(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ
(51)【国際特許分類】
E21B 10/36 20060101AFI20240919BHJP
E21B 4/14 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E21B10/36
E21B4/14 A
(21)【出願番号】P 2022531473
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2020083185
(87)【国際公開番号】W WO2021105109
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-09-07
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IE
(73)【特許権者】
【識別番号】516001856
【氏名又は名称】ミンコン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MINCON INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ パーセル
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0264608(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0367173(US,A1)
【文献】国際公開第2017/188876(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008722(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0016574(US,A1)
【文献】米国特許第06705415(US,B1)
【文献】国際公開第2011/016005(WO,A2)
【文献】特開2000-186487(JP,A)
【文献】特開2012-254513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるシャンクで形成されたヘッド部分を有し、前記シャンク上の第1の複数の軸方向に延びるスプラインが駆動チャックの内部に形成された第1の複数の相補スプラインとスライド可能に係合可能であり、それにより前記
駆動チャックからの回転駆動を前記シャンクに伝達することができるパーカッションビットと、
前記
駆動チャックを流体動作パーカッションドリルツールの駆動手段に接続するように構成された前記
駆動チャック上の係合手段と、
を備え、
掘削中、前記
パーカッションビットと前記
駆動チャックは第1の相対配向に保持され、この相対配向では、前記
パーカッションビットが前記
駆動チャック内に保持され、且つ
前記
パーカッションビットがビット除去位置まで前記
駆動チャックに対して軸方向に移動可能であり、前記ビット除去位置では、前記
パーカッションビットが前記
駆動チャックに対して前記
駆動チャックから前記
パーカッションビットを除去し得る第2の相対配向に回転可能であり、
前記
駆動チャックが前記駆動手段と完全に係合している間、前記
パーカッションビットが前記ビット除去位置へ移動可能であるため、前記
駆動チャックが前記駆動手段と完全に係合している間、前記
パーカッションビット
をドリルビットアセンブリから除去することができる、
流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項2】
前記
パーカッションビットと前記
駆動チャックが前記第1の相対配向に保持され、前記
パーカッションビットが前記
駆動チャック内に保持されるように、前記
パーカッションビットが前記
駆動チャックに対して回転するのを防ぐために、前記
駆動チャック上の相補アライメント手段と係合し得る前記
パーカッションビット上のアライメント手段をさらに備え、前記ビット除去位置では、前記アライメント手段は、前記
パーカッションビットが前記
駆動チャックに対して第2の相対配向へ回転し得るように、相補アライメント手段から解放される、請求項1に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項3】
前記相補アライメント手段は、前記
駆動チャックの前端部の内部に形成された軸方向に延びる1組のアライメントスプラインを備え、前記アライメント手段は、前
記シャンクの前端部に形成された軸方向に延びる1つ又は複
数組のアライメントスプラインを備え、前記
駆動チャック上のアライメントスプラインは、前記
パーカッションビットと前記
駆動チャックを前記第1の相対配向に保持するために前
記シャンク上の前記複数組のアライメントスプラインの少なくとも1組と係合可能であり、前記ビット除去位置では、前記
駆動チャック上の前記アライメントスプラインは、前
記シャンク上の前記1つ又は複
数組のアライメントスプラインから解放され、前記
駆動チャックに対して前記
パーカッションビットの前記第2の相対配向への回転が可能である、請求項2に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項4】
軸方向の長さが前記
駆動チャック上の前記アライメントスプラインの長さに対応し、前記
パーカッションビット上の前記1組又は複数組のアライメントスプラインに隣接して位置する前
記シャンクの円周部分は無スプライン部分であり、前記ビット除去位置では、前記
駆動チャック上の前記アライメントスプラインが、前記
駆動チャックに対する前記
パーカッションビットの回転を可能にするために、前
記シャンクの無スプライン部分と合致し得る、請求項3に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項5】
前
記シャンクの後端部に少なくとも1つの保持スプラインを備え、前記
パーカッションビットと前記
駆動チャックが前記第1の相対配向にあるとき、各保持スプラインが、前記
駆動チャックの内部に形成された前記相補スプラインの対応する1つの後端に係合して前記
パーカッションビットを前記
駆動チャック内に保持するように構成されている、請求項1~4のいずれかに記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項6】
前記
パーカッションビットと前記
駆動チャックが第2の相対配向にあるとき、前記少なくとも1つの保持スプラインが前記
駆動チャックの内部に形成された前記相補スプラインからオフセットされて、前記
パーカッションビットを前記
駆動チャックから除去することができる、請求項5に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの保持スプラインの少なくとも1つのエッジが、前
記シャンク上の前記第1の複数のスプラインの対応する1つの対応するエッジから
、前記軸方向に対して径方向にオフセットされる、請求項5又は6に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項8】
前記ドリルビットアセンブリは、前記駆動チャックの後方に配置されたアライナーブッシングをさらに備え、前記アライナーブッシングは、前記
パーカッションビットが前記ビット除去位置にあるとき、前記
パーカッションビットが前記アライナーブッシングに対して回転するのを防ぐために、前記少なくとも1つの保持スプラインと係合するように構成されている、請求項5~7のいずれかに記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項9】
前記アライナーブッシングは、前記
パーカッションビットが前記ビット除去位置にあるとき、前記
パーカッションビットが前記アライナーブッシングに対して回転するのを防ぐために、その内部に形成された且つ前
記シャンク上の前記少なくとも1つの保持スプラインと係合し得る少なくとも1つのスプラインを備える、請求項8に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項10】
前記アライナーブッシングは、前記アライナーブッシングの外面と前記流体動作パーカッションドリルツールのウェアスリーブの内面との間の嵌め合いに関連する摩擦力が
、ハンマーの通常動作中に前記ウェアスリーブに対する前記アライナーブッシングの回転を防止するように寸法決定されている、請求項8又は9に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項11】
前記アライナーブッシングと前記流体動作パーカッションドリルツールのウェアスリーブとの嵌め合いに関連する摩擦力に打ち勝つのに十分な回転力の印加時に、前記
パーカッションビットが前記
駆動チャックに対して前記第2の相対配向へ回転し得る、請求項10に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項12】
前記アライナーブッシングと前記ウェアスリーブとの間の嵌め合いは中間嵌めである、請求項10又は11に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項13】
前記アライナーブッシングと前記ウェアスリーブとの間の嵌め合いは位置的中間嵌めである、請求項12に記載の流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ。
【請求項14】
外部円筒ウェアスリーブと、該外部
円筒ウェアスリーブの前端に配置されたドリルビットアセンブリのパーカッションビットを打つために前記外部
円筒ウェアスリーブ内で往復運動するように装着されたスライディングピストンとを備え、前記ドリルビットアセンブリは請求項1~13のいずれかに記載のアセンブリである、ダウンザホールハンマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリに関する。特に、本発明は、ダウンザホールハンマーで使用するためのドリルビットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダウンザホールハンマー及び流体動作パーカッションドリルツールは、通常、外部シリンダー又は外部ウェアスリーブを含み、その中に内部シリンダーが取り付けられ、この内部シリンダーが次にバックヘッドアセンブリと係合する。スライド式レシプロピストンは、内部シリンダー及びバックヘッドアセンブリと協働するため、バックヘッドアセンブリを介して空気圧が供給されると、ピストンは、外部ウェアスリーブの底部にねじ込み接続されたチャック内に保持されたドリルビットに衝撃効果を及ぼす。ビットシャンクは、ビットシャンクの周りに間隔を置いて配置された複数の軸方向に延びるスプラインが外部に形成されている。ビット上のスプラインは、チャックからビットへの回転駆動の伝達のために、チャックの内壁に形成された相補スプラインとスライド可能に係合する。
【0003】
従来の構成では、ビットをチャック内に保持するために、ビット保持リングを設けることができ、このリングはチャックの上に着座し、ビット上の環状ショルダーと協働する。別の構成では、保持ショルダーと係合してアセンブリ内にビットを保持するように構成されたビット保持リングの一部をチャック内に配置する。通常、ビット保持リングは2つに分割されており、Oリングによって一緒に保持されます。
【0004】
これらの既存の構成のそれぞれにおいて、アセンブリからビットを取り外すには、ビットをチャックから取り外すことができるように、チャックを外部ウェアスリーブから緩める必要がある。チャックを外部ウェアスリーブから外すと、ビット保持リングが外れ、ビットが脱落する。次に、新しいビットをチャック内に置き、ビット保持リングをチャックの端の上に置いて、ビット保持リングをビットシャンクのショルダー又はテールスプラインと係合させ、Oリングをビット保持リングの上に設置して一緒に保持する。次に、チャックをウェアスリーブにねじ込むことにより、このアセンブリをハンマーに再度取り付ける。この構成の欠点は、ハンマーからチャックを外すのに時間がかかることにある。ダウンザホールハンマーは通常、チャックとウェアスリーブの間のねじ込み接続が掘削中にきつくなるように設計されている。掘削前及び掘削中の接続を強くするために使用されるトルクが極めて高いため、ビットを交換するためのねじの分割は困難になり得、専門の切断装置が必要になり得る。厳しい地面の状態では、ハンマーのライフサイクル中に交換又は再研磨のために何度もビットを取り外す必要があり得る。さらに、掘削作業員は掘削したメートルごとに報酬が支払われることが多く、ドリルビットの交換に費やされる時間が掘削に費やすことができる時間を削減することになる。
【0005】
したがって、チャックをウェアスリーブから外す必要なしにビットを取り外すことができるドリルビットアセンブリを提供することが望ましい。そのような構成の1つが特許文献1(アイルランド特許第S87041号)で提案されており、保持スリーブがチャックの外部に取り付けられている。保持スリーブは、ビットとチャックを第1の相対配向で保持する掘削位置と、ビットをチャックから取り外すことができる第2の相対配向までビットをチャックに対して回転させることができるビット除去位置との間で移動可能である。ただし、保持スリーブのフラッシングに関連して問題が発生する可能性があるため、より単純で堅牢な構造を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明は、流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリに関し、該ドリルビットアセンブリは、
軸方向に延びるシャンクで形成されたヘッド部分を有し、シャンク上の第1の複数の軸方向に延びるスプラインが駆動チャックの内部に形成された第1の複数の相補スプラインとスライド可能に係合可能であり、それによりチャックからの回転駆動をシャンクに伝達することができるパーカッションビットと、
チャックを当該流体動作パーカッションドリルツールの駆動手段に接続するように構成されたチャック上の係合手段と、
を備え、
掘削中、ビットとチャックは第1の相対配向に保持され、この相対配向では、ビットがチャック内に保持され、且つビットがビット除去位置までチャックに対して軸方向に移動可能であり、ビット除去位置では、ビットがチャックに対してチャックからビットを除去し得る第2の相対配向に回転可能であり、
チャックが駆動手段と完全に係合している間、すなわちチャックがその動作位置にある間、ビットがビット除去位置へ移動可能である。
【0008】
ビットのビット除去位置は、ビットがチャックに対して回転可能である軸方向位置又は軸方向位置の範囲とし得る。
【0009】
この構成の利点は、チャックがその動作位置にある間、すなわち、チャック上の係合手段をパーカッションドリルツールから切り離す必要なしに、ビットをビット除去位置に軸方向に動かすことができるので、チャックをウェアスリーブから外さなくても、ビットをドリルビットアセンブリから取り外すことができる。これにより、ドリルビットを交換できる速度が向上し、掘削時間を最大化することができる。ビットの取り外しや交換のために専門のブレイクアウト装置も必要ない。ビットとチャックを第1の相対的配向に維持するために別個の保持スリーブも必要ないため、そのような保持スリーブのフラッシングに関連する問題も回避される。
【0010】
ドリルビットアセンブリは、ビットとチャックが第1の相対配向に保持され、ビットがチャック内に保持されるように、チャックに対するビットの回転を防ぐために、チャック上の相補アライメント手段と係合可能なビット上のアライメント手段をさらに備え、ビット除去位置において、アライメント手段は、ビットがチャックに対して第2の相対配向へ回転可能であるように、相補アライメント手段から解放される。
【0011】
相補アライメント手段は、チャックの前端部の内部に形成された軸方向に延びる1組のアライメントスプラインを含み得、アライメント手段は、ビットシャンクの前端部に形成された軸方向に延びる1つ又は複数の組のアライメントスプラインを含み得、チャック上のアライメントスプラインは、ビットとチャックを第1の相対配向に保持するためにビットシャンク上の複数組のアライメントスプラインの少なくとも1組と係合可能である。ビット除去位置では、チャック上のアライメントスプラインは、ビットシャンク上のアライメントスプラインの1つ又は複数の組から解放され、チャックに対するビットの第2の相対配向への回転が可能になる。
【0012】
軸方向の長さがチャック上のアライメントスプラインの少なくとも1つの長さに対応し、1つ又は複数組のアライメントスプラインに隣接して位置するビットシャンクの円周部分はスプラインのない部分であり、ビット除去位置では、チャック上のアライメントスプラインは、チャックに対するビットの回転を可能にするために、ビットシャンクの無スプライン部分と位置合わせすることができる。したがって、ビット除去位置は、ドリルビットアセンブリの設計時にビットシャンクの無スプライン部分を適切に位置決めすることによって決定される。この構成の利点は、掘削中にビットのビット除去位置への偶発的な移動が起こりえないようにビット除去位置を選択することができることにある。
【0013】
適切には、ビットとチャックが第1の相対配向にあるとき、ビット上のビット保持手段がチャック上の相補ビット保持手段と係合して、ビットをチャック内に保持し、ビットとチャックが第2の相対配向にあるとき、ビット保持手段が相補ビット保持手段から解放されて、ビットをチャックから取り外すことが可能になる。
【0014】
ドリルビットアセンブリは、ビットシャンクの後端部に少なくとも1つの保持スプラインを含み得、ビット及びチャックが第1の相対配向にあるとき、各保持スプラインが、チャックの内部に形成された第1の相補スプラインの対応する1つの後端に係合してビットをチャック内に保持するように構成される。したがって、少なくとも1つの保持スプラインでビット保持手段を構成し得る。
【0015】
ビットとチャックが第2の相対配向にあるとき、少なくとも1つの保持スプラインは、チャックの内部に形成された相補スプラインからオフセットされて、ビットをチャックから除去することが可能になる。少なくとも1つの保持スプラインの少なくとも1つのエッジが、ビットシャンク上の第1の複数のスプラインの対応する1つの対応するエッジから半径方向にオフセットされ得る。
【0016】
ドリルビットアセンブリは、駆動チャックの後方に配置されたアライナーブッシングをさらに含み得、アライナーブッシングは、ビットがビット除去位置にあるとき、ビットがアライナーブッシングに対して回転するのを防ぐために、少なくとも1つの保持スプラインと係合するように構成される。アライナーブッシングは、ビットがビット除去位置にあるとき、アライナーブッシングに対するビットの回転を防ぐために、その内部に形成され且つビットシャンク上の少なくとも1つの保持スプラインと係合し得る少なくとも1つのスプラインを含み得る。アライナーブッシングは、アライナーブッシングの外面と流体動作パーカッションドリルツールのウェアスリーブの内面との間の嵌め合いに関連する摩擦力が、ハンマーの通常動作中ウェアスリーブに対するアライナーブッシングの回転を防止するように寸法決定することができ、それによってチャックに対するビットの回転を防ぐことができる。例えば、位置的中間嵌めなどの中間嵌めをアライナーブッシングとウェアスリーブとの間に提供することができる。ただし、ビットとウェアスリーブの間に回転力が加わると、ビットがチャックに対して第2の相対配向に回転して、アライナーブッシングと流体動作パーカッションドリルツールのウェアスリーブとの嵌め合いに関連する摩擦力に打ち勝つことができる。
【0017】
回転力は、流体動作パーカッションドリルツールによって、又は適切なハンドヘルドツールを使用して手動で加えることができる。たとえば、ビットの除去位置でハンマーをハンマーに完全に押し込む必要がある場合、ハンマーを地面に押し込んでビットを静止させるとともに、ハンマーを通常動作とは逆方向に駆動してアライナブッシュとウェアスリーブの間(したがってビットとチャックの間)で逆回転を生じさせることができる。ビット除去位置がビットを完全に伸ばす位置とビットをハンマーに完全に押し込む位置の中間の位置である場合、ビットがハンマーから引き出されるとき、ビットにわずかな逆回転力を加えることにより回転力を加えることができる。チャックのアライメントスプラインがビットシャンクのアライメントスプラインから外れると、ビットに大きな力を加えてビットとアライナーブッシングをウェアスリーブとチャックに対して回転させ、ビットとチャックを第2の相対配向に動かすことができる。
【0018】
したがって、通常の掘削作業中にビットが軸方向にビット除去位置に移動すると、ビットはアライナーブッシングに対して回転することができなくなる。アライナーブッシングはウェアスリーブにしっかりと嵌め込まれており、したがって通常の動作状態下ではウェアスリーブとチャックに対して回転固定されているため、チャックに対するビットの第2の相対配向への回転も防止される。ビット(及びアライナーブッシング)は、アライナーブッシングとウェアスリーブの間の摩擦を克服するのに十分な回転力を加えることによってのみ、ウェアスリーブ(したがってチャック)に対して回転可能である。したがって、掘削中のビット及びチャックの第2の相対配向への偶発的な相対回転(したがって、チャックからのビットの偶発的な解放)が回避される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、外部円筒ウェアスリーブと、外部ウェアスリーブの前端に配置されたドリルビットアセンブリのパーカッションビットを打つために外部ウェアスリーブ内で往復運動するように装着されたスライディングピストンとを含み、ドリルビットアセンブリは上記のようなアセンブリである、ダウンザホールハンマーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるドリルビットアセンブリの分解図である。
【
図2】
図1のドリルビットアセンブリの縦断面図である。
【
図3】ビットとチャックが第1の相対配向にある状態で組み立てられた、
図1のドリルビットアセンブリの縦断面図である。
【
図4】ビットがビット除去位置にある状態で組み立てられた、
図1のドリルビットアセンブリの縦断面図である。
【
図5】
図3のドリルビットアセンブリの線AAに沿った横断面図であり、ドリルビットとチャックが第1の相対配向にあり、この配向では、保持スプラインがチャックの内部に形成されたスプラインと係合してビットをチャックに保持する。
【
図6】
図4のドリルビットアセンブリの線AAに沿った横断面図であり、ビットはビット除去位置にあり、ドリルビットとチャックが第2の相対配向にあり、この配向では、ビットがチャックの内部に形成されたスプラインから解放し、ビットをチャックから取り外すことができる。
【
図7】
図4のドリルビットアセンブリの線BBに沿った横断面図であり、ビットはビット除去位置にあり、アライナーブッシングのスプラインがビットの保持スプラインと噛み合ってアライナーブッシングに対するビットの回転を防止する。
【
図8】本発明の第2の実施形態によるドリルビットアセンブリの立面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態によるドリルビットアセンブリの分解図である。
【
図10】組み立てられた
図9のドリルビットアセンブリの縦断面図であり、チャック上の位置合わせスプラインがビット上の第1のセットの位置合わせスプラインと係合している。
【
図11】組み立てられた
図9のドリルビットアセンブリの縦断面図であり、チャック上の位置合わせスプラインがビット上の第2のセットの位置合わせスプラインと係合している。
【
図12】組み立てられた
図9のドリルビットアセンブリの縦断面図であり、ビットはビット除去位置にある。
【
図13】
図10に示されるようなドリルビットアセンブリを備えるダウンザホールハンマーの縦断面図である。
【
図14】ビットがビット除去位置にある、
図13のダウンザホールハンマーの部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による流体動作パーカッションドリルツール用のドリルビットアセンブリ1の第1の実施形態が
図1~
図7に示されている。
【0022】
このアセンブリは、軸方向に延びるシャンク4で形成されたヘッド部分3を有するパーカッションビット2を含む。ビットシャンク4の周囲に間隔を置いて配置された第1の複数の軸方向に延びるスプライン5は、駆動チャック7の内部に形成された第1の複数の相補スプライン6とスライド可能に係合可能であり、それによってチャックからの回転駆動がシャンクに伝達され得る。チャック7を流体動作パーカッションドリルツールの駆動手段に接続するためのねじ山8がチャック7に設けられている。
【0023】
保持スプラインと呼ばれる第2の複数のスプライン14がビットシャンクの後端部15に設けられている。
図1に最も明確に示されているように、保持スプライン14のそれぞれは、第1の複数のスプライン5の対応するスプラインよりも幅が広いため、各スプライン14の1つのエッジは、対応するスプライン5のエッジからオフセットされている。駆動チャック上の第1の複数の内部スプライン6のスプラインは、ビットシャンク上の第2の複数のスプライン14のうちの1つを収容するのに十分な幅がある。
図1及び
図2に最も明確に示されるように、アライメントスプラインと呼ばれる第3の複数のスプライン13が、ビットヘッド3に隣接してビットシャンクの前端部18の外向き肩部17の外周に形成されている。
【0024】
図2に最も明確に示されているように、アライメントスプラインと呼ばれる第2の複数のスプライン12が、駆動チャックの前端部16の内部に形成されている。掘削中、
図3に示すように、チャック上のアライメントスプライン12は、ビットシャンク上のアライメントスプライン13と係合するように構成され、それにより、チャックに対するビットの回転が防止される。これにより、ビット2とチャック7は、
図5に示される第1の相対配向に保持され、テールスプライン14のそれぞれは、チャック7の後端部20の内部に形成されたスプライン6の対応する1つと係合してビットをチャックに保持するように構成されている。したがって、ビットは、流体動作パーカッションドリルツールの掘削操作中、チャック内に保持される。
【0025】
図1及び
図2にも示されるように、ビットシャンクの円周部分19は、軸方向の長さが、チャック上のアライメントスプライン12の長さと小さなクリアランスに対応し、ビット上の1つ又は複数組のアライメントスプラインに隣接して配置され、その部分はスプライン化されてない。ビットをチャックに対して軸方向に
図4に示すビット除去位置に移動させると(この実施形態では、ビットをハンマーに完全に押し込む必要がある)、チャック上のアライメントスプライン12はビットシャンクのスプライン化されてない部分19と合致又は整列するため、それらはビットシャンク上のアライメントスプライン13から解放される。これにより、ビットをチャックに対して
図6に示す第2の相対配向に回転させることができる。この向きでは、保持スプライン14は、チャックの内部に形成された相補スプライン6からオフセットされるため、相補スプライン6の後端20と係合しない。第2の複数のスプライン14とチャック上の内部スプライン6の間隔は、ビットとチャックが第2の相対配向にあるとき、チャックをドリルツールから緩めることなくビットをアセンブリからスライドアウトすることができるように寸法決定されている。ビットは、ビットヘッド3とチャック7の相互作用によって後方への軸方向の動きが制限されるだけであるため、チャックがウェアスリーブと完全に係合している間、ビットをハンマーに完全に押し込むことができる。ビットをビット取り外し位置に移動させるために、チャックをウェアスリーブからねじって緩める必要はない。
【0026】
図1~
図7に示されるように、アセンブリは、駆動チャックの後端22に配置されるアライナーブッシング21をさらに備える。アライナーブッシングは、ビットがビット除去位置にあるときに、ビットがアライナーブッシングに対して回転するのを防ぐために、その内部に形成された、ビットシャンク上の保持スプライン14と係合可能な複数のスプライン23を備える。この実施形態では、アライナーブッシングは、アライナーブッシングの外面と流体動作パーカッションドリルツールのウェアスリーブの内面との間に中間嵌めが提供されるように寸法決定される。これは、アライナーブッシングの直径がウェアスリーブの内径と同じかわずかに大きくなるようにアライナーブッシングの寸法を決めることによって達成できる。他の実施形態では、適切な嵌め合いは、
図8に示されるように、アライナーブッシングの外面の円周方向の溝24によって達成することができ、その溝に油圧シール又はOリングを収めることができる。
【0027】
ビットが
図4に示されるビット除去位置にあるとき、流体動作パーカッションドリルツールのアライナーブッシング21とウェアスリーブとの間の嵌め合いに関連する摩擦に打ち勝つのに十分な回転力を加えると、ビットは第2の相対配向に回転可能である。例えば、ビットがビット除去位置にあり、回転するのを防ぐために、ハンマーを地面に押し付けて、ハンマーを反時計回りに(すなわち、ハンマーの通常の動作とは反対の方向に)回転させることができる。このように、ドリルストリングからのトルクは、アライナーブッシングとウェアスリーブとの嵌め合いに関連する摩擦力に打ち勝ち、ハンマーのウェアスリーブとチャックをビットとアライナーに対して第2の相対配向に回転させることが可能になる。この配向では、ウェアスリーブからチャックを外さなくても、ビットをハンマーからスライドさせて取り出し、交換したり、修理することができる。ビットの直径が比較的小さい場合は、パイプレンチを使用して、ビットとアライナーブッシングをウェアスリーブ(したがってチャック)に対して回転させることもできる。この実施形態では、ビットは、ハンマーに完全に押し込まれたときにのみチャックに対して回転させることができ、それによって第2のスプラインが外れるので、動作中にビットが位置から跳ね返る可能性は非常に小さい。
【0028】
本発明の別の実施形態が、
図9~
図14に示されている。この実施形態は、
図1~
図7に示されているものと同様である。ただし、この実施形態では、ビットシャンクの前端部18に2組のアライメントスプライン13が設けられている。非スプライン化部分19が、2組のアライメントスプラインの中間に設けられている。また、この実施形態では、パーカッションドリルツールのアライナーブッシング21とウェアスリーブ25との間の所要の嵌め合いは、アライナーブッシングの外面の円周方向の溝24に油圧シール又はO-リング26を嵌め込むことによって達成される。
【0029】
図10に示すように、ビットがハンマーに完全に押し込まれると、チャック上のアライメントスプライン12が、ビットシャンク上の2組のアライメントスプライン13の第1の組と係合する。
図11に示されるように、ビットが完全に伸ばされると、チャック上のアライメントスプライン12が、ビットシャンク上の2組のアライメントスプライン13の第2の組と係合する。したがって、ビットのこれらの軸方向位置のそれぞれにおいて、ビット2とチャック7は、第1の相対配向に保持され、テールスプライン14のそれぞれがチャック7の内部に形成されたスプライン6の対応する1つの後端20と係合してビットをチャック内に保持するように構成されている。
【0030】
この実施形態のビット除去位置は、
図12及び
図14に示されている。これらの図に示されるように、ビットがこの位置にあるとき、チャック上のアライメントスプライン12はビットシャンクの非スプライン化部分19と合致するため、それらはビットシャンク上の2組のアライメントスプライン13から外れる。したがって、この実施形態では、ビット除去位置は、ビットが完全に伸ばされた位置(
図11に示される)とビットがハンマーに完全に押し込まれた位置(
図10及び
図13に示される)の中間の位置である。動作中、この中間ビット除去位置を決定するために、ビットをチャックから引き抜くときに、ビットにわずかな回転圧力を加えることができる。「クリック」音が聞こえたら、あるいは感じられたら、スプラインが外れ、ビットはビット除去位置にある。ビットは動作中にこの位置で時間を費やすことはめったにないため、動作中にビットが第2の相対配向位置へ回転する可能性は極めて低くなる。
【0031】
ビットがビット除去位置にあると、アライナーブッシング21とウェアスリーブ25との間の嵌め合いに関連する摩擦力に打ち勝つのに十分な回転力を加えることによって、ビットをチャックに対して第2の相対配向まで回転させることができ、この第2の相対配向では保持スプライン14がチャックの内部に形成された相補スプライン6からオフセットされ、相補スプライン6の後端20ともはや係合しない相対的な向きであるため、ビットは、ドリルツールからチャックをねじって緩めることなく、アセンブリからスライドさせて取り出すことができる。前の実施形態のように、そして
図14に示されるように、ビットをビット除去位置に移動させるために、ウェアスリーブからチャックをねじって緩める必要はない。
【0032】
本発明に言及する本明細書における用語としての「備える/備えている(comprises/comprising)」及び「有する/含む(having/including)」は、記載の特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するのに使用されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではない。
【0033】
個別の実施形態の文脈で分かり易くするために記載した本発明の特定の特徴は、単独の実施形態において組み合わせて設けることもできることが理解されよう。逆に、単独の実施形態の文脈で簡潔に記載された本発明の様々な特徴は、切り離して、又は任意の適当な副次的組合せで設けることができる。
【符号の説明】
【0034】
1:ドリルビットアセンブリ
2:パーカッションビット
3:ヘッド部分
4:ビットシャンク
5:スプライン
6:相補スプライン
7:駆動チャック
8:ねじ
12:アライメントスプライン
13:アライメントスプライン
14:保持スプライン
15:後端部
16:前端部
19:無スプライン部分
21:アライナーブッシング
23;スプライン
25:ウェアスリーブ