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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】歩行者用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20240920BHJP
【FI】
B60R21/36 320
B60R21/36 352
B60R21/36 351
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021183752
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023071119
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-159971(JP,A)
【文献】特開2015-134566(JP,A)
【文献】特開2006-327360(JP,A)
【文献】特開2016-120868(JP,A)
【文献】特開2014-125091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0144413(US,A1)
【文献】特開2002-036996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードパネルの後端付近の下方に配置されて、開口を上向きとしたケースに、折り畳まれてエアバッグが収納され、作動時、前記エアバッグが、膨張用ガスを流入させて、前記ケースの前記開口から突出し、前記フードパネルの後端付近の下方からフロントピラーの上面側を覆う構成とする歩行者用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
膨張完了時に前記ケース内に収納保持され、膨張用ガスの上流側部位となるケース側膨張部と、
該ケース側膨張部の上端側と連結されて、前記ケース側膨張部との連結部位から前後両側に延びる前膨張部と後膨張部とを有して、前記後膨張部を、前記フロントピラーの上面側を覆うように配設させる本体膨張部と、
を備え、
前記本体膨張部が、膨張完了時の周壁を、上面側の歩行者側壁部と、下面側の車体側壁部とを備えて構成され、
前記車体側壁部が、
前記ケース側膨張部との連結部位に、上下方向に貫通し、前記ケース側膨張部からの膨張用ガスを流入させて、前記本体膨張部を膨張させるガス流入口を開口させるとともに、
該ガス流入口の上方を覆って、前記ガス流入口から流入する膨張用ガスを前後両側に流し可能な整流布を、配設させて構成されており、
前記ガス流入口が、前記本体膨張部の左右方向に沿って複数並設されるとともに、
各々の前記ガス流入口に対応して、前記整流布が配設されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記整流布が、
左右両縁を、前記ガス流入口を間にした左右両縁側に結合させた略長方形形状の可撓性を有した整流布用シート材から形成されるとともに、
前記整流布用シート材の左右方向の長さ寸法を、前記本体膨張時の膨張完了時に前記歩行者側壁部に接しない範囲内で、平らに展開させた前記ガス流入口の左右両縁側における前記整流布用シート材の結合部位間の長さ寸法より長く、設定されて、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記整流布用シート材が、前後方向の長さ寸法を、前記ガス流入口の前後方向の開口幅寸法と同等以上の寸法に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項4】
隣接する前記ガス流入口の間に、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部との離隔距離を規制する厚さ規制テザーが、配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードパネル後端の下方に搭載されて、作動時に、フロントピラーの上面を覆うように、膨張したエアバッグを配設させる歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグが、膨張完了時にフロントピラーの上面側を覆うように、フロントピラーの下端付近におけるフードパネルの後端下方側に配設されたケース内に、折り畳まれて収納されていた(例えば、特許文献1参照)。ケースは、エアバッグ突出用の開口の向きを、フロントウインドシールドの上面側に接近させるように、斜め後上方向に向いて、配設されており、膨張時のエアバッグは、ケースの開口から、斜め後上方向に突出し、そして、膨張完了時のエアバッグが、フロントウインドシールドやフロントピラーの上面を覆うこととなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-125091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の歩行者用エアバッグ装置では、ケースが、その開口の向きを斜め後上方向に向かせているものの、膨張時のエアバッグは、ケースの開口から突出すれば、フロントピラーの上面から浮いて展開膨張し易かった。特に、フードパネルの後端付近の下方に配設されるケースが、搭載スペースの関係から、開口を斜め後上方向に向かせるのではなく、開口を上方向に向かせて配設される場合には、一層、膨張時のエアバッグが、ケースの開口から上向きに突出することとなって、展開膨張するエアバッグが、フロントピラーの上面に沿って展開させ難くなることから、膨張時のエアバッグを、フロントピラーの上面に沿って展開膨張させる点に、課題が生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、開口を上向きとしたケースから突出するエアバッグを、円滑に、フロントピラーの上面に沿って展開膨張させることができる歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、車両のフードパネルの後端付近の下方に配置されて、開口を上向きとしたケースに、折り畳まれてエアバッグが収納され、作動時、前記エアバッグが、膨張用ガスを流入させて、前記ケースの前記開口から突出し、前記フードパネルの後端付近の下方からフロントピラーの上面側を覆う構成とする歩行者用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
膨張完了時に前記ケース内に収納保持され、膨張用ガスの上流側部位となるケース側膨張部と、
該ケース側膨張部の上端側と連結されて、前記ケース側膨張部との連結部位から前後両側に延びる前膨張部と後膨張部とを有して、前記後膨張部を、前記フロントピラーの上面側を覆うように配設させる本体膨張部と、
を備え、
前記本体膨張部が、膨張完了時の周壁を、上面側の歩行者側壁部と、下面側の車体側壁部とを備えて構成され、
前記車体側壁部が、
前記ケース側膨張部との連結部位に、上下方向に貫通し、前記ケース側膨張部からの膨張用ガスを流入させて、前記本体膨張部を膨張させるガス流入口を開口させるとともに、
該ガス流入口の上方を覆って、前記ガス流入口から流入する膨張用ガスを前後両側に流し可能な整流布を、配設させて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、作動時、エアバッグが、膨張用ガスを流入させて膨張し、ケースの開口から上方へ突出する。そして、ケース内に収納されたケース側膨張部の上端側に配設される本体膨張部は、ケース側膨張部との連結部位に開口されたガス流入口から膨張用ガスを流入させ、そして、整流布によって、前後両側に膨張用ガスを流して、展開膨張する。その際、膨張用ガスは、上流側部位のケース側膨張部から、本体膨張部の車体側壁部に上下方向に開口したガス流入口を経て、上向きに本体膨張部に流入し、ガス流入口の上方を覆っている整流布と干渉して、前後両側の前膨張部と後膨張部とに流れる。そして、フロントピラーを覆うこととなる後膨張部へ流れる膨張用ガスは、ガス流入口を上向きに流れた後、ガス流入口の上方を覆っていた整流布と直交するように干渉して、反転させられるように流れを変えられて、車体側壁部に沿って後方側に流れ、すなわち、車体側部材であるフロントウインドシールドやフロントピラーの上面に接することとなる車体側壁部に沿って、後方に流れることから、展開膨張するエアバッグは、フロントウインドシールドやフロントピラーの上面に沿って展開膨張することとなる。
【0008】
したがって、本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、開口を上向きとしたケースから突出するエアバッグを、円滑に、フロントピラーの上面に沿って展開膨張させることができる。そして、ケースから展開膨張するエアバッグが、フロントピラーの上面に沿って展開膨張すれば、膨張完了後のエアバッグが、揺動することなく、迅速かつ安定して、フロントピラーの上面を覆うことができて、その後に進入してくる歩行者を、好適に、フロントピラーから保護できることとなる。
【0009】
また、本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、前記整流布が、
左右両縁を、前記ガス流入口を間にした左右両縁側に結合させた略長方形形状の可撓性を有した整流布用シート材から形成されるとともに、
前記整流布用シート材の左右方向の長さ寸法を、前記本体膨張部の膨張完了時に前記歩行者側壁部に接しない範囲内で、平らに展開させた前記ガス流入口の左右両縁側における前記整流布用シート材の結合部位間の長さ寸法より長く、設定されて、構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、略長方形形状の整流布用シート材の左右両縁を、ガス流入口の左右両縁側に、結合させるだけで、整流布を車体側壁部に配設させることができる。そして、整流布は、ガス流入口から上向きに流入する膨張用ガスを、円滑に、湾曲しつつ受け止めて、前後両側に分岐させて、前膨張部と後膨張部とに流すことができる。
【0011】
この場合、前記整流布用シート材が、前後方向の長さ寸法を、前記ガス流入口の前後方向の開口幅寸法と同等以上の寸法に設定されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、エアバッグの膨張完了後に、本体膨張部が、歩行者を受け止めて、内圧を高めた際、整流布が、前後方向の幅寸法をガス流入口の前後方向の開口幅寸法以上に、形成されていることから、ガス流入口を閉塞することが可能となる。すなわち、膨張完了後のエアバッグが、歩行者を受止めた際、本体膨張部内の膨張用ガスを、ケース側膨張部に流して、本体膨張部の内圧を低下させることを、抑制することができることとなって、本体膨張部が、クッション性よく、歩行者を受け止めて保護できる。
【0013】
そして、本発明に係る歩行者用エアバッグ装置では、前記ガス流入口が、前記本体膨張部の左右方向に沿って複数並設されるとともに、各々の前記ガス流入口に対応して、前記整流布が配設されていてもよい。
【0014】
このように構成されている場合には、複数のガス流入口が、本体膨張部の左右方向の幅方向に並設されていることから、本体膨張部の後膨張部の膨張時、左右方向の両縁側も、円滑に、フロントピラーの上面に沿って、展開膨張でき、本体膨張部が、左右方向に幅広く均等に、展開膨張できることとなって、ウインドシールドやフロントピラーの上面からの部分的な浮き上がりも抑制可能となる。また、ケース内に収納されているケース側膨張部内では、左右方向に沿った複数のガス流入口から分散して、膨張用ガスが本体膨張部側へ流出することとなって、ガス流入口が1つの場合に比べて、ガス流入口周縁に作用する膨張用ガスのケースに対する押圧力を、分散できることとなって、エアバッグ装置の作動時におけるケースの変形を抑制して、ケースにおける周囲の車体側部材との干渉を防止できる。
【0015】
この場合、隣接する前記ガス流入口の間に、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部との離隔距離を規制する厚さ規制テザーが、配設されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、エアバッグの膨張完了時の本体膨張部におけるガス流入口付近の厚さ寸法を規制できることから、ケースの配設される上方にフードパネルの後端付近が接近して配設されても、フードパネルとの過干渉を防止して、エアバッグを円滑に膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の概略部分平面図であり、併せて、膨張完了時のエアバッグを二点鎖線で示す。
図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動時における概略平面図である。
図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動時における概略縦断面図である。
図5】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動時における前後方向に沿ったケース付近の概略縦断面図である。
図6】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動時における左右方向に沿ったケース付近の概略縦断面図である。
図7】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグ単体の膨張完了状態を示す概略平面図である。
図8】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグ単体の膨張完了状態を示す概略底面図である。
図9】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグ単体の膨張完了状態を示す概略側面図である。
図10】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグ単体の膨張完了状態を示すケース側膨張部付近の概略正面図である。
図11】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグ単体の膨張完了状態を示すケース側膨張部付近の概略背面図である。
図12】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグの構成材料の一部を示す概略平面図である。
図13】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグの構成材料の残りを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の歩行者用エアバッグ装置M(L,R)は、図1~6に示すように、車両Vのフードパネル8の後端8a付近における左右両側の下方側に搭載されている。なお、左右のエアバッグ装置ML,MRは、左右対称的に配設されるものであり、本明細書では、左方側のエアバッグ装置MLについて説明し、右方側のエアバッグ装置MRは説明を省略する。また、エアバッグ装置M(L,R)の作動時には、エアバッグ30との干渉を抑制できるように、フードパネル8の後端8a側を持ち上げる図示しないアクチュエータが、作動されるように構成されている。
【0019】
歩行者用エアバッグ装置MLは、エンジンルームERの後方におけるカウルパネル6aとカウルルーバ6bとからなるカウル6のカウルパネル6aに隣接して、配設されて、エアバッグ30と、エアバッグ30に膨張用ガスGを供給するインフレーター20と、折り畳んだエアバッグ30及びインフレーター20を収納するケース10と、を備えて構成されている。
【0020】
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて、説明する。
【0021】
また、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ3には、歩行者との衝突を検知可能なセンサ3aが、配設されており、センサ3aからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ3aからの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、エアバッグ装置MLのインフレーター20を作動させるように構成されている。
【0022】
エアバッグ装置MLのケース10は、金属製(板金製)として、左右方向に長くした略直方体形状として、略長方形の底壁部11と、底壁部11の周縁から上方に延びる周壁部12と、を備えて構成されている。周壁部12は、前後の前壁部13と後壁部14、及び、左右の左壁部15と右壁部16、を備えて、上端側の長方形状の開口12aを、左右方向に延びた長方形形状として、エアバッグ30の突出用の開口としている。左壁部15の下端側には、インフレーター20の元部20bとインフレーター20を挿入させたエアバッグ30の挿入口部36とを突出させる挿通孔15a、が開口されている(図6参照)。
【0023】
底壁部11には、インフレーター20を保持する取付ブラケット23に設けられたボルト24を貫通させる取付孔11aが配設されている。ケース10は、車両Vのボディ1側のカウルパネル6aから延びるフランジ等から構成される取付部2に対して、インフレーター20の取付ブラケット23のボルト24を貫通させ、ボルト24にナット25を締結させることにより、固定されている。この固定時、ケース10内には、折り畳まれたエアバッグ30とインフレーター20とが収納されていることから、ボルト24をナット25止めすることにより、エアバッグ装置MLが、車両Vの取付部2に対して取付固定されて、左方側のフロントピラー5(L)の下端付近におけるフードパネル8の後端8aの下方付近に搭載されることとなる。
【0024】
また、ケース10の前壁部13には、ケース10の開口12aを覆うエアバッグカバー18が取り付けられている。エアバッグカバー18は、ケース10内に収納されたエアバッグ30の膨張時、エアバッグ30に押し開かれて、開口12aを開かせることとなる。
【0025】
インフレーター20は、図6に示すように、車両Vの左右方向に沿って、軸方向を配置させた円柱状として、先端部20aに、膨張用ガスを吐出するガス吐出部21を配設させて構成されている。インフレーター20は、複数(実施形態では2個)の取付ブラケット23に保持され、エアバッグ30のケース側膨張部31内に挿入され、取付ブラケット23のボルト24を利用して、ケース10の底壁部11に固定されている(図5,6参照)。既述したように、取付ブラケット23のボルト24は、底壁部11を貫通して、車両Vのボディ1側の取付部2にナット25止めされ、インフレーター20とともに、ケース10を取付部2に固定することとなり、そしてさらに、インフレーター20がエアバッグ30内に挿入された状態としており、エアバッグ30も、ケース10の底壁部11に取付固定されることとなる。
【0026】
エアバッグ30は、図1~11に示すように、膨張完了時にケース10内に収納保持され、膨張用ガスGの上流側部位となるケース側膨張部31と、ケース側膨張部31の上端31a側と連結されて、ケース側膨張部31との連結部位44から前後両側に延びる本体膨張部40と、を備えて構成されている。
【0027】
本体膨張部40は、連結部位44から前側に延びる前膨張部52と、連結部位44から後側に延びる後膨張部54とを有して、構成されている。前膨張部52と後膨張部54とは、連結部位44を共用している構成としている。そして、前膨張部52は、ケース10の直上から前方側の上方、すなわち、フードパネル8の後端8a付近の下方のカウルパネル6a付近の上方を覆い、後膨張部54は、ケース10の直上から後方側の上方、すなわち、ウインドシールド4の前縁4a付近からフロントピラー5Lの上面5a側を覆うように配設される。また、本体膨張部40は、膨張完了時の周壁40aが、上面側の歩行者側壁部41と、下面側の車体側壁部42と、から構成されている。
【0028】
車体側壁部42には、ケース側膨張部31との連結部位44に、上下方向に貫通し、ケース側膨張部31からの膨張用ガスGを流入させて、本体膨張部40を膨張させるガス流入口46が、開口されている。実施形態の場合、ガス流入口46は、略四角形状の開口として、左右に並設されるように、2個、配設されている。ガス流入口46を開口させた車体側壁部42の連結部位44は、エアバッグ30の膨張完了時、ケース10の周壁部12で囲まれる開口12aの上方に配置されるように、ケース10に保持されるケース側膨張部31が、上下方向の高さ寸法を有している。
【0029】
また、車体側壁部42には、ガス流入口46,46のそれぞれの上方を覆って、ガス流入口46から本体膨張部40内に流入する膨張用ガスGを前後両側に流し可能な整流布56を、配設させている。整流布56,56は、左右方向に延びた長方形形状の整流布用シート材としての整流布用基布71から形成されており(図13参照)、左右両側の端部56aを、各ガス流入口46の左右両側の結合部49,49に対し、縫合により結合させて、中間部56bが、ガス流入口46の上方を覆うように、配設されている。
【0030】
各整流布56の前後方向の長さ寸法L1は、各ガス流入口46の前後方向の長さ寸法L0と同等以上、実施形態の場合には、前後に膨張用ガスGを分岐させる作用を阻害しない範囲で、1.1~3倍程度の範囲内とした1.5倍程度と大きく設定されている。また、各整流布56の結合部49,49への結合部位間の左右方向の長さ寸法W1は、ガス流入口46付近を平らに展開した結合部49.49間の左右方向の長さ寸法W0より、大きく、実施形態の場合には、1.4倍程度と大きく設定されている。
【0031】
そして、実施形態の場合、各整流布56は、ガス流入口46から流入する膨張用ガスGを受け止めると、略半割り円筒状に、上方へ膨らむ形状となる(図6参照)。
【0032】
さらに、二つのガス流入口46の間には、歩行者側壁部41と車体側壁部42とを連結して、連結部位44付近の厚さ寸法を規制する厚さ規制テザー61が配設されている。厚さ規制テザー61は、二つのガス流入口46,46間に、2つ、配設され、それぞれ、前後方向に沿って幅方向を配置させている。厚さ規制テザー61は、ガス流入口46から本体膨張部40内に流入する膨張用ガスGにより、整流布56の中間部56bが、上膨らみに撓んでも、歩行者側壁部41に接しないように、長い長さ寸法L2(図13参照)を有している。
【0033】
また、後膨張部54は、ガス流入口46付近の左右方向に幅広とした前側部54aと、前側部54aの後縁側のフロントピラー5L側の縁から後方に延びて、フロントピラー5Lの上面5aを覆う後側部54bと、を備えて構成されて、内部の車幅方向の内側部位に、前側部54aから後側部54bとにかけて前後方向に長く延びる厚さ規制テザー58と、前側部54aのフロントピラー5L側で左右方向に延びる厚さ規制テザー59と、が配設されている。各厚さ規制テザー58,59は、歩行者側壁部41と車体側壁部42とを連結するように配設されており、実施形態の場合、上下方向に二分割されたテザー用基布73,73及びテザー用基布74,74(図13参照)からそれぞれ形成されている。
【0034】
また、各厚さ規制テザー58,59による本体膨張部40の厚さ寸法L3(図3参照)は、連結部位44に配設される厚さ規制テザー61よる本体膨張部40の厚さ寸法L2(図3参照)より、大きく設定されている。ちなみに、実施形態の場合、厚さ寸法L3は、約250mm程度、厚さ寸法L2は、約100mm程度としている。
【0035】
ケース側膨張部31は、連結部位44に位置する上側壁部34と、上側壁部34の前縁34a側から下方に延びる前側壁部32と、上側壁部34の後縁34b側から下方に延びる後側壁部33と、を備えて構成され、エアバッグ30の膨張完了時、本体膨張部40から略直交方向の下方に突出するように、配設されている(図9参照)。
【0036】
また、ケース側膨張部31は、前側壁部32と後側壁部33との左縁32a,33a相互、下縁32b,33b相互、及び、右縁32c,33c相互、が相互に縫合されて結合されることにより、形成されている(図10,11,13参照)。そして、前側壁部32と後側壁部33との左縁32a,33a側は、部分的に左方に突出し、その突出部位の上下に対向する部位において、それぞれ、前側壁部32と後側壁部33とを縫合して、インフレーター20を挿入させるための円筒状の挿入口部36を形成している。
【0037】
上側壁部34は、ガス流入口46,46に連通する連通口35が開口されており、連通口35の周縁が、ガス流入口46の周縁の結合部47に、縫合により結合されている。前側壁部32には、インフレーター20のボルト24を貫通させる貫通孔37が形成されている。
【0038】
ケース側膨張部31内の上側壁部34の連通口35,35間の下方には、前側壁部32と後側壁部33とを連結するテザー38が配設されて、膨張時の前側壁部32と後側壁部33との前後方向への膨張が、テザー38により抑制されている。
【0039】
また、エアバッグ30の下面30a側では、本体膨張部40における連結部位44の後方側部位(連結部42b)とケース側膨張部31の後側壁部33とを連結して、後膨張部54の浮き上がりを規制可能な牽引ストラップ63(L,R)が、配設されている(図5,8,11参照)。牽引ストラップ63L,63Rは、左右方向に幅方向を設けた帯状として、ケース10の周壁部12の後壁部14の左右の縁14b,14cに、左右方向の縁63c,63dを接近させて、左右に並設させて、配設されている(図6参照)。
【0040】
さらに、牽引ストラップ63(L,R)は、本体膨張部40の車体側壁部42の連結部42bに連結される上側端部63aと、ケース側膨張部31の後側壁部33の連結部33dに連結される下側端部63bと、の間の長さ寸法S1(図13参照)が、本体膨張部40の連結部42bとケース側膨張部31の連結部33dとの間のエアバッグ30の膜長の長さ寸法S0(図5参照)より、小さく設定されて、本体膨張部40の車体側壁部42の連結部42bを、下方へ、強く牽引できるように、構成されている。
【0041】
また、車両搭載状態でのエアバッグ30の膨張完了時、牽引ストラップ63は、上側端部63aが、ケース10の後壁部14の上縁14aの後上方に配設され、下側端部63bが、ケース10内の後壁部14の前方側に配置されて、ケース10の後壁部14の上縁14aと当接して屈曲する屈曲部63eを形成するように、配設されている(図5参照)。
【0042】
また、実施形態では、本体膨張部40における連結部位44の前方側部位(連結部42a)とケース側膨張部31の前側壁部32とを連結して、前膨張部52の浮き上がりを規制可能な牽引ストラップ64(L,R)が、配設されている(図5,8,10参照)。牽引ストラップ64L,64Rは、左右方向に幅方向を設けた帯状として、ケース10の周壁部12の前壁部13の左右の縁13b,13cに、左右方向の縁64c,64dを接近させて、左右に並設させて、配設されている。
【0043】
さらに、牽引ストラップ64(L,R)は、本体膨張部40の車体側壁部42の連結部42aに連結される上側端部64aと、ケース側膨張部31の前側壁部32の連結部32dに連結される下側端部64bと、の間の長さ寸法S1(図13参照)が、牽引ストラップ63と同様に、本体膨張部40の連結部42aとケース側膨張部31の連結部32dとの間のエアバッグ30の膜長の長さ寸法S0(図5参照)より、小さく設定されて、本体膨張部40の車体側壁部42の連結部42aを、下方へ、強く牽引できるように、構成されている。
【0044】
また、車両搭載状態でのエアバッグ30の膨張完了時、牽引ストラップ64は、牽引ストラップ63と前後対称的に、上側端部64aが、ケース10の前壁部13の上縁13aの前上方に配設され、下側端部64bが、ケース10内の前壁部13の後方側に配置されて、ケース10の前壁部13の上縁13aと当接して屈曲する屈曲部64eを形成するように、配設されている(図5参照)。
【0045】
実施形態のエアバッグ30は、図12,13に示すように、ポリエステルやポリアミド等の繊維からなる可撓性を有した基布66,68,70,72,74,77,79,81から構成されている。本体膨張部40の周壁40aは、歩行者側壁部41を形成する歩行者側基布66と、車体側壁部42を形成する車体側基布68と、の外周縁66a,68a相互を縫合して形成されている。
【0046】
なお、車体側基布68には、ガス流入口46に対応する開口68bが形成されており、歩行者側基布66との縫合前に、開口68bの周縁に、整流布56を形成する整流布用基布72を縫合するとともに、厚さ規制テザー58,59の下側部分を形成するテザー用基布74,75を縫合しておき、さらに、ケース側膨張部31を形成するケース側基布70の開口70bの周縁を、開口68bの周縁に、縫合しておく。
【0047】
また、ケース側基布70は、ケース側膨張部31内のテザー38を形成するテザー用基布79の両端部を、前側壁部32と後側壁部33との所定の部位に結合させつつ、外周縁70aにおける前側壁部32と後側壁部33との左縁32a,33a相互、下縁32b,33b相互、及び、右縁32c,33c相互となる部位を縫合して、ケース側膨張部31を形成する。
【0048】
さらに、牽引ストラップ63(L,R),64(L,R)を形成するストラップ用基布81は、ケース側膨張部31を形成する前に、車体側基布68とケース側基布70との連結部32d,33d,42a,42bの部位に縫合しておく。
【0049】
そして、歩行者側基布66にも、厚さ規制テザー58,59の上側部分を形成するテザー用基布74,75を縫合しておき、歩行者側基布66と車体側基布68との外周縁66a,68a相互の縫合時、ガス流入口46,46間の厚さ規制テザー61を形成するテザー用基布77を、歩行者側基布66と車体側基布68とに縫合するとともに、厚さ規制テザー58,59を形成する上下二分割されたテザー用基布74,74相互とテザー用基布75,75相互とを縫合して、外周縁66a,68a相互を縫合すれば、エアバッグ30を形成することができる。
【0050】
このように形成したエアバッグ30は、折り畳んで、ケース側膨張部31の挿入口部36からインフレーター20を挿入して、ボルト24を貫通孔37から突出させ、ついで、ケース10に収納し、エアバッグカバー18を取り付けて、ボルト24を利用して、車両Vの取付部2に取り付け、インフレーター20から延びる作動用の信号線を、所定の作動回路に接続すれば、エアバッグ装置MLを車両Vに搭載することができる。
【0051】
その後、インフレーター20に作動信号が入力されれば、ガス吐出部21から膨張用ガスGが吐出されて、折り畳まれたエアバッグ30が、展開膨張し、エアバッグカバー18を押し開いて、ケース10の開口12aから上方へ突出する。そして、ケース10内に収納されたケース側膨張部31の上端31a側に配設される本体膨張部40は、ケース側膨張部31との連結部位44に開口されたガス流入口46から膨張用ガスGを流入させ、そして、整流布56によって、前後両側に膨張用ガスGを流して、展開膨張する。その際、膨張用ガスGは、上流側部位のケース側膨張部31から、本体膨張部40の車体側壁部42に上下方向に開口したガス流入口46を経て、上向きに本体膨張部40に流入し、ガス流入口46の上方を覆っている整流布56と干渉して、前後両側の前膨張部52と後膨張部54とに流れる(図4,5参照)。そして、フロントピラー5Lを覆うこととなる後膨張部54へ流れる膨張用ガスGは、ガス流入口46を上向きに流れた後、ガス流入口46の上方を覆っていた整流布56と直交するように干渉して、反転させられるように流れを変えられて、車体側壁部42に沿って後方側に流れ、すなわち、車体側部材であるフロントウインドシールド4やフロントピラー5Lの上面4b,5aに接することとなる車体側壁部42に沿って、後方に流れることから、展開膨張するエアバッグ30の本体膨張部40は、フロントウインドシールド4やフロントピラー5Lの上面4b,5aに沿って展開膨張することとなる。
【0052】
したがって、実施形態の歩行者用エアバッグ装置MLでは、開口12aを上向きとしたケース10から突出するエアバッグ30の本体膨張部40を、円滑に、フロントピラー5Lの上面5aに沿って展開膨張させることができる。そして、ケース10から展開膨張するエアバッグ30の本体膨張部40が、フロントピラー5Lの上面5aに沿って展開膨張すれば、膨張完了後のエアバッグ30の本体膨張部40が、揺動することなく、迅速かつ安定して、フロントピラー5Lの上面5aを覆うことができて、その後に進入してくる歩行者を、好適に、フロントピラー5Lから保護できることとなる。
【0053】
また、実施形態の歩行者用エアバッグ装置MLでは、整流布56が、左右両縁(端部)56a,56aを、ガス流入口46を間にした左右両縁側の結合部49,49に結合させた略長方形形状の可撓性を有した整流布用シート材(整流布用基布)72から形成されるとともに、整流布用シート材(整流布用基布)72の左右方向の長さ寸法W1を、本体膨張部40の膨張完了時に歩行者側壁部41に接しない範囲内で、平らに展開させたガス流入口46の左右両縁側における整流布用基布72の結合部49,49間の長さ寸法W0より長く、設定されて、構成されている。
【0054】
そのため、実施形態では、略長方形形状の整流布用基布72の左右両縁を、ガス流入口46の左右両縁側に、結合させるだけで、整流布56を車体側壁部42に配設させることができる。そして、整流布56は、ガス流入口46から上向きに流入する膨張用ガスGを、円滑に、湾曲しつつ受け止めて、前後両側に分岐させて、前膨張部52と後膨張部54とに流すことができる。
【0055】
そして、実施形態では、整流布用シート材としての整流布用基布72が、前後方向の長さ寸法L1を、ガス流入口46の前後方向の開口幅寸法L0と同等以上の寸法に設定されている。
【0056】
そのため、実施形態では、エアバッグ30の膨張完了後に、本体膨張部40が、歩行者を受け止めて、内圧を高めた際、整流布56が、前後方向の幅寸法L1をガス流入口46の前後方向の開口幅寸法L0以上に、形成されていることから、ガス流入口46を閉塞することが可能となる。すなわち、膨張完了後のエアバッグ30が、歩行者を受止めた際、本体膨張部40内の膨張用ガスGを、ケース側膨張部31に流して、本体膨張部40の内圧を低下させることを、抑制することができることとなって、本体膨張部40が、クッション性よく、歩行者を受け止めて保護できる。
【0057】
また、実施形態では、エアバッグ30のガス流入口46が、本体膨張部40の左右方向に沿って複数(実施形態では2個)並設されるとともに、各々のガス流入口46に対応して、整流布56が配設されている。
【0058】
そのため、実施形態では、複数(2個)のガス流入口46,46が、本体膨張部40の左右方向の幅方向に並設されていることから、本体膨張部40の後膨張部54の膨張時、左右方向の両縁54c,54d(図7参照)側も、円滑に、フロントピラー5Lの上面5aに沿って、展開膨張でき、本体膨張部40が、左右方向に幅広く均等に、展開膨張できることとなって、ウインドシールド4やフロントピラー5Lの上面4b,5aからの部分的な浮き上がりも抑制可能となる。また、ケース10内に収納されているケース側膨張部31内では、左右方向に沿った複数(2個)のガス流入口46,46から分散して、膨張用ガスGが本体膨張部40側へ流出することとなって、ガス流入口が1つの場合に比べて、ガス流入口46の周縁に作用する膨張用ガスGのケースに対する押圧力を、分散できることとなって、エアバッグ装置MLの作動時におけるケース10の変形を抑制して、ケース10における周囲の車体側部材との干渉を防止できる。
【0059】
さらに、実施形態では、隣接するガス流入口46,46の間に、歩行者側壁部41と車体側壁部42との離隔距離を規制する厚さ規制テザー61が、配設されている。
【0060】
そのため、実施形態では、エアバッグ30の膨張完了時の本体膨張部40におけるガス流入口46付近の厚さ寸法を規制できることから、ケース10の配設される上方にフードパネル8の後端8a付近が接近して配設されても、フードパネル8との過干渉を防止して、エアバッグ30を円滑に膨張させることができる。
【0061】
さらに、実施形態の歩行者用エアバッグ装置MLでは、エアバッグ30の膨張時、本体膨張部40の連結部位44の後方側部位(連結部)42bとケース側膨張部31の後側壁部33とを連結する牽引ストラップ63(L,R)により、後膨張部54の車体側壁部42が、ケース側膨張部31側に引っ張られて、上方への浮き上がりが規制される。そのため、本体膨張部40の後膨張部54が、フロントウインドシールド4やフロントピラー5Lの上面4b,5aに沿って展開膨張し易くなる。そのため、実施形態の歩行者用エアバッグ装置MLでは、開口12aを上向きとしたケース10から突出するエアバッグ30を、一層、円滑に、フロントピラー5Lの上面5aに沿って展開膨張させることができる。
【0062】
また、実施形態では、エアバッグ30の下面30a側に、本体膨張部40における連結部位44の前方側部位(連結部)42aとケース側膨張部31の前側壁部32とを連結して、前膨張部52の浮き上がりを規制可能な牽引ストラップ64(L,R)も、配設されている。
【0063】
そのため、実施形態では、本体膨張部40の前膨張部52も、牽引ストラップ64(L,R)により、上方への浮き上がりを抑制されることから、本体膨張部40の車体側壁部42の全域が、安定して、車体側部材のカウルパネル6aやウインドシールド4に沿って展開膨張することができる。
【0064】
さらに、実施形態では、エアバッグ30の膨張完了形状として、ケース側膨張部31が、本体膨張部40から略直交方向に突出する形状としている。
【0065】
そのため、実施形態では、開口12aを真上に向かせているケース10内に、ケース側膨張部31が収納される構成として、エアバッグ30の膨張時、エアバッグ30が、ケース10の開口12aから真上に突出する構成としていても、フロントピラー5Lの上面5aを覆う本体膨張部40が、牽引ストラップ63,63による車体側壁部42のケース10側への牽引により、ケース10の開口12aの向きと略直交方向に展開膨張して、円滑に、フロントピラー5Lの上面5aを覆うことができる。
【0066】
さらにまた、実施形態では、牽引ストラップ63が、エアバッグ30の膨張完了時、ケース10の開口12aの周縁14aに当接し、屈曲部63eを設けて、屈曲されるように、配設されている。
【0067】
そのため、実施形態では、エアバッグ30の膨張時、牽引ストラップ63が、ケース10の開口12aの周縁14aに当接して屈曲すれば、実質的な長さ寸法S1を短くすることとなって、一層、引張力を向上させて、後膨張部54の車体側壁部42の浮き上がりを規制できることとなる。
【0068】
なお、実施形態では、前方側の牽引ストラップ64も、ケース10の上縁13aに当接して、屈曲部64eが形成されていることから、前膨張部52に対して、同様の作用を奏している。
【0069】
さらに、実施形態では、牽引ストラップ63が、幅方向を左右方向に延ばした帯状として、開口12aの少なくとも後縁14aの左右方向の両縁14b,14c近傍に、左右方向の縁63c,63d側を配置させるように、複数(2枚)、配設されている。
【0070】
そのため、実施形態では、ケース10の開口12aの左右方向に延びた周縁14aの略全域に相当する幅寸法で、後膨張部54の車体側壁部42が、ケース側膨張部31に牽引される状態となって、効率的に、後膨張部54の浮き上がりを規制することができる。
【0071】
なお、実施形態では、前方側の牽引ストラップ64も左右に並設されており、同様に、前膨張部52の浮き上がりを規制できる。
【0072】
ちなみに、実施形態では、2枚の牽引ストラップ63(L,R)を、ケース10の後縁14a側の左右方向の左縁14b付近と右縁14c付近とに配置させた場合を示したが、1枚の幅広の牽引ストラップとして、ケース10の後縁14a側の左右方向の左縁14b付近から右縁14c付近まで、配置させてもよい。但し、実施形態のように、左右2枚の牽引ストラップ63(L,R)の使用として、ケース10の後縁14a側の左右方向の左縁14bから右縁14cまで間の中央付近に、牽引ストラップを配設させない構成としても、一枚構成の場合と略同様の作用・効果を確保でき、かつ、牽引ストラップの使用材料を低減できて、好ましい。前側の牽引ストラップ64(L,R)も同様な作用・効果を奏している。
【0073】
また、実施形態では、左右のフロントピラー5L,5Rの片側だけを覆うエアバッグ装置ML,MRを例示したが、1つのエアバッグにより、左右のフロントピラー5L,5Rの上面5aを覆えるように、エアバッグやケース等を構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
5L…フロントピラー、5a…上面、8…フードパネル、8a…後端、10…ケース、11…底壁部、12…周壁部、12a…(エアバッグ突出用)開口、30…エアバッグ、31…ケース側膨張部、31a…上端、40…本体膨張部、41…歩行者側壁部、42…車体側壁部、44…連結部位、46…ガス流入口、49…(整流布用)結合部、52…前膨張部、54…後膨張部、56…整流布、56a…端部、56b…中間部、61…厚さ規制テザー、72…(整流布用シート材)整流布用基布、
W0…(ガス流入口の左右方向の)長さ寸法、W1…(整流布の左右方向の端部間)長さ寸法、L0…(ガス流入口の前後方向の)長さ寸法、L1…(整流布の前後方向の)長さ寸法、ER…エンジンルーム、G…膨張用ガス、V…車両、
ML…歩行者用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11
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図13