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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】加熱送風装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 20/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A45D20/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021011865
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115324
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇人
(72)【発明者】
【氏名】松井 康訓
(72)【発明者】
【氏名】上林 真由香
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-075259(JP,A)
【文献】特開2010-035584(JP,A)
【文献】特開2009-072721(JP,A)
【文献】特開2008-023063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口および吐出口を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置され、前記吸入口から吸いこんだ空気を前記吐出口から吐出させる送風部と、
前記ハウジングの内部における前記送風部よりも下流側に配置される加熱部と、
前記ハウジングの内部に配置され、金属微粒子およびミストを生成する金属微粒子およびミスト生成部と、
前記ハウジングの内部に配置され、イオンを生成するイオン生成部と、
前記ハウジングの内部に配置され、放電を生じさせる電圧印加回路部と、を備え、
前記金属微粒子およびミスト生成部は、先端部に放電部を有する柱状の放電電極部と、前記放電電極部と対向する対向電極部と、を有し、
前記金属微粒子およびミスト生成部は、金属微粒子が生成される金属微粒子生成領域とミストが生成されるミスト生成領域とが重複する重複領域を有
前記対向電極部は、前記放電電極部の中心軸を囲むように配置される筒状の周辺電極部と、前記放電電極部の中心軸に向けて突出して前記放電電極部の中心軸を挟んで対向する一対の突出電極部と、を有する、
加熱送風装置。
【請求項2】
一対の前記突出電極部は、前記周辺電極部の内周縁部に形成されている、
請求項1に記載の加熱送風装置。
【請求項3】
前記周辺電極部と一対の前記突出電極部とが、前記放電電極部の中心軸方向に沿って配置されている、
請求項1に記載の加熱送風装置。
【請求項4】
前記放電電極部および前記対向電極部の内の少なくとも一方が、前記金属微粒子生成領域を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱送風装置。
【請求項5】
前記金属微粒子およびミスト生成部と前記イオン生成部とは、金属微粒子またはミストとイオンとを同時に発生させるために前記電圧印加回路部を共有する、
請求項1~のいずれか1項に記載の加熱送風装置。
【請求項6】
前記金属微粒子およびミスト生成部は、前記放電電極部を冷却する冷却部を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱送風装置として、送風部と、加熱部と、金属微粒子生成部と、金属微粒子吹出口と、ミスト生成部と、ミスト吹出口と、を備えるものが知られている(特許文献1参照)。この特許文献1では、加熱送風装置としてのヘアドライヤの幅方向に、金属微粒子吹出口、ミスト吹出口、金属微粒子吹出口の順に並ぶように配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-143283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の加熱送風装置(ヘアドライヤ)においては、ミストの離散を防止しているが、金属微粒子の空気中での失活(例えば、空気中での金属微粒子の酸化)は考慮されておらず、金属微粒子が失活するとミストの髪ケア効果を十分に高めることはできていない。また、従来技術では金属微粒子生成部とミスト生成部とは別箇所に配置されているため、ヘアドライヤ内部の送風により各々拡散し金属微粒子とミストとが接触する確率は低く金属微粒子およびミストを効率的に髪に届けることはできない。
【0005】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、金属微粒子が使用者の毛髪に到達する前に空気中で失活することを抑制することができ、金属微粒子およびミストによって髪ケア効果を高められる加熱送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係る加熱送風装置は、吸入口および吐出口を有するハウジングと、ハウジングの内部に配置され、吸入口から吸いこんだ空気を吐出口から吐出させる送風部と、ハウジングの内部における送風部よりも下流側に配置される加熱部と、を備える。加熱送風装置は、ハウジングの内部に配置され、金属微粒子およびミストを生成する金属微粒子およびミスト生成部と、ハウジングの内部に配置され、イオンを生成するイオン生成部と、ハウジングの内部に配置され、放電を生じさせる電圧印加回路部と、を備える。金属微粒子およびミスト生成部は、先端部に放電部を有する柱状の放電電極部と、放電電極部と対向する対向電極部と、を有する。金属微粒子およびミスト生成部は、金属微粒子が生成される金属微粒子生成領域とミストが生成されるミスト生成領域とが重複する重複領域を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、金属微粒子が使用者の毛髪に到達する前に空気中で失活することを抑制することができ、金属微粒子およびミストによって髪ケア効果を高められる加熱送風装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る加熱送風装置の側面図である。
図2】一実施形態に係る加熱送風装置の正面図である。
図3】一実施形態に係る加熱送風装置の断面図である。
図4】一実施形態に係る加熱送風装置の上部内部を示す平面図である。
図5】一実施形態に係る加熱送風装置の上部内部で金属微粒子およびミスト生成部が設けられる部分を拡大して示す平面図である。
図6】金属微粒子およびミスト生成部の要部を模式的に示す一部破断した斜視図である。
図7】金属微粒子およびミスト生成部の要部を模式的に示す一部破断した斜視図である。
図8】一実施形態に係る加熱送風装置と、比較例1と、比較例2とで紫外線による毛髪のダメージ抑制効果を評価した評価結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
以下、図1から図8を用いて、本実施形態に係る加熱送風装置(ヘアドライヤ)1を説明する。なお、人用ドライヤ以外にも、例えばペット用ドライヤなどの用途にも、本開示は適用可能である。
【0012】
[1.構成]
図1から図4に示すように、本実施形態に係る加熱送風装置としてのヘアドライヤ1は、使用者が手で握る部分としての把持部1aと、把持部1aと交差する方向に結合された本体部1bと、を備える。そして、使用時には把持部1aと本体部1bとで略T字状あるいは略L字状(本実施形態では、略T字状)の外観を呈するように折り畳み可能に構成される。
【0013】
把持部1aの突出端部からは、電源コード2が引き出される。また、把持部1aは、本体部1b側の根元部1cと先端部1dとに分割され、これらの根元部1cと先端部1dとが、連結部1eを介して回動可能に連結される。本実施形態では、先端部1dは、本体部1bに沿う位置まで折り畳むことができる。
【0014】
ヘアドライヤ1の外壁(外郭)を構成するハウジング3は、複数の分割体を継ぎ合わせて構成される。ハウジング3の内部には空洞が形成され、この空洞の内部に、各種電気部品が収容される。
【0015】
本体部1bの内部には、その長手方向(図3の左右方向)の一方側(右側)の入口開口(吸入口)4aから出口開口(吐出口)4bに至る風洞(送風流路)4が形成され、この風洞4の内部には、送風部5が収容される。送風部5は、ファン5aと、ファン5aを回転させるモータ5bと、を備える。そして、モータ5bを駆動させてファン5aを回転させることによって空気流Wが形成される。この空気流Wは、外部から入口開口4aを介して風洞4の内部に流入し、主として風洞4の内部を通って出口開口4bから外部に排出される。
【0016】
本実施形態では、入口開口(吸入口)4aが網目状の枠体81で覆われ、この枠体81の開口部の形状がハニカム形状とされる。また、枠体81には、開口率が55パーセント~90パーセント程度であって、300μm~650μm程度の網目幅のメッシュ82が一体成形される。メッシュ82は、例えば金属またはポリエステルなどの難燃性樹脂を用いることができ、このように網目幅の細かいメッシュ82を一体成形することにより、細かい埃および毛髪などが風洞(送風流路)4の内部に入ってしまうのをより確実に抑制することができる。
【0017】
また、本体部1bにおいて、ハウジング3の外筒3aの内部には、略円筒状の内筒6が設けられ、空気流Wは、主に内筒6の内側を流れる。この内筒6の内側では、最も上流側にファン5aが配置され、ファン5aの下流側にファン5aを駆動するモータ5bが配置され、モータ5bのさらに下流側に加熱部としてのヒータ8が配置される。
【0018】
そして、ヒータ8を作動させたときには、出口開口4bから温風が吹き出される。本実施形態では、ヒータ8は、帯状かつ波板状の電気抵抗体を内筒6の内周に沿って巻回して配置したものとして構成されているが、このような構成には限定されない。
【0019】
内筒6は、筒状部6aと、筒状部6aから径方向外側に向けて伸びて周方向に分散して配置された複数の支持リブ6b(図3では一箇所のみ図示)と、を有する。また、内筒6は、支持リブ6bを介して筒状部6aに接続され、この筒状部6aの軸方向と略直交する方向に張り出すフランジ部6cを有する。
【0020】
そして、筒状部6aとフランジ部6cとの間には間隙g1が形成され、この間隙g1を介して空洞9の内部に空気流Wの一部が分岐されて流入する(分岐流が形成される)。分岐流の空洞9の内部への導入口となる間隙g1は、ファン5aの下流でありかつヒータ8の上流側となる位置に設けられる。したがって、分岐流は、ヒータ8によって加熱される前の比較的冷たい空気流である。
【0021】
また、空洞9の内部に流入した分岐流は、一部がさらに分岐されて、内筒6とハウジング3との間を通って出口開口4bの外周部分から吹き出される。この分岐流の一部は、後述する金属微粒子およびミスト吹出口(荷電粒子放出口)20aまたはイオン吹出口(荷電粒子放出口)20bを通過せずに、内筒6とハウジング3との間を通って出口開口4bの外周部分から吹き出される。この分岐流の一部は、比較的冷たい空気流である。
【0022】
本実施形態では、ハウジング3における空洞9の出口開口4b側となる位置に、略円弧状の貫通孔(開口)3bが形成され、この貫通孔3bが絶縁性の合成樹脂材料からなるカバー20で塞がれる。このカバー20は、ハウジング3に対して、下流側から上流側に移動させることで、ハウジング3に取り付けられる。
【0023】
さらに、カバー20の下流側には、略円筒状の外側ノズル20cが一体に形成され、カバー20をハウジング3に取り付けた際に、この外側ノズル20cによって出口開口4bの外周が画成される。
【0024】
また、内筒6の下流端には、外側ノズル20cよりも小径の略円筒状をした内側ノズル21が取り付けられ、この内側ノズル21の下流側開口が出口開口4bの一部となる。
【0025】
このように、内筒6の下流端に内側ノズル21を取り付けると共に、カバー20をハウジング3に取り付けることにより、外側ノズル20cと内側ノズル21とによって、二重筒構造のノズルが形成される。
【0026】
したがって、送風部5を駆動させることにより形成される空気流Wは、大半が内筒6の内部に導入されて内側ノズル21の開口(出口開口4bの中心)から吹き出される主空気流W1となるが、一部の空気流Wが分岐流W2および分岐流W3となる。分岐流W2は、空洞9の内部に流入し、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bを通過せずに、外側ノズル20cと内側ノズル21との間(出口開口4bの外周側)から吹き出される空気流である。また、分岐流W3は、空洞9の内部に流入し、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bから吹き出される空気流である。
【0027】
また、本体部1bの内部で、ハウジング3と内筒6との間に形成された空洞9には、少なくとも一つの金属微粒子およびミスト生成部30、イオン生成部50などが収容される。また、空洞9には、金属微粒子およびミスト生成部30、イオン生成部50に電圧を印加する電圧印加回路(電圧印加回路部)12が収容される。
【0028】
電圧印加回路12は、把持部1aの内部、または本体部1bの内部で把持部1aの延長線上となる領域に配置するのが好適である。使用者が把持部1aを持ったときに、電圧印加回路12の質量に起因する回転モーメントを小さくして、使用者の手に作用する負荷を小さくするためである。
【0029】
さらに、本実施形態では、本体部1bの側面部分(空洞9の電圧印加回路12が収容された部位とは別の部位)に、温風と冷風との切り換え(選択)および動作モードの選択などを行うスイッチ部(送風モード選択部)19が設けられる。
【0030】
また、把持部1aの先端部1dには、電源のオンとオフとの切り換えなどを行う別のスイッチ部(送風モード選択部)16が設けられる。これらの電気部品同士は、金属導体などからなる芯線を絶縁性樹脂などで被覆したリード線17によって接続される。
【0031】
金属微粒子およびミスト生成部30に繋がるリード線17、イオン生成部50に繋がるリード線17は、相互に交叉させることなく極力離間させて配索するのが好適である。それぞれのリード線17を流れる電流の相互干渉によって、金属微粒子およびミスト生成部30あるいはイオン生成部50で所望の電圧が得られなくなったり、電圧が不安定になったりするのを抑制するためである。
【0032】
本実施形態では、スイッチ部16は、ハウジング3の表面に露出した操作子16aを操作することにより、内部接点の開閉状態を切り換えることができるように構成される。このとき、操作子16aを上下方向にスライドさせることにより、内部接点の開閉状態を多段階に切り換えることができるようにすることが可能である。
【0033】
例えば、電源オフ、弱風、中風、強風の四つのモードに切り換えられるようにすることが可能である。この場合、操作子16aを最下部に位置させた状態を電源オフとすることができる。
【0034】
そして、操作子16aを最下部から一段階上方にスライドさせた際に、電源オン状態となって、弱風が送風されるようにすることができる。さらに、操作子16aを一段階上方にスライドさせた際に、中風が送風され、操作子16aを最上部までスライドさせた際に、強風が送風されるようにすることができる。
【0035】
一方、温風と冷風との切り換えおよび動作モードの選択などを行うスイッチ部19は、ハウジング3の表面(側面)に形成した操作子19aを操作する(押圧する)ことにより、内部接点の開閉状態を切り換えることができるように構成される。そして、操作子19aの上方には、現在選択されているモードを表示する表示部14が形成される。
【0036】
これらのスイッチ部19および表示部14などは、図示しない制御部と電気的に接続される。
【0037】
本実施形態では、操作子19aを操作することにより、「HOT」、「温冷」、「COLD」、「SCALP」の四つの風温モードを切り替えることができる。このとき、表示部14には、選択されているモードを認識することが可能な文字などが表示される。
【0038】
「HOT」とは、温風を出力するモードであって、通常の使用時に毛髪にあたる風の温度が約80℃から90℃となるようにしたモードである。この温風を出力するモードが選択されているときには、例えば、表示部14に「HOT」の文字が表示される。
【0039】
また、「温冷」とは、例えば、(温風5秒、冷風7秒)または(温風2秒、冷風6秒)といったように、温風と冷風とを交互に出力するモードである。この「温冷」モードが選択されているときには、例えば、表示部14に矢印が表示されると共に、温風または冷風の出力に応じて「HOT」と「COLD」とが交互に表示される。
【0040】
また、「COLD」とは、冷風を出力するモードであって、通常の使用時に毛髪にあたる風の温度がほぼ室温と同じになるようにしたモードである。この冷風を出力するモードが選択されているときには、例えば、表示部14に「COLD」の文字が表示される。
【0041】
また、「SCALP」とは、低温風を出力するモードであって、通常の使用時に毛髪にあたる風の温度が約30℃から50℃となるようにしたモードである。この「SCALP」モードは、主として頭皮のケアを行う際に選択されるモードである。そして、「SCALP」モードが選択されているときには、例えば、表示部14に「SCALP」の文字が表示される。
【0042】
また、カバー20には、上述したように、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bがそれぞれ独立して形成される。
【0043】
金属微粒子およびミスト生成部30、および、イオン生成部50の前方には、イオンが流れるイオン流路4cが形成される。このため、金属微粒子およびミスト吹出口20a、および、イオン吹出口20bは、イオン流路4cの下流側に設けられる。
【0044】
また、カバー20は、金属微粒子あるいはミストによる帯電を抑制するため、ハウジング3よりも導電性を低くするのが好適である。カバー20が帯電すると、その電荷によって、金属微粒子およびミスト生成部30、および、イオン生成部50から電荷を帯びた金属微粒子、ミスト、マイナスイオンが放出され難くなるためである。
【0045】
カバー20の帯電を抑制するためには、帯電を起こしにくい材料、例えば、PC(ポリカーボネート)樹脂を用いてカバー20を形成し、カバー20の材質は帯電を起こしにくい材質とするのが好ましい。なお、この部分では、カバー20がヘアドライヤ1の外郭を構成する。
【0046】
また、金属微粒子およびミスト生成部30の電極にカバー20を当接させることにより、カバー20の除電を行えるようにすることも可能である。
【0047】
さらに、本実施形態では、毛髪の帯電状態を変更することが可能な帯電部(帯電付与パネル)1fが設けられる。この帯電部1fは、把持部1aの近傍に設けられる。具体的には、帯電部1fは、把持部1aの外表面に露出する導電性樹脂(導電部材)で形成される。
【0048】
図5に示されるように、本実施形態では、金属微粒子およびミスト生成部30が先端部に放電部40aを有する柱状の放電電極部40と、放電電極部40と対向する対向電極部30aで形成される。
【0049】
また、本実施形態では、放電電極部40は、放電電極部40を冷却する冷却部40bを有しており、空気中の水分を結露させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、電圧印加回路12は、放電電極部40と対向電極部30aとの間に高電圧を印加して放電(コロナ放電など)を生じさせるものである。
【0051】
柱状の放電電極部40は、例えば、遷移金属(例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、チタン、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)の単体、合金、あるいは遷移金属をメッキ処理した部材等として構成することができる。金属微粒子およびミスト生成部30で生成され放出された金属の微粒子に、亜鉛や、チタン等が含まれている場合、当該金属の微粒子によって耐紫外線機能を生じさせることができる。
【0052】
対向電極部30aは、例えば、遷移金属(例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、チタン、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)の単体、合金、あるいは遷移金属をメッキ処理した部材等として構成することができる。金属微粒子およびミスト生成部30で生成され放出された金属の微粒子に、亜鉛や、チタン等が含まれている場合、当該金属の微粒子によって耐紫外線機能を生じさせることができる。
【0053】
また、金属微粒子およびミスト生成部30は、放電作用によってイオンを生じさせ、このイオンを、放電電極部40や対向電極部30a、他の金属材料や金属成分を含む部材等に衝突させることで、金属微粒子を生成するものであってもよい。
【0054】
本実施形態では、金属微粒子およびミスト生成部30は、導電性を有する金属材料によって形成される。
【0055】
本実施形態では、柱状の放電電極部40は、針状の部材として形成され、対向電極部30aは、柱状の放電電極部40の先端側に離間配置した円環状の部材として形成される。柱状の放電電極部40は少なくとも一つ設けられる。
【0056】
図6に示されるように、本実施形態では、対向電極部30aは、放電電極部40の中心軸を囲むように配置される周辺電極部30bと、放電電極部40の中心軸に向けて突出する突出電極部30cとを有している。これら周辺電極部30bと突出電極部30cとは、図6に示されるように本実施形態では、一体に形成しているが、図7に示されるように、別体に形成してもよい。
【0057】
本実施形態では、周辺電極部30bは、円筒状の部材として形成されている。突出電極部30cは対向電極部30aに少なくとも一つ設けられる。本実施形態では、突出電極部30cは一対で対向電極部30aに設けられている。これら一対の突出電極部30c,30cは、ほぼ同一の形状に形成してもよいし、一対の突出電極部30c,30cの形状がそれぞれ異なるようにしてもよい。
【0058】
この態様によれば、放電電極部40と対向電極部30aとの間の放電は放電電極部40に結露する空気中の水分によって放電の支配領域が異なる。
【0059】
具体的には、空気中の水分が多く放電電極部40に結露する水分が多い場合、対向電極部30aの突出電極部30cが周辺電極部30bよりも電界集中が支配的になるため、突出電極部30cの周囲で金属微粒子が生成される。一方で、ミストは突出電極部30cと放電電極部40の間で生成される。
【0060】
すなわち、金属微粒子生成領域とミスト生成領域とは突出電極部30cの周囲で重複され、金属微粒子およびミストは生成時に混流される。
【0061】
このような状態にすることで、金属微粒子およびミストは、金属微粒子およびミスト吹出口20aから混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる。
【0062】
また、空気中の水分が少なく放電電極部40に結露する水分が少ない場合、対向電極部30aの突出電極部30cよりも周辺電極部30bの電界集中が支配的になるため、周辺電極部30bの周囲で金属微粒子が生成される。一方で、ミストは突出電極部30cおよび周辺電極部30bと放電電極部40の間で生成される。
【0063】
すなわち、金属微粒子生成領域とミスト生成領域とは周辺電極部30bの周囲で重複され、金属微粒子およびミストは生成時に混流される。
【0064】
このような状態にすることで、金属微粒子およびミストは、金属微粒子およびミスト吹出口20aから混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる。
【0065】
本実施形態では、金属微粒子およびミスト生成部30、イオン生成部50は電圧印加回路12を共有し、放電時に同時に、金属微粒子、ミスト、およびイオンを生成することができる。
【0066】
具体的には、金属微粒子、ミスト、およびイオンを各々別の電圧印加回路で生成する場合、電圧印加回路の特性により生成される順番が生じてしまう。これにより、初めに生成された成分の放出が支配的になり、他の成分の放出を阻害してしまう可能性がある。
【0067】
本実施形態では、金属微粒子およびミスト生成部30、イオン生成部50は電圧印加回路12を共有することで、電圧印加回路の特性による生成タイミングの遅延を抑制することができる。
【0068】
すなわち、金属微粒子、ミスト、およびイオンを同時に生成することができ、各成分の放出を阻害することなく、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bから吐き出せる。
【0069】
このような状態にすることで、金属微粒子、ミスト、およびイオンは空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる。
【0070】
[2.動作]
以下、本実施形態で示すヘアドライヤ1の動作、作用を説明する。
【0071】
電源オンオフ用のメインスイッチ(スイッチ部16)をオンにすることにより、ファン5aが回転し、ハウジング3の内部の吸入口4a側が減圧されて、空気が吸入口4aからハウジング3の内部に取り入れられる。
【0072】
上述したように、送風部5を駆動させることにより形成される空気流Wは、大半が内筒6の内部に導入されて内側ノズル21の開口(出口開口4bの中心)から吹き出される主空気流W1となるが、一部の空気流Wが分岐流W2および分岐流W3となる。分岐流W2は、空洞9の内部に流入し、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bを通過せずに、外側ノズル20cと内側ノズル21との間(出口開口4bの外周側)から吹き出される空気流である。また、分岐流W3は、空洞9の内部に流入し、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bから吹き出される空気流である。
【0073】
[紫外線による毛髪へのダメージ抑制効果の評価]
[評価方法]
毛束の洗髪、ヘアドライヤによる乾燥、および紫外線の照射を繰り返し実施する。そして、紫外線照射2か月相当ごとに、紫外線による毛髪の摩擦抵抗を計測しダメージ度を計測する。
【0074】
[評価結果]
図8に、紫外線照射6か月後の本実施形態に係るヘアドライヤと、比較例1と、比較例2とにおいてそれぞれ計測した「毛髪のダメージ度」をまとめたグラフを示す。
【0075】
「本実施形態」は、金属微粒子およびミスト生成部が、放電時に金属微粒子生成領域とミスト生成領域とを重複する状態で、金属微粒子およびミストを吐出するものである。また、「比較例1」は、金属微粒子およびミストを吐出しないものである。さらに、「比較例2」は、金属微粒子とミストとを別々に発生させて、金属微粒子およびミストを吐出するものである。
【0076】
図8から分かるように、「本実施形態」は、「比較例1」および「比較例2」よりも毛髪のダメージ度合いが低く、「比較例1」および「比較例2」と比較して紫外線による毛髪ダメージの抑制効果が高いといえる。
【0077】
[3.効果等]
(1)本実施形態において、ヘアドライヤ1は、吸入口4aおよび吐出口4bを有するハウジング3と、ハウジング3の内部に配置され、吸入口4aから吸いこんだ空気を吐出口4bから吐出させる送風部5と、を備える。ヘアドライヤ1は、ハウジング3の内部における送風部5よりも下流側に配置される加熱部8と、ハウジング3の内部に配置され、金属微粒子およびミストを生成する金属微粒子およびミスト生成部30と、を備える。ヘアドライヤ1は、ハウジング3の内部に配置され、イオンを生成するイオン生成部50と、ハウジング3の内部に配置され、放電を生じさせる電圧印加回路部12と、を備える。金属微粒子およびミスト生成部30は、先端部に放電部40aを有する柱状の放電電極部40と、放電電極部40と対向する対向電極部30aと、を有する。金属微粒子およびミスト生成部30は、金属微粒子が生成される金属微粒子生成領域とミストが生成されるミスト生成領域とが重複する重複領域を有する。
【0078】
冷却部40bが生成する結露水が多い場合、対向電極部30aの突出電極部30cが周辺電極部30bよりも電界集中が支配的になるため、突出電極部30cの周囲で金属微粒子が生成される。一方で、ミストは突出電極部30cと放電電極部40の間で生成される。したがって、金属微粒子生成領域とミスト生成領域とは突出電極部30cの周囲で重複され、金属微粒子およびミストは生成時に混流される。
【0079】
これにより、金属微粒子およびミストは、金属微粒子およびミスト吹出口20aから混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ、髪ケア効果をより高めることができる。
【0080】
冷却部40bが生成する結露水が少ない場合、対向電極部30aの突出電極部30cよりも周辺電極部30bの電界集中が支配的になるため、周辺電極部30bの周囲で金属微粒子が生成される。一方で、ミストは突出電極部30cおよび周辺電極部30bと放電電極部40の間で生成される。したがって、金属微粒子生成領域とミスト生成領域とは周辺電極部30bの周囲で重複され、金属微粒子およびミストは生成時に混流される。
【0081】
これにより、金属微粒子およびミストは、金属微粒子およびミスト吹出口20aから混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ、髪ケア効果をより高めることができる。
【0082】
(2)対向電極部30aは、放電電極部40の中心軸を囲むように配置される周辺電極部30bと、放電電極部40の中心軸に向けて突出する突出電極部30cと、を有する。
【0083】
これにより、少なくとも一か所の重複領域で金属微粒子生成領域とミスト生成領域とは周辺電極部30bまたは突出電極部30cの周囲で重複され、金属微粒子およびミストは生成時に混流される。金属微粒子およびミストは、金属微粒子およびミスト吹出口20aから混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる。
【0084】
(3)放電電極部40および対向電極部30aの内の少なくとも一方が、金属微粒子生成領域を有する。
【0085】
すなわち、放電電極部40および対向電極部30aの内の少なくとも一方が、各種金属によりメッキ処理した部材等として構成される。これにより、少なくとも一か所の重複領域で金属微粒子生成領域とミスト生成領域とは放電電極部40または対向電極部30aの周囲で重複され、金属微粒子およびミストは生成時に混流される。金属微粒子およびミストは、金属微粒子およびミスト吹出口20aから混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる。
【0086】
(4)金属微粒子およびミスト生成部30とイオン生成部50とは、金属微粒子またはミストとイオンとを同時に発生させるために電圧印加回路部12を共有する。
【0087】
電圧印加回路12は、金属微粒子およびミスト生成部30とイオン生成部50とで共有することにより、回路の特性による生成タイミングの遅延を抑制することができる。
【0088】
これにより、金属微粒子、ミスト、およびイオンを同時に生成することができ、各成分の放出を阻害することなく、金属微粒子およびミスト吹出口20aまたはイオン吹出口20bから吐き出せる。したがって、金属微粒子、ミスト、およびイオンは空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる。
【0089】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示は、金属微粒子とミストとが混流された状態で吐き出され、空気中で失活することなく髪に届くことができ髪ケア効果をより高めることができる加熱送風装置(ヘアドライヤ)に適用可能である。具体的には、人用ドライヤ以外にも、例えばペット用ドライヤなどの用途にも、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 ヘアドライヤ(加熱送風装置)
3 ハウジング
4a 入口開口(吸入口)
4b 出口開口(吐出口)
5 送風部
8 ヒータ(加熱部)
12 電圧印加回路(電圧印加回路部)
30 金属微粒子およびミスト生成部
30a 対向電極部
40 放電電極部
40a 放電部
50 イオン生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8