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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09K3/00 110B
C09K3/00 110C
C08L101/00
C08K5/098
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020028765
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021134233
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 友則
(72)【発明者】
【氏名】大城 智史
(72)【発明者】
【氏名】平井 千恵
(72)【発明者】
【氏名】古田 勤
(72)【発明者】
【氏名】宇野 克彦
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0042208(US,A1)
【文献】特表2004-532106(JP,A)
【文献】米国特許第05853760(US,A)
【文献】特開昭60-112436(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02118945(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第00126827(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/08
C08K
C08L
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性樹脂および水溶性物質から構成され、前記水溶性物質を外部に徐放する樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、液体を利用する家電製品の内部に配置されるものであり、
前記樹脂組成物は、前記水不溶性樹脂を含むスキン層により覆われ、
前記水溶性物質は、金属イオンと錯体を形成するキレート剤であり、アクリル酸ナトリウムを含み、
前記水溶性物質の含有割合は、20~70重量パーセントの範囲内である
樹脂組成物。
【請求項2】
前記水不溶性樹脂のガラス転移温度は、-130℃から100℃の範囲内である
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記水不溶性樹脂の融点は、-80℃から250℃の範囲内である
請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記スキン層の厚さは、5~60μmの範囲内である
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記水溶性物質は、ゲル状物質である
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、徐放性を備えた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水不溶性樹脂、構造材料、および、機能性水溶性物質から構成され、構造材料と水不溶性物質の少なくとも一方に親水性材料が含まれる機能性水溶性物質徐放材の構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-117918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の機能性水溶性物質徐放材によれば、安定的な湿潤状態で機能性水溶性物質を安定的に徐放できる。一方で例えば家電製品に適用する場合には、機能性水溶性物質徐放材の周囲の環境は乾燥状態と湿潤状態とが不定期に繰り返される。また家電製品の初期使用時には、機能性水溶性物質徐放材から所定濃度の機能性水溶性物質が放出され、次回以降の使用時には所定の濃度よりも低い濃度で徐放されることが好ましい。特許文献1に記載の機能性水溶性物質徐放材では、初期使用時の所定の濃度の機能性水溶性物質の放出と、所定の濃度よりも低い濃度での徐放が両立できない可能性がある。
本開示は上記の課題を解決するための発明であり、水溶性物質を好適に放出できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に関する樹脂組成物は、水不溶性樹脂および水溶性物質から構成され、前記水溶性物質を外部に徐放する樹脂組成物であって前記樹脂組成物は、前記水不溶性樹脂を含むスキン層により覆われる。
【発明の効果】
【0006】
本開示に関する樹脂組成物によれば、水溶性物質を好適に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の樹脂組成物が使用される家電製品の一例。
図2】第1比較試験の結果を表すグラフ。
図3】第1比較試験の結果を表すグラフ。
図4】第2比較試験の結果を表すグラフ。
図5】第2比較試験の結果を表すグラフ。
図6】比較試験に供した樹脂組成物の構成を表す表。
図7】比較試験に供した樹脂組成物の構成を表す表。
図8】比較試験の結果を表す表。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(樹脂組成物が取り得る形態の一例)
本開示に関する樹脂組成物の一形態は、水不溶性樹脂および水溶性物質から構成され、前記水溶性物質を外部に徐放する樹脂組成物であって前記樹脂組成物は、前記水不溶性樹脂を含むスキン層により覆われる。ここでスキン層は、水不溶性樹脂、または水不溶性樹脂と水溶性物質から構成される。
上記樹脂組成物によれば、使用開始時にはスキン層に存在する水溶性物質が放出され、その後はスキン層に覆われる水溶性物質がスキン層により徐放される。このため水溶性物質を好適に放出することができる。
【0009】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記水溶性物質の含有割合は、20~90重量パーセントの範囲内である。
上記樹脂組成物によれば、水溶性物質を好適な割合で含む。このため水溶性物質を好適に放出することができる。
【0010】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記水不溶性物質のガラス転移温度は、-130℃から100℃の範囲内である。
上記樹脂組成物によれば、樹脂組成物の射出成型時においてスキン層を好適に形成することができる。
【0011】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記水不溶性物質の融点は、-80℃から250℃の範囲内である。
上記樹脂組成物によれば、樹脂組成物の射出成型時においてスキン層を好適に形成することができる。
【0012】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記スキン層の厚さは、5~60μmの範囲内である。
上記樹脂組成物によれば、使用開始時の水溶性物質の放出とその後のスキン層による徐放とが好適に両立される。このため水溶性物質を好適に放出することができる。
【0013】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記水溶性物質は、ゲル状物質である。
上記樹脂組成物によれば、乾燥状態および湿潤状態の変化に対して影響が小さい。このため、ユーザビリティが向上する。
【0014】
前記樹脂組成物の一例によれば、前記水溶性物質は、アクリル酸ナトリウムである。
上記樹脂組成物によれば、水中に存在する金属と錯体を形成するため、例えば家電製品の内面への金属の蓄積が抑制される。
【0015】
(実施の形態)
本実施の形態の樹脂組成物10は、例えば液体を利用する家電製品の内部に配置され、家電製品の使用時に樹脂組成物10が液体と接触することで、樹脂組成物10に含まれる物質を液体中に徐放する。物質は、機能性を備える種々の水溶性物質により構成される。液体を利用する家電製品100は、例えばスチームアイロン、エアーコンディショナ、洗濯機、食器洗浄乾燥機、および、電気ケトルである。図示される家電製品の例は、スチームアイロンである。家電製品100は、内部に液体を貯蔵するタンク110、液体を出力するベース面120、ユーザが把持する把持部130、および、樹脂組成物10を保持するケース140を備える。液体の一例は、水である。樹脂組成物10は、タンク110の内部に移動可能に配置されてもよい。タンク110は、内部に流体を供給する供給口111および外部に液体を放出する放出口112をさらに含む。
【0016】
樹脂組成物10は、水不溶性樹脂および水溶性物質を含む。水不溶性樹脂と水溶性物質との比率は、任意の比率である。一例では、水溶性物質は、20~90重量パーセントの範囲内である。好ましくは、水溶性物質は40~70重量パーセントの範囲内である。水不溶性樹脂は、水に対して不溶の任意の材料により構成される。好ましくは、ガラス化転移温度が第1所定範囲内、かつ、融点が第2所定範囲内の材料により構成される。第1所定範囲は、例えば-130℃以上である。第1所定範囲は、例えば100℃以下である。第2所定範囲は、例えば-80℃以上である。第2所定範囲は、例えば250℃以下である。水不溶性樹脂を構成する材料の一例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および、アクリル変性ポリエチレンである。
【0017】
水溶性物質は、水に溶出することで所定の作用を有する物質である。所定の作用の一例は、タンク110内における金属イオンの蓄積の抑制である。一例では、水溶性物質は、金属イオンと錯体を形成するキレート剤である。キレート剤の一例は、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体ナトリウムなどのアクリル酸ナトリウム、1-ヒドロキシエタン-11-ジホスホン酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、および、シクロヘキサンジアミン四酢酸である。
【0018】
樹脂組成物10は、スキン層11をさらに備える。スキン層11は、少なくとも水不溶性樹脂により構成される。スキン層11は、水不溶性樹脂と水溶性物質とにより構成されてもよい。スキン層11に含まれる水溶性物質の割合は、スキン層11によって覆われる樹脂組成物10における水溶性物質の割合よりも少ない。
【0019】
樹脂組成物10の製造方法について説明する。
水不溶性樹脂と水溶性物質とを適量に計量し、水不溶性樹脂と水溶性物質とを加熱混錬して樹脂組成物10のストランドが形成される。一例では、水不溶性樹脂と水溶性物質とは、等量である。加熱混錬は、例えば2軸押し出し式混錬機を使用して、200℃の条件で実行される。ストランドは、細断されペレットが形成される。ペレットを射出成型することで、所定の形状の樹脂組成物10が形成される。水不溶性樹脂のガラス化転移温度が第1所定範囲内、かつ、水不溶性樹脂の融点が第2所定範囲内である場合、ペレットの射出成型時に係るずり応力により樹脂組成物10の内面が冷却されやすいため樹脂組成物10の表面にスキン層11が形成される。樹脂組成物10の所定の形状の一例は、楕円形状である。別の例では、所定の形状の一例は、板形状である。図1に示される樹脂組成物10の形状は、楕円形状である。樹脂組成物10の径方向の長さは、使用する家電製品100のタンク110の大きさに応じて任意に形成される。好ましくは、樹脂組成物10の径方向の長さは、10~40mmの範囲内である。より好ましくは、樹脂組成物10の径方向の長さは、20~30mmの範囲内である。
【0020】
比較試験に供した各樹脂組成物10の構成について図6、7を参照して説明する。
実施例1の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が結晶性樹脂であるポリエチレンで構成される。水溶性物質としてアクリル酸ナトリウムが含まれ、ゲル状である。実施例1の樹脂組成物10は、直径が23mmの略玉状に形成され、外側にスキン層11が40μmの厚さで形成される。
【0021】
実施例2の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が結晶性樹脂であるポリプロピレンで構成される。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0022】
実施例3の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が結晶性樹脂であるポリアミドで構成される。外側にスキン層11が10μmの厚さで形成される。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0023】
実施例4の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が結晶性樹脂であるポリエチレンテレフタレートである。外側にスキン層11が10μmの厚さで形成される。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0024】
実施例5の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が結晶性樹脂であるポリブチレンテレフタレートで構成される。外側にスキン層11が10μmの厚さで形成される。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0025】
比較例としての実施例6の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が非結晶性であるポリ塩化ビニルで構成される。外側にスキン層11が形成されない。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0026】
比較例としての実施例7の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が非結晶性であるポリスチレンで構成される。外側にスキン層11が形成されない。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0027】
比較例としての実施例8の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が非結晶性であるポリメチルメタクリレートで構成される。外側にスキン層11が形成されない。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0028】
比較例としての実施例9の樹脂組成物10は、水不溶性樹脂が非結晶性であるポリカーボネートで構成される。外側にスキン層11が形成されない。その他の構成は、実施例1の樹脂組成物10の構成と同様である。
【0029】
実施例10~14、および、比較例としての実施例16~18の樹脂組成物10は、水溶性物質としてアクリル酸ナトリウムに代えて1-ヒドロキシエタン-11-ジホスホン酸で構成され、非ゲル形状である。実施例10~14、および、比較例としての実施例16~18におけるその他の構成は、実施例1~5、および、比較例としての実施例6~9の樹脂組成物と同様である。
【0030】
樹脂組成物10の比較試験の試験方法について説明する。第1比較試験と第2比較試験とは、樹脂組成物10を水中に配置しておく時間が異なり、その他の点では、同じ試験内容である。
【0031】
実施例1~5、10~14(以下「各実施例」という)、および、比較例としての実施例6~9、16~18(以下「各比較例」という)の樹脂組成物10と同じ数のビーカーに各実施例および各比較例の樹脂組成物10を1個ずつに投入し、350mlの水を添加した。各実施例および各比較例の樹脂組成物10の重量は、10gである。第1比較試験では、水を添加した10分後にビーカー内の水を採取し、水中の機能性水溶性物質の濃度を測定した。第2比較試験では、水を添加した30秒後にビーカー内の水を採取し、水中の機能性水溶性物質の溶出濃度を測定した。溶出濃度は、有機体の炭素の総量を計測することにより測定された。水を採取後、各実施例および各比較例の樹脂組成物10を乾燥させた。乾燥の時間は24時間である。乾燥した樹脂組成物10の重量を測定し、水溶性物質の残存率を算出した。溶出濃度と残存率とをグラフにプロットした。上記の手順は、20回を1セットとして、複数回実施した。表示される溶出濃度および残存率は、複数回実施した結果の平均値である。また、ビーカー内の水中における界面活性剤の濃度が検出限界を下回った場合、その時の残存率を20回繰り返した後の残存率として記録した。
図8の表は、第1比較試験の結果を示す。図2および図3は、図8における残存率と溶出濃度との関係をグラフに表した図である。
第2比較試験では、第1比較試験における残存率と溶出濃度との関係と類似する結果が得られた。図4および図5は、第2比較試験における残存率と溶出濃度との関係をグラフに表した図である。
【0032】
図2および図3を参照して、第1比較試験の結果を説明する。第1比較試験の結果を示すグラフにおいて縦軸は、水中における樹脂組成物10から放出された水溶性物質の溶出濃度を示す。横軸は、樹脂組成物10における水溶性物質の残存率を示す。縦軸と横軸の縮尺は、図2および図3で同一である。実施例1~5および実施例10~14の樹脂組成物10は、水溶性物質の残存率が高い場合に高い溶出濃度を示す。一方で水溶性物質の残存率が低下すると、溶出濃度が急激に低下する。比較例としての実施例6~9および実施例16~18の樹脂組成物10は、水溶性物質の残存率の低下に伴い溶出濃度が漸減する。
【0033】
第1比較試験の結果から、以下の知見が得られる。
実施例1~5および実施例10~14の樹脂組成物10は、樹脂組成物10の周りにスキン層11が形成される。残存率が高い場合、すなわち樹脂組成物10の初期利用時には、スキン層11に含まれる水溶性物質が放出されることで、十分な量の水溶性物質が放出される。一方で、複数回使用したのちにはスキン層11の構成により、樹脂組成物10に含まれる水溶性物質が徐放される。このため水溶性物質を好適に放出することができる。好ましいスキン層11の厚さは、5~60μmである。より好ましくは、スキン層11の厚さは、10~40μmである。
【0034】
図4および図5を参照して、第2比較試験の結果を説明する。第2比較試験の結果を示すグラフにおいて縦軸は、樹脂組成物10から放出された水溶性物質の溶出濃度を示す。横軸は、樹脂組成物10における水溶性物質の残存率を示す。縦軸と横軸の縮尺は、図4および図5で同一である。実施例1~5、および、比較例としての実施例6~9の樹脂組成物10は、水溶性物質の残存率が高い場合に短い時間で高い溶出濃度を示す。一方で、実施例10~14、および、比較例としての実施例16~18の樹脂組成物10は、水溶性物質の残存率が高い場合でも、短い期間での溶出濃度が低い。
【0035】
第2比較試験の結果から、以下の知見が得られる。
実施例1~5、および、比較例としての実施例6~9の樹脂組成物10は、樹脂組成物10の水溶性物質がゲル状に形成される。ゲル状に形成されることで短い時間で水が浸透するため、残存率が高い場合、すなわち樹脂組成物10の初期利用時には、短い時間でも水溶性物質を多く放出して溶出濃度を高くできる。
【0036】
本実施の形態の樹脂組成物10の作用について説明する。
ユーザは、家電製品100に樹脂組成物10を入れる。ユーザは家電製品100のタンク110内に水を入れる。樹脂組成物10は、水溶性物質を少なくともタンク110内に放出する。家電製品100の使用後に、タンク110から水が除かれ樹脂組成物10は乾燥状態に配置される。ユーザは次回使用時に再びタンク110の内部に水を入れる。樹脂組成物10は、水溶性物質を少なくともタンク110内に徐放する。
【0037】
本実施の形態の樹脂組成物10の効果について説明する。
樹脂組成物10は、スキン層11およびゲル状に形成される水溶性物質の構成により、残存率が高い場合には、水溶性物質を多く放出し、残存率が低い場合には水溶性物質を徐放する。このため、家電製品100のタンク110で使用する場合に、初期利用時に水溶性物質の多くの放出を実現し、かつ、樹脂組成物10の使用期間を長く設定することができる。
【0038】
(変形例)
実施の形態に関する説明は本発明に関する樹脂組成物が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明は実施の形態以外に例えば以下に示される実施の形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0039】
・樹脂組成物10は、多孔質物質をさらに備えていてもよい。多孔質物質は、例えば細孔の内部に水不溶性樹脂および水溶性物質の少なくとも一部を保持する。多孔質物質は、例えば多孔質ガラス、活性炭、ゼオライト、および、ポーラスコンクリートの少なくとも1つで構成される。好ましくは、多孔質物質は多孔質ガラスである。より好ましくは、多孔質ガラスはアモルファスシリカである。多孔質物質は、例えば粒子状に形成される。多孔質物質の粒径、比表面積、細孔径、および、吸油量は、徐放性を備えるのに適した値が任意に設定される。一例では、多孔質物質の粒径は平均5μmである。一例では、多孔質物質の比表面積は、700m/gである。一例では、多孔質物質の細孔径は11nmである。多孔質物質の吸油量は、400ml/100gである。
【0040】
・水溶性物質は、抗酸化作用を備える抗酸化剤、界面活性剤、および、抗菌剤等であってもよい。抗酸化剤は、例えばエリソルビン酸、コウジ酸、アスコルビン酸である。界面活性剤は、例えばイオン系または非イオン系の界面活性剤である。抗菌剤は、例えば臭化銅、クロム酸銅、硝酸銀、硫酸アルミニウム、ヨウ素である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示に関する樹脂組成物は、例えばスチームアイロン、エアーコンディショナ、洗濯機、食器洗浄乾燥機、および、電気ケトルなどの液体を利用する家庭用および業務用の家電製品に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 :樹脂組成物
11 :スキン層
100 :家電製品
110 :タンク
120 :ベース面
130 :把持部
140 :ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8