(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】生検デバイスおよび検体採取方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20240919BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B10/02 110H
(21)【出願番号】P 2023522644
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2022020325
(87)【国際公開番号】W WO2022244714
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-01
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】川除 昌一郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 祥平
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0026693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 10/00 - 10/06
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の針と、
該針の内部に該針の長手方向に配置され、
該長手方向に所定のピッチを有するらせん状のドリル体を遠位端部に有するワイヤと、
前記針の遠位端から突出し前記ワイヤの長手軸回りに回転する前記ドリル体を前記長手方向に移動させる回転機構と、
前記針を被覆する長尺のシースであって、前記針および前記ワイヤが前記シースに対して前記長手方向に移動可能である、シースと、
前記針、前記ワイヤおよび前記シースの近位側に設けられた操作部と、を備え
、
前記操作部が、
前記シースの近位端と固定された本体と、
前記ワイヤの近位端と固定され、前記本体に前記長手方向に移動可能かつ前記長手軸回りに回転可能に支持されたノブと、を備え、
前記回転機構が、
前記本体に設けられ、前記所定のピッチと等しいピッチを有するねじ部と、
前記ノブに設けられ、前記ねじ部と係合する係合部と、を備え、
前記回転機構が、前記回転するドリル体を前記所定のピッチと等しいリードで前記長手方向に移動させる、生検デバイス。
【請求項2】
前記ワイヤおよび前記針が、前記長手方向に相対移動可能であり、
前記ドリル体の遠位端が前記針の遠位端から所定の距離だけ突出する位置に前記ワイヤを前記針に対して位置決めする位置決め機構をさらに備え、
該位置決め機構によって位置決めれた状態において、前記ワイヤの遠位側への移動と連動して前記針が前記遠位側へ移動する、請求項1に記載の生検デバイス。
【請求項3】
前記ねじ部と前記係合部との係合を解除する解除機構をさらに備える、請求項
1に記載の生検デバイス。
【請求項4】
前記ドリル体が、中空である、請求項1に記載の生検デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月18に出願された米国仮特許出願第63/189793号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、生検デバイスおよび検体採取方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、超音波内視鏡ガイド下微細針吸引法(EUS-FNA)または超音波内視鏡ガイド下微細針生検法(EUS-FNB)のように、超音波観察下において生体組織に中空の針を穿刺し生体組織の一部を検体として採取する生検法が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。このような生検法の課題の1つは、検体の採取量である。内視鏡の処置具チャネルを経由して体内に挿入される針は細径であるため、診断に十分な量の検体を採取することが難しい。特許文献1および2では、針の遠位端部をらせん状に形成することによって、検体の採取量の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6430697号公報
【文献】特開2012-235878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載の針の遠位端部は、回転しながら生体組織に穿刺される。針の回転が適切でない場合、らせん状の遠位端部が生体組織に適切に穿刺されず、十分な量の検体を採取することが難しい。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、らせん状の遠位端部を生体組織に適切に穿刺し十分な量の検体を確実に採取することができる生検デバイスおよび検体採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、中空の針と、該針の内部に該針の長手方向に配置され、らせん状のドリル体を遠位端部に有するワイヤと、前記針の遠位端から突出し前記ワイヤの長手軸回りに回転する前記ドリル体を前記長手方向に移動させる回転機構と、を備え、前記ドリル体が、前記長手方向に所定のピッチを有し、前記回転機構が、前記回転するドリル体を前記所定のピッチと等しいリードで前記長手方向に移動させる、生検デバイスである。
【0007】
本発明の他の態様は、生検デバイスを使用して生体組織から検体を採取する検体採取方法であって、生検デバイスの中空状の針に内在するドリル体を前記針の長手軸回りに回転させながら、前記ドリル体のピッチと等しいリードで前記針の長手方向に移動させることによって、前記生体組織に穿刺し、前記針を前記長手方向に遠位方向に前進させることで、前記生体組織に穿刺し、前記針を所定の距離を穿刺した後、前記針を前記ドリル体とともに前記生体組織から引き抜く、検体採取方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、らせん状の遠位端部を生体組織に適切に穿刺し十分な量の検体を確実に採取することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】第1実施形態に係る生検デバイスの全体構成図であり、ねじ部と係合部との係合が解除された状態を示す図である。
【
図1B】
図1Aの生検デバイスの、位置決め機構によってワイヤが位置決めされ係合部がねじ部と係合する状態を示す図である。
【
図2】ドリル体を説明する
図1Aの生検デバイスの遠位部の拡大図である。
【
図3】回転機構を説明する
図1Aの生検デバイスの操作部の拡大図である。
【
図4】第1実施形態に係る検体採取方法のフローチャートである。
【
図5A】検体採取方法のステップS1における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図5B】検体採取方法のステップS2における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図5C】検体採取方法のステップS3における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図5D】検体採取方法のステップS4における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図5E】検体採取方法のステップS5における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図6】第2実施形態に係る生検デバイスの全体構成図であり、位置決め機構によってワイヤが位置決めされ係合部がねじ部と係合する状態を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る検体採取方法のフローチャートである。
【
図8A】検体採取方法のステップS11における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図8B】検体採取方法のステップS21における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図8C】検体採取方法のステップS31における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図8D】検体採取方法のステップS41における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図8E】検体採取方法のステップS42における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図8F】検体採取方法のステップS51における生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図9A】中空のドリル体の一構成例を示す図である。
【
図9B】中空のドリル体の他の構成例を示す図である。
【
図10】生検デバイスの一変形例の全体構成図である。
【
図11A】検体採取方法のステップS11における
図10の生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図11B】検体採取方法のステップS21における
図10の生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図11C】検体採取方法のステップS31における
図10の生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図11D】検体採取方法のステップS41における
図10の生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図11E】検体採取方法のステップS42における
図10の生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図11F】検体採取方法のステップS51における
図10の生検デバイスの動作を説明する図である。
【
図12】ねじ部の変形例を説明するワイヤの部分構成図である。
【
図13】生検デバイスの他の変形例の全体構成図である。
【
図14A】第2ワイヤによる係合部の動作を説明する図である。
【
図14B】第2ワイヤによる係合部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る生検デバイスおよび検体採取方法について図面を参照して説明する。
図1Aおよび
図1Bに示されるように、本実施形態に係る生検デバイス1は、中空の針2と、針2内に配置されたワイヤ3と、針2を被覆する長尺のシース4と、針2、ワイヤ3およびシース4の近位側に設けられた操作部5と、を備える。
【0011】
生検デバイス1は、超音波内視鏡と組み合わせて使用される。針2、ワイヤ3およびシース4は、超音波内視鏡の処置具チャネル内に挿入され、操作部5は、超音波内視鏡の外側に配置される。超音波内視鏡の遠位端から突出する針2、ワイヤ3およびシース4の遠位端は、超音波内視鏡の視野内に配置され、超音波内視鏡によって取得される光学画像および超音波画像内に観察される。
【0012】
針2およびシース4は、可撓性を有し両端面において開口する管状の部材である。針2は、遠位端に先鋭な針先2aを有する。針2は、シース4内にシース4の長手方向に配置され、可撓性のワイヤ3は、針2内に針2の長手方向に配置される。針2、ワイヤ3およびシース4は、長手方向に相対移動可能であり、ワイヤ3は、針2およびシース4に対してワイヤ3の長手軸A回りに回転可能である。
【0013】
図2に示されるように、ワイヤ3は、遠位端部にらせん状のドリル体6を有する。ドリル体6は、長手軸A回りにらせん状に巻くらせん溝を有し、長手方向に所定のピッチP1を有する。ドリル体6の遠位端は、生体組織に容易に穿刺することができるように、尖った先鋭部であってもよい。ドリル体6は、例えば、ワイヤ3の円柱状の遠位端部の外周面にらせん溝を加工することによって形成される。このような中実なドリル体6は高い剛性を有するので、生体組織に穿刺されるときおよび生体組織から引き抜かれるときにドリル体6が変形し難い。
【0014】
後述するように、ドリル体6は、操作部5のノブ9の操作によってワイヤ3が回転させられることにより、回転させられる。ワイヤ3の近位端部からドリル体6まで回転を効率的に伝達するためには、ワイヤ3の外径は太いことが好ましい。一方、針2の内部に生体組織を取り込む空間を確保するためには、ワイヤ3は細いことが好ましい。ワイヤ3の外径は、回転の伝達効率と針2内の空間の体積との両方に基づいて適切に設計される。
【0015】
操作部5は、シース4の近位端と固定された本体7と、針2の近位端と固定されたスライダ8と、ワイヤ3の近位端と固定されたノブ9とを有する。
本体7は、シース4と同軸に延びる略円筒状の部材である。
スライダ8およびノブ9は、本体7の径方向外側に配置される環状または筒状の部材であり、長手方向に移動可能に本体7に支持される。また、ノブ9は、長手軸Aと一致する本体7の中心軸回りに回転可能に本体7に支持される。
【0016】
図1Aに示されるように、スライダ8およびノブ9が初期位置に配置されているとき、針先2aおよびドリル体6は、シース4内に収納される。
図1Bに示されるように、操作者は、スライダ8およびノブ9を遠位側へ押圧することによって、針2およびワイヤ3を遠位側へそれぞれ前進させ、針先2aおよびドリル体6をシース4の遠位端から突出させることができる。また、操作者は、スライダ8およびノブ9を近位側へ引くことによって、針2およびワイヤ3を近位側へそれぞれ後退させることができる。
【0017】
図3に示されるように、生検デバイス1は、長手軸A回りに回転するドリル体6を長手方向に移動させる回転機構10と、回転機構10のねじ部11と係合部12との係合を解除する解除機構13と、針2に対してワイヤ3を位置決めする位置決め機構14と、をさらに備える。
回転機構10は、長手軸A回りの回転を長手軸Aに沿う方向に移動に変換する機構である。具体的には、回転機構10は、本体(周辺部材)7に設けられたねじ部11と、ノブ(ワイヤ側部材)9に設けられねじ部11と係合する係合部12と、を備える。
【0018】
ねじ部11は、本体7の外周面に形成されたねじ溝を有する。係合部12は、ノブ9の内周面に設けられ、径方向内方に突出する突起であり、ねじ部11のねじ溝と等しいピッチを有するねじ山であってよい。
ねじ部11は、ドリル体6の所定のピッチP1と等しいピッチP2を有する。したがって、係合部12がねじ部11のねじ溝に係合する状態でノブ9を回転させることによって、ワイヤ3は、所定のピッチP1と等しいリードで長手方向に移動する。リードは、1回転当たりの長手方向の移動量である。
【0019】
図3において、実線の係合部12は、ねじ部11との係合が解除された状態を示し、二点鎖線の係合部12は、ねじ部11に係合した状態を示している。解除機構13は、係合部12が設けられ変位可能なノブ9の端部からなる。ノブ9の端部の変位によって、係合部12は、ねじ部11と係合する位置と、ねじ部11との係合が解除される位置と、の間で移動する。ノブ9の端部の変位は、例えば、ノブ9の部分的な変形によって行われる。
【0020】
図1Aに示されるように、係合部12のねじ部11との係合が解除された状態において、ノブ9およびワイヤ3は、本体7およびシース4に対して長手方向に並進移動可能である。
図1Bに示されるように、係合部12がねじ部11と係合した状態において、上述のように、ノブ9およびワイヤ3は、回転しながら所定のピッチP1と等しいリードで長手方向に移動可能である。
【0021】
位置決め機構14は、ノブ9の遠位側に配置されノブ9が突き当たるスライダ8から構成される。すなわち、
図1Bに示されるように、ノブ9がスライダ8に突き当たることによって、ドリル体6の遠位端が針先2aから所定の距離dだけ突出する位置に、ワイヤ3は針2に対して位置決めされる。この状態において、ノブ9の回転によって、ワイヤ3の遠位側への移動と連動して針2が遠位側へ移動する。所定の距離dは、ドリル体6が部分的に針先2aから突出する距離であり、例えば、数mmである。
上記の位置決め機構14の構成は一例であり、ドリル体6の遠位端が針先2aから所定の距離dだけ突出する位置にワイヤ3を位置決めすることができる任意の構成の位置決め機構が採用されてもよい。
【0022】
次に、生検デバイス1を使用した本実施形態に係る検体採取方法について説明する。
図4に示されるように、検体採取方法は、生検デバイス1を体内に挿入するステップS1と、針先2aを対象の生体組織Tに対して位置決めするステップS2と、ドリル体6を針2に対して、ワイヤ3を介して位置決めするステップS3と、ドリル体6および針2を生体組織Tに穿刺するステップS4と、針2をドリル体6とともに生体組織Tから引き抜くステップS5と、生検デバイス1を体内から抜去するステップS6と、を含む。
【0023】
ステップS1に先立ち、超音波内視鏡が体腔内に挿入され、対象の生体組織Tが観察される位置に超音波内視鏡が配置される。例えば、対象の生体組織Tは、膵臓に形成された癌等の病変組織であり、超音波内視鏡は、口から胃または十二指腸に挿入される。
ステップS1において、操作者は、スライダ8およびノブ9を初期位置に配置し、針先2aおよびドリル体6がシース4内に収納されていることを確認し、シース4を超音波内視鏡の処置具チャネル内へ挿入する。
図5Aに示されるように、操作者は、超音波内視鏡の光学画像または超音波画像を観察しながら、シース4の遠位端を対象の生体組織Tに対して適切な位置に配置する。
【0024】
次に、ステップS2において、係合部12のねじ部11との係合が解除された状態で、操作者は、超音波画像を観察しながら、スライダ8およびノブ9を同時に押して針2およびワイヤ3を同時に前進させ、針先2aを対象の生体組織Tの近傍に位置決めする(
図5B)。
次に、ステップS3において、操作者は、ノブ9をスライダ8に突き当たるまで押し、ドリル体6を針先2aから所定の距離dだけ突出する位置にワイヤ3を介して位置決めする(
図5C)。
【0025】
次に、ステップS4において、操作者は、係合部12をねじ部11に係合させ、続いて、ノブ9を回転させることによって、ドリル体6を長手方向に前進させながら針2を長手方向に前進させ、それによりドリル体6および針2を同時に生体組織Tに所望の深さまで(所定の距離だけ)穿刺する(
図5D)。
このとき、ねじ部11および係合部12からなる回転機構10によって、ドリル体6は、長手軸A回りに回転しながら所定のピッチP1と等しいリードで長手方向に前進する。これにより、ドリル体6は、生体組織Tをらせん溝内に取り込んでらせん状に切り取りながら前進する。切り取られたひと続きの紐状の生体組織Tは、らせん溝に沿って近位側へ排出され、針2内に取り込まれる。
【0026】
次に、ステップS5において、操作者は、ねじ部11と係合部12との係合を解除し、続いて、スライダ8およびノブ9を同時に引くことによって、針2をドリル体6とともに生体組織Tから引き抜きシース4内に完全に収納する(
図5E)。
次に、ステップS6において、操作者は、ドリル体6および針2を収納するシース4を処置具チャネルから引き抜くことによって、生検デバイス1を体内から抜去する。これにより、ドリル体6のらせん溝内および針2内に取り込まれた生体組織Tを検体として採取することができる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、回転するドリル体6は、回転機構10によって、ドリル体6のピッチP1と等しいリードで前進する。したがって、ドリル体6によって生体組織Tをらせん状に切り取りながらドリル体6を生体組織Tに適切に穿刺することができる。これにより、らせん溝内および針2内に生体組織Tを効率的に取り込むことができ、十分な量の検体を確実に採取することができる。
【0028】
ドリル体6の前進に対して回転が遅すぎる場合、ドリル体6は生体組織Tを前方へ押し除けながら前進する。したがって、らせん溝内に生体組織Tを効率的に取り込むこと、および、ドリル体6によって生体組織Tをらせん状に切り取ることが難しい。
ドリル体6の前進に対して回転が速過ぎる場合、ドリル体6は生体組織Tを細かく切断しながら前進する。したがって、ひと続きの紐状に生体組織Tを切り取ること、および、生体組織Tを針2内に取り込むことが難しい。
【0029】
また、ドリル体6を生体組織Tから引き抜くとき、らせん溝内に入り込んだ生体組織Tがドリル体6に引っ掛かることによって、針2内に一度取り込まれた生体組織Tが針2の外側へ引っ張り出されることが防止される。これにより、十分な量の検体を確実に採取することができる。
【0030】
また、ステップS4において、位置決め機構14によってワイヤ3が針2に対して位置決めされた状態のまま、ドリル体6と同一の速度で針2が生体組織Tに穿刺される。これにより、ドリル体6によって切り取られ近位側へ排出される生体組織Tを効率良く針2内に採取することができる。
【0031】
また、ねじ部11と係合部12との係合が解除機構13によって解除可能である。したがって、ステップS3のようにドリル体6を回転させる必要がないときは、係合部12のねじ部11との係合を解除することによって、ワイヤ3の回転を必要とせずにワイヤ3を針2に対して長手方向に簡単に移動させることができる。
【0032】
また、生体組織Tが針2内に取り込まれた後、ドリル体6が針先2aから露出しているので、同一のドリル体6を使用して対象の生体組織Tの他の位置から検体を採取することができる。例えば、超音波内視鏡の湾曲部の動作によって針先2aを対象の生体組織T内の複数の位置に位置決めし、複数の位置から検体を採取するファニング操作を行うことができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る生検デバイスおよび検体採取方法について図面を参照して説明する。
本実施形態において、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図8Aから
図8Fは、本実施形態の検体採取方法における生検デバイス100の動作を説明している。本実施形態において、ドリル体6を生体組織Tに穿刺した後に針2をワイヤ3に沿って生体組織Tに穿刺する。本実施形態に係る生検デバイス100は、針先2aからのドリル体6の突出量d’において、第1実施形態の生検デバイス1と相違する。
【0034】
図6に示されるように、本実施形態に係る生検デバイス100は、針2、ワイヤ3、シース4、操作部5、回転機構10、解除機構13および位置決め機構14を備える。
スライダ8およびノブ9が初期位置に配置されているとき、針先2aおよびドリル体6は、第1実施形態と同様に、シース4内に収納される。
【0035】
ノブ9がスライダ8に突き当たった状態において、ドリル体6の全体が針先2aから所定の距離d’だけ突出する。針先2aからドリル体6の遠位端までの所定の距離d’は、対象の生体組織Tの厚さ以上であることが好ましい。例えば、対象の生体組織Tが膵腫瘍である場合、膵腫瘍のサイズは20mm程度であることが多いため、所定の距離d’は20mm以上であることが好ましい。
【0036】
次に、本実施形態に係る検体採取方法について説明する。
図7に示されるように、検体採取方法は、生検デバイス
100を体内に挿入するステップS11と、針先2aを対象の生体組織Tに対して位置決めするステップS21と、ドリル体6を生体組織Tに対して位置決めするステップS31と、ドリル体6を回転させながら生体組織Tに穿刺するステップS41と、針2をワイヤ3に沿って生体組織Tに穿刺するステップS42と、針2をドリル体6とともに生体組織Tから引き抜くステップS51と、生検デバイス
100を体内から抜去するステップS61と、を含む。
【0037】
図8Aに示されるように、操作者は、第1実施形態と同様にステップS11を行う。
次に、ステップS21において、係合部12のねじ部11との係合が解除された状態で、操作者は、超音波画像を観察しながら、スライダ8を押して針2を前進させ、針先2aを対象の生体組織Tに対して位置決めする(
図8B)。
次に、ステップS31において、操作者は、ノブ9を押し、ドリル体6の遠位端が対象の生体組織Tと接触する位置までワイヤ3を前進させることで、ドリル体6を位置決めする(
図8C)。
【0038】
次に、ステップS41において、操作者は、係合部12をねじ部11に係合させ、続いて、ノブ9を回転させることによって、ドリル体6を前進させて生体組織Tに穿刺する(
図8D)。このとき、ねじ部11および係合部12からなる回転機構10によって、ドリル体6は、長手軸A回りに回転しながら所定のピッチP1と等しいリードで長手方向に前進する。
次に、ステップS42において、操作者は、スライダ8を押すことによって針2を前進させ、針2を生体組織Tに所望の深さまで(所定の距離だけ)穿刺する(
図8E)。これにより、針2の内部に生体組織Tが取り込まれる。
【0039】
次に、ステップS51において、操作者は、ねじ部11と係合部12との係合を解除し、続いて、スライダ8およびノブ9を同時に引くことによって、針2をドリル体6とともに生体組織Tから引き抜きシース4内に完全に収納する(
図8F)。
次に、ステップS61において、操作者は、ドリル体6および針2を収納するシース4を処置具チャネルから引き抜くことによって、生検デバイス
100を体内から抜去する。これにより、針2内に取り込まれた生体組織Tを検体として採取することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、生体組織Tへのドリル体6の穿刺時、回転するドリル体6は、ピッチP1と等しいリードで前進する。したがって、ドリル体6のらせん溝内に生体組織Tを効率的に取り込みながらドリル体6を生体組織Tに適切に穿刺することができ、ドリル体6を生体組織Tに対して固定してアンカーとして機能させることができる。この状態で針2を生体組織Tに穿刺することによって、生体組織Tが針2によって穿刺方向に押圧され移動してしまうことを防ぎ、針2内に十分な量の生体組織Tを確実に取り込むことができる。
【0041】
また、ワイヤ3は、ドリル体6においてのみ生体組織Tに穿刺されるので、第1実施形態と比較して、太い柱状の生体組織Tを針2内に取り込むことができ、生体組織Tの診断に適したより多くの検体を採取することができる。
また、針2を生体組織Tから引き抜くときに、針2内の生体組織Tにドリル体6が引っかかることによって、針2内に一度取り込まれた生体組織Tが針2の外側へ引っ張り出されることが防止される。これより、十分な量の検体をより確実に採取することができる。
【0042】
上記第1および第2実施形態において、ドリル体6が中実であることとしたが、これに代えて、
図9Aおよび
図9Bに示されるように、ドリル体6が中空であってもよい。
図9Aにおいて、ドリル体6は、らせんコイル状に巻かれた細線からなる。この構成によれば、細線間の隙間および遠位端面の開口からドリル体6の内側にも生体組織Tが取り込まれるので、より多くの検体を採取することができる。
【0043】
図9Bにおいて、ドリル体6を構成する細線の断面は、矩形である。この構成によれば、細線が、ワイヤ3の穿刺方向に対して略垂直な平坦面を形成するので、ステップS5,S51において生体組織Tからドリル体6を引き抜くときに、ドリル体6の内側に取り込まれた生体組織Tが抜け難くなり、十分な量の検体をより確実に採取することができる。
図9Aおよび
図9Bの変形例において、ドリル体6は、生体組織Tへの穿刺および引き抜きの際に変形しない程度の剛性を有するように、ドリル体6の肉厚、内径およびピッチP1が設計される。
【0044】
上記第1および第2実施形態において、回転機構10が操作部5に設けられていることとしたが、回転機構10は、他の位置に設けられていてもよい。
回転機構10からドリル体6までの距離が遠い場合、回転機構10とドリル体6との間の回転の伝達性の影響によって、ドリル体6のリードが回転機構10のピッチP2(すなわち、ドリル体6のピッチP1)と正確に一致しなくなり得る。この不都合を解消するために、回転機構10は、ドリル体6に対してより近くに設けられていることが好ましい。
【0045】
図10は、回転機構10が、針2およびワイヤ3に設けられている例を示している。
図10の生検デバイスにおいて、回転機構10は、ドリル体(ワイヤ側部材)6からなるねじ部11と、針(周辺部材)2の内周面に設けられドリル体6のらせん溝に係合する係合部12とを有する。スライダ8には、スライダ8を本体7に固定および固定解除するロック部8aが設けられ、ノブ9には、ノブ9を本体7に固定および固定解除するロック部9aが設けられる。
図10において、実線のロック部8a,9aは固定解除状態を示し、二点鎖線のロック部8a,9aは、固定状態を示している。
【0046】
図10の生検デバイスは、
図11Aから
図11Fに示されるように、第2実施形態の検体採取方法に使用される。
図11Aに示されるステップS11の後、
図11Bに示されるように、ロック部8a,9aを固定解除した状態で、スライダ8およびノブ9を同時に押して針2およびワイヤ3を同時に前進させる(ステップS21)。
次に、
図11Cおよび
図11Dに示されるように、ロック部8aによってスライダ8を固定し、ノブ9を回転させることによって、ドリル体6を前進させて生体組織Tに穿刺する(ステップS31,S41)。
【0047】
次に、
図11Eに示されるように、ロック部9aによってノブ9を固定すると共にロック部8aによってスライダ8を固定解除し、スライダ8を回転させることによって針2を前進させ、針2を対象の生体組織Tに所望の深さまで穿刺する(ステップS42)。
次に、
図11Fに示されるように、ロック部9aによってノブ9を固定解除し、スライダ8およびノブ9を同時に引くことによって、針2をドリル体6とともに生体組織Tから引き抜き、シース4内に完全に収納する(ステップS51)。
【0048】
図10において、長いドリル体6をねじ部11として利用することとしたが、これに代えて、
図12に示されるように、ドリル体6とは別のねじ部11がワイヤ3に設けられていてもよい。この場合、ねじ部11は、ドリル体6よりも近位側の任意の位置においてワイヤ3に設けることができる。ねじ部11の位置に応じて、係合部12の位置も設計される。
【0049】
図10の回転機構10の構成において、針2およびワイヤ3を長手方向に相対移動させるためには針2およびワイヤ3のいずれかを回転させなければならず、針2およびワイヤ3を長手方向に相対的に並進移動させることができない。
図13は、ワイヤ3および針2の相対的な並進移動を可能とするために解除機構13をさらに備える生検デバイスの変形例を示している。
【0050】
図13の生検デバイスは、解除機構13として、ワイヤ3内に挿入される第2ワイヤ15を備える。したがって、ワイヤ3は、少なくとも部分的に中空である。回転機構10は、第1ワイヤ(ワイヤ側部材)3に設けられた係合部12と、針(周辺部材)2に設けられたねじ部11とを有する。係合部12は、第1ワイヤ3の外周面から突出する突起であり、突起はねじ山であってもよい。ねじ部11は、針2の内周面に設けられたねじ溝を有する雌ねじ部である。
【0051】
ノブ9には、第2ワイヤ15の遠位端と固定され第2ワイヤ15を長手方向に移動させるための第2ノブ16が設けられている。操作者は、第2ノブ16の押し引きによって第2ワイヤ15を進退させ、それにより、
図14Aおよび
図14Bに示されるように、ねじ部11と係合する位置と、ねじ部11との係合が解除される位置と、の間で係合部12を移動させることができる。
【0052】
具体的には、
図14Bに示されるように、係合部12が設けられている第1ワイヤ3の側壁の一部分は、径方向内側へ屈曲している。
図14Aに示されるように、第2ワイヤ15が係合部12を超える位置まで第1ワイヤ3内に挿入されているとき、係合部12は、第2ワイヤ15によって径方向外方へ押圧されねじ部11と係合する。
図14Bに示されるように、第2ワイヤ15の遠位端が係合部12よりも近位側に配置されるまで第2ワイヤ15が後退することによって、第1ワイヤ3の側壁の一部分が径方向内側に屈曲して係合部12が第1ワイヤ3の外径の内側へ移動し、係合部12とねじ部11との係合が解除される。
【0053】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
特に、「ピッチが等しい」および「リードが等しい」という表現は、完全に「等しい」のみに限るものではなく、実質的に等しいものも、十分な量の検体を確実に採取することができるという本発明の要旨を逸脱するものではない。
また、上述の実施形態及び変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 生検デバイス
2 針
3 ワイヤ
4 シース(周辺部材)
5 操作部
6 ドリル体
7 本体(周辺部材)
8 スライダ(位置決め機構)
9 ノブ(ワイヤ側部材、解除機構)
10 回転機構
11 ねじ部(回転機構)
12 係合部(回転機構)
13 解除機構
14 位置決め機構
15 ワイヤ(解除機構)
16 第2ノブ
T 生体組織
A 長手軸