(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】自転車用車輪構成部品、自転車、および自転車管理システム
(51)【国際特許分類】
B62J 45/40 20200101AFI20240920BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20240920BHJP
B60B 27/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62J45/40
B62M6/45
B60B27/02 C
(21)【出願番号】P 2019233665
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093849(JP,A)
【文献】特開平11-059557(JP,A)
【文献】特開2016-222083(JP,A)
【文献】特開2009-184437(JP,A)
【文献】特開2011-168241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234108(US,A1)
【文献】国際公開第2018/107978(WO,A1)
【文献】特開2003-34279(JP,A)
【文献】特開2013-46538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/40
B62M 6/45
B60B 27/00 ー 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用車輪を構成するハブであって、
自転車のフレームに固定される車軸と、
車輪にかかる荷重を検知するためのセンサと、
前記車軸を支持する軸受けと、
前記軸受けを介して前記車軸に取り付けられるハブシェルと、
を備え、
前記センサは、前記車軸の中央部に形成された凹部に装着され、
前記凹部は、前記センサが前記車軸の外周面より径方向外側に突出しない深さに形成されて
おり、
前記軸受けは、前記車軸に固定されるコーンと、前記ハブシェルに固定されるカップと、前記コーンと前記カップの間で回転する玉とを含み、前記コーンには、前記センサに接続されるリード線を通す貫通孔が形成されている、自転車用ハブ。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車用ハブであって、
前記凹部は前記車軸の軸方向に溝状に形成され、前記凹部に沿って前
記リード線が配策されている、自転車用ハブ。
【請求項3】
請求項1
または2のいずれか1項に記載のハブを備えた自転車であって、
前記センサの検知情報に基づいて、自転車の動作を制御するように構成された制御装置を備える、自転車。
【請求項4】
請求項
3に記載の自転車であって、
前記自転車は、ペダルの踏力による人力駆動力に前記踏力の大きさに応じてモータから出力される第1補助動力を加えて走行する第1モードと、前記モータから第2補助動力を出力して押し歩く、または前記第2補助動力を出力して自走させる第2モードとを実行可能な電動アシスト機能を備え、
前記制御装置は、前記センサの検知情報に基づいてユーザーの乗車の有無を判定し、非乗車状態と判断した場合に、前記第2補助動力の出力を許可するか、または乗車状態と判断した場合に、前記第2補助動力の出力を禁止するように構成された、自転車。
【請求項5】
請求項
4に記載の自転車であって、
前記制御装置は、非乗車状態における前記センサの検出値(Db)を記憶するメモリを有し、前記センサの検出値と非乗車時の検出値(Db)との差(ΔD)を算出すると共に、当該検出値の差(ΔD)と所定の閾値とを比較して、ユーザーの乗車の有無を判定するように構成された、自転車。
【請求項6】
請求項
4または
5に記載の自転車であって、
前記制御装置は、前記センサの検知情報に基づいて、前記第1補助動力および前記第2補助動力の少なくとも一方を決定または変更するように構成された、自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自転車用車輪構成部品、および当該車輪構成部品を備えた自転車(特に、電動アシスト自転車)、並びに自転車管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自転車の車輪は、金属製のホイールと、ホイールに装着されたゴム製のタイヤとで構成される。ホイールは、リム、スポーク、ハブ等を有する。リムはホイールの外周部を形成するリング状の部品であり、スポークはリムとハブを繋ぐ細い棒状の部品である。ハブは、車輪の中心に配置される部品であって、フレームに固定される車軸、および車軸を支持する軸受けを含む。また、前照灯などに供給される電力を発電するためのダイナモが内蔵されたハブダイナモも広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車輪は、自転車の性能に大きく影響する重要な構成要素であって、ハブ等の車輪の構成部品もまた重要な機能を有する。近年の自転車の高性能化、多機能化に伴い、車輪の構成部品についても更なる改良が求められている。
【0005】
本開示の目的は、自転車の高性能化、多機能化等に寄与する自転車用車輪構成部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る自転車用車輪構成部品は、自転車用車輪を構成する部品であって、車輪にかかる荷重を検知するためのセンサを備える。
【0007】
本開示に係る自転車は、上記車輪構成部品を備えた自転車であって、センサの検知情報に基づいて、自転車の動作を制御するように構成された制御装置を備える。
【0008】
本開示に係る自転車管理システムは、上記車輪構成部品を備えた自転車を管理するためのシステムであって、センサの検知情報を取得してデータを蓄積し、当該データに基づいて自転車の状態を推定するように構成された監視装置と、監視装置による推定結果に関連する情報を表示するための表示装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る自転車用車輪構成部品によれば、自転車の高性能化、多機能化等を図ることが可能である。例えば、センサの検知情報に基づいてユーザーの乗車の有無を判定でき、電動アシスト自転車の押し歩きモード(押し歩きをアシストするモード)へのスムーズな移行を実現できる。また、センサの検知情報を用いて自転車の状態を推定でき、メンテナンス時期、部品の交換時期等をユーザーに知らせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例である電動アシスト自転車の外観を示す図である。
【
図3】実施形態の他の一例であるハブの断面図である。
【
図4】電動アシスト自転車の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す電動アシスト自転車において、制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】電動アシスト自転車の構成の他の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図6に示す電動アシスト自転車において、制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の一例である自転車管理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る自転車用車輪構成部品、および当該車輪構成部品が搭載された電動アシスト自転車、並びに当該電動アシスト自転車を管理する自転車管理システムの実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本開示は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0012】
図1は、本開示に係る車輪構成部品の実施形態の一例であるハブ34、およびハブ34が搭載された電動アシスト自転車1の外観を示す図である。なお、本開示の電動アシスト自転車は、
図1に例示するようなシティーサイクルに限定されず、例えば、スポーツサイクル、折り畳み式の自転車等であってもよい。また、本開示の車輪構成部品が適用される自転車は、電動アシスト機能を有さない自転車であってもよい。
【0013】
図1に例示するように、電動アシスト自転車1は、バッテリ10と、バッテリ10から供給される電力で駆動するモータ12(後述の
図4参照)を含むモータユニット11とを備える。また、電動アシスト自転車1は、一般的な自転車と同様に、フレーム2、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5、クランク6、ペダル7、チェーン8、および前照灯9を備える。電動アシスト自転車1は、ユーザーがペダル7を踏む力(踏力)をモータ12によりアシストする自転車である。本実施形態では、ペダル7の踏力およびモータの出力が、チェーン8を介して後輪3bに伝達される。
【0014】
フレーム2は、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5、クランク6等を連結する骨組みである。バッテリ10およびモータユニット11は、フレーム2によって支持される。フレーム2は、複数のパイプで構成される。本実施形態では、複数のパイプとして、ヘッドパイプ2a、フロントフォーク2b、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2f、およびボトムブラケット(図示せず)が設けられている。ボトムブラケットは、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、およびチェーンステー2eを繋ぐパイプである。
【0015】
ヘッドパイプ2aは、フロントフォーク2bおよびハンドル4を、当該パイプの中心軸の回りに回転可能な状態で支持する。フロントフォーク2bは、前輪3aを回転可能に支持する一対のレッグと、レッグの上端部から上方に延びてヘッドパイプ2aの筒内に挿し込まれるステアリングコラムとを有する。そして、ステアリングコラムの上端部に、ハンドル4が取り付けられている。
【0016】
ダウンパイプ2cは、ヘッドパイプ2aとボトムブラケットを繋ぐパイプである。ダウンパイプ2cは、電動アシスト自転車1の前方に近づくほど上方に位置するように傾斜している。また、シートパイプ2dは、サドル5を保持するパイプであって、上端が下端よりも電動アシスト自転車1の後方に位置するように上下方向に対して傾斜している。本実施形態では、バッテリ10がシートパイプ2dに取り付けられ、モータユニット11がボトムブラケットに取り付けられている。
【0017】
チェーンステー2eは、シートステー2fとボトムブラケットを繋ぐパイプであって、ボトムブラケットの後方端部から自転車の後方に延び、後輪3bを両側から挟むように左右に1本ずつ設けられている。また、シートステー2fは、チェーンステー2eと同様に、後輪3bを両側から挟むように左右に1本ずつ設けられている。左右のシートステー2fは、シートパイプ2dの上部から後輪3bの径方向中央部まで延び、当該中央部で左右のチェーンステー2eと一対一で連結されている。チェーンステー2eの後方端部には、後輪3bが回転可能に固定されている。
【0018】
また、電動アシスト自転車1は、クランク6の回転に伴って回転する駆動スプロケットと、後輪3bに設けられた後輪スプロケットとを備え(いずれも図示せず)、駆動スプロケットと後輪スプロケットがチェーン8を介して連結されている。なお、クランク6およびその一端部に取り付けられたペダル7は、電動アシスト自転車1の左右に1つずつ設けられ、一対のクランク6の他端部同士は、図示しない入力軸で連結されている。本実施形態では、モータ12の回転力が、減速歯車等を介して駆動スプロケットに伝達され、チェーン8を介して後輪3bに伝達される。
【0019】
モータユニット11は、ペダル7の踏力をアシストする駆動ユニットであって、バッテリ10から供給される電力で駆動する。モータユニット11は、例えば、上記入力軸に作用するトルク、車速等に基づいて、モータ12を駆動させ、その出力を制御する。また、モータユニット11は、一般的に、ユーザーにより選択される走行モード(パワー/オート/エコモード等)を考慮してモータ12を駆動させる。なお、入力軸に作用するトルクおよび車速は、従来公知のセンサを用いて計測される。モータ12の出力は、制御装置20(後述の
図4参照)によって制御される。
【0020】
以下、車輪(前輪3aおよび後輪3b)の構成について詳説する。前輪3aは、一般的に、金属製のホイール30aと、ゴム製のタイヤ31aで構成される。ホイール30aは、リム32、スポーク33、およびハブ34を含む。後輪3bは、前輪3aと同様に、ホイール30bおよびタイヤ31bで構成されるが、後輪3bのハブにはスプロケットが取り付けられている点で、前輪3aと異なる。なお、ハブには、内装変速機や後述のダイナモ、ドラムブレーキ等が内蔵されていてもよく、スプロケット、ブレーキディスク、車速センサ15(後述の
図4参照)等が取り付けられていてもよい。以下、前輪3aを例に挙げて、車輪の構成を説明する。
【0021】
ホイール30aを構成するリム32は、タイヤ31aが装着されるリング状の部品である。リム32には、スポーク33が挿し込まれる複数の孔が形成されている。スポーク33は、リム32とハブ34を繋ぐ細い棒状の部品であって、一端がニップルを用いてリム32に固定され、他端がハブ34のフランジ43(後述の
図2参照)に固定される。ニップルは、スポーク33をリム32に固定するためのナットである。
【0022】
図2は、ハブ34の断面図である。
図2に例示するように、ハブ34は、フロントフォーク2bに固定される車軸35と、車軸35を支持する軸受け36と、軸受け36を介して車軸35に取り付けられる略円筒状のハブシェル37とを有する。車軸35の少なくとも軸方向両端部には、ネジが形成されている。車軸35は、軸方向両端部がフロントフォーク2bの下端に形成された貫通孔に挿通され、当該両端部に締結されるナット38によってフロントフォーク2bに固定される。ゆえに、車軸35は、フロントフォーク2bに対して回転しない。
【0023】
軸受け36としては、例えば、玉40、コーン41、およびハブシェル37に設けられるカップ42を含み、コーン41とカップ42の間で玉40が回転するカップアンドコーン軸受けが用いられる。コーン41は、玉40をカップ42に押し付ける玉押しであって、車軸35にねじ込まれてロックリング39で固定される。ロックリング39は、フロントフォーク2bよりも内側において、車軸35のネジが形成された部分に締結される。
【0024】
ハブシェル37は、軸受け36を介して車軸35に取り付けられ、車軸35に対して回転可能である。なお、ハブシェル37の内径は車軸35の直径より大きく、車軸35とハブシェル37の間には所定の隙間が存在する。ハブシェル37の軸方向両端部には、径方向外側に張り出したフランジ43が形成されている。フランジ43には、周方向に沿って複数の貫通孔44が形成され、スポーク33(
図1参照)の一端が固定される。
【0025】
前輪3aの構成部品であるハブ34は、前輪3aにかかる荷重を検知するためのセンサ50を備える。
図2に示す例では、ハブ34の車軸35にセンサ50が装着されている。車軸35はフロントフォーク2bに連結されているため、ユーザーが自転車に乗車すると、その体重がフロントフォーク2bを介して車軸35に伝達される。そして、ユーザーの体重は、車軸35から軸受け36およびハブシェル37を介して、スポーク33、リム32、タイヤ31a等に作用する。このため、車軸35にかかる荷重から、他の構成部品にかかる荷重を解析することが可能である。
【0026】
センサ50は、車軸35に装着可能で、車軸35にかかる荷重を検知できる装置であれば、その構造等は特に限定されない。センサ50の一例としては、歪みセンサ、磁歪式センサ、圧電素子等が挙げられる。歪みセンサは、対象物の歪みを電気抵抗の変化を利用して検知する歪みゲージを含むセンサであって、例えば、接着剤を用いて車軸35に貼着される。ユーザーが自転車に乗車すると、車軸35にユーザーの体重がかかって車軸35が歪むため、車軸35に貼着された歪みゲージが伸縮してゲージの電気抵抗値が変化し、その変化量から車軸35に作用する荷重を計測可能である。
【0027】
センサ50の検知情報は、センサ50に接続されるリード線51を介して制御装置20に送信される。
図2に示す例では、リード線51を通す貫通孔46がコーン41に形成され、リード線51は貫通孔46を通ってハブ34の外部に引き出される。詳しくは後述するが、制御装置20は、センサ50の検知情報に基づいて、電動アシスト自転車1の動作を制御するように構成されている。なお、センサ50の検知情報に基づいて、車軸35に作用する荷重だけでなく、車軸35を介してスポーク33、リム32等の前輪3aの各構成部品、或いはフレーム2に作用する荷重を解析することも可能である。
【0028】
車軸35は、センサ50を収容する凹部45を有することが好ましい。凹部45は、例えば、センサ50を凹部45の底部に設置した状態で、センサ50が車軸35の外周面より径方向外側に突出しない深さで形成される。車軸35とハブシェル37の間には隙間が存在するが、凹部45を設けることにより、センサ50とハブシェル37の接触をより確実に防止できる。凹部45は、車軸35の軸方向中央部から軸方向に沿って溝状に形成されてもよく、溝状の凹部45に沿ってリード線51が配策されていてもよい。車軸35は、一般的に軸方向中央部で歪みが大きくなるので、車軸35の軸方向中央部にセンサ50を装着することが好ましい。
【0029】
センサ50は、車軸35のようにフレーム2に対して相対回転しない部品、例えばハブ34のナット38、ロックリング39、軸受け36のコーン41等に装着されてもよい。車軸35に締結されるナット38等はユーザーの乗車によって歪むため、センサ50を取り付けることでナット38等に作用する荷重を検知できる。また、ユーザーの乗車により荷重がかかる部品であれば、スポーク33、リム32、ニップル、タイヤ31aのバルブなど、フレーム2に対して相対回転する部品にセンサ50を取り付けることも可能である。この場合、センサ50の検知情報は、無線通信により制御装置20に送信される。
【0030】
図3は、ハブダイナモ60の断面図である。自転車の車輪には、ハブ34の代わりに、ハブダイナモ60が設けられてもよい。ハブダイナモ60は、一般的に前輪に適用されるが、後輪に適用されてもよい。
図3に例示するように、ハブダイナモ60は、ステータユニット61およびロータユニット62を有する。ステータユニット61およびロータユニット62は、例えば、前照灯に供給する電力を発電するためのダイナモ(発電機)であって、車輪の回転により発電するように構成されている。
【0031】
ハブダイナモ60は、一般的にバッテリを有さない自転車に用いられるが、バッテリ10を有する電動アシスト自転車1に用いられてもよい。なお、ハブダイナモには、電動アシスト自転車1の走行および押し歩きをアシストするモータ、減速機構等が内蔵されていてもよい。走行および押し歩きをアシストするためのモータユニットは、前輪または後輪に取り付けられていてもよい。
【0032】
ハブダイナモ60は、一般的なハブ34と同様に、フレームに固定される車軸63と、車軸63を支持する軸受け64と、軸受け64を介して車軸63に取り付けられる略円筒状のハブシェル65とを有する。車軸63は、軸方向両端部がフレームの下端に形成された貫通孔に挿通され、当該両端部に締結されるナット66によってフレームに固定される。軸受け64には、例えば玉軸受けが用いられる。
【0033】
ハブシェル65は、軸方向一端が開口した略円筒状の部品である。ハブシェル65の軸方向一端部には円盤状のリッド67が固定され、これによりダイナモが収容されたハブシェル65の内部空間が閉じられる。ハブシェル65は、軸方向両端部に径方向外側に張り出した、スポークの一端が固定されるフランジ73を有する。
【0034】
ステータユニット61は、車軸63を囲むように配置されたコイル68を有する。コイル68に接続されたリード線69は、車軸63に形成された溝(図示せず)を通ってハブシェル65の外部に引き出され、前照灯などに接続される。ステータユニット61は、車軸63を通す貫通孔を有し、車軸63に締結されるナット70によって、車軸63の軸方向に移動しないように、また車軸63に対して回転しないように固定されている。
【0035】
ロータユニット62は、リング状のロータヨーク71と、ロータヨーク71の内周面に固定されたマグネット72とを有し、ロータヨーク71がハブシェル65に固定されている。ゆえに、ロータユニット62は、ハブシェル65と共に、車軸63に対して相対回転する。なお、マグネット72の内周面は、所定の角度間隔で異極(S極とN極)に着磁されている。車輪が回転すると、車軸63に固定されたステータユニット61と、ハブシェル65に固定されたロータユニット62の間に相対回転が生じ、これによりコイル68に交流電流が発生する。
【0036】
ハブダイナモ60は、ハブ34と同様に、車輪にかかる荷重を検知するためのセンサ55を備える。センサ55には、センサ50と同様に、歪みセンサ、磁歪式センサ、圧電素子等を用いることができる。
図3に示す例では、車軸63の軸方向中央部に形成された凹部75にセンサ55が収容され、車軸63にセンサ55が装着されているが、センサ55はフレーム2に対して相対回転しないステータユニット61、ナット66,70等に装着されてもよい。
【0037】
センサ55の検知信号は、例えば、リード線56を介して制御装置20に送信されるが、無線通信により制御装置20に送信することも可能である。この場合、ロータユニット62、ハブシェル65など、フレーム2に対して相対回転する部品にセンサ55を取り付けることも可能である。リード線56は、車軸63の軸方向に沿って溝状に形成された凹部75内に収容され、コイル68のリード線69と共にハブシェル65の外部に引き出されてもよい。
【0038】
図4は、電動アシスト自転車1の構成の一例を示すブロック図である。
図4に例示するように、電動アシスト自転車1は、センサ50が装着されたハブ34を含む前輪3aを備える。なお、電動アシスト自転車1には、センサ50が装着されたハブ34の代わりに、またはハブ34と共に、センサ55が装着されたハブダイナモ60が用いられてもよい。電動アシスト自転車1は、上記の通り、バッテリ10およびモータユニット11を備える。モータユニット11は、ペダル7の踏力をアシストする駆動ユニットであって、モータ12、駆動回路13、およびモータ12の出力を制御する制御装置20を含む。
【0039】
モータユニット11は、上記のように、一対のクランク6を連結する入力軸に作用するトルク(踏力)および車速に基づいて、モータ12の出力を制御する。また、モータユニット11は、入力軸の回転数を用いてモータ12の出力を制御してもよい。モータ12は、バッテリ10から供給される電力により駆動する電動機であればよいが、好適な一例は3相ブラシレスDCモータである。本実施形態では、制御装置20の制御信号に基づいて駆動回路13がスイッチング動作することでモータ12に供給される電流量が変化し、これによりモータ12の出力が制御される。
【0040】
電動アシスト自転車1は、例えば、上記入力軸(ペダル7)に作用する踏力負荷を検知するトルクセンサ14と、車輪の回転数から車速を検知する車速センサ15とを備える。また、電動アシスト自転車1は、入力軸(ペダル7)の回転数を検知する回転センサ16を備えていてもよい。これらのセンサの検知情報は、制御装置20に送信され、モータ12の出力制御に使用される。
【0041】
電動アシスト自転車1は、ペダル7の踏力による人力駆動力に踏力の大きさに応じてモータ12から出力される第1補助動力を加えて走行する第1モードと、モータ12から第2補助動力を出力して押し歩く、または第2補助動力を出力して自走させる第2モードとを実行可能な電動アシスト機能を備える。かかる電動アシスト機能はいずれも、制御装置20の制御により実行される。
【0042】
電動アシスト自転車1は、電動アシスト機能を作動させるための電源スイッチ17を備える。制御装置20は、電源スイッチ17の操作信号を取得した場合に、ペダル7の踏力をアシストする第1モードを実行する。電源スイッチ17は、例えば、1度押下するとONとなり、再度押下するとOFFになるスイッチである。また、電動アシスト自転車1は、第2モードを実行するための第2モードスイッチ18を備える。第2モードスイッチ18は、例えば、押下している間のみONとなるスイッチであって、第2モードは第2モードスイッチ18の押下時のみに実行される。
【0043】
電動アシスト自転車1には、電源スイッチ17、第2モードスイッチ18等を含むスイッチユニット(図示せず)が設けられていてもよい。スイッチユニットは、一般的に、ハンドル4に設けられる。スイッチユニットには、電源スイッチ17、第2モードスイッチ18の他に、前照灯9を点灯させるスイッチ、走行モード、アシスト力等を変更するためのスイッチ、またバッテリ残量等を表示するための表示部などが搭載されていてもよい。
【0044】
上記第2モードは、「押し歩きモード」および「自走モード」を含む。押し歩きモードは、電動アシスト自転車1をユーザーが押して歩くときに、モータ12から補助動力を出力して押し歩きをアシストするモードである。押し歩きモードは、ユーザーが自転車に乗車していない状態で、第2モードスイッチ18の押下時に実行される。他方、自走モードは、電動アシスト自転車1を人が支えた状態で、モータ12から補助動力を出力して自転車を自走させるモードである。すなわち、自走モードは、ユーザーが自転車を前方に押す力を加えていない点で、押し歩きモードと異なる。
【0045】
なお、ハンドル4のグリップ等に設けられたセンサで前方に加わる力を検出し、その大きさによって、押し歩きモードと自走モードとを判別してもよい。或いは、押し歩きモードと自走モードとを判別することなく、第2モードとしてモータ12から補助動力を出力してもよい。いずれの場合も、制御装置20は、ユーザーが電動アシスト自転車1に乗車していない状態において、第2モードの実行を許可する。
【0046】
制御装置20は、第1モードを実行する第1モード実行処理部23と、第2モードを実行する第2モード実行処理部24とを含む。また、制御装置20は、前輪3aの構成部品であるハブ34に装着されたセンサ50の検知情報に基づいて、電動アシスト自転車1の動作を制御するように構成されている。制御装置20は、センサ50の検知情報を用いた制御手段として、乗車判定処理部25と、補助動力変更処理部26とを含む。
【0047】
制御装置20は、プロセッサ21、メモリ22、および入出力インターフェイス等を備えるマイコンで構成される。プロセッサ21は、例えばCPUまたはGPUで構成され、電動アシスト自転車1の制御プログラムを読み出して実行することにより上記各処理部の機能を実現する。メモリ22は、上記制御プログラム、センサ50の検知情報等を記憶する、ROM、HDD、SSD等の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを含む。
【0048】
第1モード実行処理部23は、例えば、電源スイッチ17がONである場合に、トルクセンサ14、車速センサ15、および回転センサ16から検出値を取得し、当該各検出値に基づいてペダル7の踏力をアシストする第1補助動力を出力させる。第1モード実行処理部23は、ペダル7にかかる踏力負荷、自転車の車速、ペダル7の回転数等に基づき、駆動回路13を介してモータ12の出力を制御し、第1補助動力を調整する。
【0049】
第2モード実行処理部24は、第2モードスイッチ18がONである場合に、モータ12を駆動させて押し歩きをアシストする第2補助動力を出力させる。第2モード実行処理部24は、例えば、車速が予め定められた所定の上限値を超えないように、駆動回路13を介してモータ12の出力を制御し、第2補助動力を調整する。また、第2モード実行処理部24は、ユーザーが自転車に乗車していない状態にのみ、第2モードを実行する。ユーザーの乗車判定は、サドル5の着座センサ等を用いる方法、サドル5やペダル7を乗車できない状態にできる自転車において、その状態を検知する方法など、従来公知の方法でも実行可能であるが、本実施形態では、センサ50の検知情報に基づいて実行される。
【0050】
制御装置20は、前輪3aに装着されたセンサ50の検知情報に基づいて、ユーザーの乗車の有無を判定するように構成されている。また、制御装置20は、非乗車状態と判断した場合に、第2補助動力の出力を許可するか、または乗車状態と判断した場合に、第2補助動力の出力を禁止するように構成されている。センサ50の検出値を用いることで、ユーザーの乗車の有無を容易に判定でき、ユーザーがサドル5を上げる、ペダル7を畳むといった特別な操作をすることなく、第2モードにスムーズに移行できる。
【0051】
本実施形態では、乗車判定処理部25の機能により、センサ50の検知情報に基づいてユーザーの乗車判定が実行される。そして、乗車判定処理部25は、例えば、非乗車状態と判断した場合に、第2補助動力の出力を許可する許可指令を生成するか、または乗車状態と判断した場合に、第2補助動力の出力を禁止する禁止指令を生成する。なお、許可指令および禁止指令の両方を出力してもよい。第2モード実行処理部24は、許可指令が出力されたことを条件として第2モードを実行する。或いは、禁止指令が出力されていないことを条件として第2モードを実行する。乗車判定処理部25は、非乗車状態と判断した場合に、第1補助動力の出力を禁止してもよい。この機能は、第2補助動力の出力機能を有さない電動アシスト自転車にも適用できる。
【0052】
乗車判定処理部25は、例えば、センサ50の検出値を取得し、当該検出値と所定の閾値とを比較して、ユーザーの乗車判定を行う。乗車判定処理部25は、センサ50の検出値が閾値を超える場合に乗車状態と判定してもよく、センサ50の検出値が閾値以下である場合に非乗車状態と判定してもよい。そして、乗車判定処理部25は、判定結果に基づいて許可指令および禁止指令の少なくとも一方を出力する。閾値は、例えば実験、シミュレーション等により予め求められ、メモリ22に記憶されている。
【0053】
メモリ22には、非乗車時におけるセンサ50の検出値(Db)と、所定の閾値(T)とが記憶されていてもよい。閾値(T)は、例えば、ユーザーの乗車時におけるセンサ50の検出値(Da)を考慮し、検出値(Da)と(Db)との差(ΔD=Da-Db)から決定される。この場合、乗車判定処理部25は、センサ50の検出値を取得し、当該検出値から非乗車時における検出値(Db)を引いた値と、閾値(T)とを比較して、ユーザーの乗車判定を行う。
【0054】
閾値(T)を決定する際の検出値(Da)は、想定ユーザーの最低体重(例えば、40kg)に基づいて実験等により決定されてもよい。或いは、販売店等において、実際にユーザーが乗車して検出値(Da)を取得することにより、閾値(T)が設定されてもよく、または予め設定された初期の閾値(T)が変更されてもよい。すなわち、閾値(T)は、ユーザーにより設定またはカスタマイズが可能であってもよい。
【0055】
制御装置20は、自転車の走行時において、センサ50が特定の荷重を検出し続けている場合、当該特定の荷重をユーザーの体重として記憶するように構成されていてもよい。制御装置20は、例えばセンサ50により、メモリ22に記憶された体重と同等の荷重減少が検知された場合に非乗車状態と判断し、メモリ22に記憶された体重と同等の荷重増加が検知された場合に乗車状態と判断する。制御装置20は、メモリ22に記憶された体重を特定距離毎または特定時間毎に更新してもよい。また、複数のユーザーの体重を記憶するように構成されていてもよい。制御装置20は、例えば、所定の入力装置からユーザーの変更登録がなされた場合に自動で体重を記憶してもよく、トルクセンサ14や車速センサ16の数値から、ユーザーを識別し、ユーザー毎に体重を検知して記憶してもよい。
【0056】
制御装置20は、センサ50の検知情報に基づいて、第1補助動力および第2補助動力の少なくとも一方を決定または変更するように構成されていてもよい。本実施形態では、補助動力変更処理部26の機能により、第1補助動力および第2補助動力の少なくとも一方を変更する制御指令が出力される。例えば、ユーザーの体重が重い場合や、積み荷の重量が重い場合は、センサ50により検知される荷重が大きくなる。このとき、センサ50の検出値に応じて補助動力を増加させることにより、より適切な走行アシスト、押し歩きアシストを実現できる。
【0057】
補助動力変更処理部26は、例えば、センサ50の検出値と所定の閾値とを比較して、第1補助動力および第2補助動力の少なくとも一方を変更する。補助動力変更処理部26は、センサ50の検出値が閾値を超える場合に補助動力を増加させてもよく、センサ50の検出値が閾値以下である場合に補助動力を減少させてもよい。補助動力変更処理部26は、補助動力を変更するための変更指令を出力し、第1モード実行処理部23および第2モード実行処理部24の少なくとも一方が、当該変更指令に基づいて補助動力を増減する。
【0058】
制御装置20は、センサ50の検出値と、第1補助動力および第2補助動力の少なくとも一方とを予め対応付けた計算式、テーブル等を用いて、第1補助動力および第2補助動力の少なくとも一方を決定または変更してもよい。制御装置20は、例えばトルクセンサ14、車速センサ15、回転センサ16等の検出値に加え、更にセンサ50の検出値に基づいて、第1補助動力を決定してもよく、決定された第1補助動力を変更してもよい。
【0059】
図5は、
図4に例示する構成を備えた電動アシスト自転車1において、モータ12から第2補助動力を出力して押し歩く、または第2補助動力を出力して自走させる第2モードの制御手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、特に押し歩きモードを例に挙げて説明する。
【0060】
図5に例示するように、第2モードの実行に際して、まずユーザーの乗車判定を行う(S10,S11)。第2モードは、ユーザーが自転車に乗車していない非乗車時にのみ、ユーザーによる第2モードスイッチ18の操作に基づいて実行される。すなわち、S10,S11の乗車判定は、第2モード実行の前提条件を確認する手順である。本実施形態では、前輪3aの構成部品に装着されたセンサ50の検知情報を取得し、当該検知情報に基づいて乗車判定を行う。そして、非乗車状態と判断された場合に第2モードの実行が許可され(S12)、非乗車状態ではない(乗車状態)と判断された場合に第2モードの実行が禁止される(S13)。
【0061】
S10~S13は、乗車判定処理部25の機能により実行される。乗車判定処理部25は、上述のように、例えばセンサ50の検出値を取得し、当該検出値から予め記憶された非乗車時における検出値(Db)を引いた値と、所定の閾値(T)とを比較して、ユーザーの乗車判定を行う。この場合、例えばセンサ50の検出値と、非乗車時の検出値(Db)との差(ΔD)が閾値(T)以下であれば、非乗車状態と判定する(S11のYes)。そして、乗車判定処理部25は、この判定結果に基づいて許可指令を出力する(S12)。
【0062】
次に、ユーザーによる第2モードスイッチ18の操作に基づいて、モータ12から第2補助動力を出力させ、押し歩きをアシストする第2モードを実行する(S14,S15)。S14,S15は、第2モード実行処理部24の機能により実行される。第2モードスイッチ18は、例えば、押下されている間だけONとなり、操作信号が出力される。第2モード実行処理部24は、第2モードスイッチ18の操作信号を取得し、当該操作信号に基づいてモータ12を駆動させる。なお、第2補助動力は、センサ50の検知情報に基づいて決定または変更されてもよい。
【0063】
図6は、電動アシスト自転車1の構成の他の一例を示すブロック図である。
図6に例示する構成は、前輪3aの構成部品に装着されたセンサ50の検知情報を用いて、電動アシスト自転車1の動作を制御する点で、
図4に例示する構成と共通する。一方、
図6に例示する制御装置20xは、アシストモード実行処理部27、状態推定処理部28、および報知処理部29を含む点で、
図4に例示する制御装置20と異なる。以下では、上述の実施形態と共通する構成については、同じ符号を用いて重複する説明を省略する。
【0064】
アシストモード実行処理部27は、少なくともペダル7の踏力をアシストする上記第1モードを実行する。アシストモード実行処理部27は、第1モード実行処理部23と同様に、トルクセンサ14、車速センサ15、および回転センサ16から検出値を取得し、当該各検出値に基づいて第1補助動力を出力させる。なお、アシストモード実行処理部27は、押し歩きをアシストする上記第2モードを実行する機能を有していてもよい。
【0065】
制御装置20xは、センサ50の検知情報を記憶してデータを蓄積し、当該データに基づいて自転車の状態を推定するように構成されている。また、制御装置20xは、当該推定結果に関する情報を表示部19に表示させるように構成されている。
図6に示す例では、状態推定処理部28および報知処理部29によって当該機能が実行される。表示部19としては、推定結果に関連する情報を表示できる装置であればよく、例えばランプ、モニター等が挙げられる。表示部19の一例は、電源スイッチ17と共に、スイッチユニットに設けられる液晶モニターである。
【0066】
状態推定処理部28は、例えば、センサ50により検知されるハブ34に作用する荷重に関するデータを蓄積して、当該荷重の積算値を算出する。ハブ34に作用する荷重の積算値の一例は、荷重の大きさと荷重が作用する時間の積の和である。なお、状態推定処理部28は、所定値を超える荷重が作用した頻度を積算してもよい。状態推定処理部28は、例えば、ハブ34に作用する荷重の積算値と所定の閾値とを比較して、ハブ34の状態を推定する。閾値は、例えばハブ34の耐久試験等の実験、シミュレーションなどにより予め求められ、メモリ22に記憶されている。
【0067】
状態推定処理部28は、センサ50の検出値、またはハブ34に作用する荷重の積算値から、ハブ34以外の前輪3aの構成部品、或いは前輪3a以外の自転車の構成部品に作用する荷重を解析し、ハブ34以外の部品の状態を推定することも可能である。ハブ34等の部品に作用する荷重の積算値は、部品の劣化の程度、残存耐用年数等を示す指標となる。このため、状態推定処理部28による推定結果から、部品の交換時期、メンテナンス時期等を予測することが可能である。
【0068】
状態推定処理部28は、例えば、ハブ34等の部品に作用する荷重の積算値が閾値を超える場合、部品が交換すべき水準まで劣化していると推定する。また、状態推定処理部28は、複数の閾値を用いて、部品に作用する荷重の積算値から部品の劣化の程度を推定してもよい。
【0069】
報知処理部29は、状態推定処理部28の推定結果に関する情報を表示部19に表示させる。報知処理部29は、例えば、ハブ34等の部品が交換すべき水準まで劣化していると推定された場合に、部品の交換、メンテナンス等を促す警告表示を出力してもよい。また、状態推定処理部28により部品の劣化の程度が推定された場合、報知処理部29は、当該劣化の程度を示す表示を出力してもよい。報知処理部29の機能により、表示部19には、「前輪ハブ要交換」等の表示がなされる。
【0070】
図7は、
図6に例示する構成を備えた電動アシスト自転車1において、センサ50の検知情報に基づいて自転車の状態を推定する手順の一例を示すフローチャートである。
【0071】
図7に例示するように、センサ50の検知情報に基づいて自転車の状態を推定するためには、まずセンサ50の検知情報を取得してメモリ22に記憶し、データを蓄積する必要がある(S20,S21)。上述のように、センサ50の検出値から、ハブ34だけでなく、リム32、スポーク33、フレーム2など、ハブ34以外の部品に作用する荷重も解析可能である。そして、ハブ34等の部品に作用する荷重の積算値を算出し、耐久性試験等により予め定められた閾値と比較して、部品の状態を推定する(S22)。
【0072】
S20~S22は、状態推定処理部28の機能により実行される。状態推定処理部28は、例えば、ハブ34等の部品に作用する荷重の積算値が閾値を超える場合に、部品が交換すべき水準まで劣化していると推定する(S22のYes)。そして、この推定結果に基づき、部品の交換を促す警告表示を表示部19に出力する(S23)。この手順は、報知処理部29の機能により実行される。一方、S22において荷重の積算値が閾値以下である場合は、S20,S21の手順を継続し、ハブ34等の部品に作用する荷重に関するデータを蓄積する。
【0073】
図8は、実施形態の一例である自転車管理システム80の構成を示す図である。自転車管理システム80は、センサ50が装着された前輪3aを備える電動アシスト自転車1を管理するためのシステムである。自転車管理システム80は、複数の電動アシスト自転車1の状態を管理でき、例えば、シェアサイクルシステムに好適である。なお、自転車管理システム80の構成は、電動アシスト機能を有さない自転車にも適用できる。
【0074】
図8に例示するように、自転車管理システム80は、複数の電動アシスト自転車1のセンサ50の検知情報を取得してデータを蓄積し、当該データに基づいて電動アシスト自転車1の状態を推定するように構成された監視装置として、サーバ81を備える。また、自転車管理システム80は、サーバ81により推定された自転車の状態を表示するための表示装置を備える。
図8に示す例では、表示装置として各電動アシスト自転車1の表示部19を例示するが、表示装置は、シェアサイクルシステムのスタンドに設置されるモニターや、複数の自転車を集中管理する施設に設置されるモニター等であってもよい。
【0075】
サーバ81は、インターネット等の広域通信網を介して、複数の電動アシスト自転車1、或いはシェアサイクルシステムのスタンドと通信可能な装置である。サーバ81は、例えばプロセッサ、メモリ、入出力インターフェイス等を備えるコンピュータで構成され、クラウドサーバであってもよい。サーバ81は、検知情報取得処理部82、状態推定処理部83、および報知処理部84を含み、これらの機能により、電動アシスト自転車1に装着されたセンサ50の検知情報に基づいて自転車の状態を推定し、推定結果に関する情報を表示部19等の所定の表示装置に表示させる。
【0076】
検知情報取得処理部82は、複数の電動アシスト自転車1からセンサ50の検知情報をそれぞれ取得し、各自転車の識別情報と共に、検知情報を記憶してデータを蓄積する。検知情報取得処理部82は、複数の電動アシスト自転車1から無線通信により直接、或いはシェアサイクルシステムのスタンドのような、各自転車が電気的に接続される駐輪スタンドを介して、センサ50の検知情報を取得する。
【0077】
検知情報取得処理部82によるセンサ50の検知情報の取得は、1日に1回、1週間に1回など、所定期間毎に実行されてもよく、電動アシスト自転車1が駐輪スタンドに接続される度に実行されてもよい。電動アシスト自転車1にはメモリ22が搭載されているので、センサ50の検知情報は一旦メモリ22に記憶される。そして、検知情報取得処理部82は、メモリ22に記憶された検知情報をサーバ81のメモリに記憶して自転車毎にデータを蓄積する。
【0078】
状態推定処理部83は、
図6に例示する状態推定処理部28と同様に、ハブ34等の自転車の部品に作用する荷重を積算し、当該積算値と所定の閾値とを比較して、ハブ34等の部品の状態を推定する。状態推定処理部83は、電動アシスト自転車1の各々について、荷重の積算値を算出して閾値と比較する。状態推定処理部83は、例えば、ハブ34等の部品に作用する荷重の積算値が閾値を超える場合、部品が交換すべき水準まで劣化していると推定する。また、状態推定処理部83は、複数の閾値を用いて、部品に作用する荷重の積算値から部品の劣化の程度を推定してもよい。
【0079】
報知処理部84は、
図6に例示する報知処理部29と同様に、状態推定処理部83の推定結果に関する情報を表示部19等の所定の表示装置に表示させる。報知処理部84は、推定結果に関する情報を対応しる電動アシスト自転車1の表示部19に出力させる。報知処理部84は、例えば、ハブ34等の部品が交換すべき水準まで劣化していると推定された場合に、部品の交換、メンテナンス等を促す警告表示を出力する。
【0080】
以上のように、電動アシスト自転車1は、センサ50が装着された前輪3aを備えることにより、センサ50の検知情報を用いて、押し歩き等の第2モードに移行する際の乗車判定を簡便かつ正確に行うことができる。また、センサ50の検知情報を記憶してデータを蓄積することで、自転車の状態を推定することが可能となり、部品の交換時期、メンテナンス時期等を適切なタイミングでユーザーに知らせることができる。
【0081】
なお、上述の実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、センサ50は前輪および後輪の両方に装着されていてもよく、両輪のセンサ50を用いて上述の乗車判定、状態推定等の制御を実行してもよい。また、
図4に例示する制御装置20は、更に状態推定処理部28および報知処理部29の機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 電動アシスト自転車、2 フレーム、2a ヘッドパイプ、2b フロントフォーク、2c ダウンパイプ、2d シートパイプ、2e チェーンステー、2f シートステー、3a 前輪、3b 後輪、4 ハンドル、5 サドル、6 クランク、7 ペダル、8 チェーン、9 前照灯、10 バッテリ、11 モータユニット、12 モータ、13 駆動回路、14 トルクセンサ、15 車速センサ、16 回転センサ、17 電源スイッチ、18 第2モードスイッチ、19 表示部、20 制御装置、21 プロセッサ、22 メモリ、23 第1モード実行処理部、24 第2モード実行処理部、25 乗車判定処理部、26 補助動力変更処理部、27 アシストモード実行処理部、28,83 状態推定処理部、29,84 報知処理部、30a,30b ホイール、31a,31b タイヤ、32 リム、33 スポーク、34 ハブ、35,63 車軸、36,64 軸受け、37,65 ハブシェル、38,66,70 ナット、39 ロックリング、40 玉、41 コーン、42 カップ、43,73 フランジ、44 貫通孔、45,75 凹部、50,55 センサ、51,56,69 リード線、60 ハブダイナモ、61 ステータユニット、62 ロータユニット、67 リッド、68 コイル、71 ロータヨーク、72 マグネット、80 自転車管理システム、81 サーバ、82 検知情報取得処理部