(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】複数のディザリングプロファイル信号生成
(51)【国際特許分類】
H02M 3/157 20060101AFI20240919BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H02M3/157
H02M3/155 E
(21)【出願番号】P 2021569275
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020033399
(87)【国際公開番号】W WO2020236712
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-03
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】サン ヨン リー
(72)【発明者】
【氏名】ポール デヴィッド カーティス
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-331236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0174005(US,A1)
【文献】特開2005-318797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0159686(US,A1)
【文献】米国特許第07177166(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0156493(US,A1)
【文献】米国特許第08319570(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0068048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
H02M 7/42 - 7/98
H03K 7/08
H03L 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路であって、
クロック信号を受信するように構成されるクロック入力端子と、第1の出力端子と、第2の出力端子とを含む、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)と、
前記クロック信号を受信するように構成されるクロック入力端子と、前記LFSRの第1の出力端子に結合される第1の入力端子と、前記LFSRの第2の出力端子に結合される第2の入力端子と、出力端子とを含む、クロック分周器と、
前記クロック分周器の出力端子に結合される入力端子と、出力端子とを含む、ランプ生成器と、
前記ランプ生成器の出力端子に結合される第1の入力端子と、前記LFSRの第1の出力端子に結合される第2の入力端子と、出力端子とを含む、加算器と、
前記加算器の出力端子に結合される第1の入力端子と、
パルス幅変調(PWM)信号のためのディザリングされたクロック信号を出力するように構成される出力端子とを含む、発振器と、
を含む、回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、
前記LFSRが、第3の出力端子を更に含み、
前記クロック分周器が、前記LFSRの第3の出力端子に結合される第3の入力端子を更に含む、回路。
【請求項3】
請求項1に記載の回路であって、
前記ランプ生成器が、第2の出力端子と、第3の出力端子と、第4の出力端子とを更に含み、
前記加算器が、前記ランプ生成器の第2の出力端子に結合される第3の入力端子と、前記ランプ生成器の第3の出力端子に結合される第4の入力端子と、前記ランプ生成器の第4の出力端子に結合される第5の入力端子と、前記LFSRの第2の出力端子に結合される第6の入力端子とを更に含む、回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路であって、
前記加算器が、第2の出力端子と、第3の出力端子と、第4の出力端子とを更に含み、
前記発振器が、前記加算器の第2の出力端子に結合される第2の入力端子と、前記加算器の第3の出力端子に結合される第3の入力端子と、前記加算器の第4の出力端子に結合される第4の入力端子とを更に含む、回路。
【請求項5】
請求項1に記載の回路であって、
前記発振器の前記出力端子に結合するように構成されるゲート端子を有するパワートランジスタを含む電力コンバータをさらに含む、回路。
【請求項6】
請求項1に記載の回路であって、
前記クロック分周器が、前記LFSRから前記クロック分周器によって少なくとも1つのデジタルデータビットとして受信される値に従って前記受信されるクロック信号を分周するように構成され、
前記ランプ生成器が、前記分周されたクロックの連続するサイクル間において周波数が変化するランプ信号を生成し、前記ランプ信号をデジタル値として出力する、ように構成される、回路。
【請求項7】
請求項6に記載の回路であって、
前記加算器が、前記LFSRから受信される少なくとも1つのデジタルデータビットに従って前記ランプ信号を変調して、前記ランプ信号のディザリングプロファイルと、前記LFSRから受信される前記少なくとも1つのデジタルデータビットに関連付けられるディザリングプロファイルとの両方を含むデュアルランダム
拡散スペクトラム(DRSS)信号を生成する、ように構成される、回路。
【請求項8】
請求項7に記載の回路であって、
前記発振器が、前記DRSS信号に従ってパルス幅変調信号を生成するように構成され、前記パルス幅変調信号が、前記ランプ信号と前記LFSRから前記加算器によって受信される前記少なくとも1つのデジタルデータビットとの両方に従って周波数が変化する、回路。
【請求項9】
回路であって、
クロック信号によってクロックされる線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)であって、デジタルデータフォーマットで疑似ランダム値を出力するように構成される、前記LFSRと、
前記クロック信号を受信し、前記クロック信号を前記疑似ランダム値で分周して分周されたクロック信号を生成して出力する、ように構成される、クロック分周器と、
前記分周されたクロック信号を受信し、前記分周されたクロック信号に従ってランプ信号を生成し、前記デジタルデータフォーマットで前記ランプ信号を出力する、ように構成される、ランプ生成器と、
デュアルランダム
拡散スペクトラム信号を生成するために前記疑似ランダム値で前記ランプ信号を変調するように構成される加算器と、
前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号を受信し、前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号に従ってパルス幅変調信号を生成する、ように構成される、発振器と、
を含む、回路。
【請求項10】
請求項9に記載の回路であって、
前記パルス幅変調信号によって制御されるように構成されるパワートランジスタを更に含み、
前記パルス幅変調信号の制御下の前記パワートランジスタのスイッチング動作が、前記ランプ信号のみ又は前記疑似ランダム値のみに従って生成されるパルス幅変調信号より小さいピークエネルギーを有する電磁干渉を生成する、回路。
【請求項11】
請求項9に記載の回路であって、
前記加算器が、前記疑似ランダム値で前記ランプ信号を変調して、前記クロック信号の単一サイクルの間に前記ランプ信号の周波数が変動する量よりも大きい量、前記クロック信号の単一サイクルで前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号の周波数を変動させる、回路。
【請求項12】
請求項11に記載の回路であって、
前記加算器が、前記クロック信号の各サイクルの間に前記疑似ランダム値を前記ランプ信号に加算することによって前記
疑似ランダム値で前記ランプ信号を変調し、前記加算器が、前記デジタルデータフォーマットで前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号を出力する、回路。
【請求項13】
請求項9に記載の回路であって、
前記パルス幅変調信号の周波数が、前記クロック信号の連続するサイクル間で変化する、回路。
【請求項14】
請求項9に記載の回路であって、
前記発振器が、前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号に少なくとも部分的に従って決定される電流でコンデンサを充電するように電流源をプログラムすることによって、前記パルス幅変調信号を生成する、回路。
【請求項15】
システムであって、
パルス幅変調信号を生成するように構成されるパルス幅変調生成器を含み、
前記パルス幅変調信号が、
第1のディザリングプロファイルと第1の周波数帯域幅とを有する第1の信号を生成することと、
第2のディザリングプロファイルと前記第1の周波数帯域幅より広い第2の周波数帯域幅を有する第2の信号とを生成することと、
デュアルランダム
拡散スペクトラム信号を生成するために前記第1の信号で前記第2の信号を変調することと、
前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号に従って前記パルス幅変調信号を生成することと、
によって生成される、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記第1の信号が
疑似ランダム
拡散スペクトラム信号であり、前記第2の信号が周期的なアナログタイプの波形である、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、
前記パルス幅変調生成器が、
クロック信号によってクロックされる線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)であって、前記疑似ランダム拡散スペクトラム信号を出力するように構成される、前記LFSRと、
前記クロック信号を受信し、前記クロック信号を前記疑似ランダム拡散スペクトラム信号の少なくとも一部で分周して分周されたクロック信号を生成して出力する、ように構成される、クロック分周器と、
前記分周されたクロック信号を受信し、前記分周されたクロック信号に従って前記周期的なアナログタイプの波形を生成する、ように構成される、ランプ生成器と、
前記疑似ランダム拡散スペクトラム信号で前記周期的なアナログタイプの波形を変調して、前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号を生成するように構成される加算器と、
前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号を受信し、前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号に従って前記パルス幅変調信号を生成する、ように構成される、発振器と、
を含む、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号の周波数が、前記クロック信号の連続サイクル間で、前記周期的なアナログタイプの波形又は前記疑似ランダム
拡散スペクトラム信号のいずれかより大きい度合まで変動する、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムであって、
前記発振器が、前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号に少なくとも部分的に従って決定される電流でコンデンサを充電するように電流源をプログラムすることによって、前記クロック信号の連続するサイクル間で周波数が変化する前記パルス幅変調信号を生成する、システム。
【請求項20】
請求項15に記載のシステムであって、
前記第1の信号が周期的なアナログタイプの波形であり、前記第2の信号が
疑似ランダム
拡散スペクトラム信号である、システム。
【請求項21】
請求項15に記載のシステムであって、
前記第1の信号が周期的なアナログタイプの波形であり、前記第2の信号が第2の周期的なアナログタイプの波形である、システム。
【請求項22】
請求項15に記載のシステムであって、前記第1の信号が第1の周波数の三角ランプ信号であり、前記第2の信号が第2の周波数の三角ランプ信号である、システム。
【請求項23】
請求項15に記載のシステムであって、
負荷と、
前記負荷と前記パルス幅変調生成器とに結合される切り替えモード電源であって、パワートランジスタを含み、前記パワートランジスタが、前記パルス幅変調信号に少なくとも部分的に従ってオン及びオフに切り替えられて前記負荷に提供される出力電圧を生成する、前記切り替えモード電源と、
を更に含む、システム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムであって、
前記パルス幅変調信号が、前記第1の信号に起因する前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号の成分に基づく高周波帯域における、及び、前記第2の信号に起因する前記デュアルランダム
拡散スペクトラム信号の成分に基づく低周波数帯域における、前記パワートランジスタのオン及びオフの切り替えにおいて電磁干渉の生成を軽減する、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
スイッチモード電源(SMPS)は、スイッチノード/端子を介してエネルギー貯蔵要素(インダクタ/変圧器及び/又はコンデンサなど)に結合される一つ又は複数のパワートランジスタを切り替えることによって入力電力源から負荷に電力を転送する。エネルギー貯蔵要素は負荷に結合され得る。パワートランジスタは、エネルギー貯蔵要素を含むか又はエネルギー貯蔵要素に結合され得る、電力変換器に含まれ得る。SMPSは、パワートランジスタに一つ又は複数のゲート駆動信号を提供するためのSMPSコントローラを含み得る。SMPSは、スイッチング周波数及びその高調波周波数で電磁干渉(EMI)を引き起こすノイズを生成し得るスイッチング周波数で動作する。
【発明の概要】
【0002】
本開示の少なくともいくつかの態様は、回路を提供する。少なくとも幾つかの例において、回路は、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)、クロック分周器、ランプ生成器、加算器、および発振器を含む。LFSRは、クロック信号を受信するように構成されるクロック入力端子、第1の出力端子、および第2の出力端子を含む。クロック分周器は、クロック信号を受信するように構成されるクロック入力端子、LFSRの第1の出力端子に結合される第1の入力端子、LFSRの第2の出力端子に結合される第2の入力端子、及び出力端子を含む。ランプ生成器は、分周器の出力端子に結合される入力端子、及び出力端子を含む。加算器は、ランプ生成器の出力端子に結合される第1の入力端子、LFSRの第1の出力端子に結合される第2の入力端子、及び出力端子を含む。発振器は、加算器の出力端子に結合される第1の入力端子、及び出力端子を含む。
【0003】
本開示の他の態様が回路を提供する。少なくとも幾つかの例において、回路は、LFSR、クロック分周器、ランプ生成器、加算器、および発振器を含む。LFSRは、クロック信号によってクロックされ、デジタルデータフォーマットの疑似ランダム値を出力するように構成される。クロック分周器は、クロック信号を受信し、クロック信号を疑似ランダム値で分周して、分周されたクロック信号を生成及び出力するように構成される。ランプ生成器は、分周されたクロック信号を受信し、分周されたクロック信号に従ってランプ信号を生成し、デジタルデータフォーマットのランプ信号を出力するように構成される。加算器は、疑似ランダム値を用いてランプ信号を変調して、デュアルランダムスペクトラム拡散信号を生成するように構成される。発振器は、デュアルランダムスペクトラム拡散信号を受信し、デュアルランダムスペクトラム拡散信号に従ってパルス幅変調信号を生成するように構成される。
【0004】
本開示の少なくとも幾つかの態様は、システムを提供する。幾つかの例において、システムは、パルス幅変調(PWM)信号を生成するように構成されるPWM生成器を含む。PWM生成器は、第1のディザリングプロファイル及び第1の周波数帯域幅を有する第1の信号を生成し、第2のディザリングプロファイル及び第1の周波数帯域幅より広い第2の周波数帯域幅を有する第2の信号を生成し、第1の信号を用いて第2の信号を変調してデュアルランダムスペクトラム拡散信号を生成し、デュアルランダムスペクトラム拡散信号に従ってパルス幅変調信号を生成することによって、PWM信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
様々な例の詳細な説明について、下記の添付の図面を参照する。
【0006】
【
図1】様々な例に従った例示のシステムのブロック図である。
【0007】
【
図2】様々な例に従った例示のSMPSの概略図である。
【0008】
【
図3】様々な例に従った例示のパルス幅変調(PWM)生成器の概略図である。
【0009】
【
図4】様々な例に従った例示の信号波形の図である。
【0010】
【
図5】様々な例に従った例示の信号波形の図である。
【0011】
【
図6】様々な例に従った例示の信号波形の図である。
【0012】
【
図7】様々な例に従った例示の方法のフローチャートである。
【0013】
【
図8】様々な実施形態に従った例示の
疑似コードの表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
スイッチモード電源(SMPS)において、パワートランジスタは、スイッチング周波数と呼ばれる特定の周波数でオン及びオフになるように制御される(例えば、切り替えられる)。パワートランジスタのスイッチング挙動の性質により、スイッチング周波数、及び各高調波周波数において電磁エネルギー(例えば、伝導及び/又は放射される電磁エネルギー)スペクトル周波数スプリアス(spur)が創出及び/又は生成される。これらのスペクトル周波数スプリアスは、スイッチング周波数における最大エネルギー量を有する電磁干渉(EMI)と呼ばれる。このような音が生成されると時には望ましくないことがあり得る。少なくとも幾つかの例において、或るシステムで或る周波数において許容される最大EMIエネルギー量が制限されている。例えば、様々な規格又は政府の規制により、自動車、オーディオ機器、又は特定の周波数における過度のEMIが望ましくない及び/又は通常の又は予想されるシステム動作を阻害し得る、その他のアプリケーションなどのシステムにおいて、その特定の周波数で許容される最大EMIエネルギー量が制限されている。
【0015】
スイッチング周波数におけるEMIのピークエネルギーを低減するために、いくつかの技術が存在する。例えば、様々なディザリング技法により、EMIエネルギーが複数の周波数(例えば、或る周波数帯域)にわたって分散される。これらのディザリング技法は、スペクトラム拡散ディザリングと呼ばれることがある。スペクトラム拡散ディザリングは、所定の帯域幅全体にわたる複数の値の間でスイッチング周波数を変化させて、所定の帯域幅全体にわたってEMIのスペクトルエネルギーを拡散させる。これにより、スイッチング周波数におけるスペクトルエネルギーの集束が防止され、スイッチング周波数におけるピークスペクトルエネルギーが減少する。幾つかのディザリング技法は他の技術よりも或る周波数範囲に適している。例えば、三角ランプ信号を生成するアナログディザリング技法は、低周波数におけるディザリングに最適なパフォーマンスを提供し得る。疑似ランダムスペクトラム拡散(PRSS)ディザリングなどのデジタルディザリング技法は、高周波数におけるディザリングに最適なパフォーマンスを提供し得る。ただし、一つの周波数範囲(例えば、高周波数範囲又は低周波数範囲)に最適なパフォーマンスを提供するディザリング技法が、他の周波数範囲に最適なパフォーマンスを提供しないことがあり、幾つかの例において、他の周波数範囲のシステムパフォーマンスを低下させる恐れもある。
【0016】
本開示の態様は、複数のディザリングプロファイル(例えば、ディザリング信号形状)又は複数のディザリング技法を同時に用いる、デュアルランダムスペクトラム拡散ディザリング(DRSS)信号の生成を提供する。例えば、第1の信号が、アナログ信号又はデジタル信号のいずれかを表すものとして生成される。第1の信号は、発振器の出力を変調するための第1の変調信号であり、複数のデジタルビットとして出力される。或いは、幾つかの例において、第1の信号はアナログフォーマットで出力される。幾つかの例において、第1の信号は、上述したように、アナログ三角ランプを表す。第2の信号が、アナログ信号を表すもの又はデジタル信号のいずれかとして生成され、第1の信号は、第2の信号によって変調されて、DRSS信号が生成される。幾つかの例において、第2の信号はPRSS信号である。第1の信号は、幾つかの例において、第1の信号を第2の信号に加えることによって、第2の信号によって変調される。DRSS信号は、幾つかの例において、複数のデジタルビット(例えば、デジタルデータフォーマットのデータ)として出力される。少なくとも一つの例において、第1の信号を第2の信号で変調することによってDRSS信号を生成することは、DRSSディザリングと呼ばれる。別の例において、第1の信号を第2の信号で変調する結果が、別の信号によってさらに変調されて、DRSS信号が生成される。さらに他の例において、変化する周波数に対して各々最適化される任意の数の信号が、一緒に変調されるか、又はその他の方式で組み合わされて、DRSS信号が形成される。三つ以上の信号を組み合わせてDRSS信号を生成する場合、組み合わせた信号の数を反映するようにDRSS信号の名前が変更され得る。DRSS信号に従って発振器が制御され、別の構成要素を制御するための(例えば、電力変換器の制御、ラッチ、又は、電力変換器又はさらに別の構成要素を制御する他の構成要素の設定などのための)パルス幅変調(PWM)クロック信号が生成される。説明を首尾一貫させ明確にするために、第1の信号は、三角波形を表すデジタルビットを含み、第2の信号は、本開示においてPRSS信号とする。ただし、本開示の教示は、この特異な例に限定されず、第1の信号及び第2の信号は各々、変調及び/又はディザリングに用いられるのに適した任意の信号とし得る。例えば、様々な実装において、第1の信号が三角波形であり、第2の信号が三角波形である、第1の信号が三角波形であり、第2の信号がPRSS信号である、第1の信号及び第2の信号が各々PRSS信号である、第1の信号がPRSS信号であり、第2の信号が三角波形である、第1の信号又は第2の信号のいずれかが適応ランダムスペクトラム拡散信号(ARSS)又は周期的アナログタイプの波形である、などである。ARSSは、少なくとも幾つかの例において、経時的に変調される変調周期(例えば、三角形の幅)を有する三角形変調プロファイルとして定義される。幾つかの例において、変調周期は、各ランプの終了時、又はサイクルの他の任意の時点において変更される。また、幾つかの例において、変調周期は固定値である。周期的アナログタイプの波形は、少なくとも幾つかの例において、アナログ又はアナログ信号のデジタル表現のいずれかであり、三角形、正弦波、指数関数などを含むさまざまな形状で生じ得る。
【0017】
第1の信号は、幾つかの例において、約150キロヘルツ(kHz)~約30メガヘルツ(MHz)の周波数帯域など、低周波数帯域でスペクトラム拡散ディザリングを実施するために最適化される。同様に、第2の信号は、幾つかの例において、約30MHz~約108MHzの周波数帯域など、高周波帯域でスペクトラム拡散ディザリングを実施するために最適化される。このように、第1の信号を第2の信号で変調してDRSS信号を生成することにより、少なくとも幾つかの例において、DRSS信号が低周波数帯域及び高周波数帯域の両方に対して最適化される。例えば、DRSS信号に従ってPWM信号を生成すると、PWM信号に従ってデバイスが切り替えられたときに、低周波数帯域(例えば、第1の信号から生じる帯域)及び高周波数帯域(例えば、第1の信号を第2の信号で変調することから生じる帯域)の両方においてEMIのピークエネルギーが減少する。
【0018】
ここで
図1に移ると、例示のシステム100のブロック図が示されている。少なくとも幾つかの例において、システム100は、電力源102、SMPS104、及び負荷106を含む電子デバイスである。少なくとも幾つかの例において、システム100は、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、オーディオデバイス、ウェアラブルデバイスなどの、消費者向け電子デバイスを表す。他の例において、システム100は、自動車、航空機、船舶などの、輸送手段におけるシステム又はサブシステムを表す。概して、システム100は、或る周波数におけるEMIのピークエネルギーを制限する特定の制御仕様又は規格に準拠することが望ましい及び/又は必要とされる任意のシステムを表す。このような規格の一つは、CISPR(Comite International Special des Perturbations Radioelectriques)25であり、これは、様々な車両における或る周波数でのピークエネルギー制限を特定している。他のこのような規格又はピークエネルギー制限は、連邦通信委員会又は他の規制機関によって確立及び/又は公開される放出基準において特定され得る。
【0019】
電力源102は、幾つかの例において、VINを出力する充電式又は非充電式バッテリー或いは使い捨て電源である。他の例において、電力源102は、交流(AC)または他の主電源を受け取り、VINとしてDC出力信号を生成する直流(DC)変圧器の出力など、主電源の一形態である。負荷106は、幾つかの例において、SMPS104からVOUTを受け取り、少なくとも部分的にVOUTに従って動作する、任意の一つ又は複数の電気的及び/又は機械的構成要素である。少なくとも一つの例において、SMPS104は、コントローラ108及び電力コンバータ110を含む。電力コンバータ110は、降圧電力コンバータ、昇圧電力コンバータ、又は昇降圧電力コンバータなど、任意の適切な電力コンバータである。コントローラ108は、電力コンバータ110の動作を少なくとも部分的に制御するPWMを生成する。コントローラ108は、少なくとも幾つかの例において、本明細書で説明するように、VOUTを生成する際に電力コンバータ110によって生成されるEMIを制限するために、DRSS信号に基づいてPWMを生成する。
【0020】
ここで
図2に移ると、例示のSMPS104の概略図が示されている。システム100の構成要素として説明されているが、様々な例において、SMPS104は、VINが受け取られ、VOUTを生成するために一つ又は複数の構成要素を切り替えることによってVOUTが生成される、他のシステム又はデバイスにおける実装に適している。少なくとも幾つかの例において、SMPS104は、コントローラ108及び電力コンバータ110を含む。電力コンバータ110は、少なくとも幾つかの例において、電界効果トランジスタ(FET)202、FET204、及びインダクタ206を含む。
図2に示すように、電力コンバータ110は、電流モード降圧スイッチングコンバータである。しかし、本開示の教示は、昇圧スイッチングコンバータ及び降圧-昇圧スイッチングコンバータ、並びに、降圧、昇圧、又は降圧-昇圧トポロジーの電圧モードコンバータ、或いは、任意の他の適切な電力コンバータトポロジーに等しく適用可能である。コントローラ108は、少なくとも幾つかの例において、抵抗器208、抵抗器210、増幅器212、比較器214、ラッチ216、PWM生成器218、及び加算器220を含む。
【0021】
例示のアーキテクチャにおいて、FET202は、ノード224に結合されるドレイン端子、ノード226に結合されるソース端子、及びゲート端子を有する。FET204は、ノード226に結合されるドレイン端子、接地ノード230に結合されるソース端子、及びゲート端子を有する。インダクタ206は、ノード226とノード228の間に結合される。抵抗器208は、ノード228とノード232の間に結合される。抵抗器210は、ノード232と接地ノード230の間に結合される。増幅器212は、ノード232に結合される第1の入力端子(例えば、負又は反転入力端子)、ノード234に結合される第2の入力端子(例えば、正又は非反転入力端子)、及び出力端子を有する。比較器214は、第1の入力端子(例えば、正又は非反転入力端子)、増幅器212の出力端子に結合される第2の入力端子(例えば、負又は反転入力端子)、及び出力端子を有する。ラッチ216は、比較器214の出力端子に結合されるリセット入力端子、セット入力端子、及び出力端子を有する。PWM生成器218は、ノード238に結合される入力端子、ラッチ216のセット入力端子に結合される第1の出力端子、及び加算器220の入力端子に結合される第2の出力端子を有する。加算器220はさらに、電力コンバータ110を介して流れる電流を示す信号(IL)を受信するように構成される別の入力端子を有する。ラッチ216の出力端子は、FET202のゲート端子に結合される。ラッチ216の出力端子はさらに、インバータ222を介してFET204のゲート端子に結合される。他の例において、インバータ222は省かれ、ラッチ216の反転出力端子(図示せず)がFET204のゲート端子に結合される。
【0022】
動作の例において、コントローラ108は、ノード224において受け取られる入力電圧(VIN)に少なくとも部分的に基づいて、ノード228において出力電圧(VOUT)を生成するように電力コンバータを制御する。ラッチ216のPWM出力信号(PWM2)に基づいて、FET202及びFET204は、導通又は非導通となるように制御されて、VINからVOUTを生成する。抵抗器208と抵抗器210は共に、ノード232において出力を有する分圧器を形成する。ノード232に存在する信号は、抵抗器208と抵抗器210の抵抗の比に基づいてスケーリングされた、VOUTのスケーリングされた表現であるフィードバック信号(FB)である。増幅器212は、FBと、VOUTの所望の値を示しノード234において受信される基準電圧(VREF)との間の差を示す信号ERRORを出力する誤差増幅器である。加算器220は、IL及び傾斜補償信号(COMP)を受信し、出力信号を生成する。比較器214は、ERROR及び加算器220の出力信号を受信し、受信した信号を比較する。加算器220の出力信号がERRORを超える場合、比較器214は、論理高値を有する信号(COMP2)を出力する。加算器220の出力信号がERRORよりも小さい場合、比較器214は、論理低値を有するCOMP2を出力する。ラッチ216は、リセット入力端子においてCOMP2を受信し、セット入力端子において信号PWM1を受信する。PWM1がアサートされると、ラッチ216はアサートされた値を有するPWM2を出力する。COMP2がアサートされると、ラッチ216はアサート解除された値を有するPWM2を出力する。PWM2がアサートされると、FET202は導電となるように制御され、FET204は非導通となるように制御される。同様に、PWM2がアサート解除されると、FET202は非導通となるように制御され、FET204は導通となるように制御される。
【0023】
PWM生成器218は、ノード238においてクロック信号(CLK)を受信し、PWM1及びCOMPを生成するように構成される。例えば、CLKに基づいて、PWM生成器218は少なくとも2つの信号の変調としてPWM1を生成する。CLKは、任意の適切な回路及び任意の適切なプロセスに従って生成され、その範囲は本明細書では限定されない。
図2に示すように、少なくとも幾つかの実装において、PWM1はディザリングされたクロック信号であり、COMPはディザリングされた補償信号である。一例において、PWM生成器218は、CLKを受信し、CLKの周波数を分周して、分周されたクロック信号を生成する。少なくとも一つの実装において、PWM生成器218は、分周されたクロック信号に基づいて、三角ランプ信号、又は任意の他の適切なプロファイルを有する信号を生成する。PWM生成器218は、幾つかの例において、CLKに基づいて又は第2の分周されたクロック信号に基づいて、別の三角ランプ信号、又は任意の他の適切なプロファイルを有する信号を生成する。他の例において、PWM生成器218は、例えば、レジスタ(線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)など)によって出力されるPRSS信号を生成する。PWM生成器218はその後、生成された信号(例えば、ランプ信号+ランプ信号、ランプ信号+PRSS信号など)を加算して、DRSS信号を生成する。DRSS信号は、幾つかの例において、PWM生成器218によってCOMPとして出力される。PWM生成器218はさらに、DRSS信号に従ってPWM1を生成し、例えば、DRSS信号に従ってPWM1を生成する発振器(図示せず)をトリミングする。
【0024】
ここで
図3に移ると、例示のPWM生成器300の概略図が示されている。少なくとも幾つかの例において、PWM生成器300は、CLKが受信され、ディザリングされたPWM信号が生成される、任意のデバイス又はシステムにおける実装に適している。例えば、PWM生成器300は、本開示のSMPS104におけるPWM生成器218としての実装など、幾つかのSMPSアーキテクチャにおける実装に適している。他の例において、PWM生成器300は、CLKに従ってPWM信号を生成するがSMPSではない他のシステムにおける実装に適している。例えば、クロック同期又は同期ピン又は入力など、クロック信号を提供するための入力ピンを含むデバイスにおいて、PWM生成器300は、PWM信号を提供するために、出力端子においてその入力ピンに結合するのに適している。また、PWM生成器300に存在する少なくとも幾つかの信号が
図4の400に示されている。従って、
図3の概略図に図示されているPWM生成器300の動作の理解は、
図4に図示されている信号を検討することによってさらに深まる。
図4に図示されている信号は、生成及び機能に関して、本明細書の他の場所で説明される信号に名前が対応している。
【0025】
少なくとも一つの例において、PWM生成器300は、クロック分周器302、ランプ生成器304、レジスタ306、加算器308、及び発振器310を含む。少なくとも幾つかの例において、レジスタ306は、CLKによってクロックされ、各々が一つのデジタルデータビットを出力する複数の出力タップを有する、線形フィードバックシフトレジスタである。少なくとも幾つかの例において、レジスタ306は、PWM生成器300内に含まれず、その代わりに、PWM生成器300が実装され、PWM生成器300が結合するように構成されるシステムの構成要素である。少なくとも一つの例において、クロック分周器302は、CLKを受信し、CLK_DIVを生成するように構成される。クロック分周器302はさらに、レジスタ306によって出力される一つ又は複数のデータビットを受信するように構成される。少なくとも幾つかの例において、レジスタ306のどの特定のデータビットが出力されるか(例えば、レジスタ306内のどの位置か)は、設計上の選択の問題である。少なくとも幾つかの例において、クロック分周器302は、レジスタ306から受信するデータビットの少なくとも一部に従ってCLKを分周することによってCLK_DIVを生成する。クロック分周器302は、レジスタ306から受信するデータビットに従ってCLK_DIVを生成するので、CLK_DIVの周波数は、レジスタ306によって出力されるデータビットの値の変化に応じて変動する。このように、CLK_DIVの周波数はクロックサイクル毎に変動する。
【0026】
ランプ生成器304は、クロック分周器302に結合され、CLK_DIVを受信するように構成される。CLK_DIVに基づいて、ランプ生成器304は、ランプ信号を生成し、CLK_DIVの各クロックサイクル中のランプ信号の値を表す複数のデータビット(例えば、RAMP_BIT0、RAMP_BIT1、...RAMP_BITX)を出力する。少なくとも幾つかの例において、ランプ生成器304によって出力されるデータビットは、アナログ信号のデジタル表現(例えば、三角波形のデジタル表現)を含む。しかし、他の例において、ランプ生成器304は、アナログフォーマットのランプ信号を出力する。加算器308は、ランプ生成器304によって出力されるデータビットと、レジスタ306によって出力されるデータビットの少なくとも一部とを受信し、レジスタ306によって出力されるデータビットを、ランプ生成器304によって出力されるデータビットに加算してDRSS信号を生成し、複数のデータビット(DRSS_BIT0、DRSS_BIT1、...DRSS_BITX)としてDRSS信号を出力する。少なくとも幾つかの例において、レジスタ306によって出力されるデータビット(例えば、PR_BIT0、PR_BIT1など)は、PRSS信号を含む。
【0027】
発振器310は、加算器308によって出力される複数のデータビットを受信するように構成される。少なくとも幾つかの例において、発振器310は、コンデンサ(図示せず)を充電及び放電することによってPWM信号を生成する。このように、少なくとも幾つかの例において、発振器310の出力端子は、PWM生成器300の出力ノードに結合されているか、又はPWM生成器300の出力ノードの出力ノードである。発振器310は、少なくとも幾つかの例において、プログラム可能な電流源(図示せず)を介してコンデンサに電流を供給することによってコンデンサを充電する。可変電流源によって出力される電流、及びそのためコンデンサの充電率は、加算器308によって出力される複数のデータビットに従って決定される。このように、PWM信号は、加算器308によって出力される複数のデータビットに従って生成され、そのため、PWM信号は、ランプ生成器304によって生成されるランプ信号及びレジスタ306の出力ビットの両方に従って変動する。
【0028】
図5を参照すると、信号波形の例示の
図500が示されている。
図500は、信号505、信号510、及び信号515を図示する。少なくとも一つの例において、信号505は、
図3のランプ生成器304によって生成されるランプ信号であり、信号510は、
図3のレジスタ306によって出力されるPRSS信号であり、信号515は、
図3の加算器308の出力である。信号515はさらに、少なくとも幾つかの例において、発振器310の出力を示し、そのため、信号515は、発振器310の出力を受け取る電力コンバータが制御されるスイッチング周波数(f_sw)を示す。
図500のy軸は周波数を表し、
図500のx軸は時間を表す。
図500にt1として示される期間中、f_swは実質的に一定のままである。この期間中、本開示に従ったディザリングはイナクティブにされる。
図500にt2として示される期間中、本開示に従ったディザリングはイネーブルにされ、t2の間のスイッチング周波数f_swは、tlの間のf_swの約0.156倍の帯域幅内で値が変動する。また、少なくとも幾つかの例において、信号505は、f_hの帯域幅で周波数が変動し、信号510は、f_1の帯域幅で周波数が変動する。ここで、f_1はf_hより小さい。
【0029】
図3に戻り、少なくとも幾つかの例において、PWM生成器300は、加算器308をバイパスするように構成される一つ又は複数の構成要素(図示せず)を含む。例えば、幾つかの状況において、ランプ生成器304によって出力されるデータビットの特性評価、監視、又はその他の観察のために加算器308をバイパスすることが好ましいことがある。他の例において、加算器308をバイパスするように構成される構成要素により、PWM生成器300がDRSSモード又はARSSモードで動作するように選択的に構成され得る。例えば、一つの実装において、マルチプレクサが、レジスタ306の各出力端子と加算器308との間に結合される。例えば、各マルチプレクサが、レジスタ306によって出力されるそれぞれのデータビットを第1の入力端子において受信し、マルチプレクサの第2の入力端子が接地ノードに結合され、マルチプレクサの出力端子が加算器308に結合される。上述のように、マルチプレクサの各々の第2の入力を選択してDRSS信号の生成をバイパスし、代わりに周期的なアナログタイプの波形を生成することによって、PWM生成器300が構成可能であるように、各マルチプレクサが同じ選択信号を受信するように構成される。別の例において、マルチプレクサが、ランプ生成器304の各出力端子と発振器310との間に結合される。例えば、各マルチプレクサが、ランプ生成器304によって出力されるそれぞれのデータビットを第1の入力端子において受信し、マルチプレクサの第2の入力端子が、加算器308の対応する出力に結合され、マルチプレクサの出力端子が発振器310に結合される。上述のように、マルチプレクサの各々の第2の入力を選択してDRSS信号の生成をバイパスし、代わりに周期的なアナログタイプの波形を生成することによって、PWM生成器300が構成可能であるように、各マルチプレクサは同じ選択信号を受信するように構成される。
【0030】
電流モード電力コンバータなどの幾つかの例において、電力コンバータを制御する際に用いるためにコントローラによって生成される誤差信号を補償するために、勾配補償信号がコントローラによって生成される。このような例では、勾配補償信号は、発振器310によって受信されるものと同じ入力に基づいてトリミングされる(例えば、
図3のDRSS_BIT0、DRSS_BIT1、...DRSS_BITXであり、これらは
図2では集合的に信号COMPとして図示されている)。信号をトリミングすることは、少なくとも幾つかの例において、トリミングが基づく信号の値に基づいて、特定の時点においてその信号の値を改変及び/又は生成することを含む。発振器310によって受信されるものと同じ入力に従って傾斜補償信号をトリミングすることにより、電力コンバータの出力電圧のリップルが最小になる。電圧モード電力コンバータなどの他の例において、電圧ランプが代わりに、発振器310によって受信されるものと同じ入力に従ってトリミングされ、それにより、やはり電力コンバータの出力電圧のリップルが最小になる。
【0031】
また、少なくとも幾つかの例において、
図3には示されていないが、PWM生成器300は、第2のランプ生成器を含み、さらに第2のクロック分周器を含み得る。第2のランプ生成器及び/又は第2のクロック分周器は共に、クロック分周器302及びランプ生成器304と実質的に同様な方式で第2のランプ信号を生成する。第2のランプ生成器の出力は、幾つかの例において、ランプ生成器304の出力よりも高い周波数を有する。このような例では、第2のランプ生成器の出力は、レジスタ306の出力の代わりに(例えば、PR_BIT0及びPR_BIT1の代わりに)加算器308に提供される。
【0032】
ここで
図6に移ると、信号波形の例示の
図600が示されている。少なくとも幾つかの例において、
図600は、
図3の回路300に存在する複数の信号を例示している。従って、
図600を説明する際に、
図3の少なくとも幾つかの構成要素及び/又は信号を参照することがある。
図600は、信号605、信号610、及び信号615を図示する。少なくとも一つの例において、信号605は、
図3のランプ生成器304によって生成されるランプ信号であり、信号610は別のランプ信号であり、信号615は
図3の加算器308の出力である(例えば、加算器308が信号605及び信号610を入力として受信する場合、PRSS信号の代わりに信号610を受信する)。信号615はさらに、少なくとも幾つかの例において、発振器310の出力を示し、そのため、信号615は、発振器310の出力に少なくとも部分的に従って制御される電力コンバータについてのf_swを示す。
図600のy軸は周波数を表し、
図600のx軸は時間を表す。
図600に図示されるように、少なくとも幾つかの例において、信号605の帯域幅は、信号610の帯域幅よりも広く、信号615の帯域幅は、信号605と信号610を足し合わせた帯域幅にほぼ等しい。
【0033】
ここで
図7に移ると、例示の方法700のフローチャートが示されている。少なくとも幾つかの例において、方法700はPWM信号生成の方法である。幾つかの例において、PWM信号は周波数がクロックサイクルごとに変化する。例えば、少なくとも幾つかの実装において、PWM信号は、PWM信号の生成において複数のスペクトラム拡散方式又は変調を組み合わせるDRSSディザリングに従って生成される。方法700は、幾つかの例において、
図3のPWM生成器300などのPWM生成器において実装される。
【0034】
動作705において、クロック信号が受信される。少なくとも幾つかの例において、上述のように、クロック信号はCLKである。クロック信号は、幾つかの例において、発振器、PWM生成器、又はクロック信号を生成し得る別の回路の出力である。動作710において、クロック信号は分周されて分周されたクロック信号を形成する。少なくとも幾つかの例において、分周されたクロック信号は、上述のように、CLK_DIVである。クロック信号は、少なくとも幾つかの例において、線形フィードバックシフトレジスタの出力に従って分周される。他の例において、クロック信号は任意の他の適切な値で分周される。少なくとも幾つかの例において、この値は、分周されたクロック信号が、複数の連続するクロックサイクルの間同じ周波数に留まらないように、クロックサイクルごとに変動する。
【0035】
動作715において、第1の信号がディザリング方式に従って生成される。第1の信号は、例えば、アナログランプであるか、又はアナログランプを表す複数のデータビットである。他の例において、第1の信号は、上述のように、ARSS信号又は周期的アナログタイプの波形である。さらに他の例において、第1の信号はPRSS信号である。少なくとも一つの実装において、第1の信号はランプ生成器によって生成される。第1の信号は、動作710において生成された分周クロック信号に従って生成され、そのため、第1の信号は、クロックサイクルごとに周波数が変化する。
【0036】
動作720において、第2の信号がディザリング方式に従って生成される。第2の信号は、例えば、アナログランプであるか、又はアナログランプを表す複数のデータビットである。他の例において、第2の信号は、上述のように、ARSS信号又は周期的アナログタイプの波形である。さらに他の例において、第2の信号はPRSS信号である。幾つかの例において、動作720におけるディザリング方式は、動作715におけるディザリング方式と同じである。他の例において、動作720におけるディザリング方式は、動作715におけるディザリング方式と異なる。少なくとも一つの実装において、第2の信号は、例えば、一つ又は複数のビットがPRSS信号を形成するように、線形フィードバックシフトレジスタによって出力される一つ又は複数のビットに基づいて生成される。
【0037】
動作725において、第1の信号は、第2の信号によって又は第2の信号を用いて変調される。幾つかの例において、第1の信号は、第2の信号を第1の信号に加算することにより、第2の信号によって変調される。変調された第1の信号は、幾つかの例において、DRSS信号である。第1の信号を第2の信号で変調することは、少なくとも幾つかの例において、第1の信号のディザリング方式を第2の信号のディザリング方式と組み合わせることである。第1の信号のディザリング方式を第2の信号のディザリング方式と組み合わせると、幾つかの例において、単一のディザリング方式を用いるARSS、PRSS、又はアナログディザリングなどの代替のアプローチよりも、連続するクロックサイクル間のスイッチング周波数に大きな変動が生じる。
【0038】
動作730において、動作725において生成されたDRSS信号に従って発振器がトリミングされて、PWM信号が生成される。DRSS信号に従って発振器をトリミングすると、少なくとも幾つかの例において、発振器は、DRSS信号の値が変化するにつれて変化する周波数を有するPWM信号を生成する。周波数は、動作715において生成された第1の信号及び動作720において生成された第2の信号の両方に従って変化する。第1の信号及び第2の信号の両方に従ってPWM信号の周波数を変化させることにより、第1の信号が最適化される周波数範囲及び第2の信号が最適化される周波数範囲のPWM信号に従って制御されるスイッチング構成要素のEMI性能が向上され得る。例えば、第1の信号がアナログランプ信号である場合、第1の信号は低周波数におけるEMI性能を改善するために最適化される。同様に、第2の信号がPRSS信号である場合、第2の信号は高周波数におけるEMI性能を改善するために最適化される。そのため、動作725において第1の信号を第2の信号で変調し、動作730においてこの変調された信号に従ってPWM信号を生成することによって、PWM信号は、低周波数及び高周波数の両方でEMI性能を改善するために最適化される。
【0039】
動作735において、電力コンバータが、PWM信号に従って入力電圧から出力電圧を生成するように制御される。例えば、PWM信号は、電力コンバータの少なくとも1つのパワートランジスタのゲート端子を駆動(又はゲートドライバを駆動してゲート端子を駆動)してパワートランジスタをオン/オフし、パワートランジスタを介する電流フローをイネーブル又はイナクティブしてVOUTが生成される。
【0040】
ここで
図8に移ると、例示の
疑似コードの表800が示されている。少なくとも幾つかの例において、本開示は、ソフトウェアを介して少なくとも部分的に実装可能である。例えば、或るタスクを行なうようにプロセッサをプログラムすることによって、
図7の方法700の少なくとも幾つかの動作が実施され得る。表800は、このようなプログラミングを実施するための擬似コードの一例を図示する。しかし、表800の擬似コードは、本開示の機能を実施するようにプロセッサをプログラムするための一つのアプローチにすぎず、同じ又は類似の結果を達成する他のアプローチが本開示の範囲に含まれる。
【0041】
表800に図示するように、変数clk_frequency、clk_divided_frequency、clk_divided_frequency_2、及び疑似ランダムが定義される。乱数(rand)が生成される。その後、第1のランプ信号(ramp)が生成され、第2のランプ信号(ramp_2)が生成される。その後、ramp及びrandを追加するか(これは、例えば、randに従ってrampを変調するためであり、幾つかの例においてrandはPRSS信号である)、又はramp及びramp_2を追加することによって、DRSSが生成される。DRSSに基づいて、クロック信号の周波数が改変される。
【0042】
前述の説明において、「含む」という用語は非制限様式で用いられており、そのため、「...を含むがこれに限定されない」を意味すると解釈すべきである。「結合する」という用語は、明細書全体を通して用いられる。この用語は、本開示の説明と一貫した機能的関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を包含し得る。例えば、デバイスAが或る動作を行なうためにデバイスBを制御するための信号を生成する場合、第1の例においてデバイスAがデバイスBに結合され、第2の例において、介在する構成要素Cを介してデバイスAがデバイスBに結合され、これは、介在する構成要素Cが、デバイスAによって生成される制御信号を介してデバイスBがデバイスAによって制御されるように、デバイスAとデバイスBとの間の機能的関係を実質的に変更させない場合である。タスク又は機能を実施する「ように構成される」デバイスは、製造時に製造業者によってその機能を実施するように構成(例えば、プログラム及び/又はハードワイヤード)され得、及び/又は、製造後にユーザによってその機能及び/又は他の付加的又は代替の機能を実施するように構成可能(又は再構成可能)とされ得る。こういった構成は、デバイスのファームウェア及び/又はソフトウェアプログラミング、ハードウェア構成要素の構築及び/又はレイアウト、並びにデバイスの相互接続、或いはこれらの組み合わせにより成され得る。また、或る構成要素を含むとされている回路又はデバイスは、代わりに、これらの構成要素に結合して、記載された回路要素又はデバイスを形成するように構成され得る。例えば、一つ又は複数の半導体要素(トランジスタなど)、一つ又は複数の受動要素(抵抗、コンデンサ、及び/又はインダクタなど)、及び/又は一つ又は複数の供給源(電圧及び/又は電流源など)を含むと説明される構造は、代わりに、単一の物理デバイス(例えば、半導体ダイ及び/又は集積回路(IC)パッケージ)内の半導体要素のみを含み得、また、製造時又は製造後のいずれかにおいて、例えば、エンドユーザー及び/又は第三者によって、受動要素及び/又は供給源の少なくとも幾つかを結合して、記載された構造を形成するように構成し得る。
【0043】
本明細書において、或る構成要素が、特定のプロセス技術(例えば、FET、金属酸化物半導体FET(MOSFET)、n型、p型など)のものであると説明されるが、これらの構成要素は、他のプロセス技術(例えば、FET及び/又はMOSFETをBJTに置き換える、n型をp型に置き換える、又はその逆など)の構成要素と交換され得、置き換えられた構成要素を含む回路を再構成することにより、構成要素を置き換える前に利用可能であった機能と少なくとも部分的に類似する所望の機能が提供される。抵抗器として図示される構成要素は、特に明記されない限り、概して、図示の抵抗器によって表されるインピーダンスの量を提供するために直列及び/又は並列に結合される、任意の一つ又は複数の要素を表す。また、前述の説明における「接地電位」という句の使用は、シャーシ接地、アース接地、浮遊接地、仮想接地、デジタル接地、共通接地、及び/又は本開示の教示に適用可能な又は適切な、任意の他の形態の接地接続を含むことが意図されている。特に明記されていない限り、或る値の前の「約」、「ほぼ」、又は「実質的に」は、記載される値の±10パーセントを意味する。
【0044】
上述の説明は、本開示の原理及び様々な例を例示することを意図している。上述の開示が完全に理解されれば、多くの変形及び修正が当業者に明らかになるであろう。本開示は、すべてのこのような変形及び改変を包含すると解釈されることを意図している。