(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】IL33及びIL1RL1をコードする遺伝子にリスクアレルを有する患者の炎症性肺疾患の処置及び阻害
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240919BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240919BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240919BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240919BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240919BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240919BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240919BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240919BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20240919BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALN20240919BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61P11/00
A61P11/06
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K14/705
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6874 Z
(21)【出願番号】P 2023121229
(22)【出願日】2023-07-26
(62)【分割の表示】P 2019555834の分割
【原出願日】2018-03-20
【審査請求日】2023-07-26
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルーズ、シャノン
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー、シェーン
(72)【発明者】
【氏名】バラス、アリス
(72)【発明者】
【氏名】デューイ、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ゴッテスマン、オムリ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515130(JP,A)
【文献】特表2016-513644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/016802(US,A1)
【文献】国際公開第2015/127229(WO,A1)
【文献】N Engl J Med,2010年,Vol. 363,p. 1211-1221,DOI: 10.1056/NEJMoa0906312
【文献】Int J Chron Obstruct Pulmon Dis,2017年01月21日,Vol. 12,p. 395-402,doi: 10.2147/COPD.S120445. eCollection 2017.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 11/00
A61P 37/08
A61P 27/00
A61K 38/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における喘息COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の処置または阻害に使用するための医薬であって、IL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せを含み、
前記対象が、i)イントロンIL1RL1バリアントrs1420101もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント、及びii)IL33バリアントrs1342326もしくはその連鎖不平衡にあるバリアントを有し、
前記IL33アンタゴニストが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含むIL33トラップを含み、または、前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、且つ、
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項2】
IL33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274のアミノ酸配列を含む重鎖の相補性決定領域と、配列番号282のアミノ酸配列を含む軽鎖の相補性決定領域とを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337のアミノ酸配列を含む重鎖の相補性決定領域と、配列番号338のアミノ酸配列を含む軽鎖の相補性決定領域とを含む、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
抗IL-4R抗体が、デュピルマブを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
対象における好酸球性喘息COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の処置または阻害に使用するための医薬であって、IL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せを含み、
前記対象が、i)イントロンIL1RL1バリアントrs1420101もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント、及びii)IL33バリアントrs1342326もしくはその連鎖不平衡にあるバリアントを有し、
前記IL33アンタゴニストが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含むIL33トラップを含み、または、前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、且つ、
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項6】
IL33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274のアミノ酸配列を含む重鎖の相補性決定領域と、配列番号282のアミノ酸配列を含む軽鎖の相補性決定領域とを含む、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337のアミノ酸配列を含む重鎖の相補性決定領域と、配列番号338のアミノ酸配列を含む軽鎖の相補性決定領域とを含む、請求項5または6に記載の医薬。
【請求項8】
抗IL-4R抗体が、デュピルマブを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に精密医療の分野に関する。より具体的には、本開示は、IL33及びIL1RL1をコードする遺伝子におけるリスクアレルの検出に関し、そのリスクアレルは、炎症性肺疾患の状態及びそれらの好酸球サブタイプのうち1つ以上を発症するリスクが高い炎症性肺疾患患者を階層化するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
特許、公開された出願、アクセッション番号、技術論文及び学術論文を含む様々な出版物が、本明細書全体にわたって引用される。これらの引用出版物の各々は、その全体があらゆる目的のために本明細書に参照によって組み込まれる。
【0003】
喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、非常に蔓延している閉塞性肺疾患であり、実質的には満たされていない臨床的要求及び大幅な診断重複を伴うため、喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)と称されるこれらの状態の共通部分に関心が高まっている。2つの疾患が共通の病因を有している(いわゆる「オランダ仮説」)か、または独立した機序的原因を有する(いわゆる「イギリス仮説」)かどうかに関して、長年にわたって論争が続いている。最近、閉塞性肺疾患を含む、共通した複合的疾患リスクに対する遺伝的寄与の解明に進展があったにもかかわらず、喘息とCOPDとを関連付ける十分に確立された遺伝的知見は一切存在しない。
【0004】
ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、インターロイキン-33(IL33)及び/またはIL1RL1の、喘息と関連する共通した遺伝的バリアントが同定された。IL33は、炎症性サイトカインかつインターロイキン-1(IL-1)サイトカインファミリーのメンバーであって、肺上皮を含む関門組織における細胞のサブセット中で発現される。IL33は、IL33特異的受容体のIL1RL1(ST2またはIL33Rとしても知られる)と、IL-1ファミリーのいくつかの受容体に共通しているIL-1RAcPとの共受容体で構成されるヘテロ二量体受容体複合体を介してシグナル伝達する。
【0005】
損傷組織中において、元より隔離されていたIL33は、壊死細胞によって細胞外区画中に受動的に放出され、炎症及び修復経路を活性化させる内因性「危険シグナル」(アラーミン)として機能する。タバコの煙は、マウスの肺上皮細胞中でIL33発現を誘導し、IL33発現は、喘息及びCOPD患者の両方の気管支上皮で上昇する。炎症性浸潤物及び炎症性サイトカインがすでに存在する疾患状態においては、IL33応答細胞のプールが増加し、IL33シグナル伝達によってさらに免疫応答が増幅され、病的炎症及び過度な免疫応答を招いて、COPDなどの慢性炎症性疾患を引き起こす可能性がある。
【0006】
喘息及びCOPDの両方に共通する症状を特徴とする、喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)も存在している。それにもかかわらず、オーバーラップする共通の特徴のせいで、喘息とCOPDを区別する難しさを考慮すると、ACOSを診断する能力には臨床的課題が残っている。
【0007】
コルチコステロイド(標準治療)に対する抵抗性が非常にありふれたものであるため、喘息、COPD、及びACOSの処置課題も残っている。同様に、IL-5療法などの他の処置は、喘息及びCOPDの好酸球サブセットに対して一切良好には機能しない。
【0008】
したがって、喘息、COPD、及びACOS間で区別をつけること、加えてこれらの障害の好酸球サブセットを有する患者をより正確に同定することが、当該技術分野において依然として必要である。適切な診断は、治療レジメンをより的確に指示し、患者の転帰を改善し得る。
【発明の概要】
【0009】
本開示の第1の態様では、好酸球性喘息を処置または阻害する方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。IL33アンタゴニスト及び/またはIL-4Rアンタゴニストの投与は、好酸球性喘息が対象内で処置または阻害されるものである。
【0010】
本開示の第2の態様では、好酸球性慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置または阻害する方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性COPDと関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。IL33アンタゴニスト及び/またはIL-4Rアンタゴニストの投与は、好酸球性COPDが対象内で処置または阻害されるものである。
【0011】
本開示の第3の態様では、好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患(COPD)オーバーラップ症候群(ACOS)を処置または阻害する方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。IL33アンタゴニスト及び/またはIL-4Rアンタゴニストの投与は、好酸球性COPDが対象内で処置または阻害されるものである。
【0012】
本開示の第4の態様では、鼻茸を処置または阻害する方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に鼻茸と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。IL33アンタゴニスト及び/またはIL-4Rアンタゴニストの投与は、鼻茸が対象内で処置または阻害されるものである。
【0013】
本開示の第5の態様では、好酸球性喘息、好酸球性慢性閉塞性肺疾患(COPD)、または好酸球性喘息COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の発症リスクを評価する方法は、
(A)対象から得られた試料中のイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中で、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中で、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方で好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSと関連する1つ以上のリスクアレルを検出するステップ、
(B)(i)対象が、2番染色体ホモログの1つにおけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルまたは9番染色体ホモログの1つにおけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア1を割り当てるステップ、
(B)(ii)対象が、2番染色体ホモログの両方におけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象が、9番染色体ホモログの両方におけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、または対象が、2番染色体ホモログの1つにおけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの1つにおけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア2を割り当てるステップ、
(B)(iii)対象が、2番染色体ホモログの両方におけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの1つにおけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、または対象が、2番染色体ホモログの1つにおけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの両方におけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア3を割り当てるステップ、あるいは
(B)(iv)対象が、2番染色体ホモログの両方におけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの両方におけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア4を割り当てるステップ、ならびに
(C)好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSの対象の発症リスクを分類し、リスクスコア1は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットの発症リスクを有することを示し、リスクスコア2は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットの上昇した発症リスクを有することを示し、リスクスコア3は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを発症するリスクが高いことを示し、リスクスコア4は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを発症するリスクが非常に高いことを示すステップを含む。本方法は、対象の好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを含む、好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSのうち1つ以上を、対象にIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することによって処置または阻害することをさらに含んでよい。
【0014】
本開示の第6の態様では、IL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せは、好酸球性喘息、好酸球性慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球好酸球性COPD、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸の患者が、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSと関連する1つ以上のリスクアレルを有する場合に、好酸球性喘息、好酸球性慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球好酸球性COPD、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸のいずれか1つの処置もしくは阻害に使用するもの、またはその処置もしくは阻害のための医薬品の製造に使用するものである。
【0015】
これらの態様のいずれか1つによれば、対象は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する可能性があるか、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する2つのリスクアレルを有する可能性があるか、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する可能性があるか、またはIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する2つのリスクアレルを有する可能性があり、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する少なくとも1つのリスクアレルをさらに有する可能性がある、及び/またはIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する2つのリスクアレルをさらに有する可能性がある。
【0016】
これらの態様のいずれか1つによれば、本方法は、対象にIL33アンタゴニストを投与することを含んでよいか、もしくは本使用は、対象にIL33アンタゴニストを投与するためであってよいか、または本方法は、対象にIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含んでよいか、もしくは本使用は、対象にIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与するためであってよい。IL33アンタゴニストは、IL33トラップまたはIL33に特異的に結合する抗体を含んでよい。IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rに特異的に結合する抗体を含んでよい。
【0017】
これらの態様のいずれかによれば、IL33トラップは、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含んでよい。これらの態様のいずれかによれば、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:274のH1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号:282のL1、L2、及びL3ドメインを含んでよい。これらの態様のいずれかによれば、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:337のH1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号:338のL1、L2、及びL3ドメインを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】パネルA、B、C、及びDは、IL33アンタゴニストの、互いに関連した個々の成分に関する4つの例示的な配置を示す。パネルAは、第1IL33結合ドメイン(D1)が、第1多量体化ドメイン(M1)のN末端に結合し、第2IL33結合ドメイン(D2)が、第2多量体化ドメイン(M2)のN末端に結合している配置を示す。D1は白い四角として示され、D2は黒い四角として示されて、D1及びD2が、異なるIL33結合タンパク質に由来することを示している。パネルBは、第1IL33結合ドメイン(D1)が、第1多量体化ドメイン(M1)のN末端に結合し、第2IL33結合ドメイン(D2)が、第2多量体化ドメイン(M2)のC末端に結合している配置を示す。D1は白い四角として示され、D2は黒い四角として示されて、D1及びD2が、異なるIL33結合タンパク質に由来することを示している。パネルC及びDは、4つのIL33結合ドメイン、すなわちD1、D2、D3及びD4を含む配置を示す。これらの配置では、D3-D1-M1及びD4-D2-M2は一列に並んで結合し、D3はD1のN末端に結合し、D1はM1のN末端に結合し、D4はD2のN末端に結合し、D2はM2のN末端に結合している。パネルCでは、D3及びD4は、互いに同一または実質的に同一であり、D1及びD2は互いに同一または実質的に同一である。パネルDでは、D1及びD4は、互いに同一または実質的に同一であり、D3及びD2は互いに同一または実質的に同一である。
【
図2-1】パネルA、B、C、及びDは、(パネルA)好酸球数(パネルB)log
10好酸球数とのrs1420101(IL1RL1、ST2としても知られる)、rs1342326(IL33)及びrs146597587(IL33-pLoF)の関連を示す。rs1420101及びrs1342326リスクアレルの総量と(パネルC)好酸球数(パネルD)log
10好酸球数との関連も示されている。好酸球数及びlog
10好酸球数の効果量及びP値を、線形回帰を使用し、年齢、年齢
2、性別、喫煙状態及び祖先の主成分に関する調整を用いて算出した。P値及び効果量/オッズ比を、個々のスコアに対して推定し、いずれの場合もリスクアレルを持たない個体と比較した。さらに、全体的なアレル効果p値が示されている。
【
図3-1】パネルA、B、及びCは、(パネルA)喘息、(パネルB)高好酸球喘息サブセット及び(パネルC)低好酸球喘息サブセットとのrs1420101(IL1RL1、ST2としても知られる)、rs1342326(IL33)及びrs146597587(IL33-pLoF)の関連を示す。疾患に対するオッズ比を、ロジスティック回帰を使用し、年齢、年齢
2、性別、喫煙状態及び祖先の主成分に関する調整を用いて算出した。
【
図4-1】パネルA、B、及びCは、(パネルA)COPD、(パネルB)高好酸球COPDサブセット及び(パネルC)低好酸球COPDサブセットとのrs1420101(IL1RL1、ST2としても知られる)、rs1342326(IL33)及びrs146597587(IL33-pLoF)の関連を示す。疾患に対するオッズ比を、ロジスティック回帰を使用し、年齢、年齢
2、性別、喫煙状態及び祖先の主成分に関する調整を用いて算出した。
【
図5-1】パネルA、B、及びCは、(パネルA)ACOS、(パネルB)高好酸球ACOSサブセット及び(パネルC)低好酸球ACOSサブセットとのrs1420101(IL1RL1、ST2としても知られる)、rs1342326(IL33)及びrs146597587(IL33-pLoF)の関連を示す。疾患に対するオッズ比を、ロジスティック回帰を使用し、年齢、年齢
2、性別、喫煙状態及び祖先の主成分に関する調整を用いて算出した。
【
図6-1】パネルA、B、及びCは、(パネルA)喘息(パネルB)COPD及び(パネルC)ACOSとの遺伝子スコア(rs1420101及びrs1342326リスクアレルの総量)の関連を示す。P値オッズ比を、個々のスコアに対して推定し、いずれの場合もリスクアレルを持たない個体と比較した。さらに、全体的な傾向検定p値が示されている。
【
図7-1】パネルA、B、及びCは、(パネルA)高及び低好酸球喘息(パネルB)高及び低好酸球COPDならびに(パネルC)高及び低好酸球ACOSとの遺伝子スコア(rs1420101及びrs1342326リスクアレルの総量)の関連を示す。P値オッズ比を、個々のスコアに対して推定し、いずれの場合もリスクアレルを持たない個体と比較した。さらに、全体的な傾向検定p値が示されている。
【
図8-1】パネルA、B、C、及びDは、捕捉試薬(パネルA)VCRome及び(パネルB)xGEN、ならびにチッププラットフォーム(パネルC)OMNI及び(パネルD)GSAによって階層化された試験参加者の臨床的特徴を示す。
【
図9-1】パネルA及びBは、(パネルA)アレルギー性鼻炎及び(パネルB)鼻茸とのrs1420101(IL1RL1、ST2としても知られる)、rs1342326(IL33)、rs146597587(IL33-pLoF)ならびに遺伝子スコア(rs1420101及びrs1342326リスクアレルの総量)の関連を示す。疾患に対するオッズ比を、ロジスティック回帰を使用し、年齢、年齢
2、性別、喫煙状態及び祖先の主成分に関する調整を用いて算出した。共通するリスクバリアントの総量を試験するために、P値及びオッズ比を、個々のスコアに対して推定し、いずれの場合もリスクアレルを持たない個体と比較した。さらに、全体的な傾向検定p値が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の態様に関する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用される。そのような用語は、別段の指示がない限り、当該技術分野において所与であるそれらの通常の意味とする。その他の具体的に定義された用語は、本明細書で提供される定義と一致する方法で解釈されることとする。
【0020】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段の明確な記述がない限り、複数の指示対象を含む。
「対象」及び「患者」という用語は、同じ意味として使用され、任意の動物を含む。哺乳動物が好ましく、コンパニオン(例えば、ネコ、イヌ)及び家畜哺乳動物(例えば、ブタ、ウマ、雌ウシ)、加えてげっ歯類を含み、マウス、ウサギ、及びラット、モルモット、ならびにその他のげっ歯類を含む。非ヒト霊長類がより好ましく、ヒトが非常に好ましい。
【0021】
「単離した」という用語は、ヒトの手によって自然環境から除去及び/または変化されたことを意味する。
「リスクアレル」は、疾患、障害、または状態を発症するリスクと関連する、特定の位置の代替的多型を含む。
【0022】
「連鎖不平衡」は、2つ以上の遺伝子座におけるアレルの非ランダム関連を指す。
本開示に従って、IL1R1 rs1420101(配列番号:357)及びIL33
rs1342326(配列番号:358)の一塩基多型が、喘息、加えて喘息、COPD、及びACOSの高好酸球サブセットのリスク増加と関連することが観察されている。加えて、両方の遺伝子座にわたってこれらのリスクアレルの量をより多く持つ個体は、付随するより大きな疾患リスクを有し、IL33における希少pLOFバリアントのヘテロ接合体キャリアは、生涯の好酸球数中央値が低く、喘息のリスク低減を反映する傾向、加えて喘息、COPD、及びACOSの高好酸球サブセットのリスク低減を反映する傾向を有したことが観察された。IL33経路の遺伝的バリアントは、これまでCOPDとは関連していないと考えられていて、さらに、喘息とCOPDとの遺伝的関連またはIL33経路と喘息、COPD及びACOSの高好酸球サブセットに関するリスクとの遺伝的関連は、一切報告されていないと考えられている。さらに、IL1R1 rs1420101及びIL33 rs1342326の一塩基多型は、個別でも全体として考慮しても、鼻茸及びアレルギー性鼻炎のリスク増加と関連することが観察された。これらのデータは、喘息、COPD、及びACOSなどの閉塞性肺疾患の高好酸球型、加えて鼻茸及びそれらの高好酸球サブセットなどのその他の上気道疾患の処置においてインターロイキン-33を遮断する役割を示している。したがって、本開示は、喘息、COPD、及びACOS、特にそれらの高好酸球サブセットのリスクを同定し、それらを診断、処置、及び阻害する方法を特徴とする。
【0023】
第1の態様では、本開示は、炎症性肺疾患の発症リスクを評価する方法を特徴とする。炎症性肺疾患は、喘息、COPD、ACOS、または鼻茸のうち1つ以上であってよい。喘息は、好酸球性喘息または高好酸球好酸球性喘息であってよい。COPDは、好酸球性COPDまたは高好酸球好酸球性COPDであってよい。ACOSは、好酸球性ACOSまたは高好酸球好酸球性ACOSであってよい。概して、本方法は、そのような炎症性肺疾患の発症リスクと関連する1つ以上のリスクアレルを検出することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象から得られた試料中のイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中で、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中で、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方で好酸球性喘息、好酸球性COPD、好酸球性ACOS、または鼻茸と関連する1つ以上のリスクアレルを検出すること、次いで対象が、2番染色体ホモログの1つにおけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルまたは9番染色体ホモログの1つにおけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア1を割り当てること、対象が、2番染色体ホモログの両方におけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象が、9番染色体ホモログの両方におけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、または対象が、2番染色体ホモログの1つにおけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの1つにおけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア2を割り当てること、対象が、2番染色体ホモログの両方におけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの1つにおけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、または対象が、2番染色体ホモログの1つにおけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの両方におけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア3を割り当てること、あるいは対象が、2番染色体ホモログの両方におけるイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び9番染色体ホモログの両方におけるIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、対象にリスクスコア4を割り当てることを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、IL33バリアントrs1342326のリスクアレルは、一塩基多型(SNP)を含む。いくつかの詳細な実施形態では、IL33バリアントは、SNP9:6190076:A:C(ヒトゲノムGRCh38)を含む。バリアントrs1342326は、以下の核酸配列を含む:CCAATCTTTTCTCATGAAGACACCA[G/T]CATGACCTCTTATTCTTATTTATAT(配列番号:358)。
【0026】
いくつかの実施形態では、IL1RL1バリアントrs1420101のリスクアレルは、SNPを含む。いくつかの詳細な実施形態では、IL1RL1バリアントは、SNP2:102341256:C:T(ヒトゲノムGRCh38)を含む。バリアントrs1420101は、以下の核酸配列を含む:TATACCATCACAAAGCCTCTCATTA[A/G]ACTTTGAATCCAATGAGTATTACTA(配列番号:357)。
【0027】
検出は、任意の好適な手法によるものであってよい。リスクアレルは、例えば、相補的核酸プローブを用いたシーケンシング、ジェノタイピング、インピュテーション、プロービングによって検出されてよい。
【0028】
本方法は、好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSの対象の発症リスクを分類することをさらに含んでよく、リスクスコア1は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットの発症リスクを有することを示し、リスクスコア2は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットの上昇した発症リスクを有することを示し、リスクスコア3は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを発症するリスクが高いことを示し、リスクスコア4は、対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、好酸球性COPDの高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを発症するリスクが非常に高いことを示す。このスケールでは、上昇したリスクとはリスクよりも大きいが、高リスクよりも小さく、非常に高いリスクは高リスクよりも大きい。したがって、疾患を発症する患者リスクに関して、リスク<上昇したリスク<高リスク<非常に高いリスク、またはリスクスコア1<リスクスコア2<リスクスコア3<リスクスコア4である。
【0029】
本方法は、対象から試料を得ることをさらに含んでよい。概して、試料は、それからリスクアレルが検出される可能性がある任意の試料を含んでよい。試料は、組織試料または痰を含んでよい。組織試料は、末梢血、気道または肺組織を含んでよい。
【0030】
本方法は、IL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せによる処置のための候補として対象を同定することをさらに含んでよい。対象のリスクをリスクスコア1、リスクスコア2、リスクスコア3、またはリスクスコア4とした分類に基づいて、対象は、好酸球性喘息、好酸球性COPD、好酸球性ACOS、もしくはそれらの高好酸球サブセット、または鼻茸を阻害する治療レジメンから恩恵を受ける可能性がある。阻害治療レジメンは、IL33アンタゴニストの種類、用量、投薬頻度などの調整、加えてIL-4Rアンタゴニストと組み合わせるか否か、もしそうであれば、例えば、リスクのレベルに応じたIL-4Rアンタゴニストの種類、用量、及び投薬頻度などの調整を含んでよい。
【0031】
本方法は、対象から単離した血液または痰から、好酸球数のレベル増加を検出することをさらに含んでよい。レベル増加は、正常レベルを超える、または喘息、COPD、もしくはACOSの非好酸球サブセットを有する対象で通常観察されるレベルを超えると見なされるレベルである。本方法は、この目的のために、対象から血液または痰を単離することをさらに含んでよい。
【0032】
本方法は、対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することをさらに含んでよい。そのような投与は、好酸球性喘息、好酸球性COPD、もしくは好酸球性ACOS、またはそれらの高好酸球サブセットを阻害するのに有効な量によるものであってよい。いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33トラップを含んでよい。いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL33アンタゴニストは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL-4Rアンタゴニストは、本明細書に記載されている。
【0033】
第2の態様では、本開示は、好酸球性喘息の処置または阻害を必要とする対象の好酸球性喘息を処置または阻害する方法を特徴とする。好酸球性喘息は、好酸球性喘息の低好酸球サブセットであってよい、または好酸球性喘息の高好酸球サブセットであってよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含み、好酸球性喘息が対象内で処置または阻害されるものである。
【0035】
いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33トラップを含んでよい。いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL33アンタゴニストは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL-4Rアンタゴニストは、本明細書に記載されている。
【0036】
第3の態様では、本開示は、好酸球性COPDの処置または阻害を必要とする対象の好酸球性COPDを処置または阻害する方法を特徴とする。好酸球性COPDは、好酸球性COPDの低好酸球サブセットであってよい、または好酸球性COPDの高好酸球サブセットであってよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性COPDと関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含み、好酸球性COPDが対象内で処置または阻害されるものである。
【0038】
いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33トラップを含んでよい。いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL33アンタゴニストは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL-4Rアンタゴニストは、本明細書に記載されている。
【0039】
第4の態様では、本開示は、好酸球性ACOSの処置または阻害を必要とする対象の好酸球性ACOSを処置または阻害する方法を特徴とする。好酸球性ACOSは、好酸球性ACOSの低好酸球サブセットであってよい、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットであってよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、本方法は、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性ACOSと関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含み、好酸球性ACOSが対象内で処置または阻害されるものである。
【0041】
いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33トラップを含んでよい。いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL33アンタゴニストは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。好適なIL-4Rアンタゴニストは、本明細書に記載されている。
【0042】
本明細書に記載または例示される方法のいずれにおいても、IL33アンタゴニストは、治療レジメンの一部として投与されてよい。IL33アンタゴニストは、IL33とその結合パートナーのうち1つ以上との相互作用を阻害し、その際に、IL33媒介シグナル伝達を阻害する任意の剤を含んでよい。例えば、IL33アンタゴニストは、IL33に結合してよい、及び/またはIL33と、もしくは「腫瘍形成抑制因子(suppression of tumorigenicity)」(ST2としても知られる)と称されるIL33受容体と、もしくはIL33共受容体のインターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質(IL-1RAcP)と、もしくは次のいずれかの複合体:IL33/ST2、もしくはST2/IL-1RAcPと相互作用してよい。
【0043】
IL33アンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例は、小分子IL33阻害剤、または受容体アンタゴニスト、またはストリンジェントな条件下で、IL33、もしくはIL33受容体もしくは共受容体のいずれかをコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸(例えば、短分子干渉RNA(siRNA)もしくは規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列RNA(CRISPR-RNAもしくはcrRNA)であり、crRNA及びtracrRNA配列を有する単一ガイドRNA(sgRNA)を含む)を含む。その他のIL33アンタゴニストは、IL33受容体(例えば、ST2)のリガンド結合部分、IL33結合足場分子(例えば、DARPin、HEATリピートタンパク質、ARMリピートタンパク質、テトラトリコペプチドリピートタンパク質、フィブロネクチンベースの足場構築物、及び天然に存在するリピートタンパク質をベースにしたその他の足場)、ならびに抗IL33アプタマーまたはその部分を含むタンパク質を含む。
【0044】
好ましい実施形態では、IL33アンタゴニストは、ヒトIL33に特異的に結合する抗体(IL33抗体)、またはその抗原結合断片を含む。本明細書に記載される方法に使用するための例示的な抗IL33抗体のアミノ酸配列識別子を、表1に示す。抗IL33抗体は、米国特許第9,453,072号明細書に記載されている任意の抗体を含んでよく、その全体が参照によって組み込まれる。
【0045】
【0046】
いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、米国特許第9,453,072号明細書に、及び本明細書の表1に記載されるような抗IL33抗体のアミノ酸配列の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、及び/または相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL33抗体、またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストは、配列番号:274のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の重鎖相補性決定領域(CDR、例えば、H1、H2、H3)及び配列番号:282のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域の軽鎖CDR(例えば、L1、L2、L3)を含む。いくつかの実施形態では、H1は配列番号:276のアミノ酸配列を含み、H2は配列番号:278のアミノ酸配列を含み、H3は配列番号:280のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、L1は配列番号:284のアミノ酸配列を含み、L2は配列番号:286のアミノ酸配列を含み、L3は配列番号:288のアミノ酸配列を含む。さらにその他の実施形態では、抗IL33抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:274を含むHCVR及び配列番号:282を含むLCVRを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、IL33抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、及び308からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)を含み、配列番号:10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、及び316からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗IL33抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号:2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、または308/316のHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)配列対を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、抗IL33抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号:4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、及び310からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に同様のそれらの配列、配列番号:6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、及び312からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に同様のそれらの配列、配列番号:12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、及び318からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に同様のそれらの配列、ならびに配列番号:14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、及び320からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に同様のそれらの配列を含む。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、抗IL33抗体またはその抗原結合断片は、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインがそれぞれ、配列番号:4-6-8-12-14-16(例えば、H1M9559N)、20-22-24-28-30-32(例えば、H1M9566N)、36-38-40-44-46-48(例えば、H1M9568N)、52-54-56-60-62-64(例えば、H4H9629P)、68-70-72-76-78-80(例えば、H4H9633P)、84-86-88-92-94-96(例えば、H4H9640P)、100-102-104-108-110-112(例えば、H4H9659P)、116-118-120-124-126-128(例えば、H4H9660P)、132-134-136-140-142-144(例えば、H4H9662P)、148-150-152-156-158-160(例えば、H4H9663P)、164-166-168-172-174-176(例えば、H4H9664P)、180-182-184-188-190-192(例えば、H4H9665P)、196-198-200-204-206-208(例えば、H4H9666P)、212-214-216-220-222-224(例えば、H4H9667P)、228-230-232-236-238-240(例えば、H4H9670P)、244-246-248-252-254-256(例えば、H4H9671P)、260-262-264-268-270-272(例えば、H4H9672P)、276-278-280-284-286-288(例えば、H4H9675P)、292-294-296-300-302-304(例えば、H4H9676P)、及び310-312-314-318-320-322(H1M9565N)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するものを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗IL33抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号:2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、または308/316の重鎖及び軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列内に含有される重鎖及び軽鎖CDRドメインを含む。CDRの境界は、Kabat定義、Chothia定義、またはAbM定義によるものであってよい。
【0052】
本明細書に記載される方法に使用されてよい、その他の抗IL33抗体及びその抗原結合断片は、欧州公開第EP1725261号明細書、PCT公開第WO2011/031600号明細書、同第WO2015/099175号明細書、同第WO2015/106080号明細書(ANB020)、同第WO2016/077381号明細書、同第WO2016/077366号明細書、または同第WO2016/156440号明細書、米国特許第8,187,596号明細書、及び米国公開第2016/0168242号明細書に開示され、その各々全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
代替的な好ましい実施形態では、IL33アンタゴニストは、IL33トラップを含む。IL33トラップは少なくとも1つのIL33結合ドメインを含み、そのドメインはST2と称される、IL33受容体タンパク質のIL33結合部分を含む。いくつかの実施形態では、IL33トラップは、IL-1受容体アクセサリータンパク質、またはIL-1RAcPと称される、IL33共受容体の細胞外部分をさらに含む。IL33トラップは少なくとも1つの多量体化成分も含んでよく、その成分はトラップの様々な成分を互いに結合させるように機能する。IL33トラップの様々な成分は、以下に記載され、
図1で示される。IL33トラップは、米国公開第2014/0271642号明細書及びPCT公開第WO2014/152195号明細書に記載されている任意のトラップを含んでよく、その各々全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0054】
IL33トラップは、多量体化ドメイン(M)に結合した第1IL33結合ドメイン(D1)を含んでよい。いくつかの実施形態では、IL33トラップは、D1及び/またはMに結合した第2IL33結合ドメイン(D2)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、D1は、ST2タンパク質のIL33結合部分を含む。いくつかの好ましい実施形態では、D2は、IL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む。
【0055】
IL33トラップの個々の成分は、IL33と結合できる機能性アンタゴニスト分子をもたらす様々な方法で互いに関連して配置されてよい。例えば、D1及び/またはD2は、MのN末端に結合されてよい。いくつかの実施形態では、D1及び/またはD2は、MのC末端に結合される。その他の実施形態では、D1はD2のN末端に結合され、D2はMのN末端に結合されて、式D1-D2-Mで表されるアンタゴニスト分子の、N末端からC末端へのインライン融合をもたらす。個々の成分に関するその他の配置は、
図1の本明細書内の他の箇所に開示される。
【0056】
IL33トラップは、少なくとも1つのIL33結合ドメイン(名称「D」、または「D1」、「D2」などで本明細書において称される時もある)を含む。いくつかの実施形態では、IL33結合ドメインは、ST2タンパク質のIL33結合部分を含む。ST2タンパク質のIL33結合部分は、ST2タンパク質の細胞外ドメインの全てまたは一部を含み得るか、またはそれらからなり得る。好ましい実施形態では、ST2タンパク質はヒトST2タンパク質であり、アクセッション番号NP_057316.3のアミノ酸1~556(配列番号:352)のST2タンパク質を含む。いくつかの代替的実施形態では、ST2タンパク質は、非ヒト種に由来するST2タンパク質(例えば、マウスST2、非ヒト霊長類ST2など)を含む。ST2タンパク質の好ましいIL33結合部分は、配列番号:328のアミノ酸配列(ヒトST2の細胞外ドメイン[NCBIアクセッション番号NP_057316.3のK19-S328]に相当する)として本明細書に記載される。ST2タンパク質のIL33結合部分のその他の例は、配列番号:329のアミノ酸配列(マウスST2の細胞外ドメイン[NCBIアクセッション番号P14719のS27-R332]に相当する)として本明細書に記載される。
【0057】
いくつかの実施形態では、トラップのIL33結合ドメインは、IL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む。ある種の実施形態では、IL-1RAcPタンパク質はヒトIL-1RAcPタンパク質を含み、配列番号:353のアミノ酸配列を有するIL-1RAcPタンパク質を含む。いくつかの代替的実施形態では、IL-1RAcPタンパク質は、非ヒト種に由来するIL-1RAcPタンパク質(例えば、マウスIL-1RAcP、非ヒト霊長類IL-1RAcPなど)を含む。IL-1RAcPタンパク質の例示的な細胞外部分は、配列番号:330のアミノ酸配列(ヒトIL-1RAcPの細胞外ドメイン[NCBIアクセッション番号Q9NPH3のS21-E359]に相当する)として本明細書に記載される。IL-1RAcPタンパク質の細胞外部分のその他の例は、配列番号:331のアミノ酸配列(マウスIL-1RAcPの細胞外ドメイン[NCBIアクセッション番号Q61730のS21-E359]に相当する)として本明細書に記載される。
【0058】
本方法に使用するためのIL33トラップの非限定的な例は表2に示され、「hST2-hFC」、「hST2-mFc」、「hST2-hIL1RAcP-mFc」、「hST2-hIL1RAcP-hFc」及び「mST2-mIL1RAcP-mFc」と称されるIL33トラップを含む。これらは、それぞれ配列番号:323、324、325、326及び327に相当する。IL33受容体ベースのトラップは、本明細書に記載される例示的なIL33受容体ベースのトラップ(例えば、配列番号:323、324、325、326及び327)のいずれかと少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。IL33トラップは、本明細書に記載される例示的なIL33結合ドメイン成分のアミノ酸配列(例えば、配列番号:328、329、330及び331)のいずれかと少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するD1及び/またはD2成分を含んでよい。
【0059】
5つの異なる例示的なIL33トラップを構築した。第1IL33アンタゴニスト(hST2-hFc、配列番号:323)は、ヒトIgG1Fc領域(配列番号:332)のN末端に、ヒトST2の可溶性細胞外領域(配列番号:328)をそのC末端で融合させたものを含む。第2IL33アンタゴニスト(hST2-mFc、配列番号:324)は、マウスIgG2aFc領域(配列番号:333)のN末端に、ヒトST2の可溶性細胞外領域(配列番号:328)をそのC末端で融合させたものからなる。第3IL33アンタゴニスト(hST2-hIL1RAcP-mFc、配列番号:325)は、そのN末端にヒトST2(配列番号:328)、続いてヒトIL-1RAcPの細胞外領域(配列番号:330)、続いてそのC末端にマウスIgG2aFc(配列番号:333)を有するインライン融合からなる。第4IL33アンタゴニスト(mST2-mIL1RAcP-mFc、配列番号:326)は、そのN末端にマウスST2(配列番号:329)、続いてマウスIL-1RAcPの細胞外領域(配列番号:331)、続いてそのC末端にマウスIgG2aFc(配列番号:333)を有するインライン融合からなる。第5IL33アンタゴニスト(hST2-hIL1RAcP-hFc、配列番号:327)は、そのN末端に配列番号:328のヒトST2、続いてヒトIL-1RAcPの細胞外領域(配列番号:330)、続いてそのC末端にヒトIgG1Fc(配列番号:332)を有するインライン融合からなる。表2を参照のこと。
【0060】
【0061】
IL33トラップは、少なくとも1つの多量体化ドメイン(略語「M」、「M1」、「M2」などで本明細書において称される時もある)を含んでよい。大まかに言えば、多量体化ドメイン(複数可)は、IL33アンタゴニストの様々な成分(例えば、IL33結合ドメイン(複数可))を互いに結合させるように機能する。多量体化ドメインは、同じまたは類似した構造または構成を持つ第2高分子と関連する(共有結合または非共有結合)能力を有する任意の高分子を含んでよい。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンCH3ドメインを含むポリペプチドを含んでよい。多量体化ドメインの非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、加えて各アイソタイプ群内の任意のアロタイプから選択されるIgGのFcドメインである。
【0062】
IL33トラップで使用され得る非限定的で例示的な多量体化ドメインは、ヒトIgG1Fc(配列番号:332)またはマウスIgG2aFc(配列番号:333)を含む。IL33トラップは、本明細書に記載される例示的なM成分のアミノ酸配列(例えば、配列番号:332または333)のいずれかと少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するM成分を含んでよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、IL33トラップは2つの多量体化ドメイン、すなわちM1及びM2を含み、M1及びM2は互いに同一である。例えば、M1は特定のアミノ酸配列を有するFcドメインであり得、M2はM1と同じアミノ酸配列を有するFcドメインである。IL33アンタゴニストの個々の成分(例えば、D1、D2、Mなど)は、様々な方法で互いに関連して配置され得る。2つの多量体化ドメイン(M1及びM2)ならびに4つのIL33結合ドメイン(D1、D2、D3及びD4)を含むIL33トラップの一例を含む、上記した配置全ての非限定的な例は、
図1で概略的に図示されている。
【0064】
IL33トラップの個々の成分(例えば、D1、D2、M1、M2など)は、互いに直接結合されてよく(例えば、D1及び/またはD2がMに直接結合されてよいなど)、あるいは、個々の成分は、リンカー成分を介して互いに結合されてよい(例えば、D1及び/またはD2が個々の成分間に配向されるリンカーを介してMに結合されてよく、D1がリンカーを介してD2に結合されてよいなど)。
【0065】
IL33及び/またはその受容体(ST2及び/またはIL-1RAcP)と結合し、リガンド-受容体相互作用をブロックするポリペプチドは、IL33アンタゴニストと見なされ、それらはPCT公開第WO2014/152195号明細書に開示され、その全体が参照によって組み込まれる。IL33トラップの生物学的特徴は、米国公開第2014/0271642号明細書に記載され、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0066】
IL33アンタゴニストとして作用する可能性があり、本方法で使用されてよいその他の剤は、イムノアドヘシン、ペプチボディ、及び可溶性ST2、またはそれらの誘導体、PCT公開第WO2012/113813号明細書、同第WO2013/173761号明細書、及び同第WO2013/165894号明細書、加えて米国特許第8,444,987号明細書及び同第7,452,980号明細書に記載され、その各々全体が参照によって本明細書に組み込まれる抗IL33受容体抗体(例えば、抗ST2抗体、例えば、AMG-282(Amgen)もしくはSTLM15(Janssen)または抗ST2抗体のいずれか)を含む。その他のIL33アンタゴニストはST2-Fcタンパク質、例えば、PCT公開第WO2013/173761号明細書及び同第WO2013/165894号明細書に記載されているものなどを含み、その各々全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0067】
本明細書に記載または例示される方法のいずれにおいても、IL-4Rアンタゴニストは、治療レジメンの一部として投与されてよい。IL-4Rアンタゴニストは、IL33アンタゴニストと組み合わせて好ましくは投与されるが、IL-4RアンタゴニストがIL33アンタゴニストと同時に投与される必要はない。IL-4Rアンタゴニストは、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合するか、またはそれと相互作用し、1型及び/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱させる任意の剤を含んでよい。IL-4Rは、配列番号:347のアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片を含んでよい。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖及びγc鎖からなる二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖及びIL-13Rα1鎖からなる二量体受容体である。1型IL-4受容体はIL-4と相互作用し、それによって刺激されるが、2型IL-4受容体はIL-4及びIL-13の両方と相互作用し、それらによって刺激される。したがって、本方法で使用されるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4及びIL-13媒介シグナル伝達の両方をブロックすることによって機能してよい。したがって、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4及び/またはIL-13と、1型または2型受容体との相互作用を阻害または防止してよい。
【0068】
IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例は、小分子IL-4Rアンタゴニスト、IL-4R発現または活性の核酸ベースの阻害剤(例えば、siRNAまたはアンチセンス)、特異的にIL-4Rと相互作用するペプチドベースの分子(例えば、ペプチボディ)、「受容体ボディ」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む遺伝子操作された分子)、IL-4R結合足場分子(例えば、DARPin、HEATリピートタンパク質、ARMリピートタンパク質、テトラトリコペプチドリピートタンパク質、フィブロネクチンベースの足場構築物、及び天然に存在するリピートタンパク質をベースにしたその他の足場)、ならびに抗IL-4Rアプタマーまたはその部分を含む。
【0069】
好ましい実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、ヒトIL-4Rに特異的に結合する抗体を含む。抗体は、次の命名法によって本明細書において通常称される:Fc接頭辞(例えば、「H1M」、または「H4H」)、続いて数値識別子(例えば、表1に示されるような「9559」、「9566」、または「9629」)、続いて「P」、または「N」接尾辞。この命名法によると、抗体は、例えば、「H1M9559N」、「H1M9566N」、「H4H9629P」などと本明細書において称されてよい。本明細書で使用される抗体名称のH1M及びH4H接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H1M」抗体は、マウスIgG1Fcを有するのに対して、「H4H」抗体はヒトIgG4Fcを有する。特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体へと変換され得る(例えば、マウスIgG1Fcを有する抗体が、ヒトIgG4を有する抗体へと変換され得るなど)一方で、いずれにしても、表1に示される数値識別子によって示される可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであることとし、Fcの性質にかかわらず、結合特性は同一または実質的に同様であると予想される。
【0070】
好ましい実施形態では、抗IL-4R抗体は、デュピルマブである。米国特許第7,605,237号明細書、同第7,608,693号明細書、及び同第9,290,574号明細書を参照し、それらは参照によって組み込まれる。
【0071】
ヒト抗IL-4R抗体は、米国特許第7,608,693号明細書に記載されているように生成され得る。1つの例示的なIL-4R抗体は、マウスIL-4Rに特異的なマウス抗体であり、次のアミノ酸配列:配列番号:335を含む重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号:336を含む軽鎖可変ドメイン(LCVR)を有する。デュピルマブと称される、ヒト抗IL-4R抗体は、ヒトIL-4Rαに特異的に結合し、配列番号:337を含む重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号:338を含む軽鎖可変領域(LCVR)、配列番号:339を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号:340を含むHCDR2、配列番号:341を含むHCDR3、配列番号:342を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号:343を含むLCDR2ならびに配列番号:344を含むLCDR3を含む。デュピルマブの全長重鎖は、配列番号:345として示され、全長軽鎖は配列番号:346として示される。
【0072】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、米国特許第7,605,237号明細書及び同第7,608,693号明細書に記載されるような抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、及び/または相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL-4Rα抗体、またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、本明細書においてデュピルマブと称される参照抗体の結合特性を有する抗IL-4R抗体を含む(米国特許第7,605,237号明細書及び米国特許第7,608,693号明細書)。いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:337のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)及び配列番号:338のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号:339のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号:340のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号:341のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号:342のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号:343のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号:344のアミノ酸配列を含む。さらにその他の実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:337を含むHCVR及び配列番号:338を含むLCVRを含む。さらにその他の実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:335を含むHCVR及び配列番号:336を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:345に記載されるような重鎖(HC)アミノ酸配列及び配列番号:346に記載されるような軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:335または配列番号:337のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)及び配列番号:336または配列番号:338のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号:339のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号:340のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号:341のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号:342のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号:343のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号:344のアミノ酸配列を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示の本方法に使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:335または配列番号:337のアミノ酸配列を含むHCVR及び配列番号:336または配列番号:338のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示の本方法に使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:335/336または配列番号:337/338のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0077】
その他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317と称され、それとして当該技術分野において既知の抗体(Corren et al.,2010,Am J Respir Crit Care Med.,181(8):788-796)、またはMEDI9314、または米国特許第7,186,809号明細書、同第7,605,237号明細書、同第7,638,606号明細書、同第8,092,804号明細書、同第8,679,487号明細書、もしくは同第8,877,189号明細書のいずれかに記載されるような抗IL-4Rα抗体のいずれかが挙げられる。
【0078】
抗IL-4Rα及びIL33抗体は、pH依存的結合特性を有してよい。例えば、抗IL-4Rα抗体または抗IL33抗体は、中性pHと比較した場合に酸性pHで、それぞれIL-4Rαへの、またはIL33への結合減少を示す可能性がある。あるいは、抗IL-4Rα抗体または抗IL33抗体は、中性pHと比較した場合に酸性pHで、その抗原への結合増強を示す可能性がある。「酸性pH」は、約6.2未満のpH値、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満を含む。「中性pH」は、約7.0~約7.4、加えて約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4のpHを含む。
【0079】
別の態様では、IL33アンタゴニストは、肺の炎症状態を処置または阻害するために単独でまたはIL-4Rアンタゴニストと組み合わせて使用される。IL33アンタゴニストまたは組合せは、喘息、COPD、またはACOSのうち1つ以上を処置または阻害するために使用されてよい。IL33アンタゴニストまたは組合せは、鼻茸を処置または阻害するために使用されてよい。組合せは、好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSのうち1つ以上を処置または阻害するために使用されてよい。IL33アンタゴニストまたは組合せは、好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットのうち1つ以上を処置または阻害するために使用されてよい。組合せは、各抗体が単独療法として単独で使用される場合に得られる処置または阻害と比較した場合、有効性の増強を示す。
【0080】
いくつかの実施形態では、IL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せは、好酸球性喘息、好酸球性慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球好酸球性COPD、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸のいずれか1つの処置または阻害のための医薬品の製造に使用される。好ましい実施形態では、IL33アンタゴニストまたは組合せは、好酸球性喘息、好酸球性COPD、好酸球性ACOS、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球好酸球性COPD、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸の患者が、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号:357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及びIL33バリアントrs1342326(配列番号:358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息、好酸球性COPD、または好酸球性ACOSと関連する1つ以上のリスクアレルを有する場合に、好酸球性喘息、好酸球性COPD、好酸球性ACOS、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球好酸球性COPD、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸のいずれか1つのそのような処置または阻害のための医薬品の製造に使用される。
【0081】
そのような使用によれば、IL33アンタゴニストは、IL33トラップを含んでよい。IL33トラップは、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含んでよい。IL33アンタゴニストは、その代わりにIL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:274のH1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号:282のL1、L2、及びL3ドメインを含んでよい。IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでよい。IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:337のH1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号:338のL1、L2、及びL3ドメインを含んでよい。
【0082】
以下の実施例は、さらに詳細に本開示を記載するために提供される。それらは、限定されることなく本開示を例証することを意図する。
【実施例】
【0083】
実施例1
慢性室内塵ダニ誘発線維症及び重篤な肺炎モデルにおける抗IL33抗体、抗IL-4R抗体、及び両方の組合せ
慢性炎症性気道疾患は、主にアレルゲンまたはその他の病原体への反復曝露に起因する気道炎症の再発エピソードの結果である。ヒトでは、そのような慢性的損傷によって、免疫細胞による肺浸潤、サイトカイン産生、粘液産生及びコラーゲン沈着の増加を含む非常に幅広い病状が誘発される。強い気道リモデリングを伴う、炎症性サイトカイン及び免疫細胞浸潤物の増加は、気道狭窄、アレルゲンまたは病原体などの吸入トリガーに対する過敏症、気道閉塞及び肺機能喪失を招く。
【0084】
関連インビボモデルにおいて抗IL33阻害の効果を決定するために、慢性室内塵ダニ抽出物(HDM)誘発線維症及び重篤な肺炎及びリモデリング試験を、マウスIL33の代わりにヒトIL33を発現するホモ接合体であるマウス(IL33 HumInマウス)で実施した。米国公開第2015/0320021号明細書及び同第2015/0320022号明細書を参照のこと。慢性HDM抽出物曝露によって重篤な肺炎が誘発されて、甚大な細胞浸潤、サイトカイン発現、及びリモデリングが引き起こされる。抗IL33抗体、抗マウスIL-4Rα抗体または両方の組合せに関する有効性を、本モデルで比較した。本試験で使用した抗マウスIL-4Rα抗体は、M1M1875Nと称され、配列番号:335/336のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。本試験で使用した抗IL33抗体は、H4H9675Pと称され、配列番号:274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0085】
IL33 HumInマウスに、20μLの1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した50μgの室内塵ダニ抽出物(HDM、Greer、#XPB70D3A2.5)、または20μLの1×PBSのいずれかを、週に3日間で15週間鼻腔内投与した。IL33 HumInマウスの第2対照群に、20μLの1×PBSで希釈した50μgのHDM抽出物を、週に3日間で11週間投与し、抗体処置の開始時における疾患の重篤さを評価した。4つの群のHDM負荷マウスに、25mg/kgの抗IL33抗体H4H9675P、抗マウスIL-4Rα抗体M1M1875N、両方の組合せ抗体、またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを、HDM負荷の11週間後から開始して、次いでHDM負荷の終了まで週に2回(4週間の抗体処置)で皮下注射した。試験の108日目、全てのマウスを犠牲死させ、それらの肺を採取した。マウス群の実験上の投薬及び処置プロトコールを表3に示す。
【0086】
【0087】
サイトカイン分析用肺採取物。典型的な2型サイトカインのIL-4、IL-5、及びIL-13、加えてIL-1βまたはTNFαなどの1型免疫応答により特徴的なサイトカインなどの主要なメディエーターの肺レベル上昇は、ヒトの肺疾患発症に関与している。これらの炎症性サイトカインの肺レベルを、本試験で測定した。
【0088】
放血後、各マウスから右肺の前葉及び中葉を取り出し、1×Haltプロテアーゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、#87786)を補充した、組織タンパク質抽出試薬(1×T-PER試薬、Pierce、#78510)の溶液を含有するチューブ内に入れた。以後の全ステップを氷上で実施した。T-PER試薬(プロテアーゼ阻害剤カクテル含有)の容積を、組織対T-PER比が1:7(w/v)に一致するよう各試料について調整した。肺試料を、TissueLyser II(Qiagen
#85300)を使用して機械的に破砕した。得られた溶解物を遠心分離し、ペレット破片にした。可溶性タンパク質抽出物を含有する上清を新しいチューブに移し、さらなる分析時まで4℃で保存した。
【0089】
肺タンパク質抽出物中の総タンパク質含有量を、Bradfordアッセイを使用して測定した。アッセイのために、10μLの希釈抽出物試料を96ウェルプレート中に2連で播種し、200μLの1×色素試薬(Biorad、#500-0006)と混合した。ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma、#A7979)の、1×T-Per試薬中700μg/mLで開始した段階希釈物を標準物として使用し、抽出物のタンパク質濃度を決定した。5分間のインキュベーションを室温で行った後、595nmでの吸光度を、Molecular Devices SPECTRAMAX(登録商標)M5プレートリーダー上で測定した。BSA標準に基づいて、肺抽出物の総タンパク質含有量を決定するためのデータ分析は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して実施した。
【0090】
肺タンパク質抽出物中のサイトカイン濃度を、Proinflammatory Panel1(マウス)マルチプレックスイムノアッセイキット(MesoScale Discovery、#K15048G-2)及びカスタムマウス6プレックスMULTI-SPOT(登録商標)イムノアッセイキット(MesoScale Discovery、#K152A41-4)を使用し、製造業者の指示に従って測定した。簡潔に述べると、50μL/ウェルの較正物質及び試料(Diluent41で希釈)を、捕捉抗体でプレコートしたプレートに添加し、700rpmで振盪しながら2時間室温でインキュベートした。次いで、プレートを、0.05%(w/v)TWEEN(登録商標)-20界面活性剤を含有する1×PBSで3回洗浄し、続いてDiluent45で希釈した25μLの検出抗体溶液を添加した。振盪しながら室温で2時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、150μLの2×リード緩衝液を各ウェルに添加した。電気化学発光をMSD Spector機器で直ちに読み取った。データ分析を、Graphpad Prismソフトウェアを使用して実施した。
【0091】
各群の全マウスからの肺総タンパク質抽出物中における各サイトカイン濃度を、Bradfordアッセイによって測定した抽出物の総タンパク質含有量を基準として正規化し、表4に示す通り、各群について、肺総タンパク質mgあたりのサイトカインの平均pg(pg/mg肺タンパク質、±SD)として表した。
【0092】
肺サイトカイン分析。表4に示す通り、アイソタイプ対照抗体での処置有りまたは無しの、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中で放出されるサイトカイン及びケモカインIL-4、IL-5、IL-6、IL-1β及びMCP-1のレベルは、1×PBS単独で負荷したIL33 HumInマウス中よりも著しく高かった。同様に、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中では、サイトカインIL-13及びTNFαの放出が増加する傾向があった。対照的に、抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したIL33 HumInマウスの肺中では、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、IL-6、IL-13及びMCP-1のレベルが大幅に減少した。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したIL33 HumInマウスでは、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、IL-4、IL-5、IL-1β及びTNFαの肺レベルが減少する傾向があった。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで観察した肺サイトカインに対する効果は、個々の抗体のいずれかによる単独での処置よりも大きかった。
【0093】
【0094】
【0095】
遺伝子発現分析用肺採取物。放血後、各マウスから右肺の副葉を取り出し、400μLのRNA Later(Ambion、#AM7020)を含有するチューブ内に入れ、処理時まで-20℃で保存した。組織をTRIzol中で均質化し、クロロホルムを相分離のために使用した。全RNAを含有する水相を、製造業者の仕様に従って、MagMAX(商標)-96 for Microarrays Total RNA Isolation Kit(Life TechnologiesによるAmbion、#AM1839)を使用して精製した。ゲノムDNAを、上に列挙したMagMAXキットからのMagMAX(商標)Turbo(商標)DNase Buffer及びTURBO DNaseを使用して取り出した。mRNA(最大2.5μg)を、SuperScript(登録商標)VILO(商標)Master Mix(Life TechnologiesによるInvitrogen、#11755500)を使用してcDNAに逆転写した。cDNAを2ng/μLに希釈し、10ngのcDNAを、TaqMan(登録商標)Gene Expression Master Mix(Life TechnologiesによるApplied Biosystems、#4369542)及び関連プローブ(Life Technologies、マウスB2m:Mm00437762_m1、マウスIl4:Mm00445259_m1、マウスIl5:Mm00439646_m1、マウスIl13:Mm00434204_m1、マウスIl9:Mm00434305_m1、マウスIl6:Mm00446190_m1、マウスCcl2:Mm00441242_m1、マウスCcl11:Mm00441238_m1、マウスCcl24:Mm00444701_m1、マウスTnf:Mm00443258_m1、マウスTgfb1:Mm01178820_m1、マウスIl1rl1:Mm00516117_m1、マウスIl13ra2:Mm00515166_m1、マウスCol15a1:Mm00456584_m1、マウスCol24a1:Mm01323744_m1)を用いて、ABI 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用して増幅した。B2mを内部標準遺伝子として使用し、任意のcDNA入力差を正規化した。全ての試料の正規化に使用した参照群は、群1試料(「1×PBS負荷」)の平均であった。各遺伝子の発現を、同じ試料内のB2m発現を基準として正規化し、表5に示す通り、参照群におけるその正規化発現と比較して表した(平均±SD)。
【0096】
肺遺伝子発現分析。表5に示す通り、アイソタイプ対照抗体での処置有りまたは無しの、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中におけるサイトカイン、ケモカイン及びコラーゲン遺伝子Il4、Il13、Il6、Ccl2、Tgfb1、Il13ra2及びCol24a1の発現レベルは、1×PBS単独で負荷したIL33 HumInマウスと比較して著しく増加した。同様に、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中では、遺伝子Il5、Il9、Ccl11、Ccl24、Tnf、Il1rl1及びCol15a1の発現が増加する傾向があった。
【0097】
対照的に、抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したIL33 HumInマウスの肺中では、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、Il6、Ccl2、Ccl11及びCcl24の発現レベルが大幅に減少した。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したマウスでは、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、Il4、Il5、Il13、Il9、Tnf、Tgfb1、Il1rl1、Il13ra2、Col15a1及びCol24a1発現レベルが減少する傾向があった。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで観察した遺伝子発現に対する効果は、個々の抗体のいずれかによる単独での処置よりも大きかった。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
肺細胞浸潤物分析用の肺採取物。免疫細胞による肺浸潤は、喘息及びCOPDを含む、多数の気道炎症性疾患で観察される。好中球性肺炎は、喘息患者の肺機能低下及び重篤な組織リモデリングと関連している。好酸球性肺炎は、アトピー性疾患で通常見られる2型炎症の顕著な特徴である。ヒトでは、肉芽腫性肺疾患及びその他の慢性炎症状態を有する患者において、高CD4/CD8比が観察される。フローサイトメトリーを本試験で使用し、HDM曝露マウスの肺中において細胞浸潤のレベルを決定した。
【0102】
放血後、各マウスから右肺の後葉を取り出し、およそ2~3mmサイズの細かい角切りにして、次いでハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco、#14025)で希釈した20μg/mLのDNAse(Roche、#10104159001)及び0.7U/mLのリベラーゼTH(Roche、#05401151001)の溶液を含有するチューブ内に入れ、それを37℃水浴中で20分間インキュベートし、5分おきにボルテックスした。エチレンジアミン四酢酸(EDTA、Gibco、#15575)を、10mMの最終濃度で添加することによって反応を停止させた。その後、各肺を、gentleMACS dissociator(Miltenyi Biotec、#130-095-937)を使用して分離し、次いで70μmフィルターに通して濾過して遠心分離した。得られた肺ペレットを、1mLの1×赤血球溶解緩衝液(Sigma、#R7757)中に再懸濁させて、赤血球を除去した。3分間室温でインキュベートした後、3mLの1×DMEMを添加して、赤血球溶解緩衝液を不活化させた。次いで、細胞懸濁液を遠心分離し、得られた細胞ペレットを、5mLのMACS緩衝液(autoMACS Running Buffer、Miltenyi Biotec、#130-091-221)中に再懸濁させた。再懸濁した試料を70μmフィルターに通して濾過し、1ウェルあたり1×106細胞を96ウェルV底プレート中に播種した。次いで、細胞を遠心分離し、ペレットを1×PBSで洗浄した。2回目の遠心分離後、細胞生存能を決定するために、細胞ペレットを、1×PBSで1:500に希釈した100μLのLIVE/DEAD Fixable Blue Dead Cell Stain(Life Technologies、#L23105)中に再懸濁させ、遮光しながら室温で20分間インキュベートした。1×PBSで1回洗浄した後、細胞を、10μg/mLの精製ラット抗マウスCD16/CD32Fc Block(クローン:2.4G2、BD Biosciences、#553142)を含有するMACS緩衝液の溶液中において4℃で10分間インキュベートした。次いで、細胞を、MACS緩衝液で希釈した適切な2×抗体混合物(表6に記載)中において遮光しながら4℃で30分間インキュベートした。抗体のインキュベーション後、細胞をMACS緩衝液で2回洗浄し、BD CytoFix(BD Biosciences、#554655)中に再懸濁させて、次いで遮光しながら4℃で15分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄してMACS緩衝液中に再懸濁させ、次いでフローサイトメトリーによる細胞浸潤物の分析のためにBD FACSチューブ(BD Biosciences、#352235)に移した。
【0103】
CD4及びCD8T細胞を、それぞれ生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3+、CD19-、CD4+、CD8-及び生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3+、CD19-、CD4-、CD8+である細胞として定義した。活性化CD4T細胞を、生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3+、CD19-、CD4+、CD8-、及びCD69+である細胞として定義した。活性化CD8T細胞を、生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3+、CD19-、CD4-、CD8+、及びCD69+である細胞として定義した。活性化B細胞を、生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3-、CD19+、及びCD69+である細胞として定義した。ST2+CD4+T細胞を、生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3+、CD19-、ST2+及びCD4+である細胞として定義した。好酸球を、生細胞でCD45+、GR1-、CD11clo、SiglecFhiとして定義した。肺胞マクロファージを、生細胞でCD45+、GR1-、CD11cHi、SiglecFhiとして定義した。活性化細胞のデータを、母集団(CD4)内の活性化細胞(CD69+)の頻度として表す(±SD)。ST2+CD4+T細胞のデータを、T細胞(生細胞でCD45+、SSCLo、FSCLo、CD3+及びCD19-である細胞として定義した)の頻度として表す。好酸球及び肺胞マクロファージのデータを、生細胞の頻度として表す。CD4/CD8T細胞比を、生集団内におけるCD4T細胞頻度対CD8T細胞頻度の比として算出する。全てのデータを表7に示す。
【0104】
【0105】
肺細胞浸潤物分析。表7に示す通り、アイソタイプ対照抗体での処置有りまたは無しの、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中における好酸球、活性化B細胞、活性化CD8細胞、ST2+Cd4+T細胞の頻度及びCD4/CD8T細胞比は、1×PBS単独で負荷したIL33 HumInマウス中よりも著しく高かった。同様に、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中では、活性化CD4T細胞の頻度が増加する傾向があった。アイソタイプ対照抗体処置の存在下または不存在下における、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中では、フローサイトメトリーによって検出した肺胞マクロファージの頻度が低減する傾向があった。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したIL33 HumInマウスの肺中では、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、肺胞マクロファージの頻度が著しく増加した。同様に、抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したマウスの肺中では、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、好酸球、活性化CD4及びCD8T細胞、活性化B細胞、ST2+CD4+T細胞の頻度、加えてCD4/CD8T細胞比が減少する傾向があった。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで観察した肺中における好酸球、肺胞マクロファージ、活性化CD8T細胞、ST2+CD4+T細胞の頻度及びCD4/CD8細胞比に対する効果は、個々の抗体のいずれかによる単独での処置よりも有効性が高いという傾向を示す。
【0106】
【0107】
【0108】
組織病理学の定量用肺採取物。本モデルで観察した炎症パターンは、HDM曝露肺の広範かつ重篤な構造変化を伴い、杯細胞化生、上皮下コラーゲン沈着及び甚大な肺硬化の増加という証拠を有する。これらの病状は、肺機能及び気道過敏性低下の一因となるヒト炎症性呼吸器疾患の既知の特徴である。
【0109】
放血後、左肺を取り出して、1×リン酸緩衝生理食塩水中の4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Boston Bioproducts、#BM-155)の3mL溶液を含有するプレート内に入れ、室温で3日間保存した。次いで、肺試料を拭って乾燥させ、組織学的分析のために70%エタノールを含有するチューブに移した。パラフィン包埋、切断ならびに過ヨウ素酸シッフ(PAS)またはヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色のために、試料をHistoserv,Inc(Germantown、MD)に送付した。
【0110】
杯細胞化生の定量。杯細胞化生及び粘液分泌過多は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、及び嚢胞性線維症を含む多くの肺疾患の顕著な特徴である。過度な粘液産生は気道閉塞を招き、いくつかの重要な転帰、例えば、ヒトの肺機能、健康関連生活の質、憎悪、入院、及び死亡率などに影響を及ぼす。PAS陽性杯細胞及び全上皮細胞を、1ミリメートル長の主気管支で計数した。杯細胞化生は、表8に示す通り、1ミリメートルの気管支上皮中におけるPAS陽性細胞の頻度(%、±SD)として表す。
【0111】
肺硬化の定量。肺硬化は、肺胞腔中における固形または液状物質の蓄積を含む。肺硬化は、肉眼病変の測定値として本明細書で使用した、細胞浸潤物、過形成、及び粘液産生の組合せを反映する可能性がある複合エンドポイントである。結晶体が占めている肺領域の画分を、モバットペンタクローム染色パラフィン包埋肺切片上で、ImageJソフトウェア(NIH、Bethesda、MD)を使用して定量した。粒子分析機能を使用して、切片の全肺領域、加えて切片の硬化領域を測定した。硬化肺領域の画分を、表8に示す通り、両方の測定値の比によって求める。
【0112】
上皮下線維症の定量。上皮下線維症は、肺上皮の下における過剰な間質性コラーゲン沈着を含む。上皮下線維症の増加は、ヒトの喘息と特に関連していると報告されている。本モデルでは、上皮下線維症をマッソントリクローム染色パラフィン包埋肺切片上で、HaLoソフトウェア(Indica Labs、NM)を使用して測定した。層厚さツールを使用して、気管支上皮の下にあるコラーゲン層の厚さを、主気管支1ミリメートル間にわたって約30μm間隔で複数回記録した。上皮下線維症を、表8に示す通り、上皮の下にあるコラーゲン層の平均厚さ(μm、±SD)として表す。
【0113】
肺組織病理学の分析。表9に示す通り、1×PBS単独で負荷したIL33 HumInマウスと比較して、アイソタイプ対照抗体での処置有りまたは無しの、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの肺中では、杯細胞化生が増加する傾向があった。同様に、HDMを15週間施したIL33 HumInマウス中では、肺硬化、加えて上皮下コラーゲンの厚さが大幅に増加した。
【0114】
対照的に、抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したIL33 HumInマウスでは、慢性的なHDM負荷の最後の4週間で、この期間中にアイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、杯細胞化生及び上皮下コラーゲンの厚さが減少する傾向、ならびに肺硬化が大幅に減少する傾向があった。抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで観察した杯細胞化生、肺硬化及び上皮下コラーゲンの厚さに対する効果は、個々の抗体のいずれかによる単独での処置よりも有効性が高いという傾向を示した。
【0115】
【0116】
IgE及びHDM特異的IgG1レベル測定用の血清収集物。各マウスの血清試料中における総IgE濃度を決定するために、サンドイッチELISA OPTEIAキット(BD Biosciences、#555248)を製造業者の指示に従って使用した。血清試料を希釈し、96ウェルプレート上にコーティングした抗IgE捕捉抗体と共にインキュベートした。総IgEを、ビオチン化抗マウスIgE二次抗体によって検出した。精製西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識マウスIgEを、標準物として使用した。クロマゲン3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(BD OPTEIA基質試薬セット、BD、#555214)を使用して、HRP活性を検出した。次いで、1M硫酸の停止溶液を添加し、450nmでの吸光度をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダー上で測定した。データ分析を、Prism(商標)ソフトウェアを使用して実施した。各実験群について血清中の循環IgEレベルの平均量を、表9に示す通り、ng/mL(±SD)として表す。
【0117】
各マウスからの血清試料中におけるHDM特異的lgG1レベルを決定するために、ELISAを利用した。HDM(Greer、#XPB70D3A2.5)コーティングプレートを、段階希釈マウス血清試料と共にインキュベートし、続いてラット抗マウスlgG1-HRP複合化抗体(BD Biosciences、#559626)と共にインキュベートした。全ての試料をTMB溶液で発色させて、上に記載した通りに分析した。血清中の循環lgG1の相対レベルを、力価単位として表した(力価単位は、2回のバックグラウンドを超える、OD450を達成するのに必要な希釈係数を、測定したODに乗じることによって算出した)。各実験群について血清中の平均循環HDM特異的lgG1レベルを、表9に示す通り、力価×106(±SD)として表す。
【0118】
IgE及びHDM特異的IgG1の循環レベルの分析。表9に示す通り、1×PBS単独で負荷したIL33 HumInマウス中において、アイソタイプ対照抗体での処置有りまたは無しの、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの血清中では、IgEの循環レベルが大幅に増加した。同様に、HDMを15週間施したIL33 HumInマウスの血清中では、循環HDM特異的IgG1のレベルが増加する傾向があった。対照的に、アイソタイプ対照抗体と共にHDMを投与したIL33 HumInマウスと比較した場合、抗IL33及び抗マウスIL-4Rα抗体の組合せで処置したIL33 HumInマウスの血清中では、慢性的なHDM負荷の最後の4週間でIgEの循環レベルが大幅に低減し、HDM特異的IgG1の循環レベルが低減する傾向があった。
【0119】
【0120】
重篤な混合炎症と関連して開始したH4H9675P及び抗mIL-4Rα処置の組合せは、測定した全ての炎症パラメータを改善し、最大でベースラインレベルまで減少させる。さらに、複合的な肺肉眼病変、杯細胞化生、肺細胞浸潤、及びサイトカインレベルを含む、最も致命的なエンドポイントのいくつかに対して相加効果を観察する。したがって、両方の経路を同時にブロックすることは、重篤な混合炎症及び組織病変と関連する多数の炎症性メディエーターに影響を与え、多数のパラメータをベースラインまで正常化する可能性を有する。
【0121】
実施例2
IL33及びその受容体の遺伝的バリアントは、好酸球性喘息及びCOPDの両方と関連する
本実施例では、喘息、COPD、及びACOSのリスクを有するIL33及びIL1RL1の以前に同定した喘息リスクバリアント間の関係を、これまでに集められたそのような症例に関する最大の混合収集物で検査し、その中で遺伝子データを電子健康記録に関連付ける。喘息、COPD、及びACOSの好酸球サブタイプに対する、加えて鼻茸などの関連上気道疾患に対するこれらのバリアントの重要性を検査した。加えて、これらの疾患を有するIL1RL1及びIL33の予測した機能喪失バリアント(pLOF)間の関連を評価した。
【0122】
ヒト遺伝学研究監督。ヒト遺伝学研究は、Regeneron Genetics Center(RGC)及びGeisinger Health System(GHS)のDiscovEHR研究の一部として実施された。
【0123】
DiscovEHR参加者及び疾患定義。本試験の際、DiscovEHR研究は、GHSのMyCode(登録商標)Community Health Initiativeに登録した、合計で92,323人の成人個体を含んだ。本試験について、ヨーロッパ系祖先を持つ86,004人及び83,339人の個体は、分析のための表現型、ならびにそれぞれエクソームシーケンシング及び遺伝子型データを有した。参加者を、プライマリ・ケア及び専門クリニックの外来患者から募集した。好酸球数及び疾患診断コード(国際疾病分類第9回改訂版[ICD-9])をEHRから抽出し、これは14年間の臨床ケアの中央値をカバーしていた。EHR記録好酸球数の中央測定値を、個体内中央値からの>3標準偏差であった偽の可能性がある値を除去した後、完全血球数から導いた。次の基準のうち少なくとも1つに合致した場合、症例状態をICD-9コードに基づいて割り当てた:(1)診断コードの問題リスト登録、または(2)別々の暦日に2件の別々の臨床面接を開始した面接診断コード。個体を、ICD-9診断コードに基づいて3つの症例分類(喘息、COPD及びACOS)のうち1つ以上に割り当てた。
【0124】
全ての二分形質分析の対照患者を、喘息またはCOPDのICD-9診断コードに1つも当てはまらない個体として定義した。
シーケンシング及びジェノタイピング。試料調製及び全エクソームシーケンシングを実施した。簡潔に述べると、エクソーム捕捉を、NimbleGenプローブ(Roche、SeqCap VCRome)またはIntegrated DNA Technologiesプローブ(IDT、xGEN Exome Researchパネル)のいずれかを追加のコンテンツと共に使用し、各々の製造業者の推奨プロトコールに従って実施した。捕捉DNAをPCR増幅し、qRT-PCR(Kapa Biosystems)で定量した。多重化試料を、Illumina v4 HiSeq2500またはHiSeq Xシーケンサー上で75bpペアエンドシーケンシングを使用し、試料の96%における、標的塩基の85%を超える部分の20×半数体リード深度よりも多くを提供するのに十分なカバレッジ深度(標的塩基のおよそ80×平均半数体リード深度)までシーケンスした。各Illumina HiSeq2500ランからの生配列データを、配列リードアラインメント及びバリアント同定のためにDNAnexusプラットフォームにアップロードした。生配列データを、BCLファイルから試料特有のFASTQファイルに変換し、これを、BWA-memを用いてヒト参照ビルドGRCh38にアラインメントした。一塩基バリアント(SNV)及び挿入/欠失(インデル)配列バリアントを、Genome Analysis Toolkitを使用して同定した。10%未満の遺伝子型率を有する試料を除外した。最終分析のために、エクソームデータは、それぞれVCRome xGENプローブセットを使用して捕捉したヨーロッパ系祖先を持つ59,082人及び29,504人の個体について利用可能であった。
【0125】
DNAのアリコートを、Human OmniExpress Exome BeadchipまたはGlobal Screening Array(Illumina Corp.)を使用してジェノタイピングした。最終分析のために、チップデータは、それぞれOmni及びGSA BeadChip上でアッセイしたヨーロッパ系祖先を持つ56,239人及び28,500人の個体について利用可能であった。
【0126】
試験設計及び統計分析。OMNI及びGSAチップデータを使用して、閉塞性肺疾患、その他の気道疾患、及び循環好酸球数との関連について、2つの以前に同定した喘息リスクバリアント(IL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101))を評価した。これらのバリアントを、共変量として年齢、年齢2、性別、喫煙状態、及び祖先に関する最初の4つの主成分を含む、PLINKまたはRでのロジスティック回帰を使用し、加法モデル下において疾患との関連について試験した。EHR記録好酸球数の中央値を対数変換し、上記と同じ共変量について制御した線形(PLINK、R)モデルを使用し、加法遺伝子モデル下において遺伝子型との関連について試験した。全てのp値は、加法遺伝子モデルに一致する。両方のプラットフォームに関する分析から得られた要約統計量を、メタ分析によって組み合わせた。
【0127】
同じ統計的枠組み下において、エクソームデータを使用し、IL1RL1またはIL33内に凝集したpLOFバリアントならびに閉塞性肺疾患転帰及び好酸球数間の関連を同定した。各遺伝子において、個体を、個体がpLOFを一切持たなかった場合に0、個体が少なくとも1つのpLOFのヘテロ接合体キャリアであった場合に1とコードし、IL1RL1またはIL33のいずれかのホモ接合体pLOFキャリアは、本試験では一切観察しなかった。両方のプラットフォームに関する分析から得られた要約統計量を、メタ分析によって組み合わせた。
【0128】
2つの独立したバリアント(IL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101))のリスクアレルの合計を反映している遺伝的リスクスコアも、ロジスティック及び線形回帰モデルならびに上に記載した同じ共変量を使用して、閉塞性肺疾患転帰及び好酸球数の予測因子として使用した。バリアントの一方または両方の遺伝子型データを欠損している個体を除外した。1つ、2つ、3つ、または4つのリスクアレルを持つ効果を、いずれのバリアントにもリスクアレルを全く持たない個体と比較して別々に決定した。スコアの増加と好酸球数または疾患リスクの増加との間の傾向を、それぞれ線形回帰及びCochran-Armitage検定を使用して試験した。
【0129】
全ての統計分析を、PLINKソフトウェア(v1.90p)またはRバージョン3.2.1を使用して実施した。
DiscovEHR好酸球数及びEHR定義喘息を用いた、IL33及びIL1RL1の以前に同定した喘息リスクバリアントの確認。DiscovEHR研究におけるMyCode(登録商標)参加者の臨床的特徴を、
図8に記載する。本試験でエクソームシーケンシングしたヨーロッパ系祖先を持つ86,004人の患者の中で、13267人(15.4%)の患者を喘息と、9783人(11.4%)の患者をCOPDと、2993人(3.4%)の患者を喘息及びCOPDの両方(本明細書では喘息-COPDオーバーラップ症候群、またはACOSと称される)と診断した。本試験のために利用可能なチップデータを用いたヨーロッパ系祖先を持つ83,339人の患者の中で、12832人(15.4%)の患者を喘息と、9536人(11.4%)の患者をCOPDと、2909人(3.5%)の患者をACOSと診断した。
【0130】
喘息に関する最初の大きなGWASは、喘息及び循環好酸球数の両方と関連したイントロンIL1RL1バリアント(rs1420101)を同定し、次のGWASは、喘息と関連した上流IL33バリアント(rs1342326)を同定した。本試験では、rs1420101(IL1RL1)及びrs1342326(IL33)と喘息との関連(メタアレルオッズ比(OR
allelic))を確認した(95%信頼区間)(それぞれ1.07(1.04-1.11)、P=8.2×10
-7及びメタ-OR
allelic1.09(1.05-1.16)、P=6.0×10
-6)(
図3)。
【0131】
さらに、両方のバリアントは、生涯の循環好酸球数中央値と関連していた(n=66,776人の個体)(それぞれメタ-ベータ=0.0066(0.0054-0.0079)eos/ml、P=2.0×10-23及びメタ-ベータ=0.0061(0.0045-0.0078)eos/ml、P=2.0×10-13)。
【0132】
喘息とのIL33及びIL1RL1の関連は、好酸球サブセットに特異的である。好酸球性喘息は、喘息の重要なサブセットとして認識され、喘息の重篤さの増加及びステロイド不応性、加えて生物学的療法に対する反応差と関連すると考えられている。IL33及びIL1RL1バリアントと、異なる表現型として独立して評価した好酸球数加えて喘息との前述した関連を確認するため、本試験では次に、これらのリスクが喘息の好酸球サブセットとの特異的関連によって関連付けられるかどうかを評価し、したがって、高い(>200eos/μL)及び低い(≦200eos/μL)生涯の好酸球数中央値によって階層化した喘息患者サブグループにおける関連を評価した(
図3)。IL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101)バリアントの両方とも、好酸性喘息サブセットとのみ有意に関連していた(IL33について、アレルメタオッズ比は、高好酸球群において1.12(1.06-1.18)対低好酸球群において1.04(0.98-1.09)であって、IL1RL1について、アレルオッズ比は、高好酸球群において1.07(1.04-1.1)対低好酸球群において1.02(0.98-1.06)であった)(
図3)。
【0133】
IL33及びIL1RL1の喘息リスクバリアントと、特に好酸球サブセットにおけるCOPD及びACOSに関するリスク増加との間の新規関連。好酸球性喘息との上記関連に加えて、IL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101)バリアントが、COPD(
図4、IL33について、メタOR
allelic=1.04(0.99-1.09)、P=8.9×10
-2、及びIL1RL1について、メタ-OR
allelic=1.04(1-1.07)、P=3.9×10
-2)ならびにACOS(
図5のIL33について、メタOR
allelic1.08(1.0-1.16)、P=3.8×10
-2、及びIL1RL1について、1.06(1.0-1.12)、P=4.8×10
-2)と示唆的に、またはわずかに有意に関連することをさらに発見した。
【0134】
喘息と同様に、COPD及びACOSの好酸球サブセットは、より深刻な疾患と関連する。COPD及びACOSとのIL33及びIL1RL1の関連もまた、発明者らが喘息で確認したように、好酸球サブタイプに特異的であるかどうかを決定するために、高い(>200eos/μL)及び低い(≦200eos/μL)生涯の好酸球数中央値によって階層化したCOPD及びACOSサブグループにおけるIL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101)間の関連を評価した(
図4及び
図5)。両方のバリアントは、高循環好酸球を特徴とする疾患サブグループにおいてのみCOPD及びACOSと示唆的に関連していた。
【0135】
IL33シグナル伝達経路における多量のリスク増加アレルは、喘息、COPD及びACOSリスクの大幅な増加を招く。IL33及びIL1RL1が同じシグナル伝達複合体の一部であるため、またこれらのバリアントが、個別に分析される場合にそれらのリスク関連性において注目すべきアレル量依存を示すため、2つのバリアント遺伝的リスクスコアを、IL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101)のリスクアレルの数を合計することによって構築し(各個体は0~4の範囲のスコアを有した)、スコアと、喘息、COPD及びACOSの好酸球数及びリスクとの間の関連を試験した。各遺伝的リスクスコアを持つ個体群を、リスクアレルを持たない群と比較した。傾向検定では、遺伝的リスクスコアの増加は、好酸球数の増加(
図2、P=1×10
-39)ならびに喘息(
図6、P=3.27×10
-12)、COPD(
図6、P=6.65×10
-3)、及びACOS(P=4.3×10
-3)のリスク増加と有意に関連した。最大効果(名目上の有意性を超える)を、3つのリスクアレルを持つ患者で観察した(
図2、好酸球数について、メタベータ=0.0071(0.0057-0.0085)eos/ml、P=8.8×10
-24、喘息について(
図6)、メタOR=1.28(1.17-1.41)、P=6.99×10
-8、COPDについて(
図6)、OR=1.17(1.04-1.31)、P=9.35×10
-3、及びACOSについて(
図6)、OR=1.23(1.03-1.48)、P=2.49×10
-2)(
図2)。少数の個体がリスクアレルを4つ持ち、結果として、効果量推定値は幅広い信頼区間を有した。
【0136】
2つのバリアントスコアと、高及び低好酸球患者サブグループとの関連も評価した(
図7)。傾向検定では、スコアは、喘息(P=1.37×10
-15)、COPD(P=3.9×10
-8)、及びACOS(P=1.8×10
-5)の高好酸球サブセットと有意に関連していたが、喘息、COPD、またはACOSの低好酸球サブセットとは関連しなかった(各疾患についてP>0.05)。最大スコア特異的効果を、3つのリスクアレルを持つ患者で観察した(高好酸球喘息について、メタ-OR=1.61(1.42-1.84)、P=6.33×10
-13、高好酸球COPDについて、メタ-OR=1.53(1.31-1.79)、P=4.76×10
-8、及び高好酸球ACOSについて、OR=1.7(1.34-2.14)、P=1×10
-5)。先述の通り、リスクアレルを4つ持つ相対的に少数の個体が存在し、各々の効果量推定値は幅広い信頼区間を有した。
【0137】
IL33の予測した機能喪失(pLOF)バリアントは、循環好酸球数及び閉塞性肺疾患リスクの低減と関連する。IL33 pLOFバリアントrs146597587の分析では、IL33不活性化は、好酸球数の減少と関連する(メタ-ベータ=-0.02(-0.03-0.0092)、P=7.3×10
-5)が、好酸球性喘息、COPD及びACOSのリスク減少とは有意に関連しなかった(それぞれOR=0.82(0.63-1.07)、P=0.15、OR=0.99(0.74-1.33)、P=0.94、及びOR=0.93(0.56-1.53)、P=0.76)(
図7)。IL1RL1 pLOF変異は、閉塞性肺疾患のリスクと関連しなかった。
【0138】
その他の気道疾患を有するIL1RL1バリアントrs1420101及びIL33バリアントrs1342326の分析。統一気道理論は、喘息が、共通の機序に起因してその他の気道疾患と共起する可能性があると仮定している。したがって、rs1420101及びrs1342326との関連について、気道に関するその他のEHR記録疾患を試験した(
図9)。IL33バリアントrs1342326及びIL1RL1バリアントrs1420101は、アレルギー性鼻炎のリスク増加(メタ-OR1.04(1.01-1.08)、P=0.02、メタ-OR1.04(1.01-1.06)、P=2.4×10
-3)加えて鼻茸のリスク増加(メタ-OR1.48(1.28-1.72)、P=1.2×10
-7、メタ-OR1.17(1.04-1.33)、P=1.2×10
-2)と関連していた。さらに、これらの共通したリスクバリアントの量も、アレルギー性鼻炎及び鼻茸のリスクを有意に増加させた(P=1.45×10
-4、P=2.48×10
-7)。これらの結果は、鼻茸リスクにおけるIL33の共通した遺伝的変異を示唆するこれまでの報告と一致する。
【0139】
要約。IL33は、肺上皮を含む、上皮組織のバリア防御に関与すると考えられ、喘息の病因に関与している。本実施例に記載した2つのバリアント、すなわちIL33(rs1342326)及びIL1RL1(rs1420101)は、いくつかの研究でこれまでに喘息と関連してきた。リガンド(IL33)及びその特異的受容体(IL1R1)の両方を有する、これらの再現可能かつ独立した関連性(IL33は9番染色体上に位置し、IL1RL1は2番染色体上に位置する)は、喘息リスクにおけるIL33シグナル伝達の役割を示唆する。
【0140】
本研究は、これらの以前の知見を大幅に広げている。DiscovEHR研究関連の83,000人を超える成人参加者において全エクソームシーケンシング及びジェノタイピングを実施することによって、IL33及びIL1RL1と、異なる表現型として独立して評価した好酸球数加えて喘息との間を確認した。さらに、IL33及びIL1RL1バリアントと、COPD及びACOSのリスク増加との示唆的関連を実証し、すなわち、これらの非常に蔓延している肺疾患の3つ全てに共通した機序的病因の可能性を支持する遺伝的関連を提供した。これらのバリアントと、鼻茸及びアレルギー性鼻炎との関連も実証した。加えて、両方の遺伝子座にわたってこれらのリスクアレルの量をより多く持つ個体では、疾患リスクに対するより大きな効果を観察したことを見出した。さらに、IL33における希少pLOFバリアントのヘテロ接合体キャリアは、生涯の好酸球数中央値が低く、喘息について約20%のリスク低減を反映する傾向を有した。これらのデータは、リスク増加共通アレル及びリスク低減希少pLOFアレルの両方を含む一連のアレルによって、IL33経路と喘息とを、また恐らくCOPDとを関連付ける遺伝学的証拠を提供すると考える。
【0141】
本研究よりも前、IL33経路の遺伝的バリアントは、これまでにCOPDとは関連していなかったと考える。同様に、いずれかの経路と、喘息、COPD及びACOSの好酸球サブセットリスクとを関連付ける先の遺伝子データは一切存在しなかったと考える。本実施例の結果は、喘息及びCOPDの好酸球サブタイプのリスク増加に対するIL33シグナル伝達増強の関連を示唆し、ACOS患者で見られる数値的により高いリスク関連性は、これらの状態の共通部分におけるこの実体が、実際には特有の特徴を有する可能性があることを示唆している。これまで明確に分類されてきた閉塞性肺疾患の好酸球サブセット間における統一的な遺伝的かつ機序的関連を提供することに加えて、データはまた、好酸球性肺疾患が、関連する上気道疾患を含む連続体を表す可能性があると仮定している「統一気道理論」の原理を支持する。この点において、アレルギー性鼻炎及び鼻茸におけるIL33バリアントの著しいリスク増加を観察した。
【0142】
統計的に有意ではないが、本実施例に記載したIL33 pLOFバリアントとの保護的関連は、IL33の希少機能喪失バリアントが喘息において保護的であったことを実証した最近の研究と一致し、IL33シグナル伝達の阻害が、閉塞性肺疾患の重要な治療戦略である可能性を支持している。データは、特に、喘息及びCOPDなどの閉塞性肺疾患の好酸球型において、加えてアレルギー性鼻炎及び鼻茸などの好酸球性上気道疾患に対してインターロイキン-33を遮断する役割を示唆している。
【0143】
関連して、重篤かつステロイド抵抗性喘息の処置に生物製剤を用いる最近の進歩は、好酸球性疾患を区別すると考えられている。インターロイキン-5及びインターロイキン-13を標的とする多数の療法が、喘息患者の好酸球サブセットのみに役立つと考えられる一方で、インターロイキン-4及びインターロイキン-13経路の両方をブロックする抗体(デュピルマブ)は、好酸球性の患者において数値的により大きな利益を有するが、低好酸球サブセットにおいても非常に高い活性を有すると考えられている。これらの療法は、鼻茸及びアレルギー性鼻炎にも利益を有すると考えられる。生物学的療法に対する好酸球性喘息患者の応答におけるこれらの前述した差と一致して、本実施例からのデータは、インターロイキン-33の遮断が喘息、ACOS及びCOPDの好酸球サブセットを標的とするのに最適である可能性を示唆している。
【0144】
本研究には一定の限界があるが、それにもかかわらず研究は実社会の臨床ケア状況を表し、本集団におけるIL33及びIL1RL1遺伝的変異が、喘息及びCOPDの両方の診断リスク増加と関連している。患者の個別化処置の目的で、人が喘息、COPD、またはACOSの診断ラベルに到達するかどうかは、恐らく特定の患者または患者群で発生している機序的病変を同定することよりも重要ではなく、これらのデータは、喘息、COPD及びACOS患者のサブセットが、部分的には過度なIL33活性によって促進される可能性があることを示唆している。これらのデータの様々な限界を軽減させることは、同じ経路内における2つの異なる遺伝子の遺伝的バリアントを使用した知見の顕著な一貫性であり、類似した結果が、IL33に加えてその受容体の遺伝子におけるバリアントに見られた。両方の遺伝子におけるバリアントについて、一貫したリスク関連性が複数の関連EHR定義疾患状況にわたって見られ、これらの疾患状況内で、一貫した結果もまた、これらの疾患の好酸球サブセットに特有であることを繰り返し示した。データに関して別の説得力がある側面は、多くのリスク関連性の一致及び注目すべきアレル依存、加えて2つのバリアントリスクスコア分析から得られる付加力を含む。最後に、IL33 pLOFバリアントの相互的知見も支えとなる。
【0145】
これらのデータは、IL33シグナル伝達を増強する遺伝的変異が、喘息、COPD及びACOSの好酸球型のリスク増加に寄与すること、ならびにIL33のpLOF遺伝的バリアントが、これらの疾患のリスク減少に寄与する可能性があることを示唆し、鼻茸などの上気道疾患のリスクもIL33シグナル伝達に関連すると思われる。IL33シグナル伝達を増強する遺伝的バリアントを持つ個体は、それらの特定の喘息及びCOPD患者が、IL33の治療的遮断から多大な恩恵を受ける可能性があるため、精密医療の機会を表す可能性がある。データはまた、好酸球性気道疾患に罹患している患者が、サブタイプ及びバリアント状態にかかわらず、IL33の阻害から恩恵を受ける可能性を高める。
【0146】
本開示は、上に記載かつ例示された実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲内で変化及び変更できる。2017年11月30日出願の米国特許出願第15/827,357号明細書は、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
好酸球性喘息、アレルギー性鼻炎、または好酸球性喘息COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の発症リスクの評価方法であって、
(A)対象から得られた試料中のイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、または前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及び前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息、アレルギー性鼻炎、または好酸球性ACOSと関連する1つ以上のリスクアレルを検出することと、
(B)(i)前記対象が、2番染色体ホモログの1つにおける前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルまたは9番染色体ホモログの1つにおける前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、前記対象にリスクスコア1を割り当てることと、
(B)(ii)前記対象が、前記2番染色体ホモログの両方における前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、前記対象が、前記9番染色体ホモログの両方における前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、または前記対象が、前記2番染色体ホモログの1つにおける前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び前記9番染色体ホモログの1つにおける前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、前記対象にリスクスコア2を割り当てることと、
(B)(iii)前記対象が、前記2番染色体ホモログの両方における前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び前記9番染色体ホモログの1つにおける前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、または前記対象が、前記2番染色体ホモログの1つにおける前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び前記9番染色体ホモログの両方における前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、前記対象にリスクスコア3を割り当てることと、あるいは
(B)(iv)前記対象が、前記2番染色体ホモログの両方における前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレル及び前記9番染色体ホモログの両方における前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にリスクアレルを有する場合、前記対象にリスクスコア4を割り当てることと、
(C)好酸球性喘息、アレルギー性鼻炎、または好酸球性ACOSの前記対象の発症リスクを分類し、リスクスコア1は、前記対象が好酸球性喘息の高好酸球サブセット、アレルギー性鼻炎の高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットの発症リスクを有することを示し、リスクスコア2は、前記対象が好酸球性喘息の前記高好酸球サブセット、アレルギー性鼻炎の高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットの上昇した発症リスクを有することを示し、リスクスコア3は、前記対象が好酸球性喘息の前記高好酸球サブセット、アレルギー性鼻炎の高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを発症するリスクが高いことを示し、リスクスコア4は、前記対象が好酸球性喘息の前記高好酸球サブセット、アレルギー性鼻炎の高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを発症するリスクが非常に高いことを示すことと
を含む、前記方法。
[項目2]
好酸球性喘息の前記高好酸球サブセット、アレルギー性鼻炎の高好酸球サブセット、または好酸球性ACOSの高好酸球サブセットを処置または阻害するのに有効な量で投与されるIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せによる処置のための候補として前記対象を同定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することをさらに含む、項目1または項目2に記載の方法。
[項目4]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニストを投与することを含む、項目3に記載の方法。
[項目5]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む、項目3に記載の方法。
[項目6]
前記IL33アンタゴニストがIL33トラップを含む、項目2~5のいずれか1項に記載の方法。
[項目7]
前記IL33トラップが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含む、項目6に記載の方法。
[項目8]
前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目2~5のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
IL33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274のH1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号282のL1、L2、及びL3ドメインを含む、項目8に記載の方法。
[項目10]
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目2、3または5~9のいずれか1項に記載の方法。
[項目11]
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337のH1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号338のL1、L2、及びL3ドメインを含む、項目10に記載の方法。
[項目12]
前記対象から単離した血液または痰から、好酸球数のレベル増加を検出することをさらに含む、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
[項目13]
好酸球性喘息の処置または阻害方法であって、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、または前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及び前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含み、好酸球性喘息が前記対象内で処置または阻害されるものである、前記方法。
[項目14]
前記対象が、前記IL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する、項目13に記載の方法。
[項目15]
前記対象が、前記IL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する2つのリスクアレルを有する、項目13または14に記載の方法。
[項目16]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する、項目13に記載の方法。
[項目17]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する2つのリスクアレルを有する、項目13または16に記載の方法。
[項目18]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する少なくとも1つのリスクアレルをさらに有する、項目14または15に記載の方法。
[項目19]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性喘息と関連する2つのリスクアレルをさらに有する、項目14、15、または18のいずれか1項に記載の方法。
[項目20]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニストを投与することを含む、項目13~19のいずれか1項に記載の方法。
[項目21]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む、項目13~19のいずれか1項に記載の方法。
[項目22]
前記IL33アンタゴニストがIL33トラップを含む、項目13~21のいずれか1項に記載の方法。
[項目23]
前記IL33トラップが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含む、項目22に記載の方法。
[項目24]
前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目13~21のいずれか1項に記載の方法。
[項目25]
IL33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号282の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目24に記載の方法。
[項目26]
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目13~19または21~25のいずれか1項に記載の方法。
[項目27]
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号338の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目26に記載の方法。
[項目28]
アレルギー性鼻炎の処置または阻害方法であって、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、または前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及び前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方にアレルギー性鼻炎と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含み、アレルギー性鼻炎が前記対象内で処置または阻害されるものである、前記方法。
[項目29]
前記対象が、前記IL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にアレルギー性鼻炎と関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する、項目28に記載の方法。
[項目30]
前記対象が、前記IL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にアレルギー性鼻炎と関連する2つのリスクアレルを有する、項目28または29に記載の方法。
[項目31]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にアレルギー性鼻炎と関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する、項目28に記載の方法。
[項目32]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にアレルギー性鼻炎と関連する2つのリスクアレルを有する、項目28または31に記載の方法。
[項目33]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にアレルギー性鼻炎と関連する少なくとも1つのリスクアレルをさらに有する、項目29または31に記載の方法。
[項目34]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中にアレルギー性鼻炎と関連する2つのリスクアレルをさらに有する、項目29、30、または33のいずれか1項に記載の方法。
[項目35]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニストを投与することを含む、項目28~34のいずれか1項に記載の方法。
[項目36]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む、項目28~34のいずれか1項に記載の方法。
[項目37]
前記IL33アンタゴニストがIL33トラップを含む、項目28~36のいずれか1項に記載の方法。
[項目38]
前記IL33トラップが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含む、項目37に記載の方法。
[項目39]
前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目28~36のいずれか1項に記載の方法。
[項目40]
IL33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号282の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目39に記載の方法。
[項目41]
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目28~34または36~40のいずれか1項に記載の方法。
[項目42]
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号338の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目41に記載の方法。
[項目43]
好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患(COPD)オーバーラップ症候群(ACOS)の処置または阻害方法であって、イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、または前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及び前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息と関連する1つ以上のリスクアレルを有する対象にIL33アンタゴニストを投与すること、またはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含み、好酸球性COPDが前記対象内で処置または阻害されるものである、前記方法。
[項目44]
前記対象が、前記IL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性ACOSと関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する、項目43に記載の処置方法。
[項目45]
前記対象が、前記IL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性ACOSと関連する2つのリスクアレルを有する、項目43または44に記載の処置方法。
[項目46]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性ACOSと関連する少なくとも1つのリスクアレルを有する、項目43に記載の処置方法。
[項目47]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性ACOSと関連する2つのリスクアレルを有する、項目43または46に記載の処置方法。
[項目48]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性ACOSと関連する少なくとも1つのリスクアレルをさらに有する、項目44または45に記載の処置方法。
[項目49]
前記対象が、前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)またはその連鎖不平衡にあるバリアント中に好酸球性ACOSと関連する2つのリスクアレルをさらに有する、項目44、45、または48のいずれか1項に記載の処置方法。
[項目50]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニストを投与することを含む、項目43~49のいずれか1項に記載の方法。
[項目51]
前記方法が、前記対象にIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む、項目43~49のいずれか1項に記載の方法。
[項目52]
前記IL33アンタゴニストがIL33トラップを含む、項目43~51のいずれか1項に記載の方法。
[項目53]
前記IL33トラップが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含む、項目52に記載の方法。
[項目54]
前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目43~51のいずれか1項に記載の方法。
[項目55]
IL33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号282の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目54に記載の方法。
[項目56]
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目43~49または51~55のいずれか1項に記載の方法。
[項目57]
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号338の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目56に記載の方法。
[項目58]
好酸球性喘息、アレルギー性鼻炎、好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球アレルギー性鼻炎、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸の患者が、前記イントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中に、またはイントロンIL1RL1バリアントrs1420101(配列番号357)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント及び前記IL33バリアントrs1342326(配列番号358)もしくはその連鎖不平衡にあるバリアント中の両方に好酸球性喘息、アレルギー性鼻炎、または好酸球性ACOSと関連する1つ以上のリスクアレルを有する場合に、好酸球性喘息、アレルギー性鼻炎、好酸球性喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)、高好酸球好酸球性喘息、高好酸球アレルギー性鼻炎、高好酸球好酸球性ACOS、または鼻茸のいずれか1つの処置または阻害に使用するための、IL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目59]
好酸球性喘息の前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目60]
アレルギー性鼻炎の前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目61]
好酸球性ACOSの前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目62]
高好酸球好酸球性喘息の前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目63]
高好酸球アレルギー性鼻炎の前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目64]
高好酸球好酸球性ACOSの前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目65]
鼻茸の前記処置または阻害に使用するための、項目58に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目66]
前記IL33アンタゴニストがIL33トラップを含む、項目58~65のいずれか1項に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目67]
前記IL33トラップが、IL1RL1のIL33結合部分を含む第1IL33結合ドメイン及びIL-1RAcPの細胞外部分を含む第2IL33結合ドメインを含む、項目66に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目68]
前記IL33アンタゴニストが、IL33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目58~65のいずれか1項に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目69]
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号274の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号282の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目68に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目70]
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、項目58~69のいずれか1項に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
[項目71]
IL-4Rに特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号337の前記H1、H2、及びH3ドメインならびに配列番号338の前記L1、L2、及びL3ドメインを含む、項目70に記載のIL33アンタゴニストまたはIL33アンタゴニスト及びIL-4Rアンタゴニストの組合せ。
【配列表】