(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】多重分枝管腔内デバイスならびにその製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20240919BHJP
【FI】
A61F2/07
(21)【出願番号】P 2022575990
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 US2021036844
(87)【国際公開番号】W WO2021252785
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】メリル ジェイ.バードノ
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ジェイ.キルグロー
(72)【発明者】
【氏名】ケヒンデ アデイツヌ マジョラグベ
(72)【発明者】
【氏名】デレク エム.ワード
(72)【発明者】
【氏名】パトリック エス.ヤング
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526929(JP,A)
【文献】特表2019-516509(JP,A)
【文献】特表2014-533559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内にインプラント処置するように構成された主要内部人工器官であって、前記主要内部人工器官は、少なくとも1つの側部ポータルを含み、前記少なくとも1つの側部ポータルは複数の溝を
有する側部ポータルアダプタを含む側部チャンネルを含む、主要内部人工器官、
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第一の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第一の側枝内部人工器官、
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第二の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第二の側枝内部人工器官、
を含み、
側枝内部人工器官を含まないときに、前記側部チャンネルには流体分離がない、インプラント可能なデバイス。
【請求項2】
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第三の分枝血管を通して流れを指向させるように構成された第三の側枝内部人工器官をさらに含む、請求項1記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項3】
前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官は大腿アクセス部位を通して展開される、請求項2記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項4】
前記主要内部人工器官はグラフト及びステント構成要素を含む、請求項1~3のいずれか1項記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項5】
前記グラフトは延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項4記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項6】
前記ステント構成要素はニチノールを含む、請求項4又は5記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項7】
前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官のうちの少なくとも1つは自己拡張型である、請求項2記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項8】
前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官のうちの少なくとも1つはバルーン拡張可能である、請求項2記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項9】
前記複数の溝は、数において、側部チャンネル内に展開されて前記側枝内部人工器官間のシールを助ける側枝内部人工器官の数に対応する、請求項1記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項10】
少なくとも1つの血管の主血管にインプラント処置するための主要内部人工器官であって、前記主要内部人工器官は、側部チャンネルと連通する少なくとも1つの側部ポータルを有する、主要内部人工器官、
前記側部ポータル内で前記主要内部人工器官に取り付けるように構成され、そして前記側部チャンネルを通って延在している側部ポータルアダプタであって、前記側部ポータルアダプタは複数の溝を含む、側部ポータルアダプタ、及び、
前記側部ポータルを通って延在している少なくとも1つの側枝内部人工器官であって、前記少なくとも1つの側枝内部人工器官は、前記複数の溝のうちの少なくとも1つの溝によって受容される、側枝内部人工器官、
を含む、少なくとも1つの血管にインプラント処置するためのインプラント可能なデバイス。
【請求項11】
前記インプラント可能なデバイスは、前記側部ポータルを通って延在している3つの側枝内部人工器官を含み、各側枝内部人工器官は、前記複数の溝のうちの3つの溝のうちの1つによって受容される、請求項
10記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項12】
前記側部ポータルアダプタは、少なくともボンド結合、接着剤及び摩擦嵌めのうちの1つを介して前記主要内部人工器官に取り付けられる、請求項
10又は
11記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項13】
前記複数の溝は中心導管を通して接続されている、請求項
10~
12のいずれか1項記載のインプラント可能なデバイス。
【請求項14】
血管内にインプラント処置するように構成された主要内部人工器官であって、前記主要内部人工器官は、少なくとも1つの側部ポータルを含み、前記少なくとも1つの側部ポータルは複数の溝を含む側部チャンネルを含む、主要内部人工器官、
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第一の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第一の側枝内部人工器官、
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第二の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第二の側枝内部人工器官、
を含み、
前記複数の溝は、数において、側部チャンネル内に展開されて前記側枝内部人工器官間のシールを助ける側枝内部人工器官の数に対応する、インプラント可能なデバイス。
【請求項15】
前記複数の溝は、側部ポータルアダプタの使用により、前記側部チャンネルに設けられる、請求項14記載のインプラント可能なデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月10日に出願された仮出願第63/037,115号に対する優先権を主張し、その全体を参照により取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、インプラント可能な管腔内デバイスに関し、特に、複数の側枝血管へのアクセスを提供するインプラント可能なデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
少なくとも1つの側枝を使用するインプラント可能な管腔内デバイスの一例は、Quinnの米国特許第8,556,961号明細書に記載されている。この例において、分枝血管内ステントグラフトは、一次ステントセグメント及び一次グラフトスリーブを含み、主要流体チャンネルを形成し、それを通る側方開口部を有する。一次グラフトスリーブ上に形成された外部グラフトチャンネルは、側方開口部と連通する第一の端部と、一次グラフトスリーブの外側に開いた第二の端部とを有し、それによって、主要チャンネルから側方開口部及び外部グラフトチャンネルを通って出る分岐フローチャンネルを提供する。一次ステントセグメント及びグラフトスリーブは、主血管の管腔内表面に係合し、実質的に流体密封シールを形成する。ステントグラフトは、部分的に外部グラフトチャンネル内に配置され、その開口した第二の端部を通りそして部分的に分枝血管内に配置されうる二次ステントグラフトをさらに含む。二次ステントグラフトは、外部グラフトチャンネルの内面及び分枝血管の管腔内表面と係合し、それによって実質的に流体密封シールを形成する。
【0004】
複数の側枝血管へのアクセスを提供する既存の管腔内デバイスに関する認識されていない、及び/又は対処されていない問題としては、複数のガイドワイヤを管理しそしてその絡み合いを回避することの難しさ、分枝血管のカニューレ挿入の難しさ、複数の側部ポータルを備えたデバイスの製造における課題、デバイスの配置及び展開ならびに臨床医のトレーニングの複雑さ、ならびに、過剰なデバイスプロファイルが挙げられる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、複数の側枝血管へのアクセスを提供する従来のデバイスに見られるような欠陥に対処する。
【0006】
発明の概要
本開示は、複数の側枝血管への改善されたアクセスを提供するインプラント可能な管腔内デバイスを対象とする。記載されたデバイスは、少なくとも1つの側部ポータルを含む主要内部人工器官を使用する。側枝内部人工器官を含まないときに、側部ポータルは流体分離のない単一のチャンネルを含む。デバイスは、1つのポータルを介して2つ以上の側枝内部人工器官を展開できるように構成されている。
【0007】
1つの例(「例1」)によれば、インプラント可能なデバイスは、血管内にインプラント処置するように構成された主要内部人工器官、ここで、前記主要内部人工器官は、少なくとも1つの側部ポータルを含む、前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第一の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第一の側枝内部人工器官、及び、前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第二の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第二の側枝内部人工器官を含む。インプラント可能なデバイスは、側枝内部人工器官を含まないときに、前記少なくとも1つの側部ポータルが流体分離のない側部チャンネルを含むことをさらに含む。
【0008】
第二の例(「例2」)によれば、例1のインプラント可能なデバイスは、前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第三の分枝血管を通して流れを指向させるように構成された第三の側枝内部人工器官をさらに含む。
【0009】
第三の例(「例3」)によれば、例2のインプラント可能なデバイスは、前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官が大腿アクセス部位を通して展開されることをさらに含む。
【0010】
第四の例(「例4」)によれば、上述の例のいずれかのインプラント可能なデバイスは、前記主要内部人工器官がグラフト及びステント構成要素を含むことをさらに含む。
【0011】
第五の例(「例5」)によれば、例4のインプラント可能なデバイスは、前記グラフトが延伸ポリテトラフルオロエチレンを含むことをさらに含む。
【0012】
第六の例(「例6」)によれば、例4又は例5のインプラント可能なデバイスは、前記ステント構成要素がニチノールを含むことをさらに含む。
【0013】
第七の例(「例7」)によれば、例2のインプラント可能なデバイスは、前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官のうちの少なくとも1つが自己拡張型であることをさらに含む。
【0014】
第八の例(「例8」)によれば、例2のインプラント可能なデバイスは、前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官のうちの少なくとも1つがバルーン拡張可能であることをさらに含む。
【0015】
第九の例(「例9」)によれば、上述の例のうちのいずれか1つのインプラント可能なデバイスは、前記側部チャンネルが一連の溝を含むことをさらに含む。
【0016】
第十の例(「例10」)によれば、例9のインプラント可能なデバイスは、前記一連の溝が、数において、側部チャンネル内に展開されて、前記側枝内部人工器官間のシールを助ける側枝内部人工器官の数に対応することをさらに含む。
【0017】
第十一の例(「例11」)によれば、例8又は例9のインプラント可能なデバイスは、側部ポータルアダプタの使用により、前記一連の溝が側部チャンネルに設けられることをさらに含む。
【0018】
第十二の例(「例12」)によれば、少なくとも1つの血管にインプラント処置するためのインプラント可能なデバイスは、少なくとも1つの血管の主血管にインプラント処置するための主要内部人工器官、ここで、前記主要内部人工器官は、側部チャンネルと連通する少なくとも1つの側部ポータルを有する、及び、前記側部ポータル内で前記主要内部人工器官に取り付けるように構成され、そして前記側部チャンネルを通って延在している側部ポータルアダプタ、ここで、前記側部ポータルアダプタは一連の溝を含む、を含む。インプラント可能なデバイスは、前記側部ポータルを通って延在している少なくとも1つの側枝内部人工器官をさらに含み、前記少なくとも1つの側枝内部人工器官は、前記一連の溝のうちの少なくとも1つの溝によって受容される。
【0019】
第十三の例(「例13」)によれば、例12のインプラント可能なデバイスは、側部ポータルを通って延在している3つの側枝内部人工器官をさらに含み、各側枝内部人工器官は、前記一連の溝のうちの3つの溝のうちの1つによって受容される。
【0020】
第十四の例(「例14」)によれば、例12又は例13のインプラント可能なデバイスは、前記側部ポータルアダプタが、少なくともボンド結合、接着剤及び摩擦嵌めのうちの1つを介して前記主要内部人工器官に取り付けられることを含む。
【0021】
第十五の例(「例15」)によれば、例12~14のいずれか1つのインプラント可能なデバイスは、前記一連の溝が中心導管を通して接続されていることをさらに含む。
【0022】
第十六の例(「例16」)によれば、主要内部人工器官、第一の側枝内部人工器官及び第二の側枝内部人工器官を有するインプラント可能なデバイスであって、前記主要内部人工器官は側部ポータルを含み、前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官は、前記主要内部人工器官及び側部ポータルを通って延在するように構成されているインプラント可能なデバイスを展開する方法は、大動脈にアクセスすること、及び、複数のガイドワイヤを大動脈及び前記大動脈から分岐する少なくとも2つの側枝血管内に延在させることを含む。この方法はさらに、大動脈の主要大動脈管腔に複数のガイドワイヤのうちの少なくとも1つをカニューレ挿入すること、大動脈内で前記少なくとも1つのガイドワイヤ上で前記主要内部人工器官を前進させること、前記主要内部人工器官を展開すること、前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を前記少なくとも2つの側枝血管内で前進させること、及び、前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を展開することを含む。
【0023】
第十七の例(「例17」)によれば、例16の方法は、3つの側枝血管が大動脈から分岐し、前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を前進させることが第三の側枝内部人工器官を前進させることを含むことをさらに含む。
【0024】
第十八の例(「例18」)によれば、例16又は17の方法は、前記少なくとも1つのガイドワイヤ上で前記主要内部人工器官を前進させることが前記主要内部人工器官を非展開構成で前進させることを含むことをさらに含む。
【0025】
第十九の例(「例19」)によれば、例16~18のいずれか1つの方法は、前記主要内部人工器官が自己拡張型のステント構成要素を含み、前記主要内部人工器官を展開することが前記ステント構成要素の自己拡張を含むことをさらに含む。
【0026】
第二十の例(「例20」)によれば、例16~19のいずれか1つの方法は、少なくとも前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官の各々が、自己拡張型のステント構成要素を含み、そして前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を展開することが前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官の自己拡張を含むことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、記載と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0028】
【
図1】
図1は、幾つかの実施形態による、主要内部人工器官の1つの実施形態の平面図である。
【0029】
【
図2】
図2は、幾つかの実施形態による、
図1の主要内部人工器官の側面図である。
【0030】
【
図3】
図3は、幾つかの実施形態による、
図2のライン3-3に沿って取った断面図である。
【0031】
【
図4】
図4は、幾つかの実施形態による、本明細書に記載の主要内部人工器官の1つの実施形態の側面図であり、その中に3つの側枝内部人工器官が取り付けられている。
【0032】
【
図5】
図5は、幾つかの実施形態による、
図4の主要内部人工器官の端面図であり、3つの側枝内部人工器官を示す。
【0033】
【
図6】
図6は、幾つかの実施形態による、本明細書に記載の主要内部人工器官の別の実施形態の側面図であり、3つの側枝内部人工器官を有する。
【0034】
【
図7】
図7は、幾つかの実施形態による、
図6の主要内部人工器官の端面図であり、3つの側枝内部人工器官を示す。
【0035】
【
図8】
図8は、幾つかの実施形態による、主要内部人工器官に取り付けられ、側枝内部人工器官を受容するように構成された側部ポータルアダプタの側面図である。
【0036】
【
図9】
図9は、幾つかの実施形態による、
図8に示される側部ポータルアダプタの端面図である。
【0037】
【
図10】
図10は、幾つかの実施形態による、主要内部人工器官及び側枝内部人工器官をインプラント処置するためのアクセスを提供する準備における、患者の大動脈、左右の上腕動脈、腕頭動脈、右鎖骨下動脈、左総頸動脈及び左鎖骨下動脈の概略図である。
【0038】
【
図11】
図11は、幾つかの実施形態による、本明細書に記載のデバイスをインプラント処置するために使用されるガイドワイヤの配置を示す、
図10に示されるような患者の解剖学的構造の概略図である。
【0039】
【
図12】
図12は、幾つかの実施形態による、患者の大動脈弓の概略図であり、本明細書に記載のデバイスのインプラント処置の準備における、腕頭動脈及び左総頸動脈中の塞栓フィルタの配置を示す。
【0040】
【
図13】
図13は、幾つかの実施形態による、
図12に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、本明細書に記載の展開されていない主要内部人工器官の配置を示している。
【0041】
【
図14】
図14は、幾つかの実施形態による、
図13に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、主要内部人工器官の部分的な展開を示している。
【0042】
【
図15】
図15は、幾つかの実施形態による、
図14に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、腕頭動脈及び左総頸動脈から主要内部人工器官のポータルへのガイドワイヤのカニューレ挿入を示している。
【0043】
【
図16】
図16は、幾つかの実施形態による、
図15に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、本明細書に記載の側枝内部人工器官の位置決めの前に、すべてのガイドワイヤの適切な位置決めを保証するための確認工程を示している。
【0044】
【
図17】
図17は、幾つかの実施形態による、
図16に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、主要内部人工器官の側部ポータル内の3つの側枝内部人工器官のそれぞれの配置を示している。
【0045】
【
図18】
図18は、幾つかの実施形態による、
図17に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、主要内部人工器官内の3つの側枝内部人工器官の展開を示し、それぞれ腕頭動脈、左総頸動脈及び左鎖骨下動脈に延在している。
【0046】
【
図19】
図19は、幾つかの実施形態による、
図18に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、デリバリーシステムの除去を示している。
【0047】
【
図20】
図20は、幾つかの実施形態による、
図19に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、塞栓フィルタの除去前にデブリを除去するための塞栓フィルタのそれぞれの吸引を示している。
【0048】
【
図21】
図21は、幾つかの実施形態による、
図20に示されるような患者の大動脈弓の概略図であり、塞栓フィルタの除去を示している。
【0049】
【
図22】
図22は、幾つかの実施形態による、
図21に示される最終手順工程に続く、患者のアクセス部位のそれぞれの最終閉鎖のための位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
当業者は、意図した機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって、本発明のさまざまな態様を実現できることを容易に理解するであろう。別の言い方をすれば、他の方法及び装置を本明細書に組み込んで、意図した機能を発揮することができる。また、本明細書で参照される添付の図面はすべて一定の縮尺で描かれているわけではなく、本発明のさまざまな態様を示すために誇張されている可能性があり、その点で、図面は限定的であると解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0051】
本発明は、様々な原理及び信念に関連して説明されうるが、本発明は理論に拘束されるべきではない。
【0052】
図1、2及び
図3は、本明細書で記載されるように、主要内部人工器官10とも呼ばれる主要体内人工器官などのインプラント可能なデバイスの実施形態を示す。
図1は、主要内部人工器官10の実施形態の平面図である。
図2は、
図1の主要内部人工器官10の側面図を示し、
図3は、
図2の主要内部人工器官10の線3-3に沿って取った断面図を示す。
【0053】
主要内部人工器官10は、主要フロー管腔12と、側部チャンネル16と連通する少なくとも1つの側部ポータル14とを含む。主要内部人工器官10は、少なくとも1つのグラフト構成要素18と、少なくとも1つのステント構成要素20とを含む。幾つかの実施形態において、主要フロー管腔12は大動脈管腔であり、本明細書において主要大動脈管腔12として記載されうる。少なくとも1つのグラフト構成要素18及び少なくとも1つのステント構成要素20のそれぞれは、様々な材料から様々な方法によって構築することができる。適切な材料、設計及び構築方法は、例えば、米国特許第5,476,589号明細書、同第5,925,075号明細書、同第7,691,141号明細書、同第8,080,051号明細書及び同第8,221,487号明細書に開示されており、その全体を参照により本明細書に組み込む。少なくとも1つのグラフト構成要素18は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの可撓性生体適合性材料から形成されうる。少なくとも1つのグラフト構成要素18はさらに、ダクロンなどのポリエステルから形成されうる。自己拡張型デバイスの場合に、少なくとも1つのステント構成要素20は、ニチノール金属などの形状記憶ステント材料から形成されうる。バルーン拡張可能又は他の拡張デバイスによって拡張可能であることが望まれる構成要素の場合に、適切なステント材料は、ステンレス鋼又は同様の可鍛性材料を含むことができる。
【0054】
主要内部人工器官10は、それをカテーテルに取り付けて患者の体内に遠隔配置することを可能にする、より小さいデリバリー構成に圧縮できるように構築される。大動脈などの主血管内に正しく配置されると、主要内部人工器官10は主血管内で展開され、血管の損傷領域をシールし、主要フロー管腔12を介して損傷領域の周りに血流を再指向させる。主要内部人工器官10のバルーン拡張又は主要内部人工器官10の自己拡張によって展開を完了することができる。
【0055】
展開時に主要内部人工器官10によって覆われる1つ以上の分枝血管があるならば、臨床医は、側部ポータル14をその1つ以上の血管と位置合わせして、側部チャンネル16を介してそこを通る灌流を可能にすることができる。
【0056】
しかしながら、主血管の損傷が側枝血管にも延在していることはよくあることである。例えば、大動脈(図示せず)の大動脈弓(図示せず)における動脈瘤の場合に、大動脈の脆弱化は、患者の腕頭動脈、左総頚動脈及び/又は左鎖骨下動脈などの1つ以上の重要な側枝血管にまで、そして時にはそれを超えて延在している可能性がある。このような状況下で大動脈瘤を適切に修復するために、1つ以上の追加の内部人工器官を側枝血管内に展開して、これらの重要な動脈を通る血流を修復及び維持する必要があることがある。
【0057】
このような修復を達成するために、本明細書に記載の主要内部人工器官10は、
図4を参照して記載されるように、1つ以上の側枝内部人工器官を側部チャンネル16内に展開させ、そして側部ポータル14を通して標的側枝血管内に延在させるように構成されている。このようにして、側枝内部人工器官は、主血管及び側枝血管の損傷を効果的に排除する一方で、側枝血管への血液の連続流及び灌流を確保することができる。側部ポータルは、過去に提案され、成功裏に実装された(例えば、Quinn の米国特許8,556,961号明細書、参照により組み込まれる)。しかしながら、複数の側部ポータルを介して複数の側枝内部人工器官をデリバリーすることは、しばしば問題となる可能性があり、臨床医は、主要体内人工器官における複数の側部ポータルを通過する異なる側枝血管にそれぞれ対応する複数のガイドワイヤを操作し、もつれを回避しなければならない。また、複数の側部ポータルに伴う問題は、分枝血管の正確な位置がしばしば大きく異なるため、各分枝血管への灌流を可能にする位置に主要内部人工器官10を位置合わせすることが困難になることである。
【0058】
これらの問題は、本明細書に開示される実施形態によって解決されうる課題の様々な例である。これらの問題に対処するために、主要内部人工器官10は、側部ポータル14を採用し、
図4及び5を参照してさらに記載されるように、側部チャンネル16内に複数の側枝内部人工器官を展開する。
【0059】
図4は、本明細書に記載のとおりの主要内部人工器官10を含み、その中に少なくとも1つの側枝内部人工器官22が取り付けられている、インプラント可能なデバイスの追加の実施形態の側面図である。
図5は、
図4の主要内部人工器官10の端面図である。主要内部人工器官10は、第一の側枝内部人工器官22a、第二の側枝内部人工器官22b及び第三の側枝内部人工器官22cを有し、それぞれが側部チャンネル16内に展開され、そして側部ポータル14を通して延在している。側部ポータル14は、直径が、本明細書に記載の少なくとも1つの側枝内部人工器官22の直径よりも大きくてもよい。
【0060】
さらに、
図4及び5に示されるように、この実施形態における第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cは、それぞれ異なる構造であり、それぞれが異なる側枝血管内に展開するように構成されており、それにより、流れは、第一、第二及び第3の側枝内部人工器官22a、22b、22cを通して指向される。第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cの各々は、それぞれ外面23a、23b、23cを有する。外面23a、23b、23cのそれぞれの側面は、さらに、側壁と呼ぶことができる。幾つかの実施形態において、第一、第二、及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cは、それぞれの直径が異なる。例えば、第一の側枝内部人工器官22aは、第三の側枝内部人工器官22cよりも大きな直径を有することができる。他の例において、第一、第二及び/又は第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cは、実質的に等しい直径を有することができる。様々な実施形態において、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cは、主要内部人工器官10のステント構成要素20(
図2)又はグラフト構成要素18(
図2)と同様のステント構成要素及び/又はグラフト構成要素を含むことができる。
【0061】
主要内部人工器官10の別の実施形態は
図6及び7に示されている。
図6は、展開されて側部ポータル14から延在している第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを含む主要内部人工器官10の側面図である。
図7は、主要内部人工器官10の側部チャンネル16内に展開された第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを有する主要内部人工器官10の端面図である。
【0062】
この設計の性質により、非常に多用途に使用できることを理解されたい。側枝血管の周囲に損傷がないならば、主要内部人工器官10は、側枝内部人工器官なしで展開することができ、側部チャンネル16及び側部ポータル14を介して側枝血管を通る灌流を可能にする。あるいは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の側枝内部人工器官を必要に応じて展開することができ、必要に応じて側枝血管の修復及び再灌流を提供することができる。例えば、4つの側枝血管が修復及び再灌流を必要とするならば、4つの側枝内部人工器官は側部ポータル14を通ってインプラント処置され、そして延在していることができる。
【0063】
側部チャンネル16のみを利用することにより、臨床医は様々なガイドワイヤをより容易に操作することができ、様々なガイドワイヤは、主要内部人工器官10と、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cが展開のために位置決めされている間に絡まりにくくなる。さらに、側部ポータル14を拡大して提供することにより、臨床医は、側部ポータル14を通してガイドワイヤをより簡単にカニューレ挿入できるようになることが期待される。このことは手順を行う際の時間、努力及び挫折を減じるものと考えられる。カニューレ挿入の容易さはまた、より単純なスルーアンドスルーデバイスの位置決め及びデリバリーを容易にすると考えられる。
【0064】
複数の側枝デバイス又は側枝内部人工器官を単一のチャンネルを通して配置する際の懸念の1つは、少なくとも最初に、側枝内部人工器官の間に形成される可能性のあるギャップで内部漏れ(エンドリーク)が発生する可能性があることである。この懸念に対処することができる1つの実施形態は、
図8及び9の実施形態に示されている。
図8は、主要内部人工器官10(
図4)に取り付けられ、少なくとも1つの側枝人工器官22(
図4)を受容するように構成された側部ポータルアダプタ24の側面図を示している。
図9は、側部ポータルアダプタ24の端面図を示す。この実施形態において、側部ポータルアダプタ24は、所与の手順において展開される第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを受容するように構成された一連の溝26を含み、そして中央導管28は、側部ポータルアダプタ24の中央に配置される。
【0065】
この実施形態において、主要内部人工器官10が、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cと組み合わせて使用される少なくとも
図6及び
図9を参照すると、側部ポータルアダプタ24の一連の溝26は、第一の側枝内部人工器官22aを受容するための第一の溝26a、第二の側枝内部人工器官22bを受容するための第二の溝26b、及び、第三の側枝内部人工器官22cを受容するための第三の溝26cを含む。側部ポータルアダプタ24は、所与の手順で展開される側枝内部人工器官22の数に対応する所定数の溝26が設けられることができ、本明細書に記載の数に限定されることが意図されない。前述のようなガイドワイヤの絡まりの問題を少なくとも回避するために、一連の溝26のそれぞれは、中央導管28を介して互いに開いており、側部ポータルアダプタ24において展開された側枝内部人工器官又はデバイスがないときに、一連の溝26間の流体連通(したがってガイドワイヤの移動)を可能にする。
【0066】
側部ポータルアダプタ24は、主要内部人工器官10(
図6)の構造に組み込むことができ、又は、側部ポータルアダプタ24は、主要内部人工器官10が構築された後に側部ポータル14(
図6)及び側部チャンネル16(
図7)内に配置できるように、
図8及び9に示されるように別個に形成することができる。側部ポータルアダプタ24は、主要内部人工器官10のグラフト構成要素18(
図2)及びステント構成要素20(
図2)を参照して前述した材料の方法から構築することができる。側部ポータルアダプタ24は、接着剤、ボンド結合、摩擦嵌め又はその他の適切な取り付け方法で主要内部人工器官10に取り付けられることができる。
【0067】
側部ポータルアダプタ24の有無にかかわらず、少なくとも1つの側枝内部人工器官22の周囲をシールする他の方法を使用して、血液漏れを低減又は排除することもできることを理解されたい。この方法は、限定するわけではないが、以下のことを含む:展開時に側枝内部人工器官22a、22b、22c(
図4)を、それぞれの外面23a、23b、23c(
図4)に沿ってぴったりと適合するように互いに補完するように構成させること、少なくとも1つの側枝内部人工器官22の周りに、シーリングカフ、膨張可能又は拡張可能なシール、接着剤、ヒドロゲル、又は他のシーリング機構を提供すること、側部ポータル14、側部チャンネル16及び/又は側部ポータルアダプタ24の中又は周囲に、シーリングカフ、膨張可能又は拡張可能なシール、接着剤、ヒドロゲル、又は他のシーリング機構を提供すること、少なくとも1つの側枝内部人工器官22の展開に続いて、シーリング材料をギャップに導入すること、デバイスの1つ以上の表面を凝固剤又はシール形成を血液に誘発させることができる同様の物質でコーティングすること、又は後に開発される可能性のある他の同様の概念。
【0068】
本明細書に記載のインプラント可能なデバイス、主要内部人工器官10、及び、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cの展開シーケンスの1つの実施形態は、
図10~22に示されおり、その中に記載されそして以下のとおりである。
【0069】
図10は、本明細書に記載の主要内部人工器官(図示せず)及び少なくとも1つの側枝内部人工器官(図示せず)をインプラント処置するためのアクセスを提供する準備中の、患者の大動脈30、右上腕動脈40、左上腕動脈42、腕頭動脈36、右鎖骨下動脈34、左総頸動脈38及び左鎖骨下動脈32の概略図である。
図10はさらに、主要内部人工器具10をデリバリーするために臨床医が複数のアクセス部位47に切開を作成できる場所を示している。複数のアクセス部位47はまた、第一のアクセス部位47a、第二のアクセス部位47b、第三のアクセス部位47c及び第四のアクセス部位47dを含む。複数のアクセス部位47はまた、大腿アクセス部位47a、右上腕アクセス部位47b、頸動脈アクセス部位47c及び左上腕アクセス部位47dとして本明細書に記載されうる。
【0070】
図11は、
図10に示されるような患者の解剖学的構造の概略図であり、そして本明細書に記載の主要内部人工器官10ならびに第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22c(
図6)をインプラント処置するために使用される複数のガイドワイヤ50の配置をさらに示す。
図11に示されるように、複数のガイドワイヤ50は、患者の大動脈30、右上腕動脈40、左上腕動脈42、右鎖骨下動脈34、左総頸動脈38及び左鎖骨下動脈32内にデリバリーされうる。よって、複数のガイドワイヤ50は患者の大動脈30内で展開するように構成された大動脈ガイドワイヤ50aを含む。幾つかの実施形態において、複数のガイドワイヤ50は、1つより多くの大動脈ガイドワイヤ50aを含む。複数のガイドワイヤ50のそれぞれはレールを有することを特徴とし、前記レールはそれぞれのガイドワイヤの外面である。複数のガイドワイヤ50は、カニューレ挿入前で示されているため、この状態の間は「カニューレ挿入前ガイドワイヤ」と呼ぶことができる。
【0071】
図12は、本明細書に記載の主要内部人工器官(図示せず)及び側枝内部人工器官(図示せず)のインプラント処置の準備中の、患者の大動脈30、具体的には大動脈弓52の概略図であり、腕頭動脈36内の第一の塞栓フィルタ54a(
図10)及び左総頸動脈38内の第二の塞栓フィルタ54b(
図10)の配置を示している。様々な実施形態において、2つの塞栓フィルタ54a、54bよりも多くの塞栓フィルタがデリバリーされてもよい。さらに、
図12は、デリバリー手順全体にわたって流体を断続的に洗い流すための第一のシリンジ60a及び第二のシリンジ60bの使用を示している。第一のシリンジ及び第二のシリンジ60a、60bを使用して、矢印Aの方向に様々な流体を取り出すことができる。様々な実施形態において、2つの塞栓フィルタ54a、54bより多くの塞栓フィルタがデリバリーされてもよい。
【0072】
図13は、
図12に示されるような患者の大動脈30、具体的には大動脈弓52の概略図であり、本明細書に記載されるように、展開されていないときの主要内部人工器官10の配置をさらに示している。非展開構成にあるときに、主要内部人工器官10は、大動脈ガイドワイヤ50aの周りに配置されて図示され、第一の直径D1を有する。
【0073】
図14は、
図13に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、主要内部人工器官10の部分的展開をさらに示す。この実施形態に示されるように、部分的に展開された構成において、主要内部人工器官10は、展開されていない状態と比較して拡張しており、ここで、展開されていない構成の主要内部人工器官10の第一の直径D1(
図12)よりも大きい第二の直径D2を含む。
【0074】
図15は、部分的に展開された構成の主要内部人工器官10を含む、
図14に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、腕頭動脈36(
図10)及び左総頸動脈 38(
図10)からの主要内部人工器官10の側部ポータル14への様々な複数のガイドワイヤ50のカニューレ挿入をさらに示している。
【0075】
図16は、
図15に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、本明細書に記載のとおりの側枝内部人工器官(図示せず)の位置決め前に、複数のガイドワイヤ50のそれぞれの適切な位置決めを確実にするための確認工程を示す。
図16に示されるように、主要内部人工器官10は、完全に展開された構成に拡張されている。これは、第三の直径D3を有する主要内部人工器官10によって画定される。幾つかの実施形態において、
図13及び14に示されるように、第三の直径D3は、それぞれ第一の直径及び第二の直径D1、D2よりも大きい。主要内部人工器官10の展開は、主要内部人工器官10のバルーン拡張を含むことができ、それにより、所望の直径まで拡張するか、又は主要内部人工器官10の自己拡張型ステント構成要素20(
図2)が所定の所望の直径まで拡張することを可能にすることを含む。所望の直径は、限定するわけではないが、主要内部人工器官10の外面と大動脈弓52との間の十分なシールの作成、患者の解剖学的構造及び大動脈30の血管への損傷の程度などの幾つかの要因に応じて、様々な実施形態で変化しうる。
【0076】
図17は、
図16に示されるような大動脈30の患者の大動脈弓52の概略図であり、主要内部人工器官10の側部ポータル14内の様々な側枝内部人工器官デリバリーシステム48内の第一、第二及び第三の側枝内部人工器官のそれぞれの配置を示す。第一、第二及び第三の側枝内部人工器官(図示せず)は、大腿アクセス部位47a(
図10)から主要内部人工器官10の側部ポータル14内へと患者の大動脈30内へと進められている。この実施形態において、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官は非展開構成であり、複数のガイドワイヤ50の上に配置され(
図16)、デリバリーシステム48内にある。この例示の実施形態において、側枝内部人工器官デリバリーシステム48は、患者の大腿アクセス部位47aから前進し、主要内部人工器官10内に延在し、そして各側枝血管内に延在するキャップ部分を含むことが示されている。
【0077】
図18は、
図17に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、主要内部人工器官10内で、展開された第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを示している。第一、第二及び第三の分枝内部人工器官22a、22b、22cは、腕頭動脈36(
図11)、左総頸動脈38(
図11)及び左鎖骨下動脈32(
図11)にそれぞれ延在している。
図18の例示的な実施形態において、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cは展開状態で示され、主要内部人工器官10の展開状態と同様であり、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cのそれぞれの直径は、
図17の非展開構成のそれぞれの直径よりも大きい。様々な実施形態において、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cは、所望のサイズに到達するまで、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cをバルーン拡張することを通して非展開状態から展開状態に移行するか、又は、第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cのそれぞれを自己拡張させることを可能にする。所望のサイズは、限定するわけではないが、側枝内部人工器官が動脈内に配置されるそれぞれの動脈のサイズ及び動脈への損傷の程度などの幾つかの要因に基づいて変化しうる。幾つかの実施形態において、腕頭動脈36内の第一の側枝内部人工器官22aが第一番目に展開され、左総頸動脈38内の第二の側枝内部人工器官22bが第二番目に展開され、左鎖骨下動脈32内の第三の側枝内部人工器官22cが第三番目に展開される。
【0078】
図19は、
図18に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、大腿アクセス部位47a(
図10)に向かってガイドワイヤ50のみが残るように側枝内部人工器官デリバリーシステム48(
図18)を除去することを示している。様々な実施形態において、主要内部人工器官10及び少なくとも1つの側枝内部人工器官22のシーリングは、側枝内部人工器官デリバリーシステム48の除去後に試験される。
【0079】
図20は、
図19に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、塞栓フィルタ54a、54bを除去する前にデブリを除去するための塞栓フィルタ54a、54bのそれぞれの吸引を示す。第一のシリンジ及び第二のシリンジ60a、60bは、第一の塞栓フィルタ及び第二の塞栓フィルタ54a、54bのそれぞれの吸引のために使用されうる。様々な実施形態において、臨床医は、第一の塞栓フィルタ及び第二の塞栓フィルタ54a、54bを吸引する任意の適用可能な方法を使用することができる。
【0080】
図21は、
図20に示されるような患者の大動脈弓52の概略図であり、塞栓フィルタ54a、54bの除去を示す。
【0081】
図22は、
図21に示される最終手順工程に続く、患者の複数のアクセス部位47の最終的な閉鎖のための位置を示す概略図である。この実施形態において、主要内部人工器官(図示せず)が展開され、複数のガイドワイヤ50が取り除かれ、そして適切な血管閉鎖が完了された。
【0082】
繰り返しになるが、本明細書に記載され、
図6~22を参照して記載される、大動脈弓52内でのデバイスの展開のための適切なプロセスは、次のものを含むことができる。
1.左鎖骨下動脈に複数のガイドワイヤ50で事前カニューレ挿入し(「事前カニューレ挿入ガイドワイヤ」)、貫通アクセスを達成する。適宜、塞栓フィルタ54a、54bを配置する。
2.大動脈ガイドワイヤ50aで主要大動脈管腔12にカニューレ挿入する。
3.主要内部人工器官10を大動脈ガイドワイヤ50a及び事前カニューレ挿入されたガイドワイヤ50のレール上で進める。
4.主要内部人工器官10を大動脈30内に部分的に展開する。側枝血管のための側部ポータル14は開存したままであり、主要大動脈管腔12を通る血流が確立される。
5.腕頭動脈36及び左総頸動脈38にカニューレ挿入する。
6.主要内部人工器官10を完全に展開する。
7.第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを大腿アクセス部位47aから前進させる。第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを1つずつ展開する。側枝内部人工器官デリバリーシステム48を除去する。複数のガイドワイヤ50は前の工程の間となおも同じ位置にあることを確認する。
8.3つの側枝内部人工器官22a、22b、22cに適宜バルーンを付けて、良好なシールを確保する。
9.シーリングの試験を行う。
10.塞栓フィルタ54a、54bから塞栓を吸引する。そして
11.塞栓フィルタ54a、54b及び複数のガイドワイヤ50を除去し、すべてのアクセス部位47を閉鎖する。
【0083】
本明細書に記載され、
図6~22を参照して記載される、大動脈弓52内でのデバイスの展開のための追加の適切なプロセスは、次のものを含むことができる。
1.側枝血管に複数のガイドワイヤ50で事前カニューレ挿入し(「事前カニューレ挿入ガイドワイヤ」)、貫通アクセスを達成する。適宜、塞栓フィルタ54a、54bを配置する。
2.大動脈ガイドワイヤ50aで主要大動脈管腔12にカニューレ挿入する。
3.主要内部人工器官10を大動脈ガイドワイヤ50a及び事前カニューレ挿入されたガイドワイヤ50のレール上で進める。
4.主要内部人工器官10を大動脈30内に展開する。側枝血管のための側部ポータル14は開存したままであり、主要大動脈管腔12を通る血流が確立される。
5.第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを大腿アクセス部位47aから前進させる。第一、第二及び第三の側枝内部人工器官22a、22b、22cを1つずつ展開する。側枝内部人工器官デリバリーシステム48を除去する。複数のガイドワイヤ50は前の工程の間となおも同じ位置にあることを確認する。
6.3つの側枝内部人工器官22a、22b、22cに適宜バルーンを付けて、良好なシールを確保する。
7.シーリングの試験を行う。
8.塞栓フィルタ54a、54bから塞栓を吸引する。そして
9.塞栓フィルタ54a、54b及び複数のガイドワイヤ50を除去し、すべてのアクセス部位47を閉鎖する。
【0084】
本明細書に記載のデバイスの利点は、複数の側枝内部人工器官22を側部ポート14を通してデリバリーできることであるが、解剖学的構造の変化に対処し及び/又は単一のデバイスで複数の状態を治療するために複数のポータルを有するデバイスを構築することが望ましい用途が存在しうることを理解されたい。したがって、主要内部人工器官10には、本明細書に記載の概念から逸脱することなく、複数の側部ポータルを設けることができ、幾つかは1つ以上の追加の内部人工器官を収容する。
【0085】
本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、記載された管腔内デバイスの利点には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ワイヤラップ又は他のガイドワイヤの絡まりの衝撃を打ち消すこと、分枝血管のより容易なカニューレ挿入、生体内でのデバイスの操作が少なく、手順の時間及び労力が削減され、脳卒中などの医学的合併症を回避できること、単一の側部ポータル及びチャンネルのみが必要なため、製造が容易であること、デバイス及び手順の複雑さが軽減され、簡素化された医師のトレーニングが可能になること、及び、主要内部人工器官の製造に必要な材料が少なく、とりわけ、デリバリー中のプロファイルを低く抑えることができること。
【0086】
本発明の主旨又は範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び変形を加えることができることが当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内にある限り、本発明の変更及び変形を包含することが意図されている。
(態様)
(態様1)
血管内にインプラント処置するように構成された主要内部人工器官であって、前記主要内部人工器官は、少なくとも1つの側部ポータルを含む、主要内部人工器官、
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第一の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第一の側枝内部人工器官、
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第二の側枝血管を通して流れを指向させるように構成された第二の側枝内部人工器官、
を含み、
側枝内部人工器官を含まないときに、前記少なくとも1つの側部ポータルは流体分離のない側部チャンネルを含む、インプラント可能なデバイス。
(態様2)
前記主要内部人工器官内に展開され、そして前記少なくとも1つの側部ポータルを介して第三の分枝血管を通して流れを指向させるように構成された第三の側枝内部人工器官をさらに含む、態様1記載のインプラント可能なデバイス。
(態様3)
前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官は大腿アクセス部位を通して展開される、態様2記載のインプラント可能なデバイス。
(態様4)
前記主要内部人工器官はグラフト及びステント構成要素を含む、態様1~3のいずれか1項記載のインプラント可能なデバイス。
(態様5)
前記グラフトは延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、態様4記載のインプラント可能なデバイス。
(態様6)
前記ステント構成要素はニチノールを含む、態様4又は5記載のインプラント可能なデバイス。
(態様7)
前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官のうちの少なくとも1つは自己拡張型である、態様2記載のインプラント可能なデバイス。
(態様8)
前記第一の側枝内部人工器官、第二の側枝内部人工器官及び第三の側枝内部人工器官のうちの少なくとも1つはバルーン拡張可能である、態様2記載のインプラント可能なデバイス。
(態様9)
前記側部チャンネルは一連の溝を含む、態様1~8のいずれか1項記載のインプラント可能なデバイス。
(態様10)
前記一連の溝は、数において、側部チャンネル内に展開されて前記側枝内部人工器官間のシールを助ける側枝内部人工器官の数に対応する、態様9記載のインプラント可能なデバイス。
(態様11)
前記一連の溝は、側部ポータルアダプタの使用により、前記側部チャンネルに設けられる、態様8又は9記載のインプラント可能なデバイス。
(態様12)
少なくとも1つの血管の主血管にインプラント処置するための主要内部人工器官であって、前記主要内部人工器官は、側部チャンネルと連通する少なくとも1つの側部ポータルを有する、主要内部人工器官、
前記側部ポータル内で前記主要内部人工器官に取り付けるように構成され、そして前記側部チャンネルを通って延在している側部ポータルアダプタであって、前記側部ポータルアダプタは一連の溝を含む、側部ポータルアダプタ、及び、
前記側部ポータルを通って延在している少なくとも1つの側枝内部人工器官であって、前記少なくとも1つの側枝内部人工器官は、前記一連の溝のうちの少なくとも1つの溝によって受容される、側枝内部人工器官、
を含む、少なくとも1つの血管にインプラント処置するためのインプラント可能なデバイス。
(態様13)
前記インプラント可能なデバイスは、前記側部ポータルを通って延在している3つの側枝内部人工器官を含み、各側枝内部人工器官は、前記一連の溝のうちの3つの溝のうちの1つによって受容される、態様12記載のインプラント可能なデバイス。
(態様14)
前記側部ポータルアダプタは、少なくともボンド結合、接着剤及び摩擦嵌めのうちの1つを介して前記主要内部人工器官に取り付けられる、態様12又は13記載のインプラント可能なデバイス。
(態様15)
前記一連の溝は中心導管を通して接続されている、態様12~14のいずれか1項記載のインプラント可能なデバイス。
(態様16)
主要内部人工器官、第一の側枝内部人工器官及び第二の側枝内部人工器官を含むインプラント可能なデバイスであって、前記主要内部人工器官は側部ポータルを含み、前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官は、前記主要内部人工器官及び側部ポータルを通って延在するように構成されたインプラント可能なデバイスを展開する方法であって、
大動脈にアクセスすること、
複数のガイドワイヤを大動脈及び前記大動脈から分岐する少なくとも2つの側枝血管内に延在させること、
大動脈の主要大動脈管腔に複数のガイドワイヤのうちの少なくとも1つをカニューレ挿入すること、
大動脈内で前記少なくとも1つのガイドワイヤ上で前記主要内部人工器官を前進させること、
前記主要内部人工器官を展開すること、
前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を前記少なくとも2つの側枝血管内で前進させること、及び、
前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を展開すること、
を含む、方法。
(態様17)
3つの側枝血管は大動脈から分岐し、前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を前進させることは第三の側枝内部人工器官を前進させることを含む、態様16記載の方法。
(態様18)
前記少なくとも1つのガイドワイヤ上で前記主要内部人工器官を前進させることは前記主要内部人工器官を非展開構成で前進させることを含む、態様16又は17記載の方法。
(態様19)
前記主要内部人工器官は自己拡張型のステント構成要素を含み、そして前記主要内部人工器官を展開することは前記ステント構成要素の自己拡張を含む、態様16~18のいずれか1項記載の方法。
(態様20)
少なくとも前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官の各々は、自己拡張型のステント構成要素を含み、そして前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官を展開することは前記第一の側枝内部人工器官及び前記第二の側枝内部人工器官の自己拡張を含む、態様16~19のいずれか1項記載の方法。