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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/20 20060101AFI20240920BHJP
   H01S 5/18 20210101ALI20240920BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01S5/20
H01S5/18
G03B21/14 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020129992
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026489
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】中川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石沢 峻介
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057640(JP,A)
【文献】特開2020-017663(JP,A)
【文献】特開2020-024978(JP,A)
【文献】特開2018-133517(JP,A)
【文献】特開2019-054127(JP,A)
【文献】特開2019-083232(JP,A)
【文献】特開2019-029522(JP,A)
【文献】特開2013-009002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
H01L 33/00-33/64
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基体と前記発光層との間に設けられ、
前記第1半導体層と前記発光層との積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記積層方向における前記発光層の前記基体と反対側の端と、の間の、前記柱状部の最大径を第1径として、
前記積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記第1半導体層の前記基体側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径以下の径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記第1半導体層の前記基体側の端と、の間の少なくとも一部において、前記柱状部は、前記第1径より小さい径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体と反対側の端と、前記第2半導体層の前記基体と反対側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径以下の径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体と反対側の端と、前記第2半導体層の前記基体と反対側の端と、の間の少なくとも一部において、前記柱状部は、前記第1径よりも小さい径を有する、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記第1半導体層の前記基体側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径よりも小さい径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体とは反対側の端と、前記第2半導体層の前記基体と反対側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径よりも小さい径を有する、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1半導体層は、前記積層方向において、第1中心を有し、
前記第2半導体層は、前記積層方向において、第2中心を有し、
前記発光層は、前記積層方向において、第3中心を有し、
前記第3中心における前記柱状部の径は、前記第1中心における前記柱状部の径、および前記第2中心における前記柱状部の径よりも大きい、発光装置。
【請求項4】
請求項3において、
隣り合う前記柱状部のうち、一方の前記柱状部と他方の前記柱状部とは、前記積層方向における前記第3中心の位置で、互いに接している、発光装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記積層方向における前記第3中心の位置において、一方の前記柱状部と他方の前記柱状部との界面には、結晶欠陥がある、発光装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記発光層は、
ウェル層と、
前記ウェル層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有するバリア層と、
を有し、
前記積層方向における前記第3中心の位置において、一方の前記柱状部の前記バリア層と、他方の前記柱状部の前記バリア層とは、接している、発光装置。
【請求項7】
請求項4または5において、
前記積層方向からの平面視において、前記第2半導体層は、前記発光層の周囲に設けられ、
前記積層方向における前記第3中心の位置において、一方の前記柱状部の前記第2半導体層と、他方の前記柱状部の前記第2半導体層とは、互いに接している、発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
隣り合う前記柱状部のうち、一方の前記柱状部と他方の前記柱状部とは、互いに離間している、発光装置。
【請求項9】
請求項3ないし7のいずれか1項において、
前記柱状部の前記第2中心の径は、前記柱状部の前記第1中心の径よりも小さい、発光装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
前記積層方向からの平面視において、前記第2半導体層は、前記発光層の周囲に設けられている、発光装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
柱状結晶を用いたフォトニック結晶によるレーザーでは、柱状部とその間の屈折率差を利用してフォトニック結晶効果を発現させる。柱状部は、例えば、n型の第1半導体層と、p型の第2半導体層と、第1半導体層と第2半導体層との間に設けられた活性層と、で構成される。このような柱状部では、活性層における平均屈折率を高めて、積層方向における光閉じ込め係数を向上させることが望まれている。
【0003】
例えば特許文献1には、光閉じ込め係数を向上させるために、隣り合う柱状部において、活性層の間に光伝搬層を設け、第1半導体層の間に第1低屈折率部を設け、第2半導体層の間に第2低屈折率部を設けた発光装置が記載されている。特許文献1では、柱状部を形成した後に、隣り合う柱状部の活性層の間に光伝搬層を埋め込んで、光伝搬層と基体との間に第1低屈折率部となる空隙を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-54127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、隣り合う柱状部の間隔が大きいと、隣り合う柱状部の間が光伝搬層で充填されてしまい、空隙が形成されない場合がある。また、隣り合う柱状部の間隔が小さいと、隣り合う柱状部の活性層の間が光伝搬層で埋まらない場合がある。このように、特許文献1では、光伝搬層の積層方向の位置を制御することが難しく、光閉じ込め係数を向上できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基体と前記発光層との間に設けられ、
前記第1半導体層と前記発光層との積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記積層方向における前記発光層の前記基体と反対側の端と、の間の、前記柱状部の最大径を第1径として、
前記積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記第1半導体層の前記基体側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径以下の径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記第1半導体層の前記基体側の端と、の間の少なくとも一部において、前記柱状部は、前記第1径より小さい径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体と反対側の端と、前記第2半導体層の前記基体と反対側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径以下の径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体と反対側の端と、前記第2半導体層の前記基体と反対側の端と、の間の少なくとも一部において、前記柱状部は、前記第1径よりも小さい径を有する。
【0007】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向における前記発光層の前記基体側の端と、前記第1半導体層の前記基体側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径よりも小さい径を有し、
前記積層方向における前記発光層の前記基体とは反対側の端と、前記第2半導体層の前記基体と反対側の端と、の間の全てにおいて、前記柱状部は、前記第1径よりも小さい径を有してもよい。
【0008】
前記発光装置の一態様において、
前記第1半導体層は、前記積層方向において、第1中心を有し、
前記第2半導体層は、前記積層方向において、第2中心を有し、
前記発光層は、前記積層方向において、第3中心を有し、
前記第3中心における前記柱状部の径は、前記第1中心における前記柱状部の径、および前記第2中心における前記柱状部の径よりも大きくてもよい。
【0009】
前記発光装置の一態様において、
隣り合う前記柱状部のうち、一方の前記柱状部と他方の前記柱状部とは、前記積層方向における前記第3中心の位置で、互いに接していてもよい。
【0010】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向における前記第3中心の位置において、一方の前記柱状部と他方の前記柱状部との界面には、結晶欠陥があってもよい。
【0011】
前記発光装置の一態様において、
前記発光層は、
ウェル層と、
前記ウェル層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有するバリア層と、
を有し、
前記積層方向における前記第3中心の位置において、一方の前記柱状部の前記バリア層と、他方の前記柱状部の前記バリア層とは、接していてもよい。
【0012】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向からの平面視において、前記第2半導体層は、前記発光層の周囲に設けられ、
前記積層方向における前記第3中心の位置において、一方の前記柱状部の前記第2半導体層と、他方の前記柱状部の前記第2半導体層とは、互いに接していてもよい。
【0013】
前記発光装置の一態様において、
隣り合う前記柱状部のうち、一方の前記柱状部と他方の前記柱状部とは、互いに離間していてもよい。
【0014】
前記発光装置の一態様において、
前記柱状部の前記第2中心の径は、前記柱状部の前記第1中心の径よりも小さくてもよい。
【0015】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向からの平面視において、前記第2半導体層は、前記発光層の周囲に設けられていてもよい。
【0016】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図3】第1実施形態に係る発光装置の柱状部を模式的に示す断面図。
図4】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】第1実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図7】参考例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図8】柱状部のSEM像。
図9】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図10】第2実施形態に係る発光装置の柱状部を模式的に示す断面図。
図11】第2実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図12】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図13】第3実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。図2は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図2では、柱状部30の第2半導体層36のみを図示している。また、図1は、図2のI-I線断面図である。
【0020】
発光装置100は、図1に示すように、基体10と、積層体20と、第1電極50と、第2電極52と、を有している。
【0021】
基体10は、例えば、板状の形状を有している。基体10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板などである。
【0022】
積層体20は、基体10に設けられている。積層体20は、バッファー層22と、複数の柱状部30と、を有している。
【0023】
バッファー層22は、基体10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。バッファー層22上には、柱状部30を形成するためのマスク層60が設けられている。マスク層60は、例えば、酸化シリコン層、チタン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0024】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層34を基準とした場合、発光層34から第2電極52に向かう方向を「上」とし、発光層34から基体10に向かう方向を「下」として説明する。また、「積層体の積層方向」とは、第1半導体層32と発光層34との積層方向をいう。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。
【0025】
柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30は、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、多角形、円などである。図2に示す例では、柱状部30の第2半導体層36の平面形状は、六角形である。
【0026】
柱状部30は、複数設けられている。複数の柱状部30は、積層方向からの平面視において(以下、単に「平面視において」ともいう)、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、三角格子状に配置されている。複数の柱状部30の最短のピッチは、例えば、250nm程度である。なお、複数の柱状部30の配置は、特に限定されず、正方格子状に配置されていてもよい。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0027】
なお、「柱状部のピッチ」とは、所定の方向に沿って隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0028】
柱状部30は、図1に示すように、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、を有している。
【0029】
第1半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基体10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、n型の半導体層である。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0030】
発光層34は、第1半導体層32上に設けられている。発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。
【0031】
発光層34は、例えば、ウェル層34aとバリア層34bとからなる量子井戸構造を重ねた多重量子井戸構造を有している。ウェル層34aは、例えば、不純物がドープされていないi型のInGaN層である。バリア層34bは、例えば、不純物がドープされていないi型のGaN層である。バリア層34bは、ウェル層34aのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する。なお、便宜上、図1では、複数のバリア層34bを1つの共通の層として図示している。平面視において、バリア層34bは、ウェル層34aの周囲に設けられている。図示の例では、発光層34は、バリア層34bがウェル層34aを覆うコアシェル型の発光層である。
【0032】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、第1半導体層32と導電型の異なる層である。第2半導体層36は、p型の半導体層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層、InGaN層、AlGaN層などである。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込
める機能を有するクラッド層である。図示の例では、第1半導体層32の上面、発光層34の上面、および第2半導体層36の上面は、ファセット面である。
【0033】
ここで、図3は、柱状部30を模式的に示す図2のIII-III線断面図である。
【0034】
第1半導体層32は、図3に示すように、積層方向において、第1中心C1を有している。第1中心C1は、第1半導体層32の最も基体10側の位置B1と、第1半導体層32の最も第2電極52側の位置T1と、の積層方向における中点に位置する。位置B1は、第1半導体層32の基体10側の端である。位置T1は、第1半導体層32の基体10とは反対側の端である。
【0035】
第2半導体層36は、積層方向において、第2中心C2を有している。第2中心C2は、第2半導体層36の最も基体10側の位置B2と、第2半導体層36の最も第2電極52側の位置T2と、の積層方向における中点に位置する。位置B2は、第2半導体層36の基体10側の端である。位置T2は、第2半導体層36の基体10とは反対側の端である。
【0036】
発光層34は、積層方向において、第3中心C3を有している。第3中心C3は、発光層34の最も基体10側の位置B3と、発光層34の最も第2電極52側の位置T3と、の積層方向における中点に位置する。中心C1,C2,C3は、平面視において、柱状部30の中心に位置している。第1半導体層32と発光層34との積層方向は、中心C1と中心C3を通る図示しない仮想直線の方向である。位置B3は、発光層34の基体10側の端である。位置T3は、発光層34の基体10とは反対側の端である。
【0037】
柱状部30の第3中心C3の径D3は、柱状部30の第1中心C1の径D1、および柱状部30の第2中心C2の径D2よりも大きい。図示の例では、柱状部30の第1中心C1の径D1と、柱状部30の第2中心C2の径D2とは、同じである。
【0038】
柱状部30の第1中心C1の径D1は、例えば、50nm以上500nm以下であり、好ましくは100nm以上200nm以下である。径D1を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、かつ、発光層34に内在する歪みを低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅できる。複数の柱状部30の第1半導体層32の径D1は、例えば、互いに等しい。隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の第1半導体層32と、他方の柱状部30の第1半導体層32と、の間の距離は、例えば、1nm以上500nm以下である。
【0039】
なお、「柱状部の第1半導体層の径」とは、柱状部30の第1半導体層32平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の第1半導体層32平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の第1半導体層32の径は、柱状部30の第1半導体層32の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の第1半導体層32の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。このことは、「柱状部の第2半導体層の径」および「柱状部の発光層の径」について、同様である。
【0040】
図示の例では、柱状部30の発光層34のみによって構成される部分の最大径は、柱状部30の第1半導体層32のみによって構成される部分の最大径、および柱状部30の第2半導体層36のみによって構成される部分の最大径よりも大きい。
【0041】
ここで、積層方向における位置B3と位置T3との間の柱状部30の最大径を第1径とする。図示の例では、第1径は、径D3と等しい。積層方向における位置B3と位置B1
との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径以下の径を有している。積層方向における位置B3と位置B1との間の少なくとも一部において、柱状部30は、第1径より小さい径を有している。図示の例では、積層方向における位置B3と位置B1との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径よりも小さい径を有している。
【0042】
積層方向における位置T3と位置T2との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径以下の径を有している。積層方向における位置T3と位置T2との間の少なくとも一部において、柱状部30は、第1径よりも小さい径を有している。図示の例では、積層方向における位置T3と位置T2との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径よりも小さい径を有している。
【0043】
柱状部30は、図3に示すように、例えば、第1部分40と、第2部分42と、第3部分44と、を有している。第1部分40は、柱状部30の第1半導体層32のみで構成されている部分であって、径がD1となる部分である。第1中心C1は、例えば、第1部分40に位置している。第2部分42は、柱状部30の第2半導体層36のみで構成されている部分であって、径がD2となる部分である。第2中心C2は、例えば、第2部分42に位置している。第3部分44は、柱状部30の発光層34のみで構成されている部分であって、径がD3となる部分である。第3中心C3は、例えば、第3部分44に位置している。
【0044】
図1に示すように、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と他方の柱状部30とは、積層方向における第3中心C3の位置Pで、互いに接している。図示の例では、位置Pにおいて、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の発光層34のバリア層34bと、他方の柱状部30の発光層34のバリア層34bとは、互いに接している。隣り合う柱状部30は、発光層34によって架橋構造を有している。隣り合う柱状部30の第1半導体層32の間は、例えば、空隙である。隣り合う柱状部30の第2半導体層36の間は、例えば、空隙である。
【0045】
積層方向における第3中心C3の位置Pにおいて、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と他方の柱状部30との界面2には、結晶欠陥がある。一方の柱状部30の発光層34と、他方の柱状部30の発光層34とは、それぞれエピタキシャル成長によって成膜されるため、一方の柱状部30の発光層34と、他方の柱状部30の発光層34は、連続的に成膜されない。そのため、一方の柱状部30の発光層34と、他方の柱状部30の発光層34と、の間の界面2には、格子欠陥である結晶欠陥が存在する。結晶欠陥は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope :TEM)によって観察することができる。また、一方の柱状部30の発光層34および他方の柱状部30の発光層34において、結晶が連続している部分が存在してもよい。
【0046】
第1電極50は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極50とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極50は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極50は、バッファー層22を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極50は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極50としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0047】
第2電極52は、第2半導体層36上に設けられている。第2電極52は、第2半導体層36と電気的に接続されている。第2電極52は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極52としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0048】
なお、図示はしないが、第2半導体層36と第2電極52との間にコンタクト層が設けられていてもよい。コンタクト層は、例えば、p型のGaN層である。コンタクト層は、柱状部30ごとに設けられて柱状部30を構成していてもよいし、複数の柱状部30に跨がって設けられた1つの層であってもよい。
【0049】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、i型の発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極50と第2電極52との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34で電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、第1半導体層32および第2半導体層36により面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成し、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に射出する。
【0050】
発光装置100では、フォトニック結晶の効果によって角度分布が非常に狭い面発光装置を実現できる。発光装置100は、プロジェクター光源や照明用光源として応用される。
【0051】
なお、上記では、InGaN系の発光層34について説明したが、発光層34としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0052】
発光装置100は、例えば、以下の作用効果を奏することができる。
【0053】
発光装置100では、積層方向における位置B3と位置T3との間の柱状部30の最大径を第1径として、積層方向における位置B3と位置B1との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径以下の径を有し、積層方向における位置B3と位置B1との間の少なくとも一部において、柱状部30は、第1径より小さい径を有している。さらに、積層方向における位置T3と位置T2との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径以下の径を有し、積層方向における位置T3と位置T2との間の少なくとも一部において、柱状部30は、第1径よりも小さい径を有している。そのため、位置B3と位置T3との間の柱状部30における面内方向の平均屈折率を、位置B3と位置T1との間の柱状部30における面内方向の平均屈折率、および位置T3と位置T2との間の柱状部30における面内方向の平均屈折率よりも大きくすることができる。これにより、発光装置100では、例えば積層方向における位置B1と位置T2との間の柱状部の径が同じである場合に比べて、光閉じ込め係数を向上させることができる。その結果、発振器しきい値の低減など発光装置の性能を向上させることができる。なお、図1には、発光装置100において、積層方向の位置に対する光強度を示すグラフを図示している。
【0054】
さらに、発光装置100では、隣り合う柱状部30の間に材料を埋め込むことによって柱状部30における面内方向の平均屈折率を制御していないので、例えば、平均屈折率を容易かつ確実に調整することができる。
【0055】
発光装置100では、積層方向における位置B3と位置B1との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径よりも小さい径を有し、積層方向における位置T3と位置T2との間の全てにおいて、柱状部30は、第1径よりも小さい径を有している。そのため、発光装置100では、より確実に、光閉じ込め係数を向上させることができる。
【0056】
発光装置100では、柱状部30の第3中心C3の径D3は、柱状部30の第1中心C
1の径D1、および柱状部30の第2中心C2の径D2よりも大きい。そのため、第3中心C3における面内方向の平均屈折率を、第1中心C1における面内方向の平均屈折率、および第2中心C2における面内方向の平均屈折率よりも大きくすることができる。これにより、発光装置100では、例えば径D1,D2,D3が互いに等しい場合に比べて、光閉じ込め係数を向上させることができる。
【0057】
発光装置100では、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と他方の柱状部30とは、積層方向における第3中心C3の位置Pで、互いに接している。そのため、発光装置100では、一方の柱状部30と他方の柱状部30とが互いに離間している場合に比べて、第3中心C3における面内方向の平均屈折率を大きくすることができる。
【0058】
発光装置100では、積層方向における第3中心C3の位置Pにおいて、隣り合う前記柱状部30のうち、一方の柱状部30のバリア層34bと、他方の柱状部30のバリア層34bとは、接している。そのため、発光装置100は、ウェル層34aを、界面2において生じる結晶欠陥から離間させることができる。これにより、結晶欠陥を介して非発光再結合となる電流を低減することができる。
【0059】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4および図5は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0060】
図4に示すように、基体10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0061】
次に、バッファー層22上にマスク層60を形成する。マスク層60は、例えば、スパッタ法、EB(Electron Beam)蒸着法等でバッファー層22上に成膜された膜に、周期的に開口部を形成することによって形成できる。開口部の形成は、例えば、フォトリソグラフィーおよびドライエッチングによるパターニングや、EBリソグラフィーおよびドライエッチングによるパターニングによって行われる。
【0062】
次に、マスク層60をマスクとして、バッファー層22上に、第1半導体層32をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0063】
図5に示すように、第1半導体層32上に、発光層34をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。例えば、InGaN層であるウェル層34aと、GaN層であるバリア層34bと、を有する発光層34を形成する場合、成長温度やInとGaNとの比を調整することによって、Inを発光層34の中心近傍に集めることができる。これにより、平面視においてGaN層に囲まれたInGaN層を形成することができる。
【0064】
発光層34は、横方向(面内方向)の成長を促進する成長条件で成長させ、隣り合う柱状部30の発光層34を接触させる。例えば、成長温度や、発光層34のIII族の原子とV族の原子と比を調整することによって、横方向の成長を促進させることができる。MOCVD法で成長させる場合は、パルス供給において発光層34のIII族の原子とV族の原子と比を調整してもよい。
【0065】
図1に示すように、発光層34上に、第2半導体層36をエピタキシャル成長させる。
エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0066】
以上の工程により、柱状部30を形成することができる。
【0067】
次に、柱状部30上に第2電極52を形成する。次に、バッファー層22上に第1電極50を形成する。第1電極50および第2電極52は、例えば、真空蒸着法によって形成される。なお、第1電極50と第2電極52との形成順序は、特に限定されない。
【0068】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0069】
1.3. 発光装置の変形例
次に、第1実施形態の変形例に係る発光装置ついて、図面を参照しながら説明する。図6は、第1実施形態の変形例に係る発光装置110を模式的に示す断面図である。
【0070】
以下、第1実施形態の変形例に係る発光装置110において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0071】
上述した発光装置100では、図1に示すように、隣り合う柱状部30うち、一方の柱状部30と他方の柱状部30とは、積層方向における第3中心C3の位置Pで、互いに接していた。
【0072】
これに対し、発光装置110では、図6に示すように、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と、他方の柱状部30とは、互いに離間している。隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の発光層34と、他方の柱状部30の発光層34とは、互いに離間している。一方の柱状部30の発光層34と、他方の柱状部30の発光層34と、の間の距離は、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0073】
発光装置110の製造方法では、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の発光層34と他方の柱状部30の発光層34とが互いに接しない程度に、発光層34を横方向に成長させる。
【0074】
発光装置110では、上記のように、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と、他方の柱状部30とは、互いに離間している。そのため、隣り合う柱状部30を絶縁することができる。これにより、複数の柱状部30に注入される電流量のばらつきを低減することがきる。その理由について、以下に説明する。
【0075】
図6に示すように、例えば、4本の柱状部30a,30b,30c,30dを形成する際に、製造のばらつきにより、第1半導体層32bが高抵抗で、第1半導体層32a,32c,32dが低抵抗になったとする。また、柱状部30a,30b,30c,30dを形成する際に、製造のばらつきにより、第2半導体層36a,36c,36dが高抵抗で、第2半導体層36bが低抵抗になったとする。
【0076】
この場合、発光装置110のように、隣り合う柱状部30が絶縁されていると、柱状部30aの抵抗は、第1半導体層32aの抵抗と第2半導体層36aの抵抗との合計となる。柱状部30b,30c,30dについても同様である。電流は、図6に示す破線の矢印のように、柱状部30a,30b,30c,30dの各々の、第2半導体層36a,36b,36c,36dを通って、第1半導体層32a,32b,32c,32dに流れる。
【0077】
図7に示すように、隣り合う柱状部30が発光層34で接していると、電流は、低抵抗な第2半導体層36bを優先的に流れた後、発光層34を介して、低抵抗な第1半導体層32a,32c,32dを優先的に流れる。
【0078】
発光装置110では、ウェル層34aを、柱状部30の側壁から離間させている。これにより、柱状部30の側壁付近で非発光再結合となる電流を低減することができる。
【0079】
さらに、発光装置110では、隣り合う柱状部30は、隣り合う柱状部30間の空隙によって絶縁されているため、柱状部30に歪が生じ難い。例えば、隣り合う柱状部30間に絶縁層を設けて隣り合う柱状部30を絶縁する場合には、柱状部30の熱膨張と絶縁層の熱膨張の差によって製造時の降温工程で歪が生じ、結晶欠陥を誘発させる可能性がある。
【0080】
上述した発光装置100および発光装置110では、それぞれ図3および図6に示すように、柱状部30の第1中心C1の径D1と、柱状部30の第2中心C2の径D2とは、等しかった。これに限らず、柱状部30の第2中心C2の径D2は、柱状部30の第1中心C1の径D1よりも小さくてもよい。
【0081】
例えば、第1半導体層32としてGaN層を用い、第2半導体層36としてGaN層よりも格子定数が大きいInGaN層を用いることによって、結晶が歪みの発生を回避するために自発的に凝集する原料を利用して、径D2を径D1より小さくすることができる。
【0082】
図8は、MBE法によって作成した柱状部のSEM像(鳥瞰図)である。図8に示すように、p型のInGaN層の部分(柱状部の上部)は、他の部分に比べて、径が小さくなっていることがわかる。
【0083】
なお、第2半導体層36をエッチングすることにより、径D2を径D1より小さくしてもよい。
【0084】
柱状部30の第2中心C2の径D2は、柱状部30の第1中心C1の径D1よりも小さくてもよい。この場合、第2中心C2における面内方向の平均屈折率を、第1中心C1における面内方向の平均屈折率をよりも小さくすることができる。これにより、例えば、発光層34で発生した光が第2電極52で吸収されることを抑制することができる。
【0085】
また、隣り合う柱状部30の間に絶縁層が設けられていてもよい。平面視において、絶縁層は、柱状部30の周囲に設けられている。発光層34で発生した光は、絶縁層を通って面内方向に伝搬する。絶縁層は、例えば、酸化シリコン層である。絶縁層は、例えば、ALD(Atomic layer deposition)法などによって形成される。
【0086】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。図10は、第2実施形態に係る発光装置200の柱状部30を模式的に示す断面図である。
【0087】
以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0088】
上述した発光装置100では、図1に示すように、積層方向における第3中心C3の位
置Pにおいて、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30のバリア層34bと、他方の柱状部30のバリア層34bとは、互いに接していた。
【0089】
これに対し、発光装置200では、図9に示すように、積層方向における第3中心C3の位置Pにおいて、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の第2半導体層36と、他方の柱状部30の第2半導体層36とは、互いに接している。位置Pにおいて、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の発光層34と、他方の柱状部30の発光層34とは、互いに離間している。隣り合う柱状部30は、第2半導体層36によって架橋構造を有している。界面2は、第2半導体層36で構成されている。発光装置200では、発光層34を、結晶欠陥が生じる界面2から離間させることができる。これにより、結晶欠陥を介して非発光再結合となる電流を低減することができる。
【0090】
発光装置200では、図9および図10に示すように、平面視において、第2半導体層36は、発光層34の周囲に設けられている。第2半導体層36は、発光層34の側面および上面に設けられている。そのため、発光装置200では、第2半導体層36が発光層34の上面にのみ設けられている場合に比べて、第2半導体層36と発光層34との接触面積を大きくすることができる。これにより、発光層34に効率よく電流を注入することができる。その結果、発光層34における再結合分布の均一性を向上させることができる。また、発光層34のバリア層34bにおける非発光再結合を抑えることができ、発光効率を向上させることができる。p型の半導体層である第2半導体層36は、n型の半導体層である第1半導体層32よりも導電性が低い。そのため、第2半導体層36と発光層34との接触面積を大きくすることが特に好ましい。発光層34の周囲に設けられている第1半導体層32と第2半導体層36とは、離間している。位置B3は、位置B2よりも基体10側に位置している。位置B2は、積層方向において位置T1と位置B3との間に位置している。
【0091】
図示の例では、柱状部30の発光層34のみによって構成される部分の最大径と、柱状部30の第1半導体層32のみによって構成される部分の最大径とは、等しい。積層方向における位置T3と位置T2との間の一部において、柱状部30は第1径に等しい径を有しているが、積層方向における位置T3と位置T2との間の他の一部において、柱状部30は第1径よりも小さい径を有している。また、位置B3と位置B1との間の全てにおいて、柱状部30は第1径より小さい径を有している。
【0092】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図11は、第2実施形態に係る発光装置200の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0093】
発光装置200の製造方法では、図11に示すように、柱状部30の発光層34のみによって構成される部分の最大径と、柱状部30の第1半導体層32のみによって構成される部分の最大径とが等しくなるように、発光層34を成長させる。
【0094】
次に、図9に示すように、発光層34の側面および上面を覆うように成長する条件でp型の半導体層を成長させ、次に、横方向の成長を抑えた状態でp型の半導体層を成長させる。これにより、第2半導体層36を形成することができる。
【0095】
以上のこと以外は、発光装置200の製造方法は、発光装置100の製造方法と基本的に同じである。
【0096】
2.3. 発光装置の変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る発光装置ついて、図面を参照しながら説明する。図12は、第2実施形態の変形例に係る発光装置210を模式的に示す断面図である。
【0097】
以下、第2実施形態の変形例に係る発光装置210において、上述した第2実施形態に係る発光装置200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0098】
上述した発光装置100では、図9に示すように、隣り合う柱状部30うち、一方の柱状部30と他方の柱状部30とは、積層方向における第3中心C3の位置Pで、互いに接していた。
【0099】
これに対し、発光装置210では、図12に示すように、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と、他方の柱状部30とは、互いに離間している。隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の第2半導体層36と、他方の柱状部30の第2半導体層36とは、互いに離間している。
【0100】
発光装置210の製造方法では、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30の第2半導体層36と他方の柱状部30の第2半導体層36とが互いに接しない程度に、第2半導体層36を横方向に成長させる。
【0101】
発光装置210では、隣り合う柱状部30のうち、一方の柱状部30と、他方の柱状部30とは、互いに離間していため、上述した発光装置110と同様に、複数の柱状部30に注入される電流量のばらつきを低減することがきる。
【0102】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図13は、第3実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0103】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0104】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図13では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0105】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子902Rと、第2光学素子902Gと、第3光学素子902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0106】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rによって集光される。なお、第1光学素子902Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子902Gおよび第3光学素子902Bについても同様である。
【0107】
第1光学素子902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910
に投射する。
【0108】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gによって集光される。
【0109】
第2光学素子902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0110】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bによって集光される。
【0111】
第3光学素子902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0112】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0113】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0114】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0115】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使
用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0116】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0117】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイのバックライト、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機
器等の光源がある。
【0118】
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
【0119】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0120】
2…界面、10…基体、20…積層体、22…バッファー層、30,30a,30b,30c,30d…柱状部、32,32a,32b,32c,32d…第1半導体層、34…発光層、34a…ウェル層、34b…バリア層、36,36a,36b,36c,36d…第2半導体層、40…第1部分、42…第2部分、44…第3部分、50…第1電極、52…第2電極、60…マスク層、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、110,200,210…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1光学素子、902G…第2光学素子、902B…第3光学素子、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置、910…スクリーン
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