(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】二槽式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20240920BHJP
D06F 29/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D06F39/10 C
D06F29/00 A
(21)【出願番号】P 2020130153
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晴美
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-058280(JP,U)
【文献】実開昭57-058389(JP,U)
【文献】実開昭59-133183(JP,U)
【文献】実開昭53-100611(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/10
D06F 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる内面部を有し、洗濯物を洗濯するための洗濯槽であって、前記内面部に設けられた溢水口と、前記洗濯槽内から前記溢水口を通る水を受け入れる溢水室とを有する洗濯槽と、
前記洗濯槽の横に並んで配置され、洗濯物を脱水するための脱水槽と、
前記溢水口に取り付けられた溢水口カバーであって、前記溢水口カバーにおいて前記溢水室内に臨む裏面部から前記溢水室内に突出して上下方向に延びる縦リブと、前記縦リブに設けられて前記縦リブの突出方向に延びて上下方向に並ぶ複数の横リブとが設けられた溢水口カバーと、
前記洗濯槽において前記溢水口よりも下側の部分に接続されて、前記洗濯槽内の水を排出する排水路と、
前記溢水室内に配置されて上下方向に伸縮可能な伸縮部を有し、前記伸縮部に設けられた入口から前記溢水室内の水を取り込んで前記排水路へ導く溢水路と、
前記溢水口カバーによって上下方向にスライド可能に支持されたスライド部材とを含み、
前記スライド部材は、
前記溢水口カバーにおいて前記裏面部とは反対側の表面部に配置されて前記洗濯槽内に露出され、前記スライド部材をスライドさせるために操作される摘み部と、
前記溢水室内に配置されて前記伸縮部を保持する保持部と、
前記複数の横リブのうち上下方向に隣り合う二つの横リブの間に嵌ることによって前記スライド部材を上下方向において位置決めする位置決め部とを有し、
前記位置決め部は、前記縦リブ側へ膨出するように湾曲して前記二つの横リブの間に嵌る本体部と、前記縦リブ側とは反対側へ膨出するように湾曲して前記本体部を支持する支持部とを有
し、
前記位置決め部には、前記支持部を前記裏面部側から切り欠いた切欠きが設けられ、
前記支持部は、前記突出方向において前記本体部よりも幅狭であり、
前記スライド部材に接触することにより前記スライド部材の上昇を止めるストッパが、前記溢水口カバーに設けられ、
前記位置決め部の前記本体部を通る水平な平面で切断した断面を下側から見ると、前記ストッパの少なくとも一部は、前記切欠きの中に配置されている、二槽式洗濯機。
【請求項2】
前記支持部は、上下方向における前記本体部の両側に設けられる、請求項1に記載の二槽式洗濯機。
【請求項3】
前記摘み部は、上下方向において前記位置決め部と前記保持部との間に配置される、請求項1又は2に記載の二槽式洗濯機。
【請求項4】
前記二つの横リブの間に嵌ったときの前記本体部は、上下方向から見て、前記突出方向における当該横リブの略全域と重なって配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の二槽式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二槽式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の二槽式洗濯機は、洗濯槽と、洗濯槽の側壁の一部に溢水室を形成するように装着される溢水口カバーとを含む。洗濯槽内の水位が所定水位まで上昇すると、洗濯槽内の水が溢水室に溢れて機外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には具体的な記載はないが、二槽式洗濯機は、洗濯槽内から溢水室に溢れた水を機外へ排出するための溢水路を含むことが一般的である。このような溢水路は、溢水室に配置された伸縮部を有し、伸縮部には、溢水室内の水を溢水路内に取り込むための入口が設けられる。また、溢水口カバーには、上下方向にスライド可能なスライド部材が設けられる。スライド部材は、洗濯槽内に露出される摘み部と、溢水室内に配置されて伸縮部を保持する保持部とを有する。使用者が摘み部を摘まんで上下方向に動かすと、スライド部材がスライドする。すると、保持部によって保持された伸縮部が上下方向に伸縮するので、入口の高さ位置が変更される。これにより、洗濯槽内の水が溢水室から機外に排出されるときの洗濯槽内の水位を調整することができる。
【0005】
このような構成では、溢水口カバーにおいて溢水室内に臨む裏面部に、上下方向に並ぶ複数のリブが設けられる。スライド部材は、リブに係合する位置決め部を有する。溢水路の伸縮部の入口の高さ位置を変更するために使用者がスライド部材をスライドさせる際、位置決め部は、リブを乗り越える。使用者がスライド部材のスライドを停止すると、位置決め部が複数のリブのうち上下方向に隣り合う二つのリブの間に嵌るので、スライド部材が上下方向において位置決めされる。これにより、変更後の入口の高さ位置が維持される。
【0006】
従来の位置決め部は、溢水口カバーのリブと平行に延びる爪であって、剛性が比較的高い。一方、それぞれのリブでは、成形時の寸法などについてのばらつきが、ある程度存在する。隣り合うリブの間隔が、ばらつきなどに起因して大きい場合には、スライド部材の位置決めが緩いので、洗濯槽内の水位の昇降に応じてスライド部材が勝手にスライドしてしまう。このようなばらつきを考慮して、従来の位置決め部は、隣り合う横リブの間にきつく嵌るように大きめに成形される。そのため、スライド部材を勝手にスライドしないように強固に位置決めできるが、スライド部材のスライドが固い。そのため、スライド部材をスライドさせようとする使用者にとって、操作性が悪い。
【0007】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、溢水路の伸縮部を保持するスライド部材についての位置決めの確実性及び操作性の向上を図れる二槽式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上下方向に延びる内面部を有し、洗濯物を洗濯するための洗濯槽であって、前記内面部に設けられた溢水口と、前記洗濯槽内から前記溢水口を通る水を受け入れる溢水室とを有する洗濯槽と、前記洗濯槽の横に並んで配置され、洗濯物を脱水するための脱水槽と、前記溢水口に取り付けられた溢水口カバーであって、前記溢水口カバーにおいて前記溢水室内に臨む裏面部から前記溢水室内に突出して上下方向に延びる縦リブと、前記縦リブに設けられて前記縦リブの突出方向に延びて上下方向に並ぶ複数の横リブとが設けられた溢水口カバーと、前記洗濯槽において前記溢水口よりも下側の部分に接続されて、前記洗濯槽内の水を排出する排水路と、前記溢水室内に配置されて上下方向に伸縮可能な伸縮部を有し、前記伸縮部に設けられた入口から前記溢水室内の水を取り込んで前記排水路へ導く溢水路と、前記溢水口カバーによって上下方向にスライド可能に支持されたスライド部材とを含み、前記スライド部材が、前記溢水口カバーにおいて前記裏面部とは反対側の表面部に配置されて前記洗濯槽内に露出され、前記スライド部材をスライドさせるために操作される摘み部と、前記溢水室内に配置されて前記伸縮部を保持する保持部と、前記複数の横リブのうち上下方向に隣り合う二つの横リブの間に嵌ることによって前記スライド部材を上下方向において位置決めする位置決め部とを有し、前記位置決め部が、前記縦リブ側へ膨出するように湾曲して前記二つの横リブの間に嵌る本体部と、前記縦リブ側とは反対側へ膨出するように湾曲して前記本体部を支持する支持部とを有する、二槽式洗濯機である。
【0009】
また、本発明は、前記支持部が、上下方向における前記本体部の両側に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記摘み部が、上下方向において前記位置決め部と前記保持部との間に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記二つの横リブの間に嵌ったときの前記本体部が、上下方向から見て、前記突出方向における当該横リブの略全域と重なって配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記位置決め部には、前記支持部を前記裏面部側から切り欠いた切欠きが設けられ、前記支持部が、前記突出方向において前記本体部よりも幅狭であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溢水路においてスライド部材の保持部によって保持された伸縮部の入口の高さ位置を変更するために、使用者がスライド部材を上下方向にスライドさせる際、スライド部材の位置決め部は、溢水口カバーの裏面部における縦リブに設けられた複数の横リブを乗り越える。使用者がスライド部材のスライドを停止すると、位置決め部が複数の横リブのうち上下方向に隣り合う二つのリブの間に嵌るので、スライド部材が上下方向において位置決めされる。これにより、変更後の入口の高さ位置が維持される。
この位置決め部は、二つのリブの間に実際に嵌る本体部と、本体部を支持する支持部とを有し、本体部は、縦リブ側へ膨出するように湾曲し、支持部は、縦リブ側とは反対側へ膨出するように湾曲するので、本体部及び支持部の両方が弾性変形できる。そのため、上下方向に隣り合う横リブの間隔が、ばらつきなどに起因して大きくても、本体部が、上下方向に広がるように弾性変形して、これらの横リブの間にきつく嵌るので、スライド部材を勝手にスライドしないように強固に位置決めできる。一方、使用者が摘み部を摘まんでスライド部材をスライドさせようとする際、本体部及び支持部の両方が弾性変形することにより、本体部が、隣り合う横リブの間から円滑に外れて横リブを円滑に乗り越えるので、使用者は、スライド部材を円滑にスライドさせることができる。以上の結果、スライド部材についての位置決めの確実性及び操作性の向上を図れる。
【0014】
また、本発明によれば、使用者が摘み部を摘まんでスライド部材を上側及び下側のどちらにスライドさせようとしても、上下方向における本体部の両側に設けられた支持部が弾性変形することにより、本体部が、隣り合う横リブの間から円滑に外れて横リブを円滑に乗り越える。そのため、スライド部材を上側及び下側のどちらにも円滑にスライドさせることができるので、スライド部材についての操作性の一層の向上を図れる。
【0015】
また、本発明によれば、摘み部は、上下方向において位置決め部と保持部との間というバランスの良い位置に配置されるので、使用者にとって摘まんで動かしやすい。そのため、スライド部材についての操作性の一層の向上を図れる。
【0016】
また、本発明によれば、二つの横リブの間に嵌ったときの位置決め部の本体部は、上下方向から見て、溢水口カバーの裏面部の縦リブの突出方向における当該横リブの略全域と重なって配置される。これにより、二つの横リブの間に挟まれた本体部は、これらの横リブに広範囲で接触することによって、これらの横リブの間に一層きつく嵌るので、スライド部材を勝手にスライドしないように一層強固に位置決めできる。そのため、スライド部材についての位置決めの確実性の一層の向上を図れる。
【0017】
また、本発明によれば、位置決め部には、支持部を溢水口カバーの裏面部側から切り欠いた切欠きが設けられることによって、支持部が縦リブの突出方向において本体部よりも幅狭であるので、本体部において支持部よりも裏面部側へはみ出した根元部分の剛性を意図的に低下させることができる。
使用者がスライド部材をスライドさせる際、スライド部材の位置決め部は、縦リブ及び複数の横リブを撓ませながら乗り越える。このとき、縦リブ及び横リブのそれぞれでは、裏面部側の基端部とは反対側の先端部が撓むのだが、位置決め部の本体部において剛性が低く設定された根元部分が縦リブの基端部によって押されて縦リブの先端部とは逆向きに撓むことにより、本体部全体が、撓んだ縦リブ及び横リブと略平行な姿勢になる。これにより、スライド部材のスライドが停止して二つの横リブの間に挟まれたときの本体部は、これらの横リブに広範囲で接触することによって、これらの横リブの間に一層きつく嵌るので、スライド部材を勝手にスライドしないように一層強固に位置決めできる。そのため、スライド部材についての位置決めの確実性の一層の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の一実施形態に係る二槽式洗濯機の模式的な縦断面正面図である。
【
図2】二槽式洗濯機に含まれる溢水口カバー及びスライド部材の斜視図である。
【
図3】
図2とは別の方向から見た溢水口カバー及びスライド部材の斜視図である。
【
図8】溢水口カバー及びスライド部材の背面図である。
【
図9】
図8のA-A矢視断面を含む要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る二槽式洗濯機1の模式的な縦断面正面図である。なお、以下では、
図1における上下方向を二槽式洗濯機1の上下方向Zといい、上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。左右方向については、各図の紙面の左右方向に基いて二槽式洗濯機1及び二槽式洗濯機1の構成部品の方向を特定する。そのため、ある図における左右方向が別の図における左右方向とは逆向きになる場合がある。
【0020】
二槽式洗濯機1は、その外郭をなす筐体2と、筐体2内に配置された洗濯槽3と、洗濯槽3内に収容された回転翼4と、回転翼4を回転させる電動のモータ5と、筐体2内で洗濯槽3の横に並んで配置された外槽6と、外槽6内に配置された脱水槽7と、脱水槽7を回転させる電動のモータ8とを含む。
【0021】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる第1開口2B及び第2開口2Cが左右方向に横並びで形成される。第1開口2Bは、第2開口2Cよりも左側に配置される。上面2Aには、第1開口2Bを開閉する第1扉9Aと、第2開口2Cを開閉する第2扉9Bとが設けられる。上面2Aには第1開口2B及び第2開口2Cよりも奥側には、タッチパネルなどで構成された表示操作部10が設けられる。
【0022】
洗濯槽3は、この実施形態では、筐体2の内部空間における左領域に配置される。洗濯槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの上端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Bと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁3Cとを有する有底円筒状に形成される。洗濯槽3は、その円中心を通って上下方向Zに延びる中心軸Jを有する。中心軸Jを基準とする径方向を径方向Rという。径方向Rのうち、中心軸Jから離れる方向を径方向外側R1といい、中心軸Jに近付く方向を径方向内側R2という。
【0023】
円周壁3Aの内周面は、洗濯槽3において上下方向Zに延びる内面部3Dである。内面部3Dの上下方向Zにおける途中には、溢水口3Eが設けられる。溢水口3Eは、縦長の開口である。円周壁3Aには、溢水口3Eを縁取りつつ横に突出した中空の突出部3Fが設けられる。突出部3Fの内部空間は、溢水口3Eから横、具体的には
図1では右側へ窪んだ溢水室3Gである。以下では、溢水室3Gを、洗濯槽3内、つまり洗濯槽3の内部空間3Hとは別の空間とみなす。溢水室3Gは、内部空間3Hに対して径方向外側R1に配置され、溢水口3Eを介して内部空間3Hに連通した状態にある。
【0024】
環状壁3Bの内側には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通する出入口3Iが形成される。出入口3Iは、筐体2の第1開口2Bに対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。環状壁3Bには、出入口3Iを開閉する蓋11が設けられる。使用者は、第1扉9A及び蓋11を開いて第1開口2B及び出入口3Iを開放し、洗濯槽3に対して洗濯物L1を出し入れする。底壁3Cは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Cの円中心位置には、底壁3Cを貫通する貫通穴3Jが形成される。
【0025】
二槽式洗濯機1は、蛇口につながった給水路12と、給水路12の途中に設けられた給水弁13と、機外つまり筐体2の外まで引き出された排水路14と、排水路14の途中に設けられた排水弁15とをさらに含む。
【0026】
給水路12は、第1分岐路12Aと第2分岐路12Bとに分岐し、第1分岐路12Aが環状壁3Bに上側Z1から接続される。第2分岐路12Bは、外槽6に接続される。給水路12において第1分岐路12Aと第2分岐路12Bとの分岐位置には、切替部材16が設けられる。切替部材16は、筐体2の上面2Aにおいて表示操作部10の周辺に配置されたレバー(図示せず)の操作に応じて、蛇口からの水道水を第1分岐路12A及び第2分岐路12Bのどちらかに流す。第1分岐路12Aを流れた水道水は、洗濯槽3に供給されて、洗濯槽3内に溜まる。洗濯槽3内の水位が、洗濯槽3の円周壁3Aの溢水口3Eの下端よりも上回ると、洗濯槽3内の水が溢水口3Eを通って溢水室3Gに流れ、溢水室3G内に受け入れられる。給水弁13は、給水路12において分岐位置よりも蛇口に近い上流部12Cに設けられ、給水を開始したり停止したりするために開閉される。
【0027】
排水路14は、洗濯槽3において溢水口3Eよりも下側Z2の部分、具体的には底壁3Cに接続され、洗濯槽3内の水を機外に排出する。排水弁15は、洗濯槽3の排水を開始したり停止したりするために開閉される。
【0028】
二槽式洗濯機1は、溢水室3G内の水を排出するための溢水路20と、溢水口3Eに取り付けられた溢水口カバー21と、溢水口カバー21によって上下方向Zにスライド可能に支持されたスライド部材22とをさらに含む。
【0029】
溢水路20は、その上端部として溢水室3G内に配置される伸縮部20Aを有する。溢水路20は、伸縮部20Aから洗濯槽3の突出部3Fの下壁3Kを貫通して下側Z2へ延びて、排水路14において排水弁15よりも機外に近い下流側の部分に接続される。なお、下壁3Kと溢水路20との隙間は、水が漏れないように密封される。伸縮部20Aは、例えば蛇腹ホースによって構成され、上下方向Zに伸縮可能である。伸縮部20Aには、入口20Bが設けられる。一例として、入口20Bは、伸縮部20Aの上端に設けられて、上側Z1を向いて開口した状態にある。溢水路20において伸縮部20Aよりも排水路14に近い下流部20Cは、伸縮部20Aと同様に蛇腹ホースによって構成されてもよいし、蛇腹が存在しないものの可撓性を有するホースで構成されてもよい。
【0030】
溢水口カバー21は、縦長の板状に形成される。溢水口カバー21は、径方向内側R2から溢水室3Gを覆う。この状態の溢水口カバー21では、径方向内側R2の表面部21Aが洗濯槽3内に臨み、径方向外側R1の裏面部21Bが溢水室3G内に臨む。表面部21Aは、溢水口カバー21において裏面部21Bとは反対側に配置される。溢水口カバー21には、溢水口カバー21を板厚方向、つまり径方向Rに貫通するスリット状の通水穴21Cが、複数形成される。洗濯槽3内から溢水口3Eを通って溢水室3G内に流れ込む水は、厳密には、通水穴21Cを通って溢水室3G内に流れ込む。溢水口カバー21については、追って詳しく説明する。
【0031】
スライド部材22は、溢水口カバー21の表面部21Aに配置されて洗濯槽3内に露出された摘み部23と、溢水室3G内に配置されて溢水路20の伸縮部20Aを保持する保持部24とを有する。使用者は、筐体2の第1開口2B及び洗濯槽3の出入口3Iからスライド部材22にアクセスして、摘み部23を摘まんで上下方向Zに操作することによって、スライド部材22の全体を上下方向Zにスライドさせることができる。スライド部材22のスライドに応じて、伸縮部20Aが上下方向Zに伸縮するので、伸縮部20Aの入口20Bの高さ位置が変更される。スライド部材22についても、追って詳しく説明する。
【0032】
回転翼4は、いわゆるパルセータであり、中心軸Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽3の底壁3C上に配置される。回転翼4には、その円中心から中心軸Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸30が設けられる。回転軸30の下端部は、底壁3Cの貫通穴3Jを通って底壁3Cよりも下側Z2に位置してモータ5に接続される。モータ5が作動すると、モータ5の駆動力が回転軸30に伝達されて回転翼4が回転する。
【0033】
外槽6は、この実施形態では、筐体2の内部空間における右領域に配置され、洗濯槽3に右側から並ぶ。外槽6は、上端に出入口6Aを有する有底円筒状に形成される。出入口6Aは、筐体2の第2開口2Cに対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。外槽6には、出入口6Aを開閉する蓋31が設けられる。外槽6の底壁の円中心位置には、この底壁を上下方向Zに貫通する貫通穴6Bが形成される。
【0034】
脱水槽7は、外槽6よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、外槽6内に同軸状で収容される。脱水槽7は、内部に洗濯物L2を収容することができる。脱水槽7の上端には、出入口7Aが形成される。出入口7Aは、外槽6の出入口6Aと筐体2の第2開口2Cとに下側Z2から連通した状態にある。使用者は、第2扉9B及び蓋31を開いて第2開口2C、出入口6A及び出入口7Aを開放し、脱水槽7に対して洗濯物L2を出し入れする。
【0035】
外槽6内に収容された状態の脱水槽7は、上下方向Zに延びる中心軸(図示せず)まわりに回転可能である。脱水槽7には、貫通穴7Bが複数形成される。脱水槽7の底壁には、脱水槽7の中心軸に沿って下側Z2へ延び出た回転軸33が設けられる。回転軸33の下端部は、外槽6の底壁の貫通穴6Bを通って底壁よりも下側Z2に位置してモータ8に接続される。モータ8が作動すると、モータ8の駆動力が回転軸33に伝達されて脱水槽7が回転する。
【0036】
前述した給水路12の第2分岐路12Bは、外槽6の上部に上側Z1から接続され、脱水槽7の出入口7Aに上側Z1から臨む。外槽6の底壁と、排水路14において溢水路20との接続部分よりも機外に近い下流側の部分とは、流出路32によってつながれる。第2分岐路12Bを流れた水道水は、出入口7Aから脱水槽7内に流れ落ちた後に、流出路32を通って外槽6から流出して排水路14を流れて機外に排出される。
【0037】
二槽式洗濯機1は、マイコンなどによって構成された制御部40をさらに含む。制御部40には、モータ5、モータ8、表示操作部10、給水弁13及び排水弁15のそれぞれが電気的に接続される。制御部40は、モータ5、給水弁13及び排水弁15の動作を制御することによって洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物L1を洗濯槽3内で洗う洗い工程と、洗濯物L1を洗濯槽3内ですすぐすすぎ工程を含む。洗濯運転では、洗い工程とすすぐ工程とが連続して実行されてもよいし、洗い工程及びすすぐ工程のどちらかだけが実行されてもよい。制御部40は、モータ8及び給水弁13の動作を制御することによって脱水槽7内の洗濯物L2を脱水する脱水運転を実行する。
【0038】
洗濯運転の場合には、使用者は、蛇口からの水道水が給水路12において第1分岐路12Aを流れるように、前述したレバー(図示せず)を事前に操作する。脱水運転の場合には、使用者は、蛇口からの水道水が給水路12において第2分岐路12Bを流れるようにレバーを事前に操作する。
【0039】
洗濯物L1を洗濯槽3に投入して第1扉9A及び蓋11を閉じた使用者が、表示操作部10を操作して洗い運転の洗い工程の実行を指示すると、制御部40は、まず、排水弁15を閉じた状態で給水弁13を所定時間開くことによって洗濯槽3内に給水する。給水の前又は後のタイミングにおいて、使用者が第1扉9Aを開いて洗剤を洗濯槽3内に投入してもよい。
【0040】
洗濯槽3内の水位が、溢水路20の入口20Bよりも低い所定の上限水位まで上昇すると、制御部40は、給水弁13を閉じて給水を停止した後に、モータ5を作動させることによって回転翼4を回転させる。洗濯槽3内で溢水口3Eよりも高い位置にある水の一部は、溢水口カバー21の通水穴21Cを通って溢水室3G内に流入した状態にあり、洗濯槽3の内部空間3Hにおける水位と溢水室3Gにおける水位とは一致した状態にある。回転翼4の回転により、洗濯槽3内の洗濯物L1は、撹拌されたり、洗剤によって汚れが分解されたりすることによって洗浄される。最後に、制御部40は、モータ5を停止させて、排水弁15を開くことによって洗濯槽3を排水する。これにより、洗い工程が終了する。
【0041】
すすぎ工程には、前述した上限水位まで洗濯槽3内に水道水を溜めた状態で洗濯物L1をすすぐ「溜めすすぎ工程」と、給水路12から洗濯槽3内に常に給水しながら洗濯物L1をすすぐ「注水すすぎ工程」とがある。溜めすすぎ工程では、制御部40は、まず、排水弁15を閉じた状態で給水弁13を所定時間開くことによって、水道水を洗濯槽3内に溜める。給水を終えた制御部40は、モータ5を作動させることによって回転翼4を回転させる。これにより、洗濯槽3内の洗濯物Qがすすがれる。
【0042】
注水すすぎ工程では、制御部40は、まず、排水弁15を閉じた状態で給水弁13を開くことによって、洗濯槽3に給水する。洗濯槽3内の水位が溢水口3Eの下端よりも上昇すると、洗濯槽3内の水が、溢水口カバー21の通水穴21Cを通って溢水室3G内に流入する。洗濯槽3内の水位と、溢水室3G内の水位とは一致する。そして、洗濯槽3内の水位が溢水路20の入口20Bまで上昇しても、給水弁13が引き続き開いた状態にあるので、洗濯槽3内から溢水室3Gに流入した水は、入口20Bから溢水路20内に取り込まれることによって、洗濯槽3の外に溢れる。溢水路20内に取り込まれた水は、溢水路20内で落下して排水路14へ導かれる。溢水路20内を落下して排水路14に到達した水は、排水路14から機外に排出される。このように、入口20Bの高さ位置は、洗濯槽3からの溢水が開始されるときの高さ位置であり、以下では「溢水高さ」という。
【0043】
このように注水すすぎ工程では、洗濯槽3への給水と溢水路20からのオーバーフローとを継続することによって洗濯槽3内の水が常に入れ替えられ、この状態で、制御部40は、モータ5を作動させて回転翼4を回転させることによって洗濯槽3内の洗濯物L1をすすぐ。注水すすぎ工程では、洗濯物L1が多量である場合には、全ての洗濯物L1が洗濯槽3内の水に浸かるように、使用者は、事前にスライド部材22の摘み部23を摘まんでスライド部材22を上側Z1へスライドさせ、溢水路20の入口20Bを高い位置に配置しておく。洗濯物L1が少量である場合には、節水のために、使用者は、事前に摘み部23を摘まんでスライド部材22を下側Z2へスライドさせ、溢水路20の入口20Bを低い位置に配置しておく。この実施形態では、最も高い「高位置」と、最も低い「低位置」と、高位置と低位置との間の「中位置」という3段階に、入口20Bの高さ位置つまり溢水高さを調整することができる。なお、溢水高さは、3段階以外に段階的に調整可能であってもよいし、無段階で調整可能であってもよい。
【0044】
溜めすすぎ工程及び注水すすぎ工程のいずれにおいても、給水の前後又は途中のタイミングにおいて、使用者が第1扉9Aを開いて柔軟剤を洗濯槽3内に投入してもよい。柔軟剤は、洗濯物L1に染み渡る。最後に、制御部40は、モータ5を停止させて洗濯槽3を排水する。
【0045】
洗濯物L2を脱水槽7に投入して第2扉9B及び蓋31を閉じた使用者が、表示操作部10を操作して脱水運転の実行を指示すると、制御部40は、モータ8を作動させることによって、脱水槽7を所定の脱水回転数で回転させる。これにより、脱水槽7内の洗濯物L2は、遠心力が作用することによって脱水される。なお、洗濯物L2は、先ほど洗濯運転を終えて使用者によって洗濯槽3から脱水槽7に移し替えられた洗濯物L1であってもよい。また、制御部40は、脱水運転中において給水弁13を開いて脱水槽7内に給水してもよい。これにより、脱水槽7内の洗濯物L2が、脱水すすぎされる。
【0046】
次に、溢水口カバー21及びスライド部材22について順番に詳しく説明する。
図2は、溢水口カバー21及びスライド部材22を径方向内側R2から見た斜視図である。溢水口カバー21の例えば下端、左縁の上端部及び右縁の上端部のそれぞれには、洗濯槽3の円周壁3Aに係合する爪状の係合部50が設けられる。溢水口カバー21の表面部21Aの上端部には、径方向内側R2へ突出した横長の把持部51が設けられる。使用者は、溢水口カバー21を溢水口3Eに着脱する際に、把持部51を掴む。表面部21Aの略下半分には、径方向外側R1へ窪んだ縦長の凹部52が設けられる。凹部52には、洗濯運転中に洗濯物L1から取り除かれたリントなどの異物を捕獲するフィルタ(図示せず)が取り付けられる。
【0047】
表面部21Aの略上半分、具体的には把持部51と凹部52との間の領域には、径方向外側R1へ窪んだ縦長の溝53が設けられる。溝53の溝底53Aには、上下方向Zに細長く延びて溝底53Aを径方向Rに貫通したスリット53Bが形成される。前述した複数の通水穴21Cは、上下方向Zに並ぶことによって、上下方向Zに並ぶ列をなす。通水穴21Cの列は、上下方向Zに並ぶ凹部52及び溝53の左右両側に1列ずつ配置される。それぞれの通水穴21Cは、例えば横長のスリットである。全ての通水穴21Cの形状及び大きさは同じであってもよいし、この実施形態のように、凹部52の周辺の通水穴21Cが、溝53の周辺の通水穴21Cよりも左右方向において幅狭であってもよい。
【0048】
表面部21Aの略上半分において左右方向における溝53の両側には、前述した「高位置」、「中位置」及び「低位置」のそれぞれを表わすマークM1が表示される。この実施形態では、溝53の左側のマークM1は、英語表記であり、溝53の右側のマークM1は、日本語表記である。なお、溢水口カバー21の裏面部21Bには、溢水高さが高位置にあるときに、スライド部材22がそれ以上上昇できないようにスライド部材22に接触するストッパ21Dが設けられる(後述する
図11を参照)。
【0049】
図3は、溢水口カバー21及びスライド部材22を径方向外側R1から見た斜視図である。溢水口カバー21の裏面部21Bの上端部には、前述した把持部51(
図2参照)の裏側に位置して径方向内側R2へ窪んだ横長の凹部54が設けられる。裏面部21Bの略下半分には、前述した凹部52(
図2参照)の裏側に位置して径方向外側R1へ突出した縦長の凸部55が設けられる。裏面部21Bの略上半分、具体的には凹部54と凸部55との間の領域には、前述した溝53の溝底53Aが配置される。裏面部21Bでは、上下方向Zに並ぶ凸部55及び溝底53Aの左右両側において通水穴21Cを避けた位置には、左右方向に延びる補強リブ56が複数設けられる。
【0050】
溢水口カバー21の裏面部21Bには、溝53の溝底53Aの左縁及び右縁のそれぞれから径方向外側R1、つまり溢水室3G内に突出して互いに平行な左右一対の縦リブ57が設けられる。左右一対の縦リブ57のうち、
図3では左側に位置する縦リブ57Aは、溝底53Aの左縁に沿って上下方向Zに延び、
図3では右側に位置する縦リブ57Bは、溝底53Aの右縁に沿って上下方向Zに延びる。左右一対の縦リブ57の間には、上下方向Zに延びるガイド溝58が形成される。溝53の溝底53Aは、ガイド溝58の溝底を兼ねる。
【0051】
これらの縦リブ57において互いに対向する対向面、つまり、縦リブ57Aの右面及び縦リブ57Bの左面のそれぞれのほぼ全域には、上下方向Zに等間隔で並ぶ複数の横リブ59が設けられる。それぞれの横リブ59は、ガイド溝58内に配置されて、縦リブ57の突出方向、つまり径方向外側R1に延びる。左側の縦リブ57Aの右面に設けられた各横リブ59の縦断面は、右側へ膨出する半円状に形成され、各横リブ59における径方向外側R1の端面は、縦リブ57Aにおける径方向外側R1の端面と面一である。縦リブ57Bの左面に設けられた各横リブ59の縦断面は、左側へ膨出する半円状に形成され、各横リブ59における径方向外側R1の端面は、縦リブ57Aにおける径方向外側R1の端面と面一である。
【0052】
溝53の溝底53Aには、ガイド溝58内でスリット53Bの左縁及び右縁のそれぞれから径方向外側R1に突出して互いに平行な左右一対のガイドリブ60が設けられる。左右一対のガイドリブ60のうち、左側のガイドリブ60は、スリット53Bの左縁に沿って上下方向Zに延び、右側のガイドリブ60は、スリット53Bの右縁に沿って上下方向Zに延びる。各ガイドリブ60における径方向外側R1の端部は、縦リブ57における径方向外側R1の端部よりも径方向内側R2に位置する。
【0053】
図4は、スライド部材22の斜視図である。スライド部材22は、ベース部70と、連結部71と、前述した摘み部23及び保持部24と、位置決め部72とを有する。
【0054】
ベース部70は、縦長のボックス状の本体部70Aと、本体部70Aよりも下側Z2に配置されて左右方向に延びる下端部70Bと、本体部70Aと下端部70Bとをつなぐ途中部70Cとを有する。本体部70Aにおける径方向内側R2の端面は、本体部70Aの表面部70Dである。下端部70Bにおける径方向内側R2の端面において、左右方向における両端部には、径方向内側R2へ突出する爪部70Eが1つずつ設けられる。左右方向から見たときの爪部70Eは、上側Z1へ向かうにつれて径方向内側R2へ広がる直角三角形状である。途中部70Cは、縦に細長い直方体の柱状であり、本体部70Aにおいて左右方向における中央部と、下端部70Bにおいて左右方向における中央部との間に架設される。
【0055】
連結部71は、ベース部70の表面部70Dよりも径方向内側R2に配置された平板部71Aと、表面部70Dと平板部71Aとをつなぐ柱状部71Bとを有する。平板部71Aは、表面部70Dと平行に配置される。平板部71Aにおいて径方向内側R2の表面には、スライド部材22のスライド方向を示すマークM2が表示される。柱状部71Bは、縦に細長い直方体の柱状であり、左右方向における表面部70Dの中央部と、左右方向における平板部71Aの中央部との間に架設される。
【0056】
摘み部23は、平板部71Aの下端から径方向内側R2に折れ曲がった板状に形成される。保持部24は、ベース部70の上端部に連結され、
図4では、ベース部70の上端部から径方向外側R1かつ右側へ張り出して配置される。保持部24は、平面視において略C字状に湾曲し、その開放部24Aは、径方向外側R1へ向いて配置される。溢水路20の伸縮部20Aが、開放部24Aから保持部24内に嵌め込まれる。保持部24は、伸縮部20Aを挟み込んで保持する。伸縮部20Aの入口20Bは、保持部24よりも上側Z1に配置される。
【0057】
図5は、径方向内側R2から見たスライド部材22の正面図である。位置決め部72は、左右一対設けられ、ベース部70の途中部70Cの左右方向における両側に1つずつ配置される。これらの位置決め部72は、途中部70Cを基準として左右対称に構成される。左右一対の位置決め部72のうち、
図5では右側に位置する位置決め部72Aは、ベース部70における本体部70Aの下端面の右端と、ベース部70における下端部70Bの上端面の右端との間に架設される。左右一対の位置決め部72のうち、
図5では左側に位置する位置決め部72Bは、本体部70Aの下端面の左端と、下端部70Bの上端面の左端との間に架設される。
【0058】
それぞれの位置決め部72は、左右方向においてベース部70の途中部70Cから離れる方向へ膨出するように湾曲した本体部72Cと、上下方向Zにおける本体部72Cの両側に1つずつ設けられて左右方向において途中部70Cに近付く方向へ膨出するように湾曲した支持部72Dとを一体的に有する樹脂製の一体成型品である。
【0059】
本体部72Cは、U字状に湾曲した板状であり、径方向Rにおいてある程度の幅を有する(
図4参照)。右側の位置決め部72Aの本体部72Cは、右側へ膨出し、左側の位置決め部72Bの本体部72Cは、左側へ膨出する。それぞれの位置決め部72では、本体部72Cが、上下方向Zにおける両側の支持部72D間に架設されることによって、これらの支持部72Dによって支持される。
【0060】
それぞれの支持部72Dは、本体部72Cとは逆向きのU字状に湾曲した板状である。右側の位置決め部72Aにおける各支持部72Dは、左側へ膨出し、左側の位置決め部72Bにおける各支持部72Dは、右側へ膨出する。位置決め部72Aでは、本体部72Cよりも上側Z1の支持部72Dの上端が、ベース部70の本体部70Aの下端面の右端に接続され、本体部72Cよりも下側Z2の支持部72Dの下端が、ベース部70の下端部70Bの上端面の右端に接続される。位置決め部72Bでは、本体部72Cよりも上側Z1の支持部72Dの上端が、本体部70Aの下端面の左端に接続され、本体部72Cよりも下側Z2の支持部72Dの下端が、下端部70Bの上端面の左端に接続される。
【0061】
スライド部材22の右側面図である
図6と、スライド部材22の左側面図である
図7とを参照して、それぞれの位置決め部72には、それぞれの支持部72Dを溢水口カバー21の裏面部21B側、つまり径方向内側R2から切り欠いた切欠き73が設けられる。これにより、位置決め部72A(
図6参照)及び位置決め部72B(
図7参照)のそれぞれでは、上側Z1及び下側Z2の支持部72Dのそれぞれが、径方向Rにおいて本体部72Cよりも幅狭である。また、前述した摘み部23は、上下方向Zにおいて、それぞれの位置決め部72と保持部24との間、具体的には、スライド部材22の上下方向Zにおける略中央位置に配置される。
【0062】
図8は、径方向外側R1から見た溢水口カバー21及びスライド部材22の背面図である。
図9は、
図8のA-A矢視断面を含む要部斜視図である。溢水口カバー21によって支持された状態にあるスライド部材22では、摘み部23と連結部71の平板部71Aとが、溢水口カバー21の表面部21Aの溝53内に配置され、連結部71の柱状部71Bが、溝53の溝底53Aのスリット53B内に配置される(
図2と後述する
図11とを参照)。また、保持部24とベース部70と位置決め部72とが、溢水口カバー21の裏面部21Bに配置される。ベース部70において径方向内側R2の部分と、左右一対の位置決め部72の大部分とは、裏面部21Bにおける左右一対の縦リブ57の間のガイド溝58内に配置される。ベース部70の下端部70Bにおける左右一対の爪部70Eは、ガイド溝58内においてスリット53Bを挟んで配置される。
【0063】
図10は、
図9において2点鎖線で囲った要部の拡大図である。ベース部70の途中部70Cは、溝53の溝底53Aのスリット53Bと、スリット53Bの左右の縁に設けられたガイドリブ60とに径方向外側R1から対向した状態にある。左右一対の位置決め部72のうち、
図10では左側に位置する位置決め部72Aは、左右一対の縦リブ57における左側の縦リブ57Aに右側から隣接した状態にあり、
図10では右側に位置する位置決め部72Bは、左右一対の縦リブ57における右側の縦リブ57Bに左側から隣接した状態にある。
【0064】
左側の位置決め部72Aでは、本体部72Cが、縦リブ57A側、つまり
図10では左側へ膨出した状態にあり、本体部72Cに対して上下両側に位置する支持部72Dのそれぞれが、縦リブ57A側とは反対側、つまり
図10では右側へ膨出した状態にある(
図8も参照)。右側の位置決め部72Bでは、本体部72Cが、縦リブ57B側、つまり
図10では右側へ膨出した状態にあり、本体部72Cに対して上下両側に位置する支持部72Dのそれぞれが、縦リブ57B側とは反対側、つまり
図10では左側へ膨出した状態にある(
図8も参照)。
【0065】
図10では、位置決め部72Aの本体部72Cが、縦リブ57Aにおける複数の横リブ59のうち上下方向Zに隣り合う二つの横リブ59の間に嵌った状態にあるとともに、位置決め部72Bの本体部72Cが、縦リブ57Bにおける複数の横リブ59のうち上下方向Zに隣り合う二つの横リブ59の間に嵌った状態にある(
図8も参照)。これにより、スライド部材22全体が上下方向Zにおいて位置決めされた状態にある。なお、この状態では、スライド部材22において位置決め部72B以外の部分は、溢水口カバー21に対して非接触である。しかし、溢水高さが高位置にあるときには、溢水口カバー21の裏面部21Bのガイド溝58の溝底の上部に設けられたストッパ21Dが、スライド部材22のベース部70の下端部70Bにおける爪部70Eに上側Z1から接触する(
図8参照)。
【0066】
図11は、
図8のA-A矢視断面図である。
図12は、
図11の要部についての模式的な拡大図である。位置決め部72A及び位置決め部72Bのそれぞれでは、上下方向Zに隣り合う二つの横リブ59の間に嵌ったときの本体部72Cは、上下方向Z、つまり
図12の紙面に垂直な方向から見て、縦リブ57の突出方向に一致又は略一致する径方向Rにおける当該横リブ59の略全域と重なって配置される。
【0067】
溢水路20においてスライド部材22の保持部24によって保持された伸縮部20Aの入口20Bの高さ位置を変更するために、使用者がスライド部材22を上下方向Zにスライドさせる際、スライド部材22の各位置決め部72は、対応する縦リブ57に設けられた複数の横リブ59を乗り越える。使用者がスライド部材22のスライドを停止すると、位置決め部72が複数の横リブ59のうち上下方向Zに隣り合う二つのリブの間に嵌るので、スライド部材22が上下方向Zにおいて位置決めされる。これにより、変更後の入口20Bの高さ位置、つまり前述した溢水高さが維持される。
【0068】
位置決め部72は、縦リブ57側へ膨出するように湾曲して二つの横リブ59の間に実際に嵌る本体部72Cと、縦リブ57側とは反対側へ膨出するように湾曲して本体部72Cを支持する支持部72Dとを一体的に有する。このような位置決め部72では、本体部72C及び支持部72Dの両方が弾性変形できる。そのため、上下方向Zに隣り合う横リブ59の間隔が、ばらつきなどに起因して大きくても、本体部72Cが、上下方向Zに広がるように弾性変形して、このばらつきを吸収しつつ、これらの横リブ59の間にきつく嵌る(
図8も参照)。このため、洗濯槽3内の水の浮力や、溢水路20の伸縮部20Aが伸縮時に発生させる復元力などがスライド部材22に作用しても、スライド部材22を勝手にスライドしないように強固に位置決めできる。
【0069】
一方、使用者が摘み部23を摘まんでスライド部材22をスライドさせようとする際、本体部72C及び支持部72Dの両方が弾性変形する。これにより、本体部72Cが特に左右方向において大きくストロークすることができる。そのため、本体部72Cが、隣り合う横リブ59の間から円滑に外れて横リブ59を円滑に乗り越えるので、使用者は、一定の軽い力でスライド部材22を円滑にスライドさせることができる。以上の結果、スライド部材22についての位置決めの確実性及び操作性の向上を図れる。
【0070】
また、使用者が摘み部23を摘まんでスライド部材22を上側Z1及び下側Z2のどちらにスライドさせようとしても、上下方向Zにおける本体部72Cの両側に設けられた支持部72Dが弾性変形することにより、本体部72Cが、隣り合う横リブ59の間から円滑に外れて横リブ59を円滑に乗り越える。そのため、スライド部材22を上側Z1及び下側Z2のどちらにも円滑にスライドさせることができるので、スライド部材22についての操作性の一層の向上を図れる。
【0071】
さらに、摘み部23は、上下方向Zにおいて位置決め部72と保持部24との間というバランスの良い位置に配置されるので、使用者にとって摘まんで動かしやすい。そのため、スライド部材22についての操作性の一層の向上を図れる。
【0072】
また、二つの横リブ59の間に挟まれたときの位置決め部72の本体部72Cは、上下方向Zから見て、溢水口カバー21の裏面部21B側つまり横リブ59の基端部59Aまで延びる。そのため、本体部72Cは、上下方向Zから見て、溢水口カバー21の裏面部21Bの縦リブ57の突出方向、つまり径方向Rにおける当該横リブ59の全域と重なって配置される。これにより、二つの横リブ59の間に挟まれた本体部72Cは、これらの横リブ59に広範囲で接触することによって、これらの横リブ59の間に一層きつく嵌るので、スライド部材22を勝手にスライドしないように一層強固に位置決めできる。そのため、スライド部材22についての位置決めの確実性の一層の向上を図れる。
【0073】
また、位置決め部72には、支持部72Dを溢水口カバー21の裏面部21B側から切り欠いた切欠き73が設けられることによって、支持部72Dが縦リブ57の突出方向において本体部72Cよりも幅狭であるので、本体部72Cにおいて支持部72Dよりも裏面部21B側へはみ出した根元部分72Eの剛性を意図的に低下させることができる。なお、位置決め部72の厚さを調整することによって根元部分72Eの剛性を低下することもできるが、位置決め部72の厚さを調整するよりも、切欠き73を形成する方が、根元部分72Eの剛性を正確かつ確実に低下させることができる。
【0074】
使用者がスライド部材22をスライドさせる際、スライド部材22の位置決め部72は、
図12に示すように、縦リブ57及び複数の横リブ59を左右方向に撓ませながら乗り越える。このとき、縦リブ57及び横リブ59のそれぞれでは、裏面部21B側の基端部57C及び59Aとは反対側の先端部57D及び59Bが撓み、左右一対の縦リブ57が先端部57D側で開脚する。すると、本体部72Cにおいて剛性が低く設定された根元部分72Eが、縦リブ57の基端部57Cによって押されて縦リブ57の先端部57Dとは逆向き(
図12の矢印Yを参照)に撓む。これにより、本体部72C全体が、撓んだ縦リブ57及び横リブ59と略平行な姿勢になる。
【0075】
そのため、スライド部材22のスライドが停止して二つの横リブ59の間に挟まれたときの本体部72Cは、これらの横リブ59に広範囲で接触することによって、これらの横リブ59の間に一層きつく嵌るので、スライド部材22を勝手にスライドしないように一層強固に位置決めできる。そのため、スライド部材22についての位置決めの確実性の一層の向上を図れる。なお、本体部72C全体が、撓んだ縦リブ57及び横リブ59と略平行な姿勢になるようにするために、本体部72Cの先端部分72Fの径方向Rの幅W1と、根元部分72Eの径方向Rの幅W2とは、1対1以上3対2以下の関係であることが好ましい。
【0076】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、前述の実施形態では、制御部40によって、給水弁13の開閉が制御されたり、各運転が実行されたりするが、別の構成もあり得る。具体的には、使用者による表示操作部10の操作によって給水弁13が手動で開閉されてもよいし、給水弁13自体が省略されて、使用者による蛇口の水栓(図示せず)の開閉によって給水が直接開始又は停止されてもよい。また、二槽式洗濯機1に備えられたメカタイマ(図示せず)によって指定されたスケジュールに沿って洗濯運転や脱水運転が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 二槽式洗濯機
3 洗濯槽
3D 内面部
3E 溢水口
3G 溢水室
7 脱水槽
14 排水路
20 溢水路
20A 伸縮部
20B 入口
21 溢水口カバー
21A 表面部
21B 裏面部
22 スライド部材
23 摘み部
24 保持部
57 縦リブ
59 横リブ
72 位置決め部
72C 本体部
72D 支持部
73 切欠き
L1 洗濯物
L2 洗濯物
R 径方向
Z 上下方向
Z2 下側