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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20240919BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61M25/10 500
A61M25/10 512
A61M25/10 510
B29C49/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021545185
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031104
(87)【国際公開番号】W WO2021049261
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019163857
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 良紀
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真弘
(72)【発明者】
【氏名】古賀 陽二郎
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0047149(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0091585(US,A1)
【文献】特開平05-293174(JP,A)
【文献】特開2014-140462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
B29C 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠近方向に延在しているシャフトと、前記シャフトの遠位側に設けられているバルーンと、を有するバルーンカテーテルの製造方法であって、
遠近方向に延在する空間部を内部に有する筒状物を準備する筒状物準備工程と、
前記バルーンを準備するバルーン準備工程と、
前記筒状物内に前記バルーンを配置し、前記バルーンの内部を加圧して前記バルーンを膨張させるバルーン配置工程と、
前記バルーンの内部を減圧し、前記バルーンを収縮させて羽根形状部を形成するバルーン収縮工程と、を有しており、
前記バルーン配置工程での、前記筒状物の遠近方向に垂直な断面において、前記筒状物は、前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も短い部分と、前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も長い部分とを有し、
前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も短い部分までの距離は、前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も長い部分までの距離の60%以上95%以下であり、
前記筒状物は、遠近方向に延在する溝部を内部に有しており、
前記溝部は、前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も短い部分にあり、
前記バルーンは、バルーン本体と、該バルーン本体の外側面に形成されている突出部と、を有しており、
前記バルーン収縮工程の前に、前記溝部の内部に前記突出部を配置する突出部配置工程を有していることを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記バルーン収縮工程において、前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も長い部分に位置している前記バルーンの部分が前記羽根形状部の先端部となり、
前記筒状物の内腔の外形を輪郭とする図の図心から前記筒状物の内側面までの距離が最も短い部分に位置している前記バルーンの部分が隣接する複数の前記羽根形状部の間の谷部となる請求項1に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記突出部は、前記バルーン本体と同一材料から構成されている請求項1または2に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記突出部の数は、複数であり、
前記溝部の数は、前記突出部の数と等しい請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項5】
前記バルーンは、外表面に親水性コーティングが施されており、
前記突出部の頂部の親水性コーティングを除去するコーティング除去工程を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング除去工程は、前記バルーン配置工程の後に行っており、
前記コーティング除去工程において、前記バルーンを遠近方向に摺動させ、前記突出部の外表面と前記筒状物の内表面とを接触させている請求項に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンを有するバルーンカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内で血液が循環するための流路である血管に狭窄が生じ、血液の循環が滞ることにより、様々な疾患が発生することが知られている。特に、心臓へ血液を供給する冠状動脈に狭窄が生じると、狭心症、心筋梗塞等の重篤な疾病をもたらすおそれがある。このような血管の狭窄部を治療する方法として、PTA、PTCAといった血管形成術等の、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる手技がある。血管形成術は、バイパス手術のような開胸術を必要としない低侵襲療法であり、広く行われている。
【0003】
通常、バルーンカテーテルは、使用時まで折り畳まれた状態のバルーンを保護しておくために、折り畳まれたバルーンの外径よりも内径が少し大きい円筒形のチューブで形成された保護管をバルーンに被せるという形態が採用されている。バルーンを折り畳む方法としては、例えば、特許文献1~6に記載されているような方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-505691号公報
【文献】特開2017-12678号公報
【文献】国際公開第2016/163495号
【文献】特表2015-532598号公報
【文献】特開2017-60616号公報
【文献】特開2013-165930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~6に記載されているようなバルーンの折り畳み方法では、外径が小さくなるように綺麗に折り畳むという点で改善の余地があった。なお、折り畳んだ状態のバルーンの外径が大きい場合、保護管にバルーンを挿通させにくくなるといった問題や、バルーンカテーテルの使用時に、保護管からバルーンを取り出した際にバルーンが広がって外径が大きくなりやすく、バルーンカテーテルの血管内の通過性が悪くなってしまうといった問題がある。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バルーンの外径が小さくなるように綺麗に折り畳むことができるバルーンカテーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができたバルーンカテーテルの製造方法は、遠近方向に延在しているシャフトと、シャフトの遠位側に設けられているバルーンと、を有するバルーンカテーテルの製造方法であって、遠近方向に延在する空間部を内部に有する筒状物を準備する筒状物準備工程と、バルーンを準備するバルーン準備工程と、筒状物内にバルーンを配置し、バルーンの内部を加圧してバルーンを膨張させるバルーン配置工程と、バルーンの内部を減圧し、バルーンを収縮させて羽根形状部を形成するバルーン収縮工程と、を有しており、バルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面において、筒状物は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分と、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分とを有し、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分までの距離は、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分までの距離の50%以上95%以下であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法は、バルーン収縮工程において、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分に位置しているバルーンの部分が羽根形状部の先端部となり、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分に位置しているバルーンの部分が隣接する複数の羽根形状部の間の谷部となることが好ましい。
【0009】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、筒状物は遠近方向に延在する溝部を内部に有していることが好ましい。
【0010】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、溝部は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分にあることが好ましい。
【0011】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、バルーンはバルーン本体と、該バルーン本体の外側面に形成されている突出部と、を有しており、バルーン収縮工程の前に、溝部の内部に突出部を配置する突出部配置工程を有していることが好ましい。
【0012】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、突出部はバルーン本体と同一材料から構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、突出部の数は複数であり、溝部の数は突出部の数と等しいことが好ましい。
【0014】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、バルーンは外表面に親水性コーティングが施されており、突出部の頂部の親水性コーティングを除去するコーティング除去工程を有することが好ましい。
【0015】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法において、コーティング除去工程はバルーン配置工程の後に行っており、コーティング除去工程において、バルーンを遠近方向に摺動させ、突出部の外表面と前記筒状物の内表面とを接触させていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルーンカテーテルの製造方法によれば、筒状物内にバルーンを配置し、バルーンの内部を加圧してバルーンを膨張させるバルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面において、筒状物は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分と、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分があり、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分までの距離は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分までの距離の50%以上95%以下であることにより、バルーンを収縮させた状態において羽根形状部が形成される位置を制御することが可能となり、バルーンを綺麗に折り畳むことができ、折り畳まれた状態のバルーンの外径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における製造方法のバルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面図を表す。
図2】本発明の実施の形態における製造方法のバルーン収縮工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面図を表す。
図3】本発明の他の実施の形態における製造方法のバルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面図を表す。
図4】本発明の他の実施の形態における製造方法のバルーン収縮工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面図を表す。
図5】本発明のさらに他の実施の形態における製造方法のバルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面図を表す。
図6】本発明のさらに他の実施の形態における製造方法のバルーン収縮工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
図1は本発明の実施の形態におけるバルーンカテーテルの製造方法のバルーン配置工程での断面図を表し、図2はバルーン収縮工程での断面図を表す。バルーンカテーテルの製造方法は、遠近方向に延在しているシャフトと、シャフトの遠位側に設けられているバルーン1と、を有するバルーンカテーテルの製造方法であって、遠近方向に延在する空間部11を内部に有する筒状物10を準備する筒状物準備工程と、バルーン1を準備するバルーン準備工程と、筒状物10内にバルーン1を配置し、バルーン1の内部を加圧してバルーン1を膨張させるバルーン配置工程と、バルーン1の内部を減圧し、バルーン1を収縮させて羽根形状部3を形成するバルーン収縮工程と、を有している。
【0020】
本発明において、遠位側とはバルーン1の延在方向に対して処置対象者側の方向を指し、近位側とは遠位側の反対側、すなわちバルーン1の延在方向に対して使用者、つまり術者の手元側の方向を指す。また、バルーン1の近位側から遠位側への方向を遠近方向と称する。
【0021】
バルーンカテーテルは、シャフトを通じてバルーン1の内部に流体が供給されるように構成され、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いてバルーン1の拡張および収縮を制御することができる。流体は、ポンプ等によって加圧した圧力流体であってもよい。
【0022】
シャフトは、遠近方向に延在しており、内部に流体の流路が設けられている。また、シャフトは、内部にガイドワイヤの挿通路を有していることが好ましい。シャフトが内部に流体の流路およびガイドワイヤの挿通路を有する構成とするには、例えば、シャフトが外側チューブと内側チューブとを有しており、内側チューブがガイドワイヤの挿通路として機能し、内側チューブと外側チューブの間の空間が流体の流路として機能することが挙げられる。シャフトが外側チューブと内側チューブとを有している場合、内側チューブが外側チューブの遠位端から延出してバルーン1を遠近方向に貫通し、バルーン1の遠位側が内側チューブに接合され、バルーン1の近位側が外側チューブと接合されることが好ましい。
【0023】
本発明は、シャフトの遠位側から近位側にわたってワイヤを挿通する、所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルと、シャフトの遠位側から近位側に至る途中までワイヤを挿通する、所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルのいずれにも適用することができる。図示していないが、バルーンカテーテルがオーバーザワイヤ型である場合、シャフトに流体を送り込むために、シャフトの近位側にハブを有していてもよい。ハブは、バルーン1の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部と、ガイドワイヤの挿通路と連通したガイドワイヤ挿入部を有することが好ましい。バルーンカテーテルが流体注入部とガイドワイヤ挿入部を備えるハブを有していることにより、バルーン1の内部に流体を供給してバルーン1を拡張および収縮させる操作や、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを処置対象部位へ送り込む操作を容易に行いやすくなる。
【0024】
シャフトとハブとの接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフトとハブは、接着によって接合されていることが好ましい。シャフトとハブとが接着されていることにより、例えば、シャフトは柔軟性の高い材料から構成され、ハブは剛性の高い材料から構成されている等、シャフトを構成する材料とハブを構成する材料とが異なっている場合に、シャフトとハブとの接合強度を高めることができる。その結果、バルーンカテーテルの耐久性を高めることが可能となる。
【0025】
シャフトを構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフトを構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。シャフトを構成する材料がポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることにより、シャフトの表面の滑り性を高め、バルーンカテーテルの血管への挿通性を向上させることができる。
【0026】
バルーン1は、シャフトの遠位側に設けられている。バルーン1とシャフトとの接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン1の端部とシャフトとが重なっている箇所にリング状の部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン1とシャフトは、溶着によって接合されていることが好ましい。バルーン1とシャフトとが溶着されていることにより、バルーン1を繰り返し拡張および収縮させてもバルーン1とシャフトとの接合が解除されにくくなる。そのため、バルーン1とシャフトの接合強度を容易に高めることができる。
【0027】
バルーン1は、直管部、直管部の近位側に接続される近位側テーパー部、および直管部の遠位側に接続される遠位側テーパー部を有することが好ましい。近位側テーパー部および遠位側テーパー部は、直管部から離れるにつれて縮径するように形成されていることが好ましい。バルーン1が直管部を有していることにより、直管部が狭窄部と十分に接触して狭窄部の拡張が行いやすくなる。さらに、バルーン1が直管部から離れるにつれて外径が小さくなる近位側テーパー部および遠位側テーパー部を有していることにより、バルーン1を収縮させてシャフトに巻き付けた際に、バルーン1の遠位端部および近位端部の外径を小さくして、シャフトとバルーン1との段差を小さくすることができる。そのため、バルーン1を遠近方向に挿通させやすくなる。なお、本発明においては、膨張可能な部分をバルーン1と見なす。
【0028】
バルーン1を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミドエラストマー、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12等のポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バルーン1を構成する材料は、中でも、ポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン12であることがより好ましい。バルーン1を構成する材料がポリアミド系樹脂であることにより、バルーン1の柔軟性を高めることが可能となる。
【0029】
バルーン1の外径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。バルーン1の外径の下限値を上記の範囲に設定することにより、血管内の狭窄部を十分に拡張することができる。また、バルーン1の外径は、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。バルーン1の外径の上限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン1の外径が過度に大きくなることを防止することができる。
【0030】
バルーン1の遠近方向の長さは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましい。バルーン1の遠近方向の長さの下限値を上記の範囲に設定することにより、一度に拡張できる狭窄部の面積を大きくして手技にかかる時間を短縮することが可能となる。また、バルーン1の遠近方向の長さは、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。バルーン1の遠近方向の長さの上限値を上記の範囲に設定することにより、狭窄部の拡張のためにバルーン1の内部に送り込む流体の量を減らし、バルーン1を十分に拡張させるために必要な時間を短くすることができる。
【0031】
バルーン1の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。バルーン1の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン1の強度を高めて狭窄部を十分に拡張することができる。また、バルーン1の厚みの上限値は、バルーンカテーテルの用途に応じて設定することができ、例えば、100μm以下、90μm以下、80μm以下とすることができる。
【0032】
筒状物準備工程において、遠近方向に延在する空間部11を内部に有する筒状物10を準備する。筒状物10が内部に有している空間部11には、バルーン1を配置することができる。
【0033】
筒状物10を構成する材料は、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂、鉄、銅、ステンレス等の金属等が挙げられる。中でも、筒状物10を構成する材料は、金属であることが好ましい。筒状物10を構成する材料が金属であることによって筒状物10の強度が高まり、バルーン配置工程においてバルーン1の内部に加える圧力を高くすることが可能となる。
【0034】
バルーン準備工程において、バルーン1を準備する。その後、図1に示すように、バルーン配置工程において、筒状物10内にバルーン1を配置し、バルーン1の内部を加圧してバルーン1を膨張させる。
【0035】
バルーン1の内部を加圧する方法としては、例えば、空気、窒素ガス等の気体や、純水、生理食塩水等の液体といった流体をバルーン1の内部に供給すること等が挙げられる。流体を加圧するには、例えば、ポンプ等を用いることができる。
【0036】
バルーン配置工程において、筒状物10内にてバルーン1の内部を加圧してバルーン1を膨張させた際に、バルーン1の外表面の少なくとも一部が空間部11の内表面に接していることが好ましい。バルーン配置工程において、バルーン1の外表面の少なくとも一部が空間部11の内表面に接していることにより、バルーン配置工程の後に行うバルーン収縮工程において、羽根形状部3を形成しやすくなる。羽根形状部3の形成は、筒状物10の内部形状である空間部11の形状や、バルーン1を構成する材料やバルーン1の膨張率等に影響される。例えば、筒状物10の遠近方向に垂直な断面において、筒状物10の空間部11の内周長は、バルーン1の外周長の1.5倍以下であることが好ましく、1.3倍以下であることがより好ましく、1.2倍以下であることがさらに好ましく、また、0.2倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましい。筒状物10の空間部11の内周長とバルーン1の外周長との比率の上限値および下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン1が空間部11に沿いやすくなる。その結果、羽根形状部3の形成が容易となる。
【0037】
図1に示すように、バルーン配置工程での、筒状物10の遠近方向に垂直な断面において、筒状物10は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2と、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3とを有しており、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2までの距離D1は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3までの距離D2の50%以上95%以下である。
【0038】
図2に示すように、バルーン配置工程の後に、バルーン1の内部を減圧し、バルーン1を収縮させて羽根形状部3を形成するバルーン収縮工程を行う。羽根形状部3は、バルーン1が収縮している状態において、バルーン1の内表面の少なくとも一部同士が接している部分を指す。
【0039】
バルーン配置工程において、筒状物10が、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2と、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3とを有し、かつ、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2までの距離D1は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3までの距離D2の50%以上95%以下であることにより、バルーン収縮工程にてバルーン1の内部を減圧した際に、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2に配置されているバルーン1の部分が、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3に配置されているバルーン1の部分よりも先に筒状物10の重心P1に到達しやすくなる。この時点で筒状物10の重心P1に到達していないバルーン1の部分が羽根形状部3となる。つまり、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3に配置されているバルーン1の部分が羽根形状部3を形成することとなる。そのため、バルーン1の羽根形状部3の位置を制御することができ、バルーン1の外径が小さくなるように綺麗に折り畳むことが可能となる。
【0040】
バルーン配置工程における筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2までの距離D1は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3までの距離D2の50%以上であればよいが、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2までの距離D1と、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3までの距離D2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、筒状物10の内部にバルーン1を配置する工程が行いやすくなる。その結果、バルーンカテーテルの生産効率を高めることができる。また、バルーン配置工程における筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2までの距離D1は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3までの距離D2の95%以下であればよいが、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2までの距離D1と、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3までの距離D2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン収縮工程において羽根形状部3が安定して形成されやすくなる。そのため、バルーン1を綺麗に折り畳みやすくなる。
【0041】
バルーン収縮工程におけるバルーン1の内部を減圧する時間は、バルーン配置工程におけるバルーン1の内部を加圧する時間よりも短いことが好ましい。バルーン収縮工程においてバルーン1の内部を減圧して収縮させる時間を、バルーン1の内部を加圧して膨張させる時間よりも短くすることにより、羽根形状部3や羽根形状部3以外のバルーン1の外表面にシワや弛みが発生しにくく、綺麗にバルーン1を折り畳むことが可能となる。
【0042】
図2に示すように、バルーン収縮工程において形成する羽根形状部3の数は、1つであってもよいが複数であることが好ましい。バルーン収縮工程にて形成する羽根形状部3の数が複数であることにより、羽根形状部3の長さが過度に長くなりにくくなる。そのため、バルーン1を綺麗に折り畳みやすくなる。
【0043】
図1および図2に示すように、バルーン1の配置工程において、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3に位置しているバルーン1の部分が羽根形状部3の先端部3aとなり、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2に位置しているバルーン1の部分が隣接する複数の羽根形状部3の間の谷部3bとなることが好ましい。筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3に位置しているバルーン1の部分が羽根形状部3の先端部3aとなって、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2に位置しているバルーン1の部分が羽根形状部3の谷部3bとなることにより、バルーン1の羽根形状部3の先端部3aおよび谷部3bの位置を制御することが可能となる。そのため、バルーン1をより綺麗に折り畳むことができ、バルーン1のさらなる小径化を図ることができる。
【0044】
図3は本発明の他の実施の形態におけるバルーンカテーテルの製造方法のバルーン配置工程での断面図を表し、図4はバルーン収縮工程での断面図を表す。図3および図4に示すように、筒状物10は、遠近方向に延在する溝部20を内部に有していることが好ましい。筒状物10が内部に溝部20を有していることにより、バルーン配置工程においてバルーン1を膨張させた際に、溝部20の付近にて筒状物10の内表面とバルーン1の外表面との間に隙間ができやすくなる。その結果、バルーン収縮工程においてバルーン1を収縮させた際に、溝部20付近に配置されているバルーン1の部分が筒状物10の重心P1に向かって引っ張られやすくなり、羽根形状部3の谷部3bの位置が制御しやすくなる。
【0045】
図5は本発明のさらに他の実施の形態におけるバルーンカテーテルの製造方法のバルーン配置工程での断面図を表し、図6はバルーン収縮工程での断面図を表す。図5および図6に示すように、溝部20は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3付近にあり、突出部配置工程において、溝部20の内部に突出部2を配置してもよい。溝部20が筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3付近にあることにより、羽根形状部3に突出部2がある状態にてバルーン1を折り畳むことが可能である。突出部2が羽根形状部3に配置されていることにより、バルーンカテーテルの使用時においてバルーン1を拡張する際に、バルーン1の拡張途中の段階であっても狭窄部等の病変部に突出部2が引っ掛かりやすくなる。そのため、病変部にバルーン1を固定しやすく、狭窄部等の拡張が行いやすいバルーンカテーテルとすることができる。
【0046】
溝部20は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が長い部分P3付近にあってもよいが、図3および図4に示すように、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2にあることが好ましい。この際、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2を決定するにあたり、溝部20の深さd1は、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離に加えないこととする。つまり、図3および図4に示すように、筒状物の遠近方向に垂直な断面において、溝部20の開口部の両端部を通る直線を引き、溝部20がある部分においては、筒状物10の重心P1から溝部20の開口部の両端部を通る直線上の地点との距離を測定し、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2を決定する。溝部20が筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2にあることにより、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2の筒状物10の内表面と、筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2に配置されているバルーン1の部分の外表面との間に隙間ができやすくなる。そのために、バルーン収縮工程において筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2に配置されているバルーン1の部分が筒状物10の重心P1に向かって引っ張られて羽根形状部3の谷部3bとなりやすく、バルーン1の折り畳み形状を制御することが容易となる。
【0047】
図3および図4に示すように、バルーン1は、バルーン本体1aと、該バルーン本体1aの外側面に形成されている突出部2と、を有しており、バルーン収縮工程の前に、溝部20の内部に突出部2を配置する突出部配置工程を有していることが好ましい。バルーンカテーテルの製造方法において、バルーン収縮工程の前に突出部配置工程を有していることにより、バルーン配置工程においてバルーン1の内部を加圧した際に突出部2が筒状物10の内側面に押し付けられにくく、突出部2が押し潰されることを防止できる。突出部2を溝部20の内部に配置するには、例えば、バルーン1の内部を加圧することによって、溝部20の内部に突出部2を挿入すること等が挙げられる。
【0048】
バルーン1が外側面に突出部2を有していることにより、突出部2が石灰化して硬化した病変部に亀裂を入れることができ、石灰化病変であってもバルーン1が十分に病変部を拡張することができる。また、例えば、ISR病変等が発生した場合においてバルーン1を拡張することにより、柔らかく、表面が滑りやすい新生内膜に突出部2が引っ掛かりやすく、ISR病変等の拡張時にバルーン1の位置ずれが起こりにくい。
【0049】
突出部2の数は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。つまり、バルーン1の外側面に複数の突出部2が設けられていることが好ましい。突出部2の数が複数であることにより、石灰化によって硬化した病変部に亀裂を入れやすくなる。また、ISR病変に対してバルーン1の位置ずれをより起こりにくくすることもできる。
【0050】
突出部2は、遠近方向に延在している。突出部2の遠近方向の長さは、バルーン1の遠近方向の長さよりも短いことが好ましい。突出部2の遠近方向の長さがバルーン1の遠近方向の長さよりも短いことにより、バルーン1の遠近方向の一部に突出部2が設けられていない箇所があり、バルーン1が曲がりやすくなる。そのため、湾曲した血管等でのバルーンカテーテルの挿通性を高めることができる。
【0051】
突出部2を構成する材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ-(4-メチルペンテン-1)等のポリメチルペンテン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアミドエラストマー、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12等のポリアミド系樹脂等の合成樹脂、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タンタル、コバルト合金等の金属等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、突出部2は、バルーン1を構成する材料と同一の材料にて一体成形によってバルーン1の外側面に設けられていてもよく、バルーン1を構成する材料とは異なる材料にてバルーン1とは別途形成してバルーン1の外側面に設けられていてもよい。
【0052】
突出部2は、バルーン本体1aと同一材料から構成されていることが好ましい。突出部2を構成する材料と、バルーン本体1aを構成する材料が同じであることにより、バルーン本体1aと突出部2との接合強度を高めることが可能となる。
【0053】
また、バルーン本体1aと突出部2は、一体成形品であることが好ましい。バルーン本体1aと突出部2とが一体成形品であることにより、バルーン本体1aと突出部2との接合力をさらに高めることができる。さらに、バルーン本体1aに突出部2を接合する工程が不要となるため、バルーン1の成形にかかる時間を短縮して製造効率を高めることができる。
【0054】
溝部20の幅W1は突出部2の幅W2よりも大きいことが好ましい。溝部20の幅W1が突出部2の幅W2よりも大きいことにより、突出部配置工程において、溝部20の内部に突出部2を配置することが容易となって、バルーンカテーテルの製造効率を向上させることが可能となる。
【0055】
溝部20の幅W1は、突出部2の幅W2の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。溝部20の幅W1と突出部2の幅W2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、突出部配置工程において、溝部20の内部に突出部2を配置する工程が行いやすくなる。そのため、バルーンカテーテルの製造の効率を高めることが可能となる。また、溝部20の幅W1と突出部2の幅W2との比率の上限値は特に限定されないが、例えば、10倍以下、7倍以下、5倍以下とすることができる。
【0056】
溝部20の深さd1は、突出部2の高さH1よりも大きいことが好ましい。溝部20の深さd1が突出部2の高さH1よりも大きいことにより、バルーン1の内部を加圧した際に突出部2が筒状物10の内側面に強く押し付けられることを妨げ、突出部2が押し潰されにくくなる。
【0057】
溝部20の深さd1は、突出部2の高さH1の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。溝部20の深さd1と突出部2の高さH1との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン配置工程において突出部2が溝部20に押し付けられにくくなり、突出部2が潰れてしまうことを防止できる。また、溝部20の深さd1と突出部2の高さH1との比率の上限値は特に限定されないが、例えば、10倍以下、7倍以下、5倍以下とすることができる。
【0058】
溝部20が筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2にあり、バルーン収縮工程の前に、溝部20の内部に突出部2を配置する突出部配置工程を有していることが好ましい。筒状物10の重心P1から筒状物10の内側面までの距離が短い部分P2にある溝部20の内部に突出部2を配置することにより、バルーン収縮工程においてバルーン1の内部を減圧した際に突出部2が筒状物10の重心P1に他のバルーン1の部分よりも早く到達することができる。その結果、突出部2が存在している部分の付近が羽根形状部3の谷部3bとなって、突出部2の位置を制御しながらバルーン1を折り畳むことが可能となる。また、突出部2が複数の羽根形状部3の間に配置されるため、羽根形状部3を巻き畳む際に突出部2が潰れにくいという効果も有している。
【0059】
突出部2の数は、複数であり、溝部20の数は、突出部2の数と等しいことが好ましい。突出部2の数と溝部20の数がいずれも複数であって同じ数であることにより、石灰化病変やISR病変の狭窄部を十分に拡張できる突出部2を有するバルーンカテーテルを製造することができる。また、バルーンカテーテルの製造の際に突出部2が筒状物10の内側面に押し付けられて、突出部2が押し潰されてしまうことを防止できる。
【0060】
バルーン1は、外表面に親水性コーティングが施されており、突出部2の頂部の親水性コーティングを除去するコーティング除去工程を有することが好ましい。バルーン1の外表面に親水性コーティングを施し、突出部2の頂部の親水性コーティングを除去することにより、突出部2の頂部は滑り性が低いために病変部へ突出部2が引っ掛かりやすく、かつ、突出部2の頂部を除くバルーン1の外表面は親水性コーティングによって滑り性が高いため、手技を行いやすいバルーンカテーテルとすることができる。
【0061】
コーティング除去工程は、バルーン配置工程の後に行い、コーティング除去工程において、バルーン1を遠近方向に摺動させ、突出部2の外表面と筒状物10の内表面とを接触させていることが好ましい。つまり、突出部2の外表面に施された親水性コーティングを、筒状物10の内表面と接触させながら摺動させることにより、突出部2の外表面の親水性コーティングを除去することが好ましい。コーティング除去工程を、バルーン1を遠近方向に摺動させ、突出部2の外表面と筒状物10の内表面とを接触させて行うことにより、バルーン1を筒状物10内に配置したまま、簡単な操作でコーティング除去工程を行うことができる。そのため、バルーンカテーテルの製造効率を向上させることが可能である。
【0062】
筒状物10の内表面のうち、突出部2の外表面と接触する部分は、他の部分よりも表面平均粗さRzが高いことが好ましい。筒状物10の内表面のうち、突出部2の外表面と接触する部分の表面平均粗さRzが、他の部分の表面平均粗さRzよりも高いことにより、突出部2の外表面の親水性コーティングは効率的に除去することができる一方、突出部2を除くバルーン1の外表面の親水性コーティングは除去されにくくなる。その結果、突出部2のみ表面の滑り性を低下させたバルーンカテーテルを製造しやすくすることができる。
【0063】
以上のように、バルーンカテーテルの製造方法は、遠近方向に延在しているシャフトと、シャフトの遠位側に設けられているバルーンと、を有するバルーンカテーテルの製造方法であって、遠近方向に延在する空間部を内部に有する筒状物を準備する筒状物準備工程と、バルーンを準備するバルーン準備工程と、筒状物内にバルーンを配置しバルーンの内部を加圧してバルーンを膨張させるバルーン配置工程と、バルーンの内部を減圧しバルーンを収縮させて羽根形状部を形成するバルーン収縮工程と、を有しており、バルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面において、筒状物は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分と、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分とを有し、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分までの距離は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分までの距離の50%以上95%以下である。筒状物内にバルーンを配置し、バルーンの内部を加圧してバルーンを膨張させるバルーン配置工程での筒状物の遠近方向に垂直な断面において、筒状物は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分と、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分があり、筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分までの距離は筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分までの距離の50%以上95%以下であることにより、バルーンを収縮させた状態において羽根形状部が形成される位置を制御することが可能となり、バルーンを綺麗に折り畳むことができ、折り畳まれた状態のバルーンの外径を小さくすることができる。
【0064】
本願は、2019年9月9日に出願された日本国特許出願第2019-163857号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年9月9日に出願された日本国特許出願第2019-163857号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0065】
1:バルーン
1a:バルーン本体
2:突出部
3:羽根形状部
3a:羽根形状部の先端部
3b:羽根形状部の谷部
10:筒状物
11:空間部
20:溝部
P1:筒状物の重心
P2:筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分
P3:筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分
D1:筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が短い部分の距離
D2:筒状物の重心から筒状物の内側面までの距離が長い部分の距離
W1:溝部の幅
W2:突出部の幅
d1:溝部の深さ
H1:突出部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6