(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
B23K 9/007 20060101AFI20240920BHJP
B23K 9/02 20060101ALI20240920BHJP
B23K 9/23 20060101ALI20240920BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23K9/007
B23K9/02 M
B23K9/23 H
B23K9/23 J
F16B5/08 A
(21)【出願番号】P 2021514905
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015776
(87)【国際公開番号】W WO2020213492
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019080120
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】藤原 潤司
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-70962(JP,A)
【文献】特開昭52-114446(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042680(WO,A1)
【文献】米国特許第3095951(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
F16B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材で構成された第1の部材と、該第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材と、該第1の部材に溶接された溶加材で構成された第3の部材とが互いに接合された接合構造であって、前記第1の部材は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔を有し、
前記第2の部材は、前記非貫通孔に対応する位置に開口する貫通部を有し、
前記第3の部材は、前記貫通部の周縁部を押さえるフランジ部を有するとともに、該貫通部を介して、前記第1の部材における前記非貫通孔の内周面および底部、および、前記第2の部材の前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面にアーク溶接され、
前記第3の部材の凝固収縮によって前記第2の部材が前記フランジ部と前記第1の部材とで圧縮されることにより、前記フランジ部と該第1の部材との間に前記第2の部材が固定されている接合構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記フランジ部は、前記第2の部材における前記第1の部材とは反対側の面において、該貫通部よりも径方向外方に張り出している接合構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記貫通部は、前記周縁部により画定されており、前記周縁部は、前記第1の部材に向かって先細りとなるテーパー部を有し、
前記フランジ部は、前記テーパー部を押さえている接合構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記非貫通孔は、平坦状の底部と、該底部に向かって傾斜した傾斜部とを有する接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記非貫通孔は、該非貫通孔の底部に向かって先細となるテーパー状に形成されている接合構造。
【請求項6】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記非貫通孔は、該非貫通孔の底部に向かって幅広となるテーパー状に形成されている接合構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1つにおいて、
前記非貫通孔は、
前記第2の部材の前記貫通部よりも小さな複数の小非貫通孔を含む接合構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1つにおいて、
前記第2の部材における前記第1の部材とは反対側の面に重ね合わされた固定部材を備え、
前記固定部材は、前記貫通部及び前記非貫通孔に対応する位置に開口する固定孔を有し、
前記第3の部材は、前記固定孔及び前記貫通部を介して前記非貫通孔の内周面および底部、および、前記第2の部材の前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面にアーク溶接され、
前記フランジ部は、前記固定部材を介して前記貫通部の周縁部を押さえており、
前記第3の部材の凝固収縮によって前記固定部材および前記第2の部材が前記フランジ部と前記第1の部材とで圧縮されることにより、前記フランジ部と該第1の部材との間に、前記固定部材及び前記第2の部材が固定されている接合構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のうち何れか1つにおいて、
前記第2の部材は、前記第1の部材とは反対側の面に開口する段差部をさらに有し、前記貫通部は、該段差部の底面に形成された接合構造。
【請求項10】
請求項9において、
前記段差部の底面は、前記貫通部に向かって傾斜している接合構造。
【請求項11】
請求項1乃至10のうち何れか1つにおいて、
前記第3の部材は、前記第1の部材に溶接された第1接合部と、該第1接合部に溶接されて前記フランジ部を構成する第2接合部とを有する接合構造。
【請求項12】
請求項1乃至11のうち何れか1つにおいて、
前記非貫通孔は、前記貫通部よりも小さなサイズを有し、前記開口面は、前記第1の部材の
上面のうち前記貫通部内にある領域である接合構造。
【請求項13】
上面と、前記上面の反対の下面と、前記上面に形成された非貫通孔とを有し、金属材で構成された第1の部材と、
前記非貫通孔に対応する位置に開口しており前記非貫通孔よりも大きな貫通部と、前記貫通部を画定する周縁部とを有し、前記第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成され、前記第1の部材の前記上面に配された第2の部材と、
前記非貫通孔の内周面および底部、および、前記第1の部材の前記上面における前記非貫通孔の周囲にアーク溶接された溶接部と、前記貫通部を介して前記溶接部につながり前記周縁部を覆うフランジ部とを有し、前記第1の部材に溶接された溶加材で構成された第3の部材と、を備え、
前記第2の部材が、前記第3の部材の凝固収縮によって前記フランジ部と前記第1の部材とで圧縮されることにより、前記フランジ部と前記第1の部材との間に固定されている接合構造。
【請求項14】
上面と前記上面の反対の下面とを有し、前記上面に形成された非貫通孔を有する、金属材で構成された第1の部材を準備し、
貫通部と前記貫通部を画定する周縁部とを有し、前記第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材を準備し、
前記貫通部が前記非貫通孔に対応して位置し、かつ、前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面が形成されるように、前記第2の部材を前記第1の部材の前記上面に配置し、
前記貫通部を介して前記第1の部材における前記非貫通孔の内周面および底部、および、前記第1の部材の前記開口面にアーク溶接することにより、前記第1の部材に溶接された溶加材で構成され、前記周縁部を押さえるフランジ部を有する第3の部材を形成し、
前記第3の部材の凝固収縮によって前記第2の部材が前記フランジ部と前記第1の部材とで圧縮されることにより、前記フランジ部と前記第1の部材との間に前記第2の部材が固定される、接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の金属材と、第1の金属材に対して溶接が困難な異種材とを重ね合わせた状態にし、異種材の貫通部を介して溶加材(溶接ワイヤ)をアーク溶接するようにした接合構造が開示されている。
【0003】
このとき、溶融した溶加材によって、異種材の貫通部の上面側の外周部に覆い被さるようにつば部分を形成する。これにより、第1の金属材に対する溶加材の凝固収縮によるつば部分と第1の金属材との圧縮固定力によって、異種材と第1の金属材とを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の発明では、例えば、貫通部の孔径が小さい場合には、第1の金属材における溶加材の溶着面積も小さくなってしまい、接合強度が不足するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶加材の溶着面積を増やして接合強度を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属材で構成された第1の部材と、該第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材と、該第1の部材に溶接された溶加材で構成された第3の部材とが互いに接合された接合構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記第1の部材は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔を有する。前記第2の部材は、前記非貫通孔に対応する位置に開口する貫通部を有する。前記第3の部材は、前記貫通部の周縁部を押さえるフランジ部を有するとともに、該貫通部を介して、前記第1の部材における前記非貫通孔の内周面および底部、および、前記第2の部材の前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面にアーク溶接される。前記第1の部材に対する前記第3の部材の凝固収縮によって前記第2の部材が前記フランジ部と前記第1の部材とで圧縮されることにより、前記フランジ部と該第1の部材との間に前記第2の部材が固定されている。
【0009】
第1の発明では、第2の部材は、第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成されている。第1の部材には、厚み方向に貫通しない深さの非貫通孔が形成されている。第3の部材は、第2の部材の貫通部を介して、第1の部材における非貫通孔の内周面および底部、および、前記第2の部材の前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面にアーク溶接される。第3の部材の凝固収縮によって第2の部材がフランジ部と第1の部材とで圧縮されることにより、第3の部材のフランジ部と第1の部材との間に第2の部材が固定される。
【0010】
このように、第1の部材に非貫通孔を設け、第3の部材を非貫通孔の内周面および底部、および、第2の部材の前記貫通部により開口される第1の部材の開口面にアーク溶接することで、第3の部材の溶着面積を増やすことができる。特に、第1の部材の板厚が第2の部材の板厚よりも厚い場合には、第2の部材への熱影響を最小限に抑えながら第1の部材への溶込みを確保することができる。
【0011】
これにより、第1の部材、第2の部材、及び第3の部材の接合強度を確保することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記フランジ部は、前記第2の部材における前記第1の部材とは反対側の面において、該貫通部よりも径方向外方に張り出している。
【0013】
第2の発明では、フランジ部によって、第2の部材における第1の部材とは反対側の面を押さえ付けることで、フランジ部と第1の部材との間に第2の部材を圧縮固定することができる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、前記貫通部は、前記周縁部により画定されている。前記周縁部は、前記第1の部材に向かって先細りとなるテーパー部を有する。前記フランジ部は、前記テーパー部を押さえている。
【0015】
第3の発明では、周縁部にテーパー部を設けることで、溶融した溶加材が非貫通孔に向かって流れ易くなる。また、テーパー部に沿った形状にフランジ部を凝固させることで、第2の部材から飛び出すフランジ部の厚みを抑えることができる。
【0016】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、前記非貫通孔は、平坦状の底部と、該底部に向かって傾斜した傾斜部とを有する。
【0017】
第4の発明では、非貫通孔に傾斜部を設けることで、溶融した溶加材が非貫通孔の底部に向かって流れ易くなる。また、非貫通孔の底部を平坦状にすることで、第3の部材の溶着面積を増やして接合強度を確保することができる。
【0018】
第5の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、前記非貫通孔は、該非貫通孔の底部に向かって先細りとなるテーパー状に形成されている。
【0019】
第5の発明では、非貫通孔を、底部に向かって先細りとなるテーパー状に形成することで、溶融した溶加材が非貫通孔の底部に向かって流れ易くなる。
【0020】
第6の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、前記非貫通孔は、該非貫通孔の底部に向かって幅広となるテーパー状に形成されている。
【0021】
第6の発明では、非貫通孔を、底部に向かって幅広となるテーパー状に形成するようにしている。これにより、溶融した溶加材が非貫通孔の幅広部分で凝固すると、第3の部材が非貫通孔に食い込んだ状態となり、接合強度を高めることができる。
【0022】
第7の発明は、第1乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、
前記非貫通孔は、前記第2の部材の前記貫通部よりも小さな複数の小非貫通孔を含む。
【0023】
第7の発明では、小非貫通孔を複数設けることで、溶融した溶加材を複数の小非貫通孔に分散させながら溶接することができる。また、複数の小非貫通孔に第3の部材が食い込んだ状態とすることで、複数の小非貫通孔においてくさび効果を得ることができ、接合安定性が向上する。
【0024】
第8の発明は、第1乃至第7の発明のうち何れか1つにおいて、前記第2の部材における前記第1の部材とは反対側の面に重ね合わされた固定部材を備える。前記固定部材は、前記貫通部及び前記非貫通孔に対応する位置に開口する固定孔を有する。前記第3の部材は、前記固定孔及び前記貫通部を介して前記非貫通孔の内周面および底部、および、前記第2の部材の前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面にアーク溶接される。前記フランジ部は、前記固定部材を介して前記貫通部の周縁部を押さえている。前記第3の部材の凝固収縮によって前記固定部材および前記第2の部材が前記フランジ部と前記第1の部材とで圧縮されることにより、前記フランジ部と該第1の部材との間に、前記固定部材及び前記第2の部材が固定されている。
【0025】
第8の発明では、第2の部材に固定部材が重ね合わされている。第3の部材は、固定部材の固定孔及び第2の部材の貫通部を介して非貫通孔の内周面および底部、および、第2の部材の貫通部により開口される第1の部材の開口面にアーク溶接される。第3の部材の凝固収縮によって固定部材および第2の部材がフランジ部と第1の部材とで圧縮されることにより、第3の部材のフランジ部と第1の部材との間に、固定部材及び第2の部材が固定される。
【0026】
これにより、第3の部材を第1の部材の非貫通孔の内周面および底部、および、第2の部材の貫通部により開口される第1の部材の開口面にアーク溶接する際に、固定部材によって第2の部材への入熱量を抑えながら、フランジ部を形成することができる。そして、異種材である第2の部材を、第1の部材と固定部材との間に挟み込んで固定することができる。
【0027】
第9の発明は、第1乃至第8の発明のうち何れか1つにおいて、前記第2の部材は、前記第1の部材とは反対側の面に開口する段差部をさらに有する。前記貫通部は、該段差部の底面に形成されている。
【0028】
第9の発明では、第2の部材の段差部の底面に貫通部が形成されている。これにより、第3の部材のフランジ部を段差部内に配置して、第2の部材からフランジ部が飛び出すのを抑えることができる。
【0029】
第10の発明は、第9の発明において、前記段差部の底面は、前記貫通部に向かって傾斜している。
【0030】
第10の発明では、段差部の底面を貫通部に向かって傾斜させることで、溶融した溶加材が貫通部に向かって流れ易くなる。
【0031】
第11の発明は、第1乃至第10の発明のうち何れか1つにおいて、前記第3の部材は、前記第1の部材に溶接された第1接合部と、該第1接合部に溶接されて前記フランジ部を構成する第2接合部とを有する。
【0032】
第11の発明では、第3の部材を、第1接合部と第2接合部とに分けて形成することで、第2の部材の材料特性を考慮した溶接法又は溶接条件の使い分けをすることができる。
【0033】
例えば、溶融した溶加材を、貫通部を介して第1の部材に溶接する際には、溶け込みに必要な入熱で、アークの広がりが小さい短絡溶接を行い、第1接合部を形成すればよい。その後、第2の部材を溶融しない程度の低入熱で、アークの広がりが大きい正極性や交流によるパルス溶接を行い、第2接合部を形成すればよい。これにより、第2の部材への入熱量を抑えながら、フランジ部を形成することができる。
【0034】
第12の発明では、第1乃至第11のうち何れか1つにおいて、非貫通孔は、貫通部よりも小さなサイズを有している。開口面は、第1の部材の上面のうち貫通部内にある領域である。
【0035】
このように、非貫通孔の径は、第2の部材の貫通部の径(第2の部材の貫通部により開口される第1の部材の開口面の径)よりも小さい。これにより、
第1の部材および第2の部材に対する入熱を抑制しながら溶接を行うことが出来る。また、非貫通孔の内周面及び底面と開口面とで第3の部材の凸部形状が形成される。凸部形状は、接合される表面積を拡大する。凸部形状は、楔のようなアンカー効果を発揮して接合強度及び信頼性をより向上させる。
【0036】
第13の発明は、第1の部材、第2の部材および第3の部材を備える接合構造に関する。第1の部材は、上面と、上面の反対の下面とを有する。第1の部材は、上面に形成された非貫通孔を有する。第1の部材は、金属材で構成されている。第2の部材は、非貫通孔よりも大きな貫通部と、貫通部を画定する周縁部とを有する。第2の部材は、第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成されている。貫通部が非貫通孔に対応する位置に開口するように、第2の部材が第1の部材の上面に配されている。第3の部材は、溶接部と、貫通部を介して溶接部につながるフランジ部とを有する。溶接部は、非貫通孔の内周面および底部、および、第1の部材の上面における非貫通孔の周囲にアーク溶接されている。フランジ部は、周縁部を覆う。第3の部材は、第1の部材に溶接された溶加材で構成されている。第2の部材が、第3の部材の凝固収縮によってフランジ部と第1の部材とで圧縮されることにより、フランジ部と第1の部材との間に固定されている。
【0037】
このように、第1の部材に非貫通孔を設け、第3の部材を非貫通孔の内周面および底部、および、第2の部材の前記貫通部により開口される第1の部材の開口面にアーク溶接することで、第3の部材の溶着面積を増やすことができる。特に、第1の部材の板厚が第2の部材の板厚よりも厚い場合には、第2の部材への熱影響を最小限に抑えながら第1の部材への溶込みを確保することができる。
【0038】
第14の発明は、第1の部材の準備、第2の部材の準備および第3の部材の形成を含む接合方法に関する。第1の部材は、上面と上面の反対の下面とを有する。第1の部材は、上面に形成された非貫通孔を有する。第1の部材は、金属材で構成されている。第2の部材は、貫通部と貫通部を画定する周縁部とを有する。第2の部材は、第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成されている。第2の部材は、貫通部が非貫通孔に対応して位置し、かつ、貫通部により開口される第1の部材の開口面が形成されるように、第1の部材の上面に配置される。第3の部材は、貫通部を介して第1の部材における非貫通孔の内周面および底部、および、第1の部材の開口面にアーク溶接することにより形成される。第3の部材は、第1の部材に溶接された溶加材で構成されている。第3の部材は、周縁部を押さえるフランジ部を有する。第3の部材の凝固収縮によって第2の部材がフランジ部と第1の部材とで圧縮されることにより、フランジ部と第1の部材との間に第2の部材が固定される。
【0039】
第14の発明では、第2の部材は、第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成されている。第1の部材には、厚み方向に貫通しない深さの非貫通孔が形成されている。第3の部材は、第2の部材の貫通部を介して、第1の部材における非貫通孔の内周面および底部、および、前記第2の部材の前記貫通部により開口される前記第1の部材の開口面にアーク溶接される。第3の部材の凝固収縮によって第2の部材がフランジ部と第1の部材とで圧縮されることにより、第3の部材のフランジ部と第1の部材との間に第2の部材が固定される。
【0040】
このように、第1の部材に非貫通孔を設け、第3の部材を非貫通孔の内周面および底部、および、第2の部材の前記貫通部により開口される第1の部材の開口面にアーク溶接することで、第3の部材の溶着面積を増やすことができる。特に、第1の部材の板厚が第2の部材の板厚よりも厚い場合には、第2の部材への熱影響を最小限に抑えながら第1の部材への溶込みを確保することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、溶加材の溶着面積を増やして接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本実施形態1に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図2】本実施形態2に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図3】本実施形態3に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図4】本実施形態4に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図5】本実施形態5に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図6】本実施形態6に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図7】本実施形態7に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図8】本実施形態8に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図9】本実施形態9に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図10】本実施形態10に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【
図11】本実施形態11に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0044】
《実施形態1》
図1は、金属材で構成された第1の部材10と、第1の部材10に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材20と、溶加材で構成された第3の部材30とを互いに接合するための接合構造を示している。
【0045】
第1の部材10は、金属材で構成された板状の部材である。第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。
図1に示す例では、非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。非貫通孔11は、例えば、フライス盤加工、旋盤加工、ボール盤加工等やレーザ加工によって非貫通孔として形成される。第1の部材10は、上面10bと、上面10bとは反対の下面10cとを有する。上面10bは、第2の部材20に面している。非貫通部11は、上面10bから下面10c側に向かって延びている。
【0046】
第2の部材20は、第1の部材10に対して溶接が困難な材料で構成された板状の部材である。第2の部材20は、第1の部材10の上側に重ね合わされている。第2の部材20は、円形状の貫通部21を有する。貫通部21は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口している。また、第1の部材10に重ねられる第2部材20の貫通部21によって開口される第1の部材10の上面は開口面10aとする。この開口面10aは非貫通孔11の上面に相当する。第2の部材20は、さらに、貫通部21を画定する周縁部23を有する。
【0047】
なお、本実施形態では、貫通部21を円形状の貫通孔として説明するが、楕円状や長孔状の貫通孔であってもよい。貫通部21は、貫通溝であってもよい。貫通溝は、第2の部材20の厚み方向には上面から下面まで貫通する。貫通溝は、さらに、貫通溝の長さ方向の両端または一端では開放されている。この点で、貫通溝は、長孔状の貫通孔とは異なる。長孔状の貫通孔は、貫通孔の長さ方向の両端では閉じられている。例えば、貫通溝の長さ方向の両端で開放されている場合、第2の部材20は、第1の部材10上に配置された少なくとも2つの独立した板を含む。この2つの板は、互いに細長い隙間をあけて並べられている。この隙間が貫通部21としての貫通溝を形成する。第2の部材20が複数の独立した板を含んで複数の貫通溝を形成している場合、溶融した溶加材としての第3の部材30を複数の貫通溝を介して第1の部材10に溶接することで、第2の部材20を第3の部材30と第1の部材10とで挟み込んで、第2の部材20を第1の部材10に固定する。
【0048】
第3の部材30は、第1の部材10と同種系の金属材である溶加材で構成されている。ここで、同種系の金属材とは、互いに溶接可能な金属であり、同じ材質同士だけではなく、鉄系金属材同士、非鉄系金属材同士などの溶接接合性がよい金属材のことである。言い換えると、同種系の金属材とは、溶接の相性がよい同種系の材料のことである。
【0049】
具体的には、溶接時における第1の部材10と第3の部材30との組み合わせとしては、以下のものが挙げられる。例えば、鉄系金属材の組合せとしては、軟鋼と軟鋼、ステンレスとステンレス、軟鋼とハイテン(高張力鋼)、ハイテンとハイテン等がある。また、非鉄系金属材としては、アルミとアルミ、アルミとアルミ合金、アルミ合金とアルミ合金等がある。
【0050】
また、異種材としての第2の部材20は、同種系の金属材としての第1の部材10及び第3の部材30とは、異なる材質の材料であり、第1の部材10及び第3の部材30に対して溶接が困難な材質である。
【0051】
例えば、同種系の金属材としての第1の部材10及び第3の部材30を鉄系金属材にした場合、異種材としての第2の部材20は、銅材やアルミ材等の非鉄系金属材である。また、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics,炭素繊維強化プラスチック)、PET(PolyEthlen Terephthalate,ポリエチレンテレフタレート)等といった樹脂材も金属材に対する異種材として挙げられる。
【0052】
なお、以下の説明では、第1の部材10として軟鋼材、第2の部材20としてアルミ材、溶加材である第3の部材30として軟鋼材を用いた場合について説明する。
【0053】
アーク溶接機1は、ノズル2と、チップ3とを備えている。ノズル2は、溶接対象物の溶接箇所にシールドガス等を供給する。チップ3は、第3の部材30に対して溶接電流を供給する。
【0054】
アーク溶接機1は、貫通部21を介して非貫通孔11に、溶加材としえの第3の部材30を送給しながら溶接電流を供給することで、アーク5を発生させる。アーク5は、第1の部材10における、非貫通孔11の内周面及び底面(底部)と、第1の部材10の上面である開口面10aとに照射される。このアーク5により溶融した第3の部材30は、非貫通孔11の内周面及び底面に溶融結合されるとともに、第1の部材10の上面側の開口面10aと第2の部材の貫通部21内に積層されていく。そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0055】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、貫通部21の周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。フランジ部31は、第2の部材20における第1の部材10とは反対側の面(
図1では上面)において、貫通部21よりも径方向外方に張り出している。
【0056】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、第1の部材10に非貫通孔11を設け、第3の部材30を第1の部材10における非貫通孔11の内周面及び底面と開口面10aとにアーク溶接することで、第3の部材30の溶着面積を増やすことができる。特に、第1の部材10の板厚が第2の部材20の板厚よりも厚い場合には、第2の部材20への熱影響を最小限に抑えながら第1の部材10への溶込みを確保することができる。また、非貫通孔11の内周面及び底面と開口面10aとで第3の部材30の凸部形状が形成される。凸部形状は、接合される表面積を拡大する。凸部形状は、楔のようなアンカー効果を発揮して接合強度及び信頼性をより向上させる。なお、非貫通部11の径は、第2の部材20の貫通部21の径(第2の部材20の貫通部21により開口される第1の部材10の開口面10aの径)よりも小さい。これにより、第1の部材10および第2の部材20に対する入熱を抑制しながら溶接を行うことが出来る。
【0058】
これにより、第1の部材10、第2の部材20、及び第3の部材30の接合強度を確保することができる。
【0059】
《実施形態2》
以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0060】
図2に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0061】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。貫通部21は、周縁部23により画定されている。周縁部23は、第1の部材10に向かって先細りとなるテーパー部22を有する。
【0062】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、貫通部21のテーパー部22に沿って非貫通孔11に向かって流れ、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0063】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くすことで、テーパー部22の上面にフランジ状に広がる。
【0064】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、テーパー部22を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0065】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、周縁部23にテーパー部22を設けることで、溶融した第3の部材30が非貫通孔11に向かって流れ易くなる。また、テーパー部22に沿った形状にフランジ部31を形成することで、第2の部材20から飛び出すフランジ部31の厚みを抑えることができる。
【0067】
《実施形態3》
図3に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、平坦状の底部12と、底部12に向かって傾斜した傾斜部13とを有する。
【0068】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。
【0069】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、非貫通孔11の傾斜部13に沿って底部12に向かって流れ、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0070】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0071】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0072】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、非貫通孔11に傾斜部13を設けることで、溶融した第3の部材30が非貫通孔11の底部12に向かって流れ易くなる。また、非貫通孔11の底部12を平坦状にすることで、第3の部材30の溶着面積を増やして接合強度を確保することができる。
【0074】
《実施形態4》
図4に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、非貫通孔11の底部に向かって先細りとなるテーパー状に形成されている。
【0075】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。
【0076】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、非貫通孔11のテーパー形状に沿って非貫通孔11の底部に向かって流れ、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0077】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0078】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0079】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、非貫通孔11を、底部に向かって先細りとなるテーパー状に形成することで、溶融した第3の部材30が非貫通孔11の底部に向かって流れ易くなる。
【0081】
《実施形態5》
図5に示すように、非貫通孔11は、複数の小非貫通孔11aを含む。第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された複数の小非貫通孔11aを有する。小非貫通孔11aは、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0082】
第2の部材20は、第1の部材10の複数の小非貫通孔11aに対応する位置に開口する1つの貫通部21を有する。
【0083】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、複数の小非貫通孔11aに分散して各小非貫通孔11aの内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0084】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0085】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0086】
そして、第1の部材10に対して第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、小非貫通孔11aを複数設けることで、溶融した第3の部材30を複数の小非貫通孔11aに分散させながら溶接することができる。また、複数の小非貫通孔11aに第3の部材30が食い込んだ状態とすることで、複数の小非貫通孔11aにおいてくさび効果を得ることができ、接合安定性が向上する。
【0088】
《実施形態6》
図6に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、非貫通孔11の底部に向かって幅広となるテーパー状に形成されている。
【0089】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。
【0090】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0091】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0092】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0093】
そして、第1の部材10に対して第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、非貫通孔11を、底部に向かって幅広となるテーパー状に形成するようにしている。これにより、溶融した第3の部材30が非貫通孔11の幅広部分で凝固すると、第3の部材30が非貫通孔11に食い込んだ状態となり、接合強度を高めることができる。
【0095】
《実施形態7》
図7に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0096】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。第2の部材20の上面には、固定部材40が重ね合わされている。
【0097】
固定部材40は、例えば矩形状や円盤状の金属材で構成されている。固定部材40の外形形状は、第2の部材20の周縁部23を押さえる形状であればどのような形であっても良い。
【0098】
固定部材40は、第1の部材10及び第3の部材30と溶接可能な同種系の金属材で構成されている。なお、固定部材40は、第1の部材10及び第3の部材30とは異なる材質で構成されていてもよい。
【0099】
固定部材40の中央部には、第2の部材20側にテーパー状に押し出されたエンボス形状の突起部41が設けられている。突起部41は、貫通部21に挿入されている。
【0100】
固定部材40は、貫通部21及び非貫通孔11に対応する位置に開口する固定孔42を有する。固定孔42は、突起部41の底面に形成されている。
【0101】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、固定孔42及び貫通部21を介して非貫通孔11に向かって流れ、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。溶融した第3の部材30は、固定部材40の上面にフランジ状に広がる。
【0102】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、固定部材40の固定孔42の周縁部を押さえるフランジ部31が設けられる。フランジ部31は、固定部材40を介して第2の部材20の周縁部23を間接的に押さえている。
【0103】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、固定部材40及び第2の部材20が固定される。
【0104】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、第3の部材30を第1の部材10の非貫通孔11に溶接する際に、固定部材40によって第2の部材20への入熱量を抑えながら、フランジ部31を形成することができる。そして、異種材である第2の部材20を、第1の部材10と固定部材40との間に挟み込んで固定することができる。
【0105】
《実施形態8》
図8に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0106】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。
【0107】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0108】
このとき、第2の部材20の周縁部23に沿ってアーク溶接機1のノズル2を旋回させることで、周縁部23に対して、溶融した第3の部材30を供給する。これにより、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くすとともに、第2の部材20の上面側の周縁部23にフランジ状に広がる。
【0109】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0110】
そして、第1の部材10に対して第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、アーク溶接機1のノズル2を旋回させ、第2の部材20の周縁部23に対して、低入熱である交流溶接や短絡溶接によるスパイラル状の軌跡でアーク溶接することで、入熱を抑えながらのフランジ部31を形成することができる。
【0112】
《実施形態9》
図9に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0113】
第2の部材20は、第1の部材10とは反対側の面(
図9では上面)に開口する段差部25と、段差部25の底面に形成された貫通部21とを有する。貫通部21は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口している。
【0114】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0115】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23、つまり、段差部25の底面に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0116】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、周縁部23を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0117】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が圧縮固定される。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、第3の部材30のフランジ部31を段差部25内に配置して、第2の部材20からフランジ部31が飛び出すのを抑えることができる。
【0119】
《実施形態10》
図10に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0120】
第2の部材20は、第1の部材10とは反対側の面(
図10では上面)に開口する段差部25と、段差部25の底面に形成された貫通部21とを有する。段差部25の底面は、貫通部21に向かって傾斜している。貫通部21は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口している。
【0121】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。溶融した第3の部材30は、段差部25の傾斜面に沿って貫通部21に向かって流れた後、非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合される。
【0122】
そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、第2の部材20の上面側の周縁部23、つまり、段差部25の底面に流れ出し、段差部25の傾斜面にフランジ状に広がる。
【0123】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、段差部25の傾斜面を押さえるフランジ部31が設けられる。
【0124】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0125】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、段差部25の底面を貫通部21に向かって傾斜させることで、溶融した第3の部材30が貫通部21に向かって流れ易くなる。また、第3の部材30のフランジ部31を段差部25内に配置して、第2の部材20からフランジ部31が飛び出すのを抑えることができる。
【0126】
《実施形態11》
図11に示すように、第1の部材10は、厚み方向に貫通しない深さに形成された非貫通孔11を有する。非貫通孔11は、上方に開口する円形状の窪みで形成されている。
【0127】
第2の部材20は、第1の部材10の非貫通孔11に対応する位置に開口する貫通部21を有する。
【0128】
第3の部材30は、アーク5により溶融する。第3の部材30は、第1の部材10に溶接された第1接合部35と、第1接合部35に溶接されてフランジ部31を構成する第2接合部36とを有する。
【0129】
具体的に、溶融した第3の部材30を、貫通部21を介して第1の部材10に溶接する際には、溶け込みに必要な入熱で、アーク5の広がりが小さい短絡溶接を行い、上側中央部が凹んだ形状の第1接合部35を形成する。その後、第2の部材20を溶融しない程度の低入熱で、アーク5の広がりが大きい正極性や交流によるパルス溶接を行い、溶融した第3の部材30が、第1接合部35の上側中央部が凹んだ形状に沿って広がり、第2接合部36を形成する。これにより、第2の部材20への入熱量を抑えながら、フランジ部31を形成することができる。
【0130】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、第1接合部35と、第2接合部36とが設けられる。第1接合部35は、第1の部材10の非貫通孔11の内周面および底部、および、第1の部材10の開口面10aに溶融結合している。第2接合部36は、第1接合部35に溶融結合して、周縁部23を押さえるフランジ部31を構成している。
【0131】
そして、第3の部材30が凝固収縮することで、第2の部材20がフランジ部31と第1の部材10とで圧縮される。この圧縮により、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が固定される。
【0132】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、第3の部材30を、第1接合部35と第2接合部36とに分けて形成することで、第2の部材20の材料特性を考慮した溶接法又は溶接条件の使い分けをすることができる。
【0133】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0134】
本実施形態では、第1の部材10の非貫通孔11に対してアーク溶接を行うようにしたが、例えば、レーザフィラー溶接を行うようにしてもよい。
【0135】
また、本実施形態において説明した第1の部材10の非貫通孔11の形状と、第2の部材20の貫通部21の形状との組み合わせは、あくまでも一例であり、その他の組み合わせであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上説明したように、本発明は、溶加材の溶着面積を増やして接合強度を確保することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0137】
10 第1の部材
11 非貫通孔
12 底部
13 傾斜部
20 第2の部材
21 貫通部
22 テーパー部
23 周縁部
25 段差部
30 第3の部材
31 フランジ部
35 第1接合部
36 第2接合部
40 固定部材
42 固定孔