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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ノード
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/54 20230101AFI20240920BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240920BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20240920BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20240920BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20240920BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20240920BHJP
   H04B 17/382 20150101ALI20240920BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240920BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H04W72/54 110
H04W16/28
H04W24/06
H04W84/18 110
H04W40/12
H04B17/318
H04B17/382
H04B7/06 960
H04B7/08 802
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020170134
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061891
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509266251
【氏名又は名称】PicoCELA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/160741(WO,A1)
【文献】特表2021-514574(JP,A)
【文献】特開2010-041544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
H04B17/318
H04B17/382
H04B7/06
H04B7/08
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第2のノードを含む無線ネットワークに含まれ、複数の方向に存在する前記第2のノードから電波を受信する第1のノードであって、
送信ビームフォーミングによる送信方向に応じた受信ビームフォーミングによって電波を測定する測定部と、
前記測定の結果に基づいて、前記送信ビームフォーミングのための空きリソース判定を行う制御部と、
を備え
前記受信ビームフォーミングの指向性の方向は、前記送信ビームフォーミングの指向性の方向の正反対方向であるか、または、指向性を予め準備された複数個の指向性パターンの中から選択する場合に前記正反対方向に最も近い、
第1のノード。
【請求項2】
前記制御部は、前記測定の結果と、前記送信ビームフォーミングによる送信の宛先である宛先ノードでの受信ビームフォーミングに関する情報とに基づいて、前記空きリソース判定を行う、
請求項1に記載の第1のノード。
【請求項3】
前記制御部は、前記電波の受信レベルが、前記情報に基づく閾値以上の場合、前記送信ビームフォーミングのための空きリソースが存在しないと判定する、
請求項に記載の第1のノード。
【請求項4】
前記情報は、前記宛先ノードでの前記受信ビームフォーミングによる干渉抑圧度を示し、
前記制御部は、前記干渉抑圧度が高いほど、前記閾値を大きく設定する、
請求項に記載の第1のノード。
【請求項5】
電波を測定する測定部と、
前記測定の結果と、受信ビームフォーミングにおける到来方向と到来方向以外の方向との利得の差である干渉抑圧度とに基づいて、送信のための空きリソース判定を行う制御部と、
を備えたノード。
【請求項6】
前記制御部は、前記電波の受信レベルが、前記干渉抑圧度に基づく閾値以上の場合、前記送信のための空きリソースが存在しないと判定する、
請求項に記載のノード。
【請求項7】
記制御部は、前記干渉抑圧度が高いほど、前記閾値を大きく設定する、
請求項に記載のノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信装置によって形成され、集中制御する装置が存在しない自律分散型の無線通信ネットワークでは、各無線通信装置は、信号を送信する前に、送信に使用するチャネル(無線リソースの一例)が他の無線通信装置によって使用されているか否かを確認する動作を行う。この動作は、例えば、キャリアセンスと称される。無線通信装置は、キャリアセンスを実行することによって、無線通信装置間の信号の干渉を回避し、適切な時間に信号を送信する。
【0003】
例えば、世界的に商用サービスが開始されている第5世代移動通信システム(5th generation(5G))において利用される高周波数帯では、電波伝搬の損失が大きいため、電波伝搬の損失を補償するために、ビームフォームミング(BF)技術が適用される。高周波数帯を利用する自律分散型の無線通信ネットワークでは、BF技術の適用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-143046号公報
【文献】国際公開第2011/105371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
BF技術が適用される無線通信ネットワークにおいて、周波数利用効率を向上する制御については、検討の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る送信ノードは、送信ビームフォーミングによる送信方向に応じた受信ビームフォーミングによって電波を測定する測定部と、前記測定の結果に基づいて、前記送信ビームフォーミングのための空きリソース判定を行う制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の非限定的な態様によれば、BF技術が適用される無線通信ネットワークにおいて、周波数利用効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図
図2】無線バックホールネットワークにおける通信状況の一例を示す図
図3】一実施の形態の無線バックホールネットワークにおける通信状況の一例を示す図
図4】一実施の形態に係るノードのデータ中継転送の動作例を示すフローチャート
図5】一実施の形態に係る無線ノードのハードウェア構成例を示すブロック図
図6】一実施の形態に係るBF制御の一例を示す図
図7A】一実施の形態に係る無線ノードの制御部の機能的な構成例を示すブロック図
図7B図7Aに示す中継経路制御部の機能的な構成例を示すブロック図
図7C図7Aに示す無線チャネル割当部の機能的な構成例を示すブロック図
図8】一実施の形態に係るコアノード(CN)の動作例を示すフローチャート
図9A】一実施の形態に係るスレーブノード(SN)の動作例を示すフローチャート
図9B】一実施の形態に係るスレーブノード(SN)の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を適宜参照して、実施の形態について説明する。本明細書の全体を通じて同一要素には、特に断らない限り、同一符号を付す。添付の図面と共に以下に記載される事項は、例示的な実施の形態を説明するためのものであり、唯一の実施の形態を示すためのものではない。例えば、実施の形態において動作の順序が示された場合、動作の順序は、全体的な動作として矛盾が生じない範囲で、適宜に変更されてもよい。
【0010】
複数の実施の形態及び/又は変形例を例示した場合、或る実施の形態及び/又は変形例における一部の構成、機能及び/又は動作は、矛盾の生じない範囲で、他の実施の形態及び/又は変形例に含まれてもよいし、他の実施の形態及び/又は変形例の対応する構成、機能及び/又は動作に置き換えられてもよい。
【0011】
また、実施の形態において、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、説明が不必要に冗長になること、及び/又は、技術的な事項又は概念が曖昧になることを回避して当業者の理解を容易にするために、公知又は周知の技術的な事項の詳細説明を省略する場合がある。また、実質的に同一の構成、機能及び/又は動作についての重複説明を省略する場合がある。
【0012】
添付図面および以下の説明は、実施の形態の理解を助けるために提供されるものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。また、以下の説明で使われる用語は、当業者の理解を助けるために他の用語に適宜に読み替えられてもよい。
【0013】
<本開示に至った知見>
モバイル通信のインフラストラクチャの1つであるバックホール(BH)ネットワークを無線マルチホップによって無線化することで、有線ケーブルの敷設を不要にでき、モバイル通信システムの導入に要する敷設コストを削減できる。そのため、例えば、有線ケーブルの敷設が困難あるいは非経済的であるために有線ケーブルの敷設工事を回避したいエリアにてモバイル通信システムのBHネットワークを構築する場合、及び、モバイル通信システムを一時的(あるいは、暫定的)に導入する場合には、BHネットワークを無線マルチホップによって無線化することが有効である。
【0014】
例えば、1つの基地局(あるいはアクセスポイント)がカバーするセル半径が小さい(概ね100~300m以下程度)スモールセルを多数配置し、サービスエリアの大容量化と広域化を図る場合に、BHをワイヤレス化(無線マルチホップ化)することが検討される。
【0015】
これにより、多数の基地局のバックホール敷設工事のコスト、及び、時間が膨大になることを回避できるため、経済性やシステム開設の迅速性などの点で極めて有効である。
【0016】
無線local area network(LAN)システムは、スモールセルであり、そのBHを無線マルチホップで構築することは既に商用されている。
【0017】
2020年前後から、世界的に商用サービスが開始されている第5世代移動通信システム(5th generation(5G))では、高周波数帯の電波が利用される。高周波数帯は、例えば、センチメートル波帯(3GHz~30GHz、Super High Frequency(SHF)と称される場合もある)、又は、ミリ波帯(30GHz~300GHz、Extreme High Frequency(EHF)と称される場合もある)を含む。高周波数帯では、電波伝搬の損失が大きいため、電波伝搬の損失を補償するために、ビームフォームミング(BF)技術が適用される。
【0018】
高周波数帯のアクセス回線において、BF技術を適用した場合であっても、セル半径は、100メートル~数100メートルであるため、セルサイズは、Long Term Evolution(LTE)等と比較して小さくなる(スモールセル化する)。そのため、置局する基地局の数は膨大となり、BHネットワークの有線ケーブルの敷設が困難となり、セルラー通信事業者の大きな悩みや経営課題ともなっている。例えば、敷設する場所の土地の確保に要する時間、コスト等の作業量が膨大となってくる。
【0019】
したがって、28GHz帯、60GHz帯などの、高周波数帯域を利用する5Gセルラーの基地局のBHをワイヤレス化できれば、5Gセルラーのインフラ構築が大いに進展する可能性を秘めている。
【0020】
例えば、ワイヤレスBHにおける中継経路が形成された後、マルチホップのパケット転送では、BH無線リンクにおいて、carrier sense multiple access / collision avoidance(CSMA/CA)等が用いられて、BH無線リンクに割り当てられているチャネルが使用可能か否かを判定する。BH無線リンクに割り当てられているチャネルが使用可能か否かの判定は、当該チャネルが空きチャネルか否かの判定と捉えてよい。また、この判定は、空きチャネル判定と称されてもよい。この判定によって、BH無線リンクに割り当てられている無線チャネルが使用可能な場合に、当該BH無線リンクにおいて信号の送受信が許可される。
【0021】
空きチャネル判定では、信号送信(例えば、データ送信)を開始したいノードが、割り当てられているチャネルの信号受信強度(RSSI: Received Signal Strength Indicator)を測定し、測定したRSSIがclear channel assessment(CCA)判定の閾値以下の場合、当該チャネルは空きチャネルと判定される。なお、或るチャネルCが空きチャネルであることとは、空きチャネル判定を行うノードの近傍のエリアにおいて、チャネルCのRSSIを測定した際に電波の放射(信号の送信)がなされていない状態(或いは、閾値以下の電波の放射が存在する場合)に相当してよい。あるいは、チャネルCが空きチャネルであることとは、空きチャネル判定を行うノードが、近傍のエリアにおいて、チャネルCを使用してもよい(使用可能である)ことに相当してよい。また、チャネルは、リソースの一例であり、空きチャネル判定は、或るチャネルが空間的に利用可能か否かを判定することに相当してよい。空きチャネル判定は、空きリソース判定の一例と捉えてよい。
【0022】
空きチャネルと判定された場合、信号送信を開始したいノードは、信号の送信を開始することが許可される。CSMA/CAは、集中制御する装置が存在しない自律分散型の動作が可能であるため、ワイヤレスBHシステムに適している。
【0023】
しかしながら、5GHz帯を使用する従来の無線LAN(例えば、Wi-Fi(登録商標))に比較して、同じ5GHz帯を使用する無線LANでも最新規格であるIEEE802.11ax規格のようにBFを適用している無線方式及び/又はBF適用が常套手段であるミリ波帯の5G規格等をワイヤレスマルチホップへと適用する場合に、以下のような技術的な改善の余地がある。
【0024】
例えば、BFの適用により、BHリンクに割り当てられる無線資源(例えば、BHリンク用無線チャネル)の空間的な再利用効率の向上が期待できるが、そのためには、各ノードが実行する空きチャネル判定の仕組みをBF適用による空間的な干渉抑圧効果と整合させることが望まれる。
【0025】
なお、上記の改善の余地は、BHネットワークに限らず、BFが適用され、無線通信装置が互いに無線接続を行い、自律分散型で動作するネットワークにおいて、各無線通信装置がCSMA/CA等のキャリアセンスを行って、通信の可否を判定する場合にも生じ得る。例えば、アクセス回線とBH回線とを統合し、無線リソースの割り当てを行う方式であるIAB(Integrated Access and Backhaul)においては、BH回線とアクセス回線との双方に上記の改善の余地がある。
【0026】
本開示では、上記の課題を解決し、ミリ波帯5GシステムのBHのワイヤレス化を実現する。
【0027】
<システム構成例>
図1は、一実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す無線通信システムは、例示的に、複数のノード3を備える。図1には、非限定的な一例として、ノード番号#1~#8を付して示す8台のノード3が例示されている。ノード3の数は、2以上かつ8以下でもよいし9以上でもよい。以下では、ノード番号#i(iは1以上8以下の整数)が付されたノード3は、ノード#iと記載される場合がある。
【0028】
個々のノード3は、無線通信が可能な無線機器の一例である。そのため、ノード3のそれぞれは、「無線ノード3」と称されてもよい。
【0029】
個々のノード3は、無線通信が可能なエリアを形成する。「無線通信が可能なエリア」は、「無線通信エリア」、「無線エリア」、「通信エリア」、「サービスエリア」、「カバレッジエリア」、又は、「カバーエリア」等と称されてもよい。無線LAN関連規格に準拠した、あるいはベースとしたノード3が形成する無線通信エリアは、セルラー通信での呼称である「セル」に対応すると捉えてもよい。例えば、個々のノード3が形成する無線通信エリアは、「スモールセル」に分類される「フェムトセル」に相当すると捉えてもよい。
【0030】
ノード3のそれぞれは、他のノード3のサービスエリアに位置する場合に、当該他のノード3と無線通信することが可能である。複数のノード3は、例えば、バックボーンネットワーク(図1では省略)と端末装置(図1では省略)との間の通信を無線によって中継する無線バックホール(BH)ネットワークを形成する。「無線BHネットワーク」は、「無線」を省略して「BHネットワーク」と称されてもよい。
【0031】
「BHネットワーク」は、「中継ネットワーク」と称されてもよい。BHネットワークのエンティティである個々のノード3は、「中継ノード」と称されてもよい。
【0032】
バックボーンネットワークは、例示的に、インターネット等の大規模な通信ネットワークである。「バックボーンネットワーク」は、「コアネットワーク」、又は、「グローバルネットワーク」等と称されてもよい。
【0033】
BHネットワークにおいて無線信号が伝送される経路又は区間は、「無線リンク」と称されてよい。また、「無線リンク」は、「無線BH通信路」、「無線BH伝送路」、「無線BH回線」、「無線BH接続」、「無線BHチャネル」、「無線リンク」、又は、「ホップリンク」と相互に読み替えられてもよい。これらの用語において、「無線」は省略されてもよく、また、「BH」は「中継(Relay)」に読み替えられてもよい。
【0034】
これに対し、例えば、端末装置とBHネットワークとの間において無線信号が伝送される区間は、「無線アクセス回線」、又は、「無線アクセスチャネル」と称されてよい。これらの用語において、「無線」は省略されてもよい。
【0035】
例えば、図1には、ノード3の間で確立された無線リンクが点線によって示される。点線によって結ばれる2つのノード3の間では、信号の送受信が行われてよい。ノード3の間の信号の送受信には、データの送受信が含まれてよい。また、ノード3の間の信号の送受信には、制御信号の送受信が含まれてよい。
【0036】
例えば、ノード#1は、ノード#2と信号の送受信を行う。また、例えば、ノード#5は、ノード#2、ノード#3及びノード#6のそれぞれと信号の送受信を行う。
【0037】
なお、以下の説明において、「信号」という用語は、「フレーム」又は「パケット」といった、信号が時間的に区切られた単位の用語に読み替えられてもよい。
【0038】
無線BH回線及び無線アクセス回線には、互いに異なる周波数(チャネル)が割り当てられてよい。
【0039】
複数のノード3のうちの一部のノード3は、バックボーンネットワークに有線接続されてよい。有線接続には、例えば、LANケーブル、又は光ファイバケーブルが適用されてよい。
【0040】
バックボーンネットワークに有線接続されたノードは、「コアノード(CN)」と称されてよい。BHネットワークを形成する複数のノード3のうち、CNを除いた個々のノード3は、「スレーブノード(SN)」と称されてよい。例えば、図1において、ノード#1がバックボーンネットワークに有線接続される場合、ノード#1がCNであり、ノード#2~#8は、SNである。なお、CNの数は、2以上であってもよく、SNの数は、7未満であってもよいし、8以上であってもよい。
【0041】
なお、図1において、個々のノード3に付した#1~#8は、個々のノード3の識別に用いられる情報(以下「ノード識別情報」と略称することがある)の一例である。ノード識別情報は、同じBHネットワークにおいて個々のノード3を一意に識別可能な情報であればよく、例えば、ノード番号、機器の識別子、又は、アドレス情報等であってよい。アドレス情報の非限定的な一例は、MAC(Media Access Control)アドレスである。
【0042】
BHネットワークは、1つのCN3(例えば、ノード#1)をルート(根)ノードとした1つ以上のツリー構造(「ツリートポロジ」と称されてもよい)を有してよい。なお、BHネットワークの構造は、ツリー構造に限られない。
【0043】
ツリートポロジにおいて、子ノードを有さないSN3は「葉(リーフ)ノード」と称されてよく、子ノードを有するSN3は「内部ノード」と称されてよい。例えば、図1において、ノード#3、#4、#8は、いずれも「リーフノード」に相当する。また、ノード#2、#5、#6、#7は、いずれも「内部ノード」に相当する。
【0044】
無線BH回線には、コアノードからリーフノードへ向かう方向の「下り回線」と、リーフノードからコアノードへ向かう方向の「上り回線」と、が含まれてよい。「下り回線」及び「上り回線」は、それぞれ、セルラー通信における呼称に倣って「ダウンリンク(DL)」及び「アップリンク(UL)」と称されてもよい。
【0045】
「下り回線」における信号(下り信号)の流れは、「ダウンストリーム」と称されてよく、「上り回線」における信号(上り信号)の流れは、「アップストリーム」と称されてよい。「下り信号」及び「上り信号」のそれぞれには、制御信号及びデータ信号が含まれてよい。「制御信号」には、「データ信号」には該当しない信号が含まれてよい。
【0046】
なお、「子ノード」は、「下り回線」に着目した場合の、或るノードの下流に無線リンクによって接続されたノード(下流ノード)に相当すると捉えてもよい。下り回線に着目した場合の、或るノードの上流に無線リンクによって接続されたノードは、「親ノード」又は「上流ノード」と称されてもよい。「上り回線」に着目した場合、「子ノード」(下流ノード)と「親ノード」(上流ノード)との関係は、逆転する。
【0047】
また、「下り回線」に着目した場合、「コアノード」は、「始点ノード」又は「起点ノード」と称されてもよく、「リーフノード」は、「終点ノード」あるいは「エッジノード」と称されてもよい。「内部ノード」は、「中間ノード」又は「中継ノード」と称されてもよい。
【0048】
BHネットワークにおけるツリー構造の経路(ツリートポロジ)は、例えば、CN3から特定のSN3に至る経路のメトリック(以下「経路メトリック」と略称することがある)に基づいて構築されてよい。経路メトリックには、CN3から特定のSN3に至る無線区間の電波伝搬の品質又は性能を示す指標(以下「伝搬品質指標」と称する)が用いられてよい。
【0049】
伝搬品質指標の非限定的な一例としては、無線信号の受信電力又は受信強度(例えば、RSSI;Received Signal Strength Indicator)、電波伝搬損失、伝搬遅延、及びリンク伝送速度(リンクスループット)等が挙げられる。「電波伝搬損失」は、「パスロス」に読み替えられてもよい。リンク伝送速度は、例えば、RSSIに対応して決定されるMCS(Modulation Coding Scheme)にて伝送可能な伝送速度に相当する。リンク伝送速度は、各ホップリンクが異なる伝送規格である場合には、特に有効なメトリックである。一方で、各ホップリンクが同一の伝送規格である場合にも、リンク伝送速度をメトリックにすることによって、RSSIをメトリックとするよりも、ワイヤレスBHシステムにとって高い性能の中継経路を構築できる可能性もある。
【0050】
伝搬品質指標には、以上の指標候補の中から選択された1つ又は2つ以上の組み合わせが用いられてよい。なお、本実施形態において、伝搬品質指標には、ホップ数といった経路の距離に関する指標は用いられなくてよい。
【0051】
例えば、CN3を起点に信号(例えば、制御信号)を送信することで、制御信号の送信ノード3と受信ノード3との間の無線区間毎に、当該無線区間の電波伝搬損失を受信ノード3において算出することができる。
【0052】
そして、受信ノード3のそれぞれが、算出した電波伝搬損失の情報を、制御信号に含めて送信することによって、制御信号が伝搬した無線区間の累積的な電波伝搬損失の情報(別言すると、累積値)を、ノード3間で伝達できる。
【0053】
個々のノード3は、例えば、制御信号の送信元である上流ノード候補毎に、累積的な電波伝搬損失に基づいて経路メトリックを計算し、上流ノード候補の中から、経路メトリックが例えば最小を示すノード3を1つ選ぶ。これにより、電波伝搬損失が最小となるツリー構造の経路が構築される。
【0054】
ツリー構造の経路(以下「ツリー経路」と称することがある)は、CN3を起点に制御信号を定期又は不定期に送信することで、ダイナミックに、あるいは、アダプティブに更新することができる。
【0055】
以下、このようなツリー経路の構築及び更新に関わる処理又は制御を、便宜的に、「経路制御」と称することがある。
【0056】
なお、BH回線の下り回線及び上り回線の少なくとも1つには、有線回線が含まれてもよい。BH回線の下り回線及び上り回線の少なくとも1つに有線回線が含まれる場合、有線区間の経路メトリックは、無線区間において想定される伝搬損失よりも小さい所定値(例えば、最小値)によって計算されてよい。
【0057】
端末装置は、いずれかのSN3のサービスエリアに位置する場合に、BHネットワークを形成する複数のSN3のいずれかに無線アクセス回線によって接続することで、BH回線経由でバックボーンネットワークと通信する。なお、端末装置は、SN3の何れかに、有線回線(有線IF)によって接続されてもよい。非限定的な一例として、端末装置は、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末等の移動可能な端末であってよい。
【0058】
無線アクセス回線には、例示的に、CDMA(Code Division Multiple Access)、FDMA(Frequency Division Multiple Access)、TDMA(Time Division Multiple Access)、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)、及び、SC-FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)等のうちのいずれかが適用されてもよい。OFDMAは、例えば、IEEE802.11、IEEE802.16、LTE(Long Term Evolution)、LTE-Advanced、5G-NR(New Radio)等の無線技術によって具現されてよい。
【0059】
無線BH回線及び/又は無線アクセス回線における下り回線及び/又は上り回線の全部又は一部には、複数のアンテナ素子を有するアンテナアレイによるMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が適用されてもよい。
【0060】
例えば、CN3-SN3間、SN3-SN3間、及び、SN3-端末装置間のいずれか1つ以上の区間の下り回線及び/又は上り回線において、アンテナアレイを用いたビームフォーミングが行われてもよい。なお、アンテナアレイを用いたビームフォーミングについては、後述する。
【0061】
なお、以下において、信号の「伝送」という用語は、信号の「中継」、「転送」、「伝搬」、「伝達」、「ルーティング」、又は、「フォワーディング」といった他の用語に相互に読み替えられてもよい。信号の「中継」は、信号の「ブリッジ」に読み替えられてもよい。
【0062】
また、信号の「送信」という用語には、信号の「フラッディング」、「ブロードキャスト」、「マルチキャスト」、又は、「ユニキャスト」等の意味が含まれてよい。回線の「接続」という用語は、有線及び/又は無線の通信リンクが「確立」又は「リンクアップ」した状態を意味する、と捉えてもよい。
【0063】
「装置」という用語は、「回路」、「デバイス」、「ユニット」、又は、「モジュール」といった用語に相互に読み替えられてもよい。「インタフェース(IF)」という用語は、「アダプタ」、「ボード」、「カード」、又は、「モジュール」、「チップ」といった用語に相互に読み替えられてもよい。
【0064】
ノード3及び/又は端末装置は、IoT(Internet of Things)機器であってもよい。IoTによって、様々な「物」に無線通信機能が搭載され得る。無線通信機能を搭載した様々な「物」は、無線アクセス回線及び/又は無線BH回線を介してバックボーンネットワーク5に接続して通信を行なうことができる。
【0065】
例えば、IoT機器には、無線通信機能を具備したセンサデバイスやメータ(測定器)等が含まれてよい。センサデバイス及び/又はメータを搭載した監視カメラ及び/又は火災報知器のような、センシング機能及び/又はモニタ機能を有する機器がノード3及び/又は端末装置7に該当してもよい。したがって、BHネットワークは、例えば、センサネットワーク及び/又は監視ネットワークに該当してもよい。なお、IoT機器による無線通信は、MTC(Machine Type Communications)と称されることがある。そのため、IoT機器は、「MTCデバイス」と称されることがある。
【0066】
次に、図1に示すような無線バックホールネットワークにおいて、BHリンクに割り当てられる無線資源(例えば、BHリンク用無線チャネル)の利用の可否を確認するキャリアセンスに関して説明する。なお、以下では、図1に示したノード#5に着目して説明を行う。
【0067】
図2は、無線バックホールネットワークにおける通信状況の一例を示す図である。図2には、図1に示した無線バックホールネットワークにおいて、複数のノード3がデータの送信を送信BFを適用して行う例が示される。なお、図2の場合、ノード3は、データの送信において、送信BFを適用しなくてもよい。
【0068】
例えば、図2において、ノード#2は、ノード#4へデータを送信し、ノード#7は、ノード#8へデータを送信する。なお、ノード#2とノード#7は、同じチャネル(チャネルC1)を使用してデータを送信してよい。
【0069】
ここで、ノード#5が、ノード#3へ向けてデータを送信する要求がある場合、ノード#5は、チャネルC1の空きチャネルの判定を行う。例えば、ノード#5は、キャリアセンスを行い、チャネルC1が空きチャネルか否かを判定する。なお、空きチャネルの判定は、clear channel assessment(CCA)と称されてもよい。
【0070】
例えば、ノード#5は、チャネルC1において信号(干渉成分)を受信し、受信した信号の受信レベル(例えば、received signal strength indicator(RSSI))を測定する。なお、ここでは、ノード#5は、無指向性のビームを形成し、信号を受信する。ノード#5は、測定したRSSIと閾値(例えば、CCA閾値)とを比較する。なお、CCA閾値は、例えば、-62[dBm]である。
【0071】
ノード#5は、RSSIが閾値未満の場合、チャネルC1が空きチャネルである、と判定する。この場合、ノード#5は、チャネルC1において、ノード#3に向けてrequest to send(RTS)を送信する。一方で、ノード#5は、RSSIが閾値以上の場合、チャネルC1が空きチャネルではない、と判定する。この場合、ノード#5は、チャネルC1において、RTSを送信しない。
【0072】
各ノード3が送信BFを適用した場合でも、各ノードから放射された電波は、主方向(メインビーム方向)のみに進行するのではなく、主方向に比べれば抑圧されてはいるものの、主方向と異なる方向にも進行する。そのため、送信BFを適用して送信された信号が、当該送信BFの主方向に沿った方向に位置していないノード3にも到達する。例えば、図2の例では、ノード#5がノード#2からノード#4へ向かう方向に位置していなくとも、ノード#2からノード#4へ送信BFを適用して送信された信号(データ信号)の少なくとも一部が、ノード#5へ到達する。また、ノード#5がノード#7からノード#8へ向かう方向に位置していなくとも、ノード#7からノード#8へ送信BFを適用して送信された信号(データ信号)の少なくとも一部が、ノード#5へ到達する。ノード#5がCCAのためのRSSI測定を無指向性受信で実行している場合、ノード#5は、RSSI測定において、これらの信号(電波)を含めたものを測定することになる。この場合、ノード#5が、本来判定したい「ノード#5からノード#3へ向かうデータ送信方向に信号を送信してよいか否かの判定」であるCCAにおいて、RSSI測定値が過大に観測され、CCA閾値よりも大きくなることによって、空きチャネルが存在すると判定する確率を低減してしまうことになる。なお、各ノード3が送信BFを適用しない場合、ノード3は、無指向性送信を行うため、ノード3が送信した信号は、当該信号の宛先ノードと異なるノードに到達する場合がある。
【0073】
本実施の形態では、上述したようなキャリアセンスを行う無線通信ネットワークにBF技術が適用される場合において、干渉を回避しつつ、周波数利用効率を向上できるキャリアセンスの制御が行われる。以下、本実施の形態におけるキャリアセンスの2つの制御例を説明する。
【0074】
なお、周波数利用効率は、周波数リユースファクタによって表されてよい。例えば、同一チャネルをF個のリンクの中で1リンクにおいて同時に使用できる場合、周波数リユースファクタはFである。例えば、BH無線リンクが7である図1において、確率的に平均して2つのBH無線リンクにおいて同一チャネルが使用される場合、周波数リユースファクタはF=7/2=3.5である。
【0075】
周波数リユースファクタが小さいほど、周波数利用効率が高く、システム容量が大きいことに該当する。また、周波数利用効率を向上させることは、周波数リユースファクタを減少させることに相当してよい。
【0076】
<制御例1>
制御例1では、キャリアセンスにおいて、信号を受信する受信指向性が制御される。
【0077】
図3は、本実施の形態の無線バックホールネットワークにおける通信状況の一例を示す図である。図3では、図2に示した例と同様に、ノード#2は、ノード#4へデータを送信し、ノード#7は、ノード#8へデータを送信する。なお、ノード#2とノード#7は、同じチャネル(チャネルC1)を使用してデータを送信する。なお、図3では、図2に示した例と同様に、複数のノード3がデータの送信を送信BFを適用して行ってよい。
【0078】
図2に示した例と同様に、ノード#5が、ノード#3へ向けてデータを送信する要求がある場合、ノード#5は、チャネルC1を使用するか否かの判定を行う。なお、図3では、図2と同様に、ノード#5は、指向性制御(例えば、送信BF)を行う。例えば、ノード#5は、ノード#3へ向けてデータを送信する場合、送信指向性制御によってノード#3の方向へビームを形成する。例えば、ノード#5によって形成されるビームにおいて最大利得を示す方向は、ノード#3の方向である。なお、送信指向性制御は、送信ビームフォーミング、又は、Tx-BF(beamforming)指向性と称されてよい。また、チャネルC1を使用するか否かの判定は、チャネルC1の空きチャネル判定と称されてもよい。なお、送信指向性制御によってノードが形成する送信ビームにおいて最大利得を示す方向が、送信ビームの方向と規定されてよい。受信ビームについても同様であってよい。
【0079】
図3の例では、ノード#5は、ノード#3へ向けてデータを送信する要求がある場合のチャネルC1を使用するか否かの判定において、ノード#3へ向けたデータ送信に使用される送信指向性制御に対応する受信指向性制御を行って、チャネルC1の信号(干渉成分)を受信し、RSSIを測定する。なお、キャリアセンスにおいて、RSSIを測定するために行われる受信指向性制御は、測定用受信指向性制御と記載される場合がある。また、測定用受信指向性制御によって形成される受信ビームは、測定用受信ビームと記載される場合がある。
【0080】
例えば、図3の例では、送信指向性制御によって形成する送信ビーム(図3における「Tx-BF」)の方向(例えば、ノード#5を起点にした、ノード#3が存在する方向)に対して、180度反対の方向に向けられる測定用受信ビーム(図3における「RSSI測定用Rx-BF」)が形成される。図3に示すような、送信ビームの方向に対して、180度反対の方向に向けられる測定用受信ビームを形成する指向性制御は、送信指向性制御に対応する指向性制御の一例である。
【0081】
なお、図3では、送信ビームの方向に対して、180度反対の方向に向けられる測定用受信ビームを形成する例を示したが本開示はこれに限定されない。例えば、測定用受信ビームの方向は、送信ビームの方向を基準に正反対方向(180度)を中心に±30度又は±90度の角度範囲内であってよい。例えば、送信ビーム方向及び/又は受信ビーム方向が、任意の方向に形成可能ではなく、予め用意された複数種類のビーム方向から選択されるようなBF方式の場合、送信ビームの方向を基準に正反対方向(180度)を示すビーム方向が、用意された複数種類のビーム方向の中に存在しない可能性がある。この場合、用意された複数種類のビーム方向の中で、正反対方向に最も近いビーム方向が、測定用受信ビームの方向に用いられてもよい。あるいは、用意された複数種類のビーム方向の中で、正反対方向を中心に±30度内に存在するビーム方向が、測定用受信ビームの方向に用いられてよい。あるいは、用意された複数種類のビーム方向の中で、正反対方向を中心に±30度内には存在しないが±90度内に存在するビーム方向が、測定用受信ビームの方向に用いられてよい。また、上記の測定用受信ビームの方向が、複数組み合わされてもよい。
【0082】
この測定用受信ビームを形成した場合、ノード#2から送信され、ノード#5へ到達する信号の受信レベルが、低減される。また、この測定用受信ビームを形成した場合、ノード#7から送信され、ノード#5へ到達する信号の受信レベルが低減される。そのため、干渉成分の受信レベルは、図2の例と比べて低くなる。この場合、干渉成分の受信レベルが閾値未満となり、チャネルを使用すると判定する回数が、図2の例と比べて、増加する。
【0083】
このように、本実施の形態では、信号を送信するノード(送信ノード)と、送信ノードから信号を受信するノード(受信ノード)との間において指向性制御が行われる。例えば、制御例1で、送信ノードは、或るチャネルにおいて送信指向性制御(送信ビームフォーミング)を行って受信ノードに向けて信号を送信する。この場合、送信ノードは、送信指向性制御による送信方向に応じた受信指向性制御(受信ビームフォーミング)によって信号を測定し、測定の結果に基づいて、送信指向性制御による信号送信のための空きチャネル(空きリソースの一例)判定を行う。
【0084】
このような構成により、指向性制御を考慮してチャネル(リソースの一例)を使用するか否かの判定を行うため、周波数利用効率を向上できる。例えば、上記の構成によれば、送信指向性制御によって形成する送信ビームの方向に対して、影響を与えない、或いは、影響が少ない干渉成分の受信結果を示す受信レベルを低減できる。この場合、チャネルを使用すると判定される回数が増加するため、チャネルの周波数リユースファクタを減少させることができる。
【0085】
なお、制御例1の場合、受信ノードは、送信ノードから送信される信号の受信において、受信指向性制御を行わなくてよい。別言すると、制御例1は、送信ノードからの信号を受信する受信ノードが指向性制御の機能を有さない場合の送信ノードにも適用できる。
【0086】
なお、上述した制御例1では、図2に例示したように、2次元の指向性制御を例に挙げて示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、送信ノードが、3次元の指向性制御(例えば、方位角と仰角の指向性制御)を行う場合でも、制御例1を適用してよい。
【0087】
<制御例2>
制御例2では、キャリアセンスにおいて、受信した信号に基づく空きチャネル判定にて用いられる閾値が制御される。以下では、或る送信ノードが、或る受信ノードへの信号送信を行う前に実行されるキャリアセンスを例に挙げる。
【0088】
送信ノードにおけるアンテナ利得を含む送信ノードの送信電力がPt、送信ノードから受信ノードまでの電波伝搬損失がLと表される。また、受信ノードの信号成分に対するアンテナ利得がG、受信ノードの干渉成分に対するアンテナ利得がG、受信ノードに到達する干渉成分の電力がIと表される。
【0089】
この場合、例えば、受信ノードのアンテナ利得を含む信号成分の受信電力PrSは、PrS=Pt-L+Gと表される。また、受信ノードのアンテナ利得を含む干渉成分の受信電力PrIは、PrI=I+Gと表される。また、受信ノードにおけるキャリア電力対干渉電力比(CIR)は、式(1)によって表される。
【0090】
CIR=(Pt-L+G)-(I+G) (1)
【0091】
例えば、送信ノードから受信ノードに至る信号伝送での受信ノードにおける最小限の所要CIRがCIRminと表される。受信ノードにおけるCIRが所要CIR以上の場合、例えば、式(1)に示したCIRが式(2)を満たす場合、信号伝送が行われてよい。
【0092】
CIR=(Pt-L+G)-(I+G)≧CIRmin (2)
【0093】
また、例えば、送信ノードにおける空きチャネル判定の場合に、許容される干渉成分の電力を規定する閾値は、CCAthと表され、送信ノードにおける干渉成分の電力の測定値は、I’と表される。ここで、送信ノードでは、干渉成分の電力の測定値I’がCCAth以下の場合、例えば、式(3)が成立する場合、送信ノードから受信ノードへの信号伝送が許可される。送信ノードのCCA検出におけるRSSIは、送信ノードにおける干渉成分I’を表す。送信ノードにおける干渉成分I’が受信ノードにおける干渉成分Iと等しいという仮定の基にRSSIがCCAth以下の場合、データ伝送における受信ノードでのCIRが、CIRminを満たすことになる。
【0094】
I’≦CCAth (3)
【0095】
ここで、受信ノードに到達する干渉成分の電力Iと送信ノードにおける干渉成分の電力の測定値I’とが等しい(I’=I)と仮定した場合、式(2)と式(3)とから、式(4)が導出される。
【0096】
CCAth=Pt-L+G-G-CIRmin (4)
【0097】
ここで、式(4)において、G=Gとした場合の閾値CCAthをCCA’thと表す。CCA’thは、式(5)と表され、CCAthとCCA’thとの関係は、式(6)と表される。
【0098】
CCA’th=Pt-L-CIRmin (5)
CCAth=CCA’th+(G-G) (6)
【0099】
=Gとした場合とは、受信ノードの信号成分に対するアンテナ利得と、受信ノードの干渉成分に対するアンテナ利得とが等しい場合に相当し、受信ノードにおいて受信指向性の制御が行われていない場合に相当する。別言すると、式(5)に示すG=Gとした場合の閾値CCA’thは、受信指向性制御が行われていないことを想定した閾値である。
【0100】
例えば、式(5)において、Pt-Lが-60dBm、CIRminが20dBの場合、CCA’thは-80dBmとなる。
【0101】
本実施の形態では、受信ノードにおいて受信指向性の制御が行われる。そのため、本実施の形態では、CCAの処理において、許容される干渉成分の電力を規定する閾値は、式(4)に示したCCAthに設定する。
【0102】
なお、受信ノードにおいて受信指向性の制御が行われる場合、受信ノード宛の信号の到来方向のアンテナ利得が、受信ノード宛の信号の到来方向以外の方向のアンテナ利得よりも大きくなる。例えば、この場合、GとGとの関係は、G>Gであるから、(G-G)>0が成立する。例えば、「G-G」は、20dB~30dBである。
【0103】
式(6)に示したように、受信ノードにおいて受信指向性の制御が行われる場合の閾値CCAthは、受信指向性の制御が行われていないことを想定した閾値CCA’thよりも大きい。すなわち、本実施の形態では、空きチャネル判定に用いられる閾値に、式(4)に示した閾値CCAthが設定されることにより、CCA処理において、許容される干渉成分の電力が増加し、チャネルを使用できると判定される回数が増加するため、チャネルの周波数リユースファクタを減少させることができる。
【0104】
このように、制御例2では、送信ノードは、信号を測定し、測定の結果と、受信指向性制御に関する情報(例えば、G及びG)とに基づいて、送信のための空きチャネル(空きリソースの一例)判定を行う。
【0105】
このような構成により、指向性制御を考慮してチャネル(リソースの一例)を使用するか否かの判定を行うため、周波数利用効率を向上できる。例えば、上記の構成によれば、受信ノードにおける受信指向性制御によって抑圧される干渉の度合い(干渉抑圧度)を考慮して閾値を制御することによって、チャネルを使用すると判定される回数が増加するため、チャネルの周波数リユースファクタを減少させることができる。
【0106】
なお、受信指向性制御に関する情報(例えば、G及びG)は、送信ノードが受信ノードから受信する制御情報に含まれてよい。あるいは、送信ノードは、送信ノードにおける受信指向性制御に関する情報(例えば、G及びG)を使用して閾値を設定してもよい。この場合、送信ノードと受信ノードとは、同一の機能を有する装置であってよい。
【0107】
なお、制御例2の場合、キャリアセンスを行う送信ノードは、受信ノードに対する信号送信において送信指向性制御を行わなくてよいし、キャリアセンスにおいて受信指向性制御を行わなくてよい。別言すると、制御例2は、送信ノードが指向性制御の機能を有さない場合にも適用できる。
【0108】
<制御例1と制御例2とに関する処理フロー>
次に、制御例1及び制御例2に関する処理フローを説明する。
【0109】
図4は、一実施の形態に係るノード3の動作例を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、例えば、ノード3の制御部40(図4参照)において実行されると捉えてよい。また、図4のフローチャートは、ノード3がデータの送信(中継転送)を行う前に実行されてよい。
【0110】
制御部40は、RSSI測定を行う受信指向性を設定する(S11)。例えば、制御部40は、データの宛先ノードに対する送信指向性制御の送信方向に応じた受信ビームを設定する。
【0111】
制御部40は、S11にて設定した受信ビームによって受信した信号(干渉成分)のRSSIを測定する(S12)。
【0112】
制御部40は、CCA判定に用いるCCA閾値を設定する(S13)。例えば、制御部40は、宛先ノードに対応するCCA閾値を、式(4)又は式(5)に基づいて設定する。なお、CCA閾値は、宛先ノード毎に共通であってもよいし、宛先ノード毎に異なる設定値でもよい。
【0113】
制御部40は、CCAの判定を行う(S14)。例えば、制御部40は、S12において測定したRSSIが式(7)を満たすか否かを判定する。
【0114】
RSSI≦CCAth (7)
【0115】
制御部40は、判定対象のチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する(S15)。例えば、制御部40は、S12において測定したRSSIが式(7)を満たす場合、判定対象のチャネルが空きチャネルである、と判定し、S12において測定したRSSIが式(7)を満たさない場合、判定対象のチャネルが空きチャネルではない、と判定する。
【0116】
判定対象のチャネルが空きチャネルではない場合(S15にてNO)、S11の処理が実行される。
【0117】
判定対象のチャネルが空きチャネルである場合(S15にてYES)、制御部40は、RTSを送信する(S16)。
【0118】
制御部40は、RTSに対する応答を示すCTSを受信したか否かを判定する(S17)。
【0119】
CTSを受信していない場合(S17にてNO)、S11の処理が実行される。
【0120】
CTSを受信した場合(S17にてYES)、制御部40は、判定対象のチャネルにおいて、宛先ノードに対してデータ送信を開始する(S18)。そして、図4に示すフローは終了し、データが送信される。
【0121】
以上、図4に示すフローは、キャリアセンスに関する制御例1に係る処理(例えば、S11)と、キャリアセンスに関する制御例2に係る処理(例えば、S13)とを含むが、本開示はこれに限定されない。例えば、制御例1と制御例2とのいずれか一方に係る処理が実行され、他方に係る処理は省略されてもよい。例えば、制御例1に係る処理が実行され、制御例2に係る処理が省略される場合、S13の処理が省略され、S14におけるCCA閾値は、例えば、式(5)に示す値に設定されてよい。また、例えば、制御例2に係る処理が実行され、制御例1に係る処理が省略される場合、S11の処理が省略され、S12にて、例えば、無指向性ビームによってRSSIが測定されてよい。
【0122】
また、図4に示すフローでは、RTSが送信されるが、RTSの送信(例えば、S16の処理)は省略されてもよい。この場合、RTSに対するCTSは受信されないため、S17の処理が省略され、制御部40は、空きチャネルである、と判定した後(例えば、S15の処理の後)、データ送信を開始(例えば、S18の処理)してよい。
【0123】
以上説明した制御例1及び制御例2の少なくとも一方を採用することによって、本実施の形態に係るノード3は、ノード間の干渉を回避しつつ、チャネルの利用効率を向上させることができ、BF技術が適用される無線通信ネットワークにおいて、干渉を回避しつつ、周波数利用効率を向上できる。そして、制御例1及び制御例2の少なくとも一方を採用したノード3によって、ミリ波帯5GシステムのBHのワイヤレス化を実現できる。
【0124】
なお、以下では、ノード3が上述した制御例1及び制御例2の両方を使用してキャリアセンスを行う例を説明するが、本開示はこれに限定されない。例えば、ノード3は、制御制御例1及び制御例2の少なくとも一方を使用してキャリアセンスを行ってよい。あるいは、ノード3は、制御例1と、制御例2と、制御例1及び制御例2の組み合わせとの少なくとも2つを動的に切り替えて使用してもよい。
【0125】
また、複数のノード3を有する無線通信ネットワークにおいて、ノード3のそれぞれが共通した制御例を使用してもよいし、ノード3のそれぞれが独立して採用する制御例を決定してもよい。例えば、無線通信ネットワークにおいて、制御例1を使用するノード3と、制御例2を使用するノード3と、制御例1と制御例2との組み合わせを使用するノード3とが混在してもよい。
【0126】
<ノード3のハードウェア構成の一例>
次に、ノード3のハードウェア構成について説明する。図5は、一実施の形態に係る無線ノード3のハードウェア構成例を示すブロック図である。図5に例示した構成例は、CN3及びSN3に共通でよい。図5に示すように、ノード3は、例えば、プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、入出力(I/O)装置34、無線部35及び36、有線IF37、有線IF39、並びに、バス38を備えてよい。
【0127】
なお、図5に例示したハードウェア構成例において、ハードウェアの増減が適宜に行なわれてもよい。例えば、任意のハードウェアブロックの追加や削除、分割、任意の組み合わせでの統合、バス38の追加又は削除等が、適宜に行なわれてよい。
【0128】
プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、入出力(I/O)装置34、無線部35及び36、並びに、有線IF37及び39は、例えば、バス38に接続されて相互に通信することが可能である。バス38の数は、1つでもよいし複数でもよい。
【0129】
プロセッサ31は、ノード3に複数備えられてもよい。また、ノード3における処理は、1つのプロセッサ31によって実行されてもよいし、複数のプロセッサ31によって実行されてもよい。1つ又は複数のプロセッサ31において、複数の処理が、同時に、並列に、又は、逐次に実行されてもよいし、その他の手法によって実行されてもよい。なお、プロセッサ31は、シングルコアプロセッサでもよいし、マルチコアプロセッサでもよい。プロセッサ31は、1つ以上のチップを用いて実装されてよい。
【0130】
ノード3が有する1つ又は複数の機能は、例示的に、プロセッサ31及びメモリ32等のハードウェアに、所定のソフトウェアを読み込ませることで実現される。なお、「ソフトウェア」は、「プログラム」、「アプリケーション」、「エンジン」、又は「ソフトウェアモジュール」といった他の用語に相互に読み替えられてもよい。
【0131】
例えば、プロセッサ31は、メモリ32及びストレージ33の一方又は双方に記憶されたデータの読み出し及び書き込みの一方又は双方を制御することで、プログラムを読み込んで実行する。なお、プログラムは、例えば、無線部35、無線部36、及び、有線IF37の少なくとも1つによる電気通信回線を介した通信によって、ノード3に提供されてもよい。
【0132】
プログラムは、ノード3における処理の全部又は一部をコンピュータに実行させるプログラムであってよい。プログラムに含まれるプログラムコードの実行に応じて、ノード3の1つ以上の機能が実現される。プログラムコードの全部又は一部は、メモリ32又はストレージ33に記憶されてもよいし、オペレーティングシステム(OS)の一部として記述されてもよい。
【0133】
プロセッサ31は、処理部の一例であり、例えば、OSを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ31は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)を用いて構成されてもよい。
【0134】
また、プロセッサ31は、例えば、プログラム及びデータの一方又は双方を、ストレージ33からメモリ32に読み出して各種の処理を実行する。
【0135】
メモリ32は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例であり、例えば、ROM、EPROM、EEPROM、RAM、SSDなどの少なくとも1つを用いて構成されてよい。なお、「ROM」は、「Read Only Memory」の略称であり、「EPROM」は、「Erasable Programmable ROM」の略称である。「EEPROM」は、「Electrically Erasable Programmable ROM」の略称であり、「RAM」は、「Random Access Memory」の略称であり、「SSD」は、「Solid State Drive」の略称である。
【0136】
メモリ32は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ、ワークメモリ、又は、主記憶装置と呼ばれてもよい。
【0137】
ストレージ33は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例であり、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フレキシブルディスク、磁気ストリップ等の少なくとも1つを用いて構成されてもよい。ストレージ33は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記録媒体は、例えば、メモリ32及びストレージ33の一方又は双方を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0138】
入出力(I/O)装置34は、ノード3の外部から信号の入力を受け付ける入力デバイス、及び、ノード3から外部へ信号を出力する出力デバイスの一例である。入力デバイスには、例示的に、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、及び、センサの1つ以上が含まれてよい。出力デバイスには、例示的に、ディスプレイ、スピーカ、及び、LED(Light Emitting Diode)のような発光デバイスの1つ以上が含まれてよい。
【0139】
ボタンには、例えば、電源ボタン及び/又はリセットボタンが含まれてよい。電源ボタンは、例えば、ノード3の起動及びシャットダウンのために操作される。リセット(又はリルート)ボタンは、例えば、ツリー経路の意図的なリセット、及び/又は、再構築(又は、リルート)を指示するために操作される。
【0140】
なお、入出力(I/O)装置34は、入力と出力とで個別の構成でもよい。また、入出力(I/O)装置34は、例えば、タッチパネル式のディスプレイのように、入力と出力とが一体の構成であってもよい。
【0141】
無線部35は、例示的に、端末装置7との間のアクセス回線における無線信号の送受信を行う。無線部35には、例えば、1つ以上のアンテナ350、図示を省略した、ベースバンド(BB)信号処理回路、MAC処理回路、アップコンバータ、ダウンコンバータ、及び、増幅器が含まれてよい。
【0142】
無線部35のBB信号処理回路には、例示的に、送信信号を符号化及び変調するための符号化回路及び変調回路、並びに、受信信号を復調及び復号するための復調回路及び復号回路が含まれてよい。
【0143】
アンテナ350は、例示的に、m個の信号を多重するm多重MIMO用アンテナであってよい。例えば、m=8であってもよいし、mは8と異なる正の整数であってもよい。
【0144】
無線部36は、例示的に、他のSN3との間のBH回線における無線信号の送受信を行う。なお、無線部36の内部の構成例については、後述する。
【0145】
無線部35及び無線部36は、それぞれ、無線通信部35及び無線通信部36と称されてもよい。
【0146】
有線IF37は、例示的に、バックボーンネットワーク5、及び/又は、上流ノード3との間で有線による信号の送受信を行う。また、有線IF39は、例示的に、端末装置7、及び/又は、下流ノード3との間で有線による信号の送受信を行う。有線IF37及び39には、例えば、イーサネット(登録商標)規格に準拠したネットワークインタフェースが用いられてよい。なお、有線IF37及び39は、少なくともCN3に備えられていればよく、SN3には備えられなくてもよい(別言すると、SN3にとってはオプションであってもよい)。ただし、BH回線の一部が有線接続される場合、有線IF37及び39が当該有線接続に用いられてよい。
【0147】
ノード3は、マイクロプロセッサ、DSP、ASIC、PLD、FPGAなどのハードウェアを含んで構成されてもよい。例えば、プロセッサ31は、これらのハードウェアの少なくとも1つを含んで実装されてよい。当該ハードウェアにより、図7A図7Cにて後述する各機能ブロックの一部又は全てが実現されてよい。
【0148】
なお、「DSP」は、「Digital Signal Processor」の略称であり、「ASIC」は、「Application Specific Integrated Circuit」の略称である。「PLD」は、「Programmable Logic Device」の略称であり、「FPGA」は、「Field Programmable Gate Array」の略称である。
【0149】
無線部36(無線通信部36)について説明する。
【0150】
例示的に、無線部36には、入出力(I/O)装置34からの入力データが、送信データ#1~送信データ#nのn系列(nは、1以上の整数)に分割されて入力される。ここで、nは、ノード3が同時に送信できる指向性方向の最大の数を表す。例えば、nが1の場合、ノード3は、1つの方向(例えば、1つの宛先のノード)に対してデータを送信する。nが2以上の場合、ノード3は、複数の方向(例えば、複数の宛先のノード)に対してデータを同時に送信する。
【0151】
送信デジタルBF制御部361は、例えば、n系列のそれぞれの送信データに対して、符号化及び変調処理を行い、n系列のデータ信号を生成する。送信デジタルBF制御部361は、例えば、n系列のそれぞれの送信指向性の方向にビームを形成するための信号の重み付け(送信ウエイトの乗算)を施す。
【0152】
Digital to Analog Converter(DAC)362及びRF送信部363は、例えば、n個のデータ信号の系列のそれぞれに対応して設けられる。
【0153】
DAC362には、例えば、重み付けされたn系列のデータ信号のそれぞれが入力される。DAC362は、例えば、入力されたデータ信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換し、RF送信部363へ出力する。
【0154】
RF送信部363は、例えば、DAC362から入力されるベースバンドのアナログ信号を、搬送波周波数帯のアナログ信号に変換する。
【0155】
RF送信部363の出力は、例えば、送信アナログBF制御部364において、電波を送出するアンテナ素子(アンテナエレメント)で構成されるアンテナ(サブアレイ)360の各アンテナ素子に供給されるアナログ信号へ変換される。なお、送信アナログBF制御部364には、例えば、電力分配器、移相器、増幅器が含まれてよい。また、送信アナログBF制御部364は、後述するアンテナ360の構成に応じた数のアナログ信号を出力してよい。例えば、アンテナ360がn個のサブアレイを有し、各サブアレイが256素子のアンテナ素子を有する場合、送信アナログBF制御部364は、n×256のアナログ信号を出力してよい。
【0156】
デュプレクサ365は、例えば、送信信号と受信信号とを分離する。例えば、アナログBF制御部364から出力されるアナログ信号は、デュプレクサ365を通して、アンテナ360へ供給される。
【0157】
アンテナ360は、例えば、n個のサブアレイを有する。各サブアレイは、例えば、256素子のアンテナ素子を有する。例えば、nは、4であってもよいし、4と異なる正の整数であってもよい。また、各サブアレイのアンテナ素子数は、256素子でもよいし256素子と異なる素子数であってもよい。また、アンテナ素子数は、サブアレイ毎に異なってもよい。サブアレイ当たりのアンテナ素子数が多いほど、サブアレイの指向性はより狭く鋭くなる。
【0158】
例えば、nが4の場合、デュプレクサ365を通して供給される信号は、4つのサブアレイから、4方向に各々の指向性を持って送出される。
【0159】
n個のサブアレイを有するアンテナ360において受信された信号は、例えば、デュプレクサ365を通して、受信アナログBF制御部366へ入力される。受信アナログBF制御部366には、アンテナ360の構成に応じた数のアナログ信号が入力されてよい。例えば、アンテナ360がn個のサブアレイを有し、各サブアレイが256素子のアンテナ素子を有する場合、受信アナログBF制御部366には、n×256のアナログ信号が入力されてよい。
【0160】
受信アナログBF制御部366は、例えば、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier(LNA))、移相器を有する。受信アナログBF制御部366は、形成する受信指向性に応じた受信信号の位相を合わせる制御(調整)を行う。受信アナログBF制御部366は、処理を施した受信信号を受信したサブアレイに応じてn個の信号の系列に分けて、RF受信部367へ出力する。
【0161】
RF受信部367及びAnalog to Digital Converter(ADC)368は、例えば、n個の信号の系列のそれぞれに対応して設けられる。
【0162】
RF受信部367は、例えば、受信アナログBF制御部366から入力される搬送波周波数帯のアナログ信号を、ベースバンドのアナログ信号へ変換する。
【0163】
ADC368は、例えば、RF受信部367から入力されるベースバンドのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0164】
受信デジタルBF制御部369は、例えば、n個のデジタル信号の系列のそれぞれの受信指向性の方向に対応付けられた信号の重み付け(受信ウエイトの乗算)を施し、n個のデジタル信号の系列を分離処理する。受信デジタルBF制御部369は、例えば、n系列のそれぞれの信号に対して、復調処理及び復号処理を行い、n系列の受信データを生成し、n系列の受信データを入出力(I/O)装置34に出力する。
【0165】
受信デジタルBF制御部369は、例えば、チャネルをスキャンする時間において受信され、信号処理によって出力された信号を、RSSI測定部36aに出力する。
【0166】
RSSI測定部36aは、RSSIを測定し、測定値を、制御部40へ出力する。
【0167】
なお、図6で後述するBF制御(BFの指向性の決定)において、送受信の最適な指向性の組み合わせを決定するために、セクタスイープと呼ばれる送信指向性方向(送信する側の無線ノードの送信指向性方向)と受信指向性方向(受信する側の無線ノードの受信指向性方向)の決定処理が行われる。この決定処理においては、送信データに、例えば、電力測定用の固有データパターンが用いられる。
【0168】
無線ノード3のプロセッサ31、メモリ32、ストレージ33などを含む構成は、制御部40と称されてよい。制御部40は、例えば、無線通信部36のレイヤ2.5の処理を含むデータ送受信の動作、無線通信部35のデータ送受信の動作、有線IF37、38を介したデータ送受信の動作を制御する。制御部40の構成については後述する。
【0169】
<BF制御の例>
次に、上述したBF制御の一例について説明する。図6は、一実施の形態に係るBF制御の一例を示す図である。BF制御では、無線ノードが、BFの指向性を決定する。図6に示すBF制御は、BFに関するトレーニングを実行する制御の一例である。なお、図6に示すBF制御は、例えば、無線ノード3の制御部40の制御によって実行されてよい。
【0170】
例えば、BF制御において、無線ノードは、互いに異なる方向への指向性を有する複数のビームの中から、通信相手である無線ノードへの信号の送信に適した送信ビームを決定する。また、BF制御において、無線ノードは、互いに異なる方向への指向性を有する複数の受信ビームの中から、通信相手である無線ノードから送信される信号の受信に適した受信ビームを決定する。
【0171】
例えば、図6では、送信を開始する送信開始ノード(Initiatorと称されてよい)と、送信開始ノードが送信する信号の宛先である宛先ノード(Responderと称されてよい)との間において、送受信される信号が示される。
【0172】
例えば、図6の例では、64通りの方向への指向性を有する送信ビーム(送信指向性)、および、64通りの方向への指向性を有する受信ビーム(受信指向性)が用意される。そして、無線ノードは、各64通りの方向から最適な方向の送信ビーム及び受信ビームを1つずつ決定する。図6の例では、STEP1からSTEP4の4つのステップにおいてその決定処理が実行される。なお、図6では、最適な方向のビーム(最適ビーム)が、64通りの方向へ指向性を有するビームの中で、受信側において最大の受信電力が得られるビームである例を説明する。
【0173】
STEP1では、送信開始ノードが、あらかじめ用意した64方向に時分割で(例えばシーケンシャルに)指向性を切り替えて、信号を送信する。この処理は、セクタスイープと称されてよい。送信開始ノードによって送信される信号には、例えば、受信電力を測定する対象となるデータパターン系列が含まれてよい。宛先ノードは、最大ビーム幅で信号の受信を待ち受け、送信開始ノードのセクタスイープによって送信された信号を、最大ビーム幅で受信する。なお、最大ビーム幅の受信は、例えば、指向性を有さないビームの受信、又は、オムニ指向性を有するビームの受信であってもよい。そして、宛先ノードは、64通りの指向性に対する受信電力を測定し、測定結果を記憶する。記憶される測定結果は、64通りの指向性に対する受信電力の全てでもよいし、その一部、例えば、最も受信電力が大きい指向性に関する情報(例えば、ビームのそれぞれに付されるインデックス番号の1つ(例えば、#i))でもよい。
【0174】
STEP2では、STEP1における信号の送信側と受信側とを入れ替えて、STEP1と同様の処理が実行される。例えば、宛先ノードが、あらかじめ用意した64方向に時分割で指向性を切り替えて、信号を送信する。宛先ノードによって送信される信号には、例えば、受信電力を測定する対象となるデータパターン系列が含まれてよい。あるいは、宛先ノードによって送信される信号には、STEP1での宛先ノードの測定結果(例えば、最も受信電力が大きい指向性を有するビームのインデックス番号#i)が含まれてよい。送信開始ノードは、最大ビーム幅で信号の受信を待ち受け、宛先ノードのセクタスイープによる送信信号を、最大ビーム幅で受信する。そして、送信開始ノードは、64通りの指向性に対する受信電力を測定し、測定結果を記憶する。記憶される測定結果は、64通りの指向性に対する受信電力の全てでもよいし、最も受信電力が大きい指向性に関する情報(例えば、ビームのそれぞれに付されるインデックス番号の1つ(例えば、#r)でもよい。また、送信開始ノードは、受信した信号に含まれる、STEP1での宛先ノードの測定結果を記憶する。
【0175】
STEP3では、送信開始ノードが、STEP2で報告を受けた測定結果に基づいて、送信ビームを形成し、宛先ノードに対して信号を送信する。例えば、送信開始ノードは、STEP1において最も受信電力が大きい指向性である送信指向性に対応するインデックス番号のビーム#iを用いて、信号を送信する。送信開始ノードによって送信される信号には、STEP2での送信開始ノードの測定結果(例えば、最も受信電力が大きい指向性を有するビームのインデックス番号#r)が含まれてよい。宛先ノードは、送信開始ノードが送信した信号を、最大ビーム幅で受信する。宛先ノードは、受信した信号に含まれる、STEP2での送信開始ノードの測定結果を記憶する。
【0176】
STEP4では、宛先ノードは、指向性#rを用いて、正常にBF制御処理(すなわち指向性#iと指向性#rの確定処理)が完了したこと確認する応答(Acknowlegdement(ACK))を送信開始ノードに返送する。送信開始ノードは、ビーム#iでACKを受信してBF制御処理の完了を確認する。
【0177】
なお、図6に示すBF制御処理では、信号送信においてセクタスイープ(送信セクタスイープ)を実行することによって、最適な送信ビームが決定される。そして、最適な送信ビームに対応する指向性を有する受信ビームが、最適な受信ビームであると決定される。
【0178】
本実施の形態は、図6に示すBF制御処理に限定されない。例えば、各ノードは、送信ビームの決定とは別に、受信ビームを決定してよい。例えば、信号受信においてセクタスイープ(受信セクタスイープ)を実行することによって、最適な受信ビームが決定されてもよい。例えば、受信セクタスイープでは、宛先ノードが、あらかじめ用意した64方向に時分割で指向性を切り替えて、送信開始ノードが最大ビーム幅を用いて送信した信号を受信する。そして、宛先ノードは、最も受信電力が大きい指向性を有するビームを最適な受信ビームに決定してよい。そして、受信セクタスイープでは、宛先ノードと送信開始ノードとで、信号の送受信を入れ替えて、送信開始ノードが、最も受信電力が大きい指向性を有するビームを最適な受信ビームに決定してよい。
【0179】
図6に例示したBF制御処理は、アクセス回線においてBF伝送を適用する場合、ノードと端末との間で実行されてもよい。この場合、BF制御処理は、ノードと端末との間でデータ送受信が発生する毎に、データ送受信の前(あるいは、データ送受信が行われない間)に実行されてよい。
【0180】
一方で、本実施の形態では、BH回線においてBF伝送を適用する。この場合、BF制御処理を含むホップリンクのリンクアップは、データ転送とは独立して、所定の時間間隔(所定の頻度)で実行されてよい。BF制御処理は、各無線ノード間のビームの指向性#iおよび指向性#rの情報を決定(又は確定)する処理に対応する。決定したビームの指向性#iおよび指向性#rの情報は、BF制御情報と称されてよい。また、リンクアップは、データ転送が実行される場合に、データ転送に用いる情報(例えば、BF制御情報)が各無線ノードにおいて既知であり、データ転送の準備が完了した状態にすることを指す。
【0181】
所定の時間間隔(所定の頻度)でBF制御処理を含むホップリンクのリンクアップが実行されることによって、BF制御情報が更新できる。
【0182】
このように、ホップリンクのリンクアップを実行し、BF制御情報を含むデータ転送に用いる情報を更新する処理は、メッシュリンク確立と称されてよい。本実施の形態では、このメッシュ確立にBF制御処理が含まれることによって、無線ノード間のデータ転送が発生した場合に、即座に、BF伝送を適用したデータ転送を実行できる。メッシュリンク確立は、周辺ノードとの無線ビームリンクの確立と捉えてもよい。
【0183】
また、このように、BF制御情報が決定(又は更新)された場合、キャリアセンスにおいて使用する測定用受信ビームが決定されてよい。
【0184】
例えば、送信開始ノードが、BF制御処理によって、或る宛先ノードに対する最適な送信ビームを決定した場合、当該宛先ノードへ信号を送信する前に実行するキャリアセンスにおいて使用する測定用受信ビームを、当該送信ビームに対応する受信ビームに設定する。例えば、当該送信ビームに対応する測定用受信ビームは、当該送信ビームの方向と180度を成す方向の測定用受信ビームであってよい。あるいは、当該送信ビームに対応する測定用受信ビームの方向と、当該送信ビームの方向との成す角度は、90度より大きく180度以下であってよい。
【0185】
次に、無線ノード3の制御部40の構成例について説明する。
【0186】
図7A、一実施の形態に係る無線ノード3の制御部40の機能的な構成例を示すブロック図である。制御部40は、中継経路制御部400と、無線チャネル割当部450とを有する。
【0187】
中継経路制御部400は、レイヤ2(media access control(MAC)レイヤ)と、レイヤ3(Internet Protocol(IP)レイヤ)との間の処理(例えば、レイヤ2.5の処理)を実行する。無線チャネル割当部450は、レイヤ2の処理の少なくとも一部を実行する。
【0188】
図7Bは、図7Aに示す中継経路制御部400の機能的な構成例を示すブロック図である。中継経路制御部400は、スキャン処理部401、ノード管理部402、フレーム転送処理部403、経路制御部404、メッシュリンク確立部405より構成される。
【0189】
スキャン処理部401は、周辺ノードのスキャンを行いBHネットワークにおけるメッシュリンクをリンクアップさせる処理を行う。本実施の形態では、無線ノード間のデータ送受信にBFを適用するため、スキャン処理部401は、後述のメッシュリンク確立部405と連携して、BF制御処理を含めたスキャンを実行する。
【0190】
ノード管理部402は、スキャン処理部401での処理の結果、無線ノード3が把握した周辺ノードに関する情報を記憶する。
【0191】
また、ノード管理部402は、中継データ転送を行う場合の転送先(宛先)ノードのノード番号を記憶したルーティングテーブルを記憶する。例えば、ノード管理部402は、経路制御での中継経路更新がある場合には、ルーティングテーブルを更新する。ルーティグテーブルは、コアノードの方向に向かう経路(上りリンクの経路)における転送先ノードを記憶した上流方向ルーティングテーブルと、コアノードと反対方向に向かう経路(下りリンクの経路)における転送先ノードを記憶した下流方向ルーティングテーブルとを含む。
【0192】
メッシュリンク確立部405は、スキャン処理部401が実行する周辺ノードのスキャン処理の中で、図6で説明したBF制御を適用してメッシュリンクのリンクアップを実行するためのBF制御処理機能をスキャン処理部401に提供する。メッシュリンク確立部405とスキャン処理部401との連携にて、メッシュリンクのリンクアップが所定の頻度(周期)で実行される。
【0193】
メッシュリンク確立部405は、BF制御処理部4051とBFパラメータ格納部4052とを有する。
【0194】
BF制御処理部4051は、BF制御を適用してメッシュリンクのリンクアップを実行するためのBF制御処理機能をスキャン処理部401に提供する。
【0195】
BFパラメータ格納部4052は、BF制御を適用してメッシュリンクのリンクアップを実行して得られる、パラメータを格納する。当該パラメータは、便宜的に「BFパラメータ」あるいは「メッシュリンクパラメータ」と称されてよい。メッシュリンクパラメータには、例えば、送信BFに関する制御情報および受信BFに関する制御情報が含まれてよい。また、メッシュリンクパラメータには、例えば、周辺ノードのそれぞれに対する最適な送信ビームのインデックスと最適な受信ビームのインデックスとが含まれてよい。
【0196】
電波環境が時々刻々と変動する中で、最新のメッシュリンクパラメータを更新できることで、無線ノード間のフレーム転送において、的確なBF伝送を実行できる。また、後述する経路制御部404の実行する経路制御処理において送受信される経路制御パケットは、ブロードキャストに代えて、周辺無線ノードとの間でBF送受信を適用したユニキャストによって実行することも可能である。したがって、より的確な経路構築が可能である。
【0197】
経路制御部404は、メッシュリンクにおいて経路制御パケットを伝送することによって、メッシュリンク上での経路の構築及び更新を制御する。経路の構築及び更新は、例えば後述するように、メッシュリンクを成す複数の無線リンクのうち、経路に登録する(又は経路から除外する)無線リンクの情報を選択する(又は当該選択を解除する)ことによって行われてよい。
【0198】
経路制御部404は、経路メトリックと称される経路の品質を表す指標に基づいて、メッシュリンクにおける動的経路を決定する。以下では、経路メトリックの値が小さい方が、経路の回線品質が良好であることを示す例を説明する。例えば、経路制御部404は、ノード間の回線品質の評価を、周辺の無線ノードが送信した経路制御パケットのRSSI測定を行うことによって判定する。経路制御パケットには、周辺ノードまでに至る累積の経路メトリックが含まれる。
【0199】
経路制御部404の経路制御パケット生成部4041は、経路制御パケットを生成する。経路制御パケットは、BHネットワークにおいて、CN3において生成されてCN3を起点に各ノード3に伝搬させる制御信号の一例である。
【0200】
経路制御部404の経路メトリック計算部4042は、RSSI測定で得られる周辺ノードと自ノードの間のホップリンクの経路メトリックを決定する。経路メトリック計算部4042は、経路制御パケットに含まれる累積の経路メトリックと、周辺ノードと自ノードとの間の経路メトリックとに基づいて、自無線ノードまでに至る累積の経路メトリックを計算する。
【0201】
経路制御部404の経路更新部4043は、経路メトリック計算部4042が計算した経路メトリックと、経路更新部4043において記憶されている経路メトリックとを比較し、経路を更新するか否かを判断する。経路更新部4043は、計算した経路メトリックが記憶した経路メトリックよりも小さい場合、経路を更新する、と判定する。計算した経路メトリックが記憶した経路メトリックよりも小さい場合とは、計算した経路メトリックに対応する経路の回線品質が、記憶した経路メトリックに対応する経路よりも良好な無線リンクのマルチホップで構成されることを表す。
【0202】
この経路制御の手順は、例えば、非特許文献1に記載の方式での経路制御を踏襲できる。但し、BH回線において、高周波数帯でBFを適用した送受信を行うことを対象とする場合、経路制御部404は、例えば、以下の2点の機能を有してよい。
【0203】
(1)経路制御パケットの送受信において、図6で説明したBF制御によって決定されるBF制御情報を用いたBF伝送が適用される。
【0204】
経路制御において、経路制御パケットの送受信が、ブロードキャストに代えて、周辺ノードとの間でBFを適用したユニキャストで実行されることによって、より的確な経路の構築が実現できる。
【0205】
(2)経路制御の処理において、ノード間の無線リンクの回線品質が劣化した場合に、劣化した無線リンクを含まないマルチホップの経路が中継伝送経路として決定される。
【0206】
高周波数帯では、電波の直進性が強く、送信点と受信点の間に建造物、樹木、人物、車両といった遮蔽物が存在する場合に、送信点から受信点に至る電波伝搬の損失が増加し易い。そのため、送信点と受信点との間の無線リンクの回線品質が劣化し、無線リンクが切断してしまう場合に備えて、例えば、経路制御部404に含まれる経路更新部4043は、経路の更新を行う。本実施の形態においては、主として、ミリ波帯を例示して説明したが、この帯域に限定されない。例えば、ミリ波帯や、更に高周波帯域においては、無線ネットワークの或る箇所での電波の短時間での遮断によって、無線ネットワークの通信が遮断する事態を起こす場合がある。本実施の形態によれば、周期的もしくは非周期的に、最適なツリー経路を更新するので、ミリ波帯もしくはそれよりも高周波の帯域の通信環境において適用すると好適である。例えば、通信環境を実現した場合に、通常であれば良好に通信できていたとしても、信号機によって停止した車両によって通信環境が劣化したり、通行人がBFを適用した経路を横切る間、通信環境が劣化するような場合がある。このような一時的な通信環境の劣化の場合、マイクロ波帯などの、より低周波数帯を適用している環境であれば、一時的な通信速度の低下で済むところ、ミリ波帯では、通信の遮断となる場合がある。したがって、ミリ波帯もしくはそれよりも高周波帯域の通信環境において、本実施の形態を適用することが好適である。
【0207】
中継経路の決定及び更新は、図8以降にて詳細は後述するが、コアノードが所定の周期で経路制御パケットを送信することにより、実行される。なお、所定の周期は、任意に設定されてよい。
【0208】
経路更新処理は、無線リンクにおいて経路制御パケットを送受信して行う処理であるため、経路制御パケットの送信周期を可変に制御することによって、経路更新処理の頻度を適応的に抑えることができ、BH回線のスループットの低下を抑えることができる。
【0209】
中継経路を構築(決定)する処理は、データ転送処理とは独立に、データ転送が発生していない時間帯などに行われてよい。中継経路を構築(決定)する処理の実行頻度が少なくて済むため、BH回線のスループットの低下への影響が抑制できる。
【0210】
フレーム転送処理部403は、上位レイヤ(レイヤ3以上)からレイヤ2.5に降りてくる転送データをレイヤ2.5の制御情報ヘッダを付加して下位レイヤ(レイヤ2以下)で転送するフレームに整える処理を実行する。
【0211】
図7Cは、図7Aに示す無線チャネル割当部450の機能的な構成例を示すブロック図である。無線チャネル割当部450は、指向性受信設定部451と、RSSI測定部452と、CCA判定部453と、RTS/CTS処理部454と、を有する。
【0212】
指向性受信設定部451は、パケットを転送する宛先ノードへの送信指向性と、180度反対の指向性を設定する。
【0213】
RSSI測定部452は、指向性受信設定部451によって設定された指向性にて判定対象のチャネルのRSSIを測定する。
【0214】
CCA判定部453は、測定したRSSIと閾値との比較結果に基づいて、判定対象のチャネルが空きチャネルか否かを判定する。
【0215】
例えば、CCA判定部453は、測定したRSSIが式(7)を満たす場合、判定対象のチャネルが空きチャネルである、と判定する。
【0216】
なお、式(7)における、CCAthは、例えば、式(4)によって表される。
【0217】
RTS/CTS処理部454は、パケットの転送開始を許可するノードを、送信ノードと受信ノードとの間で確認する処理を行う。
【0218】
(CNの動作例)
次に、CNの動作例について説明する。図8は、一実施の形態に係るコアノード(CN)の動作例を示すフローチャートである。図8のフローチャートは、例えば、CNの制御部40において実行されると捉えてよい。
【0219】
制御部40は、経路制御パケットの送信周期を設定する(S101)。
【0220】
定期的に経路制御パケットを送信する場合の送信周期は、一定でもよいし、本実施の形態において構築される経路は、漸近的に安定することから、図8のフローチャートが実行される回数に応じて変更されてもよい。所定の時刻が、「特定のタイミング」に設定されてもよいし、無線通信システムのユーザによって設定されてもよい。また、制御部40は、或る条件に基づいて、経路制御パケットの送信周期を制御してもよい。例えば、制御部40は、ホップリンクの回線品質劣化(回線切断など)の頻度を計数し、計数した頻度に応じて、経路制御パケットの送信周期を可変に制御してもよい。例えば、制御部40は、回線品質劣化の頻度が多いほど、経路制御パケットの送信周期をより短く設定する。例えば、ホップリンクの回線品質劣化の頻度は、後述するセルフヒーリング処理において計数されてよい。
【0221】
コアノードが各スレーブノード宛にスレーブノードが正常に動作しているかのチェックを行う作業であるセルフヒーリング処理(S105に対応)によって計数されてよい。また、無線通信システム内で提供されているアプリケーションの、一時的な回線切断時間やそれに伴う遅延時間を小さく抑えるべき要求度を表すQoS(Quality of Service)が高い場合には経路制御パケット送信周期をより短くするという可変制御を適用してもよい。
【0222】
制御部40は、例えば、特定のイベントが検出されたか否かを監視する(S102)。「特定のイベント」には、例えば、CNが起動されたこと、リセットボタンが操作されたこと、及び、特定のタイミングが到来したこと、が含まれてよい。「特定のタイミング」の一例は、例えば、経路制御パケットを定期又は不定期に送信するために設定された送信タイミングである。
【0223】
特定のイベントが検出されない場合(S102にてNO)、S104の処理が実行される。
【0224】
特定のイベントが検出された場合(S102にてYES)、CNの制御部は、経路制御パケットを生成し、例えば無線通信部を通じて、周辺ノード情報を基に識別される周辺SNに経路制御パケットを送信する(S103)。経路制御パケットは、ブロードキャストされてもよいし、BF伝送を用いてユニキャストされてもよい。
【0225】
例えば、CNの起動が検出された場合、及び、経路構築パケットの送信タイミングが検出された場合には、経路構築パケットが周辺SNに送信される。リセットボタンの操作が検出された場合、及び、リセットパケットの送信タイミングが検出された場合には、リセットパケットが周辺SNに送信される。
【0226】
次に、制御部40は、セルフヒーリング処理の実行タイミングか否かを判定する(S104)。セルフヒーリング処理とは、コアノードが、スレーブノードが正常に動作しているか否かを確認する処理である。例えば、セルフヒーリング処理において、コアノードは、スレーブノード宛にセルフヒーリング用パケット(ハローパケットと称されてよい)を送信し、スレーブノードからの応答に基づいて、スレーブノードが正常に動作しているか否かを確認する。
【0227】
セルフヒーリング処理の実行タイミングでない場合(S104にてNO)、S107の処理が実行される。
【0228】
セルフヒーリング処理の実行タイミングである場合(S104にてYES)、制御部40は、セルフヒーリングを実行する(S105)。そして、制御部40は、セルフヒーリングの結果に基づいて、ホップリンクの回線品質の劣化の頻度(回数)を検出する(S106)。
【0229】
次に、制御部40は、セルフヒーリングの実行期間が経過(タイムアウト)したか否かを判定する(S107)。
【0230】
セルフヒーリングの実行期間が経過(タイムアウト)していない場合(S107にてNO)、S104の処理が実行される。
【0231】
セルフヒーリングの実行期間が経過(タイムアウト)した場合(S107にてYES)、制御部40は、S102において特定のイベントが検出されていたか否かを判定する(S108)。別言すると、制御部40は、経路制御パケットを送信したか否かを判定する。
【0232】
S102において特定のイベントが検出されていなかった場合(S108にてNO)、S101の処理が実行される。S102において特定のイベントが検出されていた場合(S108にてYES)、制御部40は、経路制御処理の実行期間が経過(タイムアウト)したか否かを判定する(S109)。
【0233】
経路制御処理の実行期間が経過(タイムアウト)していない場合(S109にてNO)、S101の処理が実行される。
【0234】
経路制御処理の実行期間が経過(タイムアウト)した場合(S109にてYES)、制御部40は、中継経路を設定する(S110)。例えば、制御部40は、上流側および下流側の隣り合う現在のホップリンクの回線品質の劣化を検出しない間、通常の中継経路を設定する。
【0235】
制御部40は、キャリアセンスを実行し、空きチャネルを判定する(S111)。なお、S111では、例えば、図4に示したフローチャートが実行されてよい。
【0236】
そして、制御部40は、データパケットの処理(データ中継転送)を開始してよい(S112)。経路制御処理の実行期間が経過(タイムアウト)した場合、コアノードとスレーブノードとの間のデータ中継経路が、最新の状態に更新される。なお、経路制御処理の結果、経路制御処理の前後でデータ中継経路が変わらなくてもよい。
【0237】
次に、制御部40は、ホップリンクの回線品質の劣化(例えば、劣化の頻度(回数))を検出する(S113)。例えば、制御部40は、セルフヒーリング処理におけるスレーブノードからの応答に基づいて、回線品質の劣化の頻度を検出してよい。
【0238】
ホップリンクの回線品質の劣化が検出されなかった場合(S113にてNO)、フローは終了する。ホップリンクの回線品質の劣化が検出された場合(S113にてYES)、制御部40は、ホップリンク回線品質の劣化の頻度を更新する(S114)。そして、フローは終了する。
【0239】
以上のように、コアノードは、周辺ノードとの間においてリンクアップした複数の無線リンクのそれぞれに経路制御パケットを送信(例えば、BF伝送によるユニキャスト)することによって、BHネットワークを構成するスレーブノードのそれぞれに経路制御パケットを伝搬させる。
【0240】
伝搬品質指標(リンクメトリック)の非限定的な一例としては、無線信号の受信電力又は受信強度(例えば、RSSI;Received Signal Strength Indicator)、電波伝搬損失、及び、伝搬遅延等が挙げられる。また、例えば、ホップリンク毎に適用する伝送技術仕様が異なる場合、RSSIがリンクメトリック(ホップリンクの回線品質を反映した指標)の計算に用いられる代わりに、RSSIと伝送技術仕様とから対応付けられるリンクスループットがリンクメトリックの計算に用いられてもよい。リンクスループットを決定づける伝送技術仕様の一例としては、無線規格(802.11n、802.11ac、802.11ax、5GNR(第5世代移動通信仕様;5G New Radio))、MIMOストリーム数、適応変調方式などが挙げられる。例えば、RSSIが2つのホップリンクの間で同一であっても、無線規格が2つのホップリンクの間で異なっている場合、リンクスループットは2つのホップリンクの間で異なる。このような場合に、リンクスループットをリンクメトリックの計算に用いることによって、構築される経路の回線品質の信頼性を向上できる。なお、リンクスループットがリンクメトリックの計算に用いる例は、回線品質が低いほどリンクメトリックの値が小さい例に該当してよい。
【0241】
また、一部のホップリンクの伝送技術に、無線伝送に追加あるいは代替で、有線LANケーブル、または、Power Line Communication(PLC)などの有線伝送が適用される場合も考えられる。このように、ホップリンク毎に適用する伝送技術仕様が異なる場合に、リンクメトリックまたは中継経路に含まれる複数のホップリンクに対するリンクメトリックの総合的な指標である経路メトリックの計算にリンクスループットを用いることによって、より的確な回線品質の指標を計算できる。より的確な回線品質を用いることによって、例えば、リンクスループットを用いない場合よりも、回線品質の良い経路を構築できる場合がある。
【0242】
例えば、CNを起点に信号(例えば、制御信号)を送信することで、制御信号の送信ノードと受信ノードとの間の無線区間毎に、当該無線区間の電波伝搬損失を受信ノードにおいて求めることができる。
【0243】
そして、受信ノードのそれぞれが、求めた電波伝搬損失の情報を、制御信号に含めて送信することで、制御信号が伝搬した無線区間の累積的な電波伝搬損失の情報(別言すると、累積値)を、ノード間で伝達できる。
【0244】
個々のノードは、例えば、制御信号の送信元である上流ノード候補毎に、累積的な電波伝搬損失に基づいて経路メトリックを計算し、上流ノード候補の中から、経路メトリックが例えば最小を示すノードを1つ選ぶ。これにより、電波伝搬損失が最小となるツリー構造の経路が構築される。個々のノードは、メモリ32もしくはストレージ33の少なくとも一方に、選んだ転送先のノード情報、もしくは、ツリー構造の中継経路におけるBF送信のためのパラメータ情報のいずれか、もしくは、両方を書き込んでよい。ここで、例えば、転送先のノード情報、もしくは、パラメータ情報がサーバに記憶される場合、個々のノードは、ツリー構造の中継経路を使用するためにサーバから情報を読み出すことによって、タイムラグが生じる。タイムラグ無しに瞬時にツリー構造の中継経路を構成するためには、転送先のノード情報、及び/又は、パラメータ情報は、個々のノードが有する記憶媒体を用いて記憶されることが望ましい。個々のノードが記憶する情報は、上記の転送先のノード情報、及び/又は、パラメータ情報に限定されなくてよい。
【0245】
なお、本実施の形態におけるCN3の中継経路構築の処理は、図8に示す例に限定されない。例えば、中継経路は、予め設定されたものであってもよい。この場合、CN3は、中継経路構築に係る処理(例えば、S101~S110の処理)を行わなくてよい。
【0246】
(SNの動作例)
図9A図9Bは、一実施の形態に係るスレーブノード(SN)の動作例を示すフローチャートである。図9A図9Bのフローチャートは、SNの制御部40において実行されると捉えてよい。
【0247】
SNは、例えばBH回線の無線通信部36においてセルフヒーリングのハローパケットが受信されるか否かを判定する(S201)。
【0248】
セルフヒーリングのハローパケットが受信されない場合(S201にてNO)、S203の処理が実行される。
【0249】
セルフヒーリングのハローパケットが受信された場合(S201にてYES)、SNの制御部40は、セルフヒーリングの結果をCNへ報告する(S202)。
【0250】
次に、制御部40は、例えばBH回線の無線通信部36において経路制御パケットが受信されるか否かを判定する(S203)。
【0251】
経路制御パケットが受信されなかった場合(S203にてNO)、S201の処理が実行される。経路制御パケットが受信された場合(S203にてYES)、SNの制御部40は、経路制御パケットの種別を確認する。例えば、制御部40は、受信した経路制御パケットが、リセットパケットであるか否かを確認する(S204)。
【0252】
受信した経路制御パケットが、リセットパケットの場合(S204にてYES)、制御部40は初期化処理を行う(S205)。初期化処理には、例えば、以下の処理が含まれてよい。
・周辺ノード情報において有効なツリー経路に選択しているリンクの選択解除
・記憶している経路メトリックの初期値(例えば、最大値)への初期化
【0253】
初期化処理の後、制御部40は、例えば、受信したリセットパケットを周辺SNへ送信する(S206)。そして、S201の処理が実行される。なお、リセットパケットには、識別子(ID)が含められてよい。ノードのそれぞれは、受信したリセットパケットに含まれるIDを記憶しておいてよい。また、リセットパケットは、ユニキャストで送信されてもよいし、マルチキャストで送信されてもよい。
【0254】
ノードのそれぞれは、受信したリセットパケットのIDが、記憶したIDと一致する場合、別言すると、過去に送信(転送)したリセットパケットであることを示す場合、当該リセットパケットの更なる送信は行わない。これにより、リセットパケットがBHネットワークにおいてループすることを防止できる。
【0255】
一方、受信した経路制御パケットがリセットパケットでない場合(S204にてNO)、制御部40は、当該経路制御パケットが経路構築パケットであるか否かを確認する(S207)。
【0256】
受信した経路制御パケットが経路構築パケットではない場合(S207にてNO)、S201の処理が実行される。受信した経路制御パケットが経路構築パケットの場合(S207にてYES)、制御部40は、周辺ノード情報を参照する(S208)。
【0257】
制御部40は、経路構築パケットを受信したリンクの伝搬品質指標(例えば、電波伝搬損失)を計算する(S209)。
【0258】
そして、制御部40は、経路メトリックを計算する(S210)。例えば、制御部40は、計算した電波伝搬損失、又は、置換した伝搬品質指標と、受信した経路構築パケットに含められている伝搬品質指標と、を加算することによって、累積的な電波伝搬損失を新経路メトリックとして計算する。
【0259】
そして、制御部40は、新経路メトリックと、新経路メトリックが計算される前に記憶していた旧経路メトリックと、を比較して、経路メトリックの更新要否を判断する(S211)。
【0260】
例えば、制御部40は、旧経路メトリックよりも新経路メトリックの方が小さい場合に、旧経路メトリックを新経路メトリックに更新すると判断する(S211にてYES)。なお、更新しないと判断された場合(S211にてNO)、制御部40は、S201の処理を実行してよい。
【0261】
制御部40は、周辺ノード情報において新経路メトリックに対応する上流の無線リンクを有効な経路に選択する(選択リンクの更新)(S212)。
【0262】
選択リンクの更新の後、制御部40は、例えば、新経路メトリックを含む経路構築パケットを、周辺ノード情報において識別される周辺SNへ送信する(S213)。例えば、経路構築パケットは、マルチキャストで送信されてもよいし、BF伝送でのユニキャストで送信されてもよい。
【0263】
その後、制御部40は、一定時間が経過(タイムアウト)したか否かを監視する(S214)。タイムアウトが検出されない場合(S214にてNO)、S201の処理が実行される。
【0264】
タイムアウトが検出された場合(S214にてYES)、制御部40は、中継経路を設定する(S215)。例えば、制御部40は、上流側および下流側の隣り合う現在のホップリンクの回線品質の劣化を検出しない間、通常の中継経路を設定する。
【0265】
制御部40は、キャリアセンスを実行し、空きチャネルを判定する(S216)。なお、S111では、例えば、図4に示したフローチャートが実行されてよい。
【0266】
そして、制御部40は、データパケットの送信処理(中継転送)を開始してよい(S217)。データパケットの送信処理は、例えば、宛先ノードへのデータパケット転送処理であってよい。データパケットの送信処理は、中継転送が行われる場合の転送先(宛先)のノード番号を記憶したルーティングテーブルの中継経路に従って実行される。ルーティグテーブルは、下流方向ルーティングテーブルと上流方向ルーティングテーブルとを含んでよい。
【0267】
次に、制御部40は、ホップリンクの回線品質の劣化(例えば、劣化の頻度(回数))を検出する(S218)。例えば、制御部40は、セルフヒーリング処理におけるスレーブノードからの応答に基づいて、回線品質の劣化の頻度を検出してよい。
【0268】
ホップリンクの回線品質の劣化が検出されなかった場合(S218にてNO)、フローは終了する。ホップリンクの回線品質の劣化が検出された場合(S218にてYES)、制御部40は、ホップリンク回線品質の劣化の頻度を更新する(S219)。そして、フローは終了する。
【0269】
なお、受信した経路制御パケットがリセットパケット及び経路構築パケットのいずれでもない場合、制御部40は、処理を経路制御パケットの受信監視処理に移行してよい。
【0270】
また、計算した新経路メトリックが旧経路メトリック以上であり、選択リンクの更新が不要と判断した場合も、制御部40は、処理を経路制御パケットの受信監視処理に移行してよい。
【0271】
以上のように、SNは、経路構築パケットの受信に応じて、周辺ノードとの間においてリンクアップした複数の無線リンクの1つを経路メトリックに基づいて選択する。これにより、メッシュリンクがリンクアップしたBHネットワークにおいて、経路メトリックに基づいたツリー経路が構築及び更新される。
【0272】
なお、本実施の形態におけるSN3の中継経路構築の処理は、図9A図9Bに示す例に限定されない。例えば、中継経路は、予め設定されたものであってもよい。この場合、CN3は、中継経路構築に係る処理(例えば、S201~S215の処理)を行わなくてよい。
【0273】
以上説明した本実施の形態では、送信ノードは、送信指向性制御による送信方向に応じた受信指向性制御(受信ビームフォーミング)によって信号を測定し、測定の結果に基づいて、送信指向性制御による信号送信のための空きチャネル(空きリソースの一例)判定を行う。
【0274】
このような構成により、指向性制御を考慮してチャネル(リソースの一例)を使用するか否かの判定を行うため、周波数利用効率を向上できる。例えば、上記の構成によれば、送信指向性制御によって形成する送信ビームの方向に対して、影響を与えない、或いは、影響が少ない干渉成分の受信結果を示す受信レベルを低減できる。この場合、チャネルを使用すると判定される回数が増加するため、チャネルの周波数リユースファクタを減少させることができる。
【0275】
また、本実施の形態では、送信ノードは、信号を測定し、測定の結果と、受信指向性制御に関する情報(例えば、G及びG)とに基づいて、送信のための空きチャネル(空きリソースの一例)判定を行う。
【0276】
このような構成により、指向性制御を考慮してチャネル(リソースの一例)を使用するか否かの判定を行うため、周波数利用効率を向上できる。例えば、上記の構成によれば、受信ノードにおける受信指向性制御によって抑圧される干渉の度合い(干渉抑圧度)を考慮して閾値を制御することによって、チャネルを使用すると判定される回数が増加するため、チャネルの周波数リユースファクタを減少させることができる。
【0277】
また、本実施の形態では、送信ノードが、チャネルを使用するか否か(例えば、当該チャネルが空きチャネルか否か)の判定を行うための閾値(CCA閾値)を、受信ノードにおいて受信指向性の制御が行われることを考慮した閾値に設定する。
【0278】
このような構成により、CCA処理において、許容される干渉成分の電力が増加し、チャネルを使用すると判定される回数が増加するため、チャネルのリユースファクタを増加できる。
【0279】
なお、本実施の形態では、無線バックホールネットワークを例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示は、例えば、BF技術が適用される無線通信ネットワークにおいて適用されてよい。
【0280】
また、本実施の形態では、無線バックホールネットワークの中継経路の構築において、各ノードが信号を送受信することによって、自律的に無線リンクを構成する例を示したが、本開示はこれに限定されない。無線通信ネットワークを構成する無線リンクは、予め、設定されてもよい。
【0281】
また、本実施の形態では、送信ビームおよび受信ビームをBF制御によって決定する例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ノード3の位置関係が既知の場合等において、予め、送信ビーム及び/又は受信ビームが、ノード3毎に設定されてよい。この場合、上述したBF制御が実行されなくてよい。また、この場合も、送信ビームに対して、キャリアセンスにおいて使用する受信ビーム(測定用受信ビーム)が決定されてよい。
【0282】
なお、無線バックホールシステムのホップリンクのそれぞれが、同じ無線通信規格あるいは、同じ無線パラメータ(例えば、送信電力、及び/又は、MIMOストリーム数)を適用されなくてよい。リンクメトリックの指標が、RSSI測定値を用いるのは、ホップリンクの間で同じ無線通信規格及び同じ無線パラメータが適用される無線バックホールシステムでは、リンクメトリックの指標がRSSI測定値である場合に、中継経路の構築において的確なリンクメトリックが与えられてよい。例えば、ホップリンクの中に異なる無線通信規格及び/又は無線パラメータが混在する無線バックホールシステムでは、リンクメトリックの指標の一例として、測定されたRSSIをホップリンクの無線通信規格及び/又は無線パラメータでの伝送速度(スループット、bps)に対応付けて決定されたリンクメトリックを付与してもよい。
【0283】
また、無線バックホールシステムのホップリンクの一部に有線リンクが含まれてもよい。その場合には、経路制御パケットの無線でのフラッディングの受信処理が実行できない有線リンクが接続されたノードにおいては、経路制御パケットを有線で受信するとともに、リンクメトリックをその有線リンクの伝送速度などに置き換えて経路構築処理をしてもよい。
【符号の説明】
【0284】
3 無線ノード
31 プロセッサ
32 メモリ
33 ストレージ
34 入出力(I/O)装置
35,36 無線部
37,39 有線インタフェース(IF)
38 バス
40 制御部
350,360 アンテナ
400 中継経路制御部
450 無線チャネル割当部
401 スキャン処理部
402 ノード管理部
403 フレーム転送処理部
404 経路制御部
405 メッシュリンク確立部
451 指向性受信設定部
452 RSSI測定部
453 CCA判定部
454 RTS/CTS処理部
4041 経路制御パケット生成部
4042 経路メトリック計算部
4043 経路更新部
4051 BF制御処理部
4052 BFパラメータ格納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B