(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】レーザ出力制御方法及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240920BHJP
H01S 5/0683 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23K26/00 N
B23K26/00 Q
H01S5/0683
(21)【出願番号】P 2021570027
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048897
(87)【国際公開番号】W WO2021140969
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020001981
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正敏
(72)【発明者】
【氏名】西原 学
(72)【発明者】
【氏名】小松 嵩宙
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190905(JP,A)
【文献】特開2004-25204(JP,A)
【文献】特開2011-240361(JP,A)
【文献】特開2009-182193(JP,A)
【文献】特開2009-65202(JP,A)
【文献】特開平8-168891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01S 5/0683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器と、
前記レーザ発振器により出射されたレーザ光の光量を測定する出力測定部と、
前記レーザ光のレーザ出力を目標値に近づけるように、前記出力測定部の測定値に基づいて、前記レーザ発振器に供給する駆動電流のフィードバック制御を行う制御部とを備えたレーザ加工装置において、前記制御部が実行するレーザ出力制御方法であって、
更新前プログラムの実行により、当該更新前プログラムによって規定された値に前記目標値を設定して前記フィードバック制御を行う第1実行ステップと、
前記第1実行ステップの実行中における前記レーザ出力と前記目標値との差が所定の閾値を超える出力変動を検出する検出ステップと、
前記第1実行ステップの実行中に前記レーザ加工装置において測定された複数の物理量から、前記検出ステップで検出された前記出力変動の発生タイミングより前の所定の監視時間内における測定値が、所定の条件を満たさない物理量を異常物理量として特定する特定ステップと、
更新後プログラムの実行中に、前記特定ステップで特定された異常物理量に所定の特徴が現れるのを変動要因として検出し、当該変動要因の検出後に、前記レーザ出力と前記目標値との差を前記第1実行ステップにおける前記出力変動の発生時よりも減らす補正を前記駆動電流に対して行う補正処理、及び出力装置に警告を出力させる警告処理のうちの少なくとも一方の処理を行うように、前記更新前プログラムを前記更新後プログラムに更新するプログラム更新ステップとを実行することを特徴とするレーザ出力制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ出力制御方法において、
前記所定の条件は、所定の数値範囲内に収まることであることを特徴とするレーザ出力制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ出力制御方法において、
前記所定の特徴は、前記異常物理量が前記監視時間内における所定のタイミングでの測定値となることであることを特徴とするレーザ出力制御方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ出力制御方法において、
前記複数の物理量は、湿度を含むことを特徴とするレーザ出力制御方法。
【請求項5】
レーザ発振器と、
前記レーザ発振器により出射されたレーザ光の光量を測定する出力測定部と、
前記レーザ光のレーザ出力を目標値に近づけるように、前記出力測定部の測定値に基づいて、前記レーザ発振器に供給する駆動電流のフィードバック制御を行う制御部とを備えたレーザ加工装置であって、
前記制御部は、更新前プログラムの実行により、当該更新前プログラムによって規定された値に前記目標値を設定して前記フィードバック制御を行う第1実行ステップと、
前記第1実行ステップの実行中における前記レーザ出力と前記目標値との差が所定の閾値を超える出力変動を検出する検出ステップと、
前記第1実行ステップの実行中に前記レーザ加工装置において測定された複数の物理量から、前記検出ステップで検出された前記出力変動の発生タイミングより前の所定の監視時間内における測定値が、所定の条件を満たさない物理量を異常物理量として特定する特定ステップと、
更新後プログラムの実行中に、前記特定ステップで特定された異常物理量に所定の特徴が現れるのを変動要因として検出し、当該変動要因の検出後に、前記レーザ出力と前記目標値との差を前記第1実行ステップにおける前記出力変動の発生時よりも減らす補正を前記駆動電流に対して行う補正処理、及び出力装置に警告を出力させる警告処理のうちの少なくとも一方の処理を行うように、前記更新前プログラムを前記更新後プログラムに更新するプログラム更新ステップとを実行するように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ発振器により出射されるレーザ光のレーザ出力を目標値に近づけるように、レーザ発振器に供給する駆動電流を制御するレーザ出力制御方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ発振器と、前記レーザ発振器により出射されたレーザ光のレーザ出力を測定する出力測定部と、前記レーザ出力を目標値に近づけるように、前記出力測定部の測定値に基づいて、レーザ発振器の操作信号を制御する制御部とを備えたレーザ加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなフィードバック制御を行う場合、出力測定部による測定から、その測定値がレーザ出力に反映されるまでの間に、レーザ加工装置の状態、例えば装置内部の温度や湿度が変化し、レーザ出力と目標値との差が瞬間的に大きくなる出力変動(スパイク)が発生することがある。そして、このような出力変動は加工精度の低下を招く。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力変動に起因する加工精度の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示は、レーザ発振器と、前記レーザ発振器により出射されたレーザ光の光量を測定する出力測定部と、前記レーザ光のレーザ出力を目標値に近づけるように、前記出力測定部の測定値に基づいて、前記レーザ発振器に供給する駆動電流のフィードバック制御を行う制御部とを備えたレーザ加工装置において、前記制御部が実行するレーザ出力制御処理であって、更新前プログラムの実行により、当該更新前プログラムによって規定された値に前記目標値を設定して前記フィードバック制御を行う第1実行処理と、前記第1実行処理の実行中における前記レーザ出力と前記目標値との差が所定の閾値を超える出力変動を検出する検出処理と、前記第1実行処理の実行中に前記レーザ加工装置において測定された複数の物理量から、前記検出処理で検出された前記出力変動の発生タイミングより前の所定の監視時間内における測定値が、所定の条件を満たさない物理量を異常物理量として特定する特定処理と、更新後プログラムの実行中に、前記特定処理で特定された異常物理量に所定の特徴が現れるのを変動要因として検出し、当該変動要因の検出後に、前記レーザ出力と前記目標値との差を前記第1実行処理における前記出力変動の発生時よりも減らす補正を前記駆動電流に対して行う補正処理、及び出力装置に警告を出力させる警告処理のうちの少なくとも一方の処理を行うように、前記更新前プログラムを前記更新後プログラムに更新するプログラム更新処理とを実行することを特徴とする。
【0007】
これにより、更新後プログラムの実行中における変動要因の発生後に、補正処理によって、レーザ出力と目標値との差が第1実行ステップにおける出力変動の発生時よりも低減されるか、又は警告処理に応じてユーザが加工動作を停止できるようになるので、出力変動に起因する加工精度の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、出力変動に起因する加工精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態1に係るレーザ装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、複数のレーザモジュールの構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、(a)は、更新前の加工プログラムの実行中におけるレーザ出力の目標値、測定値、補正前出力、補正量を示すグラフであり、(b)は、更新前の加工プログラムの実行中における湿度の測定値を示すグラフである。
【
図8】
図8は、(a)は、更新後の加工プログラムの実行中における
図7の(a)相当図であり、(b)は、更新後の加工プログラムの実行中における
図7の(b)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0011】
本実施形態に係るレーザ加工装置100は、
図1に示すように、レーザ発振器10と、レーザ光出射ヘッド40と、伝送ファイバ50と、制御部60と、電源70と、出力装置としての表示装置80と、コントローラ90とを備えている。レーザ発振器10と、伝送ファイバ50の集光ユニット13側の端部(入射端)とは筐体11に収容されている。
【0012】
レーザ発振器10は、複数のレーザ装置20と、ビーム結合器12と、集光ユニット13とを有している。
【0013】
レーザ装置20は、
図2に示すように、互いに異なる波長のレーザ光LB1を発する例えば10個のレーザモジュール30と、10個のレーザモジュール30からそれぞれ出射されたレーザ光LB1を結合させて出射するレーザ光学系としての回折格子22と、回折格子22により出射されたレーザ光の一部をレーザ光LB2として透過させる一方、残りを反射光LB3として反射させる部分透過ミラー23と、部分透過ミラー23からの反射光LB3を受光し、反射光LB3の光量を測定するフォトダイオード24と、レーザ装置20内部の温度を測定する温度測定部20aと、レーザ装置20内部の湿度を測定する湿度測定部20bとを有している。
【0014】
各レーザモジュール30は、
図3~5に示すように、レーザダイオードバー(LDバー)31を有しており、レーザダイオードバー31は、並列に配置された複数のエミッタ31bを有する半導体レーザアレイである。言い換えるとレーザダイオードバー31は、エミッタ31bを有する並列に配置された複数のレーザダイオードからなる半導体レーザアレイである。レーザダイオードバー31は、平面視矩形状の平板形状をなし、その一方の面には板状の正電極32が配置され、正電極32の一方の面が取り付けられている。また、レーザダイオードバー31の他方の面には、正電極32よりも広い板状の負電極33が配置され、負電極33の一方の面の一部が取り付けられている。レーザダイオードバー31の一側面が、レーザ光LB1を出射するレーザ光出射面31aを構成している。各電極(正電極32,負電極33)には、配線35が接続され、当該配線35を介して後述する電源70から電流(電力)が供給される。なお、一つのレーザダイオードバー31に含まれるエミッタ31bの個数は、例えば50個に設定される。10個のレーザモジュール30のレーザダイオードバー31は、互いに直列に接続されている。
【0015】
負電極33のレーザダイオードバー31の取付面におけるレーザダイオードバー31の取り付けられていない領域には、レーザダイオードバー31の近傍の温度を測定する熱電対36が取り付けられている。レーザダイオードバー31の近傍の温度を測定する手段として、熱電対36に代えて、RTD(Resistance Temperature Detector,測温抵抗体)、サーミスタ、IC(Integrated Circuit)センサ等の他の手段を用いてもよい。また、サーミスタ、ICセンサ等の半導体デバイスをレーザダイオードバー31と一体的に形成しても良く、これにより、レーザダイオードバー31の内部温度を間接的または直接的に測定することができ、測定される温度を、レーザダイオードバー31の内部温度により近付けることができる。
【0016】
ビーム結合器12は、複数のレーザ装置20からそれぞれ出射されたレーザ光LB2(
図2参照)を一つのレーザ光LB4に結合して集光ユニット13に出射する。ビーム結合器12には、レーザ光LB4の一定の割合を占める一部の光量を測定するフォトダイオード12a、ビーム結合器12内部の温度を測定する温度測定部12b、及びビーム結合器12内部の湿度を測定する湿度測定部12cが設けられている。
【0017】
集光ユニット13は、内部に配設された集光レンズ(図示せず)によって、入射されたレーザ光LB4を集光して所定の倍率でビーム径を縮小して伝送ファイバ50に出射する。
図2中、符号LB5は、集光ユニット13によって出射されるレーザ光である。集光ユニット13は図示しないコネクタを有し、コネクタには伝送ファイバ50の入射端が接続されている。集光ユニット13には、レーザ光LB5の一定の割合を占める一部の光量を測定するフォトダイオード13a、集光ユニット13内部の温度を測定する温度測定部13b、及び集光ユニット13内部の湿度を測定する湿度測定部13cが設けられている。
【0018】
レーザ発振器10をこのような構成とすることで、レーザ出力が数kWを超える高出力のレーザ光LB5を得ることができる。
【0019】
伝送ファイバ50は、レーザ発振器10により出射されて伝送ファイバ50の入射端に入射されたレーザ光LB5をレーザ光出射ヘッド40に導く。
【0020】
レーザ光出射ヘッド40は、伝送ファイバ50によって導かれたレーザ光LB6を外部に向けて照射する。例えば、
図1に示すレーザ加工装置100では、所定の位置に配置された加工対象物であるワークWに向けて、レーザ光出射ヘッド40によりレーザ光LB6を出射する。このようにすることで、ワークWがレーザ加工される。レーザ光出射ヘッド40には、レーザ光LB6の一定の割合を占める一部の光量を測定する出力測定部としてのフォトダイオード40aが設けられている。
【0021】
制御部60は、レーザ光LB6のレーザ出力を所定の目標値に近づけるように、フォトダイオード40aの測定値に基づいて、レーザ発振器10に供給する駆動電流のフィードバック制御を行う。ここで、制御部60による駆動電流の制御は、電源70に指令電流値を出力することによって行われる。また、制御部60は、ワークWに対して所定の加工を行うときに実行する加工プログラムを記憶している。加工プログラムは、加工中の各タイミングにおけるレーザ光LB6のレーザ出力の目標値を規定する。制御部60による制御の詳細については、後述する。なお、制御部60は、加工プログラムの実行中において後述する変動要因が検出されたタイミングt2(
図8参照。)と、当該タイミングt2の直後における指令電流値の補正量とを表示装置80に表示させる。
【0022】
電源70は、制御部60により出力された指令電流値に基づいて、駆動電流を複数のレーザ装置20のそれぞれに対して供給する。
【0023】
表示装置80は、制御部60による加工プログラムの実行中において変動要因が検出されたタイミングt2(
図8参照。)と、当該タイミングt2の直後における指令電流値の補正量とを、制御部60の制御により表示する。
【0024】
コントローラ90は、タイミングt2の直後における指令電流値の補正量を修正するための入力をユーザから受け付け、修正を指示する指令を制御部60に出力する。
【0025】
以下、制御部60が駆動電流を制御する動作について、
図6を参照して説明する。
【0026】
まず、S101において、制御部60は、記憶している加工プログラム(更新前プログラム)の実行により、レーザ光LB6のレーザ出力を、当該加工プログラムに規定された各タイミングの目標値に近づけるように、フォトダイオード40aの測定値に基づいて、指令電流値のフィードバック制御を行う(第1実行ステップ)。制御部60は、加工プログラムの実行中におけるフォトダイオード12a,13a,24,40a、温度測定部12b,13b,20a、熱電対36、湿度測定部12c,13c,20bの測定値をデータログとして記憶する。
図7の(a)は、S101での加工プログラムの実行中におけるレーザ光LB6のレーザ出力の目標値、S101での加工プログラムの実行中におけるレーザ光LB6のレーザ出力の測定値、指令電流値を一定にしたときのレーザ光LB6のレーザ出力(補正前出力)、及びS101での加工プログラムの実行中におけるレーザ光LB6のレーザ出力の測定値と指令電流値を一定にしたときのレーザ光LB6のレーザ出力との差(補正量)を示す。ここで、レーザ光LB6のレーザ出力の測定値は、制御部60によって、フォトダイオード40aの測定値に基づいて算出される。
【0027】
次に、S102において、制御部60は、S101で記憶したデータログを参照することにより、S101での加工プログラムの実行中におけるレーザ光LB6のレーザ出力の測定値と、加工プログラムによって規定された目標値との差が所定の閾値THを超える出力変動を検出する(検出ステップ)。そして、出力変動を検出した出力変動発生タイミングt1(
図7参照。)を記憶する。
【0028】
次に、S103において、制御部60は、S101での加工プログラムの実行中にレーザ加工装置において測定される複数の物理量から、出力変動発生タイミングt1より前の所定の監視時間T内における測定値が、予め設定された所定の条件を満たさない物理量を異常物理量として特定する(特定ステップ)。前記複数の物理量には、温度測定部12b,13b,20a、熱電対36、及び湿度測定部12c,13c,20bの測定値を含む。また、前記複数の物理量は、フォトダイオード13aの測定値に基づいて特定されるレーザ光LB5の光量から、フォトダイオード40aの測定値に基づいて特定されるレーザ光LB6の光量を引くことで得られる伝送ファイバ50での損失量も含む。具体的には、湿度測定部20bによって監視時間T内に測定された湿度が、0~H%の数値範囲内に収まらない場合、当該湿度が異常物理量として特定される。
図7の例では、監視時間T内において、湿度がHを超えているので、当該湿度が異常物理量として特定される。また、レーザ光LB5の光量からレーザ光LB6の光量を引くことで得られる伝送ファイバ50での損失量が、所定の数値範囲に収まらない場合には、当該損失量が異常物理量として特定される。
【0029】
次に、S104において、制御部60は、S103で特定された異常物理量の監視時間T内における測定値の特徴を記憶する。具体的には、異常物理量が湿度測定部20bによって測定される湿度である場合、監視時間T内における所定のタイミングでの湿度の測定値VAが、測定値の特徴として記憶される。監視時間T内における所定のタイミングとは、例えば、監視時間Tの開始タイミングでもよいし、監視時間Tの開始から所定時間経過後のタイミングであってもよい。
【0030】
次に、S105において、制御部60は、加工プログラムを更新し(プログラム更新ステップ)、更新後の加工プログラム(更新後プログラム)を記憶する。加工プログラムは、更新後の加工プログラムの実行中に、制御部60が、S104で記憶された特徴がS103において特定された異常物理量に現れるのを変動要因として検出し、当該変動要因の検出後の所定時間に、前記レーザ光LB6のレーザ出力の測定値と前記目標値との差をS101における出力変動の発生時よりも減らす補正を駆動電流に対して行うように更新される。駆動電流に対する補正は、出力変動時におけるレーザ光LB6のレーザ出力と目標値との差(閾値TH)に相当する分、レーザ出力を下げるように、指令電流値を補正することにより行われる。具体的には、異常物理量が湿度測定部20bによって測定される湿度である場合には、湿度が測定値VAに達するのを変動要因として検出する。
【0031】
したがって、更新後の加工プログラムの実行中に変動要因が発生すると、駆動電流が補正されることにより、レーザ光LB6のレーザ出力と前記目標値との差が、更新前の加工プログラムの実行中における出力変動の検出時よりも低減されるので、出力変動に起因する加工精度の低下を抑制できる。
【0032】
また、更新前の加工プログラムを更新後の加工プログラムに置換して、S101~S105の動作を繰り返すことにより、S101での加工プログラムの実行により加工されるワークWの不具合率を徐々に低減できる。
【0033】
また、湿度が、所定の数値範囲に収まっていない場合に異常物理量として特定されるので、湿度の変動によるレーザ出力の出力変動を抑制できる。例えば、光路中の水分子や揮発性有機物の濃度の上昇によるレーザ出力の低下が、集塵機フィルタの集塵能力を低下させてさらなるレーザ出力の低下を招くのを抑制できる。
【0034】
また、伝送ファイバ50での損失量が、所定の数値範囲に収まっていない場合に異常物理量として特定されるので、伝送ファイバ50での損失量の変動によるレーザ出力の出力変動を抑制できる。
【0035】
なお、上記実施形態では、レーザ発振器10にレーザ装置20を複数設けたが、1つだけ設けてもよい。かかる場合、レーザ装置20から出力されたレーザ光LB2がそのまま伝送ファイバ50に入射される。
【0036】
また、上記実施形態では、1つのレーザ装置20に含まれるレーザモジュール30及びレーザダイオードバー31の数を10個に設定したが、レーザ装置20に要求される最大出力やレーザ装置20の価格等に応じて他の個数に設定してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、1つのレーザダイオードバー31に含まれるエミッタ31bの個数を50個に設定したが、レーザモジュール30に要求される最大出力やレーザダイオードバー31の価格等に応じて他の個数に設定してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、温度測定部12b,13b,20a、熱電対36、及び湿度測定部12c,13c,20bの測定値、及び伝送ファイバ50の損失量から異常物理量を特定したが、レーザ加工装置100における各部の電圧値、及び電流値や、レーザ加工装置100における伝送ファイバ50以外の部分でのレーザ光の損失量から異常物理量を特定できるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、S105において、更新後の加工プログラムの実行中において、変動要因の検出後に駆動電流の補正処理が行われるように加工プログラムを更新したが、上記補正処理に代えて、表示装置80に警告を出力表示させる警告処理が行われるように加工プログラムを更新してもよい。また、上記補正処理に加えて、上記警告処理が行われるように加工プログラムを更新してもよい。これにより、更新後の加工プログラムの実行中に変動要因の発生後に、警告処理に応じてユーザが加工動作を停止できるようになる。
【0040】
また、上記実施形態では、S104で、制御部60が、監視時間T内における湿度の測定値の特徴として、測定値VAを記憶したが、監視時間T内における湿度の測定値の傾きを記憶するようにしてもよい。そして、S105において、S104で記憶された傾きで湿度が変位するのを、変動要因として検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示は、レーザ発振器により出射されるレーザ光のレーザ出力を目標値に近づけるように、レーザ発振器に供給する駆動電流を制御するレーザ出力制御方法及びレーザ加工装置として有用である。
【符号の説明】
【0042】
100 レーザ加工装置
10 レーザ発振器
20 レーザ装置
12a、13a、24 フォトダイオード
40a フォトダイオード(出力測定部)
60 制御部
80 表示装置(出力装置)
TH 閾値
T 監視時間
t1 出力変動発生タイミング