(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】アルカリ金属塩の共生成を用いて水性副流からカルボン酸を単離するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/44 20060101AFI20240919BHJP
C07C 53/124 20060101ALI20240919BHJP
C07C 53/126 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C07C51/44
C07C53/124
C07C53/126
(21)【出願番号】P 2023527722
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2021083073
(87)【国際公開番号】W WO2022117439
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】タンマー,マルティヌス,キャサリヌス
(72)【発明者】
【氏名】デン ブラバー,アントニー
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/157061(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104672079(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106278875(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩の共生成を用いて、水性副流からカルボン酸を単離するための方法であって、
a)少なくとも0.1重量%のアルカリ金属カルボン酸塩を含む水性副流を提供する工程であって、前記アルカリ金属カルボン酸塩が、前記流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b)酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩を前記水性副流に添加し、それによって、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物を提供する工程であって、前記水性混合物が、水性単相混合物又は水性多相混合物である、工程と、
c1)前記単相又は多相の水性混合物を
熱的に分離して、前記水性混合物から前記カルボン酸を分離し、それによって、前記カルボン酸を含む第1の流れ及び前記アルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程、又は
c2)有機溶媒を前記単相水性混合物に添加して、前記水性混合物から前記カルボン酸を抽出し、それによって、前記カルボン酸を含む第1の流れ及び前記アルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、前記第2の流れから水を除去することによって、前記アルカリ金属塩を含む前記第2の流れを濃縮する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
水性副流からアルカリ金属塩を単離するための方法であって、
a)少なくとも0.1重量%のアルカリ金属カルボン酸塩を含む水性副流を提供する工程であって、前記アルカリ金属カルボン酸塩が、前記流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b1)酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩を前記水性副流に添加し、それによって、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物を提供する工程であって、前記水性混合物が、水性単相混合物である、工程と、
c)前記水性単相混合物から前記カルボン酸を分離し、それによって、前記カルボン酸を含む第1の流れ及び前記アルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、前記第2の流れから水を除去することによって、前記アルカリ金属塩を含む前記第2の流れを濃縮する工程と、を含む、方法。
【請求項3】
前記カルボン酸が、イソ酪酸、n-酪酸、プロピオン酸、ピバル酸、ネオデカン酸、ネオヘプタン酸、イソノナン酸、2-メチル酪酸、シクロヘキシルカルボン酸、ラウリン酸、イソ吉草酸、n-吉草酸、n-ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、又はそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属カルボン酸塩が、前記カルボン酸のカルボン酸ナトリウム又はカリウム塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水性副流が、
有機ペルオキシド生成プロセスから生じ、任意選択的に、前記水性副流中に存在する残留ペルオキシドが、(i)工程b)若しくは工程b1)の前若しくは後に抽出すること、及び/又は(ii)工程b)若しくは工程b1)の前若しくは後に前記水性副流に還元剤、熱、若しくは照射を加えることによって除去される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の前記水性副流が、
少なくとも3重量%の前記アルカリ金属カルボン酸塩を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)又は工程b1)では、酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンが、前記水性副流に添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンが、
0.5:1~10:1の添加される酢酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、前記水性副流に添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程b)又は工程b1)での前記添加が、無水物生成プロセスの副生成物として得られ、任意選択的に、単離される前記カルボン酸を含有する酢酸を使用して実施される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属塩が、アルカリ金属酢酸塩である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c1)又はc2)又はc)又はd)で提供される前記アルカリ金属酢酸塩が、酢酸カリウム50%w/w、酢酸カリウム結晶、酢酸ナトリウム25%w/w、酢酸ナトリウム30%w/w、酢酸ナトリウム結晶、及び酢酸ナトリウム-3aq結晶から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アルカリ金属水酸化物が、(i)工程b)又は工程b1)で提供される前記水性混合物に、及び/あるいは(ii)工程c1)若しくはc2)又は工程cで提供される前記第2の流れに添加され、前記アルカリ金属水酸化物が、前記混合物及び/又は流れ内の任意の過剰な酸の少なくとも一部を中和するのに充分な量で添加される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
熱分離、乾燥塩、又は膜プロセスによって、前記第1の流れの前記カルボン酸を精製することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の流れの前記アルカリ金属塩を、沈殿及び/又は洗浄によって精製することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
以下の工程のうちの1つ以上を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)で分離された前記カルボン酸の少なくとも一部を有機ペルオキシド生成プロセスに再循環させる工程、
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)で分離された前記カルボン酸を使用して、エステルを作製する工程、
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)で単離された前記カルボン酸を動物飼料中で使用する工程、
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)若しくはd)で得られた前記アルカリ金属塩を、除氷用途で使用する工程であって、前記アルカリ金属塩が、酢酸カリウムである、工程、及び/又は
-硫酸(廃液)流を中和するために、カルシウム塩を除去するために、アニリン染料を使用している間のフォトレジストとして、クロムなめしにおける酸洗剤として、クロロプレンの加硫を妨ぐために、使い捨て綿パッドの綿の加工において、食品において、飼料において、加熱パッドにおいて、コンクリートシーリングにおいて、洗浄剤において、又は革なめしにおいて、工程c1)又はc2)又はc)又はd)で得られた前記酢酸ナトリウムを使用する工程であって、前記アルカリ金属塩が、酢酸ナトリウムである、工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属塩の共生成を用いて、有機ペルオキシド生成プロセスの水性副流などの水性副流から、カルボン酸を単離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアシルペルオキシド及びペルオキシエステルは、以下の反応スキームによって示されるように、無水物又は酸塩化物を、ヒドロ(ゲン)ペルオキシドのアルカリ溶液と反応させることによって調製され得る。
2R-C(=O)-O-C(=O)-R + M2O2
→ R-C(=O)-O-O-C(=O)-R + 2MOC(=O)-R
R-C(=O)-O-C(=O)-R + ROOH + MOH
→ R-C(=O)-O-O-R + MOC(=O)-R
2R-C(=O)-Cl + M2O2
→ R-C(=O)-O-O-C(=O)-R + 2MCl
R-C(=O)-Cl + ROOH + MOH
→ R-C(=O)-O-O-R + MCl
【0003】
この反応スキームでは、Mは、Na又はKである。加えて、M2O2は、個別の生成物M2O2ではなく、H2O2及びMOOHを含む平衡を指す。
【0004】
酸塩化物は比較的高価であり、塩化物含有水層を生成し、これは高塩濃度を有する廃水をもたらす。
【0005】
一方、無水物は、酸塩化物よりも更に高価であり、無水物で始まるプロセスの副流は、高い有機負荷、すなわち、形成されたカルボン酸塩による高い化学的酸素要求量(COD)値を含有し、したがって、経済的かつ環境的に魅力的ではない。
【0006】
これは、ペルオキシド生成プロセス、別の化学プロセス(例えば、エステルの生成)、又は例えば、動物飼料成分としての任意の他の用途のいずれかにおいて、カルボン酸が水性副流から単離され、再利用され得る場合、変化するであろう。
【0007】
CN108423908は、沈殿によって、ビス(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド生成プロセス廃液流から4-メチル安息香酸を単離するプロセスを開示している。しかしながら、このプロセスは、水溶性が低い酸にのみ機能する。加えて、沈殿物は、使用される機器の汚れを引き起こす可能性がある。
【0008】
水溶性であるか、又は水性副流から十分に沈殿しないか、若しくは別の方法で分離しないカルボン酸については、単離は容易又は簡単ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、水性副流からそのようなカルボン酸を単離し、それを再利用に適したものにするための方法を提供することが、本発明の一目的である。方法が環境に優しく、したがって可能な場合、最小限の廃棄物をもたらすことが、本発明の更なる目的である。
【0010】
本発明の別の目的は、水性副流からアルカリ金属塩を単離するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、これらの目的は、以下の工程を含むプロセスによって達成される。
a)少なくとも0.1重量%のアルカリ金属カルボン酸塩を含む水性副流を提供する工程であって、アルカリ金属カルボン酸塩は、その流れ内で溶解又は均質に混合される、工程、
b)酸、無水物、ケテン、又は酸塩を水性副流に添加し、それによって、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物を提供する工程であって、水性混合物が、水性単相混合物又は水性多相混合物である、工程、並びに
c1)単相又は多相の水性混合物を熱的に分離、好ましくは蒸留して、水性混合物からカルボン酸を分離し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及びアルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程、又は
c2)有機溶媒を単相水性混合物に添加して、水性混合物からカルボン酸を抽出し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及びアルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程、並びに
d)任意選択的に、第2の流れから水を除去することによって、アルカリ金属塩を含む第2の流れを濃縮する工程。
【0012】
第2の態様では、これらの目的は、以下の工程を含むプロセスによって達成される。
a)少なくとも0.1重量%のアルカリ金属カルボン酸塩を含む水性副流を提供する工程であって、アルカリ金属カルボン酸塩は、その流れ内で溶解又は均質に混合される、工程、
b1)酸、無水物、ケテン、又は酸塩を水性副流に添加し、それによって、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物を提供する工程であって、水性混合物が、水性単相混合物である、工程、
c)水性単相混合物からカルボン酸を分離し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及びアルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程、並びに
d)任意選択的に、第2の流れから水を除去することによって、アルカリ金属塩を含む第2の流れを濃縮する工程。
【0013】
工程c)では、カルボン酸は、単相水性混合物を熱的に分離(好ましくは蒸留)することによって、又は単相水性混合物に有機溶媒を添加して、水性混合物からカルボン酸を抽出することによって、水性単相混合物から分離され得る。
【0014】
水性副流は、任意の供給源から得られ得る。好ましくは、水性副流は、有機ペルオキシド生成プロセス、例えば、ジアシルペルオキシド及び/又はペルオキシエステルの生成から得られる。当該水性副流をもたらす有機ペルオキシド生成プロセスは、反応物としての酸塩化物又は無水物、好ましくは無水物の使用を伴い得る。
【0015】
ジアシルペルオキシドは、対称又は非対称であり得る。当該水性副流をもたらす有機ペルオキシド生成プロセスで生成される好適な対称ジアシルペルオキシドの例は、ジ-2-メチルブチリルペルオキシド、ジ-イソバレリルペルオキシド、ジ-n-バレリルペルオキシド、ジ-n-カプロイルペルオキシド、ジ-イソブチリルペルオキシド、及びジ-n-ブタノイルペルオキシドである。当該水性副流をもたらす有機ペルオキシド生成プロセスで生成される好適な非対称ジアシルペルオキシドの例は、アセチルイソブタノイルペルオキシド、アセチル3-メチルブタノイルペルオキシド、アセチルラウロイルペルオキシド、アセチルイソノナノイルペルオキシド、アセチルヘプタノイルペルオキシド、アセチルシクロヘキシルカルボン酸ペルオキシド、アセチル2-プロピルヘプタノイルペルオキシド、及びアセチル2-エチルヘキサノイルペルオキシドである。
【0016】
当該水性副流をもたらす有機ペルオキシド生成プロセスで生成される好適なペルオキシエステルの例は、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル1-ペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル1-ペルオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシネオヘプタノエート、tert-ヘキシルペルオキシネオヘプタノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル1-ペルオキシネオノナノエート、tert-ブチルペルオキシネオノナノエート、tert-アミルペルオキシネオノナノエート、tert-ヘキシルペルオキシネオノナノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ヘキシル-ペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ヘキシルペルオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-アミルペルオキシイソブチレート、tert-ヘキシルペルオキシイソブチレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシn-ブチレート、tert-アミルペルオキシn-ブチレート、tert-ヘキシルペルオキシn-ブチレート、tert-ブチルペルオキシイソバレレート、tert-アミルペルオキシイソバレレート、tert-ヘキシルペルオキシイソバレレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシイソバレレート、tert-ブチルペルオキシn-バレレート、tert-アミルペルオキシn-バレレート、tert-ヘキシルペルオキシn-バレレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシn-ブチレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル1-ペルオキシm-クロロベンゾエート、tert-ブチルペルオキシm-クロロベンゾエート、tert-アミルペルオキシm-クロロベンゾエート、tert-ヘキシルペルオキシm-クロロベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル1-ペルオキシo-メチルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシo-メチルベンゾエート、tert-アミルペルオキシo-メチルベンゾエート、tert-ヘキシルペルオキシo-メチルベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル1-ブチルペルオキシフェニルアセテート、tert-ブチルペルオキシフェニルアセテート、tert-アミルペルオキシフェニルアセテート、tert-ヘキシルペルオキシフェニルアセテート、tert-ブチルペルオキシ2-クロロアセテート、tert-ブチルペルオキシシクロドデカノエート、tert-ブチルペルオキシn-ブチレート、tert-ブチルペルオキシ2-メチルブチレート、tert-アミルペルオキシ2-メチルブリレート(methylburyrate)、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル-1-ペルオキシネオデカノエート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル-1-ペルオキシピバレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル-1-ペルオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル-1-ペルオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、及び1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル-1-ペルオキシイソブチレートである。
【0017】
当該水性副流をもたらす有機ペルオキシド生成プロセスで生成される好ましいペルオキシエステルとしては、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-アミルペルオキシイソブチレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシn-ブチレート、tert-アミルペルオキシn-ブチレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシn-ブチレート、tert-ブチルペルオキシイソバレレート、tert-アミルペルオキシイソバレレート、tert-ブチルペルオキシ2-メチルブチレート、tert-アミルペルオキシ2-メチルブリレート(methylburyrate)、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシイソバレレート、tert-ブチルペルオキシn-バレレート、tert-アミルペルオキシn-バレレート、及び1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-ペルオキシn-バレレートが挙げられる。
【0018】
水性副流は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、更により好ましくは少なくとも20重量%、及び最も好ましくは少なくとも25重量%の、その中で溶解又は均質に混合されたアルカリ金属カルボン酸塩を含む。アルカリ金属カルボン酸塩濃度は、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下、及び最も好ましくは50重量%以下である。したがって、水性副流は、好ましくは3重量%~65重量%、より好ましくは20重量%~60重量%、最も好ましくは25重量%~50重量%の範囲内の、その中で溶解又は均質に混合されたアルカリ金属カルボン酸塩を含む。例えば、水性副流は、3重量%~65重量%、より好ましくは20重量%~60重量%、最も好ましくは25重量%~50重量%の範囲内の、その中で溶解若しくは均質に混合されたカルボン酸カリウムを含み得るか、又は水性副流は、3重量%~65重量%、より好ましくは20重量%~60重量%、最も好ましくは25重量%~50重量%の範囲内の、その中で溶解若しくは均質に混合されたカルボン酸ナトリウムを含み得る。
【0019】
水性副流内で溶解又は均質に混合されたアルカリ金属カルボン酸塩の濃度を、水性副流から水を除去することによって、例えば熱分離、例えば蒸留によって、本明細書に開示される方法の工程a)の前に、及び/又は工程a)と工程b)(若しくは工程b1))との間で増加させることができる。
【0020】
アルカリ金属カルボン酸塩は、当該流れと溶解又は均質に混合され、流れが単相からなり、例えば、アルカリ金属カルボン酸塩粒子を含有する懸濁液ではないことを意味する。そのような懸濁液から、カルボン酸は、例えば、アルカリ金属カルボン酸塩の濾過によって容易に分離され得る。しかしながら、本発明の水性流からは、そのような容易な分離は不可能であり、カルボン酸を単離するためにより多くの工程が必要である。
【0021】
好ましくは、アルカリ金属カルボン酸塩は、イソ酪酸、n-酪酸、プロピオン酸、ピバル酸、ネオデカン酸、ネオヘプタン酸、イソノナン酸、2-メチル酪酸、シクロヘキシルカルボン酸、ラウリン酸、イソ吉草酸、n-吉草酸、n-ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、又はそれらの混合物のカルボン酸カリウム又はナトリウム塩である。より好ましいアルカリ金属カルボン酸塩は、イソ酪酸、n-酪酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、ピバル酸、イソノナン酸、2-メチル酪酸、シクロヘキシルカルボン酸、イソ吉草酸、及びn-吉草酸のカルボン酸ナトリウム又はカリウム塩である。最も好ましくは、アルカリ金属カルボン酸塩は、イソ酪酸ナトリウム、イソ酪酸カリウム、又はイソ酪酸ナトリウム及びイソ酪酸カリウムの混合物から選択され、単離されたカルボン酸は、イソ酪酸である。本明細書に開示される方法は、特に、アルカリ金属塩の共生成を用いて、水性副流からカルボン酸を単離するのに適しており、カルボン酸は、少なくとも0.1g/100mL、好ましくは少なくとも0.5g/100mL、より好ましくは少なくとも1g/100mL、より好ましくは少なくとも2g/100mL、より好ましくは少なくとも3g/100mL、より好ましくは少なくとも4g/100mL、及び最も好ましくは少なくとも5g/100mLの水溶性を有し、各場合において、20℃で測定される。
【0022】
有機ペルオキシド生成プロセスから得られる場合、水性副流は、有機ヒドロペルオキシド、過酸化水素、ペルオキシ酸、ジアシルペルオキシド、及び/又はペルオキシエステルなどのいくつかのペルオキシド残留物を含有する。水性副流のペルオキシド含有量は概して、0.01~3重量%の範囲内である。副流は、いくつかの残留ペルオキシド分解生成物を更に含有し得る。
【0023】
カルボン酸をうまく単離、精製、及び再利用するために、いかなる残留ペルオキシドも、好ましくは、水性副流から除去されるべきである。これは、抽出及び/又は還元剤の添加によって行われる。加えて、副流の加熱が望まれ得る。
【0024】
好適な還元剤の例は、亜硫酸ナトリウム、多硫化ナトリウム(Na2Sx)、チオ硫酸ナトリウム、及びメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0025】
好ましい実施形態では、還元剤は、工程b)(若しくは工程b1))の最中、又はより好ましくは、工程b)(若しくは工程b1))の前のいずれかに、有機ペルオキシド生成プロセスの水性副流に添加される。
【0026】
還元剤は、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシド、及びペルオキシ酸を破壊する。他の任意の過酸化物種を破壊するために、10~80℃、好ましくは10~50℃、及び最も好ましくは10~30℃で、水性副流の温度を上昇させることが望まれ得る。この温度上昇は、工程b)(若しくは工程b1))の前、又は工程b)(若しくは工程b1))の最中に実施され得る。工程b)(又は工程b1))の最中に実施される場合、酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩の添加によって放散される任意の熱を使用して、この温度上昇を達成し得る。ペルオキシド生成プロセスは多くの場合、低温で実施されるため、加熱、あるいは酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩の添加の前の水性副流の温度は概して、0~20℃、好ましくは0~10℃の範囲内であることに留意されたい。
【0027】
抽出は、工程b)(又は工程b1))の前又は後に実施され得、好ましくは、工程b)(又は工程b1))の前に実施される。抽出は、有機溶媒、無水物、並びに無水物及び溶媒の混合物を用いて実施され得る。抽出によって得られた有機層は、任意選択的に有機ペルオキシド生成プロセスに再循環され得る。
【0028】
抽出に適した溶媒の例は、アルカン(例えば、イソドデカン、Spirdane(登録商標)、及びIsopar(登録商標)鉱油)、クロロアルカン、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチル、二安息香酸エチレングリコール、クメン、マレイン酸ジブチル、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサエンジカルボキシレート(DINCH)、テレフタル酸ジオクチル、又は2,2,4-トリメチルペンタンジオールジイソブチレート(TXIB))、エーテル、アミド、及びケトンである。
【0029】
抽出に適した無水物の例は、有機ペルオキシド生成プロセスで使用されていた、又は使用され得る無水物であり、対称及び非対称の無水物を含む。対称無水物の例は、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、イソ酪酸無水物、ピバル酸無水物、吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、2-メチル酪酸無水物、2-メチルペンタン酸無水物、2-メチルヘキサン酸無水物、2-メチルヘプタン酸無水物、2-エチル酪酸無水物、カプロン酸無水物、カプリル酸無水物、イソカプロン酸無水物、n-ヘプタン酸無水物、ノナン酸無水物、イソノナン酸無水物、3,5,5-トリメチルヘキサン酸無水物、2-プロピルヘプタン酸無水物、デカン酸無水物、ネオデカン酸無水物、ウンデカン酸無水物、ネオヘプタン酸無水物、ラウリン酸無水物、トリデカノン酸無水物、2-エチルヘキサン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、フェニル酢酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、3-メチル-シクロペンタンカルボン酸無水物、及び上記の無水物のうちの2つ以上の混合物である。好ましい対称無水物は、n-酪酸無水物、イソ酪酸無水物、ピバル酸無水物、吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、2-メチル酪酸無水物、2-メチルペンタン酸無水物、2-メチルヘキサン酸無水物、2-メチルヘプタン酸無水物、2-エチル酪酸無水物、カプロン酸無水物である。最も好ましいのは、n-酪酸無水物、イソ酪酸無水物、吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、2-メチル酪酸無水物、2-メチルペンタン酸無水物である。
【0030】
対称無水物の好適な混合物の例、イソ酪酸無水物及び2-メチル酪酸無水物の混合物、イソ酪酸無水物及び2-メチルペンタン酸無水物の混合物、2-メチル酪酸無水物及びイソ吉草酸無水物の混合物、並びに2-メチル酪酸無水物及び吉草酸無水物の混合物である。
【0031】
非対称無水物は通常、非対称無水物及び対称無水物の混合物として利用可能である。これは、非対称無水物が通常、酸の混合物を、例えば、酢酸無水物と反応させることによって得られるためである。これは、非対称無水物及び少なくとも1つの対称無水物を含む、無水物の混合物をもたらす。無水物のそのような混合物は、抽出に使用され得る。好適な非対称無水物の例は、イソ酪酸2-メチル酪酸無水物(これは好ましくは、イソ酪酸無水物及び2-メチル酪酸無水物を有する混合物として存在する)、イソ酪酸酢酸無水物(これは好ましくは、イソ酪酸無水物及び酢酸無水物を有する混合物として存在する)、2-メチル酪酸吉草酸無水物(これは好ましくは、2-メチル酪酸無水物及び吉草酸無水物を有する混合物として存在する)、並びに酪酸吉草酸無水物(これは好ましくは、酪酸無水物及び吉草酸無水物を有する混合物として存在する)である。
【0032】
抽出のためのより好ましい無水物は、イソ酪酸無水物、2-メチル酪酸無水物、2-メチルヘキサン酸無水物、2-プロピルヘプタン酸無水物、n-ノナン酸無水物、イソノナン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、2-エチルヘキサン酸無水物、カプリル酸無水物、n-吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、カプロン酸無水物、及びラウリン酸無水物である。最も好ましいのは、イソノナン酸無水物及びイソ酪酸無水物である。
【0033】
工程b)(又は工程b1))では、酸(又は無水物、ケテン若しくは酸塩)が、水性副流に添加される。この添加は、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物の形成につながり、これは、水性単相混合物(すなわち、溶液)又は水性多相混合物である。
【0034】
「多相混合物」という用語は、本明細書では、二相又は三相の混合物を意味するために使用される。特に、多相混合物は、2つの液相を有する二相混合物、アルカリ金属塩の沈殿によって引き起こされる1つの液相及び1つの固相を有する二相混合物、又はアルカリ金属塩の沈殿によって引き起こされる2つの液相及び1つの固相を有する三相混合物であり得る。言い換えれば、工程b)(又は工程b1))での添加は、カルボン酸の沈殿をもたらさないが、これは次いで、例えば、濾過によって混合物から容易に分離され得る。むしろ、本発明の水性混合物からは、そのような容易な分離は不可能であり、カルボン酸を単離するためにより多くの工程が必要である。
【0035】
「水性単相混合物」、「水性二相混合物」、及び「水性三相混合物」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの相に水を含有する一相、二相、又は三相の混合物をそれぞれ意味するために使用される。
【0036】
工程b)(又は工程b1))で添加するのに適した酸及び酸塩としては、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、リン酸(H3PO4)、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。したがって、工程b)(又は工程b1))で形成されるアカリ金属塩は、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属塩化物、アルカリ金属硫酸水素塩、アルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属リン酸二水素塩、アルカリ金属シュウ酸塩、アルカリ金属クエン酸塩、アルカリ金属ギ酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属安息香酸塩、及びそれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、工程b)(又は工程b1))で添加するための酸及び酸塩は、pKaが5未満の酸及び酸塩である。
【0037】
工程b)で形成される水性混合物は、以下に応じて単相又は多相である。
-水性副流内のアルカリ金属カルボン酸塩の濃度、
-アルカリ金属カルボン酸塩が形成されるカルボン酸、
-工程b)で水性副流に添加される酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩(その希釈を含む)、及び
-工程b)で提供する水性混合物の温度。
【0038】
一般に、より高濃度のアルカリ金属カルボン酸塩、高級カルボン酸、より強い酸、より濃縮された酸、及び/又はより低い温度は、添加工程b)からの多相混合物の形成をもたらす。例えば、2.4重量%のペンタン酸ナトリウムを含む水性副流が、96%のH2SO4で酸性化される場合、透明な溶液(すなわち、単相混合物)が25℃で得られるが、20℃及び/又はより高いペンタン酸ナトリウム濃度では、2つの液相を有する二相混合物が得られる。同様に、10重量%のイソ酪酸ナトリウムを含む水性副流が、96%のH2SO4で酸性化される場合、透明な溶液(すなわち、単相混合物)が25℃で得られるが、20℃及び/又はより高いイソ酪酸ナトリウム濃度では、2つの液相を有する二相混合物が得られる。更に、温度が20℃よりもかなり低い場合、2つの液相及び沈殿Na2SO4の固相を有する三相混合物が得られ得る。しかしながら、酢酸などのより弱い酸を添加する場合、透明な溶液(すなわち、単相混合物)は、20℃で30重量%のペンタン酸ナトリウムを含む水性副流から得られ得る。
【0039】
好ましくは、工程b)で形成される水性混合物は、水性単相混合物、又は2つの液相を有する水性二相混合物である。
【0040】
工程b1)では、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属カルボン酸塩が形成されるカルボン酸、水性混合物に添加される酸(又は無水物、ケテン若しくは酸塩)の濃度、及び水性混合物の温度は、水性単相混合物が形成されるように、上記に従って選択される。
【0041】
酸は、一塩基の場合、少なくとも0.5:1、好ましくは少なくとも0.8:1、及びより好ましくは少なくとも0.9:1の添加される酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、水性副流に添加され得る。添加される一塩基酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、最大10:1、好ましくは最大5:1、及びより好ましくは最大3:1であり得る。特に、添加される一塩基酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、0.5:1~10:1、好ましくは0.8:1~5:1、及びより好ましくは0.9:1~3:1であり得る。一塩基酸が強酸、すなわち、水溶液中で完全に解離する一塩基酸(Ka>1、pKa<1)、例えば、塩酸である場合、一塩基酸は、最も好ましくは、0.95:1~1.2:1の添加される酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、水性副流に添加される。一塩基酸が弱酸、すなわち、水溶液中で完全に解離しない一塩基酸(Ka<1、pKa>1)、例えば、酢酸である場合、一塩基酸は、1:1~5:1、より好ましくは1:1~3:1、及び最も好ましくは1.1:1~3:1の添加される酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、最も好ましくは水性副流に添加される。
【0042】
酸が水中4のpHで二塩基又は三塩基である場合、添加される酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、酸の関連する当量数に適合される。この場合、添加される二塩基酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、0.2:1~5:1、好ましくは0.4:1~2.5:1、及びより好ましくは0.4:1~1.5:1であり得る。二塩基酸が強酸、例えば、硫酸である場合、二塩基酸は、0.2:1~5:1、好ましくは0.4:1~2.5:1、より好ましくは0.4:1~1.5:1の添加される酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、最も好ましくは水性副流に添加される。酸が水中4のpHで三塩基である場合、添加される三塩基酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、0.1:1~3.4:1、好ましくは0.2:1~1.7:1、より好ましくは0.3:1~1:1であり得る。
【0043】
無水物、ケテン、又は酸塩が水性副流に添加される場合、無水物/ケテン/酸塩は、水性副流の水と接触したときにそれぞれの酸に加水分解する。そのような場合、上記に開示されたモル比の「添加された酸」は、添加される無水物、ケテン、又は酸塩から形成される酸、対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比を指す。
【0044】
工程b)(又は工程b1))における添加に好ましい酸は、硫酸、リン酸、及び酢酸である。硫酸(H2SO4)が使用される場合、好ましくは、90~96重量%の溶液として添加される。
【0045】
工程b)(又は工程b1))における添加に最も好ましい酸は、酢酸である。
【0046】
酢酸が工程b)(又は工程b1))で使用される場合、それは、酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンとして添加されて、カルボン酸、アルカリ金属カルボン酸塩、酢酸、及びアルカリ金属酢酸塩を含む水性混合物を形成することができる。より具体的には、酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンは、水性副流に添加されて、水性単相混合物を形成し得る。例えば、少なくとも0.1重量%のイソ酪酸ナトリウムを含む水性副流の場合、酢酸(又は酢酸無水物及び/若しくはエテノン)の添加は、イソ酪酸、イソ酪酸ナトリウム、酢酸、及び酢酸ナトリウムを含む均質な(すなわち、単相の)平衡混合物の形成をもたらす。
【0047】
酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンの添加は、7未満のpHを得るために、好ましくは6未満のpHを得るために実施され得る。得られたpHは、好ましくは4以上である。
【0048】
酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンは、少なくとも0.5:1、好ましくは少なくとも0.9:1、より好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは1.05:1、及び最も好ましくは少なくとも1.15:1の添加される酢酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、水性副流に添加され得る。添加される酢酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、最大10:1、好ましくは最大5:1、及びより好ましくは最大3:1であり得る。特に、添加される酢酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比は、0.5:1~10:1、好ましくは0.9:1~5:1、より好ましくは1:1~5:1、より好ましくは1:1~3:1、及び最も好ましくは1.1:1~3:1であり得る。
【0049】
酢酸は、最も好ましくは酸形態で添加される。
【0050】
工程b)(又は工程b1))で使用される酢酸は、任意の供給源から得られ得る。一実施形態では、酢酸は、メタノールカルボニル化、アセトアルデヒド酸化、ギ酸メチル異性化、合成ガス変換、エチレン及びエタノールの気相酸化、並びに/又は細菌発酵によって、工業的に生成される高純度酢酸である。あるいは、酢酸は、無水物生成プロセスなどの別の反応の副生成物として調製され得る。好ましくは、酢酸は、水性副流内にアルカリ金属カルボン酸塩を生成したペルオキシドを作製するために使用される無水物の調製中に、副生成物として遊離される(1ページ目の反応スキームを参照されたい)。
【0051】
アルカリ金属酢酸塩結晶化を妨げない(望ましい場合)、水、カルボン酸塩、カルボン酸などの酢酸中の不純物が許容される。次の工程で揮発性であり、かつ分離されたカルボン酸になる酢酸中の不純物は、不純物が熱分離(例えば、蒸留)工程で塔頂流として収集され得る場合、又は不純物がカルボン酸の使用に対して有害ではない場合を除いて、好ましくない。例えば、イソ酪酸無水物施設からの酢酸中の酢酸無水物、アセチルイソブチリル無水物、及びイソ酪酸無水物の存在は、カルボン酸塩水層がジ-イソブチリルペルオキシドプロセスからのイソ酪酸ナトリウムを含有する場合、適合不純物である。
【0052】
工程c1)及びc2)では、カルボン酸は、単相又は多相の水性混合物から分離される。分離は、蒸留などの熱分離によって、又は抽出によって実施され得る。
【0053】
工程c)では、カルボン酸は、蒸留などの熱分離によって、又は抽出によって、単相水性混合物から分離され得る。熱分離(例えば、蒸留)又は抽出は、工程c1)及びc2)に関連して以下に記載されるのと同じ方法で実施され得る。
【0054】
単相又は多相の水性混合物からのカルボン酸の除去は、工程a)に提供される水性副流内で溶解又は均質に混合されたアルカリ金属カルボン酸塩の総量に基づいて、10重量%~99重量%超、好ましくは70重量%~99重量%超、より好ましくは90重量%~99重量%超、より好ましくは95重量%~99重量%超、及び最も好ましくは95重量%~99重量%であり得る。本明細書に開示される方法の工程b)(又は工程b1))の前に、工程a)に提供される水性副流内で溶解又は均質に混合されたアルカリ金属カルボン酸塩の濃度が増加する場合、すなわち、水性副流から水を除去することによって、単相又は多相の水性混合物からのカルボン酸の除去は、濃縮後の水性副流内で溶解又は均質に混合されたアルカリ金属カルボン酸塩の総量に基づいている。
【0055】
工程c1)では、単相又は多相の水性混合物は、熱的に分離、例えば、蒸留されて、水性混合物からカルボン酸を分離し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及びアルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する。第1の流れは、カルボン酸及び水を含む水性流であり得る。第2の流れは、水及びアルカリ金属塩を含む水性流であり得る。
【0056】
第1の流れは、カルボン酸及び水を含む単相又は二相の混合物であり得る。第1の流れが二相混合物である場合、混合物は、高いカルボン酸含有量及び低いカルボン酸含有量を有する2つの層をもたらし得る。例えば、二相混合物は、(i)水及び少量のカルボン酸を含む水層と、(ii)カルボン酸及び少量の水を含む有機液相とを含み得る。本文書では、少量は、総重量に基づいて0~40重量%、好ましくは35重量%未満、より好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、及び最も好ましくは20重量%未満として定義される。
【0057】
当該技術分野で知られているように、熱分離では、2つ以上の構成成分が、相対揮発度におけるそれらの差に基づいて分離される。より高い揮発度を有する構成成分は、液体混合物から選択的に蒸発され、その後、凝縮される。熱分離は、出発液体混合物中に存在する構成成分の完全な分離、又は液体混合物中の選択された構成成分の濃度をもたらす部分分離をもたらすことができる。熱分離は、減圧又は高圧を使用して行われ得る。熱分離工程の分離性能は、トレイ、規則充填物、又は不規則充填物のいずれかを使用することによって、いくつかの理論的平衡段階を提供することによって強化され得る。凝縮された蒸気の一部が熱分離ユニットに戻される還流が使用されて、分離性能を強化することができる。熱分離プロセスの例としては、フラッシュ蒸留、真空蒸留、分別蒸留、ショートパス蒸留、共沸蒸留、抽出蒸留、反応蒸留、ストリッピング、及び精留が挙げられる。
【0058】
好ましくは、熱分離は、蒸留によって実施される。蒸留は、蒸留カラム若しくはストリッピングカラムで実施され得るか、又はフラッシュ蒸留が使用され得る。蒸留は、減圧又は高圧を使用して行われ得る。性能は、トレイ、規則充填物、若しくは不規則充填物のいずれかを使用することによって、又は還流を使用することによって、いくつかの理論的平衡段階を提供することによって強化され得る。上述のように、カルボン酸が、アルカン、アルコール、エステル、エーテル、又はケトンなどの低沸点有機物を含有する場合、これらは、塔頂流として蒸留中に分離され得る。蒸留のためのエネルギーは、外部の加熱源又は生蒸気によって供給され得る。
【0059】
工程b)で形成される水性混合物が二相などの多相である実施形態では、多相混合物は、工程c1)の熱分離(例えば、蒸留)の前に、水性液相及び有機液相に分離されない。
【0060】
熱分離の代替として、工程c2)では、有機溶媒が単相水性混合物に添加されて、水性混合物からカルボン酸を抽出し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及びアルカリ金属塩を含む第2の流れを提供することができる。第1の流れは、カルボン酸及び有機溶媒を含む有機溶媒流であり得る。第2の流れは、水及びアルカリ金属塩を含む水性流であり得る。
【0061】
第1の流れがカルボン酸及び有機溶媒を含む有機溶媒流である場合、カルボン酸は、その後の熱分離工程、例えば、蒸留によって有機溶媒から分離され得る。有機溶媒及びカルボン酸の相対沸点に応じて、これは、より高い沸点の有機溶媒からのカルボン酸の分離(例えば、蒸留)、又はより高い沸点のカルボン酸からの有機溶媒の分離(例えば、蒸留)によって行われ得る。
【0062】
抽出は、反応器、遠心分離器、又はミキサーセトラーなどの任意の好適なデバイスで実施され得る。任意選択的に、抽出は、カルボン酸で抽出される酢酸の量を制限するために、洗浄セクション(すなわち、分別抽出設計)を用いて実施される。
【0063】
抽出に適した有機溶媒の例は、6つ以上の炭素原子を含有するアルカン(例えば、イソドデカン、Spirdane(登録商標)、及びIsopar(登録商標)鉱油)、6つ以上の炭素原子を含有するアルケン、クロロアルカン、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチル、二安息香酸エチレングリコール、マレイン酸ジブチル、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサエンジカルボキシレート(DINCH)、テレフタル酸ジオクチル、又は2,2,4-トリメチルペンタンジオールジイソブチレート(TXIB))、エーテル、芳香族化合物(クメン)アミド、及びケトンである。抽出に好ましい溶媒は、6つ以上の炭素原子及びエステルを含有するアルカンである。
【0064】
抽出されたカルボン酸/溶媒混合物は、不純物、水、及び酢酸を含有し得る。溶媒及びカルボン酸の相対沸点に応じて、不純物、水、及び酢酸は、熱分離(例えば、蒸留)、続いて、より高い沸点の溶媒からのカルボン酸の熱分離(例えば、蒸留)によって除去され得る。溶媒が最低の沸点の構成成分のうちの1つである場合、カルボン酸は、熱分離(例えば、蒸留)の残留物として得られ得る。
【0065】
好ましくは、カルボン酸は、単相又は多相の水性混合物を熱的に分離、より好ましくは、蒸留することによって(すなわち、工程c1)によって)、工程b)(又は工程b1))で形成される水性混合物から分離される。
【0066】
カルボン酸が工程c1)又は工程c2)によって分離されるかどうかに関わらず、その後の分離又は蒸留工程は、アルカン、アルコール、エステル、エーテル、又はケトンなどの低沸点有機物からカルボン酸を更に精製するために、任意選択的に実施される。
【0067】
蒸留はまた、カルボン酸から水を含む揮発性不純物を蒸発させる、及び/又はカルボン酸よりも高い沸点を有する任意の不純物からカルボン酸を蒸留する役割を果たし得る。
【0068】
本明細書における「蒸留」という用語は、フラッシュ蒸留、真空蒸留、分別蒸留、ショートパス蒸留、共沸蒸留、抽出蒸留、及び反応蒸留を含む、任意の形態の蒸留を含む。
【0069】
濃縮された塩溶液、例えば、10~35重量%のNaCl、NaHSO4、KHSO4、Na2SO4、(NH4)2SO4、又はK2SO4溶液の冷却及び/又は添加を使用して、4つ以下の炭素原子を有するカルボン酸から水を分離することができる。塩は、水性液相中のカルボン酸の溶解度を低減する(すなわち、塩析)。冷却は、好ましくは、分離を改善するために実施され、水層中のカルボン酸の溶解度を低下させるために、20℃未満、より好ましくは10℃未満、及び最も好ましくは5℃未満の温度を使用し得る。濃縮された塩溶液が添加されると、分離は、より高温で、例えば、40℃で見られる。しかしながら、塩溶液の添加は、それが生成する廃塩流のため好ましくない。高級カルボン酸(すなわち、5つ以上の炭素原子を有するもの)の水性混合物は、高いカルボン酸含有量及び低いカルボン酸含有量を有する2層を生じさせ得る。第1の層は、熱分離(例えば、蒸留)、乾燥塩、膜プロセス、又は任意の他の乾燥技術によって更に精製されて、乾燥生成物を得ることができる。第2の層は、工程a)又は工程b)(又は工程b1))に再循環され得る。
【0070】
乾燥プロセス中に得られた水は、任意選択的に、カルボン酸塩含有副流が、例えば、有機ペルオキシド生成プロセスから生じたプロセスで再利用され得るか、又は工程a)若しくは工程b)(若しくは工程b1)に再循環され得る。
【0071】
得られたカルボン酸の含水量は、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、更により好ましくは0.5重量%未満、及び最も好ましくは0.1重量%未満である。これは、カルボン酸がペルオキシド生成プロセスにおいて、無水物工程で再利用される場合に特に好ましい。上述のように、カルボン酸の更なる熱分離(例えば、蒸留)は、この含水量に達するために必要とされ得る。
【0072】
本発明のプロセスによって得られる好ましいカルボン酸としては、イソ酪酸、n-ブチル酸、プロピオン酸、ピバル酸、ネオデカン酸、ネオヘプタン酸、イソノナン酸、2-メチルブチル酸、シクロヘキシルカルボン酸、ラウリン酸、イソ吉草酸、n-吉草酸、n-ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、2-プロピルヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、及びラウリン酸が挙げられる。より好ましいカルボン酸は、イソ酪酸、n-酪酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、ピバル酸、イソノナン酸、2-メチル酪酸、シクロヘキシルカルボン酸、イソ吉草酸、及びn-吉草酸である。
【0073】
本発明のプロセスから得られるカルボン酸は、別の用途で再利用され得る。例えば、カルボン酸は、それが生じるプロセス(例えば、有機ペルオキシド生成プロセス)に再循環され得、別の有機ペルオキシドの生成で使用され得、かつ例えば、溶媒若しくは芳香剤として、又は農業用途で利用されるエステル(例えば、エチルエステル)を作製するために使用され得る。
【0074】
カルボン酸、又はその塩は、動物飼料でも使用され得る。例えば、酪酸塩は、家禽の胃腸の健康を改善し、家禽、ブタ、魚、及び反芻動物における微生物の感染及び病気を予防することが知られている。
【0075】
本明細書に開示される方法は、工程c1)又はc2)又はc)の第2の流れ内のアルカリ金属塩の量が、第2の流れから水を除去することによって濃縮される、追加の工程d)を含み得る。第2の流れから水を除去することによって、濃縮されたアルカリ金属塩溶液及び/又はアルカリ金属塩が提供され得る。これは、アルカリ金属塩が、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属リン酸二水素塩、又はアルカリ金属ギ酸塩であるときに特に好ましい。
【0076】
アルカリ金属塩がアルカリ金属酢酸塩(例えば、酢酸カリウム及び/又は酢酸ナトリウム)である場合、金属酢酸塩は、酢酸カリウム10~70%若しくは酢酸ナトリウム8~60%(特に酢酸ナトリウム20~60%、例えば、酢酸ナトリウム25%若しくは30%)などの商業的に実行可能な溶液、又は酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム-3aq、並びに酢酸カリウム及び酢酸ナトリウムの混合物などの商業的に実行可能な固体に濃縮され得る。好ましくは、アルカリ金属酢酸塩は、50%溶液としての酢酸カリウム、酢酸カリウム結晶、30%溶液としての酢酸ナトリウム、25%溶液としての酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム結晶、又は酢酸ナトリウム-3aq結晶に濃縮される。
【0077】
アルカリ金属塩を商業的に実行可能な生成物に濃縮することによって、本発明のプロセスは、処分される廃棄物を最小限にする。そのため、環境への影響を最小限に抑えながらプロセスが実行され得る。理解されるように、工程c1)又はc2)又はc)の第2の流れ内のアルカリ金属塩がすでに有用な濃度である場合、追加の工程d)は必要とされない。
【0078】
アルカリ金属塩が固体ではなく溶液に濃縮される場合、水性副流中に存在し得る任意の残留ペルオキシドは、好ましくは、還元剤として亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、それらのカリウム塩、又は任意の他の硫酸生成還元剤を使用することなく除去される。
【0079】
水は、好ましくは、熱分離、例えば、蒸留によって蒸発を介して除去される。水はまた、流れにアルコールを添加することによって除去され得る。結晶の形成の場合、水は、20~60重量%の含有量まで除去され、好ましくは、続いて冷却される。結晶は、濾過、遠心分離などによって除去され得、母液は再循環される。より好ましい方法では、アルカリ金属塩、例えば、アルカリ金属酢酸塩は、飽和溶液中の結晶のスラリーに濃縮され、次いで、結晶は、濾過、遠心分離などによって除去され、母液は再循環される。この工程では、蒸発及び結晶化しない不純物が母液中に蓄積するため、母液の一部は、廃棄される必要がある可能性がある。結晶の洗浄は、その純度を改善するために必要であり得、エルトリエーションレッグ、遠心分離器、又は洗浄カラムを使用して実施され得る。結晶の洗浄は、水を用いて、又は母液よりも低い不純物レベルを有するナトリウム塩溶液、例えば、酢酸ナトリウム溶液を用いて実施され得る。その後、結晶を乾燥させてもよい。
【0080】
アルカリ金属塩の結晶化は、播種によって補助され得る。
【0081】
アルカリ金属塩の固化はまた、冷たい表面と接触することによって実施され得る。
【0082】
アルカリ金属塩溶液で溶解度が低い不純物の場合、精製工程が必要とされる可能性がある。例えば、硫酸ナトリウムは、Na2SO4.10aqとして冷却及び沈殿することによって溶液から沈殿し得る。アルカリ金属塩が酢酸塩である場合、Na2SO4.10aqは、任意選択的に、アルカリ金属酢酸塩結晶が形成される前に、酢酸の存在下で沈殿し得る。
【0083】
アルカリ金属塩よりも水溶性が高い不純物の場合、結晶化及び固体/液体分離の後、母液の一部が任意選択的に除去されて、不純物の出口を提供することができる。
【0084】
本明細書に開示される方法によって生成されるアルカリ金属塩は、別の用途で使用され得る。例えば、工程c1)又はc2)又はc)又は工程d)で得られた酢酸カリウムは、除氷用途で使用され得る。加えて、工程c1)又はc2)又はc)又は工程d)で得られた酢酸ナトリウムは、硫酸(廃液)流を中和するために、カルシウム塩を除去するために、アニリン染料を使用している間のフォトレジストとして、クロムなめしにおける酸洗剤として、クロロプレンの加硫を妨ぐために、使い捨て綿パッドの綿の加工において、食品において、飼料において、加熱パッドにおいて、コンクリートシーリングにおいて、洗浄剤において、又は革なめしにおいて使用され得る。
【0085】
本明細書に開示される方法によって生成されるアルカリ金属塩の量を更に増加させるために、アルカリ金属水酸化物が、工程c1)又はc2)又はc)の前に、一相又は多相の水性混合物に、任意の遊離酸の少なくとも一部、好ましくは全てを対応するアルカリ金属塩に変換する量で添加され得る。加えて又はあるいは、アルカリ金属水酸化物は、工程c1)又はc2)又はc)の後に、アルカリ金属塩を含む第2の流れに、流れ内の任意の過剰な酸の少なくとも一部、好ましくは全てを中和するのに十分な量で添加され得る。好ましくは、アルカリ金属水酸化物は、アルカリ金属カルボン酸塩がカルボン酸ナトリウムである場合、水酸化ナトリウムであり、アルカリ金属カルボン酸塩がカルボン酸カリウムである場合、水酸化カリウムである。
【0086】
本発明の特定の実施形態は、酢酸ナトリウムの共生成を用いて、水性副流からイソ酪酸を単離するための方法に関し、方法は、
a)少なくとも0.1重量%、例えば、3重量%~65重量%、又は25重量%~45重量%、又は25重量%~45重量%のイソ酪酸ナトリウムを含む水性副流を提供する工程であって、イソ酪酸ナトリウムが、流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b)酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンを、0.5:1~10:1(又は1:1~5:1又は1:1~3:1)の添加される酢酸対水性副流中のイソ酪酸ナトリウムのモル比で、水性副流に添加し、それによって、イソ酪酸及び酢酸ナトリウムを含む水性単相混合物を提供する工程と、
c)好ましくは、(i)水性単相混合物を熱的に分離、好ましくは蒸留して、水性混合物からイソ酪酸を分離すること、又は(ii)有機溶媒を単相水性混合物に添加して、水性混合物からイソ酪酸を抽出することによって、水性単相性混合物からイソ酪酸を分離する工程、より好ましくは、水性混合物を蒸留して、水性混合物からイソ酪酸を分離することによって、水性単相混合物からイソ酪酸を分離し、それによって、イソ酪酸を含む第1の流れ及び酢酸ナトリウムを含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、第2の流れから水を除去することによって、酢酸ナトリウムを含む第2の流れを濃縮する工程と、を含み、
任意選択的に、水性副流は、有機ペルオキシド生成プロセスから生じ、
任意選択的に、工程c)で単離されたイソ酪酸の少なくとも一部を、有機ペルオキシド生成プロセスに再循環させる工程を更に含む。
【0087】
本発明の別の実施形態は、酢酸カリウムの共生成を用いて、水性副流からイソ酪酸を単離するための方法に関し、方法は、
a)少なくとも0.1重量%、例えば、3重量%~65重量%、又は25重量%~45重量%、又は25重量%~45重量%のイソ酪酸カリウムを含む水性副流を提供する工程であって、イソ酪酸カリウムが、流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b)酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンを、0.5:1~10:1(又は1:1~5:1又は1:1~3:1)の添加される酢酸対水性副流中のイソ酪酸カリウムのモル比で、水性副流に添加し、それによって、イソ酪酸及び酢酸カリウムを含む水性単相混合物を提供する工程と、
c)好ましくは、(i)水性単相混合物を熱的に分離、好ましくは蒸留して、水性混合物からイソ酪酸を分離すること、又は(ii)有機溶媒を単相水性混合物に添加して、水性混合物からイソ酪酸を抽出することによって、水性単相性混合物からイソ酪酸を分離する工程、より好ましくは、水性混合物を蒸留して、水性混合物からイソ酪酸を分離することによって、水性単相混合物からイソ酪酸を分離し、それによって、イソ酪酸を含む第1の流れ及び酢酸カリウムを含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、第2の流れから水を除去することによって、酢酸カリウムを含む第2の流れを濃縮する工程と、を含み、
任意選択的に、水性副流は、有機ペルオキシド生成プロセスから生じ、
任意選択的に、工程c)で単離されたイソ酪酸の少なくとも一部を、有機ペルオキシド生成プロセスに再循環させる工程を更に含む。
【0088】
本発明の別の特定の実施形態は、水性副流から酢酸ナトリウムを単離するための方法に関し、方法は、
a)少なくとも0.1重量%、例えば、3重量%~65重量%、又は25重量%~45重量%、又は25重量%~45重量%のカルボン酸ナトリウム(例えば、イソ酪酸ナトリウム)を含む水性副流を提供する工程であって、カルボン酸ナトリウムが、流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b)酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンを、0.5:1~10:1(又は1:1~5:1又は1:1~3:1)の添加される酢酸対水性副流中のカルボン酸ナトリウムのモル比で、水性副流に添加し、それによって、カルボン酸(例えば、イソ酪酸)及び酢酸ナトリウムを含む水性単相混合物を提供する工程と、
c)好ましくは、(i)水性単相混合物を熱的に分離、好ましくは蒸留して、水性混合物からカルボン酸を分離すること、又は(ii)有機溶媒を単相水性混合物に添加して、水性混合物からカルボン酸を抽出することによって、水性単相性混合物からカルボン酸を分離する工程、より好ましくは、水性混合物を蒸留して、水性混合物からカルボン酸を分離することによって、水性単相混合物からカルボン酸を分離し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及び酢酸ナトリウムを含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、第2の流れから水を除去することによって、酢酸ナトリウムを含む第2の流れを濃縮する工程と、を含み、
任意選択的に、水性副流は、有機ペルオキシド生成プロセスから生じ、
任意選択的に、工程c)で単離されたカルボン酸の少なくとも一部を、有機ペルオキシド生成プロセスに再循環させる工程を更に含む。
【0089】
本発明の別の特定の実施形態は、水性副流から酢酸カリウムを単離するための方法に関し、方法は、
a)少なくとも0.1重量%、例えば、3重量%~65重量%、又は25重量%~45重量%、又は25重量%~45重量%のカルボン酸カリウム(例えば、イソ酪酸カリウム)を含む水性副流を提供する工程であって、カルボン酸カリウムが、流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b)酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンを、0.5:1~10:1(又は1:1~5:1又は1:1~3:1)の添加される酢酸対水性副流中のカルボン酸カリウムのモル比で、水性副流に添加し、それによって、カルボン酸(例えば、イソ酪酸)及び酢酸カリウムを含む水性単相混合物を提供する工程と、
c)好ましくは、(i)水性単相混合物を熱的に分離、好ましくは蒸留して、水性混合物からカルボン酸を分離すること、又は(ii)有機溶媒を単相水性混合物に添加して、水性混合物からカルボン酸を抽出することによって、水性単相性混合物からカルボン酸を分離する工程、より好ましくは、水性混合物を蒸留して、水性混合物からカルボン酸を分離することによって、水性単相混合物からカルボン酸を分離し、それによって、カルボン酸を含む第1の流れ及び酢酸カリウムを含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、第2の流れから水を除去することによって、酢酸カリウムを含む第2の流れを濃縮する工程と、を含み、
任意選択的に、水性副流は、有機ペルオキシド生成プロセスから生じ、
任意選択的に、工程c)で単離されたカルボン酸の少なくとも一部を、有機ペルオキシド生成プロセスに再循環させる工程を更に含む。
【実施例】
【0090】
実施例1:水性副流からのイソ酪酸及び酢酸ナトリウム-3aqの単離
第1の工程では、冷却/加熱マントル、ピッチブレードインペラ、及び温度計を備えた2リットルのガラス反応器を以下で充填した:25℃の温度を有する25重量%のイソ酪酸ナトリウム(2.27モル)を含有する1000gの水性副流、25℃の温度を有する260gの酢酸(4.33モル)、及び15℃の温度を有する497gの再循環濾液(この場合、固体酢酸ナトリウム湿潤生成物の結晶化及び濾過後に得られた酢酸ナトリウム溶液)。添加される酢酸対水性副流中のイソ酪酸ナトリウムのモル比は、1.9:1であった。得られた反応混合物は、4.5~5.5のpHを有し、20~30℃で保持された。
【0091】
第2の工程では、反応混合物を104℃の温度まで加熱し、水中601gのイソ酪酸(IBA)溶液を、精留カラム(40センチメートルのVigreux)を介して蒸留した。温度を116℃まで上昇させた。
【0092】
IBA濃度が低くなると、反応混合物を第3の工程で120℃の温度まで加熱し、234gの水を蒸留した。
【0093】
第4の工程では、182gの50重量%のNaOH溶液を反応混合物に添加して、6~8のpHを得て、混合物を45℃まで冷却した。
【0094】
第5の工程では、反応混合物を、45℃から15℃までゆっくりと冷却し、5mgの酢酸ナトリウム結晶を、35℃での結晶化のための種として反応混合物に添加した。これにより、大きな酢酸ナトリウム結晶が形成された。
【0095】
第6の工程では、649gの酢酸ナトリウム結晶を、真空吸引を加えるG3ガラスフィルタを介して反応混合物から濾過し、20℃の空気、50%の相対湿度で乾燥させ、酢酸ナトリウム-3aqの結晶を得た。得られた濾液のうち、5gを廃棄物として処分し、450gを第1の工程に再循環させた。
【0096】
第7の工程では、水中のIBA溶液を含有する蒸留物を2℃まで冷却し、IBA-76%w/w及びIBA-18%w/wをそれぞれ含有する2つの層に分離した。IBA-76%を真空下で80℃において蒸留して、106gの乾燥IBA及び49gのIBA共沸混合物、IBA-28%を得た。IBA-18%を真空下で80℃において蒸留して、148gの純水及び297gのIBA共沸混合物、IBA-28%w/wを得た。IBA-28%流を、2℃まで冷却する工程(すなわち、工程7)に再循環させた。
【0097】
工程3(蒸留物)及び工程7(底部)から得られた水を組み合わせて、ペルオキシド生成プロセスに再循環させた。過剰な水もまた、ペルオキシド最終生成物のエマルジョンを作製するために(例えば、メタノール又はエタノールと共に)使用され得る。
【0098】
工程7で得られた乾燥IBAは、ある程度の酢酸(約1%w/w)を含有することがわかった。これは、有機ペルオキシド生成プロセスにおける酸無水物生成工程などの酸無水物生成工程(酢酸が形成される)にIBAを再循環させることにとって問題ではない。しかしながら、代替的な商業生産については、より多くのトレイ及び還流を有する精留カラムは、非常に低い酢酸含有量をもたらす。
【0099】
実施例2:水性副流からのイソ酪酸及び酢酸カリウム溶液の分離
第1の工程では、冷却/加熱マントル、ピッチブレードインペラ、及び温度計を備えた2リットルのガラス反応器を以下で充填した:25℃の温度を有する29重量%のイソ酪酸カリウム(2.30モル)を含有する1000gの水性副流、及び25℃の温度を有する157gの酢酸(2.62モル)。添加される酢酸対水性副流中のイソ酪酸ナトリウムのモル比は、1.14:1(約1:1)であった。得られた反応混合物は、5.0~5.5のpHを有し、20~30℃で保持された。
【0100】
第2の工程では、反応混合物を102℃の温度まで加熱し、水中629gのイソ酪酸(IBA)溶液を、精留カラム(40センチメートルのVigreux)を介して蒸留した。温度を116℃まで上昇させた。
【0101】
第3の工程では、IBA濃度が低くなると、36.1gの50% KOH溶液を反応混合物に添加して、6~8のpHを得た。
【0102】
第4の工程では、反応混合物を再び加熱し、189gの水を蒸留した。(ここで、第3及び第4の工程は、逆の順序でも実施され得る)。
【0103】
得られた溶液を室温まで冷却した。0.1%w/wのイソ酪酸ナトリウムを含有する514gの酢酸カリウム50%w/w溶液を得た。(より少量のイソ酪酸ナトリウムの場合、より効果的な蒸留カラム/還流が使用され得る。)
【0104】
蒸留物流を含有するIBAを実施例1のように処理し、第4の流れの水を再循環させた。
【0105】
本実施例は、わずか14モル%過剰の酢酸が、イソ酪酸を除去することができるのに十分であることを示す。
【0106】
実施例3:水性副流からの吉草酸及び酢酸ナトリウム溶液の分離
第1の工程では、16.8gの酢酸(0.28mol)を、29.3重量%の吉草酸ナトリウム(0.24mol)を含み、9.5のpH及び20℃の温度を有する、ペルオキシドプロセスから得られた103.5gの水性副流に添加した。得られた混合物は、5.1のpH(Toledo Inlab pH電極を有するKnick pHメーター)で均質(すなわち、単相)であった。
【0107】
第2の工程では、40gのn-ヘプタンを均質混合物に添加し、混合物を20℃で激しく混合した。次いで、得られた混合物をn-ヘプタン層及び水層に分離し、水層を40gのn-ヘプタンで再び抽出した。
【0108】
第3の工程では、72℃のリボイラー温度で415mbarで開始し、82℃のリボイラー温度で20mbarまで増加させて、組み合わせたn-ヘプタン層を蒸留して、真空下で揮発性構成成分を除去した。23.2gの吉草酸(0.22mol)を99重量%超の含有量で得た。蒸留物は2相であり、そのうち下の水相は廃棄され、上の有機相は主に、n-ヘプタン溶媒であり、上記の抽出工程(すなわち、第2の工程)に再利用され得る。
【0109】
第4の工程では、9.6gのNaOH-25%を、抽出工程後に93.5gの水層に添加し、これは5.7のpHを有した。得られた水性混合物は、7.2のpHを有した。次いで、105mbarでRotavapor中の揮発性物質及び水を63℃まで蒸発させることによって、水性混合物を濃縮し、27.5%の酢酸ナトリウム含有量及び3.3%の吉草酸ナトリウム含有量を有する74.6gの水性流を得た。
【0110】
水性流中の吉草酸ナトリウム含有量は、吉草酸ナトリウムの酸性化工程(すなわち、第1の工程)でより過剰な酢酸を適用することによって、並びに/又は抽出工程(すなわち、第2の工程)及び/若しくはより多くの抽出工程/多段階向流抽出でより大量のn-ヘプタンを使用することによって低下し得る。
【0111】
実施例4:水性副流から吉草酸及び硫酸ナトリウム-10aqを単離するための方法
第1の工程では、13.5gの硫酸(0.13mol)を、28.8重量%の吉草酸ナトリウム(0.24mol)を含み、9.5のpH(Toledo Inlab pH電極を有するKnick pHメーター)及び20℃の温度を有する、ペルオキシドプロセスから得られた103.5gの水性副流に添加した。得られた混合物は、2のpHを有する二相混合物であった。
【0112】
第2の工程では、二相混合物を、精留カラムを用いて大気圧で蒸留して、水との混合物として吉草酸を除去した。凝縮物の水層を蒸留フラスコに戻した。有機層を含有する27.0gの吉草酸(86.5%の吉草酸、0.23mol)及び38.2gの水層(3.3%の吉草酸、0.01mol)を収集したとき、蒸留を停止した。
【0113】
蒸留の残留物は、1未満のpHを有する51.8gの硫酸ナトリウム溶液であった。残留物に、5.8gの水酸化ナトリウム溶液(16%、0.023mol)を添加して、溶液をpH7.9(Toledo Inlab pH電極を有するKnick pHメーター)に中和した。
【0114】
0℃まで冷却すると、固体(硫酸ナトリウム10aq)が沈殿し、39.9gの固体が濾過(G3ガラスフィルタ及び真空)によって回収された。17.0gの液体濾液を回収した(濾液は、0,1%未満の吉草酸を含有し、低い吉草酸臭を有した)。
【0115】
実施例5:水性副流から吉草酸及びプロピオン酸ナトリウム溶液を単離するための方法
第1の工程では、20.4gのプロピオン酸物(0.156mol)を、28.8重量%の吉草酸ナトリウム(0.24mol)を含み、9.5のpH(Toledo Inlab pH電極を有するKnick pHメーター)及び20℃の温度を有する、ペルオキシドプロセスから得られた103.5gの水性副流に添加した。加熱すると、混合物は透明/均質になった。
【0116】
第2の工程では、吉草酸を、精留カラムを用いて大気圧で蒸留して、吉草酸を水及びプロピオン酸との混合物として除去した。凝縮物を氷中で冷却し、形成された水層を蒸留フラスコに戻した。有機層が分離されなくなると、蒸留を停止した。24.2gの有機物(67.6%の吉草酸、0.16mol)を、23.9gの蒸留物の水層(4.2%の吉草酸、0.01mol)のように得た。
【0117】
蒸留の残留物は、部分的に遊離酸及びナトリウム塩として、吉草酸及びプロピオン酸を含有する74.6gの均質溶液であった。残留物は、10%の吉草酸(遊離酸+ナトリウム塩の合計、0.073mol)、及び26%のプロピオン酸(遊離酸+ナトリウム塩の合計、0.26mol)(H-NMRによって決定された量)を含有した。
【0118】
実施例5は、最適化されていない一連の反応条件に基づいており、本方法が無水物と作用することを実証する目的で含まれていることが理解されるべきである。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
アルカリ金属塩の共生成を用いて、水性副流からカルボン酸を単離するための方法であって、
a)少なくとも0.1重量%のアルカリ金属カルボン酸塩を含む水性副流を提供する工程であって、前記アルカリ金属カルボン酸塩が、前記流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b)酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩を前記水性副流に添加し、それによって、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物を提供する工程であって、前記水性混合物が、水性単相混合物又は水性多相混合物である、工程と、
c1)前記単相又は多相の水性混合物を熱的に分離、好ましくは蒸留して、前記水性混合物から前記カルボン酸を分離し、それによって、前記カルボン酸を含む第1の流れ及び前記アルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程、又は
c2)有機溶媒を前記単相水性混合物に添加して、前記水性混合物から前記カルボン酸を抽出し、それによって、前記カルボン酸を含む第1の流れ及び前記アルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、前記第2の流れから水を除去することによって、前記アルカリ金属塩を含む前記第2の流れを濃縮する工程と、を含む、方法。
項2.
水性副流からアルカリ金属塩を単離するための方法であって、
a)少なくとも0.1重量%のアルカリ金属カルボン酸塩を含む水性副流を提供する工程であって、前記アルカリ金属カルボン酸塩が、前記流れ内で溶解又は均質に混合される、工程と、
b1)酸、又は無水物、ケテン若しくは酸塩を前記水性副流に添加し、それによって、カルボン酸及びアルカリ金属塩を含む水性混合物を提供する工程であって、前記水性混合物が、水性単相混合物である、工程と、
c)前記水性単相混合物から前記カルボン酸を分離し、それによって、前記カルボン酸を含む第1の流れ及び前記アルカリ金属塩を含む第2の流れを提供する工程と、
d)任意選択的に、前記第2の流れから水を除去することによって、前記アルカリ金属塩を含む前記第2の流れを濃縮する工程と、を含む、方法。
項3.
前記カルボン酸が、イソ酪酸、n-酪酸、プロピオン酸、ピバル酸、ネオデカン酸、ネオヘプタン酸、イソノナン酸、2-メチル酪酸、シクロヘキシルカルボン酸、ラウリン酸、イソ吉草酸、n-吉草酸、n-ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、又はそれらの混合物から選択される、項1又は2に記載の方法。
項4.
前記アルカリ金属カルボン酸塩が、前記カルボン酸のカルボン酸ナトリウム又はカリウム塩である、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
項5.
前記水性副流が、有機ペルオキシド生成プロセス、好ましくはジアシルペルオキシド又はペルオキシエステル生成プロセスから生じ、任意選択的に、前記水性副流中に存在する残留ペルオキシドが、(i)工程b)若しくは工程b1)の前若しくは後に抽出すること、及び/又は(ii)工程b)若しくは工程b1)の前若しくは後に前記水性副流に還元剤、熱、若しくは照射を加えることによって除去される、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
項6.
工程a)の前記水性副流が、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、更により好ましくは少なくとも20重量%、及び最も好ましくは少なくとも25重量%の前記アルカリ金属カルボン酸塩を含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
項7.
工程b)又は工程b1)では、酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンが、前記水性副流に添加される、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
項8.
前記酢酸、酢酸無水物、及び/又はエテノンが、0.5:1~10:1、好ましくは0.9:1~5:1、より好ましくは1:1~5:1、より好ましくは1:1~3:1、及び最も好ましくは1.1:1~3:1の添加される酢酸対水性副流中のアルカリ金属カルボン酸塩のモル比で、前記水性副流に添加される、項7に記載の方法。
項9.
工程b)又は工程b1)での前記添加が、無水物生成プロセスの副生成物として得られ、任意選択的に、単離される前記カルボン酸を含有する酢酸を使用して実施される、項7又は8に記載の方法。
項10.
前記アルカリ金属塩が、アルカリ金属酢酸塩である、項7~9のいずれか一項に記載の方法。
項11.
工程c1)又はc2)又はc)又はd)で提供される前記アルカリ金属酢酸塩が、酢酸カリウム50%w/w、酢酸カリウム結晶、酢酸ナトリウム25%w/w、酢酸ナトリウム30%w/w、酢酸ナトリウム結晶、及び酢酸ナトリウム-3aq結晶から選択される、項10に記載の方法。
項12.
アルカリ金属水酸化物が、(i)工程b)又は工程b1)で提供される前記水性混合物に、及び/あるいは(ii)工程c1)若しくはc2)又は工程cで提供される前記第2の流れに添加され、前記アルカリ金属水酸化物が、前記混合物及び/又は流れ内の任意の過剰な酸の少なくとも一部を中和するのに充分な量で添加される、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
項13.
熱分離、好ましくは蒸留、乾燥塩、又は膜プロセスによって、前記第1の流れの前記カルボン酸を精製することを更に含む、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
項14.
前記第2の流れの前記アルカリ金属塩を、沈殿及び/又は洗浄によって精製することを更に含む、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
項15.
以下の工程のうちの1つ以上を更に含む、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)で分離された前記カルボン酸の少なくとも一部を有機ペルオキシド生成プロセスに再循環させる工程、
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)で分離された前記カルボン酸を使用して、エステルを作製する工程、
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)で単離された前記カルボン酸を動物飼料中で使用する工程、
-工程c1)若しくはc2)若しくはc)若しくはd)で得られた前記アルカリ金属塩を、除氷用途で使用する工程であって、前記アルカリ金属塩が、酢酸カリウムである、工程、及び/又は
-硫酸(廃液)流を中和するために、カルシウム塩を除去するために、アニリン染料を使用している間のフォトレジストとして、クロムなめしにおける酸洗剤として、クロロプレンの加硫を妨ぐために、使い捨て綿パッドの綿の加工において、食品において、飼料において、加熱パッドにおいて、コンクリートシーリングにおいて、洗浄剤において、又は革なめしにおいて、工程c1)又はc2)又はc)又はd)で得られた前記酢酸ナトリウムを使用する工程であって、前記アルカリ金属塩が、酢酸ナトリウムである、工程。