(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】毛切断ユニットにおける使用のためのガード要素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B26B 19/14 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B26B19/14 K
B26B19/14 J
(21)【出願番号】P 2021565735
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2020062192
(87)【国際公開番号】W WO2020225146
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】クラースボアー ジェリット
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-141228(JP,A)
【文献】国際公開第2013/104965(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/152590(WO,A1)
【文献】特開2014-113204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0217030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 19/00 - 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛切断ユニットの可動毛切断要素のためのガードとして毛切断ユニットにおいて用いられるよう構成され、複数の毛入口開口を備えたシェービングトラックを含む設計の、ガード要素を製造する方法であって、前記シェービングトラックは、少なくとも1つの厚さ値を持つ厚さプロファイルを持ち、前記方法は、前記ガード要素が形成されるシートを備える初期ステップを有し、前記方法は、前記シェービングトラックが形成されるべき位置において前記シートにおける前記ガード要素の設計に従って前記シェービングトラックの前記厚さプロファイルを実現する厚さ適合ステップと、前記シェービングトラックが形成されるべき位置において前記シートから材料を除去して前記毛入口開口を形成する材料除去ステップと、を含む、前記シートにおける前記ガード要素の設計に従って前記シェービングトラックの生成のためのステップを有し、前記厚さ適合ステップは、
略最終的な製品に対する仕上げ動作として、いかなる厚さ適合動作も必要とすることなく、前記材料除去ステップより前に実行される、方法。
【請求項2】
前記ガード要素の設計において、前記シェービングトラックの前記厚さプロファイルは、前記シェービングトラックの異なる領域において異なる厚さ値を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記厚さ適合ステップは、前記シェービングトラックの少なくとも1つの領域が形成されるべき位置において前記シートの厚さを減少させることを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記厚さ適合ステップは、前記シェービングトラックの少なくとも1つの領域が形成されるべき位置において前記シートに冷間成形工程を施す動作を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記厚さ適合ステップは、前記シェービングトラックの少なくとも1つの領域が形成されるべき位置において、前記シートに圧力を印加する及び/又は前記シートを平坦化する動作を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガード要素の設計において、前記シェービングトラックは、前記ガード要素の中心軸のまわりに環状であり、前記方法は、前記シェービングトラックの外周端が形成されるべき前記シートの環状部分の位置において前記シートを曲げる外側曲げステップと、前記シェービングトラックの内周端が形成されるべき前記シートの環状部分の位置において前記シートを曲げる内側曲げステップと、の少なくとも一方を有し、前記厚さ適合ステップ及び前記材料除去ステップの両方が、前記外側曲げステップ及び前記内側曲げステップの少なくとも一方よりも前に実行される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記厚さ適合ステップの間、前記シェービングトラックの比較的厚い領域が形成されるべき前記シートの或る部分の位置における厚さ値が、前記シェービングトラックの比較的薄い領域が形成されるべき前記シートの別の部分の位置における厚さ値の少なくとも2倍となる、厚さ分布が前記シートにおいて実現される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガード要素の設計において、前記シェービングトラックは、前記ガード要素の中心軸のまわりに環状であり、前記毛入口開口の間に更に長細の薄板が存在し、前記薄板は、それぞれの薄板の外側端部における厚さ値が、それぞれの薄板の主部分における厚さ値よりも大きい、厚さ分布を持ち、前記厚さ適合ステップは、前記シェービングトラックが形成されるべき位置において、前記シートにおける前記ガード要素の設計に従って、前記薄板の厚さ分布の厚さ値を実現することを含み、それぞれの薄板の外側端部の厚さ値が、それぞれの薄板の外側端部が形成されるべき前記シートの環状部分において実現され、それぞれの薄板の主部分の厚さ値が、それぞれの薄板の主部分が形成されるべき前記シートの環状部分において実現される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記厚さ適合ステップ及び前記材料除去ステップの両方が実行された後、それぞれの薄板の外側端部が形成されるべき位置において前記シートが曲げられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガード要素の設計において、それぞれの薄板の内側端部における厚さ値は、それぞれの薄板の主部分における厚さ値よりも大きく、前記厚さ適合ステップの間、それぞれの薄板の前記内側端部の厚さ値が、それぞれの薄板の前記内側端部が形成されるべき前記シートの環状部分において実現される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記シェービングトラックの少なくとも1つの領域に外側に膨らんだ形状を提供することを含む、シェービングトラック膨張ステップを有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記初期ステップにおいて提供されるシートは、略均一の厚さを持つシートである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記材料除去ステップの間、前記シートは切断動作を受ける、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガード要素と、前記ガード要素の内側空間に少なくとも部分的に配置された可動毛切断要素と、を有する毛切断ユニットを製造する方法において、前記ガード要素が、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法により製造されることを特徴とする、方法。
【請求項15】
毛切断器具のユーザが保持するための本体と、少なくとも1つの毛切断ユニットを含むヘッドと、を有する毛切断器具を製造する方法において、前記毛切断ユニットが、請求項14に記載の方法により製造されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、毛切断ユニットの可動毛切断要素のためのガードとして毛切断ユニットで使用されるように構成され、複数の毛入口開口を備えたシェービングトラックを含む設計の、ガード要素を製造する方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、ガード要素と、ガード要素の内部空間に少なくとも部分的に配置された可動毛切断要素と、を有する毛切断ユニットを製造する方法に関し、また、毛切断器具のユーザが保持するための本体と、少なくとも1つの毛切断ユニットを含むヘッドとを有する毛切断器具を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、毛切断器具、特に、毛が皮膚に近い位置で切断される剃毛動作等を行うように設計された毛切断器具の分野に属する。一般に、毛切断器具は、1つ以上の毛切断ユニットが配置されるヘッドを有する。特に一般的なデザインは、正三角形状の配置の3つの毛切断ユニットを使用する。各毛切断ユニットは、可動毛切断要素及びガード要素を有する。ガード要素には、一連の毛入口開口が設けられている。例えば、ガード要素が概ねカップ形状であり、略円形の周囲を有する実際の場合、毛入口開口は、シェービングトラックと呼ばれる1つ以上の環状領域において、ガード要素の中心軸に対して略径方向に延在する細長いスロットのように形成されても良い。
【0004】
ガード要素は、毛切断動作中にシェービングトラックの位置で皮膚と接触するための外側面と、シェービングトラックの位置で毛切断要素と接触する内側面と、を持つ。毛入口開口が画定される位置では、切断面がガード要素内に存在する。毛切断要素は、切断端を有するブレードを含む。毛切断動作中、毛入口開口に入る毛は、切断表面と切断エッジとの間で剪断され、その結果として切断される。毛切断器具の適切な使用は、器具をアクティブ状態、即ち、少なくとも1つの毛切断ユニットの毛切断要素が動かされる状態に置くことと、毛切断動作を受ける皮膚領域上でヘッドを動かすことと、を含む。
【0005】
特開平08-141228は、電気シェービング装置の外側毛切断要素として使用されるように構成されたガード要素を製造する方法を開示している。外側毛切断要素は、外側毛切断要素の環状シェービングトラックに設けられた複数のスリット形状の毛入口開口部を有する。第1の一連の製造工程では、プレートがパンチされ、プレスされてディスクが形成され、該ディスクが、前記環状シェービングトラックを有する三次元形状を想定するように引き出され、プレスされる。第2の製造工程では、環状シェービングトラックの内側面から材料を除去することによって、環状シェービングトラックの厚さを減少させる。第3の製造工程において、毛入口開口部は、ミリング工程によって環状シェービングトラックに形成される。第4の製造工程では、環状シェービングトラックの内側面及び外側面が、研磨工程によって処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に定義されるような毛切断器具は、通常、大量生産で製造される。その観点から、毛切断ユニットのガード要素及び毛切断要素を含む毛切断器具の様々な構成要素の製造工程を単純化し、その結果、製造コストを節約することができ、場合によっては他の利点も達成することができるという継続的な要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に鑑みて、本発明は、毛切断ユニットの可動毛切断要素のためのガードとして毛切断ユニットにおいて用いられるよう構成され、複数の毛入口開口を備えたシェービングトラックを含む設計の、ガード要素を製造する方法であって、前記シェービングトラックは、少なくとも1つの厚さ値を持つ厚さプロファイルを持ち、前記方法は、前記ガード要素が形成されるシートを備える初期ステップを有し、前記方法は、前記シェービングトラックが形成されるべき位置において前記シートにおける前記ガード要素の設計に従って前記シェービングトラックの前記厚さプロファイルの前記少なくとも1つの厚さ値を実現する厚さ適合ステップと、前記シェービングトラックが形成されるべき位置において前記シートから材料を除去して前記毛入口開口を形成する材料除去ステップと、を含む、前記シートにおける前記ガード要素の設計に従って前記シェービングトラックの生成のためのステップを有し、前記厚さ適合ステップは、前記材料除去ステップより前に実行される、方法を提供する。
【0008】
以上の定義から、本発明によるガード要素の製造工程において、ガード要素の設計による厚さプロファイルをシェービングトラックに提供することを目的とするステップは、毛入口開口が形成される前に既に実行されていることになる。結果として、本発明が実施されるとき、毛入口開口を既に備えている略最終的な製品に対する仕上げ動作として、いかなる厚さ適合動作も必要としないことが達成される。このようにして、本発明は、毛入口開口が形成された後に、常に(更なる)厚さ適合が行われる従来の製造方法よりも少ない工程を含み得る製造方法を提供する。更に、冷間成形技術は、シェービングトラックの厚さプロファイルを実現する目的でのみ冷間成形技術に依存することが可能であることが本発明の状況において見出されており、一方、当該技術は、冷間成形後の研削又は研磨のような技術を適用する必要性を教示している。
【0009】
毛入口開口を形成する材料除去ステップは、任意の適切な動作を含むことができる。例えば、シートは、毛切断器具の分野で一般に知られているように、スタンピングなどの切断動作を受けることができる。
【0010】
ガード要素の設計において、シェービングトラックの厚さプロファイルがシェービングトラックの異なる領域で異なる厚さ値を有するようにすることができるが、これは本発明の状況において必須ではない。実際に、単一の厚さ値のみを有する厚さプロファイルを含む、本発明が実施されるとき、シェービングトラックの任意の厚さプロファイルが実現され得、その場合、シェービングトラックは、その各領域において実質的に同じ厚さを有する。シェービングトラックの異なる領域で異なる厚さ値が実現される場合、初期厚さ値を積極的に減少させることによって1つの厚さ値が得られ、シートを提供する初期ステップの間にガード要素が形成されるシートにすでに別の厚さ値が見出されるようにしても良い。換言すれば、シェービングトラックの1つの領域が形成されるべき位置においてシートの1つの領域に厚さ減少動作を施し、一方、シェービングトラックの別の領域が形成されるべき位置におけるシートの別の領域をそのままとすることによって、異なる厚さ値が作成されるようにしても良い。
【0011】
以上から、厚さ適合ステップは、シェービングトラックの少なくとも1つの領域が形成されるべき位置でシートの厚さを減少させる実際的な動作を特に含むことができることになる。この点に関して、厚さ適合ステップは、シェービングトラックの少なくとも1つの領域が形成されるべき位置でシートに冷間成形工程を施す動作を含むことができることに留意されたい。例えば、厚さ適合ステップは、シェービングトラックの少なくとも1つの領域が形成されるべき位置で、シートに圧力を加える、及び/又はシートを平坦化する動作を含むことができる。明確さのために、厚さ適合ステップを実行することは、幾つかの動作を伴っても良く、その動作は、言及したような冷間成形動作を含んでも良いが、研削及び/又は研磨などの材料除去動作を含んでも良いことに留意されたい。
【0012】
本発明による方法は、シェービングトラックがガード要素の中心軸を中心として環状であるような設計のガード要素を製造する目的で適用することができる。そのような場合、方法は、シェービングトラックの外周端が形成されるシートの環状部分の位置でシートを曲げる外側曲げステップと、シェービングトラックの内周端が形成されるシートの環状部分の位置でシートを曲げる内側曲げステップと、のうちの少なくとも1つを含むことができ、厚さ適合ステップ及び材料除去ステップの両方は、外側曲げステップ及び内側曲げステップのうちの少なくとも1つよりも早く実行される。切断される毛を効果的に捕捉するために、ガード要素の外側面が、シェービングトラックの少なくとも外周端の位置で凸状に湾曲され、毛入口開口のランイン部分が、シェービングトラックの少なくとも外周端に存在することが有益であることが一般に知られている。更に、ガード要素は、シェービングトラックがガード要素上に概ね上昇した位置を有する設計であっても良く、その結果、ガード要素が含まれる1つ以上の毛切断ユニットを有する毛切断器具の使用中に、毛切断動作を受ける皮膚領域が、シェービングトラックの位置においてガード要素によってのみ実際に接触され、その場合、ガード要素の外側面が、シェービングトラックの外周端の位置及びシェービングトラックの内周端の位置の両方で凸状に湾曲されることが実用的である。
【0013】
シェービングトラックの任意の実現可能な厚さプロファイルは、本発明を適用することによって実現することができる。例えば、厚さ適合ステップ中に、シェービングトラックの比較的厚い領域が形成されるべきシートの1つの部分の位置における厚さ値が、シェービングトラックの比較的薄い領域が形成されるべきシートの別の部分の位置における厚さ値の少なくとも2倍である、厚さ分布がシートにおいて実現されても良いが、本発明は、シェービングトラックの比較的厚い領域とシェービングトラックの比較的薄い領域との間の差がより小さいシェービングトラックの厚さプロファイル、又はシートにおける厚さ分布を実現することを必要としないシェービングトラックの一定の厚さプロファイルを実現する目的のために適用されることにも適しているという事実を変えるものではない。いずれにしても、初期ステップで提供されるシートは、略均一な厚さを有するシートであることが実用的であり得るが、本発明は、厚さ適合ステップの間に別の厚さ分布に変換される、或る種の最初の厚さ分布を有するシートを提供する選択肢も包含する。更に、シートに関して、シートは最初は平面形状であっても良いが、これは本発明の枠組み内で必須ではないことに留意されたい。
【0014】
実用的な選択肢によれば、ガード要素は、シェービングトラックがガード要素の中心軸の周りに環状であり、そこで更に細長い薄板(lamellae)が毛入口開口の間に存在し、薄板は、それぞれの薄板の外側端部における厚さ値がそれぞれの薄板の主部分における厚さ値よりも大きい厚さ分布を有する、設計のものである。斯かる場合には、前記厚さ適合ステップが、前記シェービングトラックを形成する位置において、前記シート内のガード要素の設計に応じて前記薄板の厚さ分布の厚さ値を実現することと、前記各薄板の外端部が形成されるシートの環状部において実現される前記各薄板の外端部の厚さ値と、前記各薄板の主要部が形成されるシートの環状部において実現される前記各薄板の主要部の厚さ値と、を実現することとを含むと有利である。例えば、厚さ適合ステップの間、シートは、それぞれの薄板の主部分が形成されるべきシートの環状部分の位置で平坦化動作を受け、一方、それぞれの薄板の外端部分が形成されるべきシートの環状部分の位置では厚さ減少動作が行われない。
【0015】
以上に示唆したことと一致して、それぞれの薄板の外端部が形成される位置でシートを曲げる作用を、厚さ適合ステップと材料除去ステップの両方が行われた後に行うことができる。また、ガード要素の設計において、それぞれの薄板の内側端部における厚さ値が、それぞれの薄板の主要部における厚さ値よりも大きくなるようにしても良い。この場合、それぞれの薄板の内側端部が形成されるシートの環状部において、それぞれの薄板の内側端部の厚さ値が実現されるようにしても良い。それぞれの薄板の外側端部の厚さ値及びそれぞれの薄板の内側端部の厚さ値が、それぞれの薄板の主部分の厚さ値の少なくとも2倍になるようにしても良いが、種々の厚さ値の他の関係も同様に可能である。
【0016】
本発明による方法は、シェービングトラックの少なくとも1つの領域に外向きに膨らんだ形状を提供することを含むシェービングトラック膨張ステップを更に含むことができる。シェービングトラックの少なくとも1つの領域の外向きに膨らんだ形状を有することは、使用者の快適さを改善し、またドーミング効果を低減しながら使用者の皮膚により良く適合することによって毛切断動作の有効性を改善するのに有利であると考えられる。シェービングトラック膨張ステップは、材料除去ステップよりも後に実行されても良いが、これは、本発明の枠組み内で必須ではない。
【0017】
以上に鑑みて、比較的厚い端部部分と比較的薄い主要部分とを有する薄板を含むガード要素の例が、国際特許出願公開WO2013/104965A1から知られていることに留意されたい。この点に関して、国際特許出願公開WO2013/104965A1は、ガード要素及びシェービングトラックの全体の厚さは、70乃至150ミクロンのオーダーであっても良く、シェービングトラックの主部分は、60ミクロン以下の厚さを有しても良いことを開示している。ガード要素は、シェービング器具に使用されるように意図されており、シェービングトラックの厚さプロファイルは、毛進入開口部への皮膚進入のリスクの増大を防止しながら、シェービング近接度を増大させるように選択される。また、国際特許出願公開WO2013/104965Aは、シェービングトラックのドーム状外側面を有する可能性を開示している。
【0018】
本発明は更に、ガード要素と、ガード要素の内部空間に少なくとも部分的に配置された可動毛切断要素と、を有する毛切断ユニットを製造する方法に関し、ガード要素は、ここで前述した方法によって製造される。また、本発明は、毛切断器具のユーザが保持するための本体と、少なくとも1つの毛切断ユニットを含むヘッドと、を有する毛切断器具を製造する方法に関し、毛切断ユニットは、ここで前述した方法によって製造される。
【0019】
本発明の上記及び他の態様は、毛切断器具、特にシェービング器具の毛切断ユニットで使用するためのガード要素、及びそのようなガード要素を製造する方法のステップの以下の詳細な説明から明らかになり、それを参照して説明される。
【0020】
本発明は、図面を参照してより詳細に説明され、図面において、等しい又は類似の部分は、同じ参照符号によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による方法によって製造された毛切断器具の斜視図を模式的に示す。
【
図2】毛切断器具の毛切断ユニットのガード要素の斜視図を模式的に示す。
【
図4】
図3の詳細図であり、ガード要素のシェービングトラックの断面図を示す。
【
図5】ガード要素を製造する方法のステップ、特にガード要素のシェービングトラックを製造することを目的とするステップを示す。
【
図6】ガード要素を製造する方法のステップ、特にガード要素のシェービングトラックを製造することを目的とするステップを示す。
【
図7】ガード要素を製造する方法のステップ、特にガード要素のシェービングトラックを製造することを目的とするステップを示す。
【
図8】ガード要素を製造する方法のステップ、特にガード要素のシェービングトラックを製造することを目的とするステップを示す。
【
図9】ガード要素を製造する方法のステップ、特にガード要素のシェービングトラックを製造することを目的とするステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明による方法によって製造された毛切断器具に関する。図には、本体11とヘッド12とを有するシェービング器具1が示されている。ヘッド12は、本体11に取り外し可能に又はヒンジで取り付けることができる。シェービング器具1の本体11は、一般にハンドルとも呼ばれる。図示の例では、3つの毛切断ユニット20がヘッド12内に配置されているが、これは、1つから3つ以上の範囲の別の数の毛切断ユニット20を選択することができるという事実を変えるものではない。
【0023】
図2乃至4は、毛切断要素(図示せず)の他に、毛切断ユニット20の一部であるガード要素21に関連する。図示のシェービング器具1は、回転タイプであり、これは、毛切断要素が毛切断ユニット20内で回転可能であるように配置されることを意味する。明確さのために、本発明の可能な用途は、1つ以上の回転可能な毛切断要素を含む器具の状況に限定されないことに留意されたい。また、ここで説明されるガード要素21は、本発明によってカバーされる多数の実施例のうちの1つにすぎず、特許請求の範囲に提供されるガード要素の基本的な定義の外側にあるこの特定のガード要素21の設計の詳細は、本発明を限定するものとして理解されるべきではなく、更に、当業者によって独立して考慮され得る詳細は、反対の示唆が明示的に与えられない限り、単一の例を参照して開示されているにもかかわらず、不可分に関連するものとして理解されるべきではないことに留意されたい。
【0024】
ガード要素21は、略円形の外周部と、中心軸22と、外側面23と、を持つ略カップ形状の設計のものである。ガード要素21は、シェービング動作中にユーザの皮膚に接触するための環状シェービングトラック30を備え、シェービングトラック30は、2つの同心に配置された周端31、32、即ち、外周端31及び内周端32を有する。ガード要素21は、更に、ガード要素21の中心軸22に対して実質的に径方向に、周端31、32の間のシェービングトラック30の全幅に沿って延びる薄板33を含む。各薄板33は、シェービングトラック30の外周端31の位置に外端部33aを有し、シェービングトラック30の内周端32の位置に内側端部33bを有し、端部33a、33bの中間位置に主部分33cを有している。薄板33の間に存在する開口は、シェービングトラック30の毛入口開口34を構成する。薄板33の側面は、毛切断要素の切断縁部と協働して毛を切断するのに適した切断面を構成する。
【0025】
毛切断動作は、各毛切断ユニット20の毛切断要素が回転するように起動され、シェービング器具1のヘッド12が、毛が突出している皮膚領域上を移動するときに実行される。この工程では、皮膚領域は、実際には、それぞれの毛切断ユニット20のガード要素21によって接触される。ガード要素21の各々において、皮膚とガード要素21との間の接触は、シェービングトラック30の位置において特に確立される。シェービング器具1のヘッド12が皮膚領域上を移動する間、皮膚領域から突出する毛は、ガード要素21の毛入口開口34に捕捉され、毛入口開口34を画定する薄板33の側部に存在する切断面と回転する毛切断要素の切断縁部との間の協働の結果として、その位置で切断される。
【0026】
図示の例では、ガード要素21の外側面23は、シェービングトラック30の位置でわずかにドーム状又はトロイダル状である。それにもかかわらず、本発明は、外側面23が平坦であるか、シェービングトラック30の位置でドーム形又はトロイダル形とは別の形状を有するガード要素21にも同様に適用可能であることが理解されるであろう。更に、図示の例では、ガード要素21の内側面24もシェービングトラック30の位置でドーム状になっている。
図3及び
図4に見られるように、シェービングトラック30の位置におけるガード要素21の内側面24の曲率は、シェービングトラック30が異なる厚さ値を有する厚さプロファイルを有する結果として、同じ位置におけるガード要素21の外側面23の曲率とは異なる。ここで、最も低い厚さ値は、それぞれの薄板33の主部分33cが位置するシェービングトラック30の環状領域に適用され、最も高い厚さ値は、それぞれの薄板33のそれぞれの端部33a、33bが位置するシェービングトラック30の環状領域に適用される。例えば、第1の厚さ値は、100ミクロン以下であっても良く、後者の厚さ値は、かなり大きくても良く、200ミクロン程度など、少なくとも2倍の大きさであっても良い。
【0027】
本発明によれば、前述のような厚さプロファイルを有するシェービングトラック30を製造することは、
図5乃至9を参照して以下に説明するように、ステップの特定の順序を含む。
【0028】
図5は、初期ステップに関するものであり、ガード要素21を形成する目的でこの工程において備えられるシート40の一部の断面図を図式的に示す。図示されているシートの部分は、ガード要素21のシェービングトラック30が形成される部分である。図示の例では、シート40は、最初は平面であり、一定の厚さである。
【0029】
図6乃至9は、シート40の部分がシェービングトラック30にどのように変形されるかを示す。図面の各々は、作製中のシート40/シェービングトラック30の断面図を示しており、斯かる図は、作製中のシート40/シェービングトラック30の環状領域全体に沿って何が起こるかを表すものであることに留意されたい。
【0030】
図6は、第1の後続ステップに関するものであり、
図5に対する
図6の比較から、第1の後続ステップは、それぞれの薄板33の主部分33cが形成されるシート40の環状部分における厚さの減少を実現することを含む。この厚さの減少は、冷間成形技術を適用することなど、任意の適切な方法で実現することができる。
【0031】
図7は、第2の後続ステップに関し、このステップは、毛入口開口34を形成することを含み、これは、適切な場所でシート40から材料を除去するように適合された任意の適切な技術(これは、先に示唆されたように、スタンピングのような切断技術であっても良い)によって、様々な方法で行われ得る。毛入口開口部34の端部は、破線によって
図7に図示され、また、
図8及び
図9にも図示されている。
【0032】
図8及び
図9は、第3の後続ステップに関し、それぞれの薄板33の外端部33aを形成する位置でシート40を曲げ、それぞれの薄板33の内側端部33bを形成する位置でシート40を曲げる工程を含む。上述した2つの曲げ動作は、同時に又は次々に実行されても良い。それぞれの薄板33の外側端部33a及び内側端部33bの一方のみの位置で曲げ動作を行うことも、本発明の枠組み内で可能である。第3の後続ステップの具体的な性質は、ガード要素21の設計によって決定されることが理解されるであろう。一方、ガード要素21の設計によっては、第3の後続ステップを持つ必要はない。
【0033】
以上のことから、第1の後続ステップは、シート40におけるガード要素21の設計に応じてシェービングトラック30の厚さプロファイルを作成することを目的とした厚さ適合ステップであること、第2の後続ステップは、シェービングトラック30の毛入口開口部34を作成することを目的とした材料除去ステップであること、及び任意の第3の後続ステップは、シェービングトラック30の外周端31及びシェービングトラック30の内周端32の一方又は両方における湾曲外観を実現することを目的とした曲げステップであることが分かる。ガード要素21の設計によるシェービングトラック30の厚さプロファイルが、第1の後続ステップを実行した結果として実現されるという事実を考慮すると、第1の後続ステップが実行され、第2の後続ステップが開始されると、更なる特定の厚さ適合動作を実行する必要はなく、従って、これは、本発明が適用される場合には行われない。このように、本発明によれば、厚さ適応動作は、毛入口開口34が形成される前に最初に行われ、終了される。第3の後続ステップに関して前述したような曲げ動作は、厚さ適合ステップ及び材料除去ステップの両方が行われたよりも早く行われない。
【0034】
ガード要素21の製造工程は、上述の初期ステップ、第1の後続ステップ、第2の後続ステップ、及び任意の第3の後続ステップ以外のステップを含んでも良く、これらのステップは、該工程において中間ステップ及び/又は仕上げステップとして実行されても良い。ステップに関してここで使用される「後続」という用語は、後のステップを意味するように理解されるべきであり、これは、処理の前のステップとして識別されるステップの直後のステップと必ずしも同じではない。仕上げステップとして実施することができるステップの一例は、先に述べたように、少なくともシェービングトラック30の領域の外向きに膨らんだ形状、即ちドーム形状又はトロイダル形状を実現することを目的とするステップである。
【0035】
本発明の範囲は、前述の例に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、その幾つかの修正及び修正が可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明は、特許請求の範囲又はその同等の範囲内に入る限り、そのようなすべての修正及び修正を含むものと解釈されることが意図される。本発明は、図面及び説明において詳細に図示及び説明されてきたが、そのような図示及び説明は、例示又は例示のみであり、限定するものではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施例に限定されない。図面は概略的であり、本発明を理解するために必要とされない詳細は省略されており、必ずしも縮尺通りではない。
【0036】
開示された実施例に対する変形は、図面、説明、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、達成されることができる。特許請求の範囲において、単語「有する(comprising)」は、他のステップ又は要素を除外せず、不定冠詞「1つの(a又はan)」は、複数を除外しない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0037】
特定の実施例のために、又は特定の実施例に関連して説明される要素及び態様は、特に断らない限り、他の実施例の要素及び態様と適切に組み合わせることができる。従って、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0038】
本明細書で使用される「有する(comprise)」及び「含む(include)」という用語は、「から成る(consist of)」という用語をカバーするものとして当業者によって理解されるであろう。従って、或る実施例に関しては、「含む」又は「含む」という用語は、「から成る」ことを意味し得るが、別の実施例においては、「少なくとも定義された種及び任意に1つ以上の他の種を含む/持つ/備える」ことを意味し得る。
【0039】
図面に基づいて説明したガード要素21は、単一のシェービングトラック30を含む。これは、本発明が、2つ以上のシェービングトラックを含むガード要素21にも適用可能であるという事実を変えるものではなく、シェービングトラックの毛入口開口34を形成する前にシェービングトラックの意図された厚さプロファイルを実現することを目的とした全ての動作を行うという概念が、これらのシェービングトラックの1つ以上に適用されても良い。この点に関して、3つものシェービングトラックを有するガード要素21の一例が、国際特許出願公開WO2008/152590A1から知られていることに留意されたい。
【0040】
更に、本発明によるガード要素21は、シェービングトラック30の周端31、32の間全体に延在する多かれ少なかれ細長い薄板33を有することは必須ではない。例えば、毛入口開口34が実質的に円形の形状を有するシェービングトラック30を有し、シェービングトラック30の幅全体をブリッジするより長い薄板と、シェービングトラック30の幅の一部分のみに沿って歯として延在するより短い薄板との組み合わせが使用されるシェービングトラック30を有する選択肢も、本発明によってカバーされる。一般に、薄板がシェービングトラック30の設計に含まれる場合、そのような薄板は、任意の適切な形状であっても良く、例えば、分岐部を含んでも良い。
【0041】
厚さ適合ステップの間に、ガード要素21の設計に従ったシェービングトラック30の厚さプロファイルの少なくとも1つの厚さ値が、シェービングトラック30が形成される位置でシート40内に実現されるという示唆に関して、このことは、実際には値を実現する際に許容範囲ウィンドウが適用可能であることを考慮すると、その理論的意味ではなく、その実用的意味で理解されるべきであることに留意されたい。
【0042】
本発明の注目すべき態様は、以下のように要約することができる。毛切断ユニットにおいて用いられるよう構成され、複数の毛入口開口34を備えたシェービングトラック30を含む設計のものである、ガード要素21を製造する方法であって、シェービングトラック30は、少なくとも1つの厚さ値を持つ厚さプロファイルを持つ方法において、幾つかのステップが特定の順序で実行される。初期ステップにおいて、シートが備えられる。第1の後続ステップにおいて、シェービングトラックが形成されるべき位置において該シートにおいて、ガード要素21の設計に従ってシェービングトラック30の厚さプロファイルの少なくとも1つの厚さが実現される。第2の後続ステップにおいて、シェービングトラック30が形成されるべき位置において、該シートから材料が除去され、毛入口開口34を生成する。