(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】浴室暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24D 15/00 20220101AFI20240920BHJP
D06F 58/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F24D15/00 B
D06F58/10 A
(21)【出願番号】P 2021059402
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】土田 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真弘
(72)【発明者】
【氏名】江口 和秀
(72)【発明者】
【氏名】呉 成浩
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250540(JP,A)
【文献】特開2005-214474(JP,A)
【文献】特開2020-103367(JP,A)
【文献】特開2009-247898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 13/00 - 15/04
D06F 53/00 - 60/00
F26B 1/00 - 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に取り込まれた空気を加熱する加熱部と、
微細な水滴を生成して前記本体に取り込まれた空気に付加する微細水滴付加部と、
前記加熱部により加熱した空気と、前記微細水滴付加部により前記微細な水滴が付加された空気とを切り替えて、浴室内に吹き出す吹出部と、
前記浴室内の空気を排気して換気する換気部と、
前記吹出部から前記浴室内に向けて吹き出される空気の向きを変更する可変風向ルーバーと、
前記加熱部、前記微細水滴付加部
、前記吹出部
、前記換気部、及び前記可変風向ルーバーの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部の制御によって、前記微細水滴付加部により前記微細な水滴が付加された空気を第1所定時間、前記吹出部から吹き出した後、前記加熱部により加熱された空気を第2所定時間、前記吹出部より吹き出すサイクルを1サイクル以上実行する第1運転モードが実現される浴室暖房装置であって、
前記制御部は、前記浴室暖房装置の第2運転モードとして、前記微細水滴付加部により前記微細な水滴が付加された空気を前記第1所定時間よりも長い第3所定時間、前記吹出部から吹き出した後、前記加熱部により加熱された空気を第4所定時間、前記吹出部より吹き出すように制御
し、
前記制御部は、前記第1運転モードの前記第1所定時間において前記換気部による換気を行い、前記第2運転モードの前記第3所定時間において前記換気部による換気を非実行とする制御を行い、
前記制御部の制御によって、前記可変風向ルーバーは、前記第1運転モードの前記第1所定時間においてスイング動作し、前記第2運転モードの前記第3所定時間において特定の角度に固定されることを特徴とする浴室暖房装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2運転モードの場合に、前記加熱部により加熱された空気を前記第4所定時間、前記吹出部より吹き出した後も、前記換気部による換気を行うことを特徴とする請求項
1記載の浴室暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に設けられ、暖房に加えて微細な水滴を吹き出す機能を有する浴室暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴室を暖房する浴室暖房装置に、微細な水滴(ミスト)を吹き出す機能を有したものが知られており、このミストを利用して、衣類の脱臭機能を実現したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、脱臭機能に加えて、浴室暖房装置のさらなる高機能化が望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、衣類の脱臭機能に加えて、しわ低減機能を実現可能な浴室暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の浴室暖房装置は、本体と、加熱部と、微細水滴付加部と、吹出部と、制御部と、を備える。加熱部は、本体に取り込まれた空気を加熱する。微細水滴付加部は、微細な水滴を生成して本体に取り込まれた空気に付加する。吹出部は、加熱部により加熱した空気と、微細水滴付加部により微細な水滴が付加された空気とを切り替えて、浴室内に吹き出す。制御部は、加熱部、微細水滴付加部、及び吹出部の動作を制御する。浴室暖房装置は、制御部の制御によって、微細水滴付加部により微細な水滴が付加された空気を第1所定時間、吹出部から吹き出した後、加熱部により加熱された空気を第2所定時間、吹出部より吹き出すサイクルを1サイクル以上実行する第1運転モードが実現される。また、制御部は、浴室暖房装置の第2運転モードとして、微細水滴付加部により微細な水滴が付加された空気を第1所定時間よりも長い第3所定時間、吹出部から吹き出した後、加熱部により加熱された空気を第4所定時間、吹出部より吹き出すように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浴室暖房装置によれば、衣類の脱臭機能に加えて、しわ低減機能を実現可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る浴室暖房装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、同浴室暖房装置において実現される、脱臭機能を実現する第1運転モードと、しわ低減機能を実現する第2運転モードとのタイミングチャートである。
【
図3】
図3(a)は、衣類の繊維同士が水素結合により吸着している様子と、その繊維にミストが吸着している様子を示した図であり、
図3(b)は、衣類の繊維同士に形成された水素結合がほどけた状態を示した図であり、
図3(c)は、衣類に当てられた温風によって、繊維の形が整えられた状態を示した図であり、
図3(d)は、衣類の繊維の形が整えられた状態で、再び繊維同士が水素結合で吸着している様子を示した図である。
【
図4】
図4(a)は、一日着用したスーツであり、同浴室暖房装置を第2運転モードで動作させる前の衣類の状態を示した図であり、
図4(b)は、
図4(a)で示した衣類を浴室内に掛けて、同浴室暖房装置を第2運転モードで動作させた後の衣類の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0010】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る浴室暖房装置1の概略構成について説明する。
図1は、同浴室暖房装置1の概略構成図である。
【0011】
浴室暖房装置1は、
図1に示す通り、本体2と、吸込部17と、送風部3と、加熱部4と、微細水滴付加部5と、換気部6と、吹出部8と、リモートコントローラ12と、制御部7とを備える。浴室暖房装置1の本体2は、浴室に設置され、浴室内の空気を温める暖房機能を実現する運転モードを有するほか、浴室内のハンガーに掛けられた衣類16の脱臭を行う脱臭機能を実現する第1運転モードと、更に衣類16のしわを低減するしわ低減機能を実現する第2運転モードを有している。
【0012】
吸込部17は、浴室内の空気を吸い込んで本体2内に取り込む。
【0013】
送風部3は、吸込部17により浴室内から本体2内に取り込まれた空気を循環させて、浴室内へ送風するもので、図示しないモータにより回転駆動されるファン3aと、ファン3aによって送風された空気を浴室内に案内する送風風路3bとにより構成される。送風部3により送風される空気には、浴室内から取り込んだ空気に加えて、浴室外(例えば、屋外)から取り込んだ空気を含めてもよい。
【0014】
送風風路3bには第1開閉ダンパー9が設けられている。第1開閉ダンパー9が開状態にある場合に、送風風路3bによって案内された空気が、吹出部8より浴室内に吹き出される。
【0015】
加熱部4は、吸込部17により浴室内から本体2内に取り込まれて送風部3によって送風される空気を加熱するものである。なお、送風部3により送風される空気に、浴室外から取り込んだ空気が含まれる場合、その浴室外から取り込んだ空気をも含めて、加熱部4によって加熱されるように構成されてもよい。
【0016】
微細水滴付加部5は、微細水滴生成部5aと、微細水滴風路5bとにより構成される。微細水滴生成部5aは、湿潤感を感じさせない微細な水滴(以下「ミスト」という)を生成するものであり、微細水滴生成部5aにより生成されたミストを、吸込部17により浴室内から本体2内に取り込まれた空気に付加する。なお、送風部3により送風される空気に、浴室外から取り込んだ空気が含まれる場合、その浴室外から取り込んだ空気をも含めて、微細水滴生成部5aにより生成されたミストを付加するように構成されてもよい。
【0017】
ミストが付加された空気は、微細水滴風路5bによって浴室内へ案内される。微細水滴風路5bには第2開閉ダンパー10が設けられている。第2開閉ダンパー10が開状態にある場合に、微細水滴風路5bによって案内された空気が、吹出部8より浴室内に吹き出される。
【0018】
換気部6は、吸込部17により本体2内に取り込まれた浴室内の空気を、浴室外へ排気するものである。換気部6には、第3開閉ダンパー18が設けられており、第3開閉ダンパー18が開状態にある場合に、浴室内の空気が浴室外へ排気される。
【0019】
吹出部8は、第1開閉ダンパー9及び第2開閉ダンパー10の開閉状態を切り替えることで、加熱部4により加熱した空気と、微細水滴付加部5によりミストが付加された空気とを切り替えて、浴室内に吹き出すものである。
【0020】
吹出部8には、可変風向ルーバー11が設けられており、吹出部8から浴室内に向けて吹き出される空気(風)の向きが、可変風向ルーバー11によって制御される。ここで、浴室暖房装置1が脱臭機能を実現する第1運転モードで運転する場合に、可変風向ルーバー11は、所定角度の間を約30秒の周期でスイング動作するよう制御される(
図2参照)。これにより、加熱された空気、又はミストが付加された空気が、浴室内に万遍なく送風される。
【0021】
一方、浴室暖房装置1がしわ低減機能を実現する第2運転モードで運転する場合に、可変風向ルーバー11は、特定の角度に固定される。特定の角度は、後述の風向ボタン14によって変更が可能とされる(
図2参照)。これにより、加熱された空気、又はミストが付加された空気が衣類16に向けて送風される角度(特定の角度)とすることで、効率よく衣類16のしわを低減できる。特定の角度は、例えば本体2が設置される浴室の天井面に対して約60度が挙げられる。
【0022】
リモートコントローラ12は、使用者の操作により、浴室暖房装置1のオン/オフや、動作にかかわる各種設定の入力を受け付けるもので、例えば本体2とは離れた浴室内の壁面、又は脱衣所の壁面に取り付けられている。
【0023】
リモートコントローラ12と本体2とは、有線又は無線によって接続され、リモートコントローラ12に対して行われた使用者の操作に基づいて、リモートコントローラ12から本体2に対して制御信号が送信される。また、リモートコントローラ12に、温度や湿度など、浴室の状況を判断するセンサが取り付けられている場合には、そのセンサの出力に係る信号が、本体2に対して送信される。一方、本体2からリモートコントローラ12に対して、浴室暖房装置1の運転状況など本体2の状態を示す信号が送信される。
【0024】
リモートコントローラ12には、衣類リフレボタン13と、風向ボタン14と、時間設定ボタン15とが設けられている(
図2参照)。衣類リフレボタン13は、衣類16の脱臭機能、又はしわ低減機能を設定するボタンである。衣類リフレボタン13が操作される毎に、浴室暖房装置1の運転モードが、脱臭機能を実現する第1運転モードと、しわ低減機能を実現する第2運転モードとの間で切り替えられ、その運転モードを示す制御信号が本体2に対して送信される。
【0025】
風向ボタン14は、吹出部8から吹き出される空気の風向を変更するためのボタンである。風向ボタン14が操作される度に、その操作があったことを示す制御信号が本体2に対して送信され、可変風向ルーバー11の角度が変更される。なお、浴室暖房装置1が第1運転モードで動作している場合は、風向ボタン14の操作は無効とされ、可変風向ルーバー11は所定角度の間をスイング動作する。
【0026】
時間設定ボタン15は、浴室暖房装置1の各種運転モードに対して、その運転時間を設定するボタンであり、上向き三角の形をしたボタンと、下向き三角の形をしたボタンとの2つのボタンによって構成される。上向き三角のボタンが操作された場合は、運転時間が延長される。また、下向き三角のボタンが操作された場合は、運転時間が短縮される。そして、運転時間が延長、又は短縮された場合に、そのことを示す制御信号が本体2に対して送信される。
【0027】
リモートコントローラ12には、また、液晶ディスプレイで構成された表示部19が設けられている。表示部19は、浴室暖房装置1に設定された運転モードの種別、可変風向ルーバー11の向き、設定された運転モードの運転時間等、リモートコントローラ12によって設定された内容や、本体2より受信した浴室暖房装置1の運転状況等を表示する。
【0028】
制御部7は、リモートコントローラ12より受信した制御信号や、図示しない各種センサからの出力信号に基づいて、浴室暖房装置1の動作を制御する。具体的には、制御部7は、浴室暖房装置1の運転状況に基づいて、送風部3のファン3a、加熱部4、微細水滴生成部5a、第1開閉ダンパー9、第2開閉ダンパー10、第3開閉ダンパー18、可変風向ルーバー11等の動作を制御する。
【0029】
ここで、
図2を参照して、このように構成された浴室暖房装置1の動作について説明する。
図2は、脱臭機能を実現する第1運転モード及びしわ低減機能を実現する第2運転モードのタイミングチャートである。
【0030】
上述した通り、使用者によって衣類リフレボタン13が操作される度に、浴室暖房装置1の運転モードが第1運転モードと第2運転モードとの間で切り替わり、その情報を示す制御信号がリモートコントローラ12から本体2に送信され、制御部7に入力される。
【0031】
浴室暖房装置1は、第1運転モードで動作する場合、衣類16(
図1参照)の脱臭機能を実現する。具体的には、制御部7が、リモートコントローラ12からの制御信号に基づいて、浴室暖房装置1を第1運転モードで運転すると判断すると、各部位を次のように制御する。
【0032】
まず、可変風向ルーバー11が所定角度の間を約30秒の周期でスイング動作するように、制御部7は可変風向ルーバー11の動作を制御する。また、制御部7は、運転時間を初期設定40分に設定する。そして、制御部7は、ファン3aを回転駆動させながら、最初の10分間(第1所定時間)、微細水滴生成部5aを駆動してミストを生成し、微細水滴付加部5において、本体2内に取り込まれた空気にミストを付加する。そして、その第1所定時間に係る10分間、制御部7は、第1開閉ダンパー9を閉じ、第2開閉ダンパー10を開くことで、微細水滴風路5bによって案内された、ミストが付加された空気が、その時々の可変風向ルーバー11の向きに従って吹出部8より浴室内に吹き出される。また、その第1所定時間に係る10分間、制御部7は、第3開閉ダンパー18を開くことで、浴室内から取り込まれた空気が換気部6によって浴室外へ排気され、浴室内の換気があわせて行われる。
【0033】
制御部7は、第1所定時間に係る10分間が経過すると、微細水滴生成部5aによるミストの生成を停止し、第2開閉ダンパー10を閉じる。そして、制御部7は、引き続きファン3aを回転駆動させながら、次の10分間(第2所定時間)、乾燥運転を行う。即ち、制御部7は、乾燥運転として、加熱部4を駆動して、本体2内に取り込まれた空気を加熱する。また、その制御部7は、第2開閉ダンパー10を閉じたまま、第1開閉ダンパー9を開くことで、送風風路3bによって案内された、加熱された空気が、その時々の可変風向ルーバー11の向きに従って吹出部8より浴室内に吹き出される。このとき、制御部7は、第1所定時間に係る10分間と同様に、第3開閉ダンパー18を開くことで、浴室内から取り込まれた空気が換気部6によって浴室外へ排気され、浴室内の換気があわせて行われる。
【0034】
制御部7のこのような制御によって、第1所定時間に係る10分間は、浴室内の温度は約43度、相対湿度は45%に保たれる。また、可変風向ルーバー11が所定角度の間をスイング動作することにより、浴室内はミストが均一に満たされる。これにより、浴室内のハンガーに掛けられた衣類16には、満遍なくミストを吸着させることができる。
【0035】
また、第1所定時間に係る10分間、あわせて浴室内の換気が行われる。よって、浴室内にミストが付加された空気が吹き出されても、浴室内の相対湿度が45%程度に抑えること、即ち、浴室内の相対湿度の上昇を抑えることができる。従って、衣類16に吸着した水分を効率よく蒸発させ、同時に臭気成分も揮発させて、衣類16の脱臭を行うことができる。
【0036】
そして、第2所定時間に係る10分間、加熱された空気が、可変風向ルーバー11のスイング動作によって、浴室内に満遍なく吹出部8より吹き出すことができるので、第1所定時間に係る10分間、ミストにより水滴が付着した浴室の乾燥を、短時間で効率よく行うことができる。
【0037】
制御部7は、第1運転モードで運転する場合、第1所定時間に係る10分間でのミストの吹出+換気の運転と、第2所定時間に係る10分間での乾燥の運転とを1サイクルとして、これを1サイクル以上実行する。例えば、運転時間として初期設定の40分間が設定された場合に、制御部7は、ミストの吹出+換気の運転と乾燥の運転とを2サイクル実行するよう制御する。
【0038】
また、運転時間が延長されて60分に設定された場合、制御部7は、ミストの吹出+換気の運転と乾燥の運転とを3サイクル実行するよう制御する。一方、運転時間が短縮されて20分に設定された場合、制御部7は、ミストの吹出+換気の運転と乾燥の運転とを1サイクルのみ実行するよう制御する。
【0039】
ミストの吹出+換気の運転と乾燥の運転とのサイクルを増やすほど、衣類16の脱臭効果を高めることができる。例えば、初期設定の40分間の運転時間に対する衣類16の脱臭効果が低い場合には、運転時間を(60分間に)延長することで、衣類16の脱臭効果を高めることができる。
【0040】
一方、衣類16に付着した臭いが弱く、初期設定の運転時間よりも短い時間で脱臭ができる場合などには、運転時間を(20分間に)短縮することもできる。
【0041】
制御部7は、ミストの吹出+換気の運転と乾燥の運転とのサイクルを、設定された運転時間に応じた回数だけ繰り返すと、ファン3aを含めて浴室暖房装置1の動作を停止させる。ただし、リモートコントローラ12の操作によって、常時換気の設定がなされている場合は、浴室暖房装置1を常時換気運転モードとして動作させる。即ち、制御部7は、加熱部4による空気の加熱を停止し、第1開閉ダンパー9を閉じつつ、第3開閉ダンパー18を開き、ファン3aを回転駆動させたままにすることで、浴室内の空気を常時換気するようにする。
【0042】
次に、浴室暖房装置1が第2運転モードで動作する場合について説明する。この場合、浴室暖房装置1は、上述した通り、衣類16のしわ低減の機能を実現する。具体的には、制御部7が、リモートコントローラ12からの制御信号に基づいて、浴室暖房装置1を第2運転モードで運転すると判断すると、各部位を次のように制御する。
【0043】
まず、制御部7は、吹出部8から吹き出される空気の風向が特定の角度となるように可変風向ルーバー11を動かし、特定の角度となったところで可変風向ルーバー11を停止して固定する。なお、制御部7は、浴室暖房装置1が第2運転モードで動作中、リモートコントローラ12より風向ボタン14が操作されたことを示す制御信号を受信すると、可変風向ルーバー11を駆動して、上記の特定の角度を変更する。
【0044】
ここで、制御部7は、第2運転モードの運転時間の初期設定を80分間に設定する。そして、リモートコントローラ12の時間設定ボタン15が操作されたことに基づいて、リモートコントローラ12より第2運転モードの運転時間の短縮を示す制御信号を受信した場合に、制御部7は、運転時間を60分間に設定する。運転時間を60分間に設定した後、リモートコントローラ12より運転時間の延長を示す制御信号を受信した場合、制御部7は、第2運転モードの運転時間を80分に設定する。
【0045】
第2運転モードの運転時間が(初期設定の)80分間の場合、制御部7は、ファン3aを回転駆動させてから、第3所定時間として最初の60分間、ミストが付加された空気を吹出部8から吹き出す。また、第2運転モードの運転時間が(短縮の)60分の場合、制御部7は、ファン3aを回転駆動させてから、第3所定時間として最初の40分間、ミストが付加された空気を吹出部8から吹き出す。つまり、第2運転モードにおいてミストを付加された空気が吹出部8より吹き出される時間(第3所定時間)は、第1運転モードにおいてミストを付加された空気が吹出部8より吹き出される時間(第1所定時間)よりも長い。
【0046】
制御部7は、第3所定時間、微細水滴生成部5aを駆動してミストを生成し、微細水滴付加部5において、本体2内に取り込まれた空気にミストを付加する。そして、制御部7は、第3所定時間、第1開閉ダンパー9を閉じ、第2開閉ダンパー10を開くことで、微細水滴風路5bによって案内された、ミストが付加された空気を、可変風向ルーバー11の向き(特定の角度)に従って、吹出部8より浴室内に吹き出す。また、制御部7は、第3所定時間、第3開閉ダンパー18を閉じることで、浴室内から取り込まれた空気が換気部6によって排気されることを非実行とする制御を行う。
【0047】
制御部7は、第3所定時間が経過すると、次の20分間(第4所定時間)、ファン3aを回転駆動させたまま、微細水滴生成部5aによるミストの生成を停止し、第2開閉ダンパー10を閉じ、第1開閉ダンパー9を開き、加熱部4を駆動して、本体2内に取り込まれた空気を加熱する。加熱された空気は、送風風路3bを通過し、可変風向ルーバー11の向きに従って吹出部8より浴室内に吹き出される。これにより、第4所定時間、乾燥運転が行われる。このとき、制御部7は、第3開閉ダンパー18を開くことで、浴室内から本体2内に取り込まれた空気を換気部6より排気し、浴室内の換気をあわせて行う。浴室内が換気されることで、衣類16の乾燥を早めることができる。
【0048】
制御部7は、第4所定時間の経過後、浴室暖房装置1が自動換気モードで動作するように制御する。即ち、制御部7は、ファン3aを回転駆動させたまま、加熱部4による空気の加熱を停止し、第1開閉ダンパー9を閉じつつ、第3開閉ダンパー18を開くことで、浴室内の空気を自動換気するようにする。
【0049】
上述した通り、第2運転モードは、第1運転モードの第1所定時間よりも長い第3所定時間、ミストが付加された空気を吹出部8より吹き出す。加えて、第2運転モードは、第3所定時間、浴室内から取り込まれた空気が換気部6によって排気されることを非実行とする。つまり、浴室の壁面に付着する水滴の量は、第1運転モードにおいて第1所定時間が経過した場合よりも、第2運転モードにおいて第3所定時間が経過した場合のほうが、第2運転モードの第4所定時間に係る乾燥を行ったとしても、より多く水滴が残っている可能性が高い。そこで、制御部7は、自動換気運転を行うことで、浴室の壁面に付着した水滴を積極的に取り除くことができる。
【0050】
制御部7は、浴室内又は換気部6に設けられた図示しない湿度センサによって測定された湿度が所定閾値以下となった場合に、又は、自動換気運転を開始してから第5所定時間が経過した場合に、自動換気運転を停止し、ファン3aを含めて浴室暖房装置1の動作を停止させる。ただし、リモートコントローラ12の操作によって、常時換気の設定がなされている場合は、浴室暖房装置1を常時換気運転モードとして動作させる。即ち、制御部7は、そのままファン3aの回転駆動を継続して、浴室内の空気を常時換気するようにする。
【0051】
第2運転モードの第3所定時間において、浴室内の温度は約45度、相対湿度は75%に保たれる。即ち、浴室内の換気が非実行とされるため、第3所定時間における浴室内の相対湿度は、第1運転モードの第1所定時間における浴室内の相対湿度より高くなる。よって、第2運転モードは、第1運転モードよりも、衣類16に対してミストを積極的に吸着させることができる。
【0052】
また、第3所定時間におけるミストの生成時間は、第1運転モードにおけるミストの生成時間よりも長い。よって、第2運転モードは、第1運転モードよりも、衣類16に対してミストを積極的に吸着させることができる。
【0053】
更に、可変風向ルーバー11は、特定の角度に固定されるので、浴室内のハンガーに掛けられた衣類16に対して、ミストを付加された空気を積極的に当てることもできる。よって、第2運転モードは、第1運転モードよりも、衣類16に対してミストを積極的に吸着させることができる。
【0054】
このように、浴室暖房装置1は、第2運転モードを備えることで、衣類16に対するミストの吸着を、第1運転モードに比べて積極的に行うことが可能な構成となっている。
【0055】
ここで、
図3を参照して、浴室暖房装置1が第2運転モードで動作した場合に、衣類16のしわが低減される理屈について説明する。
図3は、衣類16のしわ低減の理屈を模式的に説明した説明図である。
図3(a)~(d)には、それぞれ衣類16を構成する繊維を示している。そして、
図3(a)は、衣類16の繊維同士が水素結合により吸着している様子と、その繊維にミストが吸着している様子を示している。
図3(b)は、衣類16の繊維同士に形成された水素結合がほどけた状態を示している。
図3(c)は、衣類16に当てられた温風によって、繊維の形が整えられた状態を示している。
図3(d)は、衣類16の繊維の形が整えられた状態で、再び繊維同士が水素結合で吸着している様子を示している。
【0056】
衣類16のしわは、繊維同士が水素結合により吸着し、吸着した状態で固定されることにより形成されると推測されている。繊維同士の水素結合は、水に濡れるとほどけ易くなる。
【0057】
上述した通り、浴室暖房装置1は、第2運転モードの第3所定時間により、衣類16に対するミストの吸着を第1運転モードの第1所定時間に比べて積極的に行うように構成されている(
図3(a))。そのため、第2運転モードは、衣類16の繊維同士の水素結合を、第1運転モードに比べて積極的にほどく(
図3(b))。
【0058】
次に、第4所定時間において乾燥運転が実行されることにより、加熱部4により加熱された空気が吹出部8から吹き出される。このとき、吹出部8から吹出す加熱された空気は、可変風向ルーバー11により、特定の角度に吹出す。そのため、吹出部8から吹き出す加熱された空気を積極的に衣類16へ当てることが可能となる。加熱された空気を積極的に衣類16へ当てることによって、衣類16の繊維の形が整えられる(
図3(c))。
【0059】
そして、形の整えられた繊維の状態で、繊維に残ったミスト(水分)により、新たな水素結合が形成され、繊維が固定される(
図3(d))。
【0060】
以上が、浴室暖房装置1の第2運転モードにより、衣類16のしわが低減される理屈である。
【0061】
図4は、浴室暖房装置1を第2運転モードで動作させ、しわ低減機能を実現させた場合の、実評価結果を示した図である。
図4(a)は、一日着用したスーツであり、浴室暖房装置1を第2運転モードで動作させる前の衣類16の状態を示したものである。
図4(b)は、
図4(a)で示した衣類16を浴室内に掛けて、浴室暖房装置1を第2運転モードで動作させた後の衣類16の状態を示したものである。
図4(b)に示す通り、浴室暖房装置1を第2運転モードで動作させ、しわ低減機能を実現させると、一日着用したスーツ(衣類16)のしわが、低減されているのがわかる。
【0062】
以上説明した通り、本発明の一実施の形態に係る浴室暖房装置1によれば、次の効果を奏する。
【0063】
(a)浴室暖房装置1は、制御部7の制御によって、少なくとも第1運転モードと第2運転モードとを有している。第1運転モードでは、制御部7の制御によって、微細水滴付加部5によりミストが付加された空気が第1所定時間、吹出部8から吹き出された後、加熱部4により加熱された空気が第2所定時間、吹出部8より吹き出されるサイクルを1サイクル以上実行される。これにより、浴室内のハンガーに掛けられた衣類16の脱臭を行うことができる。
【0064】
一方、第2運転モードでは、制御部7の制御によって、微細水滴付加部5によりミストが付加された空気が、第1運転モードでの第1所定時間よりも長い第3所定時間、吹出部8から吹き出された後、加熱部4により加熱された空気が第4所定時間、吹出部8より吹き出される。これにより、浴室暖房装置1では、衣類16の脱臭機能に加えて、しわ低減機能を実現可能とすることができる。しかも、しわ低減機能は、脱臭機能を実現する浴室暖房装置1が有する部材をそのまま利用し、各部材の制御を変更するだけで実現できるので、しわ低減機能実現によるコストの増加を低く抑えることができる。
【0065】
(b)制御部7は、第1運転モードの場合に、微細水滴付加部5によりミストが付加された空気を吹出部8から吹き出す期間(即ち、第1所定時間)、あわせて換気部6による換気を行う。これにより、浴室内の相対湿度の上昇を抑えることができるので、衣類16に吸着した水分を効率よく蒸発させ、同時に臭気成分も揮発させて、衣類16の脱臭を行うことができる。
【0066】
(c)制御部7は、第2運転モードの場合に、微細水滴付加部5によりミストが付加された空気を吹出部8から吹き出す期間(即ち、第3所定時間)、換気部6による換気を非実行とする。これにより、第1運転モードの第1所定時間よりも、浴室内を高い相対湿度に保つことができる。よって、第2運転モードの第3所定時間により、浴室暖房装置1は、衣類16に対するミスト(水分)の吸着を、第1運転モードの第1所定時間よりも多くすることができるので、しわの低減を積極的に行うことができる。
【0067】
(d)制御部7は、第2運転モードの場合に、加熱部4により加熱された空気を第4所定時間だけ吹出部8より吹き出した後も、換気部6による換気を行って、自動換気運転を行う。浴室の水面に付着する水滴の量は、第1運転モードにおいて第1所定時間が経過した場合よりも、第2運転モードの第4所定時間における乾燥が行われたとしても第2運転モードにおいて第3所定時間が経過した場合のほうが、より多く残っている可能性が高い。そこで、制御部7は、自動換気運転を行うことで、浴室の壁面に付着した水滴を積極的に取り除くことができる。
【0068】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各実施の形態は、それぞれ、他の実施の形態が有する構成の一部又は複数部分を、その実施の形態に追加しあるいはその実施の形態の構成の一部又は複数部分と交換等することにより、その実施の形態を変形して構成するようにしても良い。また、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る浴室暖房装置は、浴室に取り付けられ、浴室内に掛けられた衣類の脱臭やしわ低減を実現できる浴室暖房装置として利用可能である
【符号の説明】
【0070】
1 浴室暖房装置
2 本体
3 送風部
3a ファン
3b 送風風路
4 加熱部
5 微細水滴付加部
5a 微細水滴生成部
5b 微細水滴風路
6 換気部
7 制御部
8 吹出部
9 第1開閉ダンパー
10 第2開閉ダンパー
11 可変風向ルーバー
12 リモートコントローラ
13 衣類リフレボタン
14 風向ボタン
15 時間設定ボタン
16 衣類
17 吸込口
18 第3開閉ダンパー