(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ゲルマノシリケートCIT-14/IST及びゲルマノシリケートCIT-13/OHからのその調製
(51)【国際特許分類】
C01B 37/00 20060101AFI20240919BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20240919BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20240919BHJP
B01J 29/03 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C01B37/00
B01D53/02
B01J20/18 A
B01J29/03 A
B01J29/03 M
B01J29/03 Z
(21)【出願番号】P 2022530332
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 US2020064421
(87)【国際公開番号】W WO2021119380
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-04-27
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フン カン
(72)【発明者】
【氏名】ダン シエ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/231595(WO,A1)
【文献】特表2019-508351(JP,A)
【文献】特表2018-521933(JP,A)
【文献】Elke VERHEYEN et al.,"Design of zeolite by inverse sigma transformation”,Nature Materials,2012年10月21日,Vol.11, No.12,p.1059-1064,DOI: 10.1038/NMAT3455
【文献】KANG, Jong Hun,"I. Shape Selectivity of Small-pore Molecular Sieves for the Methanol-to-Olefins Reaction and II. Synthesis and Topotactic Transformation of Germanosilicate CIT-13”, Dissertation (Ph.D.), Thesis,[online],California Institute of Technology,2020年08月15日,[令和6年8月27日検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20200815141458/https://thesis.library.caltech.edu/11702/>,DOI: 10.7907/PG34-B728
【文献】KANG, Jong Hun,"I. Shape Selectivity of Small-pore Molecular Sieves for the Methanol-to-Olefins Reaction and II. Synthesis and Topotactic Transformation of Germanosilicate CIT-13”, Dissertation (Ph.D.), Abstract,[online],California Institute of Technology,2020年02月29日,[令和6年8月27日検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20200228154411/https://thesis.library.caltech.edu/11702>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01D 53/02
B01J 20/00 - 38/74
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIT-14/ISTと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物であって、8及び12員環チャネルを有し、粉末X線回折(XRD)パターンが7.59±0.5、8.07±0.5、12.88±0.3、19.12±0.3、19.32±0.3、20.73±0.3、22.33±0.3、24.37±0.3、27.19±0.3及び27.69±0.3度2-θに少なくとも5つの特性ピークを有することを特徴とする、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物。
【請求項2】
12:1~20:1の範囲のSi:Ge比を有する、請求項1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【請求項3】
斜方晶系を含む、請求項1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【請求項4】
Cmmm空間群又はCmcm空間群又は該2つのドメインの結晶内混合物(無秩序)を特徴とする、請求項3に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【請求項5】
その結晶が以下のユニットセルパラメーターを有する、請求項3に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物:
【表1】
【請求項6】
前記8員環チャネルが約3.3Å×3.9Åの孔径を有し、12員環チャネルが約4.9Å×6.4Åの孔径を有する、請求項1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【請求項7】
実質的にフッ化物を含まない、請求項1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【請求項8】
アルカリ金属カチオン塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属塩又はそれらの組み合わせを任意選択で含有するマイクロポアを有する、請求項1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST
組成物の調製方法であって、
フッ化物を含まず、10及び14員環によって規定される細孔を有する3次元骨格を有し、6.45±0.2、7.18±0.2、12.85±0.2、20.78±0.2、26.01±0.2及び26.68±0.2度2-θにおいて少なくとも5つのピークを有する粉末X線回折(XRD)パターンを示す結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OHを、高温で、中間マイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」を形成するのに十分な時間、濃縮強水性鉱酸に接触させることを含む、方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法であって、(a)前記
濃縮強水性鉱酸が水性HCl又はHNO
3であり;(b)前記
濃縮強水性鉱酸の濃度が6~12Mの範囲であり;(c)前記高温が80℃~120℃の範囲の温度であり;並びに/又は(d)前記十分な時間が4~24時間の範囲である、方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の方法であって、前記中間マイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」を単離し、該
中間マイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」を、
洗浄液のpHが中性になるまで水で洗浄し、次にこの単離して洗浄した
中間マイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」を、約450℃~650℃の範囲の温度で2時間~12時間の範囲の時間で加熱することをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成
物の、ガス分離用の触媒又はビヒクルとしての使用。
【請求項13】
(a)低温でジメチルエーテル(DME)をCOによりカルボニル化すること、
(b)メタンでNOxを還元すること、
(c)炭化水素を分解、水素化分解又は脱水素すること、
(d)炭化水素原料を脱ロウすること、
(e)パラフィンを芳香族化合物に変換すること、
(f)芳香族原料を異性化又は不均質化すること、
(g)芳香族炭化水素をアルキル化すること、
(h)アルケンをオリゴマー化すること、
(i)低級アルコールをアミノ化すること、
(j)炭化水素原料から低級アルカンを分離及び収着すること、
(k)オレフィンを異性化すること、
(l)低分子量炭化水素から高分子量炭化水素を製造すること、
(m)炭化水素を改質すること、
(n)低級アルコール又は他の含酸素炭化水素を変換して、オレフィン生成物((メタノールからオレフィンへのプロセスを含む)を製造すること、
(o)オレフィンを過酸化水素でエポキシ化すること、
(p)酸素の存在下で、ガス流に含まれる窒素酸化物の含有量を減少させること、
(q)窒素含有ガス混合物から窒素を分離すること、又は
(r)水素及び一酸化炭素を含有する合成ガスを炭化水素流に変換すること、又は
(s)初期の炭化水素生成物中の有機ハロゲン化物の濃度を減少させること
を含むプロセスであって、それぞれの原料を請求項8に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成
物と接触させることによって行われる、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、出願日:2019年12月12日の米国仮特許出願第62/947,434号からの優先権を主張し、その内容は、全ての目的で参照により組み込まれる。
【0002】
(政府の権利)
なし
【技術分野】
【0003】
本開示は、CIT-13/OH及びCIT-14と称されるゲルマノシリケート並びに逆シグマ変換による前者の後者への変換に関するものである。
【背景技術】
【0004】
ゼオライトは、不均一系触媒として重要な役割を果たし、様々な産業環境で使用されている。当初、これらの物質は主に、ガソリン及びその他の燃料を作るための、より選択的で堅牢な触媒を作ることを追求する石油産業を支援するために開発された。現在、これらの固体は、特定の大規模用途に対応可能な構造及び化学組成に基づく特性を備えた特殊物質として浮上している。新物質を発見段階から商業的に実用化された触媒に至るまでには多大な努力が必要であるが、既存物質を凌駕するものとして出現し得ることを期待して、新構造の発見の余地も残されている。
【0005】
新物質を発見するための1つの目標は、その内部表面に何らかの触媒特性を保持する一層大きな孔が、石油アップグレード分野でより大きな供給分子を処理できるようになるという期待である。
【0006】
したがって、これらの用途で使用するための新しい結晶相の発見には関心が残っている。本研究は、この分野の技術における欠陥に対処することを目的とするものである。
【0007】
合成モレキュラーシーブは、典型的には、無機(Na+、K+など)及び有機構造指向剤(OSDA)、鉱化剤(OH-又はF-)、ヘテロ原子(Si元素に加えてAl、B、Ge、Ti、Snなど)などの使用を伴う水熱合成を使用して調製される。結晶性モレキュラーシーブの合成は複雑である。レシピ及び組み立てプロセスの特定の部分の設計に関しては進歩が見られるが、そのアプローチから結果を予測することは困難である。
【0008】
既存のゼオライトのトポタクティック変換は、従来の熱水法では合成されなかった新しいゼオライト骨格を調製する方法として役割を担ってきた。その典型的な例は、ゲルマニウム部位が好ましくはダブル4リング(d4r)などの小さな組成ビルディングユニット(CBU)を占めるという特性を利用したゲルマノシリケート変換の集合-分解-組織化-再集合(ADOR)戦略であり、これらの変換を
図1(A)及び1(B)にそれぞれ概略的に示す。
【0009】
ベンジルペンダント基を有するイミダゾリウム由来化合物のOSDAとしての機能を検討する過程で、14MR及び10MRのチャネルを有する超大型細孔構造体CIT-13(*CTH:アスタリスク(*)は構造上の結晶学的乱れの存在を表す)が発見された。また、イミダゾリウム系OSDA及びフッ化物ベースのゲルから結晶化された等構造ゲルマノシリケート、NUD-2及びSAZ-1も報告されている。CIT-13は、Siに富むcfi層がGeに富むd4rユニットの2次元アレイで架橋された構造である。cfi層の構造は、d4rユニットに2つの結晶学的に等価な位置を与える。この等価性は、CIT-13骨格のd4rユニットの位置の乱れ及び*CTHからCFIへの変換によって明らかになった(
図1(C))。最も重要なことは、CIT-13の構造が、ゲルマノシリケート変換の豊かな化学性を示すIM-12の構造に似ていることである。
【0010】
本発明者らは、以前に*CTH及びUTL間の類似性を報告し、ADOR変換に基づいて調製した2次元12/8MR及び1次元10MRチャネル系をそれぞれ有する2つの新規骨格CIT-14及びCIT-15を開示した。しかし、粉末X線回折(PXRD)からのリートベルト精密化に十分な品質のADOR生成物は、これまで調製されたことがなかった。これは、中間層領域内にSi-O-Siの連結が存在する可能性があり、それが不完全な剥離を引き起こす可能性があるためと考えられる。Liuらは、水酸化アンモニウムなどの弱塩基溶液がCIT-13のcfi型層の完全剥離を妨げる層間Si-O-Si結合を解離させ、ECNU-21(CIT-15と等構造)という構造を得ることができたと報告した。また、本発明者らは、弱塩基溶液がcfi型層を、d4rユニットの代わりに二重ジグザグ鎖(dzc)組成ビルディングユニットを持つゲルマノシリケートGe-CIT-5から剥離することを見いだした。ごく最近、CIT-13のd4rユニットから部分的に脱ゲルマン酸化したECNU-23(CIT-14と等構造)の形成及びその構造解(電子回折に基づく)も報告された。この合成はIM-12の逆シグマ変換に類似していた。しかし、CIT-13のd4rユニット内の固有のゲルマニウム配置のために、純粋なGe-4-リングを強酸で浸出することによる逆シグマ変換はこれまで報告されていない。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、米国特許第10,828,625号に記載されているように、フッ化物を含まない水酸化物経路によって調製されたCIT-13トポロジーを有する最近報告された結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートに由来する新規ゲルマノシリケートを対象とする。この参考文献は、CIT-13トポロジーの物質の特性評価並びに製造及び使用方法を含むすべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらのCIT-13ゲルマノシリケートは、ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤を用いて水熱的に調製され、10員環及び14員環によって規定される細孔を有する3次元骨格を
有することを特徴とする(それぞれ6.2x4.5Å及び9.1x7.2Åの孔径を有する)。このような構造を持つ結晶性シリケートは、これまでに知られていた中で初めてである。これらの構造は、粉末X線回折(PXRD)パターン、ユニットセルパラメータ、SEM顕微鏡写真、29Si MAS NMR分光法及び吸着/脱着等温線によって特性評価された。
【0012】
本開示は、フッ化物を使用せずに合成されたゲルマニウム含有超大孔モレキュラーシーブCIT-13を記載する。吸蔵した有機物を除去した後、フッ化物を含まない調製物から得られたCIT-13は、フッ化物の存在下で調製されたCIT-13試料との差異を示す。フッ化物を含まない方法で作製したCIT-13は、逆シグマ変換を受けてメソポアのないCIT-14を生成し、フッ化物を含む合成で得られたSi/Ge比がほぼ同じGe-CIT-13よりもはるかに速くCIT-5型ゲルマノシリケートに変換されることがわかった。CIT-14のリートベルト精密化構造解析により、それが12員環及び8員環チャネルを持つことが確認されたが、この物質のユニットコールパラメータは以前の報告とはわずかに異なっていた。19Fマジック角回転(MAS)及び1H-29Si交差分極(CP)MAS核磁気共鳴(NMR)分光法の結果、フッ化物なしで結晶化したCIT-13は、フッ化物存在下で合成したCIT-13とは異なるゲルマニウム位置を持つことが明らかにされた。
【0013】
本開示はさらに、フッ化物を含まない水酸化物経路によって調製されたこれらのCIT-13ゲルマノシリケートの構造を操作する方法を対象とする。逆シグマ変換をもたらすのに適した反応条件下で熱及び蒸気にさらすことによって、Si/Ge比が3.8~10の範囲にある。この物質のこのメカニズムは、これまで知られていない。本開示はまた、そのような操作から得られるゲルマノシリケートCIT-14生成物も対象とする。以前は、ゲルマノシリケートCIT-14は、米国特許第10,293,33号(その内容は、すべての目的又は少なくともCIT-14の調製方法及び特性評価のために、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、CIT-13Pと称されるフィロシリケートのADOR変換(集合-分解-組織化-再集合)によって入手できた。
【0014】
本開示の特定の実施形態は、8員及び12員環チャネルを有する、CIT-14/ISTと称されるそれらの結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物を含む。CIT-14/IST組成物は、いくつかの実施形態において、7.59±0.5、8.07±0.5、12.88±0.5、19.12±0.5、19.32±0.5、20.73±0.5、22.33±0.5、24.37±0.5、27.19±0.5及び27.69±0.5度2-θで少なくとも5、7又は10の特性ピークを有する粉末X線回折(RD)パターンで特徴づけられる。本開示はさらに、ピークに関連する様々な不確実性、特性ピークの全範囲及びこれらの物質を特徴付けるピークの相対強度及び選択についてのより完全な開示を提供する。
【0015】
CIT-14/IST組成物は、いくつかの実施形態において、それらのSi:Ge比が、12:1~20:1又は14:1~18:1の範囲又はこれらの範囲内の部分範囲にあることを特徴とする。
【0016】
CIT-14/IST組成物は、いくつかの実施形態において、請求項1~4によって特徴付けられ、結晶が斜方晶系のものである。いくつかの実施形態では、CIT-14/IST結晶は、Cmmm空間群又はCmcm空間群又は2つのドメインの結晶内混合物(無秩序)を有する。いくつかの実施形態において、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、以下のユニットセルパラメータを有する。
【0017】
【0018】
いくつかの実施形態では、8員環チャネルは、約3.3Å×3.9ÅのCIT-14/IST組成物の孔径を有し、12員環チャネルは約4.9Å×6.4Åの孔径を有する。物理的歪み(例えば、圧縮)又はSi:Geの比率によって、これらの値が変化する可能性がある。
【0019】
いくつかの実施形態において、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートの逆シグマ変換から誘導されるか、又は誘導可能なものである。いくつかの実施形態において、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートから誘導されるか、又は誘導可能なものであり、CIT-13/OHゲルマノシリケートが脱ゲルマン酸化して「-CIT-14」組成物を形成するのに十分な時間、高温で、CIT-13/OHゲルマノシリケートを濃縮水性ミネラル又は他の強水性酸条件に付し、この形成したままの「-CIT-14」ゲルマノシリケートを単離し、焼成して、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物を形成させることによる。これらの変換を効果的に行うための例示的な条件は、本開示の他の箇所に記載されている。
【0020】
結晶性マイクロポーラスCIT-13/OHゲルマノシリケートの特定の形態、特性及び製造条件は、本開示においてより明確に規定されるが、これらの組成物は、フッ化物イオンが存在せず、特定のSi:Ge比の範囲内で製造されることが必要である。これらのCIT-13/OHゲルマノシリケートの合成は、本明細書に規定する特定の置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンを用いて簡便に行われる。いくつかの好ましい実施形態において、前駆体CIT-13/OHゲルマノシリケートは、フッ化物を含まず、平均して少なくとも、好ましくは4を超えるGe原子を有するd4rユニットを有し、d4rユニット中のGe-4-リングの存在を可能にする。
【0021】
他の実施形態では、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、少なくとも1つのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属カチオン塩、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属塩又はそれらの組み合わせを含むマイクロポアを含有する。
【0022】
他の実施形態では、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST
は、それらの酸又は金属含有形態のいずれかで、本明細書の他の箇所で説明される一連のプロセスにおいて触媒又は吸着剤として使用される。
【0023】
本開示は、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/ISTの調製に関する他の実施形態も包含し、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OHゲルマノシリケートが生成したままの「-CIT-14」組成物に変換するに十分な時間、高温で、結晶性マイクロポーラスCIT-13/OHゲルマノシリケートを濃縮強水性鉱酸と接触させることを含む方法も包含する。本開示はまた、予め焼成された、生成したままの「-CIT-14」組成物を包含する。
【0024】
本開示はまた、本明細書に具体的に記載された水酸化物経路によって調製される、CIT-13/OHゲルマノシリケートの実施形態を包含する。本開示はまた、d4rユニット中のGe-4-リングの存在を可能にする、d4r当たり平均して少なくとも、好ましくは4を超えるGe原子を含有するd4rユニットを有すると特徴付けられるCIT-13/OHゲルマノシリケートの実施形態を包含する。本開示は、本明細書に規定される新規かつ固有の物理的特徴の結果である、これまで観察されなかった反応性の特徴を示すCIT-13/OHゲルマノシリケートの実施形態も包含する。
【0025】
この特許又は出願のファイルには、少なくとも1つのカラーで作成された図面/写真が含まれている。カラー図面/写真を含むこの特許又は特許出願公開の写しは、要求及び必要な手数料の支払いに応じて米国特許庁から提供される。
【0026】
本願は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。主題を説明する目的で、図面には主題の例示的な実施形態が示されているが、現在開示されている主題は、開示されている特定の方法、装置及びシステムに限定されるものではない。加えて、図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。図面において、
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】既知のゲルマノシリケート変換の概略的説明を提供する:
図1(A)は逆シグマ変換、
図1(B)はADOR変換、
図1(C)はd4r配列の無拡散再配列(*CTHからCFIへの変換)を示す図である。*モデル母材としてCTH型骨格を表示。
【
図2】本明細書で実施され報告された研究の概略図である。
【
図3】CIT-14/ESP(ESPはエトキシシリル化ピラーリングを表す)の構造を例示する図であり、米国特許第10,293,33号に記載された、その理論的PXRDデータ(
図3(A))及び細孔チャネル寸法(
図3(B))を含む。
【
図4】(a)CIT-13/OH[3.71](
図4(A));及びCIT-13/OH[3.56](
図4(B))に由来するCIT-14/IST試料のSEM画像を示す図である。
【
図5】CIT-13/OH試料:CIT-13/OH[3.71](
図5(A));CIT-13/OH[3.56](
図5(A))及びCIT-13/OH[4.33](
図5(C))のSEM画像である。
【
図6】CIT-13/OH[4.33]、CIT-13/F[4.33]の生成したままのバージョンの
1H-
13C 8kHz CPMASスペクトル及びクロロホルム-d中の1,2-ジメチル-3-(3-メチルベンジル)塩化イミダゾリウムの
13C溶液スペクトルを示す図である。
【
図7】CIT-13/OH[4.33]の生成したままのバージョンの
1H-
29Si 8kHz CPMASスペクトルを示す図である。
【
図8】CIT-13の特性評価結果を示す図である。
図8(A):フッ化物鉱化剤なしでCIT-13を結晶化させることができる2つのOSDA。
図8(B-E):CIT-13/OH試料の選択された例のPXRDパターン:(b)生成したままの及び
図8(C):焼成したCIT-13/OH[3.88]、
図8(D):生成したままの及び
図8(E):焼成したCIT-13/OH[4.33]。
図8(F):Si/Geが約5である参照CIT-13/FのPXRDプロファイル。
図8(G):対数スケールでのCIT-13/OH[3.56]及びCIT-13/F[4.18]のAr吸着等温線。
【
図9】Si/Ge=約5である参照CIT-13/Fのものと比較した、調製したままのCIT-13/OH試料のPXRDパターンを示す図である。
図9(A):参照CIT-13/F、
図9(B):バッチ#A、
図9(C):バッチ#5、
図9(D):バッチ#7、
図9(E):バッチ#8、
図9(F):バッチ#12、
図9(G):バッチ#13、
図9(H):バッチ#15、
図9(I):バッチ#16、
図9(J):バッチ#17及び
図9(K):バッチ#18。
【
図10】調製したままのCIT-13/OH試料及びその再フッ素化バージョンのPXRDパターンを示す図である。(310)回折が強調表示されている。
【
図11(A-E)】PXRDプロファイルに基づいて観察された*CTHからCFIへの変換の間の構造変化を示す図である。焼成したCIT-13/OH[4.33](
図11(A-B))及び大気湿度に10日間さらした後の(a、c)4-40°及び(b、d)5-9°の範囲のCIT-13/OH[3.88](
図11(C-D))のPXRDプロファイル。CIT-13/F[4.31]と比較したCIT-13/OH[4.33]のd200層間距離の変化(
図11(E))。
【
図12】焼成したCIT-13/OH[3.88]及びそれから調製したGe-CIT-5の
29Si 8kHz MASスペクトルを示す図である。
29Si MAS NMRは、米国特許第10,293,33号に記載のADOR合成によって調製されたCIT-14/ESPゲルマノシリケートのものと定性的に同じであり、-108~-120の化学シフト領域内の少量のQ
3 Si種と複数のQ
4 Si環境とを示している。
【
図13】CIT-13のCIT-14への逆シグマ変換を示す図である。CIT-14/ISTをもたらすCIT-13/OHの逆シグマ変換の概略図(
図13(A));親CIT-13/OH及び対応するCIT-14/IST試料のPXRDプロファイル(
図13(A)。
【
図14】親CIT-13試料(黒)、12M HCl処理直後の物質(フクシア)及び焼成試料(青)のPXRDプロファイルを示す図である:CIT-13/F[3.87](
図14(A))及びCIT-13/OH[4.33](
図14(B))。
【
図15】CIT-13/OH[3.56](上)、CIT-13/F[4.33]からのCIT-14/IST(中)及びGULPアルゴリズムに基づいて最適化した「無秩序性のない」CIT-14の理論モデルのPXRDプロファイルを、(a)4~40°、(b)6~10°及び(c)10.0~12.5°の範囲において示す図である。(d)CIT-14/IST及びCIT-14/ESP試料の
29Si NMRスペクトル。(CIT-14/ESPの
29Si MASスペクトルは、米国特許出願公開第20170252729より引用)。
【
図16】CIT-14のPXRDピークの強度に対する元素組成の影響を示す図である。(a)CIT-14の7つのT部位と、(b)T1、(c)T2、(d)T3、(e)T4、(f)T5、(g)T6及び(h)T7部位におけるゲルマニウム0%(黒)、10%(シアン)及び20%(赤)のCIT-14骨格のシミュレーションPXRDプロファイル。ピーク-1、ピーク-2及びピーク-3はそれぞれ(110)、(200)及び(001)回折を表している。
【
図17】得られたCIT-14/ESP試料の4~40°(
図17(B))及び6~9°(
図17(C))の範囲における実験計画及びPXRDパターンを示す図である。
【
図18】IM-12[3.80](
図18(A))、IM-12[4.79](
図18(B))、IM-12[3.80]からのCOK-14(
図18(C))及びIM-12[4.79]からのCOK-14(
図18(D))のSEM画像である。
【
図19】IM-12[3.80]からのCOK-14及びIM-12[4.79]からのCOK-14のPXRDプロファイルを示す図である。
【
図20】親CIT-13/OH、CIT-14/IST及びCIT-14/ESPのAr-吸着及び脱着等温線を、:線形スケール(
図20(A))及び対数スケール(
図20(B))で示す図である。
【
図21】CIT-14/ISTの構造解析の結果を示す図である。(
図21(A))CIT-14のリートベルト精密化における観察プロファイル(上)、計算プロファイル(中)及び差分プロファイル(下)。(
図21(B))CIT-14の結晶主軸[001]、[010]及び[100]に沿った投影図(3×3×3ユニットセル)。(
図21(C))CIT-14の理想化構造における2次元12-/8-リングチャネル系。(
図21(D))CIT-14の無秩序性の概略図。
【
図22】CIT-14/ISTの理想化構造を示す図である。ケイ素、ゲルマニウム及び酸素原子は、それぞれ青、緑及び赤で示される。
図22(B-C)は、CIT-14/ISTの12員環及び8員環の孔径をそれぞれ示している。
【
図23】生成したままのCIT-13/F[4.33]、フッ素化CIT-13/OH[4.33](
図23(B))及びフッ素化CIT-13/OH[3.56](
図23(C))の
19F 12k MAS NMRスペクトルを示す図である。(アスタリスク(*)は、フッ化アンモニウムを用いたフッ素化の結果として形成されたフッ素化シリカ(19F-Si)表面の回転サイドバンドを示す)。
【
図24】異なるゲルマニウム含有量を有する水-脱ゲルマン酸化CIT-13/OH、CIT-13/F及びIM-12試料の
1H-
29Si CPMASスペクトルを示す図である。親ゲルマノシリケート試料及びその酸浸出生成物は、それぞれスペクトルの左側及び右側に示されている。
【
図25】d4rユニット内の可能なゲルマニウム配置の概略図である。緑色のボール及び銀色のノードは、それぞれゲルマニウム及びケイ素部位を示している(すべての可能性が示されているわけではない)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートを含む新規な物質組成物並びにこれらの組成物の製造方法及び使用方法を対象とする。
【0029】
本明細書では、フッ化物を使用しない*CTH型ゲルマノシリケートモレキュラーシーブの新しい合成方法が開示される。合成からフッ化物を除去すると、CIT-13結晶化が起こると以前に報告された組成範囲が狭まり、結晶化時間が遅くなる。しかし、水酸化物媒体から調製したCIT-13(CIT-13/OHと称される)は、フッ化物の存在下で合成したCIT-13(CIT-13/Fと称される)では達成できない興味深い特性を示す。フッ化物を含まないCIT-13/OHは、焼成後、環境湿度にさらされると、Si/Ge比がほぼ同じフッ化物含有ゲルからの従来のCIT-13/Fよりもはるかに速くCFI型ゲルマノシリケート(Ge-CIT-5)に変換する。また、フッ化物を含まない経路からのCIT-13/OHは、強酸との接触により、12MR及び8MRのリングチャネルを持つ別の骨格であるCIT-14に逆シグマ変換を進行させることができる。逆シグマ変換からのCIT-14(CIT-14/istと称される)は、ADOR型変換から得られた等構造類似体に存在するメソポロシティーを示さなかった。これらの変換はd4rユニット内のゲルマニウム部位の存在及び配置に基づいていることから、合成混合物中のフッ化物アニオンの存在がCIT-13のd4rユニット内の元素(Ge及びSi)組成並びに/又は配置に影響を与えていると結論づけられる。また、これらの結果は、IM-12で観察されたのと同様に、水酸化物ベースのゲルから合成されたCIT-13/OHのd4rユニット内にGe-O-Ge結合及びゲルマニウム4環が存在することを間接的に裏付けている。
図2は、本開示で報告された研究をまとめたものである。
【0030】
本開示は、添付の図及び実施例に関連して解釈される以下の説明を参照することによっ
てより容易に理解され得、これらは全て本開示の一部を形成する。本開示は、本明細書で説明又は示される特定の生成物、方法、条件又はパラメータに限定されないこと、及び本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を例示的に説明するためのものであり、いかなるクレームの開示も制限することを意図しないことが理解されるであろう。同様に、特に別段の記載がない限り、考えられる機構若しくは作用様式又は改善の理由に関するいかなる記述も、例示のみを意図しており、本明細書の開示は、そのように示唆された機構若しくは作用様式又は改善の理由の正否によって拘束されるものではない。この文章を通して、記述は、組成物及び前記組成物の製造方法及び使用方法に言及することが認識される。すなわち、本開示が、組成物又は組成物を製造若しくは使用する方法に関連する特徴又は実施形態を記載又はクレームする場合、そのような記載又はクレームは、これらの特徴又は実施形態をこれらの文脈(すなわち、組成物、製造方法及び使用方法)のそれぞれにおける実施形態に拡張することが意図されていると理解される。処理方法が記載される場合、特に除外されない限り、追加の実施形態は、生成物組成物が単離され、任意選択で、モレキュラーシーブ又はゼオライト合成と一致する方法で後処理されることを提供する。
【0031】
本開示は、「CIT-13/OH」、「-CIT-14」及び「CIT-14/IST」と称される組成物、並びに前者を後者に変換する方法を包含する。
【0032】
(CIT-14/IST及び「-CIT-14」と称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物)
特定の実施形態は、8員及び12員環チャネルを有する、CIT-14/ISTと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物を含む。これらには、濃強酸の使用によりCIT-13/OHから誘導された、又は誘導可能な組成物が含まれる。
【0033】
特定の実施形態では、CIT-14/ISTゲルマノシリケート組成物は、純粋なゲルマノシリケートを含む。他の独立した実施形態では、CIT-14/ISTゲルマノシリケート組成物は、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、ハフニウム、鉄、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛又はジルコニウムの1つ以上の酸化物を含む骨格を含む。これらの追加の酸化物は、CIT-14/ISTゲルマノシリケート組成物の調製に使用される前駆体CIT-13/OHに由来する場合がある。これらの酸化物を前駆体CIT-13/OH組成物に組み込む方法は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0034】
これらの結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、7.59±0.5、8.07±0.5、12.88±0.5、19.12±0.5、19.32±0.5、20.73±0.5、22.33±0.5、24.37±0.5、27.19±0.5及び27.69±0.5度2-θにおける少なくとも5つの特性ピークを有する粉末X線回折(XRD)パターンで特徴づけることができる。特定の独立した実施形態では、粉末X線回折(XRD)パターンは、上記のこれらの特性ピークのうち、5、6、7、8、9又は10において、少なくとも5つの特性ピークを示す。特定の独立した実施形態では、ピーク位置の不確実性は、独立して(各ピークについて)±0.5度2-θ、±0.4度2-θ、±0.3度2-θ、±0.2度2-θ、±0.15度2-θ、又は±0.15度2-θである。
【0035】
表1は、結晶性ゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物の試料に由来する粉末XRDデータのリストを提供する。これらのデータは、これらの物質の代表的なものと見なされている。これらのデータの様々な順列を使用して、例えば、それらの相対強度によって選択される複数のピークを含むことによって、これらの組成物を特徴付けることができる。さらに、これらの結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、
図15に示される粉末XRDパターンとの比較によって特徴付けることができる。
【0036】
【0037】
例えば、他の特定の実施形態において、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、7.59±0.5、8.07±0.5、19.12±0.5、20.73±0.5、及び22.33±0.5度2-θで特性ピークを示す粉末X線回折(XRD)パターンによって、任意選択で12.88±0.5、19.32±0.5、24.37±0.5、27.19±0.5及び27.69±0.5度2-θでの少なくとも3つの特性ピークによって特徴付けられる。7.59及び8.07度2-θのピークはそれぞれ(110と(200)のミラー指数に対応し、パターンの中で最も強いピークである。その他の個々の弱いピークも、他の物質と区別するのに役立ち得る。
【0038】
観察された表1の強度値は、結晶子の配向が完全にランダムであること、すべての結晶学的方向における完全な長距離秩序及びCIT-14/IST骨格の理想的な連結に基づいていると考えられる。しかし、CIT-14/ISTの結晶子形態は非常に平坦で、高いアスペクト比を示しており、このことは、実際には、試料の優先配向によって強度が畳み込まれる可能性があることを示している。さらに、CIT-14試料の結晶性(品質)が向上するにつれて、最初のピーク(110)(7.67)の強度が増加するようである。これは、連結ユニット(CIT-14では単一4リング)の対角線方向の長距離秩序が(110)回折に寄与しているためである。比較的化学的に不活性なSiに富む層は、8.08°の(200)ピークに起因する。(したがって、一般的に強い)。
【0039】
特定の実施形態では、本明細書に記載のCIT-13/OHから調製される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、12:1~13:1、13:1~14:1、14:1~15:1、15:1~16:1、16:1~17:1、17:1~18:1、18:1~19:1、19:1~20:1又はこれらの前述の部分範囲の2以上の任意の組み合わせ、例えば14:1~18:1の範囲のSi:Ge比を有する。実施例に記載された特定の組成物も、これらの範囲内にあるとみなされる。
【0040】
結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/ISTの結晶は、斜方晶系である。実施例に記載したように、場合によっては、結晶は無秩序であり得、Cmmm空間群若しくはCmcm空間群の結晶又は2つのドメインの結晶内混合物(無秩序)を含む。
【0041】
この文脈の中で、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物の結晶は、以下のユニットセルパラメータを示すことが判明している。
【0042】
【0043】
一番右の列のÅ値は、リートベルト精密化(実施例を参照)に基づいて実際に決定(又は推定)されたものであり、中央の列に示されているものは、特定の組成(例えば、Si:Ge比又は任意の金属酸化物置換)の関数として発生する可能性のある推定分散を提供する。
【0044】
これらの結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物内のチャネルも、以下のように特徴付けられる:8員環チャネルは約3.3Åx3.9Åの孔径を有し、12員環チャネルは約4.9Åx6.4Åの孔径を有している。それぞれの孔サイズは、実験的にそれぞれ3.26Åx3.93Å及び4.86Åx6.44Åと決定されているが、例えば、物理的な歪み(例えば、圧縮など)又はSi:Geの比率によってこれらの値が変化する可能性があるため、より広い分散が必要である。また、骨格内の平均金属-酸素(T-O)結合長は1.55~1.65Å、平均酸素-金属-酸素(O-T-O)は98o~116o、平均金属-酸素-金属(T-O-T)は139o~180oの範囲であり、ここでTはSi又はGeである。
【0045】
ここまでに、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、その物理的属性によって特徴付けられている。しかし、本開示は、これらの組成物が、ゲルマノシリケートCIT-13/OHと濃強酸との反応からそれらを製造する方法によって特徴付けられる実施形態も企図するものである。そのような実施形態には、構造が言及された物理的パラメータから独立して考慮されるもの(すなわち、純粋なプロダクト・バイ・プロセスの記述)及び構造が物理的属性の1つ以上と同時に考慮されるものが含まれる。
【0046】
これらの実施形態において、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物は、CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートを、高温で、生成したままのマイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」を形成するのに十分な時間、濃縮水性鉱酸に接触させて調製されたものである。CIT-13/OH(本明細書に記載され使用される)及び「-CIT-14」の両方の組成
物は、本明細書の他の箇所に記載されている。以下の説明は、ゲルマノシリケートCIT-13/OH組成物からゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物を調製する方法にも関連し、これらの方法によるゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物の調製方法は、独立した実施形態を構成することが理解されよう。このCIT-13/OHゲルマノシリケートの組成物は、「-CIT-14」と称される組成物と同様に、CIT-14/ISTの調製におけるその使用と同様に、本開示の独立した実施形態とみなされる。
【0047】
ゲルマノシリケートCIT-13/OH組成物からCIT-14/IST組成物を調製するために、本方法は以下の条件のうちの1つ以上を含む。
【0048】
(1)CIT-13/OH組成物は、都合よく強酸水溶液中に分散される。次いで、反応混合物を静置するか、又は可動反応器、例えば回転反応器においてより効率的に混合することができる。実施例で強調されるように、中間時点で反応媒体を物理的に分散させることが有用である場合がある。
【0049】
(2)鉱酸は強酸;すなわち、水溶液中で実質的に完全に解離するものであり、水溶液中で部分的にしか電離しない弱酸とは区別される。HCl又はHNO3がこの容量で使用される代表的な酸であるが、他の強酸を用いてもよい。これらの強酸は、骨格格子に取り込むことができるアニオンを有するもの(例えば、リン酸)であるが、そのような取り込みが望ましくないと見なされる場合には考慮されない。
【0050】
(3)濃酸の使用は重要であるように思われる。好ましい実施形態では、鉱酸の濃度は6~12Mの範囲である。より高い濃度は、これらが反応速度及び収率を改善すると思われるため、好ましい(例えば、10~12M)。
【0051】
(4)高温は、80℃~120℃の範囲の温度であり、好ましくは約95℃である。この温度での水の揮発性を考慮すると、密閉された反応器を使用する必要がある。
【0052】
(5)変換をもたらすのに十分な時間は、4時間~96時間、好ましくは6時間~24時間の範囲である。明らかに、反応が生成物の適切な収率に進行するために必要な時間、温度及び酸の種類と濃度の間にバランスがある。12M水性HCLを用いて95℃、6時間相当の条件が適切であることが判明している。
【0053】
(6)ゲルマノシリケートと酸との接触に続いて、「-CIT-14」と称される得られた脱ゲルマン酸化ゲルマノシリケートを単離する。これは、遠心分離によって簡便に行われるが、他の分離方法を使用することもできる。
【0054】
(7)次いで、単離された「-CIT-14」物質を、洗浄液がpH中性になるまで、水(好ましくは蒸留水又は脱イオン水)で繰り返しすすぐ又は洗浄する。この「-CIT-14」物質も本開示の別個の実施形態とみなされ、この物質の代表的な特徴は実施例に記載されている。
【0055】
(8)この生成したままの「-CIT-14」物質からCIT-14/ISTを調製することは、この単離され洗浄された「-CIT-14」物質を、約450℃~650℃の範囲の温度で、2時間~12時間の範囲の時間、好ましくは580℃で6時間、又は実質的にそれと同等の条件で加熱することにより行うことができる。好ましい実施形態では、加熱は、1~5℃/分、好ましくは1℃/分の温度ランプ速度で行われる。
【0056】
CIT-13/OHからCIT-14/ISTへの変換は、約25~30vol%のマイクロポア容積の減少を伴う。
【0057】
前述の方法は、実施例の考察セクションで述べた理由により、結晶性マイクロポーラスCIT-13/OHゲルマノシリケートの逆シグマ変換として特徴付けられる機構と一致する、CIT-14/ISTゲルマノシリケートを提供する。そのため、本方法及び生成物は、その用語を用いて特徴付けることができる。
【0058】
(CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物)
一般にCIT-13と定義される組成物及び様々な処理条件下でのそれらの反応性は、以前に報告されている。例えば、米国特許第10,293,330号及び同第10,828,625号並びに米国特許出願公開第2017-0252729号を参照し、これらの各々は、全ての目的又は少なくともゲルマノシリケートCIT-13に関連する情報に関して、参照により本書に組み入れられるものとする。
【0059】
米国特許第10,293,330号は、CIT-13が、10員環及び14員環によって定義される細孔チャネルを備えた3次元骨格を有し、表2に示されるような粉末XRDパターンを示すと記述している。
【0060】
【0061】
本明細書に記載されるCIT-13/OHゲルマノシリケートはまた、10員環及び1
4員環によって規定される細孔を有する3次元骨格を有するが、フッ化物を含まない。他のCIT-13ゲルマノシリケートと一致して、それらは、6.45±0.2、7.18±0.2、12.85±0.2、20.78±0.2、26.01±0.2、及び26.68±0.2度2-θの少なくとも5つのピークを有する粉末XRD(X線回折)パターンを示す。表2を参照。これらのCIT-13/OHゲルマノシリケートは、6.45±0.2及び7.18±0.2度2-θにピークを有する粉末XRDパターン、及び表2に示される他のピークのうち5、6又は7つによって特徴付けられることもある。
【0062】
実施例で議論されるように、本明細書に記載したCIT-13/OHの粉末XRDパターンは、表2に示したデータとのいくつかの違い、特に生成したままの物質の(200)ピークの強度に関して示している。この観察は、実施例においてさらに詳しく説明される。いくつかの実施形態では、6.45±0.2度2-θのピークは、7.18±0.2度2-θのピークに比べて強度が低下し(弱く)、後者のピークがパターン内で最も強くなる(実施例を参照)。他の実施形態では、CIT-13/OHゲルマノシリケートの粉末XRDパターンは、(310)インデックスに起因する中程度~弱い強度の11.58度±0.2度2-θに追加のピークを示す。
【0063】
CIT-13/OHゲルマノシリケートはまた、
図12(上)に示されるスペクトルと一致する
29Si MAS-nmrスペクトルを示す。これについては、実施例においてさらに説明する。
【0064】
これらのCIT-13/OHゲルマノシリケートのSi:Ge比は、3.5~3.6、3.6~3.7、3.7~3.8、3.8~3.9、3.9~4.0、4.0~4.1、4.1~4.2、4.2~4.3、4.3~4.4、4.4~4.5、4.5~4.6、4.6~4.7、4.7~4.8、4.8~4.9、4.9~5.0、5.0~5.2の範囲であり、又は前述の範囲のうちの任意の2つ以上により定義される範囲、例えば3.5~5.2又は3.5~3.9である。これらの範囲は、CIT-13物質について以前に報告された範囲と同様である。
【0065】
しかし、以前に報告されたそれらの物質とは異なり、本フッ化物を含まないCIT-13/OHゲルマノシリケートは、d4rユニット当たり平均して少なくとも4つ、好ましくは4を超えるGe原子を有するd4r構造ユニットを含み、d4rユニット中のGe-4-リングの存在を可能にする。この特徴により、これらの物質から対応するCIT-5及び「-CIT-14」/CIT-14/IST物質への予期せぬ変換が可能となる。繰り返しになるが、これらの特徴は実施例でさらに説明する。
【0066】
d4rユニット中のGe原子の平均数を決定するためのそのような方法の1つは実施例に記載されており、CIT-13/OHゲルマノシリケートにフッ化物イオンを添加し、得られたドープ物質の19F MAS-nmrスペクトルを測定することを含む。
【0067】
CIT-13/OH物質の最終的な構造にとって重要なのは、フッ化物イオンが完全に存在しない状況での、それらの製造方法である。本明細書に記載するように、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OH組成物は、
(a)酸化ケイ素(SiO
2 )の供給源;
(b)酸化ゲルマニウム(GeO
2)の供給源;及び
(c)酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又はそれらの組み合わせ若しくは混合物の任意選択の供給源;
(d)以下の構造を有する置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンの少なくとも1つの水酸化物塩;
【化1】
(e)任意選択で、少なくとも1つの組成的に一致した種結晶;及び
(f)水
の混合物から得られる水性組成物を、CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物を結晶化させるのに有効な条件下で水熱処理することを含む方法によって調製される;ここで、水性組成物は、
(a)2~4、好ましくは2.5~3.0の範囲のSi:Geのモル比;
(b)水:Siのモル比が8:1~12:1の範囲にある水;
(c)水:(SiO
2+GeO
2)のモル比が6:1~7:1の範囲にある水;
(c)OH:(SiO
2+GeO
2)のモル比が約0.3:1~0.7:1の範囲にある水酸化物イオン(OH)
を含有する;ここで、水性組成物は、フッ化物イオンを本質的に含まない。
【0068】
これらの範囲は、以前に報告されたものよりも狭い。これらのより狭い範囲は、Geに富むd4rユニットを生成するために重要である。
【0069】
この骨格の中で、本方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む。
【0070】
(1)酸化ケイ素の供給源は、モレキュラーシーブ合成に適していることが知られている任意の供給源であり得るが、好ましい実施形態では、ケイ酸、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル、水酸化シリカ又はそれらの組み合わせ(又は同等の供給源)、好ましくはケイ酸ナトリウム又はオルトケイ酸テトラアルキル、さらにより好ましくはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を含む。
【0071】
(2)酸化ゲルマニウムの供給源は、モレキュラーシーブ合成に適していることが知られている任意の供給源であり得、酸化ゲルマニウムの供給源は、GeO2又はその水和誘導体(又はそれと同等の供給源)を含む。
【0072】
(3)置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンは、約0.3:1~0.7:1、好ましくは約0.4:1~0.6:1の範囲にあるOSDA:(SiO2+GeO2)のモル比で存在する。
【0073】
(4)水性組成物は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン若しくはジカ
チオン又はそれらの組合せを本質的に含有しない。
【0074】
(5)少なくとも1つの置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンは、好ましくは以下の構造を有する。
【化2】
【0075】
(6)水性組成物は、懸濁液又はゲルである。
【0076】
(7)有効な結晶化条件は、混合物を約140℃~約180℃の温度に約4日間~約4週間さらすことを含む。
【0077】
(7)水性組成物を回転式オーブンで水熱処理する。
【0078】
(8)結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート固体組成物を単離することをさらに含む方法。
【0079】
本明細書に記載されるCIT-14/ISTは、米国特許出願公開第2017/0252729号(すべての目的又は少なくともこれらの開示のために参照により本明細書に組み込まれる)で以前に報告されたCIT-14/ESP(ESPはエトキシシリル化ピラーリングを意味する)構造とは組成的に異なる。これらの以前に報告されたCIT-14/ESPの調製は、CIT-13Pトポロジーのフィロケイ酸塩を、シリカの供給源で、濃縮水性鉱酸(例えば、HCl又は好ましくはHNO3)の存在下で、約165℃~約225℃の範囲の1つ以上の温度で、12時間~48時間の範囲の時間で処理して中間組成物を形成し、次いで、CIT-14/ESPトポロジーの結晶性マイクロポーラスシリケート組成物を形成するように中間組成物を単離及び焼成することにより行った。
【0080】
特に、CIT-14/ESPゲルマノシリケートは、本方法によって記載されるよりもはるかに高いSi:Ge比ではあるが、はるかに高いSi:Ge比を有するCIT-13Pフィロシケートを用いて形成され、Si:Ge比が約25から実質的に無限大に及ぶCIT-14/ESPゲルマノシリケートが得られ、その中にはSi:Ge比が約25~約150、又は約75~約150である実施形態が含まれた。ADORプロセスによって形成された結晶の品質は、本明細書で報告されるよりも低かった。
【0081】
これらのCIT-14/ESPゲルマノシリケートは、CIT-14/ISTゲルマノシリケートについて報告されたものとあまり変わらない粉末X線回折(XRD)パターンを示し、7.7、8.2、13.1、19.5、21.1、22.7及び27.6度2-θに少なくとも5つの特性ピークがあることがわかった。物質の構造的無秩序のために、
観察された回折ピークはブロードであり、これらのピークに割り当てられた誤差は±0.5度2-θであった。他の実施形態では、これらのピークに関連する誤差は±0.3度2-θであった。ピラーリングによって調製された他の構造体及びそれらを作製することができる方法と一致して、この新しい物質の構造は、8員環及び12員環によって規定された細孔を有する3次元骨格という観点から説明された。理論的構造に基づいて、8員環及び12員環の寸法はそれぞれ4.0x3.4Å及び6.9x5.4Åと算出された(
図3(A-B)を参照)。単離された生成物から同定されたPXRDパターンは同一ではないが、この構造に関連する理論値(General Utility Lattice Program, GULP (Gale, 1997))によって予測される)と一致する、すなわちシリカに富むcfi層を分離するシリカピラーを有する。そのようなパターンの違いは、構造的無秩序及び/又はシリカピラーリングが不完全であるために説明できると考えられていた。この場合、CIT-14/ESPのバージョンは、
図3(A)及び
図3(B)に示す結晶学的パラメータの観点からも説明することができる。
【0082】
【0083】
(微結晶性組成物のその他の変更点)
特定の実施形態において、CIT-13/OHゲルマノシリケート及び新たに記載された微結晶CIT-14/ISTゲルマノシリケートを含む本開示に記載の結晶性マイクロポーラス固体は、それらの水素形態で存在する。他の実施形態では、結晶性マイクロポーラス固体は、そのマイクロポア内に少なくとも1つの金属カチオン塩又は遷移金属若しくは塩を含む。他の具体的な実施形態において、金属カチオン塩は、K+、Li+、Rb+、Ca2+、Cs+:Co2+、Cu2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、Ni2+、又はFe2+の塩であり、銅塩は、例えば、シュワイザー試薬(テトラアンミンジアクア銅ジヒドロキシド、[Cu(NH3)4(H2O)2](OH)2])、硝酸銅(II)又は炭酸銅(II)などを含み得る。そのような金属カチオンは、例えば、この目的に適していることが知られている技術(例えば、イオン交換)を用いて組み込むことができる。
【0084】
他の実施形態では、マイクロポアは、遷移金属又は遷移金属酸化物を含み得る。そのような物質の添加は、例えば、化学蒸着又は化学沈殿によって達成され得る。特定の独立した実施形態では、遷移金属又は遷移金属酸化物は、第6、7、8、9、10、11又は12族の元素を含む。他の独立した実施形態では、遷移金属又は遷移金属酸化物は、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金又は混合物を含む。Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au及びそれらの混合物が好ましい。独立した実施形態において、水性アンモニウム塩又は金属塩又は化学蒸着した又は沈殿した物質は、独立して、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Be、Al、Ga、In、Zn、Ag、Cd、Ru、Rh、Pd、Pt、Au、Hg、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu又はR4-nN+Hnカチオン(少なくとも一部の細孔において、Rはアルキルであり、n=0~4)を含む。
【0085】
用語「遷移金属」は、本明細書の他の箇所で定義されているが、特定の他の独立した実施形態では、遷移金属又は遷移金属酸化物は、第6、7、8、9、10、11又は12族の元素を含む。さらに他の独立した実施形態では、遷移金属又は遷移金属酸化物は、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金又は混合物を含む。Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au及びそれらの混合物が好ましいドーパントである。
【0086】
他の実施形態では、任意選択でドープされた結晶性固体は、400℃~500℃、500℃~600℃、600℃~700℃、700℃~800℃、800℃~900℃、900℃~1000℃、1000℃~1200℃、500℃~約1200℃の少なくとも1つの範囲であると定義される温度の空気中で焼成される。特定の温度を選択することは、場合によっては、分解又は別の結晶相への転換に関する特定の固体の安定性によって制限されることがある。
【0087】
触媒として使用するためにモレキュラーシーブを修飾する他の方法は、当業者に知られており、そのような追加の修飾は、本開示の範囲内にあるとみなされる。
【0088】
(本発明の組成物の使用-触媒変換/分離)
様々な実施形態において、本明細書に開示されるような結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート固体は、本明細書に記載のように焼成、ドープ又は処理されて、一連の化学変換又は分離を媒介又は触媒する触媒として作用する。組成物及び触媒反応の全てのそのような組み合わせは、あたかもそれらが個々に別々に描写されたように、本開示の個々の実施形態とみなされる。これらの目的のためのこれらのゲルマノシリケートの使用もまた、本開示の範囲内である。そのような変換/分離には、低温でCOを用いてDME(ジメチルエーテル)をカルボニル化すること、メタンによるNOxの還元(例えば、排気用途)、分解、水素化分解、脱水素、パラフィンの芳香族への変換、炭化水素原料の脱ロウ、MTO(メタノールからオレフィン)、芳香族化合物(例えばキシレン)の異性化、芳香族化合物(例えばトルエン)の不均化、芳香族炭化水素のアルキル化、アルケンのオリゴマー化、低級アルコールのアミノ化、低級アルカンの分離及び収着、炭化水素の水素化分解、炭化水素原料の脱ロウ、オレフィンの異性化、低分子量炭化水素からの高分子量炭化水素の生成、炭化水素の改質、低級アルコール又は他の含酸素炭化水素の変換によるオレフィン生成物の生成、オレフィンの過酸化水素でのエポキシ化、酸素の存在下でガス流に含まれる窒素酸化物の含有量を減少させること、又は窒素含有ガス混合物からの窒素の分離であって、それぞれの原料を、指定の変換に影響を与えるのに十分な条件下で本明細書
に記載の物質のいずれか一つの結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒に接触させることによって行われる分離が含まれる。これらのゲルマノシリケートが有用であると期待される特に魅力的な用途としては、触媒分解、水素化分解、脱ロウ、アルキル化並びにオレフィン及び芳香族形成反応が含まれる。追加的用途としては、ガス乾燥及び分離が含まれる。
【0089】
特定の実施形態は、水素化分解プロセスを提供し、各プロセスは、水素化分解条件下で炭化水素原料を、好ましくは主に水素形態の本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触させることを含む。
【0090】
さらに他の実施形態は、炭化水素原料を脱ロウするためのプロセスを提供し、各プロセスは、炭化水素原料を脱ロウ条件下で本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触させることを含む。さらに他の実施形態は、ロウ状炭化水素原料の脱ロウ生成物の粘度指数を改善するプロセスを提供し、各プロセスは、異性化脱ロウ条件下でロウ状炭化水素原料を本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触させることを含む。
【0091】
追加の実施形態は、C20+オレフィン原料からC20+潤滑油を製造するためのプロセスを含み、各プロセスは、少なくとも1つの遷移金属触媒及び本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒上で異性化条件下で前記オレフィン原料を異性化することを含む。
【0092】
また、本開示には、ラフィネートを異性化脱ロウするためのプロセスが含まれ、各プロセスは、添加された水素の存在下で、前記ラフィネート、例えばブライトストックを、少なくとも1つの遷移金属及び本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触させることを含む。
【0093】
他の実施形態は、約350oF超で沸騰し、直鎖炭化水素及びわずかに分岐した鎖の炭化水素を含む炭化水素油原料を脱ロウすることを提供し、約15~3000psiの水素圧力で添加した水素ガスの存在下で、前記炭化水素油原料を、少なくとも1つの遷移金属及び好ましくは主に水素形態の本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触することを含む。
【0094】
また、本開示には、炭化水素原料を水素化分解ゾーンで水素化分解して、水素化分解油を含む流出物を得ることと、少なくとも1つの遷移金属及び本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒を用いて、添加した水素ガスの存在下で、少なくとも約400oFの温度及び約15psig~約3000psigの圧力で水素化分解油を含む前記流出物を触媒脱ロウすること、を含む潤滑油調製のためのプロセスも含まれる。
【0095】
また、本開示には、炭化水素原料のオクタンを増加させて、芳香族含有量が増加した生成物を製造するためのプロセスが含まれ、各プロセスは、沸点範囲が約40℃超、約200℃未満の直鎖炭化水素及びわずかに分岐した炭化水素を含む炭化水素原料を、芳香族変換条件下で、本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒に接触させることを含む。これらの実施形態において、結晶性マイクロポーラス固体は、好ましくは、前記固体を塩基性金属で中和することにより、実質的に酸を含まないものとされる。また、本開示では、結晶性マイクロポーラス固体が遷移金属成分を含むプロセスも提供される。
【0096】
また、触媒分解プロセスも本開示によって提供され、各プロセスは、添加水素がない状態で触媒分解条件下の反応ゾーンにおいて、炭化水素原料を、本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触させることを含む。また、本開示には、触媒がさらに大孔結晶性分解成分を含む接触分解プロセスも含まれる。
【0097】
本開示は、C4~C7炭化水素を異性化する異性化プロセスをさらに提供し、各プロセスは、異性化条件下で、直鎖及びわずかに分岐したC4~C炭化水素を有する原料を、好ましくは主に水素形態の本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒に接触させることを含む。結晶性マイクロポーラス固体は、少なくとも1つの遷移金属、好ましくは白金で含浸され得る。触媒は、遷移金属の含浸後、蒸気/空気混合物中で高温で焼成され得る。
【0098】
また、芳香族炭化水素をアルキル化するプロセスも本開示によって提供され、各プロセスは、アルキル化条件下で、少なくともモル過剰の芳香族炭化水素とC2~C20オレフィンを、少なくとも部分的な液相条件下で、好ましくは主に水素形態の本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒の存在下で接触させることを含む。オレフィンは、C2~C4オレフィンであり得、芳香族炭化水素及びオレフィンは、それぞれ約4:1~約20:1のモル比で存在し得る。芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン又はそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0099】
芳香族炭化水素をトランスアルキル化するためのプロセスが本開示に従ってさらに提供され、このプロセスの各々は、トランスアルキル化条件下で、芳香族炭化水素とポリアルキル芳香族炭化水素を、少なくとも部分的な液相条件下で、好ましくは主に水素形態の本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒の存在下で接触させることを含む。芳香族炭化水素及びポリアルキル芳香族炭化水素は、それぞれ約1:1~約25:1のモル比で存在し得る。芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン又はそれらの混合物からなる群より選択され得、ポリアルキル芳香族炭化水素はジアルキルベンゼンであり得る。
【0100】
さらに、本開示により、パラフィンを芳香族に変換するプロセスが提供され、このプロセスの各々は、パラフィンを芳香族に変換させる条件下で、パラフィンを本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒と接触させることを含み、前記触媒はガリウム、亜鉛又はガリウム若しくは亜鉛の化合物を含む。
【0101】
本開示に従って、オレフィンを異性化するためのプロセスも提供され、各プロセスは、オレフィンの異性化を引き起こす条件下で、前記オレフィンと本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒とを接触させることを含む。
【0102】
さらに、本開示に従って、異性化原料を異性化するプロセスが提供される、各プロセスは、キシレン異性体の芳香族C8流又はキシレン異性体とエチルベンゼンとの混合物を含み、ここで、オルト、メタ及びパラキシレンのより平衡に近い比率が得られ、前記プロセスは異性化条件で前記原料と本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒を接触させることを含む。
【0103】
本開示は、オレフィンをオリゴマー化するプロセスをさらに提供し、各プロセスは、オリゴマー化条件下で、オレフィン原料を、本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒に接触させることを含む。
【0104】
本開示は、低級アルコール及び他の含酸素炭化水素を変換するプロセスも提供し、各プロセスは、液体生成物を生成する条件下で、前記低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくはプロパノール)又は他の含酸素炭化水素を、本開示の結晶性マイクロポーラス固体を含む触媒に接触させることを含む。
【0105】
また、本開示により、酸素の存在下でガス流に含まれる窒素酸化物を還元するプロセス
が提供され、各プロセスは、ガス流を本開示の結晶性マイクロポーラス固体と接触させることを含む。結晶性マイクロポーラス固体は、窒素酸化物の還元を触媒することができる金属又は金属イオン(コバルト、銅又はそれらの混合物など)を含み得、化学量論的に過剰な酸素の存在下で実施され得る。好ましい実施形態において、ガス流は内燃機関の排気流である。
【0106】
また、CIT-13骨格を有するものを含む本明細書に記載のゲルマノシリケートのいずれかを含む触媒、及びフィッシャー・トロプシュ触媒を用いて、合成ガスとも呼ばれる水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを液体炭化水素燃料に変換するプロセスも提供される。そのような触媒は、米国特許第9,278,344号に記載されており、これは、触媒及び触媒の使用方法の教示について参照により組み込まれる。フィッシャー・トロプシュ成分は、第8~10族の遷移金属成分(すなわち、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)、好ましくはコバルト、鉄及び/又はルテニウムを含む。触媒活性金属の最適な存在量は、特に、特定の触媒活性金属によって決まる。典型的には、触媒中に存在するコバルトの量は、支持物質100重量部当たり1~100重量部、好ましくは支持物質100重量部当たり10~50重量部の範囲であり得る。一実施形態では、15~45重量%のコバルトが、フィッシャー・トロプシュ成分としてハイブリッド支持体上に堆積される。別の実施形態では、20~45wt%のコバルトがハイブリッド支持体上に堆積される。触媒活性のフィッシャー・トロプシュ成分は、1つ以上の金属促進剤又は助触媒とともに触媒中に存在し得る。促進剤は、関係する特定の促進剤に応じて、金属又は金属酸化物として存在し得る。好適な促進剤には、ランタニド及び/又はアクチニドあるいはランタニド及び/又はアクチニドの酸化物を含む金属又は遷移金属の酸化物が含まれる。金属酸化物促進剤の代替として、又はそれに加えて、触媒は、第7族(Mn、Tc、Re)及び/又は第8~10族から選択される金属促進剤を含み得る。いくつかの実施形態では、フィッシャー・トロプシュ成分は、白金、ルテニウム、レニウム、銀及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるコバルト還元促進剤をさらに含む。ハイブリッド支持体上にフィッシャー・トロプシュ成分を堆積させるために採用される方法は、高選択的かつ活性なハイブリッド合成ガス変換触媒を提供するのに必要な金属負荷及び分布を達成するために、可溶性コバルト塩及び必要に応じて可溶性促進金属塩、例えば白金塩を含む水性又は非水性溶液を用いる含浸技法を含む。
【0107】
なお、さらなるプロセスの実施形態は、望ましくないレベルの有機ハロゲン化合物を含む初期炭化水素生成物中のハロゲン化合物濃度を低減するためのものを含み、このプロセスは、炭化水素生成物の少なくとも一部を、有機ハロゲン化合物吸収条件下で、CIT-13を含む本明細書に記載のゲルマノシリケート構造のいずれかを含む組成物と接触させて炭化水素中のハロゲン濃度を低減させることを含む。初期の炭化水素生成物は、ハロゲン含有酸性イオン液体を含むイオン液体触媒を用いた炭化水素変換プロセスによって製造され得る。いくつかの実施形態では、初期の炭化水素生成物中の有機ハロゲン化物含有量は、50~4000ppmの範囲であり、他の実施形態では、ハロゲン濃度は低減され、40ppm未満の生成物を提供する。他の実施形態において、生産は、85%、90%、95%、97%又はそれ以上の低減を実現し得る。初期炭化水素流は、アルキレート又はガソリンアルキレートを含み得る。好ましくは、炭化水素アルキレート又はアルキレートガソリン生成物は、接触中に分解されない。米国特許第8,105,481号に記載の物質又はプロセス条件のいずれも、本開示の物質及びプロセス条件の範囲を説明するものと考えられる。米国特許第8,105,481号は、少なくともそのような変換(アルキル化及びハロゲン還元の両方)をもたらすために用いられる方法及び物質に関するその教示について、参照により組み込まれる。
【0108】
なお、さらなるプロセスの実施形態には、炭化水素原料のオクタンを増加させて、芳香族含有量が増加した生成物を製造するプロセスが含まれ、これは、芳香族変換条件下で、
沸点範囲が約40℃超、約200℃未満の直鎖炭化水素及びわずかに分岐した炭化水素を含む炭化水素原料を触媒と接触させることを含む。
【0109】
これらの変換の多くの特定の条件は、当業者に知られている。そのような反応/変換の例示的な条件は、WO/1999/008961、米国特許第4,544,538号、同第7,083,714号、同第6,841,063号及び同第6,827,843号にも見出すことができ、これらの各々は少なくともこれらの目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
触媒される反応の種類に応じて、マイクロポーラス固体は、主に水素形態、部分的に酸性、又は実質的に酸を有しない場合がある。当業者であれば、これらの条件を過度の努力なしに定義することができるであろう。本明細書で使用する場合、「主に水素形態」とは、焼成後(焼成前に焼成前物質をNH4
+と交換することも含み得る)、カチオン部位の少なくとも80%が水素イオン及び/又は希土類イオンによって占有されることを意味する。
【0111】
本開示のゲルマノシリケートは、ガス分離のための吸着剤としても使用され得る。例えば、これらのゲルマノシリケートは、炭化水素トラップ、例えば、燃焼機関汚染制御システムにおける冷間始動炭化水素トラップとして使用することも可能である。特に、そのようなゲルマノシリケートは、C3フラグメントを捕捉するために特に有用であると考えられる。そのような実施形態は、流入するガス流から低分子量炭化水素を捕捉するためのプロセス及び装置を含み得、そのプロセスは、流入するガス流と比較して低分子量炭化水素の濃度が低下した流出ガス流を提供するように、ガス流を、本明細書に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマンシリケート組成物のいずれか一つを含む組成物を横切る又は通過させることを含む。この文脈において、用語「低分子量炭化水素」は、C1-C6炭化水素又は炭化水素フラグメントを指す。
【0112】
本開示のゲルマノシリケートはまた、炭化水素及び他の汚染物質を含む冷間始動エンジン排気ガス流を処理するためのプロセスにおいても使用され得、このプロセスは、エンジン排気ガス流を、水よりも炭化水素を優先的に吸着する本開示のゲルマノシリケート組成物の1つの上に流して第1排気流を提供することと、第1排気ガス流を触媒上に流し、第1排気ガス流に含まれる残留炭化水素及び他の汚染物質を無害な生成物に変換して処理済み排気流を提供することと、処理済み排気流を大気中に排出すること、を含む又はからなる。
【0113】
本開示のゲルマノシリケートは、ガスを分離するためにも使用できる。例えば、これらは、低級天然ガス流などの流体流から、水、二酸化炭素及び二酸化硫黄を、天然ガスから二酸化炭素を分離するために使用することができる。典型的には、モレキュラーシーブは、ガスを分離するために使用される膜の構成要素として使用される。そのような膜の例は、米国特許第6,508,801号に開示されている。
【0114】
説明した前述のプロセスのそれぞれについて、追加の対応する実施形態には、各プロセスについて説明された物質を含む又は含有する装置又はシステムを含むものが含まれる。例えば、ガストラップのガスにおいて、追加の実施形態には、車両の排気ガス流路に配置され得る炭化水素トラップとして当該技術分野で知られている装置を含む。そのような装置では、炭化水素はトラップに吸着され、エンジン及び排気が脱着に十分な温度に達するまで貯蔵される。装置はまた、記載されたプロセスにおいて有用なゲルマノシリケート組成物を含む膜を含み得る。
【0115】
(用語)
本開示において、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の言及を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかに別段のことを示さない限り、少なくともその特定の数値を含む。したがって、例えば、「物質」への言及は、当業者に知られているそのような物質及び/又はその均等物等の少なくとも1つへの言及である。
【0116】
記述子「約」の使用によって値が近似値として表現される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。一般に、用語「約」の使用は、開示された主題によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈で解釈されるものである。当業者であれば、これを決まりきったこととして解釈することができるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数は、「約」という単語の範囲を決定する1つの非限定的な方法である可能性がある。他の場合では、一連の値で使用される漸次的変化を使用して、各値について「約」という用語に利用可能な意図された範囲を決定することができる。存在する場合、すべての範囲は包括的であり、組み合わせが可能である。すなわち、範囲内に記載された値への言及は、その範囲内のすべての値を含む。
【0117】
明確にするために、本明細書において別々の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解されよう。すなわち、明らかに相容れないか、又は明確に除外されない限り、個々の実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせ可能であるとみなされ、そのような組み合わせは、別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴も、別々に又は任意の部分的組み合わせで提供され得る。最後に、実施形態は、一連の工程の一部又はより一般的な構造の一部として記載される場合があるが、各前記工程はまた、それ自体が独立した実施形態であり、他のものと組み合わせることが可能であると考えることもできる。
【0118】
転換用語「含む」、「から本質的になる」及び「からなる」は、特許用語において一般的に受け入れられている意味を暗示することを意図している。すなわち、(i)「含まれる」、「含有する」又は「によって特徴付けられる」と同義である「含む」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法の工程を除外するものではない。(ii)「からなる」は、クレームで特定されていない要素、工程又は成分を除外する。(iii)「から本質的になる」は、クレームの範囲を、特定の物質又は工程及びクレームされた開示の「基本的かつ新規な特性に実質的な影響を与えないもの」に限定する。「含む」(またはその等価物)という語句に関して説明される実施形態は、「からなる」および「から本質的になる」に関して独立して説明される実施形態も提供する。「から本質的になる」に関して提供される実施形態については、基本的かつ新規な特性は、意味のある収率でゲルマノシリケート組成物を提供するための方法若しくは組成物/システムの容易な操作性、又は記載されている成分のみを使用するシステムの能力である。
【0119】
「意味のある生成物収率」という用語は、本明細書に記載されるような生成物収率を反映することを意図しているが、20%を超えるものも含むが、指定される場合、この用語は、元の基質の量に対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上の収率を指す場合もある。
【0120】
リストが提示される場合、別段の記載がない限り、そのリストの個々の要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であると理解される。例えば、「A、B又はC」として提示された実施形態のリストは、別個の実施形態として、「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」又は「A、B若しくはC」という実施形態が含まれると解釈されるものである。
【0121】
本明細書を通じて、単語には、当業者によって理解されるような通常の意味を与えられるものとする。しかし、誤解を避けるために、特定の用語の意味を具体的に定義又は明確化する。
【0122】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、必ずしも1~約6個の炭素原子を含む必要はないが、典型的には、直鎖、分岐又は環状の飽和炭化水素基を指し、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。
【0123】
「芳香族」という用語は、芳香族性のヒュッケル4n+2則を満たす環状部位を指し、アリール(すなわち、炭素環)構造及びヘテロアリール構造の両方を含む。
【0124】
「ハロゲン化物」という用語は従来の意味で使用され、塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物を指す。
【0125】
「低級アルコール」又は低級アルカンは、炭素数1~10、直鎖状又は分岐状、好ましくは炭素数1~6、好ましくは直鎖状のアルコール又はアルカンをそれぞれ意味する。メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールが、低級アルコールの例である。メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びヘキサンが、低級アルカンの例である。
【0126】
本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、「高温」という用語は、典型的には、約170℃~約230℃の範囲内の少なくとも1つの温度を指す。「焼成」という用語は、より高い温度のために確保される。特に指定がない限り、それは、約450℃~約800℃の範囲にある1つ以上の温度を指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、「金属又は半金属」という用語は、「金属若しくは半金属の供給源」又は「金属若しくは半金属の酸化物」などにおいて、周期表の第4、5、8、13、14及び15族の元素を指す。これらの元素は、通常、モレキュラーシーブに酸化物として含まれ、例えば、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、ハフニウム、鉄、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0128】
反応混合物のための酸化ケイ素の典型的な供給源には、ケイ素のアルコキシド、水酸化物若しくは酸化物又はそれらの組合せが含まれる。例示的な化合物には、ケイ酸塩(ケイ酸ナトリウムを含む)、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル、水酸化シリカ又はこれらの組み合わせも含まれる。ケイ酸ナトリウム又はオルトケイ酸テトラアルキル、例えばオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ジエトキシジメチルシラン(DEDMS)及び/又は1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(DETMDS)は、好ましい供給源である。
【0129】
酸化ゲルマニウムの供給源としては、アルカリ金属オルトゲルマネート、孤立GeO4
4‐イオンを含むM4GeO4、GeO(OH)3
‐、GeO2(OH)2
2‐、[(Ge(OH)4)8(OH)3]3‐が含まれ得、又は二酸化ゲルマニウムの中性溶液は、Ge(OH)4若しくはそのアルコキシド若しくはカルボキシレート誘導体を含む。
【0130】
反応混合物のための酸化アルミニウムの典型的な供給源には、アルミネート、アルミナ、アルミニウムコロイド、アルミニウムアルコキシド、シリカゾルにコーティングされた酸化アルミニウム、Al(OH)3などの水和アルミナゲル及びアルミン酸ナトリウムが含まれる。酸化アルミニウムの供給源はまた、アルミニウムのアルコキシド、水酸化物若しくは酸化物又はそれらの組み合わせを含み得る。さらに、アルミナの供給源はまた、他
の配位子、例えばアセチルアセトネート、カルボキシレート及びシュウ酸も同様に含み得る;そのような化合物は、水熱合成又はゾルゲル合成において有用なものとしてよく知られている。酸化アルミニウムの追加的な供給源としては、アルミニウム塩、例えばAlCl3、Al(OH)3、Al(NO3)3及びAl2(SO4)3を挙げることができる。
【0131】
酸化ホウ素、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化バナジウム及び/又は酸化ジルコニウムの供給源は、アルミニウム及びケイ素の対応物に対応する形態で添加することが可能である。
【0132】
本明細書で使用する場合、「鉱酸」という用語は、モレキュラーシーブゼオライト合成で従来から使用されている鉱化酸、例えば、HCl、HBr、HF、HNO3又はH2SO4を指す。また、鉱酸の代わりにシュウ酸及びその他の強有機酸を使用することもできる。一般に、HCl及びHNO3が好ましい鉱酸である。本明細書全体で使用されるように、鉱酸に関する「濃縮」及び「希釈」という用語は、それぞれ、0.5Mを超える濃度及び0.5M未満の濃度を意味する。いくつかの実施形態では、用語「濃縮」は、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9、1.9~2.0以上の範囲の1以上の濃度を意味する。本明細書に記載の実験及び好ましい実施形態において、濃縮酸は、0.9~1.1Mの組成範囲にあるものを指す。同様に、用語「希釈」は、0.5~0.4、0.4~0.3、0.3~0.2、0.2~0.15、0.15~0.1及び0.1~0.05の範囲のうちの1以上の濃度を意味する。本明細書に記載の実験及び好ましい実施形態において、希薄酸は、0.5~0.15Mの組成範囲にあるものを指す。
【0133】
「CIT-13」トポロジーという用語は、直交配向した14員孔のセットを有する、米国特許第10,293,330号に記載のものに類似する結晶性マイクロポーラス組成物を表す。「フィロシリケート」という用語は、米国特許出願公開第2017/0252729号に記載されているような、シリカ含有酸化物の2次元層状構造を指す。
【0134】
炭化水素処理の技術分野において知られている「含酸素炭化水素」又は「含酸素添加剤」という用語は、炭化水素流に存在する、又はバイオマス流の他の供給源(例えば、発酵糖からのエタノール)から得られることが知られている、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エーテル及び/又はケトンを含む成分を指す。
【0135】
「分離する」又は「分離された」という用語は、固体生成物質を、物質を生成する反応条件に関連する他の出発物質又は共生成物又は副生成物(不純物)から物理的に分割若しくは単離することを意味する限り、当業者によって理解されるであろうその通常の意味を有する。したがって、当業者は少なくとも生成物の存在を認識し、それを出発物質及び/又は共生成物若しくは副生成物から分離若しくは単離するための特定の行動をとると推察される。絶対純粋である必要はないが、好ましい。これらの用語がガス処理の文脈で使用される場合、「分離する」又は「分離された」という用語は、当業者に理解されるように、サイズ又は物理的若しくは化学的特性に基づく吸着による又は透過によるガスの分配を意味する。
【0136】
他に明記しない限り、「単離された」という用語は、少なくとも溶媒又は他の不純物、例えば出発物質、共生成物若しくは副産物を含まないように、他の成分から物理的に分離されたことを意味する。いくつかの実施形態では、単離された結晶物質は、例えば、それらの調製を生じさせる反応混合物から、混合相共生成物から、又はその両方から分離された場合に、単離されたとみなすことができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、純粋なゲルマノシリケート(組み込まれたOSDAを有する又は有しない構造を含む)は、
記載の方法から直接製造することができる。場合によっては、結晶相を互いに分離することができない場合があり、この場合、「単離された」という用語は、それらの供給源組成物からの分離を指す場合がある。
【0137】
IUPAC表記によれば、「マイクロポーラス」という用語は、2nm未満の孔径を有する物質を意味する。同様に、「マクロポーラス」という用語は、50nmを超える孔径を有する物質を指す。また、「メソポーラス」という用語は、孔サイズがマイクロポーラスとマクロポーラスとの中間である物質を指す。本開示の文脈では、物質特性及び用途は、孔サイズ及び孔径、ケージ寸法及び物質組成などの骨格の特性によって決まる。このため、所望の用途において最適な性能を発揮する骨格及び組成物が1つしか存在しないことが多い。
【0138】
「任意選択の」又は「任意選択で」とは、その後に記述される状況が発生してもしなくてもよく、したがって、その記述が、状況が発生する例と発生しない例とを含むことを意味する。例えば、「任意選択で置換された」という語句は、非水素置換基が所定の原子上に存在してもしなくてもよく、したがって、その記載が、非水素置換基が存在する構造及び非水素置換基が存在しない構造を含むことを意味する。
【0139】
「方法」及び「プロセス」という用語は、本開示内で交換可能であるとみなされる。
【0140】
本明細書で使用されるように、「結晶性マイクロポーラス固体」又は「結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート」という用語は、分子寸法、すなわち2nm未満の非常に規則的な細孔構造を有する結晶構造である。結晶性マイクロポーラス固体の細孔に入ることができる種の最大サイズは、チャネルの寸法によって制御される。これらの用語はまた、特にCIT-13組成物を指す場合もある。
【0141】
本明細書で使用されるように、「ピラーリング」という用語は、一般に、実質的に平行な結晶性シリケート層間に安定な金属酸化物構造(「いわゆる「ピラー」)を導入するプロセスを指す。金属酸化物構造は、シリケート層の分離を維持し、分子寸法の層間間隔によって作成する。この用語は、一般に粘土化学の文脈で使用され、粘土及びゼオライトの技術分野、特に触媒に適用する場合の当業者にはよく理解されている。
【0142】
「ゲルマノシリケート」という用語は、その骨格内にケイ素及びゲルマニウム酸化物を含む任意の組成物を意味する。「純粋な」「純粋なゲルマノシリケート」という用語は、これらの組成物が、実用的に可能な限り、それぞれゲルマニア及びシリカのみを含み、骨格内の他の金属酸化物が不可避の意図しない不純物として存在することを意味する。ゲルマノシリケートは、「純粋なゲルマノシリケート」である場合も、任意選択で他の金属酸化物又は半金属酸化物で置換されている場合もある。同様に、アルミノシリケート、ボロシリケート、フェロシリケート、スタノシリケート、チタノシリケート又はジンコシリケート構造という用語は、それぞれ酸化ケイ素及びアルミニウム、ホウ素、鉄、スズ、チタン及び亜鉛の酸化物を含むものである。「任意選択で置換された」と記載されている場合、それぞれの骨格は、親骨格に既に含まれていない原子又は酸化物の1つ以上で置換されたアルミニウム、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、鉄、スズ、チタン、インジウム、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム若しくは他の原子又は酸化物を含み得る。
【0143】
本明細書で使用する場合、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロックの任意の元素を指し、周期表の第3族~12族を含む。実際には、fブロックのランタノイド及びアクチノイド系列も遷移金属とみなされ、「内部遷移金属」と呼ばれる。この遷移金属の定義は、第3族~12族の元素も包含する。特定の他の独立した実施形態では、遷移金属又は遷移金属酸化物は、第6、7、8、9、10、11又は12族の元素を含む。さらに他
の独立した実施形態では、遷移金属又は遷移金属酸化物は、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金又は混合物を含む。Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au及びそれらの混合物が好ましいドーパントである。
【0144】
以下の実施形態のリストは、これまでの説明を置き換えたり取って代わるのではなく、補足することを意図したものである。
【0145】
(実施形態1)
8員環及び12員環チャネルを有する、CIT-14/ISTと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物。
【0146】
(実施形態2)
粉末X線回折(XRD)パターンが、7.59±0.5、8.07±0.5、12.88±0.5、19.12±0.5、19.32±0.5、20.73±0.5、22.33±0.5、24.37±0.5、27.19±0.5及び27.69±0.5度2-θにおいて少なくとも5つの特性ピークを有することを特徴とする、実施形態1に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマンシレートCIT-14/IST組成物。この実施形態の特定の態様において、CIT-14/ISTゲルマノシリケート組成物は、純粋なゲルマノシリケートを含む。この実施形態の他の独立した態様において、CIT-14/ISTゲルマノシリケート組成物は、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、ハフニウム、鉄、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛又はジルコニウムの1つ以上の酸化物を含む骨格を含む。この実施形態の特定の独立した態様では、粉末X線回折(XRD)パターンは、上記のこれらの特性ピークのうち、5、6、7、8、9又は10において、少なくとも5つの特性ピークを示す。この実施形態の特定の独立した態様において、ピーク位置の不確実性は、独立して(各ピークについて)±0.5度2-θ、±0.4度2-θ、±0.3度2-θ、±0.2度2-θ、±0.15度2-θ又は±0.15度2-θである。
【0147】
(実施形態3)
粉末X線回折(XRD)パターンが、7.59±0.5、8.07±0.5、19.12±0.5、20.73±0.5及び22.33±0.5度2-θに、並びに任意選択で12.88±0.5、19.32±0.5、24.37±0.5、27.19±0.5及び27.69±0.5度2-θに少なくとも3つの特性ピークを示すことを特徴とする、実施形態1又は2に記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。表1のデータ及びその表に関連する上記のコメントは、この実施形態の独立した態様とみなされる。
【0148】
(実施形態4)
12:1~13:1、13:1~14:1、14:1~15:1、15:1~16:1、16:1~17:1、17:1~18:1、18:1~19:1、19:1~20:1又はこれらの前述の部分範囲の2以上の任意の組み合わせ、例えば14:1~18:1の範囲のSi:Ge比を有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。これらの範囲の各々は、本実施形態内の独立した態様とみなされる。
【0149】
(実施形態5)
結晶が斜方晶系であり、Cmmm空間群若しくはCmcm空間群又は2つのドメインの結晶内混合(無秩序)を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。
【0150】
(実施形態6)
以下に従ったユニットセルパラメータを有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物:
【0151】
【0152】
(実施形態7)
8員環チャネルが約3.3Å×3.9Åの孔径を有し、12員環チャネルが約4.9Å×6.4Åの孔径を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。この実施形態の特定の態様では、それぞれの孔サイズは3.26Å×3.93Å及び4.86Å×6.44Åである。物理的な歪み(例えば、圧縮)又はSi:Geの比率によって、これらの値は変化する可能性がある。本実施形態の特定の態様では、骨格中の平均金属-酸素(T-O)結合長は1.55~1.65Åの範囲にあり、骨格中の平均酸素-金属-酸素(O-T-O)は98o~116o、骨格中の平均金属-酸素-金属(T-O-T)は139o~180oの範囲にある。]
【0153】
(実施形態8)
CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートの逆シグマ変換として特徴付けられる反応から誘導されるか、又は誘導可能である実施形態1~7の
いずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物。CIT-13/OHの具体的な特性は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載されており、これらの記載は、あたかも物理的に組み込まれているかのように本明細書に組み込まれる。
【0154】
(実施形態9)
CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート(本明細書の別の箇所に記載されている)を、濃縮水性鉱酸(例えば、水性酸におけるゲルマノシリケートの分散物として)と、高温で、生成したままのマイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」(これも本明細書の別の箇所に記載されており、それらの記載も本実施形態に組み込まれる)を形成するのに十分な時間接触させることにより調製した、実施形態1~8のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマトシリコンCIT-14/IST組成物。
【0155】
本実施形態の特定の態様において、(a)鉱酸は、水性HCl又はHNO3又は同等の強酸である;(b)鉱酸の濃度は、6~12Mの範囲である;(c)高温は、80℃~120℃の範囲の温度、好ましくは約95℃の温度である;(d)十分な時間は、4~96時間、好ましくは4~24時間の範囲である;95℃で6時間に相当する条件が適している;(e)酸との接触に続いて、「-CIT-14」と称される物質である得られた脱ゲルマン酸化ゲルマノシリケートを単離する:(f)「-CIT-14」物質を、洗浄液のpHが中性になるまで水(好ましくは蒸留水又は脱イオン水)ですすぐ;(g)この条件は、この単離して洗浄した「-CIT-14」物質を、約450℃~650℃の範囲の温度で、2~12時間の範囲の時間、好ましくは580℃で6時間、より好ましくは1℃/分の温度ランプ速度で加熱することをさらに含む。
【0156】
(実施形態10)
CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートであって、フッ化物を含まず、10員環及び14員環によって規定される細孔を有する3次元骨格を有し、6.45±0.2、7.18±0.2、12.85±0.2、20.78±0.2、26.01±0.2及び26.68±0.2度2-θにおいて少なくとも5つのピークを有する粉末X線回折(XRD)パターンを示す、結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート。この実施形態のいくつかの態様では、6.45±0.2度2-θのピークは、7.18±0.2度2-θのピークに比べて強度が低下し(弱く)、後者のピークがパターン内で最も強くなる(実施例を参照)。本実施形態の他の態様では、粉末XRDパターンは11.58°±0.2°2-θに追加のピークを示す。表2のデータ及びそれに関連するコメントは、本実施形態の独立した態様とみなされる。
【0157】
このCIT-13/OHゲルマノシリケートの組成は、CIT-14/ISTの調製におけるその使用と同様に、本開示の独立した実施形態とみなされる。
【0158】
(実施形態11)
実施形態8又は9の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物又は実施形態10の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OHであって、CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートが、
(a)酸化ケイ素(SiO
2 )の供給源;
(b)酸化ゲルマニウム(GeO
2)の供給源;及び
(c)酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又はそれらの組み合わせ若しくは混合物の任意選択の供給源;
(d)以下の構造を有する置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンの少なくとも1つの水酸化物塩;
【化3】
(e)任意選択で、少なくとも1つの組成的に一致した種結晶;及び
(f)水
の混合物から得られる水性組成物を、CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート組成物を結晶化させるのに有効な条件下で水熱処理することを含む方法によって調製され、ここで、水性組成物が、
(a)2~4、好ましくは2.5~3.0の範囲のSi:Geのモル比;
(b)水:Siのモル比が8:1~12:1の範囲にある水;
(c)水:(SiO
2+GeO
2)のモル比が6:1~7:1の範囲にある水;
(c)OH:(SiO
2+GeO
2)のモル比が約0.3:1~0.7:1の範囲にある水酸化物イオン(OH)
を含有し;ここで、水性組成物は、フッ化物イオンを本質的に含まない、実施形態8又は9の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物又は実施形態10の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OH。
【0159】
この実施形態の独立した態様において、
【0160】
(1)酸化ケイ素の供給源は、ケイ酸、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル、水酸化シリカ又はそれらの組み合わせ(又は同等の供給源)、好ましくはケイ酸ナトリウム又はオルトケイ酸テトラアルキル、より好ましくはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を含む。
【0161】
(2)酸化ゲルマニウムの供給源は、GeO2又はその水和誘導体(又はそれと同等の供給源)を含む。
【0162】
(3)置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンは、約0.3:1~0.7:1、好ましくは約0.4:1~0.6:1の範囲にあるOSDA:(SiO2+GeO2)のモル比で存在する。
【0163】
(4)水性組成物は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン若しくはジカチオン又はそれらの組合せを本質的に含有しない。
【0164】
(5)少なくとも1つの置換ベンジルイミダゾリウム有機構造指向剤(OSDA)カチオンは、以下の構造を有する。
【化4】
【0165】
(6)水性組成物は、懸濁液又はゲルである。
【0166】
(7)有効な結晶化条件は、混合物を約140℃~約180℃の温度に約4日間~約4週間さらすことを含む。
【0167】
(7)水性組成物を回転式オーブンで水熱処理する。
【0168】
(8)結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケート固体組成物を単離することをさらに含む方法。
【0169】
(実施形態12)
CIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートがフッ化物を含まず、d4rユニット当たり平均して少なくとも4つ、好ましくは4を超えるGe原子を有するd4rユニットを持ち、d4rユニット中にGe4リングが存在することを可能にする、実施形態8、9又は11の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物又は実施形態10又は11の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OH。d4rユニット中のGe原子の平均数を決定する方法は他の箇所で説明されており、この実施形態に組み込まれる。この実施形態のいくつかの独立した態様において、Si:Ge比は、3.5~3.6、3.6~3.7、3.7~3.8、3.8~3.9、3.9~4.0、4.0~4.1、4.1~4.2、4.2~4.3、4.3~4.4、4.4~4.5、4.5~4.6、4.6~4.7、4.7~4.8、4.8~4.9、4.9~5.0、5.0~5.2の範囲であり、又は前述の範囲のうちの任意の2つ以上により定義される範囲、例えば3.5~3.9である。これらの範囲の各々は、本実施形態内の独立した態様とみなされる。
【0170】
(実施形態13)
アルカリ金属カチオン塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属塩又はそれらの組み合わせを任意選択で含有するマイクロポアを含有する、実施形態8、9、11若しくは12の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物、又は実施形態10~12のいずれか1つの結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OH。塩、金属及び金属酸化物の性質は、この明細書の他の箇所で検討され、この実施形態に組み込まれる。この実施形態の特定の態様では、それぞれのゲルマノシリケートは、その水素形態である。この実施形態の他の態様では、それぞれのゲルマノシリケートは、そのマイクロポア内に塩、金属又は金属酸化物のうちの1つ以上を含む。
【0171】
(実施形態14)
実施形態1~9若しくは11~13のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物、又は実施形態10~13のいずれか1つに記載の結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-13/OHを含む、触媒。
【0172】
(実施形態15)
有機変換に影響を与えるか、又は物質を分離するためのプロセスであって、
(a)低温でDMEをCOによりカルボニル化すること、
(b)メタンでNOxを還元すること、
(c)炭化水素を分解、水素化分解又は脱水素すること、
(d)炭化水素原料を脱ロウすること、
(e)パラフィンを芳香族化合物に変換すること、
(f)芳香族原料を異性化又は不均質化すること、
(g)芳香族炭化水素をアルキル化すること、
(h)アルケンをオリゴマー化すること、
(i)低級アルコールをアミノ化すること、
(j)炭化水素原料から低級アルカンを分離及び収着すること、
(k)オレフィンを異性化すること、
(l)低分子量炭化水素から高分子量炭化水素を製造すること、
(m)炭化水素を改質すること、
(n)低級アルコール又は他の含酸素炭化水素を変換して、オレフィン生成物(MTOを含む)を製造すること、
(o)オレフィンを過酸化水素でエポキシ化すること、
(p)酸素の存在下で、ガス流に含まれる窒素酸化物の含有量を減少させること、
(q)窒素含有ガス混合物から窒素を分離すること、又は
(r)水素及び一酸化炭素を含有する合成ガスを炭化水素流に変換すること、又は
(s)初期の炭化水素生成物中の有機ハロゲン化物の濃度を減少させること
を含み、指定の変換に影響を与えるのに十分な条件下でそれぞれの原料を実施形態14の触媒と接触させることによって行われる、プロセス。
【0173】
(実施形態16)
実施形態1~9又は11~13のいずれか1つの結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物(又は本明細書の他の箇所でCIT-14/ISTと称される組成物のいずれか)を調製する方法であって、少なくとも実施形態10~12(又は本明細書の他の場所に記載)のいずれか1つに記載のCIT-13/OHと称される結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートを、濃縮水性鉱酸(例えば、水性酸におけるゲルマノシリケートの分散物として)と、高温で、生成したままのマイクロポーラスゲルマノシリケート「-CIT-14」(これも本明細書の別の箇所に記載されており、それらの記載も本実施形態に組み込まれる)を形成するのに十分な時間接触させることを含む、方法。
【0174】
本実施形態の特定の態様において、(a)鉱酸は、水性HCl又はHNO3又は同等の強酸である;(b)鉱酸の濃度は、6~12Mの範囲である;(c)高温は、80℃~120℃の範囲の温度、好ましくは約95℃の温度である;(d)十分な時間は、4~96時間、好ましくは4~24時間の範囲である;95℃で6時間に相当する条件が適している;(e)酸との接触に続いて、「-CIT-14」と称される物質である得られた脱ゲルマン酸化ゲルマノシリケートを単離する:(f)「-CIT-14」物質を、洗浄液のpHが中性になるまで水(好ましくは蒸留水又は脱イオン水)ですすぐ。
【0175】
(実施形態17)
結晶性マイクロポーラスゲルマノシリケートCIT-14/IST組成物を形成するのに十分な時間及び温度で、生成したままで洗浄された「-CIT-14」組成物を焼成することをさらに含む、実施形態16の方法。特定の独立した態様において、これらの条件は、この単離され洗浄された「-CIT-14」物質を、約450℃~650℃の範囲の温度で、2時間~12時間の範囲の時間、好ましくは580℃で6時間、より好ましくは1℃/分の温度ランプ速度で加熱することをさらに含む。
【0176】
本開示はまた、本明細書に具体的に記載された水酸化物経路によって調製される、CIT-13/OHゲルマノシリケートの実施形態を包含する。本開示はまた、d4rユニット中のGe-4-リングの存在を可能にする、d4r当たり平均して少なくとも、好ましくは4を超えるGe原子を含有するd4rユニットを有することを特徴とするCIT-13/OHゲルマノシリケートの実施形態を包含する。本開示は、本明細書に規定される新規かつ固有の物理的特徴の結果である、これまで観察されなかった反応性の特徴を示すCIT-13/OHゲルマノシリケートの実施形態も包含する。
【実施例】
【0177】
以下の実施例は、これらの新規物質及びその変換を特性評価するために使用される実験方法を提供するとともに、本開示内に記載される概念のいくつかを例示するものである。各実施例では、実施例で提供されたもの及び本明細書の本文の他の箇所で提供されたものの両方が、組成物、調製方法及び使用の特定の個々の実施形態を提供するとみなされるが、実施例のいずれも、本明細書に記載されるより一般的な実施形態を制限するとみなされるべきではない。
【0178】
別段の指定がない限り、特定の組成物について本明細書に示される粉末XRDパターン、nmr-スペクトル又は構造の他の表現は、それらが関連付けられる一般的な構造に起因するものの代表であると考えられる。
【0179】
以下の実施例では、使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するよう努めたが、多少の実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。特に指示しない限り、温度は℃、圧力は大気圧又は大気圧近傍である。
【0180】
(実施例1.実験)
(実施例1.1.物質の調製)
1,2-ジメチル-3-(2-メチルベンジル)イミダゾリウムヒドロキシド(「オルトメチルベンジル」と表記)又は1,2-ジメチル-3-(3-メチルベンジル)イミダゾリウムヒドロキシド(「メタメチルベンジル」と表記)をOSDAとして使用して、フッ化物を含まないゲルからのCIT-13(CIT-13/OHと表記)を結晶化させ、それらは、フッ化物媒体中でCIT-13を得るものと同じであった。2つのOSDAの合成プロトコルは、別の箇所で提供されている。ゲル組成比は、x/(x+1)SiO2:1/(x+1)GeO2:0.5ROH:yH2Oであり、xはゲルのSi/Ge比、yはゲルのH2O/(Si+Ge)比である。x及びyの好ましい値を以下に示す。詳細な手順及びゲル組成は以下の通りである。CIT-13/OH試料はCIT-13/OH[z]と表記し、zはエネルギー分散型分光法(EDS)を用いて測定したCIT-13結晶のSi/Ge比である。
【0181】
従来のフッ化物含有ゲルからのCIT-13(CIT-13/Fと表記)も、CIT-13/OHとの比較分析のために調製し、以前に報告された方法に基づいていた。CIT-13/OH試料の場合と同様に、CIT-13/F試料はCIT-13/F[z]と表記し、zはEDSを用いて測定した結晶Si/Ge比を表す。
【0182】
IM-12試料も、CIT-13との比較を行うために、文献で以前に報告されたプロトコルに基づき調製した。CIT-13と同様に、IM-12試料もIM-12[z](z=EDS Si/Ge比)と表記した。
【0183】
(実施例1.2.CIT-13/OHの詳細な合成)
ゲル調製の最終段階において、所望の水レベルを総重量(ライナー+撹拌棒+ゲル)に基づいて調整する必要があるため、ライナー及び撹拌棒の乾燥重量を特性評価する必要がある。
【0184】
Parrスチール製オートクレーブ用23mL PTFEライナーで二酸化ゲルマニウム(99.999%、Strem)をOSDA溶液に完全に溶解させた。1,2-ジメチル-3-(2-メチルベンジル)イミダゾリウムヒドロキシド及び1,2-ジメチル-3-(3-メチルベンジル)イミダゾリウムヒドロキシドを、CIT-13/OHのOSDAとして使用した。これらOSDAの調製に使用される方法は既知である。所望量のTEOSを溶液に加え、TEOS相が完全に加水分解されるまで混合物を一晩撹拌した。過剰の水及びエタノールを、室温で空気流下、ゲルが厚く粘性を帯びるまで蒸発させた。TEOSの加水分解生成物であるエタノールは、結晶化速度及び生成物の純度の両方に悪影響を及ぼすと思われる。エタノールの除去範囲を最大にするため、粘性の高いゲルに精製水(約10mL)を追加し、撹拌しながらゲルが粘性になるまで再び蒸発させた。この水の添加-蒸発工程を合計5回繰り返した。(注:Si源としてフュームドシリカを用いた場合は、このエタノール除去工程は必要ない)。最後に、上記の総重量(ライナー+撹拌棒+ゲル)を基準として、所望の水分量を調整した。最終的なゲル組成はx/(x+1)SiO2:1/(x+1)GeO2:0.5ROH:yH2Oであり、xはゲルのSi/Ge比、yはゲルのH2O/(Si+Ge)比である。x及びyの値は、表4に示すとおりである。x及びyの最適な範囲は本文に記載されている。必要に応じてCIT-13種結晶(SiO2+GeO2の総重量に対して5wt%)を添加した。このゲルをスチール製オートクレーブに密閉し、所望の温度に予熱しておいたオーブンに入れた。
【0185】
1週間結晶化させた後、ゲルを取り出した。通常、最初の1週間の結晶化の後、ゲルは暗褐色になり固化した。清潔で硬いPTFEロッドを用い、固化したゲルを十分に粉砕し、粉末状にした。粉砕したゲルを再びオーブンに入れ、結晶化を再開した。アリコートを毎週採取し、結晶化の程度をモニターした。最終生成物を蒸留水及びアセトンを使用して繰り返し洗浄し、100℃の対流式オーブンで乾燥させた。
【0186】
ゲル組成、結晶化条件及び対応する結果を表4にまとめた。
【0187】
【0188】
(実施例1.2.ゲルマノシリケート変換及びCIT-13/OHのCIT-14/IS
Tへの合成後修飾)
CTHからCFIへの変換は、焼成したばかりのCIT-13/OH試料を、水分を保有する大気中にさらすことによって行った。ここでは、前の研究からの結果との一貫性を確保するために、1つの条件(25℃で相対湿度30%(pH
2O=7.1Torr))のみを使用した。変換の程度は、PXRDに基づいてモニターした。CIT-14/ESP(ESPはエトキシシリル化ピラーリングの略)及びCIT-14/IST(ISTは逆シグマ変換を意味する)は、CIT-13/Fの弱酸性ADOR型変換及びCIT-13/OHの逆シグマ型変換を基にそれぞれ調製した。CIT-13/OHの逆シグマ変換は、焼成したばかりのCIT-13/OHを12MのHClで95℃、48時間処理することにより実施した。得られた固体(「-CIT-14」)を遠心分離機を用いて回収し、pHが中性になるまで蒸留水で繰り返し洗浄した。最終物質であるCIT-14/IST(ISTは逆シグマ変換を意味する)は、1℃分
-1の温度ランプ速度で580℃になるまで6時間加熱することによって得られた。比較のため、調製したIM-12試料を用いてUTLからOKOへの逆シグマ変換も行った。CIT-14/IST試料のSEM画像を
図4(A-B)に示す。
【0189】
19Fマジック角回転(MAS)及び1H-29Si交差分極(CP)MAS NMR研究では、ゲルマノシリケートの脱ゲルマン酸化及びフッ素化を実施した。焼成ゲルマノシリケートの冷水脱ゲルマン酸化を以下のように行った:焼成したばかりのゲルマノシリケート100mgを室温で蒸留水100mLに浸し、一晩撹拌した。得られた固体を遠心分離機を用いて回収し、蒸留水で繰り返し洗浄した。脱ゲルマン酸化した試料を、室温で真空乾燥した。フッ化物を含まない媒体で結晶化させたゲルマノシリケートの合成後のフッ素化を、以下のように行った:調製したままの100mgのCIT-13/OHを20~25mgのフッ化アンモニウムとともに微粉砕し、150℃で24時間加熱した。余分なフッ化アンモニウムを冷蒸留水で洗浄することにより除去し、回収した固体を100℃で乾燥させた。
【0190】
(実施例1.3.特性評価)
粉末X線回折(PXRD)プロファイルは、Rigaku Miniflex II回折計(CuKα線λ=1.5418A)を使用して収集した。高分解能PXRDデータは、0.9998Aの波長を使用して、スタンフォードシンクロトロン放射光源(SSRL)の2-1粉末回折ビームラインで収集した。高分解能PXRD実験では、焼成したCIT-14粉末試料を1.0mmのガラスキャピラリーに詰め、密封した。
【0191】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像及び元素分析データは、オックスフォードX-max
SDD EDSシステムを備えたZEISS 1550VP電界放出(FE)-SEM顕微鏡で収集した。Quantachrome Autosorb iQアナライザーを用いて、87.45KでAr-吸着等温線を取得した。固体マジック角回転 (MAS)
核磁気共鳴 (NMR) スペクトルは、Bruker Avance 500MHz分光計(磁界=11.2T)で取得した。モレキュラーシーブ試料を、Kel-FRキャップ付きの直径4mmのジルコニアローターに装入した。1H-13C交差分極(CP)MASスペクトル、29Si MASスペクトル及び1H-29Si CPMASスペクトルを8kHzのMAS回転速度で収集し、19F MASスペクトルを12kHzで収集した。
【0192】
(実施例2.結果及び考察)
(実施例2.1 合成の考察)
フッ化物を除外し、さらに他のゲル組成をCIT-13のフッ化物経路のものから変更することにより、CIT-13を水酸化物媒体で結晶化させることができる。中程度に高範囲のゲル組成で結晶化できるCIT-13/Fとは異なり、CIT-13/OHはかなり狭いゲル組成範囲で得られる。ゲルSi/Ge比及びゲルH
2O/(Si+Ge)比の
範囲は、OSDA/(Si+Ge)=0.5のとき、2<Si/Ge<4及び6<H
2O/(Si+Ge)<7、好ましくはそれぞれ2.5<Si/Ge<3.0及び6.0<H
2O/(Si+Ge)<6.5であった。この組成範囲外のゲル組成では、非晶質ゲルマノシリケート又は未知の高密度相が得られた。純粋なCIT-13相の結晶化は、160℃及び175℃で観察された。合成の詳細(例えば、ゲル組成など)を表4に示す。CIT-13/OHは、
図5(A-C)に示すように板状の結晶形態を有し、フッ素含有調製物及びその等構造ゲルマノシリケートから得られたCIT-13と同様であった。生成したままのCIT-13/OH[4.33]の
1H-
13C CPMASスペクトル及びOSDAの溶液相
13C NMR(
図6)により、CIT-13/OHの結晶化中にOSDAの構造が保持されていることが確認された。また、同じ生成したままの物質の
1H-
29Si
CPMASスペクトルから、フッ化物の不在を補う連結性欠陥の存在も確認された。(
図7)
【0193】
調製したままで焼成したCIT-13/OH[3.88]及びCIT-13/OH[4.33]のPXRDプロファイルを
図8(B-E)に表示する。他のPXRDパターンは、
図9に提供する。すべてのPXRDプロファイルは、環境条件下で得られた。回折ピークの位置は、
図8(F)に示す参照用CIT-13/Fの回折ピークとよく一致した。しかし、CIT-13/F及びCIT-13/OHの間には、ピーク強度に違いが見られた。オルトメチルベンジルOSDAを用いて結晶化した唯一のCIT-13/OH[3.88](
図8(A)及び
図9(B))を除いて、メタメチルベンジルOSDAから合成した他の調製したままのCIT-13/OHは、
図8(D)及び
図9(A)に示すように、2θ=6.44°で非常に弱い(200)ピークを示した。9(C-K)に示すように、2θ=6.44°に非常に弱い(200)ピークを示す。生成したままのCIT-13/OHからのこれらの弱い(200)ピークは、焼成によってOSDAを除去した後に強くなった。(
図8(E))さらに、CIT-13/OH試料の一部は、
図9(D-G)及び9(I-J)に示すように、2θ=11.58°で明確に識別可能な(310)ピークを示す。これらの(310)回折は、フッ化アンモニウムを用いたフッ化物の合成後の挿入により減衰していることがわかる。また、CIT-13/OHのフッ素化により、(200)ピークの強度が増加した。(
図10)したがって、CIT-13骨格内にフッ化物が存在せず、メタメチルベンジルOSDAカチオンが存在することが、(200)ピークの弱い強度及び時折出現する(310)ピークの原因であるように思われた。
【0194】
87.45Kで得られたCIT-13/OH[3.56]のアルゴン物理吸着等温線を、比較のためにCIT-13/F[4.18]のものと重ね合わせて
図8(G)に示す。CIT-13/OH[3.56]のマイクロポア容積は、t-プロット法に基づいて0.141cc/gであった(Saito-Foley法から0.202cc/g)。この微孔率は、参照のCIT-13/F[4.18](de Boer t-プロット:0.172cc/g;Saito-Foley:0.223cc/g)よりわずかに低かった。CIT-13の10MR及び14MRの存在による特徴的な2段階吸着(
図8(G)の↓印)は、予想通りCIT-13/OHでも観察された。
【0195】
(実施例2.2.CTHからCFIへの変換の考察)
CIT-13型ゲルマノシリケートは、UTL、IWW及びITHなどの他のd4r型ゲルマノシリケートとは異なり、環境湿度にさらされるとゆっくりとCFI型ゲルマノシリケートに変換した(*CTHからCFIへの変換)。この変換は、ゲルマニウムに富むd4rユニットの存在及びcfi層の結晶学的性質によって引き起こされるCIT-13骨格の不安定性により、Geに富むd4rユニットがdzcユニットへと再配列されることで起こった。興味深いことに、CIT-13/OHは、同程度のゲルマニウム含有量のCIT-13/Fよりもはるかに速く、対応するゲルマノシリケートCIT-5に変換された。CIT-13/OH[4.33]は、CFIへの変換を12日以内に完了したが、
CIT-13/F[4.31]は85日かけてCFI型ゲルマノシリケートに完全に変換した。CIT-13/OH[4.33]を一定時間、環境湿度(25℃でpH2O=7.1torr、相対湿度30%)にさらした後の焼成CIT-13/OH[4.33]のPXRDプロファイルを
図11(A)及び
図11(B)に示す。CIT-13の(400)ピークは、当初2θ=13.07°の(002)回折と重なっていたが、2日後には2θ=13.69°にシフトし、別々に見えるようになった。8日後には、CFI骨格の3つの特徴的な回折((301)、(002)及び(400))が現れはじめた。10日間の環境暴露後のPXRDプロファイルは、参照純シリカCIT-5のプロファイルとよく一致した。(200)回折の位置から推定されるcfi-cfi層間距離の時間依存位置を
図11(E)にCIT-13/OH[4.33]及びCIT-13/F[4.31]について示し、CIT-13/Fと比較して、CIT-13/OHのより速い変換を示す。
【0196】
CIT-13/Fの場合、Si/Ge比を4.31~3.87に減少させると、完全な変換を達成するのに必要な時間が約4ヶ月から12日に短縮された。この変換速度の加速は、CFI骨格のdzcユニットに変換する構造ビルディングユニットであるd4rユニット内のゲルマニウム部位の増加に起因し得る。CIT-13/Fの場合と同様に、CIT-13/OHのSi/Ge比を減少させると、*CTHからCFIへの変換がさらに加速された。CIT-13/OH[3.88]は、
図11(C)及び11(D)に示すように、2日以内に対応するCIT-5型ゲルマノシリケートに変換した。これは、CIT-13/F[3.87]での同様の変換よりも、少なくとも6倍高速であった。焼成したCIT-13/OH[3.88]及び得られたGe-CIT-5の
29Si NMRスペクトルを取得し、これらのゲルマノシリケート内のSi部位の環境を調べた(
図12)。CIT-13/Fの場合と同様に、CIT-13/OHは-104.2、-109.4及び-113.9ppmに3つのグループのシグナルを示した。このスペクトル形状は、以前に報告されたCIT-13(前述の
図3を参照)及びフッ化物媒体中で合成された関連物質と一致していた。単一の幅広いシグナルの集合を-110.61ppmに示したCIT-13/F由来のGe-CIT-5とは異なり、CIT-13/OH[3.88]由来のGe-CIT-5は約-109.0及び-112.2ppmに2つの別々のピークのグループを示した。CIT-13のスペクトルにおける-104.2ppmでのショルダーの消失は、CIT-13/Fの変換でも見られたd4rユニットからdzc架橋ユニットへの再構成に起因し得る。したがって、両方のシグナルは、純シリカCIT-5の-113ppm及び-115ppmのシグナルと同じ起源を持つことから、cfi層Si部位に帰属させることができる。
【0197】
親CIT-13のゲルマニウム含有量が高いほど*CTHからCFIへの変換が速くなったという事実に基づいて、CIT-13/OH結晶は、同様の全体的なSi/Ge比を持つCIT-13/F結晶と比較してそのd4rユニット内により多くのゲルマニウムを持っていると推測することができる。CIT-13/Fでは、cfi層がゼロでないゲルマニウム占有率を持つことも確認された。d4rユニットの形成は、低い骨格T-O-T角を安定化できるフッ化物アニオンの存在及び/又は高いゲルマニウム含有量によって促進されることが知られている。フッ化物がない状態でのd4r型CIT-13骨格の形成は、d4rユニット内へのゲルマニウムの取り込みを増加させる結果になり得る。実際、Si/Ge比が低いCIT-13/OH試料は濃酸中で逆シグマ変換を受け、IM-12由来のCOK-14の類似体である「-CIT-14」を生成した。このタイプの変換を受ける能力は、d4rユニット内にクラスター化したゲルマニウム部位の含有量が高いことだけでなく、純粋なGe-4リングが存在することも強く示唆している。
【0198】
(実施例2.3.CIT-13から「-CIT-14」及びCIT-14/ISTへのトポタクティック変換の考察)
CIT-13とIM-12の構造的類似性にもかかわらず、強酸による*CTH型ゲル
マノシリケートからのGe-4-リングの浸出はまだ報告されていない。IM-12とは異なり、*CTH型ゲルマノシリケートのSi-O-Si層間架橋結合がそのような変換の主な障害となることが示唆されてきた。SAZ-1からIPC-16へのADOR型変換及び後者のPawley精製が登場した。ごく最近、CIT-13/Fのd4rユニット内のT部位を弱塩基処理に基づいて部分的に除去し、ECNU-23を得たことが報告された。しかしながら、強酸による真の逆シグマ変換には、d4rユニット内の純粋なGe-4-リングの存在が不可欠であり、IM-12はそのような構造的及び元素的前提条件を持つ唯一のd4r型ゲルマノシリケートであった。
【0199】
水酸化物媒体中で結晶化したGeに富むCIT-13は、
図13(A)に概略的に示されるように、d4rからGe-4-リングが同時に外れる逆シグマ変換によって説明できる構造変換を受けることが可能である。本明細書では、
図13(B)に示すPXRDプロファイルに基づいて、2つの例(CIT-13/OH[3.71]及びCIT-13/OH[3.56])が実証された。Verheyen(Nat. Mater. 2012, 11, 1059)が用いた命名法に従って、焼成前に酸処理したばかりの物質を「-CIT-14」と表記する。「CIT-14」についてはリートベルト精密化は行っていないが、-COK-14からCOK-14への縮合と同様に、「-CIT-14」の焼成後に層間方向(すなわちa方向)に沿ったユニットセルパラメータのわずかな減少が観察された。逆シグマ変換によりCIT-14を生成することができるCIT-13ゲルマノシリケートの調製には、フッ化物の有無及びゲルマニウム含有量の2つが最も重要な合成因子であった。焼成したCIT-13/F[3.87]を12MのHClで処理しても、ゲルマニウム含有量が高いにもかかわらず、「-CIT-14」は得られなかった。また、CIT-13/OH[4.33]に同様の処理を行ったところ、無秩序な層状物質が得られた。(
図14(A-B))
【0200】
比較のために、本明細書ではCIT-14/ESPと表記するCIT-13の従来のADOR変換に基づいて、等構造物質を得た。この変換は、SAZ-1からIPC-16への変換に類似していた。焼成したCIT-13/OH[3.56]を12MのHClで処理して調製したCIT-14/ISTとCIT-13/F[4.33]のADOR型変換からのCIT-14/ESPとのPXRDプロファイルを、
図15(A)と15(B)に、GULP構造最適化アルゴリズムに基づく参照CIT-14モデルのものと共に示す。明らかに、CIT-14/ISTの(200)層間回折の強度は、CIT-14/ESPのそれよりも強かった。この回折強度の違いは、CIT-14の単一4環(s4r)架橋ユニットの元素組成に由来し得る。CIT-14の7つのT部位それぞれにおけるゲルマニウム占有率が(110)及び(200)回折の強度に与える影響を計算し、その結果を
図16に示す。ゲルマニウムが2つのT部位(T3及びT7)を占めると、PXRDの(110)回折の相対強度が著しく増加することが分かった。T7はs4r部位、T3はd4r部位に直接隣接する部位である。実際、CIT-14/ISTのリートベルト精密化では、T7のゲルマニウム含有量は21%であり、骨格全体の総ゲルマニウム数の52%を占めている。(表5、上記参照)。T3については、有意なゲルマニウム占有率は検出されなかった。逆シグマ変換により、親ゲルマノシリケートのd4rユニットから純粋なGe-4リングが外れていることを考慮すると、CIT-13/OHのd4rユニットは平均して4個を超えるゲルマニウム原子を有していると結論づけることができる。しかし、CIT-14/IST及びCIT-14/ESPの
1H-デカップル
29Si MASスペクトルに有意差は見られなかった(
図15(D))。両方のCIT-14は、約-112ppmを中心とするシグナルのブロードエンベロープを示す。このスペクトルの類似性は、CIT-14骨格内に残存するゲルマニウム部位の存在に起因すると推定される。また、Q3型シラノールはごくわずかしか検出されなかった。
【0201】
前述のように、CIT-14/ISTはCIT-14/ESPよりもゲルマニウム含有
量が多かった。CIT-13/OH[3.56]及びCIT-13/OH[3.71]から得られた2つのCIT-14/IST試料のEDS Si/Ge比は、それぞれ14.5及び17.5であることが分かった。これらの値は、その調製手順に弱酸(0.1MのHCl)を用いた脱ゲルマン酸化剥離を伴うCIT-14/ESP試料(Si/Ge=50-253、脱ゲルマン酸化の程度によって異なる、
図17を参照)よりも低い値であった。2つのIM-12試料(Si/Ge=3.80及び4.79)に同じ手順を用いて今回調製したCOK-14試料のSi/Ge比は17.5及び29.2であり、Verheyenらによって報告された値(Si/Ge=110)よりはるかに低く、これはおそらく親IM-12.18のSi/Ge比が低いためと考えられる (
図18及び19を参照)。これらの値も、CIT-14/ESPと同様に弱酸性剥離を受けたIM-12からのADOR生成物として調製されたIPC-2(Si/Ge=97と報告)よりもはるかに低い値であった。これらの結果は、強酸による逆シグマ変換が、d4rユニット内に余分なゲルマニウム部位(Ge-4-リングの除去以外)を浸出させずに残していることを裏付けるものである。
【0202】
CIT-14のマイクロポーロシティは、87.45Kで取得したアルゴン吸着等温線を用いて調査した。(
図20)CIT-14/ISTが吸着-脱着ヒステリシスを示さなかった一方で、CIT-14/ESPはその吸着曲線から明らかに逸脱した脱着曲線を示した。同様のヒステリシスが、ADOR型ピラーリング法によって形成されたIPC-2から観察された。このマイナーなメソポロジーは、硝酸媒体中での合成後処理の後に一般的に観察される。また、CIT-14/ISTの比マイクロポア容積(t-プロットより0.105cc/g、Saito-Foleyより0.141cc/g)は、CIT-14/ESPの比マイクロポア容積(t-プロットより0.065cc/g、Saito-Foleyより102cc/g)より大きかった。同様の傾向は、UTLからOKOへの変換においても観察されている。また、
図20(B)に明確に見られるように、CIT-14/ISTはCIT-13(p/p
0~3×10
-4)よりもp/p
0=約1×10
-4低いところでアルゴンを吸着し始めた。この吸着開始圧力は、8MRリングゼオライトA(LTA)(p/p
0~1×10
-4)と非常によく似ている。したがって、CIT-14のアルゴン吸着は、その8MR細孔への吸着により開始された。
【0203】
CIT-13から「-CIT-14」への逆シグマ変換に伴うマイクロポア容積の減少を、理論的及び実験的に調査した。理論的評価には、Treacy及びFosterによって開発されたトポロジー解析用のTOTOPOLユーティリティを使用して、細孔容積の減少を推定した。計算用骨格モデルとして、CIT-13及びCIT-14/ISTのリートベルト精密化(本研究、以下を参照)から得られた結晶学的情報(cif)ファイルを使用した。その結果を表6にまとめた。実験的に観測されたマイクロポア容積の減少率(Saito-Foley:30.2%;t-プロット:25.5%)は、TOTOPOLを用いて推定した値(30.2%)と同等か、それよりも低かったが、TOTOPOLは実験的に得られた値に比べて、CIT-13及びCIT-14のマイクロポア容積を過小評価しているようであった。
【0204】
【0205】
架橋部位、すなわちCIT-13又はCIT-14のd4r又はs4rユニットにそれぞれ直接接続された層部位の位置は逆シグマ変換中に変化しなかったため、CIT-14/ISTはその親CIT-13から無秩序パターンを直接継承したはずである。実際、GULPアルゴリズムに基づく無秩序モデルではそれぞれ2θ=11.43°及び11.78°に位置すると推定される(111)及び(201)回折ピークは、CIT-14/ISTの実際のPXRDパターンでは観察されなかった。(
図15(C))これらの回折はCIT-14/ESPでも観測されず、以前に報告したSAZ-1からIPC-16へのADOR変換と一致する。しかし、ADOR変換では、Geに富むd4rは弱酸中での剥離により完全に除去され、架橋s4rはジエトキシジメチルシランなどの新たに導入されたケイ素源により形成されていた。したがって、CIT-14/ISTの無秩序のパターンは、CIT-14/ESP及びIPC-16のそれとは同一ではない可能性がある。
【0206】
XPDパターンは、ソフトウェアCMPR.36に実装されたプログラムTREOR35を用いて斜方晶ユニットセル(a=21.90A、b=13.74A、c=10.11A)でインデックス化することができた。初期CIT-14骨格モデルは、逆シグマ変換によってCIT-13骨格構造(すべてシリカを想定)20から導き出され、CIT-13からの無秩序は導入されなかった。さらに、プログラムDLS-7637を用いて、親CIT-13(*CTH)と同じ空間群Cmmmを想定し、形状を最適化した。これを出発点として、プログラムTOPASを用いたリートベルト精密化を行った。CIT-14/ISTの最終構造は、一致値R
F=0.057、R
wp=0.078及びR
exp=0.053を有する粉末パターンのリートベルト精密化に基づいて得られた(
図21(A))。
【0207】
すべての対称要素が保存されているため、逆シグマ変換はトポタクティック変換のIUPAC定義を満たす。CIT-14/ISTの理想化された構造及び細孔系をそれぞれ
図21(B)及び
図21(C)に示す。CIT-14/ISTは、12MR及び8MRの細孔で区切られた2次元チャネルシステムを有し、それぞれ6.4×4.9A及び3.9×3.3Aの限界寸法を有する。フェリエライト(FER)と同様に、小さな孔開口部を介して隣接する2つの直線的主チャネルに接続されているCIT-14/ISTには小さなケージがある一方、他の2次元12/8MRトポロジーとして知られているEON及びM
ORにはこのようなケージ構造がない。無秩序の存在により(
図21(D)に図示)、8-MR副チャネルは直線状ではない。ユニットセルパラメータcは、平均的な構造としてc’=c/2=5.0569Aとも定義できるが、より小さなユニットセルを用いても、精密化は向上しなかった(すなわち、原子座標及びプロファイルの適合度の変化は最小であるが、精密化を受けるパラメータ数は増加する)。CIT-14/ISTの詳細な結晶学的情報は、表5及び表7並びに
図22に記載した。
【0208】
【0209】
【0210】
(実施例2.4.d4rユニット内のGe配列の考察)
d4r型ゲルマノシリケートの逆シグマ変換能は、層に平行な純Ge-4リング(d4rユニット)が存在する証拠を間接的に提供することができる。前節で述べたように、Geに富むCIT-13/OH(Si/Ge比<3.7)はIM-12と同様に逆シグマ変換を受け、高い結晶性及び明瞭な細孔系を持つCIT-14/ISTとなった。また、PXRD及び構造精密化に基づき、CIT-14の残りのs4rユニットはゲルマニウム部位を持つことがわかった。したがって、CIT-13/OHのd4rユニットの元素組成は、Si/Ge比が低い場合、[SinGe8-n]-d4r(n<4)であり、4つのGeがd4rの側面を完全に占めていると推論される。CIT-13/FはADOR戦略を用いてCIT-14/ESPに変換することができたが、本発明者らはそれを用いて逆シグマ変換を達成することができなかった。さらに、上述のように、CIT-13/OHは、同様のゲルマニウム含有量を有するCIT-13/F試料よりもはるかに高い*CTHからCFIへの変換率を示した。これらの結果は、d4rユニットの構造指示及び安定化もできるフッ化物の有無が、超大細孔ゲルマノシリケートCIT-13のd4rユニット内の元素組成及び分布の組織化に大きな役割を演じていることを示している。
【0211】
19F NMR分光法は、d4rユニットなどの小さな環ビルディングユニットの元素組成を明らかにするツールとして使用することができる。直接合成によるフッ化物アニオンが取り込まれていないゲルマノシリケートは、合成後にフッ化物を生成したまま又は脱ゲルマン酸化した骨格に挿入することで修飾することが可能である。フッ化物を導入したd4r型ゲルマノシリケートは、一般的に、約-8ppm(ブロード)、-19ppm(シャープ)及び-38ppm(シャープ)の3つのシグナルを示し、それぞれ[Si4Ge4]-d4r、[Si7Ge]-d4r及び[Si8]-d4rに通常帰属する。後者2つの帰属については、一般に合意が得られている。しかし、前者の-8ppmのピークの性質は、通常ブロードで、時には1つ又は2つのショルダーシグナルを伴うことがあり、ゲルマニウム配置の多くの可能性から、依然として疑問が残されている。
【0212】
生成したままのCIT-13/F及びフッ素化CIT-13/OH試料の
19F NMRスペクトルを
図23(A-C)に示す。全てのCIT-13試料は、-8ppm付近を中心としたブロードなピークを示し、-19ppm及び-38ppmにはシグナルがないことから、これらのCIT-13試料のd4rユニットはゲルマニウムに富むことがわかる。また、CIT-13/OHの合成後のフッ素化により、-123.7ppmに複数の回転サイドバンドを持つ鋭いシグナルが出現したが、これは表面エッチングによる表面
19F-Si種に由来すると推定される。この表面エッチングは、PXRDプロファイル(
図10)からも支持されるように、構造劣化をもたらさなかった。CIT-13試料の-8ppmシグナルはIM-12のシグナルよりも広く、これはCIT-13のd4rユニット内のゲルマニウム配置が、使用した鉱化剤の種類にかかわらず、フッ素化IM-12のゲルマニウム配置よりも均一でないようであることを示している。CIT-13試料の-8ppmシグナルを、ライン1(-7.3~-8.3ppm)及びライン2(-11.0~-11.7ppm)の2つのピークに逆畳み込みした。
図23(A)及び(B)に示すように、ゲルマニウム含有量が同程度であるにもかかわらず、CIT-13/OH[4.33](16%)はCIT-13/F[4.33](1%)より強いライン2のシグナルを与えた。この結果は、CIT-13合成においてフッ化物が存在しないことが、d4rユニット内のゲルマニウム部位の配置に実際に影響を与えたことを示している。CIT-13/OH[4.33]は同様のSi/Ge比を持つCIT-13/Fよりも早く対応するGe-CIT-5に変換し、この*CTHからCFIへの変換はT-O-Ge結合の加水分解によって引き起こされることが上記で示された。Ge-O-Ge結合を持つIM-12は、環境条件にさらされると非常に速く(1日以内に)崩壊した。Kasianらは、フッ素化IM-12が-8ppmの主ピークの隣に-12ppmのショルダーピークを示すことを示した(フッ素化IM-12で観測された-3ppmのショルダーピークはCIT-13では検出されていない)。このことから、CIT-13/OHのライン2シグナ
ルの起源は、Ge-4-リングなどのd4rユニット内のゲルマニウム部位配置が高度にクラスター化したことに起因し得ると考えられる。
【0213】
CIT-13/OH[3.56]の19Fスペクトルではライン2の寄与がさらに増加し(23%)、CIT-14/ISTへの逆シグマ変換を受けた(
図23(C)に示すように)。他の研究者らは純シリカから純ゲルマニアまでの一連のSTW型ゲルマノシリケートの19F NMRスペクトルを調査し、Si/Ge比が5から0.42に減少した結果、主要19Fシグナルが-7.5ppmから-10.5ppmにシフトしたと報告している。さらに他の研究者らはGeに富むITQ-21物質の
19F NMRスペクトルで-14ppmに高磁場のシグナルが存在することも報告している。これらの結果を参考に、本発明者らは、ライン2などの高磁場シグナルがd4rユニット内の高ゲルマニウム含有量に起因し得ると考えている。
【0214】
CIT-13/OHのd4rユニット内のゲルマニウム部位の配置は、蒸留水を用いて脱ゲルマン酸化した関連ゲルマノシリケートの
1H-
29Si CPMAS NMRスペクトル(
図24)に基づいてさらに調査された。このタイプの処理を使用すると、ゲルマニウム部位のほとんどがd4rユニットから除去され、それに伴って隣接するケイ素部位がシラノール部位になると推測されている。水-脱ゲルマン酸化したCIT-13及びIM-12試料は、完全に接続されたQ4シグナル以外に、強いQ3シグナルを共通して示している。試料間の大きな違いは、Q2型(ジェミナル)シラノールシグナルの強さである。脱ゲルマン酸化したIM-12試料(Si/Ge=4.89及び4.23)は、研究対象の脱ゲルマン酸化物質の中で最も弱いQ2シグナルを示し、これは他の研究者らによる以前の観測と一致した。これらのIM-12試料は、逆シグマ変換を受けることが確認されたIM-12(Si/Ge=5.3)よりもGeに富んでいた。
1H-
29Si CPMASスペクトルにおけるQ2シグナルの痕跡は、過度の脱ゲルマン酸化によるものであり得る。IM-12とは異なり、
図24に示した4つのCIT-13試料は、中程度の強度のQ2シグナルを与えた。4つの研究対象のCIT-13試料のうち、CIT-13/OH[3.71]のみが逆シグマ変換を受け、CIT-14/ISTとなり、CIT-13の中で最も弱いQ2シグナルを示した。2つのCIT-13/F試料は、Si/Ge比に関係なく、CIT-13/OH[4.33]よりも強いQ2シグナルを与えた。これらのCIT-13/F試料は、上に示したように逆シグマ変換によってCIT-14に変換することはなかった。また、それらの脱ゲルマン酸化型の
1H-
29Si CPMASスペクトルは、その強いQ2シグナルの点で、ITH及びIWWのスペクトルと類似していた。この観察結果は、CIT-13の合成ゲル中のフッ化物の有無がd4r架橋ユニット内のゲルマニウムの配置に影響を及ぼしていたという前提をさらに裏付けている。
【0215】
[Si
4Ge
4]-d4rユニット内のゲルマニウム配置の3つの例のタイプ(I、II及びIII)並びに2つのGeに富む配置(それぞれ5及び6つのGe部位を有するII-2及びIII-2)を
図25に示す。Cormaらは、計算結果に基づいて、AST型ゲルマノシリケートの可能な[Si4Ge4]-d4r配置の中で、d4rユニット内のSiとGe部位の交互配置(すなわち、タイプI配置)が最もエネルギー的に有利であることを示した。このゲルマニウムの配置は、Liuらによって、生成したままのCIT-13/Fに存在することも示唆されている。タイプII及びIIIは、ITH/IWW及びUTLにそれぞれ存在することが示唆されている[Si
4Ge
4]-d4r配置であり、フッ素化及び脱ゲルマン酸化されたITQ-13、ITQ-22及びIM-12ゲルマノシリケート.28の
19F MAS並びに
1H-
29Si CPMASスペクトルに基づいている。最も重要なことは、タイプIII配置が、IM-12の逆シグマ変換中のGe-4-リングの抽出と、結果として得られたCOK-14物質の高いSi/Ge比を説明できることである。
【0216】
CIT-13/Fについては、Si-O-Si架橋の存在がcfi-型層状物質への酸性媒体下での完全剥離を阻害している可能性が指摘されている。また、CIT-13/Fは、上記のように強酸処理によってCIT-14に変換することはなかった。この結果は、CIT-13/F試料のd4rユニットには純粋Ge-4-リングが存在しないことを示唆している。非常に遅いが、CIT-13/Fは環境湿度にさらされると完全にGe-CIT-5に変換した。この変換は、d4rユニット内の主要14MRチャネルに平行なT-O-T結合の加水分解を機構的に伴うものである。したがって、CIT-13/Fがd4rの主チャネル方向に沿ってSi-O-Si結合を持つ可能性は低い。したがって、タイプI又はタイプII-2(Geに富む場合)の配置でCIT-13/Fが示すすべての変換挙動を説明できる可能性がある。しかしながら、CamblorらによるDFTに基づく計算によれば、タイプII-2のような高度にクラスター化したゲルマニウム部位は、その
19F NMRにおけるライン2シグナルの大きな寄与をもたらし得るが、これはCIT-13/Fでは観測されない(
図23(A))。したがって、CIT-13/Fは、その変換挙動を説明できるタイプI又は他の可能な配置を持っている可能性がある。
【0217】
図23(B)及び
図23(C)に示すように、CIT-13/OH試料のフッ素化形態は、IM-12、28のものよりも広い-8ppmシグナル(ライン1)及び余分のアップフィールドシグナル(ライン2)の16~23%の寄与を示した。これらのデータは、d4rユニット内にタイプII-2及びタイプIII-2などの高度にクラスター化したゲルマニウム部位が存在することを示唆している。また、CIT-13/OHの高速な*CTHからCFIへの変換は、チャネル方向に平行なGe-O-Ge結合によって説明することができる。タイプIII-2配置は、得られたCIT-14/ISTのs4r部位内の純Ge-4リングと高いゲルマニウム含有量とも矛盾しない。実際、シンクロトロンPXRDから得られた本発明の精密構造解は、架橋s4rユニットのSi/Ge比が約4であることを確認し、それはCIT-13/OHのd4rユニット内の純粋Ge-4-リングの上に1又は2の追加ゲルマニウム置換があることを意味する。したがって、本発明者らは、CIT-13の合成ゲル中にフッ化物が存在しない場合、タイプII-2又はタイプIII-2などのクラスター化ゲルマニウム部位が得られることを示唆する。
【0218】
当業者が理解するように、本発明の多数の修正及び変形がこれらの教示に照らして可能であり、そのようなものはすべて、本明細書に企図されている。本明細書で引用した全ての参考文献は、少なくとも提示した文脈におけるその教示について、参照により本明細書に組み込まれる。