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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】不均一回折格子の加工
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
G02B5/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023093859
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2021179300の分割
【原出願日】2017-10-03
(65)【公開番号】P2023105151
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】62/404,555
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514108838
【氏名又は名称】マジック リープ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Magic Leap,Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 W SUNRISE BLVD,PLANTATION,FL 33322 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マウロ メッリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ぺロス
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/184413(WO,A1)
【文献】特開2014-072500(JP,A)
【文献】特開平05-193996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスを作製する方法であって、前記デバイスは、基板上に1つ以上の層を有する回折光学要素(DOE)を備え各層は、入射光を伝搬しつつ入射光方向に直交する方向に光を偏向するように構成されている第1の回折要素と、入射光を伝搬しつつ観察者側に光を出射する第2の回折要素とを含み、
前記第1の回折要素は、第1の不均一格子を備え、前記第1の不均一格子は、前記基板内で伝搬する前記入射光の一部を前記基板内の前記第2の回折要素の中に偏向するように構成されており、
前記第2の回折要素は、第2の不均一格子を備え、前記第2の不均一格子は、前記第1の回折要素からの前記偏向された光の一部を前記基板から外に偏向するように構成されており、
前記第1の不均一格子は、第1の方向に沿った不均一回折効率を有し、前記第2の不均一格子は、第2の方向に沿った不均一回折効率を有し、
前記第1の不均一格子は、前記第1の方向に沿って増加する深度を有し、前記第1の不均一格子は隣接する深度の間注入されたイオンのイオン密度を有し、前記イオン密度は、前記第1の方向に沿って減少し、
前記方法は、前記第1の不均一格子を作製することを含み、
前記第1の不均一格子を作製することは、
前記イオン密度が前記基板内で前記第1の方向に沿って減少するようにイオンを前記基板内に注入するためにイオン源と基板との間にシャッタを設置することであって、前記シャッタは、複数の部分を含み、前記複数の部分は、複数の異なるイオン透過率を有する複数の膜を含む、ことと、
パターン化された保護層を介して前記基板をエッチングすることであって、前記基板内の前記イオン密度は、前記第1の方向に沿って減少する、ことと
によって行われる、方法
【請求項2】
前記第1の不均一格子は、前記第1の方向に沿って増加する回折効率を有し、前記第2の不均一格子は、前記第2の方向に沿って増加する回折効率を有する、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記第1の方向と前記第2の方向との間の角度は、45度~90度である、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記第1の不均一格子は、前記第1の方向とは異なる第3の方向に沿って変動する第3の特性を有し、前記第1の方向と前記第3の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ、180度未満である、請求項2に記載の方法
【請求項5】
前記第2の不均一格子は、前記第2の方向とは異なる第4の方向に沿って変動する第4の特性を有し、前記第2の方向と前記第4の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ、180度未満である、請求項2に記載の方法
【請求項6】
前記デバイスは、前記基板内に統合されている素子をさらに備え、前記素子は、前記基板の外側から前記入射光を受け取ることと、前記入射光を前記基板内の前記DOEに伝送することとを行うように構成されている、請求項1に記載の方法
【請求項7】
前記第1の不均一格子の前記深度は、前記第1の方向に沿って第1の線形に変動する深度であり、前記第2の不均一格子は、前記第2の方向に沿って第2の線形に変動する深度を有する、請求項2に記載の方法
【請求項8】
前記第1の不均一格子または前記第2の不均一格子のうちの少なくとも1つは、不均一深度を伴うバイナリ格子を備える、請求項1に記載の方法
【請求項9】
前記第1の不均一格子または前記第2の不均一格子のうちの少なくとも1つは、不均一深度を伴うブレーズド格子を備える、請求項1に記載の方法
【請求項10】
前記第1の不均一格子または前記第2の不均一格子のうちの少なくとも1つは、線形の
回折構造、円形の回折構造、または、半径方向に対称的な回折構造のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法
【請求項11】
前記第1の不均一格子または前記第2の不均一格子のうちの少なくとも1つは、5000nm以下の方位分解能を有する、請求項1に記載の方法
【請求項12】
前記第1の不均一格子または前記第2の不均一格子のうちの少なくとも1つは、少なくとも1mmのサイズを有する、請求項1に記載の方法
【請求項13】
前記第1の回折要素および前記第2の回折要素は、前記層上の同一平面に、または、前記層上に並んで配列されている、請求項1に記載の方法
【請求項14】
前記DOEは、前記第1の不均一格子または前記第2の不均一格子のうちの少なくとも1つに沿って少なくとも1つのディザリング特徴を備える、請求項1に記載の方法
【請求項15】
前記DOEは、前記入射光を実質的に均一な分布で前記DOEの領域を横断して外に偏向するように構成されている、請求項1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年10月5日に出願された米国仮出願第62/404,555号の出願日の利益を主張するものである。米国出願第62/404,555号の内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、概して、マイクロ/ナノ構造加工に関し、特に、回折格子の加工に関する。
【背景技術】
【0003】
回折格子は、異なる方向に進行するいくつかのビームに光を分割および回折させることができる、周期的構造を伴う光学構成要素である。これらのビームの方向は、格子の間隔、光の波長、そして格子および基板の両方の屈折率に依存する。いくつかの実施例では、回折格子は、光の波長より幅広い間隔を伴うスロットのセットから構成され、回折を引き起こす。光が格子と相互作用した後、回折された光は、格子内の各スロットから発出する干渉波の総和から成る。スロットの深度は、各スロットまでの波の経路長に影響を及ぼし、故に、スロットのそれぞれからの波の位相、したがって、スロットの回折効率に影響を及ぼす。スロットが均一な深度を有する場合、格子内のスロットは、均一な回折効率を有し得る。スロットが不均一深度を有する場合、格子内のスロットは、不均一回折効率を有し得る。
【0004】
回折格子は、フォトマスク、電子ビームリソグラフィ、エッチング技法、およびホログラフィ干渉を含む、種々の方法を使用して加工されている。しかしながら、上記に言及された方法によって加工される回折格子は、通常、均一回折効率を伴う均一格子である。不均一回折効率を伴う、特に、高い分解能および大きい面積を伴う回折格子を加工するために開発された方法は少数しかない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの側面は、不均一構造を加工する方法を特徴とする。本方法は、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップと、基板上にレジスト層をパターン化するステップと、次いで、パターン化されたレジスト層を用いて基板をエッチングし、面積内に注入された異なる密度のイオンと関連付けられる不均一特性を有する、少なくとも1つの不均一構造を伴って基板を残すステップとを含む。
【0006】
本方法は、基板からレジスト層を除去するステップを含み得る。本方法はさらに、不均一構造を有する基板を型として使用して、ナノインプリントリソグラフィによって、対応する不均一構造を加工するステップを含み得る。基板をエッチングするステップは、反応性イオンエッチングを使用するステップを含み得る。
【0007】
不均一構造は、不均一格子を含み得る。いくつかの実施例では、格子は、異なる密度のイオンに対応する不均一深度を伴う、バイナリ格子を含む。いくつかの実施例では、格子は、異なる密度のイオンに対応する不均一深度を伴う、ブレーズド格子を含む。
【0008】
いくつかの実装では、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、第1の方向に沿って、第1の密度のイオンを少なくとも1つの標的面積の中に注入するステップと、第2の異なる方向に沿って、第2の密度のイオンを標的面積の中に注入するステップであって、第1の方向と第2の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ
180度未満である、ステップとを含む。
【0009】
いくつかの実装では、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、ある方向に沿ってイオン源と基板との間のシャッタを移動させるステップであって、異なる密度のイオンを有する注入された面積は、その方向に沿う、ステップを含む。シャッタは、異なる密度に対応するイオン暴露プロファイルに従って移動され得る。いくつかの実施例では、シャッタは、イオンが通過することを阻止するように構成される、中実パネルである。
【0010】
いくつかの実施例では、シャッタは、イオンがイオン源から基板に伝搬することを可能にする、複数の貫通孔を画定する。ある場合には、シャッタを移動させるステップは、第1の速度で、第1のスポットを横断して、基板内の第1の標的面積の上でシャッタを移動させ、イオンが貫通孔を通して第1の標的の上に通過することを可能にする、ステップと、第2の速度で、第1のスポットから第2の順次スポットにシャッタを移動させるステップであって、第2の順次スポットは、基板内の第2の標的面積の上にあり、第2の速度は、第1の速度より速い、ステップと、第1の速度で、第2の順次スポットを横断してシャッタを移動させ、イオンが貫通孔を通して第2の標的面積の上に通過することを可能にするステップとを含む。ある場合には、シャッタを移動させるステップは、基板内の第1の標的面積の上の第1のスポットにシャッタを移動させるステップと、第1のスポットにおいてある期間にわたってシャッタを停止させ、ある量のイオンが貫通孔を通して第1の標的面積の上に通過することを可能にするステップと、次いで、基板内の第2の標的面積の上の第2の順次スポットにシャッタを移動させるステップとを含む。
【0011】
いくつかの実装では、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、イオン源と基板との間にシャッタを設置するステップであって、シャッタは、異なるイオン透過率を伴う複数の部分を備える、ステップを含む。複数の部分は、異なるイオン透過率に対応する異なる厚さを伴う複数の膜を含み得る。
【0012】
いくつかの実装では、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、集束イオンビームを使用して、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に局所的に注入するステップを含む。
【0013】
レジスト層は、フォトレジストを含み得、基板上にレジスト層をパターン化するステップは、面積を含む基板上にフォトレジスト層を堆積させるステップと、フォトリソグラフィを使用して、パターン化された光を用いてフォトレジスト層を暴露するステップと、堆積されたフォトレジスト層の暴露されたフォトレジスト層および暴露されていないフォトレジストのうちの一方をエッチングし、基板上にパターン化されたレジスト層を現像させるステップとを含み得る。
【0014】
イオン注入を伴わない面積は、第1のエッチング感度を有し得、イオン注入を伴う面積は、第2のエッチング感度を有し得、第1のエッチング感度と第2のエッチング感度との間の比率は、2を上回り得る。基板は、シリコン基板であり得、イオンは、ガリウムイオンを含み得る。不均一構造は、5,000nm以下の方位分解能を有し得る。不均一構造は、少なくとも1mmの全体的サイズを有し得る。
【0015】
いくつかの実装では、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、第1の方向に沿って、第1の異なる密度のイオンを基板の第1の面積の中に注入するステップと、第2の方向に沿って、第2の異なる密度のイオンを基板の第2の面積の中に注入するステップであって、第2の面積は、基板内の第1の面積に隣接する、ステップとを含む。本方法はさらに、基板からレジスト層を除去し、第1の面積内の第1の格子で
あって、第1の方向に沿って増加する回折効率を有する、第1の格子と、第2の面積内の第2の格子であって、第2の方向に沿って増加する回折効率を有する、第2の格子とを伴って、基板を残すステップを含み得る。ある場合には、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、第1の方向と異なる第3の方向に沿って、第3の異なる密度のイオンを第1の面積の中に注入するステップを含み、第1の方向と第3の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満であり、イオンの第3の異なる密度は、イオンの第1の異なる密度より小さい。ある場合には、異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入するステップは、第2の方向と異なる第4の方向に沿って、第4の異なる密度のイオンを第2の面積の中に注入するステップを含み、第2の方向と第4の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満であり、イオンの第4の異なる密度は、イオンの第2の異なる密度より小さい。
【0016】
本開示の別の側面は、基板上に1つ以上の層を有する、回折光学要素(DOE)であって、各層は、直交瞳拡大(OPE)回折要素と、射出瞳拡大(EPE)回折要素とを含む、回折光学要素(DOE)を含み、OPE回折要素は、基板内で伝搬する入力光ビームの一部を基板内のEPE回折要素の中に偏向させるように構成される、第1の不均一格子を備え、EPE回折要素は、OPE回折要素からの偏向された光ビームの一部を基板から外に偏向させるように構成される、第2の不均一格子を備える、デバイスを特徴とする。本デバイスは、基板内に統合され、基板の外側から入力光ビームを受光し、基板内のDOEに入力光ビームを伝送するように構成される、内部結合素子(ICO)を含み得る。
【0017】
第1の不均一格子は、第1の方向に沿って変動する、第1の特性を有し得、第2の不均一格子は、第1の方向に対する第2の方向に沿って変動する、第2の特性を有し得、第1の不均一格子は、第1の方向に沿って、増加する回折効率を有し得、第2の不均一格子は、第2の方向に沿って、増加する回折効率を有し得る。いくつかの実施例では、第1の方向と第2の方向との間の角度は、45度~90度である。
【0018】
いくつかの実装では、第1の不均一格子は、第1の方向と異なる第3の方向に沿って変動する、第3の特性を有し、第1の方向と第3の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満である。いくつかの実装では、第2の不均一格子は、第2の方向と異なる第4の方向に沿って変動する、第4の特性を有し、第2の方向と第4の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満である。
【0019】
1つ以上の開示される実装の詳細が、付随する図面および下記の説明に記載される。他の特徴、側面および利点も、説明、図面、および請求項から明白となるであろう。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
不均一構造を加工する方法であって、前記方法は、
異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入することと、
前記基板上にレジスト層をパターン化することと、
次いで、前記基板を前記パターン化されたレジスト層を用いてエッチングし、前記面積内に注入された前記異なる密度のイオンと関連付けられる不均一特性を有する少なくとも1つの不均一構造を伴って前記基板を残すことと
を含む、方法。
(項目2)
前記基板から前記レジスト層を除去することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記不均一構造を有する前記基板を型として使用して、ナノインプリントリソグラフィによって、対応する不均一構造を加工することをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記不均一構造は、不均一格子を備える、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記格子は、前記異なる密度のイオンに対応する不均一深度を伴うバイナリ格子を備える、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記格子は、前記異なる密度のイオンに対応する不均一深度を伴うブレーズド格子を備える、項目4に記載の方法。
(項目7)
異なる密度のイオンを基板の対応する面積の中に注入することは、
第1の方向に沿って、第1の密度のイオンを少なくとも1つの標的面積の中に注入することと、
第2の異なる方向に沿って、第2の密度のイオンを前記標的面積の中に注入することであって、前記第1の方向と第2の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満である、ことと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に注入することは、
ある方向に沿ってイオン源と前記基板との間のシャッタを移動させることであって、前記異なる密度のイオンを有する前記注入された面積は、前記ある方向に沿う、こと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記シャッタは、前記異なる密度に対応するイオン暴露プロファイルに従って移動される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記シャッタは、イオンが通過することを阻止するように構成される中実パネルである、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記シャッタは、イオンが前記イオン源から前記基板に伝搬することを可能にする複数の貫通孔を画定する、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記シャッタを移動させることは、
第1の速度で、第1のスポットを横断して、前記基板内の第1の標的面積の上で前記シャッタを移動させ、イオンが前記貫通孔を通して前記第1の標的面積の上に通過することを可能にする、ことと、
第2の速度で、前記第1のスポットから第2の順次スポットに前記シャッタを移動させることであって、前記第2の順次スポットは、前記基板内の第2の標的面積の上にあり、前記第2の速度は、前記第1の速度より速い、ことと、
前記第1の速度で、前記第2の順次スポットを横断して前記シャッタを移動させ、イオンが前記貫通孔を通して前記第2の標的面積の上に通過することを可能にすることと
を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記シャッタを移動させることは、
前記基板内の第1の標的面積の上の第1のスポットに前記シャッタを移動させることと、
前記第1のスポットにおいてある期間にわたって前記シャッタを停止させ、ある量のイオンが前記貫通孔を通して前記第1の標的面積の上に通過することを可能にすることと、
次いで、前記基板内の第2の標的面積の上の第2の順次スポットに前記シャッタを移動させることと
を含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に注入することは、
イオン源と前記基板との間にシャッタを設置することであって、前記シャッタは、異なるイオン透過率を伴う複数の部分を備える、こと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記複数の部分は、前記異なるイオン透過率に対応する異なる厚さを伴う複数の膜を備える、項目14に記載の方法。
(項目16)
異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に注入することは、
集束イオンビームを使用して、前記異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に局所的に注入すること
を含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記レジスト層は、フォトレジストを備え、前記基板上に前記レジスト層をパターン化することは、
前記面積を含む前記基板上にフォトレジスト層を堆積させることと、
フォトリソグラフィを使用して、パターン化された光を用いて前記フォトレジスト層を暴露することと、
前記堆積されたフォトレジスト層の前記暴露されたフォトレジスト層および暴露されていないフォトレジストのうちの一方をエッチングし、前記基板上に前記パターン化されたレジスト層を現像させることと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記基板をエッチングすることは、反応性イオンエッチングを使用することを含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
イオン注入を伴わない面積は、第1のエッチング感度を有し、イオン注入を伴う面積は、第2のエッチング感度を有し、前記第1のエッチング感度と前記第2のエッチング感度との間の比率は、2を上回る、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記基板は、シリコン基板であり、前記イオンは、ガリウムイオンを含む、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記不均一構造は、5,000nm以下の方位分解能を有する、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記不均一構造は、少なくとも1mmの全体的サイズを有する、項目1に記載の方法。
(項目23)
異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に注入することは、
第1の方向に沿って、第1の異なる密度のイオンを前記基板の第1の面積の中に注入することと、
第2の方向に沿って、第2の異なる密度のイオンを前記基板の第2の面積の中に注入することであって、前記第2の面積は、前記基板内の前記第1の面積に隣接する、ことと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記基板から前記レジスト層を除去し、
前記第1の面積内の第1の格子であって、前記第1の格子は、前記第1の方向に沿って増加する回折効率を有する、第1の格子と、
前記第2の面積内の第2の格子であって、前記第2の格子は、前記第2の方向に沿って増加する回折効率を有する、第2の格子と
を伴って、前記基板を残すことをさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に注入することは、
前記第1の方向と異なる第3の方向に沿って、第3の異なる密度のイオンを前記第1の面積の中に注入することであって、前記第1の方向と前記第3の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満であり、前記イオンの第3の異なる密度は、前記イオンの第1の異なる密度より小さい、こと
を含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
異なる密度のイオンを前記基板の対応する面積の中に注入することは、
前記第2の方向と異なる第4の方向に沿って、第4の異なる密度のイオンを前記第2の面積の中に注入することであって、前記第2の方向と前記第4の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満であり、前記イオンの第4の異なる密度は、前記イオンの第2の異なる密度より小さい、こと
を含む、項目23に記載の方法。
(項目27)
デバイスであって、
基板上に1つ以上の層を有する回折光学要素(DOE)であって、各層は、直交瞳拡大(OPE)回折要素と、射出瞳拡大(EPE)回折要素とを含む、回折光学要素(DOE)
を備え、
前記OPE回折要素は、前記基板内で伝搬する入力光ビームの一部を前記基板内の前記EPE回折要素の中に偏向させるように構成される第1の不均一格子を備え、
前記EPE回折要素は、前記OPE回折要素からの前記偏向された光ビームの一部を前記基板から外に偏向させるように構成される第2の不均一格子を備える、デバイス。
(項目28)
前記第1の不均一格子は、第1の方向に沿って変動する第1の特性を有し、前記第2の不均一格子は、前記第1の方向に対する第2の方向に沿って変動する第2の特性を有し、
前記第1の不均一格子は、前記第1の方向に沿って増加する回折効率を有し、前記第2の不均一格子は、前記第2の方向に沿って増加する回折効率を有する、項目27に記載のデバイス。
(項目29)
前記第1の方向と前記第2の方向との間の角度は、45度~90度である、項目28に記載のデバイス。
(項目30)
前記第1の不均一格子は、前記第1の方向と異なる第3の方向に沿って変動する第3の特性を有し、前記第1の方向と前記第3の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満である、項目28に記載のデバイス。
(項目31)
前記第2の不均一格子は、前記第2の方向と異なる第4の方向に沿って変動する第4の特性を有し、前記第2の方向と前記第4の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満である、項目28に記載のデバイス。
(項目32)
前記基板内に統合され、前記基板の外側から前記入力光ビームを受光し、前記基板内のDOEに前記入力光ビームを伝送するように構成される、内部結合素子(ICO)をさらに備える、項目27に記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、基板内の不均一回折格子を加工する例示的プロセスのフロー図である。
図2図2は、図1の加工プロセスの異なるステップの後の、基板の例示的断面図を示す。
図3A図3Aは、中実パネルを伴う可動シャッタを使用して、種々の密度のイオンを基板の中に注入する第1の例示的方法の概略図である。
図3B図3Bは、貫通孔を伴う可動シャッタを使用して、種々の密度のイオンを基板の中に注入する第2の例示的方法の概略図である。
図3C図3Cは、種々の透過率を伴う部分を有するシャッタを使用して、種々の密度のイオンを基板の中に注入する第3の例示的方法の概略図である。
図3D図3Dは、集束イオンビーム(FIB)を使用して、種々の密度のイオンを基板の中に注入する第4の例示的方法の概略図である。
図4A図4Aは、シリコン基板の中への小面積不均一イオン注入およびエッチングの実験結果を示す。
図4B図4Bは、シリコン基板の中への大面積不均一イオン注入およびエッチングの実験結果を示す。
図5図5は、例示的実施形態による、イオン注入およびリソグラフィを用いて加工される、不均一回折格子の実験結果を示す。
図6図6は、不均一回折格子を使用する、例示的光学システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、マイクロ/ナノ構造加工のための、特に、不均一マイクロ/ナノ構造、例えば、回折格子を加工するための方法、装置、およびシステム、および、例えば、光学システムにおける不均一マイクロ/ナノ構造の用途を説明する。本技術は、基板の対応する面積の中への空間的に異なる密度のイオンの注入を採用する。イオン注入は、イオン注入面積および非注入(すなわち、非ドープ)面積のエッチング感度が異なるように、基板のエッチング感度を変化させることができる。次いで、基板上に選択的に保護レジスト層をパターン化するための、パターン化技術、例えば、リソグラフィまたはナノインプリントと組み合わせることによって、本技術は、基板がイオン注入面積および非注入面積内で異なるエッチング深度/高さを有するようにし、したがって、不均一マイクロ/ナノ構造を得ることができる。結果として、基板内のイオン密度または濃度における勾配または変調が、変調された高さ/深度プロファイルを伴う構造(例えば、格子)をもたらす。(任意のタイプのフォトリソグラフィまたは電子ビームリソグラフィを含む)任意のリソグラフィ技術または任意のタイプのレジストパターン化技法が、ここで使用され得る。さらに、不均一構造を伴う基板は、例えば、ナノインプリントリソグラフィにおいて、可変高さ/深度パターンを伴う対応する不均一構造を大量生産するために、型として使用されることができる。イオン注入は、空間的に、例えば、1次元、2次元、または3次元において制御されることができる。また、空間的に制御されるイオン注入をレジストパターン化(例えば、リソグラフィ)およびエッチングと組み合わせて、本技術は、標準的なリソグラフィまたはイオン注入技術より高い、マイクロ/ナノ構造の設計および加工における柔軟性を可能にする。本技術は、例えば、サイズが1mmを上回る大きい面積を伴う基板に、および/または高速度で適用され、例えば、5nm~1,000nmの大きい深度範囲を伴って、例えば、約5~10nmの高い深度分解能を達成することができる。
【0022】
本技術は、任意の好適な材料、例えば、シリコン、ガラス、またはポリマー、および任意の好適なイオン種、例えば、ガリウムイオンまたはアルゴンを用いた、任意の好適なマイクロ/ナノ構造、例えば、格子の加工に適用されることができる。例証の目的のためにのみ、以下の説明は、主に、ガリウムイオン注入を用いた、シリコン基板における不均一回折格子の加工を対象とする。
【0023】
図1は、基板内の不均一回折格子を加工する例示的プロセス100のフロー図であり、図2は、加工プロセス100の異なる処理ステップの後の、基板の例示的断面図200を示す。
【0024】
基板は、随意に、イオン注入のために調製されることができる(101)。基板は、例えば、基板の表面を洗浄することによって事前処理されることができる。ある場合には、湿式化学処理、例えば、溶液に基づくRCA洗浄手順が、基板上に存在する任意の有機または無機汚染物質を除去するために使用されることができる。溶液は、過酸化水素、トリクロロエチレン、アセトン、またはメタノールを含み得る。
【0025】
基板は、種々の密度のイオンを注入される(102)。上記のように、基板は、シリコン基板、例えば、シリコンウエハであり得る。シリコンウエハのサイズは、2インチ、4インチ、6インチ、または任意の他の所望されるサイズであり得る。イオンは、ガリウムイオンであり得る。
【0026】
図3A-3Dでさらに詳細に議論されるように、イオン注入は、空間的に制御され、基板内のイオン密度を局所的に変調させることができる。例えば、線形または正弦曲線である、基板内のイオン密度の任意の好適なプロファイルが、達成され得る。プロファイルは、(例えば、線形格子に関して)1次元、(例えば、円形格子または任意の2次元ナノ構造に関して)2次元、または(例えば、角錐形状を伴うナノ構造に関して)3次元であり得る。図2内の(I)は、イオン注入の後のイオン密度204の線形プロファイルを伴う基板202を示し、基板202の中に注入されたイオン204は、基板202の表面から基板202のある方向、例えば、縦方向に沿って線形に増加する密度(または深度)を有する。イオン注入のプロファイルは、基板内の所望されるイオン密度のプロファイルに基づいて事前決定されることができる。事前決定されたイオン注入のプロファイルに基づいて、シャッタが、イオン源への基板の異なる面積の暴露時間を変動させ、基板内に所望されるイオン密度のプロファイルを達成するための速度で、例えば、1次元、2次元、または3次元で移動されることができる。
【0027】
注入されたイオンは、基板のエッチング感度を変化させ得、これは、いくつかの機構に起因する、エッチングにおけるエッチング遅延挙動(すなわち、マスキング効果)を引き起こし得る。第1のものは、不純物原子による、注入された面積の物理的修飾であり、これは、格子定数を変化させ、関連付けられる歪み効果を引き起こし、最終的には、エッチングを減速させる。第2のものは、エッチング化学物質とのイオン注入面積および非注入面積の異なる化学反応である。したがって、エッチング化学物質もまた、イオン注入基板のエッチング感度に影響を及ぼし得る。特定の実施例では、非注入シリコンおよびガリウムイオン注入シリコンのエッチング感度の比率(すなわち、エッチング速度比率)は、1:1を上回る、例えば、2:1、3:1、5:1、10:1、100:1、または1,000:1である。
【0028】
ある場合には、イオン注入のための最大暴露量が、存在し得、それを下回ると、最終構造高さまたは深度は、イオン注入の暴露量に関して略線形の依存性を示す。最大暴露量を超えると、イオンのスパッタリングは、非常に広範になり、マスキング効果を過度に強調し得る。すなわち、エッチング速度比率は、イオン量のさらなる増加とともに減少し得る。特定の実施例では、シリコンに関するガリウムイオンの最大暴露量は、約1.5×1016個/cmである。
【0029】
レジスト層が、基板上にパターン化される(104)。レジスト層は、リソグラフィまたはナノインプリントを含む、任意の好適なパターン化技法によってパターン化されることができる。いくつかの実装では、レジスト層は、フォトレジスト層であり、使用されるリソグラフィは、フォトリソグラフィである。レジスト層は、ポジ型フォトレジスト層またはネガ型フォトレジスト層であり得る。レジスト層は、レジスト層の下の基板をエッチングから保護するための保護レジスト層であり得る。
【0030】
いくつかの実施例では、基板上にレジスト層をパターン化するステップは、イオン注入面積を含む基板上にフォトレジスト層を堆積させるステップと、フォトリソグラフィを使用して、パターン化された光を用いてフォトレジスト層を暴露するステップと、堆積されたフォトレジスト層の(例えば、ポジ型フォトレジスト層に関して)暴露されたフォトレジスト層または(例えば、ネガ型フォトレジスト層に関して)暴露されていないフォトレジスト層をエッチングし、基板上にパターン化されたレジスト層を現像させるステップとを含む。図2の(II)は、パターン化された保護レジスト層206を伴う基板を示す。
【0031】
レジストパターン化およびエッチングによって、パターン化されたレジスト層のパターンプロファイルは、基板の中に転写され得る。いくつかの実施例では、パターン化された保護レジスト層のプロファイルは、所望される格子のプロファイルおよび基板内の種々のイオン密度のプロファイルに基づいて、事前決定または事前設計されることができる。格子の方位分解能は、パターン化された保護レジスト層の分解能、したがって、リソグラフィ技術の分解能によって決定され得る。格子は、5,000nm以下、特に、1,000nm、500nm、200nm、または100nm未満の方位分解能を有し得る。
【0032】
パターン化されたレジスト層を伴う基板が、エッチングされる(106)。上記のように、イオン注入は、基板のエッチング感度を変化させ、エッチング化学物質もまた、基板のエッチング感度に影響を及ぼし得る。基板は、乾式エッチング、湿式エッチング、または任意の好適なエッチング方法によってエッチングされることができる。いくつかの実施例では、基板は、反応性イオンエッチング(RIE)、例えば、室温におけるRIEまたは極低温RIEによってエッチングされる。例えば、ガリウムイオン注入を伴うシリコン基板は、酸素(例えば、SF/Oプラズマ)を含有するRIEによって、またはフッ素系化学物質(例えば、CF)を伴うRIEを通して酸素を伴わずにエッチングされることができる。
【0033】
基板のエッチング感度は、基板の対応する面積の中に注入される種々の(または異なる)密度のイオンとともに変動する。同一のエッチング時間を用いると、種々の(または異なる)密度のイオンを伴う面積は、エッチングされ、種々の(または異なる)密度のイオンに対応する、種々の(または異なる)深度を有し得る。例えば、より高い密度のイオンを伴う面積は、より低い密度のイオンを伴う面積より小さいエッチング深度を有する。非注入面積は、最高エッチング深度を有する。図2の(III)は、基板内に注入された増加する密度のイオンに対応して、左から右に減少するエッチング深度208を伴う基板を示す。種々のエッチング深度を伴う基板は、基板上のパターン化された保護レジスト層に対応するパターンを有する。
【0034】
ある場合には、約5~10nmのエッチング深度分解能が、達成され得る。エッチング深度は、例えば、5nm~200nmの広い範囲内であり得る。イオン注入の間のイオンの側方拡散は、加工された格子の特徴サイズ、例えば、格子周期の方位分解能を限定し得る。側方拡散は、加速電圧に依存する。いくつかの実施例では、拡散半径は、30KeVの加速電圧に関して12nmであり、100KeVの加速電圧に関して45nmである。
【0035】
レジスト層は、少なくとも1つの不均一格子を得るように基板から除去される(108)。保護レジスト層が、もはや必要とされなくなった後、基板から除去されることができる。ある場合には、レジスト層は、レジストがもはや基板に粘着しないように、レジストを化学的に改変する、液体レジスト剥離剤によって除去される。ある場合には、レジスト層は、酸素を含有するプラズマによって除去される。
【0036】
不均一格子は、面積内の種々の密度のイオンと関連付けられるプロファイルを有し得る
。実施例として、図2の(IV)は、格子の方向に沿った、線形に変動する深度208を有する回折格子を示す。深度は、その方向に沿った種々の密度のイオンに対応し、格子は、その方向に沿った種々の回折効率を有し得る。いくつかの実施例では、不均一格子は、図2の(IV)によって図示されるように、種々の密度のイオンに対応する不均一深度を伴う、バイナリ格子である。
【0037】
いくつかの実施例では、不均一格子は、種々の密度のイオンに対応する不均一深度を伴う、ブレーズド格子である。例えば、イオン暴露量における鋸歯状プロファイルは、エッチングの後、ブレーズドプロファイルをもたらし得る。構造は、以下の概念でパターン化され得る。すなわち、上部ブレーズ部分が、最大量を受容し、ブレーズ角の変調が、各周期内の量勾配の傾きを変動させることによって実施される。
【0038】
随意に、不均一格子を有する基板は、例えば、熱可塑性ナノインプリントリソグラフィ、フォトナノインプリントリソグラフィ、またはレジストフリー直接感熱ナノインプリントリソグラフィを含む、ナノインプリントリソグラフィによって、対応する格子を加工するための型として使用されることができる(110)。このステップは、新しい基板上に対応する格子を大量生産することができる。新しい基板は、シリコン、ガラス、またはポリマーを含み得る。
【0039】
上記の説明は、不均一回折格子を加工する、例示的プロセスである。本プロセスは、基板内に異なるエッチング感度を達成し、したがって、不均一回折格子を得るために、種々の密度のイオン注入を使用する。開示されるプロセスは、基板内に任意の不均一マイクロ/ナノ構造を加工するために適合されることができる。例えば、いくつかの実装では、図1のステップ106において、基板は、面積内に注入される異なる密度のイオンと関連付けられる不均一特性を有する、少なくとも1つの不均一構造を有するように、エッチングされる。残りのレジスト層は、例えば、基板内の形成された不均一構造のための保護層または他の機能性を有する層として、基板上に保たれることができる。いくつかの実施例では、レジスト層は、化学蒸着(CVD)、例えば、金属有機化学蒸着(MOCVD)によって、基板上に略均一に堆積される。いくつかの実施例では、付加的な層が、基板およびレジスト層上にさらに堆積されてもよい。
【0040】
図3A-3Dは、図1のプロセス100のステップ102において実施され得る、基板の中に種々の密度のイオンを注入する異なる例示的方法を示す。
【0041】
図3Aを参照すると、第1の例示的方法300は、中実パネル304を伴う可動シャッタを使用し、イオン源302と基板306との間を移動させ、基板306の異なる部分に関する暴露量を変更させる。シャッタ304は、イオンが通過することを完全に阻止するように構成される。例えば、シャッタ304は、中実パネル、例えば、鋼鉄から作製されることができる。シャッタ304は、移動するように制御または動力化される。
【0042】
図3Aの図(I)、(II)、および(III)は、異なる時間帯における、イオン源302、可動シャッタ304、および基板306を図式的に示す。図3Aの図(I)は、イオン注入前に、可動シャッタ304が、イオン源302と基板306との間に位置付けられ、イオンがイオン源302から基板306まで伝搬することを完全に阻止することを示す。次いで、図3Aの図(II)に示されるように、可動シャッタ304が、例えば、右から左等の方向に沿って移動されると、基板306は、イオン源302からイオン照射を受光し始める。基板306の右部分は、基板の左部分より長い暴露量を被り、したがって、基板の右部分は、基板内に注入される、より高い密度のイオンを有する。基板306は、したがって、その方向に沿って種々の密度のイオンを有する。シャッタ304は、プロファイル、例えば、基板内の所望されるイオン密度のプロファイルに基づく事前決定さ
れたプロファイルに基づいて、移動されることができる。図3aの図(III)は、可動シャッタ304が、イオン源302と基板306との間の空間から外に移動されると、基板306が、その方向に沿って種々の密度のイオン、例えば、増加するイオン暴露量とともに、左から右に増加するイオン密度を有することを示す。ある場合には、基板306は、所望されるイオン密度のプロファイルが基板を横断して達成されるまで、その間でシャッタ304を移動させることなく、イオン源302にさらに暴露される。
【0043】
図3Bは、貫通孔354を伴う可動シャッタ352を使用して、種々の密度のイオンを基板の中に注入する第2の例示的方法350の概略図である。貫通孔354は、イオン源(ここでは図示せず)からのイオンが、通過し、基板356上に衝打することを可能にする。可動シャッタ352の他の部分は、イオンが通過することを阻止するために鋼鉄等の中実材料から作製されることができる。可動シャッタ352内の貫通孔354の性質、例えば、幅および/または周期は、構造、例えば、格子の所望されるプロファイルに基づいて決定されることができる。
【0044】
図3Bの図(I)、(II)、および(III)は、異なる時間帯における、可動シャッタ352および基板356を図式的に示す。これは、可動シャッタ352が、右から左への方向に沿って移動すると、より高い量で暴露される面積が、より高いイオン密度を有することを示す。いくつかの実装では、シャッタ352は、絶えずその方向に沿って移動する。シャッタ352が、イオン注入されるべき第1の標的面積に対応する第1のスポットを横断して移動すると、シャッタ352は、ある量のイオンが貫通孔354を通して第1の標的面積まで通過し得るように、より遅い速度で移動することができる。シャッタが、第1のスポットからイオン注入されるべき第2の標的面積に対応する第2の順次スポットまで移動すると、シャッタは、より速い速度で移動することができ、例えば、速度は、2つのスポットの間で移動するとき、基板上のイオン暴露を無視するために十分に速くあり得る。シャッタが第2のスポットを横断して移動すると、シャッタの速度は、より速い速度からより遅い速度に調節される。いくつかの実装では、シャッタ352は、その方向に沿って離散的に移動する。シャッタ352が、第1のスポットまで移動すると、シャッタ352は、停止し、ある量のイオンが、貫通孔354を通して第1の標的面積まで通過することを可能にする。次いで、シャッタ352は、第2のスポットまで移動し、第2の標的面積上のイオン注入のために停止する。ある場合には、イオン源は、シャッタ352が2つのスポットの間で移動するときに遮断される。ある場合には、シャッタ352は、2つのスポットの間を高速で移動し、イオン源は、オンのままである。
【0045】
基板306を横断して種々の密度のイオンを有する、図3Aの基板306と比較すると、基板356は、基板356を横断してパターン化されたイオン注入のプロファイルを有する。すなわち、イオンは、その方向に沿って種々の密度を伴って基板の中に周期的に注入される。ある場合には、パターン化された種々のイオン注入を伴う基板356は、種々の深度/高さを伴う格子を得るために、付加的なパターン化技術を使用することなく、直接的にエッチングされることができる。ある場合には、基板356はまた、任意の所望されるエッチングパターンを作成するために、パターン化技術、例えば、リソグラフィ技術と組み合わせることによって、エッチングされることができる。いくつかの実装では、可動シャッタ352の長さは、図3Bに図示されるように、基板356の長さより小さい。いくつかの実装では、可動シャッタ352の長さは、基板356の長さより大きいまたはそれと同じである。可動シャッタ352は、最初の位置において、基板356を完全に被覆するように位置付けられ、次いで、離散的に移動され、基板356の異なる部分が、イオン注入の異なる暴露時間を有することを可能にすることができる。
【0046】
図3Cは、種々の透過率を伴う部分374を有するシャッタ372を使用して、種々の密度のイオンを基板376の中に注入する第3の例示的方法370の概略図である。シャ
ッタ372が、イオン源(ここでは図示せず)と基板376との間に静的に位置付けら得る(または移動され得る)ことに留意されたい。部分374は、異なる割合のイオンが伝搬することを可能にし得る、シャッタ372内の種々の透過率を有し得る。いくつかの実装では、部分374は、異なるイオン透過率に対応する異なる厚さを伴う、膜、例えば、シリコン膜から作製される。
【0047】
特定の実施例では、シャッタ372は、例えば、図3Cの(左から右に)10%から30%、50%、70%、90%まで変動する、一連の透過率を伴う5つの部分を有するように構成される。シャッタ372の残りの部分は、0%の透過率を有し、すなわち、イオンの通過を完全に阻止する。そのような方法で、同一の暴露時間を用いると、基板の異なる面積は、異なるイオン暴露量を被り、したがって、異なる密度のイオンを有し得る。結果として、基板376はまた、図3Bと同様に、基板を横断して種々の密度を伴うパターン化されたイオン注入を有し得る。基板376はまた、リソグラフィ技術の有無にかかわらず、エッチングされることができる。
【0048】
図3A-3Cに図示される方法は、異なるタイプのシャッタを伴う標準イオン注入システムによって実施されることができ、これは、例えば、サイズが1mmより大きい、大きい注入面積を高速で可能にすることができる。
【0049】
図3Dは、集束イオンビーム(FIB)を使用して、種々の密度のイオンを基板の中に注入する第4の例示的方法390の概略図である。曲線392は、基板396内の所望されるイオン密度のプロファイルによって決定されることができる、FIB暴露量のプロファイルを示す。FIB方法は、高分解能を達成することを可能にするが、例えば、サイズが1mmを上回る大きい面積をパターン化することは困難であり得る。
【0050】
上記の説明は、種々の密度のイオンを基板の中に注入するための例示的方法を示す。他の方法もまた、これを達成するために使用されることができる。例証の目的のためにのみ、図3A-3Dは、1次元に沿って基板内に注入される、種々の密度のイオンを示す。本方法は、例えば、線形、正弦曲線、または円形である、任意の所望されるプロファイルを伴って、2次元で注入される種々の密度のイオンを達成するために適用され得ることに留意されたい。
(例示的実験結果)
【0051】
図4Aは、シリコン基板内のガリウムイオン注入を用いて加工される、小面積不均一回折格子の実験結果を示す。集束イオンビーム(FIB)は、最初に、(100nmの幅および50μmの長さを伴う)10本のラインの中への10種類の(1015~1016個/cmまで線形に変動する)異なる量で、ガリウムイオンをシリコン基板の中に局所的に注入するために使用される。次いで、基板は、SF/O極低温プロセスに基づいてエッチングされる。図410は、加工された格子の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示し、図420は、加工された格子の対応する原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。格子は、60~90nmに及ぶ高さ変動を有する。
【0052】
図4Aと比較して、図4Bは、同一のFIBおよびエッチング方法を使用して、シリコン基板内のガリウムイオン注入を用いて加工される、大面積不均一回折格子の実験結果を示す。図430は、異なるイオン量が、10ミクロン幅の帯域内に注入される、加工された格子のAFM画像を示す一方で、図440は、加工された格子の対応する高さプロファイルを示す。
【0053】
図5は、例示的実施形態による、イオン注入を用いて加工される、不均一回折格子の実験結果を示す。図4Aおよび4Bと比較して、回折格子は、FIBイオン注入、光学リソ
グラフィパターン化、およびエッチングをともに組み合わせることによって加工される。
【0054】
最初に、基板510は、FIBによって、基板510の面積514の異なる部分の中に種々の密度のイオンを注入するように修正される。次いで、基板510は、フォトリソグラフィによって、保護フォトレジスト層を用いてパターン化される。図5の(A)は、フォトレジストライン512およびイオン注入面積を含む、パターン化後の基板のSEM画像を示す。フォトレジストライン512は、5ミクロンの幅を有する。最後に、基板510は、エッチングされ、保護フォトレジスト層は、除去される。図5の(B)は、異なる深度を有する加工された格子のAFM画像520を示す一方で、図5の(C)は、加工された格子の対応する高さプロファイル530を示す。実験結果は、イオン注入をリソグラフィおよびエッチング技術と組み合わせ、種々の深度を伴う回折格子を作製することの実行可能性を示す。
(例示的システム)
【0055】
図6は、不均一回折格子を使用する、例示的光学システム600を示す。光学システム600は、仮想現実および拡張現実用途のために使用されることができる。いくつかの実装では、光学システム600は、内部結合光学(ICO)要素602および回折光学要素(DOE)604を含む、接眼レンズを有する。接眼レンズは、その内容が、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる、「Methods and systems for generating virtual content display with a virtual or augmented reality apparatus」と題され、2015年5月29日に出願された米国特許出願第14/726,424号に説明されるように、実装されることができる。
【0056】
ICO602およびDOE604は、基板610内に実装されることができる。基板610は、透明、例えば、ガラスであり得る。DOE604は、1つ以上の層を有し得、各層は、直交瞳拡大(OPE)回折要素606と、射出瞳拡大(EPE)回折要素608とを含むことができる。
【0057】
ICO要素602は、例えば、プロジェクタから、入力光ビームを受光し、入力光ビームを基板610内のDOE604に伝送するように構成される。例えば、基板610は、導波管(ここでは図示せず)を含み、ICO要素602は、入力光ビームをDOE604に結合される導波管の中に伝送する。入力光ビームは、全内部反射(TIR)によって導波管内に進行する。ある層の上のOPE回折要素606は、入力光ビームの一部を、順に、偏向された光ビームの一部を基板610から外に、例えば、ユーザの眼に向かって偏向させるように構成される、EPE回折要素608に偏向させるように構成される。
【0058】
OPE回折要素606およびEPE回折要素608は、同一平面内にまたは同一の層上にサイド・バイ・サイドに配列されることができる。基板から外に光ビームを出すために、DOE604は、DOE604を横断して、例えば、回折の選択的分布を用いて、光ビームを回折するように構成される。いくつかの実施形態では、回折された光の分布は、実質的に均一である。いくつかの実施形態では、回折される光の量は、例えば、増加する勾配または無作為化された様式で、DOE604のプロファイルを横断して可変である。例えば、光ビームがDOE604内を伝搬し、OPE回折要素606およびEPE回折要素608によって徐々に偏向されると、光ビームの強度が減少するため、DOE604の回折効率は、光ビームの伝搬経路に沿って徐々に増加するように構成されることができる。
【0059】
いくつかの実装では、OPE回折要素606は、例えば、図6に示されるように、底部から上部への第1の方向に沿って位置付けられる、第1の不均一格子を含む。EPE回折要素608は、例えば、図6に示されるように、左から右への第2の方向に沿って位置付
けられる、第2の不均一格子を含む。第1の方向と第2の方向との間の角度は、0~90度の範囲内であり得る。ある場合には、角度は、45度~90度である。ある場合には、角度は、80度~90度である。特定の実施例では、第2の方向は、第1の方向に対して垂直である。第1の不均一格子は、第1の方向に沿って線形に変動する深度を伴う回折格子であり得、したがって、第1の不均一格子は、第1の方向に沿って徐々に増加する回折効率を有し得る。第2の不均一格子は、第2の方向に沿って線形に変動する深度を伴う回折格子であり得、したがって、第2の不均一格子は、第2の方向に沿って徐々に増加する回折効率を有し得る。
【0060】
いくつかの実装では、OPE回折要素606およびEPE回折要素608は、線形の回折構造、円形の回折構造、半径方向に対称的な回折構造、またはそれらの任意の組み合わせを含む。OPE回折要素606およびEPE回折要素608は、線形の格子構造および円対称または半径方向に対称的な回折要素の両方を含み、光ビームの偏向および集束の両方を行うことができる。
【0061】
第1および第2の不均一格子は、図3のプロセス300に類似するプロセスによって加工されることができる。プロセスは、第1の方向に沿って、第1の種々の密度のイオンを、基板、例えば、基板610の第1の面積の中に注入し、第2の方向に沿って、第2の種々の密度のイオンを基板の第2の面積の中に注入するステップから開始し、第2の面積は、基板内の第1の面積に隣接する。シャッタ、例えば、図2Aのシャッタ204は、2次元で移動され、第1および第2の面積の中へのイオン注入を実装することができる。次いで、保護レジスト層が、基板上に堆積され、例えば、フォトリソグラフィによってパターン化される。プロセスは、パターン化された保護レジスト層を有する基板をエッチングし、第1の面積および第2の面積内に種々の深度を現像させるステップを継続する。最後に、パターン化された保護レジスト層が、除去され、第1の面積内に第1の不均一格子と、第2の面積内に第2の不均一格子とを有する基板が、取得される。第1の不均一格子は、第1の方向に沿った不均一深度と、したがって、第1の方向に沿った不均一回折効率とを有する。第2の不均一格子は、第2の方向に沿った不均一深度と、したがって、第2の方向に沿った不均一回折効率とを有する。いくつかの実装では、第1および第2の不均一格子を有する基板は、ナノインプリントリソグラフィによって他の基板内に対応する不均一格子を大量生産するためのマスクとして使用される。
【0062】
いくつかの実装では、DOE604は、その回折構造に沿って、例えば、OPE回折要素606の第1の不均一格子および/またはEPE回折要素608の第2の不均一格子に沿って、少なくとも1つのディザリング特徴を含む。例えば、第1の不均一格子に沿ったディザリング特徴は、それに沿って基板内の第1の面積がイオン注入される第1の方向と異なる、第3の方向に沿って付加的なイオン注入を実施することによって達成されることができる。付加的なイオン注入は、第1の面積上の以前のイオン注入より少なくあり得る。これらの第1の方向と第3の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満、例えば、90度であり得る。第2の不均一格子に沿ったディザリング特徴は、それに沿って基板内の第2の面積がイオン注入される第2の方向と異なる、第4の方向に沿って付加的なイオン注入を実施することによって達成されることができる。付加的なイオン注入は、第2の面積上の以前のイオン注入より少なくあり得る。これらの第2の方向と第4の方向との間の角度は、0度より大きく、かつ180度未満、例えば、90度であり得る。
【0063】
上記の説明は、不均一回折格子を含む例示的システムである。本システムは、光が伝搬し、経路に沿って徐々に偏向されると、均一な回折光が達成されることができるように、光伝搬経路に沿って不均一回折効率を伴う回折格子を採用する。開示される実装は、種々の回折効率を要求する任意のシステムに採用されることができる。
【0064】
いくつかの実装が、説明された。但し、種々の修正が、本明細書に説明される技法およびデバイスの精神および範囲から逸脱することなく成され得ることを理解されたい。実装のそれぞれに示される特徴は、独立して、または相互と組み合わせて使用され得る。付加的な特徴および変形例も、同様に本実装内に含まれ得る。故に、他の実装も、以下の請求項の範囲内である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6