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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】導電性圧電積層フィルムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/857 20230101AFI20240919BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20240919BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240919BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20240919BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20240919BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240919BHJP
   H10N 30/50 20230101ALI20240919BHJP
   H10N 30/098 20230101ALI20240919BHJP
【FI】
H10N30/857
H10N30/87
B32B7/023
G02B1/111
G02B1/16
H10N30/30
H10N30/50
H10N30/098
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023506866
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005299
(87)【国際公開番号】W WO2022196198
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021046606
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】今治 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 慧
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215319(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129829(WO,A1)
【文献】特開2017-216451(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209082(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033276(US,A1)
【文献】国際公開第2017/209081(WO,A1)
【文献】特開2019-096680(JP,A)
【文献】特開2015-186908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/857
H10N 30/87
B32B 7/023
G02B 1/111
G02B 1/16
H10N 30/30
H10N 30/50
H10N 30/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されており、
前記圧電フィルムの屈折率が1.30以上、1.50以下であり、
前記第一コーティング層の屈折率が1.45以上、1.60未満であり、
前記第二コーティング層の屈折率が1.60以上、1.80未満であり、
前記導電層の屈折率が1.80以上、2.20以下であり、
前記圧電フィルムの屈折率よりも、第一コーティング層の屈折率が高い、導電性圧電積層フィルム。
【請求項2】
≦4である、請求項1に記載の導電性圧電積層フィルム。
【請求項3】
波長550nmにおける透過率が83%以上である、請求項1または2に記載の導電性圧電積層フィルム。
【請求項4】
ヘイズ値が2.0%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性圧電積層フィルム。
【請求項5】
前記導電層は、インジウム-スズ複合酸化物で構成されており、
X線回折における前記インジウム-スズ複合酸化物のピークが検出されない、請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性圧電積層フィルム。
【請求項6】
前記第一コーティング層の厚みが0.3μm以上3.0μm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性圧電積層フィルム。
【請求項7】
前記第一コーティング層の屈折率よりも前記第二コーティング層の屈折率が0.05以上高い、請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性圧電積層フィルム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の導電性圧電積層フィルムを備える、デバイス。
【請求項9】
導電性圧電積層フィルムの製造方法であって、
前記導電性圧電積層フィルムは、圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されている積層フィルムであり、
屈折率が1.30以上、1.50以下のフィルムを形成する圧電フィルムを製造する第一工程と、
前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に屈折率1.45以上、1.60未満の第一コーティング層を形成する第二工程と、
前記第一コーティング層の表面に屈折率1.60以上、1.80未満の第二コーティング層を形成する第三工程と、
前記第二コーティング層の表面に屈折率1.80以上、2.20以下の導電層を形成する第四工程と、
を含む、導電性圧電積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
第四工程の後に前記導電層のアニーリング処理を実施しない、請求項に記載の導電性圧電積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性圧電積層フィルムおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示部に直接触れることにより、情報を入力できるデバイスとしてタッチパネルが広く用いられている。この代表的な形式として、電極と指との間に生じる電流容量の変化を利用した静電容量式タッチパネルがある。タッチパネルとして利用される導電性フィルムは、高い透明度を有しており、さらに色味の発生が抑制されているフィルムであることが求められる。
【0003】
このような導電性フィルムとして、例えば、特許文献1および2には導電性フィルムが開示されている。特許文献1および2に開示の導電性フィルムは、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを用い、導電膜としてインジウム-スズ複合酸化物(ITO)を製膜され、150℃前後の加熱処理によりITOの結晶性を高めることで、高い透明度を有し、さらに色味の発生が抑制された導電性フィルムを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-074792号公報
【文献】特開2013-25737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、指等により操作面がタッチされる位置と、指等による操作面の押圧と、を同時に検知する技術に注目が高まっており、圧電センサからなる押し圧検出センサを組み合わせることで実現することが提案されている。しかしながら、圧電センサに使用される圧電フィルムは、PETフィルムと同様にして高温での加熱処理を行うと、色味を損なう。そのため、圧電フィルムを有する導電性圧電積層フィルムをタッチパネルで使用することは困難であるという課題があった。一方で、加熱処理を行なわず、非晶性の導電膜を用いると、導電性圧電積層フィルムに導電膜由来の黄色味が生じるという課題があった。
【0006】
本発明の一態様は、圧電フィルムを有する導電性圧電積層フィルムにおいて、高い透明性および好適な色味を有するフィルムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の導電性圧電積層フィルムは、圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されており、前記圧電フィルムの屈折率が1.30以上、1.50以下であり、前記第一コーティング層の屈折率が1.45以上、1.60未満であり、前記第二コーティング層の屈折率が1.60以上、1.80未満であり、前記導電層の屈折率が1.80以上、2.20以下である。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る導電性圧電積層フィルムの製造方法によって製造される前記導電性圧電積層フィルムは、圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されている積層フィルムであり、その製造方法は屈折率が1.30以上、1.50以下のフィルムを形成する圧電フィルムを製造する第一工程と、前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に屈折率1.45以上、1.60未満の第一コーティング層を形成する第二工程と、前記第一コーティング層の表面に屈折率1.60以上、1.80未満の第二コーティング層を形成する第三工程と、前記第二コーティング層の表面に屈折率1.80以上、2.20以下の導電層を形成する第四工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、圧電フィルムを有する導電性圧電積層フィルムにおいて、高い透明度および好適な色味を有するフィルムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る導電性圧電積層フィルム10の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る導電性圧電積層フィルム10の変形例10’の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
〔導電性圧電積層フィルムの構成〕
本発明の一実施形態に係る導電性圧電積層フィルムは、圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されている。また、圧電フィルムの屈折率が1.30以上、1.50以下であり、第一コーティング層の屈折率が1.45以上、1.60未満であり、第二コーティング層の屈折率が1.60以上、1.80未満であり、導電層の屈折率が1.80以上、2.20以下である。
【0013】
本実施形態において、「この順で重ねられている」とは、上記のフィルム、層を含む積層物において、当該フィルムおよび層が列挙された順番で配置されている状態を意味する。上記のフィルムおよび層は、本実施形態の効果を奏する範囲において、互いに接して重ねられていてもよいし、他のフィルムまたは層を介して重ねられていてもよい。
【0014】
また、本実施形態に係る導電性圧電積層フィルムでは、上記の構成に加えて、圧電フィルムの屈折率よりも、第一コーティング層の屈折率が高い構成となっている。
【0015】
さらに好ましい一態様では、上記構成に加えて、第一コーティング層の屈折率よりも第二コーティング層の屈折率が0.05以上高い構成となっている。この構成により、透過率および色味がより好適に改善される。
【0016】
本実施形態において、「屈折率」は、波長589nmにおける屈折率のことを指す。
【0017】
第一コーティング層および第二コーティング層の屈折率はJIS K7142に準拠して測定したものである。具体的には、試験的に作製した各コーティング層に対して、アッベ屈折率計を用い、波長589nmの測定光を各層に入射させて25.0±1.0℃で3回測定し、測定値の平均を屈折率とした。
【0018】
導電層の屈折率は多入射角高速分光エリプソメータ(J.A.Woollam社製:M―2000)によって、プサイ(Ψ)およびデルタ(Δ)を測定し、そこから波長589nmにおける屈折率を算出した。
【0019】
圧電フィルムの屈折率はASTM D542に準拠して測定したものである。
【0020】
本実施形態において、導電性圧電積層フィルムは圧電フィルムの一方の面に第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられている限り、もう一方の面の構成は特に限定されない。例えば、図1に示す通り、圧電フィルム1の一方の面のみに、第一コーティング層2、第二コーティング層3、および導電層4を重ね、導電性圧電積層フィルム10としてもよい。また、図2に示す通り、圧電フィルム1の両面に第一コーティング層2および2’を形成して、一方の第一コーティング層2の面上に第二コーティング層3、および導電層4をこの順で重ねて、導電性圧電積層フィルム10’としてもよい。また、圧電フィルム1の一方の面に、第一コーティング層2、第二コーティング層3、および導電層4がこの順で重ねられており、もう一方の面にも同様に、第一コーティング層2、第二コーティング層3、および導電層4がこの順で重ねられている構成であってもよい。
【0021】
以下、本発明の一実施形態として、主に図1に示す導電性圧電積層フィルム10について説明する。
【0022】
[圧電フィルム1]
本発明の一実施形態に係る導電性圧電積層フィルム10に含まれる、圧電フィルム1とは、圧電性を有するフィルムを意味する。例えば、圧電フィルム1は樹脂製フィルムであってもよい。
【0023】
圧電フィルム1の屈折率は1.30以上、1.50以下である。好ましくは、圧電フィルム1の屈折率、1.35以上、1.47以下であり、より好ましくは1.38以上、1.45以下である。このような条件を満たす圧電フィルム1は、公知の方法によって製造すればよく、その原料、製造方法は特に限定されない。
【0024】
例えば、上記の条件を満たす樹脂製フィルムとして、フッ素樹脂製フィルムが挙げられる。なお、本実施形態において、実施形態において「フッ素樹脂製」とは、圧電フィルム1を構成する組成物においてフッ素樹脂が主成分であることを意味する。また、「フッ素樹脂が主成分である」とは、当該組成物においてフッ素樹脂が樹脂成分中で最多の成分であることを意味する。当該組成物におけるフッ素樹脂の含有量は、51質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0025】
本実施形態における樹脂は、本発明の圧電フィルム1に使用可能な、いかなる樹脂であってもよく、一種でもそれ以上でもよい。例えば、圧電フィルム1に使用可能なフッ素樹脂にはフッ化ビニリデン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂およびこれらの混合物が含まれる。
【0026】
フッ化ビニリデン樹脂の例には、フッ化ビニリデンの単独重合体、およびその共重合体が含まれる。フッ化ビニリデンの共重合体におけるフッ化ビニリデン以外の単量体に由来する構成単位の含有量は、圧電フィルム1の用途に応じた特性を発現可能な範囲で適宜に決めてよい。
【0027】
フッ化ビニリデンの共重合体におけるフッ化ビニリデン以外の単量体の例には、炭化水素系単量体およびフッ素化合物が含まれる。当該炭化水素系単量体の例には、エチレンおよびプロピレンが含まれる。当該フッ素化合物は、フッ化ビニリデン以外のフッ素化合物であって、重合可能な構造を有するフッ素化合物である。当該フッ素化合物の例には、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルヘキサフルオロプロピレンおよびフルオロアルキルビニルエーテルが含まれる。
【0028】
例えば、フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレンを80:20の混合比で共重合させたフッ化ビニリデン共重合体(VDF/TFE)、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロペンを40:40:20の混合比で共重合させた、フッ化ビニリデン共重合体(VDF/TFE/HFP)であってもよい。
【0029】
テトラフルオロエチレン樹脂の例には、テトラフルオロエチレンの単独重合体およびその共重合体が含まれる。当該共重合体の構造単位を構成するテトラフルオロエチレン以外の単量体の例には、エチレン、フルオロプロピレン、フルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびパーフルオロジオキシソールが含まれる。
【0030】
フッ化ビニリデンとテトラトリフルオロエチレンとの共重合体もフッ素樹脂として好適に用いることができる。
【0031】
本実施形態における圧電フィルム1は、本実施形態の効果が得られる範囲において種々の添加剤を含んでもよい。当該添加剤は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、可塑剤、滑剤、架橋剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤および顔料が含まれる。
【0032】
本実施形態における圧電フィルム1の厚みは、導電性圧電積層フィルム10の用途に応じて、本実施形態の効果が得られる範囲から適宜に決めることができる。圧電フィルム1の厚みは、薄すぎると機械的強度が不十分となることがあり、一方で、厚すぎると効果が頭打ちになり、あるいは透明性が不十分になり、光学用途で使用することが難しくなることがある。圧電フィルム1の厚みは、例えば10~200μmの範囲内から適宜に決めることが可能である。
【0033】
より具体的には、圧電フィルム1の厚みは、機械的強度の観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。また、圧電フィルム1の厚みは、機械的強度と経済性との両立の観点から、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。厚みが上述の範囲内の圧電フィルム1を備える導電性圧電積層フィルム10は、タッチパネルに好適に使用することができる。
【0034】
[第一コーティング層2]
本実施形態における第一コーティング層2は、圧電フィルム1と第二コーティング層3との間に位置する層である。
【0035】
第一コーティング層2は、図1に示す通り、圧電フィルム1の一表面側のみに配置されてもよく、圧電フィルム1に好適な光学特性を付与する観点によれば、図2に示す通り、両面側に配置されてもよい。第一コーティング層2は、導電性圧電積層フィルム10の透明性を高める観点、および、環境による圧電フィルム1の発色を防止する観点から、導電性圧電積層フィルム10の厚み方向において圧電フィルム1に隣接して配置されていることが好ましい。
【0036】
第一コーティング層2の屈折率は1.45以上、1.60未満である。好ましくは、第一コーティング層2の屈折率は1.47以上、1.57以下であり、より好ましくは1.49以上、1.55以下である。
【0037】
第一コーティング層2の材料は、このような屈折率を満たす材料であれば、使用可能なあらゆる材料の中から適宜に選択すればよい。当該材料は、無機材料でも有機材料でもよいし、一種でもそれ以上でもよい。また、当該コーティング層の材料は、ハードコート層の材料であってもよい。当該材料の例には、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シラン化合物および金属酸化物が含まれる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、これらの一方または両方を意味する。特に、(メタ)アクリル酸エステル樹脂製が十分な透明性、材料の種類の豊富さ、および、原料価格の低さの観点から好ましい。
【0038】
第一コーティング層2の材料は、コーティング層を構成するのに必要な他の材料を含んでいてよい。(メタ)アクリル酸エステル樹脂製コーティング層の材料であれば、一般に、開始剤、オリゴマー、モノマーおよびその他の成分が混合してなる組成物が使用され得る。この場合、第一コーティング層2の物性は、主に、オリゴマーおよびモノマーによって決まる。当該オリゴマーの例には、単官能または多官能の(メタ)アクリルレートが含まれる。上記モノマーの例には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが含まれる。さらに、第一コーティング層2の材料に、フィルム同士のブロッキング防止および接着性の観点より、無機粒子およびポリマービーズ等を添加してもよい。当該無機粒子には、例えば合成シリカ、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、長石類、石英類等が使用でき、特に合成シリカがプラスチックフィルムの高品質化の観点より好ましく使用できる。合成シリカには例えばSiOが挙げられる。
【0039】
第一コーティング層2は、任意の機能を発現させるための材料をさらに含んでもよい。例えば、第一コーティング層2は帯電防止剤を含んでもよい。帯電防止剤の例には、界面活性剤、五酸化アンチモン、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)および導電性高分子が含まれる。
【0040】
第一コーティング層2の厚みは特に限定されないが、第一コーティング層2の厚みは0.3μm以上、3.0μm以下であってもよく、0.5μm以上、2.0μm以下であることがより好ましい。
【0041】
図2に示す導電性圧電積層フィルム10’のように、第一コーティング層2および2’のそれぞれを圧電フィルム1の各面にコーティングすることにより、圧電フィルム1の両面において傷および凹凸等を防ぐことができる。そのため、導電性圧電積層フィルム10’のヘイズ値をより改善することができる。
【0042】
第一コーティング層2は、いわゆるハードコート層とも呼ばれる、傷つき防止のための透明な表面保護層であってよい。
【0043】
さらに、第一コーティング層2の屈折率および厚みが上記で規定する範囲内であることで、導電性圧電積層フィルム10のヘイズ値を改善することができる。
【0044】
[第二コーティング層3]
本実施形態における第二コーティング層3は、第一コーティング層2と導電層4との間に位置する層である。
【0045】
第二コーティング層3の屈折率が1.60以上、1.80未満である。好ましくは、第二コーティング層3の屈折率は1.63以上、1.78未満であり、より好ましくは1.65以上、1.75以下である。第二コーティング層3の屈折率は、第一コーティング層2よりも0.05以上高いことがさらに好ましい。
【0046】
第二コーティング層3の材料は、このような屈折率を満たす材料であれば、使用可能なあらゆる材料の中から適宜に選択すればよい。例えば、第一コーティング層2の材料として例示した材料に、金属酸化物微粒子を加えることで、屈折率を調整した樹脂を用いてもよい。金属酸化物微粒子は、屈折率が1.50以上の屈折率材であることが好ましい。当該金属酸化物微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛および酸化スズが挙げられ、中でも、酸化チタン、および酸化ジルコニウムが好ましい。
【0047】
第二コーティング層3の材料は、第一コーティング層2の材料と同様に、コーティング層を構成するのに必要な他の材料を含んでいてよい。
【0048】
第二コーティング層3の厚みは、例えば、50nm以上、500nm以下であってもよい。一つの例としては、第二コーティング層3の膜厚は、90nm以上、180nm以下であり得る。また、別の例としては、第二コーティング層3の膜厚は、240nm以上、310nm以下であり得る。さらに別の例としては、第二コーティング層3の膜厚は、380nm以上、420nm以下としてもよい。第二コーティング層3の厚みが上記範囲内であることにより、導電性圧電積層フィルム10の透過率および色味を改善することができる。
【0049】
第二コーティング層3は、導電性圧電積層フィルム10の透過率および色味を好適に調整する役割を有する。特に第二コーティング層3の屈折率および厚さを調整することで、好適な光学特性を有する導電性圧電積層フィルム10とすることができる。
【0050】
後述するが、本実施形態の導電層4が非晶質である場合、導電性圧電積層フィルム10に色味が発生しやすくなる。このような色味の発生を抑制するためには、第一コーティング層2および第二コーティング層3の屈折率が特に重要である。
【0051】
[導電層4]
本実施形態における導電層4は第二コーティング層3の上に重ねられている構成である。
【0052】
本実施形態における導電層4は、平面状の広がりを有し導電性を有する構造であり、電極とも言える。導電層4は、当該平面状の広がりを一つの層と仮定した時に、当該層が十分な透明性を発現すればよく、そのような構造であれば導電層4そのものが透明性を有さなくてもよい。例えば、導電層4は、高い透明性を有する導電性の部材または組成で構成されてもよいし、透明性を有さない材料で構成されるが十分な透明性を発現可能な極薄または極細の微細な構造であってもよい。
【0053】
導電層4は、透明な基板上に形成され、当該基板とともに透明コーティング層に接着されていてもよい。導電層4は、圧電フィルム1の少なくとも片面側に配置されていればよい。第一コーティング層2を圧電フィルム1の両面側に形成する場合では、導電層4は、少なくともいずれか一方側の第二コーティング層3上に配置されていればよい。導電層4の形態は、限定されず、ナノワイヤでもよいし、メッシュでもよいし、薄膜であってもよい。当該薄膜は、単層でもよいし、複数層の積層構造であってもよい。
【0054】
導電層4を構成する材料は限定されず、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも一種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、上記群に示された金属原子をさらに含んでいてもよい。当該金属酸化物には、ITO、アンチモン-スズ複合酸化物(ATO)等が好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。導電層4の他の代表的な材料の例には、銀ナノワイヤ、銀メッシュ、銅メッシュ、グラフェンおよびカーボンナノチューブが含まれる。
【0055】
導電層4の厚みは、制限されないが、その表面抵抗値を1×10Ω/sq以下の良好な導電性を有する連続被膜とする観点から、10nm以上であることが好ましい。当該厚みが厚くなりすぎると透明性の低下等をきたすことがあり、薄すぎると電気抵抗が高くなることがあり、また膜構造中に非連続の部分が形成されることがある。当該厚みは、導電性をより高める観点から、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。導電層4の透明性をより高める観点から、導電層4の厚みは、55nm未満であることが好ましく、45nm未満であることがより好ましい。導電層4の厚みは、このような積層物の断面の観察から求める公知の方法によって求めることが可能である。
【0056】
導電層4における非晶性は、X線回折法を利用して求めることが可能である。また、当該非晶性は、導電層4を形成した後のアニーリングのような、導電層4の作製における結晶化を促進させる工程の実施の有無および実施の程度によって調整することが可能である。
【0057】
本実施形態における導電性圧電積層フィルム10は、圧電フィルム1の変色を避けるために、その加工において高温での加熱を避ける必要がある。このため、導電層4の材料は、非晶質となる場合がある。ここで、非晶質とは、結晶構造を持たず、原子が不規則に並んだ、物質の状態のことを指す。導電層4が非晶質の材料で構成されていることは、例えば、上記に示す通り、X線回折法で導電層4の材料の結晶ピークが検出されないことによって確認することが可能である。
【0058】
本実施形態の導電層4の屈折率は1.80以上、2.20以下である。好ましくは、導電層4の屈折率は1.83以上、2.00以下であり、より好ましくは1.85以上、1.95以下である。導電層4の屈折率が上記範囲内であることにより、干渉縞等の問題が生じ、視認性が低下することを抑制することができる。
【0059】
本実施形態の導電性圧電積層フィルム10の一態様では、導電層4は、インジウム-スズ複合酸化物で構成されている。さらに別の態様では、導電層4は、インジウム-スズ複合酸化物で構成されており、かつX線回折におけるインジウム-スズ複合酸化物のピークが検出されない状態となっている。この構成によれば、非晶質であり、さらに屈折率が好適な範囲内である導電層4とすることができる。
【0060】
[その他の層構成]
図示しないが、本発明の導電性圧電積層フィルム10は、圧電フィルム1、第一コーティング層2、第二コーティング層3、および導電層4がこの順に重ねられていればよく、その他の層構成を適宜追加して、本発明の導電性圧電積層フィルムとしてもよい。その他の層構成は、一種でもそれ以上でもよい。
【0061】
例えば、第一コーティング層2および第二コーティング層3とは異なる1層の、または複数層のコーティング層を新たに含んでもよい。
【0062】
導電性圧電積層フィルム10が第一コーティング層2および第二コーティング層3とは異なるコーティング層を有する場合は、コーティング層の総厚みは、0.3~4.5μmである。本実施形態においてコーティング層の「総厚み」とは、導電性圧電積層フィルム10が有する個々のコーティング層の厚みの総和である。コーティング層を圧電フィルム1の一方の主面側のみに有する場合は、総厚みは当該一方の主面側のコーティング層の厚みである。コーティング層を圧電フィルム1の一方の主面と他方の主面の両側に有する場合は、一方の主面側のコーティング層の厚みと他方の主面側のコーティング層の厚みとの和である。
【0063】
導電性圧電積層フィルム10は、既存の電極層と組み合わせて使用してもよい。既存の電極層は、例えば、位置を検出するためのセンサの役割を有する。既存の電極層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)、およびポリカーボネート(PC)等のいずれか、または複数を材料として含むフィルムに、導電層を積層したものであってもよい。なお、既存の電極層に含まれる導電層は、上述した本発明に係る導電層4と同じ材料を含むものであってもよい。
【0064】
また、その他の層構成として、粘着剤層、および、当該粘着剤層に当接し剥離可能な離型層も含まれる。
【0065】
粘着剤層は、導電性圧電積層フィルム10または後述のタッチパネルを構成する任意の層を他の層に接着可能な粘着性を有する透明な層である。粘着剤層は、透明性を有する粘着剤であればよい。このような粘着剤は、透明性と粘着性とを発現するベースポリマーを含有していてよい。ベースポリマーの例には、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、およびゴム系ポリマーが含まれる。ゴム系ポリマーの例には、天然ゴムおよび合成ゴムが含まれる。ベースポリマーは、上記の例から適宜に選択して用いることができる。粘着剤には、特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性および耐熱性にも優れるという観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0066】
さらに、その他の層構成として、導電性圧電積層フィルム10の光学特性を向上させる層を追加して含んでもよい。例えば、Anti―Glare層、Anti-Reflection層を含んでもよい。
【0067】
Anti-Glare層は微粒子を含む層であり、映り込みを防止する役割を有する。例えば、コーティング層の材料となる樹脂に微粒子を入れることによって形成することができる。Anti-Reflection層は、屈折率を調整することにより光学特性を向上させる層である。Anti-Reflection層は、コーティング層の材料となる樹脂を用いて形成することができる。
【0068】
また、保護機能を有する層を追加して含んでもよい。例えば、公知の防汚(耐指紋)層および保護フィルム層等を含んでもよい。
【0069】
なお、導電性圧電積層フィルム10を構成する各層等の厚みは、導電性圧電積層フィルム10をエポキシ樹脂に包埋し、導電性圧電積層フィルム10の断面が露出するようにエポキシ樹脂隗を切断し、当該断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することが可能である。当該層の厚みは、当該層の厚みの代表値であればよく、任意の複数の測定値の平均値であってもよいし、当該測定値の最大値であってもよいし、当該測定値の最小値であってもよい。
【0070】
〔導電性圧電積層フィルム10の作用効果〕
本発明の実施形態における導電性圧電積層フィルム10は、前述したように、圧電フィルム1の少なくとも一方の面上に、第一コーティング層2、第二コーティング層3、および導電層4がこの順で重ねられて構成されており、圧電フィルム1の屈折率が1.30以上、1.50以下であり、第一コーティング層2の屈折率が1.45以上、1.60未満であり、第二コーティング層3の屈折率が1.60以上、1.80未満であり、導電層4の屈折率が1.80以上、2.20以下である。この構成を有することにより、導電性圧電積層フィルム10は、圧電フィルム1による十分な圧電性を有することに加え、高い透明性および好適な色味を有している。また、一態様では、導電性圧電積層フィルム10は、図1において上側に示される層ほど屈折率が低く、下側に示される層ほど屈折率が高い構成となっている。このような構成を有することにより、上述の効果がより優れたものとなる。
【0071】
当該導電性圧電積層フィルム10は、上記のように高い透明性を発現し、タッチパネル等デバイスの押し圧検出センサとして好適に使用できる。当該導電性圧電積層フィルム10を用いることで、タッチパネル等のデバイスの層構成を従来よりも簡略化すること、あるいは全体としての層の厚みを薄くすること、が可能であり、また、タッチパネル等のデバイスにおける導電性圧電積層フィルム10の配置数および配置箇所の自由度を高めることが可能である。
【0072】
〔導電性圧電積層フィルム10の物性〕
本実施形態の導電性圧電積層フィルム10は、十分な透光性を実現する観点から、十分に透明であることが好ましい。なお、本実施形態において、「透明」とは、導電性圧電積層フィルム10の用途に応じて適宜に決めてもよいが、所望の割合以上に可視光線を透過し、色味が抑制されており、さらに濁度が十分に低い、光学的特性のことを意味する。
【0073】
導電性圧電積層フィルム10の可視光線透過率は、当該導電性圧電積層フィルム10の用途に応じて適宜に決めることができる。なお、可視光線透過率の一例として、波長550nmの光線の透過率を測定してもよい。波長550nmは明所最大視感度といわれる波長であり、可視光線の透過率を計測する際の目安として一般に用いられる。550nm透過率は、例えば、ヘイズメータ(「NDH7700SP II」、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7361-1に記載の方法に基づいて測定することが可能である。
【0074】
本実施形態において、導電性圧電積層フィルム10の波長550nmにおける透過率(以下、「550nm透過率」と称する)は、83%以上であることが好ましく、85%以上であればより好ましい。導電性圧電積層フィルム10の550nm透過率が当該範囲内であれば、タッチパネル等のデバイスに用いるフィルムとしては十分に高い透過率である。
【0075】
色味の抑制の程度は、当該導電性圧電積層フィルム10の用途に応じて適宜に決めることができる。色味はL表色系におけるL値、a値、およびb値で評価してもよい。L表色系におけるそれぞれの値は、例えば分光色彩計を用いて、JIS Z8722に記載の公知の方法により測定することが可能である。
【0076】
本実施形態の導電性圧電積層フィルム10は、安定した透光性を実現する観点から、色味が発生していないことが好ましい。特に導電層4由来の黄色味を好適に抑制していることが好ましいため、黄の色度b値の値で評価してもよい。なお、明度L値ならびに赤および緑の色度a値は、導電性圧電積層フィルム10をタッチパネルとして用いる場合に問題とならない程度であれば、特に限定されない。
【0077】
本実施形態の導電性圧電積層フィルム10はb≦4であってもよく、b≦3であることがより好ましい。当該範囲内の導電性圧電積層フィルム10は黄色味が抑制され、高い透明性を有しているため、タッチパネルに好適に使用することができる。なお、b値は-4以上であることが好ましい。さらに、導電性圧電積層フィルム10のL値は85以上であり、a値は、3以下であってもよい。L値、a値、およびb値のそれぞれが当該範囲内である導電性圧電積層フィルム10であれば、タッチパネル等のデバイスに用いるフィルムとしては、十分に色味が抑制されており、高い透明性を有する。
【0078】
濁度の程度については、当該導電性圧電積層フィルム10の用途に応じて適宜に決めることができる。濁度は、ヘイズ値によって評価してもよい。ヘイズ値は、例えばヘイズメータを用いて、JIS K7136に記載の方法に基づいて測定することが可能である。
【0079】
本実施形態の導電性圧電積層フィルム10は、ヘイズ値が2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズ値が当該範囲内である導電性圧電積層フィルム10は、十分に濁度が抑制されており、タッチパネル等のデバイスの用途において、好適に使用できる。
【0080】
本実施形態の導電性圧電積層フィルム10は、タッチパネル等のデバイスの用途において、表面抵抗値および圧電定数d33はタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ない範囲であれば特に限定されない。
【0081】
導電性圧電積層フィルム10の表面抵抗値は、例えば抵抗率計を用いて、JIS K 7194に記載の公知の方法に基づいて測定することが可能である。当該表面抵抗値は、例えば1×10Ω/sq以下が好ましく、400Ω/sq以下がより好ましく、300Ω/sq以下がより好ましく、200Ω/sq以下がさらに好ましい。タッチパネル等のデバイスの用途においてより良好な導電性を得るために、当該表面抵抗値はより低い方が好ましいが、その下限として、例えば10Ω/sq以上、20Ω/sq以上が挙げられる。
【0082】
導電性圧電積層フィルム10の圧電定数d33は、例えば圧電定数測定装置を用いて計測すればよい。例えば、0.2Nでサンプルをクリップし、0.15N、110Hzの力を加えた際の発生電荷を読み取り、その絶対値を測定すればよい。当該圧電定数d33値は、例えば6pC/N以上であることが好ましく、10pC/N以上であることがより好ましく、12pC/N以上であることがさらに好ましい。当該圧電特性の上限は限定されないが、上記の場合であれば、圧電フィルム1の圧電性能に関して所期の効果が十分に得られる観点から、圧電定数d33で45pC/N以下であればよく、35pC/N以下であることがより好ましく、30pC/N以下であることがさらに好ましい。
【0083】
〔デバイス〕
本発明の一実施形態のデバイスは、前述した本実施形態の導電性圧電積層フィルム10を備える。当該デバイスは、本実施形態における導電性圧電積層フィルム10を備えていれば、いかなるものであってもよい。例えば、導電性圧電積層フィルム10の位置および数は、デバイスの用途または所期の機能に応じて、適宜に決めることができる。導電性圧電積層フィルム10は、例えば、タッチパネル等の押圧検出センサとしてデバイスに使用されてもよい。
【0084】
タッチパネルの押圧検出センサとして使用する場合は、GFFタイプまたはGF2タイプ等の従来のタッチパネルにおける積層構造中に、本実施形態における導電性圧電積層フィルム10を適宜に追加した構成を有していてもよい。この場合、本実施形態の導電性圧電積層フィルム10には、圧力を検出するための電極層および位置を検出するための位置センサが、直接積層されてもよいし、粘着剤層を介して接着されてもよい。このような構成を有するタッチパネルは、従来のタッチパネルの機能に加えて、導電性圧電積層フィルム10に起因する機能をさらに発現することができ、例えば透明な積層構造中に位置センサと圧力センサの両方を含むタッチパネルを構成することが可能である。
【0085】
なお、タッチパネルとして使用する場合は、その製造において、粘着剤層は、コーティング層上のみならず、粘着剤層を介してコーティング層と接着する他の層の上に形成されていてもよい。この場合、粘着剤層は、コーティング層側にあってもよいし、なくてもよい。
【0086】
導電性圧電積層フィルム10がデバイスに含まれる場合、導電性圧電積層フィルム10が電極としての役割を備えるため、従来のデバイスの押圧センサの層構造に含まれていた、例えばPET/ITOからなる電極層を削減することが可能である。このため、押圧検出センサの層構造を従来よりも簡略化することができる。
【0087】
〔導電性圧電積層フィルム10の製造方法〕
以下、本実施形態の導電性圧電積層フィルム10の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、圧電フィルム1の少なくとも一方の面上に、第一コーティング層2、第二コーティング層3、および導電層4がこの順で重ねられて構成されている積層フィルムの製造方法であり、屈折率が1.30以上、1.50以下のフィルムを形成する圧電フィルム1を製造する第一工程と、圧電フィルム1の少なくとも一方の面上に屈折率1.45以上、1.60未満の第一コーティング層2を形成する第二工程と、第一コーティング層2の表面に屈折率1.60以上、1.80未満の第二コーティング層3を形成する第三工程と、第二コーティング層3の表面に屈折率1.80以上、2.20以下の導電層4を形成する第四工程と、を含む。
【0088】
第一工程は、圧電フィルム1を作製する工程であればよく、作製する圧電フィルム1の種類に応じて、適宜に工程を変更または追加してもよい。例えば、キャスティング法、熱プレス法、および溶融押出法等の従来公知の方法によって樹脂フィルムを作製する工程と、樹脂フィルムを延伸する工程と、非分極の樹脂フィルムを分極処理する工程と、を続けて行うことにより、圧電フィルム1を作製することができる。
【0089】
第二工程では、第一コーティング層2の材料を、第一工程で作製した圧電フィルム1の少なくとも一方の面に、塗布すればよい。塗布の方法は、従来公知の方法でよく、特に制限されないが、生産性および製造コストの面より、特にウェットコーティング法が好ましい。ウェットコーティング法は、公知の方法でよく、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法等が代表的な方法として挙げられる。その中でロールコート法、グラビアコート法等、連続的に層を形成できる方法が生産性の点より好ましい。
【0090】
第一コーティング層2の材料の塗布には、例えば、バーコーターおよびグラビアコーター等を用いればよい。材料の塗布後に50℃~180℃の条件で0.5~60分間乾燥させてもよい。さらに、乾燥させた第一コーティング層2の塗膜を、UV照射によって固化してもよい。UV照射による固化は、例えば、UV照射装置を用いて、50~1200mJ/cmの積算光量でUVを照射すればよい。第二工程において用いる装置、材料の濃度および温度等の条件は、第一コーティング層2の材料および膜厚等を参照して、適宜変更してもよい。
【0091】
第三工程では、第二コーティング層3の材料を、第二工程で作製した第一コーティング層2に、公知の方法によって塗布すればよい。例えば、第一コーティング層2と同様にウェットコーティング法を用いて塗布してもよい。また、ドライコーティング法によって導電層4と併せて塗布することも可能である。第三工程の装置、材料の濃度および温度等の条件は第二工程と同様にしてもよい。なお、第二コーティング層3の膜厚の調整は、材料の濃度を調整することで可能となる。
【0092】
第四工程では、導電層4を、第三工程において作製した第二コーティング層3上に、公知の方法によって形成させればよい。導電層4の形成には、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の方法により、導電層4の材料を付着させればよい。これらの方法は、必要とする膜厚に応じて適宜方法を採用してもよい。
【0093】
スパッタリング法を採用する場合、ターゲット材としては、導電層4を構成する上述の無機物が挙げられ、好ましくは、ITOが挙げられる。ITOの酸化スズ濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。
【0094】
スパッタガスとしては、例えば、Ar等の不活性ガスが挙げられる。また、必要に応じて、酸素ガス等の反応性ガスを併用することができる。反応性ガスを併用する場合において、反応性ガスの流量比は特に限定しないが、スパッタガスおよび反応性ガスの合計流量比に対して、例えば、0.1流量%以上5流量%以下である。
【0095】
スパッタリング時の気圧は、スパッタリングレートの低下抑制、放電安定性等の観点から、例えば、1Pa以下であり、好ましくは、0.7Pa以下である。
【0096】
スパッタリング法に用いる電源は、例えば、DC電源、AC電源、MF電源およびRF電源のいずれであってもよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
【0097】
本実施形態の製造方法は、第一工程~第四工程を含んでいれば、さらに別の工程を含んでいてもよい。例えば、その他の層構成を導電性圧電積層フィルム10に追加する工程を加えてもよい。また、圧電フィルム1をコロナ処理して、第一コーティング層2との密着性を高める工程を加えてもよい。
【0098】
本実施形態の製造方法によれば、高い透明性および好適な色味を有する導電性圧電積層フィルム10を製造できる。
【0099】
本実施形態の製造方法においては、第四工程の後に導電層4のアニーリング処理を実施しなくてもよい。アニーリング処理を行わないことにより、圧電フィルム1の色味が損なわれないため、タッチパネル等のデバイスに好適に使用できる導電性圧電積層フィルム10を作製できる。
【0100】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0101】
(まとめ)
本発明を、以下のように表現することもできる。
【0102】
本態様1に係る導電性圧電積層フィルムは、圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されており、圧電フィルムの屈折率が1.30以上、1.50以下であり、第一コーティング層の屈折率が1.45以上、1.60未満であり、第二コーティング層の屈折率が1.60以上、1.80未満であり、導電層の屈折率が1.80以上、2.20以下である。この構成により、導電性圧電積層フィルムに、高い透明性および好適な色味を付与できる。
【0103】
本態様2に係る導電性圧電積層フィルムは、前記態様1において、b≦4である。この構成の導電性圧電積層フィルムは、好適な色味を有しているため、タッチパネル等のデバイスに好適に使用できる。
【0104】
本態様3に係る導電性圧電積層フィルムは、前記態様1または2において、波長550nmにおける透過率が83%以上である。この構成の導電性圧電積層フィルムは、高い透明性を有しているため、タッチパネル等のデバイスに好適に使用できる。
【0105】
本態様4に係る導電性圧電積層フィルムは、前記態様1~3のいずれかにおいて、ヘイズ値が2.0%以下である。この構成の導電性圧電積層フィルムは、濁度が十分に低いため、タッチパネル等のデバイスに好適に使用できる。
【0106】
本態様5に係る導電性圧電積層フィルムは、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記導電層は、インジウム-スズ複合酸化物で構成されており、X線回折における前記インジウム-スズ複合酸化物のピークが検出されない。この構成によれば、非晶質であり、さらに屈折率が好適な範囲内である導電層とすることができる。
【0107】
本態様6に係るデバイスは、本態様1~5のいずれかの導電性圧電積層フィルムを備える。この構成によれば、デバイス中のタッチパネル等のフィルム構造が従来よりも簡略化できる。
【0108】
本態様7に係る製造方法は、導電性圧電積層フィルムの製造方法であって、前記導電性圧電積層フィルムは、圧電フィルムの少なくとも一方の面上に、第一コーティング層、第二コーティング層、および導電層がこの順で重ねられて構成されている積層フィルムであり、屈折率が1.30以上、1.50以下のフィルムを形成する圧電フィルムを製造する第一工程と、前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に屈折率1.45以上、1.60未満の第一コーティング層を形成する第二工程と、前記第一コーティング層の表面に屈折率1.60以上、1.80未満の第二コーティング層を形成する第三工程と、前記第二コーティング層の表面に屈折率1.80以上、2.20以下の導電層を形成する第四工程と、を含む。この構成によれば、高い透明性および好適な色味を有する導電性圧電積層フィルムを製造できる。
【0109】
本態様8に係る製造方法は、本態様7において、第四工程の後に前記導電層のアニーリング処理を実施しない。この構成によれば、圧電フィルムの色味が損なわれないため、タッチパネル等のデバイスに好適に使用できる導電性圧電積層フィルムを作製できる。
【実施例
【0110】
〔実施例1〕
インヘレント粘度が1.3dl/gであるポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製)から成形された樹脂フィルム(厚さ、120μm)を延伸倍率が4.2倍になるように延伸した。延伸後、フィルムを分極ロールに通して分極処理を行い、圧電フィルムを得た。その際、直流電圧は0kVから12.0kVへと増加させながら印加することで分極処理を行った。分極処理後のフィルムをさらに130℃で1分間熱処理することで、屈折率1.42、厚みが40μmの圧電フィルムを得た。
【0111】
圧電フィルムの上面(A面)にアクリル樹脂からなる非晶質シリカ含有紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、80℃で乾燥後、紫外線を照射して、第一コーティング層(厚み0.4μm、屈折率1.52)を形成した。次に、同様の方法で圧電フィルムの下面(B面)にも第一コーティング層(厚み0.4μm、屈折率1.52)を形成した。続いて、第一コーティング層(A面)の上面に、酸化ジルコニウム粒子含有紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、80℃で乾燥後、紫外線を照射して、第二コーティング層(厚み114nm、屈折率1.65)を形成した。これにより、圧電フィルム、第一コーティング層および第二コーティング層を備える積層体を得た。
【0112】
次に、第二コーティング層上に、97質量%の酸化インジウムおよび3質量%の酸化スズを含有する焼結体材料をターゲットとして用いる下記条件での反応性スパッタリング法により、導電層である、屈折率1.88、厚み30nmのITO膜を形成した。こうして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0113】
〔実施例2〕
第二コーティング層の厚みを102nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0114】
〔実施例3〕
第一コーティング層A、第一コーティング層B、第二コーティング層、導電層の厚みを1.0μm、0.9μm、110nm、および35nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0115】
〔実施例4〕
第二コーティング層の厚みを84nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0116】
〔実施例5〕
第二コーティング層の屈折率を1.75に変更し、第一コーティング層A、第一コーティング層B、第二コーティング層、および導電層の厚みをそれぞれ1.0μm、0.9μm、164nm、35nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
〔実施例6〕
第二コーティング層の屈折率を1.70に変更し、第一コーティング層A、第一コーティング層B、第二コーティング層、および導電層の厚みをそれぞれ1.0μm、1.0μm、105nm、28nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
〔実施例7〕
第一コーティング層の屈折率を1.49に変更し、第一コーティング層B、第二コーティング層、および導電層の厚みをそれぞれ1.0μm、100nm、28nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0117】
〔比較例1〕
第一コーティング層および第二コーティング層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0118】
〔比較例2〕
第二コーティング層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0119】
〔比較例3〕
第二コーティング層の屈折率を1.52に変更し、第二コーティング層の厚みを133nmとした以外は、実施例3と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0120】
〔比較例4〕
第二コーティング層の屈折率を1.52に変更し、第二コーティング層の厚みを212nmとした以外は、実施例3と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0121】
〔比較例5〕
第二コーティング層の上に、屈折率1.35の中空シリカ含有紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、80℃で乾燥後、紫外線を照射して、第三コーティング層を厚み80nmで形成した以外は、実施例3と同様の方法にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0122】
〔比較例6〕
第一コーティング層の屈折率を1.65に変更し、第一コーティング層Bを設けなかった以外は、実施例6と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0123】
〔比較例7〕
第一コーティング層の屈折率を1.39に変更し、第一コーティング層Bを設けず、第二コーティング層の厚みを96とした以外は、実施例6と同様にして、導電性圧電積層フィルムを得た。
【0124】
実施例1~7および比較例1~7の導電性圧電積層フィルムの構成を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
〔評価〕
実施例1~7および比較例1~7のフィルムについて、表面固有抵抗値、圧電定数d33値、550nm透過率、ヘイズ値、L、a、およびbをそれぞれ測定して、それぞれのフィルムの物性および光学特性を評価した。
【0127】
[物性評価]
【0128】
(コーティング層の厚み)
実施例1~7および比較例1~7の導電性圧電積層フィルムのそれぞれをエポキシ樹脂に包埋し、導電性圧電積層フィルムの断面が露出するようにエポキシ樹脂隗を切断した。露出した導電性圧電積層フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡(「SU3800」、株式会社日立ハイテク製)を用いて加速電圧3.0kV、倍率50,000倍の条件で観察し、導電性圧電積層フィルム中のコーティング層の厚みを測定した。
【0129】
なお、各コーティング層の厚みの測定において、各コーティング層のうちの2ヶ所の厚みを測定し、その平均値を各コーティング層の厚みとした。なお、上記の観察条件において、各コーティング層の界面は、ほぼ滑らかな線として観察され、各コーティング層の厚みの測定では、当該線間の距離を測定した。
【0130】
(導電層の厚み)
実施例1~7、比較例1~7の導電性圧電積層フィルムのそれぞれの断面を、上記走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧3.0kV、倍率50,000倍の条件で観察し、各ITO膜の二か所で厚みを測定した。得られた測定値の平均値を算出し、導電層の厚みとした。
(表面抵抗値)
実施例1~7および比較例1~7の導電性圧電積層フィルムの表面抵抗値(Ω/sq、以下単に「抵抗値」と称する)のそれぞれを、抵抗率計(「LorestaGP MCP-T610」、三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて、JIS K 7194に準拠して行った。抵抗値の測定は3回行い、3回の平均値を代表値として求めた。抵抗値は、400Ω/sq以下であれば、タッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ないと判断することができる。
【0131】
(圧電定数d33値)
実施例1~7および比較例1~7の導電性圧電積層フィルムのそれぞれの圧電定数d33を、圧電定数測定装置(「ピエゾメーターシステムPM300」、PIEZOTEST社製)を用いて、0.2Nでサンプルをクリップし、0.15N、110Hzの力を加えた際の発生電荷を読み取った。圧電定数d33の実測値は、測定されるフィルムの表裏によって、プラスの値、またはマイナスの値となるが、本明細書中においては絶対値を記載した。圧電定数d33値は、6pC/N以上であればタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ないと判断することができる。
【0132】
[ITO由来の回折ピーク]
実施例1~7、比較例1~7の導電性圧電積層フィルムのそれぞれについて、導電層のX線回折におけるITO由来の回折ピークの有無を測定した。当該回折ピークの有無は、X線回折装置(XRD)を用いる導電層の表面のインプレーン(In-Plane)法によって測定した。当該測定において、回折角(2θ)=15.0~70.0°の範囲を走査速度1°/分で走査した。測定条件の詳細を以下に示す。
<測定条件>
装置:株式会社リガク製SmartLab
X線源:Cu-Kα(λ=1.5418Å) 40kV 30mA
検出器:SC-70
ステップ幅:0.04°
スキャン範囲:15.0~70.0°
スリット:入射スリット=0.2mm
長手制御スリット=10mm
受光スリット=20mm
【0133】
実施例1~7、比較例1~7の導電性圧電積層フィルムのいずれにおいても、ITO由来の回折ピークは測定されなかった。
【0134】
[光学特性評価]
(550nm透過率)
実施例および比較例の導電性圧電積層フィルムのそれぞれの550nm透過率を、ヘイズメータ(「NDH7700SP II」、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7361-1に記載の方法に基づいて測定した。550nm透過率は、83%以上であればタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題なく、84%以上であればより好ましく、85%以上がさらに好ましいと判断することができる。
【0135】
(ヘイズ値)
実施例で用いるコーティングフィルムおよび比較例で用いる圧電フィルムのそれぞれのヘイズ値を、ヘイズメータ(「NDH7700SP II」、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7136に記載の方法に基づいて測定した。ヘイズ値は、2.0以下であればタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ないと判断することができる。なお、ヘイズ値は2.0以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましいと判断することができる。
【0136】
(L値、a値、b値)
実施例および比較例の導電性圧電積層フィルムのそれぞれのL表色系におけるL値、a値およびb値を、分光色彩計(「SE7700」、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS Z8722に準拠する方法により測定した。L値は、85以上であればタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ないと判断することができる。a値は、3以下であればタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ないと判断することができる。b値は、4以下であればタッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題ないと判断することができる。なお、b値は、3以下であることがより好ましいと判断することができる。
【0137】
上記評価の結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2に示すように、実施例1~7の導電性圧電積層フィルムは、タッチパネル等のデバイスの用途において実用上問題のない物性を有しており、さらに高い透明性と好適な色味を有しているフィルムであった。これに対して、比較例1~7の導電性圧電積層フィルムはb>4であり、黄色味のあるフィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、タッチパネル等のデバイスに利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 圧電フィルム
2、2’ 第一コーティング層
3 第二コーティング層
4 導電層
10、10’ 導電性圧電積層フィルム
図1
図2