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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】判定装置および判定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240919BHJP
   B60W 30/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023145791
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2018137877の分割
【原出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2023158163
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村角 周樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 順次
(72)【発明者】
【氏名】須佐美 博丈
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-46845(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056401(WO,A1)
【文献】特開2016-167174(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123344(WO,A1)
【文献】特開2016-147556(JP,A)
【文献】特開2009-294943(JP,A)
【文献】特開2013-177054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載される撮影部から取得される撮影画像に基づき前記自車両の前側方に位置する他車両を検出し、
前記撮影画像に基づき前記自車両が前記他車両の後端部と左右方向に並ぶ位置関係にあり、かつ、当該位置関係が予め設定された期間続いた場合に危険状態であると判定する、
判定装置。
【請求項2】
前記危険状態であると判定し、かつ、前記撮影画像に基づき前記他車両の方向指示器が点灯していると判定した場合に、前記自車両の運転者に警報を報知する報知部を動作させる、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記撮影画像から所定周期で輝度が変化する局所領域を検出することで前記方向指示器が点灯していると判定する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記危険状態であると判定した場合に、前記位置関係、前記自車両および前記他車両の速度関係のうち少なくとも1つの関係に応じて危険レベルを判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
前記自車両と前記他車両とが左右方向に並ぶ部分の前後方向の長さに応じて前記危険レベルを判定する、請求項4に記載の判定装置。
【請求項6】
前記前後方向の長さが長いほど、前記危険レベルが高いと判定する、請求項5に記載の判定装置。
【請求項7】
左前側方および右前側方において同時に前記危険状態であると判定した場合に、前記左前側方および前記右前側方の前記危険レベルを比較し、前記危険レベルが高い方を優先して報知させる、請求項4から6のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項8】
前記自車両と前記他車両の速度が所定速度以上であるか、または、前記自車両の前記他車両に対する相対速度が所定速度未満である場合に前記危険状態を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項9】
前記他車両と前記自車両との加速度が所定加速度以上である場合に前記危険状態を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項10】
前記撮影画像は、前記自車両の前方を撮影するフロントカメラ、および、前記自車両の側方を撮影するサイドカメラから取得される、請求項1に記載の判定装置。
【請求項11】
自車両に搭載される撮影部から撮影画像を取得し、
前記撮影画像に基づき前記自車両の前側方に位置する他車両を検出し、
前記撮影画像に基づき前記自車両が前記他車両の後端部と左右方向に並ぶ位置関係にあり、かつ、当該位置関係が予め設定された期間続いた場合に危険状態であると判定する、
判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の判定装置および判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他車両の死角領域を検知して自車両の走行を適切に支援する装置が知られている。例えば、特許文献1に開示される走行支援装置は、自車両の外界に存在する他車両を撮像するミラー部カメラと、ミラー部カメラの撮像により得られる他車両の画像から他車両の運転者を検出する頭部検出部と、頭部検出部による検出結果に基づき、他車両の死角領域を検知する死角領域検知部と、死角領域検知部により検知された死角領域に自車両が存在する場合に、自車両が死角領域に存在することを自車両の乗員に報知する車両制御部および警報装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-211309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他車両の死角領域に自車両が存在する場合、他車両が自車両に気付かずに車線変更を行う可能性が高くなる。このため、特許文献1のように、自車両が他車両の死角領域に存在すると判断される場合に、そのことを自車両の乗員に報知することは衝突防止に有効である。しかし、自車両が死角領域に存在しない場合でも、他車両が急な車線変更を行い、他車両と自車両とが衝突を起すことがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、他車両の車線変更が原因となって自車両と他車両とが衝突する事態を低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な本発明に係る判定装置は、自車両に搭載される撮影部から取得される撮影画像に基づき前記自車両の前側方に位置する他車両を検出し、前記撮影画像に基づき前記自車両が前記他車両の後端部と左右方向に並ぶ位置関係にあり、かつ、当該位置関係が予め設定された期間続いた場合に危険状態であると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、他車両の車線変更が原因となって自車両と他車両とが衝突する事態を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の衝突判定装置が適用される走行支援システムの一構成例を示す図
図2】衝突判定装置によって実行される処理の一例を示すフローチャート
図3】自車両と他車両との関係を模式的に示す図
図4】判定部による第1実施形態に係る危険状態の判定処理の一例を示すフローチャート
図5】第1実施形態に係る危険状態の判定処理を説明するための模式図
図6】第1実施形態に係る危険状態の判定処理の変形例を示すフローチャート
図7】判定部による第2実施形態に係る危険状態の判定処理の一例を示すフローチャート
図8】第2実施形態に係る危険状態の判定処理を説明するための模式図
図9】第2実施形態に係る危険状態の判定処理の変形例を示すフローチャート
図10】判定部による第3実施形態に係る危険状態の判定処理の一例を示すフローチャート
図11】第3実施形態に係る危険状態の判定処理を説明するための模式図
図12】第3実施形態に係る危険状態の判定処理の変形例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、車両の直進進行方向であって、運転席からステアリングに向かう方向を「前方向」と呼ぶ。また、車両の直進進行方向であって、ステアリングから運転席に向かう方向を「後方向」と呼ぶ。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の右側から左側に向かう方向を「左方向」と呼ぶ。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の左側から右側に向かう方向を「右方向」と呼ぶ。また、前方および後方に対して左右の方向を「側方」と呼ぶ。また、本発明の衝突判定装置を含む走行支援システムを搭載している車両を「自車両」と呼ぶ。
【0010】
<1.走行支援システム>
図1は、本発明の衝突判定装置1が適用される走行支援システムSYS1の一構成例を示す図である。本実施形態の走行支援システムSYS1は、他車両との衝突の危険性がある場合に、そのことを自車両の乗員に知らせるシステムである。図1に示すように、走行支援システムSYS1は、衝突判定装置1と、撮影部2と、車両センサ3と、車載ネットワーク4と、報知部5とを備える。これらは、いずれも自車両に搭載される。
【0011】
衝突判定装置1は、車両の衝突の可能性を判定する装置である。詳細には、衝突判定装置1は、他車両が車線変更を行った場合に自車両と他車両とが衝突する可能性が高い危険な状態であるか否かを判定する。衝突判定装置1の詳細については後述する。
【0012】
撮影部2は、自車両の前側方に存在する他車両を撮影可能に設けられる。自車両の前側方に存在する他車両には、自車両よりも少なくとも一部が前側に位置するとともに自車両から見て左方或いは右方に位置する他車両が広く含まれる。撮影部2は、自車両に搭載されるカメラで構成される。撮影部2は、単一のカメラのみで構成されてもよいし、複数のカメラで構成されてもよい。撮影部2は、例えば、レンズ正面が自車両の前方に向けて配置されるフロントカメラ、および、レンズ正面が自車両の側方に向けて配置されるサイドカメラのうち、少なくとも一方を含んで構成されることが好ましい。撮影部2がサイドカメラを含んで構成される場合、撮影部2は、レンズ正面が左方に向けて配置される左サイドカメラと、レンズ正面が右方に向けて配置される右サイドカメラとを含んで構成されることが好ましい。
【0013】
なお、カメラを構成するレンズは、例えば水平方向の画角が180°を超える魚眼レンズ等であってよい。また、撮影部2は、例えばドライブレコーダ等の車載機器に内蔵されるカメラ等であってもよい。
【0014】
撮影部2は、衝突判定装置1に有線又は無線によって接続される。すなわち、撮影部2は、衝突判定装置1に撮影画像を入力可能に設けられる。衝突判定装置1は、撮影部2から入力された撮影画像に基づき、自車両と他車両との衝突の可能性を判定する。
【0015】
車両センサ3は、自車両に搭載されるセンサである。本実施形態においては、車両センサ3には、車速センサおよび加速度センサが含まれる。車速センサは、自車両の速度を検出するセンサである。加速度センサは、自車両の車体に作用する加速度を検出する。車両センサ3は、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワーク4を介して衝突判定装置1に接続される。すなわち、衝突判定装置1は、車載ネットワーク4を介して自車両の速度情報および加速度情報を取得することができる。
【0016】
報知部5は、衝突判定装置1に有線又は無線によって接続される。報知部5は、衝突判定装置1による制御のもと、自車両の乗員に危険を知らせる。報知部5が危険を知らせる手段には、特に限定されるものではないが、例えば、音、光、振動、および、画面表示のうちの少なくともいずれか1つが含まれることが好ましい。音には、警報音や音声が含まれてよい。報知部5は、例えば、音発生装置、発光装置、振動発生装置、表示装置等であってよい。
【0017】
<2.衝突判定装置>
<2-1.衝突判定装置の基本構成>
図1に示すように、衝突判定装置1は、制御部11と記憶部12とを備える。制御部11は、衝突判定装置1の全体を制御する。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory)などを備えるコンピュータで構成される。記憶部12は、制御部11が動作するために必要なコンピュータプログラムおよびデータを不揮発的に記憶する。記憶部12としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ等を用いることができる。
【0018】
図1に示す画像取得部111、検出部112、判定部113、および、報知処理部114は、記憶部12に記憶されるコンピュータプログラムの実行により実現される制御部11の機能である。換言すると、衝突判定装置1は、画像取得部111と、検出部112と、判定部113と、報知処理部114とを備える。
【0019】
なお、制御部11が備える各機能部111~114の少なくともいずれか1つは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部11が備える各機能部111~114は、概念的な構成要素である。1つの構成要素が実行する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてよい。
【0020】
画像取得部111は、撮影部2からアナログ又はデジタルの撮影画像を所定の周期(例えば、1/30秒周期)で時間的に連続して取得する。そして、取得した時間的に連続した撮影画像がアナログの場合には、画像取得部111は、そのアナログの撮影画像をデジタルの撮影画像に変換(A/D変換)する。
【0021】
検出部112は、自車両に搭載される撮影部2からの撮影画像に基づき、自車両の前側方に存在する他車両を検出する。詳細には、検出部112は、画像取得部111で変換されたデジタルの撮影画像に基づき他車両を検出する。検出部112は、左前側方および右前側方に存在する他車両を検出する。なお、検出部112は、1つのカメラで撮影された撮影画像を用いて他車両を検出してもよいが、複数のカメラで撮影された撮影画像を合成した合成画像を用いて他車両を検出してもよい。
【0022】
検出部112は、エッジ抽出処理等の画像処理を行う。なお、エッジとは、画像の明暗の境界線をいい、例えば被写体の輪郭線がエッジに対応する。検出部112は、撮影画像の各画素の隣接画素との濃度階調の差を求めることにより画像の明暗の変化を求め、一定以上の明暗差の変化点をエッジとして抽出する。検出部112は、抽出したエッジ形状と、記憶部12に記憶されるエッジ形状のパターンデータとの比較により他車両を検出する。なお、他車両を検出するために用いられるエッジ形状は、車両の全体形状であってもよいが、車両の一部の形状であってもよい。車両の一部の形状は、例えば、車両後部の形状、サイドミラーの形状、タイヤの形状等であってよい。
【0023】
判定部113は、検出した他車両と自車両との位置関係および当該位置関係の時間変化情報に基づき危険状態であるか否かを判定する。危険状態は、自車両と他車両との衝突が予想される状態である。より詳細には、危険状態は、他車両の急な車線変更で自車両が他車両との衝突を回避できないと予想される状態である。本実施形態では、判定部113は、危険状態であるか否かの判定に際し、他車両が自車両の走行する車線に車線変更すると自車両と他車両とが衝突すると予想される場合に、危険状態であると判定する。判定部113が設けられることによって、前側方の他車両との関係で自車両が危険な状態になっていることを自車両の乗員に知らせることが可能になる。また、判定部113が設けられることによって、自車両に自動運転機能が備えられる場合には、当該自動運転機能を用いて危険状態からの離脱行動を行わせることが可能になる。
【0024】
報知処理部114は、判定部113によって危険状態であると判定された場合に自車両の乗員に危険を知らせる報知部5を動作せる。すなわち、報知処理部114は、報知部5を制御して、危険状態である場合に警報を報知させる。なお、報知処理部114は、判定部113によって危険状態であると判定されない場合には、報知部5を動作させない。報知処理部114が設けられることによって、自車両を運転する運転者は、自車両が前側方に存在する他車両によって危険な状態に晒されていることを容易に知ることができ、他車両に対して自車両を安全な位置に移動させることができる。
【0025】
図2は、衝突判定装置1によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。衝突判定装置1は、動作開始イベントが発生すると、図2に示すフローチャートの動作を開始する。動作開始イベントとしては、例えば、イグニッションスイッチがオンにされた場合、自車両が動き出した場合、自車両の速度が所定速度以上になった場合等が挙げられる。
【0026】
まず、検出部112により、撮影部2から所定の周期で入力される撮影画像に対して、順次、自車両の前側方に存在する他車両を検出するための処理が行われる。そして、検出部112は、自車両の前側方に存在する他車両が検出されたか否かを監視する(ステップS1)。本実施形態において、自車両の前側方には、左前側方および右前側方が含まれる。すなわち、自車両の左前側方および右前側方のうちの少なくとも一方において他車両が検出された場合に、自車両の前側方に存在する他車両が検出されたことになる。
【0027】
検出部112により自車両の前側方に存在する他車両が検出された場合には(ステップS1でYes)、判定部113により危険状態であるか否かが判定される(ステップS2)。危険状態であるか否かを判定する処理の詳細については後述する。自車両の左前側方および右前側方に存在する他車両が検出された場合には、検出された2つの他車両のそれぞれについて危険状態であるか否かが判定される。
【0028】
判定部113により危険状態であると判定された場合には(ステップS2でYes)、報知処理部114による報知処理が行われる(ステップS3)。具体的には、報知処理部114は、報知部5の制御処理を行い、報知部5を動作させる。当該報知処理により、自車両の乗員に危険状態であることを知らせる警報が報知部5によって報知される。報知部5の報知動作は、例えば、危険状態が解消されるまで継続される。
【0029】
なお、自車両の左前側方および右前側方に存在する他車両に関して、いずれも危険状態であると判定されることがある。この場合の報知処理例について図3を参照しながら説明する。図3は、自車両Vと他車両OVとの関係を模式的に示す図である。図3において、自車両Vは、3車線のうちの真ん中の車線LN2を走行している。第1他車両OV1は、3車線のうち最も左側の車線LN1を走行し、自車両Vの左前側方に位置する。第2他車両OV2は、3車線のうち最も右側の車線LN3を走行し、自車両Vの右前側方に位置する。車線LN1および車線LN2は走行車線であり、車線LN3は追越車線である。自車両Vは、第1他車両OV1および第2他車両OV2との関係で危険状態であると判定されている。
【0030】
第1の報知処理例として、報知処理部114は、左前側方および右前側方において同時に危険状態が生じていると判定された場合に、報知部5を制御して左右の危険状態を同時に区別して報知させる。例えば、報知部5は、発光装置であり、自車両Vの車内の左前方および右前方にそれぞれ配置される。左前側方および右前側方において同時に危険状態が生じていると判定された場合に、報知処理部114は左右の発光装置を点灯或いは点滅させる。発光装置は例示にすぎず、報知処理部114は、例えば音声や画面表示によって左右の前側方において危険状態が生じていることを報知させてもよい。当該報知処理例によれば、自車両の乗員は左右で同時に発生している危険状態を容易に把握することができ、危険状態に対して適切な対処を行うことができる。
【0031】
第2の報知処理例として、報知処理部114は、左前側方および右前側方において同時に危険状態が生じていると判定された場合に、報知部5を制御して危険のレベルが高い方を優先して報知させる。報知部5が上述した発光装置である例においては、報知処理部114は、左右の危険状態のうち、危険レベルが高いと判断される方に対応する発光装置のみを点灯或いは点滅させる。この場合も、報知部5は発光装置以外であっても勿論よい。左前側方および右前側方において同時に危険状態が生じていると判定された場合に、危険レベルの高い側を優先して報知させることによって、自車両Vの運転者は危険状態に対して慌てることなく冷静に対処することができる。
【0032】
危険レベルは、例えば、他車両OVが走行する車線の種類によって判断されてよい。図3に示す例では、例えば、追越車線LN3と走行車線LN1とのうち、いずれか一方の車線を走行する他車両OVの方が、危険レベルが高いと判断されてよい。例えば、走行車線LN1を走行する第1他車両OV1は合流ポイント等において急な車線変更を行う可能性があるために、走行車線LN1側が、危険レベルが高いと判断されてよい。
【0033】
また、危険レベルは、自車両Vと他車両OVとの位置関係に応じて判断されてもよい。例えば、自車両Vが、他車両OVと左右方向に並ぶ部分が多い方の他車両OV側が、危険レベルが高いと判断されてよい。図3に示す例では、自車両Vは、第2他車両OV2に比べて第1他車両OV1の方が、左右方向に並ぶ部分が多い。このために、第1他車両OV1側の方が、危険レベルが高いと判断される。
【0034】
また、危険レベルは、他車両OVの動きに応じて判断されてよい。例えば、走行する車線に応じて予想される動きと異なる動きを行っている他車両OVが存在する側が、危険レベルが高いと判断される。図3に示す例において、走行車線LN1を走る第1他車両OV1が離れていく動きを行っている場合や、追越車線LN3を走る第2他車両OV2が近づいてくる動きを行っている場合に、これらの他車両OVが走行する側は危険レベルが高いと判断されてよい。
【0035】
なお、第1の報知処理例の場合において、報知処理部114は、危険レベルが高い方が、危険レベルが低い方に比べて目立つように報知させる構成としてもよい。例えば、報知部5が上述した発光装置である例において、危険レベルが高い側を点滅させ、危険レベルが低い方を単に点灯させる構成等としてもよい。
【0036】
図2に戻って、報知処理部114による報知処理の後、動作終了イベントが発生しているか否かが確認される(ステップS4)。動作終了イベントとしては、例えば、イグニッションスイッチがオフにされた場合、自車両が停止した場合、自車両の速度が所定速度より遅くなった場合等が挙げられる。
【0037】
動作終了イベントが発生していない場合(ステップS4でNo)、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が繰り返される。一方、動作終了イベントが発生している場合には(ステップS4でYes)、衝突判定装置1は図2に示すフローチャートの動作を終了する。
【0038】
<2-2.危険状態の判定処理の詳細>
<2-2-1.第1実施形態>
図4は、判定部113による第1実施形態に係る危険状態の判定処理の一例を示すフローチャートである。図4は、図2のステップS2の詳細例である。図5は、第1実施形態に係る危険状態の判定処理を説明するための模式図である。
【0039】
図4に示すように、まず、判定部113は、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有するか否かを確認する(ステップS11)。判定部113は、撮影部2から取得される撮影画像に基づき当該確認を行う。なお、判定部113は、1つのカメラで撮影された撮影画像を用いて当該確認を行ってもよいが、複数のカメラで撮影された撮影画像を合成した合成画像を用いて当該確認を行ってもよい。
【0040】
本実施形態では、判定部113は、他車両OVの後端部に基づいて自車両Vと他車両OVとの位置関係を認識する。他車両OVの後端部の位置は、例えばエッジ抽出処理およびパターンマッチング処理等によって得ることができる。判定部113は、撮影画像に基づき他車両OVの後端部より自車両Vの前端部が前にあると判断される場合に、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有すると判断する。図5においては、自車両Vは、他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有する。なお、撮影部2を構成するカメラは自車両の所定位置に固定されており、カメラで撮影した撮影画像における各画素の座標は、実際の空間における自車両Vに対する座標に1対1で対応している。このために、撮影画像に基づき、自車両Vと他車両OVとの位置関係を求めることができる。
【0041】
本実施形態では、判定部113は、他車両OVの後端部に基づき自車両Vと他車両OVとの位置関係を認識する構成としているが、これは例示にすぎない。例えば、判定部113は、他車両OVの後端部に替えて、他車両OVのサイドミラーやタイヤ等に基づき自車両Vと他車両OVとの位置関係を認識する構成であってよい。また、例えば、判定部113は、他車両OVの後端部、サイドミラーおよびタイヤの少なくともいずれか1つに基づき自車両Vと他車両OVとの位置関係を認識する構成であってもよい。他車両OVの後端部、サイドミラー、および、タイヤは、画像処理によって検出し易く、自車両Vと他車両OVとの位置関係を精度良く検出することができる。
【0042】
判定部113は、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有すると判断した場合(ステップS11でYes)、当該位置関係が一定期間続いた否かを確認する(ステップS12)。判定部113は、ステップS11で判断に用いた撮影画像と、それより後に得られる少なくとも1つの撮影画像に基づき、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有する関係が一定期間続いたか否かを判断する。
【0043】
判定部113は、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有する関係が一定期間続いたと判断した場合(ステップS12でYes)、危険状態であると判断する(ステップS13)。一方、判定部113は、ステップS11で自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有すると判断されなかった場合(ステップS11でNo)、および、ステップS12で一定期間続いていると判断されなかった場合(ステップS12でNo)、危険状態でないと判断する(ステップS14)。
【0044】
以上のように、本実施形態では、判定部113は、危険状態であるか否かの判定に際し、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有する関係が一定期間続いたか否かを確認する。これによれば、自車両Vが死角領域に存在する場合に限らず、他車両OVの急な車線変更によって衝突が発生する可能性がある場合を広く危険状態として捉えることができるために、自車両Vの安全性を向上することができる。また、本実施形態の構成によれば、自車両Vが他車両OVに対して危険な位置関係であるというだけでなく、危険な位置関係が一定期間継続したことを条件として危険状態であると判断する。このために、例えば自車両Vと他車両OVの速度差が大きく、直ぐに危険状態から回避されるような場合にまで報知部5が作動することを避けることができる。すなわち、自車両Vの乗員に適切なタイミングで危険状態を知らせることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、判定部113は、危険状態であるか否かのみを判定する構成としている。ただし、これは例示にすぎない。判定部113は、危険状態と判定された場合に、危険のレベルを判断する構成としてもよい。例えば、自車両Vの、他車両OVと左右方向に並ぶ部分の長さX(図5参照、前後方向の長さ)に応じて危険のレベルを複数段階に分ける構成としてよい。例えば、長さXが長いほど、危険レベルを高くしてよい。また、自車両Vおよび他車両OVの速度関係の情報に応じて危険レベルを複数段階に分ける構成等としてもよい。判定部113が危険のレベルを判断する場合、報知処理部114は、危険のレベルに応じて報知部5の動作を異ならせてよい。例えば、危険のレベルが低い場合に比べて、報知音を大きくしたり、危険を知らせる光の点滅を速くしたり、危険を知らせる画面表示の色を変更したりしてよい。これによれば、自車両Vを運転する運転者はどのぐらい危険であるかを把握することができ、危険のレベルに応じた適切な退避行動を行うことができる。
【0046】
図6は、第1実施形態に係る危険状態の判定処理の変形例を示すフローチャートである。変形例においては、危険状態であるか否かを判定する条件が第1実施形態の場合に比べて増えている。具体的には、図4のステップS12の後に、特定条件を満たすか否かを確認する処理(ステップS15)が増えている。すなわち、自車両Vが他車両OVと左右方向に並ぶ部分を有する関係が一定期間続くことに加えて、特定条件を満たす場合にのみ危険状態であると判定される。なお、ステップS15を実行するタイミングは、図6に示すタイミングに限られない。例えば、ステップS15はステップS11の前に行われてもよい。
【0047】
特定条件は、1つの条件でもよいが、複数の条件で構成されてもよい。以下に、特定条件を例示するが、これらは単独で用いられてもよいし、他と組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
特定条件は、自車両Vと他車両OVとの速度関係に関する条件であってよい。換言すると、判定部113は、他車両OVと自車両Vとの速度関係に更に基づき危険状態であるか否かを判定してよい。なお、自車両Vの速度は、例えば、車載ネットワーク4を介して車両センサ3に含まれる車速センサから取得することができる。ただし、これは例示であり、例えば、GPSセンサから得られる位置情報の時間変化から算出してもよい。また、他車両OVの速度は、自車両Vの速度と、時間的に連続する複数の撮影画像に基づいて得られる自車両Vに対する他車両OVの相対速度とから算出してもよい。ただし、他車両OVの速度は、自車両Vがレーダ装置等の他車両OVの速度情報を計測する計測装置を備える場合には、当該計測装置からの情報によって得られてもよい。
【0049】
例えば、特定条件は、自車両Vと他車両OVとの速度が所定速度以上であるといった条件であってよい。これによれば、自車両Vと他車両OVとがある程度速度を出している場合に限って警報を報知することができる。また、特定条件は、自車両Vの他車両OVに対する相対速度が所定速度未満であるといった条件であってよい。これによれば、自車両Vが他車両OVに対して危険な位置に存在する時間が長くなることが予想される場合に限って警報を報知することができる。
【0050】
特定条件は、自車両Vと他車両OVとの加速度関係に関する条件であってよい。換言すると、判定部113は、他車両OVと自車両Vとの加速度関係に更に基づき危険状態であるか否かを判定してよい。なお、自車両Vの加速度は、例えば、車載ネットワーク4を介して車両センサ3に含まれる加車速センサから取得することができる。自車両Vの加速度は、速度センサから得られる速度に基づき求めてもよい。また、他車両OVの加速度は、例えば、自車両Vの車速センサと撮影画像とに基づいて求められる他車両OVの速度の時間変化を求めることによって得られる。例えば、特定条件は、自車両Vと他車両OVとの加速度が所定加速度以上であるといった条件であってよい。これによれば、例えば自車両Vと他車両OVとで同時にアクセルが踏み込まれて車線変更に伴う衝突の危険性が高まった場合に限って警報を報知することができる。
【0051】
特定条件は、他車両OVの前方における物体の存否に関する条件であってよい。換言すると、判定部113は、他車両OVの前方における物体の存否に更に基づき危険状態であるか否かを判定してよい。他車両OVの前方における物体の存否は、撮影画像に基づいて判断してよいが、例えばレーダ装置等の物体検知装置からの情報によって判断してもよい。物体は、例えば車両であってよい。また、物体は、静止物でも移動物でもよい。例えば、特定条件は、他車両OVの前方に車両が存在するといった条件であってよい。これによれば、他車両OVが前方に存在する車両の影響で車線変更を行う可能性が高い場合に限って警報を報知することができる。
【0052】
<2-2-2.第2実施形態>
図7は、判定部113による第2実施形態に係る危険状態の判定処理の一例を示すフローチャートである。図7は、図2のステップS2の詳細例である。図8は、第2実施形態に係る危険状態の判定処理を説明するための模式図である。なお、第1実施形態と重複する内容は、特に必要がない場合には説明を省略する。
【0053】
図7に示すように、まず、判定部113は、自車両Vが他車両OVの後方に設定される所定の後方閾距離d1(図8参照)を超えたか否かを確認する(ステップS21)。判定部113は、撮影部2から取得される撮影画像に基づき当該確認を行う。本実施形態では、後方閾距離d1は、他車両OVの後端部から自車両Vの前端部までの距離を想定して設定されている。このために、判定部113は、撮影画像から他車両OVの後端部を抽出し、自車両Vの前端部と他車両OVの後端部との距離を求める。そして、当該距離が後方閾距離d1より小さくなった場合に、判定部113は、自車両Vが後方閾距離d1を超えたと判断する。なお、図8に示す例では、自車両Vは後方閾距離d1を超えている。また、本実施形態では、判定部113は、撮影画像に基づき、自車両Vが他車両OVから後方に離れていることも確認する。
【0054】
なお、後方閾距離d1の設定の仕方は適宜変更されてよい。例えば、後方閾距離d1は、他車両OVの後端部に替えて、例えば他車両OVのサイドミラーやタイヤを想定して設定されてよい。この場合には、判定部113は、撮影画像から他車両OVの後端部ではなく、サイドミラー又はタイヤを抽出して、自車両Vが後方閾距離d1を超えたか否かを判断する。
【0055】
判定部113は、自車両Vが後方閾距離d1を超えたと判断した場合(ステップS21でYes)、自車両Vが他車両OVに近づいていく状態か否かを確認する(ステップS22)。判定部113は、ステップS21で判断に用いた撮影画像と、当該撮影画像より後に得られる少なくとも1つの撮影画像に基づき、自車両Vが他車両OVに近づいていく状態か否かを確認する。本実施形態では、他車両OVの後端部を基準に自車両Vが他車両OVに近づいていく状態か否かを確認する構成であるが、これは例示である。例えば、他車両OVのサイドミラーやタイヤ等を基準に自車両Vが他車両OVに近づいていく状態か否かを確認する構成としてもよい。
【0056】
判定部113は、自車両Vが他車両OVに近づいていく状態であると判断した場合(ステップS22でYes)、当該関係が一定期間続いた否かを確認する(ステップS23)。判定部113は、ステップS22で判断に用いた撮影画像と、当該撮影画像より後に得られる少なくとも1つの撮影画像とに基づき、自車両Vが後方閾距離d1を超えて他車両OVに近づいていく状態が一定期間続いたか否かを確認する。
【0057】
判定部113は、自車両Vが後方閾距離d1を超えて他車両OVに近づいていく状態が一定期間続いたと判断した場合(ステップS23でYes)、危険状態であると判断する(ステップS24)。一方、判定部113は、ステップS21で自車両Vが後方閾距離d1を超えたと判断されなかった場合(ステップS21でNo)、ステップS22で自車両Vが他車両OVに近づいていく状態であると判断されなかった場合(ステップS22でNo)、および、ステップS23で一定期間続いたと判断されなかった場合(ステップS23でNo)、危険状態でないと判断する(ステップS25)。
【0058】
以上のように、本実施形態では、判定部113は、危険状態であるか否かの判定に際し、自車両Vが他車両OVの後方に設定される所定の後方閾距離d1を超えて他車両OVに近づいていく関係が一定期間続いたか否かを確認する。これによれば、自車両Vが死角領域に存在する場合に限らず、他車両OVの急な車線変更によって衝突が発生する可能性がある場合を広く危険状態として捉えることができるために、自車両Vの安全性を向上することができる。また、本実施形態の構成によれば、自車両Vが他車両OVに対して危険な位置関係であるというだけでなく、危険な位置関係が一定期間継続したことを条件として危険状態であると判断する。このために、例えば自車両Vが瞬間的に他車両OVに近づいただけで直ぐに危険状態が回避された場合にまで報知部5が作動することを避けられる。すなわち、自車両Vの乗員に適切なタイミングで危険状態を知らせることができる。
【0059】
なお、本実施形態においても、判定部113は、危険状態と判断される場合に、危険のレベルを判断する構成としてもよい。報知処理部114は、危険のレベルに応じて報知部5の動作を異ならせてよい。例えば、他車両OVに近づいていく自車両Vの、他車両OVに対する相対速度の大きさを基準に危険のレベルを複数段階設定してもよい。この場合、相対速度が小さい場合の方が、危険のレベルが高く設定されてよい。
【0060】
図9は、第2実施形態に係る危険状態の判定処理の変形例を示すフローチャートである。変形例においては、危険状態であるか否かを判定する条件が第2実施形態の場合に比べて増えている。具体的には、図7のステップS23の後に、特定条件を満たすか否かを確認する処理(ステップS26)が増えている。すなわち、自車両Vが後方閾距離d1を超えて他車両OVに近づいてく状態が一定期間続くことに加えて、特定条件を満たす場合にのみ危険状態であると判定される。なお、ステップS26を実行するタイミングは、図9に示すタイミングに限られない。例えば、ステップS26は、ステップS21やステップS22の前に行われてもよい。
【0061】
特定条件は、第1実施形態と同様に、自車両Vと他車両OVとの速度関係に関する条件、自車両Vと他車両OVとの加速度関係に関する条件、および、他車両OVの前方における物体の存否に関する条件のうちの少なくとも1つを含んでよい。特定条件は1つでもよいし、複数の条件の組み合わせであってもよい。
【0062】
また、特定条件は、他車両OVの方向指示器(ウィンカー)の状態に関する条件であってよい。換言すると、判定部113は、他車両OVの方向指示器の状態に更に基づき危険状態であるか否かを判定してよい。本実施形態において、方向指示器の状態は、方向指示器が点灯(点滅)状態か否かである。方向指示器の状態は、時間的に連続して取得される複数の撮影画像に基づいて判断されてよい。判定部113は、例えば、所定周期で輝度が変化する局所領域を検出した場合に、方向指示器が点灯していると判断する。例えば、特定条件は、他車両OVの方向指示器の点灯を検出するといった条件であってよい。これによれば、他車両OVが車線変更を行う可能性が非常に高い場合に限って警報を報知することができる。なお、当該特定条件は、場合によっては第1実施形態に適用されてもよい。
【0063】
また、特定条件は、他車両のサイドミラーに映る像に関する条件であってよい。換言すると、判定部113は、他車両のサイドミラーに映る像に更に基づき危険状態であるか否かを判定してよい。なお、この場合には、判定部113は、他車両OVのサイドミラーに基づき自車両Vと他車両OVとの位置関係を認識する。他車両のサイドミラーに映る像は、撮影画像に基づき判断されてよい。例えば、特定条件は、他車両OVのサイドミラーに顔が映っていないという条件であってよい。また、特定条件は、他車両OVのサイドミラーに顔の一部しか映っていないという条件であってよい。また、特定条件は、他車両OVのサイドミラーに目が映っていないという条件であってよい。顔や目は、例えばパターンマッチング等により抽出することができる。他車両OVのサイドミラーに顔や目が映っていない場合には、他車両OVの運転者によって自車両Vが認識されていない可能性がある。このために、他車両OVの車線変更によって衝突が起こる可能性が高い場合を特定して警報を報知することができる。なお、当該特定条件は、場合によっては第1実施形態に適用されてもよい。
【0064】
<2-2-3.第3実施形態>
図10は、判定部113による第3実施形態に係る危険状態の判定処理の一例を示すフローチャートである。図10は、図2のステップS2の詳細例である。図11は、第3実施形態に係る危険状態の判定処理を説明するための模式図である。第3実施形態は、車線変更のための追越動作を行っている可能性がある他車両OVとの関係で危険状態を判定するものである。なお、第1実施形態および第2実施形態と重複する内容は、特に必要がない場合には説明を省略する。
【0065】
図10に示すように、まず、判定部113は、他車両OVが自車両Vの前方に設定される所定の前方閾距離d2(図11参照)より近くに位置するか否かを確認する(ステップS31)。判定部113は、撮影部2から取得される撮影画像に基づき当該確認を行う。本実施形態では、所定の前方閾距離d2は、自車両Vの前端部から他車両OVの後端部までの距離を想定して設定されている。このために、判定部113は、撮影画像から他車両OVの後端部を抽出し、自車両Vの前端部と他車両OVの後端部との距離を求める。そして、当該距離が前方閾距離d2より小さい場合に、判定部113は、他車両OVが前方閾距離d2より近くに位置すると判断する。なお、図11に示す例では、他車両OVは前方閾距離d2より近くに位置している。また、本実施形態では、判定部113は、撮影画像に基づき、他車両OVが自車両Vに対して前方に離れていることも確認する。
【0066】
なお、前方閾距離d2の設定の仕方は適宜変更されてよい。例えば、前方閾距離d2は、他車両OVの後端部に替えて、例えば他車両OVのサイドミラーやタイヤを想定して設定されてよい。この場合には、判定部113は、撮影画像から他車両OVの後端部ではなく、サイドミラー又はタイヤを抽出して、他車両OVが前方閾距離d2より近くに位置するか否かを判断する。
【0067】
判定部113は、他車両OVが前方閾距離d2より近くに位置すると判断した場合(ステップS31でYes)、他車両OVが自車両Vから離れていく状態か否かを確認する(ステップS32)。判定部113は、ステップS31で判断に用いた撮影画像と、当該撮影画像より後に得られる少なくとも1つの撮影画像に基づき、他車両OVが自車両Vから離れていく状態か否かを確認する。本実施形態では、他車両OVの後端部を基準に自車両Vが他車両OVから離れていく状態か否かを確認する構成であるが、これは例示である。例えば、他車両OVのサイドミラーやタイヤ等を基準に他車両OVが自車両Vから離れていく状態か否かを確認する構成としてもよい。
【0068】
判定部113は、他車両OVが自車両Vから離れていく状態であると判断した場合(ステップS32でYes)、当該関係が一定期間続いた否かを確認する(ステップS33)。判定部113は、ステップS32で判断に用いた撮影画像と、当該撮影画像より後に得られる少なくとも1つの撮影画像とに基づき、前方閾距離d2より近くに位置する他車両OVが自車両Vから離れていく状態が一定期間続いたか否かを確認する。
【0069】
判定部113は、前方閾距離d2より近くに位置する他車両OVが自車両Vから離れていく状態が一定期間続いたと判断した場合(ステップS33でYes)、危険状態であると判断する(ステップS34)。一方、判定部113は、ステップS31で他車両OVが前方閾距離d2より近くに位置すると判断されなかった場合(ステップS31でNo)、ステップS32で他車両OVが自車両Vから離れていく状態であると判断されなかった場合(ステップS32でNo)、および、ステップS33で一定期間間続いたと判断されなかった場合(ステップS33でNo)、危険状態でないと判断する(ステップS35)。
【0070】
以上のように、本実施形態では、判定部113は、危険状態であるか否かの判定に際し、自車両Vの前方に設定される所定の前方閾距離d2より近くに位置する他車両OVが自車両Vから離れていく状態が一定期間続いたか否かを確認する。これによれば、自車両Vが死角領域に存在する場合に限らず、他車両OVの急な車線変更によって衝突が発生する可能性がある場合を広く危険状態として捉えることができるために、自車両Vの安全性を向上することができる。また、本実施形態の構成によれば、自車両Vが他車両OVに対して危険な位置関係であるというだけでなく、危険な位置関係が一定期間継続したことを条件として危険状態であると判断する。このために、例えば他車両OVが車線変更のために速度を上げた状態を瞬間的に検出しただけで報知部5が作動することを避けられる。すなわち、他車両OVの速度が自車両Vより十分速く、危険状態が直ぐ回避される場合にまで報知部5が作動することを避けられる。
【0071】
なお、本実施形態においても、判定部113は、危険状態と判断される場合に、危険のレベルを判断する構成としてもよい。報知処理部114は、危険のレベルに応じて報知部5の動作を異ならせてよい。例えば、自車両Vから離れていく他車両OVの、自車両Vに対する相対速度の大きさを基準に危険のレベルを複数段階設定してもよい。この場合、相対速度が小さい場合の方が、危険のレベルが高く設定されてよい。
【0072】
図12は、第3実施形態に係る危険状態の判定処理の変形例を示すフローチャートである。変形例においては、危険状態であるか否かを判定する条件が第3実施形態の場合に比べて増えている。具体的には、図12のステップS32の後に、特定条件を満たすか否かを確認する処理(ステップS36)が増えている。すなわち、前方閾距離d2より近くに位置する他車両OVが自車両Vから離れいく状態が一定期間続くことに加えて、特定条件を満たす場合にのみ危険状態であると判定される。なお、ステップS36を実行するタイミングは、図12に示すタイミングに限られない。例えば、ステップS36は、ステップS31やステップS32の前に行われてもよい。
【0073】
特定条件は、第1実施形態および第2実施形態と同様に、自車両Vと他車両OVとの速度関係に関する条件、自車両Vと他車両OVとの加速度関係に関する条件、他車両OVの前方における物体の存否に関する条件、他車両OVの方向指示器ーの状態に関する条件、サイドミラーに映る像に関する条件のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0074】
<3.留意事項>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態及び変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0075】
例えば、以上においては、衝突判定装置が、報知処理部を備え、報知部を制御する構成としたが、これは例示にすぎず、衝突判定装置は、単に、危険状態であると判定した場合に、当該判定情報を報知部に送信する構成であってよい。この場合には、衝突判定装置は、報知処理部を備えなくてもよい。
【0076】
また、以上においては、衝突判定装置を備える走行支援システムが報知部を備える構成としたが、これは例示にすぎない。走行支援システムは報知部を備えない構成であってよい。この場合、衝突判定装置は報知処理部を備えなくてよい。例えば、走行支援システムは、報知部に替えて、自車両の自動運転を制御する自動運転制御装置を備える構成としてよい。この場合、走行支援システムは、衝突判定装置によって自車両の他車両への衝突が予想される危険状態であると判定された場合に、自車両を危険状態から自動的に離脱させるシステムにすることができる。衝突判定装置は、危険状態であるか否かの判定結果を自動運転制御装置に送信する構成としてよい。危険状態であることを入力された自動運転制御装置は、自車両の動作を制御して、危険状態から離脱させる処理を行ってよい。
【0077】
なお、ここでいう自動運転は、駆動力、制動力、及び、操舵のうちの少なくともいずれか1つが運転者の操作によらず自動で行われる状態を指す。すなわち、自動運転は、操舵、加減速、および、ブレーキの全てが自動で行われるものであってもよいが、例えば、ブレーキアシストのみが自動で行われるものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・衝突判定装置
2・・・撮影部
112・・・検出部
113・・・判定部
114・・・報知処理部
d1・・・後方閾距離
d2・・・前方閾距離
OV・・・他車両
V・・・自車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12