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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】脱硝触媒および該触媒を用いた脱硝方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240920BHJP
   B01J 29/78 20060101ALI20240920BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C01B39/48 ZAB
B01J29/78 A
B01D53/86 222
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022514775
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2019125057
(87)【国際公開番号】W WO2021114208
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】524271128
【氏名又は名称】▲陳▼ ▲海▼▲軍▼
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲海▼▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 梦▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲錢▼ ▲東▼岳
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 涵
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177060(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110013875(CN,A)
【文献】特開昭62-153115(JP,A)
【文献】特開2016-60708(JP,A)
【文献】特表平11-507616(JP,A)
【文献】特開昭63-151612(JP,A)
【文献】LEE, Yoorim et al.,Synthesis and Catalytic Behavior of Ferrierite Zeolite Nanoneedles,ACS Catalysis,2013年02月27日,Vol.3, Issue 4,PP.617-621,ISSN:2155-5435, DOI:10.1021/cs400025s
【文献】LEE, Yoorim et al.,Supporting Information for Synthesis and Catalytic Behavior of Ferrierite Zeolite Nanoneedles,ACS Catalysis,2013年02月27日,Vol.3, Issue 4,S1-S14,ISSN:2155-5435, DOI:10.1021/cs400025s
【文献】福島利久ほか,HSZシリーズの性状,Journal of TOSOH Reserch,1989年,Vol.33, No.2,PP.155-166
【文献】WIEDEMANN,Sophie C.C. et al.,Skeletal isomerisation of oleic acid over ferrierite in the presence and absence of triphenylphosphine: Pore mouth catalysis and related deactivation mechanisms,Journal of Catalysis,2014年,Vol.316,PP.24-35,ISSN:0021-9517, DOI:10.1016/j.jcat.2014.04.018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともケイ素と、アルミニウムと、酸素とを骨格原子として含み、ここでケイ素原子とアルミニウム原子とのモル比は50:1であり、かつ前記ゼオライトを29Si固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積は-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の30%以上を占めることを特徴とする、FER型ゼオライト。
【請求項2】
前記アルミニウム原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の1~33%を占める、および/または
前記ゼオライト骨格以外のカチオンは、少なくとも水素イオンをさらに含む、請求項1に記載のFER型ゼオライト。
【請求項3】
前記ゼオライトの骨格原子は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズおよびホウ素からなる群から選ばれる1種以上の他の元素の原子をさらに含む、および/または
前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の40%以下である、および/または
前記ゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および遷移金属からなる群から選ばれる1種以上のカチオンをさらに含む、
請求項1または2に記載のFER型ゼオライト。
【請求項4】
前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の30%以下である、請求項3に記載のFER型ゼオライト。
【請求項5】
前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の20%以下である、請求項3に記載のFER型ゼオライト。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のFER型ゼオライトを製造する方法であって、
(a)少なくともケイ素源としてのケイ酸ナトリウム、アルミニウム源としての硫酸アルミニウム、有機テンプレートとしてのピロリジン、および任意の無機塩基を含む混合物を水に配合して初期ゲルを得る工程と、
(b)前記初期ゲルを水熱合成反応させて反応生成物を得る工程と、
(c)前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して前記FER型ゼオライトを得る工程とを含み、
前記初期ゲルにおいてアルカリ金属イオンが含まれる場合、前記工程(c)で前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して得られたゼオライトとアンモニウム塩とをイオン交換することにより、前記ゼオライトに含まれる一部または全部のアルカリ金属イオンを除去した後、焼成して前記FER型ゼオライトを得ることを特徴とする、FER型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記初期ゲルにおいて、ケイ素源、アルミニウム源、有機テンプレートR、任意の無機塩基AOHおよび水のモル比は、5~100 SiO:1 Al:5~50 R:2~20 AO:200~2000 HOである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のFER型ゼオライトまたは請求項6または7に記載の方法で製造されたFER型ゼオライトが脱硝触媒として設置されていることを特徴とする、窒素酸化物浄化用触媒反応器。
【請求項9】
請求項8に記載の窒素酸化物浄化用触媒反応器が設置されていることを特徴とする、窒素酸化物浄化システム。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のFER型ゼオライトまたは請求項6または7に記載の方法で製造されたFER型ゼオライトを脱硝触媒として使用し、かつ炭素原子数が6以下のアルコールを還元剤として用いて選択的触媒還元脱硝を行うことを含むことを特徴とする、脱硝方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載のFER型ゼオライトまたは請求項6または7に記載の方法で製造されたFER型ゼオライトの選択的触媒還元脱硝プロセスにおける、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝分野に関し、より具体的には、脱硝触媒および該触媒を用いた脱硝方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NO)は、強い刺激性と腐食性を有し、人体の健康に損害を与える。また、大気中の窒素酸化物は他の有害な化合物と相互作用しやすく、硫酸塩、硝酸塩などの有害物を生成する。選択的触媒還元技術(SCR)は、現在の主な排ガス脱硝技術であり、それは還元剤(アンモニア、または尿素の分解により生成されたアンモニア)を用いて触媒の作用下で、選択的に排ガス中の窒素酸化物と反応させて窒素および水を生成し、それにより窒素酸化物を除去する(NH-SCR脱硝プロセス)。
【0003】
しかしながら、石炭、重油などの高硫黄含有燃料工業で発生された工工業排ガスを処理する際に、このような燃料は工業プロセスにおいて一定量の硫黄酸化物を発生し、かつ、触媒の存在により、酸素富化条件下で、三酸化硫黄の生成量が大幅に増加する。硫黄酸化物は、還元剤であるアンモニアガスと反応して硫酸アンモニウムを生成する。硫酸アンモニウムは腐食性および粘性を有し、物体の表面に付着しやすく、触媒の失活を引き起こしやすいだけでなく、煙道設備の損傷を引き起こす。触媒の成分を改良することにより触媒の耐硫黄性を向上させる試みは多くの文献に報告されているが、アンモニアを還元剤として使用すれば、工業排ガス処理システムにおける硫酸アンモニウムの生成による触媒表面が汚染されて失活し、煙道設備が閉塞されるなどの問題を根本的に解決することは非常に困難である。
【0004】
低級アルコールが硫黄酸化物と反応して硫酸アンモニウムの類似する堆積物を生成することが困難であるため、アンモニアの代わりに安価な低級アルコールでアンモニアを還元剤として、窒素酸化物を選択的に触媒還元して窒素を生成し(アルコール-SCR脱硝プロセス)、硫酸アンモニウムの生成による触媒失活および設備故障などの問題を回避することができる。また、低級アルコールまたはその水溶液は、アンモニア水よりも安全に貯蔵されやすく、尿素水溶液が低温で尿素を析出して管路を閉塞しやすくなるような問題も発生しない。
【0005】
非特許文献1、2は、エタノールを還元剤として利用し、アルミナ担持の銀系触媒で選択的触媒還元脱硝を行っているが、その触媒反応温度が比較的高く、400℃程度にあってこそはじめて最高転化率に達することができる。非特許文献3は、Znを用いて酸化アルミニウムを改質し、触媒のエタノール-SCR触媒活性を向上させるという目的を達成する。これらの文献の研究結果から分かるように、該触媒上の窒素酸化物の最高転化温度は400℃程度である。非特許文献4はBEA分子篩担持銀触媒のエタノール-SCR触媒性能を研究し、その最高転化温度は300℃程度であるが、転化効率が低い(<30%)。非特許文献5は、BEA分子篩に鉄、コバルトなどの遷移金属を担持させた触媒を製造し、このような触媒に対してそれぞれメタノールとエタノールを還元剤とする触媒脱硝反応活性を比較する。その結果から、エタノールを還元剤として用いる場合触媒脱硝性能がより高いが、その反応温度が依然として300℃以上に達した後にのみ最高転化率を達成できることが示された。非特許文献6には、メタノールを還元剤として用い、ペロブスカイト材料LaFe0.8Cu0.2およびアルミナ担持銀系触媒(Ag/Al)の触媒活性を比較し、LaFe0.8Cu0.2触媒脱硝性能がAg/Al触媒より明らかに向上するが、それが最高転化率を達成するための温度範囲は依然として300℃以上であり、工業排ガスの要求、特に低速船用ディーゼルの排気ガスが比較的低い温度で脱硝処理を行う必要がある要求を満たすことができなかった。
【0006】
特許文献1、2、3には、アルコールを還元剤として用い、ナトリウム型分子篩担持コバルト系触媒を利用して工業用排ガスを触媒脱硝する方法が開示されている。しかしながら、このような触媒は脱硝効率が低く、その脱硝効率を向上させるために、さらにアルカリ金属イオンを添加する方法を使用して触媒の反応活性を向上させるが、アルカリ金属イオンの添加は一般的に分子篩の構造安定性を破壊し、それにより触媒の水熱安定性が不十分となり、触媒の実用上の需要を満たすことができない。また、このような触媒の使用過程において、触媒はさらに有機物が分子篩におけるコーキングにより失活しやすい。特許文献4には、ビスマス源をアルコール系溶媒に溶解し、さらに分子篩にビスマスを担持し、ビスマス含有分子篩触媒を製造する方法が開示されている。メタノールを還元剤として工業排ガス脱硝処理を行う場合、このようなビスマス含有分子篩触媒は、低温域では一酸化窒素(NO)の転化率が良好であるが、このような触媒の選択性が悪く、大量の亜酸化窒素(NO)副生成物を生成する。NOは大気汚染物質だけでなく、かつ温室効果ガスである。そのため、このような触媒は工業用脱硝浄化プロセスに実際に適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2013146729
【文献】JP2013226544
【文献】JP2014172007
【文献】WO2017057736
【非特許文献】
【0008】
【文献】ACS Catal.、2018、8(4)2699-2708
【文献】Environ.chnol.、2015(49)481-488
【文献】Appl.Catal.B-Environ.、2012(126)275-289
【文献】Microporous Mesoporous Mater.、2015、203、163-169
【文献】Appl.Catal.B-Environ.、2012(123-124)134-140
【文献】J.Catal.377(2019)480-493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、炭素原子数6以下の低級アルコールを還元剤として選択的触媒還元脱硝を行う時、触媒の反応活性が低くかつ窒素への転化選択性が低いなどの問題を解決する。本発明は、高活性、高窒素選択性を有するアルコール-SCR脱硝触媒を提供することにより、現在の高硫黄含有工業排ガスをNH-SCR脱硝プロセスで処理する時に硫酸アンモニウムの生成によって触媒が失活しやすく、煙道設備が目詰まりするなどの問題を解決する目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者は、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下の技術的手段により上記1つ以上の課題を解決できることを見出した。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、FER型ゼオライトであって、少なくともケイ素と、アルミニウムと、酸素とを骨格原子として含み、ここでケイ素原子とアルミニウム原子とのモル比は2~100:1であり、かつ前記ゼオライトを29Si固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積は-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の25%以上を占めるFER型ゼオライトを提供する。
【0012】
一実施形態において、前記アルミニウム原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の1~33%を占める。別の一実施形態において、前記ゼオライト骨格以外のカチオンは、少なくとも水素イオンをさらに含む。一実施形態において、前記ゼオライトの骨格原子は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズおよびホウ素からなる群から選ばれる1種以上の他の元素の原子をさらに含む。別の一実施形態において、前記ゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および遷移金属からなる群から選ばれる1種以上のカチオンをさらに含む。
【0013】
一実施形態において、前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の40%以下を占める。別の一実施形態において、前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の30%以下を占める。別の一実施形態において、前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の20%以下を占める。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、ビスマス含有FER型ゼオライトであって、少なくともケイ素と、アルミニウムと、酸素とを骨格原子として含み、ここでケイ素原子とアルミニウム原子とのモル比は2~100:1であり、前記ゼオライトを27Al固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積は-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の28%以上を占めるFER型ゼオライトを提供する。
【0015】
一実施形態において、ビスマスの含有量は、0.05質量%以上20質量%以下である。別の一実施形態において、前記ケイ素原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の50~95%を占める。別の一実施形態において、前記ゼオライト骨格以外のカチオンは、少なくとも水素イオンをさらに含む。別の一実施形態において、前記ゼオライトの骨格原子は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズおよびホウ素からなる群から選ばれる1種以上の他の元素の原子をさらに含む。別の一実施形態において、前記ゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および遷移金属からなる群から選ばれる1種以上のカチオンをさらに含む。
【0016】
一実施形態において、前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の40%以下を占める。別の一実施形態において、前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の30%以下を占める。別の一実施形態において、前記他の元素の原子のモル数は、前記ゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の20%以下を占める。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、本明細書に記載のFER型ゼオライトを製造する方法であって、(a)少なくともケイ素源、アルミニウム源、有機テンプレート、および任意の無機塩基を含む混合物を水に配合して初期ゲルを得る工程と、(b)前記初期ゲルを水熱合成反応させて反応生成物を得る工程と、(c)前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して前記FER型ゼオライトを得る工程とを含み、前記初期ゲルにおいてアルカリ金属イオンが含まれる場合、前記工程(c)で前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して得られたゼオライトとアンモニウム塩とをイオン交換することにより、前記ゼオライトに含まれる一部または全部のアルカリ金属イオンを除去した後、焼成して前記FER型ゼオライトを得るFER型ゼオライトの製造方法を提供する。
【0018】
一実施形態において、前記初期ゲルにおいて、前記のケイ素源、アルミニウム源、有機テンプレートR、任意の無機塩基AOHおよび水のモル比は、5~100 SiO:1 Al:5~50 R:2~20 AO:200~2000 HOである。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、1種以上の含窒素脂環式複素環化合物を含む。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、ピロリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、キヌクリジン、N-メチルピロリドン、およびヘキサメチレンイミンからなる群から選ばれる1種以上である。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、ピロリジン、モルホリン、ヘキサメチレンイミンおよびピペリジンからなる群から選ばれる1種以上である。別の一実施形態において、前記有機テンプレートはピロリジンである。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、本明細書に記載のビスマス含有FER型ゼオライトを製造する方法であって、(a)少なくともケイ素源、アルミニウム源、有機テンプレート、および任意の無機塩基を含む混合物を水に配合し、ヒドロゲルを得、前記ヒドロゲルと、有機溶媒に溶解されたビスマス源溶液とを混合して初期ゲルを得る工程と、(b)前記初期ゲルを水熱合成反応させて反応生成物を得る工程と、(c)前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して前記FER型ゼオライトを得る工程とを含み、前記初期ゲルにアルカリ金属イオンが含まれる場合、前記工程(c)で前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して得られたゼオライトとアンモニウム塩とをイオン交換することにより、前記ゼオライトに含まれる一部または全部のアルカリ金属イオンを除去した後、焼成して前記FER型ゼオライトを得る方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、本明細書に記載のビスマス含有FER型ゼオライトを製造する方法であって、(a)少なくともケイ素源、アルミニウム源、有機テンプレート、および任意の無機塩基を含む混合物を水に配合して初期ゲルを得る工程と、(b)前記初期ゲルを水熱合成反応させて反応生成物を得る工程と、(c)前記反応生成物を焼成し、かつ前記有機テンプレートを除去してゼオライトを得る工程と、(d)前記ゼオライトとビスマス源を有機溶媒中でイオン交換または浸漬を行い、その後焼成して前記FER型ゼオライトを得る工程とを含み、前記初期ゲルにアルカリ金属イオンが含まれる場合、工程(c)で前記反応生成物を焼成し、前記有機テンプレートを除去して得られたゼオライトとアンモニウム塩とをイオン交換することにより、前記ゼオライトに含まれる一部または全部のアルカリ金属イオンを除去した後、焼成して工程(c)に記載のゼオライトを得る方法をさらに提供する。
【0021】
一実施形態において、前記初期ゲルにおいて、ケイ素源、アルミニウム源、ビスマス源、有機テンプレートR、任意の無機塩基AOHおよび水のモル比は、5~100 SiO:1 Al:0~0.5 Bi:5~50 R:2~20 AO:200~2000 HOである。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、1種以上の含窒素脂環式複素環化合物を含む。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、ピロリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、キヌクリジン、N-メチルピロリドン、およびヘキサメチレンイミンからなる群から選ばれる1種以上である。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、ピロリジン、モルホリン、ヘキサメチレンイミンおよびピペリジンからなる群から選ばれる1種以上である。別の一実施形態において、前記有機テンプレートは、ピロリジンである。
【0022】
本発明の第5の態様によれば、本明細書に記載の前記FER型ゼオライトまたは本明細書に記載の方法で製造されたFER型ゼオライトが脱硝触媒として設置されている窒素酸化物浄化用触媒反応器を提供する。
【0023】
本発明の第6の態様によれば、本明細書に記載の窒素酸化物浄化用触媒反応器が設置されている窒素酸化物浄化システムを提供する。
【0024】
本発明の第7の態様によれば、本明細書に記載のFER型ゼオライトまたは本明細書に記載の方法で製造されたFER型ゼオライトを脱硝触媒として使用し、かつ炭素原子数が6以下のアルコールを還元剤として使用して選択的触媒還元脱硝を行うことを含む脱硝方法を提供する。
【0025】
本発明の第8の態様によれば、本明細書に記載の前記FER型ゼオライトまたは本明細書に記載の方法で製造されたFER型ゼオライトの選択的触媒還元脱硝プロセスにおいて、例えば炭素原子数が6以下のアルコールを還元剤として用いる選択的触媒還元脱硝プロセスにおける使用を提供する。
【0026】
本明細書に記載のゼオライトまたは本明細書に記載の方法で製造されたゼオライトは、低級アルコールを還元剤とする選択的触媒還元脱硝触媒の活性が低く、選択性が悪いという従来技術に存在する課題を効果的に解決でき、それにより窒素酸化物の触媒浄化、特に窒素酸化物の選択的触媒還元を効果的に行うことになる。したがって、本明細書に記載のゼオライトは、工業排ガス脱硝触媒として発電所、工業窯炉、内燃機関などに広く利用され、そして排出された窒素酸化物排ガスを効果的に除去することができる。
【0027】
以下に添付の図面を参照して本明細書に例示の実施形態をさらに説明するが、添付の図面は当業者が本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施例で製造された分子篩AのXRDパターンである。
図2】本発明の一実施例で製造された分子篩Aの29Si固体核磁気共鳴スペクトルである。
図3】本発明の一実施例で製造された分子篩Bの29Si固体核磁気共鳴スペクトルである。
図4】本発明の一実施例で製造された分子篩Cの29Si固体核磁気共鳴スペクトルである。
図5】本発明の一実施例で製造された分子篩Dの29Si固体核磁気共鳴スペクトルである。
図6】本発明の一比較例で製造された分子篩Eの29Si固体核磁気共鳴スペクトルである。
図7】本発明の一実施例で製造された分子篩Fの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図8】本発明の一実施例で製造された分子篩Gの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図9】本発明の一実施例で製造された分子篩Hの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図10】本発明の一実施例で製造された分子篩Iの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図11】本発明の一実施例で製造された分子篩Jの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図12】本発明の一比較例で製造された分子篩Kの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図13】本発明の一比較例で製造された分子篩Lの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
図14】本発明の一比較例で製造された分子篩Mの27Al固体核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、具体的な実施形態に基づいて本発明の発明概念をさらに説明する。しかしながら、列挙された具体的な実施形態は例示の目的のみであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、以下のいずれかの実施形態における特定の特徴は、本明細書に記載の発明概念から逸脱しない限り、他の任意の実施形態に用いることができる。
【0030】
ゼオライト
ここでいうゼオライトとは、いずれも、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)(以下、IZAと略称する)によって規定されているFER型ゼオライトを意味する。ゼオライトは、一般的に骨格原子四面体(例えばSiO四面体、AlO四面体またはPO四面体であり、かつ一般的に酸素元素以外の元素原子を非酸素原子またはT原子と呼ぶ)の各頂点の酸素原子を共有して結合して形成された規則的な網目状構造である。FER型ゼオライトに対して、その構造はX線回折法(XRD)により決定することができ、少なくとも下記表1に示す格子面間隔d(Å)を検出する必要がある。すなわち、以下の表1に示す格子面間隔を有する場合、該ゼオライトはFER型分子篩であってもよい。
【0031】
【表1】
【0032】
本明細書に記載のFER型ゼオライトは、29Si固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、その-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の25%以上を占める。本明細書に記載のビスマス元素含有FER型ゼオライトは、27Al固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の28%以上を占める。研究により、上記の特徴を有するゼオライトは、アルコール-SCR脱硝触媒活性が高く、窒素選択性に優れていることが分かった。
【0033】
いかなる理論的な制約を受けたくないが、本明細書に記載のビスマスを含有しないゼオライトは触媒脱硝性能に優れており、それは骨格ケイ素原子のFER型ゼオライトにおける特定部位の分布に起因する可能性があると考えられる。一般的に、29Si固体核磁気共鳴スペクトルにおける-90~-110ppmの化学シフト区間内の特徴的なピークは骨格Alに接続された骨格シリコンの情報を反映していると考えられる。この区間の吸収ピークの面積比が高いほど、FER型ゼオライトの酸活性点が多いことを示し、それによりFERゼオライトのアルコールSCR触媒活性が高いことを示す。
【0034】
一方では、本明細書に記載のビスマス含有ゼオライトについて、27Al固体核磁気共鳴スペクトルにおいて-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積はゼオライト中の非4配位(non-tetracoordinate)のアルミニウムの情報を反映していると考えられる。この区間の吸収ピークの面積比が高いほど、ゼオライト中の非骨格アルミニウムの含有量が高いことを示す。ビスマス含有のFER型ゼオライトに対して、非骨格アルミニウムの含有量が高いほど、ビスマスと非骨格アルミニウムとの相互作用が大きくなり、優れた触媒活性および触媒選択性を生成する。
【0035】
したがって、本明細書に記載のFER型ゼオライトを29Si固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積は-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の25%以上を占め、例えば30%以上、35%以上、40%以上または45%以上である。本明細書に記載のビスマス含有FER型ゼオライトを27Al固体核磁気共鳴スペクトルを用いて分析する場合、-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積は-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の28%以上を占め、例えば30%以上、35%以上または40%以上である。
【0036】
本明細書において、ゼオライトは少なくとも酸素、アルミニウム、ケイ素を骨格構造となる構成原子として含有するゼオライトを指し、かつ骨格原子のうちの一部は前記3つの元素以外の一種以上の元素で置換されてもよい。ゼオライトを構成するケイ素とアルミニウムの構成割合(モル比)は特に限定されない。一実施形態において、ケイ素原子とアルミニウム原子とのモル比は2~100:1であり、例えば2:1、5:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1または50:1である。別の一実施形態において、アルミニウム原子のモル数はゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の1~33%、例えば2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%または30%を占める。別の一実施形態において、ケイ素原子のモル数はゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の50~95%を占め、例えば55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%である。
【0037】
本明細書に記載のゼオライトにおいて、ビスマスのゼオライトに存在する位置およびその特定の価数状態(chemical valence state)は特に限定されない。ビスマスはゼオライトの骨格内に存在してもよく、ゼオライトの骨格外に存在してもよい。触媒活性の観点から見ると、ビスマスは好ましくは骨格外に存在する。一実施形態において、ビスマスの質量百分率は0.05%~20%であり、例えば0.1%~10%であり、上記範囲内の任意の数値であってもよく、例えば0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%である。ビスマス元素の含有量が0.05%未満である場合、低温活性が低下する傾向があり、触媒活性が不足する。ビスマス元素の含有量が20%を超える場合、一般的に凝集状態の酸化ビスマスを生成しやすくなり、触媒性能を低下させることになる。
【0038】
また、本明細書に記載のゼオライトは、酸素、アルミニウム、シリコン以外の他の元素、例えばリン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズ、ホウ素などをさらに含んでいてもよい。他の元素原子の含有量はゼオライト中の非酸素元素原子の合計モル数の40%以下を占め、好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。ゼオライト骨格構造となる構成成分を含む以外に、本発明におけるゼオライトは骨格外のカチオン成分をさらに含有してもよく、前記カチオンは特に限定されず、例えばH、Li、Na、Kなどのアルカリ金属元素、Mg、Caなどのアルカリ土類金属元素、La、Ceなどの希土類金属元素、またはCu、Feなどの遷移金属元素のカチオンであり、好ましくは水素カチオンである。
【0039】
ゼオライトの合成
本発明において、ゼオライトの合成方法は、水熱合成法を使用し、原料と水を初期ゲル(以下ヒドロゲルともいう)に製造した後、反応容器内に入れて水熱合成反応を行い、それによりゼオライトを合成する。
【0040】
<原料>
本明細書に記載のFER型分子篩の製造過程において使用される原料は、主に、ケイ素原料、アルミニウム原料、任意のビスマス原料、テンプレート(テンプレート剤)となる含窒素(ヘテロ原子)脂環式複素環化合物(即ち、有機テンプレート)、任意の無機塩基、および水が挙げられる。また、種結晶などの結晶化促進効果を有する成分を添加してもよい。
【0041】
ケイ素原料(本明細書ではケイ素源ともいう)として、コロイダルシリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、トリメチルエトキシシラン、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸アルミニウム塩ゲルなどのうちの1種または2種以上を使用することができる。アルミニウム原料(本明細書ではアルミニウム源ともいう)として、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、塩化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム塩ゲル、金属アルミニウムなどのうちの1種または2種以上を使用することができる。ビスマス原料(本明細書ではビスマス源ともいう)としては、硝酸ビスマス、リン酸ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマス、塩化ビスマス、塩素酸ビスマスなどの1種または2種以上を用いることができる。これらの原料は特に制限されず、他の成分と十分に均一に混合することができればよい。
【0042】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムのようなアルカリ金属水酸化物、上記アルミニウム原料のアルミン酸塩、上記ケイ素原料のケイ酸塩におけるアルカリ成分またはケイ酸塩ゲル中のアルカリ成分などのうちの1種または2種以上を使用することができる。分子篩の製造過程において、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンとして、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属イオンを用いて結晶化を行う。これらのアルカリ金属イオンを含むことにより、結晶化しやすく、副生成物(不純物結晶)が生成しにくい。なお、ゲル中の成分のモル比を計算する場合、一般的に無機塩基AOHの対応する酸化物AOを用いてモル比を計算する。
【0043】
合成されたゼオライト構造は選択されたテンプレートと関連する。一実施形態において、テンプレートは含窒素脂環式複素環化合物であってもよく、ピロリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、キヌクリジン、N-メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどを使用することができ、好ましくはピロリジン、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンを使用し、特に好ましくはピロリジンを使用する。
【0044】
<アルミニウム原料溶液の製造>
アルミニウム原料溶液は、上記アルミニウム原料を水に溶解させて製造される。アルミニウム原料溶液のアルミニウム原料濃度はゲル製造の容易さ、製造効率の観点から、好ましくは5~50重量%、特に好ましくは10~40重量%である。
【0045】
なお、このアルミニウム原料溶液は、ケイ素原子を実質的に含有しない。ここで、「実質的に含有しない」とはアルミニウム原料溶液中のケイ素含有量が1重量%以下であり、好ましくは全く含有しないことを指す。
【0046】
<ビスマス原料溶液の製造>
ビスマス原料溶液は、上記ビスマス原料(本明細書では、ビスマス源ともいう)を液体に溶解させて製造される。ビスマスイオンは水溶液中で加水分解しやすく、沈殿をもたらし、したがってビスマス原料を有機溶媒に溶解し、例えばエチレングリコール、グリセリン、トルエンなどの有機溶媒に溶解する。濃度はゲル製造の容易さ、製造効率の観点から、好ましくは1~20重量%、特に好ましくは2~10重量%である。
【0047】
<ヒドロゲルの製造>
水溶液に無機塩基を添加し、無機塩基溶液を製造する。次に、無機塩基溶液、シリコン原料溶液、アルミニウム原料溶液、有機テンプレートを均一に混合し、ゲル状混合物に製造してなり、それは次の反応に用いられるヒドロゲルである。ビスマス含有ゼオライトを製造しようとすると、ビスマス原料溶液を上記ゲル状混合物に均一に添加して次の反応に用いられるヒドロゲルを得ることができる。
【0048】
ゲル状混合物の製造過程において、各原料溶液の添加速度に制限がなく、使用条件に応じて適宜選択すればよい。ビスマス原料溶液を添加する場合、その添加速度も制限されず、使用条件に応じて適宜選択すればよい。
【0049】
なお、シリコン原料が液体である場合、該シリコン原料はシリカゲルのように5~60重量%程度のシリカの水分散液に製造すれば、使用することができる。他のケイ素原子含有原料の液体を製造する場合、好ましくはケイ素原子含有原料の濃度が5重量%以上、特に10重量%以上であり、かつ60重量%以下、特に50重量%以下の水溶液または水分散液として製造する。
【0050】
アルミニウム原料溶液と同様に、該シリコン原料の液体は、アルミニウム原子を実質的に含有しない。ここで、「実質的に含有しない」とは、シリコン原料を含有する液体中に、アルミニウムの含有量が1重量%以下であり、好ましくは全く含有しないことを指す。
【0051】
水熱合成反応に供給されたヒドロゲルの水含有量は、分子篩の結晶生成の容易さ、製造コストの観点から、含水量が20重量%以上であり、特に30重量%以上であり、かつ80重量%以下であり、特に70重量%以下である。
【0052】
以上のように操作して製造されたヒドロゲルは、製造後に直ちに水熱合成を行うことができるが、高い結晶性を有する分子篩を得るために、好ましくは所定の温度条件下で特定の時間熟成する。熟成温度は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下であり、その下限は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中に一定であってもよく、徐々に変化してもよい。熟成時間は特に限定されず、通常2時間以上、3時間以上、5時間以上または8時間以上であり、かつ通常30日間以下、10日間以下、4日間以下または2日間以下である。
【0053】
<水熱合成>
水熱合成は以下のように行う。上記のようにして製造されたヒドロゲルを耐圧容器に入れ、自生圧力下で、または結晶化を阻害しない程度のガス加圧下で、撹拌条件下で、または容器を回転または揺動させる条件で、または静置状態で、温度を保持し、これにより水熱合成を行う。
【0054】
水熱合成の際の反応温度は、通常90℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。反応時間は、特に限定されないが、通常2時間以上、6時間以上、12時間以上であり、かつ通常30日間以下、10日間以下、7日間以下である。反応温度は反応中に一定であってもよく、徐々に変化してもよい。
【0055】
上記の水熱合成後、生成物であるFER型分子篩を水熱合成反応液から分離する。得られたFER型分子篩(以下「テンプレートなど含有FER型分子篩」という)は、それが細孔内に有機テンプレート、ビスマスおよび他のアルカリ金属のうちの一種または複数種を含有する。水熱合成反応液からテンプレート等を含む分子篩を分離する方法は、特に限定されないが、通常濾過、デカンテーションまたは直接乾燥などの方法が挙げられる。
【0056】
<不純物除去、焼成およびイオン交換>
製造過程で使用された有機テンプレートおよびアルカリ金属イオン等を除去するために、水熱合成反応液から分離回収されたテンプレートなど含有FER型分子篩は、必要に応じて水洗、乾燥(例えば80℃~100℃で1時間~12時間乾燥)した後に後続の有機テンプレートおよびアルカリ金属イオン除去を行うことができる。
【0057】
テンプレートおよび/またはアルカリ金属の除去処理は、酸性溶液、テンプレート分解成分を含む化学溶液を用いた液相処理、樹脂等を用いたイオン交換処理、熱分解処理を使用してもよく、これらの処理を組み合わせて使用してもよい。一般的には、空気または酸素含有不活性ガス雰囲気、または不活性ガス雰囲気下で300℃~1000℃の温度で焼成するか、またはエタノール水溶液などの有機溶媒で抽出することにより、含有する有機物(テンプレート等)を除去することができる。
【0058】
製造の観点から、好ましくは焼成によりテンプレート等を除去する。このとき、焼成温度は好ましくは400℃以上であり、より好ましくは450℃以上であり、さらに好ましくは500℃以上であり、かつ好ましくは900℃以下であり、より好ましくは850℃以下であり、さらに好ましくは800℃以下である。不活性ガスとして、窒素などのガスを使用してもよく、ガスに水蒸気(例えば5%~10%の水蒸気)などの不活性成分を添加してもよい。
【0059】
また、ゼオライトのイオン交換能力を利用してアルカリ金属部分をH型、NH型に変換することもでき、その方法は公知の技術を使用することができる。NHNO、NHCl、(NHSOなどのアンモニウム塩または塩酸などの酸性溶液を用いて、室温~100℃で処理した後に水洗することができる。NH型の分子篩はさらに焼成によりH型分子篩に変換することができる。その焼成温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上であり、かつ好ましくは900℃以下、より好ましくは800℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。不活性ガスとして、窒素などのガスを使用してもよく、ガスに水蒸気(例えば5%~10%の水蒸気)などの不活性成分を添加してもよい。
【0060】
同様に、ゼオライトのイオン交換能力を利用して、水熱合成後のゼオライトまたは有機テンプレートを除去したゼオライトとビスマス源とを有機溶媒中でイオン交換し、その後に交換後のゼオライトを乾燥させ(例えば80℃~100℃で1時間~12時間乾燥させる)、かつ焼成する。その焼成温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上であり、かつ好ましくは900℃以下、より好ましくは800℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。焼成時間は1時間~6時間であってもよく、例えば2時間、3時間、4時間または5時間である。不活性ガスとして、窒素などのガスを使用してもよく、ガスに水蒸気(例えば5%~10%の水蒸気)などの不活性成分を添加してもよい。
【0061】
本発明の焼成用装置は特に限定されず、マッフル炉、トンネル窯または回転窯などの一般的な工業窯炉を使用することができる。連続生産の利便性の観点から、好ましくは回転窯を使用する。
【0062】
ゼオライトの使用方法
本発明のゼオライトは粉末状で直接使用してもよく、接着剤と混合して、ゼオライトを含有する混合物として使用してもよい。用いられる接着剤は、通常、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどの無機接着剤またはポリシロキサン系有機接着剤であり得る。ポリシロキサン系とは、主鎖にポリシロキサン結合を有するオリゴマーまたはポリマーであり、ポリシロキサン結合の主鎖の置換基の一部が加水分解されて水酸基を形成するものも含む。接着剤の使用量は、特に限定されないが、通常1~20重量%であってもよく、成形時の強度の観点から、2~15重量%である。
【0063】
本発明のゼオライトまたは該ゼオライトを含む混合物は、造粒または成形してから使用してもよい。造粒または成形の方法は特に限定されず、様々な公知の方法を使用して行うことができる。通常、前記ゼオライト混合物を成形し、成形体として使用する。成形体の形状は、複数種であってもよい。例えば、本発明のゼオライトを移動体(車両、船舶等)の排ガス中の窒素酸化物浄化用触媒として用いる場合、該ゼオライトを応用する方法は塗布法または成形法であってもよく、ゼオライトをハニカム状触媒に成形する。前記塗布法は一般的にゼオライトを二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムなどの無機接着剤と混合し、スラリーに製造し、さらにそれをコージェライトなどの無機物で製造されたハニカム状物の表面に塗布し、次に乾燥し、焼成して形成される。前記成形法は一般的にゼオライトとシリカ、アルミナなどの無機接着剤またはアルミナ繊維、ガラス繊維などの無機繊維を混練し、押出法または圧縮法によりハニカム状に成形し、さらに乾燥し、焼成する。
【0064】
窒素酸化物およびその浄化
本発明のゼオライトを触媒とする場合、ゼオライトは窒素酸化物を含有する排ガスと接触することにより窒素酸化物を浄化する。ここで浄化される窒素酸化物は一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素などを含む。本明細書において、窒素酸化物を浄化することは窒素酸化物を触媒で反応させ、窒素および酸素ガス等に変換することである。この時、窒素酸化物を直接反応させてもよく、浄化効率を向上させる目的で、還元剤と触媒に共存させてもよい。還元剤を使用する場合、本明細書に記載のゼオライトは窒素酸化物の浄化反応をより容易に行うことができ、工業排ガス浄化用触媒において、還元剤とするアルコールは、特に限定されないが、工業排ガスの還元処理の温度で還元能力を有する化合物であればよく、好ましくは炭素原子数が6以下のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等であり、より好ましくはメタノール、エタノールである。本発明のゼオライトを触媒として使用する場合、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、固定式発電船舶、農業機械、建設機械、二輪または三輪自動車、航空機用の様々なガソリンエンジン、ボイラ、ガスタービン等から排出された様々な排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【実施例
【0065】
以下の実施例を提供して本発明の実施例をよりよく理解しやすいが、それを限定するものではない。下記実施例で使用された実験方法は特に説明しない限り、いずれも従来の方法であり、使用された材料、試薬等は、特に説明しない限り、いずれも商業的に入手することができる。
【0066】
X線回折(XRD)測定
X線回折測定装置はRigaku MiniFlex600であり、検出光源Cu Kαであり、管電圧は40kVであり、管電流は40mAであり、検出角度範囲は3~55°であり、走査速度は8°/minである。X線回折測定により合成されたゼオライトの相構造を測定し、そのうち、研磨後のサンプル粉末をガラス平板上の角孔内に添加し、次にガラス平板をゴニオメータの軸線位置に挿入し、Cu Kα光源の照射下で、プローブは2θ/minの速度で回転する。
【0067】
固体核磁気(NMR)測定
固体核磁気測定装置はBusker Avance III HD 400 WBであり、27Al NMR測定の共振周波数は104.3MHzであり、繰り返し時間は0.1sであり、回転周波数は10kHzである。29Si NMR測定の共振周波数は79.5MHzであり、繰り返し時間は6sであり、回転周波数は5kHzである。
【0068】
触媒活性の評価方法
製造されたゼオライトをプレス成形した後、粉砕し、整粒する。整粒したゼオライト(2mL)を常圧固定床流通式反応管内に充填する。1000mL/min(空間速度SV=30000/時間)で、表2の組成を含むガスを触媒層に流通させ、同時に触媒層を加熱する。それぞれ異なる温度で、出口NO濃度、NO濃度およびNO濃度に基づいて、以下の式の値で触媒の窒素酸化物除去活性を評価する。
【0069】
(NO転化率)={(入口NO濃度)-(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)
(N選択性)={(入口NO濃度)-(出口NO濃度)-(出口NO濃度)―1/2(出口NO濃度)}/{(入口NO濃度)-(出口NO濃度)}
【0070】
【表2】
【0071】
[実施例1]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3、ここおよび以下はいずれもSiOとNaOとのモル比を指す)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液を製造する。2.94gの硫酸アルミニウム十八水和物を26.5gの水に溶解し、その後に前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌してヒドロゲルを得、そのゲルの組成は、17SiO:1Al:11.9CN:5.27NaO:680HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却する。濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥させ、テンプレート含有分子篩A1を得る。分子篩A1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩A2を得る。
【0072】
1.1gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩A2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して回収して得られた粉体を100℃で2時間乾燥させる。得られた粉体を500℃の空気で2時間焼成し、分子篩Aを得る。分子篩AのXRD測定結果は図1に示すように、FER型分子篩である。分子篩Aの29Si固体核磁気共鳴スペクトルは図2に示すように、その-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の45%を占める。分子篩Aのメタノール-SCRの触媒活性結果を表3に示す。
【0073】
[実施例2]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液に製造する。1.77gの硫酸アルミニウム十八水和物を27.1gの水に溶解し、その後に前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌してヒドロゲルを得、そのゲルの組成は28SiO:1Al:19.6CN:8.68NaO:1120HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却する。濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥させ、テンプレートを含有する分子篩B1を得る。分子篩B1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩B2を得る。
【0074】
0.72gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩B2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を500℃の空気で2時間焼成し、分子篩Bを得る。分子篩BのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Bの29Si固体核磁気共鳴スペクトルは図3に示すように、その-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の36%を占める。分子篩Bのメタノール-SCRの触媒活性結果を表3に示す。
【0075】
[実施例3]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液に製造する。1.665gの硫酸アルミニウム十八水和物を28gの水に溶解し、その後に前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌してヒドロゲルを得、そのゲルの組成は、30SiO:1Al:21CN:9.3NaO:1200HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却する。濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥させ、テンプレートを含有する分子篩C1を得る。分子篩C1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩C2を得る。
【0076】
0.72gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩C2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を500℃の空気で2時間焼成し、分子篩Cを得る。分子篩CのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Cの29Si固体核磁気共鳴スペクトルは図4に示すように、その-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の32.2%を占める。分子篩Cのメタノール-SCRの触媒活性結果を表3に示す。
【0077】
[実施例4]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液に製造する。1.249gの硫酸アルミニウム十八水和物を28gの水に溶解し、その後に前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌してヒドロゲルを得、そのゲルの組成は40SiO:1Al:28CN:12.4NaO:1600HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却する。濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥させ、テンプレートを含有する分子篩D1を得る。分子篩D1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩D2を得る。
【0078】
0.72gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩D2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を500℃の空気で2時間焼成し、分子篩Dを得る。分子篩DのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Dの29Si固体核磁気共鳴スペクトルは図5に示すように、その-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の33%を占める。分子篩Dのメタノール-SCRの触媒活性結果を表3に示す。
【0079】
[比較例1]
日本TOSOH社のNH型FER分子篩(HSZ-720 NHA、SiO/Alモル比:18)は、空気中で600℃で12時間焼成し、分子篩Eを得、分子篩Eの29Si固体核磁気共鳴スペクトルは図6に示すように、その-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の23%を占める。分子篩Eのメタノール-SCRの触媒活性結果を表3に示す。
【0080】
[実施例5]
0.3gの五水和硝酸ビスマスを17.8gのエチレングリコールに溶解し、硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液を製造し、次に溶液に、実施例1で製造された分子篩Aを添加し、室温で2時間撹拌し、濾過し、回収して得られた粉体を、80℃で12時間乾燥させた後、10%の水蒸気を含有する空気雰囲気で600℃で5時間焼成し、分子篩Fを得る。分子篩FのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Fの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図7に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の31.5%を占める。分子篩Fのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0081】
[実施例6]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液に製造する。2.85gの硫酸アルミニウム十八水和物を26.5gの水に溶解し、その後に前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌して初期ヒドロゲルを得る。次に、0.12gの五水和硝酸ビスマスを7.5gのエチレングリコールに溶解し、上記硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液をヒドロゲルに滴下し、最終的なヒドロゲルを得、ゲルの組成は17.4SiO:1Al:0.03Bi:12.18CN:5.39NaO:696HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却する。濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥させ、テンプレートを含有する分子篩G1を得る。分子篩G1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩G2を得る。
【0082】
1.1gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩G2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を空気中で600℃で5時間焼成し、分子篩Gを得る。分子篩GのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Gの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図8に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の39.8%を占める。分子篩Gのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0083】
[実施例7]
1.1gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に実施例6で合成された4gの分子篩G2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を空気中で700℃で5時間焼成し、分子篩Hを得る。分子篩HのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Hの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図9に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の38.1%を占める。分子篩Hのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0084】
[実施例8]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液に製造する。2.78gの硫酸アルミニウム十八水和物を26.6gの水に溶解し、前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌して初期ヒドロゲルを得る。次に、0.2gの五水和硝酸ビスマスを12.4gのエチレングリコールに溶解し、上記硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液をヒドロゲルに滴下し、最終的なヒドロゲルを得、そのゲルの組成は19.12SiO:1Al:0.05Bi:13.38CN:5.93NaO:764.8HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却する。濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥させ、テンプレートを含有する分子篩I1を得る。分子篩I1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩I2を得る。
【0085】
1.1gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩I2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を10%の水蒸気を含有する空気中で600℃で5時間焼成し、分子篩Iを得る。分子篩IのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Iの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図10に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の32.9%を占める。分子篩Iのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0086】
[実施例9]
0.04gの水酸化ナトリウムを15gの水に溶解し、次に17gの液体ケイ酸ナトリウム(モル数比:3.3)および3.7gのピロリジンを添加して混合溶液に製造する。1.71gの硫酸アルミニウム十八水和物を27.1gの水に溶解し、前記混合溶液に滴下し、均一に撹拌して初期ヒドロゲルを得る。次に、0.2gの五水和硝酸ビスマスを12.2gのエチレングリコールに溶解し、上記硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液をヒドロゲルに滴下し、最終的なヒドロゲルを得、そのゲルの組成は30.4SiO:1Al:0.08Bi:21.28CN:9.4NaO:1216HOである。室温で12時間撹拌熟成した後、ヒドロゲルを耐温耐圧容器に入れ、160℃で72時間水熱合成した後、反応液を冷却し、濾過して回収して得られた粉体を回収する。100℃で2時間乾燥させ、テンプレートを含有する分子篩J1を得る。分子篩J1を空気中で600℃で6時間焼成し、有機テンプレートを除去し、分子篩J2を得る。
【0087】
0.72gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に4gの分子篩J2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を10%の水蒸気を含有する空気中で600℃で5時間焼成し、分子篩Jを得る。分子篩JのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Jの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図11に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の32.2%を占める。分子篩Iのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0088】
[比較例2]
0.3gの五水和硝酸ビスマスを17.8gのエチレングリコールに溶解し、硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液を製造し、次に溶液に、比較例1で製造された分子篩Eを添加し、室温で2時間撹拌し、濾過し、得られた粉体を回収し、80℃で12時間乾燥させた後、空気雰囲気で500℃で4時間焼成し、分子篩Kを得る。分子篩KのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Kの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図12に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の26%を占める。分子篩Kのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0089】
[比較例3]
1.1gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に実施例8で製造された4gの分子篩I2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を空気中で500℃で2時間焼成し、分子篩Lを得る。分子篩LのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Lの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図13に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の24.1%を占める。分子篩Lのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0090】
[比較例4]
0.72gの塩化アンモニウムを16gの水に溶解し、次に実施例9で製造された4gの分子篩J2を添加してスラリーを形成し、80℃で2時間反応させてイオン交換を行う。反応液を冷却し、濾過して得られた粉体を回収して100℃で2時間乾燥する。得られた粉体を空気中で500℃で2時間焼成し、分子篩Mを得る。分子篩MのXRD測定結果はそれがFER型分子篩であることを示す。分子篩Mの27Al固体核磁気共鳴スペクトルは図14に示すように、その-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積が-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の17.9%を占める。分子篩Lのメタノール-SCRの触媒活性結果を表4に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
上記実施例および比較例の結果から分かるように、29Si固体核磁気共鳴スペクトルにおいて-90~-110ppmの化学シフト区間のピーク面積が-90~-125ppmの化学シフト区間のピーク面積の25%以上を占めるFER分子篩は高いメタノール-SCR触媒活性を示し、かつ高い窒素選択性を有する。27Al固体核磁気共鳴スペクトルにおいて-50~40ppmの化学シフト区間のピーク面積は-50~150ppmの化学シフト区間のピーク面積の28%以上のビスマス含有FER分子篩を占め、分子篩は、高いメタノール-SCR触媒活性を示し、同時に250℃でNOの生成量が大幅に減少し、窒素選択性が明らかに向上する。
【0094】
特定の実施例を参照して本明細書に記載の実施形態を説明するが、理解すべきことは、当業者はそれを様々な調整および変更を行うことができ、本発明の範囲および要旨に反しない限りである。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
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図14