IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許7557683レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法
<>
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図1
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図2
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図3
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図4
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図5
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図6
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図7
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図8
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図9
  • 特許-レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】レーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/042 20140101AFI20240920BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240920BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20240920BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
B23K26/042
G02B6/42
G02B6/32
B23K26/064 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024023240
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】堂本 真也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 遼士
(72)【発明者】
【氏名】江泉 清隆
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-155159(JP,A)
【文献】特開平07-227686(JP,A)
【文献】特開2009-178720(JP,A)
【文献】特開2006-047466(JP,A)
【文献】特開平08-338915(JP,A)
【文献】特開平07-104147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/042
G02B 6/42
G02B 6/32
B23K 26/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズで集光された前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、
前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光を被対象物に照射する加工ヘッドと、
前記集光レンズの位置を調整する集光レンズ調整部と、
前記集光レンズで集光された前記レーザ光の光軸に対する前記伝送ファイバの中心軸の角度を調整する入射側角度調整部と、を有し、
前記加工ヘッドは、
前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光の一部を反射する部分反射ミラーと、
前記部分反射ミラーで反射された前記レーザ光を受光し、前記レーザ光のスポット径および強度を出力する光検出器と、を有し、
前記集光レンズ調整部は、
前記光検出器で出力された前記レーザ光の強度が閾値以上となるように調整され、
前記入射側角度調整部は、
前記光検出器で出力された前記レーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように調整されるレーザ装置。
【請求項2】
レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズで集光された前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、
前記伝送ファイバが接続される接続端面を有し、前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光を被対象物に照射する加工ヘッドと、
前記集光レンズで集光された前記レーザ光の光軸に対する前記伝送ファイバの中心軸の角度を調整する入射側角度調整部と、
前記加工ヘッドの前記接続端面に対する前記伝送ファイバの出射端面の角度を調整する出射側角度調整部と、を有し、
前記加工ヘッドは、
前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光の一部を反射する部分反射ミラーと、
前記部分反射ミラーで反射された前記レーザ光を受光し、前記レーザ光のスポット径を出力する光検出器と、を有し、
前記入射側角度調整部は、
前記光検出器で出力された前記レーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように調整され、
前期出射側角度調整部は、
前記光検出器で出力された前記レーザ光のスポット径の中心位置と予め設定されたスポット径の中心位置とが所定の位置関係となるように調整されるレーザ装置。
【請求項3】
前記加工ヘッドは、前記部分反射ミラー以前の光路系にコリメートレンズをさらに備える請求項1または2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズで集光された前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、を備え
前記伝送ファイバから出射される前記レーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように、前記集光レンズで集光された前記レーザ光の光軸に対する前記伝送ファイバの中心軸の角度を調整するステップと
前記伝送ファイバから出射される前記レーザ光の強度が閾値以上となるように、集光レンズの位置を調整するステップと、を有する伝送ファイバ接続調整方法。
【請求項5】
請求項に記載のレーザ装置を用いる伝送ファイバ接続調整方法であって、
前記出射側角度調整部の調整は、前記入射側角度調整部の調整よりも前に行う伝送ファイバ接続調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送ファイバへの入射位置及び入射角度をモニタ可能なレーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工において、レーザ光源から出射されたレーザ光は伝送ファイバから加工ヘッドに導光されワークに向けて照射される。
【0003】
ここで、伝送ファイバのコアは、中心位置や中心軸の偏角に個体差をもっている。よって、加工ヘッドから照射されるレーザ光の特性は装着される伝送ファイバが変わる度変化してしまっていた。したがって、伝送ファイバの交換時には、加工ヘッド内の光学部品を調整するなどして個体ごとにレーザ光の特性が所望の結果となる条件を見つける必要があった。また、このことは、伝送ファイバの交換作業を含む復旧作業の時間(ダウンタイム)を長引かせる要因となっていた。
【0004】
特許文献1では、伝送ファイバの交換時において、伝送ファイバの入射端面をモニタし、その結果を基にレーザ光の集光点を入射端面の中心に調整することで、伝送ファイバの交換作業を容易にする手法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7―104147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、伝送ファイバに入射するレーザ光の角度については考慮されていなかった。伝送ファイバへの入射角度は伝送ファイバから出射されるレーザ光のビーム品質に大きく影響する。よって、伝送ファイバ交換後に入射角度が変化した場合、ビーム品質が悪化する恐れがあった。
【0007】
そこで、本開示では、伝送ファイバに入射するレーザ光の入射角度をより容易に適切な条件に調整できるレーザ装置及び伝送ファイバ接続調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るレーザ装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、前記集光レンズで集光された前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光を被対象物に照射する加工ヘッドと、前記集光レンズの位置を調整する集光レンズ調整部と、前記集光レンズで集光された前記レーザ光の光軸に対する前記伝送ファイバの中心軸の角度を調整する入射側角度調整部と、を有する。前記加工ヘッドは、前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光の一部を反射する部分反射ミラーと、前記部分反射ミラーで反射された前記レーザ光を受光し、前記レーザ光のスポット径および強度を出力する光検出器と、を有する。前記集光レンズ調整部は、前記光検出器で出力された前記レーザ光の強度が閾値以上となるように調整され、前記入射側角度調整部は、前記光検出器で出力された前記レーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように調整される。
また、本開示に係るレーザ装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、前記集光レンズで集光された前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、前記伝送ファイバが接続される接続端面を有し、前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光を被対象物に照射する加工ヘッドと、前記集光レンズで集光された前記レーザ光の光軸に対する前記伝送ファイバの中心軸の角度を調整する入射側角度調整部と、前記加工ヘッドの前記接続端面に対する前記伝送ファイバの出射端面の角度を調整する出射側角度調整部を有する。前記加工ヘッドは、前記伝送ファイバから出射された前記レーザ光の一部を反射する部分反射ミラーと、前記部分反射ミラーで反射された前記レーザ光を受光し、前記レーザ光のスポット径を出力する光検出器と、を有する。前記入射側角度調整部は、前記光検出器で出力された前記レーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように調整され、前期出射側角度調整部は、前記光検出器で出力された前記レーザ光のスポット径の中心位置と予め設定されたスポット径の中心位置とが所定の位置関係となるように調整される。
【0009】
本開示に係る伝送ファイバ接続調整方法は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、レーザ発振器から出射されたレーザ光を集光する集光レンズと、集光レンズで集光されたレーザ光を伝送する伝送ファイバと、を備えるまた、伝送ファイバから出射されるレーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように、集光レンズで集光されたレーザ光の光軸に対する伝送ファイバの中心軸の角度を調整するステップと前記伝送ファイバから出射される前記レーザ光の強度が閾値以上となるように、集光レンズの位置を調整するステップと、を有する
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るレーザ装置及び伝送ファイバ接続調整方法は、伝送ファイバに入射するレーザ光の入射角度をより容易に適切な条件に調整できる。これにより、伝送ファイバの交換及びそれに伴う調整作業が容易となり、ダウンタイムの削減、さらには、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るレーザ装置の概要図
図2】実施の形態1を説明する概念図
図3】角度調整部の概念図
図4】コア中心に個体差をもつ伝送ファイバの断面図
図5】コア中心の個体差検知を説明する概念図
図6】コアの中心軸の偏角に個体差をもつ伝送ファイバを説明する概念図
図7】入射側角度調整部の調整を説明する概念図
図8】出射側角度調整部の調整を説明する概念図
図9】伝送ファイバ交換後の接続調整手順を示した図
図10】実施の形態2を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係るレーザ装置の実施の形態を、図面に基づき説明する。なお、下記に開示される実施の形態はすべて例示であって、本開示に係るレーザ装置に制限を加える意図はない。例えば、本開示に係るレーザ装置は、ダイレクトダイオードレーザを用いるものを想定し説明するが、これに限るものではなくファイバレーザやディスクレーザ等を用いるものであってもよい。
【0013】
また、下記に開示される実施の形態では、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項についての詳細な説明や、実質的に同一の構成についての重複する説明を、省略する場合がある。これは、説明が不必要に冗長になるのを避けることで、当業者の理解を容易にするためである。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態に係るレーザ装置の外観図である。図1に示すように、レーザ装置1はレーザ発振器10、伝送ファイバ50、加工ヘッド60、制御部80を有する。レーザ発振器10は、例えば、波長合成技術を用いたダイレクトダイオードレーザであって、複数のレーザモジュール20とビーム合成器30と集光ユニット40を有する。
【0015】
レーザ発振器10は、複数のレーザモジュール20からそれぞれ出射されたレーザ光をビーム合成器30で一つのレーザ光3に合成する。なお、レーザモジュール20は、複数のレーザダイオード、例えば、半導体レーザアレイで構成されている。
【0016】
集光ユニット40は、ビーム合成器30で合成されたレーザ光3を集光する。レーザ発振器10をこのような構成とすることで、レーザ光3の出力が数KWを超える高出力のレーザ装置1を得ることができる。
【0017】
伝送ファイバ50は、集光ユニット40で集光されたレーザ光3を加工ヘッド60に伝送する。また、加工ヘッド60は伝送ファイバ50によって伝送されたレーザ光3を被対象物2に照射する。
【0018】
図2は、実施の形態1を説明する概念図である。また、図2はレーザ光3の進行方向も示している。
【0019】
図2に示すように、ビーム合成器30はミラー31を有する。ミラー31は、合成されたレーザ光3を反射することでレーザ光3を集光ユニット40に導光する。
【0020】
集光ユニット40は、集光ハウジング49、入射側保持部42、入射側角度調整部44を有する。
【0021】
集光ハウジング49は、入射側集光レンズ41と、集光レンズ調整部43を有する。入射側集光レンズ41は、ミラー31で反射されたレーザ光3を伝送ファイバ50に向けて集光する。また、集光レンズ調整部43は、入射側集光レンズ41の位置をX軸、Y軸、Z軸方向に調整する。集光レンズ調整部43は、入射側集光レンズ41の位置を変化させることでレーザ光3の集光位置(伝送ファイバ50への入射位置)を調整可能である。集光レンズ調整部43の調整方法は詳細を後述する。
【0022】
入射側保持部42は、伝送ファイバ50を挿入するための空洞を有し、伝送ファイバ50の入射側挿入部55を保持する機能を有している。また、伝送ファイバ50の入射側挿入部55は、入射側保持部42から着脱可能である。
【0023】
入射側角度調整部44は、伝送ファイバ50の入射側挿入部55側の傾きを調整する。入射側角度調整部44の構造及び調整方法については詳細を後述する。
【0024】
伝送ファイバ50は、コア52、クラッド53、入射側石英ブロック51、出射側石英ブロック54を有する。コア52及びクラッド53は、略円柱状であり、コア52の周囲をクラッド53が囲んでいる。コア52内に入射したレーザ光3は加工ヘッド60へ伝送される。入射側石英ブロック51及び出射側石英ブロック54は、入射側の伝送ファイバ50の端面(入射端面57)及び出射側の伝送ファイバ50の端面(出射端面58)に接して設けられている。
【0025】
加工ヘッド60は、ヘッドハウジング69、出射側保持部65、出射側角度調整部64を有している。
【0026】
ヘッドハウジング69は、伝送ファイバ50の出射側挿入部56が挿入される接続端面69aを有し、部分反射ミラー61、光検出器62、ミラー63、コリメートレンズ66、出射側集光レンズ67を備える。
【0027】
部分反射ミラー61は、伝送ファイバ50から出射したレーザ光3の一部、例えば、0.01%を反射し、残りのレーザ光3を透過する。
【0028】
光検出器62は、部分反射ミラー61で反射されたレーザ光3bを受光する。光検出器62は、例えば、CCDカメラであって、受光した光の強度や形状等の電気信号を出力する。
【0029】
ミラー63は、部分反射ミラー61を透過したレーザ光3を加工ヘッド60の照射口方向へ反射する。
【0030】
コリメートレンズ66は、ミラー63によって反射されたレーザ光3を平行化(均一化)する。また、出射側集光レンズ67は、コリメートレンズ66で平行化されたレーザ光を被対象物2に向けて集光する。
【0031】
出射側保持部65は、伝送ファイバ50を挿入するための空洞を有し、伝送ファイバ50の出射側挿入部56を保持している。また、伝送ファイバ50の出射側挿入部56は、出射側保持部65から着脱可能である。出射側角度調整部64は、伝送ファイバ50の出射側挿入部56側の傾きを調整する。出射側角度調整部64の構造は入射側角度調整部44と同様の構造である。出射側角度調整部64の調整方法については詳細を後述する。
【0032】
制御部80は、作業者が事前に設定した設定値(後述する閾値W及び基準スポットサイズ81)と、光検出器62から出力された電気信号との比較を行い、比較結果を出力する。作業者は、制御部80で出力された比較結果を基に、集光レンズ調整部43、入射側角度調整部44、出射側角度調整部64の調整を行い、伝送ファイバ50の接続を調整する。伝送ファイバ50の接続調整手順については詳細を後述する。
【0033】
図3は、入射側角度調整部の概念図である。図3(a)は、角度調整部の側面図、図3(b)は角度調整部の平面図である。入射側角度調整部44は集光ハウジング49と入射側保持部42との間に設置され、入射側集光レンズ41で集光されたレーザ光3の光軸3aに対する伝送ファイバ50の中心軸4の角度を調整する。入射側角度調整部44は、入射側角度調整板48、アジャスタ45、Oリング46を有する。
【0034】
入射側角度調整板48は、伝送ファイバ50を挿入するための空洞を有する(ファイバ挿入部47)。
【0035】
アジャスタ45は、例えばネジであり、入射側角度調整板48に3つ(45a、45b、45c)設けられている。アジャスタ45は、当該アジャスタの締め込み量を変化させることで入射側角度調整板48の角度を調整する。ここで、3つのアジャスタ45は、2つが移動可能で1つが移動不可な構成でも良い。例えば、アジャスタ45cが移動不可であった場合、アジャスタ45cが支点となり、他2つのアジャスタ45a、45bの締め込み量を調整することで入射側角度調整板48の角度を調整する。
【0036】
Oリング46は、反発力をもつ構成であり、入射側調整板48と集光ハウジング49の隙間を封止すように設けられている。なお、入射側角度調整板48は、アジャスタ45とOリング46によって角度が保持される。
【0037】
出射側角度調整部64は、ヘッドハウジング69と出射側保持部65との間に設置されており、ヘッドハウジング69における伝送ファイバ50の接続端面69aに対する伝送ファイバ50の出射端面58の角度を調整する。出射側角度調整部64の構造は、入射側角度調整部44と同様の構造であるため説明を省略する。
【0038】
ここで、入射側角度調整部44は伝送ファイバ50の入射端面57を保持するように挿入されることが好ましい。同様に、出射側角度調整部64は、伝送ファイバ50の出射端面58を保持するように挿入されることが好ましい。これは、入射側角度調整部44及び出射側角度調整部64による調整の精度を向上させるためである。
【0039】
(伝送ファイバの個体差)
図4は、コア中心に個体差をもつ伝送ファイバの断面図である。図4(a)は、交換前の伝送ファイバ50aのXY面上の断面図である。図4(b)は、交換後の伝送ファイバ50bのXY面上の断面図である。以下の説明で用いるずれとは交換前の伝送ファイバ50aと交換後の伝送ファイバ50bを比較した場合の差分のことを指す。また、灰色の円は、伝送ファイバ50の入射端面57におけるレーザ光3のスポット(入射スポット21)を示している。
【0040】
図4(a)及び図4(b)では、入射端面57における伝送ファイバ50の中心Oに対する、コア52の中心(コア中心C)の位置が異なっている。これにより、入射スポット21の中心P’がコア中心Cからずれてしまう。この場合、図4(b)に示すように、交換後の伝送ファイバ50bでは入射側集光レンズ41で集光されるレーザ光3の一部がクラッド53に入射する可能性が高い。レーザ光3がクラッド53入射すると、伝送ファイバから出射されるレーザ光3の出力低下や局所的な発熱を招くおそれがある。特に、発熱によるダメージが蓄積すると伝送ファイバ50の破損に繋がる。
【0041】
以上のように、コア中心Cに個体差があることで、交換前の伝送ファイバ50aにとって適切な条件、すなわち入射側集光レンズ41のXYZ座標上の位置、が交換後の伝送ファイバ50にとっては適切でない条件となることがある。したがって、作業者は、後述する方法によってコア中心Cのずれを検知し、交換後の伝送ファイバ50bにおいてもレーザ光3が適切に入射するように調整する。
【0042】
図5は、コア中心の個体差検知を説明する概念図である。
【0043】
入射端面57におけるコア52の中心位置Cのずれは、光検出器62から出力される出射光強度Sをモニタすることで検知可能である。ここで、制御部80は、コア52へのレーザ光3の入射位置が正確だった場合の出射強度である閾値Wを予め設定されている。レーザ光3がクラッド53に入射すると、出射端面58から出射するレーザ光3の出力が低下する。よって、出射強度が閾値Wを下回っていた場合は、コア52へのレーザ光3の入射位置がずれていると判断する。入射位置は、出射強度が閾値W以上となるように、入射側集光レンズ41を移動、つまり集光レンズ調整部43をXYZ方向に移動させることで調整する。
【0044】
具体的には、光検出器62で出力された出射光強度Sが閾値W以下と判断した場合、まず、集光レンズ調整部43をX軸方向に移動させる。X軸方向の調整は、出射光強度Sが最大となる位置で終了する(図5(a))。次に、集光レンズ調整部43をY軸方向に移動させ、出射光強度Sが最大となる位置でY軸方向の調整を終了する(図5(b))。最後に、集光レンズ調整部43をZ軸方向に動かし、出射光強度Sが閾値W以上となった位置でZ軸方向の調整を終了する(図5(C))。集光レンズ調整部43の調整は、例えば、初期位置から+1μmずつ動かしたときに、出射光強度Sが上昇傾向にあれば、さらに+1μm動かす。これを繰り返し、減少傾向に転じた点から-1μmの動かした位置を最適位置として調整を終了する。一方、初期位置から+1μm動かしたときに、出射光強度Sが減少傾向にあれば、出射光強度のピークはマイナス側にあると判断し、―1μm動かす(元の位置に戻す)。さらに―1μmずつ動かしたときに、出射光強度Sが上昇傾向にあれば、さらに―1μm動かす。これを繰り返し、減少傾向に転ずるまで同一方向に調整部を動かす。これを繰り返し、減少傾向に転じた点から+1μmの動かした位置を最適位置として調整を終了する。最適位置とは、最適位置を原点としたとき、+1μm動かしても、―1μm動かしても、出射光強度が減少傾向となる位置のことである。なお、本実施例では1μmずつ移動する方法について開示したが、調整量はコア直径に対して1~5%の移動量であれば適宜選択可能である。また、集光レンズ調整部43は、出力光強度Sの増減がレーザ発振器からの出力に対して0.1%以上の変化を検知した場合に調整を行う。これにより、無視できるほどの出射光強度Sの増減を排除した調整が可能となる。
【0045】
一般的に伝送ファイバは、入射端面57と出射端面58で異なる偏角θargを持つ。図6は、コアの中心軸の偏角に個体差をもつ伝送ファイバを説明する概念図である。図6(a)は、交換前の伝送ファイバ50aのYZ平面の断面図である。図6(b)は、入射端面57に偏角θargをもつ交換後の伝送ファイバ50bのYZ平面の断面図である。図6(c)は、出射端面58に偏角θargをもつ交換後の伝送ファイバ50bのYZ平面の断面図である。説明を容易にするため、まず、図6(a)及び図6(b)を用いて、交換前の伝送ファイバ50aは入射端面57及び出射端面58共に偏角θargを持たず(無視できるほど小さく)、交換後の伝送ファイバ50bは入射端面57に偏角θargを持ち、出射端面58は偏角θargをもたない場合について説明する。図6に示すように、伝送ファイバ50はコア52を有し、レーザ光3はコア52を通って伝送される。本開示に係る説明において、偏角θargとは、伝送ファイバの中心軸4とコアの中心軸5のなす角のことである(図6(b)参照)。ここで、入射角度θinとは、伝送ファイバの中心軸4、特に入射端面57の近傍のコアの中心軸5と、伝送ファイバ50に入射するレーザ光3のうち最も外側にある光線とがなす角のことである。また、発散角θoutとは、伝送ファイバ50から出射されたレーザ光3の光軸3aと伝送ファイバ50から出射されたレーザ光3のうち最も外側にある光線とがなす角のことである。
【0046】
図6(a)に示すように、交換前の伝送ファイバ50aは偏角θargを持っていないため、光軸3aと伝送ファイバの中心軸4及びコアの中心軸5は同軸である。この場合、レーザ光3は伝送ファイバ50aに入射角度θinで入射すると、伝送ファイバ50aからは入射角度θinと同等の発散角θoutで出射される。一方、図6(b)に示すように、交換後の伝送ファイバ50bは入射端面57に偏角θargを持っている。つまり、伝送ファイバ50bに入射するレーザ光3の光軸3aと伝送ファイバの中心軸4は同軸であるが、光軸3aとコアの中心軸5は同軸ではない。この場合、レーザ光3は伝送ファイバ50bに入射角度θinで入射したとしても、伝送ファイバ50bから出射される発散角θoutは入射角度θinと偏角θargの和となる。つまり、伝送ファイバ50を交換したことで発散角θoutが大きくなる。ここで、ビーム品質はコア52の直径と発散角θoutの積で決定され、値が小さいほどビーム品質は良い。つまり、発散角θoutが小さいほどビーム品質は良い値となる。よって、伝送ファイバ50が入射端面57において偏角θargをもち伝送ファイバ50から出射するレーザ光3の発散角θoutが大きくなると、ビーム品質が悪化する。なお、発散角θoutは入射角度θin及び偏角θargによって決定されるため、伝送ファイバ50から出射された後のレーザ光3を光学系で調整してもビーム品質を良化させることは難しい。
【0047】
図6(c)に示す交換後の伝送ファイバ50bは、入射端面57は偏角θargを持たず、出射端面58に偏角θargをもつ。前述したように、発散角θoutは入射角度θin及び偏角θargによって決定される。よって、出射端面58に偏角θargをもつ伝送ファイバ50bは、入射端面57に偏角θargをもつ場合のように発散角は増大しない。ただし、伝送ファイバ50bから出射するレーザ光3の光軸3aが伝送ファイバ50bの中心軸4に対して角度をもって出射される。
【0048】
以上のように、交換後の伝送ファイバ50bに偏角θargがあることで、交換前の伝送ファイバ50aにとって適切な条件、すなわち入射側角度調整部44及び出射側角角度調整部64の角度、が交換後の伝送ファイバ50bにとっては適切でない条件となることがある。したがって、作業者は、後述する方法によって偏角θargのずれを検知し、入射側角度調整部44及び出射側角角度調整部64の角度を調整することで、交換後の伝送ファイバ50bにおいてもレーザ光3が適切に入射するように調整する。
【0049】
なお、上記の説明では交換前の伝送ファイバ50aは偏角θargをもたない例を示したが、これに限られず交換前も偏角θargをもつ場合もある。また、各々の伝送ファイバ50によって偏角θargの大きさも異なることは言うまでもない。
【0050】
図7は、入射側角度調整部の調整を説明する概念図である。図7(a)は、入射側角度調整部44調整前のレーザ装置の概念図である。図7(b)は、入射側角度調整部44調整前の制御部80の出力結果である。図7(c)は、入射側角度調整部44調整後のレーザ装置の概念図である。図7(d)は、入射側角度調整部44調整後の制御部80の出力結果である。
【0051】
図8は、出射側角度調整部の調整を説明する概念図である。図8(a)は、出射側角度調整部64調整前のレーザ装置の概念図である。図8(b)は、出射側角度調整部64調整前の制御部80の出力結果である。図8(c)は、出射側角度調整部64調整後のレーザ装置の概念図である。図8(d)は、出射側角度調整部64調整後の制御部80の出力結果である。
【0052】
図7及び図8では入射側石英ブロック51及び出射側石英ブロック54の図示を省略している。以下の説明において、スポット径82とは、光検出器62から出力された電気信号の直径のことである。入射端面57におけるコア52の偏角θargのずれは、光検出器62から得られるスポット径82をモニタすることで検知される。図7(b)に示すように、制御部80は、伝送ファイバ50に入射するレーザ光3の光軸3aがコアの中心軸5に対して最適な位置にある場合の基準サイズ81を予め設定されている。前述したように、伝送ファイバ50が偏角θargを持っていると、伝送ファイバ50から出射されるレーザ光3の発散角θoutが大きくなる。つまり、光検出器62で撮影されるスポット径82は基準サイズ81に対して大きくなる。そこで、図7(c)及び図7(d)に示すように、作業者はスポット径82が基準サイズ81以下となるように、入射側角度調整部44を調整する。言い換えると、作業者はスポット径82が基準サイズ81以下となるように、入射側集光レンズ41で集光されたレーザ光3の光軸3aに対する伝送ファイバの中心軸4の角度を調整する。これにより、伝送ファイバ50に入射するレーザ光3とコアの中心軸5の関係を最適化する。本実施例における最適化された状態とは、入射するレーザ光3の光軸3aとコアの中心軸5が平行となる状態である。
【0053】
具体的には、スポット径82が基準サイズ81以上だった場合、入射側角度調整部44内の3つのアジャスタ45を移動させ伝送ファイバ50の角度を調整する。例えば、アジャスタ45Cを支点として固定し、アジャスタ45a及びアジャスタ45bを移動させる場合、まずアジャスタ45aを初期位置から+1mrad分変化させ、スポット径82が縮小傾向にあれば、さらに+1mrad分変化させる。これを繰り返し、スポット径82が増大傾向に転じた点から―1mrad動かした位置を最適位置として調整を終了する。一方、アジャスタ45aを+1mrad動かしたときに、スポット径82が増大傾向となれば、―1mrad動かす(元の位置に戻す)。さらに―1mradずつ動かしたときに、スポット径82が減少傾向にあれば、さらに―1mrad動かす。これを繰り返し、増大傾向に転じた点から+1mrad動かした位置を最適位置として調整を終了する。最適位置とは、最適位置を原点としたとき、+1mrad動かしても、―1mrad動かしても、出射光強度が減少傾向となる位置のことである。
【0054】
次にアジャスタ45bに対しても同様の操作を行い、スポット径82が基準サイズ81以下となるように調整する。
【0055】
ここで、実際の調整手順では、図7に示すように、入射側角度調整部44の調整前、つまり、スポット径82が基準サイズ81以下となるように調整する前に、図8に示すように、スポット径の中心位置Pが基準サイズの中心位置Qと一致するように出射側角度調整部64を調整してもよい。これは、基準サイズの中心位置Qとスポット径の中心位置Pが一致していた方が、一致していない場合よりもスポット径82を基準サイズ81に収めることが容易だからである。よって、作業者はスポット径の中心位置Pを基準サイズの中心位置Qと一致させるように出射側角度調整部64の角度を調整する。言い換えると、作業者は、スポット径の中心位置Pを基準サイズの中心位置Qと一致させるように、ヘッドハウジング69の接続端面69aに対する伝送ファイバ50の出射端面58の角度を調整する。例えば、図7(b)上部に示すように、スポット径82がずれていた場合、アジャスタ45Cを支点としてアジャスタ45a及びアジャスタ45bの締め量を調整し、スポット径の中心位置Pと基準サイズの中心位置Qとを一致させる。
【0056】
基準サイズの中心位置Qとスポット径の中心位置Pのずれは、前述した伝送ファイバ50の出射端面58における偏角θargのずれだけでなく、出射端面58におけるコア中心Cのずれも含まれる。しかし、本発明では、出射端面58から出射したレーザ光3が光検出器62に到達するまでの距離が一定以上、例えば50mm以上となるように光検出器62を設置することで、出射端面58におけるコア中心Cのずれよりも出射端面58における偏角θargのずれを大きく検知できる構成としている。
【0057】
このことを出射端面58から光検出器62までの光路上の距離が50mmである場合を例に挙げて説明する。本条件下でコア中心Cの個体差が10μmあった場合、スポット径の中心位置Pは10μmずれるだけである。一方、偏角θargの個体差が5mradあった場合、スポット径82は50mm×5mrad=250μmずれる。つまり、出射端面58から光検出器62までの光路上の距離を一定以上離すことで偏角θargのずれを大きく観察することが可能となる。
【0058】
ここで、本実施例において、出射端面58におけるコア中心Cのずれよりも出射端面58における偏角θargのずれを大きく観察できるように工夫した理由について説明する。レーザ加工時において、出射端面58における偏角θargのずれは、加工ヘッド60から出射されたレーザ光3の光軸3aのワークに対する角度に影響する。一方、出射端面58におけるコア中心Cのずれは、加工ヘッド60で集光されるレーザ光の集光点の位置に影響する。ここで、出射側角度調整部64は、ヘッドハウジング69における伝送ファイバ50の接続端面69aに対する伝送ファイバ50の出射端面58の角度を調整するため、出射側角度調整部64の調整により伝送ファイバ50から出射するレーザ光の光軸3aのワークに対する角度が変化する。したがって、本実施例においては、出射端面58における偏角θargのずれを大きく観察できるような構成とした。
【0059】
なお、スポット径の中心位置Pのずれがコア52の直径の10%以下であった場合は出射側角度調整部64の調整は行わない。これは、スポット径の中心位置Pのずれが10mμm以下であった場合は、その原因はコア中心Cのずれか、無視できる程度に小さい偏角θargのずれであると言えるからである。切断加工のように集光点とノズルセンタの一致が強く求められるようなレーザ装置の場合は、別途加工ヘッド60の出射側集光レンズ67に位置調整機構(図示無し)を設け、出射側集光レンズ67の位置調整などにより集光点を調整することで対応可能である。
【0060】
(調整手順)
図9は、伝送ファイバ交換後の接続調整手順を示した図である。本フローは、伝送ファイバ50の交換後に実施される。まず、レーザ発振を開始し(ステップS1)、光検出器62で受光する出射光強度が閾値W以上か否かを判断する(ステップS2)。光検出器62で受光した光の強度が閾値Wより低かった場合、入射側集光レンズ41によって伝送ファイバ50に入射するレーザ光3の光軸3aの位置(入射位置)を調整する(ステップS6)。入射位置の調整後は再び光検出器62で受光する光が閾値W以上か否かを判断する(ステップS2)。このサイクルは、光検出器62で受光する光が閾値W以上となるまで繰り返される。
【0061】
光検出器62で受光した光の強度が閾値W以上だった場合、スポット径の中心位置Pが事前に設定している基準サイズの中心位置Qの範囲内かを判断する(ステップS3)。スポット径の中心位置Pが事前に設定されている中心位置Qの範囲内外であった場合、出射側角度調整部64によって加工ヘッド60(ヘッドハウジング69)の接続端面69aに対する伝送ファイバ50の出射端面58の角度を調整する(ステップS7)。出射側角度調整部64の調整後、再びスポット径の中心位置Pが事前に設定している基準サイズの中心位置Qの範囲内かを判断する(ステップS3)。このサイクルは、スポット径の中心位置Pが事前に設定している中心位置Qの範囲内となるまで繰り返される。
【0062】
スポット径の中心位置Pが事前に設定している中心位置Qの範囲内であった場合、光検出器62で受光したスポット径82が基準サイズ81以下となっているのかを判断する(ステップS4)。光検出器62で受光したスポット径82が基準サイズ81以下となっていない場合、入射側角度調整部44によって入射側集光レンズ41で集光されたレーザ光3の光軸3aに対する伝送ファイバの中心軸4の角度を調整する(ステップS8)。入射側角度調整部44の調整後、再び光検出器62で受光したスポット径82が基準サイズ81以下となっているのかを判断する(ステップS4)。このサイクルは、光検出器62で受光したスポット径82が基準サイズ81以下となるまで繰り返される。なお、光検出器62で受光したスポット径82が基準サイズ81以下となっている場合、調整を終了する(ステップS5)。
【0063】
入射側集光レンズ43による入射位置の調整(ステップS2)を最初に行うことで、その後の入射側角度調整部44の調整(ステップS4)において、入射位置のずれの可能性を排除してモニタすることが可能となる。また、本フローは伝送ファイバ50の交換後のみならず、その後定期的に実施しても良い。
(効果等)
本実施例ではレーザ光3の入射端面57におけるコア中心Cのずれ及び入射端面57における偏角θargのずれを検知可能である。これにより、伝送ファイバ50の交換後のビーム品質の悪化をより抑制できる。また、作業者の負担を低減でき、さらには、伝送ファイバ50の交換作業によるダウンタイムを削減できる。また、本実施例では、出射端面58における偏角θargのずれも検知可能である。これにより、伝送ファイバ50の接続調整の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0064】
また、本実施例では、伝送ファイバ50から出射したレーザ光3をモニタすることで、単一の光検出器62でレーザ光3の入射端面57におけるコア中心Cのずれ、入射端面57における偏角θargのずれ、及び出射端面58における偏角θargのずれを検知可能である。言い換えると、レーザ光3の入射端面57におけるコア中心Cのずれ、入射端面57における偏角θargのずれ、及び出射端面58における偏角θargのずれをモニタするためにそれぞれ専用の光検出器を設ける必要がない。さらに、本実施例では、レーザ発振器10から出射されたレーザ光3を使用して角度調整を行っているため、新しい光源を設置する必要もない。これらは、製造費用を抑えるという面で有用である。
【0065】
ここで、上記の説明では、レーザ光の入射端面57におけるコア中心Cのずれ、入射端面57における偏角θargのずれ、及び出射端面58における偏角θargのずれは、伝送ファイバ50の個体差に起因するものとして説明したが、レーザ装置1への取付け時に生じるものもある。本実施例では、取り付け後の伝送ファイバ50bから出射されたレーザ光3をモニタし調整を行うため、伝送ファイバ50自体の個体差だけでなく、取付け時に生じる個体差も検知し修正することが可能である。
【0066】
[実施の形態2]
加工ヘッド60のコンパクト化を目指す場合、光検出器62を小さく、つまりスポット径82も小さくすることが求められる。よって、本実施例では、加工ヘッド60の小型化ができる構成を提案する。
【0067】
以下で開示する実施例の説明は、実施の形態1とは異なる構成のみ記載する。
【0068】
図10は、実施の形態2を説明する概念図である。実施の形態2に係るレーザ装置のヘッドハウジング69は、コリメートレンズ66が部分反射ミラー61以前の光路系に設けられている。
【0069】
コリメートレンズ66は、出射端面58から出射されたレーザ光3を平行化する。部分反射ミラー61は、コリメートレンズ66で平行化されたレーザ光3の一部、例えば0.01%を反射し、残りのレーザ光3を透過する。
【0070】
光検出器62は、部分反射ミラー61で反射したレーザ光3bを受光する。ミラー63は、部分反射ミラー61を透過したレーザ光3を加工ヘッド60の照射口方向へ反射する。出射側集光レンズ67は、コリメートレンズ66で平行化されたレーザ光を被対象物2に向けて集光する。
【0071】
ここで、出射端面58から出射したレーザ光3は、コリメートレンズ66で平行化されるまでビームサイズが大きくなる。言い換えると、コリメートレンズ66までの距離によって光検出器62で受光するスポット径82の大きさが決定される。よって、実施の形態2のように、コリメートレンズ66を部分反射ミラー61以前の光路系に設けることで、スポット径82が出射端面58から光検出器62までの距離で決定されていた実施の形態1の構成よりもスポット径82の大きさを決定するまでの距離が短くなり、その結果スポット径82を小さくすることができる。つまり、加工ヘッド60のサイズに合ったスポット径82の調整が容易となる。
【0072】
実施の形態1の構成及び実施の形態2の構成は加工ヘッド60のサイズに応じて適宜選択される。なお、伝送ファイバ50の接続調整手順は実施の形態1に記載の調整手順と同様である(図9参照)。
【0073】
[変形例]
以上、本開示の構成を、実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記実施の形態に限られない。また、上記実施の形態に記載した材料、数値などは好適なものを例示しているだけであり、それに限定されることはない。さらに、本開示の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、レーザ装置の構成に適宜変更を加えることは可能である。
【0074】
例えば、集光レンズ調整部43、入射側角度調整部44、出射側角度調整部64の調整は、制御部80からの指示によって自動で制御してもよい。自動調整の場合、集光レンズ調整部43、入射側角度調整部44、出射側角度調整部64に、無線もしくは有線で制御部80と通信可能な受信機、及び、受信機からの指示によって其々の光学系の調整が可能なモータを設けることで実現可能である。
【0075】
例えば、光検出器62は、光の強度分布を出力可能であれば、サーモパイル等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、より容易に伝送ファイバの位置調節を行えるレーザ装置及び伝送ファイバ接続調整方法として有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 レーザ装置
2 被対象物
3 レーザ光
3a 光軸
4 伝送ファイバの中心軸
5 コアの中心軸
10 レーザ発振器
40 集光ユニット
41 集光レンズ(入射側集光レンズ)
43 集光レンズ調整部
44 入射側角度調整部
50 伝送ファイバ
57 入射端面
58 出射端面
60 加工ヘッド
69a 接続端面
61 部分反射ミラー
62 光検出器
64 出射側角度調整部
66 コリメートレンズ
80 制御部
81 基準サイズ
82 スポット径
Q 基準サイズの中心位置
P スポット径の中心位置
S 出射光強度
W 閾値
【要約】
【課題】伝送ファイバに入射するレーザ光の入射角度をより容易に適切な条件に調整できるレーザ装置および伝送ファイバ接続調整方法を提供する。
【解決手段】
本開示に係るレーザ装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、レーザ発振器から出射されたレーザ光を集光する集光レンズと、集光レンズで集光されたレーザ光を伝送する伝送ファイバと、伝送ファイバから出射されるレーザ光のスポット径が基準サイズ以下となるように、集光レンズで集光されたレーザ光の光軸に対する伝送ファイバの中心軸の角度を調整する入射側角度調整部と、を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10