(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ロールプレス装置、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B30B 3/00 20060101AFI20240920BHJP
B21B 37/38 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240920BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B30B3/00 B
B21B37/38 110
H01M4/139
H01M4/04 A
(21)【出願番号】P 2021569743
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042737
(87)【国際公開番号】W WO2021140747
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2020002268
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 史紘
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115406(JP,A)
【文献】特開2016-064441(JP,A)
【文献】特開平04-367309(JP,A)
【文献】特許第2960011(JP,B2)
【文献】特開2014-042923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 3/00
B21B 37/38
H01M 4/139
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される二次電池の電極板を挟み込むことにより圧延する第1加圧ローラ及び第2加圧ローラと、
前記第1加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1主軸受部及び第2主軸受部と、
前記第2加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3主軸受部及び第4主軸受部と、
前記第1加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1ベンド軸受部及び第2ベンド軸受部と、
前記第2加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3ベンド軸受部及び第4ベンド軸受部と、
前記第1主軸受部及び前記第3主軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが近接する方向への荷重を加えることが可能な第1圧縮機構と、
前記第2主軸受部及び前記第4主軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが近接する方向への荷重を加えることが可能な第2圧縮機構と、
前記第1ベンド軸受部及び前記第3ベンド軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが離接する方向への荷重を加えることが可能な第1ベンド機構と、
前記第2ベンド軸受部及び前記第4ベンド軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが離接する方向への荷重を加えることが可能な第2ベンド機構と、
前記第1加圧ローラ及び第2加圧ローラの出側に設けられ、前記二次電池の電極板の厚みを、当該電極板の幅方向に3点以上でそれぞれ検出する厚み計と、
前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構、前記第1ベンド機構、及び前記第2ベンド機構のそれぞれの設定値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された設定値をもとに、前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構、前記第1ベンド機構、及び前記第2ベンド機構の荷重をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記算出部は、予め導出された前記電極板の搬送ラインの速度変化量と、前記厚み計で検出されるべき前記電極板の幅方向の3点以上の厚み検出値
の平均値の変化量で規定される前記電極板の厚み変化量との関係性と、設定されている前記ラインの加速度または減速度をもとに、前記ラインの加速開始または減速開始から所定時間後の前記電極板の厚み変化量を予測し、前記ラインの速度変化に応じた前記電極板の厚み変化が小さくなるように、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構の設定値を予め変更する、
ロールプレス装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板の厚み変化量がゼロになるように、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構を制御する、
請求項1に記載のロールプレス装置。
【請求項3】
前記算出部は、予め導出された、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構が発生させる荷重の変化量と、前記電極板の厚み変化量との関係性をもとに、前記ラインの加速期間または減速期間の前記厚み変化量がゼロになるように、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構の設定値を補正する、
請求項2に記載のロールプレス装置。
【請求項4】
前記第1圧縮機構は第1プレス用のシリンダを含み、
前記第2圧縮機構は第2プレス用のシリンダを含み、
前記算出部は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板の厚み変化量がゼロになるように、前記ラインの加速期間または減速期間の前記第1プレス用のシリンダの圧力と前記第2プレス用のシリンダの圧力の設定値を補正する、
請求項3に記載のロールプレス装置。
【請求項5】
前記第1圧縮機構は第1プレス用のシリンダを含み、
前記第2圧縮機構は第2プレス用のシリンダを含み、
前記算出部は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板の厚み変化量がゼロになるように、前記ラインの加速期間または減速期間の前記第1プレス用のシリンダの位置と前記第2プレス用のシリンダの位置の設定値を補正する、
請求項3に記載のロールプレス装置。
【請求項6】
前記第1圧縮機構は前記第1プレス用のシリンダの位置を測定するための第1マグネスケールをさらに含み、
前記第2圧縮機構は前記第2プレス用のシリンダの位置を測定するための第2マグネスケールをさらに含み、
前記制御部は、
前記第1マグネスケールにより測定される前記第1プレス用のシリンダの位置と、前記算出部から供給される前記第1プレス用のシリンダの位置が一致するように、前記第1プレス用のシリンダの圧力を制御し、
前記第2マグネスケールにより測定される前記第2プレス用のシリンダの位置と、前記算出部から供給される前記第2プレス用のシリンダの位置が一致するように、前記第2プレス用のシリンダの圧力を制御する、
請求項5に記載のロールプレス装置。
【請求項7】
前記第1圧縮機構は第1電動スクリュを含み、
前記第2圧縮機構は第2電動スクリュを含み、
前記算出部は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板の厚み変化量がゼロになるように、前記ラインの加速期間または減速期間の前記第1電動スクリュの位置と前記第2電動スクリュの位置の設定値を補正する、
請求項3に記載のロールプレス装置。
【請求項8】
前記第1加圧ローラ及び第2加圧ローラの入側に設置される巻出機と、
前記第1加圧ローラ及び第2加圧ローラの出側に設置される巻取機と、
前記第1加圧ローラの回転速度、前記第2加圧ローラの回転速度、前記巻出機の回転速度、及び前記巻取機の回転速度を制御する速度制御部と、
をさらに備え、
前記算出部は、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構の応答時間に応じて、前記速度制御部への加速指令または減速指令を遅延させる、
請求項1から7のいずれか1項に記載のロールプレス装置。
【請求項9】
連続的に搬送される二次電池の電極板を挟み込むことにより圧延する第1加圧ローラ及び第2加圧ローラと、
前記第1加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1主軸受部及び第2主軸受部と、
前記第2加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3主軸受部及び第4主軸受部と、
前記第1加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1ベンド軸受部及び第2ベンド軸受部と、
前記第2加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3ベンド軸受部及び第4ベンド軸受部と、
前記第1主軸受部及び前記第3主軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが近接する方向への荷重を加えることが可能な第1圧縮機構と、
前記第2主軸受部及び前記第4主軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが近接する方向への荷重を加えることが可能な第2圧縮機構と、
前記第1ベンド軸受部及び前記第3ベンド軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが離接する方向への荷重を加えることが可能な第1ベンド機構と、
前記第2ベンド軸受部及び前記第4ベンド軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが離接する方向への荷重を加えることが可能な第2ベンド機構と、
前記第1加圧ローラ及び第2加圧ローラの出側に設けられ、前記二次電池の電極板の厚みを、当該電極板の幅方向に3点以上でそれぞれ検出する厚み計と、
を備えるロールプレス装置に使用される制御装置であって、
前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構、前記第1ベンド機構、及び前記第2ベンド機構のそれぞれの設定値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された設定値をもとに、前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構、前記第1ベンド機構、及び前記第2ベンド機構の荷重をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記算出部は、予め導出された前記電極板の搬送ラインの速度変化量と、前記厚み計で検出されるべき前記電極板の幅方向の3点以上の厚み検出値
の平均値の変化量で規定される前記電極板の厚み変化量との関係性と、設定されている前記ラインの加速度または減速度をもとに、前記ラインの加速開始または減速開始から所定時間後の前記電極板の厚み変化量を予測し、前記ラインの速度変化に応じた前記電極板の厚み変化が小さくなるように、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構の設定値を予め変更する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の電極板を圧延するロールプレス装置、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の普及に伴い二次電池の出荷が増えている。特にリチウムイオン二次電池の出荷が増えている。一般的な二次電池は、正極、負極、セパレータ、電解液を主な構成要素とする。二次電池の正極板、負極板を製造する工程の1つである圧縮加工工程では、ロールプレス装置が使用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ロールプレス装置における電極板の圧縮加工工程では、一般に、2μm以下程度の厚み精度が要求される。前工程の電極材の塗膜厚さの変化、または圧縮工程における圧縮による加工熱やベアリング発熱によるロール外径の変化によって、圧縮加工中に電極板の長さ方向や幅方向に厚み変化が生じる。
【0005】
また本発明者らの調査により、搬送ラインの加速または減速に伴い、電極板内部での活物質の移動時間が減少または増加し、活物質の充填性が低下または増加することによる、電極板の厚みの増加または減少が観察された。
【0006】
二次電池に対して、近年ますます、小型・軽量で高容量化、あるいは同じ製造コストで高容量化することが求められている。そのために、より高精度な厚み制御が求められており、搬送ラインの加速または減速に伴う電極板の厚み変化を抑制する必要性が高まっている。
【0007】
ライン搬送中の電極板の厚みを自動厚み測定器で測定し、フィードバック制御で厚みを目標値に維持するように制御する方法が考えられる。しかしながら、搬送ラインの速度変化が大きいと、フィードバック制御が間に合わず、搬送ラインの加速または減速時に電極板の厚みが変化してしまう。
【0008】
本開示のある態様のロールプレス装置は、連続的に搬送される二次電池の電極板を挟み込むことにより圧延する第1加圧ローラ及び第2加圧ローラと、前記第1加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1主軸受部及び第2主軸受部と、前記第2加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3主軸受部及び第4主軸受部と、前記第1加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1ベンド軸受部及び第2ベンド軸受部と、前記第2加圧ローラの回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3ベンド軸受部及び第4ベンド軸受部と、前記第1主軸受部及び前記第3主軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが近接する方向への荷重を加えることが可能な第1圧縮機構と、前記第2主軸受部及び前記第4主軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが近接する方向への荷重を加えることが可能な第2圧縮機構と、前記第1ベンド軸受部及び前記第3ベンド軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが離接する方向への荷重を加えることが可能な第1ベンド機構と、前記第2ベンド軸受部及び前記第4ベンド軸受部の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラと前記第2加圧ローラが離接する方向への荷重を加えることが可能な第2ベンド機構と、前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構、前記第1ベンド機構、及び前記第2ベンド機構のそれぞれの設定値を算出する算出部と、前記算出部により算出された設定値をもとに、前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構、前記第1ベンド機構、及び前記第2ベンド機構の荷重をそれぞれ制御する制御部と、を備える。前記算出部は、前記電極板の搬送ラインの速度変化に応じた前記電極板の厚み変化が小さくなるように、前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構の設定値を予め変更する。
【0009】
本開示によれば、ロールプレス装置において、搬送ラインの加速または減速時の厚み制御を高精度化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るロールプレス装置の概略正面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態2に係るロールプレス装置の概略正面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態3に係るロールプレス装置の概略正面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1~3に係るロールプレス装置の概略側面図である。
【
図5】
図5は、第1制御盤及び第2制御盤を用いたフィードバック制御例1を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1制御盤及び第2制御盤を用いたフィードバック制御例2を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1制御盤及び第2制御盤を用いたフィードバック制御例3を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1制御盤及び第2制御盤を用いたフィードバック制御例4を説明するための図である。
【
図9】
図9は、あるロールプレス装置の一定のプレス・ベンド条件下における、ライン速度の変化に対する電極板の厚み変化の関係をプロットした図である。
【
図10】
図10は、第1制御盤を用いたフィードフォワード制御例1を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1制御盤を用いたフィードフォワード制御例2を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第1制御盤を用いたフィードフォワード制御例3を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態1に係るロールプレス装置の概略正面図である。第1加圧ローラ11及び第2加圧ローラ12は上下一対のロールバイトであり、接離自在に対向して設置される。一対の第1加圧ローラ11及び第2加圧ローラ12は、連続的に搬送される二次電池の電極板2を挟み込むことにより電極板2を圧延する。ロールプレス装置に通される二次電池の電極板2は、金属箔に、活物質を含むスラリーを塗工して乾燥させたシート状の電極素材である。例えば、リチウムイオン二次電池の正極板は、アルミ箔上に、コバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウム等の正極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。また、リチウムイオン二次電池の負極板は、銅箔上に、黒鉛等の負極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。ロールプレス装置に通される電極板2の厚みは、塗布された活物質の厚みが大部分を占める。
【0012】
第1主軸受部21及び第2主軸受部22は、第1加圧ローラ11の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する。第3主軸受部23及び第4主軸受部24は、第2加圧ローラ12の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する。
【0013】
第1ベンド軸受部31及び第2ベンド軸受部32は、第1加圧ローラ11の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する。第3ベンド軸受部33及び第4ベンド軸受部34は、第2加圧ローラ12の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する。
【0014】
図1に示す例では、第1主軸受部21~第4主軸受部24及び第1ベンド軸受部31~第4ベンド軸受部34はそれぞれ、ローラの回転軸を回転自在に支持する軸受を内蔵する軸受箱で構成されている。
【0015】
第1圧縮機構41は、第1主軸受部21及び第3主軸受部23の少なくとも一方に、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が近接する方向への荷重を加えることで、電極板2を圧縮することが可能な機構である。第2圧縮機構42は、第2主軸受部22及び第4主軸受部24の少なくとも一方に、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が近接する方向への荷重を加えることで、電極板2を圧縮することが可能な機構である。
【0016】
実施の形態1では、第1圧縮機構41として、第3主軸受部23に荷重を加えることができる第1プレスシリンダ41a、及び第1主軸受部21に荷重を加えることができる第1電動スクリュ41bが設けられている。第2圧縮機構42として、第4主軸受部24に荷重を加えることができる第2プレスシリンダ42a、及び第2主軸受部22に荷重を加えることができる第2電動スクリュ42bが設けられている。第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力制御には、例えば、油圧サーボ弁、減圧弁を使用することができる。第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置制御にはサーボモータが使用される。第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bのそれぞれ圧下量は、それぞれのサーボモータで制御され、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bが第1主軸受部21及び第2主軸受部22にそれぞれ加える荷重が制御される。
【0017】
第1ベンド機構51(実施の形態1では、第1ベンドシリンダ51a)は、第1ベンド軸受部31と第3ベンド軸受部33の間に設けられ、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が離接する方向への荷重を加えることで、ローラの撓みを補正することが可能な機構である。第2ベンド機構52(実施の形態1では、第2ベンドシリンダ52a)は、第2ベンド軸受部32と第4ベンド軸受部34の間に設けられ、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が離接する方向への荷重を加えることで、ローラの撓みを補正することが可能な機構である。
【0018】
後述するプレス圧力制御部817a(
図5参照)による、第1圧縮機構41及び/又は第2圧縮機構42の圧力変更によって、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12間のロールギャップが制御される。ロールギャップの変更に伴いロール撓みも変化する。後述するベンド圧力制御部818a(
図5参照)による、第1ベンド機構51及び/又は第2ベンド機構52の圧力変更によって、ロール撓み量を補正することができる。その際、ロールギャップも変化し、第1圧縮機構41及び/又は第2圧縮機構42による圧力変化と逆の作用をする。
【0019】
第1プレロード機構61(
図1に示す例では、第1プレロードシリンダ61a)は、第1ベンド軸受部31に、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が離接する方向へ一定の荷重を加えている機構である。第2プレロード機構62(
図1に示す例では、第2プレロードシリンダ62a)は、第2ベンド軸受部32に、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が離接する方向へ一定の荷重を加えている機構である。第1プレロードシリンダ61a及び第2プレロードシリンダ62aの圧力は固定であり、常に同じ圧力に設定されている。
【0020】
図1に示す例では、第1プレロード機構61及び第2プレロード機構62が第1ベンド軸受部31及び第2ベンド軸受部32に第1加圧ローラ11の自重以上のプレロード荷重を加えている。これにより、第1加圧ローラ11を上方に適度に押し付け(引っ張り)、ロールプレス装置のガタツキの影響を少なくしている。なお第1プレロード機構61及び第2プレロード機構62は省略可能である。
【0021】
図2は、実施の形態2に係るロールプレス装置の概略正面図である。以下、実施の形態1の構成との相違点を説明する。実施の形態1では、上側の第1ベンド軸受部31及び第2ベンド軸受部32と、下側の第3ベンド軸受部33及び第4ベンド軸受部34との間に、第1ベンドシリンダ51a及び第2ベンドシリンダ52aを設け、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が離接する方向へ荷重を加えるタイプの第1ベンド機構51及び第2ベンド機構52を採用した。
【0022】
実施の形態2では第1ベンド機構51及び第2ベンド機構52として、第1ベンド軸受部31の外側に第3ベンドシリンダ51bが、第2ベンド軸受部32の外側に第4ベンドシリンダ52bが、第3ベンド軸受部33の外側に第5ベンドシリンダ51cが、第4ベンド軸受部34の外側に第6ベンドシリンダ52cがそれぞれ設けられる。実施の形態2では、これらの第3ベンドシリンダ51b、第4ベンドシリンダ52b、第5ベンドシリンダ51c及び第6ベンドシリンダ52cにより、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が離接する方向への荷重を加えるタイプを採用している。実施の形態2では第1プレロード機構61及び第2プレロード機構62は設けられない。
【0023】
実施の形態2では、第1圧縮機構41として、第1プレスシリンダ41a、第1マグネスケール41c、第1ロードセル41dを含む。実施の形態2では第1プレスシリンダ41aの圧力制御に油圧サーボ弁が使用される。第1マグネスケール41cは、第1プレスシリンダ41aの位置を検出する。実施の形態2では、第1主軸受部21に、第1加圧ローラ11の自重による荷重が加えられている。第1ロードセル41dは圧縮型のロードセルであり、第1主軸受部21に加えられている荷重を検出する。第2圧縮機構42の構成は、第1圧縮機構41と同様であるため説明を省略する。実施の形態2では、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bは設けられない。
【0024】
図3は、実施の形態3に係るロールプレス装置の概略正面図である。以下、実施の形態1の構成との相違点を説明する。実施の形態3の第1ベンド機構51及び第2ベンド機構52は、実施の形態2の第1ベンド機構51及び第2ベンド機構52と同様のタイプを採用している。
【0025】
実施の形態3の第1圧縮機構41及び第2圧縮機構42は、実施の形態1の第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの代わりに、第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eが設けられる。第1ロードセル41d及び第2ロードセル42dは設けられない。一般的に、実施の形態3に係るロールプレス装置は、実施の形態1、2に係るロールプレス装置より安価に製造することができる。
【0026】
第1電動コッタ41eは、第1主軸受部21と第3主軸受部23の間に設けられる。第1電動コッタ41eは、第1主軸受部21に固定された上側コッタと、第3主軸受部23に固定された下側コッタを含む。上側コッタの下面と下側コッタの上面がそれぞれテーパ面になっており、互いのテーパ面が対向するように配置される。下側コッタに、下側コッタを左右方向(テーパ面の方向)にスライドさせるためのリニアサーボモータが設けられる。下側コッタが左右にスライドすることにより、第1電動コッタ41eの高さを調整することができる。
図3に示す例では、下側コッタが左方向にスライドすると第1電動コッタ41eの高さが低くなり、右方向にスライドすると第1電動コッタ41eの高さが高くなる。即ち、下側コッタを左方向にスライドするほど、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12が近接する方向への荷重が大きくなる。
【0027】
第2電動コッタ42eは、第2主軸受部22と第4主軸受部24の間に設けられる。第2電動コッタ42eは、第2主軸受部22に固定された上側コッタ、第4主軸受部24に固定された下側コッタを含む。第2電動コッタ42eの構成は、第1電動コッタ41eと同様であるため説明を省略する。
【0028】
図4は、実施の形態1~3に係るロールプレス装置1の概略側面図である。一対の第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12の入側には巻出機13が設置され、出側には巻取機14が設置されている。巻出機13は、コイル状に巻回されているシート状の電極板2を、一対の第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12に向けて巻き出す。巻取機14は、一対の第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12により圧縮加工された電極板2をコイル状に巻き取る。
【0029】
モータ15は、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12を駆動するモータである。パルスジェネレータ16は、駆動用のモータ15に取り付けられ、モータ15の回転数を検出する。
【0030】
厚み計70は、一対の第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12の出側に設けられ、電極板2の厚みを、電極板2の幅方向に並んだ第1地点、第2地点、第3地点の3点でそれぞれ検出する。第1地点は、電極板2の第1圧縮機構41が設けられる側の端部に設定される。第2地点は、電極板2の中央部に設定される。第3地点は、電極板2の第2圧縮機構42が設けられる側の端部に設定される。
【0031】
一般的なロールプレス装置1では、モータ15が設置されている側(実施の形態1~3では第1圧縮機構41側)と反対側(実施の形態1~3では第2圧縮機構42側)にオペレータが操作する画面が設置される。そこで以下、実施の形態1~3では、第1地点を駆動側、第2地点を中央部、第3地点を操作側とそれぞれ表記する。すなわち、厚み計70は、圧縮加工後の電極板2の駆動側、中央部、操作側の厚みをそれぞれ検出する。
【0032】
厚み計70は、1つの厚み検出センサを電極板2の幅方向に走査して、連続的に電極板2の厚みを検出することにより、駆動側、中央部、操作側の厚みをそれぞれ抽出するものであってもよい。
【0033】
また厚み計70は、3つの厚み検出センサを駆動側、中央部、操作側にそれぞれ固定して設置し、3つの厚み検出センサで駆動側、中央部、操作側の厚みをそれぞれ検出してもよい。
【0034】
厚み計70の検出方式として、レーザセンサもしくは光学センサを用いて電極板2の両面までの距離をそれぞれ検出し、それらの位置関係から厚みを検出する方式を用いてもよい。また、磁気センサで渦電流の変化を検出して電極板2の外径面までの距離を検出し、レーザセンサもしくは光学センサでガイドロール上の電極板2の表面までの距離を検出し、ガイドロールと電極板2の表面の位置関係から厚みを検出する方式を用いてもよい。なお、電極板2の表面までの距離を、白色共焦点方式のセンサを使用して検出してもよい。
【0035】
制御装置80は、ロールプレス装置1全体を制御するための装置であり、
図4に示す例では第1制御盤81及び第2制御盤82を備える。第1制御盤81はプレス系の制御盤であり、第2制御盤82は厚み系の制御盤である。パルスジェネレータ16により生成される回転パルスは、第1制御盤81に入力される。厚み計70により検出される厚み検出値は、第2制御盤82に入力される。
図4を用いて説明した構成は、実施の形態1~3で共通である。
【0036】
図5は、第1制御盤81及び第2制御盤82を用いたフィードバック制御例1を説明するための図である。フィードバック制御例1は、
図1に示した実施の形態1に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードバック制御例1では、圧縮機構として第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aを使用する。ベンド機構として第1ベンドシリンダ51a及び第2ベンドシリンダ52aを使用する。第1制御盤81は、PLC(Programmable Logic Controller)、PC(Personal Computer)、HMI(Human Machine Interface)、アクチュエータコントローラ等を含んで構成される。第2制御盤は、PLC、PC、センサコントローラ等を含んで構成される。
【0037】
PLC内で動作するプログラムは、PC内の専用のアプリケーションで生成され、PLCにダウンロードされる。またPLCには、MES(Manufacturing Execution System)から電極板2の製品情報が入力される。またPLCには、HMIを介してオペレータに入力された各種の設定値が入力される。フィードバック制御例1では当該設定値に、電極板2の厚み目標値、第1プレスシリンダ41a、第2プレスシリンダ42aの圧力設定値、第1ベンドシリンダ51a、第2ベンドシリンダ52aの圧力設定値が含まれる。HMIは、オペレータの入力を受け付けるとともに、運転状況や警報などを表示したり、音声出力したりする。
【0038】
図5は、フィードバック制御例1に関連する、第1制御盤81及び第2制御盤82で実現される機能ブロックを描いている。第1制御盤81は、長さ測定部811、取得タイミング生成部812、厚み測定値取得部813、特徴量算出部814、補正値算出部815、設定値補正部816、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、プレス圧力偏差算出部817c、ベンド圧力制御部818a、PID制御部818b、及びベンド圧力偏差算出部818cを含む。第2制御盤82は、厚み測定値算出部821を含む。
【0039】
長さ測定部811には、パルスジェネレータ16から回転パルスが入力される。長さ測定部811は、入力された回転パルスをもとに、第1加圧ローラ11及び第2加圧ローラ12の回転速度を推定し、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12間を通過する電極板2の速度を推定する。長さ測定部811は、推定した電極板2の速度をもとに、電極板2の単位時間当たりに進む長さ(距離)を測定する。長さ測定部811は、測定した電極板2の長さを取得タイミング生成部812と厚み測定値算出部821に供給する。
【0040】
厚み測定値算出部821には、厚み計70から駆動側、中央部、操作側のそれぞれの厚み検出値が入力される。また長さ測定部811から電極板2の長さが入力される。
【0041】
厚み計70において3つの厚み検出センサを固定して厚みを検出する場合、制御する必要の無い高周期の厚み変動を除去するため、厚み測定値算出部821は、3つの厚み検出値をそれぞれ電極板2の長さ方向(走行方向)に平均化してフィルタリングする。塗布工程における塗布ポンプ脈動などによる、走行方向の急峻な変化を除去するため、走行方向に5mm以上の平均値を算出するのが望ましい。
【0042】
例えば、1mmピッチ毎に厚み検出値が入力される場合、厚み測定値算出部821は、走行方向に5点の移動平均値を算出して測定値とする。また、走行方向に検出した5点の内、最も外れている2点を排除した3点の平均値を算出して測定値としてもよい。厚み測定値算出部821は、移動平均値を算出する際、長さ測定部811から入力される電極板2の長さを同期信号として使用する。なお、電極板2の幅方向のスリットに相当する無塗工部や片面しか塗工されてない部分に相当する検出値は、除去する。
【0043】
厚み計70において1つの厚み検出センサを電極板2の幅方向に走査して厚みを検出する場合、厚み測定値算出部821は、予め設定された駆動側、中央部、操作側のそれぞれの幅範囲の検出値の平均値を算出して測定値としてもよい。さらに当該測定値を上述したように走行方向に平均化して最終的な測定値としてもよい。
【0044】
厚み測定値算出部821は、算出した駆動側厚み測定値Tm、中央厚み測定値Tc、操作側厚み測定値Tsを厚み測定値取得部813に供給する。
【0045】
取得タイミング生成部812は厚み測定値取得部813が、厚み測定値算出部821から供給される駆動側厚み測定値Tm、中央厚み測定値Tc、操作側厚み測定値Tsを取得するタイミングを生成して、生成したタイミングを厚み測定値取得部813に供給する。
【0046】
第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12によるプレス位置と、厚み計70との間には距離Lt(パスライン長Lt)がある。したがって、第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12による圧力変更により発生する厚み変化が、厚み計70により検出されるまでにタイムラグが発生する。また、圧縮機構および/またはベンド機構の圧力設定値を変更してから、圧縮機構および/またはベンド機構の実際の圧力変更が完了するまでにもタイムラグtdが発生する。
【0047】
油圧サーボ弁で制御されるプレスシリンダ、減圧弁で制御されるプレスシリンダ、電動スクリュ、及び電動コッタの内、最も応答性が高いのは油圧サーボ弁で制御されるプレスシリンダであり、油圧サーボ弁で制御されるプレスシリンダが使用される場合が、最も制御系タイムラグtdが小さくなる。
【0048】
パスライン長Ltと制御系タイムラグtdは予め実測され、実測された値が、取得タイミング生成部812に固定値として設定される。取得タイミング生成部812は、パスライン長Ltと比較する長さパラメータLと、制御系タイムラグtdと比較する時間パラメータtを使用する。取得タイミング生成部812は、長さパラメータLを長さ測定部811から供給される電極板2の長さをもとにインクリメントし、制御系タイムラグtdを時計から供給されるクロックをもとにインクリメントする。
【0049】
取得タイミング生成部812は、第1プレスシリンダ41a、第2プレスシリンダ42a、第1ベンドシリンダ51a、及び第2ベンドシリンダ52aの少なくとも1つの圧力設定値が設定値補正部816により変更されると、長さパラメータLと時間パラメータtをゼロにリセットする。取得タイミング生成部812は、長さパラメータLがパスライン長Ltを超え、かつ時間パラメータtが制御系タイムラグtdを超えると、厚み測定値取得部813に取得タイミングを供給する。
【0050】
長さパラメータLがパスライン長Ltを超え、かつ時間パラメータtが制御系タイムラグtdを超えた状態は、第1プレスシリンダ41a、第2プレスシリンダ42a、第1ベンドシリンダ51a、及び第2ベンドシリンダ52aの少なくとも1つの圧力設定値の変更による電極板2の厚み変化が、厚み計70の検出値に反映されている状態である。
【0051】
一方、長さパラメータLがパスライン長Ltを超えていない状態、または時間パラメータtが制御系タイムラグtdを超えていない状態は、第1プレスシリンダ41a、第2プレスシリンダ42a、第1ベンドシリンダ51a、及び第2ベンドシリンダ52aの少なくとも1つの圧力設定値の変更による電極板2の厚み変化が、厚み計70の検出値にまだ反映されていない状態である。この状態は、上記圧力設定値の変更が電極板2の厚みに与える影響を確認できていない状態である。
【0052】
したがって、長さパラメータLがパスライン長Ltを超え、かつ時間パラメータtが制御系タイムラグtdを超えた状態まで待つ必要があり、その状態になるまで次の圧力設定値の変更は保留される。これにより、無駄または過度な第1プレスシリンダ41a、第2プレスシリンダ42a、第1ベンドシリンダ51a、及び第2ベンドシリンダ52aの圧力設定値の変更が回避され、効率的な圧力設定値の調整が可能となる。
【0053】
厚み測定値取得部813は、厚み測定値算出部821から供給される駆動側厚み測定値Tm、中央厚み測定値Tc、及び操作側厚み測定値Tsを、取得タイミング生成部812から供給されるタイミングで取得し、特徴量算出部814に供給する。
【0054】
特徴量算出部814には、厚み測定値取得部813から駆動側厚み測定値Tm、中央厚み測定値Tc、及び操作側厚み測定値Tsが入力される。また特徴量算出部814には、オペレータにより設定された厚み目標値Ttが入力される。
【0055】
特徴量算出部814は、駆動側厚み測定値Tm、中央厚み測定値Tc、操作側厚み測定値Ts、及び厚み目標値Ttをもとに、制御すべき厚み特徴量として、下記(式1)~(式3)で定義される3つの偏差特徴量を算出する。第1特徴量Tt-mは、厚み目標値Ttと駆動側厚み測定値Tmの差分で規定される。第2特徴量Tt-sは、厚み目標値Ttと操作側厚み測定値Tsの差分で規定される。第3特徴量Tdropは、中央厚み測定値Tcと、駆動側厚み測定値Tmと操作側厚み測定値Tsとの平均値との差分で規定される。
【0056】
Tt-m=Tt-Tm ・・・(式1)
Tt-s=Tt-Ts ・・・(式2)
Tdrop=Tc-Tms,ave=Tc-(Tm+Ts)/2 ・・・(式3)
第1特徴量Tt-m=0、第2特徴量Tt-s=0、第3特徴量Tdrop=0の時、駆動側厚み測定値Tm=中央厚み測定値Tc=操作側厚み測定値Ts=厚み目標値Ttとなる。第3特徴量Tdropは、厚みプロフィールの2次成分(数値が大の時、上に凸の放物線形状)を表しており、ロール撓みの大小とロール撓みの向きによって変化する。
【0057】
特徴量算出部814は、算出した第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropを補正値算出部815に供給する。
【0058】
本発明者らの実験によると、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropと荷重との間に、下記(式4)~(式6)に定義される関係があることが分かった。
【0059】
Tt-m∝(駆動側荷重) ・・・(式4)
Tt-s∝(操作側荷重) ・・・(式5)
Tdrop∝A×(トータルプレス荷重)-B×(トータルベンド荷重)-C×(トータルプレロード荷重) ・・・(式6)
ここで、トータルプレス荷重は駆動側プレス荷重と操作側プレス荷重の合算であり、トータルベンド荷重は駆動側ベンド荷重と操作側ベンド荷重の合算であり、トータルプレロード荷重は駆動側プレロード荷重と操作側プレロード荷重の合算である。駆動側荷重は、駆動側プレスシリンダと駆動側ベンドシリンダと駆動側プレロードシリンダによって発生する駆動側荷重である。操作側荷重は、操作側プレスシリンダと操作側ベンドシリンダと操作側プレロードシリンダによって発生する操作側荷重である。
【0060】
プレスシリンダ荷重は被圧延材に圧力を加える方向に働き、ベンド荷重とプレロード荷重は被圧延材への圧力を下げる方向に働く。プレロードシリンダ荷重は、ロール撓みを過度に発生させない程度の圧力で、かつ設備のガタツキや振動を小さくできる押し付け圧力が確保された固定値に設定される。すなわち、厚み制御においてプレロード荷重は変化させない。なお、プレロードシリンダ荷重が過度に大きい場合、プレス圧力とベンド圧力の制御範囲内でロール撓みを制御することが困難になる。なお、第1プレロードシリンダ61a及び第2プレロードシリンダ62aが設けられない設備の場合、プレロード荷重はゼロである。
【0061】
上記(式6)のA、B、Cは正の定数であり、トータルプレス荷重、トータルベンド荷重、及びトータルプレロード荷重のそれぞれの駆動側荷重と操作側荷重との差が、第3特徴量Tdropに対して与える影響が、それぞれ異なることを表している。
【0062】
予め上記(式4)~(式6)のそれぞれの左辺と右辺の比例定数を測定しておくことで、トータルプレロード荷重が一定値の時、もしくはプレロード機構が設けられない時、上記(式4)~(式6)より、第1特徴量Tt-mと第2特徴量Tt-sと第3特徴量Tdropを同時にゼロにするトータルプレス荷重とトータルベンド荷重を一義的に求めることができる。
【0063】
フィードバック制御例1では、各シリンダの圧力を制御することで各荷重を制御する。荷重はシリンダ径(定数)×シリンダ圧力で計算される。上記(式4)~(式6)より、駆動側プレス圧力Pm、操作側プレス圧力Ps、駆動側ベンド圧力Bm、操作側ベンド圧力Bs、駆動側プレロード圧力Rm、操作側プレロード圧力Rs、平均プレス圧力Pave=(Pm+Ps)/2、平均ベンド圧力Bave=(Bm+Bs)/2、平均プレロード圧力Rave=(Rm+Rs)/2と、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropとの間に下記(式7)~(式15)の関係が成り立つ。具体的には、上記(式4)から下記(式7)~(式9)が導かれ、上記(式5)から(式10)~(式12)が導かれ、上記(式6)から下記(式13)~(式15)が導かれる。
【0064】
Tt-m∝Pm ・・・(式7)
Tt-m∝-Bm ・・・(式8)
Tt-m∝-Rm ・・・(式9)
Tt-s∝Ps ・・・(式10)
Tt-s∝-Bs ・・・(式11)
Tt-s∝-Rs ・・・(式12)
Tdrop∝Pave ・・・(式13)
Tdrop∝-Bave ・・・(式14)
Tdrop∝-Rave ・・・(式15)
予め上記(式7)~(式8)、上記(式10)~(式11)、上記(式13)~(式14)の比例定数を測定しておく。プレロード圧力が一定の時、もしくはプレロード機構が設けられない時において、駆動側ベンド圧力Bmと操作側ベンド圧力Bsの圧力差を一定にすると、上記(式7)と(式10)に示す相関関係より、第1特徴量Tt-mと第2特徴量Tt-sが同時にゼロになる駆動側プレス圧力Pmと操作側プレス圧力Psの駆動側プレス圧力補正値ΔPmと操作側プレス圧力補正値ΔPsがそれぞれ求まる。
【0065】
上記(式13)に示す相関関係より、上述の駆動側プレス圧力Pmと操作側プレス圧力Psの補正に伴う第3特徴量Tdropの変化量が求まる。上記(式14)に示す相関関係と、当該第3特徴量Tdropの変化量をもとに、第3特徴量Tdropをゼロにするための平均ベンド圧力Baveの補正値ΔBaveが求まる。駆動側ベンド圧力Bmと操作側ベンド圧力Bsの差が一定であるため、駆動側ベンド圧力Bmと操作側ベンド圧力Bsの駆動側ベンド圧力補正値ΔBmと操作側ベンド圧力補正値ΔBsが求まる。
【0066】
第1プレスシリンダ41aの圧力が補正後の駆動側プレス圧力設定値Pm+ΔPmに、第2プレスシリンダ42aの圧力が補正後の操作側プレス圧力設定値Ps+ΔPsに、第1ベンドシリンダ51aの圧力が補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBmに、及び第2ベンドシリンダ52aの圧力が補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsにそれぞれなるように、各シリンダの圧力を制御することで、電極板2の全幅に渡る厚みを目標値Ttに制御することができる。
【0067】
補正値算出部815には、特徴量算出部814から第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側プレス圧力設定値Pm、操作側プレス圧力設定値Ps、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。駆動側プレス圧力設定値Pm、操作側プレス圧力設定値Ps、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsには、標準条件下において、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが全てゼロになるように予め導出された値がそれぞれ設定されている。
【0068】
補正値算出部815は、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdrop、及び上記(式7)、(式8)、(式10)、(式11)、(式13)、(式14)の比例定数をもとに、駆動側プレス圧力補正値ΔPm、操作側プレス圧力補正値ΔPs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを算出する。補正値算出部815は、算出した駆動側プレス圧力補正値ΔPm、操作側プレス圧力補正値ΔPs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを設定値補正部816に供給する。
【0069】
設定値補正部816には、補正値算出部815から駆動側プレス圧力補正値ΔPm、操作側プレス圧力補正値ΔPs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側プレス圧力設定値Pm、操作側プレス圧力設定値Ps、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。
【0070】
設定値補正部816は、駆動側プレス圧力設定値Pm、操作側プレス圧力設定値Ps、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsに、駆動側プレス圧力補正値ΔPm、操作側プレス圧力補正値ΔPs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsをそれぞれ加算して、補正後の駆動側プレス圧力設定値Pm+ΔPm、補正後の操作側プレス圧力設定値Ps+ΔPs、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、及び補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsを算出する。
【0071】
設定値補正部816は、算出した補正後の駆動側プレス圧力設定値Pm+ΔPm、補正後の操作側プレス圧力設定値Ps+ΔPsをプレス圧力偏差算出部817cに供給し、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsをベンド圧力偏差算出部818cに供給する。
【0072】
プレス圧力偏差算出部817cは、設定値補正部816から供給された補正後の駆動側プレス圧力設定値Pm+ΔPmと第1プレスシリンダ41aの圧力実測値との偏差、及び補正後の操作側プレス圧力設定値Ps+ΔPsと第2プレスシリンダ42aの圧力実測値との偏差をそれぞれ算出する。第1プレスシリンダ41aの圧力実測値と第2プレスシリンダ42aの圧力実測値はそれぞれ、例えば弁開度計の測定値に応じて推定することができる。
【0073】
プレス圧力偏差算出部817cは、算出した第1プレスシリンダ41aの圧力偏差と第2プレスシリンダ42aの圧力偏差をPID制御部817bに供給する。PID制御部817bは、第1プレスシリンダ41aの圧力偏差、及び第2プレスシリンダ42aの圧力偏差をもとに、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量を生成する。
【0074】
なお、PID補償の代わりに、P補償、PI補償、またはPD補償を用いてもよい。P補償では比例項(定常偏差)を制御でき、I補償では積分項を制御でき、D補償では微分項を制御できる。
【0075】
PID制御部817bは、生成した第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量と第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をプレス圧力制御部817aに供給する。プレス圧力制御部817aは、アクチュエータを含み、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をもとに、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aをそれぞれ駆動する。
【0076】
ベンド圧力偏差算出部818cは、設定値補正部816から供給された補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBmと第1ベンドシリンダ51aの圧力実測値との偏差、及び補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsと第2ベンドシリンダ52aの圧力実測値との偏差をそれぞれ算出する。
【0077】
ベンド圧力偏差算出部818cは、算出した第1ベンドシリンダ51aの圧力偏差と第2ベンドシリンダ52aの圧力偏差をPID制御部818bに供給する。PID制御部818bは、第1ベンドシリンダ51aの圧力偏差、及び第2ベンドシリンダ52aの圧力偏差をもとに、第1ベンドシリンダ51aの圧力の操作量、及び第2ベンドシリンダ52aの圧力の操作量を生成する。
【0078】
PID制御部818bは、生成した第1ベンドシリンダ51aの圧力の操作量と第2ベンドシリンダ52aの圧力の操作量をベンド圧力制御部818aに供給する。ベンド圧力制御部818aは、アクチュエータを含み、第1ベンドシリンダ51aの圧力の操作量、及び第2ベンドシリンダ52aの圧力の操作量をもとに、第1ベンドシリンダ51a、及び第2ベンドシリンダ52aをそれぞれ駆動する。
【0079】
このようにフィードバック制御例1では、プレスシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はプレスシリンダの圧力である。また、ベンドシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はベンドシリンダの圧力である。プレスシリンダ圧力の設定値と、ベンドシリンダ圧力の設定値に、厚み測定値から算出される補正値が加えられることにより、電極板2の厚みが目標値に制御される。
【0080】
図6は、第1制御盤81及び第2制御盤82を用いたフィードバック制御例2を説明するための図である。フィードバック制御例2は、
図2に示した実施の形態2に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードバック制御例2では、圧縮機構として第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aを使用する。ベンド機構として第3ベンドシリンダ51b及び第5ベンドシリンダ51cの少なくとも一方、並びに第4ベンドシリンダ52b及び第6ベンドシリンダ52cの少なくとも一方を使用する。以下、
図5に示したフィードバック制御例1との相違点を説明する。フィードバック制御例2では、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、及びプレス圧力偏差算出部817cの代わりに、シリンダ位置制御部817d、PID制御部817e、及びシリンダ位置偏差算出部817fが設けられる。
【0081】
本発明者らの実験によると、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropと、駆動側プレスシリンダ位置Gm、操作側プレスシリンダ位置Gs、平均プレスシリンダ位置Gave=(Gm+Gs)/2との間に、下記(式16)~(式18)に定義される関係があることが分かった。
【0082】
Tt-m∝Gm ・・・(式16)
Tt-s∝Gs ・・・(式17)
Tdrop∝-Gave ・・・(式18)
電極板2の厚みはプレスシリンダ位置の変化だけで増減するわけではなく、電極板2からの反力が変化することによる第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12の弾性変形量も考慮する必要がある。
【0083】
駆動側プレスシリンダ位置Gm、操作側プレスシリンダ位置Gs、平均プレスシリンダ位置Gaveと、電極板2の厚みを表す第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropとの相関関係は、予め実験的に求めておく。
【0084】
駆動側ベンド圧力Bmと操作側ベンド圧力Bsの圧力差を一定にすると、上記(式16)と(式17)に示す相関関係より、第1特徴量Tt-mと第2特徴量Tt-sが同時にゼロになる駆動側プレスシリンダ位置Gmと操作側プレスシリンダ位置Gsの駆動側プレスシリンダ位置補正値ΔGmと操作側プレスシリンダ位置補正値ΔGsがそれぞれ求まる。
【0085】
上記(式18)に示す相関関係より、上述の駆動側プレスシリンダ位置Gmと操作側プレスシリンダ位置Gsの補正に伴う第3特徴量Tdropの変化量ΔTdropが求まる。上記(式14)に示す相関関係より、当該変化量ΔTdropが加味された第3特徴量Tdrop+ΔTdropをゼロにするための平均ベンド圧力Baveの補正値ΔBaveが求まる。
【0086】
第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置が補正後の駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm+ΔGmに、第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置が補正後の操作側プレスシリンダ位置設定値Gs+ΔGsに、第3ベンドシリンダ51b及び第5ベンドシリンダ51cの圧力が補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBmに、並びに第4ベンドシリンダ52b及び第6ベンドシリンダ52cの圧力が補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsにそれぞれなるように、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置と、第3ベンドシリンダ51b、第5ベンドシリンダ51c、第4ベンドシリンダ52b及び第6ベンドシリンダ52cの圧力を制御することで、電極板2の全幅に渡る厚みを目標値Ttに制御することができる。
【0087】
補正値算出部815には、特徴量算出部814から第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm、操作側プレスシリンダ位置設定値Gs、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm、操作側プレスシリンダ位置設定値Gs、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsには、標準条件下において、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが全てゼロになるように予め導出された値がそれぞれ設定されている。
【0088】
補正値算出部815は、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdrop、及び上記(式16)、(式17)、(式18)、(式14)の比例定数をもとに、駆動側プレスシリンダ位置補正値ΔGm、操作側プレスシリンダ位置補正値ΔGs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを算出する。補正値算出部815は、算出した駆動側プレスシリンダ位置補正値ΔGm、操作側プレスシリンダ位置補正値ΔGs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを設定値補正部816に供給する。
【0089】
設定値補正部816には、補正値算出部815から駆動側プレスシリンダ位置補正値ΔGm、操作側プレスシリンダ位置補正値ΔGs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm、操作側プレスシリンダ位置設定値Gs、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。
【0090】
設定値補正部816は、駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm、操作側プレスシリンダ位置設定値Gs、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsに、駆動側プレスシリンダ位置補正値ΔGm、操作側プレスシリンダ位置補正値ΔGs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsをそれぞれ加算して、補正後の駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm+ΔGm、補正後の操作側プレスシリンダ位置設定値Gs+ΔGs、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、及び補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsを算出する。
【0091】
設定値補正部816は、算出した補正後の駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm+ΔGm、補正後の操作側プレスシリンダ位置設定値Gs+ΔGsをシリンダ位置偏差算出部817fに供給し、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsをベンド圧力偏差算出部818cに供給する。
【0092】
シリンダ位置偏差算出部817fは、設定値補正部816から供給された補正後の駆動側プレスシリンダ位置設定値Gm+ΔGmと、第1マグネスケール41cにより測定された第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置の実測値との偏差を算出する。またシリンダ位置偏差算出部817fは、設定値補正部816から供給された補正後の操作側プレスシリンダ位置設定値Gs+ΔGsと、第2マグネスケール42cにより測定された第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置の実測値との偏差を算出する。
【0093】
シリンダ位置偏差算出部817fは、算出した第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置偏差と第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置偏差をPID制御部817eに供給する。PID制御部817eは、第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置偏差、及び第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置偏差をもとに、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量を生成する。
【0094】
PID制御部817eは、生成した第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量と第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をシリンダ位置制御部817dに供給する。シリンダ位置制御部817dは、アクチュエータを含み、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をもとに、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aをそれぞれ駆動する。
【0095】
フィードバック制御例2ではベンド機構として、第3ベンドシリンダ51b、第5ベンドシリンダ51c、第4ベンドシリンダ52b、及び第6ベンドシリンダ52cを制御しているが、フィードバック制御例1における第1ベンドシリンダ51a及び第2ベンドシリンダ52aを制御する場合と基本的に同じであるため説明を省略する。
【0096】
このようにフィードバック制御例2では、フィードバック制御例1のようにプレスシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御するのではなく、プレスシリンダの位置が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はプレスシリンダの位置である。また、フィードバック制御例2でもベンドシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はベンドシリンダの圧力である。プレスシリンダ位置の設定値と、ベンドシリンダ圧力の設定値に、厚み測定値から算出される補正値が加えられることにより、電極板2の厚みが目標値に制御される。
【0097】
図7は、第1制御盤81及び第2制御盤82を用いたフィードバック制御例3を説明するための図である。フィードバック制御例3は、
図1に示した実施の形態1に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードバック制御例3では、圧縮機構として第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bを使用する。なお、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aには、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置制御によって、シリンダの位置が変化しないように、十分に大きな圧力(固定値)を付加しておく。
【0098】
ベンド機構として第1ベンドシリンダ51a及び第2ベンドシリンダ52aを使用する。以下、
図5に示したフィードバック制御例1との相違点を説明する。フィードバック制御例3では、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、及びプレス圧力偏差算出部817cの代わりに、スクリュ位置制御部817g、PID制御部817h、及びスクリュ位置偏差算出部817iが設けられる。
【0099】
本発明者らの実験によると、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropと、駆動側電動スクリュ位置Dm、操作側電動スクリュ位置Ds、平均電動スクリュ位置Dave=(Dm+Ds)/2との間に、下記(式19)~(式21)に定義される関係があることが分かった。
【0100】
Tt-m∝Dm ・・・(式19)
Tt-s∝Ds ・・・(式20)
Tdrop∝-Dave ・・・(式21)
電極板2の厚みは電動スクリュ位置の変化だけで増減するわけではなく、電極板2からの反力が変化することによる第1加圧ローラ11と第2加圧ローラ12の弾性変形量も考慮する必要がある。
【0101】
駆動側電動スクリュ位置Dm、操作側電動スクリュ位置Ds、平均電動スクリュ位置Daveと、電極板2の厚みを表す第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropとの相関関係は、予め実験的に求めておく。
【0102】
プレロード圧力が一定の時、もしくはプレロード機構が設けられない時において、駆動側ベンド圧力Bmと操作側ベンド圧力Bsの圧力差を一定にすると、上記(式19)と(式20)に示す相関関係より、第1特徴量Tt-mと第2特徴量Tt-sが同時にゼロになる駆動側電動スクリュ位置Dmと操作側電動スクリュ位置Dsの駆動側電動スクリュ位置補正値ΔDmと操作側電動スクリュ位置補正値ΔDsがそれぞれ求まる。
【0103】
上記(式21)に示す相関関係より、上述の駆動側電動スクリュ位置Dmと操作側電動スクリュ位置Dsの補正に伴う第3特徴量Tdropの変化量ΔTdropが求まる。上記(式14)に示す相関関係より、当該変化量ΔTdropが加味された第3特徴量Tdrop+ΔTdropをゼロにするための平均ベンド圧力Baveの補正値ΔBaveが求まる。
【0104】
第1電動スクリュ41bの位置が補正後の駆動側電動スクリュ位置設定値Dm+ΔDmに、第2電動スクリュ42bの位置が補正後の操作側電動スクリュ位置設定値Ds+ΔDsに、第1ベンドシリンダ51aの圧力が補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBmに、及び第2ベンドシリンダ52aの圧力が補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsにそれぞれなるように、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置と、第1ベンドシリンダ51a及び第2ベンドシリンダ52aの圧力を制御することで、電極板2の全幅に渡る厚みを目標値Ttに制御することができる。
【0105】
補正値算出部815には、特徴量算出部814から第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側電動スクリュ位置設定値Dm、操作側電動スクリュ位置設定値Ds、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。駆動側電動スクリュ位置設定値Dm、操作側電動スクリュ位置設定値Ds、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsには、標準条件下において、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが全てゼロになるように予め導出された値がそれぞれ設定されている。
【0106】
補正値算出部815は、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdrop、及び上記(式19)、(式20)、(式21)、(式14)の比例定数をもとに、駆動側電動スクリュ位置補正値ΔDm、操作側電動スクリュ位置補正値ΔDs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを算出する。補正値算出部815は、算出した駆動側電動スクリュ位置補正値ΔDm、操作側電動スクリュ位置補正値ΔDs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを設定値補正部816に供給する。
【0107】
設定値補正部816には、補正値算出部815から駆動側電動スクリュ位置補正値ΔDm、操作側電動スクリュ位置補正値ΔDs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側電動スクリュ位置設定値Dm、操作側電動スクリュ位置設定値Ds、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。
【0108】
設定値補正部816は、駆動側電動スクリュ位置設定値Dm、操作側電動スクリュ位置設定値Ds、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsに、駆動側電動スクリュ位置補正値ΔDm、操作側電動スクリュ位置補正値ΔDs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsをそれぞれ加算して、補正後の駆動側電動スクリュ位置設定値Dm+ΔDm、補正後の操作側電動スクリュ位置設定値Ds+ΔDs、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、及び補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsを算出する。
【0109】
設定値補正部816は、算出した補正後の駆動側電動スクリュ位置設定値Dm+ΔDm、補正後の操作側電動スクリュ位置設定値Ds+ΔDsをスクリュ位置偏差算出部817iに供給し、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsをベンド圧力偏差算出部818cに供給する。
【0110】
スクリュ位置偏差算出部817iは、設定値補正部816から供給された補正後の駆動側電動スクリュ位置設定値Dm+ΔDmと、第1電動スクリュ41bの位置の測定値との偏差を算出する。またスクリュ位置偏差算出部817iは、設定値補正部816から供給された補正後の操作側電動スクリュ位置設定値Ds+ΔDsと、第2電動スクリュ42bの位置の測定値との偏差を算出する。
【0111】
スクリュ位置制御部817gは、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bを圧下させるためのサーボモータをそれぞれ含む。第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bのそれぞれの位置の変化量は、それぞれのサーボモータの回転数から計算することができる。
【0112】
スクリュ位置偏差算出部817iは、算出した第1電動スクリュ41bの位置偏差と第2電動スクリュ42bの位置偏差をPID制御部817hに供給する。PID制御部817hは、第1電動スクリュ41bの位置偏差、及び第2電動スクリュ42bの位置偏差をもとに、第1電動スクリュ41b用のサーボモータの回転の操作量、及び第2電動スクリュ42b用のサーボモータの回転の操作量を生成する。
【0113】
PID制御部817hは、生成した第1電動スクリュ41b用のサーボモータの回転の操作量と第2電動スクリュ42b用のサーボモータの回転の操作量をスクリュ位置制御部817gに供給する。スクリュ位置制御部817gは、第1電動スクリュ41b用のサーボモータの回転の操作量、及び第2電動スクリュ42b用のサーボモータの回転の操作量をもとに、第1電動スクリュ41b用のサーボモータ及び第2電動スクリュ42b用のサーボモータをそれぞれ駆動する。
【0114】
このようにフィードバック制御例3では、フィードバック制御例1のようにプレスシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御するのではなく、電動スクリュの位置が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はサーボモータの回転数である。フィードバック制御例3でもベンドシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はベンドシリンダの圧力である。電動スクリュの位置の設定値と、ベンドシリンダ圧力の設定値に、厚み測定値から算出される補正値が加えられることにより、電極板2の厚みが目標値に制御される。
【0115】
図8は、第1制御盤81及び第2制御盤82を用いたフィードバック制御例4を説明するための図である。フィードバック制御例4は、
図3に示した実施の形態3に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードバック制御例4では、圧縮機構として第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eを使用する。なお、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aには、第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eの高さ制御によって、シリンダの位置が変化しないように、十分に大きな圧力(固定値)を付加しておく。
【0116】
ベンド機構として第3ベンドシリンダ51b及び第5ベンドシリンダ51cの少なくとも一方、並びに第4ベンドシリンダ52b及び第6ベンドシリンダ52cの少なくとも一方を使用する。以下、
図5に示したフィードバック制御例1との相違点を説明する。フィードバック制御例4では、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、及びプレス圧力偏差算出部817cの代わりに、コッタ高さ制御部817j、PID制御部817k、及びコッタ高さ偏差算出部817lが設けられる。
【0117】
第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eが第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aに接触し、第1加圧ローラ11及び第2加圧ローラ12が電極板2に接触している状態において、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aによるプレス荷重の一部は第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eに分散するため、(電極板2に作用する荷重)は、(プレス荷重)-(コッタに作用する荷重)で表される。
【0118】
第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力が一定のとき、プレス荷重は一定となる。この状態では、コッタ高さを変化させてコッタに作用する荷重を変化させることで、電極板2に作用する荷重を変化させることができる。第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eのそれぞれの高さの変化による第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eのそれぞれに作用する荷重変化の測定は難しい。
【0119】
本発明者らの実験によると、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropと、駆動側電動コッタ高さKm、操作側電動コッタ高さKs、平均電動コッタ高さKave=(Km+Ks)/2との間に、下記(式22)~(式24)に定義される関係があることが分かった。
【0120】
Tt-m∝Km ・・・(式22)
Tt-s∝Ks ・・・(式23)
Tdrop∝-Kave ・・・(式24)
駆動側電動コッタ高さKm、操作側電動コッタ高さKs、平均電動コッタ高さKaveと、電極板2の厚みを表す第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropとの相関関係は、予め実験的に求めておく。
【0121】
駆動側ベンド圧力Bmと操作側ベンド圧力Bsの圧力差を一定にすると、上記(式22)と(式23)に示す相関関係より、第1特徴量Tt-mと第2特徴量Tt-sが同時にゼロになる駆動側電動コッタ高さKmと操作側電動コッタ高さKsの駆動側電動コッタ高さ補正値ΔKmと操作側電動コッタ高さ補正値ΔKsがそれぞれ求まる。
【0122】
上記(式24)に示す相関関係より、上述の駆動側電動コッタ高さKmと操作側電動コッタ高さKsの補正に伴う第3特徴量Tdropの変化量ΔTdropが求まる。上記(式14)に示す相関関係より、当該変化量ΔTdropが加味された第3特徴量Tdrop+ΔTdropをゼロにするための平均ベンド圧力Baveの補正値ΔBaveが求まる。
【0123】
第1電動コッタ41eの高さが補正後の駆動側電動コッタ高さ設定値Km+ΔKmに、第2電動コッタ42eの高さが補正後の操作側電動コッタ高さ設定値Ks+ΔKsに、第3ベンドシリンダ51b及び第5ベンドシリンダ51cの圧力が補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBmに、並びに第4ベンドシリンダ52b及び第6ベンドシリンダ52cの圧力が補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsにそれぞれなるように、第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eの高さと、第3ベンドシリンダ51b、第5ベンドシリンダ51c、第4ベンドシリンダ52b及び第6ベンドシリンダ52cの圧力を制御することで、電極板2の全幅に渡る厚みを目標値Ttに制御することができる。
【0124】
補正値算出部815には、特徴量算出部814から第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側電動コッタ高さ設定値Km、操作側電動コッタ高さ設定値Ks、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。駆動側電動コッタ高さ設定値Km、操作側電動コッタ高さ設定値Ks、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsには、標準条件下において、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdropが全てゼロになるように予め導出された値がそれぞれ設定されている。
【0125】
補正値算出部815は、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、第3特徴量Tdrop、及び上記(式22)、(式23)、(式24)、(式14)の比例定数をもとに、駆動側電動コッタ高さ補正値ΔKm、操作側電動コッタ高さ補正値ΔKs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを算出する。補正値算出部815は、算出した駆動側電動コッタ高さ補正値ΔKm、操作側電動コッタ高さ補正値ΔKs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsを設定値補正部816に供給する。
【0126】
設定値補正部816には、補正値算出部815から駆動側電動コッタ高さ補正値ΔKm、操作側電動コッタ高さ補正値ΔKs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsが供給される。また、HMIを介してオペレータにより入力された駆動側電動コッタ高さ設定値Km、操作側電動コッタ高さ設定値Ks、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsが供給される。
【0127】
設定値補正部816は、駆動側電動コッタ高さ設定値Km、操作側電動コッタ高さ設定値Ks、駆動側ベンド圧力設定値Bm、及び操作側ベンド圧力設定値Bsに、駆動側電動コッタ高さ補正値ΔKm、操作側電動コッタ高さ補正値ΔKs、駆動側ベンド圧力補正値ΔBm、及び操作側ベンド圧力補正値ΔBsをそれぞれ加算して、補正後の駆動側電動コッタ高さ設定値Km+ΔKm、補正後の操作側電動コッタ高さ設定値Ks+ΔKs、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、及び補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsを算出する。
【0128】
設定値補正部816は、算出した補正後の駆動側電動コッタ高さ設定値Km+ΔKm、補正後の操作側電動コッタ高さ設定値Ks+ΔKsをコッタ高さ偏差算出部817lに供給し、補正後の駆動側ベンド圧力設定値Bm+ΔBm、補正後の操作側ベンド圧力設定値Bs+ΔBsをベンド圧力偏差算出部818cに供給する。
【0129】
コッタ高さ偏差算出部817lは、設定値補正部816から供給された補正後の駆動側電動コッタ高さ設定値Km+ΔKmと、第1電動コッタ41eの高さの測定値との偏差を算出する。またコッタ高さ偏差算出部817lは、設定値補正部816から供給された補正後の操作側電動コッタ高さ設定値Ks+ΔKsと、第2電動コッタ42eの高さの測定値との偏差を算出する。
【0130】
コッタ高さ制御部817jは、第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eのそれぞれの下側コッタを左右方向にスライドさせるためのリニアサーボモータをそれぞれ含む。第1電動コッタ41e及び第2電動コッタ42eのそれぞれの高さの変化量は、それぞれのリニアサーボモータの移動量から計算することができる。なお、第1主軸受部21と第3主軸受部23間に距離計を設けて第1電動コッタ41eの高さを、第2主軸受部22と第4主軸受部24間に距離計を設けて第2電動コッタ42eの高さをそれぞれ測定してもよい。
【0131】
コッタ高さ偏差算出部817lは、算出した第1電動コッタ41eの高さ偏差と第2電動コッタ42eの高さ偏差をPID制御部817kに供給する。PID制御部817kは、第1電動コッタ41eの高さ偏差、及び第2電動コッタ42eの高さ偏差をもとに、第1電動コッタ41e用のリニアサーボモータの移動の操作量、及び第2電動コッタ42e用のリニアサーボモータの移動の操作量を生成する。
【0132】
PID制御部817kは、生成した第1電動コッタ41e用のリニアサーボモータの移動の操作量と第2電動コッタ42e用のリニアサーボモータの移動の操作量をコッタ高さ制御部817jに供給する。コッタ高さ制御部817jは、第1電動コッタ41e用のリニアサーボモータの移動の操作量、及び第2電動コッタ42e用のリニアサーボモータの移動の操作量をもとに、第1電動コッタ41e用のリニアサーボモータ及び第2電動コッタ42e用のリニアサーボモータをそれぞれ駆動する。
【0133】
フィードバック制御例4ではベンド機構として、第3ベンドシリンダ51b、第5ベンドシリンダ51c、第4ベンドシリンダ52b、及び第6ベンドシリンダ52cを制御しているが、フィードバック制御例1における第1ベンドシリンダ51a及び第2ベンドシリンダ52aを制御する場合と基本的に同じであるため説明を省略する。
【0134】
このようにフィードバック制御例4では、フィードバック制御例1のようにプレスシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御するのではなく、電動コッタの高さが設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はリニアサーボモータの移動量である。フィードバック制御例4でもベンドシリンダの圧力が設定値を維持するようにフィードバック制御する。操作対象はベンドシリンダの圧力である。電動コッタの高さの設定値と、ベンドシリンダ圧力の設定値に、厚み測定値から算出される補正値が加えられることにより、電極板2の厚みが目標値に制御される。
【0135】
上述の第1プレスシリンダ41a、第2プレスシリンダ42a、第1ベンドシリンダ51a、第2ベンドシリンダ52a、第3ベンドシリンダ51b、第4ベンドシリンダ52b、第5ベンドシリンダ51c、及び第6ベンドシリンダ52cに油圧シリンダを使用する場合、油圧シリンダのなるべく近くに油圧制御機器を設置することが望ましい。また、油圧制御機器として、圧力制御速度の速い油圧サーボ弁を使用することが望ましい。これにより、油圧シリンダの圧力変更に伴う油圧配管の圧力変化による圧力応答の遅れや圧力ハンチングを防止することができる。
【0136】
ところで、フィードバック制御例1~4に示した、搬送中の電極板2の厚みを厚み計70で測定し、フィードバック制御により電極板2の厚みを補正する方法では、搬送ラインの加速または減速時の厚み変化を高精度に補正することが難しい。搬送ラインの加速または減速時の速度を遅くすることも考えられるが、その場合、生産効率が低下する。そこで、搬送ラインの速度変化による電極板2の厚み変化を予測し、フィードフォワード制御により電極板2の厚みを補正する方法を導入する。
【0137】
図9は、あるロールプレス装置1の一定のプレス・ベンド条件下における、ライン速度の変化に対する電極板2の厚み変化の関係をプロットした図である。横軸がライン速度[mpm]、縦軸が電極板2の厚み幅平均値[μm]を示している。
図9に示すように、ライン速度が速くなるほど、電極板2の厚みが厚くなることが分かる。
【0138】
図10は、第1制御盤81を用いたフィードフォワード制御例1を説明するための図である。フィードフォワード制御例1は、
図1に示した実施の形態1に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードフォワード制御例1では、圧縮機構として第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aを使用する。本明細書ではフィードフォワード制御を単純化するため、フィードフォワード制御にベンド機構は使用しない。
【0139】
図10は、フィードフォワード制御例1に関連する第1制御盤81で実現される機能ブロックを描いている。第1制御盤81は、ライン速度設定変更部819、ライン速度制御部8110、補正値算出部815、設定値補正部816、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、及びプレス圧力偏差算出部817cを含む。
【0140】
ライン速度制御部8110は、ライン速度設定変更部819から供給されたライン速度の指令値をもとに、巻出機13の回転速度、第1加圧ローラ11及び第2加圧ローラ12の回転速度、並びに巻取機14の回転速度を制御する。
【0141】
ライン速度設定変更部819には、オペレータにより設定されたライン速度が入力される。搬送ラインの加速時の加速度、及び減速時の減速度は基本的に、ロールプレス装置1のメーカにより予め設定されている。なお、加速時の加速度、及び減速時の減速度がユーザにより設定変更可能な仕様であってもよい。
【0142】
フィードフォワード制御例1では、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を予測し、電極板2の厚みを一定に維持するのに必要なプレス荷重を計算し、プレス荷重をフィードフォワード制御で変化させる。ライン速度と電極板2の厚みとの関係は、実験的に調査しておくことで、適切なプレス圧力を高精度に予測することができる。
【0143】
ライン速度の加速度または減速度をα[m/s2]としたとき、加速または減速開始からS秒後のライン速度Vsは、加速または減速開始時の速度V0と、加速または減速開始からS秒後のライン速度の変化量ΔVsを用いて、下記(式25)のように定義できる。加速または減速開始からS秒後のライン速度の変化量ΔVsは、下記(式26)のように定義できる。
【0144】
V
s =V
0+ΔV
s=V
0+α×S ・・・(式25)
ΔV
s =V
s-V
0 =α×S ・・・(式26)
図9に示したように、S秒後のライン速度の変化量ΔV
sと、電極板2の幅方向の厚み平均値T
aveの変化量ΔT
aveとの間は比例関係にあるため、下記(式27)の関係が成り立つ。
【0145】
ΔTave=D×ΔVs ・・・(式27)
Dは比例定数。
【0146】
ライン速度の変化量ΔVと、厚み平均値Taveの変化量ΔTaveの関係は実験的に求め、多次元関数、指数関数、又は対数関数でフィッティングしてもよい。
【0147】
また、電極板2に作用するプレス荷重の幅方向の平均値Lave(以降、線圧と呼称する)と、プレス後の厚み平均値Taveとの間は比例関係にあるため、線圧を変化させたときの、線圧の変化量ΔLaveと厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間には、下記(式28)の関係が成り立つ。
【0148】
ΔTave=E×ΔLave ・・・(式28)
Eは比例定数。
【0149】
加速または減速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための線圧の補正値ΔLave,sは、上記(式26)、(式27)、(式28)の関係からΔVsとΔTaveを除去し、下記(式29)で求めることができる。
【0150】
ΔLave,s={(D×α)/E}×S ・・・(式29)
加速または減速時の線圧をLave,0とするとき、S秒後の線圧をLave,0+ΔLave,sになるようにプレス機構をフィードフォワード制御することで、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を減少させることができる。
【0151】
フィードフォワード制御例1では、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置を一定にし、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力を変化させることで、電極板2に作用するプレス荷重を変化させる。駆動側プレス圧力Pmと操作側プレス圧力Psの平均プレス圧力Pave=(Pm+Ps)/2の変化量ΔPaveと、電極板2の厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間は比例関係にあるため、プレス圧力を変化させたときの、平均プレス圧力Paveの変化量ΔPaveと厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間には、下記(式30)の関係が成り立つ。
【0152】
ΔTave=F×ΔPave ・・・(式30)
Fは比例定数。
【0153】
加速または減速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための平均プレス圧力Paveの補正値ΔPave,sは、上記(式26)、(式27)、(式30)の関係からΔVsとΔTaveを除去し、下記(式31)で求めることができる。
【0154】
ΔPave,s={(D×α)/F}×S ・・・(式31)
加速または減速時の平均プレス圧力をPave,0とするとき、S秒後の平均プレス圧力がPave,0+ΔPave,sになるように第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力をフィードフォワード制御することで、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を抑制することができる。
【0155】
搬送ラインの加速期間または減速期間の、駆動側プレス圧力Pmと操作側プレス圧力Psの差圧は、基本的に加速または減速前と同じでよい。なお、ロールプレス装置1の駆動側と操作側の剛性の違いによって、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化が駆動側と操作側で異なる場合は、加速期間または減速期間の当該差圧を変化させてもよい。
【0156】
補正値算出部815にはライン速度設定変更部819から、搬送ラインの加速開始前に、加速開始時刻、加速終了時刻、加速開始時のライン速度V0、及び加速度αが供給される。例えば、ロールプレス装置1の起動時、及び起動中におけるライン速度の変更時に、ライン速度設定変更部819からこれらの情報が供給される。また、補正値算出部815にはライン速度設定変更部819から、搬送ラインの減速開始前に、減速開始時刻、減速終了時刻、減速開始時のライン速度V0、及び減速度αが供給される。
【0157】
補正値算出部815は、上記(式26)、加速開始時のライン速度V0、加速度αをもとに、加速開始からS秒後のライン速度の変化量ΔVsを算出する。補正値算出部815は、算出したライン速度の変化量ΔVsを上記(式27)に当てはめて、加速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sを予測する。補正値算出部815は、上記(式31)をもとに、厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための平均プレス圧力Paveの補正値ΔPave,sを算出する。
【0158】
図10に示す例では、補正値算出部815は、0.1秒間隔で平均プレス圧力P
aveの補正値ΔP
0.1、ΔP
0.2、・・・、ΔP
tendを算出し、算出した平均プレス圧力P
aveの補正値ΔP
0.1、ΔP
0.2、・・・、ΔP
tendを設定値補正部816に供給する。
【0159】
設定値補正部816には、補正値算出部815から平均プレス圧力Paveの補正値ΔP0.1、ΔP0.2、・・・、ΔPtendが供給される。設定値補正部816は、加速開始時のプレス圧力設定値P0に、補正値ΔP0.1、ΔP0.2、・・・、ΔPtendをそれぞれ加算して、補正後のプレス圧力設定値P0+ΔP0.1、P0+ΔP02、・・・、P0+ΔPtendを算出する。加速開始時のプレス圧力設定値P0は、例えば、HMIを介してオペレータにより入力されたプレス圧力設定値Pである。設定値補正部816は、算出した補正後のプレス圧力設定値P0+ΔP0.1、P0+ΔP02、・・・、P0+ΔPtendをプレス圧力偏差算出部817cに供給する。
【0160】
プレス圧力偏差算出部817cは、設定値補正部816から供給された補正後のプレス圧力設定値P0+ΔP0.1、P0+ΔP02、・・・、P0+ΔPtendの第1プレスシリンダ41aに割り当てられた分のプレス圧力設定値と、第1プレスシリンダ41aの圧力実測値との偏差をそれぞれの時刻で算出する。またプレス圧力偏差算出部817cは、設定値補正部816から供給された補正後のプレス圧力設定値P0+ΔP0.1、P0+ΔP02、・・・、P0+ΔPtendの第2プレスシリンダ42aに割り当てられた分のプレス圧力設定値と、第2プレスシリンダ42aの圧力実測値との偏差をそれぞれの時刻で算出する。第1プレスシリンダ41aの圧力実測値と第2プレスシリンダ42aの圧力実測値はそれぞれ、例えば弁開度計の測定値に応じて推定することができる。
【0161】
プレス圧力偏差算出部817cは、算出した第1プレスシリンダ41aの圧力偏差と第2プレスシリンダ42aの圧力偏差をPID制御部817bに供給する。PID制御部817bは、第1プレスシリンダ41aの圧力偏差、及び第2プレスシリンダ42aの圧力偏差をもとに、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量を生成する。
【0162】
PID制御部817bは、生成した第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量と第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をプレス圧力制御部817aに供給する。プレス圧力制御部817aは、アクチュエータを含み、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をもとに、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aをそれぞれ駆動する。以上の説明では加速時を想定したが、減速時も同様の制御となる。
【0163】
プレス圧力設定値の変更から実際のプレス圧力が変化するまでの遅れ時間(タイムラグte)を考慮する必要がある。そこでライン速度設定変更部819は、補正値算出部815にプレス圧力の設定値変更を指示するタイミングより、タイムラグteに相当する時間遅らせたタイミングで、ライン速度制御部8110にライン速度変更の指令値を供給する。これにより、ライン速度の変化に対して、より適切にアクチュエータの動作を変更させることができ、電極板2の厚みを高精度に補正することができる。なお上述のように、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力制御には、応答性の高い油圧サーボ弁を使用することが望ましい。
【0164】
このようにフィードフォワード制御例1では、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を予測し、電極板2の厚みを一定に維持するのに必要なプレス圧力を算出し、プレス圧力をフィードフォワード制御で変化させる。これにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板2の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0165】
図11は、第1制御盤81を用いたフィードフォワード制御例2を説明するための図である。フィードフォワード制御例2は、
図2に示した実施の形態2に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードフォワード制御例2では、圧縮機構として第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aを使用する。以下、
図10に示したフィードフォワード制御例1との相違点を説明する。フィードフォワード制御例2では、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、及びプレス圧力偏差算出部817cの代わりに、シリンダ位置制御部817d、PID制御部817e、及びシリンダ位置偏差算出部817fが設けられる。
【0166】
フィードフォワード制御例2では、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置を一定にし、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力を変化させることで、電極板2に作用するプレス荷重を変化させる。第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置を第1マグネスケール41cで測定し、第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置が設定値を維持するように第1プレスシリンダ41aの圧力を制御する。同様に、第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置を第2マグネスケール42cで測定し、第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置が設定値を維持するように第2プレスシリンダ42aの圧力を制御する。駆動側プレスシリンダ位置Gmと操作側プレスシリンダ位置Gsの平均プレスシリンダ位置Gave=(Gm+Gs)/2の変化量ΔGaveと、電極板2の厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間は比例関係にあるため、シリンダ位置を変化させたときの、平均プレスシリンダ位置Gaveの変化量ΔGaveと厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間には、下記(式32)の関係が成り立つ。
【0167】
ΔTave=G×ΔGave ・・・(式32)
Gは比例定数。
【0168】
加速または減速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための平均プレスシリンダ位置Gaveの補正値ΔGave,sは、上記(式26)、(式27)、(式32)の関係からΔVsとΔTaveを除去し、下記(式33)で求めることができる。
【0169】
ΔGave,s={(D×α)/G}×S ・・・(式33)
加速または減速時の平均プレスシリンダ位置をGave,0とするとき、S秒後の平均プレスシリンダ位置がGave,0+ΔGave,sになるように第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置をフィードフォワード制御することで、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を抑制することができる。
【0170】
搬送ラインの加速期間または減速期間の、駆動側プレスシリンダ位置Gmと操作側プレスシリンダ位置Gsの差は、基本的に加速または減速前と同じでよい。なお、ロールプレス装置1の駆動側と操作側の剛性の違いによって、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化が駆動側と操作側で異なる場合は、加速期間または減速期間の当該差を変化させてもよい。
【0171】
補正値算出部815にはライン速度設定変更部819から、搬送ラインの加速開始前に、加速開始時刻、加速終了時刻、加速開始時のライン速度V0、及び加速度αが供給される。また、補正値算出部815にはライン速度設定変更部819から、搬送ラインの減速開始前に、減速開始時刻、減速終了時刻、減速開始時のライン速度V0、及び減速度αが供給される。
【0172】
補正値算出部815は、上記(式26)、加速開始時のライン速度V0、加速度αをもとに、加速開始からS秒後のライン速度の変化量ΔVsを算出する。補正値算出部815は、算出したライン速度の変化量ΔVsを上記(式27)に当てはめて、加速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sを予測する。補正値算出部815は、上記(式33)をもとに、厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための平均プレスシリンダ位置Gaveの補正値ΔGave,sを算出する。
【0173】
図11に示す例では、補正値算出部815は、0.1秒間隔で平均プレスシリンダ位置G
aveの補正値ΔG
0.1、ΔG
0.2、・・・、ΔG
tendを算出し、算出した平均プレスシリンダ位置G
aveの補正値ΔG
0.1、ΔG
0.2、・・・、ΔG
tendを設定値補正部816に供給する。
【0174】
設定値補正部816には、補正値算出部815から平均プレスシリンダ位置Gaveの補正値ΔG0.1、ΔG0.2、・・・、ΔGtendが供給される。設定値補正部816は、加速開始時のプレスシリンダ位置設定値G0に、補正値ΔG0.1、ΔG0.2、・・・、ΔGtendをそれぞれ加算して、補正後のプレスシリンダ位置設定値G0+ΔG0.1、G0+ΔG02、・・・、G0+ΔGtendを算出する。加速開始時のプレスシリンダ位置設定値G0は、例えば、HMIを介してオペレータにより入力されたプレスシリンダ位置設定値Gである。設定値補正部816は、算出した補正後のプレスシリンダ位置設定値G0+ΔG0.1、G0+ΔG02、・・・、G0+ΔGtendをシリンダ位置偏差算出部817fに供給する。
【0175】
シリンダ位置偏差算出部817fは、設定値補正部816から供給された補正後のプレスシリンダ位置設定値G0+ΔG0.1、G0+ΔG02、・・・、G0+ΔGtendと、第1マグネスケール41cにより測定された第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置の実測値との偏差をそれぞれの時刻で算出する。またシリンダ位置偏差算出部817fは、設定値補正部816から供給された補正後のプレスシリンダ位置設定値G0+ΔG0.1、G0+ΔG02、・・・、G0+ΔGtendと、第2マグネスケール42cにより測定された第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置の実測値との偏差をそれぞれの時刻で算出する。
【0176】
シリンダ位置偏差算出部817fは、算出した第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置偏差と第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置偏差をPID制御部817eに供給する。PID制御部817eは、第1プレスシリンダ41aのシリンダ位置偏差、及び第2プレスシリンダ42aのシリンダ位置偏差をもとに、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量を生成する。
【0177】
PID制御部817eは、生成した第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量と第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をシリンダ位置制御部817dに供給する。シリンダ位置制御部817dは、アクチュエータを含み、第1プレスシリンダ41aの圧力の操作量、及び第2プレスシリンダ42aの圧力の操作量をもとに、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aをそれぞれ駆動する。以上の説明では加速時を想定したが、減速時も同様の制御となる。
【0178】
シリンダ位置設定値の変更から実際のシリンダ位置が変化するまでの遅れ時間(タイムラグte)を考慮する必要がある。そこでライン速度設定変更部819は、補正値算出部815にシリンダ位置の設定値変更を指示するタイミングより、タイムラグteに相当する時間遅らせたタイミングで、ライン速度制御部8110にライン速度変更の指令値を供給する。これにより、ライン速度の変化に対して、より適切にアクチュエータの動作を変更させることができ、電極板2の厚みを高精度に補正することができる。なお上述のように、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aの圧力制御には、応答性の高い油圧サーボ弁を使用することが望ましい。
【0179】
このようにフィードフォワード制御例2では、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を予測し、電極板2の厚みを一定に維持するのに必要なプレスシリンダ位置を算出し、プレスシリンダ位置をフィードフォワード制御で変化させる。これにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板2の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0180】
図12は、第1制御盤81を用いたフィードフォワード制御例3を説明するための図である。フィードフォワード制御例3は、
図1に示した実施の形態1に係るロールプレス装置で使用される制御である。フィードフォワード制御例3では、圧縮機構として第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bを使用する。以下、
図10に示したフィードフォワード制御例1との相違点を説明する。フィードフォワード制御例3では、プレス圧力制御部817a、PID制御部817b、及びプレス圧力偏差算出部817cの代わりに、スクリュ位置制御部817g、PID制御部817h、及びスクリュ位置偏差算出部817iが設けられる。
【0181】
フィードフォワード制御例3では、第1プレスシリンダ41a及び第2プレスシリンダ42aには、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置変化によって、シリンダ位置が変化しないように、十分に大きな圧力(固定値)を付加しておく。この状態で、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置を変化させることで、電極板2に作用するプレス荷重を変化させる。第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置はサーボモータで制御する。駆動側電動スクリュ位置Dmと操作側電動スクリュ位置Dsの平均電動スクリュ位置Dave=(Dm+Ds)/2の変化量ΔDaveと、電極板2の厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間は比例関係にあるため、電動スクリュ位置を変化させたときの、平均電動スクリュ位置Daveの変化量ΔDaveと厚み平均値Taveの変化量ΔTaveとの間には、下記(式34)の関係が成り立つ。
【0182】
ΔTave=H×ΔDave ・・・(式34)
Hは比例定数。
【0183】
加速または減速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための平均電動スクリュ位置Daveの補正値ΔDave,sは、上記(式26)、(式27)、(式34)の関係からΔVsとΔTaveを除去し、下記(式35)で求めることができる。
【0184】
ΔDave,s={(D×α)/H}×S ・・・(式35)
加速または減速時の平均電動スクリュ位置をDave,0とするとき、S秒後の平均電動スクリュ位置がDave,0+ΔDave,sになるように第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bの位置をフィードフォワード制御することで、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を抑制することができる。
【0185】
搬送ラインの加速期間または減速期間の、駆動側電動スクリュ位置Dmと操作側電動スクリュ位置Dsの差は、基本的に加速または減速前と同じでよい。なお、ロールプレス装置1の駆動側と操作側の剛性の違いによって、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化が駆動側と操作側で異なる場合は、加速期間または減速期間の当該差を変化させてもよい。
【0186】
補正値算出部815にはライン速度設定変更部819から、搬送ラインの加速開始前に、加速開始時刻、加速終了時刻、加速開始時のライン速度V0、及び加速度αが供給される。また、補正値算出部815にはライン速度設定変更部819から、搬送ラインの減速開始前に、減速開始時刻、減速終了時刻、減速開始時のライン速度V0、及び減速度αが供給される。
【0187】
補正値算出部815は、上記(式26)、加速開始時のライン速度V0、加速度αをもとに、加速開始からS秒後のライン速度の変化量ΔVsを算出する。補正値算出部815は、算出したライン速度の変化量ΔVsを上記(式27)に当てはめて、加速開始からS秒後の厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sを予測する。補正値算出部815は、上記(式35)をもとに、厚み平均値Taveの変化量ΔTave,sをゼロにするための平均電動スクリュ位置Daveの補正値ΔDave,sを算出する。
【0188】
図12に示す例では、補正値算出部815は、0.1秒間隔で平均電動スクリュ位置D
aveの補正値ΔD
0.1、ΔD
0.2、・・・、ΔD
tendを算出し、算出した平均電動スクリュ位置D
aveの補正値ΔD
0.1、ΔD
0.2、・・・、ΔD
tendを設定値補正部816に供給する。
【0189】
設定値補正部816には、補正値算出部815から平均電動スクリュ位置Daveの補正値ΔD0.1、ΔD0.2、・・・、ΔDtendが供給される。設定値補正部816は、加速開始時の電動スクリュ位置設定値D0に、補正値ΔD0.1、ΔD0.2、・・・、ΔDtendをそれぞれ加算して、補正後の電動スクリュ位置設定値D0+ΔD0.1、D0+ΔD02、・・・、D0+ΔDtendを算出する。加速開始時の電動スクリュ位置設定値D0は、例えば、HMIを介してオペレータにより入力された電動スクリュ位置設定値Dである。設定値補正部816は、算出した補正後の電動スクリュ位置設定値D0+ΔD0.1、D0+ΔD02、・・・、D0+ΔDtendをスクリュ位置偏差算出部817iに供給する。
【0190】
スクリュ位置偏差算出部817iは、設定値補正部816から供給された補正後の電動スクリュ位置設定値D0+ΔD0.1、D0+ΔD02、・・・、D0+ΔDtendと、第1電動スクリュ41bの位置の測定値との偏差をそれぞれの時刻で算出する。またスクリュ位置偏差算出部817iは、設定値補正部816から供給された補正後の電動スクリュ位置設定値D0+ΔD0.1、D0+ΔD02、・・・、D0+ΔDtendと、第2電動スクリュ42bの位置の測定値との偏差をそれぞれの時刻で算出する。
【0191】
スクリュ位置制御部817gは、第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bを圧下させるためのサーボモータをそれぞれ含む。第1電動スクリュ41b及び第2電動スクリュ42bのそれぞれの位置の変化量は、それぞれのサーボモータの回転数から計算することができる。
【0192】
スクリュ位置偏差算出部817iは、算出した第1電動スクリュ41bの位置偏差と第2電動スクリュ42bの位置偏差をPID制御部817hに供給する。PID制御部817hは、第1電動スクリュ41bの位置偏差、及び第2電動スクリュ42bの位置偏差をもとに、第1電動スクリュ41b用のサーボモータの回転の操作量、及び第2電動スクリュ42b用のサーボモータの回転の操作量を生成する。
【0193】
PID制御部817hは、生成した第1電動スクリュ41b用のサーボモータの回転の操作量と第2電動スクリュ42b用のサーボモータの回転の操作量をスクリュ位置制御部817gに供給する。スクリュ位置制御部817gは、第1電動スクリュ41b用のサーボモータの回転の操作量、及び第2電動スクリュ42b用のサーボモータの回転の操作量をもとに、第1電動スクリュ41b用のサーボモータ及び第2電動スクリュ42b用のサーボモータをそれぞれ駆動する。以上の説明では加速時を想定したが、減速時も同様の制御となる。
【0194】
電動スクリュ位置設定値の変更から実際の電動スクリュ位置が変化するまでの遅れ時間(タイムラグte)を考慮する必要がある。そこでライン速度設定変更部819は、補正値算出部815に電動スクリュ位置の設定値変更を指示するタイミングより、タイムラグteに相当する時間遅らせたタイミングで、ライン速度制御部8110にライン速度変更の指令値を供給する。これにより、ライン速度の変化に対して、より適切にサーボモータの動作を変更させることができ、電極板2の厚みを高精度に補正することができる。
【0195】
このようにフィードフォワード制御例3では、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を予測し、電極板2の厚みを一定に維持するのに必要な電動スクリュ位置を算出し、電動スクリュ位置をフィードフォワード制御で変化させる。これにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板2の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0196】
以上説明したように実施の形態1~3に係るロールプレス装置1を使用したフィードバック制御例1~4によれば、駆動側厚み測定値Tm、中央厚み測定値Tc、操作側厚み測定値Ts、及び厚み目標値Ttをもとに、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、及び第3特徴量Tdropを算出し、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、及び第3特徴量Tdropが全てゼロになるように圧縮機構および/またはベンド機構を制御する。圧縮機構として、プレス機構またはコッタ機構を使用することができる。これにより、圧縮加工後の電極板2の厚みを全幅に渡って目標値Ttに収束させることができる。
【0197】
上記特許文献1(特開2013-111647号公報)には、操作側、中央部、駆動側の3か所で圧縮後の厚みを測定し、それら厚み測定値と目標厚みの差が、予め設定されたしきい値を外れた場合に、しきい値に入るように、プレス機構とベンド機構を制御する手法が開示されている。当該手法では、しきい値を超えるまで膜厚制御が発動されないため、しきい値以上の厚み精度を得ることができず、目標とする厚み付近に収束するまでに時間がかかるか、目標とする厚み付近に収束できない場合がある。
【0198】
また上記手法では、駆動側厚みと操作側厚みと目標厚みを比較し、駆動側厚みと操作側厚みの少なくとも一方がしきい値を超えた場合、これを補正するようにプレスシリンダの位置を再設定し、プレスシリンダの位置変更によって変化する撓み補正量を維持するために、ベンドシリンダの圧力を計算し、設定する。駆動側厚みと操作側厚みの両方がしきい値を超えない場合、中央部厚みとしきい値を比較し、しきい値を超えた場合、中央部のロール変形が大きくなっているとして、ベンドシリンダの圧力のみを変更し、プレスシリンダの位置は変更しない。これらの制御フローが繰り返し、実行される。
【0199】
一般にベンドシリンダの圧力変化は、ロールギャップを開く方向に作用し、被圧延材への圧延荷重を変化させるため、厚み変化を伴う。従って、上記制御フローにおけるいずれの手順においても、ベンドシリンダの圧力を変化させたことによって膜厚が変化し、再びしきい値を外れることになり、目標とする厚み付近に到達するまで時間がかかるか、しきい値に制御できない場合が発生する。特に、しきい値を狭めた時ほど、またはプレスシリンダの位置やベンドシリンダの圧力を大きく変更する必要がある場合ほど、再びしきい値を外れる可能性が高まるため、制御できる厚み範囲や制御速度に限界がある。
【0200】
また上述したように、駆動側厚みと操作側厚みと目標厚みを比較し、駆動側厚みと操作側厚みの両方がしきい値を超えない場合、中央部厚みとしきい値を比較し、しきい値を超える場合、ロール撓みが大と判断して、ベンドシリンダの圧力のみを変更する。この場合、両端の厚みがしきい値以下に制御してから中央厚みを制御するため、目標厚みに収束するまで時間がかかる。さらに、両端厚みを制御する過程において、中央厚みが目標厚みから離れてしまう可能性がある。例えば、中央厚みが目標厚みより厚く、かつ両端の厚みがそれぞれ目標厚みより薄い場合、両端厚みが目標厚みになるように、両側の荷重を下げるように制御するが、電極板の中央部に作用するプレスロールからの圧力も減少するため、中央厚みが厚くなり、目標値から離れる。
【0201】
これに対して実施の形態1~3に係るロールプレス装置1を使用したフィードバック制御例1~4によれば、ロール撓みの大小とロール撓みの方向を、中央厚みと両端厚み平均との差分(第3特徴量Tdrop)で判断し、両端厚みを制御しながら、ロール撓みによる中央-両端厚み差を同時に制御する。これにより、幅方向の厚みを悪化させることなく、より速く、電極板2の厚みを全幅に渡って目標値に収束させることが可能である。
【0202】
このように実施の形態1~3に係るロールプレス装置1を使用したフィードバック制御例1~4によれば、圧縮加工後の電極板2の厚みが常に目標値Ttに収束されるようにフィードバック制御されることにより、電極板2の厚みが常に良好な状態に維持される。また、自動で電極板2の厚みが目標値Ttに制御されるため、オペレータが定期的にラインを止めて、電極板2の厚みをマイクロメータで測定し、測定値にもとづき圧縮機構および/またはベンド機構の圧力値を調整する必要がない。従って、熟練したオペレータを配置する必要がなく、人件費を抑制することができる。また、オペレータによる品質のバラツキを抑えることができる。
【0203】
また実施の形態1~3に係るロールプレス装置1を使用したフィードバック制御例1~4によれば、設定値の補正が反映される前の厚み測定値を基準に新たな設定値の補正が実行されることを防止するため、設定値の補正の実行後、プレス位置から厚み計70までのパスライン長Ltに電極板2の長さが到達し、かつ設定値の補正が厚み測定値に反映されるまでの時間tdを経過してから、厚み測定値を取得する。取得した厚み測定値をもとに3つの特徴量を計算し、3つの特徴量をもとに補正値を計算し、次回の設定値変更を実行する。
【0204】
プレス前工程の塗工工程や乾燥工程において、被圧延材の塗膜厚みの変化や塗膜硬さの変化、あるいは加圧ローラや主軸受部の熱影響によって、プレス後の被圧延材の厚みに変化が発生する場合がある。その場合であっても、上記制御を反復して連続的に行うことで、厚み計70が厚み変化を検出した直後に、プレス後の被圧延材の厚みを全幅において目標値Ttに制御できるので、全長に渡って良好な厚みを得ることができる。
【0205】
さらに、フィードフォワード制御例1~3を併用することにより、搬送ラインの加速または減速時の電極板2の厚み変化を高精度に抑制することができる。即ち、ライン速度の変化による電極板2の厚み変化を予測し、予測される厚み変化をゼロにするための圧縮条件を算出し、圧縮機構をフィードフォワード制御することで、ライン速度の変化による厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0206】
上述した各比例定数は被圧延材の品種によって異なるので、品種毎に比例定数を測定しておくことが望ましい。
【0207】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0208】
図3では、制御装置80を、第1制御盤81と第2制御盤82の2つの制御盤で構成する例を説明したが、第1制御盤81と第2制御盤82を統合した1つの制御盤で構成してもよい。
【0209】
また上述の実施の形態1~3では、第1特徴量Tt-m、第2特徴量Tt-s、及び第3特徴量Tdropが全てゼロになるように圧縮機構および/またはベンド機構を制御する例を説明した。第3特徴量Tdropがゼロで、駆動側厚み測定値Tmと操作側厚み測定値Tsとの差分もゼロの状態は、電極板2が幅方向に平坦な状態である。この点、両エッジが中央より厚い電極板2を製造する場合、第3特徴量Tdropが、エッジと中央との厚み差に応じた負の値になるように圧縮機構および/またはベンド機構を制御する。また、両エッジが中央より薄い電極板2を製造する場合、第3特徴量Tdropが、エッジと中央との厚み差に応じた正の値になるように圧縮機構および/またはベンド機構を制御する。
【0210】
即ち、下記(式35)~(式37)のβ、γ、δを任意に設定することにより、任意の厚みプロフィールの電極板2を製造できる。
【0211】
Tt-m+β=0 ・・・(式35)
Tt-s+γ=0 ・・・(式36)
Tdrop+δ=0 ・・・(式37)
β、γ、δは任意の実数[μm]。
【0212】
上述の実施の形態1~3では、電極板の厚みプロフィールの2次成分を示す第3特徴量を、中央厚み測定値Tcと、駆動側厚み測定値Tmと操作側厚み測定値Tsとの平均値との差分で規定した。この点、第3特徴量を、3点以上の厚み測定値をもとに最小二乗法を用いて導出した2次または4次の近似曲線から規定することもできる。2次曲線で近似した場合、特徴量算出部814は、近似した2次曲線の2次係数を第3特徴量に設定に設定する。4次曲線で近似した場合、特徴量算出部814は、近似した4次曲線の2次係数を第3特徴量に設定する。なお一般に、サンプル点の数が多くなるほど近似精度が向上する。また、2次以上の関数であれば、2次係数を導出することができる。
【0213】
なお、5点以上の厚み測定値を取得する場合、第1特徴量Tt-mは、厚み目標値Ttと、5点以上の点のうちの最も駆動側の点の厚み測定値Tmとの偏差で規定され、第2特徴量Tt-sは、厚み目標値Ttと、5点以上の点のうちの最も操作側の点の厚み測定値Tsとの偏差で規定される。
【0214】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0215】
[項目1]
連続的に搬送される二次電池の電極板(2)を挟み込むことにより圧延する第1加圧ローラ(11)及び第2加圧ローラ(12)と、
前記第1加圧ローラ(11)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1主軸受部(21)及び第2主軸受部(22)と、
前記第2加圧ローラ(12)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3主軸受部(23)及び第4主軸受部(24)と、
前記第1加圧ローラ(11)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1ベンド軸受部(31)及び第2ベンド軸受部(32)と、
前記第2加圧ローラ(12)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3ベンド軸受部(33)及び第4ベンド軸受部(34)と、
前記第1主軸受部(21)及び前記第3主軸受部(23)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が近接する方向への荷重を加えることが可能な第1圧縮機構(41)と、
前記第2主軸受部(22)及び前記第4主軸受部(24)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が近接する方向への荷重を加えることが可能な第2圧縮機構(42)と、
前記第1ベンド軸受部(31)及び前記第3ベンド軸受部(33)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が離接する方向への荷重を加えることが可能な第1ベンド機構(51)と、
前記第2ベンド軸受部(32)及び前記第4ベンド軸受部(34)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が離接する方向への荷重を加えることが可能な第2ベンド機構(52)と、
前記第1圧縮機構(41)、前記第2圧縮機構(42)、前記第1ベンド機構(51)、及び前記第2ベンド機構(52)のそれぞれの設定値を算出する算出部(815、816)と、
前記算出部(815、816)により算出された設定値をもとに、前記第1圧縮機構(41)、前記第2圧縮機構(42)、前記第1ベンド機構(51)、及び前記第2ベンド機構(52)の荷重をそれぞれ制御する制御部(817、818)と、を備え、
前記算出部(815、816)は、前記電極板(2)の搬送ラインの速度変化に応じた前記電極板(2)の厚み変化が小さくなるように、前記第1圧縮機構(41)及び前記第2圧縮機構(42)の設定値を予め変更する、
ロールプレス装置(1)。
【0216】
これによれば、搬送ラインの加速時または減速時においても、電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0217】
[項目2]
前記算出部(815、816)は、予め導出された前記ラインの速度変化量と前記電極板(2)の厚み変化量との関係性と、設定されている前記ラインの加速度または減速度をもとに、前記ラインの加速開始または減速開始から所定時間後の前記電極板(2)の厚み変化量を予測し、
前記制御部(817、818)は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板(2)の厚み変化量がゼロになるように、前記第1圧縮機構(41)及び前記第2圧縮機構(42)を制御する、
項目1に記載のロールプレス装置(1)。
【0218】
これによれば、搬送ラインの速度変化量と電極板(2)の厚み変化量との関係性と、搬送ラインの加速度または減速度をもとに、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)をフィードフォワード制御することにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0219】
[項目3]
前記算出部(815、816)は、予め導出された、前記第1圧縮機構(41)及び前記第2圧縮機構(42)が発生させる荷重の変化量と、前記電極板(2)の厚み変化量との関係性をもとに、前記ラインの加速期間または減速期間の前記厚み変化量がゼロになるように、前記第1圧縮機構(41)及び前記第2圧縮機構(42)の設定値を補正する、
項目2に記載のロールプレス装置(1)。
【0220】
これによれば、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)が発生させる荷重の変化量と電極板(2)の厚み変化量との関係性をもとに、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)をフィードフォワード制御することにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0221】
[項目4]
前記第1圧縮機構(41)は第1プレス用のシリンダ(41a)を含み、
前記第2圧縮機構(42)は第2プレス用のシリンダ(42a)を含み、
前記算出部(815、816)は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板(2)の厚み変化量がゼロになるように、前記ラインの加速期間または減速期間の前記第1プレス用のシリンダ(41a)の圧力と前記第2プレス用のシリンダ(42a)の圧力の設定値を補正する、
項目3に記載のロールプレス装置(1)。
【0222】
これによれば、第1プレス用のシリンダ(41a)及び第2プレス用のシリンダ(42a)が発生させる荷重の変化量と電極板(2)の厚み変化量との関係性をもとに、第1プレス用のシリンダ(41a)の圧力と第2プレス用のシリンダ(42a)の圧力をフィードフォワード制御することにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0223】
[項目5]
前記第1圧縮機構(41)は第1プレス用のシリンダ(41a)を含み、
前記第2圧縮機構(42)は第2プレス用のシリンダ(42a)を含み、
前記算出部(815、816)は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板(2)の厚み変化量がゼロになるように、前記ラインの加速期間または減速期間の前記第1プレス用のシリンダ(41a)の位置と前記第2プレス用のシリンダ(42a)の位置の設定値を補正する、
項目3に記載のロールプレス装置(1)。
【0224】
これによれば、第1プレス用のシリンダ(41a)及び第2プレス用のシリンダ(42a)が発生させる荷重の変化量と電極板(2)の厚み変化量との関係性をもとに、第1プレス用のシリンダ(41a)の位置と第2プレス用のシリンダ(42a)の位置をフィードフォワード制御することにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0225】
[項目6]
前記第1圧縮機構(41)は前記第1プレス用のシリンダ(41a)の位置を測定するための第1マグネスケール(41c)をさらに含み、
前記第2圧縮機構(42)は前記第2プレス用のシリンダ(42a)の位置を測定するための第2マグネスケール(42c)をさらに含み、
前記制御部(817d、818)は、
前記第1マグネスケール(41c)により測定される前記第1プレス用のシリンダ(41a)の位置と、前記算出部(815、816)から供給される前記第1プレス用のシリンダ(41a)の位置が一致するように、前記第1プレス用のシリンダ(41a)の圧力を制御し、
前記第2マグネスケール(42c)により測定される前記第2プレス用のシリンダ(42a)の位置と、前記算出部(815、816)から供給される前記第2プレス用のシリンダ(42a)の位置が一致するように、前記第2プレス用のシリンダ(42a)の圧力を制御する、
項目5に記載のロールプレス装置(1)。
【0226】
これによれば、第1マグネスケール(41c)及び第2マグネスケール(42c)を用いて、第1プレス用のシリンダ(41a)の位置及び第2プレス用のシリンダ(42a)の位置を高精度に測定することができ、応答性が高い圧縮機構のフィードフォワード制御を実現することができる。
【0227】
[項目7]
前記第1圧縮機構(41)は第1電動スクリュ(41b)を含み、
前記第2圧縮機構(42)は第2電動スクリュ(42b)を含み、
前記算出部(815、816)は、前記ラインの加速期間または減速期間の前記電極板(2)の厚み変化量がゼロになるように、前記ラインの加速期間または減速期間の前記第1電動スクリュ(41b)の位置と前記第2電動スクリュ(42b)の位置の設定値を補正する、
項目3に記載のロールプレス装置(1)。
【0228】
これによれば、第1電動スクリュ(41b)及び第2電動スクリュ(42b)が発生させる荷重の変化量と電極板(2)の厚み変化量との関係性をもとに、第1電動スクリュ(41b)の位置と第2電動スクリュ(42b)の位置をフィードフォワード制御することにより、搬送ラインの加速期間または減速期間の電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【0229】
[項目8]
前記第1加圧ローラ(11)及び第2加圧ローラ(12)の入側に設置される巻出機(13)と、
前記第1加圧ローラ(11)及び第2加圧ローラ(12)の出側に設置される巻取機(14)と、
前記第1加圧ローラ(11)の回転速度、前記第2加圧ローラ(12)の回転速度、前記巻出機(13)の回転速度、及び前記巻取機(14)の回転速度を制御する速度制御部(8110)と、
をさらに備え、
前記算出部(815、816)は、前記第1圧縮機構(41)及び前記第2圧縮機構(42)の応答時間に応じて、前記速度制御部(8110)への加速指令または減速指令を遅延させる、
項目1から7のいずれか1項に記載のロールプレス装置(1)。
【0230】
これによれば、無駄または過度な圧縮機構の設定値の変更を回避することができる。
【0231】
[項目9]
連続的に搬送される二次電池の電極板(2)を挟み込むことにより圧延する第1加圧ローラ(11)及び第2加圧ローラ(12)と、
前記第1加圧ローラ(11)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1主軸受部(21)及び第2主軸受部(22)と、
前記第2加圧ローラ(12)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3主軸受部(23)及び第4主軸受部(24)と、
前記第1加圧ローラ(11)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第1ベンド軸受部(31)及び第2ベンド軸受部(32)と、
前記第2加圧ローラ(12)の回転軸の一方の側と他方の側にそれぞれ設けられ、当該回転軸を回転自在に支持する第3ベンド軸受部(33)及び第4ベンド軸受部(34)と、
前記第1主軸受部(21)及び前記第3主軸受部(23)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が近接する方向への荷重を加えることが可能な第1圧縮機構(41)と、
前記第2主軸受部(22)及び前記第4主軸受部(24)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が近接する方向への荷重を加えることが可能な第2圧縮機構(42)と、
前記第1ベンド軸受部(31)及び前記第3ベンド軸受部(33)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が離接する方向への荷重を加えることが可能な第1ベンド機構(51)と、
前記第2ベンド軸受部(32)及び前記第4ベンド軸受部(34)の少なくとも一方に、前記第1加圧ローラ(11)と前記第2加圧ローラ(12)が離接する方向への荷重を加えることが可能な第2ベンド機構(52)と、
を備えるロールプレス装置(1)に使用される制御装置(80)であって、
前記第1圧縮機構(41)、前記第2圧縮機構(42)、前記第1ベンド機構(51)、及び前記第2ベンド機構(52)のそれぞれの設定値を算出する算出部(815、816)と、
前記算出部(815、816)により算出された設定値をもとに、前記第1圧縮機構、前記第2圧縮機構(42)、前記第1ベンド機構(51)、及び前記第2ベンド機構(52)の荷重をそれぞれ制御する制御部(817、818)と、を備え、
前記算出部(815、816)は、前記電極板(2)の搬送ラインの速度変化に応じた前記電極板(2)の厚み変化が小さくなるように、前記第1圧縮機構(41)及び前記第2圧縮機構(42)の設定値を予め変更する、
制御装置(80)。
【0232】
これによれば、搬送ラインの加速時または減速時においても、電極板(2)の厚み変化を高精度に抑制することができる。
【符号の説明】
【0233】
1 ロールプレス装置
2 電極板
11 第1加圧ローラ
12 第2加圧ローラ
13 巻出機
14 巻取機
15 モータ
16 パルスジェネレータ
21~24 主軸受部
31~34 ベンド軸受部
41 第1圧縮機構
42 第2圧縮機構
41a 第1プレスシリンダ
41b 第1電動スクリュ
41c 第1マグネスケール
41d 第1ロードセル
41e 第1電動コッタ
42a 第2プレスシリンダ
42b 第2電動スクリュ
42c 第2マグネスケール
42d 第2ロードセル
42e 第2電動コッタ
51 第1ベンド機構
51a 第1ベンドシリンダ
51b 第3ベンドシリンダ
51c 第5ベンドシリンダ
52a 第2ベンドシリンダ
52b 第4ベンドシリンダ
52c 第6ベンドシリンダ
52 第2ベンド機構
61 第1プレロード機構
61a 第1プレロードシリンダ
62 第2プレロード機構
62a 第2プレロードシリンダ
70 厚み計
80 制御装置
81 第1制御盤
811 長さ測定部
812 取得タイミング生成部
813 厚み測定値取得部
814 特徴量算出部
815 補正値算出部
816 設定値補正部
817a プレス圧力制御部
817b PID制御部
817c プレス圧力偏差算出部
817d シリンダ位置制御部
817e PID制御部
817f シリンダ位置偏差算出部
817g スクリュ位置制御部
817h PID制御部
817i スクリュ位置偏差算出部
817j コッタ高さ制御部
817k PID制御部
817l コッタ高さ偏差算出部
818a ベンド圧力制御部
818b PID制御部
818c ベンド圧力偏差算出部
819 ライン速度設定変更部
8110 ライン速度制御部