(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】勾配組成のジルコニア歯科材料
(51)【国際特許分類】
A61K 6/818 20200101AFI20240919BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20240919BHJP
A61C 13/083 20060101ALI20240919BHJP
A61K 6/822 20200101ALI20240919BHJP
A61K 6/824 20200101ALI20240919BHJP
A61K 6/816 20200101ALI20240919BHJP
A61K 6/807 20200101ALI20240919BHJP
【FI】
A61K6/818
A61C5/70
A61C13/083
A61K6/822
A61K6/824
A61K6/816
A61K6/807
(21)【出願番号】P 2022509054
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019072067
(87)【国際公開番号】W WO2021032272
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ラインスハーゲン, イエルク
(72)【発明者】
【氏名】メイヘーファー, ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ロスブラスト, フランク
【審査官】関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0263863(US,A1)
【文献】特開2018-052806(JP,A)
【文献】特表2016-514078(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103058655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/818
A61C 5/70
A61C 13/083
A61K 6/822
A61K 6/824
A61K 6/816
A61K 6/807
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切縁帯域、勾配帯域および象牙質帯域を含む予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料
であって、ここで、イットリア含量が連続的であり
かつ途切れない線形勾配または非線形勾配を
前記勾配帯域が有する、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項2】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、さらに、前記第1の外表面と前記第2の外表面の間にイットリア含量を含み、前記イットリア含量が、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法に沿った勾配に従って変動するイットリア濃度を有し、前記勾配が、線形または非線形勾配である、請求項1に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項3】
前記非線形勾配が、指数勾配、一次多項式勾配、二次多項式勾配、三次多項式勾配、べき乗則勾配、対数勾配、またはそれらの組合せである、請求項1または2に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項4】
前記イットリア濃度が、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの勾配に沿って増大する、請求項2または3に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項5】
前記勾配が、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの指数勾配関数の合計である、請求項1~4のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項6】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、異なる勾配を有する少なくとも2つの隣接する勾配帯域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項7】
前記勾配が、以下の方程式:
y=ax+b(式中、aは、0.05~3であり、bは、-50~10であ
る)または
y=-0.0167x
3+0.5286x
2-5.0119x+17.44(式中、yは、イットリア含量である)
によって記載されるか、または近似される、請求項1~6のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項8】
前記イットリア含量が、2~8mol%であ
る、
請求項
1~7のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項9】
前記イットリア含量が、2つのイットリア含有ジルコニア材料の混合物から形成される、
請求項
1~8のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項10】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法に沿って、実質的に同じ色を有
する、請求項9に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項11】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、ディスク、ブロック、ブランク、予め形成された歯の修復材、または予め形成された歯科装置の形態である、
請求項
1~10のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項12】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、10~30m
mの少なくとも1つの寸
法を有する、
請求項
1~11のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項13】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、
1つまたは1つよりも多くの着色添加剤を含む、請求項1~1
2のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
【請求項14】
請求項1~1
3のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料から形成される、歯科用
品。
【請求項15】
請求項1~1
3のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミッ
クを作製する方法であって、
少なくとも第1のイットリア含量を有する第1のジルコニアセラミック粉末および第2のイットリア含量を有する第2のジルコニアセラミック粉末から、モノリシック構
造を形成するステップであって、前記第1のイットリア含量が、前記第2のイットリア含量とは異なる、ステップと、
前記モノリシック構造を、
75~100MPaの圧力で一軸プレスに供するステップと、
前記一軸プレスされたモノリシック構造を、
200~400MPaの圧力で冷間等圧プレスに供するステップと、
前記一軸プレスされおよび冷間等圧プレスされたモノリシック構造を、900~1100
℃の温度に加熱す
るステップと
を含み、
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が形成される、
方法。
【請求項16】
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、顆粒の形態であり、前記顆粒が、金属イオンおよび/または金属錯体を含有する溶液と接触させられる、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
前記ジルコニアセラミック粉末の1つまたは1つよりも多くが、ランタンイオ
ンを含む、請求項1
5または
16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのジルコニアセラミック粉末が、ランタンイオ
ンを含み、少なくとも1つの異なるジルコニアセラミック粉末が、マグネシウムイオ
ン、および/またはアルミニウムイオ
ンを含む、請求項1
5~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記モノリシック構造が、5Yジルコニアセラミック粉末および3Yジルコニアセラミック粉末を、遷移帯域を形成するように選択された比で混合することによって形成される、請求項1
5~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記モノリシック構造が、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、勾配イットリア含量が線形勾配である、請求項1
5~
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記モノリシック構造が、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、勾配イットリア含量が非線形勾配である、請求項1
5~2
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記勾配イットリア含量が、指数勾配、一次多項式勾配、二次多項式勾配、三次多項式勾配、べき乗則勾配、対数勾配、またはそれらの組合せである、請求項1
5~2
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、イットリア濃度が増大する、請求項1
5~2
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記勾配イットリア含量が、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの指数勾配関数の合計である、請求項1
5~2
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記イットリア含量勾配が、以下の方程式:
y=ax+b(式中、aは、0.05~3であり、bは、-50~10であ
る)または
y=-0.0167x
3+0.5286x
2-5.0119x+17.44(式中、yは、イットリア含量である)
によって記載されるか、または近似される、請求項1
5~2
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記イットリア含量が、2~8mol%であ
る、請求項1
5~2
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ジルコニアセラミック粉末が、1.5Y~10
Yから独立に選択される、請求項1
5~
26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1のイットリア含量を有する前記第1のジルコニアセラミック粉末が、3Y-TZPであり、第2のイットリア含量を有する前記第2のジルコニアセラミック粉末が、5Y-ZPである、請求項1
5~
27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、400ミクロンよりも大きいサイ
ズを有する1重量%未満の粒子を有する、請求項1
5~
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、200ミクロンよりも大きいサイ
ズを有する1重量%未満の粒子を有する、請求項1
5~
29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
開示の背景
歯科修復材/補綴のための高強度の歯科材料として、ジルコニアベースの材料などのセラミックが出現してきた。最終歯科修復材は、患者の歯の色に適合しているべきであり、すなわち「歯の色」であるべきである。ヒトの歯の色は、明るいほぼ白色-黄褐色から淡褐色の範囲に見え、非常に特異的な色空間を占める。この色空間は、一般に使用されるCIE(Commission Internationale de l’Eclariage)L*、a*、b*の慣習によって説明することができる。
【0002】
しかし、ジルコニアベースの材料、特に無色のジルコニアベースの材料は、真っ白であることが多く、半透明性が低く、その結果として、最終修復材/補綴の審美性は、不自然な歯のように見え、その色に関しては望ましくない。この材料の審美性を改善するために、層状ジルコニア材料が出現してきたが、その層が様々な色および/または半透明性を有する最先端の層状ジルコニア材料でも、まだ自然の歯の審美性とは比較にならない。層状ジルコニア材料は、個別の層を有しており、層間に境界があり、そこに色および/または半透明性の変化があり、このことが、これらの層状材料では自然の歯の審美性が再現されないことの理由となっている。
【0003】
当技術分野では、少なくとも上記に基づいて、歯科用途のための改善されたジルコニアベースの材料の必要性が満たされないまま残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の概要
本開示は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料、および歯科用品を提供する。本開示はまた、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料および焼結されたセラミック材料を作製する方法を提供する。本開示は、様々な例において、高強度ジルコニアと典型的に関連する望ましい二軸曲げ強度を維持しながらも、材料/物品の象牙質領域から切縁(incisal)領域の間に半透明性および色の滑らかな勾配遷移を示して自然な歯列を再現する、焼結されたジルコニア歯科材料および歯科用品を提供する。本開示は、切縁帯域と象牙質帯域の間に遷移または勾配帯域を利用することによって、切縁領域または帯域と象牙質領域または帯域の間に個別の層が存在しない、この滑らかな勾配遷移または色および/または半透明性を提供する。本発明はさらに、様々な例において、勾配帯域内の半透明性および/もしくは色、または切縁、勾配および象牙質の領域もしくは帯域の間の遷移に、観察できる層または境界をもたらさない。観察できるとは、目視検査または光学顕微鏡によることを意味する(例えば、顕微鏡を30倍、25倍、20倍、15倍、10倍、5倍、2倍の拡大率で使用するかまたは肉眼によって観察できる)。滑らかな遷移とは、勾配帯域内、または切縁、勾配および象牙質の領域もしくは帯域の間の遷移内に、この観察できる層または境界が存在しないことを指す。本発明はさらに、様々な例において、一定の半透明性および/または色である切縁帯域を示し、それが滑らかな遷移により勾配帯域に遷移し、勾配帯域が、滑らかな勾配の(観察できる境界または層が存在しない)半透明性および/または色を含み、それが一定の半透明性および/または色を有する象牙質帯域に滑らかに遷移する、焼結されたジルコニア歯科材料および歯科用品を提供する。本発明はさらに、様々な例において、一定の半透明性および/または色を示す切縁帯域および象牙質帯域におけるイットリア含量が、様々ではあるが一定であり、切縁帯域と象牙質帯域の間の勾配帯域が、イットリア含量勾配を有する、焼結されたジルコニア歯科材料および歯科用品を提供する。
【0005】
一態様では、本開示は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料および焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を提供する。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリアを含み、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリア含量勾配を有する。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、焼結されて、少なくとも部分的にまたは完全に焼結された材料を形成することができ、それが歯科用品になり得る。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、本開示の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、色勾配もしくは半透明性勾配、または色および半透明性の勾配を示し、層状材料を使用することなく自然の歯に類似のまたは自然の歯の審美性をもたらすと考えられる。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて、イットリア含量の勾配を有する。イットリア含量の勾配は、イットリア濃度の勾配と呼ぶことができる。勾配は、連続的であり、および途切れない勾配であり得る。勾配は、線形または非線形勾配であり得る。勾配は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の最長寸法に対して法線方向であり得る。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、異なる帯域を有することができ、それらは、切縁帯域(複数可)、象牙質帯域(複数可)、または遷移帯域(複数可)であり得る。遷移帯域(複数可)は、本明細書では勾配帯域(複数可)と呼ぶことができる。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々な形態因子(例えば、形状および/またはサイズ)を有することができる。
【0006】
一態様では、本開示は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を作製する方法を提供する。本開示の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製することができる。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製される。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて勾配イットリア含量を有する、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を作製する方法は、少なくとも第1のイットリア含量を有する第1のジルコニアセラミック粉末および第2のイットリア含量を有する第2のジルコニアセラミック粉末から、モノリシック構造(例えば、未焼結構造)を形成するステップ(第1のイットリア含量は、第2のイットリア含量とは異なる)と、モノリシック構造を、(例えば、未焼結緻密構造を形成するために)一軸プレスに供するステップと、一軸プレスされたモノリシック構造を、冷間等圧プレス(isotactic)に供するステップと、一軸プレスされ、および冷間等圧プレスされたモノリシック構造を、加熱する(例えば、予備焼結する)ステップとを含み、ここで、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が形成される。モノリシック構造または結果として得られる予備焼結されたジルコニア歯科材料は、複数の帯域(例えば、切縁帯域(複数可)、遷移帯域(複数可)、および象牙質帯域(複数可))を含み得る。遷移帯域は、イットリア含量の線形または非線形勾配を有することができる。モノリシック構造は、1つまたは1つよりも多くの異なるイットリア含量を有する2つまたは2つよりも多いジルコニアセラミック粉末を混合することよって形成され得る。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、焼結されて、焼結された(例えば、部分的に焼結されたまたは完全に/高密度に焼結された)歯科用ジルコニアセラミックを形成することができる。
【0007】
一態様では、本開示は、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を提供する。本開示の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製することができる。焼結されたジルコニア材料は、予備焼結された材料について本明細書に記載されるものと同じ組成(例えば、元素組成)を有することができる。焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、部分的に焼結されたまたは完全に焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料であり得る。焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、複数の帯域(例えば、切縁帯域(複数可)、遷移帯域(複数可)、および象牙質帯域(複数可))を含み得る。帯域は、モノリスおよび/または予備焼結されたジルコニア歯科材料の帯域に対応することができ、それから焼結されたジルコニア歯科材料が作製される。1つの帯域は、その他の帯域の1つまたは1つよりも多くとは異なる組成および/または1つもしくは1つよりも多くの異なる特性(例えば、それに限定されるものではないが、二軸曲げ強度、破壊靱性などを含めた物理的/機械的特性、それに限定されるものではないが、色、色合い(shade)、L*、a*、b*値、半透明性などを含めた光学的特性)、またはそれらの組合せ)を有することができる。
【0008】
一態様では、本開示は、歯科用品を提供する。本開示の歯科用品は、本開示の方法によって作製され得る。様々な例において、歯科用品は、本開示の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を使用して作製される。様々な例において、歯科用品は、本開示の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を含む(またはそれから形成される)。歯科用品は、様々な形態因子を有することができる。様々な例において、歯科用品は、ブランクまたはスマートブランク(smart blank)である。他の様々な例において、歯科用品は、歯科修復材である。歯科用品は、1つもしくは1つよりも多くの望ましい物理的/機械的特性、および/または1つもしくは1つよりも多くの望ましい光学的特性を有する(例えば、示す)ことができる。望ましい物理的/機械的特性、および/または1つもしくは1つよりも多くの望ましい光学的特性は、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料について本明細書に記載される通りである。
【0009】
本開示の性質および目的のさらなる理解のために、添付の図と併せて以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、タイプIIの予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の例(実施例1および実施例2)の曲げ強度を示す。
【0011】
【
図2】
図2は、予備焼結されたボディの無段階の色および半透明性勾配を示す。ボディは、予備焼結されていないことを表示する色を使用する未焼結状態であるが、予備焼結された状態では、材料は、象牙質および切縁部分が、>99%の実質的に白色のL
*値である。
【0012】
【
図3】
図3は、無段階の色および半透明性勾配を有する、焼結されたボディを示す。象牙質帯域から切縁帯域の間の不透明度の差は、実施例1の最も色合いが少ない場合でも、1mmで少なくとも7%である。
【0013】
【
図4】
図4は、歯科修復材の形状に形成された焼結された歯科用ジルコニアセラミックの一例を示し、対応する図表およびグラフは、帯域の概念および対応する粉末充填プロセスを実証する。
【0014】
【
図5】
図5は、線形(例えば、16mm)および非線形(例えば、20mm)粉末充填プロセスの原理図を示す。
【0015】
【0016】
【
図7】
図7は、予備焼結されたボディの例の特性を示す。
【0017】
【
図8】
図8は、焼結されたボディの一例の特性を示す。
【0018】
【
図9】
図9は、実施例1の粒子サイズおよび粉末分布を示す(ディスクの高さ16mm)。
【0019】
【
図10】
図10は、実施例3の粒子サイズおよび粉末分布を示す(ディスクの高さ16mm)。
【0020】
【
図11】
図11は、実施例4の粒子サイズおよび粉末分布を示す(ディスクの高さ16mm)。
【0021】
【0022】
【0023】
【
図14】
図14は、遷移帯域における切縁粉末体積%の計算に基づく手法を示す。
【0024】
【
図15】
図15は、実施例1の半透明性勾配を示す(ディスクの高さ16mm)。試料の厚さは、1.0mmである。
【0025】
【
図16】
図16は、実施例1の色勾配を示す(ディスクの高さ16mm)。色空間は、L
*a
*b
*である。試料の厚さは、1.0mmである。
【0026】
【
図17】
図17は、実施例5の半透明性勾配を示す(ディスクの高さ16mm)。試料の厚さは、1.0mmである。
【0027】
【
図18】
図18は、実施例5の色勾配を示す(ディスクの高さ16mm)。色空間は、L
*a
*b
*である。試料の厚さは、1.0mmである。
【0028】
【
図19】
図19は、多項式関数を使用する、距離関数としてのY
2O
3含量を示す(ディスクの高さは16mmである)。
【0029】
【
図20】
図20は、線形関数を使用する、距離関数としてのY
2O
3含量を示す(ディスクの高さは16mmである)。
【0030】
【
図21】
図21は、線形関数を使用する、距離関数としての粒子サイズを示す(ディスクの高さは16mmである)。
【0031】
【
図22】
図22は、線形関数を使用する、距離関数としての粒子サイズを示す(ディスクの高さは16mmである)。
【0032】
【
図23-1】
図23は、予備焼結されたおよび焼結されたジルコニア歯科材料の勾配帯域および非勾配帯域が組み合わされる様々な可能性(タイプ)を示す。
【
図23-2】
図23は、予備焼結されたおよび焼結されたジルコニア歯科材料の勾配帯域および非勾配帯域が組み合わされる様々な可能性(タイプ)を示す。
【
図23-3】
図23は、予備焼結されたおよび焼結されたジルコニア歯科材料の勾配帯域および非勾配帯域が組み合わされる様々な可能性(タイプ)を示す。
【0033】
【
図24】
図24は、距離関数としてのY
2O
3含量の一例(ディスクの高さ16mm)および多項式勾配関数の一例を示す。
【0034】
【
図25】
図25は、距離関数としてのY
2O
3含量の一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の一例を示す。
【0035】
【
図26】
図26は、距離関数としての粒子サイズの一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の一例を示す。
【0036】
【
図27】
図27は、距離関数としての粒子サイズの一例(ディスクの高さ16mm)および三次多項式勾配関数の一例を示す。
【0037】
【
図28】
図28は、距離関数としての半透明性の一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の例を示す。象牙質帯域内の化学組成は同じなので、象牙質帯域については、データ点を1つだけ測定した。象牙質帯域内のさらなる測定は、同一値をもたらすと想定することができる。同じことが切縁帯域にも当てはまる。
【0038】
【
図29】
図29は、距離関数としての半透明性の一例(ディスクの高さ16mm)および三次多項式勾配関数の一例を示す。
【0039】
【
図30】
図30は、距離関数としてのL
*明度の一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の一例を示す。
【0040】
【
図31】
図31は、距離関数としてのL
*明度の一例(ディスクの高さ16mm)および三次多項式勾配関数の一例を示す。
【0041】
【
図32】
図32は、距離関数としてのL
*明度の一例(ディスクの高さ16mm)および指数関数の一例を示す。
【0042】
【
図33】
図33は、距離関数としてのa
*値の一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の一例を示す。
【0043】
【
図34】
図34は、距離関数としてのa
*値の一例(ディスクの高さ16mm)および三次多項式勾配関数の一例を示す。
【0044】
【
図35】
図35は、距離関数としてのb
*値の一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の一例を示す。
【0045】
【
図36】
図36は、距離関数としてのb
*値の一例(ディスクの高さ16mm)および三次多項式勾配関数の一例を示す。
【0046】
【
図37】
図37は、距離関数としての二軸曲げ強度の一例(ディスクの高さ16mm)および線形勾配関数の一例を示す。
【0047】
【
図38】
図38は、実施例1および実施例5の勾配(b
*値)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
開示の詳細な説明
特許請求される主題が、ある特定の実施形態および例に関して本明細書に記載されているが、本明細書に記載される利益および特色のすべてを提供するわけではない実施形態および例を含めた他の実施形態および例も、本開示の範囲内にある。様々な構造的、論理的、およびプロセスのステップが、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0049】
本明細書を通して与えられるすべての数値範囲は、その上限値および下限値を含み、およびその範囲に該当するより狭いすべての数値範囲が本明細書にすべて明確に記載されているかのように、このようなより狭い数値範囲を含み、別段の記載がない限り、すべての値は、下限の値の10分の1まで含まれる。
【0050】
本開示は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料、および歯科用品を提供する。本開示はまた、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料および焼結されたセラミック材料を作製する方法を提供する。
【0051】
本開示は、様々な例において、高強度ジルコニアと典型的に関連する望ましい二軸曲げ強度を維持しながらも、切縁帯域と象牙質帯域の間の遷移または勾配帯域を利用して、材料/物品の象牙質領域または帯域から切縁領域または帯域の間に半透明性および色の滑らかな勾配遷移を示して自然な歯列を再現し、勾配帯域内に、または勾配領域もしくは帯域と切縁および象牙質の領域もしくは帯域との間に、観察できる層または境界が存在しない、焼結されたジルコニア歯科材料および歯科用品を提供する。
【0052】
滑らかであるとは、本明細書で使用される場合、材料の最長寸法に対して法線方向の、予備焼結されたジルコニア歯科材料、焼結されたジルコニア歯科材料、または歯科用品の少なくとも一部(例えば、切縁帯域または象牙質帯域と、直接隣接する遷移帯域の間の部分)またはすべてにおけるイットリア組成および/または色および/または半透明性(例えば、イットリア組成および/または色および/または半透明性における勾配)を説明する関数が、一次連続導関数、または一次連続導関数および二次連続導関数を有することを意味し得る。
【0053】
一態様では、本開示は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料および焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を提供する。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリアを含み、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリア含量勾配を有する。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、焼結されて、少なくとも部分的にまたは完全に焼結された材料を形成することができ、それが歯科用品になり得る。
【0054】
いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、本開示の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、色勾配もしくは半透明性勾配、または色および半透明性の勾配を示し、層状材料を使用することなく自然の歯に類似のまたは自然の歯の審美性をもたらすと考えられる。
【0055】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて、イットリア含量の勾配を有する。イットリア含量の勾配は、イットリア濃度の勾配と呼ぶことができる。勾配は、連続的であり、および途切れない勾配であり得る。勾配は、滑らかであり、および/または不連続性を有していない。勾配は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の最長寸法に対して法線方向であり得る。
【0056】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、異なる勾配イットリア含量を含む、異なる領域(本明細書では帯域とも呼ばれる)を有することができる。個々の帯域は、その他の帯域の1つもしくは1つよりも多くと同じ勾配を有することができ、または各帯域は、異なる勾配を有することができる。例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、少なくとも2つまたは少なくとも3つの帯域を含み、ここで、隣接する帯域は、異なるイットリア含量勾配を有する。
【0057】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々な量のイットリアを含むことができる。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料(または予備焼結されたジルコニア歯科材料の各独立な帯域)は、すべての0.1mol%値およびその間の範囲を含む2~8mol%のイットリア含量(例えば、イットリア濃度)を有する。例えば、イットリア含量は、勾配帯域において2~8mol%で変動し、それが遷移帯域になり得る。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、3~5mol%のイットリア含量(例えば、イットリア濃度)を有する。例えば、イットリア含量は、勾配帯域において3~5mol%で変動し、それが遷移帯域になり得る。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料に言及して使用されるイットリアmol%は、YのモルをYおよびZrのモルの合計によって割り、その結果に100を掛けたものであるか、またはY2O3のモルをY2O3およびZrO2のモルの合計によって割り、その結果に100を掛けたものである。
【0058】
一例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、一定のイットリア含量を有するセラミックの最大寸法に対して法線方向に、1~300ミクロン、あるいはセラミックの(例えば、遷移帯域の)10%もしくはそれ未満、5%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満の寸法(例えば、長さ)を有する、勾配イットリア含量が存在する領域を、有していない。別の例では、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、一定のイットリア含量を有するセラミックの最大寸法に対して法線方向に、1~300ミクロン、あるいはセラミックの(例えば、遷移帯域の)10%もしくはそれ未満、5%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満の寸法(例えば、長さ)を有する領域を有していない。
【0059】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々な勾配を有することができる。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、イットリア含量の勾配は、本明細書に記載される1つまたは1つよりも多くの望ましい特色(例えば、1つもしくは1つよりも多くの望ましい光学的特色、1つもしくは1つよりも多くの機械的特性、またはそれらの組合せ)を有する予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料をもたらすと考えられる。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて、イットリア含量の線形または非線形勾配を有することができる。
【0060】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリア濃度が第1の外表面から第2の外表面までの勾配に沿って増大する、勾配イットリア含量を有することができる。一例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、さらに、第1の外表面と第2の外表面の間にイットリア含量を含み、イットリア含量は、第1の外表面から第2の外表面までの寸法に沿った勾配に従って変動するイットリア濃度を有し、その勾配は、線形勾配または非線形勾配である。
【0061】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、関数(すなわち、方程式)または関数の組合せによって記載されるか、または近似される(例えば、定義される)、非線形イットリア勾配を有することができる。非限定的な例では、勾配は、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの勾配関数(すなわち方程式)の合計によって記載されるか、または近似される(例えば、定義される)。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおけるイットリア含量の非線形勾配を定義する関数の非限定的な例として、指数勾配を定義し得る指数関数、一次多項式勾配を定義し得る一次多項式関数、二次多項式勾配を定義し得る二次多項式関数、三次多項式勾配を定義し得る三次多項式関数、べき乗則多項式勾配を定義し得るべき乗則多項式関数、対数的(例えば、対数)勾配などを定義し得る対数的(例えば、対数)関数など、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0062】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、線形もしくは非線形イットリア勾配を有することができ、または以下の関数(すなわち方程式)の一方によって記載されるか、もしくは近似される少なくとも1つの領域(例えば、遷移帯域)を含むことができる:
y=ax+b(線形勾配)(式中、aは、すべての0.001値およびその間の範囲を含む0.05~3であり、bは、すべての0.1値およびその間の範囲を含む-50~10である(例えば、y=0.51x-1.57))またはy=-0.0167x3+0.5286x2-5.0119x+17.44(非線形勾配)(式中、yは、イットリア含量である)。非線形勾配関数の場合、この関数は、3Y-TZPおよび5Y-ZPジルコニア粉末を使用して形成された予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックについてのものであり、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、ディスクの最長寸法に対して法線方向に16mmの寸法を有するディスクの形態である。非線形勾配のこの具体例が提供されるが、非線形勾配として記載することができるジルコニアセラミック材料の他の混合物の決定は、当業者の範囲内である。
【0063】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々な形態因子(例えば、形状および/またはサイズ)を有することができる。非限定的な例では、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、ディスク、ブロック、ブランク、予め形成された歯科修復材、予め形成された歯科装置などの形態である。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々な形状およびサイズを有することができる。例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、10~30mm(例えば、14mm、16mm、18mm、20mm、または25mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する。例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、10~120mmまたは40~120mmの最長寸法(例えば、長さ、直径など)を有する(例えば、98.5mm(+/-5%、10%、または20%)の直径を有するディスク)。
【0064】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、複数の帯域を含み得る。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、それらの帯域の一部またはすべてが、自然な歯の様々な部分に対応し得ると考えられる。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、2つもしくは2つよりも多い帯域または3つもしくは3つよりも多い帯域を含む。様々な例において、帯域の1つだけが、勾配イットリア含量を有する。様々な例において、帯域のすべてが、勾配イットリア含量を有する。様々な例において、2つもしくは2つよりも多いまたは3つもしくは3つよりも多い帯域は、異なるイットリア含量を有し、それらの帯域は、独立に、勾配イットリア含量を有することができる。帯域は、一定のイットリア含量を有することができる。イットリア濃度が一定であると記載される様々な例において(例えば、象牙質帯域、切縁帯域など)、イットリア濃度の変化は、材料の最長寸法に対して法線方向の一部またはすべてに沿って、2%もしくはそれ未満、1%もしくはそれ未満、0.5%もしくはそれ未満、0.1%もしくはそれ未満、0.05%もしくはそれ未満、または0.01%もしくはそれ未満である。様々な例において、材料または物品の最長寸法に対して法線方向の、予備焼結されたジルコニア歯科材料の少なくとも一部(例えば、切縁帯域および/または象牙質帯域と、直接隣接する遷移帯域の間の部分)またはすべてにおけるイットリア組成を説明する関数(複数可)は、不連続ではない。
【0065】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域を含み得る。遷移帯域は、イットリア含量の線形または非線形勾配を有することができる。様々な例において、材料または物品の最長寸法に対して法線方向の、切縁帯域および/または象牙質帯域と、直接隣接する遷移帯域位置の間のイットリア濃度の差異は、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満、または0.01%未満である。切縁帯域および/または象牙質帯域は、一定のイットリア含量を有することができる。
【0066】
遷移帯域は、切縁帯域と象牙質帯域の間に配置され得る。切縁帯域は、遷移帯域に隣接してもよく、遷移帯域は、象牙質帯域に隣接する。
【0067】
様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法は、順に、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域に遭遇する。様々な例において、切縁帯域は、3mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または遷移帯域は、4mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または象牙質帯域は、7(+/-10%または20%)~19mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する。少なくとも1つの寸法は、予備焼結されたセラミック材料の最長寸法に対して垂直方向であり得る。様々な例において、切縁帯域は、3mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または遷移帯域は、4mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または象牙質帯域は、3(+/-2mm)~23mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する。少なくとも1つの寸法は、予備焼結されたセラミック材料の最長寸法に対して垂直方向であり得る。
【0068】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、様々な微細構造の特色を有することができる。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、多孔質であり得る。例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、焼結された二酸化ジルコニウムの理論密度の40~70%(例えば、50~60%、54~57%、または55~56%)の密度を有する(例えば、3Y-TZPについて6.1g/m2)。例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、30~60%(例えば、40~50%、43~47%、または44~45%)の多孔率を有する。密度および多孔率は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0069】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料(例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の、切縁帯域、象牙質帯域、遷移帯域、またはそれらの組合せ)は、様々な組成を有することができる。予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料(例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の、切縁帯域、象牙質帯域、遷移帯域、またはそれらの組合せ)は、イットリア(例えば、Y2O3)およびジルコニア(例えば、ZrO2)に加えて、1つまたは1つよりも多くの添加剤を含むことができ、それらは、着色添加剤(その例は、本明細書に記載される)、1つまたは1つよりも多くの焼結促進剤(例えば、アルミナ(例えば、Al2O3)、酸化マグネシウム(例えば、MgO)など、またはそれらの組合せ)、および1つまたは1つよりも多くの焼結抑制剤(例えば、酸化ランタン(例えば、La2O3)など、またはそれらの組合せ)であり得る。
【0070】
様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、以下の組成:
ジルコニア(例えば、ZrO2) 80~85重量%
イットリア(例えば、Y2O3) 4.5重量%未満~7重量%またはそれ未満
必要に応じて、酸化ハフニウム(例えば、HfO2) 5重量%またはそれ未満
必要に応じて、アルミナ(例えば、Al2O3) 1重量%またはそれ未満
必要に応じて、他の酸化物 1.5重量%未満(重量%値は、材料の総重量に基づく)
を有する。
これらの例のいくつかでは、ジルコニアの量は、非ジルコニア構成成分の量に基づく残り(構成成分のすべての合計を100%に等しくする)であってもよく、および/または必要に応じた構成成分の1つもしくは1つよりも多くもしくはすべてが存在する。他の様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の切縁帯域は、以下の組成:
ジルコニア(例えば、ZrO2) 90重量%超
イットリア(例えば、Y2O3) 9.15~9.55重量%
必要に応じて、シリカ(例えば、SiO2) 0.04~0.06重量%
必要に応じて、酸化鉄(例えば、Fe2O3) 0.02重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化マンガン(例えば、Mn2O3) 0.0005重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化クロム(例えば、Cr2O3) 0.002重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化プラセオジム(例えば、Pr2O3) 0.002重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化テルビウム(例えば、Tb2O3) 0.005重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化エルビウム(例えば、Er2O3) 0.5重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、マグネシウム(例えば、MgO) 0.02~0.03重量%
必要に応じて、アルミナ(例えば、Al2O3) 0.01~0.02重量%
を有し、および/または
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の象牙質帯域は、以下の組成:
ジルコニア(例えば、ZrO2) 87~95重量%
イットリア(例えば、Y2O3) 5~5.5重量%
アルミナ(例えば、Al2O3) 0.04~0.06重量%
必要に応じて、シリカ(例えば、SiO2) 0.02重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化鉄(例えば、Fe2O3) 0.02重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化マンガン(例えば、Mn2O3) 0.002重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化クロム(例えば、Cr2O3) 0.0045重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化プラセオジム(例えば、Pr2O3) 0.005重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化テルビウム(例えば、Tb2O3) 0.02重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化エルビウム(例えば、Er2O3) 0.7%もしくはそれ未満、
必要に応じて、酸化ランタン(lanthanium)(例えば、La2O3)0.45~0.65重量%
を有し、または
象牙質帯域は、以下の組成:
ジルコニア(例えば、ZrO2) 87~95重量%
イットリア(例えば、Y2O3) 5~5.5重量%
アルミナ(例えば、Al2O3) 0.04~0.06重量%
必要に応じて、シリカ(例えば、SiO2) 0.02重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化鉄(例えば、Fe2O3) 0.1重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化マンガン(例えば、Mn2O3) 0.002重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化クロム(例えば、Cr2O3) 0.005重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化プラセオジム(例えば、Pr2O3) 0.005重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化テルビウム(例えば、Tb2O3) 0.002重量%もしくはそれ未満
必要に応じて、酸化エルビウム(例えば、Er2O3) 0.7%もしくはそれ未満、
必要に応じて、酸化ランタン(例えば、La2O3) 0.45~0.65重量%
を有する(重量%値は、材料の総重量に基づくものであり、構成成分の1つまたは1つよりも多くは、領域の1つに、その他の領域に対して異なる重量百分率で存在し得る)。他の様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の切縁帯域は、以下の組成:
ジルコニア(例えば、ZrO2) 89重量%超
イットリア(例えば、Y2O3) 9.15~9.55重量%
必要に応じて、シリカ(例えば、SiO2) 0.04~0.06重量%
必要に応じて、酸化鉄(例えば、Fe2O3) 0.07重量%またはそれ未満
必要に応じて、酸化マンガン(例えば、Mn2O3) 0.0005重量%またはそれ未満
必要に応じて、酸化クロム(例えば、Cr2O3) 0.002重量%またはそれ未満
必要に応じて、酸化プラセオジム(例えば、Pr2O3) 0.002重量%またはそれ未満
必要に応じて、酸化テルビウム(例えば、Tb2O3) 0.005重量%またはそれ未満
必要に応じて、酸化エルビウム(例えば、Er2O3) 0.5重量%またはそれ未満
必要に応じて、マグネシウム(例えば、MgO) 0.005~0.03重量%
必要に応じて、アルミナ(例えば、Al2O3) 0.01~0.05重量%
を有する(重量%値は、材料の総重量に基づくものであり、構成成分の1つまたは1つよりも多くは、領域の1つに、その他の領域に対して異なる重量百分率で存在し得る)。これらの例において、ジルコニアの量は、非ジルコニア構成成分の量に基づく残り(構成成分のすべての合計を100%に等しくする)であってもよく、および/または必要に応じた構成成分1つもしくは1つよりも多くもしくはすべてが存在する。
【0071】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料(例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料または焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の、切縁帯域、象牙質帯域、遷移帯域、またはそれらの組合せ)は、イットリア(例えば、Y2O3)およびジルコニア(例えば、ZrO2)に加えて、1つまたは1つよりも多くの添加剤を含むことができ、それらは、着色添加剤、1つまたは1つよりも多くの焼結促進剤、および1つまたは1つよりも多くの焼結抑制剤であり得る。
【0072】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々なイットリア濃度を有するイットリア含有ジルコニア材料の組合せを使用することによって作製され得る。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、2つもしくは2つよりも多いまたは3つもしくは3つよりも多いイットリア含有ジルコニア材料の混合物から形成される。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって形成される。
【0073】
一態様では、本開示は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を作製する方法を提供する。本開示の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製することができる。様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製される。
【0074】
様々な例において、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて勾配イットリア含量を有する予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を作製する方法は、少なくとも第1のイットリア含量を有する第1のジルコニアセラミック粉末および第2のイットリア含量を有する第2のジルコニアセラミック粉末から、モノリシック構造(例えば、未焼結構造またはモールド)を形成するステップ(第1のイットリア含量は、第2のイットリア含量とは異なる)と、モノリシック構造を、(例えば、未焼結緻密構造を形成するために)すべての0.1MPa値およびその間の範囲を含む75~125MPaの圧力で一軸プレスに供するステップと、一軸プレスされたモノリシック構造を、(例えば、周囲温度、例えば18~25℃などで)すべての0.1MPa値およびその間の範囲を含む200~400MPaの圧力で冷間等圧プレスに供するステップと、一軸プレスされ、および冷間等圧プレスされたモノリシック構造を、すべての0.1℃値およびその間の範囲を含む900~1100℃(例えば、950~1050℃)の温度に加熱する(ばらばらにするおよび予備焼結する)ステップとを含み、ここで、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が形成される。加熱は、すべての分の整数値およびその間の範囲を含む1~4時間の保持時間にわたって行うことができ、その加熱は、最大加熱温度で行われ得る。
【0075】
様々なジルコニアセラミック粉末が使用され得る。ジルコニアセラミック粉末の混合物が使用され得る。ジルコニアセラミック粉末は、正方晶、立方晶もしくは単斜晶ジルコニアセラミック粉末、またはそれらの混合物のジルコニアセラミック粉末であり得る。ジルコニアセラミック粉末は、イットリアでドープされたジルコニアセラミック粉末(Y-TZP(正方晶ジルコニア多結晶)またはY-ZP(ジルコニア多結晶)と呼ぶことができる)であり得る。例えば、イットリアでドープされた正方晶または正方晶-立方晶または正方晶-単斜晶または正方晶-立方晶-単斜晶ジルコニアセラミック粉末は、Y2O3でドープされたジルコニア多結晶を含む。ジルコニアセラミック粉末は、(例えば、Y2O3に加えて)様々な安定化ドーパント/安定化剤をさらに含み得る。安定化ドーパント/安定化剤の非限定的な例として、Ce、Ca、Mg、Yb、Erおよびその酸化物、ならびにそれらの組合せが挙げられる。ジルコニアセラミック粉末は、焼結助剤として、少量の、例えば0.25重量%などのアルミナを含み得る。ジルコニアセラミック粉末は、顆粒であり得る。適切なジルコニアセラミック粉末は、商業的に入手可能であり、または当技術分野で公知の方法によって作製することができる。
【0076】
ジルコニアセラミック粉末は、望ましい粒径分布を有することができる。様々な例において、ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべては、400ミクロンよりも大きいまたは200ミクロンよりも大きいサイズ(例えば、最長寸法)を有する1重量%未満の粒子を有する。一例において、ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべては、200ミクロンよりも大きいサイズ(例えば、最長寸法)を有する粒子を有していない。
【0077】
ジルコニアセラミック粉末は、様々なイットリア含量を有することができる。様々な例において、ジルコニアセラミック粉末は、すべての0.01Y値およびその間の範囲を含むすべての0.1Y値およびその間の範囲(例えば、1.5Y~10Y)(式中、Yは、粉末におけるイットリアのmol%である)を含む0Y~10Yから独立に選択される。様々な例において、ジルコニアセラミック粉末は、1.5Y、2Y、2.8Y、3Y、4.25Y、4.5Y、5Y、5.5Yなどのジルコニアセラミック粉末から独立に選択される。一例において、ジルコニアセラミック粉末は、3Y-TZPおよび5Y-ZPジルコニアセラミック粉末である。
【0078】
ジルコニア粉末は、少なくとも2つの異なる相を有する2つまたは2つよりも多いジルコニア粉末の混合物(例えば、正方晶相を有するジルコニア粉末および立方晶相を有するジルコニア粉末の混合物)を含むことができ、ここでジルコニア粉末は、同じ名目上の組成(例えば、同じイットリア含量)または異なる名目上の組成(例えば、異なるイットリア含量)を有する。説明的な例として、5Y-ZP粉末は、2つの異なる相(例えば、正方晶および立方晶相、例えば、正方晶および立方晶相の45:55~55:45のまたは約50:50の混合物)を有する5Y-ZP粉末の混合物である。
【0079】
例えば、ジルコニアセラミック粉末の1つまたは1つよりも多くは、非着色性ドーパント/非着色剤を、ランタンイオン(例えば、La2O3またはLa(NO3)3.6H2Oによって提供され得る)として含む。様々な例において、少なくとも1つのジルコニアセラミック粉末は、ランタンイオン(例えば、La2O3またはLa(NO3)3.6H2Oなどによって提供され得る)を含み、少なくとも1つの異なるジルコニアセラミック粉末は、非着色性マグネシウムイオン(例えば、MgOまたはMg(NO3)2.6H2Oによって提供され得る)および/またはアルミニウムイオン(例えば、Al2O3またはAl(NO3)3.9H2Oによって提供され得る)を含む。
【0080】
ジルコニアセラミック粉末の1つまたは1つよりも多くは、着色され得る。異なる色を有するジルコニアセラミック粉末の組合せ(例えば、1つまたは1つよりも多くの異なる着色性イオンを含む)が使用され得る。ジルコニアセラミック粉末は、1つまたは1つよりも多くの着色剤を含み得る。着色剤(複数可)は、遊離もしくは溶質元素(複数可)として、またはその元素(複数可)の化合物(複数可)として存在し得る。
【0081】
着色剤(複数可)の非限定的な例として、合成および放射性元素を除くランタニド系列の元素およびその化合物、合成および放射性元素を除く周期表の5~11族およびその化合物、ならびにTiまたはScなどおよびその化合物(例えば、その酸化物)が挙げられる。ランタニド系列について、これには、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムが含まれる。周期表の5~11族について、これには、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ボーリウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、および金が含まれる。着色剤(複数可)は、イオンとして存在し得る。
【0082】
様々な塩の水溶液を、着色物質として使用することができる。上記の周期表のd-またはf-元素の、水和物塩または無水塩であってもよい水溶性塩を利用することができる。これらの元素の硝酸塩または塩化物水和物は、着色性塩の非限定的な例である。使用することができる着色性塩の非限定的な例は、Pr(NO3)3.5H2O、Fe(NO3)3.9H2O、FeCl3.6H2O Tb(NO3)3.5H2O、Er(NO3)3.5H2O、ErCl3.6H2O、Mn(NO3)2.4H2O、MnCl2.4H2O、Cr(NO3)3.9H2O、CrCl3.6H2O、およびその無水類似体などである。
【0083】
着色されたジルコニアセラミック粉末は、商業的に入手可能であり、または当技術分野で公知の方法によって作製することができる。一例において、ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべては、顆粒の形態であり、顆粒は、金属イオンおよび/または金属錯体を含有する溶液と接触させられる。
【0084】
モノリシック構造は、プレスされたまたは圧密化されたジルコニアセラミック粉末を含む。モノリシック構造は、未焼結体またはモールドと呼ぶことができる。モノリシック構造は、ジルコニアセラミック粉末に加えて、1つまたは1つよりも多くの追加の構成成分を添加することによって形成され得る。追加の構成成分の非限定的な例として、着色剤、安定化ドーパント/安定化剤が挙げられ、それらは、1つもしくは1つよりも多くの焼結促進剤(例えば、アルミナ(例えば、Al2O3)、酸化マグネシウム(例えば、MgO)など、またはそれらの組合せ)、1つもしくは1つよりも多くの焼結抑制剤(例えば、酸化ランタン(例えば、La2O3)など、またはそれらの組合せ)など、またはそれらの組合せであり得る。
【0085】
モノリシック構造または結果として得られる予備焼結されたジルコニア歯科材料は、複数の帯域を含み得る。様々な例において、モノリシック構造は、2つもしくは2つよりも多い帯域または3つもしくは3つよりも多い帯域を含む。様々な例において、帯域の1つだけが、勾配イットリア含量を有し、その他の帯域は、勾配イットリア含量を有していない。様々な例において、帯域のすべてが、勾配イットリア含量を有する。様々な例において、2つもしくは2つよりも多いまたは3つもしくは3つよりも多い帯域は、異なるイットリア含量を有し、それらの帯域は、独立に、勾配イットリア含量を有することができる。
【0086】
モノリシック構造または結果として得られる予備焼結されたジルコニア歯科材料は、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域を含み得る。遷移帯域は、イットリア含量の線形または非線形勾配を有することができる。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、帯域の一部またはすべてが、自然な歯の様々な部分に対応し得ると考えられる。
【0087】
遷移帯域は、切縁帯域と象牙質帯域の間に配置され得る。切縁帯域は、遷移帯域に隣接してもよく、遷移帯域は、象牙質帯域に隣接する。
【0088】
モノリシック構造は、第1のイットリア含量および第2のイットリア含量を有する2つの異なるセラミック粉末を混合することによって形成することができ、ここで、第1のイットリア含量は、第2のイットリア含量よりも多い(例えば、5Yおよび3Yまたは5Y-ZPおよび3Y-TZPジルコニアセラミック粉末)。モノリシック構造は、第1のイットリア含量および第2のイットリア含量を有する2つの異なるセラミック粉末(例えば、5Yおよび3Yまたは5Y-ZPおよび3Y-TZPジルコニアセラミック粉末)を、遷移帯域を形成するように選択された比で混合し、および/または第1のイットリア含量を有するセラミック粉末(例えば、アルミナおよび/または酸化マグネシウムを含み得る3Yまたは3Y-TZPジルコニアセラミック粉末)を使用して象牙質帯域を形成し、および/または第1のイットリア含量を有するセラミック粉末(例えば酸化ランタンを含み得る、5Yまたは5Y-ZPジルコニアセラミック粉末)を使用して切縁帯域を形成することによって、形成され得る。
【0089】
様々な例において、モノリシック構造または結果として得られる予備焼結されたジルコニア歯科材料は、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法は、順に、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域に遭遇する。様々な例において、切縁帯域は、3mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または遷移帯域は、4mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または象牙質帯域は、7(+/-10%または20%)~19mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する。少なくとも1つの寸法は、モノリシック構造の最長寸法に対して垂直方向であり得る。様々な例において、切縁帯域は、3mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または遷移帯域は、4mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または象牙質帯域は、3(+/-2mm)~23mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する。
【0090】
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、焼結された(例えば、部分的に焼結されたまたは完全に/高密度に焼結された)歯科用ジルコニアセラミックを形成するために焼結され得る。様々な例において、方法は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックを焼結する(例えば、完全に/高密度に焼結する)ステップをさらに含み、ここで、焼結された歯科用ジルコニアセラミックが形成される。適切な焼結条件の選択は、当業者の権限の範囲内である。
【0091】
ブランクの形態であり得る予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、歯科成形パーツに成形され得る。様々な例において、ブランクの形態であり得る予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、診察台脇(chairside)のミリングシステムまたはより大きい歯科技工室のミリングシステムを含めた、歯科技工室または歯科診療において利用可能なミリング装置を使用してミル粉砕可能(millable)である。例えば、歯科成形パーツへの成形は、歯科実験室または歯科クリニックで行われる。成形は、ミリングまたは研磨(grinding)によって、例えばCAD/CAMユニットを用いることによって行われ得る。こうして得られた歯科修復材の歯科成形パーツの拡大(enlarged)プリフォームは、次に、焼結され得る。
【0092】
焼結は、様々な温度で行われ得る。例えば、焼結は、すべての0.1℃値およびその間の範囲を含む1200℃~1600℃の温度で行われる。例えば、高密度焼結は、1300℃~1550℃または1400℃~1500℃で行われる。焼結ステップの期間は、例えば5分間~2時間(例えば、10~30分間)継続し得る。加熱および必要に応じて冷却を伴う完全な標準焼結プロセスは、一般に、およそ8~10時間継続する。完全な急速焼結プロセスは、一般に2~5時間かかる。ミリングプロセスは、歯科成形パーツが、焼結中の成形パーツの収縮を考慮に入れた余分を示すように行われ得る。焼結は、マイクロ波エネルギーまたは誘導加熱を使用して行うことができ、それによって、典型的にプロセス時間がさらに短縮される。調製された歯科成形パーツは、最終歯科修復材となり得るか、または最終歯科修復材を生成するためにさらに処理することができ、例えばベニヤなどが提供される。
【0093】
一態様では、本開示は、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を提供する。本開示の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製することができる。様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、本開示の方法によって作製される。
【0094】
焼結されたジルコニア材料は、予備焼結された材料について本明細書に記載されるものと同じ組成(例えば、元素組成)を有することができる。様々な例において、焼結されたジルコニア材料は、予備焼結された材料について本明細書に記載されるものと同じ組成(例えば、元素組成)を有する。
【0095】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、部分的に焼結されたまたは完全に焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料であり得る。本明細書における1つまたは複数の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料へのすべての言及は、別段記述されない限り、部分的に焼結されたまたは完全に焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の両方を含む。例えば、完全に焼結された3Y-TZPは、密度が、6.0g/cm3よりも大きいか(例えば、ISO 13356に従って測定される)、または典型的に材料の理論密度(TD)の99%よりも大きい(例えば、ISO 13356に従って測定される)場合、完全に焼結されている。下記の予備焼結密度は、部分的に焼結された状態が予備焼結密度よりも大きいことを示す。典型的に、予備焼結密度は、2.9~3.4g/cm3の範囲である。
【0096】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料から、熱処理プロセス(例えば、焼結)で生成された材料であってもよく、ここでは、結晶部分が非常に多く保持され、ほとんどの場合、5体積%を十分に下回るごく少量の部分のガラス相部分が、個々の結晶の間に形成される。
【0097】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、複数の帯域を含み得る。それらの帯域は、モノリスおよび/または予備焼結されたジルコニア歯科材料の帯域に対応することができ、それから焼結されたジルコニア歯科材料が作製される。1つの帯域は、その他の帯域の1つまたは1つよりも多くとは異なる組成および/または1つもしくは1つよりも多くの異なる特性(例えば、物理的/機械的特性、光学的特性、またはそれらの組合せ)を有することができる。様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、2つもしくは2つよりも多いまたは3つもしくは3つよりも多い帯域を含む。
【0098】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域を含み得る。遷移帯域は、切縁帯域と象牙質帯域の間に配置されることができ、および/または切縁帯域は、遷移帯域に隣接し、遷移帯域は、象牙質帯域に隣接する。
【0099】
様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法は、順に、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域に遭遇する。切縁帯域は、3mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有することができ、および/または遷移帯域は、4mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有することができ、および/または象牙質帯域は、7(+/-10%または20%)~19mm(+/-10%または20%)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有することができる。様々な例において、切縁帯域は、3mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または遷移帯域は、4mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または象牙質帯域は、3(+/-2mm)~23mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する。少なくとも1つの寸法は、予備焼結されたセラミック材料の最長寸法に対して垂直方向であり得る。少なくとも1つの寸法は、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の最長寸法に対して垂直方向であり得る。
【0100】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、切縁帯域よりも暗色の象牙質帯域および象牙質帯域よりも半透明な切縁帯域を有することが望ましい場合がある。説明的な例として、このような焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、5Yまたは3Yジルコニアセラミック粉末を、遷移帯域を形成するように選択された比で混合し、および/または3Yジルコニアセラミック粉末(酸化ランタン、および必要に応じて1つまたは1つよりも多くの着色性イオンを含み得る)を使用して象牙質帯域を形成し、および/または5Yジルコニアセラミック粉末(アルミナおよび/または酸化マグネシウム、ならびに必要に応じて1つまたは1つよりも多くの着色性イオンを含み得る)を使用して切縁帯域を形成することによって形成された、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を焼結することによって形成することができる。
【0101】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリア含量の様々な勾配を有することができる。勾配の1つもしくは1つよりも多くまたはすべては、モノリスおよび/または予備焼結されたジルコニア歯科材料の勾配に対応することができ、それから、焼結されたジルコニア歯科材料が作製される。焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて、イットリア含量の線形または非線形勾配を有することができる。複数の帯域を有する焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の場合、勾配イットリア含量は、帯域の少なくとも2つまたは帯域の少なくとも3つにおいて異なり得る。
【0102】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、イットリア濃度が第1の外表面から第2の外表面までの勾配に沿って増大する、勾配イットリア含量を有することができる。一例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、さらに、第1の外表面と第2の外表面の間にイットリア含量を含み、イットリア含量は、第1の外表面から第2の外表面までの寸法に沿った勾配に従って変動するイットリア濃度を有し、その勾配は、線形勾配または非線形勾配である。
【0103】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、関数(すなわち、方程式)または関数の組合せによって記載されるか、または近似される(例えば、定義される)、非線形イットリア勾配を有することができる。非限定的な例では、勾配は、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの指数勾配関数(すなわち方程式)の合計によって記載されるか、または近似される(例えば、定義される)。焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおけるイットリア含量の非線形勾配を定義する関数の非限定的な例として、指数勾配を定義し得る指数関数、一次多項式勾配を定義し得る一次多項式関数、二次多項式勾配を定義し得る二次多項式関数、三次多項式勾配を定義し得る三次多項式関数、べき乗則多項式勾配を定義し得るべき乗則多項式関数、対数的(例えば、対数)勾配などを定義し得る対数的(例えば、対数)関数など、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0104】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、非線形イットリア勾配を有することができ、または以下の関数(すなわち方程式)の一方によって記載されるか、もしくは近似される(例えば、定義される)少なくとも1つの領域(例えば、遷移帯域)を含むことができる:y=ax+b(線形勾配)(式中、aは、すべての0.001値およびその間の範囲を含む0.05~3であり、bは、すべての0.1値およびその間の範囲を含む-50~10である(例えば、y=0.51x-1.57))またはy=-0.0167x
3+0.5286x
2-5.0119x+17.44(非線形勾配)(式中、yは、イットリア含量である)。一例において、この非線形勾配は、3Y-TZPおよび5Y-ZPジルコニアセラミック粉末の混合物から形成された予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックから形成される、16mmのディスクについてのものである(例えば、
図19に示される通り)。
【0105】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、1つまたは1つよりも多くの望ましい物理的/機械的特性を有する(例えば、示す)ことができる。焼結された歯科用ジルコニアセラミック(またはその一部)は、1つまたは1つよりも多くの物理的/機械的特性の値において勾配を示し得る。様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックの少なくとも一部またはすべては、破壊靱性、または二軸曲げ強度、または破壊靱性と二軸曲げ強度の両方において勾配を示す。他の様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックの少なくとも一部またはすべては、破壊靱性、または二軸曲げ強度、または破壊靱性と二軸曲げ強度の両方において勾配を示し、半透明性および/または色において勾配を示す。
【0106】
物理的/機械的特性または光学的特性の勾配は、連続的であり、および途切れない勾配であり得る。物理的/機械的特性または光学的特性の勾配は、不連続ではあり得ない。焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、線形または非線形的な物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配を有することができる。勾配は、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の最長寸法に対して法線方向であり得る。
【0107】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、異なる物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配を有する異なる領域(本明細書では帯域とも呼ばれる)を有することができる。個々の帯域は、その他の帯域の1つもしくは1つよりも多くと同じ勾配を有することができ、または各帯域は、異なる勾配を有することができる。例えば、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、少なくとも2つまたは少なくとも3つの帯域を含み、ここで、隣接する帯域は、異なる物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配を有する。
【0108】
一例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、一定の物理的/機械的特性および/または光学的特性を有するセラミックの最大寸法に対して法線方向に、1~200ミクロン(またはセラミックの(例えば、遷移帯域の)10%もしくはそれ未満)の寸法(例えば、長さ)を有する、1つもしくは1つよりも多くの物理的/機械的特性および/または1つもしくは1つよりも多くの光学的特性の勾配が存在する領域を、有していない。別の例では、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、一定の物理的/機械的特性および/または光学的特性を有するセラミックの最大寸法に対して法線方向に、1~300ミクロン、あるいはセラミックの(例えば、遷移帯域の)10%もしくはそれ未満、5%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満の寸法(例えば、長さ)を有する領域を有していない。
【0109】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配を有することができ、ここで、物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配は、第1の外表面から第2の外表面までの勾配に沿って増大または低減する。一例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、さらに、第1の外表面と第2の外表面の間にイットリア含量を含み、イットリア含量は、第1の外表面から第2の外表面までの寸法に沿った勾配に従って変動するイットリア濃度を有し、物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配は、線形勾配または非線形勾配である。
【0110】
歯科用ジルコニアセラミック材料は、関数(すなわち、方程式)または関数の組合せによって記載されるか、または近似される(例えば、定義される)、非線形的な物理的/機械的特性および/または光学的特性の勾配を有することができる。非限定的な例では、勾配は、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの勾配関数(すなわち方程式)の合計によって記載されるか、または近似される(例えば、定義される)。焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべての物理的/機械的特性および/または光学的特性における非線形勾配を定義する関数の非限定的な例として、指数勾配を定義し得る指数関数、一次多項式勾配を定義し得る一次多項式関数、二次多項式勾配を定義し得る二次多項式関数、三次多項式勾配を定義し得る三次多項式関数、べき乗則多項式勾配を定義し得るべき乗則多項式関数、対数的(例えば、対数)勾配などを定義し得る対数的(例えば、対数)関数など、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0111】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック試料の二軸曲げ強度は、ISO 6872に従って、3つのボール上のピストンを用いる試験を使用して決定され得る。焼結された歯科用ジルコニアセラミックの破壊靱性は、単一端Vノッチ付きビーム方法ではISO 6872ガイドラインに従って、またはISO 14627:2012に従うVickers圧入破壊(indentation fracture)(IF)に従って試験され得る。単一端Vノッチ付きビーム方法では、バー(3mm×4mm×17mm)を製作し、0.8~1.2mmの範囲のVノッチを用いて調製することができる。焼結された歯科用ジルコニアセラミックの硬度試験は、ISO 14705(例えば、ISO 14705:2008)に従って決定され得る。
【0112】
ISO 6872:2015およびISO 14705:2016は、本願の調製の時点で入手可能な最新のISO試験プロトコールであったが、ISO 6872およびISO 14705の将来および過去のバージョンは、わずかに異なっていても本質的には同じ試験法を使用し、公式ISO 6872およびISO 14705の経時的ないかなるわずかな修正も、許容される誤差範囲を超えて試験結果を変えるものではないことが、当業者には理解されよう。
【0113】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、望ましい光学特性を有することができる。例えば、歯科用ジルコニアセラミックの少なくとも一部は、半透明性において勾配を示さない。様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法に沿って、半透明性は実質的に同じである(例えば、5%を超える、1%を超える、または0.1%を超えるまでは変動していない)。一例において、焼結されたジルコニアセラミック材料の少なくとも一部、複数の部分、またはすべては、焼結されたジルコニアセラミック材料の1~2mmの厚さの試料について、560nmの波長で40~60%の光透過度を有する。
【0114】
複数の帯域を有する焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の場合、透過度は、帯域の少なくとも2つまたは帯域の少なくとも3つにおいて異なり得る。様々な例において、色および/または二軸曲げ強度は、帯域のそれぞれにおいて異なる。一例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、15~35%(例えば、17~20%)の透過度(象牙質帯域の焼結されたジルコニアセラミック材料の1~2mmの厚さの試料について560nmにおいて)を有する象牙質帯域、および/または25~40%(例えば、30~35%)の透過度(切縁帯域の焼結されたジルコニアセラミック材料の1~2mmの厚さの試料について)を有する切縁帯域、および/または15~40%の透過度(切縁帯域の焼結されたジルコニアセラミック材料の1~2mmの厚さの試料について)を有する遷移帯域を含む。
【0115】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、望ましい半透明性を有することができる。例えば、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って(例えば、象牙質帯域から、遷移帯域を通り、象牙質帯域に移る)、半透明性は増大する。例えば、半透明性は、線形関数(例えば、y=3.575x-16.0012)に対応して増大する。例えば、半透明性は、非線形関数(例えば、三次多項式関数、例えば、y=0.4374x3+15.056x2-168.28x+634.39など)に対応して増大する。
【0116】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、望ましい二軸曲げ強度を有することができる。例えば、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って(例えば、象牙質帯域から、遷移帯域を通り、切縁帯域に移る)、二軸曲げ強度または平均二軸強度は、低減する。例えば、二軸強度または平均二軸強度は、線形関数(例えば、y=-189.47x+3314.7)または非線形関数に対応して低減する。
【0117】
歯科用ジルコニアセラミック材料は、望ましい色を有することができる。歯科用ジルコニアセラミック材料は、同じ色または複数の色であり得る。例えば、歯科用ジルコニアセラミック材料は、複数の帯域を有し、帯域の少なくとも1つは、その他の帯域とは異なる色を有することができ、または各帯域は、異なる色を有することができる。個々の色は、三次元直交座標系で色を表す、一般に使用されるCIE(Commission Internationale de l’Eclariage)L*、a*、b*の慣習によって説明され得る。L*または「値」は、輝度または明度の尺度であり、縦軸に表される。a*およびb*座標は、色度の尺度であり、地平座標で表され、正のa*は赤色を表し、負のa*は緑色を表し、正のb*は黄色を表し、負のb*は青色を表す。色についての説明の開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,030,209号は、Vita Zahnfabrikによって製造されたVita Lumen(登録商標)色合いガイドシステムによって表された歯の色のCIE L*、a*、b*色座標を論じている。その文書は、歯の色の色空間を提供している。本明細書で、「色」は、別段指定されない限りこの色空間に該当するか、または実質的に該当するCIE L*、a*、b*色座標を意味すると解釈される。切縁エリアおよび象牙質エリアを除く、自然な歯列の色の多様性は、約60~約100のL*、約-3~約+10のa*、および約2~約36のb*によって区別される色空間に属するものとして、定量的に説明することができる。
【0118】
例えば、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って(例えば、象牙質帯域から、遷移帯域を通り、切縁帯域に移る)、色は変化する。例えば、L*明度値は、線形関数(例えば、y=2.1081x+59.871)もしくは非線形関数(例えば、三次多項式関数、例えば、y=-0.1595x3+5.5218x2-61.295x+301.027など、または指数関数、例えば、y=63.028e0.0251xなど)に対応して増大し、および/またはa*値は、線形関数(例えば、y=-1.7045x+22.681)もしくは非線形関数(例えば、三次多項式関数、例えば、y=0.1135x3-3.9863x2+44.714x-156.49など)に対応して低減し、および/またはb*値は、線形関数(例えば、y=-1.7136x+39.511)もしくは非線形関数(例えば、三次多項式関数、例えば、y=0.1817x3-6.5495x2+76.468x-269.4など)に対応して低減する。
【0119】
焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、望ましい微細構造を有することができる。例えば、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、第1の外表面および第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、第1の外表面から第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って(例えば、象牙質帯域から、遷移帯域を通り、切縁帯域に移る)、粒子サイズは増大する。例えば、粒子サイズは、線形関数(例えば、y=0.1765x-1.2488)に対応して増大する。例えば、粒子サイズは、非線形関数(例えば、三次多項式関数、例えば、y=0.0037x3+0.0934x2-0.5318x+0.1885など)に対応して増大する。
【0120】
複数の帯域を有する焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の場合、色および/または半透明性および/または二軸曲げ強度は、帯域の少なくとも2つまたは帯域の少なくとも3つにおいて異なってもよい。様々な例において、色および/または半透明性および/または二軸曲げ強度は、帯域のそれぞれにおいて異なる。様々な例において、材料または物品の最長寸法に対して法線方向に、焼結されたジルコニア歯科材料(または歯科用品)の少なくとも一部(例えば、切縁帯域および/または象牙質帯域と、直接隣接する遷移帯域の間の部分)またはすべてにおけるイットリア組成および/または色および/または半透明性を説明する関数(複数可)は、不連続ではない。様々な例において、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、すべての整数MPa値およびその間の範囲を含む500~1200MPa(例えば、600~800MPaまたは1000~1200MPa)の範囲の二軸曲げ強度を有する第1の帯域(切縁帯域であり得る)、ならびにすべての整数MPa値およびその間の範囲を含む800~1700MPa(例えば、850~1200MPaまたは1400~1700MPa)の範囲の二軸曲げ強度を有する第2の帯域(象牙質帯域であり得る)、ならびにすべての整数MPa値およびその間の範囲を含む600~1400MPa(例えば、700~1000MPaまたは1100~1400MPa)の範囲の二軸曲げ強度を有する遷移帯域を有する。これらの例において、第2の帯域の二軸曲げ強度は、第1の帯域の二軸曲げ強度より大きくてもよい。これらの例において、第1の帯域の半透明性は、第2の帯域の半透明性より高くてもよい。
【0121】
焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料は、様々な形態因子を有することができる。非限定的な例では、焼結された歯科用ジルコニアセラミックは、歯科用品、歯科修復材、または歯科用クラウンなどの形態である。
【0122】
歯科用ジルコニアセラミック材料(または歯科用品)は、多層構造でなくてもよい。様々な例において、歯科用ジルコニアセラミック(または歯科用品)は、個別の層を示さない。個別の層は、光学的方法(例えば、光学顕微鏡)によって観察され得る。様々な例において、歯科用ジルコニアセラミック材料(または歯科用品)は、目視検査または光学顕微鏡によって観察できる(例えば、顕微鏡を30倍、25倍、20倍、15倍、10倍、5倍、2倍の拡大率で使用するかまたは肉眼で観察できる)、1つまたは1つよりも多くの個別の層(例えば、一定のイットリア含量を含む層)を有していない。
【0123】
一態様では、本開示は、歯科用品を提供する。本開示の歯科用品は、本開示の方法によって作製され得る。様々な例において、歯科用品は、本開示の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を使用して作製される。様々な例において、歯科用品は、本開示の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を含む(またはそれから形成される)。
【0124】
歯科用品は、様々な形態因子を有することができる。様々な例において、歯科用品は、ブランクまたはスマートブランクである。他の様々な例において、歯科用品は、歯科修復材である。歯科修復材の非限定的な例として、フルカントゥア(full-contour)FPD(固定部分義歯(fixed partial denture))、ブリッジ、インプラントブリッジ、マルチユニットフレームワーク(multi-unit framework)、アバットメント、クラウン、部分クラウン、ベニヤ、インレー、アンレー、歯列矯正リテーナー、保隙装置、歯置換装置、スプリント、義歯、ポスト、歯、ジャケット、フェーシング、ファセット、インプラント、シリンダー、コネクターなどが挙げられる。スマートブランクは、本明細書に記載される歯科修復材の製作のために使用され得る、プリフォームまたはニアネットシェイプCAD/CAMミリングブランクである。
【0125】
歯科用品は、1つもしくは1つよりも多くの望ましい物理的/機械的特性および/または1つもしくは1つよりも多くの望ましい光学的特性を有する(例えば、示す)ことができる。望ましい物理的/機械的特性および/または1つもしくは1つよりも多くの望ましい光学的特性は、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料について上記される通りである。
【0126】
本明細書で開示される様々な実施形態および例に記載される方法のステップは、本開示の方法を行うのに十分である。したがって、一例において、方法は、本明細書に開示される方法のステップの組合せから本質的になる。別の例では、方法は、このようなステップからなる。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、本開示を例示するために提示される。実施例は、いかなる事項も限定することを企図しない。
(実施例1)
【0128】
この実施例は、本開示の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料および歯科用品の例を記載する。この実施例はまた、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料および歯科用品の特徴、ならびに予備焼結された歯科用ジルコニア歯科用セラミック材料を作製する方法を記載する。
【0129】
図1~38は、本開示の予備焼結されたジルコニア歯科材料および焼結されたジルコニア歯科材料の例(実施例1~5)の様々な組成的特色、構造的特色、および特性を記載する。実施例の材料を、本明細書に記載される方法を使用し、3Y-TZPおよび5Y-ZPジルコニアセラミック粉末を使用して調製した。
【0130】
破壊抵抗性を、ISO 14627:2012に従ってVickers圧入破壊(IF)を使用して決定した。3Y-TZPから誘導された材料の場合、196.13Nの負荷に相当するHV20の試験力を使用した。5Y-ZPから誘導された材料の場合、49.03Nの負荷に相当するHV5の試験力を使用した。ビッカーズ硬度は、ISO 14705:2008に従って決定した。
【0131】
【0132】
【0133】
本開示を、1つまたは1つよりも多くの特定の実施形態および/または例に関して記載してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態および/または例も行われ得ることを理解されよう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて、イットリア含量が連続的であり、および途切れない線形勾配または非線形勾配を有する、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目2)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、さらに、前記第1の外表面と前記第2の外表面の間にイットリア含量を含み、前記イットリア含量が、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法に沿った勾配に従って変動するイットリア濃度を有し、前記勾配が、線形または非線形勾配である、項目1に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目3)
前記非線形勾配が、指数勾配、一次多項式勾配、二次多項式勾配、三次多項式勾配、べき乗則勾配、対数勾配など、またはそれらの組合せである、項目1または2に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目4)
前記イットリア濃度が、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの勾配に沿って増大する、項目2または3に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目5)
前記勾配が、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの指数勾配関数の合計である、項目1~4のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目6)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、異なる勾配を有する少なくとも2つの隣接する勾配帯域を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目7)
前記勾配が、以下の方程式:
y=ax+b(式中、aは、0.05~3であり、bは、-50~10である(例えば、y=0.51x-1.57))または
y=-0.0167x
3
+0.5286x
2
-5.0119x+17.44(式中、yは、イットリア含量である)
によって記載されるか、または近似される、項目1~6のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目8)
前記イットリア含量が、2~8mol%である(例えば、前記イットリア濃度は、前記勾配帯域に沿って2~8mol%で変動する)(例えば、前記イットリア含量が、3~5mol%である(例えば、前記イットリア濃度は、前記勾配帯域に沿って3~5mol%で変動する))、前記項目のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目9)
前記イットリア含量が、2つのイットリア含有ジルコニア材料の混合物から形成される、前記項目のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目10)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法に沿って、実質的に同じ色(例えば、5%を超える、1%を超える、または0.1%を超えるまでは変動していない)を有する、項目9に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目11)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、ディスク、ブロック、ブランク、予め形成された歯の修復材、予め形成された歯科装置などの形態である、前記項目のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目12)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、10~30mm(例えば、14mm、16mm、18mm、20mm、または25mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する、前記項目のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目13)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、2つもしくは2つよりも多い帯域または3つもしくは3つよりも多い帯域を含む、前記項目のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目14)
前記勾配イットリア含量が、前記帯域の少なくとも2つまたは前記帯域の少なくとも3つにおいて異なる、項目13に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目15)
前記勾配イットリア含量が、前記帯域のそれぞれにおいて異なる、項目13に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目16)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域を含む、項目13~15のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目17)
前記遷移帯域が、前記切縁帯域と前記象牙質帯域の間に配置される、項目16に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目18)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法が、順に、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域に遭遇する、項目16または17に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目19)
前記切縁帯域が、前記遷移帯域に隣接し、前記遷移帯域が、前記象牙質帯域に隣接する、項目16または17に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目20)
前記切縁帯域が、3mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または前記遷移帯域が、4mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または前記象牙質帯域が、3(+/-2mm)~23mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する、項目16~19のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目21)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、多孔質である、前記項目のいずれかに記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目22)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、二酸化ジルコニウムの理論密度の50~70%(例えば、50~60%、54~57%、または55~56%)の密度を有する、前記項目のいずれかに記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目23)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、15~120mmの最長寸法(例えば、長さ、直径など)を有する(例えば、98.5mm(+/-5%、10%、または20%)の直径を有するディスク)、前記項目のいずれかに記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目24)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックの少なくとも一部またはすべてが、破壊靱性、または二軸曲げ強度、または破壊靱性および二軸曲げ強度において勾配を示す、焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目25)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、破壊靱性、二軸曲げ強度または硬度の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、線形勾配である、項目24に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目26)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、破壊靱性、二軸曲げ強度または硬度の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、非線形勾配である、項目24に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目27)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、破壊靱性、二軸曲げ強度または硬度の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、独立に、線形勾配または非線形勾配である、項目24に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目28)
平均二軸曲げ強度が、以下の方程式:
y=-189.47x+3314.7(式中、yは、平均二軸曲げ強度である)
によって記載されるか、または近似される、項目24~27のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目29)
完全に焼結された歯科用ジルコニアセラミックの少なくとも一部が、半透明性および/または色において勾配を示さない、項目24~27のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目30)
焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の必ずしもすべてではないが少なくとも一部に沿って、色および/または半透明性が実質的に同じである(例えば、5%を超える、1%を超える、または0.1%を超えるまでは変動していない)、項目29に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目31)
前記焼結されたセラミックボディの少なくとも一部、複数の部分、またはすべてが、前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックボディの1~2mmの厚さの試料について、560nmの波長で40~60%の透過度を有する、項目24~30のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目32)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、2つもしくは2つよりも多い帯域または3つもしくは3つよりも多い帯域を含む、項目24~31のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目33)
前記勾配イットリア含量が、前記帯域の少なくとも2つまたは前記帯域の少なくとも3つにおいて異なる、項目32に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目34)
前記勾配イットリア含量が、前記帯域のそれぞれにおいて異なる、項目32に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目35)
前記半透明性および/または色および/または二軸曲げ強度が、前記帯域の少なくとも2つまたは前記帯域の少なくとも3つにおいて異なる、項目32~34のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目36)
前記半透明性および/または色および/または二軸曲げ強度が、前記帯域のそれぞれにおいて異なる、項目32~35のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目37)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域を含む、項目32~36のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目38)
前記遷移帯域が、前記切縁帯域と前記象牙質帯域の間に配置される、項目37に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目39)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法が、順に、切縁帯域、遷移帯域、および象牙質帯域に遭遇する、項目37または38に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目40)
前記切縁帯域が、前記遷移帯域に隣接し、前記遷移帯域が、前記象牙質帯域に隣接する、項目37~39に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目41)
前記切縁帯域が、3mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または前記遷移帯域が、4mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/または前記象牙質帯域が、3(+/-2mm)~23mm(+/-2mm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する、項目37~40のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目42)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側の第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面の寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って(例えば、前記象牙質帯域から、前記遷移帯域を通り、前記象牙質帯域に移る)、粒子サイズが増大する、項目37~41のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目43)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料の少なくとも一部またはすべてにおいて、イットリア含量が連続的であり、および途切れない非線形勾配または非線形勾配を有する、項目37~42のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目44)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および前記第1の外表面の反対側にある第2の外表面を有し、さらに、前記第1の外表面と前記第2の外表面の間にイットリア含量を含み、前記イットリア含量が、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法に沿った勾配に従って変動するイットリア濃度を有し、前記勾配が、非線形勾配である、項目43に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目45)
前記勾配が、指数勾配、一次多項式勾配、二次多項式勾配、三次多項式勾配、べき乗則勾配、対数勾配など、またはそれらの組合せである、項目43または44に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目46)
前記イットリア濃度が、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの勾配に沿って増大する、項目43~45のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目47)
前記勾配が、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの指数勾配関数の合計である、項目43~46のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目48)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、異なる勾配を有する少なくとも2つの隣接する勾配帯域を含む、項目43~47のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目49)
イットリア含量勾配が、以下の方程式:
y=ax+b(式中、aは、0.05~3であり、bは、-50~10である(例えば、y=0.51x-1.57))または
y=-0.0167x
3
+0.5286x
2
-5.0119x+17.44(式中、yは、イットリア含量である)
によって記載されるか、または近似される、項目43~48のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目50)
前記イットリア含量が、2~8mol%である(例えば、前記イットリア濃度は、前記勾配帯域に沿って2~8mol%で変動する)(例えば、前記イットリア含量が、3~5mol%である(例えば、前記イットリア濃度は、前記勾配帯域に沿って3~5mol%で変動する))、項目24~49のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目51)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、歯科用品、歯科修復材、または歯科用クラウンである、項目24~50のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目52)
前記焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が、完全に焼結されている、項目24~51のいずれか一項に記載の焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料。
(項目53)
項目1~23のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料から形成されるか、または項目24~52のいずれか一項の焼結された材料を含むもしくはそれから形成される、歯科用品(例えば、完全に焼結された歯科用品)。
(項目54)
前記歯科用品が、ブランクまたはスマートブランクである、項目53に記載の歯科用品。
(項目55)
前記歯科用品が、歯科修復材である、項目53に記載の歯科用品。
(項目56)
前記歯科修復材が、フルカントゥアFPD(固定部分義歯)、ブリッジ、インプラントブリッジ、マルチユニットフレームワーク、アバットメント、クラウン、部分クラウン、ベニヤ、インレー、アンレー、歯列矯正リテーナー、保隙装置、歯置換装置、スプリント、義歯、ポスト、歯、ジャケット、フェーシング、ファセット、インプラント、シリンダー、およびコネクターから選択される、項目55に記載の歯科用品。
(項目57)
前記歯科用品が、平均二軸曲げ強度において勾配を示す、項目53~56のいずれか一項に記載の歯科用品。
(項目58)
前記歯科用品が、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、前記平均二軸曲げ強度が線形勾配である、項目53~57のいずれか一項に記載の歯科用品。
(項目59)
前記歯科用品が、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、前記平均二軸曲げ強度が非線形勾配である、項目53~58のいずれか一項に記載の歯科用品。
(項目60)
平均二軸曲げ強度勾配が、以下の方程式:
y=-189.47x+3314.7
(式中、yは、平均二軸曲げ強度である)
によって記載されるか、または近似される、項目53~59のいずれか一項に記載の歯科用品。
(項目61)
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料(例えば、項目1~23のいずれか一項に記載の予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック)の少なくとも一部またはすべてにおいてイットリア含量の勾配を有する、予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料を作製する方法であって、
少なくとも第1のイットリア含量を有する第1のジルコニアセラミック粉末および第2のイットリア含量を有する第2のジルコニアセラミック粉末から、モノリシック構造(例えば、未焼結構造)を形成するステップであって、前記第1のイットリア含量が、前記第2のイットリア含量とは異なる、ステップと、
前記モノリシック構造を、(例えば、未焼結緻密構造を形成するために)75~100MPaの圧力で一軸プレスに供するステップと、
前記一軸プレスされたモノリシック構造を、(例えば、周囲温度、例えば18~25℃などで)200~400MPaの圧力で冷間等圧プレスに供するステップと、
前記一軸プレスされおよび冷間等圧プレスされたモノリシック構造を、900~1100℃(例えば、950~1050℃)の温度に加熱する(例えば、予備焼結する)ステップと
を含み、
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミック材料が形成される、
方法。
(項目62)
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、顆粒の形態であり、前記顆粒が、金属イオンおよび/または金属錯体を含有する溶液と接触させられる、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記ジルコニアセラミック粉末の1つまたは1つよりも多くが、ランタンイオン(例えば、La
2
O
3
)を含む、項目61または62に記載の方法。
(項目64)
少なくとも1つのジルコニアセラミック粉末が、ランタンイオン(例えば、La
2
O
3
)を含み、少なくとも1つの異なるジルコニアセラミック粉末が、マグネシウムイオン(例えば、MgO)および/またはアルミニウムイオン(例えば、Al
2
O
3
)を含む、項目61~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記モノリシック構造が、5Yジルコニアセラミック粉末および3Yジルコニアセラミック粉末を、遷移帯域を形成するように選択された比で混合することによって形成される、項目61~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記モノリシック構造が、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、勾配イットリア含量が線形勾配である、項目61~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記モノリシック構造が、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、勾配イットリア含量が非線形勾配である、項目61~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記勾配イットリア含量が、指数勾配、一次多項式勾配、二次多項式勾配、三次多項式勾配、べき乗則勾配、対数勾配など、またはそれらの組合せである、項目61~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、第1の外表面および第2の外表面を有し、前記第1の外表面から前記第2の外表面までの寸法の少なくとも一部またはすべてに沿って、イットリア濃度が増大する、項目61~68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記勾配イットリア含量が、線形勾配、非線形勾配、およびそれらの組合せから選択される2つの指数勾配関数の合計である、項目61~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記イットリア含量勾配が、以下の方程式:
y=ax+b(式中、aは、0.05~3であり、bは、-50~10である(例えば、y=0.51x-1.57))または
y=-0.0167x
3
+0.5286x
2
-5.0119x+17.44(式中、yは、イットリア含量である)
によって記載されるか、または近似される、項目61~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記イットリア含量が、2~8mol%である(例えば、前記イットリア濃度は、勾配帯域に沿って2~8mol%で変動する)(例えば、前記イットリア含量が、3~5mol%である(例えば、前記イットリア濃度は、前記勾配帯域に沿って3~5mol%で変動する))、項目61~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記ジルコニアセラミック粉末が、1.5Y~10Y(例えば、2Y、2.8Y、3Y、4.25Y、4.5Y、5Y、または5.5Y)から独立に選択される、項目61~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
第1のイットリア含量を有する前記第1のジルコニアセラミック粉末が、3Y-TZPであり、第2のイットリア含量を有する前記第2のジルコニアセラミック粉末が、5Y-ZPである、項目61~73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、400ミクロンよりも大きいサイズ(例えば、最長寸法)を有する1重量%未満の粒子を有する、項目61~74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、200ミクロンよりも大きいサイズ(例えば、最長寸法)を有する1重量%未満の粒子を有する、項目61~75のいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
前記ジルコニアセラミック粉末の1つもしくは1つよりも多くまたはすべてが、200ミクロンよりも大きいサイズ(例えば、最長寸法)を有する粒子を有していない、項目61~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、一定のイットリア含量を有するセラミックの最大寸法に対して法線方向に1~300ミクロンまたは前記セラミックの(例えば、前記遷移帯域の)10%もしくはそれ未満の寸法(例えば、長さ)を有する勾配イットリア含量が存在する領域を有していないか、あるいは
予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックが、一定のイットリア含量を有するセラミックの最大寸法に対して法線方向に1~300ミクロンまたは前記セラミックの(例えば、前記遷移帯域の)10%もしくはそれ未満の寸法(例えば、長さ)を有する領域を有していない、項目61~77のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
前記予備焼結された歯科用ジルコニアセラミックを焼結する(例えば、完全に焼結する)ステップをさらに含み、焼結された歯科用ジルコニアセラミックが形成される、項目61~78のいずれか一項に記載の方法。