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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20240920BHJP
   F24C 7/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F24C1/00 370B
F24C7/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023518083
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036234
(87)【国際公開番号】W WO2023058531
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2021163190
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】大谷 良介
(72)【発明者】
【氏名】林 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】安河内 大祐
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-112292(JP,A)
【文献】特開2003-130357(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118867(WO,A1)
【文献】特開2008-202850(JP,A)
【文献】特開2004-061092(JP,A)
【文献】特開2002-162039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-1/16
F24C 7/00、7/08-7/10
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容するように構成された加熱室と、
前記加熱室の空気を吸入し、吸入した空気を前記加熱室に吹き出すことで、前記加熱室の内部空間に循環流路を形成するように構成された循環ファンと、
前記循環ファンにより前記加熱室から吸い込まれる前記空気を加熱する加熱部と、
前記加熱室の内部に配置され、前記循環ファンから前記加熱室に吹き出される空気の流速および吹き出し方向を規定するように構成された流路形成部と、を備え、
前記流路形成部は、前記加熱室の上方に配置され、複数の壁で区画されて前記加熱室の上方空間を形成し、
前記流路形成部は、風ガイドと、前記加熱室に連通する流出口と、を有し、
前記風ガイドは、前記流路形成部の底壁に設けられた第1風ガイドと第2風ガイドとを有し、
前記第1風ガイドは、前記流出口の後方に配置され、左右方向における中央から、前記循環ファンから前記加熱室に吹き出される空気の量が相対的に少ない側にずらした位置に配置され、
前記第2風ガイドは、前記流出口の前方に配置され、左右方向における中央から、前記循環ファンから前記加熱室に吹き出される空気の量が相対的に多い側にずらした位置に配置された、加熱調理器。
【請求項2】
前記流出口は円形であり、前記流路形成部の底壁の、平面視における前記加熱室の中央に設けられた、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記風ガイドは、前記循環ファンから吹き出された空気の経路を規定するガイド面を有し、前記ガイド面は、前記流路形成部の底壁に対して垂直に設けられた、請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱室の上方に配置され、前記加熱室内を加熱するグリルヒータをさらに備え、
前記流路形成部は、前記加熱室の天面と前記グリルヒータとの間に配置され、
前記流路形成部は、底壁および三つの側壁によって構成され、前記三つの側壁は正面視において左側の側壁、右側の側壁、前側の側壁であり、
前記流路形成部の、正面視における後側に流入口が設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記循環ファンが正面視において時計回りに回転するように構成され、
正面視において、前記第1風ガイドは前記流出口の右後方に配置され、前記流出口の近傍から右後方に向かって延在し、
正面視において、前記第2風ガイドは前記流出口の左前方に配置され、前記流出口の近傍から左前方に向かって延在する、請求項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記循環ファンが正面視において反時計回りに回転するように構成され、
正面視において、前記第1風ガイドは前記流出口の左後方に配置され、前記流出口の近傍から左後方に向かって延在し、
正面視において、前記第2風ガイドは前記流出口の右前方に配置され、前記流出口の近傍から右前方に向かって延在する、請求項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
平面視において、前記第1風ガイドと前記第2風ガイドとは、前記流路形成部の左右方向における中心線を挟むように配置される、請求項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記流路形成部において、前記前側の側壁に対して前記第1風ガイドのなす角度は、前記前側の側壁に対して前記第2風ガイドのなす角度よりも大きい、請求項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の加熱調理器は、加熱室と、循環ファンと、コンベクションヒータと、風ガイドと、を備える。加熱室は被加熱物を収容する。循環ファンは、加熱室の空気を吸入し、吸入した空気を加熱室に吹き出すことで、加熱室の内部空間に循環流路を形成する。コンベクションヒータは、循環ファンの前方に配置され、循環ファンにより加熱室から吸い込まれる空気を加熱する。風ガイドは、吸い込まれた空気を天面全体から下方に吹き出すように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-112292号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、より均一に被加熱物を加熱することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【0005】
本開示の加熱調理器は、加熱室と、循環ファンと、流路形成部と、を備える。加熱室は被加熱物を収容可能である。循環ファンは、加熱室の空気を吸入し、吸入した空気を加熱室に吹き出すことで、加熱室の内部空間に循環流路を形成する。流路形成部は、加熱室の内部に配置され、循環ファンから加熱室に吹き出される空気の流速および吹き出し方向を規定する。流路形成部は、加熱室の上方に配置されて加熱室の上方空間を形成する。流路形成部は、風ガイドと、加熱室に連通する流出口と、を有する。
【0006】
本開示に係る加熱調理器は、より均一に被加熱物を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る加熱調理器の、扉が閉じた状態における斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る加熱調理器の、扉が開いた状態における斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る加熱調理器の、扉が開いた状態における正面図である。
図4図4は、実施の形態に係る加熱調理器の縦断面図である。
図5図5は、実施の形態に係る加熱調理器の、扉が開いた状態における縦断面図である。
図6図6は、加熱室の後壁の正面図である。
図7図7は、対流装置の正面図である。
図8図8は、対流装置の斜視図である。
図9図9は、コンベクションヒータの斜視図である。
図10図10は、第1エアガイドの斜視図である。
図11図11は、循環ファンの斜視図である。
図12図12は、第2エアガイドの斜視図である。
図13図13は、対流装置の分解斜視図である。
図14図14は、実施の形態に係る加熱調理器の一部を示す縦断面図である。
図15図15は、加熱室の上方空間を上方から見た平面図である。
図16図16は、流路形成部の斜視図である。
図17図17は、実施の形態に係る加熱調理器の縦断面図である。
図18図18は、熱風生成機構の斜視図である。
図19図19は、熱風生成機構の分解斜視図である。
図20図20は、実施の形態に係る加熱調理器の部分拡大断面図である。
図21図21は、空焼き検知センサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見など)
本願発明者らが本開示に想到するに至った当時、循環ファンから加熱室に吹き出した空気は風ガイドにぶつかった直後に、下方に吹き出していた。この構成では、下方に吹き出す熱風の向きおよび強さが場所により異なり、吹き出す方向が傾きを有していた。このため、被加熱物に焼きムラが生じていた。本願発明者らは、この問題を解決するために本開示の主題を見出した。
【0009】
本開示によれば、加熱調理器においてより均一に被加熱物を加熱することができる。
【0010】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態に係る加熱調理器1について、図面を参照しながら説明する。図1は、加熱調理器1の、扉4を閉じた状態における斜視図である。図2は、加熱調理器1の、扉4を開けた状態における斜視図である。図3は、加熱調理器1の、扉4を開けた状態における正面図である。
【0011】
本実施の形態において、各図中に示すように、鉛直上方を上方、上方の反対を下方、使用者から見て加熱調理器1の右方、左方をそれぞれ右方、左方と定義する。使用者が加熱調理器を使用する際の、加熱調理器1の使用者側を加熱調理器1の前方、前方の反対を加熱調理器1の後方と定義する。
【0012】
[全体構成]
本実施の形態において、加熱調理器1は、業務用、すなわちコンビニエンス店、ファーストフード店などにおいて使用される大出力の加熱調理器である。加熱調理器1は、調理内容に応じて、マイクロ波加熱、輻射加熱、および熱風循環加熱のいずれかを単独で、または、これらのうちの少なくとも2つを順にもしくは同時に実行する。
【0013】
図1図3に示すように、加熱調理器1は、本体2と、加熱室5と、機械室3と、扉4とを備える。加熱室5は本体2内に設けられる。機械室3は、加熱室5の下方の本体2内に配置される。扉4は、本体2の前面に配置されて加熱室5の前方開口を覆う。
【0014】
扉4は把手24を有する。使用者が把手24を前方に引くと、扉4はその両側下部に設けられたヒンジを中心に回動して開けられる。本体2の正面には、使用者が加熱調理器1に対する設定操作および設定内容などを表示するための操作表示部6が配置される。
【0015】
扉4を閉じた状態(図1参照)で、加熱室5内の被加熱物に対してマイクロ波などによる加熱が行われる。扉4を開けた状態(図2参照)で、被加熱物は加熱室5に収容され、加熱室5から取り出される。
【0016】
本体2の加熱室5は、前方開口を有する略直方体の空間を備える。加熱室5は、前方の開口を扉4により覆うことにより密閉されて、加熱調理される被加熱物を収容する。この状態において、被加熱物は、熱風循環加熱機構、輻射加熱機構、およびマイクロ波加熱機構の少なくとも一つの加熱機構により加熱調理される。
【0017】
熱風循環加熱機構は、加熱室5の後方および加熱室5の天面近傍に配置される。輻射加熱機構は、加熱室5の天面近傍に配置される。マイクロ波加熱機構は、加熱室5の底壁5aの下方に配置される。加熱室5の底壁5aは、ガラス、セラミックなどマイクロ波が透過し易い材料で構成される。
【0018】
加熱室5の内部には、被加熱物を載置するための載置台7と、載置台7の下方に配置されて被加熱物から滴り落ちる脂などを受けるための受け皿8とを収容可能である。
【0019】
載置台7は、取り外し可能な、例えば、セラミック製の台である。載置台7は、被加熱物を載置できる板状部材と、板状部材を支える4つの脚部とにより一体的に構成される。受け皿8は、加熱調理器本体の底壁に固定される。
【0020】
受け皿8はセラミック製、具体的にはコージライト(cordierite)製である。コージライトは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素からなるセラミックであり、熱膨張性が低く、耐熱衝撃性に優れた特性を有する。そのため、載置台7の表面にマイクロ波が集中した場合でも、載置台7の安全性に問題はない。
【0021】
図4は、正面から見た加熱調理器1の縦断面図である。すなわち、図4において、紙面の手前側が加熱調理器1の前方である。図5は、左方から見た加熱調理器1の縦断面図である。すなわち、図5において、右方が加熱調理器1の前方である。
【0022】
図4および図5に示すように、加熱室5の天面近傍に輻射加熱部を構成するグリルヒータ9が配置される。グリルヒータ9は、天面近傍に配置され屈曲した形状を有する一本のシーズヒータで構成される。グリルヒータ9は、被加熱物を輻射熱により加熱調理するグリルモード(輻射加熱)において用いられる。
【0023】
図5において、機械室3内にマイクロ波加熱部21が配置される。マイクロ波加熱部21は、マグネトロン15と、インバータ16と、冷却ファン17とを含む。マイクロ波加熱部21は、制御部(図示せず)により制御される。
【0024】
マグネトロンはマイクロ波を生成する。インバータ16はマグネトロン15を駆動する。冷却ファン17は、機械室3の前面に設けられた通気パネル30から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を後方に送り出す。この空気により、機械室3の内部に配置されたインバータ16およびマグネトロン15などが冷却される。
【0025】
マイクロ波加熱部21は、導波管18と、マイクロ波供給部19とを含む。導波管18は、マグネトロン15で生成されたマイクロ波を加熱室5の中央部の下方に案内する。マイクロ波供給部19は、加熱室5の中央部の下方に配置され、導波管18の端部の上面に形成された開口である。マイクロ波供給部19は、導波管18により案内されたマイクロ波を加熱室5の内部に放射する。
【0026】
マイクロ波供給部19から放射されたマイクロ波を撹拌するために、マイクロ波供給部19の上方にスタラ(stirrer)23が配置される。スタラ23は、スタラ駆動部(図示せず)により駆動され、マイクロ波供給部19から放射されたマイクロ波を撹拌するための羽根を有する。スタラ駆動部は、機械室3内に配置されたモータである。
【0027】
従って、加熱調理器1において、加熱室5の下方から撹拌されたマイクロ波が加熱室5の内部に放射され、載置台7上に載置された被加熱物が加熱される。
【0028】
図4および図5に示すように、実施の形態の加熱調理器1は、輻射加熱部(グリルヒータ9)およびマイクロ波加熱部21の他に熱風生成機構22を備える。熱風生成機構22は、マイクロコンピュータと半導体メモリとを含む制御部(図示せず)により制御される。熱風生成機構22は、加熱室5の後方の本体2の内部に配置され、コンベクションヒータ10と、循環ファン11と、ファン駆動部12を含む。
【0029】
コンベクションヒータ10は、熱風循環加熱のための熱源である。循環ファン11は送風源である。ファン駆動部12は、循環ファン11を駆動するためのモータである。加熱室5の後壁5eには複数の開口が形成される。
【0030】
図14は、加熱調理器1の一部を示す縦断面図である。循環ファン11が作動すると、加熱室5の空気は複数の開口を通して吸引され、熱風生成機構22に達する。熱風生成機構22において、この空気はコンベクションヒータ10および循環ファン11により熱風となる。この熱風は、流路形成部13の底壁に設けられた流出口13d(図14参照)から加熱室5内に吹き出される。後壁5eに形成された複数の開口については後述する。
【0031】
熱風生成機構22は、後述する流路形成部13および風ガイド14を含む。流路形成部13および風ガイド14は、加熱室5の天面近傍に配置され、流出口13dから加熱室5への風の流速および吹き出し方向を規定する。
【0032】
流路形成部13および風ガイド14は、加熱室5の上部に配置されて加熱室5の上方空間を形成し、上方空間内を流れ加熱室5に吹き出される空気の流速および吹き出し方向を規定する。
【0033】
図14に示すように、加熱調理器1は、庫内温度検知センサ50と、空焼き検知センサ51と、をさらに備える。庫内温度検知センサ50は、加熱室5の天面近傍に配置され、加熱室5の庫内温度を検知する。空焼き検知センサ51は、加熱室5の天面近傍に配置され、加熱室5の庫内に被加熱物が存在しない状態で加熱を行う、いわゆる「空焼き」を検知することができる。庫内温度検知センサ50および空焼き検知センサ51は、例えばサーミスタで構成される。
【0034】
図20は、図5に示す円形枠Dに示す領域を拡大し、庫内温度検知センサ50および空焼き検知センサ51の近傍を示す、加熱調理器1の断面図である。
【0035】
サーミスタの基本的構成を、庫内温度検知センサ50を例に説明する。庫内温度検知センサ50における検出端となるサーミスタチップは、先端が閉じた保護管(例えば、薄肉ステンレス管)の突出端の内部に収納される。サーミスタチップと保護管との隙間には優れた熱伝導性を有する耐熱無機質充填剤が充填される。このように構成された庫内温度検知センサ50は、加熱室5の天面の略中央において風ガイド14に突き立てるように配置される(図14参照)。
【0036】
サーミスタの熱時定数はサーミスタの応答性に関連するものであり、熱時定数が小さいほどサーミスタはより優れた特性を有する。本実施の形態におけるサーミスタは、保護管を含めて60秒以内の熱時定数を有する。空焼き検知センサ51においてもサーミスタは同様の構成であり、その説明を省略する。
【0037】
庫内温度検知センサ50の配置位置は、輻射加熱部(グリルヒータ9)、マイクロ波加熱部21、熱風生成機構22における各構成部材の配置位置と密接に関連する。具体的には、熱風生成機構22により形成される循環流路における特定の位置に庫内温度検知センサ50が配置される。庫内温度検知センサ50は、熱風生成機構22における少なくとも循環ファン11の作動中に温度検知を行う。
【0038】
空焼き検知センサ51の配置位置も、輻射加熱部(グリルヒータ9)、マイクロ波加熱部21、熱風生成機構22における各構成部材の配置位置と密接に関連する。具体的には、加熱室5の底壁5aから放射されるマイクロ波を吸収可能な特定の場所に空焼き検知センサ51が配置される。空焼き検知センサ51は、加熱室5内に被加熱物が存在しない状態で加熱を行った場合に誘電体にマイクロ波が集中するという特性を利用して空焼き検知を行う。
【0039】
上述のように、加熱室5の後壁5eには複数の開口が形成される。後壁5eより後方に、熱風循環加熱領域が設けられる。熱風循環加熱領域に、熱風生成機構22の構成部材であるコンベクションヒータ10、循環ファン11、ファン駆動部12が配置される。熱風生成機構22はさらに、加熱室5内の天面近傍に配置された流路形成部13および風ガイド14を含む。加熱室内流路形成部である流路形成部13および風ガイド14の配置、機能および構成については後述する。
【0040】
[熱風生成機構の詳細な構成]
図6は、加熱室5の後壁5eの正面図である。図6に示すように、後壁5eの中央領域Aおよび上部領域Bに開口集合部25がパンチング加工により形成される。開口集合部25は、その形状により、加熱室5の内部に放射されたマイクロ波を加熱室5の外部に漏洩しない。
【0041】
第1開口集合部25aは、後壁5eの中央に位置する中央領域Aに形成された開口集合部25である。第1開口集合部25aは、加熱室5内の空気を背面側へ吸入する吸入口として機能する。
【0042】
第2開口集合部25bは、後壁5eの上部において幅方向(左右方向)に延在する上部領域Bに形成された開口集合部25である。第2開口集合部25bは、加熱室5内へ空気(熱風)を吹き出す吹出口として機能する。具体的には、第2開口集合部25bから、流路形成部13により加熱室5の上方空間に向かって空気が吹き出される。
【0043】
本実施の形態において、第1開口集合部25aおよび第2開口集合部25bは同じ形状の開口を有する。しかし、加熱調理器1における仕様(吸引量、吹き出し量など)に応じて、第1開口集合部25aおよび第2開口集合部25bは望ましい形状の開口を有すればよい。
【0044】
本実施の形態では、第1開口集合部25aおよび第2開口集合部25bは、多数の小さな開口が集合して形成された開口部を有し、互いに所定距離を置いて設けられる。しかし、開口部は小さな開口の集合でなくて、一つの大きな開口でもよい。第1開口集合部25aおよび第2開口集合部25bは隣接してもよい。
【0045】
図7は、熱風循環加熱領域に配置された対流装置20の正面図である。図7は、後壁5eを取り除いた状態における対流装置20を示し、図7の手前側に加熱室5が配置される。
【0046】
図8は、熱風循環加熱領域に配置された対流装置20の斜視図である。図9図12は、対流装置20を構成する各部材の斜視図である。具体的には、図9は、コンベクションヒータ10の斜視図である。図10は、第1エアガイド27aの斜視図である。図11は、循環ファン11の斜視図である。図12は、第2エアガイド27bの斜視図である。図13は、対流装置20の分解斜視図である。
【0047】
図7および図13に示すように、後壁5eの後方にコンベクションヒータ10が配置される。図9に示すように、コンベクションヒータ10は、1本の渦巻き状のシーズヒータで構成される。コンベクションヒータ10の渦巻き部分が、図における後壁5eの中央領域Aに対向する。コンベクションヒータ10は、中央領域Aの第1開口集合部25aから吸引された空気を加熱する。
【0048】
図13に示すように、コンベクションヒータ10の後方に、循環ファン11およびファン駆動部12などが設けられる。循環ファン11は遠心ファンであり、循環ファン11の中央部分から空気を吸い込み、遠心方向に吹き出すように構成される。
【0049】
循環ファン11により加熱室5から吸い込まれた空気は、コンベクションヒータ10により加熱されて熱風となる。この熱風は、浄化のための触媒26を通して、熱風循環枠28内の循環ファン11に吸引されて、遠心方向に吹き出される。本実施の形態では、図11に示すように、循環ファン11は正面視において、すなわち前方から見て時計回りに回転するように構成される。
【0050】
図13に示すように、コンベクションヒータ10および循環ファン11の周囲に、エアガイドフレーム27および熱風循環枠28を含む風ガイド部が配置される。エアガイドフレーム27は、第1エアガイド27a(図10参照)と、第2エアガイド27b(図12参照)と、を有する。
【0051】
第1エアガイド27aは、コンベクションヒータ10を取り囲むように配置された円形の枠体である。第2エアガイド27bは、循環ファン11により遠心方向に吹き出された風を加熱室5の天面に沿って吹き出すように案内する。
【0052】
エアガイドフレーム27は、その上下左右を取り囲む四角い枠体形状の熱風循環枠28に固定される。円形枠の第1エアガイド27aにより規定される領域は、後壁5eの中央領域Aに対向する。
【0053】
従って、加熱室5から後壁5eの中央領域Aを通して吸い込まれた空気は、コンベクションヒータ10により加熱されて熱風となり、循環ファン11の中央部分に吸い込まれる。循環ファン11により吸い込まれた熱風は、循環ファン11の周囲に配置された第2エアガイド27bにより加熱室5の天面近傍に案内される。
【0054】
加熱室5の天面近傍に案内された熱風は、熱風循環枠28の天面の内面に沿って前方に送られる。熱風循環枠28の天面の内側面に、板状の第3エアガイド28aが配置される。第3エアガイド28aにより、天面近傍に案内された熱風が加熱室5の天面に沿って略均一に吹き出される。
【0055】
熱風循環枠28の右内側面に、板状の第4エアガイド28bが配置される。第4エアガイド28bにより、第2エアガイド27bにより天面近傍に案内された熱風が流路形成部13に向かって吹き出される。
【0056】
本実施の形態において、熱風循環枠28は、一つの第3エアガイド28aおよび一つの第4エアガイド28bを備える。しかし、熱風循環枠28は、複数の第3エアガイド28aおよび複数の第4エアガイド28bを備えてもよい。
【0057】
図11に示すように、循環ファン11は、正面視において時計回りに回転する。このため、第3エアガイド28aは、正面視において熱風循環枠28の天面の内側面の左端から熱風循環枠28の内側面の幅の約1/3に位置に配置され、熱風を加熱室5に案内する。
【0058】
第4エアガイド28bは、熱風循環枠28の右内側面の上部において水平に突出するように配置され、熱風を流路形成部13に案内する。第3エアガイド28aおよび第4エアガイド28bは、循環ファン11の仕様および熱風循環枠28の形状などに応じた適切な位置に配置される。
【0059】
熱風循環枠28は、熱が外部に伝わらないようにするため、熱風循環枠28の外周に断熱材(図示せず)を介して配置された断熱枠(図示せず)を有する。
【0060】
図8の矢印A1に示すように、熱風循環加熱領域の中央部分(後壁5eの中央領域A)を通して空気が吸い込まれる。この空気は、第1エアガイド27aにより案内され、コンベクションヒータ10により加熱されて熱風となる。この熱風は、循環ファン11に吸い込まれる。
【0061】
循環ファン11に吸い込まれた熱風は、循環ファン11の外側に配置された第2エアガイド27bおよび熱風循環枠28(第3エアガイド28aおよび第4エアガイド28bを含む)により、図8の矢印A2に示すように加熱室5の天面近傍に吹き出される。
【0062】
[エアガイドフレームの構成]
エアガイドフレーム27は、底面の一部に切欠き27cを有する。切欠き27cが設けられていない従来のエアガイドフレームでは、エアガイドフレームの底部の内側面にごみが溜まることがある。この場合のごみとは、循環ファン11により吸い込まれた食品カスなどである。
【0063】
さらに従来のエアガイドフレームでは、加熱室5の内部を使用者が洗剤などで清掃すると、エアガイドフレーム27の底部の内側面に洗剤が蓄積したり、溜まったゴミに洗剤が付着したりすることがあった。
【0064】
本実施の形態によれば、エアガイドフレーム27の底面の一部に設けられた切欠き27cにより、ごみや洗剤がエアガイドフレームに溜まることを防ぐことができる。
【0065】
図10に示すような円形の枠体である第1エアガイド27aが、コンベクションヒータ10を取り囲むように設けられる。第1エアガイド27aにより、循環ファン11によって対流装置20内に吸い込まれた空気がコンベクションヒータ10を通過する。
【0066】
本実施の形態では、第1エアガイド27aは略円筒形状を有する。第1エアガイド27aは、内側にあるコンベクションヒータ10を外側に延出させるための第3切欠き27d1を有する。
【0067】
第1エアガイド27aは、その底面の一部に設けられた第1切欠き27c1を有する。図10に示すように、第1切欠き27c1は略長方形の形状を有し、第1エアガイド27aの前端から第1エアガイド27aのほぼ最後部まで延在する。第1切欠き27c1は、第1エアガイド27aの底面の略水平部分に設けられる。
【0068】
第1エアガイド27aの底面の略水平部分は、熱風循環枠28の底部の内側面に最も近い位置にある。第1エアガイド27aの底面と熱風循環枠28の底部の内側面との間に、空間C(図7における点線の楕円を参照)が設けられる。
【0069】
第2エアガイド27bは、循環ファン11の遠心方向に吹き出された風を加熱室5の天面近傍に案内するために、循環ファン11を取り囲むように配置される。図12に示すように、第2エアガイド27bは、上部に開口部分が設けられた略U字形状を有する。第2エアガイド27bは、この開口部分を介して空気を加熱室5の天面近傍に案内する。
【0070】
第2エアガイド27bは、その内側に配置されたコンベクションヒータ10の一部分を第2エアガイド27bの外に延出させるための第4切欠き27d2を有する。第2エアガイド27bは、循環ファン11によって送出される空気を加熱室5の天面近傍に導くために、第1エアガイド27aに比べて奥行きの寸法が大きい。
【0071】
第2エアガイド27bは、その底面の一部に設けられた第2切欠き27c2を有する。図12に示すように、第2切欠き27c2は、第1エアガイド27aの第1切欠き27c1と同じ形状および同じ奥行きを有する。第2切欠き27c2は、第2エアガイド27bの底面の略水平部分に設けられる。
【0072】
第2エアガイド27bの底面の略水平部分は、熱風循環枠28の底部の内側面に最も近い位置にある。第2エアガイド27bの底面と熱風循環枠28の底部の内側面との間に、空間C(図7における点線の楕円を参照)が設けられる。
【0073】
第2エアガイド27bは、第1エアガイド27aの外側、かつ第1エアガイド27aと部分的に接するように配置される。第2エアガイド27bには開口部分が設けられるため、第1エアガイド27aおよび第2エアガイド27bは、ほぼ下半分の部分で接する。すなわち、第1エアガイド27aは、略U字形状の第2エアガイド27bの内側に重なるように配置される。
【0074】
具体的には、第1エアガイド27aおよび第2エアガイド27bは、第1切欠き27c1の位置と第2切欠き27c2の位置とが上下、左右、前後にほぼ重なるように配置される。この構成により、エアガイドフレーム27の切欠き27cが形成される。
【0075】
なお、上述の通り、第1エアガイド27aの底部上面にごみが溜まらないような構成が望ましい。従って、本開示は上記の構成に限られない。例えば、第2エアガイド27bの第2切欠き27c2は、左右方向、前後方向に、第1エアガイド27aの第1切欠き27c1の寸法以上の寸法を有すればよい。また、切欠き27cの形状は長方形に限らない。
【0076】
図7に示すように、エアガイドフレーム27の底面と、熱風循環枠28の底部との間、すなわち、切欠き27cの直下に空間Cが設けられる。このため、ごみは切欠き27cから熱風循環枠28の底部の内側面に落下する。これにより、ごみがエアガイドフレーム27内に侵入しても、そのごみをエアガイドフレーム27の外に排出することができる。
【0077】
エアガイドフレーム27の切欠き27dは、エアガイドフレーム27の切欠き27cと同様に形成される。すなわち、第1エアガイド27aおよび第2エアガイド27bは、第3切欠き27d1の位置と第4切欠き27d2の位置とが上下、左右、前後にほぼ重なるように配置される。この構成により、エアガイドフレーム27の切欠き27dが形成される。
【0078】
このようにして形成された切欠き27dから、エアガイドフレーム27の内側に配置されたコンベクションヒータ10の一部を外側に延出させることができる。
【0079】
[風ガイド周辺の構成]
上記のように、熱風循環加熱領域から加熱室5の天面近傍に、熱風が吹き出される。この熱風は、熱風生成機構22における流路形成部13に流入する。流路形成部13において、風ガイド14により熱風の流路が形成される。流路形成部13および風ガイド14は、加熱室5の上方に形成された空間内に配置される。
【0080】
図14は、加熱室5内における流路形成部13および風ガイド14の配置を示す、加熱調理器1の縦断面図である。図14において、左方が後方であり、右方が前方である。図14において、加熱室5の内部に配置された主要な構成のみが記載される。
【0081】
図15は、加熱室5の上方空間を上方から見た平面図である。図15は、流路形成部13、風ガイド14、およびグリルヒータ9などの配置を示す。図15において、熱風は後方(左側)から前方(右側)に向かって流れる。
【0082】
加熱室5の後壁5eの天面近傍から熱風が吹き出される。この熱風は、流路形成部13および風ガイド14により形成された加熱室5の上方空間内の循環流路を所望の風圧(流速)で流れる。
【0083】
流路形成部13は、その後方側面に設けられた流入口13aを有する。後壁5eの上部領域Bから吹き出された熱風は、流入口13aを介して流路形成部13内を流入する。その熱風は、風ガイド14により導かれることにより、所望の風圧(流速)で加熱室5の天面近傍に設けられたグリルヒータ9に向けて吹き出される。
【0084】
図16は、流路形成部13の斜視図である。図17は、加熱室5内の循環流が示された、加熱調理器1の縦断面図である。図17は、加熱調理器1の機械室3よりも上部のみを示す。図18は、熱風生成機構22の斜視図である。
【0085】
図14図16に示すように、流路形成部13は、複数の風ガイド14(第1風ガイド14a、第2風ガイド14b)と、加熱室5に連通する流出口13dとを有する。流出口13dは円形、特に真円であり、平面視において加熱室5の略中央に位置するよう設けられる。
【0086】
流路形成部13は、複数の壁によって区画された上方空間を形成し、上壁13eおよび板状の底壁13cおよび三つの側壁によって構成される。三つの側壁とは、側壁13b1、側壁13b2、側壁13b3である。側壁13b1~側壁13b3は、正面視においてそれぞれ流路形成部13の左側、右側、前側の側壁である。流路形成部13の後部には側壁は設けられず、熱風が流入するための流入口13aが設けられる。なお、上壁13eを流路形成部13の一部で構成してもよく、加熱室5の天面を上壁13eとしてもよい。
【0087】
この構成により、流路形成部13は、流入口13aおよび流出口13d以外は側壁13b1、13b2、13b3に覆われた半個室の空間を形成する。流路形成部13により、空気の流路を規定することができる。
【0088】
流入口13aには、第2開口集合部25bから吹き出された空気が流入する。図18に示すように、流路形成部13は、その後部に設けられた流入口13aにおいて第2開口集合部25bと接する。流入口13aは、第2開口集合部25bと正面視において重なるように配置される。この構造により、循環ファン11から吹き出された空気を、第2開口集合部25bを介して流路形成部13に取り入れることができる。
【0089】
図15図16に示すように、風ガイド14は、第1風ガイド14aおよび第2風ガイド14bを含む。第1風ガイド14aおよび第2風ガイド14bの各々は、循環ファン11から第2開口集合部25bを介して吹き出された空気の経路を規定するガイド面14cを有する。ガイド面14cは、流路形成部13の底壁13cに対して略垂直に設けられる(図16参照)。
【0090】
第1風ガイド14aは、流出口13dより後方に配置される。第1風ガイド14aは、左右方向における中央(図16の中心線P)から、循環ファン11から加熱室5に吹き出される空気の量が相対的に少ない側にずらした位置に配置される。
【0091】
第2風ガイド14bは、流出口13dより前方に配置される。第2風ガイド14bは、左右方向における中央(図16の中心線P)から、循環ファン11から加熱室5に吹き出される空気の量が相対的に多い側にずらした位置に配置される。
【0092】
この配置により、吹き出された熱風を複数の方向から流出口13dに導くことができ、さらに流出口13dから加熱室5に流入する熱風の向きをほぼ真下に向けることができる。
【0093】
[熱風生成機構の空気の流れと風ガイドの配置]
図17は、加熱調理器1において、循環ファン11が作動して加熱室5内を対流する空気の流れを矢印で模式的に示している。上述の通り、循環ファン11はその中央部分から加熱室5内の空気を吸い込み、その遠心方向に吹き出すように構成される。
【0094】
第1エアガイド27aは、加熱室5から循環ファン11に吸い込まれた空気を、第1開口集合部25aを介してコンベクションヒータ10に導く。この空気は、コンベクションヒータ10により加熱されて熱風となる。
【0095】
この熱風は、浄化するための触媒26を通過し、循環ファン11に吸引されて、遠心方向に吹き出される。循環ファン11から吹き出された熱風は、第2エアガイド27bにより天面近傍に送り込まれ、第3エアガイド28aにより加熱室5の天面に沿って略均一に吹き出される。
【0096】
その後、第4エアガイド28bにより、この熱風は第2開口集合部25bと流入口13aとを介して流路形成部13に流入する。図18に示す熱風生成機構22は、このような空気の流れを実現する。
【0097】
第4エアガイド28bにより導かれた熱風は、循環ファン11による吸引の影響により、第2開口集合部25bを通過する際に遠心方向に勢いよく吹き出される。上述の通り、本実施の形態では、循環ファン11は正面視において時計回りに回転するように構成される。以下、空気の流れについて説明する。
【0098】
第2開口集合部25bを通過した熱風のうちの多くは、図16に示すように、平面視において前方から少し左方の方向に吹き出される(矢印A3)。矢印A3で示す熱風のうち、第1風ガイド14a付近の熱風(矢印A4)は、第1風ガイド14aのガイド面14cにより流出口13dに導かれる。
【0099】
矢印A3で示す熱風のうち、側壁13b1付近の熱風は、側壁13b1により(矢印A5)、または、第2風ガイド14bにより(矢印A6)流出口13dに導かれる。
【0100】
第2開口集合部25bを通過した熱風のうち、第1風ガイド14aよりも右側に吹き出された熱風(矢印A7)は、側壁13b2により(矢印A8)流出口13dに導かれる。
【0101】
第1風ガイド14aよりも右側に吹き出された熱風(矢印A7)のうち、側壁13b3まで到達した熱風(矢印A9)は、側壁13b3と第2風ガイド14bとにより流出口13dに導かれる。
【0102】
このようにして、図16に示すように、風ガイド14および側壁13b1~13b3は、流路形成部13に流入した空気を複数方向から流出口13dに導く。これにより、熱風は、加熱室5内に吹き出される際、いずれかの方向に傾くことなく、ほぼ真下に吹き出す。その結果、加熱室5の中央に載置された被加熱物の焼きムラを低減することができる。
【0103】
循環ファン11が正面視において時計回りに回転するように構成されるときの、風ガイド14の詳細な配置と向きとについて説明する。本実施の形態において、第1風ガイド14aは、流出口13dの右後方に配置され、流出口13dの近傍から右後方に向かって延在する。第2風ガイド14bは、流出口13dの左前方に配置され、流出口13dの近傍から左前方に向かって延在する。
【0104】
図16に示すように、平面視において、第1風ガイド14aと第2風ガイド14bとは、流路形成部13の左右方向における中心線Pの右側と左側とにそれぞれ配置される。すなわち、平面視において、第1風ガイド14aと第2風ガイド14bとは、流路形成部13の左右方向における中心線Pを挟むように、中心線Pに関して異なる側に配置される。
【0105】
図15に示すように、流路形成部13において、側壁13b3に対して第1風ガイド14aのなす角度α(α<90度)は、側壁13b3に対して第2風ガイド14bのなす角度β(β<90度)よりも大きい。
【0106】
このような配置により、第1風ガイド14aの左側から流入してくる空気を、第1風ガイド14aおよび流出口13dの右側に逃がすことを防ぐことができる。これにより、第1風ガイドの左側から流出口13dに導く流路を形成することができる。
【0107】
ここで、平面視において、流路形成部13を第1風ガイド14a、流出口13d、第2風ガイド14bにより仮想的に風ガイド14の左右の2つの領域に分割する。このとき、風ガイド14は、左側から流入した空気を左側の領域内に形成された流路を介して流出口13dに導く。
【0108】
また、風ガイド14は、右側から流入する空気を、第1風ガイド14aおよび流出口13dの左側に逃がすことを防ぐことができる。これにより、右側から流出口13dに導く流路を形成することができる。
【0109】
すなわち、平面視において流路形成部13を、第1風ガイド14a、流出口13d、第2風ガイド14bにより2つの領域に分割すると、右側の領域から流入した空気は、右側の領域内に形成された流路を介して流出口13dに導かれる。
【0110】
循環ファン11が正面視において反時計回りに回転するように構成される場合、本実施の形態における第1風ガイド14aおよび第2風ガイド14bの構成を左右逆に配置すればよい。これにより、循環ファン11が正面視において時計回りに回転する場合と同様の効果を得ることができる。
【0111】
[庫内温度検知と空焼き検知]
上述の通り、庫内温度検知センサ50は、流路形成部13および風ガイド14に対して特定の位置に配置される。加熱調理器1において、庫内温度検知センサ50は、少なくとも循環ファン11の作動により加熱室5において空気の循環流路が形成されるときに、庫内温度を検知する。すなわち、庫内温度検知センサ50は、加熱室5を循環する空気に接するときに庫内温度を検知する。
【0112】
加熱調理器1は循環ファン11の停止時は加熱調理を行わず、庫内温度検知センサ50は庫内温度の検知を行わない。加熱調理中でないときに温度検知を継続させると、循環ファン11が停止している状況において、例えばグリルヒータ9の残熱により、誤って異常な庫内温度が検知されることがある。循環ファン11の停止中に庫内温度検知センサ50の温度検知を停止するのは、この誤検知を回避するためである。
【0113】
庫内温度検知センサ50は、第2開口集合部25bから吹き出された循環空気にさらされる位置に配置される。すなわち、庫内温度検知センサ50は、流路形成部13内に配置される。
【0114】
図19は、熱風生成機構22の分解斜視図である。図19に示すように、庫内温度検知センサ50は配置位置Eに配置されて、第2開口集合部25bから吹き出された循環空気にさらされる。庫内温度検知センサ50は、流路形成部13の天面から流路形成部13内に突出するように配置される。このような配置により、庫内温度検知センサ50は循環ファンから吹き出された熱風の温度を正確に検知することができる。
【0115】
上記のように、本実施の形態において、庫内温度検知センサ50が庫内温度を検知するのは循環ファン11の作動中であり、循環ファン11の停止は加熱調理の停止を意味する。加熱調理器1において、加熱調理中は、コンベクションヒータ10の停止中でも循環ファン11は作動して、加熱室5および流路形成部13に空気の循環流路が形成される。
【0116】
次に、空焼き検知センサ51について説明する。本願発明者による空焼き検知の検証実験において、空焼き検知センサ51は、マイクロ波加熱の開始直後に急激な温度上昇を検出した。従って、マイクロ波加熱の開始直後に、空焼き検知センサ51により急激な温度上昇を検知することで、「空焼き」を検知することができる。
【0117】
図21は、空焼き検知センサ51の分解斜視図である。図21に示すように、空焼き検知センサ51は、先端に保護管51cが設けられたサーミスタ51aと、誘電体51bとを有する。誘電体51bは、保護管51cを挿入可能な凹部51dを有する。保護管51cは、凹部51dにより完全に覆われる。サーミスタ51aおよび誘電体51bの各々は、流路形成部13の上部にある天面にビス止めされるために板状の突出部を有する。
【0118】
マイクロ波加熱の開始直後において、空焼き検知センサ51が急激な温度上昇を検出するのは、誘電体51bがマイクロ波加熱されて誘電体51bの温度が上昇するからである。誘電体51bは、導電体ではなく誘電率が小さい、例えばセラミックで構成された誘電体である。具体的には、誘電体51bはコージライト製である。
【0119】
加熱室5に載置された被加熱物をマイクロ波加熱する場合、被加熱物がマイクロ波を吸収して加熱される。しかし、被加熱物が加熱室5に載置されない「空焼き」状態では、被加熱物に比べて小さな容量の誘電体51bがマイクロ波加熱される。このため、誘電体51bの温度が短時間に上昇する。その結果、空焼き検知センサ51は、この急激な温度上昇を検出することで、「空焼き」状態を検知することができる。
【0120】
この急激な温度上昇とは、検知した温度と、制御部に記憶された庫内の基準温度との差が大きいことを意味する。庫内の基準温度は、循環ファンの回転スピードと出力電力値との掛け算により得られる。
【0121】
本実施の形態において、制御部は、マイクロ波加熱の場合に空焼き検知センサ51が急激な温度上昇を検知すると、その状態を「空焼き」と判断して加熱動作を直ちに停止する。その後、制御部は、加熱調理器1が「空焼き」状態であることを使用者に報知する。
【0122】
このようにして、空焼き検知センサ51は空焼きを検知する。従って、誘電体51bがサーミスタ51aから近いほど、誘電体51bがサーミスタ51aと接触する面積が大きいほど、サーミスタ51aは誘電体51bの温度上昇を精度よく検知することができる。その結果、より正確な空焼き検知が可能である。
【0123】
しかし、本開示はこの構成に限るものではない。誘電体51bがサーミスタ51aと一部で接触してもよく、誘電体が間隔を開けてサーミスタを覆ってもよい。誘電体51bも同様に、本実施の形態に限定されるものではない。
【0124】
ただし、風路を通る風がサーミスタに直接当たると検知する温度にむらが生じることがある。このため、サーミスタ51aを誘電体51bで覆うことにより、風がサーミスタに直接当たらず精密な温度検知が可能である。
【0125】
誘電体51bの大きさおよび形状は、使用するサーミスタの耐熱温度および測定する温度に応じて適切に決定される。このため、加熱調理器1の出力、加熱時間などによる誘電体の温度上昇を考慮する必要がある。
【0126】
空焼き検知センサ51は、加熱室5の下方から放射されたマイクロ波を吸収可能な位置に配置される。本実施の形態では、流路形成部13内の流出口13dの鉛直上方に配置される。
【0127】
具体的には、本実施の形態の加熱調理器1において、図19に示すように、空焼き検知センサ51は、流路形成部13の天面の略中央の配置位置Fの、流出口13dの鉛直上方(図18参照)において、流路形成部13の天面から流路形成部13内に突出するように配置される。上述のように、流出口13dは加熱室5の略中央に設けられる。このため、空焼き検知センサ51は、加熱室5全体からのマイクロ波を受けることができる。
【0128】
上記のように、本実施の形態において、空焼き検知センサ51は配置位置Fに配置される。これにより、加熱室5の庫内温度を高精度に検出することができ、マイクロ波加熱における「空焼き」を短時間に検知することができる。その結果、加熱室5で消費されなかったマイクロ波がマグネトロン15に戻ってマグネトロン15にダメージを与える前に、マイクロ波加熱を停止することができる。
【0129】
上記のように、本実施の形態において、加熱室5の内部の温度を高精度に検知するために、庫内温度検知センサ50および空焼き検知センサ51が循環流路の特定の位置に配置される。これにより、庫内温度およびその変化を精度高く検知することが可能である。その結果、本実施の形態の加熱調理器は、マイクロ波加熱における「空焼き」を検知することができる。
【0130】
[本実施の形態における効果等]
本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0131】
本実施の形態に係る加熱調理器は、加熱室と、循環ファンと、流路形成部と、を備える。加熱室は被加熱物を収容可能である。循環ファンは、加熱室の空気を吸入し、吸入した空気を加熱室に吹き出すことで、加熱室の内部空間に循環流路を形成する。流路形成部は、加熱室の内部に配置され、循環ファンから加熱室に吹き出される空気の流速および吹き出し方向を規定する。流路形成部は、加熱室の上方に配置され、複数の壁で区画されて加熱室の上方空間を形成する。流路形成部は、風ガイドと、加熱室に連通する流出口と、を有する。
【0132】
本実施の形態によれば、加熱室の上方空間において、風ガイドにより空気が導かれることで空気の流路を規定することができる。その結果、流出口から所望の方向に空気を吹きだすことができる。
【0133】
本実施の形態に係る加熱調理器では、流出口は円形であり、流路形成部の底壁の、平面視における加熱室の略中央に設けられる。
【0134】
本実施の形態によれば、円形の流出口の場合、例えば四角形状の流出口に比べて流出口に空気が流入する際に空気の向きが変わりにくい。そのため、空気を所望の方向、すなわち下方に吹き出すことができる。また、流出口から下方に吹き出す空気を加熱室の底壁の中央に向けることで、被加熱物を均等に加熱しやすい。
【0135】
本実施の形態に係る加熱調理器では、風ガイドは、循環ファンから吹き出された空気の経路を規定するガイド面を有する。ガイド面は、流路形成部の底壁に対して略垂直に設けられる。本実施の形態によれば、流出口に向けて所望の方向に風をガイドすることができる。
【0136】
本実施の形態に係る加熱調理器では、風ガイドは、流路形成部の底面に設けられる第1風ガイドと第2風ガイドとを有する。第1風ガイドは、流出口の後方に配置され、左右方向における中央から、循環ファンから加熱室に吹き出される空気の量が相対的に少ない側にずらした位置に配置される。第2風ガイドは、流出口の前方に配置され、左右方向における中央から、循環ファンから加熱室に吹き出される空気の量が相対的に多い側に寄せられて設けられ、風ガイドは、循環ファンから前記加熱室に吹き出される空気を複数方向から流出口に導く。
【0137】
本実施の形態によれば、風ガイドが、熱風を所望の方向から流出口に導くことができる。また、風ガイドは、複数方向から空気を流出口に導くので、複数方向からの熱風が流出口でぶつかることになる。これにより、複数方向への力が打ち消し合い、熱風の向きをほぼ真下に向けることができる。
【0138】
本実施の形態に係る加熱調理器は、加熱室の上方に配置され、加熱室内を加熱するグリルヒータをさらに備える。流路形成部は、加熱室の天面と前記グリルヒータとの間に配置される。流路形成部は、底壁および三つの側壁によって構成され、三つの側壁は正面視において左側の側壁、右側の側壁、前側の側壁である。流路形成部の、正面視における後側に流入口が設けられている。
【0139】
本実施の形態によれば、流路形成部は、流入口および流出口以外は側壁に覆われた半個室の空間を形成している。流路形成部により、空気の流路を規定することができる。
【0140】
本実施の形態に係る加熱調理器では、循環ファンが正面視において時計回りに回転するように構成される。正面視において、第1風ガイドは流出口の右後方に配置され、流出口の近傍から右後方に向かって延在する。第2風ガイドは流出口の左前方に配置され、流出口の近傍から左前方に向かって延在する。
【0141】
本実施の形態によれば、風ガイドにより導かれた空気は、流出口から加熱室に向けて真下に吹き出される。その結果、加熱室の中央に載置された被加熱物の焼きムラを低減することができる。
【0142】
本実施の形態に係る加熱調理器では、循環ファンが正面視において反時計回りに回転するように構成される。正面視において、第1風ガイドは流出口の左後方に配置され、流出口の近傍から左後方に向かって延在する。第2風ガイドは流出口の右前方に配置され、流出口の近傍から右前方に向かって延在する。
【0143】
本実施の形態によれば、循環ファンが正面視において時計回りに回転する場合と同様の効果を得ることができる。
【0144】
本形態に係る加熱調理器では、平面視において、第1風ガイドと第2風ガイドとは、流路形成部の左右方向における中心線の右側と左側とにそれぞれ配置される。すなわち、平面視において、第1風ガイドと第2風ガイドとは、流路形成部の左右方向における中心線を挟むように配置される。
【0145】
本実施の形態によれば、第1風ガイドの左側から流入してくる空気の流路と、第1風ガイドの右側から流入してくる空気の流路とを規定することができる。
【0146】
本実施の形態に係る加熱調理器では、流路形成部において、前側の側壁に対する第1風ガイドの角度αは、前側の側壁に対する第2風ガイドの角度βよりも大きい。
【0147】
本実施の形態によれば、第1の風ガイドより左側から流入してくる空気を、第1風ガイドおよび流出口の右側に逃がすことを防ぐことができる。これにより、第1風ガイドの左側から流出口に導く流路を形成することができる。
【0148】
また、第1の風ガイドより右側から流入してくる空気を、第1風ガイドおよび流出口よりも左側へ逃がすことを防ぐことができる。これにより、第1風ガイドの右側から流出口に導く流路を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示は、食品を加熱するための加熱調理器、具体的には、オーブン、電子レンジなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 加熱調理器
2 本体
3 機械室
4 扉
5 加熱室
5a 底壁
5e 後壁
6 操作表示部
7 載置台
8 受け皿
9 グリルヒータ
10 コンベクションヒータ
11 循環ファン
12 ファン駆動部
13 流路形成部
13a 流入口
13b1、13b2、13b3 側壁
13c 底壁
13d 流出口
13e 上壁
14 風ガイド
14a 第1風ガイド
14b 第2風ガイド
14c ガイド面
15 マグネトロン
16 インバータ
17 冷却ファン
18 導波管
19 マイクロ波供給部
20 対流装置
21 マイクロ波加熱部
22 熱風生成機構
23 スタラ
24 把手
25 開口集合部
25a 第1開口集合部
25b 第2開口集合部
26 触媒
27 エアガイドフレーム
27a 第1エアガイド
27b 第2エアガイド
27c 切欠き
27c1 第1切欠き
27c2 第2切欠き
27d 切欠き
27d1 第3切欠き
27d2 第4切欠き
28 熱風循環枠
28a 第3エアガイド
28b 第4エアガイド
30 通気パネル
50 庫内温度検知センサ
51 空焼き検知センサ
51a サーミスタ
51b 誘電体
51c 保護管
51d 凹部
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