(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】注入剤性能確認試験方法および試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20240920BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240920BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N3/00 Q
E02D3/12 101
G01N3/08
(21)【出願番号】P 2021034943
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391003598
【氏名又は名称】富士化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】笹原 茂生
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 大地
(72)【発明者】
【氏名】松山 雄司
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-261523(JP,A)
【文献】特開昭55-037961(JP,A)
【文献】特開平03-026963(JP,A)
【文献】特開2019-011608(JP,A)
【文献】米国特許第04955237(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
G01N 3/08
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷点下に冷却された供試体を容器内に設ける供試体設置作業と、
前記供試体に接するように薬液注入剤を注入する注入剤注入作業と、
前記供試体と前記薬液注入剤との接触面をずらした際の抵抗の有無を確認する性能確認作業と、を行うことを特徴とする、注入剤性能確認試験方法。
【請求項2】
前記供試体設置作業では、柱状の前記供試体を前記容器内に載置し、
前記注入剤注入作業では、前記供試体と前記容器との隙間に前記薬液注入剤を充填し、
前記性能確認作業では、前記供試体を引き上げるとともに前記供試体を引き上げる際の荷重を測定することを特徴とする、請求項1に記載の注入剤性能確認試験方法。
【請求項3】
前記荷重から前記供試体の重量を減じた値を、前記供試体と前記薬液注入剤との接触面積で除することで付着強度を算出する付着強度算出作業をさらに備えていることを特徴とする、請求項2に記載の注入剤性能確認試験方法。
【請求項4】
氷点下に冷却された供試体と、前記供試体に接するように注入された薬液注入剤の硬化体との付着性を確認するための試験装置であって、
前記供試体および前記硬化体を収容する容器と、
前記供試体および前記硬化体のうちの強度が高い方を吊持する吊持手段と、
前記吊持手段に取り付けられた荷重計と、を備えていることを特徴とする、試験装置。
【請求項5】
前記容器の底部に設けられて前記供試体を支持する架台をさらに備えており、
前記架台は、底板と、前記底板に立設された壁材とを備え、
前記壁材の上面が前記供試体の底面縁部に接し、
前記壁材には、前記壁材により囲まれた空間に連通するエア抜きパイプが取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
前記容器の上面を覆う蓋材を備えており、
前記蓋材には、前記供試体を挿通可能な開口が形成されていることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入剤性能確認試験方法およびその試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤凍結工法により凍土地盤G
Fを造成することで、地盤内に止水構造を構築したり、土留壁や止水壁等を形成する場合がある(
図6(a)参照)。しかしながら、地下水Wの流れにより、凍土地盤G
Fに水みちP
Wが形成され、もしくは地盤が凍結できなくて、凍土地盤G
Fの造成が不完全になる場合がある(
図6(b)参照)。そのため、水みちP
Wを閉塞することを目的として、地盤凍結工法と薬液注入工法を併用する場合がある(
図6(c)参照)。ここで、
図6(a)~(c)は、凍土地盤G
Fを模式的に示す断面図である。
例えば、特許文献1では、トンネルを掘削するにあたり、トンネルの掘削部を囲繞する状態に薬液注入工法により止水領域を行うとともに、止水領域内の掘削部に沿った部分を地盤凍結工法により凍結させる地盤改良方法が開示されている。特許文献1の地盤改良方法は、施工領域を囲繞するように薬液注入による止水領域を形成するものであるため、広範囲に薬液注入を実施する必要がある。そのため、施工に手間がかかるとともに、費用の低減化の妨げとなる。
一方、水みちP
Wの閉塞を目的として、
図6(c)に示すように、凍土地盤G
Fに対して部分的に薬液注入Cを行う場合があるが、低温条件下における薬液注入Cでは、注入剤によっては十分な効果を得られないおそれがある。そのため、地盤凍結工法と併用して薬液注入工法を採用する場合には、事前に注入剤の性能を確認する必要があるが、凍土地盤G
F中に人工的に水みちP
Wを形成して、部分的に薬液注入を行う試験を原位置で実施することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、薬液注入剤を凍土地盤に注入した際に所望の性能を確保できるか否かを簡易に確認することができる注入剤性能確認試験方法とその試験装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の注入剤性能確認試験方法は、氷点下に冷却された供試体を容器内に設ける供試体設置作業と、前記供試体に接するように薬液注入剤を注入する注入剤注入作業と、前記供試体と前記薬液注入剤との接触面をずらした際の抵抗の有無を確認する性能確認作業とを行うものである。
かかる注入剤性能確認試験方法は、供試体と薬液注入剤との接触面をずらした際に生じる抵抗の有無を確認することで、供試体と薬液注入剤の硬化体との付着性を確認するものである。すなわち、当該抵抗が確認された場合には、供試体と硬化体とが付着しており、薬液注入剤が所望の性能を発現しているものと判断できる。そのため、例えば、凍土地盤の止水性の向上を図ることを目的として薬液注入工法を併用する場合の薬液注入剤として使用することができる。一方、抵抗がない場合には、低温条件下で薬液注入剤が硬化しないことや、薬液注入剤が硬化する際の発熱によって供試体の表面が解凍されることが推測される。そのため、当該薬液注入剤が凍土地盤には不向きであると判断できる。
【0006】
なお、前記注入剤性能確認試験方法において、前記供試体設置作業では柱状の前記供試体を前記容器内に載置し、前記注入剤注入作業では前記供試体と前記容器との隙間に前記薬液注入剤を充填し、前記性能確認作業では前記供試体を引き上げるとともに前記供試体を引き上げる際の荷重を測定するのが望ましい。かかる注入剤性能確認試験方法によれば、供試体を引き上げた際の荷重が供試体の重量を上回っていることを確認することで、供試体と薬液注入剤の硬化体との間での付着状態を定量的に確認できる。
また、前記荷重から前記供試体の重量を減じた値を、前記供試体と前記薬液注入剤との接触面積で除することで付着強度を算出する付着強度算出作業を備えていれば、複数の薬液注入剤の中から最適な薬液注入剤を選択する際の指標として付着強度を利用できる。
【0007】
また、前記注入剤性能確認試験方法に使用する試験装置には、例えば、前記供試体および前記薬液注入剤を収容する容器と、前記供試体および前記薬液注入剤の硬化体のうちの強度が高い方を吊持する吊持手段と、前記吊持手段に取り付けられた荷重計とを備えたものを使用することができる。かかる試験装置によれば、供試体または硬化体のいずれか一方を吊持した状態で接触面をずらした際の荷重値を測定できるので、付着状態を定量的に確認できる。
前記試験装置は、前記容器の底部に設けられて前記供試体を支持する架台をさらに備えているのが望ましい。このような架台としては、底板と、前記底板に立設された壁材とを備え、前記壁材の上面が前記供試体の底面縁部に接するようにするとよい。さらに、前記壁材には前記壁材により囲まれた空間に連通するエア抜きパイプを取り付けることが望ましい。このようにすれば、供試体の底面と容器との間に負圧が生じることを防止できるので、供試体と容器との底面との間に付着力が生じることを防止できる。すなわち、エア抜きパイプにより架台が有する空間内の空気が外部から供給されることで負圧が生じることを防止できる。
また、前記試験装置が、前記容器の上面を覆う蓋材であって、前記供試体を挿通可能な開口が形成された蓋材を備えていれば、前記供試体を引き上げる際に、供試体とともに硬化体が引き上げられること防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の注入剤性能確認試験方法および試験装置によれば、薬液注入剤を凍土地盤に注入した際に、当該薬液注入剤が所望の性能を確保しているか否かを確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(a)は
図1に示す試験装置のA-A断面図、(b)はB-B断面図である。
【
図3】本実施形態の注入剤性能確認試験方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】注入剤性能確認試験方法の作業状況を示す模式図であって、(a)は供試体作成作業、(b)は供試体設置作業、(c)は注入剤注入作業、(d)は性能確認作業である。
【
図5】試験結果の例を示す荷重変位曲線であって、(a)は供試体に硬化体が付着しない場合、(b)は供試体に硬化体が付着している場合。
【
図6】凍土地盤を示す模式図であって、(a)は健全な凍土地盤、(b)は水みちが形成されている凍土地盤、(c)は薬液注入を行った凍土地盤である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、水みちが形成されている凍土地盤に対して薬液注入剤を注入した際に、当該薬液注入剤が水みちを遮蔽して止水性を確保できる効果を発現するか否かを確認するための注入剤性能確認試験方法について説明する。本実施形態の注入剤性能確認試験方法では、氷点下に冷却された供試体1と、供試体1に接する薬液注入剤の硬化体2との付着性を確認する。
図1および
図2に本実施形態の注入剤性能確認試験方法で使用する試験装置3を示す。
試験装置3は、
図1に示すように、供試体1および硬化体2を収容する容器4と、供試体1を吊持する吊持手段5と、吊持手段5に取り付けられた荷重計6と、容器4の底部に設けられて供試体1を支持する架台7とを備えている。
【0011】
容器4は、上面が開口した箱型の容器本体41と、容器本体41の上面を覆う蓋材42とからなる。本実施形態の容器本体41は、矩形状の底部と、側面を覆う角筒状の壁部とにより構成されている。なお、容器本体41は平面視矩形状に限定されるものではなく、平面視円形であってもよい。本実施形態の容器本体41の内面は、断熱材43で覆われている。
蓋材42には、供試体1を挿通可能な開口44が形成されている。本実施形態の蓋材42は、
図2(b)に示すように、一対の板材45,45により形成されている。各板材45には、他方の板材45側の辺に凹部46が形成されている。一対の板材45,45の凹部46同士を組み合わせると、供試体1の平面形状と同等の開口44が形成される。
【0012】
吊持手段5は、
図1に示すように、引抜き棒51と、引抜き棒51を引き上げる引上げ手段52とを備えている。引抜き棒51は、一部(下部)が供試体1に埋め込まれて、残りの部分(上部)が供試体1の上面から突出している。引抜き棒51の上端部が引上げ手段52に連結されることで、供試体1が吊り下げられている。引抜き棒51の下端には、供試体1からの抜き出しを防止するための定着部53が形成されている。本実施形態の定着部53は、引抜き棒51と交差するように、引抜き棒51に固定されている。なお、定着部53は、供試体1との接合性を向上させることが可能であればよく、例えば、板状部材や棒状部材であってもよいし、引抜き棒51の外面に形成された凹凸であってもよい。本実施形態の引抜き棒51の上端には、係止部54が形成されている。引抜き棒51は、係止部54を介して引上げ手段52に連結されている。
引上げ手段52は、引抜き棒51に引張力を付与する装置であって、支持部材55に取り付けられている。引上げ手段52は、ウィンチ等からなり、荷重計6を介して引抜き棒51を吊持している。本実施形態の支持部材55は、土台56,支柱57,横架材58を備えている。本実施形態の土台56は、容器4を挟むように配設された一対の鋼材であって、支持部材55の脚部を構成している。土台56には、治具(長ボルト等)59aを介して抑え部材59が取り付けられている。抑え部材59は、
図1および
図2(b)に示すように、蓋材42の上面または容器本体41の上端に配設されて、供試体1を引き上げる際に、容器4の移動を制御する。すなわち、抑え部材59は、容器4を上から押さえ付ける部材である。支柱57は、
図1に示すように、土台56に立設された鋼材である。支柱57には横架材58が横架されている。横架材58は、引抜き棒51の上方において左右の支柱57,57に横架された鋼材であって、引上げ手段52を支持している。
【0013】
荷重計6は、
図1に示すように、引抜き棒51と引上げ手段52との間に介設されている。荷重計6は、引上げ手段52により引抜き棒51を引き上げた際の荷重を測定する。
【0014】
架台7は、
図1に示すように、底板71と底板71に立設された壁材72とを備えている。壁材72の上面(上端)は供試体1の底面の縁部に接する。本実施形態の壁材72の外形は、供試体1の外形と同等とする。架台7により、供試体1の底面の下側に隙間が形成されている。
壁材72には、壁材72により囲まれた空間に連通するエア抜きパイプ73が取り付けられている。エア抜きパイプ73は、容器4の外側まで延設されている。
【0015】
次に、試験装置3を利用した注入剤性能確認試験方法について説明する。
図3および
図4に本実施形態の注入剤性能確認試験方法を示す。本実施形態の注入剤性能確認試験方法では、
図3に示すように、供試体作成作業S1と、供試体設置作業S2と、注入剤注入作業S3と、性能確認作業S4と、付着強度算出作業S5とを行う。
供試体作成作業S1では、
図4(a)に示すように、供試体1を作成する。本実施形態では、直径100mm、高さ200mmの円柱状の供試体1を作成する。供試体1は、引抜き棒51の下部を埋め込んだ状態で作成する。本実施形態の供試体1は、柱状に形成された氷からなる。
【0016】
供試体設置作業S2では、
図4(b)に示すように、氷点下に冷却された柱状の供試体1を容器4内に載置する。容器4には、予め架台7が設けられていて、供試体1は架台7上に載置する。このとき、供試体1は、荷重計6を介して吊持手段5(
図1参照)により吊持する。本実施形態では、供試体1の一部が、容器4の上端よりも上方に突出するものとするが、供試体1は、全体が容器4に収まっていてもよい。このとき、荷重計6により供試体1の重量(質量)を測定する。
【0017】
注入剤注入作業S3では、
図4(c)に示すように、供試体1に接するように、容器4内に薬液注入剤21を注入(投入)する。すなわち、供試体1と容器4との隙間に薬液注入剤21を充填する。薬液注入剤21を充填したら、蓋材42(
図1および
図2参照)により容器4(薬液注入剤21)の上面を覆う。蓋材42は、抑え部材59(
図1参照)により固定する。このとき、蓋材42は、開口44に供試体1を挿通させた状態で設置する。
【0018】
性能確認作業S4では、
図4(d)に示すように、供試体1と薬液注入剤21の硬化体2との接触面をずらした際の抵抗の有無を確認する。性能確認作業S4は、薬液注入剤21を容器4に注入し、所定時間(薬液注入剤21が硬化するのに必要な時間:本実施形態では数秒程度)静置してから行う。薬液注入剤21が硬化したら(硬化体2が形成されたら)、引上げ手段52(
図1参照)を操作して、供試体1を引き上げるとともに供試体1を引き上げる際の荷重を荷重計6により測定する。このとき、硬化体2の上面は蓋材42により覆われているため、供試体1とともに硬化体2が上昇することを防止しつつ、供試体1と硬化体2との接触面をずらすことができる。
図5に供試体1を引き上げた際の荷重変位曲線を示す。
図5(a)に示すように、硬化体2が供試体1に付着しなかった場合は、荷重が供試体1(引抜き棒51を含む)の重量と同じ値で一定となる。一方、硬化体2が供試体1に付着した場合は、
図5(b)に示すように、荷重が供試体1の重量よりも大きく上昇し、供試体1と硬化体2との付着が切れた段階で急激に荷重が低下した後、荷重が供試体1の重量と同程度の値で一定になる。
【0019】
付着強度算出作業S5では、供試体1と薬液注入剤21の硬化体2との付着強度sを算出する。付着強度sは、性能確認作業S4で算出した荷重w1から供試体設置作業S2において測定した供試体1の重量w0を減じた値を、供試体1と薬液注入剤21(硬化体2)との接触面積aで除することにより算出する(式1参照)。
複数の薬液注入剤21に対して注入剤性能確認試験を実施し、付着強度sを比較することで、定量的に止水性が優れた薬液注入剤21を判定できる。
s=(w1-w0)/a ・・・式1
【0020】
以上のとおり、本実施形態の注入剤性能確認試験方法は、供試体1と硬化体2との接触面をずらした際に生じる抵抗の有無を確認することで、供試体1と硬化体2との付着性を確認するものである。すなわち、当該抵抗が確認された場合には、供試体1と硬化体2とが付着しており、薬液注入剤21が所望の性能を発現しているものと判断できる。そのため、例えば、凍土地盤の止水性の向上を図ることを目的として薬液注入工法を併用する場合の薬液注入剤として使用することができる。一方、抵抗がない場合には、低温条件下で薬液注入剤21が硬化しないことや、薬液注入剤21が硬化する際の発熱によって供試体1の表面が解凍されることが推測される。そのため、当該薬液注入剤21が凍土地盤には不向きであると判断できる。
また、本実施形態の注入剤性能確認試験方法によれば、供試体1を引き上げた際の荷重が供試体1の重量を上回っていることを確認することで、供試体1と硬化体2との間での付着状態を定量的に確認できる。
また、付着強度を算出することで、複数の薬液注入剤の中から最適な薬液注入剤を選択する際の指標として利用できる。
【0021】
試験装置3は、架台7の有する空間がエア抜きパイプ73を介して大気に開口されているため、架台7が有する空間内の空気が冷却されて負圧が生じることを防止できる。つまり、架台7により供試体1の底面と容器4との間に負圧が生じることを防止できるので、供試体1と容器4との底面との間に付着力が生じることを防止できる。そのため、試験装置3によれば、供試体1と硬化体2との抵抗のみを確認可能である。
また、試験装置3は、容器4の上面を覆う蓋材42を備えているため、供試体1を引き上げた際に、硬化体2が供試体1と一緒に引き上げられることを防止できる。その結果、供試体1と硬化体2との接触面をずらすことができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、供試体1と硬化体2との接触面をずらした際に生じる荷重の変化を荷重計6で測定することにより抵抗の有無を確認するものとしたが、抵抗の測定方法は限定されるものではない。例えば、測定者が引抜き棒51を引き上げた際の抵抗の変化により抵抗の有無を確認してもよい。
試験装置3の構成は、前記実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、蓋材42は省略してもよい。また、蓋材42の固定方法は限定されるものではなく、例えば治具を介して容器本体41に直接固定してもよい。また、吊持手段5の構成は適宜変更可能である。
【0023】
前記実施形態では、供試体1を吊持手段5で吊持するものとしたが、硬化体2の方が供試体1よりも強度が高い場合には、硬化体2を吊持してもよい。
前記実施形態では、供試体1を氷としたが、供試体を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、コンクリートやモルタル等により形成した柱状部材であってもよい。また、供試体1は、現地において採取した土砂やボーリングコア等により構成してもよい。また、供試体1の形状寸法は限定されるものではなく、例えば、角柱状に形成するなど、適宜決定すればよい。
前記実施形態では、断熱材43により容器本体41の内面を覆うものとしたが、断熱材43は容器本体の外面を覆っていてもよい。また、断熱材43は、必要に応じて設置すればよい。
架台7は、必要に応じて設置すればよい。例えば、容器4の底部に凹凸を形成しておくことで、供試体1の底面の下側に空間を形成するものとしてもよい。
前記実施形態では、供試体1を引き上げることにより抵抗の有無を測定するものとしたが、測定方法はこれに限定されるものではなく、例えば、供試体1を吊持した状態で、容器4を下降させることにより抵抗の有無を測定してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 供試体
2 硬化体
3 試験装置
4 容器
41 容器本体
42 蓋材
44 開口
5 吊持手段
6 荷重計
7 架台
71 底板
72 壁材
73 エア抜きパイプ
S1 供試体作成作業
S2 供試体設置作業
S3 注入剤注入作業
S4 性能確認作業
S5 付着強度算出作業