(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】熱電併給一体型合成ガス製造システムおよび熱電併給一体型合成ガス製造方法
(51)【国際特許分類】
F02G 5/04 20060101AFI20240920BHJP
F25J 3/02 20060101ALI20240920BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240920BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20240920BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240920BHJP
C10J 3/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02G5/04 H
F25J3/02 Z
B01D53/047
C01B3/38
H01M8/04 Z
C10J3/02 J
(21)【出願番号】P 2024503345
(86)(22)【出願日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2023038127
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306047996
【氏名又は名称】株式会社 ユーリカ エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信三
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106295(JP,A)
【文献】国際公開第2012/140994(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0049648(US,A1)
【文献】特表2006-523596(JP,A)
【文献】特表2005-517053(JP,A)
【文献】特表2019-502533(JP,A)
【文献】特表2016-511296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0041986(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 5/04
C01B 3/00-6/34
F25J 3/02
B01D 53/047
H01M 8/04-8/0668
C10J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと純水が供給されて水蒸気と電気を生成する熱電併給装置と、
メタンガスが供給され内部に触媒が充填された改質器および流体燃料が供給される加熱器を備え、前記熱電併給装置から前記水蒸気が前記改質器に供給され、前記加熱器で前記流体燃料を燃焼させて前記改質器を加熱し前記メタンガスを前記水蒸気で水蒸気改質して水素ガスと一酸化炭素ガスとからなる水蒸気改質生成ガスを生成する水蒸気改質装置と、
前記水蒸気改質装置から前記水蒸気改質生成ガスが供給され、前記水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合で分配する分配装置と、
前記分配装置から前記第2水蒸気改質生成ガスが供給され、前記第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離し、分離された前記水素ガスを前記熱電併給装置に供給する水素分離装置と、
前記分配装置から前記第1水蒸気改質生成ガスが供給され、前記水素分離装置から前記水素分離ガスが供給され、前記第1水蒸気改質生成ガスと前記水素分離ガスとを混合して合成ガスを生成する混合装置と、を設け、
前記設定割合は、前記混合装置で生成される前記合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される、
熱電併給一体型合成ガス製造システム。
【請求項2】
前記水素分離装置は、深冷分離装置であり、
前記熱電併給装置は、ガスタービン式熱電併給装置であり、前記ガスタービン式熱電併給装置に装備されて発電機を駆動するガスタービンに前記深冷分離装置で分離された前記水素ガスが供給され、
前記ガスタービン式熱電併給装置は、前記純水を前記ガスタービンの排ガスで加熱して前記水蒸気を生成する、
請求項1に記載の熱電併給一体型合成ガス製造システム。
【請求項3】
前記水素分離装置は、圧力変動吸着式水素分離装置であり、
前記熱電併給装置は、ガスタービン式熱電併給装置であり、前記ガスタービン式熱電併給装置に装備されたガスタービンに前記圧力変動吸着式水素分離装置で分離された前記水素ガスが供給され、
前記ガスタービン式熱電併給装置は、前記純水を前記ガスタービンの排ガスで加熱して前記水蒸気を生成する、
請求項1に記載の熱電併給一体型合成ガス製造システム。
【請求項4】
前記水蒸気改質装置の前記改質器に供給されるメタンガスを分流して前記ガスタービン式熱電併給装置のガスタービンに供給する、
請求項2または請求項3に記載の熱電併給一体型合成ガス製造システム。
【請求項5】
前記熱電併給装置は、燃料電池式熱電併給装置であり、前記燃料電池式熱電併給装置に装備された燃料電池に前記水素分離装置で分離された前記水素ガスが供給され、
前記燃料電池式熱電併給装置は、前記純水を前記燃料電池の冷却システムおよび水蒸気ボイラーで加熱して前記水蒸気を生成する、
請求項1に記載の熱電併給一体型合成ガス製造システム。
【請求項6】
水素ガスと純水が供給される熱電併給装置で水蒸気と電気を生成し、
メタンガスが供給され内部に触媒が充填された改質器および流体燃料が供給される加熱器を備え、前記熱電併給装置から前記水蒸気が前記改質器に供給され、前記加熱器で前記流体燃料を燃焼させて前記改質器を加熱し前記メタンガスを前記水蒸気で水蒸気改質する水蒸気改質装置で水素ガスと一酸化炭素ガスとからなる水蒸気改質生成ガスを生成し、
前記水蒸気改質装置から前記水蒸気改質生成ガスが供給される分配装置で前記水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合で分配し、
前記分配装置から前記第2水蒸気改質生成ガスが供給される水素分離装置で前記第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離し、分離された前記水素ガスを前記熱電併給装置に供給し、
前記分配装置から前記第1水蒸気改質生成ガスが供給され、前記水素分離装置から前記水素分離ガスが供給される混合装置で前記第1水蒸気改質生成ガスと前記水素分離ガスとを混合して合成ガスを生成し、
前記設定割合は、前記混合装置で生成される前記合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される、
熱電併給一体型合成ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成液体燃料を製造するのに適した合成ガスの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷の低減および石油価格の上昇対策の一つとして、メタンガス好ましくはカーボンニュートラルメタンガスを原料として合成液体燃料を生産する技術(GTL:Gas To Liquid)は世界各地で注目され実用化されている。合成液体燃料の製造工程、中でも合成ガスの製造工程は合成液体燃料製造の差別化につながる重要な工程であるので、更なる改善が求められている。
合成ガス製造工程は、次のフィッシャー・トロプシュ法で合成液体燃料を用いるFT合成工程を考えると、水素と一酸化炭素のモル比がほぼ2:1の合成ガスを製造することが求められる。
特許文献1には、メタンガスと炭酸ガスと水蒸気とを選定された触媒下で反応させるスチーム/CO2 リフォーミング法で水素と一酸化炭素のモル比が1:1から5:3の合成ガスを製造する方法が記載されている。
特許文献2には、バイオマス原料を熱分解した熱分解ガスから水素ガスと一酸化炭素ガスをそれぞれ分離して個別にタンクに貯留し、水素ガスと一酸化炭素ガスの各流量を検出制御して両ガスを重合反応(FT合成)に最適な流量割合で各タンクから触媒反応器に供給する合成液体燃料製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-270803号公報
【文献】特開2010-248459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法は、メタンガスと炭酸ガスと水蒸気とを触媒反応させて、メタンの水蒸気改質とメタンの炭酸ガス改質とを同時に行うものであるので、水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比をほぼ2:1にコントロールすることが困難であり、触媒の選定が難しく原料組成や反応条件の設定に制約が厳しくなる。
特許文献2に記載された装置は、バイオマスの熱分解ガスから水素ガスと一酸化炭素ガスを個別に分離し、その水素ガスと一酸化炭素ガスをモル比がほぼ2となる流量比で触媒反応器に供給しFT合成反応させて合成液体燃料を製造している。しかし、熱分解ガスから水素ガスと一酸化炭素ガスを個別に分離しタンクに貯留するので、装置が複雑化し、高エネルギー消費となる。
【0005】
本発明は、水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1の合成ガスを容易かつ効率的に製造可能であるとともに電力を併せて生産することができる熱電併給一体型合成ガス製造システムおよび熱電併給一体型合成ガス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水素ガスと純水が供給されて水蒸気と電気を生成する熱電併給装置と、メタンガスが供給され内部に触媒が充填された改質器および流体燃料が供給される加熱器を備え、前記熱電併給装置から前記水蒸気が前記改質器に供給され、前記加熱器で前記流体燃料を燃焼させて前記改質器を加熱し前記メタンガスを前記水蒸気で水蒸気改質して水素ガスと一酸化炭素ガスとからなる水蒸気改質生成ガスを生成する水蒸気改質装置と、前記水蒸気改質装置から前記水蒸気改質生成ガスが供給され、前記水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合で分配する分配装置と、前記分配装置から前記第2水蒸気改質生成ガスが供給され、前記第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離し、分離された前記水素ガスを前記熱電併給装置に供給する水素分離装置と、前記分配装置から前記第1水蒸気改質生成ガスが供給され、前記水素分離装置から前記水素分離ガスが供給され、前記第1水蒸気改質生成ガスと前記水素分離ガスとを混合して合成ガスを生成する混合装置と、を設け、前記設定割合は、前記混合装置で生成される前記合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される熱電併給一体型合成ガス製造システムである。
また、本発明は、水素ガスと純水が供給される熱電併給装置で水蒸気と電気を生成し、メタンガスが供給され内部に触媒が充填された改質器および流体燃料が供給される加熱器を備え、前記熱電併給装置から前記水蒸気が前記改質器に供給され、前記加熱器で前記流体燃料を燃焼させて前記改質器を加熱し前記メタンガスを前記水蒸気で水蒸気改質する水蒸気改質装置で水素ガスと一酸化炭素ガスとからなる水蒸気改質生成ガスを生成し、前記水蒸気改質装置から前記水蒸気改質生成ガスが供給される分配装置で前記水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合で分配し、前記分配装置から前記第2水蒸気改質生成ガスが供給される水素分離装置で前記第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離し、分離された前記水素ガスを前記熱電併給装置に供給し、前記分配装置から前記第1水蒸気改質生成ガスが供給され、前記水素分離装置から前記水素分離ガスが供給される混合装置で前記第1水蒸気改質生成ガスと前記水素分離ガスとを混合して合成ガスを生成し、前記設定割合は、前記混合装置で生成される前記合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される、熱電併給一体型合成ガス製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱電併給一体型合成ガス製造システムまたは熱電併給一体型合成ガス製造方法において、水蒸気改質装置は、メタンガスおよび水蒸気が改質器に供給され、加熱器に流体燃料が供給され、流体燃料の燃焼によって改質器が加熱されてメタンガスが水蒸気改質され、水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が3:1の水蒸気改質生成ガスが安定して生成される。分配装置は、水蒸気改質装置から供給された水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合で分配する。水素分離装置は、分配装置から供給された第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離する。混合装置は、分配装置から第1水蒸気改質生成ガスが供給され、水素分離装置から水素分離ガスが供給され、第1水蒸気改質生成ガスと水素分離ガスとを混合して合成ガスを生成する。水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに分配する設定割合は、混合装置で生成される合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される。熱電併給装置は、水素分離装置で分離された水素ガスが供給されて電力を生成するとともに、水蒸気改質装置に供給する水蒸気を生成する。
これにより、メタンガスの水蒸気改質によって組成の安定した水蒸気改質生成ガスを生成した後は、水蒸気改質生成ガスを設定割合で二つに分配し、分配した第2水蒸気改質生成ガスから水素ガスを分離し、水素を分離された水素分離ガスと第1水蒸気改質生成ガスとを混合するという物理的な操作を行うだけで、水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比がほぼ2:1の合成ガスを容易な制御で安定して効率的に製造することができる。さらに、分離された水素ガスで熱電併給装置を作動させて水蒸気改質装置に供給される水蒸気を生成するとともに電力を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る熱電併給一体型合成ガス製造システム1aの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第2の実施形態に係る熱電併給一体型合成ガス製造システム1bの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】第3の実施形態に係る熱電併給一体型合成ガス製造システム1cの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】第4の実施形態に係る熱電併給一体型合成ガス製造システム1dの全体構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る熱電併給一体型合成ガス製造システム1aのマス・エネルギーバランスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1の実施形態の構成
第1の実施形態に係る熱電併給一体型合成ガス製造システム1aは、
図1に示すように、水蒸気改質生成ガスを生成する水蒸気改質装置10と、水蒸気改質生成ガスを設定割合α:1で第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに分配する分配装置20と、第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離する深冷分離装置31と、第1水蒸気改質生成ガスと水素分離ガスとを混合して合成ガスにする混合装置40と、分離された水素ガスが供給されて水蒸気と電気を生成するガスタービン式熱電併給装置51を備える。設定割合α:1は、混合装置で生成される合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される。
【0010】
水蒸気改質装置10は、内部に触媒が充填された改質器11および流体燃料供給装置16から流体燃料が供給される加熱器12を備える。改質器11には、メタンガス供給装置15からメタンガスが供給され、ガスタービン式熱電併給装置51から水蒸気が供給される。水蒸気改質装置10は、改質器11に供給されたメタンガスおよび水蒸気が加熱器12に供給された流体燃料の燃焼によって加熱され、触媒下で化学式(1)に示すように水蒸気改質反応して水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が3:1の水蒸気改質生成ガスを生成する。
CH4+H2O → 3H2+CO(吸熱反応) (1)
【0011】
水蒸気改質装置10に分配装置20が接続され、分配装置20に水蒸気改質装置10から供給された水蒸気改質生成ガスは第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合αで分配される。第1水蒸気改質生成ガスは第1出口21から送出され、第2水蒸気改質生成ガスは第2出口22から送出される。設定割合αは、混合装置40で生成される合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される。
【0012】
分配装置20の第2出口22に公知の深冷分離装置31が水素分離装置30として接続されている。深冷分離装置31は概略すると、第2水蒸気改質生成ガスを圧縮機で高圧に圧縮した後に熱交換器で冷却して液化し、液化した第2水蒸気改質生成ガスを精留塔で沸点差を利用して水素ガスと水素ガスが分離された水素分離ガスとに分離する。水素ガスは深冷分離装置30によって水蒸気改質生成ガスからほぼ100%の分離効率βで分離される。水素分離ガスは、ほぼ全て一酸化炭素ガスである。
【0013】
混合装置40は、分配装置20の第1出口21から第1水蒸気改質生成ガスが供給され、深冷分離装置31から水素分離ガスが供給され、第1水蒸気改質生成ガスと水素分離ガスとを混合して水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1の合成ガスを生成する。
【0014】
水蒸気改質装置10から送出される水蒸気改質生成ガスの流量をQとすると、第2水蒸気改質生成ガスの流量はQ/(α+1)となる。
水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が3:1の流量Qの水蒸気改質生成ガスから水素ガスを除去してモル比が2:1の合成ガスを作成するためには、Q/4の水素ガスを分離する必要がある。第2水蒸気改質生成ガスに含まれる流量3Q/4(α+1)の水素ガスが深冷分離装置30でほぼ100%分離されるとすると、3Q/4(α+1)=Q/4からα=2で、設定割合は2:1となる。
【0015】
深冷分離装置31にはガスタービン式熱電併給装置51が熱電併給装置50として接続されている。深冷分離装置31は分離した水素ガスをガスタービン式熱電併給装置51に供給する。ガスタービン式熱電併給装置51は、ガスタービン52、発電機53、熱交換器54および純水供給装置55を備える。ガスタービン52は、深冷分離装置30から燃焼器に供給された水素ガスを圧縮機で圧縮された空気中で燃焼させて高温高圧ガスを生成し、高温高圧ガスでタービンを高速回転させる。発電機53がタービンで回転駆動されて電力を送出する。タービンを高速回転させた後に排出される高温の排ガスは、純水供給装置55から供給された純水を熱交換器54で加熱し水蒸気を熱として生成する。熱交換器54で生成された水蒸気は水蒸気改質装置10の改質器11に供給される。このように、ガスタービン式熱電併給装置51は、水蒸気および電力を生成し、水蒸気を水蒸気改質装置10の改質器11に送出する。
【0016】
2.第1の実施形態の作動
水蒸気改質装置10の改質器11にメタンガス供給装置15からメタンガス、ガスタービン式熱電併給装置51から水蒸気が供給され、加熱器12に流体燃料供給装置16から流体燃料が供給される。改質器11に流入したメタンガスおよび水蒸気は、加熱器での流体燃料の燃焼によって加熱され、触媒下で水蒸気改質反応して水蒸気改質生成ガスとなって分配装置20に送出される。
【0017】
分配装置20は、流入した水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスに2:1の設定割合で分配し、第1水蒸気改質生成ガスを第1出口21から混合装置40に送出し、第2水蒸気改質生成ガスを第2出口22から深冷分離装置31に送出する。
【0018】
深冷分離装置31は供給された第2水蒸気改質生成ガスから含有水素ガスを分離効率βほぼ100%で分離しガスタービン式熱電併給装置51に送出し、水素ガスを分離した水素分離ガスを混合装置40に送出する。
【0019】
混合装置40は供給された第1水蒸気改質生成ガスと水素分離ガスとを混合し、水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1の合成ガスを生成する。
【0020】
ガスタービン式熱電併給装置51は、深冷分離装置31から供給された水素ガスの燃焼で生成した高温高圧ガスでタービンを回転させ発電機52を駆動して電力を送出し、純水供給装置55から供給された純水を熱交換器54でガスタービン52の排ガスで加熱して水蒸気を生成し水蒸気改質装置10の改質器11に送出する。
【0021】
3.第1の実施形態の効果
メタンガスの水蒸気改質によって生成された組成の安定した水蒸気改質生成ガスを分配装置20によって第1、第2水蒸気改質生成ガスに物理的に分配し、分配した第2水蒸気改質生成ガスから水素ガスを深冷分離により沸点差を利用して分離し、第2水蒸気改質生成ガスから水素ガスを分離された水素分離ガスと第1水蒸気改質生成ガスとを物理的に混合するだけで、水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比がほぼ2:1の合成ガスを安定して効率的に製造することができる。さらに、分離された水素ガスでガスタービン式熱電併給装置51を作動させて水蒸気および電力を生産することができる。
【0022】
4.第2の実施形態の構成
第2の実施形態は、分配装置20の第2出口22に深冷分離装置31に代えて圧力変動吸着式水素分離装置35が接続されている点以外は第1の実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0023】
図2に示すように、熱電併給一体型合成ガス製造システム1bは、分配装置20の第2出口22に圧力変動吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)式水素分離装置35が水素分離装置30として接続されている。圧力変動吸着式水素分離装置35は公知であり、分配装置20の第2出口22から供給された第2水蒸気改質生成ガスが吸着塔に所定圧力で所定時間滞留されて一酸化炭素ガスを主成分とする水素分離ガスが吸着剤に吸着された後に水素ガスが一方出口から送出され、一方出口の閉鎖後に吸着塔が減圧されて水素分離ガスが吸着剤から脱着されて他方出口から送出するように構成されている。水素ガスは圧力変動吸着式水素分離装置35によって第2水蒸気改質生成ガスから0.7~0.8の分離効率βで分離される。
【0024】
水蒸気改質装置10から送出される水蒸気改質生成ガスの流量をQとすると、第2水蒸気改質生成ガスの流量はQ/(α+1)となる。
水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が3:1の流量Qの水蒸気改質生成ガスから水素ガスを除去してモル比が2:1の合成ガスを作成するためには、Q/4の水素ガスを分離する必要がある。第2水蒸気改質生成ガスに含まれる流量3Q/4(α+1)の水素ガスが圧力変動吸着式水素分離装置35によって分離効率βで分離されるとすると、3Qβ/4(α+1)=Q/4からα=3β-1で、設定割合は(3β-1):1となる。
【0025】
5.第2の実施形態の作動および効果
分配装置20は、第2水蒸気改質生成ガスを流量Q/3βで圧力変動吸着式水素分離装置35に供給し、圧力変動吸着式水素分離装置35は、分離した水素ガスを流量Q/4でガスタービン式熱電併給装置51に供給する。混合装置40は、水素分離ガスと第1水蒸気改質生成ガスを混合して合成ガスを生成する。合成ガスに含まれる水素ガスの流量は、2Q/4となり、一酸化炭素ガスの流量は、Q/4となる。
【0026】
第2の実施形態は、水素分離装置30を圧力変動吸着式水素分離装置35にしたことにより、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0027】
6.第3の実施形態の構成、作動および効果
第3の実施形態は、メタンガス供給装置15からメタンガスがガスタービン式熱電併給装置51のガスタービン52に供給される点以外は第1または第2の実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1または第2の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する
【0028】
水蒸気改質反応での水蒸気とメタンガスのモル比は理論上1:1であるが、実際には水蒸気改質の推進と炭素の析出を防ぐために、3:1以上が推奨されている。第1、第2実施形態においては、水蒸気改質装置10で生成された水蒸気改質生成ガスから分離された水素ガスの燃焼に基づいてガスタービン式熱電併給装置50で生成される水蒸気と、水蒸気改質装置10に供給されるメタンガスとのモル比は2.8:1であるが、第3の実施形態にかかる熱電併給一体型合成ガス製造システム1cでは、ガスタービン式熱電併給装置51のガスタービン53の燃焼器を混焼型にし、ガスタービン53にメタンガスを追加供給して水素ガスとメタンガスを混焼させ、純水供給装置54から供給される純水を増量して水蒸気を増量しメタンガスと水蒸気のモル比を3:1以上にしている。このため、
図3に示すように、メタンガス供給装置15は、水蒸気改質装置10の改質器11とガスタービン式熱電併給装置51のガスタービン52の混焼型燃焼器とに接続されている。
これにより、第3の実施形態では、第1または第2の実施形態と同様の効果を奏するとともに、水蒸気改質装置10の改質器11内での水蒸気とメタンガスのモル比を3:1以上にして水蒸気改質の推進と炭素の析出を防ぐことができる。
【0029】
7.第4の実施形態の構成、作動および効果
第4の実施形態は、熱電併給装置50をガスタービン式熱電併給装置51に代えて燃料電池式熱電併給装置60にする点以外は第1または第2の実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1または第2の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する
【0030】
第4の実施形態にかかる熱電併給一体型合成ガス製造システム1dは、水素分離装置30に燃料電池式熱電併給装置61が熱電併給装置50として接続されている。水素分離装置30は、分離した水素ガスを燃料電池式熱電併給装置61に供給する。燃料電池式熱電併給装置61は、燃料電池62、冷却システム63、純水供給装置64、熱交換器65および蒸気ボイラー66を備える。燃料電池62は、水素分離装置30から供給された水素ガスと外部から供給された空気に含まれる酸素とを電気化学反応させて電力および水を生成する。電気化学反応で生じた反応熱は燃料電池62の冷却システム63の冷却水に熱伝達される。冷却水は反応熱を純水供給装置64から供給された純水に熱交換器65で放熱し純水を加熱して高温水を生成する。高温水は蒸気ボイラー66に送出され、蒸気ボイラー66は、メタンガス供給装置15から供給されたメタンガスを燃焼させて高温水を加熱し水蒸気を生成し水蒸気改質装置10の改質器11に送出する。このように、燃料電池式熱電併給装置61は、純水供給装置64から供給される純水に燃料電池62の電気化学反応で生じた反応熱を熱伝達して生成した高温水を蒸気ボイラー66で加熱することによってメタンガスを水蒸気改質するために必要な大量の水蒸気を生成するとともに、燃料電池62によって電力を生産することができる。
【0031】
8.第5の実施形態の構成、作動および効果
第5の実施形態にかかる熱電併給一体型合成ガス製造システム1eは、メタンガス供給装置15がカーボンニュートラルなメタンガスを水蒸気改質装置10に原料として供給するとともに、流体燃料供給装置16に燃料として供給する。その他の点は第1乃至第4の実施形態と同様であるので詳細な説明および図面を省略する。第5の実施形態によればカーボンニュートラルな合成ガスおよび電力を製造することができる。
【0032】
次に、
図5に示す第1実施形態のマス・エネルギーバランスの検討例について説明する。
A.想定条件
1.水蒸気改質反応は、CH
4+H
2O → 3H
2+CO-2,207kcal/Nm
3-CH
4とする。
2.深冷分離は、分離効率β100%、電力使用率0.45kW/Nm
3-COとする。
3.ガスタービン式熱電併給装置51は、発電効率27.5%、水蒸気の生成2.3kg/Nm
3-H
2とする。
4.ガス物性は、CO沸点-192℃、CO比熱0.25kcal/kg、H
2沸点-253℃、H
2比熱3.41kcal/kgとする。
B.ガスタービン式熱電併給装置51を使用した熱電併給一体型合成ガス製造システムの効果
メタンガスを流量10,000Nm
3/h、流体燃料を22Gcal/h、純水を23,000kg/hで供給すると、各装置から送出される生成物の流量は
図5に示す通りになり、熱電併給一体型合成ガス製造システム1aの生産物は次のようになる。
1.合成ガスの収量は、30,000Nm
3/h
2.電力は、約8,300kW
【0033】
本発明にかかる熱電併給一体型合成ガス製造方法は、第1の実施形態の構成に記載された熱電併給一体型合成ガス製造システム1aを第1の実施形態の作動に記載されたように作動させることによって構成することができ、第1の実施形態の効果と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
10:水蒸気改質装置、11:改質器、12:加熱器、20:分配装置、21:第1出口、22:第2出口、30:水素分離装置、31:深冷分離装置、35:圧力変動吸着式水素分離装置、40:混合装置、50:熱電併給装置、51:ガスタービン式熱電併給装置、52:ガスタービン、53:発電機、54:熱交換器:55:純水供給装置、61:燃料電池式熱電併給装置、62:燃料電池、63:冷却システム:64:純水供給装置、65:熱交換器、66:蒸気ボイラー。
【要約】
水蒸気改質装置は、メタンガスおよび水蒸気を水蒸気改質して水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が3:1の水蒸気改質生成ガスを生成する。分配装置は、水蒸気改質生成ガスを第1水蒸気改質生成ガスと第2水蒸気改質生成ガスとに設定割合で分配する。水素分離装置は、分配装置から供給された第2水蒸気改質生成ガスを水素ガスと水素分離ガスとに分離する。混合装置は、分配装置から第1水蒸気改質生成ガスが供給され、水素分離装置から水素分離ガスが供給され、混合して合成ガスを生成する。水蒸気改質生成ガスを第1、第2水蒸気改質生成ガスに分配する設定割合は、混合装置で生成される合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1となるように設定される。ガスタービン式熱電併給装置は、水素分離装置で分離された水素ガスが供給されて電力を生成するとともに、水蒸気改質装置に供給する水蒸気を生成する。