前記ダンボール箱の胴の外周に沿って引っ張ると、ダンボール箱の胴がカットテープの接着部に沿って引き裂かれて切断され、ダンボール箱が底部側と蓋部側とに分割される。分割された後に、蓋部側を取り除くことで、底部側を内装された商品を保持固定する陳列トレーとして利用しつつ、内装された商品を取り出しやすくすることが従来から行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-3429号のマイクロフィルム
【文献】実開昭62-179966号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のダンボール箱のカットテープには、開封の操作性に優れるポリプロピレンテープが長年使い続けられてきた。しかし、使用後はダンボール箱にポリプロピレンテープが貼着された状態で古紙回収される。そのため、カットテープを異物として取り除く負担が大きくなっており、リサイクル性が不十分だった。
よって、開封用のカットテープを付設したダンボール箱では、リサイクル性に改善の余地があった。
本件は、上記の課題に鑑みてなされたもので、カットテープを用いた開封のしやすさ(開封性)を確保したうえで古紙回収された際に処理に負担のかからない(リサイクル性を確保した)ダンボール箱に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示するダンボール箱は、壁面部において帯状に延設されており前記壁面部が引き裂かれることが予定されている破断予定部と、紙製の基材と、前記基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、前記基材の他方の面に設けられた目止め層と、前記目止め層上に形成された剥離剤層とを有しており、前記破断予定部の上に貼着されるカットテープと、前記壁面部において、箱に組み立てられた状態で内側を向く面に配置されたライナシートにおいて前記破断予定部の延設された方向に沿って前記カットテープの近傍かつ前記カットテープの幅方向外側に延設されており、前記幅方向の両側で一対設けられた切れ目からなるライナカット線と、前記壁面部の前記ライナカット線の幅よりも幅広の領域でスリット状に切り込まれた破断開始部と、を備えている。前記カットテープは、JIS Z 0237:2009に準拠して測定された幅が5mm以上であって15mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して測定された伸び率が6%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本件のダンボール箱によれば、カットテープを用いた開封性が確保されるとともに、開封後のカットテープが紙として古紙回収できるためリサイクル性を確保でききる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るダンボール箱の斜視図である。
図2図1のカットテープの積層構造を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[I.実施形態]
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
本項目[I]では、まず小項目[1]で一実施形態に係るダンボール箱の構成を説明する。それから、小項目[2],[3]でダンボール箱に使用されるカットテープの構成とダンボール箱に用いるシートの構成とのそれぞれを詳説する。そして、項目[4]で小項目[1]~[3]の作用効果を述べる。
【0011】
[1.全体構成]
図1は、本実施形態に係るダンボール箱10を示す斜視図である。
ダンボール箱10は、外観形状が横長な六面体であって、内部に物品を収容可能とされたダンボール製の包装箱である。ダンボール箱10は、両面ダンボールを用いた一枚のダンボールシート(ブランクシート)から組み立てられている。
以下、このダンボール箱10の構成を説明する場合には、ダンボール箱10が水平な面に載置された状態であるものとして、上下方向を定める。
【0012】
ダンボール箱10の六面をなす壁部は、互いに上下に離隔して配置された底壁部12及び天壁部13と、これらの底壁部12及び天壁部13の周縁部間に立設された周壁部14(壁面部)とに細別される。
周壁部14は、上下方向に立設された四角筒状に形成されており、ダンボール箱10の胴面部をなす。周壁部14は、互いに対向する一対の第一壁面部14Aと、これらの第一壁面部14Aと直交する方向に立設されるとともに、互いに対向する一対の第二壁面部14Bとを有する。
【0013】
本実施形態では、図1のダンボール箱10が、いわゆるラップラウンド形式のダンボール箱である場合を例に挙げる。ラップラウンド形式のダンボール箱10は、飲料缶や飲料ボトルなど複数の容器詰飲料を収納するためのダンボール箱(飲料包装用ダンボール箱)として構成されている。
すなわち、ダンボール箱10において、底壁部12,天壁部13及び第二壁面部14Bのそれぞれは一枚の平板で形成され、第一壁面部14Aのそれぞれは複数枚の平板が重ね合わされて(フラップが設けられて)形成されている。
【0014】
ダンボール箱10は、周壁部14が周方向に沿って裂かれることで、上下に分割可能である。ダンボール箱10は、上下に分割されることで開封される。
周壁部14には、このようにダンボール箱10を上下に分割するための構成として、破断予定部15(図1において一点鎖線で示す)が設けられている。破断予定部15は、周壁部14が引き裂かれることが予定されている部位であり、周壁部14において帯状に延設されている。本実施形態で破断予定部15は、周壁部14の上下方向の中間部で全周にわたって設けられている。
【0015】
図1に示すようにダンボール箱10には、破断予定部15の上に貼着されたカットテープ16(図1において二点鎖線で示す)が設けられている。カットテープ16は、破断予定部15に沿って周壁部14を引き裂いて(破断して)ダンボール箱10を開封するための開封用部材である。
本実施形態のカットテープ16は、周壁部14の内側を向いた面(内周側)で破断予定部15の延在する方向に沿って設けられている。本実施形態のカットテープ16は、紙製の基材を有する粘着テープで構成されている。
【0016】
ラップラウンド形式のダンボール箱10では、周壁部14をなすダンボールシートでフルート(波目)が鉛直方向に沿って延びている。そのため、本実施形態のカットテープ16は、周壁部14の内周面(周壁部14の延在する面)で、ダンボールシートのフルートが延在する方向に対して直交する方向に貼着されている。すなわち、ダンボール箱10では、カットテープ16により周壁部14がフルートの延在方向に対して直交する方向に沿って破断される。
【0017】
本実施形態の破断予定部15には、破断予定部15で破断しやすくするためのライナカット線18が付設されていることが好ましい。ライナカット線18は、周壁部14で内側を向いた面に配置されるライナシート(「裏ライナ」)に設けられている。ライナカット線18は、破断予定部15の延設された方向に沿ってカットテープ16の近傍かつカットテープ16の幅方向外側に延設されており、カットテープ16の幅方向の両側で一対設けられた多数の切れ目(ミシン目)で形成されている。そのため破断予定部15はライナカット線18に囲まれている。
本実施形態の破断予定部15は、ダンボール箱10を破断予定部15に沿って破断(開封)しやすいように形成された脆弱部と言える。カットテープ16は、破断予定部15での破断を補助する開封補助部材とも言える。
【0018】
本実施形態の破断予定部15には、さらに、周壁部14のうち一対の第二壁面部14Bのそれぞれにおいて、破断開始部17が付設されていることが好ましい。
破断開始部17は、作業者などが周壁部14をなすダンボールシートを破断予定部15で引き裂く際に破断を開始するとっかかりとして機能する部位である。
図1に示す破断開始部17は、ライナカット線18の幅よりも幅広の領域に対して、周壁部14を貫通するスリット状の切り込みで形成されている。具体的には、図1の破断開始部17をなす切り込みは、90°横転させた「H型」形状をなす。
【0019】
上記の破断予定部15に沿って破断されたダンボール箱10は、上側(天壁部13側)と、下側(底壁部12側)とに分割される。ダンボール箱10が上下に分割され、上側を取り除いた開封状態では、下側がダンボール箱10に収容された物品を保持固定する陳列トレーとして機能する。
ダンボール箱10を上下に分割して陳列トレーに利用した場合、ダンボール箱10に収容された商品(物品)を見栄えよく陳列でき、商品の品質感を高め、販売促進効果を向上させうる。
【0020】
本実施形態のダンボール箱10は、上記のようなラップラウンド形式のダンボール箱に限らず、いわゆるA式ダンボール箱であってもよい。
A式のダンボール箱10では、周壁部14をなすダンボールシートでフルート(波目)がダンボール箱10の胴面部の上下方向に沿って延びている。そのため、A式のダンボール箱10でカットテープ16は、周壁部14の内周面(周壁部14の延在する面)で、ダンボールシートのフルートが延在する方向に直交(交差)する方向に沿って貼着される。
ラップラウンド形式のダンボール箱10の変形例において、周壁部14をなすダンボールシートでフルートが水平方向に沿って延びており、カットテープ16は周壁部14の内周面でフルートの延在方向に沿って貼着されていてもよい。
A式のダンボール箱10の変形例において、周壁部14をなすダンボールシートでフルートが水平方向に沿って延びており、カットテープ16は周壁部14の内周面でフルートの延在方向に沿って貼着されていてもよい。
【0021】
[2.カットテープの詳細構成]
本実施形態のダンボール箱10に用いるカットテープ16は、図2に示すように紙製の基材(以下、「紙基材」という)と、紙基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、紙基材の他方の面に設けられた目止め層と、目止め層上に形成された剥離剤層とを有する構成である。
本実施形態のカットテープ16の基材には、リサイクル性を確保する観点から、紙基材が用いられている。紙基材を用いることで、ダンボール箱10の使用後にカットテープ16を古紙パルプの原料として使用(リサイクル利用)することが可能となる。
【0022】
粘着剤層には、ダンボール箱10に貼付可能な公知の粘着剤を使用することができる。
剥離剤層は、カットテープ16を巻き取った際に粘着剤層と接する面であり、粘着剤層の剥離を確実に行うことを可能にする層である。剥離剤層には公知の剥離剤を使用することができる。
目止め層は、剥離剤層をなす剥離剤が紙基材に浸透を防ぐ目的で設けられた層である。
【0023】
カットテープ16の幅は、ダンボール箱10の開封性を確保する観点から、5mm以上であり15mm以下である。カットテープ16の幅が5mmに満たない場合、開封の際の力がカットテープ16に集中してしまい、開封途中でカットテープ16が切断されやすくなる。一方、15mmを越えると、開封時に摘みにくくなり、開封作業が安定しない。カットテープ16の幅は、好ましくは、7mm以上であって12mm以下であり、より好ましくは8mm以上であって10mm以下である。
特に、ダンボール箱10が複数の容器詰飲料を収納するための飲料包装用ダンボール箱である場合、重量物が収容されているため、カットテープ16の幅が5mmに満たない場合、強度が不十分になりやすい傾向がある。一方でカットテープ16の幅が15mmを超えると開封性が悪化しやすい傾向がある。
【0024】
カットテープ16の伸び率は、開封性を確保する観点から6.0%以上である。この伸び率については、JIS Z 0237:2009に準じて測定された値である。伸び率が6.0%に満たない場合、開封の際にカットテープ16が切断されてしまう可能性が高くなる。ダンボール箱10へのカットテープ16の貼着しやすさを確保する観点から、カットテープ16の伸び率は9.0%以下であることが好ましい。9.0%を超えると、ダンボール箱10へのカットテープ16の貼着が困難となる。カットテープ16の伸び率は、好ましくは、6.5%以上であって8.5%以下であり、より好ましくは6.8%以上であって8.0%以下である。
【0025】
本実施形態のダンボール箱10において、カットテープ16は紙基材が上記物性を満足するものであれば特に限定するものではない。
カットテープ16の紙基材の原料となるパルプは特に限定するものではなく公知の各種パルプを使用できる。原料としては、木材パルプの使用が好ましい。特に木材をクラフト蒸解して得られるクラフトパルプを主成分として使用すると、カットテープ16の強度が高まるため好ましい。中でも針葉樹を用いたクラフトパルプを含むと、引張強さ等の強度が優れているので好ましい。
カットテープ16の紙基材は、晒しクラフトパルプを用いて形成されていることがより好ましい。晒しクラフトパルプは、機械パルプや化学パルプなど、漂白処理したパルプである。
【0026】
上記パルプを抄紙することで、ダンボール箱10に用いるカットテープ16の紙基材が得られる。
紙製基材のカットテープ16で上記の範囲の伸び率を確実に達成するためには、クレープ加工やクルパック加工を施すことが好ましい。クレープ加工は、抄紙機や加工機のプレスロールまたはシリンダードライヤーやヤンキードライヤーからドクター装置で紙を剥離してちりめん状のしわを付ける方法である。このドクター装置やクレープ加工を行う位置などは各種の装置や方法がある。
【0027】
クルパック加工とは、抄紙機のドライヤーの一部にニップロールを介してエンドレスの厚いゴムベルトを圧着回転させる装置を取り付け、ドライヤーとベルトの間に湿紙を通し、予め伸張させておいたベルトの収縮を利用して紙を収縮させる方法である。この方法は抄紙機とは別の加工機にも使用される。
本実施形態のダンボール箱10において、カットテープ16に用いる紙基材の坪量は特に限定されない。紙基材の坪量は、例えば50g/m以上であって90g/m2以下である。50g/m以上とすることでカットテープ16の強度を確保することができ、90g/m2以下とすることで、カットテープ16が貼着された状態でダンボール箱10をなすダンボールシートの厚みをおさえることができる。
【0028】
本実施形態のダンボール箱10において、カットテープ16の粘着力は、2.8N/テープ幅(mm)以上であることが好ましい。この粘着力は、カットテープ16の幅と同幅の測定片を用いて、JIS Z 0237:2009に準じて測定された値である。
粘着力が2.8N/テープ幅(mm)以上とすることで、カットテープ16とダンボール箱10との貼着状態を確実に保ち、開封の際のカットテープ16の剥がれを防ぐことができる。粘着力の上限値については特に限定するものではないが、ダンボール箱10からカットテープ16をスムーズに剥ぎ取るため、11.0N/テープ幅(mm)以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態のダンボール箱10において、カットテープ16のテープからの繰り出し力は、カットテープ16をロール状に巻き取ったロール体(巻き取り体)からカットテープ16を繰り出す際に要する力である。繰り出し力は、ロール体からのカットテープ16の繰り出しやすさを示すパラメータと言える。本実施形態の繰り出し力は、カットテープ16から幅50mmで切り出された測定片を用いて測定された値である。
この繰り出し力は、ダンボール箱10をなすダンボールシートにカットテープ16を貼着する際の繰り出しやすさを確保する観点から、0.5N/50mm以上であって1.0N/50mm以下であることが好ましい。
【0030】
繰り出し力は、より好ましくは、0.6N/50mm以上であって0.9N/50mm以下である。この数値範囲とすることで、ダンボール箱10をなすダンボールシートにカットテープ16を連続的に貼り付ける際の繰り出しをスムーズに行うことと、ダンボールシートにカットテープ16を貼着する際の操業速度を増速した時の断紙を抑止することとができる。また、カットテープ16を後述のロール体で保管した状態で、テープが剥がれて巻き取りの形状が変形するのを抑止することができる。
【0031】
粘着剤層に用いる粘着剤の種類は、上記粘着力を有するように適宜選択できる。例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤およびアクリルエマルジン系粘着剤等の中から要求に応じて任意に選定して使用することができる。
粘着剤層の塗布量は、20g/m2以上であって60g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上であって60g/m2以下であることがより好ましい。粘着剤の塗布量を20g/m2以上とすることで、貼着性を得ることができる。粘着剤の塗布量を60g/m2以下とすることで、カットテープ16の繰り出しをスムーズに行うことができる。
【0032】
本実施形態のダンボール箱10で、カットテープ16の剥離剤層は、紙基材の粘着剤層を有さない面に設けられている。カットテープ16は、ダンボール箱10に貼着される前は、粘着剤層を内側にして巻き取られたロール体(巻き取り体)として保管されている。ダンボール箱10に貼着される際は、ロール体からカットテープ16を繰り出して貼り付ける。
【0033】
紙基材と剥離剤層の間に目止め層が設けられている。
目止め層は、剥離剤が紙基材へ浸透を抑制するもので、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂、スチレンーブタジエン共重合体などの水分散性樹脂、ポリエチレンの薄膜などが使用できる。特に、押出し加工方式により形成された厚さ10μm以上25μm以下程度のポリエチレン薄膜は剥離剤の浸透効果が高く、繰り出しの適性に優れるため好ましい。すなわち、厚さ10μm以上25μm以下程度のポリエチレン薄膜で形成された目止めし層を有するカットテープ16では、ロール体からカットテープ16の繰り出しをスムーズに行うことが可能となる。
【0034】
剥離剤層に用いる剥離剤としては、特に限定するものではなく、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有化合物等があり、エマルジョン型や溶剤型または無溶剤型として使用できる。中でもシリコーン樹脂がカットテープ16の繰り出し性に優れるため好ましい。剥離剤層の塗布量は、0.1g/m2以上であって2.0g/m2以下であることが好ましく、0.2g/m2以上であって0.5g/m2以下であることがより好ましい。塗布量が0.1g/m2以上とすることでカットテープ16の繰り出しをスムーズに行うことができ、また2.0g/m2以下とすることで、剥離剤層の塗膜割れが抑制される。
【0035】
粘着剤層の形成方法と、剥離剤層の形成方法とは特に限定されないが、例えばグラビアコート法、リバースコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、コンマコート法、ダイコート法、バーコート法、ナイフコート法等の適当な塗布方法を適用できる。なお、塗布速度、塗膜乾燥条件は特に限定されるものではないが、塗布乾燥条件は粘着剤層、剥離剤層、基材の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲で行うことが望ましい。
【0036】
本実施形態のダンボール箱10で、カットテープ16の粘着剤層と剥離剤層を積層した状態での剥離強度が2.5N/10mm以上であって4.0N/10mm以下であることが好ましい。剥離強度は、インターナルボンドテスターを用い、TAPPI T541に準拠し、カットテープ16を2枚貼り付けた状態で、層間強度測定と同様にして求めた値である。剥離強度は、カットテープ16から幅10mmで切り出した測定片を用いて測定された値である。
剥離強度が4.0N/10mm以下であることで、カットテープ16の貼着の際の繰り出しを安定して行うことができる。剥離強度が2.5N/10mm以上であることで、カットテープ16をロール体で保管する際の安定性を保つことができる。剥離強度が小さすぎるとロール体の巻取り状態が崩れるおそれがある。剥離強度を上記の範囲の保つには、粘着剤の種類および塗工量、剥離剤の種類および塗工量、目止め層の種類および厚み、紙基材の種類および強度など、適宜調節するとよい。
【0037】
本実施形態のダンボール箱10で、カットテープ16の厚さは、特に限定されないが、厚さが0.10mm以上であって0.20mm以下であることが好ましい。厚さが0.10mm以上であることで、十分な厚みを有し、カットテープ16の貼着時の破断や開封時の破断を抑制することができる。また、厚さが0.20mm以下であることで、過剰な厚みを避けてコスト高を回避することができ、また、ダンボール箱10をなすシートが積み重ねられた状態での傾きや、崩れなどのトラブルを回避することができる。
そのほか、カットテープ16とカットテープ16が貼着される周壁部14の内側の面の色差ΔE値が5.0以上であることが好ましい。
【0038】
[3.ダンボールシートの詳細構成]
カットテープ16は、ダンボール箱10が製函される前のダンボールシートに対して貼着される。ダンボールシートは周知のコルゲータで製造される。コルゲータは、シングルフェーサ、ダブルフェーサ、スリッタ、カッタ及びスタッカを備えている。
シングルフェーサは、裏ライナ原紙ロールから繰り出された裏ライナ原紙を、中芯原紙ロールから繰り出されて段ロールで段付けされた中芯原紙と貼り合わせて片面ダンボールのダンボールシートを形成する。ダブルフェーサは、表ライナ原紙ロールから繰り出された表ライナ原紙を、シングルフェーサで形成された片面ダンボールの中芯の段頂に貼り合わせて両面ダンボールのダンボールシートを形成する。
【0039】
スリッタは、ダブルフェーサで形成されたダンボールシートを、送り方向(フルートに沿う方向に対して直交する向き)に切断した後に、所定の縦横の寸法にカットする加工や,罫線入れ加工,溝切り加工などを施す。カッタは、ダンボールシートを送り方向に直角に切断して一箱分のダンボールシートに加工する。スタッカは、カッタで切断後のダンボールシートを積み重ねる。
【0040】
本実施形態のカットテープ16は、例えばスリッタでのダンボールシートを送り方向に切断した後で、所定の縦横の寸法にカットする前に、切断後に下流工程へ搬送状態のダンボールシートに貼着される。カットテープ16の粘着剤層を設けた面が、ダンボールシートの裏ライナ(製函後の箱で内側を向く面)に貼り合わされる。カットテープ16は、ロール体から繰り出されつつ、ダンボールシートの搬送方向に連続して接着される。
【0041】
スリッタは、カットテープ16が貼着されたダンボールシートに所定の縦横の寸法にカットする加工などを施す。そして、カッタ,スタッカにより、カットテープ16が貼着された一箱分のダンボールシートが製造される。
そのほか、コルゲータでは、シングルフェーサに設けたライナカッタにより、裏ライナ原紙を中芯原紙に貼合する前に、裏ライナ原紙に上述のライナカット線18を入れる加工を施す。
【0042】
上記のように製造されたダンボールシートは、給紙部、印刷部及びダイカット部を備えた印刷機に供給される。この印刷機の給紙部では、給紙台に積み上げられたダンボールシートをキッカで押して一枚ずつ送り出す。各印刷部では、印刷シリンダと受けシリンダの間に挟んだダンボールシートの表面に印刷を施す。ダイカット部では、ダイカットロールに押刃を取り付け、ダイカットロールとアンビルロールの間に挟んだダンボールシートに押刃を押し付けて、ダンボールシート裏面に押罫線を入れる。
【0043】
[4.作用効果]
本実施形態は、上述のように構成されるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)上述したダンボール箱10では、破断予定部15に貼着されたカットテープ16が紙基材で形成されているので、ダンボール箱10の使用後にカットテープ16を古紙パルプの原料として使用(リサイクル利用)することが可能となる。このカットテープ16の幅が5mm以上であって15mm以下であり、伸び率が6%以上であることにより、紙基材において開封性を確保できるようになっている。そのため、開封用のカットテープ16を備えたダンボール箱10で開封性を確保したうえでリサイクル性を確保することができる。
破断予定部15に裏ライナに設けられたライナカットと破断開始部17とを付設することで開封性が向上する。
【0044】
(2)そのうえ、カットテープ16の伸び率が9%以下であることで、ダンボール箱10へのカットテープ16の貼着しやすさが確保される。カットテープ16の粘着力が2.8N/テープ幅(mm)以上であることで、ダンボール箱10へのカットテープ16への貼着状態を確実に保ち、開封の際のカットテープ16の剥がれを防ぐことができる。粘着力が11.0N/テープ幅(mm)以下であれば、ダンボール箱10からカットテープ16をスムーズに剥ぎ取ることができる。
【0045】
(3)カットテープ16の繰り出し力が0.5N/50mm以上であり1.0N/50mm以下であれば、カットテープ16を貼着する際の繰り出しをスムーズに行うことと、断紙の抑止とを両立できる。また、カットテープ16が粘着剤層を内側にして巻き取られたロール体で保管される際に、テープ剥がれが生じにくく、巻き取り形状が変形するのが抑止される。
(4)カットテープ16がフルートの延在する方向に沿って貼着されている構成は、ラップラウンド形式のダンボール箱10での開封性を確保しやすい。カットテープ16がフルートの延在する方向と交差する方向に沿って貼着されている構成は、A式のダンボール箱10での開封性を確保しやすい。
【0046】
(5)そのほか、カットテープ16の厚さが0.10mm以上であることで、カットテープ16の貼着時の破断や開封時の破断を抑制するのに十分な厚みを確保できる。厚さが0.20mm以下であることで、過剰な厚みを避けてコスト高を回避したり、ダンボールシートを積み重ねた状態での傾きや、崩れなどのトラブルを回避したりすることができる。
【実施例
【0047】
[II.実施例]
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
本項目[II]では、ダンボール箱の開封用テープの開封性と離解性との評価試験について述べる。なお、以下で「部」は特に断らない限り、「重量部」を示すものである。
【0048】
以下の実施例および比較例で評価試験に用いるダンボール箱は、ラップラウンド形式のダンボール箱(評価ダンボール箱)である。
開封性と離解性との評価試験では、以下に述べる実施例1,2および比較例1~5のカットテープを用いた。実施例1,2および比較例1~5のカットテープを、下記工程により製造した。
【0049】
<実施例1>
実施例1のカットテープは下記の工程(1)~(6)により製造された。
(1)原紙の抄造
針葉樹クラフトパルプ(叩解度:570ml)100部を調製し、30%強化ロジンサイズ剤(商標:SPE 荒川化学工業製)を対パルプ0.3部と30%硫酸アルミニウムを対パルプ2部とのそれぞれを添加して紙基材用の紙料を得る。
この紙料を用いて、クルパック紙加工設備を装着した長網多筒型抄紙機により坪量73g/mの原紙を抄造する。
【0050】
(2)目止め層の形成
上記の(1)で得られた原紙に、溶融した低密度ポリエチレン(住友化学工業製)を実験用溶融押出し機によりラミネートして、カットテープ用の紙基材を作製する。この紙基材の断面を走査電子顕微鏡で観察した結果、目止め層の厚さは約12μmであった。
【0051】
(3)剥離剤層の形成
上記の(2)で目止め層を形成した紙基材上に、順転3本ロールオフセットグラビアコーターを装備した塗被機で、粘度22mPa(60rpmB型粘度、25℃)のシリコーン系無溶剤型剥離剤(荒川化学工業製)を塗被して剥離剤層を得る。
上記のグラビアコーターのロールは200メッシュであり、塗被速度は300m/minの条件とした。蛍光X線分析法で測定した剥離剤の塗被量は、0.45g/mであった。
【0052】
(4)粘着剤層の形成
上記の(3)で剥離剤を塗被していない面に、アプリケーターバーにより自製天然ゴム系粘着剤を20g/m2となるよう塗工して粘着剤層を形成し、カットテープ用の10mm幅の粘着シートを作製する。
(5)カットテープ加工
上記の(4)で作製された粘着シートを、テープの幅が10mmとなるように、円盤状の下刃と上刃の刃を用いて連続的に挟み切り、紙基材を有する10mm幅のカットテープを作製する。
【0053】
(6)評価ダンボール箱へのカットテープの貼着
上記の(5)で作製したカットテープが貼着された評価ダンボール箱(ダンボールシート)をコルゲータで作製する。
具体的には、まず、コルゲータのシングルフェーサで裏ライナ原紙と段ロールで段付けした中芯と貼り合わせ、ダブルフェーサで段頂に表ライナの原紙を貼り合わせてダンボールシートを作製する。
次に、スリッタでダンボールシートを送り方向に切断した後、搬送状態のダンボールシートに対して、カットテープマシンによりロール体から繰り出されたカットテープを貼付する。このとき、カットテープは粘着剤層を有する面をダンボールシートの裏ライナに貼り合わせて、搬送方向に直交する方向に接着される。
それから、ロータリーカッタおよびスリッタによって、カットテープが貼着されたダンボールシートを所定の縦横の寸法となるようにカット加工などを施して、紙基材を有する10mm幅のカットテープが貼着されたダンボールシートを作製する。
【0054】
<実施例2>
実施例2では、上記の(1)の原紙の抄造工程において、針葉樹の未晒クラフトパルプ(叩解度:570ml)100部を調製し、30%強化ロジンサイズ剤(商標:SPE 荒川化学工業製)を対パルプ0.3部、30%硫酸アルミニウムを対パルプ2部添加して基材用の紙料を得た。次にこの紙料から、クルパック紙加工設備を装着した長網多筒型抄紙機により米坪量73g/m2の原紙を抄造した。
この原紙を用いた以外は、実施例1の(2)~(6)と同様の工程で、紙基材を有する10mm幅のカットテープを作製して、このカットテープが貼着されたダンボールシートを作製する。
【0055】
<比較例1>
比較例1では、上記の(1)~(5)に替えて下記の(1A)~(3A)により、ポリプロピレン(下記の表1でポリプロピレンを「PP」と表記する)基材を有するカットテープを作製する。
(1A)では、市販品の一軸延伸ポリプロピレンシート66μmにコロナ処理を行い、順転3本ロールオフセットグラビアコーターで、粘度22mPa(60rpmB型粘度、25℃)のシリコーン系無溶剤型剥離剤(荒川化学工業製)を0.45g/mとなるように塗被した。
(2A)では、上記の(1A)で剥離剤を塗被したポリプロピレンシートの塗被面の裏側面に、アプリケーターバーにより自製天然ゴム系粘着剤を20g/mとなるよう塗工し、カットテープ用のポリプロピレン粘着シートを作製した。
(3A)では、上記の(2A)で作製したポリプロピレン粘着シートを、5mm幅のテープとなるように円盤状の下刃と上刃の刃を用いて連続的に挟み切り、ポリプロピレン基材を有する5mm幅のカットテープを作製する。
そして、上記の(6)と同様の工程で、このカットテープが貼着されたダンボールシートを作製する。
【0056】
<比較例2>
比較例2では、上記の(3A)でポリプロピレン粘着シートを、テープの幅を3mmとする以外は、比較例1の(1A),(2A)と同様の工程で、ポリプロピレン基材を有する3mm幅のカットテープを作製する。それ以外は、実施例1の(6)と同様の工程で、このカットテープが貼着されたダンボールシートを作製する。
【0057】
<比較例3>
比較例3では、上記の(3)剥離剤層の形成工程で、粘度22mPa(60rpmB型粘度、25℃)の非シリコーン系無溶剤型剥離剤(ライオン製)を塗被し剥離剤層を得て(なお、蛍光X線分析法で測定した剥離剤の塗被量は、0.45g/mであった)、上記の(5)カットテープ加工工程で、幅が3mmとなるカットテープを作製した。
それ以外は、実施例1の(1),(2),(4)および(6)と同様の工程で、紙基材を有する3mm幅のカットテープを作製して、このカットテープが貼着されたダンボールシートを作製する。
【0058】
<比較例4>
比較例4では、上記の(5)カットテープ加工工程で、幅が50mmとなるカットテープを作製する。これ以外は、上記の(1)~(4),(6)と同様の工程で、紙基材を有するカットテープを作製して、紙基材を有するカットテープが貼着されたダンボールシートを作製する。
【0059】
<比較例5>
比較例5では、上記の(1)原紙の抄造工程に替えて、原紙として市販のセミクルパック紙(坪量75g/m2)を用いる。それ以外は上記の(2)~(6)と同様の工程により、紙基材を有する10mm幅のカットテープを作製し、このカットテープが貼着されたダンボール箱を作製する。
【0060】
<比較例6>
比較例6では、上記の(2)目止め層の形成工程を実施せず、それ以外は上記の(1),(3)~(4)と同様の工程により、紙基材を有するカットテープ用の粘着シートを作成する。
この粘着シートでは、上記の(5)カット工程を施す際の巻き戻しが不安定であり、上記の(5)でカット工程を施すことができず、カットテープを作成することができなかった。したがって、比較例6を用いた下記の評価試験は実施されなかった。
【0061】
[評価試験]
実施例1,2および比較例1~5で得られたカットテープのそれぞれについて、下記の表1に示すように、テープ幅,厚さ,引張強度,伸び(伸び率),粘着力およびテープ繰り出し力が測定された。
テープ幅,厚さ,引張強度,伸びおよび粘着力は、JIS Z 0237:2009に準じて測定された値である。
なお、引張強度、伸びおよび粘着力は、実施例1,2および比較例1~5のそれぞれのカットテープの幅と同じ幅の測定片で測定された値である。テープ繰り出し力は、実施例1,2および比較例1~5のそれぞれのカットテープから50mm幅で切り出した測定片で測定された値である。
【0062】
【表1】
【0063】
<開封性の評価>
実施例1,2および比較例1~5で得られたカットテープのそれぞれについて開封性を評価した。
開封性は、カットテープを用いて評価ダンボール箱を開封する際の開封しやすさの良否に関する評価項目である。
開封性の評価は、実施例1,2および比較例1~5のそれぞれについて、下記の手順A1,A2により実施した。
【0064】
手順A1:カットテープが貼着されたダンボールシートを評価ダンボール箱に組み立
てる。評価ダンボール箱は上記のようにラップラウンド形式のダンボール
箱である。評価ダンボール箱は、図1を参照して例説したように破断予定
部15,ライナカット線18,破断開始部17が設けられたものとする。
手順A2:A1で組み立てた評価ダンボール箱を、破断開始部17(H型切り込み)
から引き裂いて、カットテープを用いた開封を実施する。
【0065】
開封性の良否は下記の基準で評価した。
○:カットテープが途中で切れずに容易に開封できた
△:カットテープは途中で切れなかったが、開封に力が必要で苦労した
×:カットテープが途中で切れた
「○」の評価を合格とし、「△」以下は不合格とした。
【0066】
<離解性の評価>
離解性は、カットテープが貼着された評価ダンボール箱におけるパルプ繊維の分解しやすさであり、リサイクル性の良否(古紙回収処理のしやすさ)に関する評価項目である。
離解性の評価は、実施例1,2および比較例1~5のそれぞれについて、下記の手順B1,B2により実施した。
手順B1:パルプ離解機(熊谷理機製)に、水とカットテープが貼着された状態で切
り離され評価ダンボール箱の切り離し片とを重量パーセントが2%となる
ように投入して、30分間分散する。
手順B2:手順B1で分散したパルプ懸濁液を100メッシュの篩にかけて、未離解
物の残存状態を評価する。
【0067】
離解性の良否は目視で評価した。
離解性の良否は下記の基準で評価した。
○:未離解物が残存しない
×:未離解物が残存する
【0068】
実施例1,2の評価結果より、基材が紙製のカットテープで、幅が5mm以上であって15mm以下であり、かつ、伸びが6%以上であれば、開封性および離解性の何れも「○」の評価が得られた。
基材がポリプロピレン製の比較例1,2は、いずれでも離解性で「×」の評価が得られた。
【0069】
基材が紙製である比較例3~5ではいずれも離解性は「○」であった。しかし、幅が5mmよりも小さい比較例3や、伸びが6.0%よりも小さい比較例5では開封性で「×」の評価が得られて、幅が15mmよりも大きい比較例4では、開封性で「△」の評価が得られた。
【0070】
比較例1,2に鑑みて、実施例1,2,比較例3~5から、基材がポリプロピレン製であると、未離解物が残存しやすく、リサイクル性が不十分であると言える。
比較例3,5に鑑みて、実施例1,2からは、幅が5mmよりも小さい場合または伸びが6.0%よりも小さい場合は、開封途中でカットテープが切断されてしまいやすく、開封性が不十分と言える。
比較例4に鑑みて、実施例1,2からは、幅が15mmよりも大きと、カットテープは途中で切れないものの、開封時に摘みにくくなり、開封作業が安定せずに、開封に力が必要で苦労して、開封性が不十分であると言える。
【0071】
比較例1~5に鑑みて、実施例1,2から基材が紙製のカットテープで、幅が5mm以上であって15mm以下であり、かつ、伸びが6.0%以上であれば、開封性の確保とリサイクル性の確保とを両立することができる、と言える。
【0072】
[2.テープ切れ評価]
次に、紙基材を有するカットテープが貼着されたダンボール箱における第一テープ切れ評価を述べる。
第一テープ切れ評価試験は、紙基材を有するカットテープ幅と引っ張り方向とに応じたテープ切れ評価である。
【0073】
この第一テープ切れ評価試験では、下記構成の板状の評価ダンボール片にカットテープを貼着した。
・ライナ原紙:米坪170g/m2,品番「K170」(表および裏ライナ)
・ 中芯原紙 :米坪120g/m2,品番「S120」
・ フルート:Bフルート
・ 寸法 :320mm×213mm
評価ダンボール片は下記の条件で前処理が施されている。
・前処理:温度23°,湿度50%RHの環境下に24時間以上調湿された。
【0074】
上記の評価ダンボール片には、フルートの延在する方向に直交する方向にそって破断予定部(ライナカット線)が設けられており、この破断予定部に沿ってカットテープが貼着される。
上記の評価ダンボール片の下記位置に、図1に示す破断開始部17と同様な「H型」の切り込みが設けられている。
・切り込み位置:210mm×133.5mm
【0075】
第一テープ切れ評価試験はカットテープの幅は、下記の二種類を用いた。
・幅:8mm
10mm
評価ダンボール片は、下記の二通りの配置で試験された。
・配置A:垂直
・配置B:4°傾け
配置Aは、評価ダンボール片のフルートの延在する方向に対して直交する方向へカットテープを引っ張る配置である。配置Bは、評価ダンボール片のフルートの延在する方向に対して直交する方向から4℃傾けた方向へカットテープを引っ張る配置である。
配置A,Bでカットテープを引っ張る方向は鉛直方向に沿う方向とする。
【0076】
第一テープ切れ評価試験では、二種類の幅のカットテープと二通りの配置A,Bとのそれぞれを組み合わせた四通りの評価ダンボール片が評価対象となる。
そして、四通りの評価ダンボール片のそれぞれについて五つの試料を用いて、下記の工程C1~C3に従う試験が実施された。
工程C1:評価ダンボール片を配置AまたはBで配置する。
工程C2:「H型」の切り込みで上側に位置する切片をクリップで留めてテンシロン
引張り試験機にぶら下げ、下側に位置する評価ダンボール片(ライナーカ
ット線上)をエアチャックで挟む。
工程C3:引張りモードで定速状態の測定を開始する。引張り試験機の最大測定可
能位置まで引っ張り、測定を終了する。ただし、カットテープの「切れ始
め」が発生した場合には、その時点で測定を終了する。
【0077】
なお、テンシロン引張り試験機は引っ張り試験用の試験機であり、下記の条件で運転される。
・クロスヘッド間隔:290mm
・ 引張り速度 :500mm/分
・最大測定可能位置:370mm(安全ストッパー手前までの引っ張り長さ)
【0078】
第一テープ切れ評価試験では、引っ張り開始位置からカットテープに位置に入り始めまでの位置(「入り始め」)を測定するとともに、引っ張ったときにカットテープ切れ(「テープ切れ」)が生じているか否かを目視で確認した。
そして、カットテープ切れが生じているか否かを基準にして、開封のしやすさを評価した。具体的には、カットテープ切れが全くないものを合格と評価して、カットテープ切れが生じたものを不合格とした。評価試験の結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
上記の表2に示すように、カットテープ幅8mmおよび10mmのそれぞれで配置Aおよび配置Bの何れの配置でも、カットテープ切れが全く生じておらず合格だった。
そのため、紙基材を有するカットテープで幅が8mmおよび10mmの何れかであれば、引っ張り方向の傾きにかかわらず、良好な開封性が得られると言える。
【0081】
[III.そのほか]
上述の各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
例えば、図1でダンボール箱10の破断予定部15に含まれるライナカット線18および破断開始部17の構成は限定されない。また、破断予定部15に含まれるライナカット線18および破断開始部17の一方または両方を含まない構成でもよい。
【0082】
破断開始部をなす切り込みの形状の変形例として、「先細型」や「先広型」を挙げることができる。図1に示す「H型」の切り込みでは向かい合った切り込み線どうしが平行をなすのに対して、「先細型」の切り込みは、向かい合った切り込み線どうしの離間する寸法が端部に向かうほど狭まる形状である。「先広型」の切り込みは、向かい合った切り込み線どうしの離間する寸法が端部に向かうほど広がる形状である。
破断開始部をなす切り込みの形状は、開封途中にテープ切れが生じることを抑制する観点から、「H型」(平行型)、「先細型」または「先広型」であることが好ましい。「H型」または「先広型」は「先細型」に比べて、開封途中にテープ切れがより生じにくい形状であるという点で、より好ましい。
【符号の説明】
【0083】
10 ダンボール箱
12 底壁部
13 天壁部
14 周壁部(壁面部)
14A 第一壁面部
14B 第二壁面部
15 破断予定部
16 カットテープ
17 破断開始部
18 ライナカット線
図1
図2