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特許7557498原子層堆積(ALD)による粒子コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】原子層堆積(ALD)による粒子コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/458 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
C23C16/458
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022067258
(22)【出願日】2022-04-15
(62)【分割の表示】P 2019512642の分割
【原出願日】2016-09-16
(65)【公開番号】P2022095904
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2022-04-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】プダス マルコ
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020418(JP,A)
【文献】特表2015-523199(JP,A)
【文献】特開平07-192683(JP,A)
【文献】特開平07-026379(JP,A)
【文献】実開平02-115565(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室内に基板容器を有する堆積反応炉を提供することと;
前記反応室の外側に、隔離された振動発生源を提供することと;
前記隔離された振動発生源から、前記反応室に接続するフォアライン内に位置する導波管要素経由で、前記基板容器に超音波振動を伝達することと;
前記基板容器を通過する上から下への前駆体の流れを用いた自己飽和表面反応によって、前記基板容器内の粒子材料をコーティングすることと;
前記粒子材料をコーティングしながら、前記隔離された振動発生源によって前記基板容器内で前記粒子材料の運動を引き起こすことと;
を含む堆積方法であって、
前記フォアラインは前記反応室の壁又は床の開口部に配される、
方法。
【請求項2】
反応室壁及び/又は前記フォアラインに振動が生じることを防止することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上から下への前駆体の流れは、前記基板容器の容積全体にわたって前記基板容器を通過する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
無線誘導を介して前記隔離された振動発生源から振動を誘導することによって前記粒子材料に運動を引き起こすことを含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記導波管要素に支援された誘導を通じて、前記隔離された振動発生源から振動を誘導することによって、前記粒子材料に運動を引き起こすことを含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記隔離された振動発生源から振動を誘導し、該振動を、前記導波管要素を通じて前記粒子材料に直接伝達することを含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記振動は、前記導波管要素が前記基板容器に機械的に接触することなしに、前記導波管要素から前記粒子材料に直接伝達される、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
基板容器を収容する反応室と;
前記反応室の外側に配される、隔離された振動発生源と;
を備え、
前記隔離された振動発生源から、前記反応室に接続するフォアライン内に位置する導波管要素経由で、前記基板容器に超音波振動を伝達するように構成され、また、
前記基板容器を通過する上から下への前駆体の流れを用いた自己飽和表面反応によって、前記基板容器内の粒子材料をコーティングし、前記粒子材料をコーティングしながら、前記隔離された振動発生源によって前記基板容器内で前記粒子材料の運動を引き起こすように構成され、
前記フォアラインは前記反応室の壁又は床の開口部に設置される、
堆積反応炉。
【請求項9】
反応室壁及び/又は前記フォアラインに振動が生じることを防止するように構成される、請求項に記載の堆積反応炉。
【請求項10】
前記基板容器によって定められる容積は、前記上から下への前駆体の流れに対する横断方向構造を有していない、請求項からのいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項11】
前記振動発生源を前記反応室から隔離する弾性的なまたは非接触型の隔離を含む、請求項から10のいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項12】
前記反応室の外側の前記隔離された振動発生源は前記フォアラインに隣接して位置する、請求項から11のいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項13】
前記反応室は真空室に囲まれている、請求項から12のいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項14】
前記基板容器は前記反応室の壁から弾性的に隔離されている、請求項から13のいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項15】
前記振動発生源は、前記反応室に接続される前記フォアラインから弾性的に隔離されている、請求項から14のいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項16】
前記反応室は、前記基板容器の上に位置する上部と、前記基板容器の下部に位置する底部とを有し、
前記フォアラインは排気チャネルを形成し、前記排気チャネルは、前記反応室の底部の境界を形成する反応室壁から始まるパイプラインであり、前記反応室の前記底部からガスを排出すると共に、前記導波管要素を収容するように構成される、請求項から15のいずれかに記載の堆積反応炉。
【請求項17】
少なくとも前記導波管要素の終端部までは閉じた排気通路として、前記フォアラインは前記反応室の壁又は床から延伸する、請求項から16のいずれかに記載の堆積反応炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には堆積反応炉に関する。より具体的には、本発明は、材料が順次自己飽和表面反応によって表面に堆積される堆積反応炉に関するが、これに限定されない。
【発明の背景】
【0002】
本セクションは、現況技術を代表する本明細書に記載の任意の技術を含めない、有用な背景情報を示す。
【0003】
原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy:ALE)法は、1970年代初頭にツオモ・サントラ(Tuomo Suntola)博士によって発明された。この方法の別の総称は原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)であり、今日ではALEの代わりに用いられている。ALDは、少なくとも1枚の基板に少なくとも2つの反応性前駆体種を順次導入することによる、特殊な化学的堆積法である。
【0004】
ALDによって成長させた薄膜は緻密でピンホールがなく、かつ厚さが均一である。例えば、250~300℃でTMAとも称されるトリメチルアルミニウム(CHAlと水から熱ALDにより酸化アルミニウムを成長させた実験において、基板ウェハ全体における不均一性はわずか1%程度であった。
【0005】
ALD技術の興味深い応用の1つは、小粒子、例えば、粉末材料のコーティングである。例えば、薄いコーティングを粒子に堆積して、そのバルク特性を維持しながらこれら粒子の表面特性を変えることが望ましい場合がある。
【0006】
US2009/155590A1は、原子層堆積により粒子を被覆する方法を開示している。前記方法は、前記粒子を第1の反応物質の単一層により実質的に完全に被覆するために、前記第1の反応物質を含む第1の反応性ガスを用いて流動床反応炉内で前記粒子を流動化するステップを含む。
【0007】
WO2013/171360A1は、カートリッジをクイックカップリング法によってALD反応炉内に収容し、流動床を堆積のためにカートリッジ内に形成する方法を開示している。
【摘要】
【0008】
本発明の第1の例示的態様によれば、堆積方法が提供される。この堆積方法は、
反応室内に基板容器を有する堆積反応炉を提供することと、
前記反応室の外側に、または前記反応室内で隔離されている、隔離された振動発生源を提供することと、
前記基板容器を通過する上から下への前駆体の流れを用いた自己飽和表面反応によって、前記基板容器内の粒子材料をコーティングすることと、
前記粒子材料をコーティングしながら、前記隔離された振動発生源によって前記基板容器内で粒子材料の運動を引き起こすことと、
を含む。
【0009】
特定の例示的実施形態では、運動は反応室の外側から、または反応室の反応空間の外側から引き起こされる。特定の例示的実施形態では、振動は、反応炉本体に伝達されることなく反応容器に伝達される。一実施形態における振動発生源は、反応炉本体から隔離されている。一実施形態における振動発生源は、反応炉本体から弾性的に隔離されているか、または非接触手段によって隔離されている(例えば、物理的に分離されているか、または距離を置いて分離されている)。一実施形態における基板容器は、反応炉本体から弾性的に隔離されている。一実施形態における反応炉本体は、反応室壁と、フォアラインとを備える。
【0010】
使用される技術を原子層堆積(ALD)として定義する用語「自己飽和表面反応」に関して、本文脈におけるALDは、MLD(Molecular Layer Deposition)(分子層堆積)、PEALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition)(プラズマエンハンスト原子層堆積)および光エンハンスト原子層堆積(フラッシュエンハンストALDとしても知られる)などのALDのサブタイプも含むことを理解されたい。
【0011】
用語「振動」は、さまざまな振動運動も広く網羅すると解釈されるべきである。
【0012】
特定の例示的な実施形態では、前記上から下への前駆体の流れは、前記基板容器の容積全体にわたって基板容器を通過する。すると、容器を通る流路は制限されていないが、化学物質の流れは、基板容器によって定められる内部全体または容積全体にわたって下方に向かい、均一性を改善する。
【0013】
特定の例示的実施形態では、前記方法は、その容積が前記上から下への前駆体の流れに対する横断方向構造を有していない基板容器を使用することを含む。特定の例示的実施形態では、基板容器は回転しない。
【0014】
特定の例示的実施形態では、粒子材料以外の任意の経路を介する反応室のフォアラインへの前駆体の流れが防止され、反応炉内の化学物質の流れの効率および/または圧力バランスが改善される。特定の例示的実施形態では、これは封止によって実施される。特定の例示的実施形態では、シールが、基板容器と反応室壁との間、または基板容器を保持する基板トレイと反応室壁との間に位置する。シールは、Oリングシールなどの弾性シールであってもよい。他の特定の例示的実施形態では、基板容器またはトレイは、間にシールまたは他の弾性隔離要素が存在することなく、反応室壁の滑らかな平面または滑らかな縁に載っている。
【0015】
特定の例示的実施形態では、隔離された振動発生源には、反応室壁からの弾性的なまたは非接触型の隔離が設けられる。特定の例示的な実施形態では、この振動は基板容器、すなわち反応室壁とは別個のコンテナに伝達される。
【0016】
特定の例示的実施形態では、前記方法は、前記振動発生源から導波管を介して前記粒子材料に前記振動を伝達することを含む。
【0017】
特定の例示的実施形態では、前記方法は、無線誘導を介して前記振動発生源から振動を誘導することによって前記粒子材料に運動を引き起こすことを含む。特定の例示的実施形態では、振動は基板容器を介して誘導される。特定の例示的実施形態では、振動は導波管を使った誘導によって誘導される。
【0018】
特定の例示的実施形態では、前記基板容器は、前記反応室壁から弾性的に隔離されている。
【0019】
特定の例示的実施形態では、超音波振動を使用して前記粒子材料に運動を引き起こす。したがって、特定の例示的実施形態では、前記振動発生源は超音波振動を発生させる。特定の例示的実施形態では、超音波振動は超音波振動発生源から前記粒子材料に伝達される。
【0020】
特定の例示的実施形態では、前記方法は導波管を介して前記基板容器に振動を伝達することを含む。特定の例示的実施形態では、振動エネルギーは、それ自体の力によって前記振動発生源から前記粒子材料に伝達される。
【0021】
特定の例示的実施形態では、前記方法は、
前記反応室のフォアラインに配置された導波管要素を介して、前記振動発生源から前記反応容器へ超音波振動を伝達すること
を含む。
【0022】
特定の例示的実施形態では、前記振動発生源は、前記反応室のフォアラインから弾性的に隔離されている。特定の例示的実施形態では、振動発生源は、弾性要素によってフォアラインから物理的に分離されている。
【0023】
特定の例示的実施形態では、前記反応室内の隔離された振動発生源は、真空状態内に配置される。特定の例示的実施形態では、前記反応室内の隔離された前記振動発生源は、(前駆体蒸気の垂直流が通過する)反応空間の外側であるが、前記反応室壁を境界とする空間全体の内側に配置される。特定の例示的実施形態では、この振動発生源は、前記反応室の主容積から分離されている。振動発生源は、限られた空間、または前記反応室の主容積から分離された別室に配置されてもよい。この限られた空間は、前記反応室の残りの部分から狭い通路によって分離されていてもよい。限られた空間内でのALDプロセス中の温度および/または圧力などの処理条件は、前記反応室の残りの部分内の条件とは異なっていてもよい。例示的実施形態では、限られた空間内の温度は前記反応室の残りの部分内の温度と比較して低くすることによって、より温度感受性の高い振動発生源の使用を可能にする。例示的実施形態では、限られた空間内の圧力は前記反応室の残りの部分内の圧力と比較して高くすることによって、前駆体蒸気(または反応物質)が振動発生源を収容する限られた空間に入るのを防ぐ。一実施形態では、限られた空間に流入し、そこから反応室の残りの部分(または反応空間)に向かうパージガス流が設けられ、前駆体蒸気(または反応物質)が限られた空間に入るのを防ぐ。
【0024】
特定の例示的実施形態では、前記方法は、
処理条件によって、(前記反応室内で隔離されている)前記振動発生源を前記反応室の残りの部分から隔離すること
を含む。
【0025】
特定の例示的実施形態では、前記反応室内で隔離されている前記振動発生源は、前記反応室の主容積(または反応空間)から分離されている。
【0026】
開示される方法の多くの用途の一例は、感湿性粒子用の防湿コーティングを堆積することである。
【0027】
本発明の第2の例示的な態様によれば、堆積反応炉が提供される。この堆積反応炉は、
基板容器を収容する反応室と、
前記反応室の外側に、または前記反応室内で隔離されている、隔離された振動発生源と、
を備える。前記堆積反応炉は、前記基板容器を通過する上から下への前駆体の流れを用いた自己飽和表面反応によって、前記基板容器内の粒子材料をコーティングし、前記粒子材料をコーティングしながら、前記隔離された振動発生源によって前記基板容器内で前記粒子材料の運動を引き起こすように構成される。
【0028】
前記前記反応炉(ALD反応炉)は非流動床反応炉であってもよい。使用される化学物質(前駆体蒸気など)は単に粒子材料を通って下方に移動できる。本発明の実施形態により、透過性基板容器を通過する上下方向に均一な化学物質流を有するクロスフロー反応炉が可能となる。特定の例示的実施形態では、基板容器の底部を透過性とすることにより、前駆体の蒸気またはガスを通過させるが、粒子材料は通過させない。特定の例示的実施形態では、基板容器は透過性蓋を有するため、前駆体の蒸気またはガスを通過させるが、粒子材料は通過させない。特定の例示的実施形態では、前記反応室は円形断面を有する。
【0029】
特定の例示的実施形態では、前記基板容器は、前記基板容器の容積全体にわたって前記上から下への前駆体の流れを通過させるように構成される。
【0030】
特定の例示的実施形態では、前記基板容器によって定められる容積は、前記上から下への前駆体の流れに対する横断方向構造を有していない。
【0031】
特定の例示的実施形態では、前記基板容器は円形断面を有する。
【0032】
特定の例示的実施形態では、前記反応炉は、前記振動発生源を前記反応室から隔離する弾性的なまたは非接触型の隔離を含む。
【0033】
特定の例示的実施形態では、前記堆積反応炉は、
前記振動発生源から前記粒子材料に振動を伝達するように構成された導波管要素を備える。特定の例示的実施形態では、導波管要素は、前記反応室のフォアラインに配置される。
【0034】
特定の例示的実施形態では、前記振動発生源は、無線誘導を介して振動を誘導することによって前記粒子材料に運動を引き起こすように構成される。
【0035】
特定の例示的実施形態では、前記振動発生源は超音波振動を発生させるように構成されている。
【0036】
特定の例示的実施形態では、前記反応炉は、前記反応室のフォアラインに配置された導波管要素を介して、前記振動発生源から前記反応容器へ超音波振動を伝達するように構成される。
【0037】
特定の例示的実施形態では、前記振動発生源は、前記反応室のフォアラインから弾性的に隔離されている。特定の例示的実施形態では、前記堆積反応炉は、望ましくない振動を防ぐために前記振動発生源を隔離するように構成された第1の弾性隔離要素を備える。
【0038】
特定の例示的実施形態では、前記基板容器は、前記反応室壁から弾性的に隔離されている。特定の例示的実施形態では、前記堆積反応炉は、望ましくない振動を防ぐために前記基板容器を隔離するように構成された第2の弾性隔離要素または弾性シールを備える。
【0039】
特定の例示的実施形態では、前記反応炉は、上に前記基板容器を保持するように構成された基板トレイを備える。特定の例示的実施形態では、発生した振動は、前記基板トレイを振動させ、それを通して上に置かれた前記基板容器内の粒子材料を振動させるために前記基板トレイに伝達される。特定の例示的実施形態では、前記基板トレイを透過性とすることにより、前駆体の蒸気またはガスを通過させるが、粒子材料は通過させない。特定の例示的実施形態では、ガスの上から下への垂直流は、前記基板容器および基板トレイの両方を通って流れ続けることが可能になる。
【0040】
特定の例示的実施形態では、前記反応室内で隔離されている前記振動発生源は、前記反応室の主容積から分離されている。
【0041】
本発明の第3の例示的態様によれば、堆積方法が提供される。この堆積方法は、
基板容器内の粒子材料のサンプルを反応室内に提供することと、
振動器要素から導波管要素を介して前記サンプルに振動を伝達することによって前記粒子材料を振動させることと、
自己飽和表面反応を用いて前記粒子材料をコーティングすることと、
を含む。
【0042】
本発明の第4の例示的態様によれば、堆積反応炉が提供される。この堆積反応炉は、
反応室と、
粒子材料のサンプルを保持するように構成された基板容器と、
超音波振動を提供するように構成された超音波振動器要素と、
前記粒子材料を振動させるために、前記超音波振動器要素から前記サンプルに超音波振動を伝達するように構成された導波管要素と、
を備える。
【0043】
ここまで、本発明を限定しないさまざまな例示的態様および実施形態を例示してきた。上記の実施形態は、本発明の実施に利用されうる選択された態様またはステップを説明するためにのみ使用される。いくつかの実施形態は、本発明の特定の例示的態様への言及によってのみ提示されている場合もある。対応する実施形態は他の例示的態様にも適用できることを理解されるべきである。これら実施形態は、任意かつ適切に組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
ここで添付の図面を参照して、単なる例として本発明を説明する。
図1図1は、本発明の例示的実施形態による堆積反応炉の概略的原理図を示す。
図2図2は、本発明の別の例示的実施形態による堆積反応炉の概略的原理図を示す。
図3図3は、図1の堆積反応炉のさらなる詳細を示す。
図4図4は、本発明の例示的実施形態による堆積反応炉の振動構成の概略的原理図を示す。
図5図5は、本発明の例示的実施形態による粒子をコーティングする方法の原則的なフローチャートを示す。
図6図6は、本発明の例示的実施形態による真空状態において振動発生源を有する堆積反応炉の概略的原理図を示す。
図7図7は、本発明の別の例示的実施形態による真空状態において振動発生源を有する堆積反応炉の概略的原理図を示す。
【詳細説明】
【0045】
以下の説明においては、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)技術を例として用いる。ALD成長メカニズムの基本は、当業者には公知である。本特許出願の導入部分に述べられているように、ALDは、少なくとも1枚の基板に少なくとも2つの反応性前駆体種を順次導入することによる、特殊な化学的堆積法である。しかしながら、これらの反応性前駆体のうちの1つは、光エンハンストALDまたはPEALDを用いた場合にエネルギーで置き換えることができるため、単一前駆体ALDプロセスにつながることが理解されるべきである。基板は反応空間内に配置されている。反応空間は一般には加熱される。ALDの基本的な成長メカニズムは、化学的吸着(化学吸着)と物理的吸着(物理吸着)の間の結合強度の差に依存するものである。ALDは、堆積プロセス中、化学吸着を利用し、物理吸着を排除する。化学吸着の間、固相表面の原子と気相から到達する分子との間に強い化学結合が形成される。物理吸着による結合は、ファンデルワールス力のみが関与するためはるかに弱い。局部温度が分子の凝縮温度を超えると、物理吸着結合は熱エネルギーによって容易に破壊される。
【0046】
ALD反応炉の反応空間は、薄膜またはコーティングの堆積に使用される各ALD前駆体に交互に、かつ順次に暴露することができるあらゆる、一般には加熱された表面を含む。基本的なALD堆積サイクルは、連続する4つのステップ、すなわち、パルスA、パージA、パルスB、およびパージBで構成される。パルスAは一般に金属前駆体蒸気で構成され、パルスBは非金属前駆体蒸気、特に窒素または酸素前駆体蒸気で構成される。パージAおよびパージB期間中にガス状反応副生成物と残留反応物分子とを反応空間からパージするために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスと真空ポンプとが用いられる。1つの堆積シーケンスは、少なくとも1つの堆積サイクルを含む。堆積シーケンスによって所望の厚さの薄膜または被膜が生成されるまで、堆積サイクルが繰り返される。
【0047】
一般的なALDプロセスでは、前駆体種は、加熱された表面の反応部位への化学結合を化学吸着によって形成する。一般に、1つの前駆体パルス期間中に固体材料の単分子層のみが各表面に形成されるように、条件が構成される。したがって、成長プロセスは自己終結的または飽和的である。例えば、第1の前駆体はリガンドを含むことができる。リガンドは吸着種に付着したままでいることによって表面を飽和させ、さらなる化学吸着を防止する。反応空間の温度は、前駆体分子種が基本的にそのままの状態で基板上に化学吸着されるように、使用される前駆体の凝縮温度より高く、熱分解温度より低く維持される。本質的にそのままの状態であるとは、前駆体分子種が表面に化学吸着するときに揮発性リガンドが前駆体分子から剥がれる可能性があることを意味する。表面は、第1の種類の反応部位、すなわち第1の前駆体分子の吸着種で本質的に飽和する。この化学吸着ステップの次に、一般に、第1のパージステップ(パージA)が続く。第1のパージステップ(パージA)では、第1の前駆体の余剰分と発生しうる反応副生成物とが反応空間から除去される。次に、第2の前駆体蒸気が反応空間に導入される。第2の前駆体分子は、一般に、第1の前駆体分子の吸着種と反応し、これにより所望の薄膜材料またはコーティングが形成される。この成長は、吸着された第1の前駆体の全量が消費され、表面が第2の種類の反応部位で本質的に飽和すると終了する。次に、第2の前駆体蒸気の余剰分と発生しうる反応副生成物蒸気とが第2のパージステップ(パージB)によって除去される。その後、このサイクルは、膜またはコーティングが所望の厚さに成長するまで繰り返される。堆積サイクルはより複雑であってもよい。例えば、サイクルは、パージステップによって分かれた3つ以上の反応物質蒸気パルスを含んでもよい。これらの堆積サイクルはすべて、論理演算装置またはマイクロプロセッサによって制御される定期堆積シーケンスを形成する。
【0048】
以下に記載される特定の例示的実施形態では、薄いコンフォーマルコーティングがさまざまな粒子状または粉末状の材料の表面上に提供される。粒径は特定の材料および特定の用途に依存する。適切な粒径は、一般に、ナノメートル範囲から数百マイクロメートルの範囲までの範囲である。さらに、本プロセスは粒子の大きさまたは形状を制限しないため、コーティングされる粒子はより大きいサイズであってもよい。したがって、特定の実施形態例では、数ミリメートルの範囲の粒子をコーティングすることができる。多種多様な粒子材料を使用することができる。ベース粒子およびコーティングの組成は、一般に、粒子の表面特性が特定の用途に望ましい方法で改質されるように一緒に選択される。ベース粒子は、コーティングを形成するALD反応シーケンスに関与するいくつかの官能基を表面上に有することが好ましく、またはALDプロセスステップは反応部位を形成することができる。実質的にすべての粒子の表面の実質的にすべての面がコーティングされるような方法での粒子材料のコーティングは、粒子の凝集を防止し、表面のすべての面を自己飽和表面反応のために前駆体に暴露する方法を提供することによって可能になる。
【0049】
図1は、本発明の例示的実施形態による堆積反応炉100の概略的原理図を示す。例示的実施形態では、堆積反応炉は原子層堆積(ALD)反応炉である。反応炉100は反応室10を備える。一実施形態では、反応炉は反応室10を収容する別室を備えるが、図1の概略図には単一室のみ示されている。反応炉100は、反応室10の内部に、コーティングされる基板またはサンプルを収容する基板容器30を上に保持するように構成された基板またはサンプルトレイ20をさらに備える。一実施形態では、基板容器30は、自己飽和表面反応によってコーティングされる粒子材料、例えば粉末を収容する。
【0050】
反応炉100は、反応室10の内部に、基板容器30の上方にある1つまたは複数のガス流入口をさらに備える。一実施形態では、キャリアおよび/または反応性ガス(前駆体ガス)は上から下への流れとして粒子材料を通過する。
【0051】
反応炉100は、反応室10からガス、例えば前駆体ガスを除去するように構成されたフォアライン(排気路)40をさらに備える。一実施形態では、図1に示されるように、フォアライン40は反応室10の底部に位置する。しかしながら、さらなる実施形態では、フォアラインは、異なるように、例えば反応室10の側壁を通って位置していてもよい。トレイ20は、ガスが基板容器30からフォアライン40へとトレイ20を通って通過できるように構成される。
【0052】
図1は、振動を提供するように構成された、超音波発生器などの振動器要素70をさらに示す。一実施形態では、振動器要素70は、基板トレイ20を振動させ、それを通して上に置かれた基板容器30内の粒子材料を振動させるために、発生した振動(例えば超音波振動)を基板トレイ20に伝達するように構成された導波管要素50に接続される。しかしながら、代替的実施形態では、導波管要素50は基板容器30に直接接続されている(基板トレイ20は省略されてもよい)。さらに別の代替的実施形態では、導波管要素50は、最初に容器30への振動を誘導することなく、粒子材料と接触するだけである。粒子材料の振動は、材料の凝集を防ぎ、反応性ガスが材料表面全体に達し、したがって、前駆体ガスが特定の材料全体に浸透することを可能にすることによって、粒子の全面に均一なコーティングを提供することを可能にする。一実施形態では、振動器要素70は、例えば圧電式超音波発生器要素を含む。
【0053】
一実施形態では、導波管要素50は反応室10のフォアライン40内に配置され、振動器要素70は、フォアラインの隣に配置され、かつ振動がフォアライン40に誘導され、それを通して反応炉100のさらなる部分、例えば、反応室10の壁に誘導されるのを防ぐように構成された第1の弾性隔離要素60を介してフォアラインに取り付けられる。さらなる実施形態では、導波管は、異なる経路を介して、例えば、反応室の上部を介して基板トレイ20および/または基板容器30に接続され、かつ特に、エネルギー損失を引き起こすであろう望ましくない振動を防止するために、上記と同様にして隔離される。
【0054】
さらに、基板トレイ20および/または基板容器30は、反応室10への固定された接続を欠くことが好ましい。したがって、一実施形態では、基板容器30は隔離要素によって反応室10の壁から隔離される。望ましくない振動が基板トレイ20(もしあれば)および/または基板容器30から反応室10の壁に伝播するのを防止するために、Oリングのような、例えば第2の弾性隔離要素80があってもよい。隔離要素80は、反応容器30と反応室10の壁との間の位置に配置されている。一実施例では、図1に示すように、隔離要素は、トレイ20と反応室10の壁のカラーとの間に配置される。
【0055】
図2は、本発明の別の例示的実施形態による堆積反応炉の概略的原理図を示す。本実施形態では、反応室10および基板容器30の基本構造は、図1に関連して説明したものに対応する。振動は、非接触手段によって隔離された発生源71から基板容器30に伝達される。これは、一実施形態では、磁場もしくは電磁場などの発生源71によって生成された外部場(または信号)によって、または電磁誘導によって、基板容器30を直接作動させることによって実現される。隔離発生源71は反応室10の外側に配置される。一実施形態における基板容器30は、発生源71によって生成されたエネルギー伝達作動信号を受信するように構成された適合特徴を有する。例えば、一実施形態における基板容器30は、エネルギー伝達作動信号に適合する材料で作られているか、または基板容器30は、エネルギーを受け取る1つまたは複数の埋込み型レシーバを有していてもよい。(外部)信号(またはエネルギー)の受信は、図1の基板トレイ20(図2には示されていない)と同様に、基板容器30に取り付けられている部分によって代替的に行われてもよい。基板容器30および/または基板トレイ20は、図1に関連して記載したのと同様に、隔離要素によって反応室10の壁から隔離することができる。
【0056】
図3は、サンプル送達管90を追加した図1と同様のアセンブリを示す。反応炉は、反応室10の外側から基板容器30内に延びるサンプル送達管90または複数の管を備えることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の管90により、堆積前に粒子材料を注入し、堆積後に粒子材料を取り出すことを可能にする。一実施形態における1つまたは複数の管90は、例えば、コーティングプロセスを真空中で、かつ吸引を利用して粒子材料を除去して行えるように、弁および/またはガス流コントローラ91を有する。一実施形態では、この除去は、フォアライン40の方向から基板容器30の下に圧力を配置することによって(例えば不活性ガス流を適用することによって)堆積後に反応室が周囲圧力にあるときに準備される。この圧力は管90の圧力よりも高い。結果として生じる逆流により、コーティングされた粒子材料が管90を介して反応容器30から押し出される。
【0057】
図3は、サンプル送達管90が基板容器30の底部まで延びていることを示しているが、他の実施形態では、管90の配置は異なっていてもよい。例えば、管90は容器30の上縁部または側部までしか延びていなくてもよい。
【0058】
一実施形態では、サンプル送達管90は、流体または重力を利用して粒子材料を反応室10または基板容器30内に送達する。コーティングされる材料が基板容器30への流体の流れと共に運ばれる場合、管90は閉鎖手段91を有する流体流路として使用できる。一実施形態では、これらの手段はプロセス制御部に連結され、例えば、バッチプロセスを可能にする。重力が使用される場合、反応炉は動くように構成されてもよい。管90は、それに従って閉鎖手段91によって閉じ、サンプル流を遮断するように構成することができる。別の実施形態では、装填、堆積および取り出しプロセスは、見かけ上は連続的でありうる。
【0059】
図4は、本発明の例示的実施形態による堆積反応炉の振動構成の概略的原理図を示す。図1も参照して説明したように、振動構成は、基板トレイ20および/または基板容器30に接続された振動器要素70および導波管要素50を備える。図4は、三次元で生成された振動の方向をさらに示す。振動が発生する次元数は実施態様に依存する。いくつかの実施形態では、振動は二次元でのみ発生し、いくつかの実施形態では一次元でのみ発生する。
【0060】
基板容器30は、反応性ガスが上から下へと、それを通して排気路(フォアライン40、図1図3)へと流れることができるように構成される。基板容器30はプレートまたは開いたカップとして成形されてもよい。一実施形態では、その上に入口フィルタまたはグリッド42がある。基板容器30の底部を透過性とすることにより、(コーティングされる粒子材料ではなく)ガスが通過可能である。したがって、容器の底部はフィルタを備えることができる(図4には示されていない)。また、基板トレイ20は透過性であってもよい(ガスが通過する粒子フィルタを備える)。
【0061】
さらなる実施形態では、粒子材料への振動を受けて伝達する部分(例えば、容器30の表面または縁部)に対して粒子材料がある最大距離を有するように、基板容器30が配置される。一実施形態では、これは、以下のうちの1つまたは複数により、またはそれらの組み合わせで構成される。

- 粒子材料層は、フィルタ(すなわち基板容器30の底部)上に限られた厚さを有する
- 容器30は、その底部または縁部、例えば層板またはワイヤに取り付けられた要素41(図4)を有し、これにより粒子材料に振動を伝える
- 容器30は、複数のサブ容器を備え、サブ容器壁は振動を伝える。
【0062】
前述の実施例のように、導波管50が反応容器30と機械的に接触することなく、振動を導波管50から直接基板容器30に、またはさらには導波管50から直接要素41に伝えられることを理解されたい。さらに、要素41は、非接触手段を用いて振動発生源71によって作動されうることを理解されたい。
【0063】
前述の部分42は、一実施形態では多孔質蓋またはフィルタ蓋である。部分42は、基板容器30の一部を形成しても、または基板容器30上の一部であってもよい。一実施形態における蓋は、粒子の粉塵が出るのを防止する。これにより、容器30に入ってくる化学物質はさらに拡散される。
【0064】
以下では、特定のさらなる実施形態が開示される。
【0065】
一実施形態では、基板トレイ20(図1図2および図4)は、フォアライン40に向かって基板容器30上に(基板容器30下の圧力よりも)高い圧力を発生させるように、反応室10の縁部、または反応室壁の外形に載るように構成される。
【0066】
さらなる実施形態では、反応室10には、粒子材料に物理的に接触することによって(例えば、電気式熱電対を用いて)、または光学的手段(図示せず)によって、粒子材料の温度を測定するように構成された熱センサまたは複数のセンサが取り付けられている。
【0067】
一実施形態では、トレイ20、容器30または要素41からの機械的な力が反応室10(または反応室10の壁)に効果的に伝達されないように、反応室10または反応室10に設置された部分に置かれるように基板容器30および/または基板トレイ20は構成される。トレイ20または容器30は、例えば、反応室10の一部として配置された滑らかな平面または滑らかな縁部に載っていてもよい。弾性隔離要素80は省略することができる。
【0068】
一実施形態では、振動器要素70、71は、反応室10の外側であるが、真空状態の内側、例えば周囲の真空室の内側に配置される。他の実施形態では、使用される振動器要素が真空状態に耐えられない場合、振動器要素は真空状態の外側、例えば反応炉100の真空部分の物理的境界の外側に配置される。さらなる実施形態では、振動器要素70は、部分的にまたは完全に反応炉100の真空部分の内側に配置することができる。さらなる実施形態では、振動器要素は導波管なしで部分20および/または30に直接取り付けられる。代替的実施形態では、部分20と50とを組み合わせて1つの部分を形成するか、部分20と30とを組み合わせて1つの部分を形成するか、または部分20と30と50とを組み合わせて1つの部分を形成する。
【0069】
図1図4には示されていないが、堆積反応炉100は、原子層堆積反応炉に共通のさらなる要素を備える。一実施形態では、そのような要素としては、例えば前駆体ガス、不活性ガスおよび/またはパージガス用のガス供給ライン、加熱および/または冷却要素、装填手段および取出し手段、圧力制御手段および温度制御手段が挙げられる。
【0070】
一実施形態における基板トレイ20は、縁付き保持部である。反応室10は、パージガス流なしに残された場所、すなわち、部分20の垂直部分と反応室10の壁との間の側部の角にある空間への堆積を防止するために、(基板容器30の通過に加えて)縁付き保持部20を通過する少量の流入ガスを導くための構成を有することができる。少量のガスは、さらなるガス流入管(図示せず)を用いてこれらの場所に導かれうる。ガスは、容器30を通り抜けるガスに対して、非反応性、反応性または不動態化性であってもよい。
【0071】
一実施形態では、反応室10に出入りするガス流は、容器30内のサンプルへの圧力に影響を及ぼすように変更することができる。これは、例えば化学物質のパルスを制御すること、またはフォアライン内に入ってくるガス流または真空を変更することによって達成される。一実施形態では、例えば圧力センサを用いて、容器30内のサンプルへの選択された圧力を維持するために流量制御が行われる。一実施形態では、例えばマスフローコントローラを用いて、容器30内のサンプルを通る選択された流れを維持するために流量制御が行われる。
【0072】
さらなる実施形態では、図3に関連して前述したのと同様に発生した逆流を使用して、反応室10内のフィルタ、例えば、フィルタ42(使用中の場合)を洗浄し、かつ/または細孔閉塞を低減する。
【0073】
図5は、本発明の例示的実施形態による粒子をコーティングする方法の原則的フローチャートを示す。ステップ510において、コーティングされる粒子サンプルが基板容器30内に提供され、反応室10内の基板トレイ20に入れられる。ステップ520において、粒子サンプルは、(超音波)振動器要素を用い、導波管要素50により発生した超音波が基板トレイ20に、それを通して基板容器30内の粒子サンプルへと導かれて振動させられる。ステップ530において、粒子サンプルは、自己飽和表面反応を用いた堆積プロセスによってコーティングされる。一実施形態では、堆積プロセスは原子層堆積(ALD)プロセスである。コーティング中の振動は、粒子材料の凝集を防止し、粒子の均一なコーティングを提供する。ステップ540において、コーティングされたサンプルは反応室10から取り出される。
【0074】
図6は、本発明の例示的実施形態による真空状態において振動発生源を有する堆積反応炉の概略的原理図を示す。図6は、振動発生源(例えば、超音波アクチュエータ)72が真空内に配置されている堆積反応炉アセンブリを示す。弾性隔離要素60は省略することができる。振動発生源72は、狭い通路625によって反応室(または反応空間)610の残りの部分から分離された限られた空間620内に配置されている。基板容器630はコーティングされる粒子材料を収容する。発生源72は、振動を基板容器630に誘導することなく、かつ/または基板容器630に接触することなく、振動を粒子材料に直接伝達する。弾性隔離要素80は省略することができる。振動伝達部41等は、振動を発生源72から粒子材料に直接伝達するのに使用することができる。振動伝達部41は、熊手等の形態であってもよい。
【0075】
限られた空間620内のALDプロセス中の処理条件、例えば温度および/または圧力は、反応室610の残りの部分内の条件とは異なるように構成される。例示的実施形態では、限られた空間620内の温度は反応室610の残りの部分内の温度と比較して低いため、より温度感受性の高い振動発生源72を使用することを可能にする。例示的実施形態では、限られた空間620内の圧力は反応室610の残りの部分内の圧力と比較して高いため、前駆体蒸気(または反応物質)が振動発生源72を収容する限られた空間620に入るのを防ぐ。一実施形態では、限られた空間620に入り、そこから反応室610の残りの部分(または反応空間)に向かうパージガス流が提供され、前駆体蒸気(または反応物質)が限られた空間620に入るのを防ぐ。
【0076】
図6に示されるような例示的実施形態では、振動発生源72は反応室610の加熱部分の外側に配置される。さらに、室壁もしくは冷却構造(図示せず)に機械的に結合することによって、またはキャリアガスもしくはパージガスをフォアライン40(発生源72を収容する空間内への入口ガスパイプは図6には示されていない)に向けて流すことによって、振動発生源72を低温に保つことができる。さらに、キャリアガスまたはパージガスを使用して、発生源72を反応性化学物質に接触させないようにしておくことができる。さらなる実施形態では、代替的に、発生源72は、例えば図1図4に示すように基板容器630の下などの他の場所に配置することができる。さらに、図6の構成は、要素41および/または基板容器30および/またはトレイ20への直接接続を可能にする。
【0077】
図7は、本発明の別の例示的実施形態による真空状態において振動発生源を有する堆積反応炉の概略的原理図を示す。本実施形態では、導波管50は発生源72と粒子材料との間に配置されている。導波管50は発生源72からの振動を粒子材料に伝達する。他の点では、図6に示す実施形態を説明する記述を参照のこと。実際には、導波管50は、例えば振動発生源72と基板容器30、または振動発生源72と基板トレイ(もしあれば)、または振動発生源72と要素41(もしあれば)を接続することができる。次いで、超音波振動などの振動が、振動発生源72から基板容器630に、または基板トレイを介して基板容器630に、または図1図5を参照して前述したように要素41に直接伝達される。
【0078】
本発明の実施形態では、振動動作は必要に応じてスイッチを入れたり切ったりすることができる。能動的動作モードの間、振動は常に「オン」であっても、またはそれはパルス状に「オン」であってもよい。例示的実施形態では、振動は、30%をオン時間、70%をオフ時間とする1秒周期で流れる。受動的動作モードの間、振動はオフである。一実施形態では、振動は、粒子材料が真空にあるときにのみ「オン」である。振動「オン」段階はさらに、化学的パルスと同期させることができる。さらに、振動の周波数および振幅はそれに応じて調整することができる。
【0079】
本発明の保護、解釈または考えうる適用の範囲はなんら限定されることなく、本発明の異なる実施形態の技術的利点は、粒子材料のより均一なコーティングであると考えられる。さらに、本発明の異なる実施形態の技術的利点は、材料の凝集の簡単な防止であると考えられる。さらに、本発明の異なる実施形態の技術的利点は、反応炉本体に望ましくない振動を伝えることのないサンプルへの振動の提供であると考えられる。
【0080】
前述の説明は、本発明の特定の実施態様および実施形態の非限定的実施例により、本発明を実行する発明者によって現在検討される最良の方法の完全かつ有益な説明を提供した。しかし、当業者には、本発明が上述の実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて他の実施形態にて実施可能であることは明らかである。
【0081】
さらに、上述に開示した本発明の実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴を同様に使用することなく効果的に使用できる。したがって、上記説明は本発明の原理の単なる例に過ぎず、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制約される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7