(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】車載装置及び車載システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240919BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20240919BHJP
G10L 15/20 20060101ALI20240919BHJP
G10L 15/28 20130101ALI20240919BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10L15/00 200J
G10L15/20 370Z
G10L15/28 230Z
(21)【出願番号】P 2022550330
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035642
(87)【国際公開番号】W WO2022059214
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍜治本 晋明
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-091756(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090115(WO,A1)
【文献】特開2011-227199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
G10L 15/20
G10L 15/00
G10L 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置される車載装置であって、
スピーカと、
与えられた音量設定情報に基づき前記スピーカの出力音量を制御する
処理部と、を備え、
前記
処理部は、
他の車載装置にて前記車両の乗員の発話による音声入力処理が実行されており、且つ、前記スピーカでの出力対象とされる対象音響信号の内容が、前記他の車載装置により前記車両内の他のスピーカでの出力対象とされる他の音響信号の内容と相違するとき、前記出力音量を
前記音量設定情報に基づく音量より低下させる、
前記音量設定情報に関わらず前記出力音量を所定音量に設定する、又は、前記スピーカを消音させ
、
前記他の車載装置にて前記音声入力処理が実行されていないとき、及び、前記他の車載装置にて前記音声入力処理が実行されていても前記対象音響信号の内容が前記他の音響信号の内容と同じであるとき、前記出力音量を前記音量設定情報に基づく音量に設定する
、車載装置。
【請求項2】
前記他の車載装置では、前記発話による音を受けるマイクロホンへの入力音響信号に基づき前記発話の内容に対する音声認識を実行し、前記音声入力処理は前記音声認識の結果に基づいて実行され、前記音声認識は、前記マイクロホンへの入力音響信号における前記他の音響信号の成分を抑制してから実行される
、
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載装置と、
他の車載装置と、を備えた
、車載システム。
【請求項4】
車両に設置される車載装置であって、
前記車両の乗員の発話による音を受けるマイクロホンと、処理部と、を備え、
前記処理部は、前記発話の内容に対して音声認識を実行し、
前記処理部は、前記発話による音声入力処理を起動させることが可能であって、前記音声入力処理が実行されているとき、前記音声認識の結果に基づき前記発話の内容に対して応答し、
前記処理部は、音響信号の供給により前記車両内のスピーカに音を出力させ、
前記処理部は、前記音声入力処理が実行されており、且つ、前記車両内のスピーカでの出力対象となる対象音響信号の内容が
他の車載装置における他のスピーカでの出力対象となる他の音響信号の内容と相違するとき、前記他の車載装置に対して第1制御信号を送信することで、前記他のスピーカの出力音量を音量設定情報に基づく音量より低下させ、前記出力音量を所定音量に設定させ、又は、前記他のスピーカを消音させ、
前記処理部は、前記音声入力処理が実行されていないとき、及び、前記音声入力処理が実行されていても前記対象音響信号の内容が前記他の音響信号の内容と同じであるとき、前記他の車載装置に対して第2制御信号を送信することで、前記出力音量を前記音量設定情報に基づく音量に設定させる
、車載装置。
【請求項5】
前記
処理部は、前記マイクロホンへの入力音響信号に含まれる前記対象音響信号の成分を抑制することで前記入力音響信号に基づく抑制後音響信号を生成
し、前記抑制後音響信号に基づいて前記音声認識を実行する
、
請求項4に記載の車載装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車載装置と、
他の車載装置と、を備えた
、車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置及び車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声入力処理により音声操作が可能な車載装置が提案されている。発話者(運転手等)は発話により様々な指示又は問い合わせ等を車載装置に行う。車載装置では、音声認識を通じ、指示又は問い合わせ等に応答する処理を実行する。例えば、「ABC駅を目的地に設定して」という発話があった場合、車載装置は「了解しました。ABC駅を目的地に設定します」という音声応答を行うと共に、ABC駅を目的地に設定したナビゲーション動作を行う。この種の車載装置では、一般に、車内スピーカの出力音が音声入力用のマイクロホンに戻ることによるエコーをキャンセルする機能(エコーキャンセラ)が設けられる。
【0003】
他方、車内には複数の車載装置(例えばヘッドユニットとして機能する車載装置とリアシートエンタテイメント機器として機能する車載装置)、及び、複数の車載装置に対応付けられた複数のスピーカが設けられることもあり、複数のスピーカにて互いに異なる内容の音響信号が再生されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-236090号公報
【文献】特開平7-46500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音声入力処理を担う車載装置が直接出力制御を行うスピーカからの出力音成分は、エコーキャンセラの機能により、マイクロホンの出力音響信号から除去することができる。しかしながら、他のスピーカが別個の音響信号を再生出力している場合などにあっては、他のスピーカの出力音に対してエコーキャンセラが有効に働かず、他のスピーカの出力音が音声認識にとっての雑音になる。この際、音声認識及び音声認識に基づく音声入力処理が正しく動作しないことが懸念される。
【0006】
本発明は、正常な音声入力処理の実行に寄与する車載装置及び車載システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車載装置は、車両に設置される車載装置であって、スピーカと、前記スピーカの出力音量を制御する音量制御部と、を備え、前記音量制御部は、他の車載装置にて前記車両の乗員の発話による音声入力処理が実行されており、且つ、前記スピーカでの出力対象とされる対象音響信号の内容が、前記他の車載装置により前記車両内の他のスピーカでの出力対象とされる他の音響信号の内容と相違するとき、そうでないときと比べて前記出力音量を低下させる、前記出力音量を所定音量に設定する、又は、前記スピーカを消音させる構成(第1の構成)である。
【0008】
上記第1の構成に係る車載装置において、前記音量制御部は、前記他の車載装置にて前記音声入力処理が実行されていないとき、又は、前記対象音響信号の内容が前記他の音響信号の内容と同一であるとき、前記出力音量を、与えられた音量設定情報に基づく音量に設定し、前記他の車載装置にて前記音声入力処理が実行されており且つ前記対象音響信号の内容が前記他の音響信号の内容と相違するとき、前記出力音量を前記音量設定情報に基づく音量より低下させる、前記音量設定情報に関わらず前記出力音量を前記所定音量に設定する、又は、前記スピーカを消音させる構成(第2の構成)であっても良い。
【0009】
上記第1又は第2の構成に係る車載装置において、前記他の車載装置では、前記発話による音を受けるマイクロホンへの入力音響信号に基づき前記発話の内容に対する音声認識を実行し、前記音声入力処理は前記音声認識の結果に基づいて実行され、前記音声認識は、前記マイクロホンへの入力音響信号における前記他の音響信号の成分を抑制してから実行される構成(第3の構成)であっても良い。
【0010】
本発明に係る車載システムは、上記第1~第3の構成の何れかに係る車載装置と、他の車載装置と、を備えた構成(第4の構成)である。
【0011】
本発明に係る他の車載装置は、車両に設置される車載装置であって、前記車両の乗員の発話による音を受けるマイクロホンと、前記発話の内容に対して音声認識を実行する音声認識部と、前記発話による音声入力処理を起動させる音声入力起動部と、前記音声入力処理が実行されているとき、前記音声認識の結果に基づき前記発話の内容に対して応答する応答処理部と、音響信号の供給により前記車両内のスピーカに音を出力させる音響信号処理部と、前記車両に設置された他の車載装置に対し制御信号を送信する他装置制御部と、を備え、前記他装置制御部は、前記音声入力処理が実行されており、且つ、前記車両内のスピーカでの出力対象となる対象音響信号の内容が前記他の車載装置における他のスピーカでの出力対象となる他の音響信号の内容と相違するとき、そうでないときと比べて前記他のスピーカの出力音量を低下させる制御信号、前記出力音量を所定音量に設定する制御信号、又は、前記他のスピーカを消音させる制御信号を、前記他の車載装置に送信する構成(第5の構成)である。
【0012】
上記第5の構成に係る車載装置において、前記マイクロホンへの入力音響信号に含まれる前記対象音響信号の成分を抑制することで前記入力音響信号に基づく抑制後音響信号を生成するエコー抑制部を更に備え、前記音声認識部は、前記抑制後音響信号に基づいて前記音声認識を実行する構成(第6の構成)であっても良い。
【0013】
本発明に係る他の車載システムは、上記第5又は第6の構成に係る車載装置と、他の車載装置と、を備えた構成(第7の構成)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正常な音声入力処理の実行に寄与する車載装置及び車載システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】は、本発明の実施形態に係る車両に関し、車内の様子を概略的に示す図である。
【
図2】は、本発明の実施形態に係る車載システムの全体構成図である。
【
図3】は、本発明の実施形態に係る前席ユニットの内部構成図である。
【
図4】は、
図3に示される主処理部の一部機能ブロック図である。
【
図5】は、
図3に示される主処理部の一部機能ブロック図である。
【
図6】は、本発明の実施形態に係る後席ユニットの内部構成図である。
【
図7】は、
図6に示される主処理部の一部機能ブロック図である。
【
図8】は、本発明の実施形態に係り、後席ユニットで生成される音量抑制指令信号を説明するための図である。
【
図9】は、本発明の実施形態に属ずる第1実施例に係り、第1ケースでの音響信号の流れを示す図である。
【
図10】は、本発明の実施形態に属ずる第1実施例に係り、第2ケースでの音響信号の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“10”によって参照される前席ユニットは(
図1参照)、前席ユニット10と表記されることもあるし、ユニット10と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0017】
図1に本発明の実施形態に係る車両CRの車内の様子を概略的に示す。
図2に本発明の実施形態に係る車載システムSYSの全体構成を示す。車内又は車両内とは車両CRの車室内を指す。ここでは、車両CRとして路面上を走行可能な車両(自動車等)を主として想定するが、車両CRは任意の種類の車両であって良い。車両CRに対し複数の乗員が搭乗できる。車両CRの車内には座席ST1~ST3が設けられる。座席ST1は車両CRの運転手が座る運転席である。
図1において乗員PS1は車両CRの運転手を表す。このため、乗員PS1は運転手PS1と称されることがある。また、運転手以外の乗員は同乗者と称されることがある。運転席ST1から車両CRのステアリングホイールSTRに向かう向きを「前方」と定義し、車両CRのステアリングホイールSTRから運転席ST1に向かう向きを「後方」と定義する。また、本実施形態において左、右とは、特に記述なき限り、運転席ST1に前を向いて座る運転手PS1から見た左、右を指す。
【0018】
座席ST1の左側に座席ST2(助手席)が設置され、座席ST1及びST2の後方に座席ST3(以下、後部座席ST3と称することがある)が設けられる。座席ST2及びST3の夫々に運転手PS1以外の乗員(即ち同乗者)が座ることができる。
図1の例において、座席ST3は複数の乗員が座ることのできる幅広座席となっている。
図1において乗員PS2は後部座席ST3に座る同乗者である。車両CRに乗員PS1及びPS2以外の乗員が更に乗車していても良いが、ここでは乗員PS1及びPS2にのみ注目する。
【0019】
本実施形態に係る車載システムSYSは(
図2参照)、車両CRに搭載されるシステムであって、運転手PS1用の電子機器である前席ユニット10と、後部座席ST3に座る乗員用の電子機器である後席ユニット20と、車内スピーカSP1と、を備える。ユニット10及び20並びに車内スピーカSP1は車両CRの車内に設置される。
【0020】
前席ユニット10に設けられた表示部を運転手PS1が容易に視認可能となるように、前席ユニット10は運転席ST1の前方に設置される。後席ユニット20に設けられた表示部を後部座席ST3に座る乗員(ここでは乗員PS2)が容易に視認可能となるように、後席ユニット20は座席ST1及びST2の後方側であって且つ座席ST3の前方側に設置される。例えば、後席ユニット20の筐体は車両CRの天板に支持されて良い。車載システムSYSにおいて、前席ユニット10は所謂ヘッドセット機器として機能するものであって良く、後席ユニット20は所謂リアシートエンターテイメント(RSE)機器として機能するものであって良い。
【0021】
車内スピーカSP1は車両CRの車内の適所に設置される。
図1では、単体のスピーカが車内スピーカSP1として示されているが、複数のスピーカにて車内スピーカSP1が構成されていても良い。
【0022】
車両CR内に形成されたローカルエリアネットワークを通じて、
図2に示す如く、ユニット10及び20は無線又は有線接続されて互いに双方向通信が可能であり、且つ、前席ユニット10及び車内スピーカSP1は無線又は有線接続されて前席ユニット10から車内スピーカSP1への信号送信が可能である。
【0023】
図3に前席ユニット10の内部構成を示す。前席ユニット10は、運転手PS1が視認可能な表示部11と、運転手PS1からの各種操作を受ける操作部12と、主処理部13と、前席ユニット10以外の任意の機器と通信を行うための通信部14と、自身が収音した音を音響信号に変換して出力するマイクロホン15と、を備える。通信部14を用いた通信の相手側機器には後席ユニット20及び車内スピーカSP1が含まれる。更に、通信部14は、所定の移動体通信回線を介してインターネットを含む情報通信網に接続可能であっても良く、この場合、情報通信網に接続された任意の装置との間で双方向通信が可能である。
【0024】
主処理部13は、マイクロコンピュータ、メモリ、及び、DSP(Digital Signal Processor)を含む信号処理回路等からなる。主処理部13において、メモリはROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含み、メモリに格納されたプログラムをマイクロコンピュータにて実行することで各種の機能を実現する。主処理部13にて実現される機能には、車両CRによる目的地までの移動を支援するナビゲーション機能、車両CRの運転操作を支援する運転支援機能、提供された動画像を再生する動画像再生機能、任意の音源からの音響信号を再生するオーディオ機能、発話者の発話による入力を受け付けて発話者の発話内容に対して応答する音声入力機能などが含まれる。音声入力機能を実現するための処理に音声入力処理が含まれる。
【0025】
図4に、音声入力処理に関与する音声入力部110の構成を示す。音声入力部110は主処理部13に設けられる。音声入力部110は、フロントエンド111、ECNR112(エコー抑制部)、音声認識部113、応答処理部114及び音声入力起動部115を備える。
【0026】
マイクロホン15は、自身の周辺音を収音し、収音した音を音響信号Sig01に変換して出力する。音響信号Sig01はフロントエンド111に入力される。音響信号Sig01はアナログの音響信号である。フロントエンド111はアンプ及びアナログ/デジタル変換器を有する。フロントエンド111において、アンプによりアナログの音響信号Sig01を増幅し、増幅後のアナログの音響信号Sig01をアナログ/デジタル変換器によりデジタルの音響信号Sig02に変換する。
【0027】
マイクロホン15は、発話者の発話による音を受け、主として発話者の発話内容を収音する。音声入力処理において、発話者は、発話によって前席ユニット10を操作する操作者として機能し、発話により前席ユニット10に対し任意の指示又は問い合わせ等を音声入力することができる。ここにおける発話者は車両CRの何れかの乗員である。発話者は運転手PS1以外の乗員であっても良いが、ここでは、発話者は運転手PS1であるとする。即ち、マイクロホン15の収音対象は主として運転手PS1の発話の音声である。しかしながら、発話者から直接発せられる発話音以外の音(以下、雑音と称する)もマイクロホン15に到達することがある。主だった雑音としてエコーがある。ここにおけるエコーとは、マイクロホン15にて収音される、エコー対象スピーカからの出力音を指す。エコー対象スピーカは車内スピーカSP1を含む。
【0028】
ECNR112は、音響信号Sig02に含まれる雑音を除去することで音響信号Sig03を生成する処理(エコーキャンセル及びノイズリダクション処理)を実行する。除去の対象となる雑音は上述のエコーを含み、エコー以外の雑音もECNR112で除去される。より具体的には、ECNR112は、エコー対象スピーカからの出力音に応じたリファレンス信号Sig_refを参照し、音響信号Sig02からリファレンス信号Sig_refの成分を除去することで、エコーが抑制された音響信号である音響信号Sig03を生成する。リファレンス信号Sig_refは、エコー対象スピーカからの出力音がマイクロホン15に入力されたときに、エコー対象スピーカからの出力音に基づきマイクロホン15の出力音響信号に含まれることになる音響信号を推測したものである。故に、音響信号Sig02からリファレンス信号Sig_refの成分を除去することで、音響信号Sig02からエコー対象スピーカの出力音を表す音響信号の成分が除去される。尚、ここにおける除去とは、完全なる除去を意味する他、部分的な除去も含む概念であり、除去を低減と読み替えても良い。エコーを抑制する信号処理自体は公知であるので、その処理内容の詳細な説明は省略する。
【0029】
音声認識部113は、音響信号Sig03に基づき発話者(ここでは運転手PS1)の発話内容を認識する音声認識処理を実行する。音声認識処理による発話者の発話内容の認識を音声認識とも称する。音声認識により発話者の発話内容がテキストデータ(文字列データ)に変換される。
【0030】
応答処理部114は、音声認識にて得られたテキストデータに基づいて発話者の意図を理解し、音声入力処理において、運転手PS1の発話内容に応答する応答処理を実行する。音声入力処理が実行されている場合にのみ応答処理が実行され、音声入力処理が実行されていない場合には応答処理は実行されない。
【0031】
音声入力起動部115は、音声入力処理の起動の有無を制御する。音声入力処理の起動の有無の制御は、音声入力処理を実行させるか否かの制御と等価である。前席ユニット10の初期状態では音声入力処理は起動していないものとする(即ち実行されていないものとする)。音声入力起動部115は、所定の起動条件が成立したときに音声入力処理を起動させる。音声入力処理が起動されることで、音声入力処理が実行されていない状態から音声入力処理が実行されている状態へと遷移する。音声入力処理では、発話者の発話による音声を前席ユニット10への入力操作として受け付けて入力操作に対する応答を行う。
【0032】
例えば、発話者によるウェイクアップキーワードの発話があったときに起動条件が成立する。ウェイクアップキーワードは音声入力部110に対して予め登録されたキーワードである。より具体的には例えば、音声入力起動部115は、音声認識部113にて得られたテキストデータにウェイクアップキーワードが含まれているか否かを判定し、当該テキストデータにウェイクアップキーワードが含まれている場合に音声入力処理を起動させる。或いは例えば、操作部12に対して所定の起動操作が入力されたときに起動条件が成立するようにしても良い。
【0033】
音声入力処理の起動後、所定の終了条件が成立すると、音声入力起動部115により音声入力処理が実行されていない状態に戻される。終了条件は任意である。例えば、発話者(ここでは運転手PS1)の一連の発話内容に対する応答処理が完了したと判断されたとき(この判断の主体は応答処理部114又は音声入力起動部115であって良い)、終了条件が成立しても良いし、操作部12に対して所定の終了操作が入力されたとき、終了条件が成立しても良い。
【0034】
音声入力処理の起動後、発話者(ここでは運転手PS1を想定)は前席ユニット10を音声操作することができる。応答処理における応答は、発話者に対する音声応答及び表示応答の少なくとも一方を含んでいて良い。音声応答は、応答用スピーカからの音声出力により実現される。応答用スピーカは典型的には車内スピーカSP1であって良いが、車内スピーカSP1及び後述の後席スピーカSP2(
図6参照)の何れとも異なる、前席ユニット10に備え付けられた他のスピーカ(不図示)であっても良い。この場合、音声応答によるエコーを抑制するべく、上記他のスピーカも上記エコー対象スピーカに含められ、音声応答による音響信号がリファレンス信号Sig_refに含められる。表示応答は、前席ユニット10の表示部11での文字や画像の表示により実現される。
【0035】
例えば、応答処理では、発話者(ここでは運転手PS1)の発話内容に応じて、天候情報、ニュース、店舗又は観光地などの情報を音声応答又は表示応答により発話者に提供する。また例えば、主処理部13がナビゲーション動作を実行可能に構成されている場合において、発話者(ここでは運転手PS1)が目的地の設定を指示する発話を行ったとき、応答処理では、当該指示に従いナビゲーション動作での目的地を設定する。ナビゲーション動作では、車両CRの現在地から目的地までの走行予定ルートを設定し、地図画像上に走行予定ルートを重畳した画像を表示部11に表示する。
【0036】
更に例えば、主処理部13は制御対象機器の制御を行う機能を有していても良く、この場合、応答処理は制御対象機器の制御を含み得る。制御対象機器は、車両CRに搭載された機器(但しユニット10及び20並びに車内スピーカSP1とは異なる)であって、主処理部13により動作が制御される機器である。例えば、車外を照らす車外用照明装置(ヘッドライト等)、車室内を照らす車内用照明装置、車両CRのフロントガラスに付着した水や汚れを払拭するためのワイパー、車室内の温度及び湿度を調整するエアコンディショナが、制御対象機器に該当しうる。ワイパーを例にとれば、音声入力処理の起動後、発話者から「ワイパーをオンにして」という発話があった場合、応答処理部114は、応答処理として、「了解しました」という音声出力による音声応答を行うと共に(この際、表示応答も行っても良い)、ワイパーを作動させる。
【0037】
以下のように考えることもできる。主処理部13の動作モードを非音声入力モード及び音声入力モードを含む複数のモードの何れかに設定する動作モード設定部(不図示)が主処理部13に設けられ、主処理部13の動作モードが非音声入力モードに設定されているときには音声入力処理は非実行とされ、主処理部13の動作モードが音声入力モードに設定されているときには音声入力処理が実行される。つまり、音声入力起動部115が動作モード設定部に相当すると考えることができ、主処理部13の動作モードが非音声入力モードであるときにおいて所定の起動条件が成立すると、主処理部13の動作モードを非音声入力モードから音声入力モードに切り替える。その後、所定の終了条件が成立すると、主処理部13の動作モードを非音声入力モードに戻す。このように考えた場合、応答処理部114は、音声入力モードにおいて、音声認識の結果に基づき発話者の発話内容に対して応答する応答処理を実行する、と言える。
【0038】
図5に主処理部13における音響信号出力に関わる一部機能ブロック図を示す。主処理部13には音響信号処理部120及びRSE音量干渉部130(他装置制御部)が設けられる。
【0039】
音響信号処理部120には音響信号Sig11が入力される。音響信号処理部120は、音響信号Sig11に対して所定の信号処理を施し、該信号処理後の音響信号Sig11を音響信号Sig12として出力する。但し、音響信号Sig11及びSig12は互いに同じ信号であっても構わない。ここでは、音響信号Sig11及びSig12は実質的に同じ内容を有した信号であるとする(それらの振幅は異なり得る)。音響信号Sig12は車内スピーカSP1に出力される。
【0040】
車内スピーカSP1は音響信号Sig12を音(音波)として出力する。上述の如く車内スピーカSP1はエコー対象スピーカに含まれているため、車内スピーカSP1からの出力音を表す音響信号Sig11又はSig12そのものが、或いは、音響信号Sig11又はSig12に基づく信号が、リファレンス信号Sig_ref(
図4参照)に含められる。尚、車内スピーカSP1は前席ユニット10の構成要素に含まれていても良い。
【0041】
RSE音量干渉部130は、後席ユニット20に設けられるスピーカ(後述の後席スピーカSP2:
図6参照)の出力音に干渉する機能を持つが、詳細は後述される。
【0042】
図6に後席ユニット20の内部構成を示す。後席ユニット20は、乗員PS2が視認可能な表示部21と、乗員PS2からの各種操作を受ける操作部22と、主処理部23と、後席ユニット20以外の任意の機器と通信を行うための通信部24と、後席スピーカSP2と、を備える。通信部24を用いた通信の相手側機器には、少なくとも前席ユニット10が含まれる。更に、通信部24は、所定の移動体通信回線を介してインターネットを含む情報通信網に接続可能であっても良く、この場合、情報通信網に接続された任意の装置との間で双方向通信が可能である。ユニット10及び20間の任意の信号の送受信は通信部14及び24を用いて実現されるが、以下の信号送受信に関わる説明では、通信部14又は24の記述が省略されることがある。
【0043】
主処理部23は、マイクロコンピュータ、メモリ、及び、DSP(Digital Signal Processor)を含む信号処理回路等からなる。主処理部23において、メモリはROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含み、メモリに格納されたプログラムをマイクロコンピュータにて実行することで各種の機能を実現する。
【0044】
図7に、後席スピーカSP2の出力制御に関わる、主処理部23の一部機能ブロック図を示す。主処理部23は、音響信号処理部210、音量制御部220、及び、音量抑制指令部230を備える。音響信号処理部210には音響信号Sig21が入力される。音響信号Sig21は、前席ユニット10から受信した音響信号であっても良いし、前席ユニット10以外の装置又は記録媒体から取得した音響信号であっても良いし、主処理部23内で生成された音響信号であっても良い。音響信号処理部210は、音響信号Sig21に対して所定の信号処理を施し、該信号処理後の音響信号Sig21を音響信号Sig22として出力する。音響信号Sig22は後席スピーカSP2に出力される。後席スピーカSP2は音響信号Sig22を音(音波)として出力する。
【0045】
後席スピーカSP2からの出力音の音量(後席スピーカSP2の出力音量と称することがある)は音量制御部220により制御される。音響信号処理部210は、音量制御部220の制御の下で、音響信号Sig21の振幅を調整する振幅調整処理を実行可能であり、音響信号Sig21に対して振幅調整処理を施すことで得られる音響信号(即ち、振幅調整処理による振幅調整後の音響信号Sig21)を音響信号Sig22として出力する。
【0046】
音響信号Sig22は、後席スピーカSP2から出力されるべき音を電気信号で表したものであるので、音響信号Sig22の振幅が大きくなるほど後席スピーカSP2の出力音量も大きくなり、音響信号Sig22の振幅が小さくなるほど後席スピーカSP2の出力音量も小さくなる。ここでは、音響信号処理部210は、振幅調整処理において音響信号Sig21の振幅をkAMP倍することで音響信号Sig22を生成するものとする。故に、係数kAMPが大きくなるほど後席スピーカSP2の出力音量も大きくなる。
【0047】
音量制御部220は音量設定情報VOL*と音量抑制指令信号MT*とに基づき、後席スピーカSP2の出力音量を制御する。音量制御部220は、係数kAMPの値を指定することで後席スピーカSP2の出力音量を制御することができる。音量抑制指令信号MT*は、アクティブの信号状態(例えばハイレベル)又はノンアクティブの信号状態(例えばローレベル)をとる二値化信号である。
【0048】
音量抑制指令信号MT*がノンアクティブの信号状態にあるとき、音量抑制指令信号MT*は無効であり、音量制御部220は音量設定情報VOL*のみに基づいて係数kAMPの値を設定する(故に、後席スピーカSP2の出力音量は音量設定情報VOL*に基づく音量に設定される)。音量設定情報VOL*は1以上n以下の整数の何れかの値とるものとし、音量設定情報VOL*の値が増大するほど係数kAMPの値が増大するものとする。nは2以上の任意の整数である。故に、音量抑制指令信号MT*がノンアクティブの信号状態にある場合、音響信号Sig21が一定であると仮定すれば、音量設定情報VOL*の値が大きくなるほど係数kAMPの増大を通じて後席スピーカSP2の出力音量も大きくなり、音量設定情報VOL*の値が小さくなるほど係数kAMPの低下を通じて後席スピーカSP2の出力音量も小さくなる。
【0049】
音量設定情報VOL*の値は後席ユニット20の操作部22に対する入力操作に基づいて決定されて良い。操作部22は、後席ユニット20に対して有線又は無線で接続されたリモートコントローラや任意の端末装置にて実現されても良い。表示部21にてタッチパネルが形成される場合、タッチパネルが操作部22として機能しても良い。或いは、前席ユニット10の操作部12に対する入力操作に基づいて音量設定情報VOL*の値が決定されるようにしても良い。
【0050】
尚、後席ユニット20は、表示部21におけるディスプレイ(映像を表示する表示画面)を振動させることで音を出力するディスプレイスピーカ機能を有していて良い。この場合、表示部21におけるディスプレイが後席スピーカSP2として機能し、音響信号Sig22に基づいてディスプレイが振動することで音響信号Sig22に基づく音がディスプレイから出力される。勿論、後席スピーカSP2は表示部21とは別個独立に設けられたスピーカであっても良い。後席スピーカSP2は後席ユニット20の外部に設けられたスピーカであっても良い。
【0051】
音量抑制指令信号MT*がアクティブの信号状態にあるとき、音量制御部220は、音量抑制処理を実行する。
【0052】
音量抑制処理は以下の第1音声抑制処理であって良い。第1音声抑制処理において、音量制御部220は、音量設定情報VOL*に関わらず係数kAMPの値に所定値kLOWを設定する。所定値kLOWは係数kAMPの可変範囲の最小値(例えば1)である。音量抑制指令信号MT*がノンアクティブの信号状態にある場合において、音量設定情報VOL*が音量設定情報VOL*の可変範囲の最小値をとり、故に、係数kAMPの値が係数kAMPの可変範囲の最小値(例えば1)と一致するとき、後席スピーカSP2の出力音量は後席スピーカSP2の出力音量の可変範囲の最小音量となる。故に、第1音声抑制処理が実行されたときの後席スピーカSP2の出力音量は、後席スピーカSP2の出力音量の可変範囲の最小音量(所定音量)となる。従って、音量設定情報VOL*の値が2以上である場合において第1音声抑制処理が実行されたとき、第1音声抑制処理が実行されない場合と比べて後席スピーカSP2の出力音量は小さくなる(換言すれば音量設定情報VOL*に基づく音量よりも後席スピーカSP2の出力音量は小さくなる)。但し、音量設定情報VOL*の値が1である場合において第1音声抑制処理が実行されたときには、第1音声抑制処理が実行されない場合と比べて後席スピーカSP2の出力音量は小さくならない(“VOL*=1”である時点で後席スピーカSP2の出力音量が最小音量となっているため)。何れにせよ、第1音声抑制処理が実行されたときには、音量設定情報VOL*に関わらず後席スピーカSP2の出力音量が所定値kLOWに応じた所定音量に設定される。
【0053】
尚、所定値kLOWは係数kAMPの可変範囲の最小値より大きい値(但し、少なくとも係数kAMPの可変範囲の最大値よりは小さい)を有していても良い。即ち例えば、音量抑制指令信号MT*がノンアクティブの信号状態にあるときにおいて係数kAMPの値がn種類の値の何れかに設定されるのであれば(nは3以上であるとする)、第1音声抑制処理において係数kAMPの値は、n種類の値の内、2番目に小さい値であっても良い。
【0054】
音量抑制処理は以下の第2音声抑制処理であっても良い。第2音声抑制処理において、音量制御部220は、音量設定情報VOL*及び音量抑制指令信号MT*に基づいて係数kAMPの値を設定する。説明の具体化のため、音量抑制指令信号MT*がノンアクティブの信号状態にある場合、音量設定情報VOL*の値がそのまま係数kAMPの値に設定されることを想定する(即ち“VOL*=kAMP”と想定する)。この場合において、音量抑制指令信号MT*がアクティブの信号状態にあるとき、第2音声抑制処理において、音量制御部220は、音量設定情報VOL*の値より小さな値(例えば“VOL*-1”)を係数kAMPの値に設定する。そうすると、音量設定情報VOL*の値が2以上である場合において第2音声抑制処理が実行されたとき、第2音声抑制処理が実行されない場合と比べて後席スピーカSP2の出力音量は小さくなる(換言すれば音量設定情報VOL*に基づく音量よりも後席スピーカSP2の出力音量は小さくなる)。
【0055】
但し、係数kAMPの値が所定の下限値(ここでは1)より小さくなることが禁止されていても良く、この場合にあっては、音量設定情報VOL*の値が1である場合において第2音声抑制処理が実行されたとき、第2音声抑制処理が実行されない場合と比べて後席スピーカSP2の出力音量は小さくならない。即ち、第1音声抑制処理が実行されたときと同様、結果として、後席スピーカSP2の出力音量は後席スピーカSP2の出力音量の可変範囲の最小音量(所定音量)となる。
【0056】
音量抑制処理は以下の第3音声抑制処理であっても良い。第3音声抑制処理において、音量制御部220は、後席スピーカSP2への音響信号Sig22の出力を停止させる。従って、第3音声抑制処理が実行されたとき、後席スピーカSP2の出力音量はゼロとなる(即ち、後席スピーカSP2は消音される)。
【0057】
音量抑制指令部230は、音量制御部220に対して音量抑制指令信号MT
*を出力する。
図8を参照して音量抑制指令信号MT
*の状態制御を説明する。
図8において、波形611は前席ユニット10における音声入力処理の実行/非実行の状態を表す。
図8において、波形612は、車内スピーカSP1での出力対象となる音響信号Sig_SP1と、後席スピーカSP2での出力対象となる音響信号Sig_SP2との同一性を表す。
図8において、波形613は音量抑制指令信号MT
*の信号状態を表す。
【0058】
同一性が評価される一方の音響信号、即ち、後席スピーカSP2での出力対象となる音響信号Sig_SP2は音響信号Sig21又はSig22である(
図7参照)。但し、第3音声抑制処理が実行される場合にあっては、音響信号Sig22が存在しなくなるので、音響信号Sig_SP2は音響信号Sig21であると解される。音声抑制処理として第1又は第2音声抑制処理が実行される場合にあっては、後席スピーカSP2での出力対象となる音響信号Sig_SP2は音響信号Sig21又はSig22である、と考えて良い。以下では、音声抑制処理として第3音声抑制処理が実行されうることを考慮して、音響信号Sig21が音響信号Sig_SP2であると考える。
【0059】
同一性が評価される他方の音響信号、即ち、車内スピーカSP1での出力対象となる音響信号Sig_SP1は音響信号Sig11又はSig12であるが(
図5参照)、ここでは主に、音響信号Sig11が音響信号Sig_SP1であると考える。
【0060】
音量抑制指令部230は、対象期間において音量抑制指令信号MT*をアクティブの信号状態とし、対象期間と異なる非対象期間において音量抑制指令信号MT*をノンアクティブの信号状態とする。
【0061】
前席ユニット10の主処理部13において音声入力処理が実行されている期間であって、且つ、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容とが相違する期間が、対象期間に相当する。前席ユニット10の主処理部13において音声入力処理が実行されていない期間は、音響信号Sig_SP1及びSig_SP2の内容の同一/相違に関係なく、非対象期間に属する。前席ユニット10の主処理部13において音声入力処理が実行されている期間であっても、当該期間中における音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容が互いに同じである場合には、当該期間は非対象期間に属する。尚、主処理部13において音声入力処理が実行されている期間とは、換言すれば、主処理部13の動作モードが音声入力モードに設定されている期間に相当する。主処理部13において音声入力処理が実行されていない期間とは、換言すれば、主処理部13の動作モードが非音声入力モードに設定されている期間に相当する。
【0062】
音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容が互いに同じであるとは、音響信号Sig_SP1及びSig_SP2の元となる音源が同じであることを指し、故に、音響信号Sig_SP1を車内スピーカSP1に入力したときの車内スピーカSP1の出力音の内容と、音響信号Sig_SP2を後席スピーカSP2に入力したときの後席スピーカSP2の出力音の内容が互いに同じであることを意味する。音響信号Sig_SP1の振幅と音響信号Sig_SP2の振幅が互いに相違していたとしても音響信号Sig_SP1の波形と音響信号Sig_SP2の波形が互いに相似であれば、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容は互いに同じであると解される。即ち、音響信号Sig_SP1に基づく車内スピーカSP1の出力音の音量と音響信号Sig_SP2に基づく後席スピーカSP2の出力音の音量とが相違していたとしても、音響信号Sig_SP1を車内スピーカSP1に入力したときの車内スピーカSP1の出力音の内容と音響信号Sig_SP2を後席スピーカSP2に入力したときの後席スピーカSP2の出力音の内容が互いに同じであれば、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容は互いに同じであると解される。尚、本実施形態において、音源とは、音波を発生する物体を指すのではなく、音響信号(音の電気信号)の発生源を指す。
【0063】
共通の音源に基づく共通の音響信号が、音響信号Sig11として前席ユニット10の音響信号処理部120(
図5参照)に入力されると同時に音響信号Sig21として後席ユニット20の音響信号処理部210(
図7参照)に入力されたとき、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容は互いに同じとなる。より具体的には例えば、磁気ディスクに記録された映画の動画像が表示部21にて再生されると共に当該動画像に付随する音響信号(映画上の挿入歌の音響信号等)が後席スピーカSP2に入力されて後席スピーカSP2で再生されており、これと同時に、当該動画像に付随する音響信号が車内スピーカSP1に入力されて車内スピーカSP1でも再生されているとき、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容は互いに同じとなる。音響信号のスピーカでの再生とは、音響信号をスピーカにて音として出力することを指す。
【0064】
第1音源に基づく第1音響信号が音響信号Sig11として前席ユニット10の音響信号処理部120(
図5参照)に入力され、一方、第2音源に基づく第2音響信号が音響信号Sig21として後席ユニット20の音響信号処理部210(
図75参照)に入力されたとき、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容は互いに相違する(但し、第1及び第2音源は互いに異なり、第1及び第2音響信号は互いに異なるものとする)。より具体的には例えば、光ディスク等の記録媒体に記録された映画の動画像が表示部21にて再生されると共に当該動画像に付随する音響信号(映画上の挿入歌の音響信号等)が後席スピーカSP2に入力されて後席スピーカSP2で再生されており、この際、ラジオ放送に基づく楽曲の音響信号が車内スピーカSP1に入力されて車内スピーカSP1で再生されているとき、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容は互いに相違する。
【0065】
マイクロホン15には、音声入力処理の対象となる発話者の発話による音に加えて、車内スピーカSP1の出力音及び後席スピーカSP2の出力音も入力される。前席ユニット10における主処理部13は、車内スピーカSP1での出力対象となる音響信号Sig_SP1を認識している。このため、音響信号Sig_SP1(例えばSig11又はSig12)をリファレンス信号Sig_refに含めたECNR112の処理によって(
図4参照)、音響信号Sig_SP1の成分を音響信号Sig02から除去することができ、その後の音声認識に対して音響信号Sig_SP1の成分は殆ど影響を与えない。
【0066】
また、音響信号Sig_SP2の内容が音響信号Sig_SP1の内容と同じであるならば、ECNR112の処理によって(
図4参照)、音響信号Sig_SP1の成分と同時に音響信号Sig_SP2の成分も音響信号Sig02から除去される。結果、その後の音声認識に対して音響信号Sig_SP2の成分も殆ど影響を与えず、正確な音声認識が期待される。
【0067】
但し、音響信号Sig_SP2の内容が音響信号Sig_SP1の内容と相違する場合、ECNR112の処理によって音響信号Sig_SP2の成分を音響信号Sig02から除去することができない。この場合において音声認識の結果に基づく音声入力処理を実行した場合、後席スピーカSP2の出力音が正確な音声認識及び音声入力処理を阻害しうる。これを考慮し、本実施形態では、前席ユニット10にて音声入力処理が実行されており且つ音響信号Sig_SP2の内容が音響信号Sig_SP1の内容と相違するとき(即ち上述の対象期間において)、音声抑制処理(第1~第3音声抑制処理の何れか)を実行することで、そうでないときと比べて後席スピーカSP2の出力音量を低下させる、後席スピーカSP2の出力音量を所定音量(典型的には例えば後席スピーカSP2の出力音量の可変範囲の最小音量)に設定する、又は、後席スピーカSP2を消音させる(
図8参照)。
【0068】
これにより、音声認識の正確性が担保され、音声入力処理を正しく行うことが可能となる(後席スピーカSP2の出力音が音声入力処理を阻害することを抑制できる)。
【0069】
以下、複数の実施例の中で、幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0070】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図9に示す如く、前席ユニット10の主処理部13は、通信部14を用い任意の音源からの音響信号を後席ユニット20に送信する音響信号送信部150を有していて良い。
図9の例では、音源ASaからの音響信号Sigaが音響信号送信部150を通じて後席ユニット20に送信される。この場合、音響信号Sigaが後席ユニット20の通信部24にて受信されて音響信号Sig21として音響信号処理部210に入力される。音響信号Sigaの後席ユニット20への送信とは別に、前席ユニット10の主処理部13では、
図9に示す如く、音響信号Sigaを音響信号Sig11として音響信号処理部120(
図5も参照)に入力しても良い。
【0071】
音響信号Sigaを後席ユニット20に送信すると同時に音響信号Sigaを音響信号Sig11として音響信号処理部120に入力する第1ケースを考える。
図9は第1ケースにおける音響信号の流れを表している。第1ケースでは、音源ASaからの音響信号SigaがスピーカSP1及びSP2の夫々にて同時に再生される(説明の簡単化のため、通信等による遅延を無視)。第1ケースでは、音響信号Sig_SP1の内容(音響信号Sig11の内容)と音響信号Sig_SP2の内容(音響信号Sig21の内容)が互いに同じとなる。
【0072】
一方、
図10に示す第2ケースでは、音源ASaからの音響信号Sigaが音響信号Sig11として前席ユニット10の音響信号処理部120に入力される一方で、音源ASbからの音響信号Sigbが音響信号送信部150より通信部14を通じて後席ユニット20に送信される。そうすると、後席ユニット20では音響信号Sigbが音響信号Sig21として音響信号処理部210に入力される。結果、第2ケースでは、音源ASaからの音響信号Sigaが車内スピーカSP1にて再生されると同時に音源ASbからの音響信号Sigbが後席スピーカSP2にて再生される。音源ASa及びASbは互いに異なり、故に音響信号Siga及びSigbも互いに異なる。故に、第2ケースでは、音響信号Sig_SP1の内容(音響信号Sig11の内容)と音響信号Sig_SP2の内容(音響信号Sig21の内容)が互いに相違する。
【0073】
前席ユニット10のRSE音量干渉部130(
図5参照)は、車内スピーカSP1の出力音の音源と後席スピーカSP2の出力音の音源とが同じであるか否かを判定する。
図9の第1ケースの如く、共通の音源からの共通の音響信号を車内スピーカSP1にて再生し且つ後席ユニット20に送信するケースでは、車内スピーカSP1の出力音の音源と後席スピーカSP2の出力音の音源は互いに同じであると判定される。
図10の第2ケースの如く、互いに異なる音源からの互いに異なる音響信号を車内スピーカSP1にて再生し且つ後席ユニット20に送信するケースでは、車内スピーカSP1の出力音の音源と後席スピーカSP2の出力音の音源は互いに異なると判定される。車内スピーカSP1の出力音の音源と後席スピーカSP2の出力音の音源とが同じであるか否かの判定は、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容とが同じであるか否かの判定と等価である。この判定の結果と音声入力処理が現在実行されているか否かに基づき、RSE音量干渉部130は、対象期間及び非対象期間を認識及び設定することができる(即ち、任意のタイミングが対象期間及び非対象期間の何れに属するかを判断できる)。
【0074】
前席ユニット10のRSE音量干渉部130(
図5参照)は、対象期間において音量抑制指令信号MT
*の信号状態がアクティブとなることを指示する第1制御信号を後席ユニット20に送信し、非対象期間において音量抑制指令信号MT
*の信号状態がノンアクティブとなることを指示する第2制御信号を後席ユニット20に送信する。音量抑制指令部230(
図7参照)は、RSE音量干渉部130から受信した第1又は第2制御信号に基づき音量抑制指令信号MT
*の信号状態をアクティブ又はノンアクティブに設定する。
【0075】
図9の第1ケースでは、車内スピーカSP1の出力音の音源と後席スピーカSP2の出力音の音源とが同じである、即ち音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容とが同じである。故に、
図9の第1ケースでは音声入力処理が実行されているか否かに関わらず上記第1制御信号は後席ユニット20に送信されず、結果、後席ユニット20において上記音量抑制処理は実行されない。
【0076】
図10の第2ケースでは、車内スピーカSP1の出力音の音源と後席スピーカSP2の出力音の音源とが相違する、即ち音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容とが相違する。故に、
図10の第2ケースにおいて音声入力処理が実行されている期間は対象期間に相当し、対象期間において上記第1制御信号が後席ユニット20に送信されることで後席ユニット20において上記音量抑制処理が実行される。
【0077】
音源AS1及びAS2は任意の音源であって良い。音源として、音響信号が記録された光ディスク等の記録媒体、音響信号を含む放送波が挙げられる。また、インターネットを含む情報通信網を通じてユニット10又は20にて取得される音響信号が音響信号Siga又はSigbであっても良い。
【0078】
尚、後席スピーカSP2にて再生される音響信号が前席ユニット10から後席ユニット20に提供されることを前提とした方法を上述したが、前席ユニット10に依存することなく、後席ユニット20単体にて取得される音響信号が後席スピーカSP2にて生成されても良い。この場合には、音響信号Sig21を後席ユニット20から前席ユニット10に送信し、前席ユニット10のRSE音量干渉部130において、車内スピーカSP1にて再生されるべき音響信号Sig11と受信した音響信号Sig21とを比較することにより、音響信号Sig_SP1の内容(音響信号Sig11の内容)と音響信号Sig_SP2の内容(音響信号Sig21の内容)とが同じであるか否かを判定すれば良い。
【0079】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例では、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容とが同じであるか否かの判定を後席ユニット20側で行う。この場合には、車内スピーカSP1にて再生されるべき音響信号Sig11を前席ユニット10から後席ユニット20に送信する。そして、後席ユニット20の音量抑制指令部230(
図7参照)において、後席スピーカSP2にて再生されるべき音響信号Sig21と受信した音響信号Sig11とを比較することにより、音響信号Sig_SP1の内容(音響信号Sig11の内容)と音響信号Sig_SP2の内容(音響信号Sig21の内容)とが同じであるか否かを判定すれば良い。
【0080】
一方で、前席ユニット10のRSE音量干渉部130は、音声入力処理が現在実行されているか否かを示す通知信号を制御信号として、後席ユニット20に送信する。例えば、音声入力処理が現在実行されているときのみ特定の通知信号を制御信号として後席ユニット20に送信すれば良い。音量抑制指令部230は、音響信号Sig_SP1の内容と音響信号Sig_SP2の内容とが同じであるか否かの判定の結果と、受信した通知信号としての制御信号と、に基づき対象期間及び非対象期間を認識及び設定する(即ち、任意のタイミングが対象期間及び非対象期間の何れに属するかを判断する)。そして、音量抑制指令部230は、音量抑制指令信号MT*の信号状態を、対象期間においてアクティブとし、非対象期間においてノンアクティブとすれば良い。
【0081】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例では、本発明の一側面に係る装置又はシステムについて考察する。
【0082】
本発明の一側面に係る車載装置(以下、便宜上、車載装置WRSEと称する)は、車両に設置される車載装置(20)であって、スピーカ(SP2)と、前記スピーカの出力音量を制御する音量制御部(220)と、を備え、前記音量制御部は、他の車載装置(10)にて前記車両の乗員の発話による音声入力処理が実行されており、且つ、前記スピーカ(SP2)での出力対象とされる対象音響信号(Sig_SP2)の内容が、前記他の車載装置により前記車両内の他のスピーカ(SP1)での出力対象とされる他の音響信号(Sig_SP1)の内容と相違するとき、そうでないときと比べて前記出力音量を低下させる、前記出力音量を所定音量に設定する、又は、前記スピーカを消音させる。
【0083】
これにより、スピーカ(SP2)の出力音が他の車載装置での音声入力処理を阻害することが抑制され、他の車載装置において音声入力処理を正しく行うことが可能となる。
【0084】
具体的には例えば、車載装置WRSEにおいて、前記音量制御部(220)は、前記他の車載装置(10)にて前記音声入力処理が実行されていないとき、又は、前記対象音響信号(Sig_SP2)の内容が前記他の音響信号(Sig_SP1)の内容と同一であるとき、前記出力音量を、与えられた音量設定情報(VOL*)に基づく音量に設定し、前記他の車載装置(10)にて前記音声入力処理が実行されており且つ前記対象音響信号(Sig_SP2)の内容が前記他の音響信号(Sig_SP1)の内容と相違するとき、前記出力音量を前記音量設定情報に基づく音量より低下させる、前記音量設定情報に関わらず前記出力音量を前記所定音量に設定する、又は、前記スピーカを消音させると良い。
【0085】
これにより、基本的にはスピーカ(SP2)の出力音量が音量設定情報に基づくものとされる。スピーカの出力音が音声入力処理を阻害する可能性があるときに音量低下等が行われて、音声入力処理の正確な実行が担保される。
【0086】
また具体的には例えば、車載装置WRSEに関し、前記他の車載装置(10)では、前記発話による音を受けるマイクロホン(15)への入力音響信号に基づき前記発話の内容に対する音声認識を実行し、前記音声入力処理は前記音声認識の結果に基づいて実行され、前記音声認識は、前記マイクロホンへの入力音響信号における前記他の音響信号(Sig_SP1)の成分を抑制してから実行されると良い。
【0087】
他の音響信号(Sig_SP1)の成分の抑制により所謂エコーキャンセルが実現され、正確な音声認識が担保される。対象音響信号(Sig_SP2)の内容が他の音響信号(Sig_SP1)の内容と同一であるきには、エコーキャンセルにより対象音響信号(Sig_SP2)の成分も抑制されるので、正確な音声認識が期待される。一方、それらが相違するときには、対象音響信号(Sig_SP2)に対してエコーキャンセルが機能せず、正確な音声認識が阻害されるおそれがある。しかし、車載装置WRSEでは、他の車載装置(10)にて音声入力処理が実行されており且つ対象音響信号(Sig_SP2)の内容が他の音響信号(Sig_SP1)の内容と相違するとき、スピーカ(SP2)の出力音量の低下等が図られるため、音声認識の正確性が担保され、結果、音声入力処理の正確な実行が担保される。
【0088】
尚、後席ユニット20は車載装置WRSEの例である。或いは、後席ユニット20は車載装置WRSEを内包すると言える。
【0089】
そして例えば、上記の車載装置WRSE(20)と、他の車載装置(10)を備えた車載システム(SYS)を構成すると良い。
【0090】
これにより、スピーカ(SP2)の出力音が他の車載装置での音声入力処理を阻害することが抑制され、他の車載装置において音声入力処理を正しく行うことが可能となる。
【0091】
本発明の他の一側面に係る車載装置(以下、便宜上、車載装置WHUと称する)は、車両に設置される車載装置(10)であって、前記車両の乗員の発話による音を受けるマイクロホン(15)と、前記発話の内容に対して音声認識を実行する音声認識部(113)と、前記発話による音声入力処理を起動させる音声入力起動部(115)と、前記音声入力処理が実行されているとき、前記音声認識の結果に基づき前記発話の内容に対して応答する応答処理部(114)と、音響信号の供給により前記車両内のスピーカ(SP1)に音を出力させる音響信号処理部(120)と、前記車両に設置された他の車載装置(20)に対し制御信号を送信する他装置制御部(130)と、を備え、前記他装置制御部は、前記音声入力処理が実行されており、且つ、前記車両内のスピーカ(SP1)での出力対象となる対象音響信号(Sig_SP1)の内容が前記他の車載装置(20)における他のスピーカ(SP2)での出力対象となる他の音響信号(Sig_SP2)の内容と相違するとき、そうでないときと比べて前記他のスピーカの出力音量を低下させる制御信号、前記出力音量を所定音量に設定する制御信号、又は、前記他のスピーカを消音させる制御信号を、前記他の車載装置(20)に送信する。
【0092】
他のスピーカ(SP2)の音量低下等により、音声入力処理において必要な音声認識の正確性が担保される。結果、車載装置WHUにおいて音声入力処理を正しく行うことが可能となる。
【0093】
具体的には例えば、車載装置WHUにおいて、前記マイクロホンへの入力音響信号に含まれる前記対象音響信号(Sig_SP1)の成分を抑制することで前記入力音響信号に基づく抑制後音響信号(Sig03)を生成するエコー抑制部(112)を更に設け、前記音声認識部は、前記抑制後音響信号に基づいて前記音声認識を実行すると良い。
【0094】
対象音響信号(Sig_SP1)の成分の抑制により、即ちスピーカ(SP1)での出力対象となる音響信号の成分の抑制により所謂エコーキャンセルが実現され、正確な音声認識が担保される。スピーカ(SP1)での出力対象となる音響信号(Sig_SP1)の内容が他のスピーカ(SP2)での出力対象となる他の音響信号(Sig_SP2)の内容と同一であるきには、エコーキャンセルにより他の音響信号(Sig_SP2)の成分も抑制されるので、正確な音声認識が期待される。一方、それらが相違するときには、他の音響信号(Sig_SP2)に対してエコーキャンセルが機能せず、正確な音声認識が阻害されるおそれがある。しかし、車載装置WHUでは、音声入力処理が実行されており且つスピーカ(SP1)での出力対象となる音響信号(対象音響信号)の内容が他のスピーカ(SP2)での出力対象となる他の音響信号の内容と相違するとき、他のスピーカ(SP2)の出力音量の低下等が図られるため、音声認識の正確性が担保され、結果、音声入力処理の正確な実行が担保される。
【0095】
尚、前席ユニット10は車載装置W
HUの例である。或いは、前席ユニット10は車載装置W
HUを内包すると言える。
図5のRSE音量干渉部130は他装置制御部の例である。
図4のECNR112はエコー抑制部の例である。
【0096】
そして例えば、上記の車載装置WHU(10)と、他の車載装置(20)を備えた車載システム(SYS)を構成すると良い。
【0097】
これにより、スピーカ(SP2)の出力音が車載装置WHUでの音声入力処理を阻害することが抑制され、車載装置WHUにおいて音声入力処理を正しく行うことが可能となる。
【0098】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0099】
CR 車両
SYS 車載システム
SP1 車内スピーカ
SP2 後席スピーカ
10 前席ユニット
15 マイクロホン
20 後席ユニット
110 音声入力部
111 フロントエンド
112 ECNR
113 音声認識部
114 応答処理部
115 音声入力起動部
120 音響信号処理部
130 RSE音量干渉部
210 音響信号処理部
220 音量制御部
230 音量抑制指令部