(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】防護手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/015 20060101AFI20240920BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A41D19/015 110Z
A41D19/00 Z
(21)【出願番号】P 2023537807
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027856
(87)【国際公開番号】W WO2023007605
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591182949
【氏名又は名称】株式会社秋山機械
(74)【代理人】
【識別番号】100216736
【氏名又は名称】竹井 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100202706
【氏名又は名称】長野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊光
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-57546(JP,A)
【文献】特開2005-240221(JP,A)
【文献】特開2001-279503(JP,A)
【文献】実開平2-17516(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0328062(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0317578(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0246790(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0126058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/015
A41D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋部と、
前記手袋部における手の甲側を覆う防護部と、を備え、
前記防護部は、複数の防護ユニットを含み、
複数の前記防護ユニットの其々は異なる位置に配置されており、且つ、隣接する複数の前記防護ユニット同士の端部が重なるように配置されて
おり、
前記防護ユニットは、
複数の防護板と、
複数の前記防護板を収納する袋体と、を含み、
複数の前記防護板の其々は重ねられて配置されており、
複数の前記防護板のうち、
外側に位置する第1防護板における前記袋体を臨む面は、前記袋体の内部と接合されており、
内側に位置する第2防護板における前記袋体を臨む面は、前記袋体の内部と接合されている、
防護手袋。
【請求項2】
前記袋体は、
開口部を有する袋本体部と、
前記開口部に沿って設けられた補強部と、を含み、
前記袋本体部は伸縮可能な部材で構成され、
前記補強部は前記袋本体部より高い強度を有する部材で構成され、
前記補強部が設けられた前記開口部は接合されている、
請求項
1に記載の防護手袋。
【請求項3】
隣接する複数の前記防護ユニット同士の端部が重なる重畳領域を有し、
前記手袋部における親指と人差し指との間の指間腔を覆うように前記重畳領域が位置する、
請求項
1に記載の防護手袋。
【請求項4】
前記手袋部における手首部近傍には前記防護部を有しない、
請求項
1に記載の防護手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2004-131871号公報(特許文献1)がある。この公報には、「手袋構造体が少なくとも3層積層されてなり、該積層構造の中間層の手袋構造体が金属繊維糸で編成されてなる手袋編み構造体であることを特徴とする防刃手袋」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
手袋部と、
前記手袋部における手の甲側を覆う防護部と、を備え、
前記防護部は、複数の防護ユニットを含み、
複数の前記防護ユニットの其々は異なる位置に配置されており、且つ、隣接する複数の前記防護ユニット同士の端部が重なるように配置されている、
防護手袋。
【0005】
前記防護ユニットは、
複数の防護板と、
複数の前記防護板を収納する袋体と、を含み、
複数の前記防護板の其々は重ねられて配置されている。
【0006】
複数の前記防護板のうち、
外側に位置する第1防護板における前記袋体を臨む面は、前記袋体の内部と接合されており、
内側に位置する第2防護板における前記袋体を臨む面は、前記袋体の内部と接合されている。
【0007】
前記袋体は、
開口部を有する袋本体部と、
前記開口部に沿って設けられた補強部と、を含み、
前記袋本体部は伸縮可能な部材で構成され、
前記補強部は前記袋本体部より高い強度を有する部材で構成され、
前記補強部が設けられた前記開口部は接合されている。
【0008】
隣接する複数の前記防護ユニット同士の端部が重なる重畳領域を有し、
前記手袋部における親指と人差し指との間の指間腔を覆うように前記重畳領域が位置する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図5で示す、防護手袋の一例としての実施形態を説明する。
図1は防護手袋の斜視図である。
図2は防護手袋の上面図である。
図3は防護手袋の底面図である。
防護手袋1は、食品又は金属等の部材などを加工する加工機械の加工部、又は利器などの、人体を傷つけるおそれがある物品から、手甲及び指を防護する手袋である。実際に使用するに際しては、当該防護手袋1の外側にさらにゴム手袋を着用してもよい。
【0011】
防護手袋1は、手袋部2及び防護部3を備える。
手袋部2は、手の平側の面と、手の甲側の面と、を有している。手袋部2は比較的高い強度の部材、例えばスエードなどの合成皮革である。
防護部3は、手袋部2における手の甲側を覆っている。
【0012】
防護部3は、複数の防護ユニット4を有する。
複数の防護ユニット4の其々は異なる位置に配置されており、当該複数の防護ユニット4により、手袋部2の手の甲側の全体が覆われている。ただし、
図1~
図3においては、視認性向上のために全ての防護ユニット4に符号を付していない。
【0013】
図4は
図2で示すA-A線における防護手袋の切断部端面図である。
図5は
図2で示すB-B線の延長線上における防護手袋の中指部の切断部端面図である。
各防護ユニット4は、複数の防護板5と、袋体6と、を含む。
複数の防護板5は袋体6に収納されている。
袋体6は手袋部2に接合されている。
【0014】
防護板5は高強度の部材から構成されており、例えば、ステンレス鋼などの金属であってもよく、プラスチックなどであってもよい。
いずれの防護板5も厚みが薄い形状であるが、具体的な寸法又は形状は配置される位置ごとに異なっていてもよい。本実施形態における防護板5は、厚み0.1mmのステンレス鋼である。
【0015】
例えば、手袋部2の手の甲側の指部を覆う指部防護ユニット4における防護板5は、指部の幅方向の全てを覆うことができる程度の寸法であり、かつ指部の幅方向に沿うように湾曲した形状であってもよい。
一方、手袋部2の手の甲を覆う防護ユニット4における防護板5は、上記指部防護ユニット4の防護板5より大きく、かつ上記指部防護ユニット4の防護板5より緩やかに湾曲した形状であってもよい。
【0016】
袋体6は、袋本体部61と、補強部62と、を含む。
袋本体部61は開口部を有する。
当該開口部から防護板5を挿入させた後に当該開口部を接合させて閉じることにより防護ユニット4を製造できる。
補強部62は開口部に沿って設けられた部材であり、開口部を補強する部材である。補強部62は、
図4においては、図示していない。
【0017】
袋本体部61は、例えばナイロンなどの伸縮可能な部材で構成されていてもよい。
補強部62は、袋本体部61より高い強度を有する、例えば合成皮革のような部材で構成されていてもよい。
開口部沿って環状に構成された補強部62を接着剤により接合することにより開口部が閉じられている。
【0018】
図4においては、以下の防護ユニット4A、4B、4C、4D、4E、4Fが図示されている。
防護ユニット4Aは最も指先側に位置する指部を覆う防護ユニットである。
防護ユニット4Bは防護ユニット4Aより手首側に隣接して位置する指部を覆う防護ユニットである。
防護ユニット4Cは防護ユニット4Bより手首側に隣接して位置する指部を覆う防護ユニットである。
防護ユニット4Dは防護ユニット4Cより手首側に隣接して位置する手の甲部を覆う防護ユニットである。
防護ユニット4Eは防護ユニット4Dより手首側に隣接して位置する手の甲部を覆う防護ユニットである。
防護ユニット4Fは防護ユニット4Eより手首側に隣接して位置する手の甲部及び手首部近傍を覆う防護ユニットである。
【0019】
以下で、防護ユニット4のうちの指の長手方向における端部を、単に防護ユニット4の端部とする場合がある。
【0020】
各防護ユニット4は、補強部62が手首側に位置するように、例えば、縫合により手袋部2に接合されている。
最も指先側に位置する防護ユニット4Aは、手袋部2の指先の形状に沿うように接合されているが、当該防護ユニット4Aの手首側の端部と手袋部2とは接合されていない。
最も指先側に位置する防護ユニット4A以外の防護ユニット4は、指の長手方向に沿って手袋部2の指部の両側部に接合されているが、当該防護ユニット4の両側の端部と手袋部2とは接合されていない。
【0021】
故に、
図4で図示するように、最も指先側の防護ユニット4Aの指先側の端部を除き、各防護ユニット4の端部と、手袋部2と、は離間可能である。ただし、当該防護ユニット4の端部のうちの、指の幅方向における両端部と手袋部2とは接合されていてもよい。
当該構成により、手の各関節部の可動性が向上する。
【0022】
他の実施形態として、最も指先側の防護ユニット4Aの指先側の端部以外の、防護ユニット4の指先側の端部の少なく一部が手袋部2と接合されていてもよい。
例えば、最も指先側に位置する手の甲部を覆う防護ユニット4Dの指先側の端部の少なくとも一部は手袋部2と接合されていてもよい。
【0023】
隣接する複数の防護ユニット4同士の端部が重なるように配置されている。
防護ユニット4Aの手首側の端部は、防護ユニット4Bの指先側の端部の外側に位置するように重ねられて配置されている。
防護ユニット4Bの手首側の端部は、防護ユニット4Cの指先側の端部の外側に位置するように重ねられて配置されている。
防護ユニット4C、4D、4Eも同様に、手首側に隣接する防護ユニット4の端部より外側に位置するように重ねられて配置されている。
当該構成により、手の甲及び指の全体を複数の防護ユニット4で覆うことができる。
【0024】
隣接する複数の防護ユニット4同士の端部が重なる領域を重畳領域とする。
当該重畳領域が手の各関節部と重なるように位置されていてもよい。
当該構成により、手の各関節部の可動性が維持されつつ、手の甲及び指の全体を複数の防護ユニット4で覆うことができる。
【0025】
手袋部2における親指と人差し指との間の指間腔近傍の領域R(
図2で図示)を覆うように重畳領域が位置していてもよい。
当該構成により、親指の可動性を向上できるとともに、例えば、食品加工機械の回転刃部などの加工部で切傷しやすい親指と人差し指との間の指間腔近傍の防護部3の強度を向上できる。
【0026】
他の実施形態として、手袋部2における手首部近傍を覆う防護ユニット4Fは存在しなくてもよい。
比較的切傷する可能性が低い手首部近傍に防護ユニット4を配置しないことで、手首の可動性を向上できる。
【0027】
図5で示すとおり、本実施形態の防護ユニット4は2つの防護板5を有する。
2つの防護板5の其々は重ねられて、袋体6の内部に、配置されている。
1つの袋体6に収納された2つの防護板5の形状は同一である。
複数の防護板5を有することにより、防護ユニット4の強度を向上できる。
【0028】
1つの袋体6に収納された2つの防護板5のうち、外側に位置する防護板を第1防護板51とし、内側に位置する防護板を第2防護板52とする。
第1防護板51のうちの袋体6を臨む面が袋体6の内部と接合されることで、第1防護板51が袋体6に固定されている。
第2防護板52のうちの袋体6を臨む面が袋体6の内部と接合されることで、第2防護板52が袋体6に固定されている。
本実施形態においては、各防護板5は接着剤により袋体6内部に接合されている。
【0029】
言い換えると、第1防護板51と、第2防護板52と、の間には接着剤を有しない。
すなわち、袋体6を介して第1防護板51に所定方向の力が加えられた場合には、第1防護板51と第2防護板52との位置がずれることが可能なように構成されている。
当該構成により、例えば食品加工機械の回転刃部などの加工部が第1防護板51に接触し、防護部3に大きな外力が加えられた場合において、第1防護板51の位置がずれて移動することにより、当該外力を分散させることができる。
【0030】
なお、各防護ユニット4における、防護板5と袋体6の内部とを接着させる接着剤は指先側より手首側の方が多くなっていてもよい。
防護板5のうち、袋体6の内部と接着される面は、他の防護板5と対向する面より、表面粗さ(十点平均粗さ)が粗くなっていてもよい。
最も指先側に位置する防護ユニット4A以外の防護ユニット4が有する防護板5の指先側の端部の厚みは、当該防護板5の指の長手方向における中央部の厚みより、小さくなっていてもよい。
【0031】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 :防護手袋
2 :手袋部
3 :防護部
4 :防護ユニット
5 :防護板
51 :第1防護板
52 :第2防護板
6 :袋体
61 :袋本体部
62 :補強部