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特許7557458フェライト焼結磁石、フェライト粒子、ボンド磁石、及び、回転電気機械
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  • 特許-フェライト焼結磁石、フェライト粒子、ボンド磁石、及び、回転電気機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】フェライト焼結磁石、フェライト粒子、ボンド磁石、及び、回転電気機械
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/10 20060101AFI20240919BHJP
   H01F 1/11 20060101ALI20240919BHJP
   H01F 1/113 20060101ALI20240919BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20240919BHJP
   C04B 35/26 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01F1/10
H01F1/11
H01F1/113
C01G49/00 E
C01G49/00 C
C04B35/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021512075
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014323
(87)【国際公開番号】W WO2020203889
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2019067849
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】大村 正志
(72)【発明者】
【氏名】長岡 淳一
(72)【発明者】
【氏名】室屋 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】阿部 拓真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 譲
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117261(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216594(WO,A1)
【文献】特開2006-104050(JP,A)
【文献】特開2009-246243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0277290(US,A1)
【文献】特開2012-209295(JP,A)
【文献】特開平11-154604(JP,A)
【文献】特開2000-223307(JP,A)
【文献】国際公開第2017/200091(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/200092(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106587980(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/10-1/117
C01G 49/00
C04B 35/26-35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト相を有するフェライト焼結磁石であって、
金属元素A、金属元素R、Fe、Co、Zn、及び、Bを少なくとも含み、
金属元素Aは、Sr、Ba、Ca及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Caを必ず含み、
金属元素Rは、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含み、
金属元素の原子比率を(1)式で表したときに、
r、x、y、およびzは、下記(2)~(5)式を満たし、
1-rFeCoZn (1)
0.40≦r≦0.70 (2)
8.20≦x≦9.2 (3)
0.05<y≦0.50 (4)
0.01≦z≦0.1 (5)
Siの含有量がSiO換算で0~0.60質量%であり、
Bの含有量がB換算で0.20~0.70質量%であり、
金属元素Aの95原子%以上をCaが占める、フェライト焼結磁石。
【請求項2】
Siの含有量がSiO換算で0.01~0.40質量%である、請求項1に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフェライト焼結磁石を備える回転電気機械。
【請求項4】
マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト相を有するフェライト粒子であって、
金属元素A、金属元素R、Fe、Co、Zn、及び、Bを少なくとも含み、
金属元素Aは、Sr、Ba、Ca及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Caを必ず含み、
金属元素Rは、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含み、
金属元素の原子比率を(1)式で表したときに、
r、x、y、およびzは、下記(2)~(5)式を満たし、
1-rFeCoZn (1)
0.40≦r≦0.70 (2)
8.20≦x≦9.2 (3)
0.05<y≦0.50 (4)
0.01≦z≦0.1 (5)
Siの含有量がSiO換算で0~0.60質量%であり、
Bの含有量がB換算で0.20~0.70質量%であり、
金属元素Aの95原子%以上をCaが占める、フェライト粒子。
【請求項5】
Siの含有量がSiO換算で0.01~0.40質量%である、請求項4に記載のフェライト粒子。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のフェライト粒子を含むボンド磁石。
【請求項7】
請求項6に記載のボンド磁石を備える回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェライト焼結磁石、フェライト粒子、ボンド磁石、及び、回転電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライト焼結磁石に用いられる磁性材料として、六方晶系の結晶構造を有するBaフェライト、Srフェライト及びCaフェライトが知られている。このようなフェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(M型)、及びW型等が知られている。これらの中でも、モータ用等の磁石材料として、主にマグネトプランバイト型(M型)のフェライトが採用されている。M型フェライトは、通常AFe1219の一般式で表される。
【0003】
フェライト焼結磁石の磁気特性の指標としては、一般に、残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)が用いられる。従来、Br及びHcJを向上させる観点から、フェライトの構成元素とは異なる種々の元素を添加することが試みられている。例えば、特許文献1では、Aサイトの元素の一部をCa及び希土類元素(R)で置換し、Bサイトの元素の一部をCoで置換することによって、磁気特性を改善することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/117261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、常温におけるBr及びHcJをより高くしたいという要望がある。
【0006】
そこで、本発明は一つの側面において、常温におけるBr及びHcJに優れるフェライト焼結磁石等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフェライト焼結磁石は、マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト相を有するフェライト焼結磁石である。この磁石は、金属元素A、金属元素R、Fe、Co、Zn、及び、Bを少なくとも含む。
金属元素Aは、Sr、Ba、Ca及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Caを必ず含む。
金属元素Rは、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含む。
金属元素の原子比率を(1)式で表したときに、このフェライト焼結磁石は、
r、x、y、およびzが、下記(2)~(5)式を満たす。
1-rFeCoZn (1)
0.40≦r≦0.70 (2)
8.20≦x≦9.34 (3)
0.05<y≦0.50 (4)
0<z≦0.20 (5)
さらに、このフェライト焼結磁石は、Siの含有量がSiO換算で0~0.60質量%であり、Bの含有量がB換算で0.01~0.70質量%である。
【0008】
ここで、Siの含有量がSiO換算で0.01~0.40質量%であり、Bの含有量がB換算で0.20~0.70質量%であることができる。
ここで、上記フェライト焼結磁石は、金属元素Aの95原子%以上をCaが占めることができる。
【0009】
本発明の回転電気機械は、上記のいずれかのフェライト焼結磁石を備える。
【0010】
本発明に係るフェライト粒子は、マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト相を有するフェライト粒子である。このフェライト粒子は、金属元素A、金属元素R、Fe、Co、Zn、及び、Bを少なくとも含む。
金属元素Aは、Sr、Ba、Ca及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Caを必ず含む。
金属元素Rは、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含む。
金属元素の原子比率を(1)式で表したときに、フェライト粒子は、
r、x、y、およびzは、下記(2)~(5)式を満たす。
1-rFeCoZn (1)
0.40≦r≦0.70 (2)
8.20≦x≦9.34 (3)
0.05<y≦0.50 (4)
0<z≦0.20 (5)
さらに、フェライト粒子は、Siの含有量がSiO換算で0~0.60質量%であり、Bの含有量がB換算で0.01~0.70質量%である。
【0011】
ここで、Siの含有量がSiO換算で0.01~0.40質量%であり、Bの含有量がB換算で0.20~0.70質量%であることができる。
ここで、上記フェライト粒子において、金属元素Aの95原子%以上をCaが占めることができる。
【0012】
本発明にかかるボンド磁石は、上記のいずれかのフェライト粒子を含む。
本発明にかかる一つの回転電気機械は、上述のボンド磁石を備える。
【0013】
本発明にかかる他のフェライト焼結磁石又はフェライト粒子は、マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト相を有するフェライト焼結磁石又はフェライト粒子であって、
金属元素A、金属元素R、Fe、Co、Zn、Si、及び、Bを少なくとも含み、
金属元素Aは、Sr、Ba、Ca及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Caを必ず含み、
金属元素Rは、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含み、
金属元素の原子比率を(1)式で表したときに、
r、x、y、およびzは、下記(2)~(5)式を満たし、
1-rFeCoZn (1)
0.300<r<0.800 (2)
8.200<x≦9.340 (3)
0<y<0.500 (4)
0<z<0.200 (5)
Siの含有量がSiO換算で0.010~0.400質量%であり、Bの含有量がB換算で0.200~0.700質量%である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、常温におけるBr及びHcJに優れるフェライト焼結磁石等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、フェライト焼結磁石の断面模式図である。
図2図2は、モータの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の幾つかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【0017】
本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石及びフェライト粒子は、マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト相を有するフェライト焼結磁石である。
このフェライト焼結磁石及びフェライト粒子は、金属元素A、金属元素R、Fe、Co、Zn、及び、Bを少なくとも含む。
金属元素Aは、Sr、Ba、Ca及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Caを必ず含む。
【0018】
金属元素A中のCaの原子比率は、Br及びHcJの温度係数を抑制する観点から、50原子%以上であることができ、70原子%以上であることができ、90原子%以上であることができ、95原子%以上であることができ、97原子%以上であることができ、99原子%以上であることができ、100原子%であることもできる。金属元素Aに占める、Ca以外の原子の比率に特に限定はない。
【0019】
金属元素Rは、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含む。
【0020】
希土類元素は、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)である。
【0021】
金属元素Rは、La(ランタン)、Pr(プラセオジム)、及び、Nd(ネオジム)からなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましく、Laを必ず含むことがより好ましい。金属元素R中においてLaを50原子%以上含むことでき、Laを95原子%以上含むことができ、99原子%含むことができ、100原子%であってもよい。
【0022】
本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石及びフェライト粒子は、金属元素の原子比率を(1)式で表したときに、r、x、y、およびzは下記(2)~(5)式を満たす。
1-rFeCoZn (1)
0.40≦r≦0.70 (2)
8.20≦x≦9.34 (3)
0.05<y≦0.50 (4)
0<z≦0.20 (5)
【0023】
一般式(1)におけるrは、Br及びHcJを一層高くする観点から、0.45以上であってもよい。rは、同様の観点から、0.60以下であってもよく、0.55以下であってもよい。
【0024】
一般式(1)におけるxは、Brを一層高くする観点から、8.3以上であってもよく、8.5以上であってもよい。xは、Br及びHcJを一層高くする観点から、9.3以下であっても良く、9.2以下であってもよく、9.15以下であってもよい。
【0025】
一般式(1)におけるyは、Brを一層高くする観点から、0.45以下であってもよく、0.4以下であってもよい。一般式(1)におけるyは、同様の観点から、0.1以上であってもよく、0.2以上であっても良い。
【0026】
一般式(1)におけるzは、Br及びHcJを一層高くする観点から、0.001以上であってもよく、0.002以上であってもよく、0.003以上であってもよく、0.005であってもよく、0.01以上であってもよく、0.05以上であってもよい。一般式(1)におけるzは、HcJを高くする及びHcJの温度係数の絶対値を低くする観点から、0.15以下であってもよく、0.1以下であってもよい。
【0027】
本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石及びフェライト粒子におけるSiの含有量は、SiO換算で0~0.60質量%であり、0.01~0.40質量%であってもよく、Bの含有量はB換算で0.01~0.70質量%であり、0.20~0.70質量%であってもよい。なお、フェライト焼結磁石はSiを含まなくてもよい。
【0028】
フェライト焼結磁石及びフェライト粒子におけるSiの含有量は、Br及びHcJを一層高める観点から、SiをSiOに換算して、例えば、0.01質量%以上であってもよく、0.02質量%以上でもよく、0.05質量%以上でもよく、0.1質量%以上でもよく、0.2質量%以上であってもよい。同様の観点から、フェライト焼結磁石及びフェライト粒子におけるSiの含有量は、SiをSiOに換算して、0.5質量%以下であってもよく、0.4質量%以下であってもよく、0.35質量%以下であっても良い。
【0029】
フェライト焼結磁石及びフェライト粒子におけるBの含有量は、Br及びHcJを高くする観点から、B換算で0.1質量%以上でもよく、0.2質量%以上でもよく、0.3質量%以上でもよく、0.4質量%以上でもよい。同様の観点から、Bの上記含有量は、0.65質量%以下であってもよく、0.6質量%以下であってもよい。
【0030】
本実施形態のフェライト焼結磁石及びフェライト粒子は、副成分としてBiとSiをと含むほか、他の副成分を更に含んでいてもよい。例えば、まず、副成分としてCa成分を含んでいてもよい。ただし、本実施形態のフェライト焼結磁石は、上述したように主相であるフェライト相を構成する成分としてCaを含む。したがって、副成分としてCaを含有させた場合、例えば焼結体から分析されるCaの量は主相及び副成分の総量となる。したがって、副成分としてCa成分を用いた場合には、(1)式における金属元素A中のCaの原子比率は副成分をも含んだ値となる。Caの原子比率の範囲は、焼結後に分析された組成に基づいて特定されるものであるから、副成分としてCa成分を含む場合と含まない場合との両方に適用できる。
【0031】
フェライト焼結磁石及びフェライト粒子には、上述の成分の他に、原料に含まれる不純物又は製造設備に由来する不可避的な成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、Ti(チタン),Cr(クロム),Mn(マンガン),Mo(モリブデン),V(バナジウム)及びAl(アルミニウム)等が挙げられる。これらの成分はそれぞれの酸化物又は複合酸化物としてフェライト焼結磁石及びフェライト粒子に含まれていてもよい。副成分は、フェライト焼結磁石におけるフェライト結晶粒の粒界に偏析して異相を構成してもよい。
【0032】
フェライト焼結磁石及びフェライト粒子中の金属元素の含有比率は、蛍光X線分析によって測定することができる。
【0033】
フェライト焼結磁石及びフェライト粒子中のB(ホウ素)及びSi(ケイ素)等の半金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP発光分光分析)で測定することができる。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石(フェライト粒子)100の断面模式図である。本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石(フェライト粒子)100は、図1に示すように、マグネトプランバイト型(M型)の結晶構造を有するフェライト相(結晶粒)4と、フェライト相(結晶粒)4間に存在する粒界相6とを有する。
【0035】
M型フェライトは六方晶型の結晶構造を有する。M型フェライトの例は、以下の式(III)で表されるフェライトである。
MX1219 (III)
Mは、Caを必ず含み、Sr及び/又はBaを含んでもよい。MはRを含んでもよい。XはFeを含み、Co及びZnを含んでよい。
なお、上式(III)におけるM(Aサイト)及びX(Bサイト)の比率や、酸素(O)の比率は、実際には上記範囲から多少偏った値を示すことから、上記の数値から若干ずれていてもよい。
【0036】
フェライト焼結磁石及びフェライト粒子は、磁気特性を十分に高くする観点から、主相として上記フェライト相4を有することが好ましい。なお、本明細書において「主相として」とは、フェライト焼結磁石及びフェライト粒子中で最も質量割合が多い結晶相であることをいう。フェライト焼結磁石及びフェライト粒子は、主相とは異なる結晶相(異相)を有していてもよい。主相の割合は70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0037】
フェライト焼結磁石におけるフェライト相(結晶粒)の平均粒径は、例えば5μm以下であってもよく、4.0μm以下であってもよく、0.5~3.0μmであってもよい。このような平均粒径を有することで、保磁力を一層高くすることができる。フェライト相(結晶粒)の平均粒径は、TEM又はSEMによる断面の観察画像を用いて求めることができる。具体的には、数百個のフェライト相(結晶粒)を含むSEM又はTEMの断面における各主相粒子の断面積を画像解析により求めたうえで、該断面積を有する円の直径(円相当径)を、その断面における該主相粒子の粒径と定義して粒径分布を測定する。測定した個数基準の粒径分布から、フェライト相(結晶粒)の粒径の個数基準の平均値を算出する。このようにして測定される平均値を、フェライト相の平均粒径とする。
【0038】
粒界相6は酸化物を主成分とする。具体的には、酸化物の例は、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Co、コバルト、Cr(クロム)、Zn(亜鉛)、及びAl(アルミニウム)から選ばれる少なくとも一種を有する酸化物並びにこれらの2以上の複合酸化物が挙げられる。このような酸化物としては、例えばSiO、B、CaO、BaO、SrO,Fe、Co,ZnO、Al、MnO、Cr、等が挙げられる。またケイ酸ガラスを含んでもよい。酸化物の質量割合は90%以上であることができ、95%以上であることもでき、97%以上であることもできる。
【0039】
フェライト焼結磁石の断面において、フェライト相4及び粒界相6の合計に占める粒界相6の面積比率は0.1~5%とすることができる。
【0040】
フェライト焼結磁石の形状に特に限定はなく、たとえば、端面が円弧状となるように湾曲したアークセグメント(C型)形状、平板形状等、種々の形状をとることができる。
【0041】
フェライト粒子は、例えば、後述の粉砕工程によって得ることができる。フェライト粒子の平均粒子径は、例えば、0.1~7μmである。フェライト粒子の平均粒子径も、フェライト焼結磁石の結晶粒の平均粒径と同様にして、TEM又はSEMによるフェライト粒子の観察画像を用いて求めることができる。具体的には、数百個のフェライト粒子を含むSEM又はTEMの各主相粒子の面積を画像解析により求めたうえで、該面積を有する円の直径(円相当径)を、その該フェライト粒子の粒子径と定義して粒径分布を測定する。測定した個数基準の粒子径分布から、フェライト粒子の粒子径の個数基準の平均値を算出する。このようにして測定される平均値を、フェライト粒子の平均粒子径とする。
【0042】
フェライト焼結磁石の20℃における保磁力は、例えば、4000Oe以上であることができ、4700Oe超であることができる。フェライト焼結磁石の20℃における残留磁束密度は4000G以上であることができ、4400G以上であることができる。フェライト焼結磁石は、保磁力(HcJ)と残留磁束密度(Br)の両方に優れることが好ましい。
【0043】
フェライト粒子の20℃における残留磁束密度Brは40emu/g以上であることができ、保磁力HcJは3000Oe以上であることができる。
【0044】
フェライト焼結磁石およびフェライト粒子のHcJの温度係数の絶対値は、0.15[%/℃]以下であってもよいし、0.1[%/℃]以下であってもよい。
【0045】
ここで、HcJの温度係数βは、HcJ(20℃)を20℃でのHcJの実測値(単位Oe)、HcJ(100℃)を100℃でのHcJの実測値(単位Oe)とした時に以下のように定義される。
【0046】
HcJ温度係数β(%/℃)=[HcJ(100℃)-HcJ(20℃)]/80(℃)/HcJ(20℃)×100
【0047】
(作用)
本実施形態にかかるフェライト焼結磁石及びフェライト粒子によれば、金属元素R、金属元素A、Fe、Co、Zn、Si、及びBを所定の範囲で含むので、20℃における保磁力及び残留磁束密度を両方とも高くすることができる。
【0048】
この理由として、ZnによりフェライトのBサイトが置換されることによりBrが向上することが考えられる。また、金属元素Rの添加により、HcJ及びBrが高くなると考えられる。さらに、Si及び/又はCaの添加により、組織が緻密化して密度が向上することが考えられる。さらに、Bの添加によりHcJが向上することが考えられる。
【0049】
さらに、本実施形態にかかるフェライト焼結磁石及びフェライト粒子によれば、HcJの温度係数の絶対値を低く抑えることができる。特に、Znの割合が小さい(例えばzが0.1以下)ほど、HcJの温度係数は小さくなる(例えば、0.105%/℃以下)傾向がある。
【0050】
(ボンド磁石)
次に、ボンド磁石の実施形態を以下に説明する。
本実施形態のボンド磁石は、上記のフェライト粒子と樹脂とを含む。樹脂の例は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、多芳香族環を有する樹脂、トリアジン環を有する樹脂(トリアジン樹脂)等の熱硬化性樹脂;スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ナイロン等のポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン-エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂である。
【0051】
ボンド磁石における樹脂の含有率は、優れた磁気特性と優れた形状保持性とを両立させる観点から、例えば0.5~10質量%であってもよく、1~5質量%であってもよい。ボンド磁石における樹脂の含有率は、製造時に用いる樹脂を含有する溶液中の樹脂濃度や、成形体作製時の成形圧力を変えることによって調整することができる。同様の観点から、ボンド磁石におけるフェライト粒子の含有率は、例えば90~99.5質量%であってもよく、95~99質量%であってもよい。
【0052】
ボンド磁石の形状にとくに限定はなく、フェライト焼結磁石と同様とすることができる。
【0053】
本実施形態に係るフェライト焼結磁石、及び、ボンド磁石は、モータ及び発電機などの回転電気機械、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD-ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネトラッチ、又はアイソレータ等の磁場発生部材として用いることができる。また、磁気記録媒体の磁性層を蒸着法又はスパッタ法等で形成する際のターゲット(ペレット)として用いることもできる。
【0054】
(回転電気機械)
続いて、図2に本発明の一実施形態に係るモータ200を示す。モータ200は、ステータ31と、ロータ32と、を備える。ロータ32は、シャフト36及びローターコア37を有する。本実施形態のモータ200では、ステータ31に永久磁石であるC字型のフェライト焼結磁石又はボンド磁石100が設けられ、ロータ32のローターコア37に電磁石(コイル)が設けられている。
【0055】
なお、フェライト焼結磁石がロータに設けられ、電磁石(コイル)がステータに設けられたモータでもよい。モータの形態に特段の限定はない。また、回転電気機械の他の一例は、ロータ及びステータを有する発電機である。フェライト焼結磁石はロータ又はステータに設けられることができる。
【0056】
(フェライト焼結磁石等の製造方法)
次に、フェライト粒子、フェライト焼結磁石及びボンド磁石の製造方法の一例を説明する。以下に説明する製造方法は、配合工程、仮焼工程、粉砕工程、成形工程及び焼成工程を含む。各工程の詳細を以下に説明する。
【0057】
配合工程は、仮焼用の混合粉末を調製する工程である。仮焼用の混合粉末は、フェライトの構成元素、例えば、金属元素A、金属元素R、Fe、Co、及び、Znを含むことができる。配合工程では、各元素を含む粉末の混合物を、アトライタ、又はボールミル等で1~20時間程度混合するとともに粉砕処理を行って混合粉末を得ることが好適である。
【0058】
B,Si等の添加元素は、上記粉末にあらかじめ含まれていてもよいが、配合工程に当該添加元素を含む別の粉末をさらに添加して仮焼用の混合粉末を得てもよい。別の粉末の例は、Bを含む粉末、及び、Siを含む粉末である。
【0059】
各元素を含む粉末の例は、各元素の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、有機金属化合物である。一つの粉末が、2以上の金属元素を含んでいてもよいし、一つの粉末が実質的に一つの金属元素のみを含有してもよい。
【0060】
Caを含む粉末の例は、CaCO、及び、CaOである。
Srを含む粉末の例は、SrCO、及び、SrOである。
Rを含む粉末の例は、La、La(OH)である。
Feを含む粉末の例は、Feである。
Coを含む粉末の例は、Coである。
Znを含む粉末の例は、ZnOである。
Bを含む粉末の例は、Bである。
Siを含む粉末の例は、SiOである。
【0061】
原料粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば0.1~2.0μmである。
【0062】
配合工程の後、必要に応じて、原料組成物を乾燥させ、篩により粗粒を除去することが好適である。
【0063】
仮焼工程では、配合工程で得られた原料組成物を仮焼する。仮焼は、例えば、空気等の酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。仮焼の温度は、例えば1100~1400℃であってもよく、1100~1300℃であってもよい。仮焼の時間は、例えば1分間~10時間であってもよく、1分間~3時間であってもよい。仮焼により得られる仮焼粉(フェライト粒子)におけるフェライト相(M相)の比率は、例えば70質量%以上であってもよく、75質量%以上であってもよい。このフェライト相の比率は、フェライト焼結磁石におけるフェライト相の比率と同様にして求めることができる。
【0064】
粉砕工程では、仮焼工程により顆粒状や塊状となった仮焼粉を粉砕する。このようにしてフェライト粒子が得られる。粉砕工程は、例えば、仮焼粉を粗い粉末となるように粉砕(粗粉砕工程)した後、これを更に微細に粉砕する(微粉砕工程)、2段階の工程に分けて行ってもよい。
【0065】
粗粉砕は、例えば、振動ミル等を用いて、仮焼粉の平均粒径が0.1~5.0μmとなるまで行うことができる。
【0066】
微粉砕では、粗粉砕で得られた粗粉を、さらに湿式アトライタ、ボールミル、ジェットミル等によって粉砕する。微粉砕では、得られる微粉(フェライト粒子)の平均粒径が、例えば0.08~2.0μm程度となるように粉砕を行う。微粉の比表面積(例えばBET法により求められる。)は、例えば7~12m/g程度とする。好適な粉砕時間は、粉砕方法によって異なり、例えば湿式アトライタの場合、30分間~10時間であり、ボールミルによる湿式粉砕では10~50時間である。フェライト粒子の比表面積は、市販のBET比表面積測定装置(Mountech製、商品名:HM Model-1210)を用いて測定することができる。
【0067】
微粉砕工程では、焼成後に得られる焼結体の磁気的配向度を高めるため、例えば一般式C(OH)n+2で示される多価アルコールを添加してもよい。一般式におけるnは、例えば4~100であってもよく、4~30であってもよい。多価アルコールとしては、例えばソルビトールが挙げられる。また、2種類以上の多価アルコールを併用してもよい。さらに、多価アルコールに加えて、他の公知の分散剤を併用してもよい。
【0068】
多価アルコールを添加する場合、その添加量は、添加対象物(例えば粗粉)に対して、例えば0.05~5.0質量%であってもよく、0.1~3.0質量%であってもよい。なお、微粉砕工程で添加した多価アルコールは、後述する焼成工程で熱分解して除去される。
【0069】
なお原料粉末の全てを配合工程で混合せずに、粗粉砕工程及び/又は微粉砕工程において、一部の原料粉末、例えば、CaCO粉末の一部、及び、SiO粉末の一部または全部を添加することが好適である。仮焼き後にこのような成分を含む粉末を添加することによって、焼成工程での焼結性を向上すること、及び磁気特性を向上することができる。なお、これらの副成分は、湿式で成形を行う場合にスラリーの溶媒とともに流出することがあるため、フェライト焼結磁石100における目標の含有量よりも多めに配合することができる。
例えば、Caを含む粉末の一部を仮焼後に添加する場合、Caの添加量は、CaをCaCOに換算して、フェライト磁石全体に対して0.01質量%以上であっても良く、1.60質量%以下であってもよい。
【0070】
成形工程では、粉砕工程で得られたフェライト粒子を、磁場中で成形して、成形体を得る。成形は、乾式成形及び湿式成形のいずれの方法でも行うことができる。磁気的配向度を高くする観点からは、湿式成形で行うことが好ましい。
【0071】
湿式成形により成形する場合は、例えば上述した微粉砕工程を湿式で行うことでスラリーを得た後、このスラリーを所定の濃度に濃縮して、湿式成形用スラリーを得る。この湿式成形用スラリーを用いて成形を行うことができる。スラリーの濃縮は、遠心分離又はフィルタープレス等によって行うことができる。湿式成形用スラリーにおけるフェライト粒子の含有量は、例えば30~80質量%である。スラリーにおいて、フェライト粒子を分散する分散媒としては例えば水が挙げられる。スラリーには、グルコン酸、グルコン酸塩、ソルビトール等の界面活性剤を添加してもよい。分散媒としては非水系溶媒を使用してもよい。非水系溶媒としては、トルエンやキシレン等の有機溶媒を使用することができる。この場合には、オレイン酸等の界面活性剤を添加してもよい。なお、湿式成形用スラリーは、微粉砕後の乾燥状態のフェライト粒子に、分散媒等を添加することによって調製してもよい。
【0072】
湿式成形では、次いで、この湿式成形用スラリーに対し、磁場中成形を行う。その場合、成形圧力は、例えば9.8~196MPa(0.1~2.0ton/cm)である。印加する磁場は、例えば398~1194kA/m(5~15kOe)である。
【0073】
焼成(本焼成)工程では、成形工程で得られた成形体を焼成してフェライト焼結磁石を得る。成形体の焼成は、大気中等の酸化性雰囲気中で行うことができる。焼成温度は、例えば1050~1270℃であってもよく、1080~1240℃であってもよい。また、焼成時間(焼成温度に保持する時間)は、例えば0.5~3時間である。
【0074】
焼成工程では、焼結温度まで到達させる前に、例えば室温から100℃程度まで、0.5℃/分程度の昇温速度で加熱してもよい。これによって、焼結が進行する前に成形体を十分に乾燥することができる。また、成形工程で添加した界面活性剤を十分に除去することができる。なお、これらの処理は、焼成工程のはじめに行ってもよく、焼成工程よりも前に別途行っておいてもよい。
【0075】
このようにしてフェライト焼結磁石を製造することができる。フェライト焼結磁石ではなく、ボンド磁石を製造する場合は、上述の成形工程で得られた成形体に樹脂を含浸させ、加熱して樹脂を硬化することによりボンド磁石を得ることができる。具体的には、成形体を予め調製した樹脂含有溶液に浸漬し、密閉容器中で減圧することによって脱泡させて樹脂含有溶液を成形体の空隙内に浸透させる。その後、成形体を樹脂含有溶液中から取り出し、成形体の表面に付着した余剰の樹脂含有溶液を取り除く。余剰の樹脂含有溶液を取り除くには遠心分離機などを用いればよい。
【0076】
樹脂含有溶液に浸漬する前に成形体を密閉溶液中に入れ減圧雰囲気に保持しつつトルエン等の溶剤に浸漬することによって、脱泡が促進されて樹脂の含浸量を増やすことが可能となり、成形体中の空隙を減らすことができる。
【0077】
フェライト粒子、フェライト焼結磁石及びボンド磁石の製造方法は、上述の例に限定されない。例えば、ボンド磁石を製造する場合、上述した粉砕工程までを行った後、得られたフェライト粒子と樹脂とを混合し、これを磁場中で成形して、フェライト粒子と樹脂とを含むボンド磁石を得てもよい。
【0078】
また例えば、成形工程及び焼成工程は、以下の手順で行ってもよい。すなわち、成形工程は、CIM(Ceramic Injection Molding(セラミック射出成形)成形法、又は、PIM(Powder Injection Molding、粉末射出成形の一種)で行ってもよい。CIM成形法では、まず、乾燥させたフェライト粒子をバインダ樹脂とともに加熱混練してペレットを形成する。このペレットを、磁場が印加された金型内で射出成形して予備成形体を得る。この予備成形体を脱バインダ処理することによって成形体が得られる。次いで焼成工程において、脱バインダ処理した成形体を、例えば、大気中で好ましくは1100~1250℃、より好ましくは1160~1230℃の温度で0.2~3時間程度焼結して、フェライト焼結磁石を得ることができる。
【実施例
【0079】
本発明の内容を実施例及び比較例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[フェライト焼結磁石の製造]
(実施例1~37及び比較例1~17)
原材料として、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、水酸化ランタン(La(OH))、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(Co)、酸化亜鉛(ZnO)の粉末を準備した。これらの原材料粉末を、原子比が、表1~3のとおりになるように配合した。ただし、後述するように炭酸カルシウムの一部は粉砕工程時に添加するので、その分はあらかじめ控除した。このようにして得られた配合物に対して酸化ホウ素(B)を、フェライト焼結磁石中の量が表1~表2の量となるように所定量添加し、湿式アトライタ及びボールミルを用いて混合及び粉砕を行ってスラリーを得た(配合工程)。各実施例及び比較例では、互いに異なる組成を有するフェライト焼結磁石が得られるように、表1~表2に示すとおりに各原材料の配合比を変更した。
【0081】
このスラリーを乾燥し、粗粒を除去した後、大気中、1280℃で仮焼を行って仮焼粉を得た(仮焼工程)。得られた仮焼粉を、小型ロッド振動ミルで粗粉砕して粗粉を得た。この粗粉に対して、フェライト焼結磁石の質量に対して0.3質量%となる量の酸化ケイ素(SiO)粉末、0.7質量%となる量の炭酸カルシウム(CaCO)粉末、及び、1質量%のソルビトールを添加した。その後、湿式ボールミルを用いて微粉砕し、フェライト粒子を含むスラリーを得た(粉砕工程)。
【0082】
微粉砕後に得られたスラリーの水分量を調節して湿式成形用スラリーを得た。この湿式成形用スラリーを、湿式磁場成型機を使用して、796kA/m(10kOe)の印加磁場中で成形し、直径30mm×厚み15mmの円柱状を有する成形体を得た(成形工程)。得られた成形体を、大気中、室温にて乾燥し、次いで大気中、1170℃で焼成を行った(焼成(本焼成)工程)。このようにして円柱状のフェライト焼結磁石を得た。
【0083】
(実施例38,39)
組成を表3のとおりになるように配合し、さらに、焼成(本焼成)温度を1150℃とする以外は、実施例1と同様とした。
【0084】
[フェライト焼結磁石の評価1]
<磁気特性の評価>
フェライト焼結磁石の上下面を加工した後、最大印加磁場29kOeのB-Hトレーサを用いて、20℃におけるBr及びHcJをそれぞれ測定した。また、一部のフェライト焼結磁石について、振動試料型磁力計を用いて100℃におけるHcJを測定し、HcJの温度係数βを求めた。
【0085】
<組成分析>
フェライト焼結磁石におけるB(ホウ素)及びSi(ケイ素)の含有量を以下の手順で測定した。フェライト焼結磁石の試料0.1gを、過酸化ナトリウム1g及び炭酸ナトリウム1gと混合して加熱し融解した。融解物を、純水40ml及び塩酸10mlの溶液に溶解した後、純水を加えて100mlの溶液とした。この溶液を用いて、ICP発光分光分析(ICP-AES)によってホウ素のB換算の含有量、及びケイ素のSiO換算の含有量を求めた。ICP発光分光分析には島津製作所製の分析装置(装置名:ICPS 8100CL)を用い、測定にあたってはマトリックスマッチングを行った。
フェライトにおけるr、x、y、及び、zは、蛍光X線分析によって測定した。
これらの結果を表1~表3に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表1~3に示すとおり、(2)~(5)式を満たし、かつ、Si及びBの含有量が所定の範囲のフェライト磁石では、20℃でのBr及びHcJに優れた。また、特に、Znが少ない場合(例えばzが0.1以下)にHcJの温度係数βの絶対値も低く(例えば、0.105%/℃以下)抑えられた。
【0090】
また、比較例10、実施例11、24、28のフェライト焼結磁石を粉砕して平均粒子径が10μm程度の粒子とし、上記と同様に振動試料型磁力計を用いて20℃におけるBr及びHcJと、100℃におけるHcJを測定し、HcJの温度係数βを求めた。結果を表4に示す。粒子の状態であっても、20℃でのBr及びHcJに優れ、また、Znが少ない場合にはHcJの温度係数βの絶対値が特に低く抑えられた。
【0091】
【表4】
【符号の説明】
【0092】
4…フェライト相(主相)、6…粒界相、31…ステータ(ステータカバー)、32…ロータ、36…シャフト、37…ローターコア、100…フェライト焼結磁石又はボンド磁石、200…モータ。

図1
図2