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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ガラスフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20240920BHJP
   C03B 35/00 20060101ALI20240920BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C03B17/06
C03B35/00
B65G49/06 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020204142
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091351
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸敏
(72)【発明者】
【氏名】樋口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小南 勇二
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523308(JP,A)
【文献】特表2013-516386(JP,A)
【文献】特開2014-005170(JP,A)
【文献】特表2014-524879(JP,A)
【文献】特開2013-079188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
C03B 35/00
B65G 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンドロー法用の成形体により溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形ゾーンと、前記成形ゾーンから降下する前記ガラスリボンを下方に案内しつつ徐冷する徐冷ゾーンと、前記徐冷ゾーンを通過した前記ガラスリボンを支持ローラーにより下方に牽引しつつ冷却する冷却ゾーンとを用いて、
前記冷却ゾーンを通過した前記ガラスリボンを帯状ガラスフィルムとして取得する工程を含むガラスフィルムの製造方法であって、
前記冷却ゾーンでは、前記ガラスリボンに生じた皺を消去するための皺取ローラーを前記ガラスリボンに接触させ、
前記皺取ローラーは、その送り方向が前記ガラスリボンの搬送方向に対して前記ガラスリボンの幅方向外側に傾いていると共に、その周速度が前記ガラスリボンの搬送速度よりも高速であることを特徴とするガラスフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ガラスリボンの搬送経路において、前記皺取ローラーを前記支持ローラーよりも上流側に配置することを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記皺取ローラーとして、その周部が前記ガラスリボンとの接触に伴って変形可能な柔軟性を有するローラーを用いると共に、
一対の前記皺取ローラーを、前記ガラスリボンを厚み方向に挟んで表裏両側から接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記皺取ローラーとして、その周部にブラシ毛を備えたブラシローラーを用いることを特徴とする請求項3に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記皺取ローラーの周部を、前記ガラスリボンに対して摺動させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記支持ローラーの送り方向を、前記ガラスリボンの搬送方向と同一方向にすることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記支持ローラーとして、前記ガラスリボンの幅方向の一端部と接触する第1ロールと、前記第1ロールとシャフトを介して連結されると共に前記ガラスリボンの幅方向の他端部と接触する第2ロールと、を備えたローラーを用いることを特徴とする請求項6に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ガラスリボンが、その幅方向中央に存する有効部と、前記有効部を間に挟んで幅方向両端にそれぞれ存する非有効部とを有し、
前記皺取ローラーを前記ガラスリボンの前記非有効部に接触させることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のガラスフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラスフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているスマートフォンやタブレット型PC等のモバイル端末は、薄型・軽量であることが求められる。そのため、端末の構成部品であるガラス基板に対しては、薄板化への要請が高まっているのが現状である。このような要請に応えるべく、フィルム状にまで薄板化(例えば、厚みが250μm以下)されたガラス基板として、ガラスフィルムが製造されるに至っている。
【0003】
ガラスフィルムの製造工程には、これの元となる帯状ガラスフィルムを取得する工程が含まれるのが通例である。例えば、特許文献1には、ダウンドロー法の一種であるオーバーフローダウンドロー法を利用して、帯状ガラスフィルムを取得する態様が開示されている。同態様では、成形ゾーンで成形したガラスリボンに徐冷ゾーンおよび冷却ゾーンを順次に通過させ、通過後のガラスリボンを帯状ガラスフィルムとして取得する。
【0004】
同態様について詳述すると、まず成形ゾーンにおいて、楔状の断面形状を有する成形体により溶融ガラスから連続的にガラスリボンを成形する。成形直後のガラスリボンは、成形体の直下に配置したエッジローラー(冷却ローラー)を用いて幅方向における収縮を抑制する。次に徐冷ゾーンにおいて、成形ゾーンから降下するガラスリボンを上下複数段に配置したアニーラローラーにより下方に案内しつつ歪点以下の温度まで徐冷する。最後に冷却ゾーンにおいて、徐冷ゾーンを通過したガラスリボンを支持ローラーにより下方に牽引しつつ冷却する。このような過程を経ることで、冷却ゾーンを通過したガラスリボンが帯状ガラスフィルムとして得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-62430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の態様においては、ガラスリボンの厚みが極めて薄く可撓性を有することから、搬送中のガラスリボンに皺が発生しやすいという難点がある。この皺に起因して、取得した帯状ガラスフィルムの搬送方向を転換させたり、或いは、帯状ガラスフィルムを幅方向に切断したりする際に、帯状ガラスフィルムが割れてしまう場合があった。
【0007】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、成形ゾーンで成形したガラスリボンに徐冷ゾーンおよび冷却ゾーンを順次に通過させ、通過後のガラスリボンを帯状ガラスフィルムとして取得するに際し、ガラスリボンに発生した皺を消去することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためのガラスフィルムの製造方法は、ダウンドロー法用の成形体により溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形ゾーンと、成形ゾーンから降下するガラスリボンを下方に案内しつつ徐冷する徐冷ゾーンと、徐冷ゾーンを通過したガラスリボンを支持ローラーにより下方に牽引しつつ冷却する冷却ゾーンとを用いて、冷却ゾーンを通過したガラスリボンを帯状ガラスフィルムとして取得する工程を含む方法であって、冷却ゾーンでは、ガラスリボンに生じた皺を消去するための皺取ローラーをガラスリボンに接触させ、皺取ローラーは、その送り方向がガラスリボンの搬送方向に対してガラスリボンの幅方向外側に傾いていると共に、その周速度がガラスリボンの搬送速度よりも高速であることを特徴とする。
【0009】
本方法においては、冷却ゾーンでガラスリボンに接触させる皺取ローラーについて、その送り方向がガラスリボンの搬送方向に対してガラスリボンの幅方向外側に傾いていると共に、その周速度がガラスリボンの搬送速度よりも高速になっている。この皺取ローラーとの接触に伴って、ガラスリボンに対して幅方向の引張力を有効に作用させることができるため、当該引張力によりガラスリボンに発生した皺を消去することが可能となる。
【0010】
上記の方法では、ガラスリボンの搬送経路において、皺取ローラーを支持ローラーよりも上流側に配置することが好ましい。
【0011】
このようにすれば、ガラスリボンの搬送経路における支持ローラーよりも上流側でガラスリボンに発生した皺を消去できる。このため、皺が支持ローラーに到達すること(皺が支持ローラーにより表裏両側から挟まれること)に起因して、ガラスリボンが割れてしまうような恐れを好適に排除することが可能となる。
【0012】
上記の方法では、皺取ローラーとして、その周部がガラスリボンとの接触に伴って変形可能な柔軟性を有するローラーを用いると共に、一対の皺取ローラーを、ガラスリボンを厚み方向に挟んで表裏両側から接触させることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、皺取ローラーの周部が柔軟性を有するため、皺取ローラーとの接触によってガラスリボンが割れてしまうような恐れを好適に排除できる。さらに、一対の皺取ローラーによりガラスリボンを厚み方向に挟んでいるので、皺取ローラーの周部が柔軟性を有するにも関わらず、ガラスリボンに対して確実に幅方向の引張力を作用させることが可能となる。
【0014】
上記の方法では、皺取ローラーとして、その周部にブラシ毛を備えたブラシローラーを用いることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、ブラシローラーの周部に備わったブラシ毛がガラスリボンとの接触に伴って撓み変形することになる。これにより、割れの原因となるような過大な負荷をガラスリボンに掛けることなく、幅方向の引張力を作用させることができる。
【0016】
上記の方法では、皺取ローラーの周部を、ガラスリボンに対して摺動させることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、ガラスリボンの表面と皺取ローラーの周部とが滑ることから、ガラスリボンに対して幅方向の引張力を作用させるにあたり、ガラスリボンに過大な負荷が掛かることを防止する上で有利となる。
【0018】
上記の方法では、支持ローラーの送り方向を、ガラスリボンの搬送方向と同一方向にすることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、ガラスリボンを牽引している支持ローラーの送り方向がガラスリボンの搬送方向と同一方向であるので、ガラスリボンの搬送方向に対する皺取ローラーの送り方向の傾きに由来して、ガラスリボンが幅方向にずれるような恐れを好適に排除できる。
【0020】
上記の方法では、支持ローラーとして、ガラスリボンの幅方向の一端部と接触する第1ロールと、第1ロールとシャフトを介して連結されると共にガラスリボンの幅方向の他端部と接触する第2ロールと、を備えたローラーを用いることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、第1ロールおよび第2ロールの送り方向が確実にガラスリボンの搬送方向と同一方向になるため、上述したガラスリボンのずれを排除する効果を一層有効に得ることが可能となる。
【0022】
上記の方法では、ガラスリボンが、その幅方向中央に存する有効部と、有効部を間に挟んで幅方向両端にそれぞれ存する非有効部とを有し、皺取ローラーをガラスリボンの非有効部に接触させることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、皺取ローラーがガラスリボンの非有効部に接触するので、皺取ローラーにより有効部が傷付いたり、汚染されたりするような事態の発生を防止できる。また、皺取ローラーによりガラスリボンの幅方向端部を引っ張ることになるため、ガラスリボンにおいて引張力が作用する領域を可及的に幅広にすることが可能となり、皺を消去する上で一層有利となる。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係るガラスフィルムの製造方法によれば、成形ゾーンで成形したガラスリボンに徐冷ゾーンおよび冷却ゾーンを順次に通過させ、通過後のガラスリボンを帯状ガラスフィルムとして取得するに際し、ガラスリボンに発生した皺を消去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ガラスフィルムの製造方法を示す断面図である。
図2】ガラスフィルムの製造方法を示す断面図である。
図3】(a)はブラシローラーを示す正面図であり、(b)はブラシローラーを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係るガラスフィルムの製造方法について、添付の図面を参照して説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表示したX方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向である。
【0027】
本製造方法は、図1及び図2に示した製造装置1を用いて、ガラスフィルムの元となる帯状ガラスフィルム2を取得する工程を含んでいる。同工程は、成形ゾーンZN1で実行する成形工程P1と、徐冷ゾーンZN2で実行する徐冷工程P2と、冷却ゾーンZN3で実行する冷却工程P3および皺取工程P4とを備えている。
【0028】
成形工程P1は、ダウンドロー法用(ここではオーバーフローダウンドロー法用)の成形体3により溶融ガラス4から連続的にガラスリボン5を成形する工程である。成形体3は成形炉6内に収容されており、成形炉6には成形体3を加熱するための図示省略の加熱装置(例えばパネルヒーター)等が設置されている。
【0029】
成形体3は、溶融ガラス4を流入させるための溝3aと、溝3aから両側方に溢れ出た溶融ガラス4をそれぞれ流下させるための一対の側面部3b,3bと、各側面部3bに沿って流下した溶融ガラス4を融合(合流)させるための下端部3cとを有する。この成形体3により下端部3cで融合させた溶融ガラス4から連続的にガラスリボン5を成形する。
【0030】
ガラスリボン5は、その幅方向(X方向)中央に存する有効部5aと、有効部5aを間に挟んで幅方向両端にそれぞれ存する非有効部5bとを有する。有効部5aは、後に製品ガラスフィルムとなる部分を含む部位であり、非有効部5bは、製品とはならずに後に廃棄される部位である。ガラスリボン5の幅方向端部をなす非有効部5bのうち、ガラスリボン5の幅方向端縁(エッジ)にあたる部位には、他の部位と比較して厚肉となる耳部が形成される。
【0031】
成形直後のガラスリボン5は、成形体3の直下に配置したエッジローラー7(冷却ローラー)を用いて幅方向における収縮を抑制する。
【0032】
エッジローラー7は、ガラスリボン5を厚み方向(Z方向)に挟んで一対が配置されている。一対のエッジローラー7,7の各々は、ガラスリボン5の幅方向に延びたシャフト7aと、シャフト7aを介して相互に連結された第1ロール7bおよび第2ロール7cとを備えている。両ロール7b,7cは、耐熱材料で構成され、いずれもガラスリボン5の非有効部5bと接触する。これら一対のエッジローラー7,7の第1ロール7b,7b同士、及び、第2ロール7c,7c同士によりガラスリボン5を厚み方向に挟むことで、ガラスリボン5の幅方向における収縮を抑制しつつ下方に送る。
【0033】
徐冷工程P2は、成形ゾーンZN1から降下するガラスリボン5を下方に案内しつつ歪点以下の温度まで徐冷する工程である。徐冷工程P2の実行には、徐冷炉8と、上下複数段(図示例では上下5段)に配置されたアニーラローラー9とを用いる。
【0034】
徐冷炉8は、成形炉6の下方に配置されている。徐冷炉8には、当該徐冷炉8内の雰囲気温度を調節するための図示省略の加熱装置(例えばパネルヒーター)等が設置されている。
【0035】
上下複数段の各段において、アニーラローラー9は、ガラスリボン5を厚み方向に挟んで一対が配置されている。一対のアニーラローラー9,9の各々は、ガラスリボン5の幅方向に延びたシャフト9aと、シャフト9aを介して相互に連結された第1ロール9bおよび第2ロール9cとを備えている。両ロール9b,9cは、一例としてセラミックで構成され、いずれもガラスリボン5の非有効部5bと接触が可能である。これら一対のアニーラローラー9,9の第1ロール9b,9b同士、及び、第2ロール9c,9c同士によりガラスリボン5を下方に案内する。
【0036】
ここで、第1ロール9b,9b同士、及び、第2ロール9c,9c同士は、ガラスリボン5を厚み方向に挟んでいる場合もあれば、挟むことなくガラスリボン5の厚み方向に沿った揺動を規制しているだけの場合もある。
【0037】
冷却工程P3は、徐冷ゾーンZN2を通過したガラスリボン5を支持ローラー10により下方に牽引しつつ冷却する工程である。支持ローラー10は、徐冷炉8の下方に配置された冷却室11に配置されている。
【0038】
支持ローラー10は、ガラスリボン5を厚み方向に挟んで一対が配置されている。一対の支持ローラー10,10の各々は、ガラスリボン5の幅方向に延びたシャフト10aと、シャフト10aを介して相互に連結された第1ロール10bおよび第2ロール10cとを備えている。両ロール10b,10cは、一例としてゴムで構成され、いずれもガラスリボン5の非有効部5bと接触する。これら一対の支持ローラー10,10の第1ロール10b,10b同士、及び、第2ロール10c,10c同士によりガラスリボン5を厚み方向に挟んで牽引することで、ガラスリボン5の搬送速度V1(板引き速度)が決定される。搬送に伴って冷却ゾーンZN3を通過したガラスリボン5は、帯状ガラスフィルム2として取得される。
【0039】
皺取工程P4は、ガラスリボン5に生じた皺を消去するための工程である。皺取工程P4においては、ガラスリボン5に皺取ローラー12を接触させ、これに伴ってガラスリボン5に対して幅方向の引張力を作用させることで皺を消去する。
【0040】
ここで、ガラスリボン5の厚みが薄いほど、当該ガラスリボン5に皺が生じやすくなる。そのため、本製造方法は、ガラスリボン5の厚み(有効部5aの厚み)が250μm以下の場合に適用することが好ましく、100μm以下の場合に適用することが更に好ましく、70μm以下の場合に適用することが最も好ましい。一方、ガラスリボン5の厚みは、安定的にガラスリボン5を製造するために、10μm以上であることが好ましい。
【0041】
皺取ローラー12は、ガラスリボン5の搬送経路において、アニーラローラー9よりも下流側で且つ支持ローラー10よりも上流側に配置されている。さらに、皺取ローラー12は、ガラスリボン5の幅方向中心線を基準として対称な配置となるように、ガラスリボン5の幅方向の一端側および他端側の双方に配置されている。一端側および他端側の各々において、皺取ローラー12はガラスリボン5を厚み方向に挟んで対となっており、一対の皺取ローラー12,12がガラスリボン5の非有効部5bに対して表裏両側から接触する。詳細には、皺取ローラー12は、非有効部5bのうちの耳部よりも幅方向内側となる箇所に接触する。なお、皺取ローラー12は、図1に両端矢印で示すように軸方向に移動させることが可能である。これにより、皺取ローラー12の配置(ロール部の配置)について、支持ローラー10の第1ロール10bおよび第2ロール10cよりも幅方向の内側、外側、同位置と変更することが可能である。
【0042】
皺取ローラー12は、その軸線がガラスリボン5の幅方向(水平方向)に対して傾いている。これにより、皺取ローラー12は、その送り方向がガラスリボン5の搬送方向(Y方向)に対してガラスリボン5の幅方向外側に傾いている。一方、皺取ローラー12と同じく冷却ゾーンZN3に配置された支持ローラー10は、その送り方向がガラスリボン5の搬送方向と同一方向となっている。ここで、ガラスリボン5の搬送方向に対する皺取ローラー12の送り方向の傾き(ガラスリボン5を平面視した場合における傾き)は、ガラスリボン5に過大な引張力が作用することを防止するため、10°以下とすることが好ましく、5°以下とすることが更に好ましい。一方、ガラスリボン5の搬送方向に対する皺取ローラー12の送り方向の傾きは、良好な皺取り性能を維持するために、1°以上とすることが好ましい。
【0043】
皺取ローラー12は、図示省略の駆動源(例えばモーター)と接続された駆動ローラーである。皺取ローラー12の周速度V2は、ガラスリボン5の搬送速度V1よりも高速となっている。ここで、皺取ローラー12の周速度V2は、ガラスリボン5に生じた皺を効果的に消去するため、ガラスリボン5の搬送速度V1を基準として、1.01倍~1.5倍の速度とすることが好ましく、1.05倍~1.3倍の速度とすることが更に好ましい。
【0044】
図3に示すように、皺取ローラー12としては、ロール部がブラシでなるブラシローラー13を用いている。ブラシローラー13の周部は、周方向に沿って配列された複数の毛束13aで構成されており、各毛束13aは多数のブラシ毛13aaを含んでいる。毛束13a(ブラシ毛13aa)は柔軟性を有しており、ガラスリボン5との接触に伴って撓み変形が可能となっている。これにより、ブラシローラー13がガラスリボン5と接触した際には、毛束13a(ブラシ毛13aa)が撓み変形しつつ、ガラスリボン5の表面に対して摺動する。なお、ガラスリボン5の表面に対しては、ブラシローラー13の全体のうち、毛束13a(ブラシ毛13aa)のみが接触する。
【0045】
ここで、皺取ローラー12(ブラシローラー13)の周部は、融点が180℃以上となるような耐熱性を有する材質で構成することが好ましい。本実施形態においては、ブラシ毛13aaとして融点が265℃の66ナイロンで構成された毛を用いている。
【0046】
冷却工程P3および皺取工程P4を経て取得した帯状ガラスフィルム2に対しては、当該帯状ガラスフィルム2を幅方向に切断する切断工程や、帯状ガラスフィルム2の搬送方向を上下方向から水平方向に転換させる転換工程等を実行する。その後、種々の工程(洗浄工程や検査工程等)を実行することで、帯状ガラスフィルム2から製品ガラスフィルムを製造する。
【0047】
以上に説明したガラスフィルムの製造方法では、冷却ゾーンZN3でガラスリボン5に接触させる皺取ローラー12について、その送り方向がガラスリボン5の搬送方向に対してガラスリボン5の幅方向外側に傾いていると共に、その周速度V2がガラスリボン5の搬送速度V1よりも高速になっている。これにより、皺取ローラー12との接触に伴って、ガラスリボン5に対して幅方向の引張力を有効に作用させることができ、当該引張力によりガラスリボン5に発生した皺を消去することが可能となる。
【0048】
ここで、上記の実施形態に対しては、以下のような変形例を適用することも可能である。上記の実施形態では、冷却ゾーンZN3内において、皺取ローラー12を支持ローラー10よりもガラスリボン5の搬送経路の上流側に配置しているが、必ずしもこの限りではなく、皺取ローラー12を支持ローラー10よりも下流側に配置してもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、ブラシローラー13の周部に備わったブラシ毛13aaが66ナイロンで構成されているが、勿論この限りではなく、66ナイロン以外の材質(例えば、ポリフェニレンサルファイド、メタ系アラミド繊維等)で構成されていてもよい。さらに、皺取ローラー12としては、ブラシローラー13に限らず、その周部がガラスリボン5との接触に伴って変形可能な柔軟性を有するローラーを用いることが可能である。そのため、例えば、周部が樹脂、ゴム、ガラスクロス、カーボンクロス、スポンジ等で構成されたローラーを、皺取ローラー12として用いてもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、一対の皺取ローラー12,12が1段のみ使用されているが、この形態に限定されず、一対の皺取ローラー12,12は、上下に複数段に設けられても良い。
【0051】
また、上記の実施形態では、エッジローラー7として、第1ロール7bと第2ロール7cとが、1本のシャフト7aに取り付けられていたが、この形態に限定されず、第1ロール7bと第2ロール7cとが、夫々個別にシャフト7aを備えていても良い。
【0052】
また、上記の実施形態では、アニーラローラー9として、第1ロール9bと第2ロール9cとが、1本のシャフト9aに取り付けられていたが、この形態に限定されず、第1ロール9bと第2ロール9cとが、夫々個別にシャフト9aを備えていても良い。
【0053】
また、上記の実施形態では、支持ローラー10として、第1ロール10bと第2ロール10cとが、1本のシャフト10aに取り付けられていたが、この形態に限定されず、第1ロール10bと第2ロール10cとが、夫々個別にシャフト10aを備えていても良い。
【符号の説明】
【0054】
2 帯状ガラスフィルム
3 成形体
4 溶融ガラス
5 ガラスリボン
5a 有効部
5b 非有効部
10 支持ローラー
10a シャフト
10b 第1ロール
10c 第2ロール
12 皺取ローラー
13 ブラシローラー
13aa ブラシ毛
V1 ガラスリボンの搬送速度
V2 皺取ローラーの周速度
ZN1 成形ゾーン
ZN2 徐冷ゾーン
ZN3 冷却ゾーン
図1
図2
図3