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特許7557500複素環誘導体化合物の製造方法、その化合物を含む組成物及びその化合物の水和物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】複素環誘導体化合物の製造方法、その化合物を含む組成物及びその化合物の水和物
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20240919BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20240919BHJP
   C07C 68/065 20200101ALI20240919BHJP
【FI】
C07D498/04 111
C07C69/96 Z CSP
C07C68/065
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022095779
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2020516362の分割
【原出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2022126729
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0064914
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519418237
【氏名又は名称】ジェイダブリュー・ファーマシューティカル・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】JW PHARMACEUTICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ピョン・ドギュ
(72)【発明者】
【氏名】オ・ギョンジン
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516468(JP,A)
【文献】特開2008-001691(JP,A)
【文献】特開2006-176505(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/00
C07C 69/00
C07C 68/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(III)で示される化合物を、式(IV)で示される化合物とカップリング反応させる工程:
【化1】
(式中、Rは、水素又はtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である)
を含む、式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物の製造方法。
【請求項2】
式(III)の化合物が、下記式(II)で示される化合物を塩基としてのピリジンの存在下でジ-tert-ブチルジカルボネートと反応させる工程:
【化2】
により得られることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(1)式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、下記式(V)で示される化合物を得る工程;
(2)式(V)の化合物を酸の存在下でアルコール中で反応させて、下記式(I)で示される化合物の塩を得る工程;及び
(3)式(I)の化合物の塩を最初に塩基と、次に酸と反応させる工程:
【化3】
を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)及び工程(2)が、インサイチュ反応として実施されることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(III)の化合物が、下記式(II)で示される化合物を塩基としてのピリジンの存在下でジ-tert-ブチルジカルボネートと反応させる工程:
【化4】
によって得られ、
式(II)で示される化合物を塩基としてのピリジンの存在下でジ-tert-ブチルジカルボネートと反応させる前記工程、式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、式(V)で示される化合物を得る工程(1)、及び式(V)の化合物を酸の存在下でアルコール中で反応させて、式(I)で示される化合物の塩を得る工程(2)が、インサイチュ反応として実施されることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
式(IV)の化合物が、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンを酢酸中の臭化水素酸と反応させる工程により得られることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
下記式(III)
【化5】
(式中、Rは、水素又はBocである)
で示される化合物。
【請求項8】
下記式(IV)
【化6】
で示される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(I)
【化1】
で示される複素環誘導体化合物の新規の製造方法;前記製造方法に使用される新規の中間体化合物;式(I)の化合物を2mg超~10mg以下の投与用量で含み、1日1回経口投与される、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防用組成物;及び新規な式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症及び痛風の治療又は予防のために現在使用されている薬剤には、ヒト尿酸アニオントランスポーター1(hURAT1)の阻害活性を有する尿酸排出促進剤であるベンズブロマロン(Benzbromarone)、並びにプロベネシド(Probenecid)及びスルフィンピラゾン(Sulfinpyrazone)が使用されている。しかし、これらの薬物は、URAT1に対して十分な活性を有していない。特に、ベンズブロマロンには副作用の面でいくつかの欠点が指摘されている。ベンズブロマロンは、シトクロムP450(CYP450)タンパク質の中で2C9タンパク質に対する強い阻害機能を示しているため、薬物間相互作用を引き起こす可能性がある。反応性代謝体の形成は、グルタチオン(GSH)付加物生成実験からも報告されている(非特許文献1)。
【0003】
また、ベンズブロマロンは、肝毒性を示すことが報告されているベンジオダロン、ベンザロン及びアミオダロンの薬物構造に類似したベンゾフラン系骨格を有しているため、肝障害の誘発だけでなく、肝毒性の誘発による死亡例の発生率の問題もある。従って、この薬物を服用する予定の患者の肝機能は、投与前に検査する必要があり、投与中であっても、肝毒性が誘発されているかどうかについて一定期間(6カ月)確認することが療法で推奨されている。したがって、これらの問題を解決する薬物が医薬分野で必要とされている(非特許文献2、3、4、5)。
【0004】
特許文献1に、下記式(I)
【化2】
(I)
で示される複素環誘導体化合物が開示されており、前記化合物の具体的な例の中には、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン(化合物4)が開示されている。
【0005】
前記特許文献1には、前記複素環誘導体化合物がヒト尿酸アニオントランスポーター1(hURAT1)活性の従来の阻害剤と比較して、強いhURAT1阻害活性を示しているので、尿酸再吸収の阻害剤、特に、選択的阻害剤として有用であることが開示されている。また、シトクロムP450(CYP450)で薬物間相互作用を示さず、有機アニオントランスポーター間の選択性を示し、溶解度と代謝安定性がより高く、有利な薬物動態を示しているので、高尿酸血症、急性痛風関節炎、慢性痛風関節炎、痛風結節、痛風腎症、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、及び血中内尿酸増加を伴う合併症として報告された高脂血症、虚血性心疾患、心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、脳血管疾患、糖尿病、高血圧などの治療又は予防において従来の薬物と比較して優れた効果を示すことが記載されている。
【0006】
前記特許文献1は、前記複素環誘導体化合物を、オマキザルに3.75mg/kg、7.5mg/kg、15mg/kgで経口投与した実験を記載している。これらの用量をヒトに適用可能な用量値へ論理的に変換すると、約15mg~60mgになり、そのような高用量では副作用のリスクが相当になる。
【0007】
また、前記複素環誘導体化合物の塩酸塩の場合、その吸湿性のために、湿式造粒法による経口投与用製剤の製剤化には限界があった。
【0008】
一方、前記複素環誘導体化合物の合成方法として、前記特許文献1は、式(I)の複素環誘導体化合物を製造するための工程も開示している:(1)下記式(VII)の化合物をハロゲン化して、下記式(X)の化合物を得て、得られた式(X)の化合物を下記式(IX)の化合物と反応させて、下記式(VIII)の化合物を得るか、或いは、下記式(VII)の化合物と下記式(IX)の化合物を光延反応させて、下記式(VIII)の化合物を得る工程;(2)得られた式(VIII)の化合物を環化して、式(IV)の化合物を得る工程;及び(3)得られた式(IV)の化合物と式(III)の化合物をペプチド結合反応させる工程。
【化3】
【0009】
しかし、前記製造方法の中間体として得られた前記式(IV)のオキサジン誘導体のうち、下記構造
【化4】
を有する3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンは、液体で不安定であり、その分解は発ガン性又は突然変異誘発を引き起こす可能性の高い不純物が生成する問題がある。これらの不純物を精製する追加の工程が必要にあるため、前記製造方法は大量生産には適していない。
【0010】
また、前記製造方法における前記式(III)の化合物である下記式
【化5】
を有する3,5-ジブロモ-4-メトキシ-ベンゾイルクロリドは、高価な出発物質である3,5-ジブロモ-4-メトキシ安息香酸から得られており、また、式(III)の化合物と式(IV)のオキサジン誘導体を合成する工程には、遺伝子変異が生じる可能性があるため、その可能性を最小限に抑えることができる工程が必要とされる。
【0011】
一方、特許文献2は、高尿酸血症、痛風などの治療に有効な下記式
【化6】
のオキサジン誘導体化合物及びその合成方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2009/145456号
【文献】米国特許出願公開第2007-0010670号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Dermot F. McGinnity et al., Drug Metabolism and Disposition, 33, p1700-1707 (2005)
【文献】Hautekeete M. L., et al., Liver, 15, p25-29 (1995)
【文献】Makoto Arai, et al., Journal of Gastroenterology and Hepatology 17, p625-626 (2002)
【文献】Saitama Medical College Magazine, 30, p187-194 (2003)
【文献】Priska Kaufmann, et al., HEPATOLOGY, 41, p925-935 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
式(I)の複素環誘導体化合物の従来の製造方法は、中間体として得られるオキサジン誘導体が分解して、発ガン性又は突然変異誘発を引き起こす可能性のある不純物が生成されるという問題、及び前記オキサジン誘導体と3,5-ジブロモ-4-メトキシ-ベンゾイルクロリドが合成して、遺伝的突然変異を誘発する毒性中間体が生成される問題がある。また、各工程で不純物を除去するために追加の精製工程が必要になるという欠点もあるので、製造方法が多くの工程を経る必要があり、それにより大量生産に適さなない。これらの問題を解決するために、本発明は、前記オキサジン誘導体の安定化した形態である、新規のオキサジン誘導体HBr塩(ジヒドロブロミド、2HBr)、及び毒性誘発物質を生成せず、インサイチュ反応が可能になり製造工程を削減し、大量生産に適した新規の安息香酸中間体を使用することを特徴とする、式(I)の複素環誘導体化合物の新規の製造方法を提供すること意図している。
【0015】
また、本発明は、前記製造方法に使用される新規の中間体化合物を提供することを意図している。
【0016】
さらに、本発明は、有効成分として、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で含み、1日1回経口投与される、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防で使用するための組成物を提供することを意図している。
【0017】
さらに、本発明は、式(I)化合物の新規な塩酸塩1.5水和物(セスキ水和物)を提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明、下記式(III)で示される化合物を下記式(IV)で示される化合物とカップリング反応させる工程を含む、下記式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物の製造方法を提供する:
【化7】
(式中、Rは、水素又はtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である)
【0019】
本発明の一実施形態において、前記式(III)の化合物は、下記式(II)で示される化合物をジ-tert-ブチルジカルボネート及びピリジンと反応させる工程により得ることができる:
【化8】
【0020】
本発明の一実施形態において、前記式(I)の化合物の製造方法は、以下の工程を含むことができる:
(1)式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、下記式(V)で示される化合物を得る工程;
(2)式(V)の化合物を酸の存在下でアルコールと反応させて、下記式(I)で示される化合物の塩を得る工程;及び
(3)式(I)の化合物の塩を最初に塩基と、次に酸と反応させる工程。
【化9】
【0021】
本発明の一実施形態において、前記工程(1)及び工程(2)は、インサイチュ反応として実施することができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記式(II)の化合物から式(III)の化合物を得る工程、及び前記工程(1)及び工程(2)はインサイチュ反応として実施することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記式(IV)の化合物は、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンを酢酸中の臭化水素酸と反応させる工程により得ることができる。
【0024】
また、本発明は、下記式(III)
【化10】
(式中、Rは、水素又はBocである)
で示される中間体化合物を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、下記式(IV)
【化11】
で示される中間体化合物を提供する。
【0026】
また、本発明は、有効成分として、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で含み、1日1回経口投与される、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防用医薬組成物を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回経口投与される、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防で使用するための使用を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回治療対象体に経口投与することを含む、前記治療対象体の高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記式(I)の化合物の投与用量は、遊離塩基に対して、3mg~8mgであり得る。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記式(I)の化合物は、式(I)の化合物の塩酸塩又はこれの1.5水和物形態であり得る。
【0031】
また、本発明は、式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物を提供する。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物は、粉末X線回折(XRD)分析において、以下の2θ位置に特徴的ピークを示す:
11.48±0.5°、24.11±0.5°、24.76±0.5°、27.99±0.5°、31.43±0.5°、34.20±0.5°
【0033】
本発明の一実施形態において、前記式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物は、粉末X線回折(XRD)分析において、以下の2θ位置に特徴的ピークをさらに示す:
6.89±0.5°、17.61±0.5°、21.42±0.5°、23.27±0.5°
【0034】
また、本発明は、前記式(I)の化合物を酢酸、塩酸水溶液及びアセトンと反応させて結晶を生成させる工程を含む、式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物の製造方法を提供する。
【0035】
さらに、本発明は、式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物を含む、経口投与用に製剤化された医薬組成物を提供する。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記医薬組成物は錠剤形態であり得る。
【発明の効果】
【0037】
本発明による式(I)の複素環誘導体化合物の製造方法は、オキサジン誘導体の代わりに、その安定化HBr塩(2HBr)形態を使用することにより、発ガン性又は突然変異誘発を引き起こす可能性の高い不純物が生成される問題を解決した。本発明の製造方法は、3,5-ジブロモ-4-メトキシ-ベンゾイルクロリドの代わりに、新規の安息香酸中間体を使用することにより、遺伝的突然変異を誘発する毒性中間体が生成される別の問題を解決した。従って、本発明の方法は、各工程で不純物を除去するための追加の精製工程の必要性を排除し、インサイチュ反応による大量生産に適した長所を有する。
【0038】
また、本発明による式(I)の化合物を2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回経口投与する投与レジメンは、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防において、顕著に優れた効果を示し、副作用発生の可能性を最小限に抑える。
【0039】
さらに、従来の式(I)化合物の塩酸塩の場合、その吸湿性のために湿式造粒法により経口投与用製剤を製剤化する際に問題があったが、本発明による式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物は、この問題点を解決し、経口投与用製剤(特に、錠剤)に適した安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施例1で製造した本発明の3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)のNMRデータを示した図である。
図2】実施例1で製造した本発明の3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)の熱重量(TG)/示差熱分析(DTA)結果を示した図である。
図3】実施例2で製造した本発明の式(I)の化合物のNMRデータを示した図である。
図4】実施例3で製造した本発明の式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物の粉末X線回折(XRD)分析結果を示した図である。
図5】3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン硫酸塩のNMRデータを示した図である。
図6】3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン硫酸塩のTG/DTA結果を示した図である。
図7】3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン遊離塩基形態のNMRデータを示した図である。
図8】3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン遊離塩基形態のTG/DTA結果を示した図である。
図9】式(I)化合物の塩酸塩非溶媒和物(a)及び本発明の式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物(b)の粉末X線回折(XRD)分析した結果を示した図である。
図10】式(I)化合物の塩酸塩非溶媒和物(a)及び本発明の式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物(b)のTG/DTA結果を示した図である。
図11】式(I)化合物の塩酸塩非溶媒和物(a)及び本発明の式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物(b)の水分吸着等温曲線(water sorption isotherm)を示した図である。
図12】本発明の式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物と同一化合物の塩酸塩非溶媒和物の溶解度を比較して示した図である。
図13】低用量(0.25mg、0.5mg、1mg)及び2mgの用量にて本発明の式(I)の化合物を投与したときの、血中尿酸値が<5.0mg/dL未満に低下した患者の割合(%)(右バー)及び血中尿酸値が<6.0mg/dL未満に低下した患者の割合(%)(左バー)を示した図である。
図14】投与レジメン範囲内の用量(3mg、5mg、7mg、10mg)にて本発明の式(I)の化合物を投与したときの、血中尿酸値が<5.0mg/dL未満に低下した患者の割合(%)(右バー)及び血中尿酸値が<6.0mg/dL未満に低下した患者の割合(%)(左バー)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0042】
式(I)の化合物、その塩又は水和物の製造方法
【0043】
本発明は、下記式(III)で示される化合物を下記式(IV)示される化合物とカップリング反応させる工程を含む、式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物の製造方法に関する:
<反応スキーム1>
【化12】
(式中、Rは、水素又はBocである)
【0044】
具体的に、式(III)の化合物に塩基を加え、式(IV)の化合物である3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)とカップリング反応させる。得られた中間体化合物を後処理して、式(I)の化合物である(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン又はその薬学的に許容される塩を得た。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記式(III)の化合物は、下記式(II)で示される化合物をジ-tert-ブチルジカルボネート及びピリジンと反応させる工程により得ることができる:
<反応スキーム2>
【化13】
【0046】
具体的に、反応器に溶媒を加え、次に式(II)の3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸を加え、ジ-tert-ブチルジカルボネートを加え、ピリジンを加え、反応させることにより式(III)の化合物を得ることができる。
【0047】
低コストの出発物質として用いられる式(II)の化合物である3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸は、公知方法を参照することにより製造するか、又は商業的に試薬会社から購入することができる。
【0048】
溶媒としては一般に反応に悪影響を及ぼさない通常のものを使用することができる。溶媒の好ましい例には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジグリム(diglyme)などのエーテル系列溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン、キシレンなどの炭化水素系列溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系列溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコールなどのアルコール系列溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル系列溶媒;アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの極性溶媒が挙げられるが、これらに制限されない。前記から選ばれた2つの溶媒の混合溶媒も使用することができる。この反応にはテトラヒドロフランが好ましい。
【0049】
具体的に、反応器にテトラヒドロフラン(THF)を加え、式(II)の化合物である3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸を加えた後、ジ-tert-ブチルジカルボネートを加え、窒素雰囲気下でピリジンを加え、反応させることにより、式(III)の化合物を得ることができる。このとき、反応は撹拌しながら25~30℃の温度で約1~3時間実施することができる。
【0050】
得られた式(III)の化合物は、新規の安息香酸中間体化合物である。従って、本発明は、下記式(III)
【化14】
(式中、Rは、水素又はBocである)
で示される化合物も含む。
【0051】
本発明の式(I)の化合物の製造方法は、以下の工程を含むことができる:
(1)式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、式(V)の化合物を得る工程;
(2)式(V)の化合物を酸の存在下でアルコールと反応させて、式(I)の化合物の塩を得る工程;及び
(3)式(I)の化合物の塩を最初に塩基と、次に酸と反応させる工程
<反応スキーム3>
【化15】
(式中、Rは、水素又はBocである)
【0052】
本発明の一実施形態において、前記工程(1)の前に、式(II)の化合物をジ-tert-ブチルジカルボネート及びピリジンと反応させる工程をさらに含み得る。この場合、前記式(I)の化合物の製造方法は、下記反応スキームで示すことができる:
<反応スキーム4>
【化16】
(式中、Rは、水素又はBocである)
【0053】
本発明の一実施形態において、前記工程(1)及び工程(2)は、インサイチュ反応として実施することができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記式(II)の化合物から式(III)の化合物を得る工程、及び前記工程(1)及び工程(2)はインサイチュ反応として実施することができる。
【0055】
「インサイチュ反応」とは、1つの反応器で連続的な化学反応を行うことを意味し、「ワンポット(one-pot)反応」とも称される。インサイチュ反応は非常に経済的であり、中間体化合物の分離工程及び精製工程なしで、次の反応をすぐに行うことができるため、大量生産に適している。
【0056】
前記製造方法を以下で詳しく説明する。
【0057】
工程(1)式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、式(V)の化合物を得る工程
【0058】
式(III)の化合物に塩基を加え、式(IV)の化合物である3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)と反応させる。
【0059】
反応に用いられる塩基の例には、トリエチルアミン、ピリジン、4-メチルアミノピリジン、4-メチルモルホリン、ピペラジン、N-メチルピペラジンなどの有機塩基系列;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ金属系列;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどの水素化アルカリ金属;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸アルカリ金属系列;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属;及びリン酸カリウムを挙げられる。この反応ではトリエチルアミンが好ましい。
【0060】
具体的には、トリエチルアミンを反応液に加え、式(IV)の3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)を反応液に加え、反応液を25~30℃の温度で約5~7時間撹拌した。形成された塩(沈殿物)を除去した後、ろ液を収集し、次に25~30℃の温度でろ液を濃縮して、式(V)の化合物であるtert-ブチル-(2,6-ジブロモ-4-(1,2,3,4-テトラヒドロ-1,7-ナフチリジン-1-カルボニル)フェニル)カルボネートを得た。
【0061】
工程(2)式(V)の化合物を酸の存在下でアルコールと反応させて、式(I)の化合物の塩を得る工程
【0062】
式(V)の化合物であるtert-ブチル-(2,6-ジブロモ-4-(1,2,3,4-テトラヒドロ-1,7-ナフチリジン-1-カルボニル)フェニル)カルボネートを含む反応器にアルコールを加え、混合物を酸の存在下で反応させて、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)メタノンの塩を得た。
【0063】
反応に用いられる酸の例には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸又はトリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又はナフタルスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられる。この反応では塩酸が好ましい。
【0064】
反応に用いられるアルコールの例には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコールなどが挙げられ、この反応ではイソプロピルアルコールが好ましい。
【0065】
より具体的には、式(V)の化合物であるtert-ブチル-(2,6-ジブロモ-4-(1,2,3,4-テトラヒドロ-1,7-ナフチリジン-1-カルボニル)フェニル)カルボネートを含む25~30℃の温度の反応器にイソプロピルアルコールを加え、濃塩酸を45℃以下でゆっくり加え、反応液を25~30℃まで冷却し、約1~2時間撹拌した。イソプロピルアルコールを25~30℃で反応液に加え、さらに約1時間撹拌した後、反応液を20~25℃まで冷却した。得られた結晶をろ過し、乾燥して、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)メタノン塩酸塩を得た。
【0066】
工程(3)式(I)の化合物を最初に塩基と、次に酸と反応させて、式(I)の化合物を得る工程
【0067】
水をきれいな反応器に加え、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)メタノンの塩を反応器に加え、塩基及び酸を連続して反応させた。得られた結晶をろ過して、式(I)の化合物である(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンを得た。
【0068】
反応に用いられる塩基の例には、トリエチルアミン、ピリジン、4-メチルアミノピリジン、4-メチルモルホリン、ピペラジン、N-メチルピペラジンなどの有機塩基系列;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ金属系列;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどの水素化アルカリ金属又は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸アルカリ金属系列;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属;及びリン酸カリウムを挙げられる。この反応では水酸化ナトリウムが好ましい。
【0069】
反応に用いられる酸の例には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸又はトリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又はナフタルスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられる。この反応では塩酸が好ましい。
【0070】
より具体的には、水をきれいな反応器に加え、前記工程(2)で得た(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)メタノン塩酸塩を25~30℃で反応器に加え、反応液を25~30℃で約15分間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液を25~30℃でpHが10.0に達するまでゆっくり加え、反応液をろ過し、ろ液を収集した。酢酸エチルを反応器に加え、撹拌して水層を分離して、塩酸水溶液を20~25℃でpHが6.4~6.7に達するまで加えた。得られた結晶をろ過して、式(I)の化合物である(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンを得た。
【0071】
上記で説明した式(I)の化合物の製造方法は、後記する実施例でより具体的に説明する。
【0072】
式(IV)の化合物の製造方法
【0073】
本発明の一実施形態において、前記式(IV)の化合物は、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンを酢酸中の臭化水素酸と反応させる工程を含む製造方法により製造することができる。
【0074】
本発明の別の一実施形態において、前記式(IV)の化合物は、下記工程により製造することができる。
<反応スキーム5>
【化17】
【0075】
具体的に、前記製造方法は以下の通りである。
(1)4-ヒドロキシ-ニトロピリジンにホスホリルオキシクロリドを加えて、4-クロロ-3-ニトロピリジンを得る。
(2)4-クロロ-3-ニトロピリジンにグリコール酸メチル及び炭酸カリウムを加えて、メチル2-((3-ニトロピリジン-4-イル)オキシ)アセテートを得る。
(3)メチル2-((3-ニトロピリジン-4-イル)オキシ)アセテートに塩化アンモニウム(NHCl)及び鉄(Fe)を加えて、2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンを得る。
(4)2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンに水素化アルミニウムリチウム(LiAlH、LAH)を加えて、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンを得る。
(5)3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンに酢酸中の臭化水素酸を加えて、最終的に式(IV)の化合物である3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)を得る。
【0076】
従って、本発明は、下記式(IV)
【化18】
で示される新規の中間体化合物も含む。
【0077】
上記で説明した式(IV)の中間体化合物の製造方法は、後記する実施例でより具体的に説明する。
【0078】
式(I)の化合物の使用
【0079】
また、本発明は、有効成分として、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で含み、1日1回経口投与される、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防用医薬組成物に関する。
【0080】
さらに、本発明は、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回経口投与して、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防のための使用に関する。
【0081】
また、本発明は、前記式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回治療対象体に経口投与することを含む、前記治療対象体の高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患を治療又は予防する方法に関する。
【0082】
本発明の一実施形態において、前記医薬組成物、使用及び方法に有効成分として含まれる式(I)の化合物は、その薬学的に許容される塩や水和物形態であり得る。
【0083】
このような薬学的に許容される塩には、薬学的に許容されるアニオンを含有する無毒性酸付加塩を形成する酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸又はトリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又はナフタルスルホン酸などのスルホン酸などによって形成された酸付加塩が含まれており、さらにナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩も含まれる。その他にも芳香族アミジン誘導体又はラクタム誘導体に関連する技術分野で公知であり、従来使用されている他の酸又は塩基との塩を含まれ得る。また、前記水和物形態には、半水和物、1水和物、1.5水和物、2水和物、3水和物などが含まれる。
【0084】
具体的には、前記薬学的で許容される塩は塩酸塩であり得て、前記水和物は1.5水和物形態であり得る。
【0085】
高尿酸血症(Hyperuricemia)は、血液中の異常に高いレベルの尿酸である。これは、腎臓での尿酸の排出不足又は肝臓での尿酸の過剰生産により、血中尿酸値が通常(男7~8mg/dl、女6mg/dl)よりも高い状態と定義される。痛風(Gout)疾患は、尿酸の過剰生産又は尿酸の排出不足により、血中尿酸値が通常(男7~8mg/dl、女6mg/dl)よりも著しく高い状態をいう。尿酸結晶は関節及び靭帯などの結合軟部組織に沈着する可能性があり、針状の尿酸結晶(Uric acid crystal)は関節周辺の筋肉を刺す可能性がある。次に、身体の免疫システムが尿酸結晶を攻撃し、これが関節の周囲に激しい痛みと腫れを引き起こす。このような発作性及び炎症性関節炎が痛風と称される。尿酸結晶は、主に足の親指の中足指節関節に沈着し、まれに腰椎にも沈着することが報告されている[Vervaeck M., et al., Clinical Neurology and Neurosurgery, 93, p233-236 (1991)]。
【0086】
痛風は、関節炎以外にも、糖尿病、高血圧、心疾患、肥満、腎結石症、尿路結石症などの様々な代謝性疾患の合併症を引き起こす可能性があるため、非常に危険な要因である。痛風のピーク発生率は、主に40歳代~50歳代の男性で観察され、閉経後の女性で増加している。また、肥満の人や非常に激しい運動をしている人では発症頻度が高くなっている。
【0087】
痛風発作の発生率は、長年にわたって高尿酸血症にかかっている患者と密接に関連している。痛風発作の発生率は、体内の尿酸値が9mg/dl以上の場合4.9%、尿酸値が7.0~8.9mg/dlの場合0.5%、尿酸値が7.0mg/dl以下場合0.1%と報告されており、5年間の痛風発作の累積発生率は、体内の尿酸値が9mg/dl以上の患者で約22%であった以上尿酸数値が高い患者で5年間痛風の累積発生率は約22%であった。[Campion E. W. et al., Am. J. Med., 82, p421-426 (1987)]。
【0088】
血中尿酸(UA)値を<6.0mg/dL未満、より好ましくは<5.0mg/dL未満に下げることは、重度の痛風患者の治療にとって臨床的に重要である。式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回経口投与する本発明による投与レジメンは、患者の血中尿酸値を<5.0mg/dL未満に下げるのに有意な効果がある。
【0089】
具体的には、後記する実験例4から確認できるように、本発明の投与レジメンで3mg、5mg、7mg及び10mgを投与した場合、血中尿酸値が<5.0mg/dL未満に低下した患者数の百分率がそれぞれ、約23%、約64%、約80%、約73%であり、約23%~約80%の範囲で観察された(図14参照)。しかし、同じ化合物を0.25mg、0.5mg及び1mg用量で投与した場合、血中尿酸値が<5.0mg/dL未満に低下した患者は全く観察できず、2mg用量の場合、約8%に過ぎなかった(図13参照)。以上の実験結果から、本発明による投与レジメンの用量範囲の下限である2mgを超える用量で有意な効果が生じることが分かった。
【0090】
また、本発明による式(I)の化合物を2mg超~10mg以下の投与用量で1日1回経口投与する投与レジメンは、ヒト尿酸アニオントランスポーター1(hURAT1)に対する強力な阻害活性を示し、高尿酸血症、例えば急性痛風関節炎、慢性痛風関節炎、痛風結節、痛風腎症などの痛風疾患;腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、並びに尿路結石症及び尿酸に関連する疾患、例えば高脂血症、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞、脳血管疾患、糖尿病、高血圧などの治療又は予防に有用である。
【0091】
本発明の一実施形態において、前記式(I)の化合物の投与用量は、1日1回経口投与で2mg超~10mg以下の範囲で患者の疾患、状態、年齢、体重及び投与形態に応じて変わり得る。具体的には、3mg~8mgの投与用量で1日1回、より具体的には3mg~6mg投与用量で1日1回経口投与することができる。前記用量範囲は、有効成分である式(I)の化合物の遊離塩基形態に基づいており、式(I)の化合物を塩酸塩又はその1.5水和物形態で投与することができる。具体的には、式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物形態で投与される場合、投与用量は2.3mg超~11.5mg以下であり得る。
【0092】
投与用量が2mg以下では、前記疾患の治療に十分な効果が発揮できず、10mgの用量で最大の効果が示される。また、10mgを超える用量は尿酸濃度を低下させる効果を示すが、このような用量は治療過程で関節痛(Arthralgia)、関節腫脹(joint swelling)等を誘発し、患者に痛みを引き起こす可能性があり、その他の副作用の可能性もある。これらの副作用には、特に腎臓に致命的な疾患を引き起こす可能性のあるクレアチニン(creatinine)のレベルの増加が含まれる。後記する実験例5から確認できるように、本発明の投与レジメンの最大用量である10mg用量を超える場合、関節痛、関節腫脹などの有害事例発生率及び尿中クレアチニンの濃度が増加するリスクが高くなることを推測することができる。
【0093】
本発明による使用の対象は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトである。
【0094】
式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物
【0095】
本発明はまた、式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物に関する。
【0096】
本発明はまた、前記式(I)の化合物を酢酸、塩酸水溶液及びアセトンと反応させて、結晶を生成させる工程を含む式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物の製造方法を提供する。
【0097】
具体的には、式(I)の化合物、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンを25℃の反応器に加え、直ぐに同じ温度で酢酸を加え、反応器に水を加えた。塩酸水溶液を25℃で反応器に加えた後、アセトンを反応液に加えて結晶を生成させた。得られた結晶をろ過して、真空乾燥して(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-フェニル)-(2,3-ジヒドロ-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物を得た。
【0098】
上記で説明した式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物の製造方法は、後記する実施例でより具体的に説明される。
【0099】
本発明の一実施形態において、前記式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物は、粉末X線回折(XRD)分析において、以下の2θ位置に特徴的ピークを示す:
11.48±0.5°、24.11±0.5°、24.76±0.5°、27.99±0.5°、31.43±0.5°、34.20±0.5°
【0100】
本発明の一実施形態において、前記式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物は、粉末X線回折(XRD)分析において、以下の2θ位置に特徴的ピークをさらに示す:
6.89±0.5°、17.61±0.5°、21.42±0.5°、23.27±0.5°
【0101】
本発明の一実施形態において、前記式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物は、粉末X線回折(XRD)分析において、以下の2θ位置に特徴的ピークを示す:
6.89±0.5°、10.84±0.5°、11.48±0.5°、13.73±0.5°、15.85±0.5°、17.61±0.5°、18.51±0.5°、19.98±0.5°、21.42±0.5°、22.99±0.5°、23.27±0.5°、24.11±0.5°、24.76±0.5°、27.37±0.5°、27.99±0.5°、31.43±0.5°、34.20±0.5°
【0102】
また、本発明は、前記式(I)の化合物塩酸塩1.5水和物を含む、経口投与用に製剤化された医薬組成物に関する。
【0103】
本発明による医薬組成物は、有効成分として、有効量の式(I)化合物の塩酸塩1.5水和物を、薬学的に許容される担体、ビヒクル、結合剤、安定化剤及び/又は希釈剤と混合して製造され得る。本発明の医薬組成物は、当業者が容易に実施することができる方法に従って、薬学的に許容される担体及び/又は添加剤を含む製剤により、単位剤形として製造されてもよく、又は複数回投与容器に入れられて製造されてもよい。薬学的に許容される担体は、固体又は液体であり得て、添加剤、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、分散剤、吸着剤、界面活性剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、甘味剤、香味剤、流動化剤、放出調節剤、湿潤剤、安定化剤、懸濁化剤及び滑沢剤から選ばれる1種以上であり得る。また、薬学的に許容される担体は、生理食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの混合物から選ばれ得る。
【0104】
本発明による医薬組成物は、経口投与に適した医薬製剤の形態で製造することができる。前記医薬製剤は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤又は懸濁液の形態で経口投与することができ、具体的に錠剤の形態であり得る。また、一実施形態において、前記医薬製剤は、活性成分をコーティングするか、又は胃での分解から保護するように製剤化され得る。
【0105】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、一つ以上の実施形態を例示することのみ意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0106】
実施例1
式(IV)の化合物である3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)の合成
【0107】
(1)4-クロロ-3-ニトロピリジンの製造
【0108】
50g(0.356mmol)の4-ヒドロキシ-ニトロピリジンを50mL(1T)のDMF(ジメチルホルムアミド)及び450mL(9T)の酢酸エチルに加えた。42.5mLのホスホリルオキシクロリド(POCl、1.3eq)を加え、混合物を加熱し、70~80℃で2時間還流した。反応完了後、反応液を40℃まで冷却し、200mLの水を加えて反応を終了させた。分離した有機層を200mLの飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、200mLの塩水でそれぞれ洗浄し、収集した有機層を硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥し、ろ過し、減圧下濃縮して、60gの淡黄色の濃縮結晶として4-クロロ-3-ニトロピリジンを得た。
【0109】
(2)メチル2-((3-ニトロピリジン-4-イル)オキシ)アセテートの製造
【0110】
前記工程(1)で得られた60g(0.356mmol)の4-クロロ-3-ニトロピリジンを300mL(5T)のDMFに溶解させ、36mL(1.3eq)のグリコール酸メチルと74g(1.5eq)の炭酸カリウム(KCO)粉末を加え、混合物を加熱し、70~80℃で1~2時間反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、150mLの10%HClを加えて溶解及び中和し、500mLの酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を150mLの塩水で洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮し、真空乾燥して、62g(82%)の薄茶色の固体としてメチル2-((3-ニトロピリジン-4-イル)オキシ)アセテートを得た。
【0111】
(3)2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンの製造
【0112】
前記工程(2)で得られた62g(0.291mmol)のメチル2-((3-ニトロピリジン-4-イル)オキシ)アセテートを480mLのアセトニトリル(ACN)と120mLの水(HO)に溶解させ、16g(1.0eq)の塩化アンモニウム(NHCl)と33g(2.0eq)の鉄(Fe)粉末を加え、混合物を加熱し、70~80℃で2時間反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、30mLの濃塩酸を加え、混合物を30分間撹拌した。反応液をろ過して不溶物を除去した。得られた反応液を、固体が得られるまで濃縮した。濃縮物をメタノールに加え、撹拌及びろ過して、2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩を得た。水に溶解させ後、10%水酸化ナトリウム(NaOH)で中和(pH6~7)し、得られた固体をろ過し、乾燥して、2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンを得た。
【0113】
1H-NMR(300MHz, MeOD-d): δ = 8.06(m, 2H), 6.97(s, 1H), 4.72(s, 2H)
【0114】
(4)3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンの製造
【0115】
前記工程(3)で得られた38g(0.251mmol)の2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンを570mLのテトラヒドロフラン(THF)(15T)に加え、反応液の温度を0℃まで冷却した。15g(1.5eq)の水素化アルミニウムリチウム(LiAlH、LAH)を数回加え、反応液を室温に加熱し、2時間撹拌した。反応完了後、0℃まで冷却し、40mLのHOをゆっくり滴加し、混合物を10分間撹拌した。80mLの5%-NaOH溶液を滴加し、室温で30分間撹拌した。反応液をろ過して、Al(OH)不溶物を除去した。ろ液を10%-HClで中和(pH7)し、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮して、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンを得た(30g、90%)。
【0116】
(5)3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)の製造
【0117】
100g(0.666mol)の2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンを570mLのTHF(15T)中で撹拌し、反応液の温度を0℃まで冷却した。38g(0.999mol、1.5eq)の水素化アルミニウムリチウム(LiAlH、LAH)を数回加え、反応液を室温に加熱し、2時間撹拌した。反応完了後、0℃まで冷却及びクエンチし、ろ過し、濃縮し、MC(塩化メチレン)と共に撹拌し、ろ過した。このとき用いられたMCは、2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンの1000mL(10v/w)であった。3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン/MC溶液に、1.8当量(2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンに対して、1.199mmol)に相当する294g(210mL)の33%酢酸中の臭化水素酸(d、1.40g/mL)を20~30℃で20~30分間滴加した。得られた結晶溶液を室温で1時間撹拌し、5~10℃まで冷却した後、30分間さらに撹拌した。結晶液をろ過し、300~500mLのMCで洗浄し、室温で5時間真空乾燥して、95%の収率で下記式(IV)の化合物である3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)を得た:
【化19】
【0118】
前記化合物のNMRデータを図1に示し、熱重量分析(TG)/示差熱分析(DTA)結果を図2に示した。
【0119】
実施例2
式(I)の化合物である(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンの合成
【0120】
25~30℃で反応器にテトラヒドロフラン(THF)1Lを加え、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸139g(0.470mol)を加え、ジ-tert-ブチルジカルボネート278g(1.27mol)を反応器に加えた。窒素雰囲気下でピリジン125g(1.58mol)を加え、反応液を25~30℃で2時間撹拌して、3,5-ジブロモ-4-tert-ブトキシカルボニルオキシ-安息香酸及び3,5-ジブロモ-4-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)安息香酸(tert-ブチルカルボニル)無水物を含有する反応液を得た。
【0121】
前記反応液にトリエチルアミン170g(1.68mol)を25~30℃の温度で加え、前記実施例1で製造した3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)100gを反応液に加えた。反応液を25~30℃の温度で6時間撹拌した。形成した塩を除去し、ろ液を収集し、25~30℃の温度でろ液を濃縮して、tert-ブチル-(2,6-ジブロモ-4-(1,2,3,4-テトラヒドロ-1,7-ナフチリジン-1-カルボニル)フェニル)カルボネートを得た。
【0122】
tert-ブチル-(2,6-ジブロモ-4-(1,2,3,4-テトラヒドロ-1,7-ナフチリジン-1-カルボニル)フェニル)カルボネートを含有する25~30℃の温度の反応器に、イソプロピルアルコール500mLを加え、濃塩酸500mLを45℃以下でゆっくり加えた。反応液を25~30℃まで冷却し、1~2時間撹拌した。イソプロピルアルコール3Lを25~30℃で反応液に加え、1時間さらに撹拌した後、反応液を20~25℃まで冷却した。得られた結晶をろ過し、乾燥して、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)メタノン塩酸塩を得た。
【0123】
水をきれいな反応器に加え、前記で得られた(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)メタノン塩酸塩を25~30℃で反応器に加え、反応液を25~30℃で15分間撹拌した。4N水酸化ナトリウム水溶液100mLを25~30℃でpHが10.0に達するまでゆっくり加え、反応液をろ過し、ろ液を収集した。酢酸エチルを反応器に加え、撹拌して水層を分離し、10%塩酸水溶液を20~25℃でpHが6.4~6.7に達するまで加えた。得られた結晶をろ過して、式(I)の化合物である(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンを得た(収率60%、純度98.0%以上)。前記化合物のNMRデータを図3に示した。
【0124】
実施例3
(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物の合成
【0125】
前記実施例2で製造した(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン83gを25℃で反応器に加え、酢酸584mLを同温度ですぐに加え、反応器に水83mLを加えた。2M塩酸水溶液111mLを25℃で反応器に加えた後、アセトン688mLを反応液に加えて結晶を形成させ、得られた結晶をろ過し、12時間真空乾燥して、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-フェニル)-(2,3-ジヒドロ-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物を得た(収率90%、純度99.9%)。
【0126】
得られた(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-フェニル)-(2,3-ジヒドロ-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物を粉末X線回折(XRD)分析した結果を図4に示した。図4に示すように、(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-フェニル)-(2,3-ジヒドロ-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物は、以下の2θ位置に特徴的ピークを示した:
【0127】
6.89±0.5°、10.84±0.5°、11.48±0.5°、13.73±0.5°、15.85±0.5°、17.61±0.5°、18.51±0.5°、19.98±0.5°、21.42±0.5°、22.99±0.5°、23.27±0.5°、24.11±0.5°、24.76±0.5°、27.37±0.5°、27.99±0.5°、31.43±0.5°、34.20±0.5°
【0128】
実験例1
3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)の安定性
【0129】
実施例1で製造した本発明の3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)及び同じ方法で製造した異なる塩の安定性比較実験を行った。3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンリン酸塩は固体形態ではなくゲル形態で得られた。3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン塩酸塩も半固体形態で不安定であった。固体形態で得られた物質は、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンHBr塩(2HBr)と3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン硫酸塩であった。
【0130】
下記表1に示すように、硫酸塩形態の場合、得られた物質の純度が3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン遊離塩基形態の純度よりも低くなっただけでなく、安定性実験で固体が再び液体に融解する現象が発生した。一方、HBr塩形態の場合、純度が遊離塩基形態よりも改善されただけでなく、4週間の安定性実験でも開始時の純度と比較して顕著な変化は見られなかった。
【0131】
【表1】
【0132】
また、前記HBr塩形態、硫酸塩形態及び遊離塩基形態についてNMRを測定し、熱重量分析(TG)及び示差熱分析(DTA)を行った。
【0133】
HBr塩(2HBr)のNMRデータを図1に示し、熱重量(TG)/示差熱分析(DTA)結果を図2に示した。
【0134】
また、硫酸塩のNMRデータを図5に示し、TG/DTA結果を図6に示した。
【0135】
また、遊離塩基のNMRデータを図7に示し、TG/DTA結果を図8に示した。
【0136】
実験例2
(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物の安定性
【0137】
実施例3で製造した本発明の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物及び同じ化合物の塩酸塩非溶媒和物について粉末X線回折(XRD)分析、TG/DTA及び水分吸着等温曲線を測定し、その結果を図9~11に示した。
【0138】
具体的に、前記非溶媒和物(a)及び1.5水和物(b)の粉末X線回折(XRD)分析した結果を図9に示した。
【0139】
前記非溶媒和物(a)及び1.5水和物のTG/DAT(b)の結果を図10に示した。
【0140】
前記非溶媒和物(a)及び1.5水和物(b)の水分吸着等温曲線を図11に示した。
【0141】
また、前記1.5水和物と非溶媒和物の製造における物理的安定性(Physical Stability to Processing Factors)を比較し、その結果を下記表2に示した。
【0142】
【表2】

*:乳鉢(mortar)を使用してサンプルを約2分間すりつぶした。
**:30%v/w溶媒を加えた後、乳鉢を使用してサンプルを約2分間造粒した。造粒したサンプルを密閉バイアルに約1時間保存した後、サンプルを50℃で約3時間乾燥した。
***:7mmの厚板パンチを使用して2トンの圧力で5秒間サンプルを打錠した。
****:粉末X線回折計を使用して結晶性を評価した。
【0143】
前記表2に示すように、すりつぶし及び打錠における結晶性変化を比較した結果、1.5水和物は非溶媒和物より極めて安定であった。さらに、造粒における固体形態を比較した結果、非溶媒和物は、部分的に1.5水和物の形態に転移したが、1.5水和物は変化を示さなかった。従って、1.5水和物は非溶媒和物よりも優れた物理的安定性を示すことが分かった。
【0144】
実験例3
(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物の溶解性
【0145】
実施例3で製造した本発明の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物及び同じ化合物の塩酸塩非溶媒和物の溶解度を比較した。媒質としてFeSSIF(pH5.0)50mLを使用し、パドル速度を50rpmにして、37℃の操作条件で試験を行った。化合物10mgとラクトース100mgの物理的混合物を試料として使用して溶解度を測定した。その結果を図12に示した。240分では、塩酸塩1.5水和物の溶解度は約125μg/mLであったが、非溶媒和物の溶解度は約112.5μg/mLに減少したことが分かった。
【0146】
実験例4
(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンの用量ごとの効果の比較実験
【0147】
合計60人の痛風患者を対象に、実施例3で製造した本発明の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物を投与した。有効成分の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン(式(I))として、0.25mg(N=12)、0.5mg(N=12)、1mg(N=12)及び2mg(N=12)の前記化合物、並びにプラセボ(N=12)を14日間経口投与し、血中尿酸値などの有効性及び安全性をプラセボと比較して評価した。
【0148】
投与後15日目に血中尿酸値を測定し、血中尿酸値が<6.0mg/dL未満及び<5.0mg/dL未満を下回った患者の百分率を決定し、図13に示した。図13に示すように、0.25mg、0.5mg及び1mgの用量で投与した場合、血中尿酸値が<5.0mg/dL未満に低下した患者は観察されなかった。2mg用量の場合のみ、わずか約8%観察された。前記結果から、投与用量が2mg未満の用量は高尿酸血症、痛風などの疾患の治療に効果的でないことが分かった。
【0149】
さらに、合計68人の痛風患者に対して、本発明の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物を投与した。有効成分の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン(式(I))として、3mg(N=13)、5mg(N=14)、7mg(N=15)及び10mg(N=15)の用量の前記化合物、並びにプラセボ(N=11)を14日間経口投与し、血中尿酸値などの有効性及び安全性をプラセボと比較して評価した。
【0150】
投与後15日目に血中尿酸値を測定し、血中尿酸値が<6.0mg/dL未満及び<5.0mg/dL未満を下回った患者数の百分率を決定し、図14に示した。図14に示すように、3mg、5mg、7mg及び10mgの用量で投与した場合、血中尿酸値が<5.0mg/dL未満を下回った患者数の百分率はそれぞれ、約23%、約64%、約80%、約73%であり、約23%~約80%の範囲であった。血中尿酸値が<6.0mg/dL未満に低下した患者も、すべての実験用量で見られた。
【0151】
前記実験結果から、本発明による投与レジメンの用量範囲の下限である2mgを超える用量で有意な効果が生じることが分かった。
【0152】
実験例5
(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノンの用量ごとの副作用の検討
【0153】
合計76人の痛風患者を対象に、実施例3で製造した本発明の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン塩酸塩1.5水和物を投与した。有効成分の(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)(2,3-ジヒドロ-4H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-4-イル)-メタノン(式(I))として、3mg(N=14)、5mg(N=15)、7mg(N=17)及び10mg(N=17)の用量化合物、並びにプラセボ(N=13)を14日間経口投与し、有害薬物反応を調べた。その結果、下記表3に示すように、前記投与レジメンは、関節痛、関節腫脹などの有害事象を示さないか、又はその発生率は極めて低かった。
【0154】
【表3】
【0155】
また、同じ患者の尿中クレアチニン濃度を測定した。クレアチニンがベースラインと比較して0.3mg/dL以上又は1.5倍以上増加した例数を下記表4に示した。
【0156】
【表4】
【0157】
前記表4に示すように、プラセボ群と5mg用量群では、共通して1例のみが観察されたが、最大用量である10mg用量群では3例が観察された。前記結果から、用量が最大用量の10mgを超えると、尿中クレアチニン濃度が増加するリスクが高くなると推測できた。
本発明は、以下の態様および実施形態を含む。
[1]
下記式(III)で示される化合物を、式(IV)で示される化合物とカップリング反応させる工程:
【化20】
(式中、Rは、水素又はtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である)
を含む、式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物の製造方法。
[2]
式(III)の化合物が、下記式(II)で示される化合物をジ-tert-ブチルジカルボネート及びピリジンと反応させる工程:
【化21】
により得られることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[3]
(1)式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、下記式(V)で示される化合物を得る工程;
(2)式(V)の化合物を酸の存在下でアルコールと反応させて、下記式(I)で示される化合物の塩を得る工程;及び
(3)式(I)の化合物の塩を最初に塩基と、次に酸と反応させる工程:
【化22】
を含むことを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[4]
前記工程(1)及び工程(2)が、インサイチュ反応として実施されることを特徴とする[3]に記載の製造方法。
[5]
式(III)の化合物が、下記式(II)で示される化合物をジ-tert-ブチルジカルボネート及びピリジンと反応させる工程:
【化23】
によって得られ、
前記工程、工程(1)及び工程(2)がインサイチュ反応として実施されることを特徴とする[3]に記載の製造方法。
[6]
式(IV)の化合物が、3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3-b][1,4]オキサジンを酢酸中の臭化水素酸と反応させる工程により得られることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[7]
下記式(III)
【化24】
(式中、Rは、水素又はBocである)
で示される化合物。
[8]
下記式(IV)
【化25】
で示される化合物。
[9]
有効成分として、下記式(I)
【化26】
で示される化合物、その薬学的に許容される塩又はその水和物を、式(I)の化合物の遊離塩基に対して、2mg超~10mg以下の投与用量で含み、1日1回経口投与される、高尿酸血症、痛風疾患、腎炎、慢性腎不全、腎結石症、尿毒症、尿路結石症、又は尿酸に関連する疾患の治療又は予防用医薬組成物。
[10]
投与用量が、3mg~8mgであることを特徴とする[9]に記載の医薬組成物。
[11]
有効成分が、式(I)の化合物の塩酸塩又はその1.5水和物であることを特徴とする[9]に記載の医薬組成物。
[12]
[9]に記載の式(I)で示される化合物の塩酸塩1.5水和物。
[13]
粉末X線回折(XRD)分析において、下記:
11.48±0.5°、24.11±0.5°、24.76±0.5°、27.99±0.5°、31.43±0.5°、34.20±0.5°
の2θ位置に特徴的ピークを示すことを特徴とする[12]に記載の式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物。
[14]
下記
6.89±0.5°、17.61±0.5°、21.42±0.5°、23.27±0.5°
の2θ位置で特徴的ピークをさらに示すことを特徴とする[13]に記載の式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物。
[15]
下記式(I)
【化27】
で示される化合物を酢酸、塩酸水溶液及びアセトンと反応させて結晶を生成させる工程を含む、式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物の製造方法。
[16]
[12]~[14]のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の塩酸塩1.5水和物を含む、経口投与用に製剤化された医薬組成物。
[17]
錠剤形態であることを特徴とする[16]に記載の医薬組成物。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14