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特許7557622金属ストリップを連続的に熱処理するための垂直炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】金属ストリップを連続的に熱処理するための垂直炉
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20240919BHJP
   C21D 9/573 20060101ALI20240919BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20240919BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C21D9/56 101A
C21D9/573 101Z
C21D9/56 101C
C21D9/56 101F
C21D9/56 101J
C21D1/00 112C
C21D9/46 501A
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2023524646
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 AT2021060389
(87)【国際公開番号】W WO2022082246
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】A50904/2020
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521217105
【氏名又は名称】エブナー インドゥストリーオーフェンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト エブナー
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ エッペンシュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン レヒベルガー
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-311537(JP,A)
【文献】特開平05-078756(JP,A)
【文献】特開平06-306488(JP,A)
【文献】特開平02-277723(JP,A)
【文献】特開昭49-017314(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102260782(CN,A)
【文献】特表2005-538253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0037679(US,A1)
【文献】特開昭56-065938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52 - 9/56
C21D 1/00
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(2)連続的に熱処理するための垂直炉(1)であって、前記垂直炉(1)は、前記金属ストリップ(2)の移送方向に見て、
-前記金属ストリップ(2)用の挿入ゾーン(3)と;
-前記金属ストリップ(2)を加熱し、かつ特定の温度に保持するための、アニーリング室を備えた加熱/保持ゾーン(4)と;
-前記金属ストリップ(2)を冷却する少なくとも1つの第1冷却ゾーン(5)と;
-前記第1冷却ゾーン(5)の下流に配置された、前記金属ストリップ(2)用の排出ゾーン(8)の方向へ前記金属ストリップ(2)を方向変換させるための少なくとも1つの方向変換装置(6)と、
を有
少なくとも1つの第2冷却ゾーン(9)が、前記移送方向に関して前記方向変換装置(6)の下流に配置されているものにおいて
前記第1冷却ゾーン(5)が、前記金属ストリップのための放射冷却ゾーンとして構成され、
前記第1冷却ゾーン(5)のプロセス室のまわりに、冷却流体(27)によって貫流される冷却/加熱室(28)が配置されており、前記プロセス室を包囲する壁(29)の、前記冷却/加熱室(28)に向いた外側表面に冷却流体(27)が供給される、
ことを特徴とする垂直炉。
【請求項2】
前記金属ストリップを熱処理するための、少なくとも前記加熱/保持ゾーン(4)内、前記第1冷却ゾーン(5)内、前記方向変換装置(6)内及び前記第2冷却ゾーン(9)内に、酸化を回避するために、30%-100%Hの高いH含有量と-20℃から-70℃の低い露点とを有する保護ガス雰囲気を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の垂直炉。
【請求項3】
前記加熱/保持ゾーン(4)と前記第1冷却ゾーン(5)がそれぞれ、前記金属ストリップのための進入開口部と排出開口部とを有する少なくとも1つのプロセス室有している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直炉。
【請求項4】
前記加熱/保持ゾーン(4)の前記プロセス室が、前記第1冷却ゾーン(5)の前記プロセス室と気密に接続されている、ことを特徴とする請求項3に記載の垂直炉。
【請求項5】
前記冷却流体(27)が、ガス又は混合ガスある、ことを特徴とする請求項1に記載の垂直炉。
【請求項6】
前記冷却流体(27)が、熱交換器(30)を通して案内されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項7】
新たな冷却流体供給するための少なくとも1つの供給導管を有している、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項8】
前記冷却/加熱室から流出する前記冷却流体を垂直炉(1)から放出するための少なくとも1つの排出導管を有している、ことを特徴とする請求項7に記載の垂直炉。
【請求項9】
前記冷却流体(27)内に流れを発生させるための、少なくとも1つのガス流装置(32)有している、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項10】
前記冷却流体(27)を加熱するための、少なくとも1つの加熱装置(31)が設けられている、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項11】
前記冷却/加熱室(28)内の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置(33)を有している、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項12】
前記冷却/加熱室(28)から流出する前記冷却流体(27)の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置(34)と、前記冷却/加熱室(28)内へ流入する前記冷却流体(27)の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置(35)とを有している、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項13】
前記冷却/加熱室(28)内へ流入する冷却媒体(27)の温度を、少なくとも、前記冷却/加熱室(28)内で測定された少なくとも1つの温度及び/又は前記冷却媒体(27)の流量の関数として変化させるように、構成されている、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の垂直炉。
【請求項14】
前記冷却/加熱室(28)内に、前記冷却/加熱室(28)内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力測定装置(36)が配置されている、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2冷却ゾーン(9)が、前記金属ストリップの表面に前記冷却流体を供給するための、少なくとも1つのスプレイ及び/又はノズル冷却及び/又はジェット冷却を有している、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第2冷却ゾーン(9)の前記冷却流体が、保護ガス含み、あるいはそのものである、ことを特徴とする請求項15に記載の垂直炉。
【請求項17】
前記第1冷却ゾーン(5)と前記第2冷却ゾーン(9)が、前記方向変換装置(6)へ向いたそれらの端部において、前記方向変換装置(6)のハウジング(10)を介して、垂直炉の周囲に対して気密に互いに接続されている、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項18】
前記方向変換装置(6)が断熱されている、ことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項19】
前記方向変換装置(6)が、少なくとも1つの加熱手段を有している、ことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項20】
前記方向変換装置(6)が、温度測定ユニットと温度コントロールユニットを有し、前記温度コントロールユニットが、少なくとも1つの加熱手段を用いて前記方向変換装置の温度レベルを前記金属ストリップ(2)の温度レベルへ制御するように、構成されている、ことを特徴とする請求項19に記載の垂直炉。
【請求項21】
前記方向変換装置(6)の少なくとも1つのローラ装置(7)が、前記金属ストリップをセンタリング制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項22】
前記金属ストリップ(2)の移送方向において、前記加熱/保持ゾーン(4)の上流に、少なくとも1つの加熱装置を備えた、前記金属ストリップのための付加的な急速加熱ゾーン(12)を有している、ことを特徴とする請求項1から21のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項23】
前記急速加熱ゾーン(12)の少なくとも1つの加熱装置が誘導加熱器として構成されており、前記急速加熱ゾーン(12)が、非金属の材料からなる壁(29)及び前記金属ストリップ(2)のための挿入開口部と排出開口部を備えたプロセス室を有し、前記急速加熱ゾーン(12)の前記プロセス室が、30%-100%Hの高いH含有量と-20℃から-70℃の低い露点とを有する保護ガス雰囲気を有し、かつ前記誘導加熱器が前記プロセス室の外部に配置されている、ことを特徴とする請求項22に記載の垂直炉。
【請求項24】
前記急速加熱ゾーン(12)の前記プロセス室が、前記加熱/保持ゾーン(4)の前記プロセス室と、垂直炉(1)の外側の周囲に対して気密に接続されている、ことを特徴とする請求項23に記載の垂直炉。
【請求項25】
第3の冷却ゾーン(11)が設けられており、前記第3の冷却ゾーン(11)が前記金属ストリップの移送方向に関して前記第2冷却ゾーンの下流に配置されており、前記第3の冷却ゾーン(11)が、高いH含有量(30%-100%H)と低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気を有している、ことを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項26】
前記挿入ゾーン(3)内及び/又は前記排出ゾーン(4)内に、ハウジング(13)内に支承された、それぞれ少なくとも1つのダンサーローラ(14)が配置されており、前記ハウジング(13)がそれぞれ前記金属ストリップ(2)のための挿入開口部(15)と排出開口部(16)を有し、かつ前記ハウジング(13)の内部に、保護ガス雰囲気存在している、ことを特徴とする請求項1から25のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項27】
前記挿入ゾーン(3)が、垂直炉(1)の周囲に対して気密に前記急速加熱ゾーン(12)と接続されている、ことを特徴とする請求項22から24のいずれか1項に記載の垂直炉。
【請求項28】
前記排出ゾーン(4)が、少なくとも前記第2冷却ゾーン(9)を有する直炉(1)の下降路と、垂直炉(1)の周囲に対して気密に続されている、ことを特徴とする請求項1から27のいずれか1項に記載の垂直炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の金属ストリップを連続的に熱処理するための垂直炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリップを熱処理するための垂直炉は、従来技術において知られている。ストリップを垂直の移送方向に移送する場合に、ストリップを処理温度に加熱し、それに続いてアニーリング処理が行われる。さらにストリップの冷却が行われ、かつ方向変換装置を用いて垂直の移送方向に逆移送が行われる。
【0003】
従来技術の垂直炉における欠点は、ストリップが加熱処理プロセス及び冷却プロセス後に方向変換装置の領域内で、熱応力と伸張、自重及びこの領域内での方向変換による付加的な負荷に起因して、しばしば損傷を受け、それがストリップの品質及び表面の品質の低下をもたらすことがあり得ることである。関連する炉は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3から知られている。
[先行技術文献]
[特許文献]
【文献】米国特許出願公開第2006/037679号明細書
【文献】米国特許出願公開第4363471号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2960348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、かつ金属ストリップの品質の改良を保証できる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、冒頭で挙げた種類の垂直炉を用いて、本発明に基づいて請求項1の特徴部分の特徴によって解決される。
【0006】
本発明に係る実施形態は、金属ストリップが適度な速度で方向変換されて、方向変換後に目標温度に冷却することができ、かつ方向変換装置の領域内での損傷を著しく低減することができる、という利点をもたらす。
【0007】
この形態の付加的な利点は、それによって垂直炉の高さをよりよく利用することができることにある。というのは、すべての加熱装置と冷却装置が方向変換装置の前に配置されてはいないからである。
【0008】
好ましい展開が、下位請求項に記載されている。
【0009】
特に効果的なのは、垂直炉が金属ストリップを熱処理するための、加熱/保持ゾーン内、第1冷却ゾーン内、方向変換装置内及び第2冷却ゾーン内で、酸化を回避するために、高いH含有量(30%-100%H)(体積%)と低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気を有していることである。特に好ましいことが明らかにされているのは、金属ストリップ、特に電磁鋼帯の熱処理全体が、酸化を回避するために、高いH含有量(30%-100%H)(体積%)と低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気のもとで行われることである。
【0010】
金属ストリップ、特に電磁鋼帯を垂直に熱処理するための炉は、断熱材によって断熱することができる1つ又は複数の加熱ステーション、1つ又は複数の(マッフルあり、またはなしの)単一又は複数部のアニーリング室であって、高いHを有する保護ガス雰囲気で満たされ、かつ金属ストリップを加熱し、及び金属ストリップの温度を保持するために使用される、単一又は複数部のアニーリング室を有することができる。加熱及び/又は保持ゾーンは、電気エネルギ(電気加熱部材及び/又は誘導加熱器)を用いて、あるいはガス加熱を用いて加熱することができる。
【0011】
続いてさらに、1つ又は複数の冷却ゾーンを下流に配置することができ、それはガス供給ユニットと接続することができる。それに上方のローラチャンバが続いており、その中に2つのガイドローラを配置することができ、それを用いて走行する金属ストリップが案内され、かつ垂直の排出チャネル内へ戻るように案内される。
【0012】
加熱/保持ゾーンと第1冷却ゾーンがそれぞれ、金属ストリップ用の挿入開口部と排出開口部を備えた少なくとも1つのプロセス室、特に金属で包囲されたプロセス室、たとえばマッフルによって包囲される少なくとも1つのプロセス室を有していると、特に好ましいことが明らかにされた。
【0013】
保護ガスの流出を回避するために、加熱/保持ゾーンのプロセス室は、第1冷却ゾーンのプロセス室と好ましくは気密に接続されている。
【0014】
ここで指摘しておくが、本発明はマッフルを有する垂直炉の実施形態に限定されるものではなく、たとえば壁で囲った炉のような、他のすべての種類の垂直炉も共に含むものである。金属ストリップをゆっくりと冷却することは、第1冷却ゾーンが金属ストリップのための放射冷却ゾーンとして形成されていることによって、可能となる。
【0015】
好ましくは、第1冷却ゾーンのプロセス室のまわりに、冷却流体によって貫流される冷却/加熱室が配置されており、プロセス室を包囲する壁の、冷却/加熱室へ向いた外側面に冷却流体が供給される。
【0016】
好ましくは、流体は、ガス又は混合ガス、特に空気である。
【0017】
エネルギを回収して、冷却流体を冷却するために、冷却流体からの熱を他の材料流へ伝達するための、少なくとも1つの熱交換器を設けることができる。本発明のこの変形例は、特に、冷却流体を循環して案内するのに適している。
【0018】
代替的又は付加的に、新鮮な冷却流体、特に新鮮空気を供給するための、少なくとも1つの供給導管を設けることができる。
【0019】
冷却流体の量を調節することができるようにするために、さらに、冷却/加熱室から流出する冷却流体を垂直炉から放出するための少なくとも1つの排出導管を設けることができる。
【0020】
冷却流体内に流れを発生させるために、少なくとも1つの流れ機械、たとえば送風器を設けることができる。
【0021】
冷却流体の温度をさらによく調節することができるようにするために、冷却流体を加熱する少なくとも1つの加熱装置を設けることができる。
【0022】
その場合に、冷却/加熱室内の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置が配置されていると、特に好ましいことが明らかにされた。
【0023】
冷却流体内の温度を検出することができるようにするために、冷却/加熱室から流出する冷却流体の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定手段と、冷却/加熱室内へ流入する冷却媒体を測定するための少なくとも1つの温度測定を設けることができる。
【0024】
最適なプロセスフローは、冷却/加熱室内へ流入する冷却媒体の温度を、冷却/加熱室内で測定された少なくとも1つの温度及び/又は冷却媒体の流量の関数として変化させるように、垂直炉を構成することによって、達成される。
【0025】
さらに、冷却/加熱室内に、冷却/加熱室内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力測定装置を配置することができる。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つの第2冷却ゾーンが、金属ストリップの表面に冷却流体を供給するための、少なくとも1つのスプレイ及び/又はノズル冷却及び/又はジェット冷却(Strahlkuehlung)を有することができる。
【0027】
第2冷却ゾーン内の保護ガス雰囲気にマイナスの影響を与えないようにするために、少なくとも1つの第2冷却ゾーンの冷却流体は、保護ガス、特にHを有することができ、あるいはそれ自体であることができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、第1冷却ゾーンと第2冷却ゾーンはそれらの、方向変換装置へ向いた端部において、方向変換装置のハウジングを介して垂直炉の周囲に対して気密に互いに接続されている。
【0029】
方向変換の間の金属ストリップの強すぎる冷却を防止するために、方向変換装置は断熱することができる。
【0030】
方向変換装置が少なくとも1つの加熱手段を有していると、特に好ましいことが明らかにされた。
【0031】
特に損傷のない方向変換に関して特に好ましいことが明らかにされた、本発明の好ましい変形例によれば、方向変換装置が温度測定ユニットと温度コントロールユニットとを有し、温度コントロールユニットは、少なくとも1つの加熱手段を用いて、方向変換装置の温度レベルを金属ストリップの温度レベルに調節するように設定されるように、設けられている。
【0032】
金属ストリップの走行を最適に調節することができるようにするために、方向変換装置の少なくとも1つのローラ装置は、センタリング制御(Mittenregelung)に利用することができる。
【0033】
プロセス速度を高めるために、垂直炉は金属ストリップの移送方向において加熱ゾーン及び/又は保持ゾーンの上流に、少なくとも1つの加熱装置を備えた、金属ストリップのための付加的な急速加熱ゾーンを有することができる。
【0034】
金属ストリップのきわめて迅速な加熱を特徴とする、本発明の変形例は、急速加熱ゾーンの少なくとも1つの加熱装置が誘導加熱器として構成され、急速加熱ゾーンは、非金属の材料からなる壁及び金属ストリップ用の挿入開口部と排出開口部とを備えたプロセス室を有し、急速加熱ゾーンのプロセス室は、30%-100%H(体積%)の高いH含有量と-20℃から-70℃の低い露点を有する保護ガス雰囲気を有し、かつ誘導加熱器はプロセス室の外部に配置されている。
【0035】
好ましくは急速加熱ゾーンのプロセス室は、垂直炉の外側の周囲に対して気密に、加熱/保持ゾーンのプロセス室と接続されている。
【0036】
本発明の好ましい展開によれば、第3の冷却ゾーンを設けることができ、その第3の冷却ゾーンは金属ストリップの移送方向に関して第2冷却ゾーンの下流に配置されており、第3の冷却ゾーンは、高いH含有量(30%-100%H)(体積%)と低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気を有している。
【0037】
金属ストリップの最適なガイドを保証するために、挿入ゾーン内及び/又は排出ゾーン内に、ハウジング内に軸承された少なくとも1つのダンサーローラを配置することができ、ハウジングはそれぞれの場合に金属ストリップのための挿入開口部と排出開口部を有している。
【0038】
さらに、ハウジングの内部を保護ガス雰囲気、特に水素及び/又は窒素雰囲気が支配していると、特に好ましいことが明らかにされた。
【0039】
垂直炉からガスが挿入側で流出することを防止するために、挿入ゾーンを、垂直炉の周囲に対して気密に、急速加熱ゾーンと接続することができる。
【0040】
排出側のガス流出は、排出ゾーンが、垂直炉の周囲に対して気密に、少なくとも第2冷却ゾーンを有する垂直炉の下降路に接続されることによって、阻止することができる。
【0041】
本発明をさらによく理解するために、以下の図を用いて本発明を詳細に説明し、それらの図は、限定する実施例に該当するものではない。
【0042】
図は、それぞれ著しく簡略化された図式的な表示である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明に係る垂直炉を示している。
図2図2は、垂直炉の挿入領域を通る断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、第1冷却ゾーンの詳しい細部を示している。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
最初に記録しておくが、異なるように記載される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、その場合に説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、説明内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置の記載は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0045】
以下において図は、包括的に説明される。
【0046】
図1によれば、金属ストリップ2を連続的に熱処理する垂直炉1は、金属ストリップ2の移送方向に見て相前後して、金属ストリップ2のための挿入ゾーン3、金属ストリップ2を加熱して、特定の温度に保持する、アニーリング室を有する加熱/保持ゾーン4、金属ストリップ2をゆっくりと冷却する第1冷却ゾーン5、第1冷却ゾーン5の後ろに配置され、金属ストリップ2のための排出ゾーン8の方向に金属ストリップ2を方向変換させるための、2つ以上のローラを備えたローラ装置(Rollenanordnung)7を有する方向変換装置6を有している。加熱/保持ゾーン4の実施形態と第1冷却ゾーン5については、さらに下で詳細に説明する。
【0047】
方向変換装置6の後に、第2冷却ゾーン9があり、第2冷却ゾーン9は少なくとも1つの冷却流体供給ユニットを有している。冷却流体供給ユニットは、冷却流体、たとえばガス又は冷却液を、金属ストリップ2を冷却するための第2冷却ゾーン9内へ供給するために用いられる。冷却流体供給ユニットは、たとえばスプレイ冷却及び/又はノズル冷却及び/又はジェット冷却を有してもよい。すなわち第2冷却ゾーン9内に、たとえばノズルを配置することができ、それを通して金属ストリップ2のまわりを流れる冷却流体が第2冷却ゾーン9内に吹き込まれる。金属ストリップ2の冷却は、第2冷却ゾーン9内で、好ましくは対流によって行われる。それに対して第1冷却ゾーン5は、好ましくは放射冷却ゾーンとして構成されており、その中で金属ストリップ2の冷却は、輻射の放出によって行われる。冷却流体は、第2冷却ゾーン9内では、循環して案内することができる。この場合においては、冷却流体からの熱を他の材料の流れへ伝達するために熱交換器を設けることもできる。冷却流体は、たとえば、第2冷却ゾーンから引き出して、導管を介して熱交換器へ供給し、かつ冷却後に再び第2冷却ゾーン9内へ吹き込むことができる。
【0048】
金属ストリップの熱処理は、酸化を回避するために、高いH含有量(30%-100%H)と低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気内で行われる。この理由から、加熱/保持ゾーン4内、第1冷却ゾーン5内、方向変換装置6内及び第2冷却ゾーン9内並びに場合によっては後続の冷却ゾーン内に、適切な保護ガス雰囲気が存在する。特に上昇路全体内及び下降路全体内を保護ガス雰囲気が存在してもよい。
【0049】
垂直炉1の内部の保護ガス雰囲気が混交しないようにするために、冷却ゾーン9の冷却流体として保護ガス、特にHを有する保護ガスを使用することができる。
【0050】
第2冷却ゾーン9の下流に、第3の冷却ゾーン11を設けることができる。冷却ゾーン11に関しても、冷却ゾーン9について述べたことが冷却ゾーン11にも当てはまる。金属ストリップ2の冷却は、3つの冷却ゾーン5、9、11内で異なる強さで行われる。それぞれの冷却ゾーン5、9、11内へ金属ストリップ2が進入する温度とそれぞれの冷却ゾーン5、9、11を出る時の排出温度との間の差は、好ましくは第1冷却ゾーン5内において、第2冷却ゾーン9内と第3の冷却ゾーン11内よりも大きい。金属ストリップ2は、たとえば、第1冷却ゾーン5内では1020℃から700℃に、第2冷却ゾーン9内では700℃から600℃へ、そして第3の冷却ゾーン11内では600℃から60℃へ冷却することができる。上述した値は、例と理解すべきであって、実際においては変化させることができる。
【0051】
方向変換装置6内で、第1冷却ゾーン5に対する温度は一定とすることができる。図1から認識できるように、方向変換装置6もしくはローラ装置7によって、第2冷却ゾーン9内の金属ストリップ2の移送方向は、第1冷却ゾーンに対して反転させることができる。特に、方向変換装置6もしくはローラ装置7は、金属ストリップの移送方向を180°方向変換させることができる。
【0052】
第1冷却ゾーン5と第2冷却ゾーン9はそれらの、方向変換装置6へ向いた端部において、方向変換装置のハウジング10を介して垂直炉1の周囲に対して互いに気密に接続されている。冷却ゾーン5と冷却ゾーン9は、ハウジング10を介して流路接続(Stroemungsverbindung)もすることができ、もしくは気密に互いに接続することができる。このように、第1冷却ゾーン5と第2冷却ゾーン9及び方向変換装置のハウジング10は、共通の空間を形成する。方向変換装置は、ガスの技術上の観点においても、垂直炉1において、加熱/保持ゾーン4と第1冷却ゾーン5を有する上昇路(Aufwaertsstrang)17と、冷却ゾーン9と場合によっては他の冷却ゾーンを有する下降路(Abwaertsstrang)18との間の接続を示す。
【0053】
方向変換装置6は、方向変換装置6の温度を調節及び/又は閉ループ制御することを可能にするために、断熱してもよく、1つ以上の加熱手段と温度コントロールユニットを有してもよい。方向変換装置の加熱手段は、電気で駆動又はガスで駆動することができる。金属ストリップ2の方向変換は、300℃-1000℃の間に昇温された温度において行われる。温度コントロールユニットは、少なくとも1つの加熱手段を用いて、方向変換装置の温度レベルを金属ストリップ2の温度レベルへ閉ループ制御するように、構成されている。方向変換装置によって金属ストリップ2は、昇温したストリップ温度において、かつ30%から100%の間の水素含有量と-20℃から-70℃の間の露点とを有するきわめて純粋な保護ガス雰囲気において損傷なしで方向変換される。
【0054】
さらに、方向変換装置6のローラ装置7は、金属ストリップをセンタリングするために、センタリング制御される方向変換ローラを有することができる。
【0055】
加熱/保持ゾーン4の前に、加熱装置を有する急速加熱ゾーン12を配置することができる。好ましくは急速加熱ゾーン12の加熱装置は、誘導加熱器として構成されており、金属ストリップ2を急速に加熱するために用いられる。急速加熱ゾーン12は、非金属の材料からなる壁と金属ストリップ用の挿入及び排出開口部とを備えたプロセス室を有している。プロセス室は、マッフルによって実現することができる。急速加熱ゾーン12のプロセス室内には、30%-100%の高いH含有量と-20℃から-70℃の低い露点とを有する保護ガス雰囲気が存在することができる。急速加熱ゾーン12のプロセス室の外部には、少なくとも1つのインダクタが配置されている。その場合に、プロセス室は、インダクタによって包囲することができる。インダクタは、横方向磁場又は縦方向磁場のインダクタとして構成することができる。さらに、急速加熱ゾーン12のプロセス室は、加熱/保持ゾーン4のプロセス室及び急速加熱ゾーンの上流に設けられた構成部分と、垂直炉の外側の周囲に対して気密に接続されている。したがって急速加熱ゾーン12のプロセス室(マッフル)と上流/下流に接続された構成部分との間に気密の接続区間が存在する。急速加熱ゾーン12のプロセス室は、加熱/保持ゾーン4のプロセス室と構造的かつ保護ガスの観点で接続されている。挿入ゾーン3も、垂直炉1の周囲に対して気密に急速加熱ゾーン12に結合されている。
【0056】
さらに、急速加熱ゾーン12が上位に配置された、垂直炉1の安全システム内へ統合することも実現できる。インダクタの使用が、金属ストリップ2の急速加熱と本質的な通過量増大とを可能にする。
【0057】
さらに、挿入ゾーン3内及び/又は排出ゾーン内に、ハウジング13内に支承された少なくとも1つのダンサーローラ14を配置することができる。図2によれば、ハウジング13は金属ストリップ2用の挿入開口部15と排出開口部16を有することができる。ハウジング13の内部では、保護ガス雰囲気、特に水素及び/又は窒素雰囲気が存在してもよい。
【0058】
図1によれば、上昇路17及び/又は下降路18の、方向変換装置6とは反対の終端セクションにそれぞれ、周囲雰囲気に対して密閉するための少なくとも1つのシール装置24もしくは排出ゾーン8を配置することができる。このように挿入ゾーン3は垂直炉1の上昇路17と、そして排出ゾーンは下降路18と、垂直炉1の周囲に対して気密に接続されている。図3によれば、シール装置24は、金属ストリップ2のための挿入開口部25と排出開口部26とを有することができる。好ましくは、シール装置24は、オイルシールとして構成されている。シール装置24は、ハウジング13と直接的に結合することができる。
【0059】
図1からさらに明らかなように、垂直炉1は第1管状マッフル17aと第2管状マッフル17bを有することができ、それらの内部に金属ストリップ2が案内されている。その場合に、マッフル17aの内部は、加熱/保持ゾーン4のプロセス室であり、マッフル17bは冷却ゾーン5のプロセス室である。連結装置20が、第1マッフル17aと第2マッフル17bの間に配置されており、かつ2つのマッフル17a、17bの端部を結合している。加熱/保持ゾーン4は第1マッフル17aに沿って配置され、第1冷却ゾーン5は第2マッフル17bに沿って配置され、第2冷却ゾーン9と第3の冷却ゾーン11は下降路18内に配置されている。第1マッフル17a内と第2マッフル17b内及び方向変換装置6と第2冷却ゾーン9及び第3の冷却ゾーン11内には、酸化を回避するために、高いH含有量(30%-100%H)及び低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気、特に水素雰囲気が存在してもよい。これに関連して、垂直炉1は、たとえばガス供給ユニット、特に水素供給ユニットを有することができ、それが第1マッフル17aの内部及び/又は第2マッフル17bの内部と接続されている。さらに、マッフル17a、17b、方向変換装置6、第2冷却ゾーン9、第3の冷却ゾーン11の内部の雰囲気内の微粒子を判定する装置を設けることができる。
【0060】
図3から明らかなように、さらに、第1マッフル17a及び/又は第2マッフル17bを断熱するための断熱材19を設けることができる。急速加熱ゾーン12は、第1マッフル17aの上流に配置し、かつ第1マッフル17aと、外部の雰囲気に対して気密に接続することができる。
【0061】
加熱/保持ゾーン4は、マッフル17aに沿って、かつ第1冷却ゾーン5はマッフル17bに沿って配置することができる。2つのマッフル17a、17bは、連結装置20を介して互いに接続することができる。
【0062】
図3に示されるように、加熱/保持ゾーン4内に、1つ又は複数の電気的加熱部材21を第1マッフル17aの外側の周囲表面に、特にマッフル17aに沿って周方向に延びるように、配置することができる。その場合に、この加熱部材21は、断熱材19とマッフル17aとの間に配置することができる。
【0063】
さらに、加熱部材21は、たとえば真空成形された煉瓦(vakuum-geformter Ziegel)の層からなる、耐火層22によって包囲することができる。その場合に加熱部材21は、少なくとも1つの第1マッフル17aと耐火層22の間に配置されている。さらに、耐火層22上に、繊維材料からなる少なくとも1つの層23、たとえば不織布、組織物、織布、網細工又はフェルトを配置してもよい。その場合に耐火層22は、少なくとも1つの加熱部材21と、繊維材料からなる少なくとも1つの層23との間に配置されている。
【0064】
図4と5には、上昇路の冷却ゾーン5の詳細な構造が示されている。冷却ゾーン5は、低速放射冷却ゾーンとして構成されており、その中で金属ストリップは、マッフル17bの冷却された壁29に対して熱放射することのみによって冷却される。マッフル17bの内部、すなわち冷却ゾーン5のプロセス室内には、30%-100%の高いH含有量と-20℃から-70℃の低い露点とを有する保護ガス雰囲気が存在する。冷却ゾーン5は、垂直炉1の外部の雰囲気に対して気密の、マッフル17bとして構成されたプロセス室を有している。しかし、マッフル17bは、マッフル17aと方向変換装置及び下降路18と保護ガス技術的に接続することができるので、これらの領域の間で保護ガスの少なくともわずかな交換が可能である。
【0065】
第1冷却ゾーン5のプロセス室のまわりに、冷却流体27によって貫流される冷却/加熱室28が配置されている。この冷却/加熱室28は、マッフル17bの壁29と外側に位置する断熱されたハウジング37によって画成されている。プロセス室を包囲する、マッフル17bの壁29の、冷却/加熱室28に向いた外側表面に、冷却流体27が供給される。冷却流体27は、好ましくはガス、混合ガス、たとえば空気、N又は他のガス又は混合ガスであり、このように、冷却流体27は、マッフル17bを外側から冷却する。高温の金属ストリップ2は、そのエネルギを放射の形式で冷却されたマッフル壁へ放出する。
【0066】
冷却/加熱室28から流出する冷却流体27から熱を回収して、冷却流体27を冷却するために、冷却流体27は熱交換器30を通して案内することができる。しかし、熱交換器の使用の代わりに、あるいはそれに加えて、たとえば新たな空気の状態の、新たな冷却流体27を冷却流体流内へ導管を介して供給し、かつマッフル壁を冷却するために冷却/加熱室28内へ吹き込むこともできる。
【0067】
さらに、冷却/加熱室から流出する冷却流体27を放出するための放出導管を設けることができる。冷却流体27内に流れを発生させるために、ガス流装置32,特に送風器が設けられている。
【0068】
さらに、冷却流体27を加熱するために加熱装置31を設けることができる。加熱装置31によって、冷却流体27の温度は、与えられたプロセス要件に応じて変化させ、したがって冷却ゾーン5内の金属ストリップ2の冷却挙動に狙った方法で介入することができる。冷却及び加熱システムは、マッフル17bの長さに沿って1つ又は複数の閉ループ制御ゾーンに分割することができる。冷却ゾーン5の冷却/加熱システムは、この領域内で金属ストリップの温度を維持することも可能にする。
【0069】
さらに、冷却/加熱室28内の温度を測定するための温度測定装置33と冷却/加熱室から流出する冷却流体27の温度を測定するための温度測定装置34及び冷却/加熱室28内へ流入する冷却流体27を測定する温度測定装置35を設けることができる。垂直炉1もしくは炉の制御装置、たとえば対応してプログラミングされたプロセッサは、冷却/加熱室28内で測定された温度及び/又は冷却流体27の流量の関数として、冷却/加熱室28内へ流入する冷却流体27の温度を変化させるように、構成してもよい。
【0070】
さらに、冷却システムの温度制御の他に圧力制御も行うことができる。そのために、冷却/加熱室28内に、圧力を測定するための圧力測定装置36も配置することができる。
【0071】
冷却ゾーン5のこの特別な形態は、きわめて純粋な保護ガス雰囲気(30%から100%H、-20℃から-70℃の露点)内で金属ストリップ2を低速かつ均一に冷却することを可能にする。
【0072】
念のために最後に指摘しておくが、構造をさらによく理解するために、部材は一部縮尺どおりではなく、かつ/又は拡大かつ/又は縮小して示されている。
なお、本発明の実施態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
金属ストリップ(2)、特に電磁鋼帯、を連続的に熱処理するための垂直炉(1)であって、前記垂直炉(1)は、前記金属ストリップ(2)の移送方向に見て、
-前記金属ストリップ(2)用の挿入ゾーン(3)と;
-前記金属ストリップ(2)を加熱し、かつ特定の温度に保持するための、アニーリング室を備えた加熱/保持ゾーン(4)と;
-前記金属ストリップ(2)を冷却する少なくとも1つの第1冷却ゾーン(5)と;
-前記第1冷却ゾーン(5)の下流に配置された、前記金属ストリップ(2)用の排出ゾーン(8)の方向へ前記金属ストリップ(2)を方向変換させるための少なくとも1つの方向変換装置(6)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの第2冷却ゾーン(9)が、前記移送方向に関して方向変換装置(6)の下流に配置されている、ことを特徴とする垂直炉。
[態様2]
前記金属ストリップを熱処理するための、少なくとも前記加熱/保持ゾーン(4)内、前記第1冷却ゾーン(5)内、前記方向変換装置(6)内及び前記第2冷却ゾーン(9)内に、酸化を回避するために、30%-100%H の高いH 含有量と-20℃から-70℃の低い露点とを有する保護ガス雰囲気を有している、ことを特徴とする態様1に記載の垂直炉。
[態様3]
前記加熱/保持ゾーン(4)と前記第1冷却ゾーン(5)がそれぞれ、前記金属ストリップのための進入開口部と排出開口部とを有する少なくとも1つのプロセス室、特に金属的に包囲されたプロセス室、たとえば、マッフル(17a、17b)によって包囲された少なくとも1つのプロセス室を有している、ことを特徴とする態様1又は2に記載の垂直炉。
[態様4]
前記加熱/保持ゾーン(4)の前記プロセス室が、前記第1冷却ゾーン(5)のプロセス室と気密に接続されている、ことを特徴とする態様3に記載の垂直炉。
[態様5]
前記第1冷却ゾーン(5)が、前記金属ストリップのための放射冷却ゾーンとして構成されている、ことを特徴とする態様1から4に記載の垂直炉。
[態様6]
前記第1冷却ゾーン(5)の前記プロセス室のまわりに、冷却流体(27)によって貫流される冷却/加熱室(28)が配置されており、前記プロセス室を包囲する壁(29)の、前記冷却/加熱室(28)に向いた外側表面に冷却流体(27)が供給される、ことを特徴とする態様3及び4に記載の垂直炉。
[態様7]
前記冷却流体(27)が、ガス又は混合ガス、特に空気である、ことを特徴とする態様6に記載の垂直炉。
[態様8]
前記冷却流体(27)が、熱交換器(30)を通して案内されている、ことを特徴とする態様6又は7に記載の垂直炉。
[態様9]
新たな冷却流体、特に新たな空気を供給するための少なくとも1つの供給導管を有している、ことを特徴とする態様6から8のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様10]
前記冷却/加熱室から流出する前記冷却流体を垂直炉(1)から放出するための少なくとも1つの排出導管を有している、ことを特徴とする態様9に記載の垂直炉。
[態様11]
前記冷却流体(27)内に流れを発生させるための、少なくとも1つのガス流装置(32)、特に送風器を有している、ことを特徴とする態様6から10のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様12]
前記冷却流体(27)を加熱するための、少なくとも1つの加熱装置(31)が設けられている、ことを特徴とする態様6から11のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様13]
前記冷却/加熱室(28)内の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置(33)を有している、ことを特徴とする態様6から12のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様14]
前記冷却/加熱室(28)から流出する前記冷却流体(27)の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置(34)と、前記冷却/加熱室(28)内へ流入する前記冷却流体(27)の温度を測定するための少なくとも1つの温度測定装置(35)とを有している、ことを特徴とする態様6から13のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様15]
前記冷却/加熱室(28)内へ流入する冷却媒体(27)の温度を、少なくとも、前記冷却/加熱室(28)内で測定された少なくとも1つの温度及び/又は前記冷却媒体(27)の流量の関数として変化させるように、構成されている、ことを特徴とする態様13又は14のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様16]
前記冷却/加熱室(28)内に、前記冷却/加熱室(28)内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力測定装置(36)が配置されている、ことを特徴とする態様6から15のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様17]
前記少なくとも1つの第2冷却ゾーン(9)が、前記金属ストリップの表面に前記冷却流体を供給するための、少なくとも1つのスプレイ及び/又はノズル冷却及び/又はジェット冷却を有している、ことを特徴とする態様6から16のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様18]
前記少なくとも1つの第2冷却ゾーン(9)の前記冷却流体が、保護ガス、特にH を含み、あるいはそのものである、ことを特徴とする態様17に記載の垂直炉。
[態様19]
前記第1冷却ゾーン(5)と前記第2冷却ゾーン(9)が、前記方向変換装置(6)へ向いたそれらの端部において、前記方向変換装置(6)のハウジング(10)を介して、垂直炉の周囲に対して気密に互いに接続されている、ことを特徴とする態様1から18のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様20]
前記方向変換装置(6)が断熱されている、ことを特徴とする態様1から19のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様21]
前記方向変換装置(6)が、少なくとも1つの加熱手段を有している、ことを特徴とする態様1から20のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様22]
前記方向変換装置(6)が、温度測定ユニットと温度コントロールユニットを有し、前記温度コントロールユニットが、少なくとも1つの加熱手段を用いて前記方向変換装置の温度レベルを前記金属ストリップ(2)の温度レベルへ制御するように、構成されている、ことを特徴とする態様21に記載の垂直炉。
[態様23]
前記方向変換装置(6)の少なくとも1つのローラ装置(7)が、前記金属ストリップをセンタリング制御するように構成されている、ことを特徴とする態様1から22のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様24]
前記金属ストリップ(2)の移送方向において、前記加熱/保持ゾーン(4)の上流に、少なくとも1つの加熱装置を備えた、前記金属ストリップのための付加的な急速加熱ゾーン(12)を有している、ことを特徴とする態様1から23のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様25]
前記急速加熱ゾーン(12)の少なくとも1つの加熱装置が誘導加熱器として構成されており、前記急速加熱ゾーン(12)が、非金属の材料からなる壁(29)及び前記金属ストリップ(2)のための挿入開口部と排出開口部を備えたプロセス室を有し、前記急速加熱ゾーン(12)の前記プロセス室が、30%-100%H の高いH 含有量と-20℃から-70℃の低い露点とを有する保護ガス雰囲気を有し、かつ前記誘導加熱器が前記プロセス室の外部に配置されている、ことを特徴とする態様24に記載の垂直炉。
[態様26]
前記急速加熱ゾーン(12)の前記プロセス室が、前記加熱/保持ゾーン(4)の前記プロセス室と、垂直炉(1)の外側の周囲に対して気密に接続されている、ことを特徴とする態様25に記載の垂直炉。
[態様27]
第3の冷却ゾーン(11)が設けられており、前記第3の冷却ゾーン(11)が前記金属ストリップの移送方向に関して前記第2冷却ゾーンの下流に配置されており、前記第3の冷却ゾーン(11)が、高いH 含有量(30%-100%H )と低い露点(-20℃から-70℃)を有する保護ガス雰囲気を有している、ことを特徴とする態様1から26のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様28]
前記挿入ゾーン(3)内及び/又は前記排出ゾーン(4)内に、ハウジング(13)内に支承された、それぞれ少なくとも1つのダンサーローラ(14)が配置されており、前記ハウジング(13)がそれぞれ前記金属ストリップ(2)のための挿入開口部(15)と排出開口部(16)を有し、かつ前記ハウジング(13)の内部に、保護ガス雰囲気、特に水素及び/又は窒素雰囲気が存在している、ことを特徴とする態様1から27のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様29]
前記挿入ゾーン(3)が、垂直炉(1)の周囲に対して気密に前記急速加熱ゾーン(12)と接続されている、ことを特徴とする態様24から28のいずれか1態様に記載の垂直炉。
[態様30]
前記排出ゾーン(4)が、少なくとも前記第2冷却ゾーン(9)を有する、垂直炉(1)の下降路と、垂直炉(1)の周囲に対して気密に、接続されている、ことを特徴とする態様1から29のいずれか1態様に記載の垂直炉。
【符号の説明】
【0073】
1 垂直炉
2 金属ストリップ
3 挿入ゾーン
4 加熱/保持ゾーン
5 冷却ゾーン
6 方向変換装置
7 ローラ装置
8 排出ゾーン
9 冷却ゾーン
10 ハウジング
11 冷却ゾーン
12 急速加熱ゾーン
13 ハウジング
14 ダンサーローラ
15 挿入開口部
16 排出開口部
17 上昇路
17a 第1マッフル
17b 第2マッフル
18 下降路
19 断熱材
20 連結装置
21 加熱部材
22 層
23 材料
24 シール装置
25 挿入開口部
26 排出開口部
27 冷却流体
28 冷却/加熱室
29 壁
30 熱交換器
31 加熱装置
32 ガス流装置
33 温度測定装置
34 温度測定装置
35 温度測定装置
36 圧力測定装置
37 断熱されたハウジング
図1
図2
図3
図4
図5