(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】逆止弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 15/06 20060101AFI20240919BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F16K15/06
A62C35/68
(21)【出願番号】P 2023098215
(22)【出願日】2023-06-15
(62)【分割の表示】P 2019129716の分割
【原出願日】2019-07-12
【審査請求日】2023-07-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-333019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/06
A62C 35/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側配管接続口、2次側配管接続口及び内部を1次側と2次側とに仕切る仕切壁を有し、当該仕切壁に弁穴
が形成された弁箱と、
前記仕切壁の2次側であって、前記弁穴の周囲に形成された弁座と、
前記仕切壁の2次側に配置され、通常は前記弁座に当接して前記弁穴を閉鎖し、前記1次側配管接続口から流体の流れを
前記弁穴を介して受けた場合に前記弁座からリフトして前記弁穴を開放する方向に
付勢され、前記2次側配管接続口から流体の流れを受けた場合に前記弁座に
押圧されて前記2次側から前記1次側への流体の浸入を防止する弁体と、
前記1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力が
前記弁穴を介して前記弁体に作用
して当該弁穴を開放する
力よりも強い力で
、前記弁穴を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記弁箱の1次側と流通可能なシリンダー及び当該シリンダー内を移動可能なピストン部材を有し、前記1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力を前記シリンダーに導入して前記ピストン部材を前記
弁体が前記弁穴を開放する方向に
付勢する加圧室と、
を備え
、
前記付勢部材が前記弁体を付勢する力は、前記1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力が
前記弁穴を介して前記弁体
に作用する力及び
当該圧力が前記ピストン部材に作用する
力の合力により
、前記弁体を前記付勢部材による付勢に抗して前記弁座からリフトさせる
力に設定されたことを特徴とする逆止弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の逆止弁装置であって、前記付勢部材が前記弁体を付勢する力は、前記2次側の圧力が漸次的に上昇した場合でも前記2次側から前記1次側へ流体が浸入しない力に設定されたことを特徴とする逆止弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備等に備わる流水検知装置の配管に設けられ、配管を流れる流体の逆流を防止する逆止弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備等においては、加圧送水装置からの加圧水を各階のスプリンクラーヘッドに供給する配管の途中に流水検知装置が設けられている。例えば、
図5に示すような調圧型の流水検知装置140においては、本弁142の点検を行うような場合に、本弁142に付属した排水弁144を開放して、本弁142の2次側(スプリンクラーヘッド154が接続された側)に充填した水を排水する。
【0003】
排水弁144からの排水は、排水横管146から排水縦管148を経て消火用水槽150に戻されるが、排水縦管148は、
図6に示すように、一般的に各階に設置された流水検知装置140(140-1~140-n)の排水横管146(146-1~146-n)に接続されている。すなわち、排水縦管148は、消火用排水管として各階の流水検知装置140の排水のために共用する使い方がされている。
【0004】
また、
図5に示すように、通常の監視状態において、流水検知装置140は、本弁142の弁体152を閉じているが、スプリンクラーヘッド154が作動して一定量を超える流水があると、本弁142の2次側の圧力が急激に低下してパイロット弁(2次側調圧装置)162が開放し、続いてシリンダー156内の加圧水が流路163から本弁142の2次側に流出してシリンダー156内の圧力が急激に低下する。これによってピストン158がリフトして弁体152が開放し、本弁142の1次側の(加圧送水装置からの)加圧水Wを本弁142の2次側に供給する。
【0005】
弁体152が開放すると、弁座160に設けられた穴161から水が流れて圧力スイッチ164に達し、所定の作動圧力まで到達すると圧力スイッチ164が作動して警報を発する構成となっている。
【0006】
また、弁体152が一時的に開放して、瞬間的な一時流水が発生した場合には、誤報を避けるために圧力スイッチ164に遅延タイマーを設け、更に、オリフィスとして機能するオートドリップ166を設けて排水縦管148から自動的に排水するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこれらの場合、
図6に示すように、排水縦管148は、各階の流水検知装置140が排水横管146を介して接続されているため、ある階で点検や改修工事に伴って流水検知装置140の排水を行った場合、その流量を予測して排水縦管148や排水横管146の口径を決定しておかないと、排水が適切になされずに滞留して排水縦管148の管内圧力が上昇するという現象が発生する。
【0009】
この現象は、特に複数階で同時に流水検知装置140の排水が行われた場合に顕著に現れるが、例えば全階同時排水を想定して排水縦管148の口径を決定することは、経済的、物理的に現実的ではなく、通常は、例えば同時排水は単層階あるいは2層階までを許容することとし、3階層以上の同時排水は行わないことを前提に排水縦管148の口径を決定することが多い。
【0010】
しかし、想定を超える多層階で予期せぬ同時排水があった場合には、排水縦管148内の圧力が想定を超えて上昇することになり、この上昇圧力が圧力スイッチ164の作動圧力を超えるような場合、排水横管146を経由して流水検知装置140の圧力スイッチ164(164-1~164-n)が作動し、誤警報信号を発信して警報(非火災報)が報知され、不要な混乱を生じる可能性があった。
【0011】
このような同時排水に伴う水圧上昇のみではなく、配管内に滞留した空気によって昇圧することもあり、排水縦管148内の圧力上昇については、両者を考慮すべきである。
【0012】
こうした問題を防止するため、一般的に各階の流水検知装置140の排水ラインにはその系統毎(階毎)に、配管に逆止弁170(170-1~170-n)を設置し、排水縦管148内の圧力上昇があっても、逆止弁170が閉止することによって、圧力スイッチ164が作動することを防止するようにしている。
【0013】
この逆止弁170は、当該逆止弁における1次側A方向からの(流水検知装置140側から排水縦管148側への)流水に対しては、比較的小さい弁開圧力で容易に開放することが必要であり(弁開圧力が、例えば圧力スイッチ164の作動圧力程度に大きいと、1次側Aからの瞬間的な流水等があったときに、逆止弁170が開放せずに自動排水ができず、圧力が上昇して圧力スイッチ164の作動圧力以上になり、圧力スイッチ164が作動して誤警報を出す現象に繋がる場合がある)、一方、2次側B方向からの(排水縦管148側から流水検知装置140側への本弁142側への)圧力上昇においては、逆止弁170の1次側にある圧力スイッチ164に、圧力上昇した空気や水が浸入しないよう閉止した状態を保持することが必要となる。
【0014】
つまり、1次側A方向からの流水には容易に開放し、逆方向(2次側B方向)からの流水については、大気圧以上に上昇した背圧の浸入を完全に遮断するべく、比較的強い力で閉止状態を保持しなければならない。特に、2次側B方向からの圧力上昇が空気による場合は、水の場合に比べて粘度が小さく、また密度も小さい(粒子が小さい)ため、遮断し難く、そのため、弁体と弁座の隙間を、弁体を構成するゴム材を変形させるように大きい力で付勢して弁体を押さえて閉止することが望ましい。
【0015】
また、2次側B方向からの圧力上昇が水の滞留の度合いによって漸次的にゆっくりとした場合は、逆止弁170の弁体を抑える力が弱いと(1次側Aからの瞬間的な一時流水による誤報を防止するため、逆止弁170の閉止力を弱くしてあった場合)、空気あるいは水が逆止弁170の1次側Aに徐々に浸入して行くが、1次側Aと2次側Bがほぼ同圧になって上昇していくため、差圧が無くなり、2次側Bから1次側Aへの逆止弁170の弁体を押す力が発生せず、圧力スイッチ164側に加圧水や加圧空気の浸入を許すことになるという問題がある。
【0016】
例えば、
図7に示すのが一般的な逆止弁の構造である。ここで、逆止弁170は、一対の接続口(1次側配管接続口174、2次側配管接続口176)を備えた弁箱172(弁ボディ172a、蓋部材172b)内に、両接続口174、176を仕切る仕切壁178が設けられている。仕切壁178の弁穴180には弁座182が形成され、弁体184が付勢部材として機能するバネ186によって押圧され弁座182に当接して着座している。なお、
図7に示す逆止弁170においては、
図6に示す逆止弁170の図示方向とは異なり(左右逆)、図の左側が1次側、図の右側が2次側となっている。
【0017】
逆止弁170の弁体184は、
図7(A)に示すように、バネ186によって弁座182に押さえられて弁穴180を閉止するようになっている。この逆止弁170が開放するには、1次側A方向からの流水による1次側の圧力が、バネ186による押圧力Fに抗して大きくなる必要があり、弁体184に対する1次側の圧力による図示上向きの力(弁穴180の内径に対応する弁体184の面積と1次側の圧力との積)が、バネ186による図示下向きの力Fより大きくなると、
図7(B)に示すように、弁体184が弁座182からリフトして離れ、つまり弁体184が当接していた弁座182から離れて逆止弁170が開放し、1次側A方向に接続された流水検知装置140からの排水を2次側B方向に通過させる。
【0018】
1次側A方向からの流水の排水という観点からは、バネ186による弁体184への押圧力Fが小さいほど排水し易いということになり、一方、2次側B方向からの背圧に対して弁体184を閉止し、1次側に背圧(2次側B方向からの圧力)が浸入しないようにするためには、前述の通りバネ186の押圧力Fが大きいほど良いことになる。
【0019】
特に、バネ186による押圧力Fが小さい場合、弁体184が弁座182を押さえる力が弱いため、背圧の漸次的な上昇の場合には背圧が1次側に浸入し易く、従って、背圧が1次側に浸入しないようにするという観点からは、バネ186の押圧力Fが弱いことが弱点となる。
【0020】
すなわち、背圧の急激な上昇に対しては、バネ186の押圧力Fに加え背圧による図示下向きの力(弁体184の面積と背圧との積)が弁体184に働くため逆止弁170の閉止力が上昇し、よって強い逆止機能(水や空気の浸入を封止する機能)が発揮されるが、背圧が漸次的に上昇する場合、圧力は弁座182と弁体184の接触面(当接面)を通って徐々に1次側に浸入して行くため、1次側と2次側がやがて同圧となる。
【0021】
逆止弁170の閉止力は、バネ186の押圧力Fと1次側と2次側との差圧に依存するため、1次側と2次側が同圧となるような場合は、弁体184にかかる背圧による力が無視されて概ねバネ186の押圧力Fのみが作用する状態となり、よって逆止機能が弱いままとなる。更に、背圧が空気圧による場合は、水による場合に比べて粘度が小さく、また密度も小さい(粒子が小さい)ため、漏れが発生しやすいという弱点がより顕著に現れる。
【0022】
本発明は、このような流水検知装置の問題に対しての解決策を提案するものであり、1次側A方向からの流水にあっては容易に排水ができ、2次側B方向からの背圧上昇に対しては、その圧力上昇が緩慢であっても急激であっても、充分な逆止機能を発揮する逆止弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
[第1発明:弁体を押さえる加圧室を2次側に設けた構造]
本願発明は、流体の逆流を防止する逆止弁装置であって、
1次側配管接続口、2次側配管接続口及び内部を1次側と2次側とに仕切る仕切壁を有し、当該仕切壁に弁穴及び弁座が形成された弁箱と、
1次側配管接続口から流体の流れに対して弁座からリフトして弁穴を開放し、2次側配管接続口から流体の流れに対して弁座に当接して弁穴を閉鎖する弁体と、
弁穴を閉鎖する方向に弁体を付勢する付勢部材と、
シリンダー及び当該シリンダー内を移動可能なピストン部材を有し、弁箱の2次側と流通可能な加圧室と、
弁箱の2次側と加圧室とを流通させる流路に配置され、2次側の圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持し、当該圧力が急激に上昇した場合は閉鎖するインライン型逆止弁と、
を備え、2次側の圧力が漸次的に上昇した場合に当該圧力を加圧室に導入し、ピストン部材を付勢部材による付勢方向に移動させて弁体を弁座に押圧して当接させることを特徴とする。
【0024】
[第2発明:弁体を後退させる加圧室を1次側に設けた構造]
本願発明は、配管を流れる流体の逆流を防止する逆止弁装置であって、
1次側配管接続口、2次側配管接続口及び内部を1次側と2次側とに仕切る仕切壁を有し、当該仕切壁に弁穴及び弁座が形成された弁箱と、
1次側配管接続口から流体の流れに対して弁座からリフトして弁穴を開放し、2次側配管接続口から流体の流れに対して弁座に当接して弁穴を閉鎖する弁体と、
1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力が弁体に作用するよりも強い力で弁穴を閉鎖する方向に弁体を付勢する付勢部材と、
弁箱の1次側と流通可能なシリンダー及び当該シリンダー内を移動可能なピストン部材を有し、1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力をシリンダーに導入してピストン部材を付勢部材による付勢に抗する方向に移動させる加圧室と、
を備え、付勢部材が弁体を付勢する力は、2次側の圧力が漸次的に上昇した場合でも2次側から1次側へ流体が浸入しない力に設定され、1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力が弁体及びピストン部材に作用する合力により弁体を付勢部材による付勢に抗して弁座からリフトさせることを特徴とする。
【0025】
[第3発明:加圧室を1次側及び2次側に設けた構造]
本願発明は、配管を流れる流体の逆流を防止する逆止弁装置であって、
1次側配管接続口、2次側配管接続口及び内部を1次側と2次側とに仕切る仕切壁を有し、当該仕切壁に弁穴及び弁座が形成された弁箱と、
1次側配管接続口から流体の流れに対して弁座からリフトして弁穴を開放し、2次側配管接続口から流体の流れに対して弁座に当接して弁穴を閉鎖する弁体と、
弁穴を閉鎖する方向に弁体を付勢する付勢部材と、
シリンダー及び当該シリンダー内を移動可能な第1ピストン部材を有し、弁箱の1次側と流通可能な1次側加圧室と、
シリンダー及び当該シリンダー内を移動可能な第2ピストン部材を有し、弁箱の2次側と流通可能な2次側加圧室と、
を備え、1次側の圧力が上昇した場合は当該圧力を1次側加圧室に導入し、第1ピストン部材を付勢部材による付勢に抗して移動させて弁体を弁座からリフトさせ、2次側の圧力が上昇した場合は当該圧力を2次側加圧室に導入し、第2ピストン部材を付勢部材による付勢方向に移動させて弁体を弁座に押圧して当接させることを特徴とする。
【0026】
ここで、1次側の圧力により弁体を弁座からリフトさせる力が、付勢部材及び2次側の圧力により弁体を弁座に押圧させる力よりも大きくなるように構成する。弁体を弁座からリフトさせる力は、少なくとも圧力スイッチが作動する圧力より低い圧力で発生する力(安全率をみた圧力)とすることが好ましい。
【0027】
また、2次側の圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持し、当該圧力が急激に上昇した場合は閉鎖するインライン型逆止弁を弁箱の2次側と2次側加圧室とを流通させる流路に配置してもよい。
【0028】
[第4発明:弁体を押さえる加圧室を1次側に設けた構造]
本願発明は、配管を流れる流体の逆流を防止する逆止弁装置であって、
1次側配管接続口、2次側配管接続口及び内部を1次側と2次側とに仕切る仕切壁を有し、当該仕切壁に弁穴及び弁座が形成された弁箱と、
1次側配管接続口から流体の流れに対して弁座からリフトして弁穴を開放し、2次側配管接続口から流体の流れに対して弁座に当接して弁穴を閉鎖する弁体と、
弁穴を閉鎖する方向に弁体を付勢する付勢部材と、
シリンダー及び当該シリンダー内を移動可能なピストン部材を有し、弁箱の1次側と流通可能な加圧室と、
弁箱の1次側と加圧室とを流通させる流路に配置され、1次側の圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持し、当該圧力が急激に上昇した場合は閉鎖するインライン型逆止弁と、
を備え、1次側の圧力が漸次的に上昇した場合に当該圧力を加圧室に導入し、ピストン部材を付勢部材による付勢方向に移動させて弁体を弁座に押圧して当接させることを特徴とする。
【0029】
ここで、流水検知装置が開放して1次側に水が流れる場合、圧力は漸次的上昇とならず急激な圧力上昇なるので、弁体は閉止する。
【発明の効果】
【0030】
[基本的な効果]
逆止弁の2次側の圧力(背圧)の上昇速度に影響を受けず、1次側からの瞬間的な流水を確実に排水でき、また、2次側の圧力の上昇速度が漸次的は場合であっても、逆止弁の逆止機能を確実に発揮することができる。
【0031】
[弁体を押さえる加圧室を2次側に設けた構造による効果]
弁箱の2次側と流通可能な加圧室と、弁箱の2次側と加圧室とを流通させる流路に配置され、2次側の圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持し、当該圧力が急激に上昇した場合は閉鎖するインライン型逆止弁とを備え、2次側の圧力が漸次的に上昇した場合に当該圧力を加圧室に導入し、ピストン部材を付勢部材による付勢方向に移動させて弁体を弁座に押圧させるようにしたため、2次側の圧力の漸次的な圧力上昇に対して、2次側の圧力が1次側に浸入して1次側と2次側が同圧となり、逆止弁の閉止力が弱くなるという問題が解消される。
【0032】
[弁体を後退させる加圧室を1次側に設けた構造による効果]
弁箱の1次側と流通可能な加圧室を備え、1次側の圧力が上昇した場合に当該圧力を加圧室に導入し、ピストン部材を付勢部材による付勢に抗して移動させて弁体を弁座からリフトさせるようにしたため、2次側の圧力の上昇に対する逆止弁の閉止力(水や空気による背圧の浸入を防止できる押圧力)を大きくしたまま、1次側からの流水の圧力が低圧でも容易に逆止弁が開放し、一時的な圧力変動による圧力スイッチの作動に起因するスプリンクラー設備等の誤作動を防止することができる。
【0033】
[加圧室を1次側及び2次側に設けた構造による効果]
弁箱の1次側と流通可能な1次側加圧室と、弁箱の2次側と流通可能な2次側加圧室を備え、1次側の圧力が上昇した場合は当該圧力を1次側加圧室に導入し、第1ピストン部材を付勢部材による付勢に抗して移動させて弁体を弁座からリフトさせ、2次側の圧力が上昇した場合は当該圧力を2次側加圧室に導入し、第2ピストン部材を付勢部材による付勢方向に移動させて弁体を弁座に押圧して当接させるようにしたため、2次側の圧力の上昇に対する逆止機能を維持しつつ1次側からの流水を優先的に行い、圧力スイッチの誤作動を防止することができる。
【0034】
[弁体を押さえる加圧室を1次側に設けた構造による効果]
弁箱の1次側と流通可能な加圧室と、弁箱の1次側と加圧室とを流通可能な流路に配置され、1次側の圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持し、当該圧力が急激に上昇した場合は閉鎖するインライン型逆止弁とを備え、1次側の圧力が漸次的に上昇した場合に当該圧力を加圧室に導入し、ピストン部材を付勢部材による付勢方向に移動させて弁体を弁座に押圧して当接させるようにしたため、弁体を押圧する付勢部材の力が小さくても、2次側の圧力を適切に止めることができると共に、1次側の瞬間的な圧力変動に対して、小さな力で逆止弁を開放して排水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の逆止弁装置の第1実施形態を示した説明図
【
図2】本発明の逆止弁装置の第2実施形態を示した説明図
【
図3】本発明の逆止弁装置の第3実施形態を示した説明図
【
図4】本発明の逆止弁装置の第4実施形態を示した説明図
【
図5】本発明の逆止弁装置が使用される流水検知装置を示した概略構成図
【
図6】
図5の流水検知装置を用いたスプリンクラー設備の概略構成図
【
図7】
図5の流水検知装置に用いられた従来の逆止弁装置を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
図1は、本発明による逆止弁装置の第1実施形態として、逆止弁の2次側に弁体を押さえるための加圧室を設けた構造を示した説明図である。
図1に示すように、逆止弁10は、1次側配管接続口14及び2次側配管接続口16を備えた弁箱12(弁ボディ12a、蓋部材12b)内に、両接続口14、16を仕切る仕切壁18が設けられている。
【0037】
仕切壁18に開口した弁穴20には弁座22が形成され、通常は、
図1(A)に示すように、弁体24が付勢部材として機能するバネ26により押圧され、弁座22に当接して着座している。弁体20の、弁座22に当接する部分にはゴム材が使用されている。
【0038】
弁体24は、
図7に示す従来の逆止弁170と同様に、1次側配管接続口14からの流体の流れを受けた場合に、弁座22から後退して離れるようにリフトして流路を開き、一方、2次側配管接続口16からの流体の流れを受けた場合に、弁座22に押圧されて流路を閉じる構成となっている。
【0039】
ここで、2次側B方向からの背圧P2が生じると2次側圧力P2と弁体の2次側に面す
る面積a2の積となる力f12が弁体2次側からの押圧力として弁体に作用する。一方、1次側圧力P1と弁体の1次側に面する面積a1の積となる力f11が弁体1次側からの圧力として弁体をリフトさせる向きに作用する。
【0040】
逆止弁の2次側と1次側がに差圧がある場合、ばねによる押圧力F1とf12との合力が弁体の閉止力となり、これがf11以上であれば逆止弁は閉止を維持する。
【0041】
例えば本実施形態において、加圧室28及びピストン部材32を設けない場合、逆止弁10の閉止力はバネの押圧力F1に依存する。即ち、逆止弁の2次側方向Bからの背圧が1次側に浸入(伝播)した場合、1次側と2次側が同圧となれば、弁体の1次側に面する面積(弁穴20に対する面積)a1と2次側に面する面積a2は概ね同じなので、弁体に作用するこれら上下の力f11とf12は相殺されて、弁体24はバネ26による押圧力F1のみによって閉止している。この場合、閉止してはいるものの、気体を通過させない程度まで充分な力で閉止しているとは言えない。
【0042】
そこで、本実施形態では、更に、弁箱12の蓋部材12bの上部に、内部にピストン部材32が設けられた加圧室28を備え、加圧室28は、配管34により2次側配管接続口16と流通可能に繋がっている。配管34には、2次側配管接続口16の圧力が急激に上昇した場合は閉鎖し、当該圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持するインライン型逆止弁36が設置されている。
【0043】
ここで、ピストン部材32は、シリンダー30内を移動可能なピストン32aと、ピストン32aから突出し、弁体24を弁座22に押圧可能なピストンロッド32bで構成されている。また、配管34の接続位置は、逆止弁10の2次側(好ましくは弁箱12内の2次側)であれば、2次側配管接続口16でなくても構わない。
【0044】
本実施形態では、
図7に示す従来の逆止弁170に対し、弁閉止を保つバネ26の押圧力Fは小さくなっており、例えば弁穴20の径がφ10mm~φ15mm程度の場合、0.5~1.5N程度とし、あるいは更に小さくしても良い。このように比較的弱い押圧力F1としているため、弁体24の閉止力(1次側からの圧力による弁開放に抗する力)も圧力値に換算すると、例えば8kPa以下程度と小さい。
【0045】
この場合、漸次的な背圧(2次側方向Bからの圧力)の上昇、特に空気圧による漸次的な上昇に対しては、
図7に示す従来例の逆止弁170と同様な弱点を有するが、1次側方向Aからの流水に対しては、低圧で容易に開放するという利点があり、この利点を保持しながら弱点を解消する構造となっている。
【0046】
すなわち、逆止弁10は、弁箱12の上部に加圧室28を設けた構造とし、
図1(B)に示すように、背圧が漸次的に上昇する場合は配管34を介して2次側配管接続口と加圧室の流路が流通して加圧室の圧力も上昇するので、ピストン32aが下方へ移動し、ピストンロッド32bが弁体24を閉止する方向へ押すため、背圧の漸次的な圧力上昇の場合に、背圧が1次側に浸入(伝播)してしまうという弱点を解消している。
【0047】
ここで、逆止弁10の閉止力は、バネ26の押圧力F1と弁体24に作用する直接の背圧による図示下向きの力f1(2次側に面する弁体24の面積と背圧との積)及びピストン32aに作用する背圧による図示下向きの力Pb(ピストン32aの面積と背圧との積)の合計となる。
【0048】
背圧が漸次的に上昇するとき、加圧室28内も徐々に昇圧し、弁体24を押す下向きの力Pbは増加する。このとき、1次側も一時的にゆっくりと昇圧していく場合を想定しておく必要があるが、圧力スイッチ164の作動圧力未満において弁穴20を完全閉止できる閉止力が得られるPbを付加できるようにピストン32aの径を設定しておけば、背圧の上昇と正の相関関係を持って閉止力が増加していき、バネ26の押圧力F1が小さいことに伴う弱点を、実際の状態変化に追従して補完できるという長所を提供できる。
【0049】
なお、本実施形態の場合、背圧が発生している系統(階)に対してのみ、逆止弁10の弁体を押す下向きの力f12及びPb1が発生するので、背圧が発生していない系統においては、逆止弁10の開放圧力(クラッキング圧力)はバネ26の押圧力F1にのみ依存し、あるいは背圧が小さい系統においては、背圧の大きい系統に比べてクラッキング圧力がバネ26の押圧力F1に近似するなど、現場における設置条件の変化に自在に適合した誤報対応が各系統の特性に合わせてできるという特長を持ち、1次側方向Aからの流水が発生した場合の排水が適切にできる。
【0050】
また、仮に背圧の上昇が急激な場合にも、1次側への水や加圧空気の浸入(流入)を許すことになるという問題が発生せず、逆止弁10の閉止力はバネ26の押圧力F1と、弁体24に作用する背圧による下向きの力f12と、加圧室を設けていることによる下向きの力Pb1とを合わせた力となるため、逆止弁の機能を良好に果たすことができる。しかし一方では、逆止弁10の閉止力が大きくなることで1次側方向Aからの流水が困難になり、誤報防止の観点からは好ましくない面がある。
【0051】
この点に対して本実施形態においては、2次側配管接続口16と加圧室28とを流通可能とする配管34にインライン型逆止弁36を設置している。2次側の急激な圧力上昇があった場合には、このインライン型逆止弁36が閉じて加圧室28内を加圧しないのでPb1は増加しない。漸次的な圧力上昇である場合には、インライン型逆止弁36は開いており、加圧室28と2次側配管接続口16を流通するため、加圧室28内を加圧して、前述の如くPb1が増加するようにして解決している。
【0052】
なお、急激な圧力上昇、漸次的(緩慢)な圧力上昇とは、次のような概念である。
【0053】
まず、流水検知装置の圧力スイッチが作動する設定圧力値(P0)以上になること、及びその圧力に到達し継続する時間(t0)が、圧力スイッチに設けられた遅延タイマー以上維持されることで、圧力スイッチは作動する。この条件が揃う前に逆止弁が完全閉止することが、誤報を防止するために必要となる。
【0054】
漸次的な圧力上昇とは、圧力が時間経過と共に上昇しても、上限圧力が圧力スイッチの設定圧力(作動圧力)未満となる、例えば設定圧力に漸近するカーブとなる程度の上昇率の圧力変化、あるいは、圧力が時間経過と共に上昇して圧力スイッチの設定圧力に達してから圧力スイッチが実際に作動までの遅延時間以内に、特に気体に対して逆止弁を完全閉止できる閉止力を生じることができない程度の上昇率の圧力変化である。
【0055】
一方、急激な圧力上昇とは、流水検知装置における上記遅延時間の例えば数分の1程度の短時間に圧力スイッチの作動圧力値まで達する程度の上昇率の圧力変化で、また、特に気体に対して逆止弁を閉止できる力を、作動圧力到達後ほぼ遅れ無く(遅延時間内に)生じることができる程度の上昇率の圧力変化である。あるいは、P2>P1の状態(差圧を生じる状態)を作り出せる圧力上昇率で、圧力スイッチが作動する前に、気体を通過させない閉止力を生じることができる程度の上昇率と言うこともできる。
【0056】
[第2実施形態]
図2は、本発明による逆止弁装置の第2実施形態として、逆止弁の1次側と流通可能な加圧室を設けた構造を示した説明図である。
図2に示すように、逆止弁40は、1次側配管接続口44及び2次側配管接続口46を備えた弁箱42(弁ボディ42a、蓋部材42b)内に、両接続口44、46を仕切る仕切壁48が設けられている。
【0057】
仕切壁48には弁穴50を開口し、弁穴50には弁座52が形成され、通常は、
図2(A)に示すように、弁体54が付勢部材として機能するバネ56により押圧され弁座52に当接して着座している。弁体54の、弁座52に当接する部分にはゴム材が使用されている。
【0058】
弁体54は、
図7に示す従来の逆止弁170と同様に、1次側配管接続口44からの流体の流れを受けた場合に、弁座52からリフト(後退)して弁穴50を介する流路を開き、一方、2次側配管接続口46からの流体の流れを受けた場合に、弁座52に押圧されて弁穴50を介する流路を閉じる構成となっている。
【0059】
本実施形態では、更に、弁箱42(弁ボディ42a)の下部に、内部にピストン部材62が設けられた加圧室58を備え、加圧室58は、配管64により1次側配管接続口44と流通している。
【0060】
ここで、ピストン部材62は、シリンダー60内を移動可能なピストン62aと、ピストン62aから突出し、弁体54を弁座52から後退させることができるピストンロッド62bで構成されている。また、配管64の接続位置は、逆止弁40の1次側(好ましくは弁箱42内の1次側)であれば、1次側配管接続口44でなくても構わない。
【0061】
本実施形態は、
図7に示す従来の逆止弁170に対し、弁閉止を保つバネ56の押圧力を大きくして、閉止力を上げている。また、背圧(2次側方向Bからの圧力)の上昇に伴う1次側への空気あるいは水の浸入(流入)を防止するとともに、バネ56の押圧力Fが大きくとも、1次側からの排水は容易に実現できる構造としたものである。
【0062】
まず、空気による背圧の漸次的な上昇の対策として、
図1に示す逆止弁10(第1実施形態)では、背圧による下向きの力を弁閉止の力として付加していたが、それに対し本実施形態では、バネ56の押圧力F2を
図1に示すバネ26の押圧力F1よりも大きく、例えば弁穴50の径がφ10mm~φ15mm程度の場合、2.0~9.0N程度としている。このように比較的大きい押圧力F2としているため、弁体54の閉止力は圧力換算で、例えば30~50kPa程度と大きくなっている。
【0063】
しかし、このようにバネ56の押圧力F2を大きくすると、1次側方向Aからからの流水圧力に対しては、低圧で容易に開放するという逆止弁本来の利点が消滅、あるいは減じられるので、これを解消するために、逆止弁40は、弁箱42の下部に1次側と流通する加圧室58を設けた構造とし、
図2(B)に示すように、1次側方向Aからの流水により1次側の圧力が上昇するとピストン62aが上方へ移動し、ピストンロッド62bが弁体54を弁座52から後退させようとする。
【0064】
バネ56による押圧力F2に対して、弁体54に作用する1次側の圧力による図示上向きの力f21(1次側に面する弁体54の面積と1次側の圧力との積)と、ピストン62aに作用する1次側の圧力による上向きの力Pa2(ピストン62aの面積と1次側の圧力との積)の合計の力が作用することで、1次側の圧力が小さくとも、圧力上昇に伴い、弁体54とピストン62aによる上向きの力がバネ56の押圧力F2よりも大きくなれば、弁体54は弁座52から後退して弁穴50を介する流路が開き、排水が滞留することなく行われる。
【0065】
このような構造とすることで、バネ56の押圧力F2を大きくして背圧の1次側への浸入(伝播)を防止するようにした場合でも、1次側方向Aからの流水に対して容易に開放しないという弱点を解消し、1次側流水を排水できないことに起因する一時的な圧力変動による誤報を防止することができる。
【0066】
[第3実施形態]
図3は、本発明による逆止弁装置の第3実施形態として、逆止弁の1次側と流通する加圧室と、逆止弁の2次側と流通する加圧室を設けた構造を示した説明図である。
図3に示すように、逆止弁70は、1次側配管接続口74及び2次側配管接続口76を備えた弁箱72(弁ボディ72a、蓋部材72b)内に、両接続口74、76を仕切る仕切壁78が設けられている。
【0067】
仕切壁78には弁穴80を開口し、弁穴80には弁座82が形成され、通常は、弁体84が付勢部材として機能するバネ86によって押圧され弁座82に当接して着座している。弁体84の、弁座82に当接する部分にはゴム材が使用されている。
【0068】
弁体84は、
図7に示す従来の逆止弁170と同様に、1次側配管接続口74からの流体の流れを受けた場合に、弁座82からリフト(後退)して弁穴80を介する流路を開き、2次側配管接続口76からの流体の流れを受けた場合に、弁座82に押圧されて弁穴80を介する流路を閉じる構成となっている。
【0069】
本実施形態では、更に、弁箱72(弁ボディ72a)の下部に、内部に第1ピストン部材92が設けられた1次側加圧室88と、弁箱72(蓋部材72b)の上部に、内部に第2ピストン部材102が設けられた2次側加圧室98を備え、1次側加圧室88は、配管94により1次側配管接続口74と流通し、2次側加圧室98は、配管104により2次側配管接続口76と流通している。
【0070】
ここで、第1ピストン部材92は、シリンダー90内を移動可能なピストン92aと、ピストン92aから突出し、弁体84を弁座82から後退させることができるピストンロッド92bで構成され、第2ピストン部材102は、シリンダー100内を移動可能なピストン102aと、ピストン102aから突出し、弁体84を弁座82に押圧可能なピストンロッド102bで構成されている。
【0071】
2次側加圧室98及び第2ピストン部材102の作用、1次側加圧室88及び第1ピストン部材の作用は、それぞれ
図1の第1実施形態、
図2の第2実施形態で説明した内容と概ね同様となる。
【0072】
なお、本実施形態においては、バネ86の押圧力F3は、後述の(式1)で示す条件を充足するように選定する。
【0073】
また、配管94の接続位置は、逆止弁70の1次側(好ましくは弁箱72内の1次側)であれば、1次側配管接続口74でなくてもよく、同様に、配管104の接続位置は、逆止弁70の2次側(好ましくは弁箱72内の2次側)であれば、2次側配管接続口76ではなくても構わない。
【0074】
本実施形態では、
図1に示す第1実施形態と
図2に示す第2実施形態の両方の特長を有している。すなわち、背圧(2次側B方向からの圧力)の上昇に伴い弁閉止力が大きくなることから、1次側への背圧の流れ込み(逆流)による圧力スイッチ164の誤動作を防止することができる第1実施形態と、1次側A方向からの流水により圧力が上昇した場合に、その上昇量が小さくても確実に弁体84を開放することができる第2実施形態の両方の特長を備えている。
【0075】
このような構造にすることが特に有意であるのは、1次側A方向からの流水と2次側の背圧が同時に生じた場合である。すなわち、2次側の背圧が発生した場合、第2ピストン部材により弁体84を閉止方向に押すため閉止力は大きくなり、第1実施形態の特長を得
ることができるが、このとき1次側A方向からの流水が同時に発生した場合は、より大きな弁開放力が必要となり、このために弁開放しない場合は、1次側の圧力が上昇して圧力スイッチ164が作動してしまう可能性が大きくなる。
【0076】
この問題を解決するために、本実施形態では第1実施形態の構造に第2実施形態の構造を併設し、背圧による弁閉止力の増大に対して、これと同時に発生した1次側A方向からの流水による1次側の圧力を利用して弁開放力を得るようにしている。
【0077】
例えば、下記の(式1)に示すような関係、すなわち、1次側の圧力により弁体84を弁座82からリフトさせる力(開放力)が、バネ86及び2次側の圧力により弁体84を弁座82に押圧させる力(閉止力)よりも大きくなるように設計することで、1次A方向からの流水による弁体84の開放が確実に行われるようにすることができ、圧力スイッチ164の誤作動を防止することができる。
【0078】
その関係は、
開放力=P1×(a1+b1)
閉止力=P2×(a2+b2)+F3
であるから、
P1×(a1+b1)>P2×(a2+b2)+F3 (式1)
P1:1次側からの圧力
P2:2次側からの背圧
a1:1次側に面する弁体84の面積
a2:2次側に面する弁体84の面積
b1:1次側加圧室88のピストン92aの面積
b2:2次側加圧室98のピストン102aの面積
F3:バネ86による2次側からの押圧力
となる。
【0079】
ここで、
1次側圧力により直接的に、弁体84に図示上向き(開放側)に作用する力f31=P1×a1
2次側圧力により直接的に、弁体84に図示下向き(閉止側)に作用する力f32=P2×a2
ピストン部材92を介して、弁体84に図示上向き(開放側)に作用する力Pa3=P1×b1
ピストン部材102を介して、弁体84に図示下向き(閉止側)に作用する力Pb3=P2×b2
である。
【0080】
なお、圧力スイッチ164の誤作動を確実に防止するためには、1次側の圧力により弁体84を弁座82からリフトさせる開放力は、少なくとも圧力スイッチ164が作動する圧力より低い圧力で発生することが好ましい。
【0081】
また、第1実施形態と同様に、2次側配管接続口76と2次側加圧室98とを流通可能とする配管104の流路途中に、2次側配管接続口76の圧力が急激に上昇した場合は閉鎖し、当該圧力が漸次的に上昇した場合は開放状態を維持する(常時は開放し、一定の圧力上昇スピードで一定の圧力上昇値となった場合に閉止する)インライン型逆止弁を設置すれば(未図示)、2次側の漸次的な圧力上昇に対して逆止弁が開放し難くなるという問題をも解消することができる。
【0082】
[第4実施形態]
図4は、本発明による逆止弁装置の第4実施形態として、逆止弁の1次側と流通可能な加圧室を設けた構造を示した説明図である。
図4に示すように、逆止弁110は、1次側配管接続口114及び2次側配管接続口116を備えた弁箱112(弁ボディ112a、蓋部材112b)内に、両接続口114、116を仕切る仕切壁118が設けられている。
【0083】
仕切壁118には弁穴120を開口し、弁穴120には弁座122が形成され、通常は、弁体124が付勢部材として機能するバネ126によって押圧され弁座122に当接して着座している。弁体124の、弁座122に当接する部分にはゴム材が使用されている。
【0084】
弁体124は、
図7に示す従来の逆止弁170と同様に、1次側配管接続口114からの流体の流れを受けた場合に、弁座122から後退して弁穴120を介する流路を開き、2次側配管接続口116からの流体の流れを受けた場合に、弁座122に押圧されて弁穴120を介する流路を閉じる構成となっている。
【0085】
本実施形態では、更に、弁箱112(蓋部材112b)の上部に、内部にピストン部材132を設けた加圧室128を備え、加圧室128は、配管134により1次側配管接続口114と流通している。配管134には、通常時は開放し、1次側配管接続口114の圧力が急激に上昇した場合は閉鎖し、当該圧力が漸次的に上昇する場合は開放状態を維持するインライン型逆止弁136が設けられている。
【0086】
ここで、ピストン部材132は、シリンダー130内を移動可能なピストン132aと、ピストン132aから突出し、弁体124を弁座122に押圧可能なピストンロッド132bで構成されている。また、配管134の接続位置は、逆止弁70の1次側(好ましくは弁箱112内の1次側)であれば、1次側配管接続口114でなくても構わない。
【0087】
本実施形態では、
図1に示す第1実施形態(インライン型逆止弁36が設置されない場合)の課題を解決するための別の手段である。すなわち、
図7に示す従来の逆止弁170に対し、弁閉止を保つバネ126の押圧力F4は、
図1の第一実施形態と同様に小さくしており、従って弁体124の1次側からの弁開放に抗する閉止力も比較的小さくなっている。
【0088】
この場合、弁閉止力が小さいため、漸次的な背圧(2次側B方向からの圧力)の上昇、特に空気による漸次的な圧力上昇に対しては、
図7に示す従来例の逆止弁170と同様な弱点を有するが、1次側A方向からの流水圧力に対しては、比較的低圧で容易に開放するという利点がある。
【0089】
この利点を保持しながら弱点を解消する構造としたものが、
図1に示す第1実施形態であったが、インライン型逆止弁36が設置されていない構成で、背圧の上昇が急激な場合、閉止力はバネ26の押圧力F4と弁体24に作用する背圧による下向きの力f42(2次側に面する弁体24の面積と背圧との積)の合計の力となるため、逆止弁の機能を果たすことができるものの、この合計の力にピストン32aによる力Pb4(ピストン32aの面積と背圧との積)も加算されるため、弁体24を押さえる力は更に大きくなり、1次側A方向からの流水の排水が難しくなり、誤報防止の観点からは好ましくないという問題が想定される。
【0090】
この問題を解決するために、
図1の第1実施形態では、2次側配管接続口16から加圧室28への配管34にインライン型逆止弁36を設置し、急激な背圧の上昇があった場合は加圧室28内を加圧しないようにすれば、この問題を解決することができるとしたが、
図4に示す本実施形態では、別の方法でこのような問題を解決する。
【0091】
すなわち、背圧の上昇が急激な場合は、バネ126の押圧力F4と弁体124に作用する背圧による下向きの力f42(2次側に面する弁体124の面積と背圧との積)の合計となる弁閉止力で逆流を防止し、背圧の漸次的な上昇により逆止弁110の2次側から1次側に加圧水あるいは加圧空気が浸入(流入)してきた場合は1次側圧力も上昇し、このため1次側から導入した加圧室128の圧力も漸次上昇して行き、ピストン132aに作用する1次側の圧力による下向きの力Pb4(ピストン132aの面積と作用する1次側の圧力との積)で弁体124を押圧して2次側から1次側への背圧の浸入(伝播)を止める。
【0092】
また、1次側A方向からの急激な一時流水があった場合は、1次側の圧力の上昇速度が大きいため、1次側配管接続口114から加圧室128への配管134の流路途中に設置したインライン型逆止弁136が閉じて、ピストン132aを押す力Pb4を生じない。
【0093】
このような構造にすることで、弁体124を押圧するバネ126の力F4が小さくても、背圧を適切に止めることができると共に、1次側の一時的で急激な圧力変動に対しては、逆止弁110の閉止力を更に大きくすることなく、小さな力で逆止弁110を開放して排水が可能となる。
【0094】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0095】
10、40、70、110、170:逆止弁
12、42、72、112、172、:弁箱
12a、42a、72a、112a、172a:弁ボディ
12b、42b、72b、112b、172b:蓋部材
14、44、74、114、174:1次側配管接続口
16、46、76、116、176:2次側配管接続口
18、48、78、118、178:仕切壁
20、50、80、120、180:弁穴
22、52、82、122、182:弁座
24、54、84、124、184:弁体
26、56、86、126、186:バネ(付勢部材)
28、58、128:加圧室
30、60、90、100、130、156:シリンダー
32、62、132:ピストン部材
32a、62a、92a、102a、132a:ピストン
32b、62b、92b、102b、132b:ピストンロッド
34、64、94、104、134:配管
36、136:インライン型逆止弁
88:1次側加圧室
92:第1ピストン部材
98:2次側加圧室
102:第2ピストン部材
140:流水検知装置
142:本弁
144:排水弁
146:排水横管
148:排水縦管
150:消火用水槽
152:弁体
154:スプリンクラーヘッド
156:シリンダー
158:ピストン
160:弁座
162:パイロット弁
164:圧力スイッチ
166:オートドリップ
168:スプリンクラー設備