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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】止水プラグ
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/134 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16L55/134
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099825
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193313
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391058369
【氏名又は名称】株式会社ホーシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】池畑 義人
(72)【発明者】
【氏名】稲富 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】亀井 進
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082673(JP,A)
【文献】特開2018-194020(JP,A)
【文献】特開2012-122596(JP,A)
【文献】特開2021-193312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0163254(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0123801(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/134
F16L 55/128
F16L 55/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の芯管と、
前記芯管の外周面に着脱自在に取り付けられ、注入口より圧力流体を注入することにより拡張する収縮可能な材料で形成された中空チューブと、
前記芯管の左右両側の端面にそれぞれ着脱自在に取り付けられる環状プレートとを備えた止水プラグであって、
前記各環状プレートの外径は前記芯管の外径より大径で、かつ、前記中空チューブに圧力流体が注入された拡張状態のチューブ外径より小径であるとともに圧力流体が排出された収縮状態のチューブ外径より大径であり、
前記中空チューブは前記左右の環状プレートの間に挟まれるように配置され、
前記芯管が、内筒と外筒との二重壁構造で形成されるとともに、前記芯菅の左端面から右端面まで前記内筒と前記外筒との間を軸芯方向に沿って面状で放射方向に延びる隔壁によって連結され、
さらに前記芯菅が、軸芯方向に沿って縦割りに分割された複数の胴片で形成され、前記各胴片は、互いに隣接する軸芯方向の端面部に形成された係合部を介して着脱自在に連結され、
前記環状プレートが径方向に分割された複数片により形成されていることを特徴とする止水プラグ。
【請求項2】
円筒状の芯管と、
前記芯管の外周面に着脱自在に取り付けられ、注入口より圧力流体を注入することにより拡張する収縮可能な材料で形成された中空チューブと、
前記芯管の左右両側の端面にそれぞれ着脱自在に取り付けられる環状プレートとを備えた止水プラグであって、
前記各環状プレートの外径は前記芯管の外径より大径で、かつ、前記中空チューブに圧力流体が注入された拡張状態のチューブ外径より小径であるとともに圧力流体が排出された収縮状態のチューブ外径より大径であり、
前記中空チューブは前記左右の環状プレートの間に挟まれるように配置され
前記芯管が、軸芯方向に沿って縦割りに分割された複数の胴片で形成され、前記各胴片は、互いに隣接する軸芯方向の端面部に形成された係合部を介して着脱自在に連結され、
さらに前記芯管が、当該軸芯方向に沿って複数個直列に並べて隣接接続され、少なくとも1つの中空チューブが各芯管の外周面を覆うように取り付けられ、
前記環状プレートが径方向に分割された複数片により形成されていることを特徴とする止水プラグ。
【請求項3】
前記環状プレートの一方に、前記芯管の外径より小径のバイパス流路接続用の接続口が取り付けられる請求項1又は請求項2のいずれかに記載の止水プラグ。
【請求項4】
前記芯管の一端面に、前記環状プレートに代えて芯管の片面を完全封止する閉塞部材が取り付けられる請求項1又は請求項2のいずれかに記載の止水プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用配水管や上下水道管などの配管を一時的に止水するために使用する止水プラグ(止水ボールまたは止水栓ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用配水管や上下水道管などの配管の一部を取り替えたり、マンホール内で作業したりするときに、工事区間の配管を一時的に止水する必要がある。この止水用のプラグとして、円柱状(袋状)のゴム製チューブを用いたもの(特許文献1参照)や、金属製の円形フランジにより円柱状チューブの両端を支えるようにしたもの(特許文献2参照)がある。これらの止水プラグは、マンホール等から持ち込んで配管の止水すべき箇所に挿入し、エアや水などの圧力流体で円柱状の中空チューブを拡張させて配管内壁に密着させ、管内を閉塞するようにして使用される。
【0003】
また、下水管の取り替え工事等において、配管内の流水を完全に停止させないで工事を行いたい場合がある。このような場合、作業を行う工事区間を間に挟んでその上流側と下流側とに止水プラグをそれぞれ取り付けるとともに、これらの止水プラグ間にバイパス流路を接続して流水を継続させるバイパスタイプの止水プラグも使用されている。
【0004】
バイパスタイプの止水プラグとしては、例えば特許文献3に記載されたものがある。
この止水プラグは、図10に示すように、流水を通過させるバイパス流路の一部となる円筒状の芯管11と、芯管11の両端外周に固定される金属製のフランジ13、14と、環状のゴム製中空チューブ12とが、インサート成型により一体に結合された状態で成形されている。
【0005】
使用時には、工事区間を挟んでその上流側と下流側の配管B内に止水プラグをそれぞれ挿入し、フランジ13に設けた注入口15から圧力流体を中空チューブ12内に注入することにより中空チューブ12を拡張(膨張)させて配管Bに圧接させるようにして取り付ける。そして、上流側と下流側の止水プラグの接続口16にバイパス管を接続してバイパス流路を設ける。
【0006】
この接続口16の口径および接続口16に接続するバイパス管の管径は、工事区間の作業スペースがバイパス管によって占拠されないようにするため、流水を通過させる上で支障のない範囲で小径にしてあり、接続口16に続く芯管11の径についてもバイパス管と同程度の管径にするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-82864号公報
【文献】実用登録3216785号公報
【文献】特開2018-194020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
止水しようとする下水配管等には、小径のものもあれば、人が入って作業するような大径の、例えば内径が500~1800mm、さらには3000mm、5000mmといった大きなサイズのものがある。
止水する配管の内径が大きくなると、芯管11を設けて流水し続ける環状の中空チューブ構造であっても、芯管を設けないで完全に止水する円柱状の中空チューブ構造であっても、使用する止水プラグのチューブ外径が大きくなる。チューブ外周面が配管壁から離れている拡張前の状態から、配管壁に密着させた拡張後の状態になるまでに必要なチューブの拡張体積は、チューブ外径が大きいほど急激に増大するようになって大量の圧力流体を注入して拡張させなければならず、圧力流体の注入に時間を要することになる。
【0009】
圧力流体の注入時間を短くするにはチューブ内の拡張体積を減らすことが必要であり、そのためには芯管を設けた環状の中空チューブ構造の方が、円柱状の中空チューブ構造よりもチューブ内の体積を減らすことができる点で有利になる。
【0010】
また、環状の中空チューブどうしであれば、圧力流体を注入して中空チューブを拡張状態にしたときの中空チューブの内外周幅(止水状態でのチューブ外径とチューブ内径との差であって、拡張幅ともいう)をできるだけ小さくして拡張させる体積を小さくするほどチューブ内の体積を減らすことができる。よって圧力流体の注入時間だけを考慮すれば、中空チューブの内側に配置させる芯管の直径を大きくする方が有利である。
【0011】
一方、下水管等の配管取替工事では、地上につながるマンホールから止水プラグを持ち込んで配管に挿入して取り付けることになるが、芯管の直径が大きくなると芯管自体は収縮させることができないのでマンホールの径よりも小径の芯管を使用するようにしなければならなかった。
【0012】
また、止水する配管の内径が大きいほど、止水プラグが受け止めなければならない配管水の背圧(止水圧)に対する力が大きくなるので、中空チューブと配管壁とを密着させる圧接力(摩擦力)を高める必要がある。圧接力を高めるためには、(a)中空チューブの軸方向の長さを長くして中空チューブ外周面と配管壁との接触面積を大きくするようにするか、(b)中空チューブ内に注入する圧力流体の内圧を十分高めるようにすることが考えられる。
【0013】
(a)の中空チューブの軸方向の長さを長くする方法は有効であるが、上述した芯管の直径を大きくする場合と同様に、芯管の軸方向の長さが長くなるほどマンホールから配管内に挿入する作業が困難になる。そのため芯管の軸方向長さを長くすることについても限度があった。
【0014】
(b)の中空チューブ内圧を高める方法も有効であるが、圧力流体で内圧を高圧にするほど中空チューブに生じる応力が増大してバーストするおそれが高まるので、できるだけ中空チューブの応力を小さく抑えることができる形状(寸法)の中空チューブにすることが望ましい。したがって、圧力流体の注入時間の観点からすれば芯管の直径を大径にする方が望ましいが、それだけでなくバーストが生じにくいという安全上の問題も考慮して芯管の径を決定する方がさらに望ましい。すなわち、圧力流体の注入によって中空チューブに生じる応力を小さくするにはどのようにすればよいか、具体的には中空チューブの内外周幅(すなわち拡張幅)をどのようにすれば応力を小さくできるかを考慮した上で、芯管の外径、中空チューブの内外周幅(拡張幅)が最適となるように決定することが望ましい。
【0015】
そこで本発明は、上記の課題に鑑み、配管取替工事等でマンホール等の狭い搬入口から搬入する止水プラグであっても、搬入作業が容易であり、それでいて大径の配管内に容易に装着することができる止水プラグを提供することを目的とする。
また、本発明は止水プラグの中空チューブに注入する圧力流体の注入量をできるだけ少なくすることで注入時間を短縮することができ、しかも圧力流体を注入したときの応力によるバーストが生じにくい中空チューブを用いた止水プラグを提供することを目的とする。
また、本発明は、大径の芯管を用いるものでありながら中空チューブを傷つけることなく配管内に搬入して装着することができる止水プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明の止水プラグは、円筒状の芯管と、前記芯管の外周面に着脱自在に取り付けられ、注入口より圧力流体を注入することにより拡張する収縮可能な材料で形成された中空チューブと、前記芯管の左右両側の端面にそれぞれ着脱自在に取り付けられる環状プレートとを備えた止水プラグであって、前記各環状プレートの外径は前記芯管の外径より大径で、かつ、前記中空チューブに圧力流体が注入された拡張状態のチューブ外径より小径であるとともに圧力流体が排出された収縮状態のチューブ外径より大径であり、前記中空チューブは前記左右の環状プレートの間に挟まれるように配置され、前記芯管が、内筒と外筒との二重壁構造で形成されるとともに、前記芯菅の左端面から右端面まで前記内筒と前記外筒との間を軸芯方向に沿って面状で放射方向に延びる隔壁によって連結され、さらに前記芯菅が、軸芯方向に沿って縦割りに分割された複数の胴片で形成され、前記各胴片は、互いに隣接する軸芯方向の端面部に形成された係合部を介して着脱自在に連結され、前記環状プレートが径方向に分割された複数片により形成されている構成とした(請求項1)
また、本発明の止水プラグは、円筒状の芯管と、前記芯管の外周面に着脱自在に取り付けられ、注入口より圧力流体を注入することにより拡張する収縮可能な材料で形成された中空チューブと、前記芯管の左右両側の端面にそれぞれ着脱自在に取り付けられる環状プレートとを備えた止水プラグであって、前記各環状プレートの外径は前記芯管の外径より大径で、かつ、前記中空チューブに圧力流体が注入された拡張状態のチューブ外径より小径であるとともに圧力流体が排出された収縮状態のチューブ外径より大径であり、前記中空チューブは前記左右の環状プレートの間に挟まれるように配置され、前記芯管が、軸芯方向に沿って縦割りに分割された複数の胴片で形成され、前記各胴片は、互いに隣接する軸芯方向の端面部に形成された係合部を介して着脱自在に連結され、さらに前記芯管が、当該軸芯方向に沿って複数個直列に並べて隣接接続され、少なくとも1つの中空チューブが各芯管の外周面を覆うように取り付けられ、前記環状プレートが径方向に分割された複数片により形成されている構成とした(請求項2)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の止水プラグでは、芯管と中空チューブとを分離すると共に、芯管を各胴片に分割した状態で、また、環状プレートも分割した状態で配管内に運び入れて、配管内部で組み立てて使用することができるようにし、工事終了後は解体して配管から取り出すことができるようにしたので、止水プラグの中空チューブ外径や芯管の直径が大きくても、容易に配管内に搬入、撤去することができる。そして組み立てた芯管の直径を大径にすることで、中空チューブ内径も大径にすることができ、その結果、中空チューブの拡張幅(すなわち止水時の中空チューブの内外周差)を小さくすることになり、圧力流体による拡張体積を減らすことで圧力流体の注入量を抑えることができるようになり注入時間を短縮することができる。また、芯管を配管内で組み立てるので無理な搬入、搬出による中空チューブの損傷もなくなり、損傷に起因して生じるバーストの発生を未然に防止することができる。
また、前記各環状プレートの外径は前記芯管の外径より大径で、かつ、前記中空チューブに圧力流体が注入された拡張状態のチューブ外径より小径であるとともに圧力流体が排出された収縮状態のチューブ外径より大径であり、前記中空チューブは前記左右の環状プレートの間に挟まれるように配置されるようにしたので、中空チューブは環状プレートで挟まれることにより、芯管に対する軸方向の移動を制限することができる。また、中空チューブを収縮状態にして環状プレート外径より中空チューブを小径にした状態で挿入することができるようになり、たとえ(芯管の径を大きくするために)配管の内壁と芯管との間隙を小さくしても、環状プレートによって中空チューブと配管壁とがほとんど接触しないようにガードされながら挿入することができる。そして中空チューブが止水位置にセットされた状態で圧力流体を注入することでチューブ外径を環状プレートよりも大径になるように膨らませることで中空チューブを配管壁に圧接することができる。
【0018】
そして、請求項1に係る本発明の止水プラグでは、芯菅の左端面から右端面まで軸芯方向に沿って内筒と外筒との間を面状で放射方向に延びる隔壁によって連結されているので、芯管に大きな強度を持たせることができ、しかも芯管の重量を軽減することができる。
請求項2に係る本発明の止水プラグでは、芯管が、軸芯方向に沿って複数個直列に並べて隣接接続され、少なくとも1つの中空チューブが各芯管の外周面を覆うように取り付けられているので、中空チューブの長さを軸方向に2倍、3倍に伸ばすことができるので、中空チューブの内圧を高圧にすることなく圧接力(摩擦力)をかせぐことができ、しかも1つ1つの芯管の長さは短いので、マンホールから配管に挿入する際に芯管の長さは問題とならずに容易に持ち込むことができる。
【0019】
また、前記環状プレートの一方に、前記芯管の外径より小径のバイパス流路接続用の接続口が取り付けられるようにしてもよい。
これにより、バイパス流路の管径を芯管の外径よりも小径にすることができるので、バイパス流路によって占拠される空間を狭くすることができるようになり、広い作業スペースを確保することができる。
【0020】
また、前記芯管の一端面に、前記環状プレートに代えて閉塞板が取り付けられ、当該閉塞板は径方向に分割された複数片により形成されるようにしてもよい。これにより、止水プラグで完全に閉止した状態にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例である止水プラグの分解斜視図。
図2】上記止水プラグの断面図で配管内に装着した状態を示す図。
図3】上記止水プラグの芯管部分を示す斜視図。
図4】芯管の胴片を示す端面図。
図5】中空チューブに生じる最大応力σmaxと中空チューブの拡張幅aとの関係についての解析計算結果を示した図。
図6】本発明の他の実施例である止水プラグの断面図。
図7】芯管の別形態を示す端面図。
図8】本発明の他の実施例である止水プラグの断面図。
図9】本発明の他の実施例である止水プラグの断面図。
図10】従来の止水プラグの一例を示す断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下において、本発明の止水プラグの詳細を実施例に基づき説明する。図1並びに図2は、本発明をバイパスタイプの止水プラグに応用した一実施例を示す。
【0023】
本実施例の止水プラグAは、円筒形状を有し金属製または樹脂製の芯管1と、この芯管1の周りに着脱自在に装着されていてエアや水などの圧力流体を注入することにより拡張する収縮可能なリング状の中空チューブ2とを備えている。中空チューブ2は、耐圧性に優れた弾性を有する伸縮および収縮可能な天然または合成ゴム、又は、樹脂をコーティングした収縮可能な布材、又は、これらの材料を組み合わせた複合材料により作成され、圧力流体を注入するための注入口2aを備えている。
【0024】
中空チューブ2は圧力流体(例えば水)を注入して膨らませた状態で径方向に厚みを有する円筒状のものが用いられ、膨らませた状態での内径と外径との差(内外周幅、拡張幅ともいう)が50~150mmとなるようにしてある。なお、止水可能にするため、中空チューブ2を膨らませた状態でのチューブ外径は、止水対象の配管B(図2参照)の内壁に圧接できる寸法のもの(配管Bの内径より大きくなる)が用いられることは言うまでもない。また、本発明の止水プラグは、好ましくは配管Bの内壁が500mm以上のものに使用される。
【0025】
中空チューブ2の内径は、圧力流体を注入して膨らませた状態では芯管1が圧接されるようにしてあり、膨らませた状態では芯管1からは外れないが、萎ませた状態にすると着脱できるようにしてある。
【0026】
芯管1は、図3に示すように、空間をあけて形成された内筒1aと外筒1bとの二重壁構造であって、これら内、外筒が放射方向に延びる隔壁1cによって連結するようにしてある。これにより芯管1に大きな強度を持たせるようにし、かつ、重量を軽減するようにしている。
また、芯管1は、軸芯方向に沿って縦割りに等分割された複数の、例えば8個の胴片1dの組み合わせにより形成されている(図4参照)。なお分割する胴片数は配管径によって増減する。各胴片1dは、互いに隣接する端面部(縦割面)で凸条の係合部3と凹条の係合部4の嵌合により着脱自在に連結されている。また、後述する環状プレート5a、5bをビス止めするためのビス孔9が内筒1aと外筒1bとの間に形成されている。各胴片1dは、アルミ材のような金属材料の押出成形によって作成することができる。
【0027】
芯管1の左側の端面には環状プレート5aと、接続口6とが着脱自在に取り付けられ、右側の端面には環状プレート5bが着脱自在に取り付けられる。環状プレート5a、5b、接続口6を形成する構成部分は、それぞれ複数の、例えば4つの部材(部品)に等分割されるとともにビス孔が設けられている。
環状プレート5aのビス孔のうち外側のビス孔と、環状プレート5bのビス孔とは、芯管1に設けたビス孔9にビス止めされる。環状プレート5aのビス孔のうち内側のビス孔は、接続口6のビス孔とビス止めされる。
そして、芯管1と環状プレート5a、5bとの間にはパッキン7、7を介在させ、環状プレート5aと接続口6との間にはパッキン8を介在させることにより止水できるようにしてある。
【0028】
環状プレート5a、5bの外径は、芯管1の外径よりも大径にしてあり、中空チューブ2は環状プレート5a、5bで挟まれることにより、芯管1に対する軸方向の移動が制限されるようにしてある。
【0029】
さらに、環状プレート5a、5bの外径は、中空チューブ2に圧力流体が注入され膨らんだ状態のチューブ外径より小径であり、圧力流体が排出されて収縮状態になったときには環状プレートより小径になるようにしてある。また、環状プレート5a,5bの外径は配管Bの内壁より小さくなるようにしてある。
【0030】
止水プラグAの芯管1の外径、中空チューブ2の拡張幅(内外周幅)、環状プレート5a,5bの外径が上述した関係となるようにしておくことで、止水プラグAを配管Bに取り付ける際に、中空チューブ2を萎んだ状態で配管Bに挿入すれば、環状プレート5a,5bによって中空チューブ2はガードされながら挿入することができるようになる。そして止水位置にセットした状態で注入口2aから圧力流体を注入することにより、中空チューブ2は膨らんだ状態になり、配管Bの内壁、および、芯管1を圧接するようになる。
ところで芯管1の外径および中空チューブ2の拡張幅についての好適なサイズは、中空チューブ2への圧力流体の注入時間をできるだけ短時間で済ますことができるようにする観点とともに、圧力流体を注入したときに中空チューブ2に生じる応力をできるだけ小さくなるようにする観点で決定するのが望ましい。このうち前者の注入時間の短縮については、中空チューブ2を配管Bに密着させる上で支障がない範囲で芯管1の直径をできる限り大径にすればよいが、後者の中空チューブ2に生じる応力を小さくする点については、実験または応力解析によって決定する必要がある。
【0031】
そこで、環状の中空チューブ2に生じる応力解析計算を行った。すなわち、図1図2に示すように、配管壁Bと芯管1とで挟まれた状態の中空チューブ2に加わる最大応力(軸線に沿った接線方向の応力σt、周方向に沿った接線方向の応力σθ)と、中空チューブ2の外径と内径との差a(中空チューブ2の拡張幅a)との関係について解析計算を行った。
【0032】
解析計算は、有限要素法(Marc Mentat2012)を用い、図2に示す環状の中空チューブ2を解析した。
解析計算は、シェル要素モデルを採用し、固定条件として芯管1の一端側を閉塞板で閉じ、その上流側の水圧を0MPa、中空チューブ2内の内圧を1MPaとした。また、芯管1の外径φを500mm、中空チューブ2と芯菅1および配管壁Bとが接触している軸方向長さを500mm、中空チューブ2の肉厚を1mm、摩擦係数を0.3とした。また、中空チューブ2の端部の形状は半円形であり、その半径rはr=a/2である。そして、中空チューブ2のヤング率を3.4GPa、ポアソン比を0.3とした。
そして、中空チューブ2の拡張幅aを100mm、150mm、200mmとして変化させたときの軸線に沿った接線方向の応力σt、周方向に沿った接線方向のσθを算出した。
【0033】
その結果、図5に示すように、最大応力はσt、σθのいずれも、拡張幅aに比例して大きくなることがわかった。したがって、圧力流体の注入時間の短縮化の観点だけでなく、中空チューブ2に生じる応力を小さくする観点からも、芯管1を大径にして中空チューブ2の拡張幅を小さくする方が好ましいことがわかった。
以上のことから、配管壁に中空チューブ2を密着させるために支障のない範囲(壁面に凹凸等があっても影響を受けずに密着できる範囲)で拡張幅aを小さくすればよいことになる。
【0034】
止水対象の配管径が500mm以上である場合であっても、拡張幅aを50mm~150mm程度、好ましくは100mm程度残すようにすれば十分であり、したがって配管内径から拡張幅50mm~150mm程度を差し引いた残りを芯管1の直径にするようにすれば、好ましい止水プラグにすることができることになる。
【0035】
次に止水プラグAの使用方法について説明する。使用に際し、各部材を分解した状態で配管の工事区間を挟んでその上流側と下流側の配管B内にそれぞれ止水プラグAを運び込み、止水位置で各部材を組み立てる。図2は配管B内で止水プラグAを組み付けた状態を示す。上流側と下流側の配管B内で組み付けられた止水プラグの各接続口6にフレキシブルなバイパス管20を接続してバイパス流路を形成するとともに、中空チューブ2に圧力流体としての水を注入して拡張させ、配管Bの内面に密着させて止水する。工事終了後は各部材を解体して配管から取り出す。
【0036】
このように、本発明の止水プラグは、各部材を分解して配管内に運び入れて内部で組み立て、使用後は解体して配管から取り出すので、止水プラグを組み立てたときの径が、例えばマンホールのような搬入口よりも大きい径であっても、容易に配管内に搬入、撤去することができる。また、無理な搬入、搬出による中空チューブの損傷もなくなり、使用中のバーストの発生を未然に防止することができる。また、芯管の直径を大きくすることで中空チューブの拡張させる体積を小さくしているので、比較的少量の圧力流体の注入による少しだけの拡張で中空チューブを配管内面に密着させることが可能となり、止水に要する圧力流体の注入時間を短縮することができる。なお、接続口の径を芯管の直径より小径にすることで必要な流水量に応じたバイパス流路にすることができ、また、バイパス流路によって占拠される空間が小さいので作業スペースを確保することができ、扱いやすい小径のフレキシブル管を接続することができる。
【0037】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。
上記実施例では、本発明をバイパスタイプの止水プラグに応用した例を示したが、図1における環状プレート5a、パッキン8、接続口6に代えて芯管の片面を完全封止する閉塞部材を設けてもよい。例えば、図6に示すような径方向に分割した2枚の閉塞板10aと、パッキン10bとを、2枚の閉塞板10aの分割溝の位置を互いにずらして重ね合わせるようにして取り付けることにより、芯管1の一端面を完全に閉塞して、完全封鎖用の止水プラグとして形成することもできる。
【0038】
また、上記実施例では、芯管1を内筒1aと外筒1bとの二重壁構造としたが、図7に示すように一重壁構造の胴片とすることも可能である。この場合はステンレススチールなどの材料も容易に使用できるようになる。
また、芯管1の胴片は等分割したが、必ずしも等分割である必要はない。
【0039】
また、図1図2で説明した中空チューブ2よりも断面が小さく、拡張状態のチューブ断面形状が円形に近くなるホース状の中空チューブ2Aを、芯管1の周囲に環状に1本、好ましくは、図8に示すように複数本、直列に装着するようにすることもできる。すなわち、中空チューブ2Aの形状の方が、軸方向に幅広な形状である中空チューブ2よりも耐圧性能を高くすることが比較的容易にできるので、中空チューブ2Aの内圧を高めたり、装着本数を増やしたりすることにより、中空チューブ2と同様の止水性能を発揮させることが可能となる。
【0040】
また、図1図2で説明した実施例では芯管1と中空チューブ2との軸方向の長さを同じにしたが、図9に示すように、芯管1を軸方向に直列に複数列並べるようにして芯管の軸方向の全体長さを大きくするとともに、直列に装着する中空チューブ2Aの本数を増やしてもよい。あるいは、芯管1を軸方向に直列に複数列並べるようにして芯管の軸方向の全体長さを大きくするとともに、中空チューブ2の長さを軸方向に2倍、3倍に伸ばすようにしてもよい。圧力流体の注入量は増えることになるが配管壁との圧接面積を倍増することができるので、中空チューブの内圧を高圧にすることなく配管壁へと圧接力(摩擦力)をかせぐことができる。しかも、1つ1つの芯管1の長さは短いので、マンホールから配管に挿入する際に、芯管の長さについて問題にならずに容易に持ち込むことができる。
その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、建築用配水管や上下水道管などの配管を一時的に止水する止水プラグとして利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
A 止水プラグ
B 配管
1 芯管
1a 内管
1b 外管
1c 隔壁
1d 胴片
2、2A 中空チューブ
2a 注入口
3 係合部
4 係合部
5a、5b 環状プレート
6 接続口
7 パッキン
8 パッキン
9 ビス孔
10 閉塞板
20 バイパス管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10