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特許7557504偏光板および該偏光板を用いた画像表示装置
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  • 特許-偏光板および該偏光板を用いた画像表示装置 図1
  • 特許-偏光板および該偏光板を用いた画像表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】偏光板および該偏光板を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240919BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240919BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240919BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240919BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240919BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022129979
(22)【出願日】2022-08-17
(65)【公開番号】P2024027295
(43)【公開日】2024-03-01
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151603(JP,A)
【文献】特開2019-107830(JP,A)
【文献】特開2020-086237(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成された偏光子と、該偏光子に接着剤層を介して積層された保護層と、を有する偏光板であって、
該偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと該接着剤層の屈折率nとの差の絶対値が0.20以下であり、
該偏光子波長700nmにおける吸収軸方向の反射率RSAと吸収軸に直交する方向の反射率RSTとの差が0.5%以上であり、
該偏光板波長700nmにおける偏光子の吸収軸方向の反射率RPAと吸収軸に直交する方向の反射率RPTとの差が0.40%以下である、
偏光板。
【請求項2】
前記接着剤層の屈折率nが1.50~1.70である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
ヨウ素を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成された偏光子と、該偏光子に接着剤層を介して積層された保護層と、該接着剤層と該保護層との間に設けられた下塗り層と、を有する偏光板であって、
該偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと該下塗り層の屈折率nとの差の絶対値が0.20以下であり、
該偏光子波長700nmにおける吸収軸方向の反射率RSAと吸収軸に直交する方向の反射率RSTとの差が0.5%以上であり、
該偏光板波長700nmにおける偏光子の吸収軸方向の反射率RPAと吸収軸に直交する方向の反射率RPTとの差が0.40%以下である、
偏光板。
【請求項4】
前記下塗り層の屈折率nが1.50~1.70である、請求項3に記載の偏光板。
【請求項5】
前記保護層の面内位相差Re(550)が20nm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
前記保護層がポリカーボネート系樹脂フィルムで構成されている、請求項5に記載の偏光板。
【請求項7】
前記偏光子の前記保護層と反対側に、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層をさらに有する、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の偏光板を備える、画像表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の偏光板を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板および該偏光板を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板が用いられている。しかし、偏光板の構成によっては、反射色相が赤味を帯びてしまい、画像表示装置の表示性能に悪影響を与える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-127569号公報
【文献】特開2019-204083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、長波長の光に対する反射異方性が大きい偏光子を用いるにもかかわらず、赤味が抑制された偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による偏光板は、偏光子と、該偏光子に接着剤層を介して積層された保護層と、を有し、上記偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと上記接着剤層の屈折率nとの差の絶対値は0.20以下である。
[2]上記[1]において、波長700nmにおける偏光子の吸収軸方向の反射率RPAと吸収軸に直交する方向の反射率RPTとの差は0.40%以下である。
[3]上記[1]または[2]において、上記保護層の面内位相差Re(550)は20nm以下である。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記保護層はポリカーボネート系樹脂フィルムで構成されている。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記偏光板は、上記接着剤層と上記保護層との間に下塗り層をさらに有する。
[6]上記[5]において、上記偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと上記下塗り層の屈折率nとの差の絶対値は0.20以下である。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記偏光板は、上記偏光子の上記保護層と反対側に、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層をさらに有する。
[8]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。画像表示装置は、上記[1]から[6]のいずれかの偏光板を備える。
[9]画像表示装置は、上記[7]の偏光板を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、長波長の光に対する反射異方性が大きい偏光子を用いるにもかかわらず、赤味が抑制された偏光板を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。図示例の偏光板100は、偏光子10と、偏光子10に接着剤層20を介して積層された保護層30と、を有する。本発明の実施形態においては、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと接着剤層の屈折率nとの差の絶対値は、代表的には0.20以下であり、好ましくは0.18以下であり、より好ましくは0.15以下であり、さらに好ましくは0.12以下であり、特に好ましくは0.07以下である。当該差の絶対値は小さいほど好ましく、望ましくはゼロである。このような構成であれば、長波長の光に対する反射異方性が大きい偏光子を用いても、赤味が抑制された偏光板を実現することができる。なお、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aは、代表的には、接着剤層の屈折率nより大きい。また、偏光子の吸収軸に直交する方向の屈折率n1Tと接着剤層の屈折率nとの差の絶対値は、多くの場合、それほど大きくない。当該差の絶対値は、例えば0.01~0.10であり得、また例えば0.02~0.09であり得、また例えば0.04~0.06であり得る。その結果、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと接着剤層の屈折率nとの差の絶対値を制御することにより、本発明の実施形態による効果を顕著なものとすることができる。
【0011】
本発明の実施形態においては、偏光板は、代表的には、波長700nmにおける偏光子の吸収軸方向の反射率RPAが、偏光子の吸収軸に直交する方向の反射率RPTより大きい。さらに、RPAとRPTとの差は、好ましくは0.40%以下であり、より好ましくは0.39%以下であり、さらに好ましくは0.35%以下であり、特に好ましくは0.30%以下であり、とりわけ好ましくは0.25%以下であり、最も好ましくは0.15%以下である。RPAとRPTとの差は、例えば0.03%以上であり、また例えば0.05%以上である。このような構成であれば、長波長の光(例えば、波長650nm以上の光)に対する反射異方性が大きい偏光子(後述)を用いるにもかかわらず、赤味が抑制された偏光板を実現することができる。
【0012】
図2は、本発明の別の実施形態による偏光板の概略断面図である。図示例の偏光板101は、接着剤層20と保護層30との間に下塗り層40をさらに有する。本実施形態においては、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと下塗り層の屈折率nとの差の絶対値は、好ましくは0.20以下であり、より好ましくは0.18以下であり、さらに好ましくは0.15以下であり、特に好ましくは0.12以下であり、とりわけ好ましくは0.07以下である。当該差の絶対値は小さいほど好ましく、望ましくはゼロである。このような構成であれば、長波長の光に対する反射異方性が大きい偏光子を用いても、赤味が抑制された偏光板を実現することができる。この場合、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと下塗り層の屈折率nとの差の絶対値を制御すればよく、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと接着剤層の屈折率nとの差の絶対値を制御する必要はない。その結果、接着剤層の選択の自由度が格段に大きくなる。なお、上記した接着剤層の屈折率nとの関係と同様に、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aは、代表的には、下塗り層の屈折率nより大きい。また、偏光子の吸収軸に直交する方向の屈折率n1Tと下塗り層の屈折率nとの差の絶対値は、多くの場合、それほど大きくない。当該差の絶対値は、例えば0.01~0.10であり得、また例えば0.02~0.09であり得、また例えば0.04~0.06であり得る。その結果、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと下塗り層の屈折率nとの差の絶対値を制御することにより、本発明の実施形態による効果を顕著なものとすることができる。
【0013】
本発明の実施形態による偏光板は、必要に応じて、偏光子10の保護層30と反対側に、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層(図示せず)をさらに有していてもよい。このような構成であれば、優れた反射防止特性を有する偏光板(位相差層付偏光板)を得ることができる。1つの実施形態においては、位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。この場合、位相差層は代表的には単一層である。別の実施形態においては、位相差層は、液晶化合物の配向固化層(以下、液晶配向固化層と称する場合がある)である。この場合、位相差層は、単一層であってもよく、第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造を有していてもよい。
【0014】
1つの実施形態においては、偏光板(位相差層付偏光板)は、位相差層の偏光子と反対側に別の位相差層をさらに有していてもよい。別の位相差層は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートである。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0015】
偏光板が画像表示装置の視認側に配置される場合、保護層30は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層30には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。本発明の実施形態においては、ハードコート処理(ハードコート層の形成)が好ましい。ハードコート層については後述する。ハードコート処理と他の表面処理とが組み合わせて施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層30には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0016】
本発明の実施形態による偏光板は、必要に応じて、偏光子10の保護層30と反対側(位相差層が設けられる場合には、偏光子と位相差層との間)に別の保護層(図示せず)をさらに有していてもよい。
【0017】
実用的には、本発明の実施形態による偏光板は、保護層30と反対側の最外層として粘着剤層(図示せず)を有し、画像表示セルに貼り付け可能とされている。この場合、粘着剤層の表面には、偏光板が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、偏光板のロール形成が可能となる。
【0018】
以下、偏光板の構成要素について説明する。
【0019】
B.偏光子
偏光子10としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0020】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0021】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0022】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0023】
偏光子の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm~8μmであり、さらに好ましくは3μm~7μmである。このような非常に薄い偏光子は、長波長の光に対する反射異方性が大きい、より詳細には、吸収軸方向の反射率が吸収軸と直交する方向の反射率に比べて大きいという傾向がある。したがって、このような非常に薄い偏光子を有する偏光板において、本発明の実施形態による効果が顕著である。
【0024】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは41.0%~46.0%であり、より好ましくは42.5%~45.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは98.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上であり、特に好ましくは99.95%以上である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。
【0025】
偏光子のヨウ素濃度は、例えば3重量%~10重量%であり、より好ましくは4重量%~8重量%であり、さらに好ましくは5重量%~7重量%である。このようなヨウ素濃度を有する偏光子は、ヨウ素と偏光板の構成要素に含まれる物質との相互作用が大きくなり、長波長の光に対する反射異方性が大きい、より詳細には、吸収軸方向の反射率が吸収軸と直交する方向の反射率に比べて大きいという傾向がある。したがって、このようなヨウ素濃度の偏光子を有する偏光板において、本発明の実施形態による効果が顕著である。なお、本明細書において「ヨウ素濃度」とは、偏光子に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はI、I、I 等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素濃度は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の濃度を意味する。ヨウ素濃度は、例えば、蛍光X線分析による蛍光X線強度とフィルム(偏光子)厚みとから算出され得る。
【0026】
偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと吸収軸に直交する方向の屈折率n1Tとの差(n1A-n1T)は、例えば0.15~0.20であり、また例えば0.18~0.20である。このような屈折率特性を有する偏光子は、長波長の光に対する反射異方性が大きい、より詳細には、吸収軸方向の反射率が吸収軸と直交する方向の反射率に比べて大きいという傾向がある。したがって、このような屈折率特性の偏光子を有する偏光板において、本発明の実施形態による効果が顕著である。
【0027】
偏光子の波長700nmにおける吸収軸方向の反射率RSAは、代表的には、偏光子の吸収軸に直交する方向の反射率RSTより大きい。さらに、RSAとRSTとの差は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは2.0%以上である。RSAとRSTとの差は、例えば2.5%以下であり得る。本発明の実施形態によれば、このような反射異方性が大きい偏光子を用いるにもかかわらず、赤味が抑制された偏光板を実現することができる。
【0028】
C.保護層
保護層の面内位相差Re(550)は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、特に好ましくは8nm以下であり、とりわけ好ましくは5nm以下である。保護層の面内位相差Re(550)の下限は、例えば0nmであり得る。このような構成であれば、本発明の実施形態の偏光板を適用した画像表示装置を、偏光サングラスを介して視認した場合に、視認性の低下(例えば、画面が真っ暗に見える)を抑制することができる。
【0029】
保護層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、保護層は、フラットな波長分散特性を示す。この場合、保護層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.95~1.05であり、より好ましくは0.98~1.02である。
【0030】
保護層30は、上記のような特性を満足し得る限りにおいて、任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。保護層を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステルカーボネート系樹脂が好適に用いられ得る。これらの樹脂はレーザー加工が可能であるので、例えば偏光板を異形加工する場合に非常に有利である。なお、本明細書においては、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂をまとめてポリカーボネート系樹脂と称する場合がある。
【0031】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、ポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0032】
1つの実施形態においては、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する単位構造を含むポリカーボネート系樹脂が用いられ得る。
【化1】
(上記一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~炭素数20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のアリール基を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2~炭素数10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のアリーレン基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0~5の整数である。)
【0033】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0034】
上記ポリカーボネート系樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0035】
ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特許5204200号、特開2012-67300号公報、特許第3325560号、WO2014/061677号等に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0036】
1つの実施形態においては、オリゴフルオレン構造単位を含むポリカーボネート系樹脂が用いられ得る。オリゴフルオレン構造単位を含むポリカーボネート系樹脂としては、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位および/または下記一般式(3)で表される構造単位を含む樹脂が挙げられる。
【化2】
(上記一般式(2)および上記一般式(3)中、RおよびRはそれぞれ独立に、直接結合、置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキレン基(好ましくは、主鎖上の炭素数が2~3であるアルキレン基)である。Rは、直接結合、置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキレン基(好ましくは、主鎖上の炭素数が1~2であるアルキレン基)である。R~R13はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数4~10(好ましくは4~8、より好ましくは4~7)のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4)のビニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4)のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基である。R~R13のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0037】
1つの実施形態においては、オリゴフルオレン構造単位に含まれるフルオレン環は、R~R13の全てが水素原子である構成を有するか、あるいは、R及び/又はR13がハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、シアノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれるいずれかであり、かつ、R~R12が水素原子である構成を有する。
【0038】
オリゴフルオレン構造単位を含むポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2015-212816号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0039】
保護層の厚みは、好ましくは15μm~60μmであり、より好ましくは25μm~45μmである。
【0040】
D.ハードコート層
ハードコート層は、本発明の実施形態による効果が得られる限りにおいて、任意の適切な材料で構成され得る。ハードコート層は、例えば、任意の適切な熱硬化性樹脂または活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、電子線)硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂が好ましい。簡便な操作および高効率でハードコート層を形成することができるからである。紫外線硬化型樹脂の具体例としては、ポリエステル系、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系の紫外線硬化型樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系紫外線硬化型樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートを包含する。紫外線硬化型樹脂には、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマーが含まれ得る。好ましい紫外線硬化型樹脂としては、紫外線重合性の官能基を好ましくは2個以上、より好ましくは3~6個有するアクリル系のモノマー成分またはオリゴマー成分を含む樹脂組成物が挙げられる。代表的には、紫外線硬化型樹脂には、光重合開始剤が配合されている。
【0041】
ハードコート層は、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上の鉛筆硬度を有する。一方、ハードコート層の鉛筆硬度は、好ましくは6H以下であり、より好ましくは5H以下である。ハードコート層の鉛筆硬度がこのような範囲であれば、偏光板を画像表示装置に適用した場合に、優れた表面保護性能を付与することができる。鉛筆硬度は、JIS K 5400の「鉛筆硬度試験」に基づいて測定され得る。
【0042】
ハードコート層の厚みは、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm~4μmであり、さらに好ましくは1μm~3.5μmである。ハードコート層の厚みがこのような範囲であれば、優れた耐擦傷性を実現し得る。
【0043】
ハードコート層は、任意の適切な方法により形成され得る。ハードコート層は、好ましくは、保護層上にハードコート層形成用樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、乾燥した塗工膜に紫外線を照射して硬化させることにより形成され得る。
【0044】
ハードコート層の詳細は、例えば、特開2011-237789号公報、特開2016-224443号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0045】
E.接着剤層
E-1.下塗り層を設けない場合
接着剤層の屈折率nは、好ましくは1.50~1.70であり、より好ましくは1.60~1.70である。接着剤層の屈折率がこのような範囲であれば、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと接着剤層の屈折率nとの差の絶対値を上記所望の範囲とすることができる。
【0046】
接着剤層を構成する接着剤としては、上記のような高い屈折率を有する任意の適切な接着剤を用いることができる。このような高い屈折率を有する接着剤は、任意の適切な接着剤に屈折率調整剤(例えば、酸化チタン)を配合することにより調製され得る。
【0047】
E-2.下塗り層を設ける場合
下塗り層を設ける場合には下塗り層の屈折率nを制御することにより、本発明の実施形態による効果が得られ得る。したがって、接着剤層の屈折率nを精密に制御する必要はない。言い換えれば、接着剤層を構成する接着剤として、目的に応じた適切な特性を有する接着剤を用いることができる。
【0048】
接着剤層は、例えば、活性エネルギー線硬化型接着剤で構成され得る。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。代表的には、ラジカル硬化型の紫外線硬化型接着剤が用いられ得る。汎用性に優れ、および、特性(構成)の調整が容易だからである。
【0049】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、代表的には、単官能成分と多官能成分(硬化成分)と光重合開始剤とを含有する。単官能成分および多官能成分はそれぞれ、代表的には、ラジカル重合性化合物である。好ましい単官能成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸の高級アルキルエステルおよびその変性体が挙げられる。具体例としては、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトンが挙げられる。好ましい多官能成分としては、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基などの官能基を2つ以上有するモノマーおよび/またはオリゴマーが挙げられる。具体例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレートが挙げられる。上記以外の単官能成分または多官能成分の具体例としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、N-メチルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、9-ビニルカルバゾールが挙げられる。1つの実施形態においては、単官能成分または多官能成分は、環構造を有する。具体例としては、アクリロイルモルホリン、γ-ブチロラクトンアクリレート、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドン、9-ビニルカルバゾールが挙げられる。単官能成分または多官能成分はそれぞれ、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記のような活性エネルギー線硬化型接着剤で構成された接着剤層の屈折率nは、例えば1.45~1.49であり得る。
【0051】
接着剤層の厚みは、下塗り層の有無にかかわらず、好ましくは0.1μm~3.0μmであり、より好ましくは0.5μm~2.0μmである。
【0052】
F.下塗り層
下塗り層は、代表的には、水系樹脂の塗布膜の固化層である。水系樹脂の好ましい具体例としては、ウレタン系樹脂が挙げられる。したがって、下塗り層は、好ましくは、ウレタン系樹脂を含む水系分散体(下塗り剤)の塗布膜の固化層であり得る。水系は、溶剤系に比べて環境面に優れ、作業性にも優れ得る。
【0053】
ウレタン系樹脂は、代表的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリオールとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、任意の適切なポリオールを採用し得る。具体例としては、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0054】
ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′-シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0055】
ウレタン系樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有する。カルボキシル基を有することにより、偏光子との密着性(特に、高温・高湿下における)に優れた下塗り層が得られ得る。カルボキシル基を有するウレタン系樹脂は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとに加え、遊離カルボキシル基を有する鎖長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖長剤としては、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸が挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)等のジアルキロールアルカン酸が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0056】
ウレタン系樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000~600000であり、さらに好ましくは10000~400000である。ウレタン系樹脂の酸価は、好ましくは10以上であり、さらに好ましくは10~50であり、特に好ましくは20~45である。酸価がこのような範囲内であれば、偏光子との密着性がより優れ得る。
【0057】
下塗り剤は、好ましくは、架橋剤を含む。架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。具体的には、ウレタン系樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤としては、好ましくは、カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーが挙げられる。カルボキシル基と反応し得る基としては、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基が挙げられる。好ましくは、架橋剤は、オキサゾリン基を有する。オキサゾリン基を有する架橋剤は、ウレタン系樹脂と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱することによって架橋反応が進行するため、作業性が良好である。
【0058】
下塗り剤は、好ましくは微粒子を含まない。このような構成であれば、位相差ムラが小さい下塗り層を実現することができる。その結果、保護層の面内位相差が小さいことによる効果との相乗的な効果により、長波長の光に対する反射異方性が大きい偏光子を用いても、赤味が顕著に抑制された偏光板を実現することができる。下塗り剤は、必要に応じてレベリング剤を含み得る。レベリングを含むことにより、塗布膜の平滑性をさらに高めることができ、結果として、厚みバラツキの小さい下塗り層を形成することができる。レベリング剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。下塗り剤中のレベリング剤の含有量は、例えば1.0重量%~3.5重量%であり得る。
【0059】
下塗り剤は、好ましくは屈折率調整剤を含む。屈折率調整剤としては、代表的には高屈折率材料が挙げられる。高屈折率材料としては、例えば酸化チタンが挙げられる。屈折率調整剤の種類(したがって、屈折率)および配合量を調整することにより、所望の屈折率を有する下塗り層を形成し得る下塗り剤を得ることができる。
【0060】
下塗り剤は、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0061】
ウレタン系樹脂および下塗り剤の詳細については、例えば特開2010-055062号公報、特開2021-047235号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0062】
下塗り層の厚みは、好ましくは150nm~600nmであり、より好ましくは200nm~500nmであり、さらに好ましくは250nm~400nmである。このような構成であれば、保護層に下塗り層を形成する際の破断が抑制され得る。
【0063】
下塗り層の屈折率nは、好ましくは1.50~1.70であり、より好ましくは1.60~1.70である。下塗り層の屈折率がこのような範囲であれば、偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aと下塗り層の屈折率nとの差の絶対値を上記所望の範囲とすることができる。
【0064】
G.位相差層
位相差層は、上記のとおり、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。さらに、上記のとおり、位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されていてもよく、液晶配向固化層であってもよい。
【0065】
G-1.樹脂フィルムの延伸フィルム
位相差層が樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている場合、位相差層は代表的には単一層であり、いわゆるλ/4板として機能し得る。この場合、位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~200nmであり、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは120nm~160nmであり、特に好ましくは130nm~150nmである。位相差層は、好ましくはRe(450)<Re(550)の関係を満たし、好ましくはRe(550)<Re(650)の関係をさらに満たす。すなわち、位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示す。位相差層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.5を超えて1.0未満であり、好ましくは0.7~0.95であり、より好ましくは0.75~0.92であり、さらに好ましくは0.8~0.9である。Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.0以上1.15未満であり、より好ましくは1.03~1.1である。さらに、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°であり、特に好ましくは約45°である。
【0066】
位相差層は、上記のように面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。位相差層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。位相差層の屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~2.0であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましくは0.9~1.2である。
【0067】
位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは15μm~60μmであり、さらに好ましくは20μm~55μmであり、最も好ましくは25μm~50μmである。
【0068】
位相差層は、上記のような特性を満足し得る限りにおいて、任意の適切な材料で構成され得る。位相差層は、代表的には、カーボネート結合およびエステル結合からなる群から選択される少なくとも1つの結合基を含む樹脂を含有する。言い換えれば、位相差層は、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂を含有する。1つの実施形態においては、位相差層は、保護層に関して上記C項で説明した材料を用い、上記特性を満足するよう適切に処理(例えば、延伸処理)されたフィルムで構成され得る。1つの実施形態においては、位相差層は、ポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンドを含むフィルムで構成されていてもよい。アクリル系樹脂は、好ましくは、メタクリル酸メチル由来の構造単位を主たる構造単位として含む。位相差層におけるアクリル系樹脂の含有量は、例えば0.5質量%~2.0質量%であり得る。
【0069】
G-2.液晶配向固化層
位相差層が液晶配向固化層であれば、偏光板(位相差層付偏光板)の顕著な薄型化を図ることができる。この場合、上記のとおり、位相差層は単一層であってもよく、第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造を有していてもよい。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。位相差層においては、代表的には、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
【0070】
G-2-1.単一層
液晶配向固化層が単一層である場合の特性は、厚み以外は樹脂フィルムの延伸フィルムに関してG-1項で説明したとおりである。液晶配向固化層が単一層である場合の厚みは、例えば1.0μm~5.0μmであり得、また例えば1.0μm~3.0μmであり得る。
【0071】
本実施形態の位相差層を構成する液晶化合物の具体例は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0072】
G-2-2.第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造
位相差層が偏光子側から第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造を有する場合、第1液晶配向固化層は、代表的にはλ/2板として機能し得、第2液晶配向固化層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、第1液晶配向固化層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmであり;第2液晶配向固化層のRe(550)は、樹脂フィルムの延伸フィルムに関してG-1項で説明したとおりである。第1液晶配向固化層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば2.0μm~4.0μmであり得る。第2液晶配向固化層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、第1液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり;第2液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°である。なお、第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層の配置順序は逆であってもよく、第1液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度および第2液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は逆であってもよい。第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0073】
本実施形態の位相差層は、例えば、任意の適切な液晶モノマーを含む組成物を用いて形成される。液晶モノマーとしては、例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0074】
H.画像表示装置
上記A項~G項に記載の偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような偏光板を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~G項に記載の偏光板を備える。偏光板は、保護層30が視認側となるようにして配置される。
【実施例
【0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価項目および測定方法は以下のとおりである。
【0076】
(1)屈折率
接着剤層の屈折率については、接着剤層を構成する接着剤で単一膜のサンプルを作製し、当該サンプルの屈折率を、多波長アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて測定した。
偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aおよび吸収軸に直交する方向の屈折率n1Tは、以下のように測定および算出した。実施例および比較例で得られた樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板から、粘着剤層が設けられた黒板の粘着剤層表面に偏光子を転写し、試験サンプルを得た。この試験サンプルを用いて、偏光子単体の吸収軸方向の反射率RSAおよび吸収軸に直交する方向の反射率RSTを、分光光度計(日立製作所社製、U-4100)を用いて測定した。RSAは、分光光度計の光源からの直線偏光の振動方向と吸収軸方向とを平行としたときの反射率であり;RSTは、分光光度計の光源からの直線偏光の振動方向と吸収軸方向とを直交としたときの反射率である。式(I)および(II)を用いてRSAおよびRSTからn1Aおよびn1Tを算出した。なお、測定波長は700nmであった。
SA=(1-n1A/(1+n1A ・・・(I)
ST=(1-n1T/(1+n1T ・・・(II)
【0077】
(2)面内位相差Re(550)
実施例および比較例で用いた保護層を構成する樹脂フィルムについて、Axoscan(Axometrics社製)を用いて測定した。
【0078】
(3)反射率
実施例および比較例で得られた偏光板を、アクリル系粘着剤を介して黒板に貼り合わせて測定サンプルとした。測定サンプルの偏光子の吸収軸方向の反射率RPAおよび吸収軸に直交する方向の反射率RPTを、上記(1)と同様にして、分光光度計(日立製作所社製、U-4100)を用いて測定した。
【0079】
(4)反射色相
上記(3)と同様にして作成した測定サンプルについて、分光測色計・色彩色差計(コニカミノルタ社製、CM-26d)を用いて測定した。
【0080】
(5)赤味
上記(3)と同様にして作成した測定サンプルについて、色味を目視により確認し、以下の基準で評価した。
良好:赤味は認識されなかった
不良:赤味が認識された
【0081】
[製造例1:偏光板の作製]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板を得た。偏光子の単体透過率Tsは42.6%および偏光度Pは99.99%であった。また、この偏光子の吸収軸方向の屈折率n1Aは1.70であり、吸収軸に直交する方向の屈折率n1Tは1.52であった。さらに、偏光子の波長700nmにおける吸収軸方向の反射率RSAは6.7%であり、吸収軸に直交する方向の反射率RSTは4.3%であり、RSAとRSTとの差は2.4%であった。
【0082】
[製造例2:保護層を構成する樹脂フィルムの作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン(化合物3)29.60質量部(0.046mol)、ISB 29.21質量部(0.200mol)、SPG 42.28質量部(0.139mol)、DPC 63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み13μmのポリカーボネート系樹脂フィルムを作製した。得られたポリカーボネート系樹脂フィルムの面内位相差Re(550)は1nmであった。最後に、ポリカーボネート系樹脂フィルムの一方の表面にハードコート層(厚み2μm)を形成した。
【0083】
[製造例3-1:接着剤層を構成する接着剤の調製]
不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、プラクセルFA1DDM)61.5質量部、アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ社製、ACMO)30.8重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレート9EG-A)7.7重量部、アクリル系オリゴマー(東亞合成社製、ARUFON UP-1190)15.3重量部、および、ラジカル重合開始剤7.0重量部を混合して、紫外線硬化型接着剤Aを調製した。接着剤Aの硬化後の屈折率は1.49であった。
【0084】
[製造例3-2:接着剤層を構成する接着剤の調製]
紫外線硬化型接着剤Aに屈折率調整剤(酸化チタン、堺化学工業社製「A-190」)を用いて、硬化後の屈折率が1.53となる紫外線硬化型接着剤Bを調製した。
【0085】
[製造例3-3:接着剤層を構成する接着剤の調製]
紫外線硬化型接着剤Aに屈折率調整剤(酸化チタン、堺化学工業社製「A-190」)を用いて、硬化後の屈折率が1.60となる紫外線硬化型接着剤Cを調製した。
【0086】
[製造例4-1:下塗り層を構成する下塗り剤の調製]
ポリエステルウレタン(第一工業製薬製、商品名:スーパーフレックス210、固形分:33%)16.8重量部、架橋剤(オキサゾリン含有ポリマー、日本触媒製、商品名:エポクロスWS-700、固形分:25%)4.2重量部、および1重量%のアンモニア水2.0重量部を混合し、純水およびイソプロピルアルコール(IPA、レベリング剤)を加えて固形分濃度を1重量%に、IPA濃度を2.5重量%に調整し、下塗り剤Xを調製した。下塗り剤Xから形成される下塗り層の屈折率は1.51であった。
【0087】
[製造例4-2:下塗り層を構成する下塗り剤の調製]
下塗り剤Xに屈折率調整剤(酸化チタン、堺化学工業社製「A-190」)を用いて、得られる下塗り層の屈折率が1.60となる下塗り剤Yを調製した。
【0088】
[製造例4-3:下塗り層を構成する下塗り剤の調製]
下塗り剤Xに屈折率調整剤(酸化チタン、堺化学工業社製「A-190」)を用いて、得られる下塗り層の屈折率が1.70となる下塗り剤Zを調製した。
【0089】
[実施例1]
製造例2で得られたポリカーボネート系樹脂フィルムのハードコート(HC)層が形成されていない表面に製造例4-1の下塗り剤Xを塗布および乾燥して下塗り層を形成し、HC層/ポリカーボネート系樹脂フィルム/下塗り層の積層体を得た。製造例3-1の接着剤A(硬化後の厚み1μm)を介して、製造例1で得られた樹脂基材/偏光子の積層体の偏光子側に、積層体の下塗り層を貼り合わせた。最後に、樹脂基材を剥離除去し、HC層/ポリカーボネート系樹脂フィルム(保護層)/下塗り層/接着剤層/偏光子の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を上記(3)~(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例2~5、比較例1~2]
接着剤層および下塗り層を表1に示すように組み合わせたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、長波長の光に対する反射異方性が大きい偏光子を用いるにもかかわらず、赤味が抑制された偏光板を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の実施形態による偏光板は画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0094】
10 偏光子
20 接着剤層
30 保護層
40 下塗り層
100 偏光板
101 偏光板
図1
図2