(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】3Dプリンターの光造形後のポストキュア方法
(51)【国際特許分類】
B29C 69/02 20060101AFI20240919BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20240919BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240919BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240919BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240919BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20240919BHJP
A61C 13/01 20060101ALI20240919BHJP
A61C 13/15 20060101ALI20240919BHJP
A61C 13/003 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B29C69/02
B29C64/379
B29C64/124
B33Y10/00
B33Y40/20
A61C5/77
A61C13/01
A61C13/15
A61C13/003
(21)【出願番号】P 2021546949
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035304
(87)【国際公開番号】W WO2021054400
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019171072
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020013835
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】河野 顕志
(72)【発明者】
【氏名】藤村 英史
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏之
(72)【発明者】
【氏名】沖本 祐真
(72)【発明者】
【氏名】石田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏夫
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083300(JP,A)
【文献】特開昭61-125340(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 69/02
B29C 64/379
B29C 64/124
B33Y 10/00
B33Y 40/20
A61C 5/77
A61C 13/01
A61C 13/15
A61C 13/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用の補綴装置を製造する方法であって、
患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する取得工程、
前記スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する造形データ作成工程、
前記造形データに基づいて、造形体を作製する造形体作製工程、
前記造形体を前記模型に取り付け、前記造形体と前記模型との少なくとも一部をフィルムによって覆う被覆工程、
前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる排気工程、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化工程、
を
含み、
前記排気工程は、前記フィルムで覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する調節工程を含む、
補綴装置の製造方法。
【請求項2】
前記フィルムには、凹凸が設けられている、
請求項1に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項3】
前記硬化工程は、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で光を照射する光照射工程と、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱工程と、
のうち少なくとも一方を有する、
請求項1
又は2に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項4】
前記造形体作製工程は、
前記造形データに基づいて第1硬化状態の造形体を作製すること、
前記第1硬化状態の造形体に光を照射することによって、前記第1硬化状態より硬化した第2硬化状態の造形体を作製すること、
を有し、
前記硬化工程は、前記第2硬化状態の造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱工程を有する、
請求項1
又は2に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程の加熱温度は、50℃以上130℃以下である、
請求項
3又は4に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項6】
前記造形体作製工程で作製される前記造形体の重合率は、50%以上98%以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項7】
前記フィルムの伸び率は、50%以上500%以下であり、
前記フィルムは、波長100nm以上780nm以下の光を透過する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項8】
前記造形体作製工程は、デジタルライトプロセッシング方式の光造形装置によって前記造形体を作製する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項9】
前記造形体は、クラウン、ブリッジ、レジン床、レジン床義歯及び矯正用スプリントのうちのいずれかである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項10】
更に、
硬化された前記造形体を鋳造用パターンとして用いて、補綴装置製造用の鋳型を作製する鋳型作製工程、
前記鋳型に溶融金属を導入する鋳込み工程、
前記鋳型を壊して鋳物を取り出す掘り出し工程、
前記鋳物を研削材及び研磨材で調整し、補綴装置に仕上げる仕上げ工程、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項11】
更に、
前記造形体に人工歯を接着する接着工程、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の補綴装置の製造方法。
【請求項12】
補綴装置を製造するために用いられる被覆装置であって、
造形体と模型との少なくとも一部を覆うフィルム内の空気を排気する排気部
と、
前記フィルムで覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する調節部と、
を備え、
前記排気部は、前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる、被覆装置。
【請求項13】
前記フィルムは、凹凸が設けられている、
請求項12に記載の被覆装置。
【請求項14】
患者の口腔内を再現した模型のスキャンデータに基づいて作製した造形体と前記模型とを密着させて硬化することによって歯科用の補綴装置を製造する装置であって、請求項12又は13に記載の被覆装置を備える、補綴装置の製造装置。
【請求項15】
更に、
患者の口腔内を再現した模型のスキャンデータを取得し、前記スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する造形データ作成装置、
前記造形データに基づいて、造形体を作製する光造形装置、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化装置、
を備える、請求項14に記載の補綴装置の製造装置。
【請求項16】
前記硬化装置は、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で光を照射する光照射装置と、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱装置と、
のうち少なくとも一方を有する、
請求項15に記載の補綴装置の製造装置。
【請求項17】
前記光造形装置は、前記造形データに基づいて第1硬化状態の造形体を作製し、
前記製造装置は、更に、前記第1硬化状態の造形体に光を照射することによって、前記第1硬化状態より硬化した第2硬化状態の造形体を作製する光照射装置を備え、
前記硬化装置は、前記第2硬化状態の造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱装置を有する、
請求項15に記載の補綴装置の製造装置。
【請求項18】
前記加熱装置の加熱温度は、50℃以上130℃以下である、
請求項16又は17に記載の補綴装置の製造装置。
【請求項19】
造形体と模型との少なくとも一部をフィルムによって覆った状態で、前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記造形体を前記模型に対して密着させ、
前記フィルムで覆われた部分の真空度を40%以上95%以下で前記造形体を前記模型に密着させた状態で硬化させた造形体によって作製される補綴装置。
【請求項20】
歯科用の補綴装置を製造する方法であって、
歯科用の造形体を作製する造形体作製工程、
患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型に前記造形体を取り付け、前記造形体と前記模型との少なくとも一部をフィルムによって覆う被覆工程、
前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる排気工程、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化工程、
を含
み、
前記排気工程は、前記フィルムで覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する調節工程を含む、
補綴装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンターの光造形後のポストキュア方法に関する。具体的には、補綴装置の製造方法、補綴装置の製造装置、補綴装置及び被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリンターによるデジタル技術の発達は著しく、歯科領域においても新しい技術が応用され、歯科技工作業の効率化を可能とする様々な歯科技工用デジタルシステムが開発されている。3Dプリンターには、光造形法、粉末法、熱溶解積層法及びインクジェット法等幾つかの方式が知られている。
【0003】
歯科で主流として使用されているのは、光造形法である。光造形法は、液状の光硬化性樹脂組成物に光(紫外線等)を照射することで、樹脂を少しずつ硬化させて、造形体を作製する方法である。光造形法には、ステレオリソグラフィ(SLA)方式とデジタルライトプロセッシング(DLP)方式がある。この光造形法により作製した造形体は、ポストキュア装置で光重合する前で十分に硬化していない状態(以下、「半硬化状態」と称する場合がある)のものがある。このような半硬化状態の造形体に対して、ポストキュアを行う場合がある。ポストキュアは、半硬化状態の造形体に対して、光(紫外線等)を照射し、最終硬化状態の造形体を得る方法である。ポストキュア処理を行った造形体を最終硬化状態の造形体とする。
【0004】
特許文献1には、半硬化状態の造形体に対してポストキュア(2次硬化)の処理を行う方法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、半硬化状態の造形体を模型に対してフィットさせた後、固定部材によって固定した状態で光を照射し、半硬化状態の造形体を2次硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、補綴装置の適合性の向上という点で未だ改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、補綴装置の適合性を向上させることができる補綴装置の製造方法、補綴装置の製造装置、補綴装置及び真空包装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の補綴装置の製造方法は、
歯科用の補綴装置を製造する方法であって、
患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する取得工程、
前記スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する造形データ作成工程、
前記造形データに基づいて、造形体を作製する造形体作製工程、
前記半硬化状態の造形体を前記模型に取り付け、前記造形体と前記模型との少なくとも一部をフィルムによって覆う被覆工程、
前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる排気工程、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化工程、
を含む。
【0009】
本発明の一態様の被覆装置は、
補綴装置を製造するために用いられる被覆装置であって、
造形体と模型との少なくとも一部を覆うフィルム内の空気を排気する排気部を備え、
前記排気部は、前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる。
【0010】
本発明の一態様の補綴装置の製造装置は、
患者の口腔内を再現した模型のスキャンデータに基づいて作製した造形体と前記模型とを密着させて硬化することによって歯科用の補綴装置を製造する装置であって、前記態様の被覆装置を備える。
【0011】
本発明の一態様の補綴装置は、
造形体と模型との少なくとも一部をフィルムによって覆った状態で、前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記造形体を前記模型に対して密着させ、前記造形体を前記模型に密着させた状態で硬化させた造形体によって作製される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、補綴装置の適合性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る実施の形態1の補綴装置の製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】半硬化状態の造形体の一例を示す概略図である。
【
図4】半硬化状態の造形体を模型に取り付けた状態の一例を示す概略図である。
【
図5】半硬化状態の造形体と模型とをフィルムで覆って排気した状態の一例を示す概略図である。
【
図6】本発明に係る実施の形態1の造形体の作製方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明に係る実施の形態1の補綴装置の作製方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8A】ワックスアップ工程の一例を示す概略図である。
【
図9】本発明に係る実施の形態1の補綴装置の一例を示す概略図である。
【
図10】本発明に係る実施の形態1の別例の補綴装置を示す概略図である。
【
図11】本発明に係る実施の形態1の別例の補綴装置を示す概略図である。
【
図12】本発明に係る実施の形態1の別例の補綴装置を示す概略図である。
【
図14】実施例の補綴装置の一例を示す概略図である。
【
図16】本発明に係る実施の形態2の補綴装置の製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図17】本発明に係る実施の形態2の造形体の作製方法の一例を示すフローチャートである。
【
図18】本発明に係る実施の形態3の補綴装置の製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図19】本発明に係る実施の形態3の造形体の作製方法の一例を示すフローチャートである。
【
図20】本発明に係る実施の形態4の造形体の作製方法の一例を示すフローチャートである。
【
図21】本発明に係る実施の形態5の被覆装置の一例を示す斜視図である。
【
図22】本発明に係る実施の形態5の被覆装置の一例を示す別の斜視図である。
【
図23】本発明に係る実施の形態5の被覆装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】本発明に係る実施の形態6の補綴装置の製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図25】本発明に係る実施の形態6の補綴装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図27】半硬化状態の造形体の一例を示す概略図である。
【
図28】半硬化状態の造形体を模型に取り付けた状態の一例を示す概略図である。
【
図29】義歯床の造形体に人工歯を接着した状態の一例を示す概略図である。
【
図32】義歯床の造形体の別例を示す概略図である。
【
図33】本発明に係る実施の形態6の補綴装置の製造装置の別例を示すブロック図である。
【
図34】本発明に係る実施の形態6の補綴装置の製造方法の別例を示すフローチャートである。
【
図35】半硬化状態の造形体に人工歯を接着した状態の一例を示す概略図である。
【
図36】本発明に係る実施の形態7の補綴装置の製造装置の別例を示すブロック図である。
【
図37】本発明に係る実施の形態7の補綴装置の製造方法の別例を示すフローチャートである。
【
図38】半硬化状態の義歯の造形体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明に至った経緯)
3Dプリンターで作製した造形体は、ポストキュア装置で光重合する前で十分に硬化していない状態、即ち「半硬化状態」となる場合がある。この場合、半硬化状態の造形体に対して、例えば、350~500nmの波長域の光(紫外線など)を照射するポストキュア装置でポストキュアを行う。この際に積層した半硬化状態の造形体は、未重合であるため、1~5%程度の線収縮が起きる。この際に重合収縮が起きて、最終硬化状態の造形体が変形しやすいという問題がある。
【0015】
特許文献1に記載のポストキュア方法では、半硬化状態の造形体を模型に対してフィットさせた後、固定部材によって固定した状態で光を照射し、半硬化状態の造形体を2次硬化させている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、固定部材によって固定されている部分以外の部分が変形しやすく、臨床的に満足のいく最終硬化状態の造形体を得ることができないという問題がある。例えば、固定部材によって固定されていない部分が、ポストキュアにより変形し、模型から浮いた状態になり、適合しなくなる場合がある。
【0016】
そこで、本発明者らは、鋭意検討したところ、半硬化状態の造形体と模型とをフィルムで覆い、フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、半硬化状態の造形体を模型に対して密着させることを見出した。これにより、半硬化状態の造形体を模型に対して密着させた状態で光を照射し、ポストキュア処理を行うことができる。
【0017】
以下、本発明について説明する。
【0018】
本発明の一態様の補綴装置の製造方法は、
歯科用の補綴装置を製造する方法であって、
患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する取得工程、
前記スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する造形データ作成工程、
前記造形データに基づいて、造形体を作製する造形体作製工程、
前記造形体を前記模型に取り付け、前記造形体と前記模型との少なくとも一部をフィルムによって覆う被覆工程、
前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる排気工程、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化工程、
を含む。
【0019】
このような構成により、補綴装置の適合性を向上させることができる。
【0020】
補綴装置の製造方法において、前記硬化工程は、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で光を照射する光照射工程と、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱工程と、
のうち少なくとも一方を有していてもよい。
【0021】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0022】
補綴装置の製造方法において、前記造形体作製工程は、
前記造形データに基づいて第1硬化状態の造形体を作製すること、
前記第1硬化状態の造形体に光を照射することによって、前記第1硬化状態より硬化した第2硬化状態の造形体を作製すること、
を有し、
前記硬化工程は、前記第2硬化状態の造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱工程を有していてもよい。
【0023】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0024】
補綴装置の製造方法において、前記加熱工程の加熱温度は、50℃以上130℃以下であってもよい。
【0025】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0026】
補綴装置の製造方法において、前記排気工程は、前記フィルムで覆われた部分の真空度を40%以上99.9%以下に調節する調節工程を含んでもよい。
【0027】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0028】
補綴装置の製造方法において、前記造形体作製工程で作製される前記造形体の重合率は、50%以上98%以下であってもよい。
【0029】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0030】
補綴装置の製造方法において、前記フィルムの伸び率は、50%以上500%以下であり、
前記フィルムは、波長100nm以上780nm以下の光を透過してもよい。
【0031】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。また、造形体を硬化させるための光がフィルムを透過し易くなる
【0032】
補綴装置の製造方法において、前記造形体作製工程は、デジタルライトプロセッシング方式の光造形装置によって前記造形体を作製してもよい。
【0033】
このような構成により、短時間で適合性の高い補綴装置を作製することができる。
【0034】
補綴装置の製造方法において、前記造形体は、クラウン、ブリッジ、レジン床、レジン床義歯及び矯正用スプリントのうちのいずれかであってもよい。
【0035】
このような構成により、様々な症例に応じた補綴装置を製造することができる。
【0036】
補綴装置の製造方法において、更に、
硬化された前記造形体を鋳造用パターンとして用いて、補綴装置製造用の鋳型を作製する鋳型作製工程、
前記鋳型に溶融金属を導入する鋳込み工程、
前記鋳型を壊して鋳物を取り出す掘り出し工程、
前記鋳物を研削材及び研磨材で調整し、補綴装置に仕上げる仕上げ工程、
を含んでもよい。
【0037】
このような構成により、造形体を用いて作製される金属鋳造床の補綴装置の適合性を向上させることができる。
【0038】
補綴装置の製造方法において、更に、
前記造形体に人工歯を接着する接着工程、
を含んでもよい。
【0039】
このような構成により、適合性を向上させた義歯の補綴装置を製造することができる。
【0040】
本発明の一態様の被覆装置は、
補綴装置を製造するために用いられる被覆装置であって、
造形体と模型との少なくとも一部を覆うフィルム内の空気を排気する排気部を備え、
前記排気部は、前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる。
【0041】
このような構成により、補綴装置の適合性を向上させることができる。
【0042】
前記被覆装置は、更に、前記フィルムで覆われた部分の真空度を40%以上99.9%以下に調節する調節部を備えてもよい。
【0043】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0044】
本発明の一態様の補綴装置の製造装置は、
患者の口腔内を再現した模型のスキャンデータに基づいて作製した造形体と前記模型とを密着させて硬化することによって歯科用の補綴装置を製造する装置であって、前記態様の被覆装置を備える。
【0045】
このような構成により、補綴装置の適合性を向上させることができる。
【0046】
補綴装置の製造装置においては、更に、
患者の口腔内を再現した模型のスキャンデータを取得し、前記スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する造形データ作成装置、
前記造形データに基づいて、造形体を作製する光造形装置、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化装置、
を備えていてもよい。
【0047】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0048】
補綴装置の製造装置において、前記硬化装置は、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で光を照射する光照射装置と、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱装置と、
のうち少なくとも一方を有していてもよい。
【0049】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0050】
補綴装置の製造装置において、前記光造形装置は、前記造形データに基づいて第1硬化状態の造形体を作製し、
前記製造装置は、更に、前記第1硬化状態の造形体に光を照射することによって、前記第1硬化状態より硬化した第2硬化状態の造形体を作製する光照射装置を備え、
前記硬化装置は、前記第2硬化状態の造形体を前記模型に密着させた状態で加熱する加熱装置を有していてもよい。
【0051】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0052】
補綴装置の製造装置において、前記加熱装置の加熱温度は、50℃以上130℃以下であってもよい。
【0053】
このような構成により、補綴装置の適合性を更に向上させることができる。
【0054】
本発明の一態様の補綴装置は、造形体と模型との少なくとも一部をフィルムによって覆った状態で、前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記造形体を前記模型に対して密着させ、前記造形体を前記模型に密着させた状態で硬化させた造形体によって作製される。
【0055】
このような構成により、補綴装置の適合性を向上させることができる。
【0056】
本発明の一態様の補綴装置の製造方法は、
歯科用の補綴装置を製造する方法であって、
歯科用の造形体を作製する造形体作製工程、
患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型に前記造形体を取り付け、前記造形体と前記模型との少なくとも一部をフィルムによって覆う被覆工程、
前記フィルムで覆われた部分の空気を排気することによって、前記フィルムを変形させ、前記造形体を前記模型に対して密着させる排気工程、
前記造形体を前記模型に密着させた状態で、前記造形体を硬化させる硬化工程、
を含む。
【0057】
このような構成により、補綴装置の適合性を向上させることができる。
【0058】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0059】
(実施の形態1)
実施の形態1では、金属鋳造床パターンを有する造形体を作製し、当該造形体を用いて金属鋳造床の補綴装置を製造する例について説明する。なお、本発明に係る補綴装置の製造装置及び製造方法は、これに限定されない。
【0060】
[補綴装置の製造装置]
図1は、本発明に係る実施の形態1の補綴装置の製造装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、補綴装置の製造装置1は、模型2に基づいて金属鋳造床パターンを有する造形体3を作製する作製装置10と、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を作製する鋳造装置20と、を備える。なお、
図1には、製造装置1の他、スキャン装置21が示されている。
【0061】
<作製装置>
図1に示すように、作製装置10は、造形データ作成装置11、光造形装置12、真空包装装置13及び光照射装置14を備える。実施の形態1では、真空包装装置13は被覆装置の一例として説明する。また、光照射装置14は硬化装置の一例として説明する。
【0062】
<造形データ作成装置>
造形データ作成装置11は、患者の口腔内を再現した模型2のスキャンデータを取得し、スキャンデータに基づいて歯科用の造形体3の造形データを作成する。
【0063】
図2は、模型2の一例を示す概略図である。
図2に示すように、模型2は患者の口腔内を再現した模型である。模型2は、患者の上顎の口腔形状を模している。模型2は、患者の口腔内を印象材で印象採得し、そこに石膏を流すことによって作製される。
【0064】
模型2のスキャンデータは、スキャン装置21によって取得される。スキャン装置21は、例えば、3Dスキャナであり、模型2の3次元形状をスキャンする。スキャン装置21によって取得された模型2のスキャンデータは、造形データ作成装置11に送信される。
【0065】
造形データ作成装置11は、スキャン装置21から模型2のスキャンデータを受信する。造形データ作成装置11は、模型2のスキャンデータに基づいて歯科用の造形体3の造形データを作成する。例えば、造形データ作成装置11は、模型2上に歯科用の造形体3の造形データを作成する。造形データは、歯科用の造形体3の3次元形状のデータを含む。これにより、模型2に適合する形状及びサイズの造形体3の造形データを作成する。造形データは、例えば、歯科用CADを用いて作成される。造形データ作成装置11は、作成した造形データを光造形装置12に送信する。実施の形態1では、歯科用の造形体3の造形データは、金属鋳造床の補綴装置4を作製するための鋳造パターンの形状データである。
【0066】
<光造形装置>
光造形装置12は、造形データに基づいて、半硬化状態の造形体を作製する。光造形装置12は、例えば、3Dプリンターである。ここで、半硬化状態の造形体とは、造形体データに基づいて作製されるものであるが、ポストキュア装置である光照射装置14で光重合する前で十分に硬化していない状態の造形体を意味する。
【0067】
光造形装置12には、ステレオリソグラフィ(SLA)方式とデジタルライトプロセッシング(DLP)方式の3Dプリンターを好適に使用できる。実施の形態1では、光造形装置12は、DLP方式である。DLP方式は積層速度が速く、半硬化状態の造形体の造形を短時間で行うことができる。光造形装置12の光強度及び露光時間等の造形条件は、半硬化状態の造形体の形状及び要求される寸法に合わせて適宜調整することができる。
【0068】
光造形装置12は、造形データ作成装置11から造形データを受信する。光造形装置12は、受信した造形データに基づいて半硬化状態の造形体を作製する。
図3は、半硬化状態の造形体5の一例を示す概略図である。
図3に示す半硬化状態の造形体5は、一例であって、これに限定されない。
【0069】
図4は、半硬化状態の造形体5を模型2に取り付けた状態の一例を示す概略図である。
図4に示すように、光造形装置12によって造形された半硬化状態の造形体5は、模型2に取り付けられる。
【0070】
<真空包装装置>
真空包装装置13は、半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部をフィルムによって覆った状態で、フィルム内の空気を排気する。これにより、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させることができる。真空包装装置13は、造形体5と模型2との少なくとも一部をフィルム6で覆い、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、造形体5を模型2に対して密着させる被覆装置である。
【0071】
具体的には、真空包装装置13は、半硬化状態の造形体5と模型2とをフィルムによって覆い、フィルムで覆われた部分の空気を排気する。これにより、フィルム内を負圧にすることによってフィルムを変形させる。その結果、半硬化状態の造形体5が模型2に対して押し当てられた状態となる。このようにして、半硬化状態の造形体5が模型2にフィットした状態が保たれる。
【0072】
図5は、半硬化状態の造形体5と模型2とをフィルム6で覆って排気した状態の一例を示す概略図である。
図5に示す例では、半硬化状態の造形体5と模型2とを袋形状のフィルム6に入れて、フィルム6内の空気を排気している。
図5に示すように、フィルム6内が負圧になることによって、フィルム6が変形し、半硬化状態の造形体5を模型2に対して押し当てる。これにより、半硬化状態の造形体5が模型2に対して密着した状態となる。
【0073】
フィルム6は、透光性を有する軟性のフィルムである。例えば、フィルム6は、光照射装置14によって照射される光を透過可能なフィルムである。また、フィルム6は、半硬化状態の造形体5及び模型2に密着する軟性を有する。フィルム6は、例えば、全光線透過率が60%以上であり、且つ50%以上500%以下の伸び率を有するものが好ましい。フィルム6を形成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ナイロンやポリエチレンが好適に使用できる。
【0074】
伸び率は次式によって算出する。
【0075】
伸び率(%)=100×(L-Lo)/Lo
【0076】
Loは試験前のフィルム長さ、Lは破断時のフィルム長さである。
【0077】
フィルム6の伸び率が50%未満の場合、フィルム6の柔軟性が低下し、口蓋の深いケースにおいて、半硬化状態の造形体5を模型2に対して十分に押し当てることができず、最終硬化状態の造形体3が適合しなくなることがある。伸び率が500%より大きい場合、半硬化状態の造形体5を模型2に対して押し当てる力が大きくなり、半硬化状態の造形体5に意図しない変形が生じ、最終硬化状態の造形体3が適合しなくなることがある。
【0078】
フィルム6は、波長100nm以上780nm以下の光を透過する。好ましくは、フィルム6は、波長300nm以上600nm以下の光を透過する。より好ましくは、フィルム6は、波長350nm以上500nm以下の光を透過する。
【0079】
フィルム6には、エンボス加工が施されていてもよい。言い換えると、フィルム6に凹凸を設けてもよい。フィルム6に凹凸を設けることによって、フィルム6内から空気を排出しやすくなる。例えば、フィルム6は袋状に形成されていてもよい。袋状のフィルム6は、凹凸が設けられた凹凸面を有していてもよい。袋状のフィルム6内に半硬化状態の造形体5が取り付けられた模型2を入れる際に、フィルム6の凹凸面に模型2の底面を接するように配置し、凹凸が設けられていない面を半硬化状態の造形体5Aと接触するように配置してもよい。これにより、模型2の底面側では空気を排出しやすくしつつ、半硬化状態の造形体5側では模型2に密着させやすくすることができる。なお、フィルム6の内部には、フィルム6の開口と反対側の他端から後述する排気部15の排気管に向かって連続溝が形成されていてもよい。これにより、連続溝が空気のガイドとして機能し、フィルム6の内部の空気が排気管へ排出されやすくなる。また、連続溝は、フィルム6内の空気が排出されるのに伴い、変形して閉じてもよい。これにより、フィルム6内の真空度を向上させることができる。
【0080】
真空包装装置13は、排気部15と、調節部16と、を備える。
【0081】
排気部15は、半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部を覆うフィルム6内の空気を排気する。排気部15は、例えば、真空ポンプと、真空ポンプに接続される排気管と、を有する。排気管の一端は真空ポンプに接続されており、排気管の他端はフィルム6に取り付けられる。即ち、排気部15においては、排気管の他端に半硬化状態の造形体5と模型2とを覆うフィルム6が取り付けられる。具体的には、排気管の他端がフィルム6内に配置されている。フィルム6と排気管との接続は、シール材などによってシールされる。排気部15は、真空ポンプによってフィルム6内の空気を、排気管を通じて排気することができる。
【0082】
調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を調節する。調節部16は、例えば、バルブと、バルブに接続される調節管と、を有する。調節管の一端は外気に開放されており、調節管の他端はフィルム6内部に配置されている。フィルム6と調節管との接続は、シール材などによってシールされる。調節管にはバルブが接続されており、バルブを開くことで調整管からフィルム6内部に空気を供給し、バルブを閉じることによって調節管からフィルム6内部への空気の供給を停止する。調節部16は、バルブを開閉することによって、フィルム6内の真空度を調節することができる。
【0083】
なお、調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を測定する真空圧センサを有していてもよい。調節部16は、真空圧センサで測定された真空度に基づいて、バルブの開閉を制御し、フィルム6内の真空度を調節してもよい。
【0084】
調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する。好ましくは、調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を50%以上90%以下に調節する。より好ましくは、調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を60%以上70%以下に調節する。このように、フィルム6で覆われた部分の真空度を調節することによって、後述する光照射により硬化された造形体3と模型2との適合性を向上させることができる。具体的には、真空度が40%より低い場合、模型2への吸着が十分ではなく、模型2に対する適合の良い最終硬化状態の造形体3が得られにくい。また、真空度が95%より高い場合、模型2と最終硬化状態の造形体3との吸着が著しく、最終硬化状態の造形体3を模型2から取り外し難くなる場合がある。そこで、調節部16がフィルム6内の真空度を上記数値範囲に調節することによって、造形体3と模型2との適合を向上させつつ、取り外しを容易にしている。
【0085】
また、フィルム6内の真空度が高くなると、半硬化状態の造形体5が模型2に対して押し当てる力が大きくなり、半硬化状態の造形体5に意図しない変形が生じる場合がある。この変形により、最終硬化状態の造形体3の形状が崩れる場合がある。調節部16がフィルム6内の真空度を上記数値範囲に調節することによって、半硬化状態の造形体5に意図しない変形が生じることを抑制することができる。
【0086】
真空包装装置13は、フィルム6内の空気を排気した後、フィルム6を封止する封止部(図示せず)を有する。空気を排気した後のフィルム6を封止部によって封止することによって、フィルム6内部を密閉することができる。これにより、半硬化状態の造形体5が模型2に対して密着した状態を保つことができる。
【0087】
<光照射装置>
光照射装置14は、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射する。これにより、半硬化状態の造形体5を硬化させ、最終硬化状態の造形体3を完成する。光照射装置14は、造形体5に光を照射することによって造形体5を硬化させる硬化装置である。光照射装置14は、半硬化状態の造形体5をポストキュア処理する。なお、最終硬化状態の造形体は、一部が硬化されていなくてもよい。最終硬化状態の造形体とは、例えば、造形体が全体として未重合モノマーが0.1~20重量%であることが好ましい。
【0088】
光照射装置14は、例えば、紫外線光又は可視光を照射する。光照射装置14は、半硬化状態の造形体5を硬化できる光を照射可能な装置であればよい。光照射装置14における光強度及び露光時間は、最終硬化状態の造形体3の形状及び要求される寸法に合わせて適宜調整することができる。光照射装置14から照射される光の波長は、例えば、波長100nm以上780nm以下である。好ましくは、光の波長は、波長300nm以上600nm以下である。より好ましくは、光の波長は、波長350nm以上500nm以下である。実施の形態1では、光照射装置14は紫外線光であり、光の波長帯域は350nm以上500nm以下が好ましい。なお、光照射装置14は、これに限定されず、蛍光灯又は日光を当てることで半硬化状態の造形体5を硬化させてもよい。
【0089】
製造装置1は、例えば、制御装置(図示せず)によって制御される。制御装置は、例えば、1つ又は複数のプロセッサ、及びメモリを備える。
【0090】
1つ又は複数のプロセッサは、例えば、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、又はコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットである。プロセッサは、メモリに記憶された命令を実行可能である。
【0091】
メモリは、制御装置のデータを格納する。メモリは、例えば、コンピュータ記録媒体を含み、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気記憶デバイス、あるいは所望の情報を格納するために用いることができ、制御装置がアクセスすることができる任意の媒体を含む。
【0092】
製造装置1は、通信部(図示せず)を備えていてもよい。通信部は、所定の通信規格(例えばLAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)、CAN(controller area network)、SPI(Serial Peripheral Interface))に準拠して外部機器との通信を行う回路を含む。
【0093】
製造装置1の構成要素は、半導体素子などで実現可能な演算装置で実現することができる。これらの構成要素は、例えば、マイコン、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASICで構成することができる。これらの構成要素の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。
【0094】
[造形体を形成する材料について]
造形体3を形成する材料は、光造形装置12のSLA方式及び/又はDLP方式で使用できるものであればよい。具体的には、造形体3を形成する材料は、(メタ)アクリレート系樹脂など光硬化性を有するものであればよく、重合収縮が少ないものが好ましい。
【0095】
造形体3を形成する材料の組成物において使用され得る重合性アクリル化合物としては、限定されないが、ラジカル重合性モノマーとしては広く、歯科及び化学工業の分野で用いられ、生体安全性の高い不飽和二重結合基を含有する化合物から選択される。
【0096】
例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基及びビニル基等の不飽和二重結合基を1以上有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーが好適に用いられる。
【0097】
「(メタ)アクリレート」の語は、アクリレート類とメタクリレート類の両方を意味する。例えば、不飽和二重結合基の他に炭化水素基、フェニル基、水酸基、酸性基、酸アミド基、アミノ基、チオール基、ジスルフィド基、環式基、複素環式基、ハロゲン基、シラノール基、ピロリドン基、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、アルキレングリコール基等を1以上若しくは複数有する化合物が挙げられる。好適なラジカル重合性モノマーは上記の官能基や結合を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体である。
【0098】
ラジカル重合性モノマーは、適度な粘性を維持するため架橋性モノマーと希釈モノマーを組み合わせることが好ましい。
【0099】
架橋性モノマーには、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート類を含むウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0100】
「ウレタンジ-(メタ)アクリレート」は適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル-モノ-(メタ)アクリレート類の1:2のモル比の反応生成物をいう。「ウレタントリ-(メタ)アクリレート」は適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル-ジ-(メタ)アクリレート類、及びヒドロキシアルキル-モノ-(メタ)アクリレート類との1:1:1のモル比の反応生成物である。ウレタンテトラ-(メタ)アクリレートは適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル-ジ-(メタ)アクリレート類との1:2モル比の反応生成物である。
【0101】
ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシプロピル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシペンチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシヘキシル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシデシル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシプロピル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシブチル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシペンチル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシヘキシル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]ヘキサメチレンジウレタン、2,2ビス[4-(2ヒドロキシ-3メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2ビス[4-(2-メチルアクリロイルオキシエトキシ)-フェニル]プロパン、2,2ビス[4-メタクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2ビス[4-(3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシプロピル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2ビス[4-(2ヒドロキシ-3メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2ビス[4-(2-メチルアクリロイルオキシエトキシ)-フェニル]プロパンが好ましい。所望によりこれらの化合物のうち2またはそれ以上を共に用いてもよい。
【0102】
好ましい希釈モノマーの具体的な例としてはモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、1,4-ジ[(メタ)アクリロキシ]ブチレン、1,6-ジ[(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパン-テトラ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びスチレンを含む。エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。所望によりこれらの化合物のうち2またはそれ以上を共に用いてもよい。
【0103】
造形体3を形成する材料に使用できる光重合性触媒、還元剤としては、カンファーキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、もしくはメチルベンゾイン;及び/又は還元剤、例えば第三級アミンなどが使用できる。
【0104】
造形体3を形成する材料の吸収波長領域は、好ましくは約300~600nmの範囲の波長を有する光エネルギーで組成物を照射することにより開始され得る。アシルホスフィンオキシドのクラスから選択される光開始剤もまた使用され得る。これらの化合物としては、例えば、モノアシルホスフィンオキシド誘導体、ビスアシルホスフィンオキシド誘導体、及びトリアシルホスフィン誘導体が挙げられる。
【0105】
一実施態様において、カンファーキノン(CQ);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);N,N-ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、ガンマ-メタクリルオキシプロピル トリメトキシシラン及びメタクリル酸を含む「ALF」と呼ばれる材料が組成物において使用され得る。
【0106】
造形体3を形成する材料に用いるモノマーに対して強度を向上させるためにフィラーを用いてもよい。フィラーとしては無機フィラー、有機フィラー、有機無機複合フィラーなどがあり、例えば、無機フィラーとしては、シリカ、アルミニウムシリケート、アルミナ、チタニア、ジルコニア、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、また、ゾルゲル法による合成ガラスなどを含む)、アエロジル(登録商標)、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0107】
これらの無機充填材及び/又はフィラーは、公知のチタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤やシランカップリング剤により表面処理してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。好ましくはγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。凝集物やフィラーの表面処理は同種のカップリング剤で行ってもよいし、異種のカップリング剤で行ってもよい。
【0108】
<鋳造装置>
鋳造装置20は、作製装置10によって作製された造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を鋳造する装置である。鋳造装置20は、例えば、ロストワックス製法により鋳造を実施する設備を備えていればよい。
【0109】
鋳造装置20は、例えば、造形体3を用いて補綴装置製造用の鋳型を作製する鋳型作製装置、鋳型に溶融金属を導入する鋳込み装置、鋳型を壊して鋳物を取り出す掘り出し装置、及び鋳物を調整し、補綴装置4に仕上げる仕上げ装置、を備える。
【0110】
[補綴装置の製造方法]
次に、製造装置1によって実施される補綴装置4の製造方法について説明する。実施の形態1では、補綴装置4の製造方法は、作製装置10によって作製された歯科用の造形体3を用いて、鋳造装置20によって金属鋳造床の補綴装置4を作製する。このため、補綴装置4の製造方法として、歯科用の造形体3を作製する方法と、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を作製する方法と、を説明する。
【0111】
<造形体の作製方法>
まず、造形体3の作製方法について
図6を用いて説明する。
図6は、本発明に係る実施の形態1の造形体3の作製方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図6に示すステップST1~ST6は、作製装置10によって実施される。
【0112】
図6に示すように、ステップST1は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型2のスキャンデータを取得する取得工程である。ステップST1では、造形データ作成装置11がスキャン装置21から模型2のスキャンデータを取得する。具体的には、スキャン装置21が模型2(
図2参照)をスキャンすることによって模型2のスキャンデータを取得する。造形データ作成装置11は、スキャン装置21から模型2のスキャンデータを取得する。
【0113】
ステップST2は、スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体3の造形データを作成する造形データ作成工程である。ステップST2では、造形データ作成装置11が、ステップST1で取得した模型2のスキャンデータに基づいて、模型2に適合する形状及びサイズを有する歯科用の造形体3の造形データを作成する。
【0114】
ステップST3は、造形データに基づいて、半硬化状態の造形体5を作製する造形体作製工程である。ステップST3では、光造形装置12が、ステップST2で作成した造形データに基づいて、半硬化状態の造形体5を作製する(
図3参照)。
【0115】
ステップST3で作製される半硬化状態の造形体5の重合率は、50%以上98%以下である。好ましくは、ステップST3で作製される半硬化状態の造形体5の重合率は、60%以上95%以下である。より好ましくは、ステップST3で作製される半硬化状態の造形体5の重合率は、70%以上90%以下である。ステップST3で作製される半硬化状態の造形体5の重合率を上記数値範囲とすることによって、最終硬化状態の造形体3の適合性を向上させることができる。
【0116】
例えば、半硬化状態の造形体5の重合率が50%より小さい場合、後述する硬化工程(ステップST6)において重合収縮が大きくなることや半硬化状態の造形体5が軟らかすぎることで半硬化状態の造形体5に意図せぬ変形が生じる場合がある。また、半硬化状態の造形体5の重合率が98%より大きい場合、後述する排気工程(ステップST5)において半硬化状態の造形体5が模型2にフィットしにくくなる。したがって、ステップST3で作製される半硬化状態の造形体5の重合率を上記数値範囲とすることによって、後述する排気工程(ステップST5)において半硬化状態の造形体5を模型2に好適にフィットさせることができる。また、後述する硬化工程(ステップST6)において重合収縮を小さくし、半硬化状態の造形体5に意図せぬ変形が生じることを抑制することができる。
【0117】
ステップST4は、半硬化状態の造形体5を模型2に取り付け、半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う被覆工程である。ステップST4では、真空包装装置13が、ステップST3で造形した半硬化状態の造形体5を模型2に取り付けた状態で(
図4参照)、半硬化状態の造形体5と模型2とをフィルム6によって覆う(
図5参照)。実施の形態1では、半硬化状態の造形体5及び模型2の表面全体をフィルム6で覆っている。なお、ステップST4では、真空包装装置13が半硬化状態の造形体5と模型2とをフィルム6で覆う例について説明したが、これに限定されない。例えば、半硬化状態の造形体5と模型2とは、真空包装装置13とは別体の装置によってフィルム6で覆ってもよい。この他、半硬化状態の造形体5と模型2とをフィルム6で覆う方法は、任意の方法又は任意の装置によって行われてもよい。
【0118】
ステップST5は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させる排気工程である。ステップST5では、真空包装装置13の排気部15が、ステップST4でフィルム6によって覆われた部分の空気を排気する。これにより、フィルム6内部を負圧にし、フィルム6を変形させ、フィルム6によって半硬化状態の造形体5を模型2に対して押し当てる。その結果、半硬化状態の造形体5が模型2に対して密着した状態となる。
【0119】
ステップST5は、フィルム6で覆われた部分の真空度を調節する調節工程を含んでもよい。例えば、調整工程では、真空包装装置13の調節部16によって、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する。好ましくは、調整工程では、フィルム6で覆われた部分の真空度を50%以上90%以下に調節する。より好ましくは、調整工程では、フィルム6で覆われた部分の真空度を60%以上70%以下に調節する。
【0120】
ステップST5において、フィルム6で覆われた部分の空気を排気した後、真空包装装置13の封止部によってフィルム6を封止する。これにより、半硬化状態の造形体5と模型2とが密着した状態を維持する。
【0121】
ステップST6は、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射することによって、半硬化状態の造形体5を硬化させる硬化工程(光照射工程)である。ステップST6は、光照射装置14は、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させた状態で、光を照射する。光照射装置14から照射される光は、半硬化状態の造形体5を硬化させるものであり、例えば、紫外線光である。光照射装置14から照射された光は、フィルム6を透過し、半硬化状態の造形体5に照射される。これにより、半硬化状態の造形体5が硬化する。その結果、最終硬化状態の造形体3が完成する。なお、硬化工程は、光照射工程と称してもよい。
【0122】
このように、造形体3の作製方法では、ステップST1~ST6を実施することによって、造形体3を製造することができる。
【0123】
<補綴装置の作製方法>
次に、造形体3を用いて、金属鋳造床の補綴装置4を作製する方法について
図7を用いて説明する。なお、
図7に示すステップST11~ST15は、鋳造装置20によって実施される。
【0124】
図7に示すように、ステップST11は、
図6に示す造形体3の作製方法によって造形体3を作製する造形体作製工程である。ステップST11は、作製装置10によって、
図6に示すステップST1~ST6を実施することによって造形体3を作製する。
【0125】
ステップST12は、造形体3を鋳造用パターンとして用いて、補綴装置製造用の鋳型を作製する鋳型作製工程である。ステップST12は、ワックスアップ工程、埋没工程及び焼却工程を含む。
【0126】
図8Aは、ワックスアップ工程の一例を示す概略図である。
図8Aに示すように、ワックスアップ工程では、ステップST11で作製した造形体3をゴム製の台の上にワックスアップする。具体的には、鋳型に溶融金属を導入する際に溶融金属の流れを調整するためのスプルーイングを行う。
【0127】
図8Bは、埋没工程の一例を示す概略図である。
図8Bに示すように、埋没工程では、ワックスアップ工程を実施した後の造形体3を、水と練和した埋没材31で埋没する。埋没材31としては、例えば、クリストバライト埋没材、リン酸塩系埋没材などが挙げられる。具体的には、ワックスアップ工程を実施した後の造形体3を、リング30の中に配置する。そして、リング30内に水と練和した埋没材31を注入することによって、造形体3を埋没材31に埋没させる。造形体3を埋没材31に埋没させた後、埋没材31を固まらせる。なお、リング30の底は、埋没材31が固まるまで、例えば、ゴム製の台で塞がれていればよい。埋没材31が固まった後、リング30の底は塞がれなくてもよい。
【0128】
図8Cは、焼却工程の一例を示す概略図である。
図8Cに示すように、焼却工程では、埋没工程を実施した後、リング30とゴム製の台を取り除き、造形体3が入った固まった埋没材を焼却する。これにより、造形体3を溶融し、固まった埋没材から造形体3を取り除く。また、焼却工程においては、固まった埋没材が溶融せずに残ったままである。これにより、固まった埋没材の内部には、造形体3の形状の空洞が形成される。この固まった埋没材が、補綴装置製造用の鋳型32として使用される。
【0129】
図7に戻って、ステップST13は、鋳型32に溶融金属33を導入する鋳込み工程である。
図8Dは、鋳造工程の一例を示す概略図である。
図8Dに示すように、鋳造工程では、鋳型32の中に溶融金属33を導入する。鋳型32の中に溶融金属33を導入した後、溶融金属33を固まらせる。
【0130】
図7に戻って、ステップST14は、鋳型32を壊して鋳物34を取り出す掘り出し工程である。ステップST14では、鋳型32を壊して、鋳型32の内部の鋳物34を取り出す。鋳物34は、ステップST13で固まった金属鋳造物であり、造形体3と同様の形状に形成されている。
図8Eは、掘り出し工程の一例を示す概略図である。
図8Eは、鋳型32から取り出された鋳物34を示す。
【0131】
ステップST15は、鋳物34を調整し、補綴装置4に仕上げる仕上げ工程である。ステップST14で取り出した鋳物34の形状を研削材及び研磨材で調整し、補綴装置4に仕上げる。
【0132】
このように、補綴装置4の作製方法では、ステップST11~ST15を実施することによって、金属鋳造床の補綴装置4を作製することができる。
【0133】
図9は、本発明に係る実施の形態1の補綴装置4の一例を示す概略図である。
図9は、模型2に補綴装置4を取り付けた状態の一例を示している。なお、
図9に示す補綴装置4は一例であって、補綴装置4はこれに限定されない。
【0134】
[効果]
本発明に係る実施の形態1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0135】
補綴装置4の製造装置1は、造形体3の作製装置10と、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を作製する鋳造装置20と、を含む。作製装置10は、造形データ作成装置11、光造形装置12、真空包装装置13及び光照射装置14を備える。造形データ作成装置11は、患者の口腔内を再現した模型2のスキャンデータを取得し、スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体3の造形データを作成する。光造形装置12は、造形データに基づいて、半硬化状態の造形体5を作製する。真空包装装置13は、半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆った状態で、フィルム6内の空気を排気する。これにより、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させる。光照射装置14は、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射することによって、半硬化状態の造形体5を硬化させる。
【0136】
このような構成により、光造形装置12で作製された半硬化状態の造形体5が模型2に密着した状態で、光照射装置14による光によって硬化される。光照射装置14による光によって半硬化状態の造形体5が最終硬化する際に、収縮による反り及び変形を抑制することができる。これにより、最終硬化状態となった造形体3の模型2に対する適合性を向上させることができる。その結果、造形体3を用いて鋳造装置20によって作製される金属鋳造床の補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0137】
補綴装置4の製造方法は、造形体3の作製方法と、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4の作製方法と、を含む。造形体3の作製方法は、取得工程ST1、造形データ作成工程ST2、造形体作製工程ST3、被覆工程ST4、排気工程ST5、及び硬化工程ST6を含む。取得工程ST1は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型2のスキャンデータを取得する。造形データ作成工程ST2は、スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体3の造形データを作成する。造形体作製工程ST3は、造形データに基づいて、半硬化状態の造形体5を作製する。被覆工程ST4は、半硬化状態の造形体5を模型2に取り付け、半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う。排気工程ST5は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させる。硬化工程ST6は、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射することによって、半硬化状態の造形体5を硬化させる。
【0138】
このような構成により、半硬化状態の造形体5が模型2に密着した状態で硬化される。半硬化状態の造形体5が最終硬化する際に、収縮による反り及び変形を抑制することができる。これにより、最終硬化状態となった造形体3の模型2に対する適合性を向上させることができる。その結果、金属鋳造床の補綴装置4の作製方法によって作製される金属鋳造床の補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0139】
一般的に、補綴装置は、複雑な形状になるほど、適合性を向上させることが難しくなる。例えば、特許文献1に記載の方法では、固定部材で固定されていない部分の変形を防ぐことができないため、複雑な形状を有する造形体であるほど、造形体が模型から浮きやすくなる。補綴装置4の製造装置1及び製造方法によれば、複雑な形状の補綴装置4を製造する場合においても、造形体5の模型2からの浮き及び変形を抑制することができる。このため、複雑な形状の補綴装置4を製造する場合においても、補綴装置4の適合性を向上させることができる。
【0140】
製造装置1及び製造方法によって作製される造形体3は、鋳造用パターンとして使用する場合、金属鋳造床用であることが好ましい。金属鋳造床は、設計が内側性とよばれるメジャーコネクターと外側性と呼ばれるクラスプが混在し、構造が複雑である。製造装置1及び製造方法によれば、模型2に対する適合の良い最終硬化状態の造形体3が得られる。
【0141】
排気工程ST5は、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する調節工程を含む。好ましくは、調節工程は、フィルム6で覆われた部分の真空度を50%以上90%以下に調節する。より好ましくは、調節工程は、フィルム6で覆われた部分の真空度を60%以上70%以下に調節する。このような構成により、真空度を調節し、最終硬化状態の造形体3の模型2に対する適合性を調節することができる。
【0142】
造形体作製工程ST3で作製される半硬化状態の造形体5の重合率は、50%以上98%以下である。好ましくは、半硬化状態の造形体5の重合率は、60%以上95%以下である。より好ましくは、半硬化状態の造形体5の重合率は、70%以上90%以下である。このような構成により、最終硬化状態の造形体3の模型2に対する適合性をより向上させることができる。
【0143】
造形体作製工程ST3は、デジタルライトプロセッシング方式の光造形装置12によって半硬化状態の造形体5を作製する。このような構成により、より短時間で造形体3を作製することができる。
【0144】
フィルム6は、波長100nm以上780nm以下の光を透過する。好ましくは、フィルム6は、波長300nm以上600nm以下の光を透過する。より好ましくは、フィルム6は、波長350nm以上500nm以下の光を透過する。このような構成により、半硬化状態の造形体5を硬化するための光、例えば、紫外線光及び可視光がフィルム6を透過しやすくなる。
【0145】
また、補綴装置4は、(i)半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆った状態で、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させ、(ii)半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射することによって、半硬化状態の造形体5を硬化させた造形体3によって作製されることを特徴とする。このような構成により、患者の口腔内に対する適合性が向上するという効果を有する。
【0146】
また、真空包装装置13は、補綴装置を製造するために用いられる真空包装装置であって、半硬化状態の造形体5と模型2との少なくとも一部を覆うフィルム6内の空気を排気する排気部15を備える。排気部15は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させる。このような構成により、半硬化状態の造形体5を模型2に対して密着させて固定することができる。これにより、半硬化状態の造形体5が模型2から浮いたりすることを抑制することができる。
【0147】
真空包装装置13は、更に、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節する調節部16を備える。好ましくは、調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を50%以上90%以下に調節する。より好ましくは、調節部16は、フィルム6で覆われた部分の真空度を60%以上70%以下に調節する。このような構成により、このような構成により、真空度を調節し、最終硬化状態の造形体3の模型2に対する適合性を調節することができる。
【0148】
なお、実施の形態1では、金属鋳造床パターンを有する造形体3を作製し、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を製造する例について説明したが、これに限定されない。
【0149】
実施の形態1では、補綴装置4の製造装置1が造形体3の作製装置10と、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を作製する鋳造装置20と、を備える例について説明したが、これに限定されない。また、補綴装置4の製造方法が造形体3を作製する方法と、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置を作製する方法と、を含む例について説明したが、これに限定されない。
【0150】
例えば、補綴装置4の製造装置1は、鋳造装置20を備えず、作製装置10を備えていればよい。また、補綴装置4の製造方法は、造形体3を用いて金属鋳造床の補綴装置4を作製する方法を含まず、造形体3を作製する方法を含んでいればよい。この場合、作製装置10及び造形体3の作製方法によって作製された造形体3そのものが補綴装置4として使用されてもよい。
【0151】
図10-
図12は、本発明に係る実施の形態1の別例の補綴装置4A-4Cを示す概略図である。なお、
図10-
図12に示す例では、それぞれ、模型2A-2Cに補綴装置4A-4Cが取り付けた状態を示している。
図10に示す補綴装置4Aは、クラウンである。
図11に示す補綴装置4Bは、レジン床である。
図12に示す補綴装置4Cは、矯正用スプリントである。
図10-12に示す補綴装置4A-4Cは、それぞれ、作製装置10及び造形体3の作製方法によって作製される。即ち、補綴装置4A-4Cは、作製装置10及び造形体3の作製方法によって作製された最終硬化状態の造形体3が補綴装置としてそのまま使用される。
【0152】
このように、作製装置10及び造形体3の作製方法によって作製される造形体3は、クラウン、ブリッジ、レジン床及び矯正用スプリントのうちのいずれかであって、これらの造形体3が補綴装置4A-4Cとして使用されてもよい。このような構成であっても、補綴装置4A-4Cの模型2及び患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0153】
実施の形態1では、作製装置10において、造形データ作成装置11、光造形装置12、真空包装装置13及び光照射装置14が、それぞれ別体の装置である例について説明したが、これに限定されない。複数の装置が一つの装置として一体的に形成されてもよい。例えば、造形データ作成装置11と光造形装置12とが一つの装置として一体的に形成されてもよい。真空包装装置13と光照射装置14とが一つの装置として一体的に形成されてもよい。
【0154】
実施の形態1では、スキャン装置21が製造装置1の構成要素に含まれない例について説明したが、これに限定されない。スキャン装置21は、製造装置1の構成要素に含まられてもよい。また、製造装置1は、患者の口腔内を印象採得し、模型2を作製する模型作製装置を備えていてもよい。
【0155】
実施の形態1では、製造装置1が真空包装装置13を備える例を説明したが、これに限定されない。製造装置1は、造形体5を模型2に対してフィルム6によって密着させることができる被覆装置を備えていればよい。例えば、被覆装置は、真空包装装置以外に、造形体5を模型2に対して圧力をかけて密着させる圧着装置、又は造形体5を模型2に対してフィルム6によって密着させた状態で封止するシール装置などであってもよい。
【0156】
実施の形態1では、真空包装装置13が真空度を調節する調節部16を備える例について説明したが、これに限定されない。真空包装装置13は、調節部16を備えてなくてもよい。
【0157】
実施の形態1では、製造装置1が硬化装置として光照射装置14を備える例について説明したが、これに限定されない。即ち、硬化装置は、光照射装置14に限定されない。製造装置1は、造形体5を模型2に密着させた状態で、造形体5を硬化させる硬化装置を備えていればよい。例えば、硬化装置は、造形体5を模型2に密着させた状態で加熱する加熱装置であってもよい。
【0158】
実施の形態1では、造形体3及び補綴装置4の形状として、
図3及び
図9に示す例を説明したが、これに限定されない。造形体3及び補綴装置4の形状は、患者の症例及び口腔内の形状に応じて任意の形状とすることができる。
【0159】
実施の形態1では、補綴装置4の製造方法の例を説明したが、これに限定されない。例えば、造形体3を作成する方法は、造形体のポストキュア方法として使用されてもよい。ポストキュア方法は、少なくとも
図6のステップST3~ST6を含む。
【0160】
実施の形態1では、ステップST6の硬化工程が、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射することによって、半硬化状態の造形体5を硬化させる例について説明したが、これに限定されない。ステップST6の硬化工程は、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で半硬化状態の造形体5を硬化させる工程であればよい。例えば、ステップST6の硬化工程は、半硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で半硬化状態の造形体5を加熱する加熱工程であってもよい。あるいは、硬化工程は、造形体を硬化させる1つ又は複数の工程を有していてもよい。例えば、硬化工程は、光照射による第1硬化工程(光照射工程)と、加熱による第2硬化工程(加熱工程)と、のうち少なくとも一方を有していてもよい。
【0161】
実施の形態1では、光造形装置12で作製された造形体を半硬化状態の造形体5と称し、光照射装置14で硬化された造形体を最終硬化状態の造形体3と称したが、これに限定されない。造形体の硬化状態を示す用語は任意に決定してもよい。例えば、半硬化状態の造形体5を第1硬化状態の造形体5と称し、最終硬化状態の造形体3を第2硬化状態の造形体3と称してもよい。第2硬化状態とは、第1硬化状態よりも硬化している状態を意味する。
【0162】
実施の形態1では、スキャン装置21が患者の口腔内を再現した模型2のスキャンデータを取得する例について説明したが、これに限定されない。例えば、スキャン装置21は、患者の口腔内を直接スキャンし、口腔内のスキャンデータを取得してもよい。この場合、造形データ作成装置11は、患者の口腔内のスキャンデータを取得し、当該スキャンデータに基づいて歯科用の造形体3の造形データを作成してもよい。
【0163】
実施の形態1では、造形体3がクラウン、ブリッジ、レジン床及び矯正用スプリントのうちのいずれかである例について説明したが、これに限定されない。例えば、造形体3はレジン床義歯であってもよい。レジン床義歯とは、義歯床であるレジン床に複数の人工歯が接着された義歯を意味する。
【0164】
実施の形態1では、補綴装置4が金属鋳造床である例について説明したが、これに限定されない。例えば、補綴装置4は義歯であってもよい。
【0165】
(実施例)
実施例に基づき、補綴装置4の製造装置及び製造方法を更に説明するが、本発明は、以下に示す実施例により制限されない。なお、実施例においては、造形体3の作製装置10及び作製方法により作製した造形体3を評価した。
【0166】
以下、実施例の条件について説明する。
【0167】
[実施例の条件]
<光造形装置>
光造形装置12として、DLP方式のD30(Rapidshape製)及びSLA方式のDIGITAL WAX 020D(DWS製)を使用した。
【0168】
<造形体を形成する材料>
DLP方式対応のCast(Nextdent製、材料:アクリレート系樹脂)、Base(Nextdent製、材料:アクリレート系樹脂)及びSLA方式対応のRF080 RESIN(DWS製、材料:アクリレート系樹脂)を使用した。
【0169】
<フィルム>
マジックカット付規格袋 飛竜 N-5NP(旭化成パックス製、材質:ナイロン、ポリエチレン)を使用した。
【0170】
<光照射装置>
LC-3Dprint Box(Nextdent製)を使用した。
【0171】
実施例1-18及び比較例1-4の評価サンプルを以下の手順で調製した。
【0172】
[適合評価サンプルの作製]
実施の形態1の作製装置10を用いて適合評価サンプルとして造形体3を作製した。具体的には、造形データ作成装置11によって、模型2に合わせて歯科用の造形体3の造形データを作成した。作製した造形データに基づき、光造形装置12によって、各材料に使用説明書もしくは初期設定されている条件により半硬化状態の造形体5を作製した。造形完了後、半硬化状態の造形体5をエタノール中で5分間超音波洗浄を行った後、サポートを取り除き、模型2に取り付けた。その後、フィルム6で半硬化状態の造形体5と模型2を覆い、真空包装装置13によって、フィルム6で覆った部分の空気を排気し、半硬化状態の造形体5と模型2とを密着させた。その後、半硬化状態の造形体5と模型2とを密着させた状態のまま、光照射装置14によって15分間、光を照射(ポストキュア)した。
【0173】
[重合率評価サンプルの作製]
適合評価サンプル作製時に取り除いたサポートの一部を重合評価サンプルとした。
【0174】
[適合評価方法]
適合評価用として、
図2に示す金属鋳造床用の模型2を使用し、歯科用の造形体3を設計した。また、
図13に示す3本ブリッジの模型2Dを用い、
図14に示す造形体3Aを設計した。また、
図15に示すレジン床(全部床)の模型2Bを用い、
図11に示す造形体3Bを設計した。
【0175】
適合の総合評価について、説明する。金属床用の造形体3に関しては、
図2に示す模型2に造形体3を取り付け、メジャーコネクター、クラスプ、レストの間隙を測定した。測定方法としては模型2にダイフリー(ダイキン工業製)のものを塗布し、測定箇所に関してレジンセメント(レジセム(株式会社松風製))を用いて化学重合させ、レジンセメントの厚みを測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を用いた。
【0176】
メジャーコネクター、クラスプ、レストの全てが500μm以下であるものを臨床的に許容でき、より最適なものは100μm以下のものが臨床的に最適である。
【0177】
また、3本ブリッジ用の造形体3Aに関しては、
図13に示す模型2Dに造形体3Aを取り付け、造形体3Aのマージン部の適合を評価し、100μm以下であるものが臨床的に許容でき、50μm以下であることが最適である。
【0178】
また、レジン床用の造形体3Bに関しては、
図15に示す模型2Bに造形体3Bを取り付け、造形体3Bと模型2Bとの隙間を測定した。間隙はファインチェッカー(株式会社松風製)を用い、全部床義歯の間隙を測定し、中央の部位の測定値で最も数字の大きいものを測定した。隙間は500μm以下であることが臨床的に許容でき、100μm以下がより好ましい。
【0179】
[重合率評価方法]
フーリエ変換赤外分光光度計 FT-IR 6300(日本分光社製)を使用し、造形前の造形体3の樹脂材料と半硬化状態の造形体(サポートの一部)及び最終硬化状態の造形体(サポートの一部)について、6000cm-1のC=C帰属されるピーク強度を測定した。ピーク強度の減少率の割合から重合率を算出した。ただし、最終硬化状態の造形体の重合率を100%とし、半硬化状態の造形体の重合率を算出した。
【0180】
以下、評価結果について表1-表9に示す。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
まず、金属鋳造床の模型2と造形体3とに関する実施例1-18及び比較例1-2に着目する。なお、実施例1-18は、真空包装装置13を使用し、真空度を調節している。一方、比較例1-2は、真空包装装置13を使用していない。
【0191】
表1-表5及び表8に示されるように、実施例1-18における隙間は、メジャーコネクター、クラスプ及びレストのいずれにおいても500μm以下であった。一方、比較例1-2における隙間は、メジャーコネクター、クラスプ及びレストのいずれにおいても600μm以上800μm以下の範囲にあった。このように、実施例1-18においては、比較例1-2と比べて、隙間が小さくなっている。また、実施例1-18の隙間は、臨床的に許容できる範囲に入っているが、比較例1-2の隙間は臨床的に許容できる範囲を超えている。
【0192】
実施例1-8に着目する。表1及び表2に示すように、実施例1-8では、真空度を除き、その他の条件は共通である。実施例1-8では、真空度が40%以上95%以下の範囲で、隙間が小さくなっている。また、真空度が50%以上90%以下の範囲では、より隙間が小さくなっている。そして、真空度が60%以上70%以下の範囲では、隙間が最も小さくなっている。実施例6-8では、真空度が高いことで、変形が起こり、隙間が大きくなった。これらの結果より、真空度は、40%以上95%以下が好ましい。より好ましくは、真空度は50%以上90%以下である。さらに好ましくは、真空度は60%以上70%以下である。
【0193】
実施例5及び実施例9-16に着目する。表2-4に示すように、実施例5及び実施例9-16では、半硬化状態の造形体の重合率を除き、その他の条件は共通である。実施例5及び実施例9-16では、重合率が50%以上98%以下の範囲で、隙間が小さくなっている。また、重合率が60%以上95%以下の範囲では、隙間がより小さくなっている。そして、重合率が70%以上90%以下の範囲で、隙間が最も小さくなっている。これらの結果より、半硬化状態の造形体の重合率は、50%以上98%以下が好ましい。より好ましくは、重合率は60%以上95%以下である。さらに好ましくは、重合率は70%以上90%以下である。
【0194】
実施例2及び5と、実施例17及び実施例18に着目する。表1-2及び表5に示すように、実施例2及び5と、実施例17及び18とは、光造形装置12の種類及び造形体3の材料が異なる。実施例2及び5では、DLP方式の光造形装置(D30)を使用しており、造形体3の材料がCastである。一方、実施例17及び18では、SLA方式の光造形装置(DIGITAL WAX 020D)を使用しており、造形体3の材料がRF080 RESINである。また、実施例5及び実施例17の真空度は70%であり、実施例2及び実施例18の真空度は40%である。実施例2,5,17及び18において、その他の条件は共通である。DLP方式は、SLA方式よりも精度が低い造形方式であるが、実施例2,5,17及び18の評価結果を見ると、DLP方式においてもSLA方式と同程度の隙間に抑えることができていることがわかる。
【0195】
次に、3本ブリッジの模型2Dと造形体3Aとに関する実施例19-20及び比較例3に着目する。なお、実施例19-20は、真空包装装置13を使用し、真空度を調節している。一方、比較例3は、真空包装装置13を使用していない。
【0196】
表6及び表9に示されるように、実施例19-20におけるマージンの隙間は、比較例3に比べて小さくなっている。実施例19-20の隙間は、臨床的に許容できる範囲に入っているが、比較例3の隙間は臨床的に許容できる範囲を超えている。
【0197】
また、真空度50%の実施例19と、真空度70%の実施例20とを比較すると、実施例20の方がマージンの隙間が小さくなっている。このことから、隙間をより小さくする観点から、真空度は70%に近い方が好ましい。
【0198】
次に、レジン床の模型2Bと造形体3Bとに関する実施例21-22及び比較例4に着目する。なお、実施例21-22は、真空包装装置13を使用し、真空度を調節している。一方、比較例4は、真空包装装置13を使用していない。
【0199】
表6及び表8に示されるように、実施例21-22における口蓋中央部の間隙は、比較例4に比べて小さくなっている。実施例21-22の隙間は、臨床的に許容できる範囲に入っているが、比較例4の隙間は臨床的に許容できる範囲を超えている。
【0200】
また、真空度50%の実施例21と、真空度70%の実施例22とを比較すると、実施例22の方が口蓋中央部の隙間が小さくなっている。このことから、隙間をより小さくする観点から、真空度は70%に近い方が好ましい。
【0201】
以上のように、実施例1-22においては、比較例1-4と比べて、模型と造形体との間の隙間を小さくすることができる。また、実施例1-22の評価結果は臨床的に許容できる範囲に収まっているのに対し、比較例1-4の評価結果は臨床的に許容できる範囲を超えている。
【0202】
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2の補綴装置の製造装置及び製造方法について説明する。
【0203】
実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0204】
図16は、本発明に係る実施の形態2の補綴装置4の製造装置1Aの一例を示すブロック図である。
【0205】
実施の形態2では、製造装置1Aの作製装置10Aが恒安定装置(加熱装置)17を備える点で、実施の形態1と異なる。
【0206】
実施の形態1において、光照射後、最終硬化状態の造形体と模型2を覆うフィルム6を取り外すと、取り外した直後は、最終硬化状態の造形体の適合性は向上した状態である。しかしながら、最終硬化状態の造形体は、フィルム6を取り外した後、経時的に変形し、適合性が低下する場合がある。例えば、鋳造用パターンの場合、最終硬化状態の造形体は経時的に変化しやすいため、フィルムを取り外した直後に速やかにワックスアップ工程及び埋没工程を行わない場合、作製した補綴装置が模型から浮いた状態になり、適合しなくなる場合がある。
【0207】
実施の形態2では、最終硬化状態の造形体3の適合性の低下を抑制するため、光照射後の造形体を、恒安定装置(加熱装置)17によって加熱する。これにより、恒安定状態の造形体を得る。以下、実施の形態2について詳細に説明する。
【0208】
実施の形態2では、光造形装置12で作製された半硬化状態の造形体5を第1硬化状態の造形体と称し、光照射装置14によって硬化された造形体を第2硬化状態の造形体と称し、恒安定装置17によって加熱された造形体を第3硬化状態の造形体と称する。第2硬化状態とは、第1硬化状態よりも硬化している状態を意味する。第3硬化状態とは、第2硬化状態よりも硬化している状態を意味する。
【0209】
図16に示すように、製造装置1Aの作製装置10Aは、実施の形態1の構成に加えて、恒安定装置17を備える。実施の形態2では、作製装置10Aにおいては、上流から下流に向かって、造形データ作成装置11、光造形装置12、真空包装装置13、光照射装置14及び恒安定装置17の順に配置されている。
【0210】
<恒安定装置>
恒安定装置17は、光照射装置14によって硬化された第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱する。これにより、第2硬化状態の造形体を更に硬化させて第3硬化状態の造形体3とすることによって、恒安定状態の造形体3を得る。実施の形態2では、恒安定装置17は、光照射装置14の下流に配置されている。恒安定装置17は、光照射装置14によって作製した第2硬化状態の造形体を、模型2に密着させた状態で加熱する。
【0211】
恒安定装置17は、例えば、加熱でき、且つ温度の調節が可能な加熱装置であればよい。以下では、恒安定装置17を加熱装置17と称する。加熱装置17としては、例えば、ヒータが挙げられる。加熱装置17による加熱温度は、50℃以上130℃以下である。好ましくは、加熱温度65℃以上115℃以下である。より好ましくは、加熱温度80℃以上100℃以下である。具体的には、加熱温度が50℃より低い場合、恒安定状態の造形体3が十分に安定化させず、経時的な変化の少ない恒安定状態の造形体3が得られにくい。また、加熱温度が130℃より高い場合、樹脂の分解のリスクがあるため、経時的な変化の少ない恒安定状態の造形体が得られにくく、適合しなくなることがある。そこで、加熱装置17の加熱温度を上記数値範囲に調節することによって、経時的な変化の少ない恒安定状態の造形体3を得ることができる。加熱時の係留時間は、恒安定状態の造形体3を得られる程度まで、加熱状態を続けることが好ましい。具体的には、3分以上60分以下が好ましい。加熱は、室温から徐々に温度を上昇させてもよいし、上記数値範囲に設定した環境に投入してもよい。加熱装置17における加熱温度及び加熱時間は、恒安定状態の造形体3の形状及び要求される寸法に合わせて適宜調整することができる。なお、加熱装置17は、これに限定されず、温水中(50℃~100℃)に浸水させることが好ましい。
【0212】
実施の形態2では、造形体3を形成する材料として、熱重合開始剤を含んでいてもよい。熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。これらの中でも、本発明では過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、トリメチルバルビツール酸、トリブチルボラン酸化物から選択し、使用されることが好ましい。
【0213】
実施の形態2では、加熱装置17は、第2硬化状態の造形体と模型2とをフィルム6で覆った状態で加熱する。このため、フィルム6は、熱耐性材料で形成されている。なお、フィルム6は、上述した加熱温度に耐え得る材料で形成されていればよい。例えば、耐熱性材料として、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、フッ素樹脂が挙げられる。
【0214】
図17は、本発明に係る実施の形態2の造形体の作製方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図17に示す実施の形態2の作製方法のステップST1~ST6は、
図6に示す実施の形態1の作製方法のステップST1~ST6と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0215】
図17に示すように、ステップST1~ST6を実施することによって、第2硬化状態の造形体を得る。具体的には、ステップST1~ST3を実施することによって、第1硬化状態の造形体5を作製する。ステップST4~ST6を実施することによって、第2硬化状態の造形体を作製する。第2硬化状態の造形体は、フィルム6によって模型2と共に覆われている状態である。このため、第2硬化状態の造形体は、模型2と密着した状態となっている。
【0216】
ステップST7は、第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱することによって、造形体を安定させる恒安定工程(加熱工程)である。ステップST7において、加熱装置17は、第2硬化状態の造形体を模型2に対して密着させた状態で、加熱を行う。加熱装置17による加熱は、第2硬化状態の造形体を安定させるものである。これにより、第2硬化状態の造形体を更に硬化させ、第2硬化状態の造形体よりも硬化した第3硬化状態の造形体3を得る。その結果、恒安定状態の造形体3が完成する。なお、恒安定工程は、加熱工程と称してもよい。
【0217】
このように、実施の形態2における恒安定状態の造形体3の作製方法では、
図17に示すステップST1~ST7を実施することによって、恒安定状態の造形体3を製造することができる。
【0218】
[効果]
本発明に係る実施の形態2によれば、以下の効果を奏することができる。
【0219】
補綴装置4の製造装置1Aにおいて、作製装置10Aは、更に、光照射装置14によって硬化された第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱する加熱装置17を備える。このような構成により、第2硬化状態の造形体5を更に硬化させた第3硬化状態の造形体を恒安定状態とすることができ、造形体3の経時的な変化を抑制することができる。その結果、模型2から取り外して一定期間保存された造形体3を用いても、造形体3が恒安定状態であるため、鋳造装置20によって作製される金属鋳造床の補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0220】
実施の形態2における補綴装置4の製造方法は、更に、光照射工程ST6によって硬化された第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱する恒安定工程(加熱工程)ST7を含む。このような構成により、第2硬化状態の造形体を硬化させて第3硬化状態の造形体3を作製することができる。第3硬化状態の造形体3は、恒安定状態となる、このため、経時的な変化を抑制することができる。その結果、金属鋳造床の補綴装置4の作製方法によって作製される金属鋳造床の補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0221】
実施の形態2における補綴装置4は、更に、第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱することによって、安定させた恒安定状態の造形体3によって作製されている。このような構成により、患者の口腔内に対する適合性が向上する。
【0222】
なお、実施の形態2では、作製装置10Aにおいて、造形データ作成装置11、光造形装置12、真空包装装置13、光照射装置14及び加熱装置17が、それぞれ別体の装置である例について説明したが、これに限定されない。複数の装置が一つの装置として一体的に形成されてもよい。例えば、光照射装置14と加熱装置17とが一つの装置として一体的に形成されてもよい。
【0223】
実施の形態2では、ステップST7を恒安定工程又は加熱工程と称しているが、ステップST6及びST7をまとめて硬化工程と称してもよい。即ち、硬化工程は、第1硬化状態の造形体5を模型2に密着させた状態で光を照射する第1硬化工程(光照射工程)と、第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱する第2硬化工程(加熱工程)と、を有していてもよい。具体的には、第1硬化工程はステップST6であり、光照射装置14による光照射によって第1硬化状態の造形体5を硬化させて第2硬化状態の造形体を得る。第2硬化工程はステップST7であり、加熱装置17による加熱によって第2硬化状態の造形体を硬化させて第3硬化状態の造形体を得る。
【0224】
(実施の形態3)
本発明に係る実施の形態3の補綴装置の製造装置及び製造方法について説明する。
【0225】
実施の形態3では、主に実施の形態2と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態2と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態2と重複する記載は省略する。
【0226】
図18は、本発明に係る実施の形態3の補綴装置4の製造装置1Bの一例を示すブロック図である。
【0227】
実施の形態3では、光照射装置14が真空包装装置13の上流に配置されている点で、実施の形態2と異なる。また、実施の形態3では、第1硬化状態の造形体5をフィルム6で覆わずに光照射によって硬化し、第2硬化状態の造形体を作製する点、第2硬化状態の造形体と模型2とをフィルム6によって覆う点、及び硬化状態の造形体を模型2に対して密着させる点で、実施の形態2と異なる。
【0228】
図18に示すように、製造装置1Bの作製装置10Bにおいては、光照射装置14が真空包装装置13の上流に配置されている。即ち、作製装置10Bにおいては、上流から下流に向かって、造形データ作成装置11、光造形装置12、光照射装置14、真空包装装置13及び恒安定装置17の順に配置されている。
【0229】
実施の形態3では、恒安定装置17を加熱装置17と称する。光造形装置12で作製された半硬化状態の造形体5を第1硬化状態の造形体と称し、光照射装置14によって硬化された造形体を第2硬化状態の造形体と称し、恒安定装置(加熱装置)17によって加熱された造形体を第3硬化状態の造形体と称する。第2硬化状態とは、第1硬化状態よりも硬化している状態を意味する。第3硬化状態とは、第2硬化状態よりも硬化している状態を意味する。
【0230】
光照射装置14は、半硬化状態の造形体5、即ち、第1硬化状態の造形体5に光を照射することによって、第1硬化状態の造形体5を硬化させて第2硬化状態の造形体を得る。光照射装置14は、フィルム6で覆われていない第1硬化状態の造形体5に光を照射する。第2硬化状態は、力を加えると変形可能な程度に硬化した状態である。
【0231】
真空包装装置13は、第2硬化状態の造形体と模型2との少なくとも一部をフィルム6で覆う。また、真空包装装置13の排気部15は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、第2硬化状態の造形体を模型2に対して密着させる。
【0232】
図19は、本発明に係る実施の形態3の造形体3の作製方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図19に示す実施の形態3の作製方法のステップST1~ST3及びST7は、
図17に示す実施の形態2の作製方法のステップST1~ST3及びST7と同様であるため、説明を省略する。また、実施の形態3の作製方法では、実施の形態2の作製方法のステップST4~ST6の代わりに、ステップST24~ST26を実施する。
【0233】
図19に示すように、ステップST1~ST3を実施することによって、半硬化状態の造形体5、即ち、第1硬化状態の造形体5を得る。
【0234】
ステップST24は、第1硬化状態の造形体5に光を照射することによって、第1硬化状態の造形体5を硬化させて第2硬化状態の造形体を得る第1硬化工程(光照射工程)である。ステップST24では、光照射装置14は、フィルム6で覆われていない第1硬化状態の造形体5に光を照射する。光照射装置14から照射される光は、第1硬化状態の造形体5を硬化させるものであり、例えば、紫外線光である。これにより、第1硬化状態の造形体5を硬化させて第2硬化状態の造形体を得る。
【0235】
ステップST25は、第2硬化状態の造形体を模型2に取り付け、第2硬化状態の造形体と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う被覆工程である。ステップST25においては、真空包装装置13は、第2硬化状態の造形体と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う。
【0236】
ステップST26は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、第2硬化状態の造形体を模型2に対して密着させる排気工程である。ステップST26では、真空包装装置13の排気部15が、フィルム6によって覆われた部分の空気を排気する。これにより、フィルム6内部を負圧にし、フィルム6を変形させ、フィルム6によって第2硬化状態の造形体を模型2に対して押し当てる。その結果、第2硬化状態の造形体が模型2に対して密着した状態となる。
【0237】
なお、ステップST25では、真空包装装置13が第2硬化状態の造形体と模型2とをフィルム6で覆う例について説明したが、これに限定されない。例えば、第2硬化状態の造形体と模型2とは、真空包装装置13とは別体の装置によってフィルム6で覆われてもよい。この他、第2硬化状態の造形体と模型2とをフィルム6で覆う方法は、任意の方法又は任意の装置によって行われてもよい。
【0238】
ステップST7は、実施の形態2と同様に、第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱することによって、第2硬化状態の造形体を硬化させる第2硬化工程である。第2硬化工程は、第2硬化状態の造形体を加熱する加熱工程(恒安定工程)である。ステップST7において、加熱装置17は、第2硬化状態の造形体を模型2に対して密着させた状態で、加熱を行う。加熱装置17による加熱は、第2硬化状態の造形体を安定させるものである。これにより、第2硬化状態の造形体が更に硬化することによって、第3硬化状態の造形体3が完成する。第3硬化状態とは、第2硬化状態よりも硬化した状態である。
【0239】
このように、実施の形態3における造形体3の作製方法では、
図19に示すステップST1~ST7を実施することによって、恒安定状態の造形体3を製造することができる。
【0240】
[効果]
本発明に係る実施の形態3によれば、以下の効果を奏することができる。
【0241】
補綴装置4の製造装置1Bの作製装置10Bにおいて、光照射装置14は、第1硬化状態の造形体5をフィルム6で覆わずに、第1硬化状態の造形体5に光を照射することによって、第1硬化状態の造形体5を硬化させて、第2硬化状態の造形体を得る。第2硬化状態は、第1硬化状態よりも硬化した状態である。真空包装装置13は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、第2硬化状態の造形体を模型2に対して密着させる。このような構成においても、造形体3を恒安定状態とすることができ、造形体3の経時的な変化を抑制することができる。その結果、模型2から取り外して一定期間保存された造形体3を用いても、造形体3が恒安定状態であるため、鋳造装置20によって作製される金属鋳造床の補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0242】
実施の形態3において、補綴装置4の製造方法における造形体3の作製方法は、取得工程ST1、造形データ作成工程ST2、造形体作製工程ST3、光照射工程ST24、被覆工程ST25、排気工程ST26及び加熱工程ST7を含む。取得工程ST1は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型2のスキャンデータを取得する。造形データ作成工程ST2は、スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する。造形体作製工程ST3は、造形データに基づいて、第1硬化状態の造形体5を作製する。光照射工程ST24は、第1硬化状態の造形体5に光を照射することによって、第1硬化状態の造形体5を硬化させて第2硬化状態の造形体を得る。被覆工程ST25は、第2硬化状態の造形体を模型2に取り付け、第2硬化状態の造形体と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う。排気工程ST26は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、第2硬化状態の造形体を模型2に対して密着させる。加熱工程ST7は、第2硬化状態の造形体を模型2に密着させた状態で加熱することによって、第3硬化状態の造形体3を得る。このような構成においても、造形体3を恒安定状態とすることができ、造形体3の経時的な変化を抑制することができる。その結果、模型2から取り外して一定期間保存された造形体3を用いても、造形体3が恒安定状態であるため、鋳造装置20によって作製される金属鋳造床の補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0243】
なお、実施の形態3では、作製装置10Bにおいて、造形データ作成装置11、光造形装置12、真空包装装置13、光照射装置14及び加熱装置17が、それぞれ別体の装置である例について説明したが、これに限定されない。複数の装置が一つの装置として一体的に形成されてもよい。例えば、光造形装置12と光照射装置14とが一つの装置として一体的に形成されてもよい。
【0244】
実施の形態3では、ステップST24を第1硬化工程又は光照射工程と称しているが、ステップST3とステップST24をまとめて造形体作製工程を称してもよい。即ち、造形体作製工程は、造形データに基づいて第1硬化状態の造形体5を作製すること(ステップST3)と、第1硬化状態の造形体5に光を照射することによって、第1硬化状態より硬化した第2硬化状態の造形体を作製すること(ステップST24)と、を有していてもよい。
【0245】
(実施例)
実施例に基づき、補綴装置4の製造装置及び製造方法を更に説明するが、本発明は、以下に示す実施例により制限されない。なお、実施例においては、恒安定状態の造形体3の作製装置10A,10B及び作製方法により作製した恒安定状態の造形体3を評価した。
【0246】
以下、実施例の条件について説明する。
【0247】
[実施例の条件]
<光造形装置>
光造形装置12として、DLP方式のD30(Rapidshape製)を使用した。
【0248】
<造形体を形成する材料>
DLP方式対応のCast(Nextdent製、材料:アクリレート系樹脂)、Base(Nextdent製、材料:アクリレート系樹脂)を使用した。
【0249】
<フィルム>
マジックカット付規格袋 飛竜 N-5NP(旭化成パックス製、材質:ナイロン、ポリエチレン)を使用した。
【0250】
<光照射装置>
LC-3DPrint Box(Nextdent製)を使用した。
【0251】
<恒安定装置(加熱装置)>
PHH-101(エスペック製)を使用した。
【0252】
実施例23-46及び比較例5-7の評価サンプルを以下の手順で調製した。実施例47-49は、実施の形態1に基づく。
【0253】
[適合評価サンプルの作製方法]
作製装置10を用いて適合評価サンプルとして恒安定状態の造形体3を作製した。具体的には、造形データ作成装置11によって、模型2に合わせて歯科用の造形体3の造形データを作成した。作製した造形データに基づき、光造形装置12によって、各材料に使用説明書もしくは初期設定されている条件により半硬化状態の造形体5を作製した。造形完了後、半硬化状態の造形体5をエタノール中で5分間超音波洗浄を行った後、サポートを取り除いた。
【0254】
実施の形態2の実施例23~34において、半硬化状態の造形体5を模型2に取り付けた。その後、フィルム6で半硬化状態の造形体5と模型2を覆い、真空包装装置13によって、フィルム6で覆った部分の空気を排気し、半硬化状態の造形体5と模型2とを密着させた。その後、半硬化状態の造形体5と模型2とを密着させた状態のまま、光照射装置14によって15分間、光を照射(ポストキュア)後、加熱装置17で室温から加熱し、加熱温度を20分間維持し、室温で徐冷させた。
【0255】
実施の形態3の実施例35~46において、半硬化状態の造形体5を光照射装置14によって15分間、光を照射(ポストキュア)を行った。続いて、フィルム6で最終硬化状態の造形体と模型2を覆い、真空包装装置13によって、フィルム6で覆った部分の空気を排気し、最終硬化状態の造形体と模型2とを密着させた。その後、最終硬化状態の造形体と模型2とを密着させた状態のまま、加熱装置17で室温から加熱し、加熱温度を20分間維持し、室温で徐冷させた。
【0256】
[適合評価方法]
適合評価用として、
図2に示す金属鋳造床用の模型2を使用し、歯科用の造形体3を設計した。また、
図13に示す3本ブリッジの模型2Dを用い、
図14に示す造形体3Aを設計した。また、
図15に示すレジン床(全部床)の模型2Bを用い、
図11に示す造形体3Bを設計した。
【0257】
適合の総合評価について、説明する。金属鋳造床用の恒安定状態の造形体3に関しては、
図3に示す模型2に恒安定状態の造形体3を取り付け、メジャーコネクター、クラスプ、レストの間隙を測定した。測定方法としては模型2にダイフリー(ダイキン工業製)のものを塗布し、測定箇所に関してレジンセメント(レジセム(株式会社松風製))を用いて化学重合させ、レジンセメントの厚みを測定した。徐冷が終了し、フィルムを取り外した時間から10分後及び24時間後に測定を行った。なお、測定は2回行い、その平均値を用いた。
【0258】
メジャーコネクター、クラスプ、レストの全てが500μm以下であるものを臨床的に許容でき、より最適なものは100μm以下のものが臨床的に最適である。
【0259】
また、3本ブリッジ用の造形体3Aに関しては、
図13に示す模型2Dに造形体3Aを取り付け、造形体3Aのマージン部の適合を評価し、100μm以下であるものが臨床的に許容でき、50μm以下であることが最適である。
【0260】
また、レジン床用の造形体3Bに関しては、
図15に示す模型2Bに造形体3Bを取り付け、造形体3Bと模型2Bとの間隙を測定した。間隙はファインチェッカー(株式会社松風製)を用い、全部床義歯の間隙を測定し、中央の部位の測定値で最も数字の大きいものを測定した。隙間は500μm以下であることが臨床的に許容でき、100μm以下がより好ましい。
【0261】
以下、評価結果について表10-表19に示す。実施の形態2の結果を表10-表12に示す。実施の形態3の結果を表13-表15に示す。実施の形態1の結果を表16-17に示す。比較例5-7の結果を表18-表19に示す。
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
実施例47、48、49は、それぞれ実施の形態1の実施例5、20、22と同じである。
【0273】
まず、金属鋳造床の模型2と恒安定状態の造形体3とに関する実施例23-26、35-38、47及び比較例5に着目する。なお、実施例23-26、35-38は、真空包装装置13を使用し、真空度を調節し、且つ加熱装置17を使用し、加熱温度を調節している。一方、実施例47は、加熱装置17を使用していない。また、比較例5は、真空包装装置13及び加熱装置17を使用していない。
【0274】
表10、表13、表16及び表18に示されるように、実施例23-26、35-38における隙間は、メジャーコネクター、クラスプ及びレストのいずれにおいても、10分後と比べ、24時間後でもほぼ変化していないが、実施例47及び比較例5の24時間後における隙間は、メジャーコネクター、クラスプ及びレストのいずれにおいても35μm以上変化している。
【0275】
このように、実施例23-26、35-38は、実施例47及び比較例5と比べ、24時間後の隙間が小さくなっている。また、実施例23-26、35-38の隙間は、24時間後においても100μm以下であり、臨床的に最適である。
【0276】
次に、3本ブリッジの模型2Dと造形体3Aとに関する実施例27-30、39-42、48及び比較例6に着目する。なお、実施例27-30、39-42は、真空包装装置13を使用し、真空度を調節し、さらに加熱装置17を使用し、加熱温度を調節している。一方、実施例48は、加熱装置17を使用していない。また、比較例6は、真空包装装置13及び加熱装置17を使用していない。
【0277】
表11、表14、表17及び表19に示されるように、実施例27-30、39-42におけるマージンの間隙は、10分後と比べ、24時間後でもほぼ変化していないが、実施例48及び比較例6の24時間後における間隙は、40μm以上変化している。
【0278】
次に、レジン床の模型2Bと造形体3Bとに関する実施例31-34、43-46、49及び比較例7に着目する。なお、実施例31-34、43-46は、真空包装装置13を使用し、真空度を調節し、さらに加熱装置17を使用し、加熱温度を調節している。一方、実施例49は、加熱装置17を使用していない。また、比較例7は、真空包装装置13及び加熱装置17を使用していない。
【0279】
表12、表15、表17及び表19に示されるように、実施例31-34、43-46における口蓋中央部の間隙は、10分後と比べ、24時間後でもほぼ変化していないが、実施例49及び比較例7における24時間後における間隙は、40μm以上変化している。
【0280】
以上のように、実施例23-46においては、実施例47-49及び比較例5-7と比べ、模型と造形体との間の24時間後における隙間を小さくすることができる。
【0281】
(実施の形態4)
本発明に係る実施の形態4の補綴装置の製造装置及び製造方法について説明する。
【0282】
実施の形態4では、主に実施の形態1-3と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1-3と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1-3と重複する記載は省略する。
【0283】
実施の形態4では、実施の形態1-3を上位概念化した形態を説明する。
【0284】
図20は、本発明に係る実施の形態4の造形体3の作製方法の一例を示すフローチャートである。
図20に示すように、実施の形態4の造形体3の作製方法は、ステップST31~ST36を含む。
【0285】
ステップST31は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する取得工程である。ステップST31は、実施の形態1~3のステップST1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0286】
ステップST32は、スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する造形データ作成工程である。ステップST32は、実施の形態1~3のステップST2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0287】
ステップST33は、造形データに基づいて、造形体を作製する造形体作製工程である。ステップST33は、光造形装置12によって、造形データに基づいて第1硬化状態の造形体5を作製することを含む。第1硬化状態の造形体5とは、光造形装置12によって作製された半硬化状態の造形体であり、力を加えると変形する程度に硬化した造形体である。なお、第1硬化状態の造形体5を作製することは、実施の形態1~3のステップST3と同様である。
【0288】
ステップST33は、更に、光照射装置14によって第1硬化状態の造形体5に光を照射することによって、第1硬化状態より硬化した第2硬化状態の造形体を作製すること、を含んでいてもよい。第2硬化状態の造形体を作製することは、実施の形態3のステップST24と同様である。
【0289】
ステップST34は、造形体を模型2に取り付け、造形体と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う被覆工程である。被覆工程は、第1硬化状態の造形体をフィルム6で覆ってもよいし、第2硬化状態の造形体をフィルム6で覆ってもよい。ステップST34は、実施の形態1及び2のステップST4又は実施の形態3のステップST25と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0290】
ステップST35は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、造形体を模型に対して密着させる排気工程である。ステップST35は、実施の形態1及び2のステップST5又は実施の形態3のステップST26と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0291】
ステップST36は、造形体を模型2に密着させた状態で、造形体を硬化させる硬化工程である。硬化工程は、造形体を模型2に密着させた状態で光を照射する光照射工程と、造形体を模型2に密着させた状態で加熱する加熱工程と、のうち少なくとも一方を有する。
【0292】
例えば、ステップST36において、第1硬化状態の造形体を模型2に密着させている場合、光照射工程と加熱工程とのうちいずれか一方又は両方が実施されてもよい。ステップST36において、第2硬化状態の造形体を模型2に密着させている場合、加熱工程が実施されてもよい。
【0293】
[効果]
本発明に係る実施の形態4によれば、以下の効果を奏することができる。
【0294】
補綴装置4の製造方法は、取得工程ST31、造形データ作成工程ST32、造形体作製工程ST33、被覆工程ST34、排気工程ST35及び硬化工程ST36を含む。取得工程ST31は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する。造形データ作成工程ST32は、スキャンデータに基づいて、歯科用の造形体の造形データを作成する。造形体作製工程ST33は、造形データに基づいて、造形体を作製する。被覆工程ST34は、造形体を模型2に取り付け、造形体と模型2との少なくとも一部をフィルム6によって覆う。排気工程ST35は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、造形体を模型2に対して密着させる。硬化工程ST36は、造形体を模型2に密着させた状態で、造形体を硬化させる。
【0295】
このような構成により、造形体が模型2に密着した状態で硬化されるため、硬化する際に生じる収縮による反り及び変形を抑制することができる。これにより、造形体3の模型2に対する適合性を向上させることができる。その結果、補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0296】
(実施の形態5)
本発明に係る実施の形態5の被覆装置について説明する。
【0297】
実施の形態5では、主に実施の形態1-4と異なる点について説明する。実施の形態5においては、実施の形態1-4と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態5では、実施の形態1-4と重複する記載は省略する。
【0298】
実施の形態5では、実施の形態1-4で用いられる被覆装置の一例として、真空包装装置13を説明する。
【0299】
図21は、本発明に係る実施の形態5の真空包装装置13の一例を示す斜視図である。
図22は、本発明に係る実施の形態5の真空包装装置13の一例を示す別の斜視図である。
図21は、造形体5が取り付けられた模型2を内部に含むフィルム6を真空包装装置13に取り付ける前の状態を示す。
図22は、フィルム6を真空包装装置13に取り付けてフィルム6内の空気を排気した状態を示す。
【0300】
図21及び
図22に示すように、真空包装装置13は、カバー部40と、本体部41と、を有する。カバー部40及び本体部41は、長手方向を有する板状に形成されている。また、カバー部40の短手方向の一端と本体部41の短手方向の一端とは、ヒンジで接続されている。カバー部40は、ヒンジを中心として本体部41に対して回動可能である。これにより、真空包装装置13は、カバー部40と本体部41とが接触して閉じた状態と、カバー部40と本体部41とが離れて開いた状態と、を実現できる。即ち、カバー部40を本体部41に対して移動させることによって、カバー部40を開閉操作することができる。
【0301】
カバー部40には、脱気用の第1脱気溝42が設けられている。第1脱気溝42は、カバー部40の長手方向に延びている。第1脱気溝42の周囲には、シール用のパッド43が配置されている。パッド43は、第1脱気溝42の全周に渡って配置されている。
【0302】
カバー部40は、第1シールヒータ44を有する。第1シールヒータ44は、フィルム6を熱によって変形させてシールする。第1シールヒータ44は、カバー部40の長手方向に延びており、第1脱気溝42と隣接して配置されている。第1シールヒータ44は、封止部として機能する。
【0303】
カバー部40には、後述する本体部41のスイッチ46が挿入される穴45が設けられている。カバー部40を閉じたときに、スイッチ46が穴に挿入される。
【0304】
本体部41は、真空包装装置13の動作を制御するスイッチ46を有する。例えば、スイッチ46は、空気の排気を開始及び終了を制御することができる。
【0305】
本体部41には、脱気用の第2脱気溝47が設けられている。第2脱気溝47は、本体部41の長手方向に延びている。第2脱気溝47の周囲には、シール用のパッド48が配置されている。パッド48は、第2脱気溝47の全周に渡って配置されている。カバー部40を閉じたとき、第1脱気溝42と第2脱気溝47とが連通すると共に、カバー部40と本体部41との間で、パッド43,48が第1脱気溝42と第2脱気溝47とをシールする。これにより、第1脱気溝42と第2脱気溝47とで形成される閉じた空間が形成される。
【0306】
第2脱気溝47には、脱気口49が設けられている。脱気口49は、第1脱気溝42と第2脱気溝47とで形成される閉じた空間内の空気を脱気する。
【0307】
本体部41は、第2シールヒータ50を有する。第2シールヒータ50は、フィルム6を熱によって変形させてシールする。第2シールヒータ50は、本体部41の長手方向に延びており、第2脱気溝47と隣接して配置されている。第2シールヒータ50は、封止部として機能する。
カバー部40を閉じたとき、フィルム6は、カバー部40の第1シールヒータ44と本体部41の第2シールヒータ50とに挟まれる。これにより、フィルム6内部の空気を排気した後、フィルム6の開口6aをシールしながら、熱によりフィルム6の開口6aを閉じる。
【0308】
本体部41は、フィルム6を固定するクリップ51を有する。実施の形態5では、本体部41は、2つのクリップ51を有する。クリップ51は、フィルム6を挟むことによってフィルム6を固定する。具体的には、フィルム6の開口6aが設けられた一端が第1脱気溝42及び第2脱気溝47に配置されるように、クリップ51がフィルム6を挟持する。
【0309】
図23は、本発明に係る実施の形態5の真空包装装置13の内部構成の一例を示すブロック図である。
図23に示すように、真空包装装置13は、空気を排気する排気部15と、真空度を調節する調節部16と、を備える。
【0310】
排気部15は、ポンプ52を有する。ポンプ52は、配管を介して脱気口49と排気口53とに接続されている。排気口53は、例えば、本体部41の外側に設けられている。ポンプ52は、脱気口49から空気を吸気し、排気口53から空気を排気するポンプ52は、脱気口49から第1脱気溝42と第2脱気溝47とで形成される閉じた空間内の空気を脱気する。当該空間には、フィルム6の開口6aが設けられた一端が配置されているため、フィルム6内の空気が脱気される。
【0311】
調節部16は、真空センサ54と、制御部55と、を有する。
【0312】
真空センサ54は、フィルム6内の真空度を検出する。例えば、真空センサ54は、ポンプ52と脱気口49とを接続する配管に配置されている。
【0313】
制御部55は、真空センサ54で検出された真空度に基づいてポンプ52を制御する。具体的には、制御部55は、所望の真空度になるようにポンプ52を制御する。制御部55は、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上95%以下に調節することが好ましい。
【0314】
また、制御部55は、シールヒータ44,50を制御する。具体的には、制御部55は、所望の真空度に到達した後、シールヒータ44,50により熱を発生させる。これにより、フィルム6の開口6aを閉じることができる。
【0315】
また、制御部55は、スイッチ46のオン/オフによって真空包装装置13の動作を制御する。
【0316】
[効果]
本発明に係る実施の形態5によれば、以下の効果を奏することができる。
【0317】
被覆装置13は、補綴装置4を製造するために用いられる装置であって、造形体と模型2との少なくとも一部を覆うフィルム6内の空気を排気する排気部15を備える。排気部15は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、造形体を模型2に対して密着させる。このような構成により、このような構成により、造形体を模型2に対して密着させて固定することができる。これにより、造形体が模型2から浮いたりすることを抑制することができる。その結果、造形体3の模型2に対する適合性を向上させることができるため、補綴装置4の患者の口腔内に対する適合性を向上させることができる。
【0318】
なお、実施の形態5では、被覆装置13として真空包装装置の例を説明したが、これに限定されない。被覆装置13は、フィルム6内の空気を排気し、造形体を模型2に密着させることができる装置であればよい。
【0319】
実施の形態5では、被覆装置13が真空センサ54を備える例について説明したが、これに限定されない。真空センサ54は必須の構成ではない。
【0320】
(実施の形態6)
本発明に係る実施の形態6の補綴装置の製造装置及び製造方法について説明する。
【0321】
実施の形態6では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態6においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態6では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0322】
図24は、本発明に係る実施の形態6の補綴装置4Dの製造装置1Cの一例を示すブロック図である。
図25は、本発明に係る実施の形態6の補綴装置4Dの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0323】
実施の形態6では、義歯床の造形体3Cを作製し、作製した造形体3Cに人工歯を接着することによって義歯の補綴装置4Dを製造する例について説明する。
【0324】
実施の形態6では、製造装置1Cが接着装置22及び加工装置23を備える点で、実施の形態1と異なる。また、実施の形態6では、製造方法が接着工程ST47及び加工工程ST48を含む点で、実施の形態1と異なる。
【0325】
製造装置1Cは、補綴装置4Dとして義歯を製造する。義歯とは、例えば、レジン床などの義歯床に人工歯が接着されたものである(
図30参照)。製造装置1Cでは、義歯床の造形体3Cを作製し(
図28参照)、義歯床の造形体3Cに既製人工歯8を接着する(
図29参照)。これにより、義歯を製造する。
【0326】
図24に示すように、製造装置1Cは、接着装置22及び加工装置23を備える。
【0327】
接着装置22は、作製装置10によって作製した造形体3Cである義歯床に人工歯を接着する装置である。例えば、接着装置22は、人工歯と造形体3Cとを接着する接着材を塗布するディスペンサであってもよい。あるいは、接着装置22は、接着材を塗布する筆であってもよい。なお、接着装置22は、ディスペンサ、筆に限定されない。接着装置22は、接着材を塗布可能な装置であればよい。接着材は、特に制限されず、3Dプリンターに用いられる材料のような光重合性レジン、粉液タイプの常温重合レジンなど硬化性レジンを使用することができる。
【0328】
加工装置23は、人工歯が接着された造形体3Cを加工する装置である。例えば、加工装置23は、人工歯が接着された造形体3Cを切削加工することによって仕上げ加工を行う。これにより、義歯の補綴装置4Dが完成する。
【0329】
次に、補綴装置4Dの製造方法の一例について
図25を用いて説明する。なお、
図25に示すステップST41~ST46は、実施の形態1の
図6に示すステップST1~ST6と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0330】
図25に示すように、ステップST41は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する取得工程である。
図26は、模型2Eの一例を示す概略図である。
図26に示す模型2Eは、無歯の上顎の口腔内を再現した模型である。ステップST41では、スキャン装置21によって模型2Eのスキャンデータを取得する。
【0331】
ステップST42は、スキャンデータに基づいて、義歯用の造形体の造形データを作成する造形データ作成工程である。具体的には、ステップST42では、造形データ作成装置11は、義歯床の造形データを作成する。造形データは、義歯床に加えて、人工歯の造形データを含んでいてもよい。人工歯の造形データは、例えば、既製人工歯のデータを採用してもよい。既製人工歯とは、予め形状が決定されている既製品の人工歯である。
【0332】
ステップST43は、造形データに基づいて、半硬化状態の造形体を作製する造形体作製工程である。ステップST43では、光造形装置12が、ステップST42で作成した義歯床の造形データに基づいて、第1硬化状態の造形体、即ち、半硬化状態の造形体を作製する。
図27は、半硬化状態の造形体5Aの一例を示す概略図である。
図27に示す例は、既製品の人工歯が接着される義歯床の造形体5Aを示している。
図27に示すように、半硬化状態の造形体5Aは、模型2Eに取り付けられる義歯床の形状を有する。造形体5Aには、複数の人工歯が配置される複数の凹部7が形成されている。複数の凹部7は、複数の人工歯のそれぞれの形状に対応した形状を有する。具体的には、複数の凹部7は、複数の人工歯の基底部の形状に応じて窪んで形成されている。また、凹部7には、人工歯の基底部に設けられた位置決め穴に挿入される位置決め凸部7aが形成されている。
【0333】
ステップST44は、造形体5Aを模型2Eに取り付け、造形体5Aと模型2Eとをフィルム6によって覆う被覆工程である。
図28は、半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに取り付けた状態の一例を示す概略図である。
図28に示すように、ステップST44では、真空包装装置13が、ステップST43で造形した造形体5Aを模型2Eに取り付けた状態で、造形体5Aと模型2Eとをフィルム6によって覆う。
【0334】
ステップST45は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、造形体5Aを模型2Eに対して密着させる排気工程である。
【0335】
ステップST45は、フィルム6で覆われた部分の真空度を調節する調節工程を含んでもよい。例えば、調整工程では、真空包装装置13の調節部16によって、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上99.9%以下に調節する。好ましくは、調整工程では、フィルム6で覆われた部分の真空度を50%以上99.9%以下に調節する。より好ましくは、調整工程では、フィルム6で覆われた部分の真空度を60%以上99.9%以下に調節する。
【0336】
ステップST45において、フィルム6で覆われた部分の空気を排気した後、真空包装装置13の封止部によってフィルム6を封止する。これにより、造形体5Aと模型2Eとが密着した状態を維持する。
【0337】
ステップST46は、造形体5Aを模型2Eに密着させた状態で光を照射することによって、造形体5Aを硬化させる硬化工程(光照射工程)である。ステップST46では、光照射装置14は、半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに対して密着させた状態で、光を照射する。これにより、半硬化状態の造形体5Aが硬化する。その結果、最終硬化状態の造形体3Cが作製される。即ち、第1硬化状態の造形体5Aを更に硬化させた第2硬化状態の造形体3Cが作製される。
【0338】
ステップST47は、造形体3Cに人工歯を接着する接着工程である。
図29は、義歯床の造形体3Cに複数の人工歯8を接着した状態の一例を示す概略図である。なお、
図29に示す例では、人工歯8は既製人工歯である。
図29に示すように、ステップST47では、接着装置22が、造形体3Cに複数の人工歯8を接着する。具体的には、接着装置22は、造形体3Cに設けられた複数の凹部7に接着材を塗布し、複数の凹部7に複数の人工歯8を配置する。接着剤が固まることによって、人工歯が接着された造形体3Cが作製される。
【0339】
ステップST48は、人工歯が接着された造形体3Cを仕上げ加工する。ステップST48では、加工装置23がステップST47で作製された造形体3Cを切削などの加工を行う。これにより、義歯の補綴装置4Dが完成する。
図30は、義歯の補綴装置4Dの一例を示す概略図である。
図30に示すように、仕上げ加工した後、模型2Eから補綴装置4Dを取り外すことによって、義歯の補綴装置4Dが完成する。
【0340】
このように、義歯の補綴装置4Dの製造方法では、ステップST41~ST48を実施することによって、義歯の補綴装置4Dを製造することができる。
【0341】
[効果]
本発明に係る実施の形態6によれば、以下の効果を奏することができる。
【0342】
補綴装置4Dの製造装置1C及び製造方法では、義歯床の造形体3Cを作製し、作製した造形体3Cに人工歯8を接着することによって、義歯の補綴装置4Dを製造することができる。また、製造装置1C及び製造方法によれば、残留モノマーを低減し、且つ義歯の補綴装置4Dの適合性を向上させることができる。
【0343】
具体的には、半硬化状態の義歯床の造形体5Aを模型2Eに密着させた状態で、最終硬化状態の造形体3Cに硬化されるため、収縮による反り及び変形を抑制することができる。
【0344】
排気工程ST45では、造形体5Aと模型2Eとをフィルム6で覆った状態で、真空包装装置13によってフィルム6内の空気を排気している。これにより、空気と共に重合阻害因子である酸素も排除された状態で重合されるため、重合が促進し、残留モノマーを低減することができる。
【0345】
なお、実施の形態6では、製造装置1C及び製造方法が補綴装置4Dとして上顎用の義歯を製造する例について説明したが、これに限定されない。例えば、製造装置1C及び製造方法は、補綴装置4Dとして、下顎用の義歯を製造してもよい。
【0346】
実施の形態6では、人工歯8が既製品である既製人工歯である例について説明したが、これに限定されない。人工歯8は、既製品ではなく、造形されたものであってもよい。例えば、人工歯8は、造形データ作成装置11及び光造形装置12によって造形された造形人工歯であってもよい。あるいは、造形人工歯は、作製装置10Cとは別の装置によって造形されてもよい。
【0347】
例えば、造形データ作成装置11が造形人工歯の造形データを作成してもよい。例えば、造形データ作成装置11が患者の口腔内に適した形状を有する人工歯の造形データを作成してもよい。光造形装置12は、造形データ作成装置11によって作成された人工歯の造形データに基づいて、造形人工歯を造形してもよい。これにより、加工装置23による人工歯の仕上げ加工を省略することができる。
【0348】
補綴装置4Dの製造方法は、造形人工歯を作製するステップを含んでいてもよい。このような構成により、義歯床と人工歯を作製することができるため、義歯の補綴装置4Dを容易に製造することができる。
【0349】
実施の形態6では、複数の人工歯8がそれぞれ分離している例について説明したが、これに限定されない。複数の人工歯は、連結されていてもよい。例えば、複数の人工歯を造形する場合、複数の人工歯を連結させた連結人工歯を造形することが好ましい。
【0350】
図31は、複数の造形人工歯8aが連結された連結人工歯9の一例を示す概略図である。
図31は、前歯である6歯が連結された連結人工歯9を示している。前歯とは、中切歯、側切歯及び犬歯を含む。
図31に示すように、複数の造形人工歯8aが連結部8bによって連結されていてもよい。連結部8bは、隣り合う2つの造形人工歯8aとの間に形成されている。連結部8bは、複数の造形人工歯8aが造形されるときに共に造形される。このため、複数の造形人工歯8aと連結部8bは一体で形成されている。また、連結部8bは、複数の造形人工歯8aの配列を画定している。
図31に示す例では、複数の造形人工歯8aは、連結部8bによってアーチ状に配列した状態で連結されている。このような連結人工歯9を用いることによって、義歯床である造形体3Cに複数の造形人工歯8aを容易に配置し、接着することができる。
【0351】
実施の形態6では、造形体3Cの複数の凹部7のそれぞれに凸部7aを設ける例について説明したが、これに限定されない。造形体3Cの凹部7には、凸部7aが設けられていなくてもよい。
【0352】
実施の形態6では、造形体3Cの複数の凹部7が、複数の既製人工歯8の基底部の形状に対応する形状を有している例について説明したが、これに限定されない。複数の凹部7は、配置される複数の人工歯の形状に応じて変更されてもよい。例えば、複数の凹部7は、複数の造形人工歯8aの基底部の形状に対応する形状を有していてもよい。あるいは、複数の凹部7は、複数の造形人工歯8aが連結された連結人工歯9の基底部の形状に対応する形状を有していてもよい。
【0353】
図32は、義歯床の造形体の別例を示す概略図である。
図32は、連結人工歯9を接着する義歯床の造形体3Dを示している。
図32に示すように、造形体3Dにおいて連結人工歯9が配置される凹部7Aは、連結人工歯9の基底部の形状に対応した形状を有する。具体的には、凹部7Aは、複数の造形人工歯8aの基底部と連結部9bの形状に応じて窪んでいる。このように、義歯床の造形体3Dは、連結人工歯9に対応する凹部7Aを有していてもよい。
【0354】
実施の形態6では、製造装置1Cが加工装置23を備える例について説明したが、これに限定されない。製造装置1Cは、加工装置23を備えていなくてもよい。また、補綴装置4Dの製造方法が仕上げ工程であるステップST48を含む例について説明したが、これに限定されない。補綴装置4Dの製造方法は、ステップST48を含んでいなくてもよい。即ち、ステップST48は必須の構成ではない。
【0355】
実施の形態6では、接着装置22が作製装置10とは別の装置である例について説明したが、これに限定されない。接着装置22は作製装置10に含まれていてもよい。また、接着工程であるステップST47が造形体3Cを作製した後に実施される例について説明したが、これに限定されない。
【0356】
図33は、本発明に係る実施の形態6の補綴装置4Dの製造装置1Dの別例を示すブロック図である。
図33に示すように、製造装置1Dにおいては、作製装置10Cが接着装置22を含んでいてもよい。また、製造装置1Dにおいては、接着装置22は、光造形装置12によって作製した半硬化状態の造形体に複数の人工歯を接着してもよい。
【0357】
図34は、本発明に係る実施の形態6の補綴装置の製造方法の別例を示すフローチャートである。
図34に示すステップST41~ST46及びST48は、
図25に示すステップST41~ST46及びST48と同様である。
図34に示すように、人工歯を接着する接着工程であるステップST47Aは、ステップST43の後であって、ステップST44の前に実施されてもよい。
【0358】
図35は、半硬化状態の造形体5Aに人工歯を接着した状態の一例を示す概略図である。
図35に示すように、ステップST47Aでは、ステップST43で作製された半硬化状態の造形体5Aに複数の人工歯8を接着してもよい。このように、
図35に示す例では、半硬化状態の造形体5Aに複数の人工歯8を接着するため、作製装置10Cによって最終的に作製される造形体3Dは、レジン床義歯などの義歯となる。義歯の造形体3Dは、加工装置23によって仕上げ加工が行われる。これにより、義歯の補綴装置4Dが完成する。このような構成においても、残留モノマーを低減し、且つ義歯の補綴装置4Dの適合性を向上させることができる。
【0359】
実施の形態6では、実施の形態1の製造方法を用いて義歯の補綴装置4Dを製造する例について説明したが、これに限定されない。義歯の補綴装置4Dは、実施の形態1~4のいずれかの製造方法を用いて製造してもよい。
【0360】
(実施例)
実施例に基づき、補綴装置4Dの製造装置1C及び製造方法を更に説明するが、本発明は、以下に示す実施例により制限されない。
【0361】
以下、実施例の条件について説明する。
【0362】
[実施例の条件]
<光造形装置>
光造形装置12として、DLP方式のD30(Rapidshape製)を使用した。
【0363】
<造形体を形成する材料>
義歯床用の造形体を形成する材料は、Base(Nextdent製、材料:アクリレート系樹脂)を使用した。
【0364】
<人工歯>
人工歯として、既製品である既製人工歯8と、光造形装置によって造形される造形人工歯8aと、を用いた。既製人工歯8として、株式会社松風製のベラシアSAアンテリア(色調:A3、形態:ST5)、ベラシアSAポステリア(色調:A3、形態:S30)を使用した。造形人工歯8aとして、光造形装置用C&B材料であるC&B(Nextdent製、材料:アクリレート系樹脂)を用いて株式会社松風製のベラシアSA形状に造形した造形人工歯を使用した。
【0365】
<接着材>
人工歯と義歯床の造形体とを接着する接着材は、株式会社松風製のプロビナイス(色調:3S)を使用した。
【0366】
<フィルム>
マジックカット付規格袋 飛竜 N-5NP(旭化成パックス製、材質:ナイロン、ポリエチレン)を使用した。
【0367】
<光照射装置>
LC-3Dprint Box(Nextdent製)を使用した。
【0368】
<超音波洗浄装置>
SUC-70(株式会社松風製)を使用した。
【0369】
実施例50-58及び比較例8-10の評価サンプルを以下の手順で調製した。
【0370】
[適合評価サンプルの作製]
<実施例50>
実施例50においては、実施の形態6の作製装置10Cを用いて適合評価サンプルとして義歯床形状の造形体3Cを作製した。実施例51では、
図25に示すステップST41~ST46を実施することによって造形体3Cを作製した。
【0371】
具体的には、造形データ作成装置11によって、模型2Eに合わせて義歯用の造形体の造形データを作成する。作成した造形データに基づいて、光造形装置12によって、各材料に使用説明書もしくは初期設定されている条件に基づいて、
図27に示す半硬化状態の造形体5Aを造形した。半硬化状態の造形体5Aをイソプロピルアルコール中で超音波洗浄した。超音波洗浄は、1次洗浄、2次洗浄をそれぞれ5分間行った。
【0372】
次に、サポートを取り除き、
図28に示すように、半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに取り付けた。フィルム6で半硬化状態の造形体5Aと模型2Eとを覆い、真空包装装置13によって、フィルム6で覆った部分の空気を排気し、半硬化状態の造形体5Aと模型2Eとを密着させた。半硬化状態の造形体5Aと模型2Eとを密着させた状態で、光照射装置14によって光照射(ポストキュア)を15分間行った。フィルム6から光照射した造形体3Cを取り出し、さらに造形体3Cの裏面(粘膜面)に対して15分間光照射することで義歯床の造形体3Cを作製した。
【0373】
<実施例51>
実施例51においては、
図25に示すステップST41~ST48を実施することによって既製人工歯8が接着された義歯を作製した。実施例51においては、実施例50と同様にして既製人工歯8用の義歯床の造形体3Cを作製し、作製した造形体3Cに既製人工歯を接着することによって義歯を作製した。具体的には、作製した造形体3Cの複数の凹部7に接着材として、株式会社松風製プロビナイスの粉液混合物を塗布した。続いて、複数の凹部7に既製品人工歯である株式会社松風製のベラシアSAを圧接し、室温で硬化させることで既製人工歯8が接着した義歯を作製した。
【0374】
<実施例52>
実施例52においては、
図25に示すステップST41~ST48を実施することによって造形人工歯8aが接着された義歯を作製した。実施例52においては、実施例50と同様にして造形人工歯8a用の義歯床の造形体3Dを作製し、作製した造形体3Dに造形用人工歯を接着することによって義歯を作製した。具体的には、作製した造形体3Dの複数の凹部7Aに3Dプリンタ液「Base(Nextdent製)」を塗布した。続いて、複数の凹部7Aに造形人工歯8aを圧接し、光照射を5分間行うことで造形人工歯8aが接着した義歯を作製した。
【0375】
<実施例53>
実施例53においては、光造形装置12の初期設定されたオーバーキュア値を100%から80%に変更して造形を行い、
図27に示す半硬化状態の造形体5Aを造形した点を除いて、実施例51と同様の方法で既製人工歯8が接着した義歯を作製した。なお、オーバーキュア値とは、D30(Rapidshape製)の設定値である。オーバーキュア値を変更することによって、重合の時間を変更することができる。オーバーキュア値が大きくなると、重合の時間が長くなる。オーバーキュア値が小さくなると、重合の時間が短くなる。実施例53では、オーバーキュア値を100%から80%に変更することによって、実施例51と比べて、重合時間を短くしている。
【0376】
<実施例54>
実施例54においては、光造形装置12の初期設定されたオーバーキュア値を100%から120%に変更して造形を行った点を除いて、実施例53と同様にして、既製人工歯8が接着した義歯を作製した。実施例54では、オーバーキュア値を100%から120%に変更することによって、実施例51と比べて、重合時間を長くしている。
【0377】
<実施例55>
実施例55においては、真空包装装置13の真空度を50%に設定している点を除いて、実施例51と同様の方法で既製人工歯8が接着した義歯を作製した。
【0378】
<実施例56>
実施例56においては、真空包装装置13の真空度を80%に設定している点を除いて、実施例55と同様の方法で既製人工歯8が接着した義歯を作製した。
【0379】
<実施例57>
実施例57においては、真空包装装置13の真空度を99.9%に設定している点を除いて、実施例55と同様の方法で既製人工歯8が接着した義歯を作製した。
【0380】
<実施例58>
実施例58においては、
図34に示すステップST41~ST48を実施することによって既製人工歯8が接着された義歯を作製した。具体的には、造形データ作成装置11によって、模型2Eに合わせて義歯用の造形体の造形データを作成した。作成した造形データに基づいて、光造形装置12によって、各材料に使用説明書もしくは初期設定されている条件に基づいて、
図27に示す半硬化状態の造形体5Aを造形した。半硬化状態の造形体5Aをイソプロピルアルコール中で超音波洗浄した。超音波洗浄は、1次洗浄、2次洗浄をそれぞれ5分間行った。半硬化状態の造形体5Aの複数の凹部7に接着材として、株式会社松風製プロビナイスの粉液混合物を塗布した。続いて、複数の凹部7に既製品人工歯である株式会社松風製のベラシアSAを圧接し、室温で硬化させることで、
図35に示す既製人工歯8を接着した半硬化状態の造形体5Aを作製した。
【0381】
次に、既製人工歯8を接着した半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに取り付けた。フィルム6で半硬化状態の造形体5Aと模型2Eとを覆い、真空包装装置13によって、フィルム6で覆った部分の空気を排気し、半硬化状態の造形体5Aと模型2Eとを密着させた。半硬化状態の造形体5Aと模型2Eとを密着させた状態で、光照射装置14によって光照射(ポストキュア)を15分間行った。フィルム6から光照射した造形体3Eを取り出し、さらに造形体3Eの裏面(粘膜面)に対して15分間光照射することで義歯床の造形体3Eを作製した。
【0382】
<比較例8>
比較例8においては、真空包装装置13を使用していない点を除いて、実施例51と同様にして既製人工歯8が接着された義歯を作製した。比較例8においては、半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに取り付けた状態で、フィルム6によって覆わずに光照射装置14によって、光照射(ポストキュア)を15分間行った点で、実施例51と異なる。
【0383】
<比較例9>
比較例9においては、真空包装装置13を使用していない点を除いて、実施例58と同様にして既製人工歯8が接着された義歯を作製した。比較例9においては、既製人工歯8が接着された半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに取り付けた状態で、フィルム6によって覆わずに光照射装置14によって、光照射(ポストキュア)を15分間行った点で、実施例58と異なる。
【0384】
<比較例10>
比較例10おいては、真空包装装置13を使用していない点を除いて、実施例52と同様にして造形人工歯8aが接着された義歯を作製した。比較例10においては、半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに取り付けた状態で、フィルム6によって覆わずに光照射装置14によって、光照射(ポストキュア)を15分間行った点で、実施例52と異なる。
【0385】
[半硬化状態の重合率評価サンプルの作製]
光造形装置12を用いて、φ15mm×1mmの丸板を造形した。半硬化状態の造形体をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄した。超音波洗浄は、1次洗浄、2次洗浄をそれぞれ5分間行った。サポートを取り除き、これを半硬化状態の造形体の重合率評価に用いた。
【0386】
[最終硬化状態の重合率評価サンプルおよび残留モノマー抽出率評価サンプルの作製]
最終硬化状態の重合率評価サンプルおよび残留モノマー抽出率評価サンプルは、同一形状とし、下記の方法にて作製した。
【0387】
(実施例の形態)
半硬化状態の重合率評価が終了したサンプルをそのまま用いた。40mm×40mm×10mmの寸法に調整した石膏に半硬化状態の重合率評価が終了した丸板サンプルを置いた。石膏および丸板をフィルム6で覆い、真空包装装置13によってフィルム6で覆った部分の空気を排気し、石膏と丸板とを密着させた。その後、石膏と丸板とを密着させた状態のまま、光照射装置14によって光照射(ポストキュア)を15分間行った。フィルム6から光照射した造形体を取り出した後、丸板の裏面(光が直接照射されていない面)に対して、さらに15分間光照射し、これを最終硬化状態の造形体の重合率評価または残留モノマー抽出率評価サンプルに用いた。
【0388】
(比較例の形態)
半硬化状態の重合率評価が終了したサンプルをそのまま用いた。40mm×40mm×10mmの寸法に調整した石膏に半硬化状態の重合率評価が終了した丸板サンプルを置いた。光照射装置14によって光照射(ポストキュア)を15分間行った。その後、丸板の裏面(光が直接照射されていない面)に対して、さらに15分間光照射し、これを最終硬化状態の造形体の重合率評価または残留モノマー抽出率評価サンプルに用いた。
【0389】
[適合評価方法]
実施例50-58及び比較例8-10で作製した義歯及び義歯床をそれぞれ
図26に示す模型2Eに取り付け、義歯及び義歯床と模型2Eとの隙間を測定した。間隙はファインチェッカー(株式会社松風製)を用い、全部床義歯の間隙を測定し、中央の部位の測定値で最も数字の大きいものを測定した。隙間は500μm以下であることが臨床的に許容でき、200μm以下がより好ましい。
【0390】
[重合率評価方法]
フーリエ変換赤外分光光度計 FT-IR 6300(日本分光社製)を使用し、造形前の造形体の樹脂材料と半硬化状態の造形体5A及び最終硬化状態の造形体3C,3Dについて、6150cm-1付近のC=C帰属されるピーク強度を測定した。造形体と樹脂液材料のピーク強度の比率から重合率を算出した。重合率は下記の式により算出した。
【0391】
重合率(%)=(1-(PS1/PS2))×100
【0392】
ここで、PS1は造形体のピーク強度を示し、PS2は樹脂液材料のピーク強度を示す。
【0393】
[残留モノマー抽出率の評価方法]
あらかじめ造形体およびガラス容器を秤量した。造形体1枚をガラス容器に入れ、ガラス容器に造形体1gあたり10mLとなるようにアセトンを加えた後、振とう器を用いて室温で100rpmの速度で24時間振とうした。振とう終了後、ガラス容器から造形体を取り除き、ガラス容器内に残った液体を抽出液とした。ガラス容器に入った抽出液を70℃の乾燥機で24時間乾燥した後、室温まで放冷した。乾燥させた抽出液及びガラス容器の総重量を乾燥重量とし、ガラス容器の重量を風袋重量とする。乾燥重量と風袋重量の差から抽出量を算出し、下記の式より抽出率を求めた。
【0394】
抽出率(%)=(Mg1/Mg2)×100
【0395】
ここで、Mg1は抽出量(g)を示し、Mg2は造形体重量(g)を示す。
【0396】
以下、評価結果について表20-表22に示す。
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
実施例51と比較例8、実施例58と比較例9、実施例52と比較例10は、それぞれ真空装置使用の有無のみが異なる。真空装置を使用した実施例51、58、52はいずれも口蓋中央部の隙間が臨床的により好ましい範囲に収まるのに対して、比較例1、2、3は臨床的に許容される範囲を超えている。
【0401】
実施例50、51及び52に着目し、人工歯の接着工程に関する比較を行う。人工歯を接着する前の義歯床である実施例50、既製人工歯を接着した義歯である実施例51、造形人工歯を接着した義歯である実施例52はいずれも口蓋中央部の隙間が同程度で、かつ臨床的により好ましい範囲に収まる。
【0402】
実施例51と実施例58に着目し、人工歯を接着する工程の順序について比較する。義歯床のポストキュアを行った後に人工歯を接着した実施例51とポストキュア前の義歯床に人工歯を接着し、その後ポストキュアを行った実施例58は、いずれも口蓋中央部の隙間が同程度であり、かつ臨床的により好ましい範囲に収まる。
【0403】
半硬化状態の造形物の重合率を比較すると、実施例53が67%、実施例51が75%、実施例54が80%であるが、半硬化状態の造形物の重合率に関わらず、口蓋中央部の隙間は同程度で、かつ臨床的により好ましい範囲に収まる。
【0404】
実施例51、55、56及び57に着目し、真空度について比較する。真空度50%である実施例55、真空度65%である実施例51、真空度80%である実施例55、真空度99.9%である実施例57は、いずれも臨床的により好ましい。あるいは臨床的に許容される範囲に収まるが、真空度が高い方が口蓋中央部の隙間が小さく、より好ましい。なお、真空度を40%より小さくすると、フィルム6内の空気の排出量が少なく、半硬化状態の造形体5Aを模型2Eに密着させることが困難であった。
【0405】
実施例50-58及び比較例8-10に着目し、最終硬化状態の造形体の重合率を比較する。実施例50-58の最終硬化状態の造形体の重合率は94~97%であり、比較例8-10の最終硬化状態の造形体の重合率は89~91%である。実施例50-58においては、比較例8-10に比べて重合率が向上している。
【0406】
実施例50-58及び比較例8-10に着目し、最終硬化状態の造形体の抽出率を比較する。実施例50-58の抽出率は、0.009~0.020%であり、比較例8-10の抽出率は、0.079~0.094%である。実施例50-58においては、比較例8-10に比べて抽出率が1/4以下に低減している。
【0407】
以上のように、実施例50-58においては、比較例8-10と比べて、模型との適合性に優れ、かつ残留モノマー量を1/4以下に低減することが可能である。
【0408】
(実施の形態7)
本発明に係る実施の形態7の補綴装置の製造装置及び製造方法について説明する。
【0409】
実施の形態7では、主に実施の形態6と異なる点について説明する。実施の形態7においては、実施の形態6と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態6では、実施の形態6と重複する記載は省略する。
【0410】
図36は、本発明に係る実施の形態7の補綴装置4Eの製造装置1Eの一例を示すブロック図である。
図37は、本発明に係る実施の形態7の補綴装置4Eの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0411】
実施の形態7では、人工歯と義歯床とが一体で形成された義歯の補綴装置4Eを製造する例について説明する。
【0412】
実施の形態7では、製造装置1Eが人工歯を接着する接着装置22を備えず、半硬化状態の義歯の造形体を作製し硬化させることによって義歯の造形体3Fを作製する点で、実施の形態1と異なる。また、実施の形態7では、製造方法が人工歯を接着する接着工程を含まず、造形体作製工程ST53が半硬化状態の義歯の造形体を作製する点で、実施の形態1と異なる。
【0413】
製造装置1Eにおいて、造形データ作成装置11は、人工歯と義歯床とが一体で形成された義歯の造形データを作成する。光造形装置12は、造形データ作成装置11によって作成された造形データに基づいて、半硬化状態の義歯の造形体を造形する。
【0414】
図38は、半硬化状態の義歯の造形体5Bの一例を示す概略図である。
図38に示すように、造形体5Bは、義歯床の造形体5aと人工歯の造形体8cとが一体で形成された義歯の造形体である。
【0415】
次に、補綴装置4Eの製造方法の一例について
図37を用いて説明する。なお、
図37に示すステップST51~ST57は、半硬化状態の義歯の造形体5Bを作製する点を除いて、実施の形態6の
図25に示すステップST41~ST46及びST48と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0416】
図37に示すように、ステップST51は、患者の口腔内の少なくとも一部を再現した模型のスキャンデータを取得する取得工程である。
【0417】
ステップST52は、スキャンデータに基づいて、義歯の造形体の造形データを作成する造形データ作成工程である。具体的には、ステップST52では、造形データ作成装置11は、義歯床と人工歯とが一体となった義歯の造形データを作成する。
【0418】
ステップST53は、造形データに基づいて、半硬化状態の義歯の造形体5Bを作製する造形体作製工程である。ステップST53では、光造形装置12が、ステップST52で作成した義歯の造形データに基づいて、
図38に示す半硬化状態の義歯の造形体5Bを作製する。
【0419】
ステップST54は、造形体5Bを模型2Eに取り付け、造形体5Bと模型2Eとをフィルム6によって覆う被覆工程である。
【0420】
ステップST55は、フィルム6で覆われた部分の空気を排気することによって、フィルム6を変形させ、造形体5Bを模型2Eに対して密着させる排気工程である。ステップST55は、フィルム6で覆われた部分の真空度を調節する調節工程を含んでもよい。例えば、調整工程では、真空包装装置13の調節部16によって、フィルム6で覆われた部分の真空度を40%以上99.9%以下に調節する。好ましくは、調整工程では、フィルム6で覆われた部分の真空度を50%以上99.9%以下に調節する。より好ましくは、調整工程では、フィルム6で覆われた部分の真空度を60%以上99.9%以下に調節する。
【0421】
ステップST56は、造形体5Bを模型2Eに密着させた状態で光を照射することによって、造形体5Bを硬化させる硬化工程(光照射工程)である。ステップST56では、光照射装置14は、半硬化状態の義歯の造形体5Bを模型2Eに対して密着させた状態で、光を照射する。これにより、半硬化状態の義歯の造形体5Bが硬化する。その結果、最終硬化状態の義歯の造形体3Fが作製される。
【0422】
ステップST57は、造形体3Fを仕上げ加工する。これにより、義歯の補綴装置4Eが完成する。
【0423】
このように、義歯の補綴装置4Eの製造方法では、ステップST51~ST57を実施することによって、義歯の補綴装置4Eを製造することができる。
【0424】
[効果]
本発明に係る実施の形態7によれば、以下の効果を奏することができる。
【0425】
補綴装置4Eの製造装置1E及び製造方法では、義歯床と人工歯とが一体となった義歯の造形体3Fを作製することによって、義歯の補綴装置4Eを製造する。これにより、実施の形態7では、実施の形態6に比べて、接着装置22及び接着工程を省略することができる。
【0426】
(実施例)
実施例に基づき、補綴装置4Eの製造装置1E及び製造方法を更に説明するが、本発明は、以下に示す実施例により制限されない。
【0427】
以下、実施例の条件について説明する。なお、実施例50-58と同様の装置及び条件については、説明を省略する。
【0428】
<実施例59>
実施例59においては、実施の形態7の製造装置1Eを用いて適合評価サンプルとして人工歯と義歯床が一体となった義歯の補綴装置4Eを作製した。具体的には、造形データ作成装置11によって、模型2Eに合わせて義歯の造形体の造形データを作成した。作成した造形データに基づいて、光造形装置12により、各材料に使用説明書もしくは初期設定されている条件により半硬化状態の
図38に示す半硬化状態の義歯の造形体5Bを造形した。半硬化状態の造形体5Bをイソプロピルアルコール中で超音波洗浄した。超音波洗浄は、1次洗浄、2次洗浄をそれぞれ5分間行った。
【0429】
次に、サポートを取り除き、半硬化状態の造形体5Bを模型2Eに取り付けた。フィルム6で半硬化状態の造形体と模型2Eを覆い、真空包装装置13によって、フィルム6で覆った部分の空気を排気し、半硬化状態の造形体5Bと模型2Eとを密着させた。半硬化状態の造形体5Bと模型2Eを密着させた状態で、光照射装置14によって光照射(ポストキュア)を15分間行った。フィルム6から光照射した造形体3Fを取り出し、さらに造形体3Fの裏面(粘膜面)に対して15分間光照射することで義歯を作製した。
【0430】
以下、評価結果について表23に示す。
【0431】
【0432】
実施例59における口蓋中央部の隙間は、130μmであり、臨床的により好ましい範囲に収まっている。したがって、実施例59においても、実施例50-58と同様に、模型に対する適合性が向上している。
【0433】
実施例59の最終硬化状態の造形体の重合率は96%であり、比較例8-10の最終硬化状態の造形体の重合率は89~91%である。したがって、実施例59においても、実施例50-58と同様に、重合率が向上している。
【0434】
実施例59における最終硬化状態の造形体の抽出率は、0.015%である。したがって、実施例59においては、実施例50-58と同様に、抽出率が低減している。
【0435】
以上のように、実施例59においても、実施例50-58と同様に、模型との適合性に優れ、かつ残留モノマー量を低減することが可能である。
【0436】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0437】
本発明は、例えば、適合性を向上させた補綴装置を製造する分野に有益である。
【符号の説明】
【0438】
1,1A,1B,1C,1D,1E 製造装置
2,2A,2B,2C,2D,2E 模型
3,3A,3B,3C,3D,3E,3F 造形体
4,4A,4B,4C,4D,4E 補綴装置
5,5A,5B 半硬化状態の造形体
5a 義歯床の造形体
6 フィルム
7,7A 凹部
7a 凸部
8 既製人工歯
8a 造形人工歯
8b 連結部
8c 人工歯の造形体
9 連結人工歯
10,10A,10B,10C 作製装置
11 造形データ作成装置
12 光造形装置
13 真空包装装置(被覆装置)
14 光照射装置
15 排気部
16 調節部
17 恒安定装置(加熱装置)
20 鋳造装置
21 スキャン装置
22 接着装置
23 加工装置
30 リング
31 埋没材
32 鋳型
33 溶融金属
34 鋳物
40 カバー部
41 本体部
42 第1脱気溝
43 パッド
44 第1シールヒータ
45 穴
46 スイッチ
47 第2脱気溝
48 パッド
49 脱気口
50 第2シールヒータ
51 クリップ
52 ポンプ
53 排気口
54 真空センサ
55 制御部