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特許7557816コンクリートの養生構造、及びコンクリートの養生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コンクリートの養生構造、及びコンクリートの養生方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240920BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E02B7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020142863
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038382
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 恭伸
(72)【発明者】
【氏名】室野井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-041147(JP,Y1)
【文献】特開2008-008431(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150139(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
E02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設面を保温保湿する養生構造であって、
前記コンクリートの打設面上に敷設された養生材を含み、
前記養生材は、
内部に配置された真空断熱材層と、
前記真空断熱材層を包囲するように配置された保護層と、を備え、
前記保護層が前記真空断熱材層と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されており、
前記コンクリートの打設面上には複数の前記養生材が敷設されており、
前記養生材は、さらに、側部に接続部を備え、
さらに、隣接する前記養生材の前記接続部を連結する連結部材を備え、
前記接続部が、前記保護層の内部に埋め込まれ、一部が露出されたプレートである、
ことを特徴とする養生構造。
【請求項2】
コンクリートの打設面を保温保湿する養生構造であって、
前記コンクリートの打設面上に敷設された養生材を含み、
前記養生材は、
内部に配置された真空断熱材層と、
前記真空断熱材層を包囲するように配置された保護層と、を備え、
前記保護層が前記真空断熱材層と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されており、
前記コンクリートの打設面上には複数の前記養生材が敷設されており、
前記養生材は、さらに、側部に接続部を備え、
さらに、隣接する前記養生材の前記接続部を連結する連結部材を備え、
前記接続部は、前記養生材の両側部にそれぞれ設けられており、
一側部に取り付けられた接続部は厚さ方向中央よりも表面側に設けられ、
他側部に取り付けられた接続部は厚さ方向中央よりも裏面側に設けられ、
隣接した前記養生材は、前記表面側に設けられた前記接続部同士、または、裏面側の前記接続部同士が接続されている、
ことを特徴とする養生構造。
【請求項3】
打設したコンクリートを養生する方法であって、
前記打設したコンクリートの打設面に養生材を配置する配置ステップを備え、
前記養生材は、
内部に配置された真空断熱材層と、
前記真空断熱材層を包囲するように配置された保護層と、を備え、
前記保護層が前記真空断熱材層と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されており、
前記養生材が、隣接する前記養生材同士を連結するための連結部材を接続するための接続部を備え、
前記配置ステップでは、連結部材により連結された複数の養生材を打設したコンクリートの表面に沿って配置し、
前記接続部が、前記保護層の内部に埋め込まれ、一部が露出されたプレートである、
ことを特徴とするコンクリートの養生方法。
【請求項4】
打設したコンクリートを養生する方法であって、
前記打設したコンクリートの打設面に養生材を配置する配置ステップを備え、
前記養生材は、
内部に配置された真空断熱材層と、
前記真空断熱材層を包囲するように配置された保護層と、を備え、
前記保護層が前記真空断熱材層と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されており、
前記養生材が、隣接する前記養生材同士を連結するための連結部材を接続するための接続部を備え、
前記配置ステップでは、連結部材により連結された複数の養生材を打設したコンクリートの表面に沿って配置し、
前記接続部は、前記養生材の両側部にそれぞれ設けられており、
一側部に取り付けられた接続部は厚さ方向中央よりも表面側に設けられ、
他側部に取り付けられた接続部は厚さ方向中央よりも裏面側に設けられ、
隣接した前記養生材は、前記表面側に設けられた前記接続部同士、または、裏面側の前記接続部同士が接続されている、
ことを特徴とするコンクリートの養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生構造、及びコンクリートの養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの硬化はセメントの水和反応によって生じ、硬化することで強度が発現する。コンクリートには、硬化するまでの間に外気の影響により、夏季には乾燥や温度上昇に起因してコールドジョイントが生じたり、冬季には温度低下に起因してひび割れが生じたりするおそれがある。このため、コンクリートが硬化するまでの間、コンクリートの打設面に対する外気の影響を低減するため、打設面を養生材で覆い養生を行う。特に大量に固練りのコンクリートを使用し、何度も打ち継ぎが必要となるダムのような大型土木構造物の現場でコンクリートを打設する場合には、外気の影響を低減することがより求められる。
【0003】
外気の影響を低減するための養生材としては、断熱材が広く用いられている。このような断熱材として、例えば、特許文献1には、多孔質樹脂パネルを袋体内に収納して構成さされた養生材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-40506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダムなど気温の変動が大きい場所などで、特許文献1に記載された断熱マットを用いようとする場合には、十分な断熱性能を確保するために断熱マットを厚くしなければならない。しかしながら、断熱マットを厚くすると、施工性が低下してしまう。また、多孔質樹脂パネルは、強風にさらされると飛散してしまい、施工が困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、施工性に優れ断熱効果の高いコンクリートの養生構造及びコンクリートの養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリートの打設面を保温保湿する養生構造であって、コンクリートの打設面上に敷設された養生材を含み、養生材は、内部に配置された真空断熱材層と、真空断熱材層を包囲するように配置された保護層と、を備え、保護層が真空断熱材層と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、養生材が真空断熱材層を含むため、薄型であっても十分な断熱性能を確保することができる。これにより施工性に優れ、断熱効果の高いコンクリートの養生構造が提供される。特にダムなどの打ち継ぎが多く発生し、固練りのコンクリートを打設するような場合に対して、本発明は断熱効果が高いため、有効である。また、本発明では、養生材が真空断熱材層を含むため、養生材の密度が高く、風による飛散を防止でき、施工性を向上することができる。
【0009】
また、真空断熱材層は、芯材を包囲する袋が損傷すると、断熱性能が大きく低下するため、真空断熱材層を保護する必要がある。これに対して、真空断熱材層の表裏面に保護材料を配置することも考えられる。しかしながら、保護材料を敷設する場合には保護材料を敷設する工程と、真空断熱材層を配置する工程とが必要になり手間がかかる。これに対して、本発明によれば、真空断熱材層と保護層とが一体となっているため、敷設作業の施工性を向上することができる。
【0010】
また、上記のように他の保護材料を敷設する場合には、雨水が保護材料と真空断熱材層との間に侵入するおそれがある。このような侵入した雨水が凍結すると、凍結した氷が真空断熱材層を破損するおそれがある。これに対して、本発明では、真空断熱材層がビーズ法発泡体で構成された保護層で全体的に保護されているため、雨や雪などによる水の内部への浸透を防止でき、真空断熱材を保護することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、養生面と反対側の保護層の表面から真空断熱材層までの厚さが11mm以上である。
上記構成の発明によれば、養生面と反対側の保護層の表面から真空断熱材層までの厚さが11mm以上であるため、養生面上で作業する作業者の滑り止め防止用ピンによる真空断熱材の踏み抜きを確実に防止できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、保護層に使用される材料の発泡倍率が、20倍以下である。
コンクリート養生時には養生材上を作業員が移動する。作業員が歩行することにより、養生材表面に陥没や作業用長靴の滑り止め防止用ピンによる穴が生じてしまうと、そこから水が真空断熱材層まで侵入してしまう。特に、寒冷地の場合、侵入した水が凍結し、真空断熱材層と当接した保護層との間に氷が生成され、氷により真空断熱材が損傷するおそれがある。これに対し、上記構成の本発明によれば、養生面に荷重がかかっても、陥没や穴が生じない十分な強度を保護層に持たせることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、真空断熱材層及び保護層が、平板状に一体成型されている。
上記構成の本発明によれば、養生材を容易に持ち運びすることができ、施工性を向上することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、コンクリートの打設面上には複数の養生材が敷設されており、養生材が、さらに側部に接続部を備え、隣接する養生材の接続部を連結する連結部材をさらに備える。
上記構成の本発明によれば、養生材を連結することにより、複数の養生材を一度に敷設することができる。また、強風で養生材が移動し、養生材の間に広い隙間が生じることを防止できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、接続部が、保護層の内部に埋め込まれ、一部が露出されたプレートである。
上記構成の本発明によれば、保護層を加工することなく、容易にプレートを保護層と強固に一体化することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、養生材同士が間に間隔を保持した状態で敷設され、隣接した養生材の敷設角度が変更可能である。
ダムのような大型構造物のコンクリートの打ち継ぎ面は不陸である。上記構成の本発明によれば、養生材同士の間に間隔が保持されているため、養生材同士の間で屈曲することができ、不陸な打設面に対しても、打設面に沿って敷設することができる。また、連結された養生材を、接続部の連結部材のところで積み重ねるように折り畳んで運搬及び保管することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、接続部は、養生材の両側部にそれぞれ設けられており、一側部に取り付けられた接続部は厚さ方向中央よりも表面側に設けられ、他側部に取り付けられた接続部は厚さ方向中央よりも裏面側に設けられ、隣接した養生材は、表面側に設けられた接続部同士、または、裏面側の接続部同士が接続されている。
上記構成の本発明によれば、養生材同士を折り畳み可能に密接させて連結することができる。
【0018】
さらに、本発明は、打設したコンクリートを養生する方法であって、打設したコンクリートの打設面に養生材を配置する配置ステップを備え、養生材は、内部に配置された真空断熱材層と、真空断熱材層を包囲するように配置された保護層と、を備え、保護層が真空断熱材層と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されている、ことを特徴とする。
【0019】
上記構成の本発明によれば、養生材が真空断熱材層を含むため、薄型であっても十分な断熱性能を確保することができる。これにより施工性に優れ、断熱効果の高いコンクリートの養生方法が提供される。また、本発明では、養生材が真空断熱材層を含むため、養生材の密度が高く風による飛散を防止でき、施工性を向上することができる。
【0020】
また、真空断熱材層は、芯材を包囲する袋が損傷すると、断熱性能が大きく低下するため、真空断熱材層を保護する必要がある。これに対して、真空断熱材層の表裏面に保護材料を配置することも考えられる。しかしながら、保護材料を敷設する場合には保護材料を敷設する工程と、真空断熱材層を配置する工程とが必要になり手間がかかる。これに対して、本発明によれば、真空断熱材層と保護層とが一体となっているため、敷設作業の施工性を向上することができる。
【0021】
また、上記のように他の保護材料を敷設する場合には、雨水が保護材料と真空断熱材層との間に侵入するおそれがある。このような侵入した雨水が凍結すると、凍結した氷が真空断熱材層を破損するおそれがある。これに対して、本発明では、真空断熱材層がビーズ法発泡体で構成された保護層で全体的に保護されているため、雨や雪などによる水の内部への浸透を防止でき、真空断熱材を保護することができる。
【0022】
さらに、本発明は、養生材が、隣接する養生材同士を連結するための連結部材を接続するための接続部を備え、配置ステップでは、連結部材により連結された複数の養生材を打設したコンクリートの表面に沿って配置する。
上記構成の本発明によれば、連結部材により連結された養生材を用いてコンクリートの打設面を養生するため、広い打設面を一度に養生することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、施工性に優れ断熱効果の高いコンクリートの養生構造及びコンクリートの養生方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態によるコンクリートの養生構造を示す鉛直断面図である。
図2】本発明の実施形態によるコンクリートの養生構造を示す平面図である。
図3図1に示す連結された複数の養生材を保管する様子を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のコンクリートの養生構造及びコンクリートの養生方法を図面を参照して詳細に説明する。本実施形態のコンクリートの養生構造は、例えば、寒冷地にダムなどを構築する際に、打設したコンクリートの打設面を養生するために用いられるものである。なお、本実施形態の養生構造は、ビルや橋梁等のコンクリートの打設面の養生にも適用することができる。
【0026】
図1及び図2は、本発明の実施形態によるコンクリートの養生構造を示し、図1は鉛直断面図、図2は平面図である。図1に示すように、養生構造2は、コンクリート4の打設面上に敷設された複数の養生材6と、隣接する養生材6を接続する連結部材8と、を備える。
養生材6は、内部に配置された真空断熱材層10と、真空断熱材層10を包囲するように配置された保護層12と、保護層12に埋め込まれた接続プレート14と、を備える。
【0027】
真空断熱材層10は、矩形のパネル状の真空断熱材で構成される。真空断熱材は、例えば、グラスウール芯材10Aをガスバリア性フィルム10Bで包み、真空状態で密封した断熱材(株式会社旭ファイバーグラス社製のビップエース(登録商標)などを用いることができる。真空断熱材層10の厚さは、コンクリート4が例えば5度以下にならならないような断熱性を確保できるような厚さとすればよく、具体的には10mm~60mmとすることが好ましい。また、真空断熱材層10は一層である必要はなく、必要に応じて複数層積層してもよい。なお、本実施形態では、真空断熱材層10の厚さは18mmである。
【0028】
真空断熱材の芯材10Aとしては、真空断熱材の技術分野で用いられているものを特に制限なく用いることができる。具体例としては、連続気泡硬質ポリウレタンフォーム、無機繊維、有機繊維、無機粉体、エアロゲル等を使用することができる。ハンドリング、断熱性の観点から、シート状に形成された無機繊維が好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナやシリカ等のセラミック繊維、スラグウール繊維、ロックウール繊維等が挙げられる。これらの中では、断熱性、成形加工性等の観点から、ガラス繊維が好ましい。なお、芯材の耐熱性を向上させるため、ステンレス鋼、クロム-ニッケル系合金、高ニッケル合金、高コバルト合金等の耐熱性金属繊維を少量混合することもできる。芯材は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0029】
真空断熱材において、吸着剤が芯材10Aと共に袋状のガスバリア性フィルム10Bに封入されてもよい。吸着剤は、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素等のガス、及び/又は水分を吸着する物質である。吸着剤としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、活性炭、酸化バリウム、バリウム-リチウム合金又はこれらの混合物等が挙げられる。使用後の廃棄手法を考えた場合、一部の吸着剤は解体時に水がかかると、未反応の材料が発熱や発火する可能性がある。このため、このような発熱反応が無い無機系の材料、特に、無機鉱物系の材料が好ましい。特に好ましい材料はアルミノケイ酸塩である。吸着剤は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0030】
本実施形態に用いられるガスバリア性フィルム10Bは、ガスバリア性を有するフィルムであれば特に制限はないが、シール層及びガスバリア層を積層したものが好ましく、芯材に接する側から順にシール層、ガスバリア層及び1層以上の樹脂フィルム層を積層したものがより好ましい。ガスバリア性フィルム10Bの厚さは、特に制限はないが、通常50~200μmであり、好ましくは60~180μmである。
【0031】
ガスバリア層は、ガスを透過しない層であり、真空断熱材の真空度の低下を防ぐ観点から用いられる。ガスバリア層としては、金属箔や、樹脂フィルム上に蒸着膜を形成した蒸着フィルム等が挙げられる。蒸着フィルムは、蒸着法、スパッタ法等により、基材上に蒸着膜を形成することにより得られる。ガスバリア性及び経済的観点から、金属箔及び蒸着材料のいずれにおいても、好ましくは、アルミニウムが用いられる。
【0032】
蒸着フィルムの基材となる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニルを部分ケン化した物等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。
【0033】
ガスバリア層の厚さは特に制限はないが、金属箔の場合は、1~60μmであり、好ましくは5~30μmである。厚さが1μm以上であれば、金属箔の強度が高く、ピンホールの形成等が抑えられる。蒸着フィルムの場合は、ガスバリア層の厚さは、10~60μm、好ましくは12~30μmであり、そのうち蒸着膜の厚さは、0.2~3.0μm、好ましくは0.5~2.0μmである。蒸着膜の厚さが0.2μm以上であればガスバリア性を発揮でき、3.0μm以下であれば蒸着膜形成の技術的な困難さは大きくはない。ガスバリア層に用いられる金属箔や蒸着フィルムは公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0034】
シール層は、加熱により融着可能な樹脂である。熱融着可能な樹脂であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル、PET、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又はそれらの混合体からなるフィルム等を用いることができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体が用いられる。ポリエチレンは、0.90~0.98g/cm3の密度のものが好ましい。ポリプロピレンは、0.85~0.95g/cm3の密度のものが好ましい。シール層の厚さは特に制限はないが、通常10~100μmであり、好ましくは25~60μmである。シール層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0035】
樹脂フィルム層は、ガスバリア層を保護する目的で、ガスバリア層上に任意に設けられる層である。樹脂フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;ポリビニルアルコール、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。好ましくは、PET、ナイロン6又はナイロン66である。これらの樹脂フィルムには、有機質、無機質のフィラーを添加することもできる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。樹脂フィルム層には、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能を更に向上させるために、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルコール等のビニルモノマーを重合、共重合させて得られるガスバリア性樹脂を塗布したり、積層したり、それらの粒子を樹脂フィルム層中に混合分散させることもできる。樹脂フィルム層の厚さは特に制限はないが、通常5~40μmであり、好ましくは10~30μmである。樹脂フィルム層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0036】
ガスバリア性フィルム10Bは、袋状に形成される。袋状とは、中に芯材及び吸着剤を入れられる形状である。ガスバリア性フィルムを袋状に形成する工程には、特に制限はない。例えば、ガスバリア性フィルムがシール層有する場合に、互いのシール層が接するように2枚のガスバリア性フィルムを重ねて、芯材及び吸着剤を納める部位の周りを、芯材及び吸着剤の挿入のための開口部を残して熱融着することにより、ガスバリア性フィルムを袋状に形成してもよい。
【0037】
保護層12は、真空断熱材層10と一体成型されたビーズ法発泡体で構成されている。保護層12は、真空断熱材層10の全ての面を包囲するような板状に形成されており、真空断熱材層10は保護層12内に埋設されている。これにより、真空断熱材層10は外部に露出せず、真空断熱材層10が直接雨水や積雪による水に曝されるのを防止できる。また、保護層12の両側縁には一対の切り欠き部12A、12Bが形成されている。一方の側縁に形成された切り欠き部12Aは、直方体状であり、敷設した状態で上面及び側面に開口している。また、他方の側縁に形成された切り欠き部12Bは、直方体状であり、敷設した状態で下面及び側面に開口している。切り欠き部12B内には、接続プレート14の側部が露出している。
【0038】
本実施形態の保護層12は、硬質の発泡スチロール(EPS)であるが、水の浸透を防ぐ独立気泡発泡体であれば発泡ポリスチレンなど他のビーズ法発泡体を用いることができる。本実施形態の保護層12の上面から真空断熱材層10までの厚さは11mmであるが、11mm以上であるのが好ましい。冬季に作業員が着用する作業靴の滑り止め防止用ピンの長さがおおよそ4mmであるため、11mm以上であれば、真空断熱材の踏み抜きを十分に防ぐことができる。
【0039】
本実施形態の保護層12に使用されているビーズ発泡体の発泡倍率は、20倍以下であるのが好ましい。作業員が養生材6の上面を歩いた際に陥没や穴が生じると、そこから保護層12内に水が侵入する。冬季にはその水が凍り、凍った氷が養生材上面からの荷重により破砕し、真空断熱材層10が破損する原因となる。保護層12に使用されている材料の発泡倍率が20倍以下であれば、養生材6の上面の陥没や穴を防ぐのに十分な強度が得られる。
【0040】
接続プレート14は、円形の開口14Aが一端部に形成された金属製のプレートである。本実施形態では、養生材6の両側部にそれぞれ一対の接続プレート14が設けられており、一側部に取り付けられた接続プレート14は厚さ方向中央よりも上面(表面)側に設けられ、他側部に取り付けられた接続プレート14は厚さ方向中央よりも下面(裏面)側に設けられている。接続プレート14は開口14Aを含む一部が切り欠き部12A、12B内において外部に露出しており、残部が保護層12の内部に埋め込まれている。なお、本実施形態では、連結部材8を接続するために開口14Aを形成しているが、連結部材を接続できれば形状は限定されず、溝でもよい。接続プレート14は、保護層12を発泡成型する際に内部に埋め込まれて固定されている。
【0041】
隣接する養生材6は、上面側に切り欠き部12Aが形成された側縁同士が対向するとともに、下面側に切り欠き部12Bが形成された側縁同士が対向するように配列されている。
【0042】
連結部材8は、例えば、樹脂製又は金属製のリングからなる。隣接する養生材6は、対向する切り欠き部12A、12B内に露出した接続プレート14の開口14Aのそれぞれに、連結部材8を挿通させることにより連結されている。連結部材8は、隣接する養生材6の接続プレート14を連結部材8により連結した状態において、養生材6同士の側面の間には隙間が形成されるような十分な長さを有している。このため、複数の養生材6を連結した状態で敷設する場合であっても、隣接する養生材6は平行にする必要がなく、連結部において屈曲させて、隣接する養生材6の角度を変更することができる。
【0043】
なお、養生材6は、型枠内に真空断熱材(真空断熱材層10)及び接続プレート14を所定の位置に配置した状態で、型枠内に発泡ビーズを充填し、発泡ビーズを蒸気加熱することにより形成することができる。
【0044】
次に、図1に示す、養生構造を使用した打設したコンクリートの養生方法について説明する。
図3は、図1に示す連結された複数の養生材を保管する様子を示す鉛直断面図である。同図に示すように、養生材6を保管する際には、連結部において折りたたんだ状態で保管及び搬送することができる。具体的には、敷設状態において上方に開口する切り欠き部12A同士が上下に対向し、敷設状態において下方に開口する切り欠き部12B同士が上下に対向するように養生材6を重ねる。これにより、隣接する養生材6の切り欠き部12A同士が上下方向に連続し、この連続する切り欠き部12A内を上下方向に連結部材8が延びた状態となり、また、隣接する養生材6の切り欠き部12B同士が上下方向に連続し、この連続する切り欠き部12B内を上下方向に連結部材8が延びた状態となり、養生材6を隙間なく重ね合わせることができる。
【0045】
そして、コンクリートの打設後に養生を行う場合には、このように連結された最上段の養生材6を打設面に沿って引っ張る。これにより、折りたたんだ状態となっていた複数の養生材6が伸びた状態となり、コンクリートの打設面に沿って複数の養生材6を連結された状態で配置することができる。
【0046】
以上に説明したように本実施形態の養生構造によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、養生材6が真空断熱材層10を含むため、薄型であっても十分な断熱性能を確保することができる。これにより施工性に優れ、断熱効果の高いコンクリートの養生構造2が提供される。特にダムなどの打ち継ぎが多く発生し、固練りのコンクリートを打設するような場合に対して、本実施形態の養生構造2は断熱効果が高く有効である。また、本実施形態では、養生材6が真空断熱材層10を含むため、養生材6の密度が高く、風による飛散を防止でき、施工性を向上することができる。
【0047】
また、真空断熱材層は、芯材を包囲する袋が損傷すると、断熱性能が大きく低下するため、真空断熱材層を保護する必要がある。これに対して、真空断熱材層の表裏面に保護材料を配置することも考えられる。しかしながら、保護材料を敷設する場合には保護材料を敷設する工程と、真空断熱材層を配置する工程とが必要になり手間がかかる。これに対して、本実施形態によれば、真空断熱材層10と保護層12とが一体となっているため、敷設作業の施工性を向上することができる。
【0048】
また、上記のように他の保護材料を敷設する場合には、雨水が保護材料と真空断熱材層との間に侵入するおそれがある。このような侵入した雨水が凍結すると真空断熱材層を破損するおそれがある。これに対して、本実施形態では、真空断熱材層10がビーズ法発泡体で構成された保護層12で全体的に保護されているため、雨や雪などによる水の内部への浸透を防止できる。このため、真空断熱材層10が適切に保護される。
【0049】
また、通常コンクリートの打設面に敷設した養生材6にはコンクリートが付着するが、本実施形態の養生材6は独立気泡発泡体で形成された保護層12であるため、コンクリートの付着が比較的少なく、再利用可能である。
【0050】
また、本実施形態では、保護層12の上方表面から真空断熱材層10までの厚さが11mm以上であるため、養生材6の上面で作業する作業者の滑り止め防止用ピンによる真空断熱材層10の踏み抜きを防止できる。
【0051】
本実施形態では、保護層12に使用される材料の発泡倍率が、20倍以下であるため、養生材6の上面に荷重がかかっても陥没や穴が生じない十分な強度を保護層12に持たせることができる。特に寒冷地では、保護層12に穴があくと内部に氷が形成され、真空断熱材層10を損傷するおそれがあるが、これを確実に防止できる。
【0052】
本実施形態は、養生材6の真空断熱材層10及び保護層12が、平板状に一体成型されているため、養生材を容易に持ち運びすることができ、施工性を向上することができる。
【0053】
本実施形態の養生材6は、さらに側部に接続プレート14を備え、隣接する養生材6の接続プレート14を連結する連結部材8をさらに備える。このように、養生材6を連結することにより、複数の養生材6を一度に敷設することができる。また、強風により養生材6が移動し、養生材6の間に広い隙間が生じることを防止できる。
【0054】
本実施形態の養生材6の接続プレート14は、保護層12の内部に埋め込まれ、一部が露出されている。これにより、保護層12を加工することなく、容易に接続プレート14を保護層12と強固に一体化することができる。
【0055】
また、ダムなどの大型土木構造物のコンクリートの打ち継ぎ面は不陸であることが多く、効率良く養生材を敷設するには手間がかかる。これに対して、本実施形態の養生構造2であれば、養生材6同士が間に間隔を保持した状態で敷設され、隣接した養生材6の敷設角度が変更可能である。連結された養生材6同士の間で屈曲することができるため、不陸面に対しても打設面に沿って敷設することができる。また、連結された養生材6は、接続プレート14の連結部材8のところで積み重ねるように折り畳んで運搬及び保管することができる。
【0056】
本実施形態の養生材6の接続プレート14は、養生材6の両側部にそれぞれ設けられており、一側部に取り付けられた接続プレート14は厚さ方向中央よりも上面(表面)側に設けられ、他側部に取り付けられた接続プレート14は厚さ方向中央よりも下面(裏面)側に設けられ、隣接する養生材6は、上面(表面)側の接続プレート14同士、又は、下面(裏面)側の接続プレート14同士が接続されている。これにより、養生材同士を折り畳み可能に密接させて連結することができる。6
【0057】
また、本実施形態によれば、連結部材8により接続された養生材6を用いてコンクリートの打設面を養生することもできることから、より広い打設面を一度に養生することができる。
【実施例
【0058】
<実施例1>
実施例1として、図1を参照して説明した養生構造2に含まれる養生材6(厚さ40mm、幅830mm、長さ1200mm)を作成した。実施例1では、真空断熱材層10には厚さ18mmの真空断熱材(VIP)を用い、保護層12には発泡倍率が20倍である発泡スチロール(ESP)を用いた。このような養生材6をコンクリートの打設面に敷設した
【0059】
また、比較例1として、ポリオレフィンフォームの長尺シート(厚さ10mm、幅1000mm)を4層積層し(層厚合計40mm)、コンクリートの打設面に敷設した。なお、長尺シートとしては、東レ株式会社製のトーレペフ(登録商標)を用いた。
そして、これら実施例1及び比較例1の敷設速度を比較した。
【0060】
実施例1は、施工人数1人で施工することができ、1人当たりの敷設速度は60m2/hであった。また、熱伝達率を測定したところ0.138(W/m2K)であった。
これに対して、比較例1は、施工人数は2~3人必要であり、1人当たりの敷設速度は12m2/hであった。また、熱伝達率は0.9(W/m2K)であった。比較例1は、強風中では1人での施工が困難であり、2~3人での作業が必要となった。これに対して、実施例1の養生材は、5kg/m2と重量があることから、強風下でも飛散することがなく、作業性が高く1人で施工することができた。
【0061】
<実施例2~5>
本発明の養生構造の実施例2について説明する。
実施例として、図1を参照して説明した養生構造2に含まれる養生材6を用いた。真空断熱材層10には真空断熱材(VIP)を、保護層12には発泡スチロール(ESP)を用いた。そして、真空断熱材層10を同一とし、保護層12の発泡スチロールの発泡倍率が10倍、15倍、25倍、30倍とした4種類の養生材6(実施例2~5)を作成した。実施例2~5の形状は全て、厚さ40mm、幅830mm、長さ1200mmの板状であり、厚さ18mm、幅810mm、長さ1160mmの真空断熱材層10が中心内部に配置されている。
【0062】
これら実施例2~5を平滑性のある床に敷設し、滑り止め防止用ピンが付いた作業靴をはいた状態で作業員が各養生材の上面を30往復した後、各養生材上面に水を流した。養生材上面の状態を、また、真空断熱材層10に水が浸透するかを目視で確認し、結果を比較した。なお、本実験で用いた作業靴は、寒冷地における土木作業現場で一般的に用いられるものである。
【0063】
実施例2~5の結果を表1に示す。
【表1】
【0064】
実施例2~4の養生材は、上面の陥没や穴は確認されず、真空断熱材層10への水の浸透もなかった。一方、実施例5,6の発泡倍率が25倍、30倍の養生材の上面には、わずかな陥没や穴が確認され、真空断熱材層への水の浸透がわずかに発生した。発泡倍率が10倍、15倍の養生材については、上面の陥没や穴は一切確認されず、真空断熱材層10への水の浸透もなかった。
【0065】
このように、保護層に使用される材料の発泡倍率が20倍以下であれば、養生材上面を作業員が歩いても損傷しない十分な強度が得られる。
【符号の説明】
【0066】
2 養生構造
4 コンクリート
6 養生材
8 連結部材
10 真空断熱材層
12 保護層
12A、12B 切り欠き部
14A 開口
図1
図2
図3