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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】橋、および橋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 12/00 20060101AFI20240919BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E01D12/00
E01D21/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024060288
(22)【出願日】2024-04-03
【審査請求日】2024-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】江島 嘉祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智之
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 裕
(72)【発明者】
【氏名】山元 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】城戸 大輝
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅利
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108725(JP,A)
【文献】特開2004-239016(JP,A)
【文献】特開2024-039848(JP,A)
【文献】特開2003-55906(JP,A)
【文献】特開2007-077630(JP,A)
【文献】特開平8-109614(JP,A)
【文献】特開2015-025330(JP,A)
【文献】特開2022-140705(JP,A)
【文献】特開平9-273117(JP,A)
【文献】特開2019-148141(JP,A)
【文献】特開2018-091063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、および前記第1方向に交差する第2方向に延びる橋であって、
前記第1方向に延びる橋桁と、
前記橋桁に載せられるとともに前記第1方向に沿って並ぶ複数の床版ブロックと、
複数の前記床版ブロックを互いに連結する連結部材(床版を緊張する緊張材を除く)と、
を備え、
複数の前記床版ブロックは、前記第1方向に貫通する貫通孔を有し、
前記連結部材は、複数の前記床版ブロックの前記貫通孔に通された状態で複数の前記床版ブロックを互いに連結している、
橋。
【請求項2】
前記橋桁は、複数の中空管であり、
複数の前記中空管のそれぞれは、ケーブルおよび配管の少なくともいずれかを前記第1方向に通すことが可能な挿通空間を有する、
請求項1に記載の橋。
【請求項3】
前記第1方向に沿って並ぶ2つの前記床版ブロックの間に入り込むずれ止め部材を備え、
前記ずれ止め部材は、2つの前記床版ブロックの間に入り込んだ状態で複数の前記床版ブロックの前記第1方向のずれを抑制する、
請求項1または請求項2に記載の橋。
【請求項4】
前記橋桁は、複数の中空管であり、
複数の前記床版ブロックの下方において複数の前記中空管を互いに接続する接続部材を備える、
請求項1または請求項2に記載の橋。
【請求項5】
複数の前記床版ブロックを含むとともに、前記第1方向に沿って並ぶ複数のブロック群と、
複数の前記連結部材とを備え、
複数の前記連結部材のそれぞれは、1つの前記ブロック群を構成する複数の前記床版ブロックの前記貫通孔に通された状態で前記ブロック群の複数の前記床版ブロックを互いに連結している、
請求項1または請求項2に記載の橋。
【請求項6】
第1方向、および前記第1方向に交差する第2方向に延びる橋の製造方法であって、
前記第1方向に貫通する貫通孔を有する複数の床版ブロックを3Dプリンタによって作製する工程と、
前記第1方向に延びる橋桁の上に複数の前記床版ブロックを前記第1方向に沿うように並べる工程と、
複数の前記床版ブロックの前記貫通孔に連結部材(床版を緊張する緊張材を除く)を通して複数の前記床版ブロックを互いに連結する工程と、
を備える、
橋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、橋、および橋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、仮設架橋が記載されている。仮設架橋は、水平方向に沿って並ぶ一対の土砂崩れ防止部材の間に形成された開口部を架け渡すために構築される。一対の土砂崩れ防止部材の間には突っ張り梁が設けられている。仮設架橋は、直列的に配置された複数のブロックと、複数のブロックの両端のそれぞれに配置された一対の脚部ブロックとを有する。
【0003】
水平方向から見た場合において、一対の脚部ブロック、および複数のブロックは、アーチ状を呈する。一対の脚部ブロック、および複数のブロックのそれぞれの上面は、曲面状とされている。ブロックは、木材、樹脂、繊維強化した複合材、または軽量金属によって構成されている。
【0004】
ブロックと脚部ブロックの下方には連結手段としてのナイロンベルトが渡されている。ナイロンベルトでは、仮設架橋を通行する車両の重量に十分耐えられる引張強さを有するように素材および断面積が決められる。ブロックは、埋設インサートとボルト等の固定金具によってナイロンベルトに固定されている。ナイロンベルトは、複数のブロックの下面全体に架け渡されている。各ブロックの下面の隣接ブロックに近い部分には、複数のインサートが埋設されている。ナイロンベルトは、インサート、ボルトナットおよび座金を介してブロックに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-55906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した仮設架橋では、床版ブロックの下方に連結手段としてのナイロンベルトが渡されており、ナイロンベルトによって複数の床版ブロックが互いに連結されている。ナイロンベルトの断面積は、仮設架橋を通行する車両の重量に十分に耐えられる引張強さを有するように決められる。
【0007】
上記のナイロンベルトのように連結部材が床版ブロックの外面に配置される場合、連結部材の厚さによっては橋そのものが厚くなってしまうことがあり、橋のデザイン性において改善の余地がある。さらに、橋には、インフラケーブルおよびインフラ配管等のケーブルおよび配管が渡されることがあり、橋が厚くてさらにケーブルおよび配管が渡されると、橋のデザイン性が低下する懸念がある。したがって、複数の床版ブロックを有する橋では、橋を薄くしてコンパクトにできることが求められる。
【0008】
本開示は、薄くしてコンパクトにすることができる橋、および橋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本開示に係る橋は、第1方向、および第1方向に交差する第2方向に延びている。橋は、第1方向に延びる橋桁と、橋桁に載せられるとともに第1方向に沿って並ぶ複数の床版ブロックと、複数の床版ブロックを互いに連結する連結部材と、を備える。複数の床版ブロックは、第1方向に貫通する貫通孔を有する。連結部材は、複数の床版ブロックの貫通孔に通された状態で複数の床版ブロックを互いに連結している。
【0010】
この橋は、第1方向に延びる橋桁と、第1方向に貫通する貫通孔を有する複数の床版ブロックと、橋桁の上方において複数の床版ブロックを互いに連結する連結部材とを有する。複数の床版ブロックは、橋桁に載せられた状態で第1方向に沿って並べられる。このとき、複数の床版ブロックの貫通孔が第1方向に貫通しており、第1方向に貫通する複数の貫通孔に連結部材を通すことが可能とされている。よって、複数の床版ブロックの貫通孔に連結部材を通し、複数の貫通孔に通された連結部材によって複数の床版ブロックを連結させることができる。したがって、床版ブロックの下面等、表面に連結部材を配置しなくて済むので、橋を薄くしてコンパクトにすることができる。さらに、複数の貫通孔に連結部材を通して複数の床版ブロックを連結できるので、連結部材を隠すことができる。したがって、橋のデザイン性を向上させることができる。
【0011】
(2)上記(1)において、橋桁は、複数の中空管であってもよい。複数の中空管のそれぞれは、ケーブルおよび配管の少なくともいずれかを第1方向に通すことが可能な挿通空間を有してもよい。この場合、橋桁として機能する中空管にケーブルおよび配管の少なくともいずれかを通すことができる。したがって、橋にインフラケーブルおよびインフラ配管を通す場合でも、インフラケーブルおよびインフラ配管を挿通空間の中に隠すことができる。よって、ケーブルおよび配管が露出して橋のデザイン性が低下することを防止できる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、橋は、第1方向に沿って並ぶ2つの床版ブロックの間に入り込むずれ止め部材を備えてもよい。ずれ止め部材は、2つの床版ブロックの間に入り込んだ状態で複数の床版ブロックの第1方向のずれを抑制してもよい。この場合、第1方向に沿って並ぶ2つの床版ブロックの間にずれ止め部材が入り込むことにより、床版ブロックのずれを防止できる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、橋桁は、複数の中空管であってもよく、橋は、複数の床版ブロックの下方において複数の中空管を互いに接続する接続部材を備えてもよい。この場合、複数の床版ブロックの下方に位置する複数の中空管が接続部材を介して互いに接続される。したがって、複数の中空管を互いに接続して複数の中空管を強固に保持することができる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、橋は、複数の床版ブロックを含むとともに、第1方向に沿って並ぶ複数のブロック群と、複数の連結部材とを備えてもよい。複数の連結部材のそれぞれは、1つのブロック群を構成する複数の床版ブロックの貫通孔に通された状態でブロック群の複数の床版ブロックを互いに連結してもよい。この場合、1つの連結部材がブロック群の貫通孔に通された状態で複数の床版ブロックが互いに連結される。したがって、複数の床版ブロックを強固にかつ効率よく連結できる。
【0015】
(6)本開示に係る橋の製造方法は、第1方向、および第1方向に交差する第2方向に延びる橋の製造方法である。橋の製造方法は、第1方向に貫通する貫通孔を有する複数の床版ブロックを3Dプリンタによって作製する工程と、第1方向に延びる橋桁の上に複数の床版ブロックを第1方向に沿うように並べる工程と、複数の床版ブロックの貫通孔に連結部材を通して複数の床版ブロックを互いに連結する工程と、を備える。
【0016】
この橋の製造方法では、複数の床版ブロックのそれぞれが3Dプリンタによって作製される。よって、複雑な形状を有する複数の床版ブロックを3Dプリンタによって容易に作製することができるので、複数の床版ブロックを連結してデザイン性が良好な橋を効率よく製造できる。複数の床版ブロックの貫通孔が第1方向に貫通しており、第1方向に貫通する複数の貫通孔に連結部材が通される。したがって、複数の床版ブロックの貫通孔に連結部材を通し、複数の貫通孔に通された連結部材によって複数の床版ブロックを連結させることができる。その結果、床版ブロックの下面等、表面に連結部材を配置しなくて済むので、橋を薄くしてコンパクトにすることができる。複数の貫通孔に連結部材を通して複数の床版ブロックを連結できるので、連結部材を隠すことができる。したがって、橋のデザイン性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、橋を薄くしてコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る橋が構築される場所の例を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る橋を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る橋を示す平面図である。
図4図4は、実施形態に係る橋を示す断面図である。
図5図5は、図4のA-A線断面図である。
図6図6は、図4のB-B線断面図である。
図7図7は、図4のC-C線断面図である。
図8図8は、図7の橋の床版ブロックと中空管を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る橋、および橋の製造方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、実施形態に係る橋1が構築される場所の例を示す図である。図1に示されるように、橋1は、例えば、川Rに構築される。一例として、川Rは、小川である。橋1は、例えば、森林Fに設けられる。森林Fには、複数の建物Sが設けられている。建物Sは、例えば、川Rから見て川幅方向である第1方向D1の一方側および他方側のそれぞれに設けられている。
【0021】
川Rに架けられた橋1を通ることによって、川Rの第1方向D1の一方側から川Rの第1方向D1の他方側に移動することができる。さらに、橋1を介して、川Rの第1方向D1の一方側から川Rの第1方向D1の他方側にインフラが通されている。インフラは、例えば、電力ケーブルおよび給排水管である。
【0022】
橋1は、3Dプリンタによって製造される。橋1の床版ブロック10は、コンクリートまたはモルタルによって構成されている。橋1を構成するコンクリート(モルタル)は、セメントに加えられた特殊混和剤、石炭灰、混和材、および産業副産物を含む。特殊混和剤は、二酸化炭素と接触すると炭酸化反応によって硬化する。特殊混和剤は、二酸化炭素吸収材である。これにより、橋1の床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)は硬化して緻密化するので、橋1の床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)の強度を高めることができる。
【0023】
橋1の床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)の特殊混和剤は、例えば、炭酸イオンと反応するγ-CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケートγ相)によって構成されている。γ-CaO・SiO2が炭酸イオンと反応することによってコンクリート(モルタル)の組織が緻密化される。橋1の床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)の石炭灰は、例えば、石炭火力発電所から排出された石炭灰を含む。このように、橋1の床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)が特殊混和剤および石炭灰を含むことにより、製造過程で二酸化炭素(炭酸ガス)を吸収することで、結果的に二酸化炭素(炭酸ガス)の排出を低減して環境に配慮し、環境にやさしい橋1とすることができる。
【0024】
図2は、橋1を示す斜視図である。図3は、橋1を示す平面図である。例えば、橋1は、流線形状を呈する。流線形状のようなデザイン性に優れた橋1は、鉄骨造(S造)または鉄筋コンクリート造(RC造)によって製造することが困難となる場合がある。橋1の床版ブロック10が3Dプリンタによって製造される場合、滑らかな形状、および複雑な形状の橋1を容易に製造することが可能である。
【0025】
橋1の床版ブロック10は、鉄骨および鉄筋のいずれも内部に有しない。すなわち、橋1の床版ブロック10は無筋である。橋1は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる橋である。第2方向D2は、例えば、橋幅方向である。第2方向D2は、例えば、第1方向D1に直交しており、川Rが流れる方向と一致する。例えば、橋1の第1方向D1の長さは、橋1の第2方向D2の長さよりも長い。
【0026】
例えば、橋1の第1方向D1の両側には通路Pが設けられている。通路Pは、例えば、砂利敷きの上側部分に形成されている。通路Pは、一例として、橋1から第1方向D1の両側に延びる一対の第1通路P1を含む。例えば、通路Pは、一対の第1通路P1の一方から第1方向D1に交差する方向に延びる第2通路P2と、一対の第1通路P1の通路の他方から第1方向D1に対して斜めに曲がる第3通路P3とを含む。しかしながら、通路Pの構成は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0027】
橋1は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の床版ブロック10を有する。床版ブロック10は、例えば、前述したコンクリート(またはモルタル)によって構成されている。すなわち、床版ブロック10は、前述した特殊混和剤および石炭灰を含んでおり、二酸化炭素を吸収して硬化する性質を有する。例えば、複数の床版ブロック10の形状および大きさは互いに異なる。
【0028】
例えば、橋1は、複数の床版ブロック10が並べられて製造される。例えば、床版ブロック10の第2方向D2の長さは、500mm以上かつ600mm以下である。床版ブロック10の第1方向D1の長さは、例えば、100mmより長くかつ200mm以下である。床版ブロック10の第1方向D1の長さが100mmより長いことにより、乾燥収縮の影響で床版ブロック10にひび割れが生じることを防止できる。床版ブロック10の重量は、例えば、40kg以下である。この場合、床版ブロック10を人力で運べる程度の重さにでき、床版ブロック10を搬送するクレーン等を不要にできる。
【0029】
形状および大きさが互いに異なる複数の床版ブロック10が並べられることによって流線形状の橋1が形成される。例えば、床版ブロック10は、3Dプリンタによって作製される。この場合、複雑な形状を有する複数の床版ブロック10を高精度にかつ効率よく作製でき、複雑な形状の橋1を効率よく製造できる。本実施形態では、橋1が流線形状である例について説明する。しかしながら、3Dプリンタによって床版ブロック10が作製される場合、流線形状に限られず種々の形状の橋1を製造できる。
【0030】
橋1は、複数の床版ブロック10を含む複数のブロック群Gと、複数の床版ブロック10を互いに連結する複数の連結部材20とを有する。連結部材20は、例えば、第1方向D1に延びる線状を呈する。一例として、連結部材20は、ワイヤである。このワイヤは、例えば、金属製である。しかしながら、ワイヤの材料は、金属に限られず、例えば、樹脂であってもよく特に限定されない。
【0031】
複数のブロック群Gは、第1方向D1に沿って並んでいる。より具体的には、ブロック群Gは第1方向D1に沿って並ぶ5個または6個の床版ブロック10によって構成されており、7個のブロック群Gが第1方向D1に沿って並んでいる。一例として、第1方向D1に沿って36個の床版ブロック10が並べられている。例えば、ブロック群G同士は互いに連結されていない。第1方向D1に沿って並ぶ2つのブロック群Gの間には、隙間が形成されている。この隙間の幅(第1方向D1の長さ)は、例えば、3mm以上かつ8mm以下である。
【0032】
連結部材20は、例えば、1つのブロック群Gを構成する複数の床版ブロック10を互いに連結する。この場合、連結部材20は、第1方向D1に沿って並ぶ5個または6個の床版ブロック10を互いに連結する。複数の床版ブロック10は、第2方向D2に沿って並んでいる。
【0033】
例えば、複数のブロック群Gは、第2方向D2に沿って並んでいる。一例として、3個の床版ブロック10(ブロック群G)が第2方向D2に沿って並んでいる。この場合、第1方向D1に沿って並ぶ36個の床版ブロック10からなる3つの組が第2方向D2に沿って並んでいる。一例として、ブロック群Gの数は21(7×3)であり、床版ブロック10の数は108(36×3)である。しかしながら、ブロック群Gの数、および床版ブロック10の数は特に限定されない。
【0034】
例えば、複数の床版ブロック10は、橋1の第2方向D2の中央に位置する複数の中央ブロック10Aと、中央ブロック10Aから見て第2方向D2の両端側のそれぞれに位置する複数の端部ブロック10Bとを含む。このように、橋1は、第2方向D2に互いに分割された中央ブロック10Aおよび端部ブロック10Bを有する。これにより、床版ブロック10のさらなる軽量化に寄与する。第1方向D1に沿って並ぶ複数の中央ブロック10Aは、例えば、平坦状を呈する。また、第1方向D1に沿って並ぶ複数の中央ブロック10Aは、第1方向D1の中央に向かうにしたがって上方に盛り上がるように湾曲していてもよい。
【0035】
第1方向D1に沿って並ぶ複数の端部ブロック10Bは、第1方向D1の中央に向かうにしたがって上方に盛り上がっている。例えば、端部ブロック10Bの上方への突出量は、中央ブロック10Aの上方への突出量より大きい。これにより、橋1は、第2方向D2の両端のそれぞれが盛り上がった形状を有する。
【0036】
図4は、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3、ならびに第1方向D1に延びる平面に沿って切断した場合における橋1の断面図である。図4に示されるように、例えば、橋1は、地盤Bの内部における川Rの第1方向D1の両側のそれぞれに設けられた一対の地盤改良部2と、各地盤改良部2から上方に延びるとともに地表から上方に突出する一対の橋脚基礎3とを有する。
【0037】
地盤改良部2は、地盤改良体によって構成されている。地盤改良部2の下端は地盤Bの支持層にまで達している。すなわち、地盤改良部2の下部は地盤Bの支持層に入り込んでいる。橋脚基礎3は、地盤改良部2の上に設けられたコンクリート基礎である。橋脚基礎3は、例えば、RC造の独立基礎である。例えば、橋脚基礎3は、地盤改良部2の上部において水平方向に延びる基礎底版部3bと、基礎底版部3bから上方に突出する基礎柱部3cとを有する。基礎柱部3cは、地盤Bから上方に突出している。
【0038】
橋1は、例えば、各橋脚基礎3の上端に固定された一対の鋼材4と、一対の鋼材4を互いに接続する橋桁5とを有する。鋼材4は、一例として、H形鋼である。しかしながら、鋼材4の種類は特に限定されない。橋桁5は第1方向D1に延び、橋桁5には複数の床版ブロック10が載せられる。例えば、橋桁5には塗装が施されている。一例として、橋桁5は、こげ茶色系の色彩によって着色されている。この場合、橋1を周囲の自然環境になじませることができる。
【0039】
図5は、図4のA-A線断面図である。図6は、図4のB-B線断面図である。図4図5および図6に示されるように、橋桁5は、例えば、複数の中空管5Aである。中空管5Aの長手方向に直交する断面で切断した中空管5Aの断面は、例えば、円形状を呈する。
【0040】
一例として、中空管5Aは、中空鋼管である。すなわち、中空管5Aは、鋼材によって構成されている。例えば、中空管5Aは円形鋼管である。複数の中空管5Aの大きさ(一例として外径および内径)は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数の中空管5Aは、第2方向D2に沿って並んでいる。例えば、複数の中空管5Aの少なくともいずれかは、ケーブルCおよび配管Hの少なくともいずれかを通すことが可能な挿通空間5bを有する。
【0041】
例えば、ケーブルCはインフラケーブルであり、配管Hはインフラ配管である。一例として、ケーブルCは電力ケーブルであり、配管Hは給排水管、またはそれを挿通するための保護管である。さらに、ケーブルCは、LANケーブル、または光ケーブルであってもよい。配管Hは、ケーブルCが通されるエフレックス管であってもよい。例えば、中空管5Aは、橋1の第1方向D1の一端から他端まで延在している。
【0042】
中空管5Aは、その内部を挿通空間5bとすることから両端およびその途中をエンドプレートや補強プレートで塞ぐことができない。中空管5Aは、エンドプレートや補強プレートを有しない代わりに、それらを有する中空管よりも肉厚とされている。エンドプレートや補強プレートを有する中空管の厚さは6mm程度だが、中空管5Aの厚さは10mm以上(一例として12mm)とされている。
【0043】
中空管5AにケーブルCおよび配管Hの少なくともいずれかを通すことによって、川Rから見て一方側から他方側にインフラを通すことができる。さらに、中空管5Aの内部にケーブルCおよび配管Hが隠れることにより、美観性を良好にすることができる。橋桁5の下に配管Hが設けられる場合には、橋1が厚くなることが懸念される。しかしながら、本実施形態では、橋桁5が中空管5Aであり、中空管5Aの内部にケーブルCおよび配管Hが通されることにより、橋1が厚くなることを防止できる。
【0044】
なお、全ての配管Hが中空管5Aの内部に通されていなくてもよい。図5および図6の例では、複数の配管Hのうちの一部が中空管5Aの内部に通されている。より具体的には、橋1は第2方向D2に沿って並ぶ4本の中空管5Aを有し、8本の配管Hのうちの4本が中空管5Aの内部に通されている。この場合、複数の配管Hは中空管5Aの内部に通されていない。
【0045】
しかしながら、中空管5Aの内部に通されていない配管Hは、床版ブロック10の直下に位置する。例えば、中空管5Aの内部に通されていない配管Hは、第2方向D2に沿って並ぶ2つの中空管5Aの間に位置する。したがって、中空管5Aの内部に通されていない配管Hも橋1の外部からは見えにくくなっているので、美観性が損なわれることを防止できる。
【0046】
橋1は、複数の中空管5Aを互いに接続する接続部材6を備える。接続部材6は、例えば、橋1の構造材である。接続部材6は、例えば、振れ止めとして機能する。橋1は複数の接続部材6を有し、複数の接続部材6は第1方向D1に沿って並んでいる。例えば、接続部材6は、第1方向D1に沿って並ぶ一対のブロック群Gの間に設けられる。
【0047】
例えば、接続部材6は、鋼材によって構成されている。接続部材6は、中空管5Aの下側に位置する。接続部材6は、複数の床版ブロック10の下方に位置する。接続部材6は、複数の床版ブロック10の下方において第2方向D2に延在している。接続部材6の上に配管Hが位置する。よって、中空管5Aの内部に通されていない配管Hも、橋1の外部から見えにくくすることができる。
【0048】
例えば、接続部材6は、第2方向D2に延びる延在部6bと、延在部6bから上方に延びるとともに配管Hを覆う被覆部6cとを有する。一例として、接続部材6は、3つの延在部6bを有する。延在部6bは、2つの中空管5Aを互いに接続している。被覆部6cは、中空管5Aと同様、ケーブルCおよび配管Hの少なくともいずれかを通すことが可能な挿通空間6dを有する。例えば、第1方向D1に沿って見たときに、被覆部6cは逆U字状を呈する。
【0049】
床版ブロック10についてより詳細に説明する。複数の床版ブロック10は、第1方向D1に貫通する貫通孔11を有する。例えば、中央ブロック10Aおよび端部ブロック10Bのそれぞれが貫通孔11を有する。貫通孔11を有することにより、床版ブロック10を軽量化させることができる。
【0050】
例えば、貫通孔11は、連結部材20が挿通される挿通孔11bと、連結部材20が挿通されない非挿通孔11cとを含む。挿通孔11bおよび非挿通孔11cは、互いに連通していてもよいし、互いに別の空間であってもよい。なお、貫通孔11は、挿通孔11bおよび非挿通孔11cに分かれていなくてもよく、1つの孔であってもよい。
【0051】
貫通孔11には前述した連結部材20が通されている。連結部材20は、複数の床版ブロック10の貫通孔11に通された状態で複数の床版ブロック10を互いに連結している。例えば、複数の床版ブロック10の貫通孔11に通された連結部材20の両端のそれぞれは、接続部材6に固定されている。
【0052】
一例として、連結部材20は溶接によって接続部材6に固定されている。また、接続部材6にフック等の引っ掛け部が固定されており、この引っ掛け部に連結部材20が引っ掛けられていてもよい。このように、連結部材20が複数の貫通孔11に通された状態で連結部材20の端部が接続部材6に取り付けられていることにより、複数の床版ブロック10が互いに連結されている。
【0053】
連結部材20は、1つのブロック群Gを構成する複数の床版ブロック10の貫通孔11に通された状態でブロック群Gの複数の床版ブロック10を互いに連結している。本実施形態では、連結部材20は、第1方向D1に沿って並ぶ5個または6個の床版ブロック10を互いに連結している。
【0054】
例えば、床版ブロック10の厚さT1は、床版ブロック10が二酸化炭素を吸収可能な床版ブロック10の表面からの距離T2の2倍である。この場合、床版ブロック10の内側(貫通孔11側)、および床版ブロック10の外側の双方から床版ブロック10の厚さ方向の全体で二酸化炭素を吸収できる。一例として、距離T2は30mmであり、厚さT1は60mmである。
【0055】
例えば、床版ブロック10は、丸みを帯びている。これは、床版ブロック10が3Dプリンタによって作製されたことに起因する。床版ブロック10が丸みを帯びていることにより、隣り合う床版ブロック10同士の上部にある隙間にテーパーがつき、それを利用して床版ブロック10の設置および交換を容易に行うことができる。
【0056】
例えば、床版ブロック10の表面には(微小な)凹凸が形成されている。これは、床版ブロック10が3Dプリンタによって作製されたことに起因する。したがって、床版ブロック10が塗装される場合、床版ブロック10の表面の凹凸によって色彩が均一にならないことがある。よって、本実施形態では、床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)に色粉が混ぜられている。この色粉は、コンクリート(モルタル)着色用顔料である。また、床版ブロック10の表面に凹凸が形成されていることにより、床版ブロック10に滑り止め効果を発揮させることができる。
【0057】
例えば、第2方向D2および第3方向D3に延びる平面で切断した場合における床版ブロック10の下面の形状は、中空管5Aの外周に沿った形状とされている。床版ブロック10は、例えば、下方から中空管5A(または被覆部6c)が入り込む凹部12を有する。この場合、橋1の厚さを低減させることができる。例えば、凹部12の曲率は、中空管5Aの曲率と同一である。
【0058】
中央ブロック10Aおよび端部ブロック10Bは、第2方向D2に沿って並んでいる。中央ブロック10Aは、一対の端部ブロック10Bの間に位置する。中央ブロック10Aは、例えば、端部ブロック10Bとは接合されていない。中央ブロック10Aと端部ブロック10Bとの間には、例えば、隙間が形成されている。この隙間の幅(第2方向D2の長さ)は、例えば、2mm以上かつ8mm以下である。
【0059】
中央ブロック10Aの形状と、端部ブロック10Bの形状とは互いに異なる。中央ブロック10Aは、平滑な上面13を有する。「平滑」とは、平坦状および湾曲状を含んでおり、鋭利な部分を有しない滑らかな形状を示している。橋1の第1方向D1の端部に位置する端部ブロック10B(図5に示される端部ブロック10B)は、平滑な上面13と、橋1の第2方向D2の端部となる湾曲部15とを有する。湾曲部15は、端部ブロック10Bの下側に形成された凹部12と上面13から橋1の第2方向D2の端部側に突出している。
【0060】
橋1の第1方向D1の中央部に位置する中央ブロック10Aの形状は、橋1の第1方向D1の端部に位置する中央ブロック10Aの形状と略同一である。これに対し、橋1の第1方向D1の中央部に位置する端部ブロック10Bの形状は、橋1の第1方向D1の端部に位置する端部ブロック10Bの形状とは異なる。
【0061】
第1方向D1の中央部に位置する端部ブロック10B(図6に示される端部ブロック10B)は、中央ブロック10Aの上面13に沿って延びる平滑面14cと、平滑面14cの中央ブロック10Aとは反対側から上方に延びる突出面14dとを含む上面14を有する。橋1の第1方向D1の中央に位置する端部ブロック10Bの突出面14dの高さは、橋1の第1方向D1の中央以外に位置する端部ブロック10Bの突出面14dの高さ以上である。突出面14dの高さの最大値は、一例として、200mmである。突出面14dは、橋1の第1方向D1の端部から橋1の第1方向D1の中央に向かうにしたがって徐々に高くなっている。これにより、橋1は流線形状を呈する。
【0062】
図7は、図4のC-C線断面図である。図4および図7に示されるように、橋1は、複数の床版ブロック10の第1方向D1のずれを抑制するずれ止め部材17を有する。ずれ止め部材17は、第1方向D1に沿って並ぶ2つの床版ブロック10の間に入り込む。ずれ止め部材17は、例えば、複数の中空管5Aを互いに接続する。
【0063】
ずれ止め部材17は、例えば、振れ止めとして機能する。例えば、橋1は複数のずれ止め部材17を有し、複数のずれ止め部材17は第1方向D1に沿って並んでいる。例えば、ずれ止め部材17は、鋼材によって構成されている。ずれ止め部材17は、中空管5Aの上側に位置する。ずれ止め部材17は、複数の床版ブロック10の下側に位置する。
【0064】
ずれ止め部材17は、複数の床版ブロック10の下側において第2方向D2に延在している。ずれ止め部材17は、例えば、平坦面を有するフラットバーである。ずれ止め部材17は、橋1の第2方向D2の一端部に位置する中空管5Aから橋1の第2方向D2の他端部に位置する中空管5Aまで延びている。例えば、ずれ止め部材17は、複数の中空管5Aのそれぞれに固定されている。この場合、ずれ止め部材17は複数の中空管5Aを互いに接続する接続部材としても機能する。
【0065】
図8は、図7のずれ止め部材17および中空管5Aを拡大した断面図である。図7および図8に示されるように、橋1は、例えば、ずれ止め部材17を橋桁5(中空管5A)に固定する固定部材19を有する。例えば、固定部材19は、ずれ止め部材17および橋桁5のそれぞれに溶接によって固定されている。
【0066】
固定部材19は、例えば、鋼製のフラットバーである。固定部材19は、ずれ止め部材17に固定される第1固定部19bと、橋桁5(中空管5A)に固定される第2固定部19cとを有する。例えば、第1固定部19bは固定部材19の上端に位置しており、第2固定部19cは固定部材19の下端に位置する。一例として、固定部材19は、第2方向D2に沿って並ぶ一対の第2固定部19cと、一対の第2固定部19cの間に位置する第1固定部19bとを有する。
【0067】
橋1は、例えば、ゴム部材18を有する。ゴム部材18は、一例として、高剛性ゴムである。ゴム部材18は、床版ブロック10と橋桁5(中空管5A)との間に介在している。これにより、地震等の発生時に橋桁5に対して床版ブロック10が柔軟に動くことで床版ブロック10にひび割れが生じることを防止できる。
【0068】
例えば、床版ブロック10と中空管5Aとの間に複数(一例として2つ)のゴム部材18が配置されている。例えば、複数のゴム部材18は、凹部12に沿って並んでいる。すなわち、複数のゴム部材18は、中空管5Aの周方向に沿って並んでいる。この場合、地震等による床版ブロック10のひび割れの発生をより確実に防止できる。
【0069】
次に、本実施形態に係る橋の製造方法の工程の例について説明する。以下では、橋1を製造する方法の例について説明する。まず、床版ブロック10の材料を用意する(床版ブロックの材料を用意する工程)。このとき、床版ブロック10の材料となるコンクリート(モルタル)を用意する。床版ブロック10の材料となるコンクリート(モルタル)は、前述したように、特殊混和剤および石炭灰を含んでいる。そして、コンクリート(モルタル)に色粉を混ぜ込んでコンクリート(モルタル)を着色させる(着色させる工程)。
【0070】
次に、モルタルから床版ブロック10を3Dプリンタによって作製する(床版ブロックを3Dプリンタによって作製する工程)。例えば、図2図4に示される橋1の複数の床版ブロック10の一つ一つを3Dプリンタによって作製する。このとき、第1方向D1に貫通する貫通孔11を有する複数の床版ブロック10が作製される。
【0071】
地盤Bに一対の地盤改良部2を造成して、一対の橋脚基礎3、および一対の鋼材4を構築する。橋脚基礎3は、例えば、合板型枠を用いたRC造によって構築される。そして、第1方向D1に延びる橋桁5を設置する(橋桁を設置する工程)。すなわち、川Rを架け渡す複数本の中空管5Aを設置する。このとき、中空管5Aの内部に予め配管Hを挿通していてもよい。そして、複数本の中空管5Aを接続部材6で繋ぐとともに複数の中空管5Aにずれ止め部材17を固定する(橋桁を作製する工程)。
【0072】
次に、第1方向D1に延びる橋桁5の上に複数の床版ブロック10を第1方向D1に沿うように並べる(床版ブロックを並べる工程)。また、複数の床版ブロック10の貫通孔11に連結部材20を通して複数の床版ブロック10を互いに連結する(床版ブロック同士を連結する工程)。このとき、複数の床版ブロック10の貫通孔11に連結部材20を通して連結部材20の端部を接続部材6に固定することでブロック群Gを作製してもよい(ブロック群を作製する工程)。
【0073】
例えば、作製した複数のブロック群Gを第1方向D1に沿って橋桁5の上に並べるとともに第2方向D2に沿って並べる。一例として、7個のブロック群Gを第1方向D1に沿って並べるとともに3個のブロック群Gを第2方向D2に沿って並べる。以上の工程を経て橋1の製造が完了する。
【0074】
次に、本実施形態に係る橋1、および橋の製造方法から得られる作用効果について詳細に説明する。例えば図5図7に示されるように、橋1は、第1方向D1に延びる橋桁5と、第1方向D1に貫通する貫通孔11を有する複数の床版ブロック10と、橋桁5の上方において複数の床版ブロック10を互いに連結する連結部材20とを有する。複数の床版ブロック10は、橋桁5に載せられた状態で第1方向D1に沿って並べられる。このとき、複数の床版ブロック10の貫通孔11が第1方向D1に貫通しており、第1方向D1に貫通する複数の貫通孔11に連結部材20を通すことが可能とされている。
【0075】
よって、複数の床版ブロック10の貫通孔11に連結部材20を通し、複数の貫通孔11に通された連結部材20によって複数の床版ブロック10を連結させることができる。したがって、床版ブロック10の下面等、表面に連結部材20を配置しなくて済むので、橋1を薄くしてコンパクトにすることができる。さらに、複数の貫通孔11に連結部材20を通して複数の床版ブロック10を連結できるので、連結部材20を隠すことができる。したがって、橋1のデザイン性を向上させることができる。
【0076】
本実施形態において、橋桁5は、複数の中空管5Aである。複数の中空管5Aのそれぞれは、ケーブルCおよび配管Hの少なくともいずれかを第1方向D1に通すことが可能な挿通空間5bを有する。この場合、橋桁5として機能する中空管5AにケーブルCおよび配管Hの少なくともいずれかを通すことができる。したがって、橋1にインフラケーブルおよびインフラ配管を通す場合でも、インフラケーブルおよびインフラ配管を挿通空間5bの中に隠すことができる。よって、ケーブルCおよび配管Hが露出して橋1のデザイン性が低下することを防止できる。
【0077】
本実施形態において、橋1は、第1方向D1に沿って並ぶ2つの床版ブロック10の間に入り込むずれ止め部材17を備える。ずれ止め部材17は、2つの床版ブロック10の間に入り込んだ状態で複数の床版ブロック10の第1方向D1のずれを抑制する。この場合、第1方向D1に沿って並ぶ2つの床版ブロック10の間にずれ止め部材17が入り込むことにより、床版ブロック10のずれを防止できる。
【0078】
本実施形態において、橋1は、複数の床版ブロック10の下方において複数の中空管5Aを互いに接続する接続部材6を備える。この場合、複数の床版ブロック10の下方に位置する複数の中空管5Aが接続部材6を介して互いに接続される。したがって、複数の中空管5Aを互いに接続して複数の中空管5Aを強固に保持することができる。
【0079】
図3に示されるように、本実施形態において、橋1は、複数の床版ブロック10を含むとともに、第1方向D1に沿って並ぶ複数のブロック群Gと、複数の連結部材20とを備える。複数の連結部材20のそれぞれは、1つのブロック群Gを構成する複数の床版ブロック10の貫通孔11に通された状態でブロック群Gの複数の床版ブロック10を互いに連結する。この場合、1つの連結部材20がブロック群Gの貫通孔11に通された状態で複数の床版ブロック10が互いに連結される。したがって、複数の床版ブロック10を強固にかつ効率よく連結できる。
【0080】
本実施形態に係る橋の製造方法では、複数の床版ブロック10のそれぞれが3Dプリンタによって作製される。よって、複雑な形状を有する複数の床版ブロック10を3Dプリンタによって容易に作製することができるので、複数の床版ブロック10を連結してデザイン性が良好な橋1を効率よく製造できる。
【0081】
従来、コンクリート製の床版ブロックを作製するときには、型枠を設置し、設置した型枠の内部にコンクリートを打設して作製していた。これに対し、橋1を構成する床版ブロック10が3Dプリンタによって作製される場合には、型枠を不要とすることができる。
【0082】
複数の床版ブロック10の貫通孔11が第1方向D1に貫通しており、第1方向D1に貫通する複数の貫通孔11に連結部材20が通される。したがって、複数の貫通孔11に連結部材20を通して複数の床版ブロック10を連結できるので、連結部材20を隠すことができる。したがって、本実施形態に係る橋の製造方法からは前述した橋1と同様の効果を得ることができ、橋1のデザイン性を向上させることができる。
【0083】
以上、本開示に係る橋、および橋の製造方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る橋、および橋の製造方法は、前述した実施形態の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内においてさらに変形されたものであってもよい。すなわち、橋の各部の形状、大きさ、材料、数および配置態様、ならびに、橋の製造方法の工程の内容および順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0084】
例えば、橋1は、床版ブロック10の上面13に載せられるデッキを有していてもよい。このデッキは、例えば、木製である。さらに、床版ブロック10の上面13には、左官仕上げが施されてもよい。この左官仕上げによって床版ブロック10の上面13の凹凸を平坦化し、平坦化した上面13の上にノンスリップシートが載せられてもよい。
【0085】
さらに、橋1は、床版ブロック10(各端部ブロック10B)から上方に延び出す手摺を備えていてもよい。手摺は、例えば、橋桁5(中空管5A)の第2方向D2の両端のそれぞれに固定(一例として溶接固定)されるとともに橋桁5から上方に突出するように設置される。
【0086】
前述した実施形態では、流線形状である橋1について説明した。しかしながら、橋の形状は、流線形状に限られず適宜変更可能である。例えば、橋は、曲率を有しないフラットな橋であってもよい。橋の第1方向D1の長さは、橋の第2方向D2の長さ以下であってもよい。さらに、橋は、円形橋(平面視で環状の橋)であってもよい。このように、橋の形状は特に限定されない。
【0087】
前述した実施形態では、特殊混和剤および石炭灰を含むコンクリート(モルタル)によって構成された床版ブロック10について説明した。しかしながら、床版ブロックの材料は、適宜変更可能である。例えば、床版ブロックは、繊維補強コンクリート(モルタル)によって構成されてもよい。この場合、床版ブロックの欠け、およびひび割れをより確実に防止できる。
【0088】
前述した実施形態では、第1方向D1に沿って並ぶ複数のブロック群Gを備える橋1について説明した。具体例として、第1方向D1に沿って並ぶ5個または6個の床版ブロック10をブロック群Gとし、ブロック群Gの床版ブロック10を1本の連結部材20で連結させる例について説明した。しかしながら、例えば第1方向D1に沿って並ぶ全ての床版ブロック10をブロック群Gとしてもよく、ブロック群Gを構成する床版ブロック10の数は適宜変更可能である。ただし、前述したように、5個または6個の床版ブロック10をブロック群Gとする場合、複数の床版ブロック10の配置、交換およびメンテナンスを容易に行うことができる。
【0089】
前述した実施形態では、円形鋼管である中空管5Aである橋桁5を備える橋1について説明した。しかしながら、中空管5Aは、円形鋼管でなくてもよく、例えば、角形鋼管であってもよい。さらに、本開示に係る橋は、中空管でない橋桁を備える橋であってもよい。例えば、中空管5Aに代えて、H形鋼である橋桁を備える橋であってもよい。このように、橋桁の種類は適宜変更可能である。
【0090】
前述した実施形態では、床版ブロック10を構成するコンクリート(モルタル)に色粉を混ぜることによって床版ブロック10が着色している例について説明した。しかしながら、床版ブロックを着色させるときに色粉を用いなくてもよい。さらに、床版ブロック10そのものの色彩を活かしたい場合には、床版ブロック10の色彩を視認可能なクリア塗装が床版ブロック10に施されてもよい。
【0091】
床版ブロック10がクリア塗装される場合、床版ブロック10の表面を保護できる。さらに、クリア塗装によって形成される塗膜は薄く、例えば、この塗膜の厚さは1mm以下である。よって、床版ブロック10の表面の凹凸を残すことができ、床版ブロック10に滑り止め機能を発揮させることができる。
【0092】
前述した実施形態では、川Rの第2方向D2の両端部のそれぞれに橋脚基礎3が構築される例について説明した。しかしながら、橋脚基礎3の数および配置態様は適宜変更可能である。例えば、川Rの第2方向D2の両端部および中央部のそれぞれに橋脚基礎3が構築されてもよい。この場合、川幅がより広い川Rに対しても橋1を製造できる。なお、地盤Bの状況によっては地盤改良部2は省略することも可能である。
【0093】
前述した実施形態では、橋脚基礎3が合板型枠を用いたRC造によって構築される例について説明した。しかしながら、3Dプリンタによって作製された型枠を地盤Bに埋め込み、この型枠にコンクリートを打設して橋脚基礎3を構築してもよい。この場合、型枠を地盤Bに埋め殺すことができ、脱型を不要とすることができるので、作業の効率化に寄与する。
【0094】
前述した実施形態では、第2方向D2に沿って並ぶ中央ブロック10Aおよび一対の端部ブロック10Bを備える橋1について説明した。しかしながら、中央ブロック10Aおよび一対の端部ブロック10Bは、一体となっていてもよい。すなわち、床版ブロックは、第2方向D2に分割されていなくてもよい。このように、床版ブロックの分割の態様は特に限定されない。
【0095】
前述した実施形態では、川Rに架けられる橋1について説明した。しかしながら、本開示に係る橋は、川に架けられるものに限定されない。例えば、橋は、池、湖、または海岸に架けられる橋であってもよい。橋は、桟橋であってもよい。さらに、橋は、水がない場所に架けられる橋であってもよい。橋は、例えば、高低差がある場所に架けられる橋であってもよいし、溝状の場所に架けられる橋であってもよい。このように、本開示に係る橋が架けられる場所は特に限定されない。
【符号の説明】
【0096】
1…橋、2…地盤改良部、3…橋脚基礎、3b…基礎底版部、3c…基礎柱部、4…鋼材、5…橋桁、5A…中空管、5b…挿通空間、6…接続部材、6b…延在部、6c…被覆部、6d…挿通空間、10…床版ブロック、10A…中央ブロック、10B…端部ブロック、11…貫通孔、11b…挿通孔、11c…非挿通孔、12…凹部、13,14…上面、14c…平滑面、14d…突出面、15…湾曲部、17…ずれ止め部材、18…ゴム部材、19…固定部材、19b…第1固定部、19c…第2固定部、20…連結部材、B…地盤、C…ケーブル、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、F…森林、G…ブロック群、H…配管、P…通路、P1…第1通路、P2…第2通路、P3…第3通路、R…川、S…建物、T1…厚さ、T2…距離。
【要約】
【課題】薄くしてコンパクトにすることができる橋、および橋の製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る橋は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向D2に延びている橋1である。橋1は、第1方向D1に延びる橋桁と、橋桁に載せられるとともに第1方向D1に沿って並ぶ複数の床版ブロック10と、複数の床版ブロック10を互いに連結する連結部材20と、を備える。複数の床版ブロック10は、第1方向D1に貫通する貫通孔を有する。連結部材20は、複数の床版ブロック10の貫通孔に通された状態で複数の床版ブロック10を互いに連結している。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8